e144. チンパジー飼育施設をむすぶ連結ケージの導入

チンパンジー飼育施設
チンパンジー飼育施設をむすぶ
飼育施設をむすぶ連結
をむすぶ連結ケージ
連結ケージの
ケージの導入
森村成樹1)・平田聡1) 2)・友永雅己1) 2) ・松沢哲郎2)
1)京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ・2)京都大学霊長類研究所
【はじめに】
第1飼育棟
第2飼育棟
(改修中)
第5飼育棟
熊本サンクチュアリ全景
野生チンパンジーは、遊動域内を1日に2~5km移動する。生活場所を様々に変えており、これ
に伴いパーティーも変化する。一方、飼育施設では生活場所や同居する個体をチンパンジーが
自由に決めることができない。熊本サンクチュアリ(KS)では、現在53個体が飼育棟2カ所に離
れて生活している。2012年4月、2つの飼育棟をむすんでチンパンジーの往来を可能にした
「連結ケージ」が完成した。まず、運動場1カ所と連結ケージを開放して、訓練を開始した。数個
体が分かれてパーティーを形成する、季節の変化に応じて快適な場所を利用するなど、生活に
選択の幅が広がった。チンパンジーが連結ケージを利用する様子を紹介する。
連結ケージ設置場所
仕切り
仕切り扉 の仕様
■ 離れた施設
れた施設どうしをつなぐ
施設どうしをつなぐ:
どうしをつなぐ:第1飼育棟 ⇔(第2飼育棟)
飼育棟) ⇔第5飼育棟
約15m間隔で仕切り扉を設置した。移動の
補助だけでなく、闘争が起きてもチンパン
ジー達を分けられるようになっている。
仕切り扉の開口は他の所よりも低くし、扉の
軽量化とチンパンジーの分離に適したものと
なっている。
連結ケージの仕様
総延長154m
縦1.3m×横0.8m
集団で移動するため、縦横の
サイズはチンパンジーどうしが
ケージ内ですれ違うことを考慮
した。
熊本サンクチュアリ施設図
第1飼育棟
第5飼育棟
第1飼育棟
第5飼育棟
POINT
1.53個体すべて
のチンパンジーが
1つの設備を共有
できる。
2.チンパンジーが
大きく移動できる
ようになり、途中
の様々な環境を利
用できる。
連結ケージ
連結ケージを
利用するチンパンジー
ケージを利用する
するチンパンジーの
チンパンジーの様子
仲間との移動
長く伸びる連結ケージでは、ひとりまたは数個体のパーティーに分
かれては再び全員が集合する「分裂凝集」が出現した。
休息する
緑化
ケージに慣れてくると集団で座って休むようになった。望めば、ひとり離れて横になることもできた。右側のノリ
オは、日の当たるところを選んで休んでいた。
鉄製のケージは、夏に熱くなり、冬は冷たく
なる。温度の影響を和らげるためにケージ
の緑化は欠かせない。
ミノリ
サッチ
チンパンジー⇔ニホンザルの観察
グルーミング
食べる
連結ケージは、ニホンザルの飼育ケージの横を通過する。チンパンジーは何度もニホンザルケージを訪れて
観察した。ニホンザルはチンパンジーから十分に距離を置くことができたが、頻繁に近寄り、チンパンジーを
威嚇したり、行動を見ていた。
ケージに慣れてくるとグルーミングなどが出現するように
なった。他の社会交渉(追いかけっこなどの遊び)も観察
された。
途中に生えている草木や果実を取って食べることができた。
季節ごとに食べるものが変わり、植物に与えるダメージも少な
い。
【まとめ】
○チンパンジーは安全に連結ケージを使用した。
○飼育チンパンジーが自然に分裂凝集し、運動場では見られない行動が出現した。
○人間とチンパンジーの双方にとって価値のある設備であることが確かめられた。
【謝辞】
人間の
謝辞】霊長類研究所特別経費プロジェクト「
霊長類研究所特別経費プロジェクト「人間の
進化」の支援を受けた。京都大学霊長類研究所、京
都大学野生動物研究センター、熊本サンクチュアリの
都大学野生動物研究センター、熊本サンクチュアリの
スタッフに深く
感謝したい
したい。
。
スタッフに深く感謝