第4章 産業振興と雇用確保

〈高齢者の生きがいづくりと社会参加〉
○子育て支援や子どもの見守り活動、地域の美化運動をはじめ幅広いボランティア活動
を通じて、高齢者が生きがいを持って暮らせるよう社会参加の機会を創出・支援しま
す。
○高齢者の通所施設を生きがいづくりと介護予防の拠点として充実させるとともに、高
齢者だけでなく障害者や児童の福祉とも連携を図ります。
〈学習活動の推進〉
○高齢者を対象とした公民館講座の開設や老人クラブなどの自主活動による学習活動
を支援します。
〈世代間ふれあい交流の推進〉
○夏休みラジオ体操や各自治会ごとの各種行事などへの積極的参加により、地域の子ど
もや若い世代とのふれあい交流を推進します。
〈高齢者の技術の伝承の推進〉
○あらゆる分野において高齢者自らが培った技術を伝承するとともに「ふるさと教育」
などを通じて次世代の子どもに広く伝承します。
第4章
4−1
産業振興と雇用確保
農林水産業の振興
【現状と課題】
①
農業
本町の農業生産は、稲作を中心に畜産、果樹、野菜などを加えた複合経営として営ま
れていますが、2005年農林業センサス(実態調査)の農家戸数は1,891戸で、
過去5年間だけでも162戸減少しています。農家の9割以上は兼業農家と自給的農家
が占め、専業農家148戸のうち男子生産年齢人口(16∼64歳)のいる世帯はわず
52
か26戸で、ほとんどが65歳以上の世帯であり、若い農業後継者を有する農家が少な
いことが基本的な問題となっています。農業従事者数も2,635人と5年前に比べ8
39人減少しています。また、耕地面積もこの5年間で54ha減少しており、平成1
7年の耕地面積は1,660haとなっています。
今後とも農家戸数や農地の減少、後継者不足、農業従事者の高齢化等農業を取り巻
く環境は一段と厳しさを増し、農地の荒廃等が予測されていることから、農地の維持・
管理、認定農業者・集落営農組織等の育成など農業全体の活性化へ向けた取り組みが必
要となっています。
また、国の施策の一環として進めている品目横断的経営安定対策の対象品目(米穀・
大豆)の振興も農業従事者の高齢化に伴い停滞している状況にあり、認定農業者・農作
業受委託組織等の育成を図ることにより規模拡大を推進します。
さらに、有害鳥獣による農作物の被害が深刻な問題となっており、有害鳥獣の防除対
策も必要です。
農業、畜産業分野における観光産業との連携による地域内の流通については、まだ十
分機能している状況にありません。町内で生産される農産物・但馬牛肉を町内で消費す
ることにより観光業との連携を図り、地域経済の活性化を進めます。
②
畜産業
本町は、最高級肉質を誇る但馬牛の原産地であり、全国の改良種牛、肥育素牛の生産
基地として重要な役割を果たしています。
平成18年現在の飼養戸数は78戸1,130頭で、一戸当たり平均飼養頭数は14頭
で、20頭以上の飼養農家は16戸、飼養頭数737頭で全体の66%を占めています。
畜産農家の平均年齢は61歳であり65歳以上の農家は39戸で50%を占めていま
す。
多頭飼育を目指す若者の畜産後継者たちが企業的経営に取り組み、増頭化の傾向にあ
53
りますが、家畜ふん尿の適正な処理が課題であるため、村岡・小代の堆肥センター等で
生産された有機堆肥が農地に還元され、米や野菜等、高品質の作物づくりと合わせた耕
畜連携の農業の促進が必要です。
牛肉の輸入自由化、産地間競争などにより価格情勢は厳しいものがありますが、但馬
牛の優良系統を維持し、生産規模を拡大し「但馬牛」のブランドの評価を高めて行くこ
とが課題です。合わせて肉用牛の一貫生産体制により、本町産の牛肉を町内の旅館等で
提供する肉の流通体制を推進する必要があります。
③
林業
本町の森林面積は、町土の86.1%にあたる31,761haで、うち民有林が2
9,670haと森林面積の93.4%を占めています。昭和34年から造林に積極的
に取り組み、民有林の人工林面積は14,316ha(人工林率48.3%)で、経済
的価値が高められつつあります。しかし、人工林の多くは、9齢級(45年)以下の若
齢林で、計画的な間伐や保育管理を必要としますが、安価な外材輸入量の増加、国産材
価格の低迷、林道・作業道などの未整備などにより、間伐は十分には進んでいません。
また、私有林所有者の多くは10ha未満の零細経営であり、個人による計画的施業は
困難な状況にあります。
北但西部森林組合を中心として造林・保育事業等に取り組んでいますが、林業の生産
所得低迷や厳しい労務条件等により担い手の確保が困難になりつつあり、保育管理が行
き届かない状況にあります。効率的な施業のため、林道、作業道等生産基盤の整備や機
械化を進め、担い手の確保に努め、保育管理の推進とともに間伐による小径木の有効利
用を推進する必要があります。
④
水産業
(ア)
漁業
本町の漁船隻数は、平成17年現在全体では432隻で、30トン以上が20隻、1
54
トン以上30トン未満が197隻、1トン未満が215隻あります。平成12年度では
全体で733隻あり、過去5年間で301隻の激減となっています。
漁獲高は、平成17年度現在8,150トンあり、平成12年度では9,774トン
で過去5年間では1,624トンの減少となっています。
漁業をめぐる情勢は、日韓新漁業協定、漁獲可能制度(TAC)の実施や原油価格の
高騰など厳しい環境のなか、漁場秩序の改善や燃油対策などの要望を行うとともに、
沿岸域、沖合域の漁場を高度に利用し、増養殖漁業を推進することにより、水産資源
の維持・増大を図りながら資源管理型漁業を目指します。また、組織基盤・経営基盤
の強化を目的に、平成19年4月に但馬地区4漁業協同組合の合併、さらには兵庫県
下1漁業協同組合への統一構想が検討・推進されており、これらについて支援しなが
ら、漁業の振興を目指します。
また、スッポン、チョウザメ(キャビア)など内水面漁業についても振興を図り、
アユの資源維持を支援し、ヤマメなどの生息地である渓流環境の整備に努めます。
(イ)水産加工業
本町の水産加工業の事業所は70軒あり、従事員数は約1,200人で本町における
地域、経済に大きく影響しています。
水産加工業においては、安価な輸入加工品の増加や、多様化する食生活の変化に伴う
魚離れが進みつつあるなど厳しい状況にあります。こうしたなか加工技術の向上による
「香住ブランド」の開発や魚食普及を推進し魚の消費拡大を図ることにより、水産加工
業の振興を目指します。
【施策方針】
①
農業
〈農業生産基盤整備の推進〉
○作業の省力化と効率化、生産性の向上を図るため、農業生産基盤整備は平坦部を中心
55
に計画的に整備が進められてきました。今後は、未整備地区におけるほ場整備の早期
実施に図ります。
○高齢化が進行する中、農作業や保全管理作業のより一層の軽減を図るため、ほ場の再
整備、農道舗装、用排水路の整備等を推進します。
〈中山間地域の振興整備〉
○中山間地域の狭小な耕地は、施工条件が悪く農業生産基盤整備が遅れており、
耕作放棄地の増加につながっています。地域の農業振興と併せて農地が持つ保水機能
を保全するため、棚田のほ場整備、中型農業機械導入が可能な農道整備等を推進しま
す。
〈集落営農組織の充実と新規就農等後継者育成〉
○集落営農の組織化の促進、認定農業者の育成、新規参加者の確保により農業経営基盤
の安定と遊休農地の利活用を図ります。
○集落リーダーの経営能力の向上や組織体制強化への支援を通じて、段階的に集落営農
組織の法人化を進め、育成を図っていきます。
○農外からの新規参入者及び団塊の世代をはじめとする定年退職者等、Uターン・Iタ
ーン者を含め、新たに農業を始めようとする人材の育成を図っていきます。
〈農作業の受委託体制の確立〉
○農業従事者の高齢化と担い手不足に対応するため、農作業の受委託組織の育成を進め、
農機具等の過剰投資の解消と低コスト生産による経営の安定を図るとともに、遊休農
地を減らすことにより農地の荒廃化を防止します。
〈高付加価値の農産物・特産物の生産振興〉
○町内2箇所の有機(堆肥)センターで生産された堆肥やマリンブルーかすみで生産さ
れたカニ殻を活用し、健康な土づくりのもとに品目横断的経営安定対策の対象作物で
56
ある米穀・大豆や有機野菜等、高品質の作物づくりなど農産物の高付加価値化、環境
にやさしい農業を促進し、水稲、高原野菜、美方大納言小豆等、二十世紀梨などの特
産化・ブランド化を進めます。
○有機野菜等は、町内の旅館・民宿への供給が安定してできる生産と体制の充実を図り
ます。
〈安全・安心で味わいある農産物の契約栽培の推進〉
○農産物の優良品種への改植、新技術の導入等を進め、健康と安全・安心、温もりある
味わいに重点を置いた作物の振興に努め、契約栽培や産地直送体制を拡充します。
〈各産業間連携による新しい産業、産品づくり〉
○町内の各産業間における情報交換や相互交流、共同研究などの促進を図ります。
○町内のそれぞれの区の特色を生かし開発された特産品の「香住・村岡・小代」ブラン
ド化を推進します。
〈農地の保全対策の推進〉
○防災や自然環境保全、農山村景観など農地の公益的機能が保たれるよう、町土と農地
の保全対策を図ることは重要です。このためには、農業生産活動の継続は勿論のこと、
加えて、農業者以外の住民を含めた地域ぐるみで農地や農業用施設、自然環境の保全
活動が必要であり、新たな国の施策を取り入れながら推進していきます。
〈グリーンツーリズム、マリンツーリズム活動の推進〉
○海辺と山辺をもつ町の特徴を生かし、グリーンツーリズムでの農業体験やマリンツー
リズムでの地引き網、水産加工体験等の多様な交流を創出し、都市と農山漁村の交流
を促進します。
〈有害鳥獣防除対策の推進〉
○野生動物、有害鳥獣による農林産物被害や人的被害を防止するため、駆除活動を積極
的に支援し、個体数調整を計画的に推進します。また、防止柵等の設置に対し、引き
57
続き支援します。
○人と野生動物との共生の観点から、人家等に隣接した森林の強度間伐による住み分け
ゾーンの設置や広葉樹林の育成を推進します。
②
畜産業
〈但馬牛の一貫生産体制の拡充と有機農業の連携促進〉
○最高肉質を誇る 但馬牛 ブランドの確立を推進するため、県の生産指導機関等との
連携を強化し、但馬牛の肉質の高品質、高安定化、増体を含めた改良により、繁殖経
営を主体に優良種牛生産を図ります。
○町内産但馬牛肉が、町内の旅館、民宿に安定供給できる体制の充実と肥育牛の増頭対
策を図ります。
○村岡有機センターの増設を行い、多頭化と環境対策を支援し、生産された牛ふん堆肥
を、水田をはじめ果樹園などの農地に還元し、耕畜連携による農業の推進と安全・安
心な農産物の生産を目指した「有機の里づくり」に努めます。
○既存畜産基地での粗飼料生産、スキー場等での放牧など山で飼う但馬牛づくりにより、
コストの低減と優良牛の生産を促進します。
○購入者から求める本来の但馬牛の特質や伝統の維持を図るため、粗飼料多給による健
康な子牛づくりを推進します。
③
林業
〈林業生産、加工、流通対策の推進〉
○広大な森林資源を活用するため、北但西部森林組合を中心として造林事業に積極的に
取り組みます。国内産の木材の価値が見直され、多面的な利用が求められるなかで優
良な木材の生産、加工、流通のネットワークを強化するとともに、地域内産材の利用
及び間伐材の有効活用を促進し、林業の活性化を図ります。また、県民緑税関連事業
の補助事業を有効に活用し、人工林の間伐等に積極的に取り組みます。
58
○ワサビ、シイタケ等の特用林産物の生産基盤整備と農林水産物加工商品の開発を支援
します。
〈林道網等の整備などによる森林の保育・管理〉
○本町の人工林の多くは若齢林であり、計画的な間伐等を必要とする森林が多く、効率
的な施業のために林道・作業道等の生産基盤の整備や機械化、省力化を進め、担い手
の確保に努め、保育管理に積極的に取り組みます。
④
水産業
(ア)
漁業
〈漁業秩序の改善〉
○暫定水域内での本町漁業者の要望(底刺し網・かご漁の全面禁止など)が実現される
よう、日韓新漁業協定の改善に対して支援します。
○漁獲可能量(TAC)の厳守により、水産資源の維持・増大を図り、資源管理型漁業
を目指します。
〈増養殖漁業の推進〉
○水産資源増加対策として、現在実施しているヒラメ、タイ、アワビ、サザエの放流事
業、ベニズワイガニの資源回復計画事業に対して、引き続き支援を行います。
○沿岸、沖合の人工魚礁による漁場造成を図り、海洋資源の増殖に努めます。
〈就労者の確保〉
○漁業就労者不足が問題となってきましたが、最近、若者が就労するようになり、新規
漁業就業者激励会を開催し、漁業後継者として貢献していただくよう支援していきま
す。
〈漁協合併への支援〉
○平成19年4月、経営の基盤強化を目指し、本町の2漁協を含む、但馬4漁協の合併
を支援します。
59
〈内水面漁業の育成〉
○清流や温水を生かした内水面漁業を振興し、スッポン、チョウザメ(キャビア)
、ア
ユなどの特産化を図り、食材への活用を進めます。
○アユ、ヤマメの特産化を図るとともに渓流環境の整備により観光レクリエーションと
の連携を強化します。
(イ)
水産加工業
〈観光と連携した漁業の推進〉
○カニ場まつり、カニ感謝祭などのイベントを開催し、香住の松葉ガニなど生鮮海産物・
水産加工品をPRします。
〈原料魚の確保支援〉
○近年、本町の漁獲量が減少傾向にあり、加工原料が不足しつつあります。業者の努力
により、全国または世界中から原料魚の確保をされており、この原料魚確保のための
資金(借入金)について、利子補給を引き続き行います。
〈香住ブランド化の推進〉
○県の「ひょうごブランド商品」制度の活用やイベントへの出展を推進し、「香住ブラ
ンド」の開発、PR及び定着を図ります。
○但馬水産技術センターと町内水産加工業界が連携し、付加価値のある商品開発を進め
るなどの推進事業に対して支援します。
〈魚食普及の推進〉
○魚食離れを解消し、魚の消費量を増やすため、地産地消の観点からも、イベントによ
る魚食普及や小学生の魚の調理講習、学校給食などへ魚の提供を行い、魚食習慣の醸
成を引き続き図ります。
4−2
商工業・地場産業等の振興
【現状と課題】
60
本町の商業は、小規模小売業が中心です。自動車の普及や道路網の整備に加え、近隣
都市に郊外型大規模店舗へのレジャーを伴う町外購買行動が増え、町内消費・購買力が
低下しています。一方では、町外からの大型店舗の進出が、町内の既存小売業者に少な
からず影響を及ぼしており、住民に魅力ある商店の整備が急務になっています。
工業・地場産業は、香住区においては水産加工業がその中核であり、町経済発展をに
なってきました。しかし、近年安価な輸入加工品の増加や消費者の魚離れのため、業者
の減少、出荷額の減少が見られ、経営の効率化、或いは新製品の開発などの推進が望ま
れるところです。村岡区、小代区においては、繊維・紡績、自動車関連部品、電子部品
の製造業がありますが、海外との競争による製造単価の引き下げなどにより、合理化な
どの懸命な経営努力が払われています。
【施策方針】
〈商店街の活性化対策の推進〉
○商店街は、地域文化・伝統の保持、地域コミュニティの核としての役割を果たしてき
ました。その役割の再認識を行い、今後は単なる売り買いの場から生活を楽しみ、時
間を過ごす場所としての魅力ある商店街づくりを推進します。
○子どもや熟年者にやさしい商店街、地域文化にふれあう商店街づくりを進めます。そ
して、消費者のライフスタイルの変化や消費の多様化などに対応した魅力ある商店づ
くりに努めます。
○環境整備については、景観に配慮した駐車場、小公園など町並み整備を進めるなど美
観を整え魅力ある商店街づくりを進めます。
〈商店後継者の育成〉
○地域に密着した商業の継続的発展を図るため、商工会と連携し、研修や交流活動を通
じた商店経営者の育成を支援します。
61
〈建築業・建設業の振興〉
○兵庫県等関係団体と連携し、建築業、建設業の技術力と経営力の強化が図れるよう
支援します。
〈既存企業の経営基盤の強化〉
○異業種交流の推進、新規事業進出への支援、融資制度の活用促進、経営・技術支援体
制の充実などにより、既存の企業の高度化と経営基盤の強化を図ります。
○販売面においては、町内企業の製品に係る情報発信の強化、販売ルートの開発・強化、
イベントとの連携による地場消費の拡大など、販売機能の強化・充実を促進します。
〈地域資源活用型企業起こしの推進〉
○本町には海、山の豊富な地域資源があり、これらの資源を生かした製品開発を進め、
新たな企業起こしに努めます。
○環境・高齢化・健康・情報などの新たなキーワードを生かす産業の育成並びに観光と
の連携による産業の振興を目指します。
〈商工会との連携強化と経営指導活動等への支援〉
○商工会との連携強化を図りながら、各種セミナーや講習会、経営指導などを行い、町
内事業者の経営基盤強化に努めます。
○商工会を主体としながら、商業活性化に向けた道筋の検討を図ります。
〈融資対策等の推進〉
○町内事業者の資金調達の円滑化を図り、経営基盤の安定に資するため、中小企業向け
の融資制度の充実を図るとともに、国・県の融資制度の普及と活用を促進します。
4−3
観光関連産業の振興
【現状と課題】
本町は、山陰海岸国立公園・氷ノ山後山那岐山国定公園・但馬山岳県立自然公園の自
62
然公園区域が6割を占め、各地には天然記念物・海水浴場・スキー場・野外体験施設・
温泉施設などが点在しています。
また、本町には、大自然の恵みを受けて育った、但馬牛・松葉ガニ・活イカ・地酒・
有機米・二十世紀梨など豊かな食材がそろっています。
このほか、本町には余部鉄橋や大乗寺、名滝の数々、4つのスキー場、但馬高原植物
園などの観光資源があり、カニスキや海水浴客の宿泊を目的とした民宿・旅館が165
軒、スキー客の宿泊を目的とした民宿・旅館が50軒、全体で215軒の宿泊施設があ
ります。
夏場の海水浴客や冬場のスキー客の減少により宿泊客は近年、減少傾向にありますが、
年間を通じた観光入込客数はゆるやかな増加傾向にあります。
香美町観光客入り込み数の推移
(千人)
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
1,524
8
9
1,592
1,485
1,395
1,442
1,313
10
11
12
13
14
1,376
1,321
1,291
15
16
1,417
17 年度
近年、観光客のいわゆる「安・近・短」の時代を経て、観光客の目はますます厳しくな
り、いわゆる「本物志向」が定着してきました。
また、県内ではグリーンツーリズムやマリンツーリズム、エコツーリズムなど体験・
交流型観光が拡大しています。
今後、長寿高齢化社会の到来、団塊世代の大量退職により、これらの観光客が増加す
る可能性があります。
現代は旅の「個人化」の中で、それぞれの地域がオンリーワンの観光地として育つこ
63
とが大切で、観光客の動向を見極め、ターゲットを意識した観光戦略を立てることが課
題となっています。
また、本町にあっては町域も広く、海岸部と山間部で観光資源も異なるため、ゾーニ
ングを行い観光振興上の役割分担と連携を図ることも課題です。
本町の産業を活性化させるためには、観光業を中心として他の産業との連携を図り、
町内の食材を使用した料理を民宿や旅館などで提供するなどの地産地消を推進するこ
とが必要です。
観光業の振興にあたっては、地域の核となる「人材」と地域全体の「もてなしの心」
の育成を図り、観光を通じた協働の取り組みによって、住み心地の良い観光地づくりを
目標とします。
【施策方針】
〈山・川・海の連携による、自然景観を生かした滞在型観光の推進〉
○各地域の特徴ある自然景観と体験施設、又、ほぼ全域にある民宿や旅館、コテージ、
ロッジ、国民宿舎などの宿泊施設を活用し、施設面・プログラム面・人材面にわたる
受入れ体制を整えることにより、来ていただいたお客様に本町でしか味わえない「本
物の」観光資源を生かした、滞在時間の長い観光地づくりを推進します。すでに一部
の地域で、花火鑑賞、夕陽鑑賞、ホタル鑑賞、歩道イルミネーションなど夜間の取り
組みが進められていますので、他地域にあっても宿泊につながるプログラムを積極的
に支援していきます。
○海岸部と山間部とでは観光資源が異なることから、滞在メニューを補完しあい観光客
の幅広いニーズにも応えられるよう努めていきます。
〈松葉ガニや但馬ビーフなどの食材を生かした観光の推進〉
○松葉ガニにあっては、「カニ検定」を実施するとともに、安定的に活ガニが供給と選
別日本一を誇る「カニの本場」である点を積極的に情報発信します。
64
○町内の宿泊施設においては、松葉ガニ以外にもベニズワイガニ(香住ガニ)、シロイカ、
ハタハタ、カレイ、シロエビなど地元で多量に獲れる魚を用いた料理がおいしいこと
を積極的に宣伝します。
○遊漁船や渡船による海での釣り、矢田川でのアユ、ヤマメ釣等をPRします。
○村岡区、小代区は、神戸ビーフや松坂ビーフの素牛である但馬牛の原産地であるの
で、ここで出産した子牛の地元肥育を行い、但馬ビーフとして町内外食・宿泊施設で
活用できる供給体制を整備します。
○町内で育てた有機米や野菜、味噌、二十世紀梨、アユ、アマゴ、スッポン、チョウ
ザメ、水産加工品、梅干し、日本酒、梨ワインなどの食材を直売所、土産物店、宿
泊施設など観光施設で積極的に提供・販売するとともに都市部との交流をさらに推
進し、これらの中で機会を捉えて販売PRをしていくことにより、消費の拡大に努
めるものとし、第1次・第2次産業を含む地域全体の産業振興を図ります。
〈リピート性のある、体験・健康・保養型観光の推進〉
○「気に入れば何度でも訪れてもらえる」という体験・健康・保養型観光の持つ特長を
認識し、受入れ体制を施設面、プログラム面、人材面など各分野で検討します。
○かすみ・矢田川温泉、ハチ北温泉湯治の里、温泉保養館おじろんを充実させ、地域の
賑わいづくりと町民の健康保養の場として、また、他の健康施設、スポーツ、観光と
連携し利用を促進します。
○体験型旅マッブや観光ビデオを作成するほか、松葉ガニなど食材を生かした参加型観
光イベント、地域の特性を生かしたマラソン・ランニング大会、雪まつりやスキーフ
ェスティバルなど核となるイベントを充実・継続していきます。
○各地域にあっては自然学校受入れや植物の自然観察会・寄せ植え、地曳網体験、古代
の森体験、そば打ち、竹輪づくり、釣りなど地域の特性を生かしたプログラムでお客
様をお迎えし、感動を土産にリピーターづくりを積極的に進めていきます。
65
〈「住んでよし、訪れて良い」人づくり・観光地づくり〉
○「人」をひきつけるものは「人」であり、もてなしの「心」であることを肝に銘じ、
「人材」と「もてなしの心」の育成を図ることと、さらに観光を通じた協働の取り組
みによって、住み心地が良く、他に自慢できる観光地づくりを進めます。
○各観光協会を中心に語り部、観光ガイド、体験インストラクターなどの人材を育成し
ます。
○イベントや食材提供、土産物開発などの分野における異業種間の協働作業を通じて、
地域全体としての魅力を高めます。
○各地域で観光業に携わる女性同士の連携を図る交流会を推奨したり、町内観光資源の
見学会などを積極的に開催するなど、観光客をおもてなしする資質を高めます。
○公衆トイレ、季節感あふれる景観作物栽培、香りの花づくり運動の全町的展開など観
光客に優しい受入れ環境を整備していきます。
〈 ハード・ソフト両面にわたって、センスの良い効果的な情報発信〉
○本町を訪れる観光客の約4分の3が自家用自動車利用であることから、兵庫県との連
携により、観光地につながる主要道路でのビューポイント整備、センスの良い案内標
識や観光看板、擬木ガードレール設置など観光資源を活かした演出を行っていきます。
○本町や観光協会が新設する野立看板については、観光客にわかりやすい、おしゃれな
統一デザインやマークなどを用いることとし、観光地としてのイメージアップを図っ
ていきます。
○本町の観光イメージを明確に打ち出し、集客力を高めるうえで、大きなイベントの開
催は、大変意義あることです。現在のところ、香住ふるさとまつり、かすみカニ場ま
つり、フリースタイルスキー全日本選手権大会、兵庫県雪合戦大会などの大規模なイ
ベントが開催されていますので、これらのイベントが継続実施できるよう支援してい
きます。
66
○情報発信手段としてのポスター・パンフレット・ビデオ・新聞・ラジオ・雑誌・テレ
ビ・インターネットなどは本町の特徴を生かし、他市町にない特色と魅力ある内容を
もって全国に発信します。
〈県や共通の観光資源を持つ周辺市町との連携〉
○北近畿豊岡自動車道の春日和田山道路の開通による、京阪神地域との時間短縮が図
られ、今後ツーリズム客の増加が見込まれる中にあって、兵庫県や山陰海岸国立公
園所在地の市町村を始めとする、共通の観光資源を持つ周辺市町との連携を密にし、
さらにひょうごツーリズム協会や北近畿広域観光連盟など広域観光組織との連携を
強め、地域の魅力を高めるための取り組みを進めていくこととします。
〈絶えず世間や観光客の動向を見極め、観光施策を検証した改良〉
○兵庫県においては知事を本部長とする兵庫県観光ツーリズム推進本部を設け、観光を
巡る諸情勢を把握しながら、観光施策の検証とステップアップを図っており、本町の
観光施策もこれと連動した取り組みを進めます。
今後は、女性、団塊の世代や子供たちの世代層を特に注目すべきターゲットとして意
識した観光戦略を進めるほか、定期的に観光施策の検証を実施します。
4−4
地産地消等地域内連携の推進
【現状と課題】
本町には、観光業のほか、村岡区、小代区では農業、畜産業、香住区では漁業、水産
加工業を中心にそれぞれの地域の特色を生かした産業が発展してきています。
しかし、こうした産業が社会経済環境の大きな変化の中で、それぞれ厳しい状況にお
かれています。そのため、地元で生産された農畜産物を町内の旅館・民宿等で使用する
一方、観光業と農業の連携により地産地消を一層推進し、各産業の活性化を図ることが
必要です。
67
その中で、但馬牛は繁殖牛を中心とした飼育であり肥育については、町内の旅館、民
宿で使用する量に対応出来ない状態にあります。このため今後、町内の流通に対応でき
る量を確保するための増頭の支援が必要です。
また、地元で獲れた水産物は観光業との連携をより深め、町内での消費拡大を一層図
る必要があります。
【施策方針】
〈農林水産業等の生産品の地域内消費拡大の促進〉
○町内の素材を生かすこだわりの旅館・民宿と農家との連携により、本町産但馬牛肉及
び、本町産野菜の供給体制づくりを推進し、町内消費の拡大を促進します。
○繁殖と肥育の一貫経営と繁殖牛の増頭を支援するため、村岡有機センターの増設を行
い、センターで生産された有機質堆肥の活用により、安全・安心な特色ある農産物の
生産を促進します。
○町民の健康促進や水産加工業の振興のため、水産物の町内での消費拡大を図っていき
ます。
〈地域内資源循環型の産業体系づくり〉
○町内で発生する畜産のふん尿と漁業の残さい・カニガラなど資源再利用による有機質
肥料の製造を行う中で、梨、野菜などの地域内資源に活用出来る体制を推進します。
4−5
雇用対策の推進
【現状と課題】
わが国の経済は、一時期の低迷から脱し、回復基調にあるものの、町内においては水
産加工業者の減少、繊維・紡績、自動車関連部品、電子部品の製造業における経営の効
率化の推進などにより、雇用情勢は厳しいものがあります。
そのような雇用情勢の中にあって、産業構造の変化や技術革新のため、雇用を希望す
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る者は職業能力の高度化、専門化を求められており、職業能力開発は雇用施策を推進す
る上で重要性を増してきています。
こうした中で、雇用の安定を図るためには、新たな就業機会の確保、技術革新などの
変化に対応した人材の育成、職業能力の開発向上に努めるとともに、高齢者や心身障害
者の雇用の促進、勤労者の福祉の向上などに努める必要があります。
【施策方針】
〈企業誘致の推進と起業活動への支援〉
○町内雇用や若者定住の促進を図るため、若者にも魅力のある企業誘致に努めます。そ
のため、町内において、工場を新設、増設をしようとする企業に対して、工場等設置
奨励金や雇用奨励金の助成を行います。
○若者を新たに雇用する事業所に対し、雇用奨励金の助成を行います。
○企業誘致の受け皿となる工業適地を創出します。
○起業活動支援のため、国・県の支援制度の紹介など情報の積極的提供を行います。
〈UIターンの就職支援体制の強化〉
○町内出身者に町内企業の情報を提供し、Uターンへの働きかけを強めます。また、定
住できる住環境を整備するとともに、本町の長所を伸ばし、その魅力を広く知らせ、
本町を訪れたことのある人や田舎暮らしを希望する人たちにIターン定住を呼びか
け、若い世代や団塊の世代の定住促進を図ります。
〈多様な雇用の確保〉
○ハローワークなどと連携し、年齢や適正・能力に応じた就業機会の確保を図ります。
○高齢者や心身障害者の雇用機会の促進を図ります。
〈職業能力開発の推進〉
○急速な技術革新の進展に対応した就業機会を確保するため、香美町職業訓練センター
の訓練内容の充実を図ります。
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〈勤労者福祉の充実〉
○関係機関との連携を図り、勤労者への共済制度などの利用や各種福利厚生事業の促進
を図ります。
〈労働環境の改善〉
○各事業所に対し、労働安全についての啓発や衛生対策についての指導を行い、労働環
境の改善に努めます。
〈酒造業等の季節労務対策の充実〉
○冬季酒造労務対策として、醸造技術の更なる向上を図るため研修の機会の充実を図り
ます。
第2章
5−1
都市基盤の整備・充実
道路網の整備
【現状と課題】
道路は、産業・経済活動のみならず、人や文化交流など、住民生活と深い関係をもち、
今日の社会に果たす役割は重要であります。
本町の道路網は、北部では国道178号と主要地方道香美久美浜線、南部では国道9
号が東西の幹線道路となり、主要地方道香住村岡線と国道482号が南北の幹線道路と
なっています。平成17年3月に、高速道路の空白地帯であった本町に、地域高規格道
路「鳥取豊岡宮津自動車道」の「香住道路」が下岡・香住間で開通し、現在引き続いて
「余部道路」の工事が香住・余部間で進められています。今後、下岡・豊岡間の早期整
備が求められています。主要地方道香住村岡線では、香住区の「大乗寺バイパス」と村
岡区の「境バイパス」の事業が進められています。
また、国道9号の笠波峠は、冬季積雪のため交通の渋滞が発生し早期の解消が求めら
れています。国道 482 号では、「長板バイパス」の整備が進められ、さらに小代区の大
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