研究集録 - 秋田県立大曲農業高等学校HP

平成24年度
研 究 集 録
秋田県立大曲農業高等学校
平成24年度
1
巻頭言
2
校内研究授業
各教科から
互見授業
3
4
経験年次別研修
校外研修
校長
10 月 11 日研究授業
実践報告
指導案・研究協議会
国語科
柴田満美子
理科
佐々木悠華
農業科(野菜)
古戸
毅
農業科(畜産)
田口
健一
11 月 17 ∼ 22 日実施
参観要項・感想意見等
◇初任者研修
佐々木悠華
◇ 10 年経験者研修
田口
健一
①生徒オーストラリア研修
柴田
②PTA研修
柴田満美子
③管外視察研修
5
研究集録内容
孝博
山形県立置賜農業高校
高橋
寿徳
青森県立五所川原農林高校
佐々木孝之
④専門高校生海外企業研修
高橋
誓子
①世界らん展に参加して
平塚
祥広
農業クラブ全国大会
古戸
毅
自転車部
藤井
亨
なぎなた部
冨田
和樹
大沼
克彦
②全国大会・インターハイ・国体を終えて
③田沢湖研究
6
編集後記
巻頭言
この一年を振り返りながら
校長
矢田部
晃
今年度は4月の爆弾低気圧に始まり、前庭に列植されているヒマラヤシーダーが3本、
杉などの巨木が数本なぎ倒される被害が出ました。夏の猛暑は秋になっても威力を保った
まま続き、農業実習では大変難儀し、農作物の被害が心配されました。また、冬は記録的
な豪雪で、まさに異常気象の1年でもありました。そんな中、本校にとって最大の話題は
創立120周年の諸行事でありました。昨年度実施された記念植樹を始めとして各種招待
試合、航空写真撮影、オーストラリア海外研修、記念花火、記念式典、記念講演、年を越
して2月に東京ドームで行われた「世界らん展日本大賞2013」への出品と、一年を通
した一大事業でありました。記念行事も成功裏に完遂できたことは嬉しい限りであり、関
係者全員で喜びたいと思います。
農 業 は 今 、T P P( 環 太平洋戦略的経済連携協定)で大きく揺れています。私は本 校 生 徒 に「 意
志 の あ る と こ ろ に は 道 は 開 け る 」 と 説 い て い ま す 。 先行きの分からない農業ではありますが、
農業の必要性、農業の将来性も生徒には指し示していくことが大切であると考えています。
さて、この1年間の研究成果のまとめである「研究集録」を企画された研修担当及び寄
稿してくださった先生方に、この120周年事業の忙しい中での研究に対して厚く御礼申
し上げます。
平成24年度の本県学校教育の指針に、学校教育が目指すものは「豊かな人間性をはぐ
くむ学校教育」であると謳われています。そのために「教師の力量を高める」とも記載さ
れています。生徒は教師の生き方に影響(感化)される部分が多い、と古くから言われま
す が 、「 豊 か な 人 間 性 」 は 生 徒 の み な ら ず 教 師 に 求 め ら れ る 資 質 で も あ り ま す 。 幅 広 い 識
見を有し、教育愛に満ち、社会の変化にも柔軟に対応することのできる力量のある教師が
身 近 に 存 在 す る な ら ば 、そ の 後 姿 に 生 徒 は お の ず と 啓 発 さ れ て い く の で は な い で し ょ う か 。
我 々 は 日 々 の 授 業 に お い て も 、「 一 期 一 会 」 の 精 神 で 生 徒 に 語 り か け 、 自 身 の 「 豊 か な 人
間性」を発揮し、生徒がそこから何かを得ることができるような授業を心掛けたいもので
す。教師という職業を選択したからには、生徒の意欲が足らない、モチベーションの維持
が 難 し い な ど と い っ て い ら れ ま せ ん 。教 師 と し て の 自 覚 と フ ァ イ ト を 持 っ て 、よ り よ い「 大
農スタイル」を確立していこうとする気概が必要であると思います。
ま た 、指 針 で は 組 織 的 な 授 業 改 善 と 学 力 向 上 の 推 進 を 謳 っ て お り ま す 。今 年 度 本 校 で は 、
学校全体としての取り組みとして全科目共通のテーマ「確かな学力定着のため、学習指導
の中で意図的な生徒への問いかけを行う」を設定し、互見授業週間を実施しました。これ
は、授業力の向上および指導法の改善を目的として、個々の教員が教科の枠を越えて授業
を見合い、評価し合うという実践です。それは同時に、本校における現状打破・課題の解
決を目指すものでもあります。その実施報告が本集録に掲載されていますが、例えば「先
生 方 一 人 一 人 の 授 業 改 善 に 取 り 組 む 意 欲 が 強 ま っ た 」「 授 業 の 予 習 の さ せ 方 に 取 り 組 む 先
生も出てきた」と素直な意見で溢れており、大いなる刺激となったのを窺い知ることがで
きます。
我 々 の 仕 事 は 、「 生 徒 の 為 に 」「 教 え る こ と は 学 ぶ こ と 」 と い う 考 え を 基 本 と な が ら 、
様々な情報による教材の研究や、多くの地域の方々、教員の先輩や同輩、保護者や生徒と
の交流を通して自身を高める努力が求められます。このことからも実践している教育活動
を振り返り、問題点を鮮明にし、今後の向上を目指すために、研究実践としてまとめるこ
とは大きな意義があると思います。
本研究集録は、次への改善の手だてとするために、平成24年度の日常の教育活動をま
とめています。各分掌、各教科の学習指導の取り組み、学力向上実践報告などを掲載して
います。多くの方々からの忌憚のないご意見、ご指導をいただければ幸いです。
最後になりますが、執筆者はもちろん、編集を担当された皆様に感謝し、この成果のさ
らなる活用と、生徒一人一人の向上につながる研究の継続をお願いしましてあいさつとし
ます。
国語科(現代文)学習指導案
日 時
場 所
学 級
授業者
教科書
1
単元(題材)名
小説二
2
単 元 の 目 標
3
生 徒 の 実 態
4
指
5
本時のねらい
6
指導の過程
平成24年10月11日(木)6校時
3年S組ホームルーム教室
生物工学科3年S組
柴田 満美子
現代文 新訂版(筑摩書房)
魯迅「藤野先生」
〈出会い〉と〈別れ〉をモティーフとした翻訳小説の読解を通して社会的偏見
や差別意識を超越した人と人との関わりの機微を味わわせる。
生物工学科35名。男子は屈託がなく精神的に未熟な生徒と与えられた課題に
は真剣に取り組む生徒の二極化が見られ、女子は概ねマイペースである。学習成
績は良好と言いがたいが授業中の反応は良い。他者の話を集中して聞き、自らの
言語に置きかえる(理解する)力の育成が課題である。
導
計
画(総時間数7)
1時間目 ・作者について ・本文の通読 ・初発の感想
2時間目 ・難解語句の確認 ・時代背景の確認(日露戦争、日中関係)
3時間目 ・第一段の読解 *本時
4時間目 ・第二段の読解(藤野先生との出会い、主人公の自負)
5時間目 ・第三段の読解(藤野先生の人柄)
・第四段の読解(主人公を苦しめる偏見)
6時間目 ・第四段の読解(主人公の苦悩、藤野先生との別れ)
7時間目 ・第五段の読解(帰国後の主人公の志)
・日中関係についての考察
指導内容・時間
(1)東京の「清国留学生」を「私」がどう見ていたかを理解させる。
(2)仙台にやってきた「私」がどのような待遇を受けていたか理解させる。
主な学習活動
◎発問、指示
指導上の留意点、評価の観点
《導入》10分
◇前時の確認
◇本時の目標
◎初発の感想の発表
◇本時の目標、学習内容を知る
◇疑問点が示された場合、板
書して疑問の共有化を図る
《展開》35分
◇第一段の精読
◎ p250 指名読み
◇上野公園の「清国留学生」の髪型と中国留
学生会館の夕方の情景から「私」が感じた
ことを整理する
◎弁髪をアレンジすることの意味
◎留学生会館の本来の目的
◇当時と現代の留学のもつ意
味の違いを考慮させる
◎ p251(前半)指名読み
◇仙台の印象と「私」の心情を整理する
◎「市ではあるが大きくない」のニュアンス
◎中国人がいないということに対する「私」
の心情(不安か期待か)
◇エリートとしての自負に気
づかせる
◎ p251(後半)指名読み
◇仙台で受けた優待について整理する
◎「山東菜」「竜舌蘭」という「美称」を与
える理由
◎「優待」の内容
◇「物は稀なるをもって貴し
となす」と結びつけさせる
【評価】仙台における「私」
の待遇とその意味を理解し
ている(D)
《整理》 5分
◇本時のまとめ
◇次時の予告
【評価】間接的に「清国留学
生」への失望を述べている
ことに気づいている(D)
◎板書、ノートの確認
◇次時の学習内容を知る
A)関心・意欲・態度
B)話す・聞く能力
C)書く能力
D)読む能力
E)知識・理解
理科(生物Ⅰ)学習指導案
日
対
場
授
教
1 単元名
第3部:環境と動物の反応
時:平成 24 年 10 月 11 日(木)
象:2 年 H 組(33 名)
所:生物室
業 者:佐 々 木 悠 華
科 書:生物Ⅰ改訂版(啓林館)
第1章 第2節:刺激の受容
2 単元の指導目標
①刺激を受容する器官、神経の興奮とその伝達について理解する。
②ヒトの受容器を中心に動物が外界からの刺激をどのように受容し、感覚としてとらえているのかを実験
や観察を通して考察することができる。
3 単元の評価規準
自然現象への
意欲・関心・態度
科学的な
思考・表現
刺激の受容に関する事
受容器の機能をそ
象に関心をもち、意欲
の構造などに関連
的にそれらを探究しよ
付けて考察できる。
うとする。
観察・実験の技能
自然事象についての
知識・理解
観察・実験の結果から
受容器の働きについて
的確に表現する方法を
身につける。
刺激の受容から反応までの情報の
流れを理解するとともに、受容器の
種類や働きについての知識を身に
付けている。
4 単元の指導計画
視覚………3時間(本時2/3)
聴覚………1時間
5 生徒の実態
女子33名、活発な発言が多くみられるクラスである。教材を活用することで本単元への興味関
心をさらに引き出し、考察する力を伸ばしたい。
6 本時の計画
(1)ねらい … 網膜に結ぶ像について理解させる。
(2)学習過程
学習活動
導
入
1
0
分
・前時の復習をする。
・本時の目標を確認する。
網膜に映る絵はどんな形をしているでしょうか?
整
理
5
分
評価の観点
(評価方法)
・本時で使用する語句
を確認させる。
目標:網膜に映る像を考えよう
・目と箱カメラの構造を比較する。
展
開
3
5
分
指導上の留意点
・箱カメラは班で一個 A:箱カメラを正しく使
しかないが、班員全員 い、スクリーンを観察し
に観察させる。
ている。
(生徒観察)
・箱カメラで絵を観察し、スケッチする。
・目に入る光の軌道を確認する。
盲斑で像が結んだ場合、どのように見えるでしょ
うか?
・盲斑を確認する。
・盲斑を見つける事が B:盲斑で像が結んだ場
できない場合があるこ 合について考察すること
ができる。
とも確認させる。
(机間指導、ワークシート)
・本時のまとめをする。
・本時の自己評価をする。
・次時の予定を確認する。
評価の観点…(A)意欲・関心・態度 (B)思考・判断・表現
(C)技能
(D)知識・理解
研究授業および協議会記録
1.研究授業
教科・科目
理科・生物Ⅰ
授業者
佐々木悠華
(10月11日 木曜日 6校時)
授業対象生徒
2年H組(33名)
2.研究協議会
出席者
坂本卓也 細井才智 杉渕拓夫 大沼克彦 羽川尚
佐々木由貴子 上田一子 松田美保子 小松清高
場所
生物実験室
石戸将太 平塚祥広
授業者の反
教材・問いかけ・家庭学習の定着をテーマに授業を実践した。盲斑の問いかけでは
省・感想
見えることを前提としてしまったため、生徒の回答をうまく引き出すことができなか
ったことが反省点である。
教材については箱カメラなどを製作し、生徒の興味や関心が良く引き出されたと思
う。
協議内容
参観した先生方による意見は以下のとおり
良かった点
・シートがシンプルで見やすい
教 材 準 備
・教材の手作り感
・発問に至るまでの流れ
意図的な発問
・生徒へのフォローの仕方
・プリントでの要点チェック
学習内容の定着
・次時へのつながりが明確
改善を要する点
・教材を提示するタイミング
・声量が一定である
・流れを生徒にあわせすぎ
・授業時間全体の配分
・まとめが急ぎすぎた
【その他意見】
・教材を生徒に製作させるのも良いかと思われる。製作することで単元の理解がより
一層深まることが期待できる。
・教材については非常に分かりやすかった。箱カメラを初めて覗いた生徒の反応が非
常に良かった。
・時間配分がもったいなかった。若干急ぎ足になり、生徒への次時の予告が不十分に
なってしまった。
【指導講評:藤澤指導主事より】
非常に優れた授業を参観させていただいた。生徒とのコミュニケーションが十分に
取れた素晴らしい授業だったと感じている。教材については分かりやすく、興味を引
き出せる内容が盛り込まれており、生徒の学力レベルにあわせた授業の展開がなされ
ていたように感じている。予習や復習を意識した発問もみられ、次時の予告に生徒が
興味を引かれるよう、計算された内容であったと思われる。
一方で、生徒の学力にバラツキが見られる事から、全ての生徒が今回の授業で満足
したとは思っていない。発問レベルを段階的に上げ、多様な学力をもつ生徒それぞれ
が興味関心を引きだされるものであればより優れた授業となると思われる。
十分な初任者研修をとおしてレベルアップしている姿に安心した。これからも研修
をつづけ、頑張ってもらいたいと願っている。
司会者 坂本卓也
記録者 平塚祥広
農業科(野菜)学習指導案
日
時:10月11日(木)6校時
対
象:農業科学科2年野菜選択者
場
所:特 別 教 室 1
指導者:古
戸
毅
教科書:野菜(実教出版)
1
単
元
第5部
2
名
葉や茎を利用する野菜の栽培
第6章
ネギ (教科書:実教出版
野菜)
単元の指導目標
茎や葉を利用する野菜の生育過程とその栽培環境を把握し、栽培に必要な知識と実践的な技術を習得
するとともに、消費者ニーズに即した野菜づくりの重要性を理解させる。
3
単元の評価基準
(1)ネギの栽培に関心を持ち、発表をよく聞き、主体的に学習できる。
(A)
[関心・意欲・態度]
(2)土寄せや軟白の意味、病害虫名を覚えることができる。
(B)
[思考・判断・表現]
(3)発表やスライドを見て文と図で学習プリントに記入することができる。(C)
[技能]
(4)栽培管理及び環境保全、病害虫予防の大切さを理解することができる。(D)
[知識・理解]
4
単元の指導計画
(1)ネギの生育過程と特性・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間
(2)ネギの栽培管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1時間(本時)
(3)商品価値を高める栽培技術と評価・・・・・・・1時間
5
教材選択の理由
本校の露地野菜部門では販売用のネギを生産しており、生徒も圃場において栽培実習を行っている。
教室で学んだことが圃場での体験学習に活かされ、生徒自身により検証することが可能となるため。
6
生徒の実態
男子7名、女子4名の計11名である。男子は率先して圃場での実践学習に励み、女子は充実した学
習記録を記す生徒が多い。全体的に落ち着きがあり、男女協力して学習活動に取り組む。理解力にも富
んでいるためこれからも期待したい。
7
本時の計画
(1) ねらい
①ネギにおける土寄せの必要性を理解させる。
②主なネギの病気及び害虫とその症状、環境に配慮した防除方法を理解させる。
③グループで作成した資料を用いて全員が協力して発表に関わる。
(2) 教材・機器
各班で作成したプリント資料、PC、プロジェクタ、スクリーン等
(3) 学習過程
学
導
入
活
動
指 導 上 の 留 意 点
評価の観点と規準
・ネギの生育過程と特性について確認 ・授業の準備ができているか確認する。
する。(前時の学習内容確認)
5
分
習
・前時の内容を復習する。
ネギの種子と苗、畑の準備、植え付けについて発問する。
・3つの班(グループ)に分かれる。
(A)
・本時のねらいを確認する。
・グループに女子が入るようにする。
・軟白部分を作るには何が必要なのか ・実物を使って軟白部分を説明する。
1班全員が協力し
を事前学習した1班が発表する。他
の班員は資料に内容を記入する。
・軟白部を作る作業を記入させる。
軟白部をつくるための作業内容と必要回数を答えてください。
展
て発表に携わる。
(B、C)
・PC、プロジェクタを使ってネギの (PC操作は指導者)
主な病気の名前と症状、防除方法 ・各班で作った学習プリントに名前や
開
について 事前学習した2班が発表
症状・害虫をスケッチし、防除法を
する。他の班員は資料に内容を記入
記入させる。
2班全員が協力し
て発表に携わる。
する。
ネギの病気とその防除方法には何がありますか。
(B、C)
40 ・ネギの主な害虫の名前と特徴、防
分
除方法について2班と同様に 事前 ・机間巡視をし、必要に応じてヒント
学習した3班が発表する。他の班員
を与え、アドバイスをする。
て発表に携わる。
は資料に内容を記入する。
ネギの害虫とその防除方法には何がありますか。
整
理
(B、C)
・重要ポイントを記入・チェックし、 ・学習プリントに重要点を記入・チェ
本時の自己評価を記入する。
5
分
3班全員が協力し
ックさせ、土寄せ・軟白、病害虫に
ついて留意点を記入させる。
・次時の学習内容を把握する。
・氏名を記したプリントを回収する。
(D)
校内研究授業および協議会記録
1 研究授業
(平成24年10月11日 木曜日)
教科・科目
農業 野菜
単元・題材
第5部葉や茎を利用する野菜の栽培 第6章ネギ
授 業 者
古戸 毅
対象生徒
2年 ABC 組(11名) 場所 特別教室1
2
研究協議会
出 席 者
授業者の
反省・感想
高橋寿徳
小林和成
佐々木鶴善 高橋恵二 佐々木優子
柏木公平 冨田和樹 工藤浩孝
藤井亨
山代和也
瀬田川司
①今後の実習で検証するために行った。
②グループで調べ学習を行った方が効果が高いと思い実施した。
③生徒は嫌がらずに準備をやってくれた。放課後もやるグループもあった。
④自分達でやりたい部分で調べて作った。
⑤時間配分はうまくいった。
⑥元気の無い生徒がいて残念だった。
協議内容
参観者からの感想
・生徒主体で良い授業だった。発問は広がりのある内容のほうが良いと思う。
・グループ学習はよいと思う。他グループの発表を聞くことで良い刺激になって
いた。
・作業と座学が相まって実習によい影響を与えると思う。
・実物を使っており、良かった。
・農薬に説明があっても良かった。
・もう少し突っ込んだ内容もあって良かったと思う。
・机間巡視で抜け目ないチェックがなされていた。
・事前準備が良かった。きちんとまとめられていた。
・発表後の質問に応用的な物があれば良かった。
付箋を利用した情報交換より
○・生徒が良く発表していた。
・実物の活用、パワーポイントの活用が良かった。
・全員が発表していた。
・生徒同士の発問があった。
・生徒の分担が良くなされていた。
・良くほめていた。
・しっかり自己評価をしていた。
・まとめに入るタイミングが良かった。
×・生徒の元気さが足りない。緊張していたか。
・指名は発問の後のほうが良い。
・プレゼンテーションを見ていない生徒がいる。
・写真が不鮮明で分かりづらい。
・パワーポイントの操作は生徒にやらせたい。
・確認の机間巡視がなされていない。
司会者
高橋寿徳
記録者
藤井亨
農業科(畜
産)学習指導案
日
時:平成24年10月11日(木)6校時
教
室:視聴覚室
対象生徒:農業科学科2年生物生産系列畜産選択
授 業 者:田口 健一
教 科 書:畜産(農文協)
1.単元名
養豚
2.単元の目標
・ブタの飼育に関心を持ち、ブタの飼育に意欲的に取り組ませる。
【関心・意欲・態度】
・ブタの体験的、継続的な飼育活動と、観察、実験、調査・記録などの学習を通して、ブタの生理・
生態や畜産物の生産に適した飼育環境と生育の相互関係について考察させる。
【思考・判断・表現】
・ブタの飼育と、養豚経営に必要な技術を習得させる。
【技能】
・ブタの飼育に関する知識を身に付けさせ、ブタの特性や飼育環境を理解させる。
【知識・理解】
3.指導に当たって
(1)生徒の実態
男子7名、女子7名の構成である。非農家出身の生徒が多いが、畜産・動物については興味を
持っている生徒が多く、座学、実習ともに積極的に取り組んでいる。
(2)指導方針・方法
・繰り返しの指導や班活動に力点を置きながら、スケッチや発問、小テスト等によって到達度を確認
する。実習と座学をリンクさせる。
・家畜の飼育の経験が全くない生徒に対して、多くのことを体験・探求し、生命の尊さ、農業の重要
性を学ばせ、農業の良き理解者になってくれることを期待する。
・実習では、安全面において十分に配慮する。
(3)教材選定の理由
本校では産業動物であるブタを飼育しており、体験的、継続的な飼育活動と、観察、実験、調査、
記録などの学習活動が可能であるため。
4.単元の指導計画(総時数 20時間)
第一次 ブタの体の特徴・ブタの一生
(2時間)
第二次 ブタの品種と改良
(3時間)
1時 ブタの起源、品種と改良・ ・ ・ (本 時)
2時 改良目標と審査・登録
第三次 飼育形態と施設・設備
(1時間)
第四次 子豚の生理と飼育技術
(3時間)
第五次 肉豚の生理と飼育技術
(4時間)
第六次 繁殖豚の生理と飼育技術
(4時間)
第七次 ブタの衛生と病気
(1時間)
第八次 養豚経営とその改善
(2時間)
5.本時の学習(第二次)
(1)本時のねらい
・ブタの起源と養豚のあゆみ、品種とその特徴を理解させる。【知識・理解】
・積極的にグループ討議を行い、その内容を発表させる。【思考・判断・表現】
(2)準備・資料等
教科書、パワーポイントによるスライド
(3)本時の展開
時
間
学習内容
生徒の学習活動
・前時の学習内容
導
評価基準
【観点】
(評価方法)
・発問によって前時の理解度を
の再確認
入
教師の指導・支援
確認する。
ブタの体の特徴、消化器と食性について発問する。
10
分
・本時の学習内容
と目標の確認
・ブタの起源
・学習の要点と本時の目標を確認
・学習内容の要点をまとめる。
する。
・ブタはイノシシを家畜化したも
のであることを確認する。
なぜ、イノシシを家畜化したのですか。
・グループ討議(討議時間は 3 分、 グループで考えさせる。その
各班の発表者が発表する。
間、机間指導を行う。
・イノシシを家畜化した理由を
説明する。
展
・品種とその特徴
・主要六品種とその特徴(外観、
原産地、タイプ等)を理解する。
開
・・・①
・スライドを使って、品種の特
徴を説明する。
・・・②
・中型種、大型種、ミートタイ
プ、ベーコンタイプについて
30
・品種とその特徴を理
解している。
【知識・理解】
ノート
解説する。
分
なぜ、日本で飼育されているブタは雑種が多いのですか。
・グループ討議(討議時間は 3 分、 ・グループで考えさせる。その
各班の発表者が発表する。
・日本で飼育されているブタのほ
とんどが雑種であることを理解
する。
間、机間指導を行う。
議に参加し、その内
・一代雑種、三元交配、雑種強
勢について解説する。・・・③
・雑種の利点を説明する。
・・・④
ま
・学習のまとめ
・学習内容を整理・確認する。
と
・波線部①∼④のポイントにつ
いて発問しながら確認する。
め
10
分
・次時の予告
・次時の授業内容を理解する。
・積極的にグループ討
・次時の授業内容を説明する。
容をきちんと発表で
きる。
【思考・判断・表現】
研究授業および協議会記録
1.研究授業
教科・科目
農業 畜産 「養豚」
授業者
田口健一
授業対象生徒
(10月11日 木曜日 6校時)
2年 ABC 組(14名) 場所
2.研究協議会
出席者
小松万里子 冨樫久雄 山本力 高久育宏 奥健悦
三嶋登忍 黒田一久 守屋拓 荒川潤 佐藤潤之介
視聴覚室
照内之尋 三浦薫
授 業 者 の 反 ① 現物を使用できない代わりに、通常の授業でもカラー等のスライドを使用。
省・感想
② 進度は概ね予定通りであり、区切りが良かった。
③ テーマとしては面白さに欠けるが、グループ討議でお互いの意見を話し合わせるの
は良かった。もう少し生徒に動きがあれば良かった。
④ 授業中の態度等は日頃から意識して取り組んでいる。
⑤ 指導案に盛り込んだ内容に関しては少し多かったと思う。
協議内容
1. 前時の定着については、復習がなされていて授業中の雰囲気も良く楽しそう
であった。
2. 意図的な発問の工夫については、段階的に質問をしていた。
3. 返事や起立などの授業態度については、日頃の指導が行き届いている実感が
感じられた。
4. グループ討議については、各班ともに活発な意見が出ており授業者も全体的
な意見を吸い上げていた。
5. その他として、パワーポイントによる視覚上の効果があった。生徒に品種の
説明をさせるなど、生徒の動きをもう少し取り入れたほうが良かったなどの意
見があった。
テーマ研究〈意図的な発問の工夫について〉
1.一問一答の質問ではなく、答えが複数あるような生徒に「考える質問」が発問で
あるので、工夫が必要ではないか?
2.生徒から質問が来るような展開に持ち込むにはどのような工夫が必要か?
大山指導主事からの指導助言
1.日頃の指導が行き届いていると強く感じた授業であった。
2.質問とは「事実の確認」をすることであり、発問とは「考えて表現」させる
ことである。心をゆさぶる発問の工夫をして欲しい。
3.1時間内において発問はそう多くない。
「核になる発問」を工夫して欲しい。
4.講義式の授業でも悪くはない。生徒に学ぶ意欲があれば問題はない。
司会者 小松万里子
記録者 照内之尋
校内研修「互見授業」実施要項
研修部
1.目
的 : 教員同士が、教科の枠を超えてお互いの授業を見合い、評価し合う
ことで授業の改善、授業力の向上を図る。
2.実施期間 : 平成24年 11月16日(金)∼ 11月22日(木)
3.手
順 :
授業者は事前に、「互見授業時間割」(中央白板に掲示)に、
自習や演習のみなど参観に適さないコマに朱で斜線を入れる。
参観者
①「互見授業時間割」を確認、参観予定を立てる。
②事前に授業者に参観する旨を伝える。
③期間内に1回は参観する。参観は、授業の最初から最後までとする。
④参観後、11月30日までに教頭先生に「 ※授業参観シート」を提
出。研修部でチェックの後、授業者へお渡しします。
授業者
⑤受け取った「参観シート」を見、参考になった評価等を「 ※互見授
業実施報告」に入力、授業改善のヒントを共有できるようにする。
※「授業参観シート」「互見授業実施報告」は共に〔大農校務ページ・研修部〕のフォルダに
あります。
「参観シート」は、手書きで提出、プリントして提出、どちらでも可。
「実施報告」は、ファイルに直接入力してください。提出不要。
「互見授業実施報告」
※
「(互見)授業シート」から参考になった評価などをご記入ください。
高低いずれの評価でも、授業改善に繋がると思われる点を挙げてください。
(1)良い点
・計算式の途中をどの項目に関しても全て記載したこと。
・どういうグラフになるのかのパターンを明記し、だからこうなると説明していたこと。
・ヒントを生徒に考えさせ、自由に発言していたこと。
・雑談も積極的な発言とし、昼食後の眠くなる時間帯を工夫していること。
・ただ、生徒に練習問題をさせるだけでなく、机間巡視を行い、理解しているどうかを
目で確認していたこと。
・本時の目標など全ての文字が大きく丁寧で、読みやすいです。
・机を向かい合わせたグループによる各種の実物を用いた演習形式の授業でした。
・グループ内で自由に意見を交換できる雰囲気を作っていました。
・生徒に自分が書いた付箋紙を黒板に出て貼ってもらう、生徒を動かす授業を展開していました。
・付箋はグループごとに違う色にしていることも工夫点です。
・堅くなく、柔らかい雰囲気で授業を進めてており、授業者に笑顔がありました。
・最初に本時の目標を板書していました。
・自ら挙手して教科書を読んでくれた生徒を褒めていました。
・実物を見せながら生徒の興味を引きつけていました。
・教師が指名をしなくても生徒全員が自由に思いついた答えを言えるような活気ある授業を展開していました。
・生徒が積極的に参加していた。
・語句説明の際の例がわかりやすかった。
・板書が丁寧であり、色分けも効果的であった。
・生徒の興味を引くプリントであった。プリント作りに工夫が見られた。
・器具の準備を事前にある程度まとめており、生徒がスムーズに準備に取りかかっていた。
・実験内容だけではなく、実験に入る心得(殺菌・除菌)の話があってとてもよい。=一番大切な部分
・注意する点(メスの扱い方など)をしっかり板書している。
・生徒の得意・不得意ま部分を見極めた上で不得意部分のフォローを丁寧にしていた。
・生徒の小さなつまずきにも根気よく他の例を挙げながら対応していた。
・図や写真の提示があり、生徒の興味を引いていた。
・発問や質問の仕方が工夫されていた。
・黒板の板書の色分けが工夫されていた。
・全体的に、丁寧な説明で生徒の理解や状況を把握しながらの展開だったので、わかりやすかったと思います。
・イラストを用いて授業を行っていたので、生徒はわかりやすかったと思う。
・授業全体の雰囲気がよく、日頃の生徒との関係づくりがうまくできていると感じました。
・書く、聞く、意見交換するという場面のメリハリのきいた授業でした。
・難しい題材をイラストなどを使って分かり易く解説していたと思います。
・プリントを利用した、要点のわかりやすい授業でした。また、本時の内容を理解できたか確認できるような演習問
題がありよかったと思います。
・HR クラスや男女の枠にとらわれずに行っており、普段から適切な指導がなされているように感じられた。
・技術的な課題がしっかりと提示され、生徒が意欲をもって取り組みやすい授業になっていた。
(2)改善すべき点
・添加物の記された付箋紙の上に商品名を記せば、そのイメージにより更に添加物の理解が深まると感じました。
・グループ演習時など時々机間巡視をすると細かな状況を把握できます。生徒に声をかけ、ヒントを言ったりアドバ
イスをすることもできます。
・生徒を指名する場合、名前に君やさんをつけて呼んだ方がよいと思います。
・黒板を消すとき、前記したものを消していいかどうか生徒に聞いて確認してから消す方がよいと思います。
・授業のはじめに私語やざわつきがあったので、チャイムが鳴り挨拶後は生徒が授業に集中できるように早めに注意
をするとよいです。
・一問一答の質問が多かった。発問の工夫が必要。
・同じ生徒の発言が多かった。指名して答えさせることも必要。たくさんの生徒に発言の場を設ける工夫がほしい。
・発問に起立しないで答えた生徒がいた。
・つまずいている生徒・つまずきそうな生徒へのケア(机間指導だけでは時間がたりない?)・・・得意な生徒の力を
借りられないか。
・授業の進め方がもう少しゆっくりでもよかったのではないか。
・進度の速い生徒が手持ちぶさたな様子だったので、そのような生徒への指示がもう少しあればよかったと思います。
・もう少し生徒への発言を求めても良かったと思います。
・学校での露地野菜や施設野菜、作物などの事例も踏まえながら身近で取り組んでいる作付け方法の紹介もあればよ
かった。
・常に近い距離感のため、生徒の緊張感に欠ける面は否めない。実験の授業で、教師サイドからの指示を聞き漏らし
ている生徒が見受けられた。
・問いかけに対して、特定の生徒が答えていることが多かったので、時々こちらから生徒を指名する機会があっても
よい。
・意見を発表させる(共有させる)際の、意見を聴く側にもっと意識付けをしなければいけないかもしれない。
・柔道場で、クラス全員が同時に練習すると接触し怪我をする可能性もあるので、内容によっては見取り稽古をさせ
安全なスペースを確保する。
・ペアワークのところ(読みと和訳)のところで、声とあまり聞こえないペアがあったので、もう一度いわせるなど
してみんなに聞かせる意識をもって発表するようにさせては。
・ワークシートに生徒が感想を記入する場所があれば良いと思う。
・この一時間の授業で、どこまで到達できればよいのかという目標をもう少ししっかりともたせると良いと思う。
・キーワードの関連を図示する際、白紙からの取りかかりでなく、手がかりとなるものを提示して、そこを起点に配
置していく方が考えやすいと思う。
・ALT の英語での指示を理解していない生徒が多い中、活動が始まった場面では、繰り返したり言い換えたりする
時間が必要だと思う。
・もし時間があれば生徒に図解を説明させる場面があっても良いのではないかとおもった。
(3)その他気づいた点
・生徒を動かす授業を展開していきたい。
・生徒のノートがとてもきれい(色、定規をしっかりと使用している)にまとめられていた。
・教科書は初版のものが内容の改訂のないまま 10 年近く使用されているので授業者がオリジナルで工夫しないとい
けず苦労されていると思いますが、生徒が興味・関心をもてるように工夫されている授業でした。
高等学校初任者研修を終えるにあたって
理科
Ⅰ
佐々木悠華
はじめに
4月に本校に赴任し、まもなく 1 年が経過する。私はこれまで講師の経験はあったが、初任
者研修や日々の業務に取り組む中で、自分がまだまだ未熟であり学ばなければならないことが
多いことに気づかされた。この初任者研修で得たものは、これからの教育活動の土台になるも
のであり、今後十分に活用していきたいと考えている。1年間の研修について報告する。
Ⅱ
校内研修
校内研修においては校務分掌に関する研修、また教科指導に関する研修などを通して様々な
内容について、校長先生をはじめ多くの先生方に丁寧にご指導頂いた。まだまだ勉強不足な面
も多々あるが、この研修で学んだ知識・技術を今後の勤務に活かしていきたい。
A 一般研修
学校管理、総務部、教務部、生徒指導部、特別活動部、キャリア教育部、保健部、図書部、
教育情報部、研修部、学年部 よりご指導いただいた。
B 教科研修
授業参観と研究協議、研究授業と研究協議、担当教科の年間目標と年間指導計画、
1学期の評価と2学期指導計画の検討、2学期の評価と3学期指導計画の検討、
指導目標の具体化と教材提示のあり方、評価方法と評価規準、考査問題の作成と検討、
教材研究の進め方と学習指導案の作成、学習効果を上げるための工夫と留意点、
学習指導案の作成、生徒の学力の実態把握、コンピュータを活用した授業の工夫、
生徒の活動と学習形態の工夫、導入の工夫と授業構成、授業評価と授業改善、
生徒理解と学習指導の工夫、視聴覚機器と視聴覚教材の工夫、
年間の教科研修の成果と課題
Ⅲ
以上の内容について研修を行った。
校外研修
研修名
授業研修A
授業研修B
授業研修C
研
修 内 容
研修内容:他教科の模擬授業参観と研究協議
研修内容: 全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表会秋田県大会へ
の参加、定時制課程の授業参観
於:秋田明徳館高等学校
研修内容:他校での授業実践と研究協議(単元 細胞性免疫と体液性免疫)
於:秋田北高等学校
特別支援
学校訪問
研修内容:特別支援学校での授業参観と授業参加
於:大曲養護学校
研修内容:PAの理論と体験、アイスブレイク・イニシアティブ・フルバ
PA研修
リューコントラクト・体験学習サイクル等の実践
於:岩城少年自然の家
講座Ⅰ
講座Ⅱ
講座Ⅲ
講座Ⅳ
講座Ⅴ
講座Ⅵ
講座Ⅶ
講座Ⅷ
研修内容:本県教育の現状、教育公務員の服務、教科指導の基本、情報活
用能力の育成
研修内容:教科指導の現状と課題、新しい学習指導要領の要点、教科指導
計画の作成
研修内容:教科における基本的な指導技術と授業展開、教科における評価
の内容と方法、授業で取り組む情報教育
研修内容: 付箋紙を用いたワークショップ型研究協議の進め方、中学校・
高等学校の模擬授業と研究協議、各校種との関連を踏まえた授業づくり
研修内容:安全教育と応急手当、問題行動の理解と対応や保護者との連携、
教育相談と人間関係づくり
研修内容:特別な支援を要する児童生徒への関わり方
於:天王みどり学園
研修内容: 理科の教育専門監・博士号教諭の授業参観、課題研究の取り
組みについて
於:横手清陵学院高等学校
研修内容:DVD授業ビデオによる授業研修、模擬授業による授業研修、
教科研修のまとめ
研修内容:教員のメンタルヘルス、「生きる力」と総合的な学習の時間、
講座Ⅸ
豊かな自己形成に資する道徳教育のあり方、特別活動の理解とホームルー
ム経営、キャリア教育の意義と進め方、いじめや不登校の理解と対応、男
女共同参画社会と学校教育、初任者研修を終えるに当たって
Ⅳ
終わりに
この1年はあっという間に過ぎ去ってしまったように思える。久しぶりの学校現場での勤務
であるため、流れがつかめずに右往左往したことが多かったと反省することが多い。初任者研
修の閉校式で観阿弥口伝・世阿弥編集「風姿花伝」には、「一旦勝つときは、人も思ひあげ、
主も上手と思ひ始むるなり。これ、かへすがへす主のための仇なり。これも真の花にはあらず。
…このころの花こそ、初心と申すころ…されば、時分の花を、真の花と知る心が、真実の花に、
なお遠ざかる心なり。」とあるように、自分自身に力がついてきたと感じてもうぬぼれず、研
鑽に励みなさいというお言葉をいただいた。その激励を胸に日々学ぶ姿勢を忘れず、教師とし
ての力量を高めていこうと思う。
最後に、この1年間初任者研修でご指導頂いた諸先生方に重ねて感謝申し上げると共に、そ
の労苦に報いるために、日々尽力していきたい。
農業科〔 畜 産 〕学習指導案
日
時:平成24年9月10日(月)2校時
教
室:選択1号教室
対象生徒:生物資源科2年農業コース
授 業 者:田口 健一
教 科 書:畜産(農文協)
1.単元名
養鶏
2.単元の目標
・ニワトリの飼育に関心を持ち、ニワトリの飼育に意欲的に取り組ませる。
【関心・意欲・態度】
・ニワトリの体験的、継続的な飼育活動と、観察、実験、調査・記録などの学習を通して、ニワト
リの生理・生態や畜産物の生産に適した飼育環境と生育の相互関係について考察させる。
【思考・判断・表現】
・ニワトリの飼育と、養鶏経営に必要な技術を習得させる。
【技能】
・ニワトリの飼育に関する知識を身に付けさせ、ニワトリの特性や飼育環境を理解させる。
【知識・理解】
3.指導に当たって
(1)生徒の状況
男子 12 名、女子 11 名の構成である。非農家出身の生徒が多いが、畜産・動物については興味を
持っている生徒が多く、授業中は活発であり、明るく素直な生徒が多い。
(2)指導方針・方法
・繰り返しの指導や班活動に力点を置きながら、スケッチや発問、小テスト等によって到達度を確認
する。実習と座学をリンクさせる。
・家畜の飼育の経験が全くない生徒に対して、多くのことを体験・探求し、生命の尊さ、農業の重要
性を学ばせ、農業の良き理解者になってくれることを期待する。
・実習では、安全面において十分に配慮する。
(3)教材選定の理由
本校では産業動物であるニワトリを飼育しており、体験的、継続的な飼育活動と、観察、実験、
調査、記録などの学習活動が可能であるため。
4.単元の指導計画(総時数 20時間)
第一次 ニワトリの品種と改良
(2時間)
第二次 ニワトリの栄養と飼料
(3時間)
第三次 種卵の採取とふ化 ・ ・ ・ (本 時)
第四次 ひなの生理と育すう
(3時間)
第五次 採卵鶏の生理と飼育技術
(3時間)
第六次 ニワトリの衛生と病気
(4時間)
第七次 養鶏経営とその改善
(4時間)
5.本時の学習(第四次)
(1)本時のねらい
種卵の採取方法、ふ化の進み方、転卵、検卵の意味と必要性を理解させる。【知識・理解】
(2)準備・資料等
教科書、パワーポイントによるスライド、検卵器
(3)本時の展開
時
間
学習内容
導
入
10
分
生徒の学習活動
教師の指導・支援
評価基準
【観点】
(評価方法)
金足農業高校で飼育しているニワトリの品種は何ですか。
・ニワトリの品種
の確認
・金足農業高校で飼育しているニ
ワトリの品種を確認する。
・ニワトリの品種について発問
する。
〈スライドで主な品種を確認〉
・学習内容と本時
の目標の確認
・種卵の採取につ
いて
・学習の要点と本時の目標を確認
・学習内容の要点をまとめる。
する。
・種卵(受精卵)は雄と雌の交配
で得られることを理解する。
・交配の仕方、種卵の条件、貯
卵の方法について説明する。
…①
種卵の採取方法、ふ化
の進み方を理解してい
ニワトリの卵は何日でふ化しますか。
る。
【知識・理解】
・ふ化
・ふ化の進み方を確認する。
・卵からひなになるまでをスラ
ノート
イドを使って説明する。
〈ふ化までの日数は 21 日〉
展
…②
・ふ卵器の仕組みを理解する。
・ふ卵器の説明をする。
・転卵の必要性を理解する。
・転卵を説明する。
転卵、検卵の意味と必
〈胚と卵殻膜の癒着を防ぐ〉
要性を理解している。
開
…③
30
・検卵について理解する。
分
・実物の検卵器で説明する。
〈無精卵や発育を中止したも
のを取り除く作業〉…④
・初生びなの雌雄
鑑別
・ひなの雌雄鑑別の方法を理解す
る。
・スライドを使って初生びなの
雌雄鑑別の方法を説明する。
〈肛門鑑別法と羽毛鑑別法〉
…⑤
なぜ雌雄鑑別が必要なのですか。
ま
・学習のまとめ
・学習内容を整理・確認する。
と
・ポイント(①∼⑤)について
発問しながら確認する。
め
10
分
・授業の感想を書く。
・巡回しながら感想の記入状況
やノートを確認する。
【知識・理解】
ノート
特定課題研究レポート
所
属
校
研 究 分 野
研究テーマ
秋田県立大曲農業高等学校
職・氏名
教諭
田口 健一
A 教科指導
B 学級・学年・学校経営
C生徒指導
D 進路指導
E 特別活動に係る指導
F総合的な学習の時間に係る指導
G 特別支援教育に係る指導
H その他
プロジェクト学習法を用いた部活動生徒の意欲を引き出す指導の工夫
1.研究の概要
a.テーマ設定の理由
農業教科の教員として、本校に勤務して5年目になり、畜産部の顧問としては2年目となる。畜産部
の指導は毎年試行錯誤の繰り返しである。特に決まった活動が無く、日々の飼養管理と夏場の乾草上げ
が主な活動であったため、部員達に目標や向上心を持たせることは容易でない状況であった。各種行事
やイベントなどにも参加してはいるが、生徒の自主的、主体的な活動を促がすような指導がなかなか出
来ていないのが現状である。そこで、プロジェクト学習の手法を用いて、目的を持って、やる気のある
部活動ができる研究に取り組むこととした。
b.対象生徒
畜産部員9名 (3年生5名、2年生2名、1年生2名)
c.研究方法
4月から森林技術センターの指導、秋田県立大学の協力の下研究を開始した。秋田県のきのこ菌床栽
培は、栄養剤の大半を外国産に依存しており、食の安全面や生産コストなどの問題を抱えている。そこ
で、秋田県産の米糠や酒粕、規格外大豆等を栄養剤として用い、生産コストの低下はもとより、オール
秋田県産の培地による安全・安心かつおいしいきのこの栽培に挑戦することにした。
この取り組みを、秋田県学校農業クラブ連盟プロジェクト発表会で発表し、上位大会を目指す。また、
オール秋田県産の培地によるきのこ栽培の方法を確立し、生産から販売までを一体化する。一体化によ
り付加価値を高め、地域産業を支え、地域産業の活性化に尽力する。
2.成果と課題
この研究によって多くの発表の場が与えられ、生徒の自信につながったと感じる。3年生に関しては
4名が農業系の大学に進学、1名が農業組合法人へと就職するなど、キャリア教育へもつながった。生
徒とともに私自身も、この研究を通して多くの人たちと巡り会い、成長することができた。生徒のやる
気を引き出すには、我々指導者が熱意を持って取り組むこと、そして、生徒とともに楽しみながら取り
組むことが大切だということを実感した。今後は、開発した培地を生産量の多いシイタケに応用できる
かという研究を進めるとともに、開発した培地の効果的なPRの方法も考えていきたい。
[主な成績・成果]
・平成24年度秋田県学校農業クラブ連盟プロジェクト発表会区分「食料・生産」 最優秀賞
・平成24年度日本学校農業クラブ東北連盟大会プロジェクト発表会区分「食料・生産」 優秀賞
・平成24年度第22回秋田県高等学校産業教育フェア研究発表会 最優秀賞
・東北森林学会第17回大会ポスター発表
・日本きのこ学会第16回大会プレゼンテーション発表
・イオン主催 Eco−1(エコワン)グランプリ秋田県代表
本校創立120周年記念生徒海外研修事業
"G'day! Aussie Farming"について
( グッダイ! オージー・ファーミング)
大農グローバル化推進委員会
柴
田
孝
博
【事業の概要】
1.期
間
平成24年8月5日(日)∼8月11日(土)
7日間(現地4泊)
2.研修先
オーストラリア
ニュー・サウス・ウェールズ州
3.研修団
農業科学科
生物工学科
生活科学科
生活科学科
3A 竹原修一郎
3S 佐々木一馬、堀江杏奈
3H 小松美里、佐々木礼奈
2H 佐藤里美
※参加の条件
以上6名
①農業への興味・関心の高い者
②英検3級相当以上の英語力を有する者
③心身ともに健康で、協調性に富み、規律ある生活ができる者
④異文化理解に意欲のある者
4.引率者
柴田孝博(英語科)、藤井
5.参加費
8万円 (1人に係る経費は約30万円。残りは周年事業費からの補助)
※パスポート取得費、ETAS申請費、旅行傷害保険料、その他旅行準備にかかる費用は
自己負担とする。
6.日
亨(農業科)
程
8月5日(日)
8月6日(月)
8月7日(火)
8月8日(水)
・12:30 秋田空港集合
・7:30 シドニー空港着
・お別れセレモニー
・午前:農業体験
・秋田空港∼羽田空港
・ハールストン農業高校へ
・ファームステイ先へ
・午後:シドニー市へ
・19:50 成田空港発
(交流、授業参観、実習体
シドニー空港へ
(農業体験、交流等)
験等)
〈機中泊〉
〈学校の寮泊〉
〈ファームステイ先泊〉
8月9日(木)
8月10日(金)
8月11日(土)
・早朝:シドニーマーケット
・8:15 シドニー空港発
・8:00 ホテル出発
(卸市場)見学
・17:05 成田空港着
・11:40 羽田空港発
・シドニー市内自主研修
〈シドニー市内泊〉
(市内自主研修)
〈シドニー市内泊〉
・12:45 秋田空港着
〈成田空港周辺泊〉
・14:00 学校着、解散
7.その他
1)ハールストン農業高校へのお土産は桜皮丸色紙掛(1万円相当)とお菓子にした。
2)研修団員任命式 6月22日(金)
3)事業説明会(生徒・保護者対象)
7月6日(金) 午後5:30∼
4)生徒事前研修 *別紙のとおり
5)研修報告会 8月21日(火) 始業式後
Ⅰ
はじめに
本校が創立120周年を迎えるにあたり、当時の近孝夫校長より生徒の海外研修を事業の柱に据えた
いという意向を受け、「英語が話せる大農生」を生徒の努力目標に掲げている本校にとって念願の海外
交流が実現することとなった。
Ⅱ
研修先・交流先の選定
英語圏の高校で農業を通じて継続的に交流ができるよう、時差が少なく移動もしやすいオーストラリア
で農業高校を探していたところ、当時のALTリンカーン先生の協力のもと何校か見つけることができた。
その内の5校にメールで交流の依頼をしたところ、 Hurlstone Agricultural High School (ハールスト
ン農業高校)よりぜひ姉妹校として交流をしたいという返事をいただいた。昨年2月3日のことである。
ハールストン農業高校はシドニーから西に30㎞くらいのところにあり、2008年に創立100周年を迎え
た歴史のある学校である。酪農、野菜、果樹、園芸などを学習している一方で、選択科目に「日本語」も
ある。
本校にとって初めての試みであったため、スムーズに事業が進むように現地の高校での交流や農業
体験のノウハウを持っているJTB東北に仲介してもらうことにした。
Ⅲ
事前調査の実施
昨年の春休み期間中(3月28日∼4月1日)に、引率予定の柴田孝博、藤井亨と農業科小松万里
子、そして樫尾順子PTA副会長の4名で現地を訪問し、ハールストン農業高校との打ち合わせや視察
を行った。
この事前調査で、現地の治安や衛生面の良さ、ハールストン農業高校が広大な農場を持ち酪農を中
心としていることや海外からの生徒の受け入れに慣れていて大変フレンドリーであることを確認できた。ま
た、シドニー市場など生徒にぜひ見学させたい場所を見つけることができた。ただ、ファームステイについ
てはハールストン農業高校を通しての実施は難しいようだったので、JTBに依頼することにした。
*成田からシドニーまで飛行機で約9時間45分
*日本とハールストン農業高校のあるニュー・サウス・
ウエールズ州の時差は1時間(日本時間プラス1)。
シドニー市内
ハールストン農業高校のある
ニュー・サウス・ウエールズ州
グレンフィールド
Ⅳ
参加生徒募集と選定
シドニー国際空港
事前調査後に研修期間や日程等が決まり、4月のPTA総会で保護者に本事業について説明をし、
次のように参加募集を行った。
平成24年4月26日
生徒・保護者 各位
創立120周年記念事業実行委員会
委 員 長
小 西 省 吾
( 農 友 会 会 長 )
秋田県立大曲農業高等学校
校
長
矢田部
晃
創立120周年記念生徒海外研修事業
"G'day! Aussie Farming"参加募集について
1.目
的
1)姉妹校提携を予定しているオーストラリア・サウスウェールズ州 Hurlstone Agricultural
High School (ハールストン農業高校)での交流や授業(農業実習)体験、ファームステ
イや農業関係施設視察などを通して農業についての見識や国際的視野を広める。
2)他国の風土、文化、歴史、習慣、農業事情を体感し異文化を尊重する意識を高めると
ともに自国の文化を海外に伝える役割の一端を担うことにより、本校のグローバル化を
推進する。
2.期
間
平成24年8月5日(日)∼8月11日(土)
3.研修先
4.対象者
オーストラリア
7日間(現地4泊)
ニュー・サウス・ウェールズ州
本校在校生 6∼8名程度
※参加の条件 ①本事業の目的を理解し、農業への興味・関心の高い者
②英検3級相当以上の英語力を有する者
③心身ともに健康で、協調性に富み、規律ある生活ができる者
④異文化理解に意欲のある者
※参加希望者多数の場合、面接等で選考します。
5.引率者
6.参加費
7.日
本校職員
柴田孝博(英語科)、藤井
亨(農業科)
8万円 (1人に係る経費は25∼30万。残りは 120 周年事業費からの補助)
※この他にかかる費用は自己負担とする。
・パスポート取得費(11,000 円)
・ETAS(電子渡航許可システム)登録料($20 オーストラリアドル=約 1,700 円)
・旅行傷害保険料(8,000 ∼ 11,000 円)
・その他旅行準備にかかる費用
程
8月5日(日)
8月6日(月)
8月7日(火)
・11:00 学校発
・7:30 シドニー空港着
・お別れセレモニー
・秋田空港∼羽田空港
・ハールストン農業高校へ ・ファームステイ先へ
・19:50 成田空港発
(交流、授業参観、実習体 (農業体験、交流等)
シドニー空港へ
験等)
〈機中泊〉
〈学校の寮泊〉
〈ファームステイ先泊〉
8月9日(木)
8月10日(金)
・早朝:シドニーマーケット ・8:15 シドニー空港発
(卸市場)見学
・17:05 成田空港着
・シドニー市内自主研修
〈シドニー市内泊〉
〈成田空港周辺泊〉
8月8日(水)
・午前:農業体験
・午後:シドニー市へ
(市内自主研修)
〈シドニー市内泊〉
8月11日(土)
・ 8:00 ホテル出発
・11:40 羽田空港発
・12:45 秋田空港着
・14:00 学校着、解散
8.申込について
別紙「参加申込書」に必要事項を記入し、5月8日(火)までクラス担任に提出してください。
9.その他
・参加者決定後、5月下旬に保護者を対象に事前説明会を実施します。
・参加者は本校 ALT の協力のもとに事前研修(5回程度)と帰国後は報告会を行います。
・ご不明な点がございましたら、英語科柴田孝博までご連絡願います。
応募者は3年生10名、2年生4名、1年生1名と15名だった。予算の関係で候補者を6名に絞り込む
ための選考会を実施した。
《選考内容》
①作文 タイトル:「オーストラリア研修と私」 800字程度
②面接 ・本校のこと、農業に関すること、日本や秋田のこと、オーストラリアのことなど
・ALTによる英語の面接
選考委員は本校の「大農グローバル推進委員会」のメンバーに依頼し、作文、面接をそれぞれ評
価(点数化)してもらった。それをもとに職員会議で総合的に判断し、3年生男子2名、女子3名、2年生
女子1名の候補者を決定するに至った。
Ⅴ 出発前事前研修
事前研修ということで、以下のように学習会を6回行い、参加生徒が予備知識を得られるようにするとともに、
事務的な手続きの確認を行った。
4月に赴任したALTエイミー・バークレーが研修先であるオーストラリアのニュー・サウス・ウエールズ州の出身
であったことが大変幸運だった。様々な情報を得ることができ、またハールストン農業高校の担当者とのやりとり
でもずいぶん力になったもらった。
月 日
学習内容等
6月 7日(木)
パスポート申請について
担当:柴田孝
6月22日(金)
研修団任命式
時間:3:50∼(校長室)
備
考
学習オーストラリア研修への願い
講師:佐々木教頭
時間:4:20∼(第3情報室)
7月 3日(火)
学習オーストラリアの地理や歴史について①
講師:柴田ひろみ
時間:1:10∼2:10(特別教室1)
地理の教科書・地図帳持参
7月 4日(水)
学習オーストラリアの地理や歴史について②
講師:柴田ひろみ
時間:1:10∼(特別教室1)
地理の教科書・地図帳持参
7月 5日(木)
学習オーストラリアの酪農について①
講師:小松万里子
時間:1:10∼(特別教室1)
学習オーストラリアの文化や習慣について
講師:エイミー、レベッカ先生(大仙市CIR)
時間:3:00∼(特別教室1)
7月 6日(金)
英語辞書持参
学習オーストラリアの酪農について②
講師:小松万里子
時間:4:00∼(特別教室1)
事前説明会(生徒・保護者)
時間:5:30∼6:30(大会議室)
JTB東北の担当者来校
7月9日(月)
交流に向けてのネタ作り
∼27日(金) 日本文化紹介プレゼンテーション作成
時間:3:50∼(図書館、第1情報室他)
ドンパン節の歌と振り付け
7月10日(火)
① Homestay Application Form の清書指示
② ETAS の申請について
③旅行保険申込書の提出について
④外貨購入申込書の提出について
担当:柴田孝
7月20日(金)
結団式(終業式後)
英語辞書持参
火・木曜日は全員で行う
郷土芸能部の指導による
Ⅵ
研修の様子
1日目:8月5日(日) 秋田空港→羽田空港→成田空港→シドニー空港
秋田空港、天気は快晴。校長先生をはじめ先生方や保護
者の方々の見送られ秋田を出発した。海外渡航も飛行機も
初めてという生徒がいて、フライトの間終始緊張していたのが
見ていて気の毒だった。
19:50成田を出発。約10時間のフライトが生徒には予想
以上にきつかったようだったが、JALの機内食には満足して
いる様子だった。
2日目:8月6日(月) シドニー空港着→ハールストン農業高校
6:40シドニー空港着。入国手続きに1時間以上かかった。ハールストン農業高校のマーク先生が出
迎えに来てくれた。季節は冬の終わりだったが、寒いというよりは気持ちよい涼しさで、日本の秋晴れを思
わせる抜けるような真っ青な空が美しかった。
シドニー空港から車を走らせること30分、ハールストン農業高校に到着。同校は創立100年を越える
伝統校で、全校生徒約1000人の中高一貫校である。ニューサウスウエルズ州立の学校で選抜された
生徒が入学するので、卒業後は医師やエンジニアなどを目指して大学進学する生徒が多い。
レンガの外壁やきれいに手入れされた中庭など、とても趣きのある校舎が印象的だった。敷地面積は
なんと本校の10倍もあり、そのスケールの大きさには生徒たちも圧倒されていた。。
酪農が主流で、乳牛、ヤギ、ヒツジが多く、搾った牛乳は
シドニー市内に出荷しているとのことだった。
1時間ほど到着が遅れたため予定が変更となり、中学生
のクラスで秋田の紹介をすることになった。たどたどしい英
語での自己紹介と“あきたびじょん”のポスターを使って秋
田の紹介だったが、クラスの子たちは興味深く聞いてくれた。
また、ハールストンの生徒たちはとてもフレンドリーで、廊下
ですれ違う時も日本語であいさつをしてくれる子が多かった。
軽めのランチを摂った後、ハールストンの生徒たちと中国
からの中学生と一緒に車で30分のところにあるレビントン・
パストラル・カンパニーという牧場の見学に行った。
そこには約2000頭ほどの牛が飼育されていたが、搾乳状況や牛の健康状態などが全てコンピュータ
で管理されていて、農場というよりは工場という印象を受けた。
牧場から戻り、最初に予定されていた交流記念のしだれ桜
の植樹をケリー・ラットゥン校長先生と一緒に行った。このしだれ
桜の成長と共に両校の交流がずっと続き大きく花咲くことを願
っている。
スコーンなどのお菓子や飲物でafternoon tea timeを楽しん
だ後、日本から持参した実習服に着替え、学校の敷地内の施
設でハールストンの生徒に教えてもらいながら機械を使って搾
乳体験をした。50頭ほどの牛が6頭ずつ順番に搾乳され、搾ら
れた牛乳は大きなタンクに貯蔵、冷蔵され、シドニーに出荷さ
れるということだった。
その後、同じく生徒が農場を案内してくれ、生まれたての仔
羊や子ヤギなどと触れ合うことができた。
この日は学生寮に泊まることになっていたので、school
cafeteriaで夕食を食べた。カレーと甘∼いデザートだった。
夕食後に、マーク先生がキャンプファイアーに誘ってくれる
というサプライズがあり、中国の生徒達と一緒にマシュマロを焼
いて食べたり、南十字星を眺めたりという貴重な体験ができた。
寮の消灯時間は21:00と早かったが、寮生たちと日本の
アニメの話などで大いに盛り上がったとのことだった。
3日目:8月7日(火) ハールストン農業高校→ファームステイ
ポリッジやフルーツなどの朝食後、楽しみにしていた日本
語クラスで11名の生徒たちと交流。ドンパン節を一緒に踊っ
たり、日本語と英語を織り交ぜながら日本のことやオーストラ
リアのことを話したりした。生徒たちの日本語は上手く、すぐ友
達になることができたようだった。メールアドレスの交換もして
いた。
教室には漢字のポスターやこいのぼりなどの日本のものが
多く飾られており、日本語クラスの生徒たちは日本の文化や
日本が好きだと言っていた。大曲花火ポスター、色紙と小
筆、折り紙などをプレゼントした。
この交流の後、名残を惜しみながらハールストン高校を出発。ファームスティ先のホストファミリーと対
面し、2人1組で農家に泊まって農業体験をさせてもらった。
4日目:8月8日(水) ファームステイ→シドニー市内研修
1泊2日という短いファームステイを終えホストファミリーとお別れした後、残りの2日間はシドニー市内
を研修した。市内は高いビルなどが立ち並ぶ都市だったが、イギリスの植民地だった影響もあり建物のデ
ザインがヨーロッパ風だった。シドニー湾クルージングしながら
眺めた世界遺産にもなっている有名なオペラハウスの外観
はとても芸術的で、ハーバーブリッジとうまくマッチしていて生
徒たちもその素晴らしさに感動していた。
オーストラリア博物館では、歴史や文化を学べる展示の他
にぜひ生徒たちに見てほしい物があった。それは、本県出身
の南極探検家白瀬中尉がオーストラリアに寄贈した日本刀
の展示だった。入口付近に紹介ブースがあり、本県出身の
人がオーストラリアで友好的に紹介されていることは生徒た
ちにとってサプライズだったようだ。
5日目:8月9日(木) ファームステイ→シドニー市内研修
最後の農業研修は、シドニー市民の台所とも言えるパデ
ィス・マーケットの見学だった。ここは中国系のマーケットで、
多くの買い物客で賑わっていたが、売られている野菜や果
物はほぼ100パーセントオーストラリア産で、自給率の高さ
を実感した。
リンゴの品種「ふじ」なども売られていたが、日本のものと
比べるとずいぶん小ぶりだった。また、日本では店頭に並べ
られないような傷の付いたものなどもそのまま売られてい
た。
シドニー市内研修の最後は動物園。カンガルーはもちろ
ん、本物のコアラ、カモノハシやタスマニアン・ディビルなどの珍しい動物を見ることができたが、生徒たち
にとっては見学の時間が短かったようだ。
オーストラリア最後の夜は、シドニー湾を眺めながらの夕食と市内での買い物で過ごした。
6日目:8月10日(金) シドニー市内→シドニー空港→成田空港
オーストラリア出発の日は朝4時に起床し、まだ暗い中、前日市内ガイドをしてくれたチャールズさんに
シドニー空港に送ってもらった。空港でのチェックインなども親切に手伝ってくれたおかげで出国審査もス
ムーズに済んだ。
何のトラブルもなく、予定時刻にシドニー空港を出発し、一路成田空港へ。夕方の到着のため、成田
のホテルで一泊。久しぶりの日本食を堪能し、日本へ帰ってきたことを実感した。
7日目:8月11日(土) ホテル→成田空港→羽田空
港→秋田空港→解散
ホテルから成田空港へ移動後、リムジンバスで羽田空
港へ。11:40発日本航空1263便で秋田へ帰る。
空港に迎えに来た家族や先生方の顔を見たら、秋田に
帰ってきたんだなあと実感したのか、みんなほっとした表
情を見せていた。
事故や怪我等もなく無事に研修を終えることができたの
が何よりだった。
Ⅶ
最後に
海外研修をゼロから立ち上げるというのは想像していたより困難なことであることをあらためて実感した。
一番懸念していた交流相手となる農業高校を見つけるということについて、当時のALTの協力を得てあ
まり苦労なくできたことは幸いだった。
参加生徒の募集や選考、現地の高校との交流などについて他校の事例を参考にしてみたが、応募者
が多く、その選考方法について特に苦慮した。
本校にとって記念すべき第1回の海外研修は無事に、そして成果を得て終えることができたと思う。多
感な時期にある参加生徒は、オーストラリアという異国の地で様々なことを感じ取ってくれたようである。
農業のことだけでなく、自然に合わせて生活すること、環境を大切にすること、また、家族を大事にするこ
となど、日本人が失いかけていることも含めて。
今回の交流をきっかけにハールストン農業高校と姉妹校提携をし、相互に訪問し合うことを実現させ
たいと願っている。両校、そして生徒たちにとって有意義な交流となるよう、課題を解決しながら着実に
進めていきたいと思っている。
【参考資料1】
平成24年
月
日
創立120周年記念生徒海外研修事業
"G'day! Aussie Farming"参加申込書
大曲農業高等学校長 様
生徒氏名:
科
年
組
保護者氏名:
印
創立120周年記念生徒海外派遣事業"G'day! Aussie Farming"の募集要項に従って、
保護者の責任において参加を申し込みます。
◇
オーストラリアへ行ったことがありますか?
はい
◇
いいえ
パスポートは持っていますか?
はい
◇
/
/
いいえ
この先、本校で交流先の Hurlstone Agricultural High School (ハールストン農業高校)の
生徒を受け入れた場合にホストファミリーとしてあなたの家にホームステイは可能ですか?
可能
/
不可能
/
未定
◇
英検3級以上の資格があれば記入してください。
※
参加生徒の決定については、後日あらためて連絡いたします。
【参考資料2】
平成24年6月
同
意
日
書
創立120周年記念事業実行委員会委員長 様
秋田県立大曲農業高等学校長 様
創立120周年記念生徒海外研修事業"G'day! Aussie Farming"の趣旨に賛同し、
参加することに同意します。
生徒氏名:
科
年
組
保護者氏名:
印
【参考資料3】
任 命 書
竹原修一郎さん
あなたを秋田県立大曲農業高等学校
創立120周年記念生徒海外研修事業
“G'day! Aussie Farming"の研修団
員に任命します
平成24年6月22日
秋田県立大曲農業高等学校
創立120周年記念事業実行委員会
委員長
校 長
小 西
矢田部
省
吾
晃
【参考資料4】
ハールストン農業高校訪問時の本校校長からハールストン農業高校校長への親書
1st August, 2012
Dear Ms. Kerrie Wratten,
As the Principal of Omagari Agricultural High School it gives me great pleasure to write to
you regarding this year ’ s agricultural exchange. The teachers and students at our school are
honored to be affiliated with your school. Both of our schools have a long history and I hope
that through international exchange we can learn many things from one another.
This year marks our schools 120th anniversary. As our school moves forward into the next
phase we hope to make globalization our first priority. It was our former Principal who
wanted to establish a partnership with your school. With your cooperation we are proud to
finally see this come into fruition. We hope to encourage students from both schools to
participate in an annual exchange. If possible it would be greatly appreciated if we could
receive some type of written acknowledgement of this agreement.
This year 6 students from our school and 2 teachers will visit your school. Our students are
looking forward to learning about agricultural practices in Australia. We hope that during
their stay they will successfully strengthen ties between our schools.
I hope that this year marks the beginning of a long and prosperous relationship.
Best wishes for your continued health, happiness and success.
Yours Sincerely
Akira Yatabe
Principal of Akita Prefectural Omagari Agricultural High School
P T A 研 修 会
日
時:平成24年11月11日(日)
9:00∼15:00
内
容:校内施設(農場・演習林含む)・奥羽山荘・太田分校の見学
参 加 者:保護者13名・職員6名
見学日程:9:00 学校集合∼9:10 校地内施設および金谷農場見学(案内:守屋先生)∼10:15 大嶋
農場見学∼11:00 仁応治演習林見学∼11:25 農業科学館見学∼12:45 奥羽山荘昼食休憩
∼14:00 太田分校見学(案内:加納教頭先生)∼15:00 学校到着・解散
(写真左:大嶋農場畜舎へ
牛や豚との対面で「うちの子が可愛がってるんです」と喜ぶ保護者
も。移動のバスの運転手さんも元保護者だったようで懐かしそうに眺めていました。
)
(写真右:農業機械倉庫にて
一般家庭では滅多に使わない機械に「なんぼしたすか」と経営者
の一面を見せる保護者に守屋先生もたじたじでした。)
感
想
毎年のように保護者の方々から要望を受けながらもなかなか実現できないでいた企画がよ
うやく実現できました。いわゆる放射冷却現象でずいぶん寒い朝でしたが、小松先生の用意し
てくださった焼き芋に一同身も心も温まりました。急にお願いしたにも関わらず、守屋先生も
丁寧に校内施設の案内をしてくださいました。演習林は実習が十分に行えなかった状態をお見
せしましたが、大農の「財産」の豊かさに驚きの声が上がっていました。農業科学館ではちょ
うど企画展で蘭の展示が行われており、見応えも十分でした。生徒が日ごろどんな学習をして
いるのかを肌で感じていただけたと思います。また、太田分校も加納教頭先生が豊富な資料を
ご用意くださり、こちらもまた丁寧なご案内をいただきました。本校職員も滅多に伺うことの
ない温もりのある校舎に郷愁を覚えたことと思われます。学習環境について保護者の方々から
も評価をいただくことがありますが、こうした形でオープンにすることも重要であると実感し
た一日でした。ご協力くださった皆さまへこの場を借りて感謝申し上げます。
(PTA研修部 柴田満美子)
山形県立置賜農業高等学校
視察研修報告
報告者
1
2
3
4
教諭
教諭
高 橋 寿 徳
照 内 之 尋
研修日時
平成24年12月14日(金) 11:00∼13:20
応 対 者
岸
順 一 校長
佐 藤 睦 浩 教頭
新 野
敦 農場長
訪 問 者
高 橋 寿 徳
照 内 之 尋
次
第
① 挨 拶
( 岸
順 一 校長 )
② 農場概要説明
( 新 野
敦 農場長 )
③ 沿革・学習内容・地域連携について
( 佐 藤 睦 浩 教頭 )
④ 農場見学
( 新 野
敦 農場長 )
5 研修内容及び協議
(1) 山形県の農業教育の現状
平成 25 年度より
寒河江高校 定員 40 名
→
左沢高校総合学科へ
置賜農業高校飯豊分校定員 40 名 →
本校へ
平成 26 年度より
村山農業高校
→
東根工業高校と統合(村山産業高校)
※ 平成 26 年度以降の山形県の農業関連学科募集定員 440名
(秋田県 480 名+西目、能代西総合学科生徒)
(2) 置賜農業高校の現状
・創立 117 年の伝統校であり、山形県東置賜郡川西町と地域ぐるみの取り組み
が高く評価されている。地元に必要とされる農業高校である。
・現在は生物生産、園芸活用、環境緑地の3学科それぞれ 40 名定員である。し
かし、例年定員割れしており現在は、全校で 360 名定員のところ 286 名であ
る。特に環境緑地科が厳しい状況にあるようだ。
(3) 置賜農業高校の魅力ある取り組みについて
・少人数ながらも地域連携を中心に特色ある学校づくりに取り組んでいる。
①紅大豆本舗プロジェクト
・地域特産品である「紅大豆」を栽培し販路拡大を実現。紅大豆を用いた
商品の開発や弁当の製作と高齢者支援
②えき・まち活性化プロジェクト
・駅前の空き店舗を活用したチャレンジショップの開設と地域還元
③もったいないプロジェクト
・ワインの絞りかすを家畜の飼料に活用した山形地鶏の研究
④食育ミュージカルプロジェクト
・演劇部による食育をテーマとした講演活動や演歌ショーによる異年齢交流
以上、①∼④の活動が総合的に評価され、高校生では初めてサントリー地域文
化賞を受賞。副賞の200万円が現在の活動資金となり学校活性化に努めてい
る。
(4)
具体的学科の在り方及び具体的農業教育のイメージ
・平成25年度より学科再編した新カリキュラムで生徒募集
①生物生産科 → 生物生産科 (生物生産の知識・技術の習得、経営方法等)
②園芸活用科 → 園芸福祉科 (草花やバイオ、園芸福祉・介護)
③環境緑地科 → 食料環境科 (食品加工や農業土木、商品開発を取り入れる)
・新カリキュラムはバイキング方式(総合選択制)ではなく、アラカルト方式
を採用。
・小学校から中学校までの学習内容の学び直しによる基礎学力の向上をねらい
として学校設定科目「マイ・サポート」を導入
(5) 農場視察について
・ガラス温室におけるシクラメンの栽培及び養液栽培(ガラス温室4棟)
・畜舎視察(ニワトリ、牛、豚、綿羊)
・宿泊実習について
6
感想
思っていたほど大きな学校ではなく一学年3学科3クラス、全校生徒300名弱
の小規模の農業高校であることに驚いた。また、川西町も小さな町であり地域産業
を支えている産業が農業であるため、地域連携や地域貢献などの利活用がしやすい
位置づけにあると感じた。実際、卒業後の具体的な進学先等では大きな成果はない
ようである(国立大学への入学者はここ数年0名)。また、規模としては本校と比
較し同等あるいは小規模であったが、ガラス温室4棟に加え養液・水耕栽培の設備
導入、バイオ実験などの設備が完備されているなど農業学習を行う環境としては恵
まれていると感じた。
中でも特に関心を引いたのが、「地域連携(地域の農業・人・産業を支える)」を
主眼に置いた取り組み内容で、積極的に生徒を外部へ出し様々な活動を行っている
点は大変勉強になった。上記の①∼④の活動にしても、地域貢献へ繋がっているもの
であり、個々に見れば農業クラブプロジェクト発表の東北大会等で発表している内容
でもあり、私自身見聞きしたことのある内容でもあった。佐藤教頭や新野農場長の話
では、キーマンとなる先生が必要であり、近年退職した先生方が生徒たちを引っ張っ
てくれているとのことであった。現職員と旧職員が連携し、地域への貢献・還元をし
ていくという点では私たちも学ぶ必要があると感じている。
置農キャッチフレーズ
ガラス温室4棟
職
・
氏
名
職
出
張
期
日
平成24年10月16日(火)から17日(木)
先
青森県立五所川原農林高等学校
務
平成23・24年度教育課程研究指定校事業「研究大会」
出
張
用
教諭
氏
名
佐々木孝之
1
日
時:平成24年10月16日(火)から17日(木)
2
場
所:青森県立五所川原農林高等学校
3
内
容:8月16日公開授業、フィールドセンター見学、研究協議
8月17日講公開授業、指導講評
【研究主題】学習に取り組む主体的な態度や合理的な思考及び論理的な姿勢を身に付け
た 、将 来 の 地 域 を 支 え る 人 間 性 豊 か な 職 業 人 を 育 成 す る た め の 科 目 横 断 的 な
学習活動の工夫・改善
4
参加者等:北海道、東北各県、栃木県、三重県48名
5
感 想 等:
佐藤晋也校長あいさつ
昭 和 23 年 の 学 制 発 布 以 来 、農 業 高 校 は 1000 校 を 越 え て い た が 高 度 経 済 成 長 期 を 転 換 と
し て 現 在 で は 364 校 で あ る 。 1961 年 農 業 基 本 法 、 1990 年 の 新 ・ 農 業 基 本 法 に よ り 農 業 の
方 向 性 を 政 策 と し て 論 じ て き た が 、農 村 を ど う す る か と い う こ と は 手 つ か ず の 状 態 だ っ た
と 考 え ら れ る 。こ れ を ヒ ン ト に 社 会 の 変 化 を 捉 え 、生 徒 を 意 図 的 に 変 化 さ せ よ う と 考 え た 。
そ こ で 今 回 の 研 究 指 定 事 業 導 入 を 決 め た 。 平 成 23 年 「 街 づ く り 五 農 農 業 会 社 」、 平 成 24
年 7 月「 五 所 川 原 6 次 産 業 化 推 進 協 議 会 」を 設 立 し た 。こ の よ う な 活 動 が 地 域 の 学 校 を 観
る見方を変えるのではないかという考えである。
公 開 授 業 ( 10 月 16 日 ) は 次 の と お り
2 校 時 : 環 境 土 木 科 1 年 「 農 業 情 報 処 理 」、 森 林 科 学 科 1 年 「 農 業 科 学 基 礎 」
生 物 生 産 科 1 年 「 グ リ ー ン ラ イ フ 」、 環 境 土 木 科 2 年 「 農 業 土 木 設 計 」
3 校 時 : 食 品 科 学 科 3 年 「 グ リ ー ン ラ イ フ 」、 生 活 科 学 科 3 年 「 生 物 活 用 」
生物生産科3年「野菜」
これらの授業は農業科目の中に6次産業化を理解するとともに経営や起業に関する新
たな教育内容を取り入れ、学校全体で「チーム五農」としての意識を持つ。そして「五農
ブランド」を確立し、生徒自身も生きる力を体得し、地域の活力を持つ。というコンセプ
トで各授業が進められていた。
付 加 価 値 を 高 め る た め に 、稲 作 部 門 で は 青 森 県 認 証 の 減 農 薬 米( つ が る ロ マ ン )を 作 り 、
その食味は第2回農業高校お米甲子園金賞を受賞している。GAP(農業生産工程管理)
を 取 り 入 れ 、食 品 安 全・環 境 保 全・労 働 安 全 の た め 取 り 組 み 、産 地 作 り を 目 標 と し て い る 。
中身まで紅い「御所川原」を粉末加工し、商標登録「てれやさん」として各分野で加工品
を 手 が け よ う と し て い る 。( リ ン ゴ ジ ュ ー ス 、 ジ ャ ム 、 甘 い ソ ー ス )
小 中 学 生 の た め の 農 業 教 室 を 開 設 し て い る が 体 験 場 所 は 学 校 だ け で な く 、小 中 学 校 へ も 出
前 授 業 の 形 で 出 向 い て 交 流 し て い る 。L L C( 合 同 会 社 )と し て「 街 づ く り 五 農 農 業 会 社 」
津軽鉄道駅舎内店、2号店として「ヤッテマレ軽トラ市」出店している。広大な農場、敷
地を資源と捉えその活用方法を授業内で取り組み、案内図作成、リンゴ狩り、五農検定、
津軽鉄道、JRとのコラボなどに取り組んでいる。
【質疑応答】
三 重 県 教 委 :「 平 成 2 3 ・ 2 4 年 度 教 育 課 程 研 究 指 定 校 事 業 」 を 久 居 農 林 高 校 が 引 き 受 け
て い る が 、 6 次 産 業 化 と グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム で 農 業 の 多 面 性 を 教 え て い く 、足 し 算 の 農 業
を実践しようとしている。
宮城県農業:
Q グ リ ー ン ラ イ フ を 中 心 の 科 目 と し て 設 置 し て い る よ う だ が 、そ の 必 要 性 を ど の よ う に 生
徒に教えているか?
A グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム で お 客 さ ん は な ぜ 来 て い る か 、“ ふ れ あ い ” を 求 め て 来 て い る と 捉
え 、お も て な し の 心 を も つ こ と で 農 業 の 採 算 性 の 他 、観 光 面 で も そ の 可 能 性 が あ る こ と を
伝えたい。
静内農業:
Q配布プリントの中に自己評価の欄があったが、全教科で実施しているのか?
A 全 体 で は な い か 、課 題 研 究 や 総 合 実 習 の よ う に 、 体 験 学 習 や 成 果 発 表 時 に 取 り 入 れ て い
る。
宮城県農業:
3 校 分 散 と い う 昨 年 、五 農 を 始 め 青 森 県 内 の 農 業 高 校 に 招 待 し て も ら い 、あ り が た が っ た 。
Qグリーンツーリズムのこれからの方向性は?
A県民局主導で高校生と有識者が話し合うグリーンツーリズム企画が進行中である。
大曲農業:
Q ビ ジ ョ ン 2 5 で は 生 物 生 産 科 の 教 育 課 程 の 中 に 「 果 樹 」「 野 菜 」「 畜 産 」 と い っ た 科 目 が
ないが、その運用方法は?
A こ の 地 域 の 主 力 で あ る 作 物 を 採 用 し 、「 果 樹 」「 野 菜 」「 畜 産 」 は 総 合 実 習 や 課 題 研 究 の
中で教えていく方向である。
久居農林:
Q農業技術検定3級を1年で取得させる科もあるようだが?
A 農 業 高 校 に 入 学 し て 間 も な い が 、3 年 間 に ぜ ひ 取 得 し て も ら い た い 資 格 で あ る か ら 明 記
した。
10 月 17 日 公 開 授 業 「 五 農 チ ャ レ ン ジ 」 学 校 設 定 科 目 ( 1 単 位 60 分 ) 平 成 23 年 度 か ら
全 学 年 が 国 語 ・ 数 学 ・ 英 語 の「 マ ナ ト レ 」を 実 施 、導 入 7 分 − 1 科 目 10 分 、6 分 の 採 点 の
3 回 ( 48 分 ) − ま と め 5 分 ( 前 回 の 採 点 済 プ リ ン ト 配 布 )
プリントがすぐにできる生徒には「お代わりプリント」を配布。
評価:確認テストによる点数、ファイル整理を観点とする。
4 月、8 月に基礎力テストを実施し、学力の推移をチェック。
県内での「マナトレ」
能代西高校平成23年度入学生から3科目、金足農業「数学」1対1での指導
他県の例
柴田農林高校:1年次、学校設定科目「ベーシック読書術・算術」として取り組む(2単
位)1クラス3名体制。
小 牛 田 農 林 高 校 : 1 年 次 、 朝 自 習 10 分 間 、「 国 語 、 数 学 、 英 語 」、 週 5 日 の う ち 3 日 。
指導講評
青森県教育委員会主任指導主事
中村
豊
活 気 ・ 躍 動 感 の あ る 学 校 に な っ た と 感 じ て い る 。教 育 課 程 の 中 に 6 次 産 業 化 の よ う に 新 し
い こ と を 取 り 入 れ る こ と は 今 ま で の 財 産 で は 対 応 で き な い こ と が 多 い 。先 生 方 は 大 変 か も
し れ な い が 、生 徒 た ち は 自 分 の 実 践 し て い る こ と が 地 域 と つ な が っ て い る こ と を 実 感 す る
と 社 会 人 と し て の あ り 方 に も リ ン ク し て い る 。「 五 農 チ ャ レ ン ジ 」 で 使 用 し て い る フ ァ イ
ル が あ っ た が 、フ ァ イ ル は 自 ら の 実 践 記 録 、 取 り 組 み 状 況 を 具 体 的 に 振 り 返 り し や す い の
で 、生 徒 た ち に は そ の 整 理 を し っ か り さ せ て ほ し い 。自 己 評 価 も 観 点 別 評 価 を 取 り 入 れ る
ことができればさらによいと思う。
授 業 で は 考 え る 時 間 も 必 要 で 、 考 え る 術 ( す べ ) も 与 え て ほ し い 。「 考 え る き っ か け 」 に
は「意図的な問いかけ」が必要とされ、言語活動の充実につながる。
東大大学院の本田教授によると専門高校のいいところは作業・体験でモノを創りあげる、
目標設定する学習がある、グループによる学習活動がある、1 ヶ月以上にわたる活動があ
る 、こ と を あ げ 8 割 の 生 徒 が 有 用 感 を も つ と い う 。ビ ル ド 個 性 感 と フ ァ イ ン ド 個 性 感 が 実
感できる。組織は人なりといわれるが、協力、つながることにより、人、学校、地域が連
携し、それぞれがつながっているのりしろがビジョンではないか。
国立教育政策研究所教育課程研究センター
教育課程調査官
文部科学省初等中等教育局児童生徒課産業教育振興室
教科調査官
田畑淳一
講評―継続と更なる深化へ―
・ 継 続 は 力 ...
・ベクトル(方向と力)
・コアと質保証へ
・農業教育をブランドへ
・五農ブランド
田 畑 調 査 官 か ら は 上 記 の キ ー ワ ー ド か ら 講 評 を 受 け た 。こ の 事 業 を チ ー ム 五 農 と し て 取 り
組 ん で お り 、こ の 成 果 を 更 な る 深 化 へ と 継 続 し て ほ し い 。ビ ジ ョ ン 2 5 で は 中 核 と し て 五
農ブランドと位置づけているが、チームとして生徒に意識付けとして重要なことである。
ベ ク ト ル は 五 農 勤 務 17 年 の 経 験 か ら 校 長 先 生 の 明 確 な 思 い が 感 じ ら れ た 。 五 農 ブ ラ ン ド
の 定 義 を ど の よ う に す る の か を 明 確 に す る 必 要 が あ る 。目 標 に 向 け て 取 り 組 む 活 動 も そ の
一 つ で 、 ロ ゴ や マ ー ク で も よ い 。( 企 業 は ユ ー ザ ー に 対 し て ロ ゴ 、 デ ザ イ ン に こ だ わ ら ず
概念として印象づけている)
何 を も っ て ブ ラ ン ド 化 す る の か は 難 し く 、そ の 例 と し て は 商 品 の 原 材 料 ま で 吟 味 す る 必 要
が あ る 。( 校 外 か ら の 購 入 品 で 作 っ て も ○ ○ 校 産 と す る の か )
学 校 評 価 は 生 徒 と 保 護 者 を 中 心 に 行 わ れ て い る と 思 う が 、広 義 に 考 え る と 卒 業 す る 生 徒 を
受け入れる地域社会、企業にも評価してもらってもよいのではないか。
コア※と質保証について
※コア:全ての生徒に共通に最低限修得させるべきもの
コアに加え求められる資質、能力
・社会経済活動の基盤を担うために必要な資質・能力
・専門的職業人に必要な資質・能力
・社会においてリーダーシップを発揮し、また、グローバル社会において国際的に活躍す
るために必要な資質・能力
・自律して社会生活・職業生活を営むための基礎的な資質・能力等があげられる。
ドラッガーのマネジメント本を読むとフィードバック分析は目標とする成果を決めるこ
と(取り組み後、アンケートで検証)は日本人向きである。
学 校 評 議 員 制 度 を 導 入 し て い る 学 校 が 多 い と 思 う が 、O B に こ だ わ ら ず 、 応 援 し て く れ る
人 を 選 定 し た 方 が よ い 。( 率 直 ( 辛 口 ) に 意 見 を 言 っ て く れ る 人 )
最後に印象的な言葉として
デンマークの農業を掲載した日本農業新聞から
成 熟 し た 社 会 と 農 業 教 育 は 密 接 な 関 係 に あ り 、地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ や 農 村 社 会 が 充 実 し た も
のとなっている。
閉会式
佐藤晋也校長
生徒を変えるために教師は大変な思いをしているが、これがあるべき姿ではないかと思
う 。県 立 学 校 に は 予 算 措 置 が で き な い こ と か ら 、規 約 を し っ か り と し た 6 次 産 業 推 進 協 議
会を県、市、生徒、企業を巻き込み設立した。行政との連携は新しい産業を創出するつも
り で 行 っ た 。学 校 の 働 き か け で 農 村 は 充 実 す る と 思 う 。 農 村 が し っ か り さ せ な い と 担 い 手
を育成することができない。意味のある教育活動として6次産業を取り入れている。
【感想】
今回の教育課程研究指定事業受け入れは佐藤晋也校長先生の強い思いがあったことが
伺 え る 。全 て の 授 業 が 五 所 川 原 農 林 高 校 に お け る 6 次 産 業 化 へ の 関 わ り を 持 ち な が ら 、五
農 ブ ラ ン ド 確 立 へ つ な が る こ と を 強 く 印 象 づ け ら れ た 。 外 部 と の 連 携 は も と よ り 、学 校 内
を資源とし、その活用方法を探り、生徒たちに知らなかった五農を理解させ、学校愛を育
てていく姿勢は参考にしたい。
日 立 と の 関 係 も 、 佐 藤 校 長 先 生 の 柏 木 農 業 高 校 時 代 に 遡 り 、 空 き 教 室 を LED を 利 用 し
た 植 物 工 場 、教 頭 先 生 だ っ た 弘 前 実 業 高 校 藤 崎 校 舎 の 時 に も 観 賞 用 植 物 工 場 を 提 案 し た こ
とから、青森県産業技術センターが推進する植物工場との関係からきているという。
このシステム(スマートヴィレッジ
in
五農)は「顔の見える農業」の実現により、
農 家 が SNS を 使 っ て 作 物 の 生 育 状 況 を 消 費 者 に 報 告 、 消 費 者 か ら は 商 品 の 感 想 が フ ィ ー
ドバックされる。
「 圃 場 管 理 サ イ ト 」(http://gonou.gnu.saas.secureonline.jp/agriculturist)
を 開 設 し 、SNS で つ な が る 情 報 交 換 、消 費 者 が 五 所 川 原 市 を 訪 れ 、グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム
も盛んになり、農業へのやりがいを感じて担い手へという計画だ。
本 校 に お い て も 校 舎 改 築 に 向 け 、H P を 通 じ た 情 報 発 信 の あ り 方 を 探 ら な け れ ば な ら な
い 。 H P ア ド レ ス だ け で は な く 、 QR コ ー ド を 利 用 し た 情 報 発 信 の あ り 方 も 検 討 し な け れ
ばならない。
野 菜 オ ー ナ ー 制 を 野 菜 だ け で な く 、果 樹 、畜 産 な ど に 拡 大 し た( 仮 称 )大 農 オ ー ナ ー 制 、
大農サポーター制を取り入れ、地域に応援してもらえる大農を目指したい。
期 間 限 定 で は あ っ た が 、カ レ ー ラ イ ス 、ハ ヤ シ ラ イ ス の 野 菜 を 自 校 産 で ま か な い サ ラ ダ
も セ ッ ト で 販 売 し て い る 事 業 は 参 考 に し た い 。( 9 月 20 日 ∼ 10 月 25 日 ま で 1 日 20 食 、
予約制)
教 育 課 程 に つ い て は 、生 産 に 関 わ る 科 目 を 総 合 実 習 や 課 題 研 究 で 補 い 、科 目 と し て は「 作
物 」 に 集 中 さ せ た 点 は 逆 転 の 発 想 か も し れ な い 。( 生 物 生 産 科 )「 グ リ ー ン ラ イ フ 」 を 中 核
科目と位置づけ、地域(学校)の資源活用で生徒を動かし、変容させようとする姿勢は本
校 に 合 っ た 導 入 の 仕 方 を 考 え な け れ ば な ら な い 。進 学 へ の 選 択 科 目 が ほ と ん ど な く 、 疑 問
点がつくが弘前大学がセンター試験がないことからも弘前大学に特化した進学指導が行
わ れ る の で は な い か と 思 わ れ る 。マ ナ ト レ を 活 用 し た 基 礎 学 力 向 上 対 策 は 校 長 先 生 が 主 導
したようだが、今後は進路指導部が主導し、3年間、系統だった学力向上対策を図る必要
があると思う。
各科共通の時間(2時間)を講座制とし、プロジェクト学習(地域(学校)資源活用)
を 実 践 。( 所 属 学 科 の 講 座 は 受 講 し な い )
・自校産野菜を使ったメニューを学校祭で活用
・避難所の非常食として活用するための乾燥野菜・果樹作りなど
・大農検定作り
新しい事業(学科再編)にはコンセプトを元に行わなければならない。このコンセプトを
本 校 の 存 在 意 義 と 照 ら し 合 わ せ 、 平 成 26 年 度 以 降 の 大 農 の 方 向 性 を 考 え て い き た い 。
五農
農業会社
(キャリア教育)
五農
6次産業化
チャレンジ
(ITをいかした
農業)
(基礎学力)
五農
ブランド
管外視察報告
五所川原農林高等学校
10/16、17
管外視察報告
五所川原農林高等学校10/16,17
五農チャレンジ
週1回の学び直し
60分(国数英)
各科2年生午後から販売実習
管外視察報告
五所川原農林高等学校10/16,17
管外視察報告 五所川原農林高等学校10/16,17
「つがるロマン」を使用したお酒
果肉まで紅い「御所川原」使用ジュース
「農學高育ち」
管外視察報告
管外視察報告 五所川原農林高等学校10/16,17
五所川原農林高等学校10/16,17
スマートヴィレッジ構想
ITモデルとして日立と連携 「ニュースな五農高」生徒昇降口
管外視察報告 五所川原農林高等学校10/16,17
各科資格取得一覧
各HR掲示
管外視察報告 五所川原農林高等学校10/16,17
管外視察報告 五所川原農林高等学校10/16,17
食品科学科
課題研究共通テーマ
「紅いリンゴの利活用」
管外視察報告 五所川原農林高等学校10/16,17
平成24年度専門高校生海外企業研修に参加して
英語科 高橋誓子
今年度から本校は「あきた発!英語コミュニケーション能力育成事業」の県南地区の拠点校となり、英
語科では授業改善を第一に様々な企画や研修が行われた。そのひとつに生徒が体験するものとして「海
外企業でのインターンシップ」があり、2013年1月7日から1月12日までの5泊6日、フィリピンの首都マニラで
の研修。他地区の拠点校である大館国際情報学院、秋田工業それぞれ3人ずつ、本校からも2年生3人
(女子生徒2人、男子生徒1人)が参加した。
秋田空港から大韓航空で仁川空港へ。そこからマニラへと向かった。時差はマイナス1時間。厳寒の秋
田から常夏の島フィリピンへ。フィリピンは母語がタガログ語、英語が公用語である。小学校では英語で話
すことを強制されるので、英語を使う(話す)ことはステイタスに関わらず、どの人にとっても「ごく普通」のこ
とであり、ある意味カルチャーショックを受けてくる。
インターンシップは秋田にある日本 SMT のフィリピン支社。東芝の USB やエプソンのプリンターを製造し
ている。生徒たちは USB 製造のラインに入って作業した。指導していただいた社員の方々も現地の人。コミ
ュニケーションはすべて英語で行われた。実際に店頭で陳列する状態に仕上げる行程の中で、基盤にピ
ンセットでシールを張り付け、基盤の動作確認、拡大レンズでの傷チェック、ケースへのはめ込み、を体験し
た。細かい作業と、英語を使ってコミュニケーションしなければならない緊張感で、初日はだいぶ疲れた様
子だったが、2日目は作業することにもコミュニケーションをとることにも慣れてきたようで、最後には社員
のみなさんとリラックスした状態で写真を撮り合っていた。
参加した生徒の一人が、「今までは就職か進学か、という進路選択しかなかったが、就職にしても海外
で働くという選択肢が見えた。」と話していた。遠くに見えて華やかさが感じられる海外だが、今回の研修
で生徒が「身近で生活感のある海外」を感じ、将来の選択の幅が広がったことが一番の収穫であった。
地元企業に就職しても、「海外へ出向や出張」ということがますます多くなると思われる。「英語を話せる
大農生」というよりも「英語でコミュニケーションをとろうとする姿勢をもつ大農生」の育成を考えて、これか
らの授業にどう生かしていくのか考えていきたいと思う。
世界らん展日本大賞2013に参加して
平塚 祥広
【はじめに】
世界らん展日本大賞は毎年2月に東京ドームで開催されるイベントである。この世界らん展2013
に本校120周年を記念して参加させていただいたことは非常に意義ある出来事であった。近年遺伝子
組み換えなどのニューバイオ分野が実験題材として取り上げにくいなどの背景もあり目新しさに欠け
てきた生物工学科にとっても世界らん展出展は生徒の意欲を引き出し、達成感を与えることができるだ
けでなく、全国に学校をPRする絶好の機会であった。
【出展に向けたとりくみ】
ディスプレイにあたって横手市の齊藤洋ラン園に相談し、仙台市のみちのく洋らんセンターを紹介し
てもらった。初めて打合せを行った際に4m四方の中に数百鉢のらんが所狭しと並んでいる写真を見せ
られ、頭が真っ白になった。学校で栽培している蘭でどうにかできるものではなく、らんを打ち付ける
基礎や装飾など全く理解できなかったからである。それでも今回の出展にこぎつけることができたのは
私たちの考えや構想を具現化してくれた2人の「プロ」がいたからである。心から感謝している。
【生徒のアイディアと成長】
らん展には生物工学部を中心とした1・2年生6名が参加した。当初は知識もアイディアもなく言わ
れるがままに作業をこなす集団だった。しかし、大農祭が終わったころからこの6名の意識に劇的な変
化を感じることができた。自分の意見や考えを明確に話すことができるようになってきたのである。同
時期にTVの取材が入ったことも生徒の成長を後押ししてくれた。普段関わることのない人たちとの会
話を通し、自分たちがやろうとしていることがいかに注目されているのかを実感し始めたからだと思う。
この出会いや成長によって当初のデザインは大きく進化・発展していくことになった。
【らん展会場にて】
東京ドームでは自分たちの展示スペースの小ささ
(狭さ)に唖然とした。学校で組み立てた時にあれだ
け大きかった基礎はこじんまりとし、何か場違いな場
所に来てしまったのではないかと不安になった。しか
し、ここでも生徒は動揺しなかった。自分の担当分野
をキッチリとこなす姿に我々職員の方が激励されてし
まった。作業は深夜におよんだが誰も何も言わず作業
する姿に感動したことを覚えている。また、奨励賞受
賞を聞いたときに生徒職員全員がホッとして脱力した
ことは良い思い出である。
【おわりに】
世界らん展への出展には多大な経費を必要とする。
特に今回は初出展であったため予想外の経費が多く必
要となった。そのため継続的な参加は難しいと思われ
るが、この活動に関与した生徒の達成感や成長を近く
で見られたことは良い経験になった。予算面において
御協力いただいた農友会や実行委員会のみなさんそし
て、生徒に感謝している。
第 63 回 日 本 学 校 農 業 ク ラ ブ 全 国 大 会 ( 長 野 大 会 ) に 参 加 し て
農業科学科
古戸
毅
本 年 度 の 農 業 ク ラ ブ 全 国 大 会 が 10 月 23 日 ∼ 25 日 に 長 野 県 で 開 催 さ れ ま し た 。 23 日 は
各 種 発 表 会 等 の リ ハ ー サ ル (本 校 生 は 移 動 日 )、 24 日 が 各 種 競 技 会 及 び ク ラ ブ 代 表 者 会 議 、
25 日 は 大 会 式 典 (会 場 : ビ ッ グ ハ ッ ト ア リ ー ナ )と い う 日 程 で し た 。
長 野 大 会 の ス ロ ー ガ ン は 「 ア ル プ ス に 今 こ そ 輝 け 農 ク の 集 い 」、「 自 然 あ ふ れ る 長
野の地 山より高く」であり、アルプスの山々が広がる自然豊かな信濃の国は、自分が想
像 し て い た 以 上 に 山 紫 水 明 に 抱 か れ た 美 し い 大 地 で し た 。 23 日 に 大 曲 駅 か ら 出 発 し (午 前
7 時 半 )、 新 幹 線 や 特 急 、 長 野 電 鉄 (私 鉄 )を 乗 り 継 ぎ 、 伊 那 市 の 宿 泊 先 に 到 着 し た の は 午
後4時という長時間の行程でした。長野県は本州の中央部に位置し、周囲を8県もの県に
隣 接 す る 、 東 西 に 短 く 南 北 に 長 い 地 形 で す 。「 日 本 の 屋 根 」 と 呼 ば れ る 標 高 2,000 ∼ 3,000
m級の高い山々が連なり、車窓を通して内部からも山岳が重なり合う険しく複雑な地形が
とても印象に残りました。また、長野は地域医療への関心が高いことなどから平均寿命が
長く、全国一の長寿県でもあります。
本校からは農業鑑定競技(会場:北佐久農業高校)に 6 名、平板測量競技(会場:須坂
運動公園及び同勤労少年体育センター)に 4 名、クラブ員代表者会議(会場:伊那市生涯
学 習 セ ン タ ー ) に 1 名 の 計 11 名 の 生 徒 と 引 率 ・ 指 導 教 員 3 名 が 参 加 し ま し た 。 こ の う ち 、
農 業 鑑 定 は 9 区 分 に 1,023 名 が 参 加 す る と い う 今 大 会 で 最 も 大 き な 競 技 会 で し た 。 特 に 本
校 生 も 参 加 し た 区 分 : 農 業 、 園 芸 に は そ れ ぞ れ 197 名 、 269 名 と 参 加 者 が 3 桁 を 数 え ま し
た 。( 畜 産 は 92 名 、 生 活 科 学 は 77 名 ) ま た 、 平 板 測 量 競 技 に は 48 チ ー ム で 合 計 187 名 が
参 加 し 、 ク ラ ブ 員 代 表 者 会 議 に は 3 分 科 会 9 会 場 に 227 名 が 参 加 し ま し た 。
クラブ員代表者会議では、クラブ員の自己紹介や名刺交換の後、第 1 分科会のテーマで
ある「農業クラブ活動を地域の方々に知ってもらう段階的な活動にはどのようなものがあ
る か 」に つ い て 山 口 農 業 高 校 の 発 表 事 例 等 を 基 に 参 加 者 同 士 に よ る 取 り 組 み 状 況 が 話 さ れ 、
活 発 な 意 見 の 交 換 が な さ れ ま し た 。本 校 か ら 参 加 し た 髙 橋 真 里 佳 さ ん は 第 3 会 場 に お い て 、
地域行事への積極的な参加により住民との交流を図ることで農業クラブ活動を理解しても
らえると考える。また、そのことが話題となり、新聞やテレビなどのメディアに活動が取
り上げられるという「パブリシティ戦略」も期待できると参加者に語ってくれました。
競技会の結果としては、残念ながら後一歩のところで力が及ばず、平板測量競技、農業
鑑 定 競 技 と も に 入 賞 者 (参 加 者 の 3 分 の 1 以 上 の 成 績 を 修 め た チ ー ム ・ 選 手 )を 輩 出 す る こ
とができませんでしたが、全国大会に向けて早朝や放課後、休日に練習や学習をしてくれ
たことへの努力を労いたいと思います。大変ご苦労さまでした。
農ク全国大会の各種発表会及び競技会場、クラブ代表者会議及び代議員会場そして式典
会場には、高校で農業を学ぶことへの自信や誇り、その意義や使命を会場にいる同志と共
に実感できる不思議な雰囲気があります。私は一人でも多くの大農生が全国大会に出場を
果たし、この雰囲気を味わってもらいたいと感じています。式典会場において最優秀賞に
選ばれた選手は暗がりの中でスポットライトを浴び、名前が呼ばれます。会場を埋め尽く
す数千人による羨望のまなざしを受け、万雷の拍手で讃えられます。ヒーロー、ヒロイン
の誕生です。この時ほど「高校で農業を学んでよかった。農業高校を選んで間違いなかっ
た 。」 と 思 う 瞬 間 は な い で し ょ う 。 ま さ に 勝 利 な の で す 。
平 成 25 年 度 の 全 国 大 会 は 東 京 都 を 中 心 に し た 首 都 圏 で の 開 催 で す 。 先 ず は 、 校 内 大 会
や県連大会に向けた早期からの準備に着手し、完成度の高い仕上がりにより来年度は是非
"リ ベ ン ジ "し て く れ る こ と を 切 に 願 い ま す 。
代 表 者 会 議 (伊 那 市 )
代表者会議 展示場
式 典 会 場 (ビ ッ グ ハ ッ ト )
インターハイ・国体を終えて
自転車競技部
インターハイ
∼2012
藤井
亨
北信越かがやき総体∼
大
会
期
間 : 平 成 24年 7 月 28∼ 8 月 1 日
トラックレース:新潟県弥彦競輪場
ロ ー ド レ ー ス:新潟県南魚沼市特設コース
昨年度の秋田インターハイでは、本校自転車競技部として数年ぶりに団体3位入賞・個
人8位入賞を果たすことができた。今年度は予選である東北選手権で団体2位、個人優勝
が3名という近年にない好成績を収め、インターハイでの連続入賞が期待された。
団体種目は、今年もチームスプリントに的を絞って練習してきた。これまでは333.
3mのバンクを3周(=1000m)すれば良かったが、弥彦競輪場は1周400mのた
め、3周で1200mとなり200mの距離が延長となる。3名の脚質からすれば距離延
長は不利な条件であったが、距離の長さを克服しようと必死に練習した。目標は過去の入
賞ラインである1分19秒台であったが、結果は1分20秒で8位となり、辛うじて2年
連続の団体入賞を果たすことができた。
個人種目は、出場した選手がそれぞれベストを尽くしたが、他県の強豪に阻まれた。そ
の 中 で 草 彅 駿 が ケ イ リ ン で 6 位 に 食 い 込 ん で く れ た 。彼 の 脚 力 の 強 さ は も ち ろ ん で あ る が 、
レース前に他校の強豪選手と話し合い、連係してレースに臨んだことで勝ち上がることが
できた。彼の人柄が功を奏した入賞であった。
今大会は猛暑の影響で選手の体調管理に苦労させられた。宿舎のエアコンが故障し熟睡
させることができなかったり、熱中症的な症状の出た選手もいた。今後は選手の能力を十
分に引き出し、自信を持ってスタートラインに着かせられるよう創意工夫していきたい。
チームスプリント
8位
大曲農チーム
1分20秒636
大坂栄貴(2A)草彅駿(3A)進藤拓実(3C)
ケイリン
6位
草彅駿(3A)
その他の種目に出場
佐々木文平(2C)
国民体育大会
∼ぎふ清流国体∼
大
会
期
間 : 平 成 24年 10月 3 ∼ 7 日
トラックレース:岐阜県岐阜競輪場
ロ ー ド レ ー ス:岐阜県美濃市特設コース
今年度の国体は岐阜県で行われ、少年選手として本校から4名が選出され出場した。移
動はマイクロバスで片道13時間、宿舎は会場から遠く離れた少年自然の家ということで
選手の健康管理に苦労させられた大会であった。
団体種目であるチームスプリントについては、少年・成年混成となるので苦戦が強いら
れた。昨年のメンバーである進藤拓実と本校OBの大学生、髙橋大輝・門脇翼を入れた3
名で出場した。昨年に引き続き入賞を狙っていたが、インターハイと同様にバンク周長の
違いにより距離が延長されたため、厳しいものがあった。結果は12位であった。
個人種目ではあと一歩で入賞を逃してしまった。少年種目では連続入賞を果たしていた
が途切れてしまった。2名の2年生は今回の教訓を胸に東京国体で頑張って欲しい。
出場者
草彅駿(3A)
進藤拓実(3C)
大坂栄貴(2A)
佐々木文平(2C)
インターハイより
ケイリン1回戦(草彅駿・一番右)
スプリント予選(進藤拓実)
ケイリン決勝(草彅駿・左から二番目)
スプリント1回戦(進藤拓実・右)
インターハイ・国体を終えて
なぎなた部 冨田 和樹
4 月 か ら 大 曲 農 業 高 校 に 赴 任 し 、な ぎ な た 部 を 担 当 さ せ て い た だ く こ と に な り 、
6月までは学校に慣れるためだいぶ時間がかかりました。この3ヶ月だけでも東
北各地への遠征、創立120周年記念招待試合、インターハイ出場をかけた全県
総体等々に関わってきたが、私はこのような大きな舞台で勝負する場面に居合わ
せたことが今までなく、大変刺激的でした。またこのような行事を行うにあたっ
て、多くの方にご協力頂いていることを強く実感し今でも感謝しています。
今年のインターハイは8月11日∼13日の日程で福井県を舞台に開催されま
した。大曲駅を出発してから帰ってくるまで晴天に恵まれ、移動の際はかなり助
かりました。また今年は個人競技での出場だけだったのが幸いしたのか、日程の
後半から試合が始まるスケジュールであり、福井県に行ってから調整する時間が
十 分 も て ま し た 。 ま た 矢 野 千 尋 (3H)は 昨 年 も 出 場 し て い る こ と も あ り 、 大 会 の 雰
囲気に飲まれることなく順調に調整が進みました。予選リーグでは落ち着いて試
合 を 先 行 す る こ と が で き 、無 事 に 決 勝 ト ー ナ メ ン ト に 勝 ち 進 む こ と が で き ま し た 。
しかしここから先は勝ち上がってきた強豪ばかりで、一瞬の油断もできない試合
が続きます。試合と試合の間に次の対戦相手に関するアドバイスを外部コーチの
森 先 生 か ら 受 け て い き ま す が 、勝 ち 進 む ご と に 試 合 の 間 隔 が 短 く な っ て い き ま す 。
準々決勝は昨年度団体種目で準優勝したチームの選手との試合でした。秋田県で
勝ち残っている選手は本校の矢野だけという状況で、同じ県代表の大曲高校選手
や保護者の方までも一緒に応援してくれていました。そのような中でなんとか一
本を勝ちとり、昨年度個人競技で優勝した熊本西高校の春山選手との準決勝に臨
みました。試合時間3分の中で、2分半までは良い勝負であったが、終盤に一瞬
でスネを決められそのまま試合が終了しました。最終的な成績は3位でしたが、
矢野も自分の目標にしていた結果でもあり、試合後は納得していた様子だった。
今年度の成績は過去最高のものとなりました。福井IH(個人3位)、東北選
手 権 大 会( 団 体 優 勝 、個 人 優 勝・3 位 )、東 北 総 体( 団 体 優 勝 )、東 北 選 抜( 団 体
優勝)という結果を残すことができました。これも、創部当時から顧問を務めら
れ、退職されてからも外部コーチとして熱心に指導してくださる森義直先生と、
昨年までの 5 年間顧問をされていた高橋可奈子先生(旧姓:赤坂)のおかげだと
思います。校内では創設されてから間もなくまだまだ未熟な部ですが、全国に活
躍する部活動だと信じ、3月下旬に開催される全国選抜では優勝を目指していこ
うと指導しているところです。
先述の通り、今年はなぎなたの行事が多かった年でした。年度当初は不安でい
っぱいでしたが、外部コーチである森義直先生をはじめ、多くの大農職員やなぎ
な た 部 員 、 OG に 協 力 し て い た だ き 、 無 事 に 一 年 を 締 め く く る こ と が で き た と 今 で
も 感 謝 し て い ま す 。 この場を借りて厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございまし
た。
田沢湖水の水質改善に関する研究
教諭
大沼克彦
研究課題
電気分解による田沢湖の水質改善と
その応用に関する研究
活動参加生徒:田沢湖水水質改善研究チーム
伊藤惇平(生物工学科
2年)
高畑
佑(生物工学科
2年)
健斗(生物工学科
2年)
小松仁貴(生物工学科
3年)
簗
3年)
関
崇文(生物工学科
はじめに
私たちは昨年度から田沢湖の水質改善についての研究活動を実施してきた。今年度は、斉藤憲三顕彰会だけで
なく、
(独)日本学術振興機構からの助成をいただいて研究活動を実施することができた。研究チームの結成か
ら約 2 年、その間生徒は実験、まとめ、報告などを積極的に行ってきた。ここではその研究活動をまとめた。
目的
ず、目標値の達成には至っていない(1)
。
昭和 14 年までの田沢湖は周囲から水が流入するこ
一方、玉川導水が実施された昭和 14 年までは、イ
とのない閉鎖された環境(図 1)にあり、水素イオン
ワナ、アユ、ウグイ、ウナギなど多種の水棲生物が生
濃度 pH は 6.7 であった(1)
。しかし、仙北平野の農
息しており、特に注目されるのは、田沢湖固有種であ
用地の開拓と電力供給を目的として、玉川河水統制計
るクニマスである(5)
。しかしこれらの生物は玉川導
画が実施された(2)
。これにより昭和 15 年 1 月から
水により死滅し、田沢湖内には棲息していない。近年
玉川導水が開始され、大噴を原水とし、塩酸が主成分
田沢湖に見られるウグイは、玉川酸性水中和処理施設
の玉川の強酸性水(pH 1.1)
(1)が田沢湖に流入した。
による中和処理によって pH が上昇した後に導入され
このため 8 ヶ月後の昭和 15 年 9 月には、
田沢湖の pH
た生物である。
は 5.4 となり、魚類は激減した(1)
。その後田沢湖の
平成 22 年 12 月、山梨県西湖でクニマスと思われ
pH は、低下を続け最終的には pH 4.5 にまで低下し
る魚が捕獲され、その後の調査によりクニマスと断定
た(1)
。
された。このため、仙北市ではクニマスを田沢湖に導
田沢湖の pH を中性にするための事業が昭和 47 年
入するための、クニマス里帰りプロジェクトを秋田県
から開始され、簡易石灰中和法により酸性水の中和が
とともに開始した(6)
。しかし、クニマスの棲息可能
実施されたが、pH の変化はほとんど見られなかった
な pH は中性であり、現在の田沢湖の pH から考察し
(1)
。そこで国は、昭和 48 年から玉川酸性水中和処
て、クニマスを西湖から導入することは不可能である
理対策を開始し、酸性水中和処理施設を建設して、平
と考えられる。そこで、一刻も早く田沢湖を中性化す
成 3 年度から玉川と田沢湖の中和を目的として炭酸
る必要があると考えられる。しかし現状の CaCO3 を
カルシウム(CaCO3)を主成分とした中和処理剤を使
使用した方法には、問題点もいくつか考えられる。
用した中和処理を開始した(1, 3)
。中和処理は、田沢
湖地点で pH 6.0 を目標としている。
1 つめの問題は、平成 15 年以降、田沢湖の pH の
変化がほとんどないことである。このことは、現在の
玉川酸性水中和処理対策が開始して今年で 20 年が
中和方法の限界と考えられる。2 つめの問題は、反応
経過したが、現在(平成 22 年現在)の田沢湖の pH
生成物の問題である。玉川水は塩酸が主成分(1)で
は、5.3 である(平成 23 年度版
環境白書)
。しかし
あり、CaCO3 を使用した中和反応は、以下の反応式
平成 15 年以降の田沢湖の pH は大きな変化が見られ
で説明することができる。この反応式で示されるよう
図 1
田沢湖周辺地図(電子国土ポータル
国土地理院より)
2HCl + CaCO3 ⇄ CaCl2 + H2O + CO2 ①
に、塩酸が主成分の田沢湖水と CaCO3 の反応では塩
ことを目的とした。また、(Ⅲ)太陽光発電を利用し
て、外部電力に依存しない田沢湖水の中性化が可能か
否かを検討した。
化カルシウム CaCl2 と、水 H2O、および二酸化炭素
CO2 が産生される。CaCl2 は塩であり、反応によって
塩が生成されるため、田沢湖が塩湖となる可能性があ
材料および方法
る。また、地球温暖化に関与すると考えられている
CO2 が、反応によって発生するため、CaCO3 を使用
した中和方法は、現在の地球環境にとっても考慮する
必要のある方法であると考えられた。以上のことから、
CaCO3 に頼らない田沢湖の中性化を検討する必要が
材料
(1)
塩酸水
市販の濃塩酸を蒸留水に加えて pH、あるいは濃度
を調整して塩酸水とした。
ある。
電気分解は、中学校の教育課程にも含まれる理科、
化学において物質の構成成分を分析する実験方法で
ある(7)
。教科書では、H2O の電気分解から水素 H2
と酸素 O2 が生成されること(7)
、電解質水溶液が電
気分解により電解質を分離できることが記載されて
(2)
田沢湖水
田沢湖水は、田沢湖発電所から玉川が田沢湖に流入
する場所付近で採取した。その場で pH を測定し、ペ
ットボトルに採取した後しっかりと蓋をした。学校に
搬入し、常温で保存して使用した。
いる(7)
。我々は、この電気分解が、HCl を主成分と
する田沢湖水の中性化に寄与できるのではないかと
考えた。そこで、我々の研究グループは、新規の田沢
方法
湖水の中性化方法を検討することを目的として、昨年
度から本研究を実施した。
昨年度の研究では、電気分解法が田沢湖水を中性に
できる方法の一つであることを証明した。しかし、こ
の方法によって放出される水素の利用方法を考えな
ければいけない。東北大震災以降、電力供給と利用方
法についての議論が慎重に検討されるようになり、再
生可能エネルギーの利用が注目されている。水素は爆
実験Ⅰ
水素の回収とその利用についての実験
昨年度の研究から、田沢湖水を電気分解すると水素
が発生することが明らかとなった。水素は爆発性のあ
る非常に危険な気体である。しかし、これを利用する
ことができれば、発電に利用することも可能である。
そこで、電気分解によって発生した気体の有効な利用
法について検討した。
発性の可燃性気体であり、扱いに非常に慎重になる必
要があるが、一方で水素燃料発電を用いて再生可能エ
ネルギーとして活用することができる。そのため、電
気分解によって発生する水素も水素燃料を用いた発
電に利用できると考えられる。
そこで本年度の研究では、
(Ⅰ)電気分解によって
酸性水を中性化したときに生まれる水素を回収し、回
収した水素を用いた発電方法を確立すること、
(Ⅱ)
同時に発生する塩素も回収し、その活用法を検討する
(1)
水素燃料電池の確認
水素燃料電池は、再生可能エネルギー学習セット
(上村メカトロニクス株式会社)付属の電池を使用し
た。この電池の有用性を確認するために、乾電池と電
気分解槽(再生可能エネルギー学習セット付属)を用
いて純水を電気分解し、水素と酸素にした。電気分解
槽からチューブで水素と酸素をプラスチックタンク
に貯蔵した(図 2)
。水素の発生量が 10 ml になった
じめに、発生した気体 4 ml を試験管に集めてマッチ
の火を近づけ、気体が燃焼するかどうかを確認した。
次に発生した気体を水素燃料電池に導入し、発電する
か否かを検討した。方法は、実験Ⅰの(1)と同様に
実施した。
(3)
田沢湖水の電気分解と発生気体による発電
昨年度の実験で、田沢湖水を電気分解したときに水
素が発生していることが証明されている。そこで、田
沢湖水 200 ml をホフマン電解槽に満たした。アルミ
図2
電気分解槽を利用した純水の電気分解
中央の青い電気分解槽で純水を電気分解し、写真左
電極を接続し、100 V で電気分解を実施した。実験Ⅰ
(2)−3)と同様に発生した気体を分析した。また、
にあるタンクに水素と酸素に貯蔵する。
水素燃料発電で発生している電気について、その電圧
ところで純水の電気分解を停止し、水素タンクから水
と電流はテスタを使用して測定した。
素をチューブで水素燃料電池に導入した。発生した水
素と、大気中の酸素の化学反応により、発電を行い、
LED とモーターに別々に、あるいは同時に電流を供
実験Ⅱ
太陽発電による田沢湖水の中性化
電気分解により、田沢湖水が中性になることは明ら
給した。
かとなっている。しかし、コンセントを利用すること
(2)
水素の回収方法の検討と気体の確認
1)ビーカーからの回収
は火力発電等を利用する電力会社が供給する電力を
使用していることになり、二酸化炭素排出を削減する
昨年度の実験により、ビーカーで田沢湖水を電気分
ことにもつながらない。そこで、再生可能エネルギー
解すると水素が発生することが明らかであった。そこ
の一例として太陽光発電によって田沢湖水の中性化
で 500 ml のビーカーに田沢湖水を 500 ml 入れ、上
が可能か否かを検討した。
に漏斗を設置した。アルミ電極を用いて定電圧 100 V
で 30 分間電気分解を行い、水素を発生させた。チュ
ーブを漏斗に接続して水上置換により水素を回収し
(1)
太陽電池の発電量
再生可能エネルギー学習セットに付属している太
陽電池(15.5 cm × 12.5 cm)を使用して、この太陽
た。
2)ホフマン電解槽を用いた水素の回収
ホフマン電解槽を用いて電気分解を行い、電解槽上
電池の発電量を計測した。太陽電池に直射日光が当た
るように遮蔽物のない場所にセットし、最大発電量が
部に発生した気体を水上置換により回収した。電気分
計測されたところで固定した。テスタを用いて朝、昼、
解に使用したのは、4%の塩酸水 200 ml である。説
放課後に電圧、電流を計測した(図 3)。電圧は、デ
明書にしたがい、4%の塩酸水と炭素電極を用いて定
ジタルマルチメーターの赤色テストリードを V・Ω・
電圧 10 V で電気分解し、水素を発生させた。
mA 端子に、黒色テストリードを COM 端子にそれぞ
3)気体の確認
れ差し込み、パワースイッチをオンにして計測した。
回収した気体の確認は、2 つの方法で実施した。1
電流を求めるとき、200 mA 以下を測るときは、赤色
つ目は、燃焼による実験と発電による実験である。は
テストリードを V・Ω・mA 端子に差し込む。201 mA
た。
(2)炭素電極を用いた電気分解
炭素電極を用いて田沢湖水の電気分解を行った。田
沢湖水 500 ml はビーカーに入れ、定電圧 100 V で電
気分解し、
その pH の変化を測定して記録した。
また、
電圧を 10 V に変化させて同様に実験を行った。pH
の変化は 15 分毎に測定して記録した。
図3
太陽電池を用いた発電量の計測
太陽電池の発電量をテスタを用いて計測した。
以上計測する場合は赤色テストリードを 20 A 端子に、
黒色テストリードを COM 端子にそれぞれ差し込み計
分解
アルミ電極と炭素電極を組み合わせて電気分解を
行い、pH の変化を比較した。100 V 定電圧で 30 分間
電気分解を行った。
測した。
(2)
(3)アルミ電極と炭素電極の組み合わせによる電気
田沢湖水の電気分解
太陽電池で田沢湖水を電気分解できるか否かを検
討した。500ml のビーカーに田沢湖水を 500ml 入れ
た。アルミ電極をビーカーに差し込み、+と−の導線
を太陽電池に接続して電気分解を実施した。電気分解
(4)発生する気体の量と pH の関係
田沢湖水 200ml をホフマン電解槽と炭素電極を用
いて 100V で電気分解し田沢湖水の中性化が可能か否
かを検討した。なお、実験は 5 日間にわたって継続し
て行った。
時間は 8 時から 16 時とした。田沢湖水の pH は、電
気分解される前と 13 時、および 16 時に測定した。
結果
実験Ⅲ
電極材質の変化による中性化効率の検討
実験Ⅰ
水素の回収とその利用についての実験
(1)
水素燃料電池の確認
電気分解によって田沢湖水を中性化した時に、陽極
側から塩素が発生している。しかし、その陽極側の発
生量が少量であった。また、より効率的な田沢湖水の
中性化を目的として、水素と塩素の単位時間当たりの
発生量を増加させる必要がある。そこで電極の素材を
変更することを検討した。
水素燃料電池の発電能力を確認するために、純水の
電気分解により水素と酸素を発生させた。その結果、
乾電池を電源にして、3 分で 10 ml の水素と 5 ml の
酸素が発生した。
ここで得られた水素を水素燃料電池に導入し、水素
(1)アルミ電極を用いた電気分解
500 ml の田沢湖水をビーカーに入れ、アルミ電極
を用いて田沢湖水の電気分解を行った。田沢湖水は定
電圧 100 V で電気分解し、その pH の変化を測定して
記録した。pH の変化は 15 分毎に pH 測定して記録し
燃料電池によって発電が可能か否かを検討した結果、
水素燃料電池は、発電して LED の点灯とモーターの
回転をすることが可能であった。また、水素の使用量
は増加するが、LED の点灯とモーターの回転、両方
を同時に行う電力を供給することが明らかであった。
れた気体は、水素であることが示された。
(2)
水素の回収方法の検討と気体の確認
1)ビーカーからの回収
田沢湖水を 500 ml のビーカーに入れ、電気分解を
(3)
田沢湖水の電気分解と発生気体による発電
これまでの実験によって電気分解によって発生し
行い、上部に設置した漏斗で気体の回収を試みた。し
た水素の回収方法と確認方法が確立できた。そこで、
かし、発生した気体の回収はできなかった。
田沢湖水を電気分解して、水素を回収した。その結果、
2)ホフマン電解槽を用いた水素の回収
定電圧 100 V で 30 分間の電気分解では測定できるほ
4%の塩酸水を電気分解した結果、陰極と陽極両方
ど気体が発生することはなかった。そこで、時間を延
に気体が発生するのが観察できた。陰極側に 20 ml
長して 150 分間まで電気分解を実施した。その結果を
の気体を発生させ、陰極側上部にチューブを接続して、
表1に示した。測定可能な気体が発生するまで 90 分、
水上置換で発生した気体を回収した。
その後一定割合で気体は発生しており、150 分では
3)気体の確認
ホフマン電解槽で回収した気体を同定するため、集
3.2 ml の気体を発生させることができた。この気体は、
マッチの火で燃焼させることができ、さらに水素燃料
気した気体の 4 ml を試験管に移し、マッチの火を近
づけて気体が発火するか否かを検討した。その結果、
4 ml の気体はポンと音を立てて燃焼した。
次に、気体をチューブによって水素燃料電池に導入
し、発電が起こるか否かを検討した。その結果、水素
燃料電池は LED の点灯とモーターの回転を行うこと
ができた。
以上の結果から、ホフマン電解槽を使用することで
電気分解によって得られる気体を回収できることが
明らかになった。また 4%の塩酸を電気分解して得ら
図 5 アルミ電極を用いた電気分解
左が陽極、右が陰極。陰極電極から水素が発生
しているのが見える。また、写真中央矢印部分に
析出した白い物質が観察できる。
発電装置により発電して LED の点灯とモーターを回
転させることもできた(図 4)ため、発生した気体は
水素であることが明らかとなった。
また、ホフマン電解槽の陽極と陰極の中間に白い析
出物が発生した(図 5)。これはビーカーで電気分解
を行った時に発生した析出物と同じものであると考
えられた。
図 4
田沢湖水の電気分解によって発生した水素を
使用した発電実験
水素燃料電池(写真左)により発電し、写真右の
LED が点滅している。
実験Ⅱ
太陽発電による田沢湖水の中性化
電気分解によって田沢湖水が中性化できることお
よび発生する水素で電気を発生させることができた
電源装置を使用することなく中性化することが可能
か否かを検討するために、再生可能エネルギーの一つ
として太陽光発電を利用して田沢湖水の中性化を試
実験Ⅲ
電極材質の変化による中性化効率の検討
本研究では、田沢湖水の電気分解で発生した気体の
みた。
有効利用を検討することであった。田沢湖水の電気分
(1)太陽電池の発電量
解の結果発生した水素については、水素燃料発電によ
表1
って電力供給源として利用することが可能であった。
太陽電池を用いた発電量
8時
13 時
16 時
しかし、陽極から発生する塩素については発生量が小
電圧
(V)
2.6
2.2
2.2
さく、集気するに至らなかった。そこで実験Ⅲでは、
電流
(A)
0.5
0.5
0.2
より効率の良い電気分解方法について検討すること
電力量(W)
1.3
1.1
0.5
にした。
朝 8 時に平均 2.6 V、0.5 A、1.3 W、13 時に平均
2.2 V、0.5 A、1.1 W、16 時に平均 2.2 V、0.2 A、0.5
(1)
アルミ電極を用いた電気分解
アルミ電極を用いて電気分解したときには、100 V、
W 発電していた(表 1)
。
30 分間で中性にすることができた。
(2)
(2)
田沢湖水の電気分解
炭素電極を用いた電気分解
太陽光発電を利用して電気分解したときの結果を
炭素電極を用いて田沢湖水を 100 V で電気分解し
図に示した。3 回の実験を行ったが、いずれの時も pH
た結果、開始直後からアルミ電極で電気分解した時と
5.3 前後から 8 時間で pH 6.7 前後まで変化した。以
比較して非常にたくさんの気泡が発生し、水温も上昇
上のことから、田沢湖水の電気分解は、太陽電池など
した。しかし、30 分間で中性にすることはできなか
の再生可能エネルギーを用いた 1 W 程度の電力量で
った。そこで電圧を 10 V に低下させ同様に実験を実
も可能なことが明らかになった。ただし、この場合は
施したが、pH の上昇は見られず、むしろ pH は低下
時間がかかり、500 ml の田沢湖水は総電力量 38 kWh
しているように見えた。
(図 7)
で中性化が可能であった(図 6)
。
(3)アルミ電極と炭素電極の組み合わせによる電気
pH
太陽光発電で電気分解したときの
pHの変化
分解
7.5
陽極炭素−陰極アルミニウム、両極炭素の 4 つ組み合
両極をアルミニウム、陽極アルミニウム−陰極炭素、
7
わせを一組ずつ作製し 100 V、 30 分、500 ml の条件
6.5
一回目
6
二回目
5.5
三回目
5
0
4
8
時間
で電気分解を行った。その結果、両極アルミニウムで
電気分解した田沢湖水の pH は、5.1 から 8.0 まで、
陽極ある陰極炭素で電気分解した田沢湖水の pH は、
5.3 から 7.8 まで、陽極炭素−陰極アルミニウムで電
図 6 太陽光発電で田沢湖水を電気分解したときの pH
気分解した田沢湖水の pH は、5.2 から 5.9 まで、両
の変化
極炭素で電気分解した田沢湖水の pH は、5.1 から 4.6
3 回の実験全てにおいて 8 時間で田沢湖水を中性に
することが可能であった。
とそれぞれ変化した(図 7)
。
以上のことをまとめると、両極に炭素電極を用いた
を使用した時と同様に中性にできた。
8.5
Al-Al
8
6.5
6
5.5
5
4.5
4
0
C-C
解した結果、
5 日間で 14 時間かけて行った結果、
24 ml
C-C(cont.)
の気体を発生させることができた。気体の燃焼実験と
Al-C(cont.)
水素燃料発電を利用した発電を行った結果、この気体
Al-Al(cont.)
は水素であった。pH は、実験開始前に pH 5.6 だっ
時 間(分)
30
発生する気体の量と pH の関係
ホフマン電解槽と炭素電極を両極に用いて電気分
C-Al
7
pH
(3)
Al-C
7.5
た田沢湖水は実験後には pH 3.4 まで低下した。以上
図 7 電極の材質を変化させて電気分解したときの pH
のことから炭素電極を使用しても水素は発生するが、
の変化
田沢湖水を中性にはできなかった。
Al はアルミニウム電極、C は炭素電極を示す。凡
例左側の記号は陰極電極に使用した材質、右側の記号
は陽極電極に使用した材質を示している。cont は通電
考察
しない場合の pH の変化を示す。
酸性化した田沢湖水を中性にするため、中和処理施
場合、田沢湖水の pH を上昇させることはできなかっ
設で CaCO3 を利用した中和を実施しているが、平成
た。一方、両極にアルミ電極を使用した場合、電気分
15 年以降の田沢湖の pH は大きな変化が見られず、
解によって pH は上昇して中性になった。電極を田沢
目標値の達成には至っていない(1)
。このことは、現
湖水に入れて、電気分解をしなかった場合、pH はほ
在の中和方法の限界と考えられる。また、反応生成物
とんど変化しなかった。また、アルミ電極を陰極に、
炭素電極を陽極に使用した場合は両極にアルミ電極
の問題である。玉川水は塩酸が主成分(1)で塩酸が
主成分の田沢湖水と CaCO3 の反応では塩化カルシウ
炭素電極を用いたときの水素発生量(ml)とpHの変化
30
6
水素発生量(ml)
25
5.5
pH
20
5
水素発生量
15
(ml)
4.5 pH
10
4
5
3.5
0
3
0
3
5
時間
8
11
14
(時間)
図 8 炭素電極を用いて田沢湖水を電気分解したときの水素発生量と pH の変化
炭素電極を用いて田沢湖水を 14 時間にわたって電気分解したときの水素発生量を左軸に、pH の変化を右
軸に示した。時間の経過とともに水素発生量は増加したにも関わらず、pH は低下した。
ム CaCl2 と、水 H2O、および二酸化炭素 CO2 が産生
による田沢湖水の中性化を成功させることができな
される。CaCl2 は塩であり、反応によって塩が生成さ
かった(図 7 および 8)
。200 ml の田沢湖水を電気分
れるため、田沢湖が塩湖となる可能性がある。また、
解して中性化した時に発生する水素の発生量は理論
地球温暖化に関与すると考えられている CO2 が、反
的には 2 ml である。この 10 倍以上である 24 ml も
応によって発生するため、CaCO3 を使用した中和方
の水素を発生させても中性化できなかったことは、田
法は、現在の地球環境にとっても考慮する必要のある
沢湖水の電気分解を炭素電極で行った場合、内在する
方法であると考えられる。以上のことから、CaCO3
HCl が分解されて発生したというより、むしろ内在す
に頼らない田沢湖の中性化を検討する必要がある。
る HCl が触媒となり水が電気分解された可能性が高
そこで本年度の研究では、
(Ⅰ)電気分解によって
いのではないかと推察された。一方 4%の塩酸溶液で
酸性水を中性化したときに生まれる水素を回収し、回
は水素を発生させることができたことから、田沢湖水
収した水素を用いた発電方法を確立すること、
(Ⅱ)
の塩酸濃度の小さいことが原因ではないかと推察さ
同時に発生する塩素も回収し、その活用法を検討する
れた。
4%の塩酸濃度は pH 1 程度であったことから、
ことを目的とした。また、(Ⅲ)太陽光発電を利用し
炭素電極を用いた電気分解は玉川原水では可能であ
て、外部電力に依存しない田沢湖水の中性化が可能か
ると考えられた。しかし、玉川水には大量の鉄が含ま
否かを検討した。
れていることから、電気分解によって電極に大量の鉄
電気分解によって発生する気体は、ホフマン電解槽
が析出する可能性がある。また、アルミ電極を用いて
で集気し、水素燃料電池に誘導することで発電を行う
田沢湖水を電気分解したときも、白い析出物がでてき
ことが可能であった(図 4)。このことは、田沢湖水
た(図 5)。この析出物がどのような物質なのか特定
の電気分解と水素の集気およびその電力への返還が
していないが、田沢湖水に含まれる元素が析出してい
一連のシステムとして利用が可能であることを示し
るのであれば、アルミニウムのような元素が想定され
ている。したがって、本研究で確立した方法は、田沢
る。これらの析出した元素を回収し、どのようにして
湖水の電気分解による中性化施設、あるいは工場のス
連続した中性化システムを構成していくのかを検討
モールモデルにできることを示唆している。
することが今後の検討課題になると考えられる。
一方、電気分解による田沢湖水の中性化施設のモデ
以上のことをまとめると、本研究によって以下の 3
ルができたとはいえ、火力発電を主力とする東北電力
つのことが明らかになった。①スモールモデルの田沢
供給の電力を利用していることに変わりはない。そこ
湖水の電気分解施設を提示することができた。②再生
で、再生可能エネルギーを利用して田沢湖水の電気分
可能エネルギー(太陽光発電)は、田沢湖水の電気分
解が可能かどうかを検討し、小規模の太陽光発電を利
解にも有用な電力供給源となり得る。③炭素電極を利
用して 8 時間の電気分解を行って 500 ml の田沢湖水
用して田沢湖の電気分解による中性化はできないが、
を中性にすることが可能であった(図 6)。このとき
玉川の中性化の可能性がある。これらの結論は、田沢
38 kWh の電力量であった。したがって再生可能エネ
湖の電気分解による中性化は決して絵空事ではなく、
ルギーが田沢湖水の電気分解にも有用であることが
可能性のある事業になり得ることを示している。
示唆された。このことは、田沢湖水の電気分解中和処
理施設は、独立した電気システムを利用して稼働する
ことができ、東北電力の電力供給エリア以外に建設可
能であることを示している。
また本実験では、炭素電極のみを利用して電気分解
今後の課題
本研究の実施により電気分解による田沢湖の中性
化施設の可能性を示すことができたが、より効率的な
(6)
クニマス情報
中性化を行うための電極をどのようにすればよいの
http://www.city.semboku.akita.jp/sightseeing/kuni
か、析出した物質は何か、どのように回収して田沢湖
masu.html
の電気分解システムを連続的に稼働させるのか、田沢
(7) 新しい科学 3 年
湖水を中性化するのが効率的なのか、玉川を中性化す
名
るのが効率的なのか、中性化した水の生物学的な影響
(2012) 東京書籍
中学校理科用
仙北市公式ウェブサイト,
岡村定矩、藤嶋昭
ほか 49
文部科学省検定済教科書
はどの程度などかなど、スモールモデルを実用化する
為には、まだまだ解決すべき問題が山積している。い
これらの課題を一つ一つ解決することによって田沢
研究発表実績
湖を中性化する技術を近い将来開発することが可能
になると考えられる。
研究発表
○
ぼくたちの地球温暖化防止活動
口頭発表
伊
藤惇平、加藤亜莉沙、進藤初音、高畑佑、関健斗、小
平成 24 年 6 月 28 日
松仁貴、簗崇文
謝辞
ロジェクト発表会 秋田市
農ク県連プ
優秀賞受賞
本研究は、すべて斎藤憲三顕彰会の助成を受けて実
施した。また、仙北市の全面的な協力のもとに遂行す
○
私達の地球温暖化防止活動
ることができた。この場を借りて感謝申し上げる。
平、加藤亜莉沙、進藤初音、高畑佑、関健斗、小松仁
平成 24 年 8 月 24 日
貴、簗崇文
ト発表東北大会
参考文献
○
口頭発表
秋田市
伊藤惇
農クプロジェク
優秀賞受賞
電気分解による田沢湖水の中性化によって酸性
(1) 玉川・田沢湖における水質改善, 第 77 回河川整備
される水素の利用法についての研究(仮題)口頭発表
基 本 方 針 検 討 小 委 員 会 ,
伊藤惇平、小松仁貴、簗崇文
1-1,
資 料
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseis
ASC 発表会
平成 25 年 3 月 17 日
秋田市(予定)
hin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/0709
26/pdf/s1-1.pdf
(2) 中和処理施設の概要, 国土交通省 東北地方整
備
局
玉
川
ダ
ム
管
理
所
,
作文発表
○
田沢湖にかける想い
http://www.thr.mlit.go.jp/tamagawa/01dam/04tyuw
業記録賞応募
agaiyo/index.html
12 月 21 日
(3)
田沢疎水は語る,
式
美の国秋田ネット
web
サ
秋田県公
イ
ト
http://www.pref.akita.jp/fpd/sosui/sosui-01.htm
(4)
環境白書
(2012)秋田県
(5) 田沢湖まぼろしの魚
杉山秀樹, 秋田魁新報社
クニマス百科 (2000),
伊藤惇平
第 40 回毎日農
毎日新聞秋田支局長受賞
平成 24 年
現地調査
○平成 24 年 5 月 11 日
○平成 24 年 9 月 9 日
田沢湖郷土史料館での取材
玉川原水、大噴の現地調査
おわりに
昨年度から実施してきた研究活動であるが、やっと今年度から本格的に実施できるようになった。活動 2 年目
を迎えた生徒もおり、実験の進め方や実験に対する考え方は少しずつ理解してきている。この中で生徒たちは研
究活動を楽しみつつ、ここで示したような結果を残してくれた。ここでまとめた文章は、斉藤憲三顕彰会に提出
した報告書の一部改変であるが、この報告書は斉藤憲三顕彰会奨励賞
銀賞を獲得した。今後の課題として、電
気分解の効率化を図る必要があること、生物学的な影響を調査すること、発生した水素や塩素の利用法など、解
決すべき課題は多数あるが、実用化に向けてこれからも指導していきたい。
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¬¬¬ 編集後記 ¬¬¬
平成24年度の「研究集録」がまとまりました。本集録の編集にあたり、多く
の先生方から原稿をお寄せいただきました。ありがとうございました。職員研修
の重要性が叫ばれる今日、本集録には校内外での多様な研修活動が納められてい
ます。
前年度に引き続き、学校のホームページからご覧いただく形としました。ご意
見・ご感想をお寄せいただけれけば幸いです。
《本年度研究集録担当者》
川越英伸
大沼克彦
佐々木悠華