業技 - 日本森林技術協会デジタル図書館

昭和26年9月4日第三種郵便物認可平成2年7月10日発行(毎月1回10日発行)通巻580号
ISSNO388-8606
業
■1990/NO
R
I
業技
580
UTS
U
の測量・測定器
牛
高し 晴度と機動性を追求したレベル付トランシットコンパス
高感度磁石分度、帰雰式5分読水平分度、望遠鏡
付大型両面気泡管等を備えて、水準測量をはじめ
あらゆる測量にこの一台で充分対応できます。
唱レ
望遠鏡気泡菅:両面型5.2%ミラー付
磁石分度:内径70%1.又は30目盛
高度分度:全円1.目盛
水平分度:5分目盛O-bac帰零方式
望遠鏡:12倍反転可能
-25
ベ ル ト ラコ ン
菫霊fl300g
●
二人が同時視できる最高水準の双視実体鏡
一︽
(牛方式双視実体鏡)
コンドルT-22Y
蒙謹
雪
蕊
雛 …
たコンピュータ内蔵座標計算式面積線長測定器
直線部分は頂点をボイントするだけ〃型の場合
は円弧部分も3点のポイントだけで線上をトレー
スする必要がありません。微小図形から長大図面
まで、大型偏心トレースレンズで座ったままのラ
クな姿勢で測定できます。亨型はあらゆる測定デ
ータを記録するミニプリンターを装備し、しかも
外部のコンピュータやプリンターとつなぐための
インターフェイスを内蔵しています。
<特長〉〉■直線図形は1頁点をポイントするだけで迅速測定
■曲線図形も正確に計れる
■面積のほか、線長を同時測定
■縮尺単位を反映して自動計算
■線分解能:005mmの高性能
■コードレス、コンパクト設計
■偏心トレースレンズとダイヤモンドローラー採用
感
│
X-PLAN360i
エクスブラン
デ ー ア イ
X-PLAN360d/360L
■3点ポイントによる円弧処理
■カタカナ表示の操作ガイド
■座標軸が任意に設定できる
■データのナンバリング機能、等
血牛方商会雷諦號獺¥認
繍鑿擬霧
X1990NqSSO
<論壇>貿易摩擦に伴う木材加工・流通の変化・・・行武潔…2
目 次
木場に見る木材需要の変化
高田庄一…7
木製家具産業と木材利用の現況
古澤富志雄…11
リゾート開発と国有林野の活用
吉田
いわゆるゴルフ場問題とは何か
藤原信…19
治…15
森へのいざない−親林活動をサポートする
西 平 直
一二宮
4.青春と森林との出会い…..……・……・・‘
23
木の名の由来
表紙写真
深津
小林義襄2$
28.エンジュ(槐)
第37回森林・林業
写真コンクール
三 席
「ログハウス」
(宮城県仙台市にて)
森への旅
16.大杉谷の秘めるもの
.…岡田喜秋・・・30
<会員の広場>
ゴルフ場公害の批判にこたえて….、
中村健次郎…38
林業用保護帽を考える
−夏季炎天下における対策
辻井辰雄…39
岩手県釜石市
嶽間澤寛芳
へ絞
I
刈り
ーズ、卜
戸︻J
毎二Jタ
唾ン一
コ曲りp
ンレオ
一昼
技術情報一…・・・
農林時事解説・……・
統計にみる日本の林業
林政拾遺抄..-.…‘
木と住まいの美学…・.
豚
1990.7
27
本の紹介・・・・・・・・……
34
32
こだま・・・………・…・・
35
32
JournalofJoumaIs………
36
33
林業関係行事一覧(7.8月)
43
34
平成2年度r空中写真セミナー』開催のご案内……・・・・・
平成2年度山火事予知ポスター「図案」「標語」募集要領
46
執務時間変更のお知らせ.…・…・…・………...…..…・…....
46
10
2
︾調
壜
貿易摩擦に伴う
木材加工・流通の変化
ゆ く た け き よ し
行 武 潔 *
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“国産材時代の到来”という声を聞くようになってから久しい。しかしなが
はじめに
ら,枠組壁工法構造用製材のJAS規格の制定,SPF製材,単板,合板,針
葉樹合板の関税引下げ等の実施を余儀なくされ,最近では木材がスーパー301
条の適用対象品目に指摘されるなど,市場解放の外圧は木材品目に余すところ
なく及ぼうとしている。昭和60年以降に生じた急激な円高を始めとするこれら
の外圧は,国産材時代の到来どころか国内林業の存続をすら危うぐしかねない
状況にある。本稿ではこれら貿易摩擦に伴って,わが国の木材加工・流通がど
う変わってきているのか,また今後どうなるのか,紙面の許すかぎり検討して
みようと思う。
昭和62年は167万戸の新設住宅着工戸数に支えられ,1億㎡以上の需要を生
外材の流通
じたが,初めて為替レートが150円/ドル以下で1年間推移した。国産材は全体
の需要が昭和54∼55年以来の1億㎡台であるにもかかわらず,対前年比3%の
減少,3000万㎡台をかろうじて保った。一方,外材は合単板の関税撤廃がなか
ったにもかかわらず,2.4倍以上伸びたのを中心に,米材製材品等の製品輸入が
著しく増大した。円高のみならず,内需拡大策に伴う住宅需要の増大が輸入材
の増加をもたらしたとはいえ,以前にも増して,国産材を取り巻く環境が厳し
くなってきていることを物語るものである。
月間5,000㎡前後以上を挽く最新の製材設備を投資した大型外材工場は,昭
和62年現在全国に33社ほどである。このうちの約10社が広島県下の松永,廿
日市,呉に集中している。広島県の全国における外材製材品の出荷比率は全国
第1位で約1割を占め,全国でも有数の外材,わけても米マツ製材品の生産,
供給基地として位置づけられる。中でも呉市のC木材は米マツ専門挽工場で,
月間原木消費量70,000㎡余,年間にして実に90万㎡に及ぶ。宮崎県の製材工
場入荷量が昭和61年で97万㎡であるから,ほぼ宮崎県全体の原木消費量に匹
敵する量を1社で挽いていることになる。同社の輸入原木は1港積1港卸のワ
ン・ワン・ベース,米国からの海上運賃は3,000円/nf前後,この海上運賃を含
めた製造・流通経費は9,000円/nf程度で済むという。C木材は電算機の導入に
より,大量輸入→大量生産→大量販売方式を,徹底した合理化とシステム化に
*宮崎大学農学部
よって達成した。その出荷先は7割近くが小売で,出荷地域は地場のほか,東
林業技術No.5801990.7
3
京,大阪,中部,東海等である。経営規模はC木材ほどではなくとも,同様の
徹底した生産,流通の合理化,システム化を図った工場が広島のみならず各地
の港湾で増加してきている。
同じ広島県下のK木材は長年地マツ主体の製材工場で,原木消費量は560㎡/
月であるから,従来の工場としては大規模である。しかしながら,最近港湾の
大型外材専門工場に押され,より付加価値を高めるべく2年ほど前から,プレ
カットして住宅部材のセット販売を始めている。今後は,従来の製材主体の事
業形態から,小売または付売重視の事業形態への転換も考慮しているという。
このように,最新設備を導入した大型工場に押され,従来の製材工場はなん
らかの形で事業の転換を迫られてきた。従来の外材専門製材工場は,長期にわ
たった市況低迷と,増加傾向を示す低廉な製材品輸入の対応策として,前述の
ような徹底した合理化を行い低価格にも耐え得るコストダウンを図るか,特注
を受けて挽く程度の付売問屋的外材工場となるかの選択を迫られたといえよう。
後者の場合,単に付売問屋としてだけでなく,プレカットや,従来メーカー側
が及ばなかった住宅建築など最終消費市場にまで足を踏み入れ,末端消費者や
大工・工務店等のニーズを調整するサービス部門重視の業種へと転換を余儀な
くされてきているようである。
国産材の製材品がこれだけ合理化され,コストダウンを図られた外材製材品
を相手に競争できるであろうか。耳川林業地域の中核的存在として期待を寄せ
ている宮崎県東郷町のスギ製材工場において,日産70nfベースにおける生産,
流通コストの試算事例を見てみよう。日産220∼240nfの新鋭大型米ツガ専門
工場の42,000円/㎡と比べて,工場販売原価費は41,000∼43,000円/㎡とさほ
ど相違はないものの,輸送費込の総費用では3,000∼5,000円/㎡程度高い。宮
崎県産材を取り扱っている東京の問屋は,国産材に対する消費者の嗜好,評価
が高いとはいえ価格差5,000円/㎡では厳しく3,000円/'Tf程度でなければ,米
ツガとの競争に対抗し得ないという。
全国木造住宅機械プレカット協会は昭和60年9月5日24社で結成,昭和62
年12月10日現在48社と,わずか2年ほどの間にAQ認定工場が倍増してい
プレカット工場の急
増
る。AQ認定ではなくとも,ライン化されたプレカット工場は約250工場,な
んらかのプレカットを行う単体機械を有する工場は400工場あまりあるという。
プレカット住宅は昭和57年は約9,000棟であったが,昨年の住宅ブームで急
増,昭和62年実績で33,000∼35,000棟に及んだという。そのうちの約6割が
関東,東海等の大都市圏である。このようなプレカットの急激な増加は,昨今
の住宅需要の増大もさることながら,大都市圏における大工技能者の不足,住
宅需要ニーズにこたえ,良質で安価な木造住宅を安定的に供給すべく,在来型
軸組工法および木材業界が対応したことなどが挙げられようが,上述のような
円高に伴う外材製材品輸入の増大,外材専門挽き大型工場の増設などとも無縁
ではなさそうである。
プレカット工場の事例を2∼3紹介しよう。川上,川下の協同組合組織とな
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っているTはすべて組合員の賃加工であり,昨今の住宅ブームに乗ってかなり
の利益を上げた。しかも各組合は得意先の信用を得て需要が増大する,また地
元スギ材も以前より販売量を増すなど大きなメリットを得ている。同じ組合組
織であるKKは,プレカット材を組合員である地元工務店に販売,工事現場に
直接納入している。東濃ヒノキというブランド商品を持っているため,その営
業範囲はきわめて広く,東北から中国,九州にまで及んでいる。また,Iは,
自社のプレカットおよび施工などのノウハウを基に,品質管理の統一,住宅供
給体制の合理化,品質向上の名の下に,全国に37営業所・展示場と6工場に及
ぶグループ会社を組織化している。
プレカットエ場の場合,直接製材工場から均質の良材を入荷しているケース
が多い。プレカットが今後ますますそのシェアを拡大していけば,木材流通は
いっそう短絡化するものと思われる。プレカットに使用される樹材種は,梁・
桁がほとんど米マツ,柱・筋違い等は米ツガ・スギ,土台は防腐処理米ツガ・
ヒノキ,化粧柱・造作材等はヒノキ・集成材等が使用されている。全体の使用
比率は米マツ,米ツガ等の外材が75∼80%以上,スギ,ヒノキが20%前後で
ある。今後プレカットが増加してくると,一般用材における外材の使用比率は
いっそう増えることになろう。特に,乾燥度が高く良質材の多くなった本国挽
きの増加が予想される。スギの梁・桁利用は宮崎県くらいのものであるが,プ
レカット向けの国産材製品の開発が強く望まれる。
首都圏における木材
流通
新幹線,JR,私鉄等の新設増設等に伴い,異常な広がりを見せている首都
圏域で,特に顕著な流通の変化が見られるのは千葉と茨城であろう。両県とも
昭和60年ごろを前後して,都心寄りでは都市消費型の流通となり,従来の県内
流通機構とは様相を異にしている。
千葉県の新設木造住宅着工面積は,昭和63年度で首都圏第1位の埼玉県とほ
ぼ同じ412万nf,首都圏のベット・タウンとしていっそう重要な地域となって
きている。昭和61年に浦安にT市場およびU木材センターが設立され,東京に
隣接する県北と県南の流通はいっそう大きな違いを示すようになった。都心寄
りの県北では,製材品のほとんどがセンター,市売りおよび東京,埼玉等の卸
売業者から小売業者の手を経て,大工・工務店に販売される東京型の流通とな
っている。一方,県南は従来の流通機構をほぼ維持しており,原木は,外材は
東京の問屋から,国産材は主に素材業者の手を経て原木市売りからと,林家か
ら直接入荷されている。製材工場の出荷は,大工・工務店への販売と製材工場
の兼業である住宅建築へ向けられている。
茨城県は昭和59,60年の筑波万博を境に,県南部に大手ディベロッパー等の
東京資本がいっそう進出してきたことにより,県下の流通は茨城県北部と県南
部により大きく異なってきた。すなわち,県北西部はほぼ従来どおり,地元の
市売り3市場を中心に地元県産材のほか福島,栃木等との材の交流が行われ,
なめがた
東京,埼玉へも出荷されている。しかし,鹿行(鹿島・行方)等県南は,県外
資本による2市場を中心に地域内に流通,消費される。県南は昭和52年に始ま
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った筑波研究学園都市建設に伴い,昭和54∼55年の住宅ブームにも乗って,宅
地開発が積極的に進められてきた。最近では,東京都内の土地価格急騰により
その代替地として,いっそう住宅地開発等に拍車がかけられ,県南の大工・工
務店の多くが大手ディベロッパーや大手住宅企業の傘下に属するようになった
という。このように,拡大した首都圏域の木材流通は,都心寄りでは県外資本
であるセンター,市売り等の卸売業者から小売業者を経て大工・工務店に販売
されるか,直接大手住宅企業が介入して建築を行っている。上記のプレカット
エ場の急増とともに,自社調達の製品を使う後者のケースが増えてきている。
日本木造住宅協会が最近行った大手木造住宅企業の調査結果によれば,次の
ようなことが指摘されている。第1に,機械プレカットの導入を契機に,購入
先がより川上にシフトした所からまとまって木材が買えるようになり,木材流
通のパイプが太く短くなってきたこと,第2に,住宅建築が200∼300棟以上に
なると国産材では対応できず,外材に頼らざるを得ないこと,第3に,造作材
もプレカットを増やし,大工がいなくても住宅建築ができるようにするなど,
今後いっそうプレカット化は進み,それに見合った住宅資材が要求されるよう
になろう,等である。プレカットの進行は,木造住宅の組立てを容易にし,大
工技能者の作業そのものも変えていくであろう。企業はすでにそれらを見越し
た,より分業体制の進んだ効率のよい施工を可能とする技術者を養成する学校
を自ら設立している。
また,筆者らが昨年行った首都圏木材販売業者アンケート調査の結果,卸売
業者の製材品販売先は回答者110件のうち小売店が94件,小規模大工・工務店
30件,大手建築業者31件と,建築関係へ直接販売している業者が61件もい
た。昭和60年以前は卸売業者から直接建築業者へ販売されるケースはあまり見
られなかったという。
わが国の経済が,円高になんとか対応できたと思うのもつかの間,一変して
木材加工・流通の今
後の課題と展望
今度はスーパー301条が登場,わが国の木材市場の全面開放を要求している。
このように,日米貿易摩擦はまた新たな展開を見せ始めた。これら日米貿易関
係の変化とともに,昨今の木材流通の動きは,多様をきわめている。上記の大
規模外材製材工場の増加やプレカットエ場の増大等に伴う流通短絡化の傾向の
ほか,今後の課題と予想される変化として,主に次のようなことが指摘されよ
う
。
(1)国産材の集散機能と価格の標準化の機能を果たし,重要な流通の担い手で
あった製品市売市場が,最近では競売にかからない製品が5割以上に及んでい
るようである。これら市売の中には,小売を相手の事業は先が見えた,木材の
みにかかわらない異業種を含めたコングロマリット的な事業の展開が必要だ,
という者もいる。
(2)このような従来の流通機構に危倶の念を抱く理由は,1つは大工技能者の
不足に加えて都市部における小売業者の後継者問題にある。つまり,土地の価
格が高く,人口密度の高い都市部ではマンション,スーパーマーケット等の経
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営を兼ねている場合が多く,後継者はあえて木材販売業を行う必要がないよう
である。また,従来の木材流通には末端の消費者のニーズにこたえて新製品を
開発し,新たな需要拡大を図り得る担い手がいなかった,木材は角,割,板に
すれば売れたといった観念を払拭しきれていないことが指摘される。
(3)大工技能者不足のおりから,今後住宅資材は,製材のみならず,集成材,
フローリングおよびその他窯業系資材も部材化,工業製品化がいっそう促進さ
れよう。
(4)末端の消費者ニーズを把握し,着実に自らの事業を伸ばしているのは大手
の建材店やビルダーである。彼らは加工も建築も,場合によっては製品の輸入
も行う。これらの業者は大手商社の系列に属するものも多く,住宅の輸入につ
いても具体的な計画を進めており,これらの業界ではすでに輸入住宅ブームが
起きつつある。
(5)首都圏等では,産直住宅はかなり前から見られた。最近では,高知県土佐
町のように大消費地の大手工務店と組んで大工さん込みで材料を送り,棟上げ
までを産地側が請け負うという,いわゆる産直の「材工パック」方式が消費地
の大工不足に伴って増えてきつつある。宮崎県でも昨年から同様な産直方式が
生じている。
スーパー301条のねらいは,針葉樹合板を利用した2×4ならぬ4×8モジ
ュールの針葉樹合板を用いた住宅の輸出と,「日本が国内林業を近代化する前に
米国の市場を確固たるものにしよう」(19893全米林産物協会(NFPA)の
米政府への意見書)にあるようである。これまで,わが国の経済は波及効果の
大きい住宅の振興を目玉に,しばしば不況を乗り越えてきた。もし,このサイ
ズの違う住宅輸入が増大すれば,木材業界のみならずほかの製造業等に及ぼす
影響は少なからぬものがあろう。国内林業が今後存続していくには,良質材な
らいざ知らず並材が,従来の木材加工・流通経路を踏襲していたのでは,時代
に取り残されるであろう。これからの木材供給は,現物を見なくても,多様化
した消費地の要望に即座にこたえ得る供給体制の確立が不可欠である。いま,
林業・木材産業を取り巻く経済環境はかってない速度で大きく変わろうとして
いる。行政,川上,川下等の木材関係者が英知を結集して新たな産地化を図る
ことが急務である。
<完>
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7
高田庄一
木場に見る木材需要の変化
’
始まったころも,輸入の主体は原木であり,その
はじめに
世界最大の都市,高度情報化都市,24時間不眠
最盛期であった1960年代から70年代ころまでは,
都市,日本の政治経済の中心東京を形容すること
東京港でも木材専用船が列を連ねて荷降ろしして
ばはいくつもあります。そのように,非常に早い
おり,それはもう壮観なものでありました。その
テンポで変ぼうする東京にあって,江戸時代から
の古き伝統を受け継ぎ,下町気質のきつぷのよさ
ころでも,米材のうちで,アラスカおよびカナダ
については,原則的には原木での輸出が禁止され
が身上と,マスコミにも広く宣伝されているわが
ており,アラスカからはスプルース・米ツガのキ
木場の木材業界でありますが,業界内部の変化は
ャンツ(丸味付厚盤),カナダからは,ベビーとい
近年確実に,しかも急激に起こってきています。
に掲げる,いくつかの点について述べてみたいと
われた4インチ角などが主に輸入されていた程度
であり,あくまで輸入の主流は原木でありました。
あるとき,あまりの大量入荷に貯木場不足が表面
化し,輸入商社や一次問屋において,置場の確保
思います。
ができない場合は,入港が認められないといった
表題の『木場に見る木材需要の変化』には,非
常に多岐にわたる視点がありますが,ここでは次
まず第1には,外国産木材(現在約90の国や地
事態も起きたほどでした。元来,京浜4港(東京,
域から輸入していますが,以下,全体を総称して
横浜,川崎,千葉)のうちで,公共水面貯木場の
あるのは東京,横浜の2港のみであり,狭く,か
つ小規模で各所に点在するといった状況でありま
した。新木場移転が開始されると,貯木場はその
地先水面に集約され,従来の貯木場は相次いでな
くなっていきました。これらの傾向は,木場の木
「輸入材」とします)の大幅な伸びに伴う物流の変
化。第2に,木場より新木場への移転に伴う企業
構造の変化。第3には,近年の土地高騰に伴う都
市構造の変化等々であります。また,直接的には
関係ないとは思いますが,木場業界人の,木材に
取り組む姿勢の変化についても最後に触れてみた
材業界の体質の変化とも無関係ではありませんで
した。人件費の高騰と,製材工場従業員の高齢化
等により,原木より現地挽製品・半製品へと傾斜
いと思います。
輸入材の攻勢
を深めていったのであります。
1)輸入形態の変化
かつての木場は,縦横に水路が走り,そこには
いかだ
内地材,輸入材を問わず,筏組みされた原木が係
かわなみ
新木場移転に際し,製材工場経営者は,木材工
業団地化において先行していた,名古屋の西部木
留され,川並といわれる筏師たちが,長鉤を操り
材港を十分に参考にして設備投資に入っていきま
各問屋の店下や,製材工場へ筏を回漕する様は,
した。ある工場では,製材機械を取り外せばすぐ
東京下町の風物詩として,各マスコミに数多く取
貸倉庫に転用できるように設計しましたし,また,
り上げられたものでした。また新木場への移転が
ある工場は,広い敷地のほんの一部だけ再割工場
かいそう
林業技術No.5801990.7
8
をつくって遊休地を多くし,次の変化に備えまし
た。そして,大多数の工場は大径木を挽く機械は
設置しませんでした。新木場移転が完了して,数
年を経ずして現地挽大量輸入時代を迎えたわけで
すが,当時,その先見性をはやす声も一部には出
ていました力蛍,実際は窮余の一策がたまたま的中
した,といってよいと思います。
私の会社においても,取扱い樹種が俗に色物と
呼ばれる米ヒノキ・米アスナロ・スプルース・米
スギ等の原木であり,特に水面貯木場の使用が絶
対条件でしたので,そのつど,貯木場の確保に苦
心しましたし,また,量的には一度に大量に入る
ものではありませんでしたので,大量入荷材であ
る,米ツガ・米マツとともに千葉や川崎の陸上貯
木場に荷揚げされ,後でトラックにより東京の水
面貯木場まで移送することが多く不経済だったこ
と,産地側の丸太輸出規制問題の発生により,良
材入手が困難になったことなどにより,1980年代
に入って徐々に原木と製品・半製品の取扱い比率
を変えていきました。そして現在では95%が現地
挽製材品の取扱いとなっており,原木問屋の看板
を外さなくてはならないほどになってしまってお
ります。
2)少品種大量輸入時代から
多品種少量輸入時代へ
最近の輸入材の動向は,1985年のプラザ合意以
来の円高傾向により,いっそうの輸入環境の良化
が見られます。現在輸入材のシェアは70%を超え
ておりますが,産地国の製品化,それも完成品で
の輸出願望はますます強くなってきており,また
日本国内の乾燥材指向や,新しい形での日本向け
サイズのニーズの増加等,過去に見られなかった
石)でつくられています。しかしながら,一部ア
メリカの日本向けを主力にしている工場は,現地
では中小規模の所が多く,自分の手持ちの山の材
を挽くのではなく,買材が主体のため,材価の高
値を吸収すべく,日本側の意見を積極的に取り入
れるあらゆる努力を払っています。
ひとつの例を挙げますと,従来のインチ建てサ
イズからセンチ,ミリ建てサイズへの転換を進め
ていること,例えば361m×45mの垂木,27mx
105mmの間柱,しかも関東サイズと関西サイズを
挽き分けており,名古屋以西には間柱では30mmx
105mを揚げております。そして格付けもCLR,
STANDARDといったものではなく,1等,2等
といったものにしています。特筆すべきは,JA
S(日本農林規格)を十分に分析・研究しており,
その基準を最低線の許容範囲として,その基準値
以上の製品を作る努力をしているということです。
36mn1×45mの垂木は内地挽と同じ9丁ずつ結束
してありますが,その中に1∼2本無節のものを
混ぜることがあるとか,27mm×105mmや301mX
1051IIInの間柱においては,これも5丁ずつ結束し
てあり,その中に切り使いすれば枠材になるもの
を混ぜてある,ということをしています。そして,
もはやアメリカ西海岸,特にワシントン州やオレ
ゴン州ではすでにHASHIRA(柱),MABA-
SHIRA(間柱),HIRAKAKU(平角),TARUKI
(垂木),MOYA(母屋),NEDA(根太),ITTO
(1等),NITO(2等)は立派な英語となって工場
の中を飛び交っているといっても過言ではありま
せん。
3)現在,輸入材のイニシアティブは
だれが握っているのか
新しい動きが顕在化してきています。従来の日本
次に述べます点は,この項でもっとも重視しな
向けサイスとは,暗インチ角や鑑インチ角のよ
ければならないと私が思っている,流通形態の大
きな変化という点であります。従来の現地業者→
輸入商社→第1次問屋(または大規模製材)→第
2次問屋守中小規模製材という流通(商社主導型)
から,製材品の輸入増加とともに,各業態間の区
分が不明確になりつつあるということです。木材
うに,3寸5分,3寸といった日本独特の寸法に
現地サイズを近づけて製品化するといった形であ
り,格付けも産地側の規格に準拠するというもの
でありました。今もそれらは入荷していますし,
やはり主流ではありますが,それらは主としてカ
ナダやアメリカの大型工場(日産3,000∼4,000
林業技術No.5801990.7
不況がいわれ,我々の業界が深刻な事態を迎えた
9
1970年代後半から,輸入木材取扱い商社において
新木場を倉庫など港湾関連施設のみしか建設が認
は,問屋の注文を受けてから現地で買付けをする
められない臨港地区に指定し,用途制限の網をか
「つなぎ商売」に徹するようになってきました。商
ぶせてしまいました。この決定の際新木場の業
社は現地業者から売り玉の情報を入手し,問屋に
者はこぞって反対しましたが,そのときの主張が
値段を付けさせ,そして成約の暁には所定のコミ
この項の表題にした「木材業者は港湾業者か」と
ッションを受け取ります。外国取引には付き物の,
いうことでありました。しかしその後の木材不況
為替のリスクは問屋が負担し,商社は口銭商売に
時代に,相次いで新木場の製材工場が閉鎖してい
徹するという形であります。この形態は,初め危
き,倉庫やトラックターミナル,そして宅配便業
険率の高い色物丸太が主体でしたが,現在では商
者の配送センターに衣替えしていったのは,自社
社自体が現地自社生産をしているもの以外は,す
の存亡をかけたとはいえ,初めの主張から見ると
べてこの方式といってもよいと思います。この方
皮肉なものでありました。
式ですと,商社は取引きしている問屋に量的に多
2)港湾諸施設の充実が輸入材攻勢へ後押し
くの材を買わせないことには,自分自身の経費も
輸入製材品の増加の近年著しいことは前述しま
出ないことになるため,いきおい,つごうのよい
したが,それとともに現地乾燥材の入荷の伸びは,
情報だけを流し,買い気を誘うようなことも起こ
一般輸入製材品の伸びをはるかにしのぐ勢いがあ
ります。外材の慢性輸入過剰時代に入ったのもこ
ります。それらは野積みにするわけにもいかず,
れが一因であります。その後,前述した産地側の
上屋倉庫の需要がますます増えてくる状況です。
日本向けサイズ指向の高まりとともに,商社を通
製品専用の東京木材埠頭においても,数年前から
さず直接問屋へのアプローチを始める現地業者も
簡易倉庫を次々に増設していますが,入荷量の増
現れ始め,コンテナ輸送の普及とともに,好きな
大に追いつけない状況で,未乾燥高級材が屋外に
ときに,好きな物が,好きなだけ直接入手できる
野積みされるという矛盾が生じています。これら
ようになってきています。木場業界においても,
の傾向は我々木材業者にとって憂慮せざるを得な
以前のような明確な形での1次問屋と2次問屋の
い一面を持っています。加工度,完成度の高い木
区分はなくなってきています。結論めいた言い方
材製品の輸入は既存の流通体系を否定する形で進
をすれば,近年木場においては,過去に,よく枕
められており,例えば,大手住宅メーカーの手で
詞のように使われた「商社が」r商社が」というこ
直接輸入される木材製品が急増しています。いう
とばは,とんと聞かれなくなりました。
なれば,木材業者の手を経由しない木材製品が増
新木場移転に伴う業界構造の変化
えているということであり,昨年来進んでいる産
1)木材業者は港湾業者?
地工場のJAS認定化とともに,将来非常な脅威
前項において,私はかなりのスペースを取って
となるのではないでしょうか。
輸入材のことに触れました。本誌読者の大多数が
国産材になんらかのかかわりがあることは承知の
土地価格高騰による都市構造の変化
私が,昭和63年度日本木材青壮年団体連合会の
うえで,あえて自説を述べてみました。それは,
会長を務めていたとき,全国を回っていて各地の
昭和40年代から始まった新木場への移転が,輸入
会員から必ずいわれたことは,「東京の地価の値上
材の取扱いを前提にしてすべてが成り立っていた
がり,すごいですね」とか,「新木場の地価は,今
からです。そして追い打ちをかけるように,昭和
50年代初めには,輸入製材品大量入荷時代を予見
いくらするんですか」でした。中には,「銀行から
金が借りやすくなったでしょうね」とまで言う人
するかのように,新木場の隣接地に3船同時荷役
もありました。これら指摘されたことはすべて事
力乱可能な大輸入製材品専用埠頭が完成いたしまし
実ですし,また,買い値よりもかなり高値で取引
た。しかも,ほぼ新木場移転が完了した時点で,
きがあったことも風聞しました。そしてこの土地
林業技術No.5801990.7
10
の高騰が新木場地区にも少なからぬ影響を及ぼし
る環境保護運動の高まりからくる供給不安に対処
ました。工場従業員の高齢化による能率の低下と,
できるのか,といった問題もあります。
若年労働者の補充難に伴う工場の閉鎖と他業種へ
そこで,今後の新木場生き残り策の私見を述べ,
の転貸は,前述したとおりです。東京木場製材協
この拙文のまとめとしたいと思います。
同組合に加盟している組合員約90社中,なんらか
輸入材の乾燥・完成品化攻勢と,それに伴う流
の形で工場が稼働しているのは,44∼45社にす
通体系崩壊の兆しに対するには,国産材のいっそ
ぎなくなっているのが現状です。
うの需要拡大をもってあたることがもっとも有効
すでに消防法の規制等により都内23区内にお
であると考えます。輸入材が70%を超えたとして
いては,木造住宅を建てることは事実上不可能に
も,まだまだ産地と消費地の密な連携と協力によ
なっておりますし,都心の住宅は,土地の高度利
って国産材需要の回復は図れるはずです。
用ということで次々にオフイスビルや集合住宅に
新木場においても,鉄道の開通とともに,とも
変わりました。そのような状況下,木場の主たる
すれば今まで木材専門業者のみが出入りしていた
商圏は,近郊および他県へと求めざるを得なくな
町に,一般消費者の姿を数多く見受けるようにな
ってきており,流通の中継基地としての性格を今
りましたし,近くにある東京営林局の“ウッディ
後強めていくのではないかと思います。
ランド東京”には,土曜日曜ともなれば,髄くほ
今後の木場の生き残る道は
どの人出があります。彼らの木に対する感性を
しろうと
いろいろな視点から木場(新木場)を眺めてき
素人考えだと軽視することなく,インテリア・エ
ましたが,木場業界人にとっての今いちばんの関
クステリアを問わず,すべて手に触れるもの,目
心事は,いつまで商売を続けることができるのか,
につく物すべて木で作れないか,木が使えないか
ということではないかと思います。臨海部副都心
チャレンジすることが必要ではないでしょうか。
構想-(ウォーター・フロント計画)の柱となる東
また,各産地側でも,木場に自分たちのアンテナ
京テレポート(高度情報化都市拠点)が,新木場
・ショップを作ってみてはと思います。木材業者
の近接地に計画されておりますし,JRおよび地
間では決して出ないおもしろいアイデアが,消費
下鉄の新木場駅開業により,都心より約15分とい
者から受けられるのではないかと思います。
う臨海部交通網の要衝としての性格がはっきりし
(たかたしょういち・三富木材㈱
/代表取締役社長)
つつあるからです。また,輸入材物流基地として
スタートした新木場が,昨今の各タ耐産地におけ
「空中写真セミナー」開催のご案内
平成2年度『空中写真セミナー』を下記により実施します。お早めにお申し込みください。
記
1.期間平成2年10月22(月)∼26日(金)5日間
2.会場日本林業技術協会(東京都千代田区六番町7電話03(261)5281(代))
3.研修人員25名(先着順)
4参加費30,000円(研修費,教材費,現地演習費等)
※セミナー参加のための交通費,宿泊料は各自負担となります。
5申込方法平成2年10月5日までに所定の申込書(本会にあります)に記入のうえ,日本林業技術協
会研修室あて送付してください。なお定員になり次第締切となりますのでご了承ください。
※本セミナーについての詳細は本会・研修室までお問い合わせください。
主催(社)日本林業技術協会後援林野庁・全国町村会・全国森林組合連合会・日本製紙連合会
林業技術No.5801990.7
ll
古澤富志雄
木製家具産業と木材利用の現況
あるが,円高による輸入家具の増加や大型収納ス
はじめに
家具は生活の利便のために考案された用具であ
ペース付き住宅の建設増加の影響もあり,生産品
り,使用目的が多様であるため種類は多いが,家
目ならびに販売経路の選択が重要な経営上の課題
具業界では製品の形体に着目して,たんす類を箱
である。
家具製造業の現状
物,食器棚・飾り棚・書棚等を棚物,机・テーブ
昭和62年の木製家具の製造品出荷額は約1兆
ル・いす等を脚物と呼称している。
木製家具製造業界は,昭和30年代から,住宅着
7000億円(工業統計表・産業編)で,品目別構成
工戸数,世帯数および卿因数の増加ならびに生活
比率は表・1のとおりで,脚物が25%,箱物が19
様式の洋風化と所得水準の上昇に伴う耐久消費財
%,棚物が17%およびシステムキッチン等の厨房
需要を背景に,洋家具量産方式の採用によって急
家具が12%となっている(工業統計表・品目
成長を遂げ,昭和31年には400億円に達していな
編)。製造品出荷額は前年比47%増であり,品目
かった製造品出荷額は49年には1兆円を超えた。
別では厨房家具出荷額の大幅な伸びと,箱物の前
しかし,48年秋の第1次石油危機を転機に,量
年比減が注目される。なお,この製造品出荷額は
から質への消費者意識の変化と,これまで当業界
金属製家具の3倍,また,一般製材業の95%に相
の高成長を支えてきた需要要因の数的減少により
表・2推計を含む木製家具製造業従業者規模別統計表
伸び率は低くなり,さらに第2次石油危機の影響
表・1木製家具品目別出荷金額(従業者4人以上の事業所)
出荷金額(百万円)
品目
394,242
木製流し台・調理台ガス台
(キャビネットが木製のもの)
189.679
22
51
2
2
木製机・テーブル・いす
構成比(%)
たんす
294,398
1
8
.
9
木製棚・戸棚
259.647
1
6
.
6
木製音響機器用キャビネット
59.728
3.8
木製ベッド
47,069
3
.
0
314,704
20.2
その他の木製家具
一一一一一一一一一一
市況の好転により製造品出荷額はやや上向きでは
14冊釦釦印朋
1側
2帥
3側
5
態で推移してきた。61年秋以降,インテリア関連
従業者規模
人39個鱒岨的船
1明
2朗
4的
9
により55年からは1兆6000億円前後の横ばい状
合計
(漆塗りを除く)
(昭和62年工業統計表・品目編)
事業所数
従業者数
鯉造帛出荷額等
人(%)
百万円(%)
5,449(44.0)
11,331(8.9)
5
6
,
7
7
0
(
3
.
3
)
4
,
2
2
9
(
3
4
.
2
)
2
4
.
8
7
8
(
1
9
.
5
)
2
0
5
,
5
3
9
(
1
2
.
1
)
1,281(10.3)
1
7
,
6
1
5
(
1
3
.
8
)
1
9
6
,
5
3
9
(
1
1
.
6
)
箇所数(%)
6
2
5
(
5
.
0
)
1
5
.
2
1
3
(
1
1
.
9
)
1
9
9
,
8
8
3
(
1
1
.
8
)
384(3.1)
1
5
,
1
1
2
(
1
1
.
8
)
210,764(124)
263(21)
1
7
.
6
2
8
(
1
3
.
8
)
2
7
7
.
4
2
0
(
1
6
.
3
)
111(0.9)
1
4
,
6
4
8
(
1
1
.
5
)
2
6
5
.
2
4
1
(
1
5
6
)
21(0.2)
4
,
9
7
1
(
3
.
9
)
89,538(53)
8(0.1)
3,136(25)
1
0
1
,
9
4
9
(
6
.
0
)
6(0.0)
3,230(2.5)
9
3
,
3
3
1
(
5
.
5
)
12,377
127,762
1,696,974
(昭和62年工業統計表・産業編)
林業技術No.5801990.7
12
当する。
になってきた。
62年における木製家具製造業の事業所数は
これらの動向に対する木製家具の生産・販売体
12,400,従業者数12万8000人である。表・2のと
制は,拡大・売り手市場であった35年から49年
おり,事業所の78%は従業者数が9人以下の零細
までは少品種大量生産・大量販売であり,工業的
小規模企業で,その全製造品出荷額に占める割合
生産技術と家具の量産とを結び付けた企業がビジ
は15%強であるのに対して,全事業所の3.3%の
ネスに成功して,生産額の前年比伸び率はだいた
50人以上の中大企業が全製造品出荷額の50%近
い二けた台を示し,百貨店や家具小売り店では量
くを占めている。企業規模の零細性は,木製家具
販によって大きな利益を得た。飽和・買い手市場
製造業が家内手工業から発達した典型的な労働集
へ変わったオイルショック後,多くの企業は数値
約型産業であることによるものである。
制御(NC)木工機械を積極的に導入して省力化と
家具は日常生活に密着したものであり,なおか
多品種少量生産体制への転換を計り,販売戦略は
つ運搬もしにくかったため,事業所は全国的に分
商品の多様化を背景に家具のユニット化からシス
布しているが,一方では,かなり明確な産地性が
テム化・インテリアの総合化へと重点が移ってき
認められる。産地の発祥起源としては,木材の生
ている。
産地あるいは集散地であるため材料入手が容易で
家具市場の現状
あったこと,宮大工や船大工など家具指物の生産
最近の注目すべき動向としては,収納家具需要
に役立つ技術が蓄積されていたこと,大消費地に
の低落傾向が強まったこと,住宅産業での家具販
近く旺盛な需要があったことなどが挙げられるが,
売が目覚ましい伸びを示していること,輸入家具
市場が全国的規模に広がっている現在では,発祥
が大幅に増加していること,コントラクト家具の
の起源の特質がすべて継承されているとはいいが
需要が旺盛であることなどである。
たい。製造品出荷額が62年に600億円を超えてい
る県は,愛知県,福岡県,静岡県,大阪府,広島
「量から質の時代」といわれはじめてすでに10
数年を経過した現在では,その「質」に対する考
県,岐阜県群馬県,北海道および埼玉県の9カ
え方も当初とは大きく,また多様に変化してきて
所である。
いる。
家具需給動向の推移
主要な生活用具である木製家具の需要動向は,
収納家具は低成長期には供給過剰になったため
初めはユニット化を試みたが,住宅産業によるウ
消費生活の質的変化に強く影響される。昭和49年
ォークインクローゼット等大型の収納スペース付
までの高度成長期には,購買行動は「所有欲・人
き住宅の販売や,リフォーム市場における営業方
並意識」による衝動的・単発的であったのに対し
針の営繕型から提案型への切替えに伴う収納部施
て,オイルショック後の50年以降「日常生活の確
工等の影響を受け,売行きは芳しくない。
認・創造的美意識」による計画的・選択的に,さ
しかし一方,昭和50年ごろから強く意識されだ
らに近年では「快適さと異質性の志向」による総
合的・主体的なものへと変化してきた。そのため,
思想の具体的な消費行動として,居間や台所回り
した,ふだんの暮らしを大切にしたいという生活
「受身の消費」の高度成長期には木製家具需要の主
などの物にお金をかけるようになり,暮らしやす
役は婚礼家具セットや応接セットであったが,「個
さへの要求からシステム収納家具やシステムキッ
別的選択の消費」の低成長期には単品家具やユニ
チン等新しい需要が生まれ,これらの売行きは好
ット家具が,さらに消費水準が高度化した「個性
調である。
開発のための消費」の傾向が顕著な最近では,部
一般に55年ごろから,自分の暮らしをつくるた
品化や部材化をも含めた生活空間構成要素として
めに物を買うという意識が定着しはじめたといわ
のシステム家具やオーダー家具が求められるよう
れるが,確かに最近は,インテリアや家具につい
林業技術No.5801990.7
13
ての情報をいちばん持っているのが客で次が販売
る現在,異業種間での情報交換も必要とされる。
店,製造メーカーがいちばん少ないという状況さ
具体的には次のような対応が認められる。
え想定されるほど,快適な生活空間を創造するた
①住宅産業やリフォーム産業への部品や部材
めに,特に女性のインテリアへの関心は高くなっ
の供給という家具製造ノウ・ハウの提供による業
てきた。
態開発
このような需要動向に積極的に対応したのが住
②多様化に対応した,顧客からの商品の寸法,
宅産業で,住宅展示場などでの顧客との生活空間
表面材料,塗装等の選択や指定が可能なオーダー
の装置化や個性的な環境化への提案・助言を仲介
メード家具の供給
として,付属部品による住宅製品の高付加価値化
を計るとともに,家具を核とするインテリア関連
製品を販売している。その販売実績は,既存の家
具販売店に比較して大幅な伸びを示している。
輸入家具は45年ごろから通商の自由化により
③個性化・成熟化に対応した,著名デザイナー
起用によるデザイナーズブランド製品の供給
④高級化・コントラクト家具需要に対応した,
高い技術力とメンテナンスサービスを背景とする
トータル化した製品の供給
販売されるようになったが,平成元年の家具輸入
家具生産と木材利用現況
額は約1400億円で,前年比33%の大幅な伸びを
木製家具の基本となる生産加工技術は,大別す
示した。その背景として若年層の生活洋風化や海
ると木材乾燥,機械加工,組立ておよび塗装であ
外での居住経験を持つユーザーが増大し,住宅や
る
。
オフィスの洋風化,機能化,高級化が求められて
木材乾燥は寸法精度や強度だけではなく,接着
いることや,円高や物品税廃止による割安感があ
性能や塗装効果にも影響する製品の品質保証のた
ることに加えて,タイ・マレーシア等に安価な労
めの基本的かつ重要な処理工程で,特に高比重の
働力と豊富な木材資源を目的に設立された日本企
広葉樹材では,いわば教科書どおりの高度な乾燥
業系合弁工場の,現地生産が本格化しだしたこと
処理技術を必要とする。
も挙げられる。今後も円高や海外移転工場先から
機械加工は,長さ・幅・厚さを規定する基本加
の製品輸入によって輸入額は増え,国産の木製家
工,面取り等の成形加工,組立てのための仕口加
具は高級家具分野では西欧にやや押され,実用品
工等に分けられる。この分野の,特に成形加工や
についてはアジアの国々からの製品に代替される
仕口加工ではNC機械の導入による,生産性の向
傾向は続くものと思われる。
上や省力化を目的とした自動化が早くから進めら
情報化社会に対応するためのインテリジェント
ビルの建設や余暇利用方法の多様化・高級化によ
れ,ターンテーブル方式のような工程の多様化に
対応するための生産方式も採用されている。
るホテルやリゾート開発力聴んなため,コントラ
組立てではこれまで合成樹脂接着剤を用いただ
クI、家具需要は増加する傾向にある。この種の家
ぽ接合,ほぞ接合やミニフインガージョイントに
具は機能やデザイン面だけではなく品質について
加えて,緊結操作や角度調節力溶易な家具用機能
も高水準が求められるうえに,価格面で海外メー
金物が,システム化のための部品や部材の結合用
カーとの競争も厳しいとはいうものの,今後の展
に使われている。
開によっては成長が望める分野であるといえる。
このような情勢に適切に対処するためには,顧
客の意向を的確に把握できる販売経路の確保と,
その製造が可能な柔軟性のある生産体制の構築が
塗装では,量産型メーカーの場合,着色,下塗
および中塗処理をする部品塗装と組立て後の仕上
げ塗装とに分けられる。
家具塗装では材料の保護よりも表面材の質感を
家具メーカーにとって必要条件とされ,また生活
高める美的表面処理による製品の付加価値向上に
空間のトータルコーディネート化が志向されてい
重点がおかれるため,材料の色や木理等表面性状
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14
に応じた効果的着色塗装技術が重要とされる。
模な企業においても加工および組立てに関しては
使用樹種は,洋家具用材として評価の高いナラ,
ユーザーからのかなり高い品質要求に対しても十
カバ,チークに加えて,脚物家具の構造材には比
分こたえることができるが,木材乾燥処理能力と
較的高い強度が要求されるため高比重の樹種が選
塗装技術については企業間格差が認められる。特
択され,ブナ,タモ,ニレやイタヤカエデ等の国
に木材乾燥は,比較的規模の大きい企業では乾燥
産広葉樹,これらの代替材としてのダウン(マト
処理能力はあるものの,小規模企業では乾燥設備
ア),パラゴムノキ,ヨーロッパブナやホワイトオ
と技術の両面で不十分の所は多い。テーブルトッ
ーク等の外国産広葉樹,カラマツ,スギやヒノキ
プはもちろんのこと,製品に重厚感を付与するた
等の国産針葉樹が使われている。また表面材樹種
めに箱物・棚物家具の表面材料として使われる造
が商品価値を決定する重要な因子の1つとして挙
作用集成材,パネル複合工程を省略できる化粧パ
げられる箱物・棚物家具では安定した人気のある
ーティクルポード,同工程の省略と平滑な切削加
サクラ,ケヤキ,クルミ,シタン,ウオールナッ
工面を期待できるMDFの利用が増加しているの
ト,マホガニーをはじめとしてきわめて多い。
は,これらが寸法安定性に優れた,寸法の極端な
しかしながら,洋家具ではチーク,ナラおよび
サクラ・カバが,和家具ではケヤキおよびキリが
不ぞろいのない家具製造向きの材料であることが
評価されたからである。
高級であるとする消費者意識は根強い。そのため
製材加工業界にも素材供給はサービス業である
他の樹種では市場価値が低くなる場合が多く,現
との認識に立ち,家具製造業向けの化粧材の情報
状では色調処理により有力猿潅の樹疑材として使
と人工乾燥と片面プレナ加工処理材の供給とをお
用されている場合も認められる。
願いしたい。
むすび
(ふるさわとしお・職業訓練大学校)
現在のわが国の家具メーカーでは,比較的小規
第2回海外林業視察
中国の林業視察と武夷山を訪れる旅
平成2年10月6日仕)∼15日侭)
10日間
視察先概要
・武夷山・”5県にまたがる広大な武夷山脈。
・武夷山自然保護区…木材生産を主とする森林の利用・開発を行っている。1979年に保護区として指定を受ける。
特に“広葉杉”“馬尾松”の人工林・天然林が特色。木本類1,500種,植物2,500種。
・武夷山風景地区…そそり立つ奇岩群の眺望と,その間を流れる川の清水が売りもの。竹イカダによる川下りは古
くから全国に知られている。この地区のレクリエーションの拠点となるべき施設を整備中。
・中国林学会関係者…各地にて,中国林学会関係者と意見交換を行う予定。
・福建省林学会…林学院(4年制大学)・林業技術コンサルタントセンター。林学科研究所等の機関が中心に林業の
普及活動を行っている。
・特産品…シイタケ・松やに・白キクラゲ・黒キクラゲ・油ぎり・タンニン・孟宗竹・鉄観音・ウーロン茶等。
旅行代金395,000円,申込み締切平成2年8月中旬,募集人員30名(最少催行人員20名)
・申込み・問合せ先・・・JTB海外旅行虎ノ門支店,〒105東京都港区西新橋1−5-13(第8東洋海事ピル4F),
TEL:03-504-0981,FAX:03-504-3671.1627,営業第2課桑田グループ担当(西村・大
橋・菅原)
企画主催/(財)林政総合調査研究所後援/林野庁旅行主催/日本交通公社
林業技術No.5801990.7
15
吉田
’
轄但
|│
|
’
リゾート開発と国有林野の活用
リゾート開発に向けた社会的潮流
人生80年といった長寿社会,自由時間の大幅に
増加する余暇社会の到来の中で,健康で文化的な
生活の実現が求められてきている。
他方,高度経済成長期以降も続くわが国社会経
済の情報化,ソフト化,国際化は,大都市圏への
人口集中,地方圏における過疎化をもたらし,大
都市圏における地価上昇による住宅取得の困難化,
地方圏における雇用機会の減少による農山村コミ
ュニティの崩壊化に象徴されるように,均衡のと
れた国土発展が問題にされつつある。
このような状況の中で,「余暇(レクリエーショ
ン),「リゾート」,「セカンドハウス」などは,た
だ単に個々のテーマではなく,豊かなライフスタ
イルを個性的に実現する観点からとらえられてき
ており,少なくとも,大都市圏において実現不可
能となりつつある生活の豊かさの補完,地方圏に
おける文化・観光資源を生かした雇用機会の創出
による農山村コミュニティの再生などの観点から
とらえられるようになってきている。
言い換えれば,大都市圏においては,「通勤に2
時間近くかかる所でなければマイホームが持てな
やゆ
い」という「椰楡」でさえ現実から遠去かりつつ
ある中で,r余暇」は「職」や「住」では得られな
い自由,家族との団らんを実現できる座標となり,
農山村においては,第一次産業の低迷が続き,「嫁
の来ない時代」からr婿もいない時代」へと変わ
りつつある中で,恵まれた自然を生かして都市住
民に供給する「余暇」は,「職」や「住」の不安定
さを解消する有効な手段となりつつある。
国有林野事業の対応
国土の約2割を占める国有林野を管理経営する
国有林野事業においては,国民生活の向上に合わ
せて,昭和34年度に国設スキー場制度,昭和41年
度に国設野営場制度,昭和43年度に自然休養林制
度を発足させ,さらに,昭和47年度には,森林レ
クリエーションに適する国有林野を明確にし,こ
れにふさわしい森林施業を実行するため,レクリ
エーションの森制度を発足させている。
平成元年度末におけるレクリエーションの森の
設置状況は表。lのとおりである。
これらのレクリエーションの森の利用数は,昭
和63年度の調査において,延べ1億6000万人に
達しており,読者の方々も,一度ならずおいでに
なっていることと思う。
さて,前にも述べたように,国民の方々のライ
フスタイルに応じた有意義な余暇の過ごし方の発
見あるいは確立が重要なテーマとなる中で,森林
レクリエーションに対する需要も増大し,滞在型
化,通年型化するなど多様化したこともあって,
昭和62年2月に,人と森林とのふれあいを推進す
る森林空間総合利用整備事業(ヒューマン・グリ
ーン・プラン)を制度化した。
この制度は,従来の森林レクリエーション事業
が個別のリクリエーションの森ごとに実行されて
いたことに対して,既設あるいは新設のレクリエ
ーションの森林を複数有機的に結び付けて,広大
な国有林野のゾーニングの中で通年的な利用およ
び滞在を可能とする複合的なレクリエーション
(リゾート)エリアを形成しようとするものであ
る。したがって,多額の投資と高度なプランニン
グが必要となるため,民間の資金力とノウハウと
を活用することとした。
ヒューマン・グリーン・プランの展開
このように,ヒューマン・グリーン・プランを
制度化することは,森林レクリエーションに対す
林業技術No.5801990.7
16
表・1森林レクリエーションのための国有林
名 称
面潰(¥ha)│箇所数|代表地
とくに風景が美しく,保健休甕に適している
自然休養林
自然観察教育林
野外スポーツ林
森林ですも自然探勝,登山,ハイキング,キャ
ンプなど森林レクリエーションを楽しむことが
できますも都会の騒音から離れ,美しい緑,森
の香気と澄んだ水そして静かなただずまい
……。自然休養林は心の安らぎを与えてくれる
自然のふるさとですも
自然の特色を活かした小中学生の自然教育
に適している森林です。自然探勝を楽しみなが
ら植生,野鳥などの観察ができ,森林のはたら
きなどを学ぶことができます。壮大な樹林,かれ
んな草花,小鳥たちのさえずり,渓谷のせせらぎ
……。自然観察教育林は楽しい発見がある自然
からのおくりものですb
森林空間を利用した野外スポーツ│こ適した
森林ですもキャンプ,スキー,アーチェリー,
オリエンテーリングなど森林の中での野外ス
ポーツを楽しむことができます。しんせんな空
気のなかで汗を流或そう快な気分…・・・そして
さわやかな緑がからだをつつむ。…・・・野外ス
114
92
高尾山
丹沢
天城山
箕面
箱根
菅平
36
192
軽井沢
苗場
蔵王
40
269
ポーツ林は思いきりリフレッシュできる野外ス
ポーツの場でご-も
風 景 林
371
588
知床
宮島
芦ノ湖
白馬山
然のロマンを感じますb
る国民の方々の要請にこたえるとともに,国有林
野事業の使命の1つである地域振興という観点か
らは,通年的なレクリエーション・エリアの創設
による通年的雇用の創出によって,また消費経済
の発生によって,国有林野の所在する市町村の再
活性化に大きく寄与することを目的としている。
しかし,この制度の展開にあたっては,将来を
見通して留意すべき点が少なくない。主な留意点
と対応を示すと次のとおりである。
①実際に森林レクリエーション需要があるか
地形,交通条件,利用形態周辺の開発動
向・需要動向から見て,老若男女を問わず,
友人同士が,家族連れが,若いカップルが,
初老のご夫婦がそれぞれに楽しめることが実
際に見込めるのか,十分に検討することとし
ている。
③事業の実施にあたって,地元地方公共団体な
どの協力が得られるか
ヒューマン・グリーン・プランが地元の振
興計画と遊離したものであってはならないこ
とはもちろんであるが,派生する施設整備に
ついての事業,大量の利用者による消費が地
元経済に貢献するような目配りも含めて,地
元地方公共団体の策定する振興計画との整合
を要件としている。
④国有林野の持つ公益的機能など,諸機能との
調整が図られているか
保安林の解除など森林法等法令による制限
がある区域を含む場合にあっては,該当する
法令に基づく許認可などが得られる見込みが
あることを要件としている。
また,影響が予想される周辺区域を含めて
②通年または長期間の利用が可能であり,これ
によって通年的な雇用の創出が可能であるか
わが国の観光状況が,欧米観光先進国のように
プランニングの裏付けとなる雇用計画など
から判断し,検討することとしている。
いう意味である)とはなっていない中で,将来の
林業技術No.5801990.7
環境影響評価を実施することとしている。
まだ反復型(注:リゾートは「しばしば行く」と
17
図・1整備参考例
森林レクリエーション需要を予測することは困難
稚内
であるが,地元市町村の「町ぐるみ」で「村おこ
し」をする気概と,民間事業体の日本全体ばかり
でなく,国際的なリゾート形成のノウハウ,そし
て,国有林野事業の長年培ってきた自然コントロ
ールのノウハウによる「文珠の知恵」によって,
国民の方々や地域の望む理想的なリゾート開発は
十分に可能であると考えている。
このヒューマン・グリーン・プランは,平成元
年度末で12地域が指定され,このほか約20カ所
力§芽を出そうとしている。
赤井川ヒューマン・グリーン・プラン
ヒューマン・グリーン・プランの例として,北
海道小樽市近郊にある赤井川村の例を挙げてみた
い。
ワ
赤井川村は,札幌市から車で約2時間という距
離にありながら過疎が進行し,一時は3,000人以
上の人口が1,300人まで減少した農山村地域であ
る。この過疎を招いた最大の原因は,「雪」であ
図・2位置図
る
。
ヒューマン・グリーン・プランの制度発足によ
って,村長さんは北海道営林局とともに,この「雪」
を活用することを考えた。これにスポーツ・レク
リエーション用品のメーカーであり,各地でレク
リエーション開発の実績もあるY社が協力を申し
出て,事業計画が検討された。
スキー場だけでは通年雇用とはならない,夏期
間はどうするのか。夏の農業だけでは雇用はつな
げない……。採算を十分に考えながら試行錯誤の
未,テニスコート・ゴルフ場などを配置した総合
レクリエーション施設を設置することとした。
この試行錯誤において,Y社から第三セクター
に出向している方々も,村も,営林局も一体とな
って討議が行われたと聞く。利益追求を第一とす
林業技術No.5801990.7
18
る立場の人間も,村民以上に村民の気持になって
村の将来を考え,営林局以上に自然の保全を考え
た
。
村には特産品といえるものはない。主な農産物
は,イチゴ,カボチャ,ジャガイモである。しか
し,「新鮮さ」は「特産」となる。スキーハウスや
ホテルで利用客に出す料理には極力村の産物を使
うことにした。そこまではとは思うが,文房具店
が1軒もない村で鉛筆の1本に至る事務用品まで,
農業協同組合を通じて買うことにした。
スキー場造成にかかる保全工事などにも十分な
配慮がある。谷止工,遊砂地などはもちろんであ
るが,伐採した立木,刈り払った笹なども環境に
影響がないように処理したと聞く。
枚挙するには暇がないが,このようなプロジェ
クトであれば,成功は間違いないであろう。要は
r人」であり,「人工」ではなく,「人間の心がつく
る」リゾートならば,成功するはずである。この
スキー場は来冬オープンする。
なお,このような例は,赤井川村のみではない。
各地の第三セクターへ出向した民間事業体の方々
が,地方の人間になりきって事業を進めている姿
を見ると頭が下がる思いである。
ゴルフ場について
横道にそれるが,最近ゴルフ場の造成やゴルフ
場で使用される農薬が諦逼となっているので,コ
メントさせていただく。
ヒューマン・グリーン・プランにおいては,通
年または長期的利用を可能とする複数のレクリエ
ーション施設の中にゴルフ場(ただし,パブリッ
ク)も含まれている。これは,ゴルフも大衆的ス
ポーツとなったと判断してメニューの1つに加え
たものである。
仕事が仕事だけに,さまざまなゴルフ場の設計
図を拝見させていただいているが,一般的にいえ
ば,「土木工学」的である。ゴルフ場の命が芝であ
ると考えれば,牧場(草地)を造成するように「農
業土木」的であるべきではないか。芝の品種改良
にも期待しているが,ゴルフ場の設計者の方々に
お考えいただきたい。
おわりに
ヒューマン・グリーン・プランの制度発足後,
総合保養地域整備法(リゾート法)が成立した。
ヒューマン・グリーン・プランとリゾート法とは
趣旨が相通じるところもあり,リゾート法に基づ
き国有林野を活用する場合には,原則としてヒュ
ーマン・グリーン・プランを適用しているところ
である。
同じような制度とお考えになるかもしれないが,
実のところだいぶ異なる。リゾート法によるプラ
ンニングは都道府県が主体となって作るものであ
るが,ヒューマン・グリーン・プランは市町村の
方々が作る。昨日まで農業指導をしていた人が,
教育委員会にいた人が「村おこし」のプランを立
てる。町や村の将来のためにプランを立てて営林
署に相談に来る。そのプランにはハードになりが
ちな計画に具体的なソフトがかなり組み込まれて
いる。
繰り返しになるが,リゾート開発の要は「人」
である。真剣に試行錯誤したプランからは,討議
の声が聞こえてくる。そこに個性が生まれている。
最後になるが,ヒューマン・グリーン・プラン
の副題は「人と森林とのふれあいの場の創造」で
ある。
森林(もり)で小鳥と遊ぶ子供たちの声が……。
(よしだおさむ・林野庁業務第二課
もちろん,造成する場合には,自然環境の保全
上問題がないという条件付きである。
/森林レクリエーション企画班担当)
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林築技術No.58()19907
19
藤原信
いわゆるゴルフ場問題とは何か
’
ゴルフ場の現状
関心を集めている。
ゴルフ会員権の問題
いま営業中のゴルフ場は全国で1,706,ほかに
造成工事中のゴルフ場は325,申請・計画中のゴ
今回のゴルフ場造成ラッシュの背景には,ゴル
ルフ場は983もあり,これらを合計すると3,014
フ人口の増加のほか,ゴルフ会員権を利用した財
になる。営業中と造成中のゴルフ場2,031の合計
テク商法にも一因があると思う。
面積は20万5790haで,国土面積の0.55%にな
ゴルフ会員権はこの4年間で4倍にも値上がっ
るが,これは東京都の面積にほぼ匹敵するとのこ
ていて,主要500コースの会員権相場の平均は
とである(朝日新聞による)。
4000万円の大台に乗り,1億円を超えたr億カン」
といわれるゴルフ場は全国に20コース以上もあ
今後,計画中のゴルフ場が全部造成されるとな
ると,国土面積の1%がゴルフ場に占領されるこ
とになってしまうだろう。まさに,ゴルフ場によ
る国土乱開発といえる。
このようなゴルフ場の造成ラッシュが始まった
のは,円高,株高,債券高といういわゆるトリプ
ルメリットと,超低金利政策による「金余り」現
るといわれている。
ゴルフクラブの経営形態には,社団法人制,株
主会員制,預託会員制の3つの経営形態があるが,
そのうちの9割近くと圧倒的に多いの力頓託会員
制のゴルフクラブである。
預託会員制というのは,会社がゴルフ場を運営
象,週休二日制の導入によるレジャー時代の到来
して,会員は会社に預託金を預けることにより優
に加え,一億総財テク時代を反映したゴルフ会員
先プレー権を確保するという仕組みで,会員には
権の投機などにも原因があるといわれている。
ゴルフ場の運営に対する発言権も法的な保証もな
昭和62年に総合保養地域整備法(リゾート法)
い。
が成立して,各地でリゾート開発が促進されてい
しかも,手持ちの資金がなくても預託金で造成
るが,リゾート法はゴルフ場整備法といわれるよ
費が賄えて,余った金は一定期限(10年)後に返
うに,リゾート構想のほとんどにゴルフ場の造成
還するまで会社が自由に運用できるという,ゴル
が計画されている。
フ場を造成する会社にとってはたいへんメリット
ゴルフ場造成による自然破壊,環境破壊の問題
のある制度である。
反対運動は,ゴルフ場問題全国連絡会の結成の契
預託金は単なる預かり金ということで課税の対
象にならないし,預託金返還時に利子を払う必要
もない。そのうえ,会社が一方的に預託期間を延
機となり,今年3月,神戸で開催された第3回ゴ
長すれば,さらに10年間自由に使えることになる
ルフ場問題全国交流集会には全国各地から約800
(このことで裁判になった例もある)。
昭和40年代の第2次ブームが終わった後,ゴル
が各地で顕在化する中,一昨年,奈良県山添村の
ゴルフ場の農薬禍に端を発した全国的なゴルフ場
人の参加があるなど,ゴルフ場問題は多くの人の
林業技術No.5801990.7
20
フ場が多額の負債を抱えて倒産して,預託金を返
してもらえず泣き寝入りしたというケースも出て
地に比べて保水力がなくなるので,集中豪雨など
いる。
のときには表面流下水が増え,洪水と山崩れ,土
いまのブームが終わった後,再び,預託金を巡
るトラブルが続出するおそれがある。
ゴルフ場経営について
ゴルフブームといわれているが,ゴルフ場の運
営収支を栃木県を例として見ても,必ずしも順調
とはいえない。
森林を伐採してゴルフ場の芝生にした場合,林
石流とが重なって,災害が激甚化するおそれがあ
る。造成工事中に下流に泥水が流れて住民を災害
に巻き込んだり,水源地の上部にゴルフ場ができ
たために,水源地の水がかれた例もある。
ゴルフ場の対象となる森林には多くの動植物が
生息する自然度の高い所が多いので,ゴルフ場の
足利銀行の調査によると,昭和63年現在の栃木
造成により生態系が破壊され,大型哺乳動物のク
県内の81のゴルフ場のうち53(65.7%)のゴル
マやシカ,サル等の動物,烏類,昆虫類が駆逐さ
フ場は黒字経営となっているが,12(14.3%)の
れ,貴重な植物が絶滅するおそれもある。
ゴルフ場は収支トントン,16(20.0%)のゴルフ
昨年,栃木県では造成工事中のゴルフ場で土砂
場が赤字となっていて,平日には閑古鳥というゴ
崩れが2回あ'り死者が1人出ているし,昭和51年
ルフ場もあるという。
には同じような事故で作業員22人が生き埋めに
それなのになぜ,ゴルフ場をつくろうとするの
かを,造成事業の収支から計算してみる。
なり,12人が死んでいる。
昭和56年8月に長野県須坂市では,台風15号
例えば,18ホールのゴルフ場を造成する場合,
によって引き起こされた土石流により死者10人
100haの土地代として20億円(地域により相当違
の被害を出しているが,これは災害発生の6年前
いはある),1ホールの造成に2億円として18ホ
に,上方にゴルフ場がつくられたために,集水域
ールで36億円,クラブハウスその他の施設に14
が変化して大量の雨水が流れ込んだのが原因とい
億円として,総工事費は70億円となる。地元対策
や政治献金に10億円を使っても支出は80億円程
われている。
度で済む。
究所の柳次郎氏が発表した「林地開発とゴルフ場
いまこのゴルフ場の会員権を1,500人に1口平
均1000万円で販売すると150億円の預託金が集
まるから,総工事費その他を支払ってもまだ70億
円も余ることになる。
ゴルフ会員権の流通市場は過熱ぎみといわれて
いるが,相場の高騰は,値上がりねらいの思惑買
いと,会員権業者間の「転がし」によるものが多
いという。しかし,ゴルフ場が増えて会員権が値
下がりし始めれば,このような打ち出の小づちが
使えなくなり,途中で造成を中止するゴルフ場も
第40回日本林学会関東支部大会で森林総合研
・砕石場の諸問題」によると,ゴルフ場開発問題
のマイナスインパクトとして以下のようなことが
述べられている。
「林地開発影響調査(林野庁森林保全課,1977)」
によると,ゴルフ場に関しては,防災措置の不備
による工事中の汚濁水と土砂の流出が全国的に多
数報告されており,土砂採取に関しては,土砂・
汚濁水流出のほか,道路汚染・地すべり,騒音な
どの諸被害例が提示されている。これは,今後開
発増加または規制緩和によって被害が増加する危
出てきて,社会的混乱を起こすおそれもある。
ゴルフ場建設に伴う自然破壊
ゴルフ場を造成するためには,森林を伐採した
り,農地をつぶしたり,山を削ったり,谷を埋め
たり,と大規模な地形の改変を伴うので,自然破
険性を示唆している。
壊は避けられない。
フ場に転換するように申請した例カぎあり,地域振
林業技術No.5801990、7
rゴルフ場インパクトに関する聞き取り調査息
では,以下の諸点が指摘されている。
(1)公共事業・地域振興計画との競合
補助金を投入して造成した農地・農道を,ゴル
21
興計画済の土地へ,利用を巡ってゴルフ場が割り
は除草剤を毎日のようにまく。息を吸うのがいや
込んできた例がある。
になるぐらいひどいんです」(朝日新聞による)と
(2)局所災害の危険
言っているが,ゴルフ場で農薬の被害を直接受け
ゴルフ場造成が地表と排水路の改変を伴う以上,
るのは,グリーンキーパーやキャディーであり,
当然この危険性が生じる。防止のため調整池など
目のかゆみ,充血,のどの痛み,手足のかぶれ,
の手段が取られるが,特に造成工事中断の場合,
吐き気などの自覚症状を訴える人も多いという。
責任の所在が不明となり,災害の危険が増大する。
農薬は揮発性があるので,雨上がりの後に日が
(3)雑排水処理の不備
差して水蒸気の蒸発が激しいときは農薬も活発に
クラブハウス,宿泊施設から出るふん尿,生活
蒸発して大気中に漂うので,ゴルファーも要注意。
排水,事業用排水などの処理が不十分であれば,
ゴルフ場から流れ出る農薬によって水源地が汚染
その地域に水汚染が生じる。地域が地元の用水源
されたり,大量の化学肥料の散布により河川や湖
となっている場合は深刻な問題になり得る。
沼が富栄養化して赤潮が発生しやすくなったりし
いま各地で,柳氏が指摘されたと同様なことが
て,周辺住民の生活環境も悪化するおそれもある。
発生している。
地域振興に関して
ゴルフ場の農薬禍
ゴルフ場の芝生や樹木の維持管理のために農薬
や化学肥料が使用される。
ゴルフ場で使用される農薬は除草剤,殺虫剤,
ゴルフ場の造成については,地域の活性化につ
ながるといって,地元自治体はたいへん乗り気に
なっている。
ゴルフ場の造成のために数十億円の土木工事が
殺菌剤であるが,その中には人畜にも激しい毒性
行われるし,ゴルフ場が営業を始めればゴルフ場
を持つものもあり,また用法を誤ると薬害を起こ
利用税や法人税も入ってくる。土地の評価額も上
すものもある。
がるので,固定資産税や特別土地保有税等の地方
ゴルフ場で散布された除草剤は調整池に貯留さ
れた後,排水口から川に流されたり,水蒸気とい
っしょに蒸発して空中に漂ったりして,周辺の水
や大気を汚染する。
税も増え,キャディーなど従業員の雇用も増える
という。
しかし,ほんとうに,ゴルフ場の造成は地域振
興につながるものなのだろうか。
奈良県の山添村では,ゴルフ場の排水から,急
昨年,ゴルフ場から流れ出た農薬により,養魚
性毒性があるといわれているEPNという農薬が
場で大量の魚が死んで問題となった北海道の広島
検出されているし,埼玉県の鳩山町のゴルフ場で
町の試算の例では次のようになる。
は発ガン性のあるダコニールという農薬が使われ
ていた。
北海道ゴルフ場問題情報ネットワークの調査に
よると,広島町には7つのゴルフ場(189ホール)
横浜国立大学の加藤龍夫教授が千葉県のゴルフ
があって,町の税収として,ゴルフ場利用税2億
場で調査したところ,散布された農薬は散布後蒸
6000万円,法人税1100万円,固定資産税8500万
発して大気中を漂い,5時間たっても,ヘリコプ
円,合計3億5600万円が入る。しかし,国から交
ターで農薬を空中散布している真下にいるのと同
付を受けている地方交付金の積算で増収分の75
じくらい大気が汚染されていたということである。
農薬の毒性には,急激に症状の出る急性毒性の
%が減額され,実際の収入増は25%に当たる
8900万円にすぎないという。
ほかに,連続して摂取した場合に神経障害や内臓
ゴルフ場から出た大量の農薬で死んだ魚は周辺
障害などの出る慢性毒性もあり,発ガン性や,染
住民に危険信号を発しているのであり,約9000万
色体異常を起こす催奇形性などの遺伝毒性もある。
円の収入増のために住民の健康や命を犠牲にして
農薬を散布するグリーンキーパーは「春から秋
いいものだろうか。
林業技術No.5801990.7
22
行政の農薬対策
農薬の使用を認めていない。
ゴルフ場での農薬使用が問題となっている中,
ゴルフ場での農薬問題はゴルフ場問題の1つに
今年3月に千葉県は,4月1日以降新規に営業を
すぎないから,農薬問題がクリヤーできればゴル
開始するゴルフ場での農薬の使用を全面的に禁止
フ場を造成してもいいとは思わないが,ゴルフ場
するように要綱を改正した。
での農薬の使用については,少なくとも,全面的
ゴルフ場問題全国連絡会は,この千葉県の方針
についての感想と各県の対応についてほかの46
都道府県にアンケート調査をしたが,14の県から
は回答がなかった。
に禁止すべきである。
日本の森林・林業を守るために
林業も農業も不振にあえいでいるとき,ゴルフ
場用地として,5倍も10倍もの値段で林地や農地
回答のあった32の県のうち,千葉県の措置に関
心があるというのが6県,事実上ノーコメントが
を買いに来れば,手放して金にしたいと思う気持
は理解できる。
10県,「現状では農薬の禁止は困難」として千葉方
しかし,ゴルフ場というのは,森林を伐採した
式に疑問を呈したのが14県,全面禁止はかえって
後に造成されるもので,森林跡地レクリエーショ
弊害を生むというのが2県となっている。
ンというべきものである。
ゴルフ場で使用される農薬についてはこれまで
一度森林を伐採してゴルフ場にした場合,元の
野放しとなっていたが,山添村の問題が明るみに
森林に戻そうと思っても,50年,100年という年
出た一昨年8月に農水省から通達が出され,34の
月がかかる。
県で要綱がつくられているが,規制は必ずしも十
分とはいえない。
一過性のゴルフ場造成ブームにより森林を失え
ば,悔いを千載に残すことになるだろう。
アンケートに対する行政の対応を見ても,ゴル
林業技術者としては,森林の公益的機能の大切
フ場経営者の立場を擁護し,県民の命と健康を守
さを国民に訴えて森林の保続への理解を求めると
るという姿勢が見られなかった。
ともに,いまは苦しくとも,自ら森林を守り,林
環境庁も5月23日に「ゴルフ場使用農薬に係る
暫定指導指針について」を発表したが,ゴルフ場
業を続けていく努力をしなくてはならないと思う。
(ふじわらまこと.宇都宮大学農学部/教授)
問題全国連絡会では,暫定的でも,ゴルフ場での
刊行のお知らせ
森林航測騨謡声言雪霧,,煩定価57,円,税17円(〒込)
●今年度の発行予定●
今年度の森林航測誌は,8月中旬(161号),11月中旬(162
号),1991年2月中旬(163号)の3回発行を予定しております。定
価は今年度も据置きとさせていただきました。写真等の仕上りの美
しい本誌をぜひご活用ください。
*第160号(1990年2月最新刊)植生と土壌一北海道「大雪原生保護林」の森林と土壌〔宮川清・塩崎正雄]/
気候・立地メッシュ情報を利用した森林病害虫および森林衰退の予測〔横堀誠〕/森林管理のための地理情報シ
ステムの開発一森林区画線の数値化〔伊藤達夫〕/森林資源・開発のためのレーダマッピング技術の応用〔川崎
達〕/総目次(132号∼160号)/紋様百態
◎お求めは,日林協事業部まで(1階直通丑03-261-3826)
‘発行日本林業技術協会
林業技術No.5801990.7
23
=
顕へ②勵壱趣圃一親林活動をサポートする
4.青春と森林との出会い
西平直喜
1.青年の生活空間としての森林
いう。
勉強と遊びに忙しく動き回る子どもは,風の音
自分の心の中に美に反応するだけの情操が養わ
も雨の音も,ほとんど耳に入ってこない。その子
れていなければ,どんな美しい景色も名曲も名演
どもたちが思春期に入り込み始めたころから,ふ
技も,美と.は感じ取れない。
と風の音・雨の音を聞くようになる。それは,自
詩人ワーズワースがいう「自然が山や森に漂わ
分の心が外ばかりでなく,内に向き始めるからで
せる静けさを味わう」ことはできないし,まして
ある。
心の成熟があるレベルに達したとき,自分に目
を向け,愛情や美しさなどの価値に目覚め,新し
い世界が開けるこの内に向かう傾向は,内向化と
呼ばれる。
「語りかける森のコトバから受ける感動は,聖者の
説教にもまして,人間について人倫について教え
てくれる」という教えを聞くこともできない。
富士山を見ても,ああ雄大だなあ,心が洗われ
るような気がする,包容力のある優しさを感ずる
さらに思春期が終わって高校に入る青年中期に
という青年と,まったく感動を味わえない青年と
は,青春期特有の内省的な自己意識が育つ。この
がある。つまり同じ環境に置かれても,情操や知
ときから初めて,自然の“静寂さ”そのものを聞
性など内面的な人格性が成熟しているかいないか
くようになる。
によって,まったく別の行動や心の動きをするこ
青年が森の中に足を踏み入れ,ボートで湖上に
とになる。
こぎ出し,小川のほとりを散策し,夜,人の寝静
心理学の公式では,行動Bは,環境Eと人格性
まった街を帰宅するとき,彼らは生まれて初めて,
Pの関数/であるB=/(P・E)と表すが,こ
音のない音一静かさを聞く。ああ静かだなあ/
のPとEが,互いに浸透し合っているので,同じ
とため息をつく青年は,自分の心の静かさを味わ
森の中に入っても情操成熟の度合いによって,違
っているのであり,大自然と心が通い合う。
った環境を持つことにさえなるのである。
林の中に入って樹々の“ざわめき”が聞こえる
このことを環境Eと人格性Pは生活空間(Life.
ようになるのは,それだけ深く自己を見つめるこ
space)を構成するといい,先のB=/(P.E)
とができるようになった証拠である。
をさらにB=f(Lsp)として表現する。
まりに美しい夕焼けに,所長さんが室内の少年た
今,この生活空間という視点で,現代日本青年
の育つ条件を考えると,豊かな物質と過剰な情報
ちに声をかける。「みんな出てきてみろ,夕焼けが
の中で,戦争の苦悩も貧困の悲しみも知らずに,
きれいだぞお/」
伸び伸びと成長しているといえる。しかしその反
非行少年たちの収容施設で,ある日の夕方,あ
出てきた20人ほどの少年のうち,所長さんとと
面,大自然とのふれあいは急激に減少している。
もにああ美しいと感嘆したのは2∼3人で,あと
13階建てのマンションの10階に住む青少年は,
の17∼18人は「どうってことないや」「あしたも
樹々のみどりも花も昆虫も,図鑑や画像でしか知
天気か」と,どやどや室内に引き上げていったと
らず,まして森の中,林の中を歩く喜びなどとは
林業技術No.5801990.7
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まったく無縁である。
非行という語は,不良と違って人間性そのもの
の喪失を意味しているが,戦前の不良,戦後の非
とも手近な方法であり,また逆に生命愛が動くと
きにだけ,森や林の中を歩こうという気にもなる
のである。
行と比較するだけでも,どこか人間らしいみずみ
ずしい感情が枯渇してきている風潮を読み取るこ
る孤独を求め孤独を愛する気持と,孤独から逃れ
さらに生命愛が動き出すとき,青年の特徴であ
とができる。そしてその多くが大自然から切り離
ようという気持とが,同時にわいてくる。山道で
された生活空間のあり方に原因が求められるとい
擦れ違うときにあいさつを交わすことが,たいへ
えそうである。
ん感動的だという。
2.大自然が育てる<生命愛(バイオ・フィリ
ア)>
人間性はだれしも,母と子どもの関係から,社
日常の人間関係がとかくドライなもの,競争心
や敵意さえも含んだもの,お為ごかしやうわくだ
けのものであることをうすうす感じている青年は,
会性までを含めた人間関係によって育てられると
考える。しかしこれは半分であり,実は大自然と
交流することによって初めて全面的に成熟するも
大自然にふれて心が開かれる思いをしている。そ
のらしい。
さえあるのだろう。
なぜ大自然にふれることがそれほど大切なの
んなとき,たったひと言,見も知らぬ人から「こ
んにちは」と声をかけられることは,「感動的」で
インストラクターは,青年の開かれ始めている
か?
心に温かいひと言をかけてやることで,スッと彼
答えは,人間自身が大自然の一部分だからとい
うことになる。もう少し心理学的にいえば,意識
の深い層にまで達する静かな感動は,ハイテクノ
ロジーの与える感覚的な刺激や,表面的な人間関
係からは得られない。それこそ自分自身の生命の
源泉・母胎である大自然に帰ってゆくことが必要
らの心にふれる。
上だよ,もうひと頑張りだ」と励ましてやれば,
さらに一歩進む。「右手にスズランの群生があるか
である。
いいね」とアドバイスしてやればさらに近づく。
大自然に帰るというコトバの中には,もう1つ
その愛情が,生き生きとした独特の感動を生み,
その感動は青年の心に,誕生や成長や建設などを
愛する生命愛(バイオ・フィリア)を育て,心の
奥底の宇宙的生命力を刺激することも含まれてい
る
。
登ってきた青年たちに,「あと10分くらいで頂
ら,ちょっと寄り道してごらん」,「君たちだった
ら,もう1時間頑張って,次の展望台まで行くと
しかしここでも,青年は子どもとも,おとなと
も違う心の持主だということを忘れないでほしい。
青年の心は微妙な動きをする。ちょうど猟犬の
臭覚のように,このおとなはぼくを(わたしを)
どう見ているかということを感じ取ってしまう。
反抗的な気持やおとなへの不信感は,自分自身
一部のマンガやロックやバイクが与える刺激や
ふくしゆう
快感は,破壊欲・復讐の欲望・機械的なもの・生
しし
命のないもの・殺すことなどへの愛一死屍愛
(ネクロ・フイリア)と呼ばれるが,現代社会はこ
への自信欠除そのものを投影しているのだし,今
の種の刺激に満ちている。
る
。
つまり人間が人間らしい感情を育て,健康な人
格性を養い,心の奥底からの生きる喜び(生きが
い感)を味わうためには,どうしても大自然との
ふれあいが欠かせないものなのである。森や林の
中を歩くことなどは,生命愛を活性化させるもつ
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やっとこうして,両親や教師たちの束縛から逃れ
てきたのに,またぐおとな>の顔をした人から
お説教されるのかと,本能的に防衛の身構えをす
声をかけてもらう喜びと,<おとな>から身
を守ろうとする防衛とが,一瞬の心理に同居して
いる。つまりインストラクターの鉄則は,温かく
包み込んでやるまなざしと話しかけを持ち,同時
に,彼らのほうから踏み込んできたときだけ,さ
25
らに話し続けるという慎み(モデステイ)を持つ
ということである。
いわゆる山小屋のおじさんとして人々に敬愛さ
れる人は,どの人も山そのものの一部分になりき
−インストラクター自身の心
心ない青少年を予想してか,「樹木折るべから
ず」といった種類の掛け札を見ることがあるが,
これなどは逆に青少年の潜在的反感に火をつける
っているような入であり,もの知り顔のお説教を
ようなものであり,まさに心ないおとなの迷い言
したりしないし,まして,山を汚すな,モラルが
である。
低下しているなどと嘆いてみせたりはしない。
東富士の遊歩道に,太宰治の「富士には月見草
しかも初めて森に入ってきた青年たちは,この
がよく似あう」という句が道標の下に刻まれてい
樹は何という樹なのか,あの鳴き声は何という鳥
るのを見て,これだけでどれほど多くの人々が,
なのか,この水はどこから流れてきたものか,聞
野の花への関心と愛を呼び覚まされるかしれない
きたいことはいっぱいあるはずだし,時にはこの
と思ったことがある。
なずな
大自然にふれた喜びを,だれかと分かち合いたい
「よく見れば斉花咲く垣根かな」といった
という“人なつっこい気分”もわいてきているに
芭蕉の句でも,「からまつの林をすぎてからまつを
違いない。
しみじみと見き/からまつはさびしかりけり/旅
ある女子学生が,山で父親ぐらいの年輩の人か
ら,初恋のときにこの森へ恋人といっしょに来た
ゆくはさびしかりけり」といった詩の一節でもい
い◎
という話を聞いて,すっかり山好きになってしま
不信感と甘えと利己的な自閉とを特徴とする現
ったというし,ある男子学生も,孤独感に耐えら
代青年に対して,大自然とふれ,山に抱かれ,川
れずに逃げていった山で,見も知らぬ3,4人の学
と語る森林浴こそ,彼らのシラケ気分を蒲す最高
生に仲間扱いしてもらい,非常にうれしかったと
の良薬であろう。
話すのも聞いた。
青年は自然の中に孤独を求め,同時に孤独から
の救いを求めている。
さらに森や林の中での共同生活,野外キャンプ
山に来るような青年は,本来心優しい,深く物
を考える,ロマンチックな好ましい青年たちであ
る。こんな良い青年に森や林を愛する心の芽を植
え付ける森林インストラクターは,人間にとって,
や合宿訓練は,現代青少年たちのもっとも欠けて
もっともだいじなもの−自然への愛を育てる
いる連帯感を養う数少ない場であろう。
教育者である。
ふだん受験勉強で競争相手としか見られない友
フランスの作家ジャン・ジオノの『木を植えた
人たちが,このときだけは力を合わせて生活する
人』という40ページの小品は,ひとりで荒地を開
仲間となる。日常生活では画一的な材料とインス
拓し,木の実を植え続け,10年後には林を,30年
タント食品に囲まれているのに,このときだけは,
後には森をよみがえらせた老農夫の物語であるが,
どこかで創造性を発揮しないではやってゆけなく
樹を育てる職業に携わるすべての人に一読してい
なる。
ただきたい感動的な物語である(原みち子訳,こ
ある先生の話では,「こんなときの高校生は,天
真らんまんな子どもに返ったような,明るいすな
ぐま社,1989年刊)。
山を守るという大役を背負う森林インストラク
おな表情をしている」という。木漏れ日を浴び,
ターは,その大役ゆえにときには青年にく巡視中
澄んだ大気を胸いっぱい吸う森林浴は,風呂あが
の警察官>といったイメージを持たせかねない
りの壮快さにも似て,人の心を解放させる。こん
が,たった,つの例外に対してだけは目を光らせ
なとき,全員が声をそろえて合唱までできたら,
てもらいたい。その例外は,森や山の天敵である。
まさに最高の森林体験ということができよう。
3.やまこれ山にあらず
私の住む甲府市北東部は,愛宕山,夢見山とい
った丘のような小山があり,そこには子どもの家
林業技術No.5801990.7
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自然公園があり,さらに営林署の研究施設と教育
ずまいは仏自身)。
ねんろう
的な樹木見本園と続く。
道元禅師はこの境涯を抽弄(思索し枯りあげ)
みどり,鳥の声,澄んだ空気,広がる眺望と,
森林浴の醍醐味を満喫できた。
して,「やまこれ山というに非ず。山これ山という
なり」という。
ここで満喫できたと過去形に書いたのは,この
数年,小雨の降る日以外は,この喜びを完全に奪
最初のやまは,目の前にあるだけの,物理的・
地理的なものだから,自分にとって生きた存在で
われてしまっているからである。というのは,ほ
はない。ところが,自分が成熟してくると,感情
とんど毎日,どこからともなく集まるローリング
を持ち苦悩を持ち,希望を持って山に対する。そ
族の騒音が,すべての喜びを一瞬にして打ち壊し
のとき山もまた自分に語りかけ問いかけてくる生
てしまうことによる。5月初めのゴールデンウイ
きた存在となり,山と自分とは互いに語りかけ答
ークに新緑を楽しみ,かすかに蝉の初鳴きの声ま
え合う。ジーッと山を仰いでいるうちに,自分の
で耳に入ってきて,うっとりと自然に溶け込んで
小さな自我は消えて,山と一体になってゆく。そ
いるとき,心ない1台のバイクのけたたましい金
してこのときこそ,山は本当の意味で山となるで
属音が,どのくらいの破壊力を持つものか想像し
あろう。
「やまこれ山に非ず」とは,前に述べたバイクの
てほしい。
植物園内にまでモトクロス気取りのバイクが侵
入してきたのを見てから,私は絶望して前記のよ
うに小雨の降る日以外は愛宕山に近づかないこと
にしたのである。
騒音に汚染されたときの山であり,人間に語りか
けなくなった山である。
個人にとって,成熟し,心静かなとき森も林も
生き生きとしてくるが,社会にとっても健康で,
このように,多くの林業関係者の努力が,バイ
クの騒音という天敵によってむしばまれているの
ゆとりのある平和な状況の中で,初めて森も林も
息づくものである。
は,ここばかりではないはずである。森林を育て
みどりから切り離されて人間疎外に陥りがちな
山を愛するためには,一面こういう社会問題も視
青年たちが,森林を愛し森林と出会う,数少ない
野に入れざるをえなくなっている。
機会を大切にし援助してやるとき,森林インスト
仏教には,山も川も大自然のたたずまいそのも
のが仏の現れだという思想がある。蘇東波の「蕊
ラクターは,大自然から送られてきたカウンセラ
ーであるといえるであろう。
せい
声はすなわち是れ広長舌,山色清浄身に非ざる
(にしひらなおき・創価大学教育学部/教授)
はなし」(川の音は無限の説法そのもの,山のたた
オフィス必備.〃
平成2年度全国撮影一覧図
8月上旬発売予定
空中写真を利用する際の第1段階として,対象区域が林野庁撮影分なのか,国土地理院
撮影分なのか,最新撮影年度はいつなのか,といった基礎的事項を知るためにオフィスに
最低1部は必備の資料です。
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◎お求めは,日林協事業部まで(1階直通公03-261-3826)
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術 渭
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冑廟
閥術
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玉川大学農学部研究報告
第29号
平成元年12月
玉川大学農学部
口数種アカシア類苗木の生長と土
壌水分(英文)
ロマツクイムシ被害をうけた海岸
クロマツ林の植生遷移について
−三重県七里御浜国有林の事
※ここに紹介する資料は市販されてい
ないものです。必要な方は発行所へ頒
布方を依頼するか,頒布先でご覧下さ
る
よ
う
お
願
い
い
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長野県林業総合センター研究
報告第5号
平成2年3月
長野県林業総合センター
ロコナラニ次林の萌芽更新と成木
林肥培
ロケヤキ人工林の成長
口松の年越し枯れ等新症状を踏ま
えた被害拡大防止技術の開発
例
口農林水産業用資材等農山漁村地
ロミスミソウの葉片培養による不
定胚形成と増殖
ロ江戸期のツツジ品種とその原種
におけるサイアニツク花色発現要
域における国産材の需要開発に関
する総合研究
口木質系産業用資材等の需要ポテ
ンシャル調査
因
口木製防音壁の試作と性能評価
に渉道用木レンガの試作と性能評
徳島県林業総合技術センター
研究報告第27号
価
口木製ストックハウスの試作と性
能評価
口野外トイレの試作と性能評価
平成元年12月
徳島県林業総合技術センター
ロ徳島スギ構造材利用技術開発試
験(第2報)−スギ平角材(吉
野川流域産)実大強度試験
口乳牛用の木製飼槽(餌箱)の試
作と性能評価
口林業総合センター構内の植物
成一ヒノキのさし木
ロスギの施設内交配における種子
と苗木の生産性
口簡易フレームを用いたスギ人工
交配の種子生産効率及び作業工程
口防虫網で球果を虫害から保護し
たヒノキの人工交配種子の品質と
その経済性の検討
ロガラス室内鉢植え管理における
ヒノキさし木苗木の着花促進効果
ロマツ交配における花粉管理と交
配技術
ロ山陰地域における効率的な交雑
技術の体系化に関する研究
ロスギ人工交配家系の造林初期に
おける雪害抵抗性の発現様式
ロ九州のスギ精英樹における諸形
質の遺伝
ロトドマツ交配種子によるアイソ
ザイム遺伝様式
愛媛大学農学部演習林報告
第27号
平成元年12月
愛媛大学農学部附属演習林
く論文>
口山地小集水域の土壌中の銅,亜
鉛,鉛の分布
口林内作業車道の横断形状と路面
匡席緑広葉樹林の択伐更新(樵木
林業)についての二,三の考察
口有用広葉樹の造林試験一ウ
ラジロガシ,キハダ,トチュウを
モデルとして(予報)
口馬尾松交配事業について
口馬尾松交配種子による苗木(和
華松)養成試験
ロスギ・ヒノキ材質劣化害虫防除
に関する総合研究(第1報)
口落葉広葉樹林帯における有用広
葉樹の開花結実に関する調査
調整
口九州地方における交配材料の育
九州大学農学部演習林報告
第62号
平成2年3月
九州大学農学部附属演習林
仁跡業労働力の存在形態と組綱上
に関する研究
ロスギ品種内の木材性質のパラツ
変型侵食に関する考察
口日本木材市場における外国産材
優位の基礎一建築用材価値系
列の分立
く資料>
ロヒノキ人工同齢林への択伐作業
キ
の適用(2)−第1経理期の施業
と成果
ロ構造部材を意識したスギ12品
口演習林気象データー解析システ
種の木材性質
ムについて−パーソナルコン
ロクヌギ精英樹候補木によるシイ
林木育種場研究報告No.8
タケ栽培試験
平成2年3月
林野庁林木育種場
ロスギにおける胚致死遺伝子の検
出法に関する研究
に仇州における交配材料の選択と
ロ愛媛大学農学部附属演習林気象
報告(Vlil)−米野々森林研究セ
口災害多発地帯における降雨強度
の変化に伴う林地崩壊の計量的評
価
ピュータによる処理プログラム
ンターの気象データー<1988年)
口愛媛大学農学部附属演習林気象
報告(Ⅸ)−東野試験地の気象
データー(1988年)
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28
御身にて男のすがたをつくりて、新羅、高麗、
ールホン・リンネはエンジュにのogo国
形態・分布などスウェーデンの博物学者カ
も
し、細かに刻み、ねばりを操み去り、かて物
茜冒凰8伊冒目という学名をつけているが、
ききん
て、うみの宮の槐にとりすがりて、応神天皇
百済の三国をば打とり給て後、筑紫にかへり
をうみ奉り給ひける﹂
中国北部原産の落葉高木で、日本には古い時
えにす
したらしい。
とす﹂とあるから、飢謹のときの救荒食糧と
またエンジュをコヤスノキと称して、昔か
無事に応神天皇を生んだという﹁うみの宮﹂
木に用いている。﹃中朝事跡﹄に﹁天街の両畔
る。中国でも栽培のものが多く、古くから並
代に伝わり、栽培されてきたものばかりであ
の史論書﹃愚管抄﹄に載っている次のような
は、現在の福岡県粕屋郡宇美町にある宇弥神
槐を植ゆ、俗、号して槐街という﹂とあり、
神功皇后が、エンジュの木にとりすがって、
故事によるものといわれている。
社にあたるといわれ、同宮ではエンジュを神
ら安産のお守りとした。これは、わが国最初
﹁神功皇后︵中略︶応神天皇をはらみ給ひ
エンジュは表面が深緑色で、九∼十五個の
木樹種の中に入っている。
いわれ、明治四十年には東京市が選定した並
天街とは都大路のことである。エンジュが東
,
小葉がある羽状複葉を緑色の若枝に互生する。
夏の強い日ざしの八月ごろ、淡黄白色の蝶形
をしたマメ科特有の花が、複総状花序になっ
て多数咲く。秋には数珠状にくびれた、長さ
五∼八センチの果実が淡緑黄色に熟して垂れ
下がる。この果実はエンドウやダイズなどと
枝が下垂するエンジュをシダレエンジュと
違って、中が肉質で粘って裂けない。
いい、日本でもまれに植栽されている。また、
ムラサキエンジュと呼ぶ花が帯紫色の品種も
ハリエンジュといわれ、同じマメ科で似てい
ある。北アメリカ原産のニセアカシアは別名
るが、枝にとげがあり、五月に白い花がフジ
のように垂れて咲くから区別できる。
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京の並木に用いられたのは、明治十年ごろと
心=
参詣があとを絶たないという。
”
木として植え、いまも安産を祈願する女性の
ー
て、仲哀の御時の神の御教によりて、仲哀う
≦
せ給ひて後、しばしな生れ給ひそとて、女の
へ
エンジュ
小野蘭山・島田充房『花業』
深津正
想像がつく。
エンジュは、最近盛んに街路樹に用いられ
ているので、秋、数珠玉を何個か連ねたよう
な実が垂れ下がっている光景が随所で見られ
るが、この実を槐子、槐芽、槐実などと称し
から渡来した音︶で﹁えす﹂といい、これが
小林義雄
て、熱病、破傷風などの薬に用いる。この槐
わが国でも、昔は、中国にならって大臣の
エンジュの古名﹁えにす﹂になり、転じてエ
子を、呉音︵古代中国の楊子江下流沿岸地方
平安時代から鎌倉時代にかけて行われた寝
ことを槐位と称した。源実朝の有名な歌集に
にエスまたはエスノキなどの異名のあるのは、
ンジュの名が起こったといわれる。エンジュ
えんじゆかど
殿様式の庭造りについて書かれた、わが国最
﹃金槐集﹄というのがあるが、これは、実朝が
に彼の居所鎌倉の金偏をとって﹁金槐﹂とし
そのなごりであろう。
右大臣の位にあったので槐の字を用い、これ
こと、大臣は人を懐けて、帝王に仕うまつら
月を迎えること、科挙時代には、このころに
う文句があるが、槐花が黄ばむとは、陰暦七
このほか、中国に﹁槐花黄、挙子忙﹂とい
成分はルチンで、毛細血管のもろくなるのを
エンジュの花は、漢薬で﹁槐花﹂と称し、
り、前者がエンジュで、後者が、﹁大えんじゅ﹂
名恵爾須︶、葉大而黒日﹂し穣︵音懐︶﹂とあ
﹃和名抄﹄に﹁爾雅集注云葉小而青日し槐︵和
の三公が、朝廷の庭に植えた三本の槐に対し
なると、科挙の受験生が忙しい日々を過ごし
くわいかき瞳みきよしいそがし
たものだという。
て座し、その前面左右に九卿が列座して、執
たことをいったものである。また﹁槐市﹂と
だから、三公を﹁三槐﹂とも称し、また後
来る人を懐しがらしめ、これと謀ることを欲
この名が生じ、ここで、中国の諸地方から集
両側にトンネル状に槐樹の並木を植えたため
られた市場のことで、屋根の代わりに、街の
いう言葉もある。これは、漢代長安城に設け
黄表紙はほとんどこれで染めたものだという。
煎じて、布や紙を染めるのに用いる。唐本の
んでおり、っぽみのときにこれを採り、水に
花にはまた、ルチンと別種の黄色い色素を含
防ぐので、高血圧の特効薬として利用される。
とも称するイヌエンジ﹃一であろう。
おお
た風習は、﹃周礼﹄に﹁槐の言は懐であって、
世では、大臣の位を﹁槐位﹂、﹁台槐﹂、司槐座﹂
まった書生が盛んに論議を交わしたので、大
せしめる﹂とあるによるという。
などといい、さらに三公の居室を﹁槐門﹂、三
中国では、春新葉を摘んで、ゆでて苦味を
中国名と関係のありそうなことは、おおよそ
親しまれてきたので、エンジュという和名が
年︶をみると、﹁えんじゅの若葉をゆびきさは
が国でも、莅戸大果の﹃かてもの﹄︵一八○二
のぞき
抜いて食用としたり、茶の代用ともする。わ
学の異名としても用いられるようになった。
称し、天子の居所を﹁槐辰﹂、朝廷を屈鰹庭﹂
などともいった。これらはいずれも右の故事
によったものである。
このように、中国で古来槐樹が至極尊ばれ、
公の位に登ることを﹁登槐﹂、﹁任槐﹂などと
ほか
務にあたった故事をふまえたもので、こうし
これは、中国の周代に、大師、太傅、太保
たいふ
しむべきのつかさとか﹂とある。
なづ
べし、大臣の門に槐を植えて槐門と名づくる
28
古の造園書﹃作庭記﹄に、﹁槐は門の辺に植う
エンジュ︵槐︶
木の名の由来
29
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30
せんぴろ
していて、常にぬれている感じの所が多いの
狭いだけでなく、絶壁の途中から水がわき出
とのこと。それでわかるが、この峡谷の道は
しかし、大杉谷の地質は砂岩の層も交互に
ても硬いはずだ。樹も生えない露岩である。
あるので、樹の育ちは良い。そのうえ、雨が
しかし、翌日の山路にも以外な発見があっ
ことだ。すでに千尋ノ滝というのを見た。や
多い。その多さは想像を絶している。雨降っ
た。一見楽に登り下りできそうな山腹にも、
がて現れたニコニコ滝も名に似合わず壮大な
落差で水量豊かだ。滝が多いということは、
て地固まるというが、ここでは、雨降って樹
いう記録がある。伊勢湾台風のときは、一日
原といえば、一年間の雨量が四、八○○ミリと
人の死を悼むことばが書かれていた。
りてきたボーイスカウト一行のリーダー格の
遭難慰霊碑があった。大台ヶ原の頂上から下
である。
岩石が硬いことを示している。絶壁の質が軟
育つである。大杉谷の源流にそびえる大台ヶ
特な赤褐色をしていた。岩の質も硬そうだ。
に七○○ミリの雨が降った。それでその後、
1︶ま二つ。
らかければ、滝にはならず、沢か川になって
これはチャートと呼ばれる水成岩だ。太古は
(画・筆者)
やがて現れた岩峰のような絶壁、それは独
海の底で、そこに堆積した魚や貝などが変質
所を造って、水量の調節をしている。
おそらく、想像を絶した豪雨であったので
る﹂
大杉谷が大台ヶ原山の山腹に移る地点に発電
﹁隊員引率中遭難遂に帰らず一九七五
年八月十日五十八谷にて九月七日発見さ
してできたのだから、隆起して山の姿になっ
びょうどうぐら
このあたりで目立った樹は、モミの巨木、
あろう。それにしても、このあたりの岩にま
そしてケヤキである。平等岳のあたりのケヤ
キは、岩質が水成岩のせいか。ケヤキを﹁標﹂
つわりつく樹の根は、茶色い大蛇のように地
九年の初秋、老朽化していたつり橋のワイヤ
らせ、リズミカルには歩けない。そんな辛い
マキの根はとぐろを巻いて地をはい、靴を滑
わたしの靴も、木の根にからんだ。コウャ
表に露出している。
と書くのがうなずけた。
大杉谷が終わるあたりで目を引くのが、つ
ーが切れて、橋上で記念写真を撮っていた登
れるかのように山里云ったのが、シャクナゲの
気分が一時間も続いたあと、苦労に報いてく
り橋の傍らに立つ遭難記念碑である。一九七
山者たちが川に落下した。その時の犠牲者を
群落である。
悼む文字が刻まれている。このあと、地元で
は他のつり橋も全部付け替えて、桟道的な登
せた登山者の声を聞いたが、大台ヶ原から下
谷の中心部にある桃ノ木小屋で泊まり合わ
きはその頂を覆うイトザサ︵糸笹︶の広がり
半の山腹ではミズナラ、大台ヶ原に着いたと
象に残った。前半の山肌ではヒメシャラ、後
私の見た大杉谷は、スギよりも広葉樹が印
ってくるとき、よく足を滑らせて遭難すると
に安堵感を抱いた。
山路の整備をして、鎖をつけたのである。
のことであった。登ってくる人の遭難はない
林業技術No.5801990.7
シャクプークー
§ズプテ
ヒメナ.i'ヲ
31
二︺巻−
この一例でもわかるが、大杉谷は杣の宝庫
育てた木のことなのである。杣人といえば、
てしまったが、ソマといえば文字通り、山で
ど使われない。〃植林〃ということばに変わっ
森への旅である.﹁杣﹂という字憾、こんにち、ほとん
陥大杉谷の秘めるもの
大杉谷の樹の茂りを見ながら、私はこの杣
岡田喜秋キコリのことであった。
﹁大杉谷﹂という名を持つ深い谷間を歩いた泊まる。この所要時間は、私が昭和三十年にという字のことを考えた。今では常用漢字か
登ったときとほとんど変わらない。変わったら除外されてしまい、読めない人も多かろう。
その位置が、本州でも中央部といっていいといえば、左右の絶壁につけられた登山道に、いや、そんな字があったのか、と言われそう
最近の実感を語ろう。
伊勢の一隅ならば、一昔前はスギよりもヒノ鎖をつけて滑落を防ぐ配慮がされていたことだが、これは中国から移入された漢字ではな
キが育てられていたろう。伊勢の松阪から宮だ。く、樹木を育ててきた日本人が作った〃国字″
おそ窪や堂
う名の集落があるので、思わず取り巻ぐ山肌の樹相が観察できる。しかし、登山口の大杉この大杉谷一帯は、伊勢神宮の〃御杣山″
川という川をさかのぼると、入口に大杉といこれがあれば、歩きながら頭上の樹や対岸なのである。
の樹相を見た。の宿では、だったのである。戦国時代以来のことである。
&
地名は大杉だが、入ってゆくと、樹種は多﹁樹の上からヒルが落ちてきますから、塩を御料林と言い換えてもいい。杣とは、樹を植
えて木材を育てる山のことである。江戸時代
った。低地のサルスベリとは違う木肌を見せ、と言われた。日本一の雨量を誇る地帯だけに、八回もこの一帯の樹が神宮の御用材とな
様である。スギもあるが、ヒメシャラが目立さしあげましょう﹂
赤みが目立つ。谷間の地形は左右が切り立つあって、今も自然は原始性を持っている。塩っている。
ていて、渓谷というより峡谷といいたいV字をかけると、ヒルが収縮するというのである。約半日歩いて、大杉谷の懐というべきシシ
形である。眼下の川の源は大台ヶ原山で、こ対岸の樹相を見ると、ヒノキがある。江戸時淵に着いた。南北に切り立った絶壁の底に、
の山の雨量は日本一である。初夏から夏まで代の大杉谷は、伊勢神宮が近いので、神木を水の澄んだ河原がある。見れば、石灰岩だ。
は毎日雨が降るといわれ、その間の岩肌は滑献上してきたのである。伊勢神宮だけではなこれなら樹もよく育つわけだ。石灰岩は水成
りやすくて、歩く山路の狭さも手伝って、絶く、法隆寺の五重塔の心柱も大杉谷のヒノキ岩である。水成岩質の峡谷は珍しい。東日本
壁から足を踏み外す登山者が多い。である。これは高く評価されている。三本のでは奥秩父がそうだが、ここも荒川の源流に
V字状の谷の左右につけられた山路は、頂ヒノキを継いであるが、外側からは見えないあたり、今も自然林がよく育っている。
まで一日では登れない。途中にある山小屋に心柱だけに、話題にならず気の毒だ。大杉谷の特色は、見ごたえのある滝が多い
林業技術No.5801990.7
32
農林篝晨
水源かん養機能と常識
少し昔の話になるが,林野庁が
「水源税」という目的税を創設して
水を利用している産業や国民から
水利用税を徴し,これを水源地で
ある森林に還元しようとしたが,
水利用者側の強い反対の前にあえ
なく断念したことは,いまだ記憶
に新しい。
このときのさまざまな反対論の
中に,「森林の渇水緩和機能につい
ては,科学的に疑問がある」「流域
単位で見た場合,森林の水流出へ
の影響はどの程度あるのか」等々,
また,極論では「森林の草木が水
を蒸散するため,裸地より下流へ
の水流出量が少なくなり,逆に水
不足の原因になる」といったこと
が流布された。
当時,こうした森林の水源かん
養機能に疑問を呈する諸説に対し,
科学的・定量的に明確に森林の機
能を説明し,反論の余地を残さな
い論拠が必要であることが痛感さ
れた。
このような背景の中で,林野庁
は「森林水資源問題検討会」を設
置して,種々検討を重ねた結果,
6月18日に「森林水資源対策の新
たな技術的展開」としてまとめた
ものを公表した。その内容は,①
森林の水資源に関する総合的諸機
能,②森林の水資源に関する機能
の定量化,③森林水資源対策の新
たな技術的展開,から成るが,そ
の中身の紹介は専門家に譲るとし
て,ここでは林業関係者にとって
賊謙曜燕葛闇臼奉海赫業’
千ha
22
信
§
図・1用途別林地転用面積の推移
林地転用の最近の
傾向
一
20
−
農用地
%
===一
鍬
積
5
朧
.
∼
¥ジジ雑言施蒙
麹一
│
博
:
_
ゞ
3
0
職鍵ミー窪蕊蕊■■
〆
一一
鱗議■■議職■■
1
0
用面
、
5960616263年度
林業技術No.5801990,7
全転用面積に占める割合
転
︵l農用地︲lゴルフ場︶
0
03
02
01
0
5
4
15
はいまさらと感じる森林の諸機能
を,国民がどうとらえているのか
について,少し追ってみたい。
昨年10月に総理府が実施した
「森林と生活に関する世論調査」に
よると,「守るべき森林の働き」の
中で,山崩れや洪水などの災害防
止を挙げた者が68%,水資源を蓄
える働きを挙げた者54%と1,2
位を占め,また「これからの森林
整備のあり方」についての問いで
は,森林は経済効率に合わなくて
も国土の保全,災害防止などの役
割を重視して整備すべきとの回答
が実に79%に達している。こうし
た調査結果を見ると,国民の常識
といったものは,私たち林業サイ
ドと乖離しているとは思えない。
森林が水資源をかん養し,国土を
保全し,保健休養の場を提供する
ことは,すでにそれこそ常識とし
て小学校の高学年以上なら先刻ご
承知であろう。それがなぜ過般の
水源税の際に常識が覆る内容が喧
林地開発許可制度が導入された
昭和49年度以来,林地の転用面積
はおおむね17,000∼20,000haで
推移してきている。同許可制度は
1ha以上の開発行為について都
道府県知事の許可を受けることと
しており,また,本制度の監督者・
執行者である国や地方公共団体の
行う開発行為についても,許可制
は適用されないが,本制度の趣旨
を徹底するために,都道府県知事
と連絡調整をすることとなってい
る。
ここ5カ年ばかりの実績を見る
と,許可処分による林地転用面積
資料:林野庁業務資料
注:面積は林地開発許
可制度により,許可ま
たは連絡調整による
処分面積であり,開発
区域内の残置森林は
含まない
は増加し,連絡調整によるものが
減ってきているが,図.lは,その
双方を合わせた面積を挙げてある。
さて,転用面積を用途別に見て
みると,工場・事業場用地,住宅用
地,公共用地などはそれほど大き
33
「巍徒の湯水緩和機能には科
学的に疑問」であった。あまりに
常識化したものを科学的根拠は
?と問われると,まことに弱い。
いま,わが国の森林は国民の
理解と協力なしには成り立たな
い,とすれば,森林の多様な機
能をいっそう国民に向けてPR
することは,当然の責務であり,
そのためには常識として片づけ
てきた知識や情報を一度洗い直
し,科学的に解析して新たな装
いで情報提供すべき時期にきて
いる。今度の「森林水資源検討
会」は,そのきっかけをつくって
くれた。
な変化が見られない。大きく変化
しているのは,農用地とゴルフ場
で,昭和59年度には全転用面積の
5割を超えていた腱用地造成は
年々減少し,昭和63年度には約2
割となっている。一方ゴルフ場は
急速な伸びを示し,昭和62年度に
農用地と逆転し,昭和63年度には
全転用面積の4割近くを占めるに
至っている。
森林は多面にわたる機能を持ち,
土地も含めてその資源は有効に活
用されなければならない。近年,
余暇の増加,またそれに対する国
民の意識の変革に伴い,森林に対
するアクセスも多様化してきてい
るが,今後とも森林資源を永続的
に利用してゆくために,開発許可
制度をはじめとして各種の制度が
適切に実施されてゆかなければな
らない。
そういった観点から,林野庁が
許可制度にかかわる開発区域内の
残置森林比率を引き上げたのは,
この6月のことである。
I
爵
;林政拾遺抄
幽
剛ロ
淀川のワンド(大阪営林局提供)
毒一画
幽蜘廟脳輌輌”ぬ”ぬ■”廊画晦廊■■単■蝉■■噂■”■幸■■■■輯■鐘■率嘩■章■由嘩回掘■罰麹函胴眼函幽蜘噸師幽伽
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夢 ■ 四 画 ■ 酉■画■■■■■璽亟■■■顕”画■画■■■声■■■商■■■■直之■■唾■■■■■■■、■■歯画画四m
即
轍
言一二
毒一二
毎日Bロロロロ目&ロロロ日日ロ日ppgpB言ロロョロロロ■gBgE冒唇豊冒冒譽薑冒臺冒冒薑豐冒壹臺薑量薑
伝され,そして水源税反対の有
力な論拠となり,それなりの説
得力を発揮したのだろうか。
いままでにも林業サイドは,
おびただしい数の森林機能に関
するパンフレットの類を作り,
国民各層に提供してきた。それ
は森林は水資源をかん養するこ
とはあたりまえの常識であると
したうえで,単に情報を提供し
てきた。その虚を突かれたのが
鵜殿のヨシ原;
m
蝿
駅n
”
爵
閲ロ
:「豊葦原の瑞穂の国」と呼ばれ万束必要とした),燃料として出§
#た古代からアシ(ヨシ)は水辺荷された。明治から昭和初期に§
#一帯に茂っていた。淀川の河口かけヨシ刈りは村人の重要な収閲
協から約30knl上流の高槻市にあ入源となり,夏期約40日間は毎;
§る「鵜殿のヨシ原」はその名残日ヨシ刈りに従事したという。§
#で,ヨシ,セイタカヨシ,オギしかしこれほど産業用の資源とヨ
鴬などの約60haに及ぶ湿性植物して重用されたヨシもしだいに閤
息群落地域である。現在ここのヨ需要がなくなり,現在では1軒§
ヨシ原の保全対策が進められ,市平均30∼50束ぐらいの収穫量§
§は「鵜殿のヨシ原保全対策協議に下がってしまった。しかし,冒
昌会」を昭和50年に発足させ,ヨ産業用資源としては用いられな目
目シ原復元を目的とする「カナムくなっても,ヨシ原は環境資源目
§グラ抜き取り」を毎年精力的にとしての価値を高めてきている昌
昌 続 け た 。 ヨ シ に 巻 き 付 い て 押 し こ と に 注 目 し た い 。 ‐呂
畠倒すカナムグラを除去してヨシ赫没のヨシ原だけでなく,淀昌
爵原の復元を図ろうとしたのであ川流域全体のヨシの植生地の保呂
畠る。現在,’4年にわたり続けら存対策がいま進められている。冒
昌れたこの除去作戦により約昭和52年,「21世紀に残したい冒
骨7,000㎡のヨシの純群落が形成自然100選」のひとつに淀川ワ昌
昌されるまでになったと報告されンドが選ばれたが(筆者も選定冒
菖ている。委員の1人),その選定の目的は畠
ミヨシは古くからこの地域の重ワンドのヨシ等の水生植物を保冒
冒要な産業資源であった。太いヨ護し,イタセンバラ(タナゴの一目
§シからは笙(しよう:雅楽器)種)などの魚やカモなどの水鳥昌
呂が作られたが,普通は「よしずの生息環境を守ることにあった。目
目作り」の原料に使われた。よし森林のない淀川河川敷付近の昌
昌ず(すだれ)は家庭での日よけ農民にとって森林の代役を務め冒
冒用カーテンとしても使われたが,たのはヨシ原であったが,それ冒
冒大量に使われたのは,宇治の茶が,環境資源としてあらためて二目
邑畑の日覆いや寒天ずであり,ま脚光を浴びてきている。
目
冒た農家の屋根葺き用(1軒で1(筒井迪夫)呂
蚤叩ロ”ロ叩加叩叩耶ロ賑血”皿ロ”ロ叩叩”””””””ロ叩皿”””””ロ”龍普甜旨
林業技術No.5801990.7
34
に使用されたと思われる一部
屋は,入ってまず,だれもが感ず
る印象芋,古い農家の土間に接す
ごロ脂
鯵く
味のある木造りの部屋
前に,当欄で紹介した「河井寛
次郎記念館・京都市五条坂上」は,
既述のとおり,現代陶芸の最高峰
の一人で,また柳宗悦氏らと「日
本民芸美術館」設立を推進し,民
芸の持つ日本美を鼓吹した河井氏
の没後(1966年没)に,同氏の遺
宅を,−その業績と,彼の高い
美意識を一般に伝えるべく−
記念館として,公開したものであ
る。同館は,元の旧宅力達戸台風
で傷んだため,同氏が深い愛着を
寄せていた農家や民家を範とし,
1937年に自分で設計し建て直し
たもので,同記念館には,優れた
感性で構想した部屋が,いくつも
公開されている。
その中で,入口右手の「玄関の
間」に隣接する−以前は応接室
る囲炉裏のある板張りの部屋に,
よく似ているということであるに
違いない。このことは,河井氏が
美意識から民芸に深い関心を寄せ
たことと関連するのであって,こ
の部屋のことは,すでに「囲炉裏
のある応接間」として紹介してい
るが,同氏の感性と住まいの関係
を述べるため,さらに部屋のよう
すを略述することにする。
まず,部屋の天井には,古い農
家のように太梁が使われ,そして
部屋の周囲は,西側に隣室との境
の板戸と,太い枠木を使った1間
幅ぐらいで,壁面いつぱいに造り
付けた戸棚麓ゑり,東側には板戸
を挟んで白漆喰の壁があり,その
木の記憶=住まいの仕掛け
建築設計家
滝沢隆(禁無断使用)
部屋の内部
冨醐語附#
‘
:
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;
・
馨
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鍵
職
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;
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癖
.
:
.
:
.
.
:
.
:
谷本丈夫著
森林からのメッセージ⑤
広葉樹施業
の生態学
発 行
創 文
〒116東京都荒川区西尾久
7-17-16
(a03-893-3692)
平成2年3月12日発行
四六判,247頁
定価2.900円(外税87円)〒260
林業技術No.5801990.7
広葉樹は我々の身近に数多くあ
的に施業の方法が記述されている。
る,あるいはあった。しかし,そ
の生態的な情報は,スギやヒノキ
著者は論文や報告書はいうに及
ばず,明治,大正の資料,さらに
江戸時代の古文書にも精通してい
る。本書でもその成果はいかんな
く発揮されている。薪炭林造成方
法の記述は当然であるが,現在,
世界で顕在化している燃材不足に
よる盗伐が,江戸末期の日本でも
各地で繰り広げちれていたことが
記されていたり,たたら生産地の
資料を生かして薪炭林の回帰年が
述べられるなど,切口も単純でな
く,読む人を飽きさせない。
特に東北地方におけるブナ二次
林の形成過程の解明などの部分は,
戦前の林内放牧の資料と現場での
調査結果を基にした,まさに両者
を合体させた成果といえる。広葉
樹林を造成するにあたって,ここ
から得るものは多い。
本書では,天然林施業であって
などに比べると圧倒的に少ない。
それは,長く続いた針葉樹偏重の
反映であろう。その時代から著者
は,ブナの天然更新を中心に広葉
樹の研究を手がけてきた。にわか
広葉樹研究者ではないのである。
著者は,現場を重視し,日本各
地の森林に足跡を残していること
では人後に落ちない。本書では,
こうした豊富な経験に加えて,各
所の長期にわたる調査結果を基に,
ギャップ更新など最新の理論で広
葉樹林の更新,成立などの広葉樹
の生態をわかりやすく記している。
また,各樹種の用途,果実の形態,
萌芽性や耐陰性など基礎的な情報
を効率よく取りまとめてあり,簡
易な事典としても使えるほどだ。
間伐や枝打ちについても広葉樹の
樹形や樹冠の特性を基礎に,具体
も必要に応じて植え込む,広葉樹
35
前に囲炉裏を設け.これを囲ん
で東南北の三方に一段高い零?
IIrョきき〃
座があり,部屋の中央側は椅子
にかけて暖をとるようになって
いる。また北側には二階に通じ
る箱階段と,入口からの「通り
庭」に出る板戸があり,南側だ
けは,全部が明かり障子の広い
窓である。さらに,床は朝鮮張
りを模した板張りで,部屋の中
央には,大長火鉢を思わせるが
んじょうなテーブルが置かれて
いる。しかも,部屋を構成する
すべての木質部分には,くすん
だ趣の塗料が塗られ,差し込む
光を鈍く反射しているのである。
以上の河井寛次郎記念館の木
造りの部屋は,河井氏が,質朴
で落ち着いた地味な古農家の雰
囲気こそ,長い間に「わび,さ
び」という日本人の心の奥深く
にある美意識を培う基盤になっ
たと認識し,それを自己の住ま
いに実現しようとして,建てら
れたものではなかろうか。
林といえども適切な管理がなけれ
ば,環境保全機能は小さい,など
といった記述がなされ,画一的な
施業,考え方を嫌っている。また,
大切なことは,森から基礎理論を
学び,それを希望する森林づくり
の目的に併せて応用することであ
ると述べ,机の上の議論だけでは
解決は不可能であるとの立場を貫
いている。この思想は,広葉樹や
日本といったものに限らず,すべ
ての森づくりに当てはまるものと
考えられる。長期的な視点からの
森林施業や,林業と自然保護につ
いての整理もなされており,こう
した観点からも,この本は21世紀
の林業を展望した本といってよい。
現場の林業技術者だけでなく,環
境保護論者,植物生態を専攻する
学生や研究者にも一読を勧めたい。
(森林総合研究所生産技術部
熟年労働力
林野庁が行った林業就業者に
ついての将来予測によると,昭
和60年に122,500人いた林業
作業者は,平成7年度には40%
減の73.100人になり,現在約6
割を占める50歳以上の割合が
7年度には7割に達する。また
林業作業者の平均年齢は,この
ところほぼ1歳ずつ高齢化して
おり,若い働き手がほとんどい
なくなる首都圏などでは,近い
将来,林業生産活動がほとんど
不可能になるおそれがあるとい
う
。
労働力の若返りをし,林業の
活力を取り戻すため,いま各地
で意欲的な労務対策が行われて
いる。森林組合レベルでは,現
業職員制度による待遇改善や,
山仕事と木工の組合せによる雇
用の安定,現場手当の支給など,
若い人を引きつけるための工夫
を凝らした取組をしている。森
づくりの総合産業化を目指す西
日本の林業会社では,給与がそ
の地域の土木作業の賃金水準を
常に上回るよう毎年調整し,他
産業なみの社会保険制度と高賃
金による人材確保を図っている。
しかし,最近ではこの会社でも
若齢者の雇用は,かなり難しい
状況にあるという。
いざなぎ景気に迫るこのとこ
ろの好調な経済を背景に,各県
で基金制度による労働力対策を
実施する県が多くなった。現在,
16都県で18の基金が設置され,
または造成中である。基金によ
る安定した財源の下で,長期的
展望に立った労働力対策を実施
する県は,今後さらに増えるよ
うだ。市町村レベルでも,第3
セクター方式による林業会社の
設立など,積極的に地元の森
林・林業の活性化を図る所が現
れた。国でも技術者集団の育成
やパソコン通信を利用した労働
力の流動化など,森林組合作業
班の充実強化に重点を置いた対
策を打ち出してきた。いずれも
若齢作業者の確保を中心とした
対策であるが,若年労働力の払
底が続く今日,労働条件の厳し
い林業労働の後継者を確保して
いくのは,容易なことではない
だろう。
そこで,かつて林業から去っ
ていった人たちに目を向けると,
定年後の人生を再度林業で,と
いう人もけつこういるようだ。
大都市に近い森林組合が,新聞
広告による作業班員の募集を行
ったところ,もう一度山で働き
たいという人からの問合わせが,
いくつかあったという。山作業
は一人前になるまでけつこう時
間がかかるものだ。後継者の確
保が軌道に乗るまでのつなぎと
いっては失礼になるが,経験を
生かした熟年労働者は,現在の
林業には貴重な戦力である。
21世紀初頭には,5人に1人
が65歳以上という高齢社会に
なるという。林業に限らず,長
期的に若年労働力の供給減が予
測される今日,意欲と能力,体
力のある高齢者に積極的に職業
生活に参加してもらうことが,
労働力確保の面からも,社会の
活力維持の面からも大切なこと
である。
(Y)
にの欄は編集委員が担当しています)
・佐藤明)
林業技術No.5801990.7
36
名古屋大学農学部宮浦富保
ふるさと創生と農山村地域経営
.島根大学農学部森巖夫
北方林業voI42No.5
1990年5月p.17∼23
山林No.1272
1990年1月p.2∼8
Acaciamangiumはやせた土
壌でも比較的良好な生育を示し,
長い寿命を持つ樹木の成長に関
また酸性土壌を好むことから,東
竹下内閣が看板施策として打ち
与する要因は,遺伝情報などの内
南アジア各地に広がるチガヤの草
出した「ふるさと創生」。その目玉
的要因と,林分椛造や立地,気象
条件などの外的要因の2つに分け
原を森林に回復させるための切り
ともいうべき市町村一律1億円交
付事業が始まって1年余が過ぎた。
て考えることができる。これら2
れてきた。マレーシア・サバ州で
1990年5月p2∼9
札的な早成造林樹種として注目さ
「自ら考え自ら行う地域づくり」
つの要因をそれぞれ分離して評価
は,1967年にオーストラリアから
のうたい文句を掲げ,1億円の使
することができれば,森林を維持,
導入されてすばらしい生長を示し
途に中央政府は一切制約をつけな
管理していくうえで重要な指針を
たので,1970年代後半から,主力
い建前だったから,市町村の対応
や関係者の評価はさまざまだった。
得ることができる。
造材樹種としてSAFODAが中心
このような目的のためには,ま
となって造林を進めてきており,
かつてない大胆かつおもしろい試
ず実際の樹木の成長のしかたを記
造林面積は2万haに上っている。
みと持ち上げる向きもあれば,竹
下一流の人気取り策だとやつかむ
述し,これを種々の要因との関連
で吟味するのが現実的な方法であ
現在までに東南アジア諸国のほか,
ネパール,バングラデシュ,カメ
人もいた。一過性のばらまきでは
る。
ルーン,コスタリカ,パプア・ニ
なく地方財政の仕組みを改めるこ
樹木の成長のしかたを記述する
ューギニア等の湿潤な気候の熱
と,特にカットされた補助金の復
方法として,樹木の直径や樹高,
幹の材積などの成長データに成長
帯・亜熱帯諸国で導入が試みられ
活こそ先決だと息巻く声も聞かれ
た。
曲線をあてはめる方法が多く行わ
てきた。
また萌芽更新が困難なため,人
れており,従来,数多くの成長曲
線が提唱されてきた。しかしなが
工植栽によって再更新しており,
りつつあった市町村財政にとって,
ら,これらの成長曲線のうちどれ
と比べると再造林費が高くなる。
自由に使える1億円の交付は,あ
を選べばよいのかという点につい
ともあれ,これまで上から締め
つけられっぱなしで近年窮屈にな
萌芽更新によっているユーカリ類
これらの欠点,不利を改善する
る種のカンフル剤的効果をもたら
ての合理的な判断基準は存在しな
ために,JICAサバ州造林技術開
した。自らの裁断に任されたこと
かった。また,これらの成長曲線
発訓練計画では,天然下種更新に
に戸惑いながらも,これがきっか
では,実際の成長データをうまく
よるやや高密度仕立ての施業技術
けになって村づくりや町づくりの
運動に弾みがついた市町村も少な
近似できない場合が多い。ここで
は,従来の成長曲線とは異なる新
紹介をしている。
くない。
しい成長解析法について,その方
本稿では,こうした動きを追い
法と応用例を紹介している。
アカシア・マンギウムの天然更
新施業
新しい成長解析法「U-W法」の
紹介と応用例一トドマツ精
英樹の幹材積成長を例にして
林業技術No.5801990.7
自然の創造と植生管理一都
市「自然」再生学への序章
ながら,これからの農山村地域経
営のあり方について述べている。
の開発を検討しているので,その
在サバ派遣専門家本郷浩二
日本林業技術協会藤森末彦
熱帯林業NO17
東京農業大学養父志乃夫
グリーン・エージ17−5
1990年5月p.25∼36
これまで都市と自然は,対立す
るものとして考えられてきた。し
37
かし,本当にそうだろうか。最近,
的速い飽和側方流がそのような斜
欧米諸都市で開催された「花と緑
面での雨水流出に直接関与してい
るか,また与えているとすればそ
の影響がどのように現れるかを流
出モデルを通して検討する。解析
の博覧会」を振り返ると,都市に
るらしい点に注目してr水文学的
おける自然の再生と保全が重要な
基盤」上での飽和領域の拡大・縮
に用いるモデルは,山地流域での
テーマとして取り上げられている。
小が雨水流出量を支配するとした
水循環過程が明確に表現されてお
概念モデルを提案した。このモデ
り,かつ時間単位での鯛斬が可能
境の中に置かれ,次代を担う若年
ルは,斜面流の両極にある2つの
であるHYCY・MODELである。
層が,生きものと触れ合うことの
流れのうち,ホールトン地上流と
できる空間は,きわめて乏しいの
対比されるもう1つの流れである
が実状である。
側方浸透流に注目したもので,そ
現在,都市住民の大半は無機環
一方,都市自然は,デザインと
しての意義も大きい。人工的なビ
のフラックスの大きさをより詳細
に評価して得られたものである。
ル街に対して,例えば屋上にある
本研究では,新第三紀丘陵性山
生物劣化を対象とする木材の
耐久性向上技術
京都大学木材研究所高橋旨象
木材工業voI45N0517
1990年4月p2∼8
木材は有機物である細胞壁実質
トンボの住む緑豊かな池,その対
地山腹小流域に多数の水位観測井
称性が市民にくつろぎの場を提供
戸を設置して,飽和領域の拡大・
する。都市施設としても重要な位
縮小を直接観測し,同モデルの有
気と水分で占められている。この
置づけを形成するものと考えられ
効性を検証している。
特徴は木材にさまざまな長所を与
と多数の空隙から成り,空隙は空
これらのことから,生活環境と
ダム流域における森林状態が
えるが,同時に短所の原因ともな
る。すなわち,木材腐朽菌やシロ
しての都市のグレードを高めるた
流出特性に与える影響の流出
アリには細胞壁実質は格好の栄養
めには,その中に自然を再生する
モデルによる評価
源であり,空気と水分は生物の生
る
。
ことが,今後の重要な課題である
ことが理解される。
岩手大学農学部太田岳史ほか
水文・水資源学会誌voI.3NQ1
都市自然の再生技術の開発は,
l990年2月p、17∼25
育に欠かせない。酸素を含み,ま
た酸化されやすい分子構造を持つ
成分でできた細胞壁実質は当然
まだ途についたばかりであり,そ
「森林状態の変化が流域からの
"可燃物"である。また,これら成
の手法の大半は,今後の研究に待
流出特性に対しどのように影響を
分に普遍的に存在する水酸基は水
つところが大きい。本稿では,事
あたえるか」を定量的に明らかに
例を交えながら,再生に際しての
することは,森林水文学にとって
を吸着しやすく,吸水・乾燥に伴
う細胞壁の膨潤・収縮は,木材の
心得,指針,利用のあり方を解説
古くからの課題である.また,近
寸法変化や変形をもたらす。
している。
年は天然広葉樹林から針葉樹林へ
の林種転換に対する批判は,水・
化現象が起こるには,種々の条件
急勾配山腹斜面における雨水
土保全機能の面からも強まる一方
因子が満たされる必要がある。こ
流出機構
である。
れら因子の除去や改変が,木材の
東京農工大学農学部太田猛彦
日本林学会誌vol.72N0.3
1990年5月p.201∼207
近年,物理水文学などの名称の
下に,降雨流出の素過程の,より
物理的な解明が進んでいる。
筆者は,新第三紀層山地で実施
原因はさまざまであっても,劣
流域で得られるハイドログラフ
供用時にどの程度まで可能である
は,複雑な流出経路を経て形成さ
かにより,劣化防止策に難易が生
れる流出量の時系列変化である。
じてくる。木材の難燃化,寸法安
ハイドログラフから流域の流出特
定化をはじめとする材質改善技術
性を抽出するには,なんらかのモ
については,最近の同誌で繰り返
デルを媒介として数値表現する必
し取り上げられているので,ここ
要がある。
した雨水流出現象の観測結果を基
そこで,本研究ではダム流域を
に,先に,森林に覆われた急勾配
対象として流域内での伐採・搬出
山腹斜面での雨水流出機構を示す
および植林などによる森林状態の
概念モデルとして,土層中の比較
変化が流出特性に影響を与えてい
では薬剤による木材の生物劣化防
止技術に限定し,その現状と開発
状況を述べている。
林業技術No.5801990.7
38
ハハハハ八八八ハーヘヘハーハー公一へ八一△ハ
&&&444$
jj-ムム44444d
あるとき私が,害虫に侵されて
いる木を伐倒して焼却したい旨を
進言したところ,監督と相談する
と言って即答を避け,その後監督
に,虫ふん穴から殺虫液注射を指
示していた。
会員の広場
このように,安易に木を切るこ
とは絶対になく,「ここまで大きく
育てることを思えば」と言い,「木
にも命がある,助けてやらなけれ
ば」と言う。これが社長の考えで
ゴルフ場公害の批判にこたえて
ある。樹木に巣くっている害虫の
駆除も,虫ふんを探して虫ふん穴
ひ
中村健次郎
から殺虫液を注入するか,成虫飛
しよう
翔時期に捕殺するか,樹皮に産卵
する害虫に対しては,産卵環境を
はくひ
山の木を切ってゴルフ場に造成
が群れを成して生活している。湖
つくらないため剥皮するなどして
するということは,自然破壊と環
面にはカモやオシドリなどの水鳥
いる。
境汚染を引き起こす。すなわち,
が多数飛来し,遊泳しているその
山の持つ各種の機能の消滅と,造
様は実に雄大で,ゴルフ場の景観
ースに誘蛾灯を設置したり,従業
成に伴う土地の形状変更からくる
を増幅している。
員に奨励金を出して害虫を捕殺さ
また,害虫を誘殺するため,コ
諸問題が生じてくることから,ゴ
各ゴルフコースとコースの間に
せたり,葉を食い荒らすミノムシ
ルフ場の開設については,この点
は,在来の木が旅立し,その外側
などに対しても,落葉後に,枝に
を慎重に調査して決定しなければ
(コースの沿線)には,メタセコイ
つり下がっているミノムシを捕殺
ならないが,すでに開設している
ア,プラタナス,フサアカシア,
するなどして,けっして大規模な
ゴルフ場については,ゴルフ場の
ポプラ,サクラなどが植え込まれ,
薬剤散布はしていない。芝生に侵
経営者および従業員の公害防止に
特にクラブハウス周辺は,外来樹
入した雑草も,人海戦術で手鍬を
対する認識と積極的な取組みがあ
のフェニックス,ワシントンヤシ
使って引抜き作業をしている。
れば,開設後のゴルフ場公害は防
などの大木が配置され,その下木
すべて環境汚染防止を配慮した
げるのではないだろうか。そこで,
には四季それぞれ華麗な花や実を
作業のため,汚染の指標となる池
私が従事しているゴルフ場の実態
付ける潅木が植えられ,異国情緒
の魚が奇形で背骨が曲がっていた
を紹介してご批判にこたえたい。
を漂わせている。
という話や,白い腹を見せて浮い
これから述べるゴルフ場は,大
これらの樹木が何を求めている
阪府の南部に位置する泉南市の中
のか,どうしてほしいと訴えてい
心街から遠く離れ,葛城山系のす
るのかを診断して処置するのが私
そ野に広がる比較的平たんな丘陵
の仕事である。
地に開設しているもので,このゴ
この会社の社長は,自然を愛し
ていたという話など聞かないし,
また,見たこともない。
したがって,付近住民からの,
農作物公害や飲料水公害などの苦
情は出てこない。ボールで隣接の
ルフ場の敷地は約150ha,その中
緑を守ることに厳しく,熱心で,
住宅の窓ガラスや屋根がわらを破
に介在する水防溜池(傾斜コアー
そのことが従業員にも浸透し,無
損する苦情はあるが,これはすぐ゙
型アースダム。満水時の間職約9
断で木を切ることもないし,老衰
修復しているし,魚網を張ってボ
ha)の池水が丘陵地の低部に入り
枯木も倒木の危険が迫るまでは切
ールの逸散を防ぐようにしている。
込んでいて,ダムにはコイやフナ
らないほど徹底している。
林業技術No.5801990.7
薬剤散布を少なくしているため
39
会員の広場
帽の規格についても,昭和50年9
か,林の中はハト,ヤマドリ,キ
ゴルフ場の空気はすがすがしく,
ジ,ヒヨドリ,メジロ,ウサギ,
丘陵地に設けたコースで起伏が小
月8日付の労働省告示第66号で
イタチなどの小動物の楽園になっ
さく,レクリエーションの場とし
詳しく定められている。
ている。
ても最適で,高齢者や女性の客に
春はサクラの下での花見や探鳥
も喜ばれている。
ところで,保護帽の着用が確か
に危険防止に役立っていることは,
会,写生会をしている風景も見か
今後も,このペースを逸脱する
過去の災害事例を見てもわかるこ
けるほど,地域に密着したゴルフ
ことのないようにすることが肝要
とであるが,保護帽に対する作業
場でもある。
であり,私も過去40年あまり培っ
現場の意見を聞くと,保護帽が重
以上に述べたように,このゴル
た林木保護育成の知識と経験を生
くて頭が痛いとか首が疲れるなど
フ場は農薬を多量に使わないこと
かし,自然破壊だ,環境汚染だと
という内容よりも,むしろ,暑い,
をモットーに作業しているため,
いわれることのないよう,取り組
蒸れるということに集中していて,
コスト高になっていると思うが,
んでいきたいと思っている。
労働衛生面の配慮に欠けているこ
とがわかる。
「かぶりはじめのころは,慣れな
くて重く感じたり,ヘッドバンド
林業用保護帽を考える
が頭に食い込んで痛くなったりし
−夏季炎天下における対策−
たこともありましたが,それより
も内部が暑くて,蒸れることのほ
辻井辰雄
1はじめに
人間を含めた全生物が生存して
保護するため,労働安全衛生規則
うが問題で,不愉快です」といわ
れる。
このように,着用者の多くの「何
で義務づけられ,安全対策上から
とかならないか」という訴えに耳
も必ず着用しなければならない保
を傾けるならば,保護帽について
いるかぎり,温熱環境は必ずつい
護帽のあり方を労働衛生面から見
労働衛生的な視点からの検討があ
て回り,しかも生存条件として切
直し,冷却・通気機能などの工学
ってもよいのではないかというこ
とである。
り離すことができない。特に,生
的対策を講じた新たな保護帽を提
産現場での温熱問題は,作業者の
案することによって,温熱環境の
健康状態にも直接・間接に影響し,
改善を考えてみたい。
作業能率の低下にもつながること
である。このため,他産業では空
調設備などによる環境の改善が図
2.労働衛生面から見た保護帽
保護帽はいろいろな呼ばれ方を
そこで,保護帽着用による頭部
の温熱環境について実態を把握す
るため,実際に保護帽を6月日中
の屋外に設置して,太陽の輻射熱
による保護帽各部の温度を測定し,
られ,今日では作業者に及ぼす影
されている。すなわち,安全帽,
確かめてみた。その結果は図・1に
響も少なくなってきている。
保安帽,ヘルメットなどである。
例示したように,設置後わずか数
しかし,林業など屋外作業の夏
しかし,呼び方は違っても,い
分の熱吸収によって,保護帽の温
季炎天下の温熱環境については,
ずれも人体中枢の頭部に加わる外
度が急激に上昇している。そして,
自然現象に従わざるをえないこと
力などによる損傷を防止するため
太陽光が直接当たる保護帽の表面
もあって,改善の技術的な対策が
に作業者個人が着用し,災害を最
温度は,夏季の日中であれば常に
不可能に近く,多くの問題が取り
終的に,あるいは,最小限にとど
40.Cに達し,最高は45・C以上にも
残されている。
めるために使用するものである。
なっている。また,保護帽内部も
そこで森林・林業を支える14万
このため,労働安全衛生規則の
表面温度と同じ傾向の変化を示し,
林業労働者の,炎天下の温熱環境
中にも,林業作業などの使用すべ
最高は40。C近くになって,熱照射
に視点を当て,人体中枢の頭部を
き作業名が挙げられており,保護
のすさまじさを物語っている。
林業技術No.5801990.7
40
会員の広場
50
38
一一一一
23
02
8
3
36
温34
垣皿
度︵℃︶
45
26
j
24
I
度℃
40
=I
3 0 5 0 7 0 9 0
湿度(%)
不快指数(DI)は乾球温度(ta)と湿球温度または湿度(RH)
35
から次式で求められる
DI=18ta+32-0.55(1-RH)×(18ta-26)
(実測値:▲市販帽,△試作帽)
30
0102030405060
図・2不快指数計算図
(
m
i
n
)
経 過 時 間
図・1帽体各部位温度の経時変化(市販帽)
このように夏季炎天下での保護
が出る」ようになり,85以上にな
しゃへい
1合成樹脂を材料とする帽体
ll胃の着用は,日射の遮蔽効果より
ると「暑くてたまらない」ほどに
にあっては,穴(装着体およ
も,太陽から約1kw/㎡(024
なるといわれている。
びあごひもを取り付けるため
Kcal)の直達日射量(瞬間値)を
この図から見ると,保護帽内部
受けて熱を吸収し,帽体を45℃以
は温度が39。Cを超えると,たとえ
上の二次元的熱源にしてしまい,
湿度が30%程度と低い場合でも,
このように,帽体に穴があって
熱源となった帽体は熱輻射を出す
不快指数は85以上の「暑くてたま
はならないということは,現状の
ことを示している。そして,通気
らない」状態になり,温度は30℃
ままでは,着用者は暑さと蒸れで,
性のない保護帽を着用した場合に
以下であっても湿度が60%以上
常に不快感を抱きながら,外部か
は,蓄熱と同時に頭部からの発汗
になれば,壜くて汗力§出る」状態
らの危険防止のために保護帽をか
による蒸れをも引き起こすことに
になることを示している。そして,
ぶることになり,保護帽の蓄熱や
なる。現に,保護帽を脱いだとき
夏季炎天下で市販保護帽を着用す
蒸れに対する不満は募るばかりで
ある。
のものを除く)がないこと。
ということである。
のすがすがしさは,蓄熱と蒸れの
る場合は,常に不快感を生じてい
現象を示しているもので,だれも
て,帽体に通気用の穴を開けない
が体験していることである。
かぎり,有効な対策は考えられな
立つことは自明の理であっても,
いことになる。
安全の陰に衛生が犠牲となってい
また,保護帽の温熱環境を生理
学的,衛生学的に評価するため,
しかし,前にも述べた労働省告
そこで,保護帽が危険防止に役
る構造を,安全性を基に,労働衛
日常生活でよく用いられ,暑さの
示の保護帽の規格によると,
生の面からあらためて問い直そう
度合を示す目安である不快指数を
第4条(構造)物体の飛来または
ということである。
求めてみると,図・2に示すとおり
落下による危険を防止するた
である。
めの保護帽は,帽体,装着体
を重視するあまり,労働衛生面の
日本人の体感によると,不快指
およびあごひもを有し,かつ,
配慮にいささか欠けたところがあ
数75以上になると「やや暑さ」を
次の号に定めるところに適合
るのではないか,という問いかけ
感じ,80以上になると「暑くて汗
するものでなければならない。
なのである。つまり,作業現場に
林業技術No.5801990.7
ということは,危険防止,安全
41
会員の広場
通気路
表。l冷却・通気機構付き保謹帽の仕様
ノ
項匡
アン
フィルター
諸元
保護帽の種類
飛来落下用
帽体の形
キャップ式
帽体の材質
ABS樹脂
全重墨
6109(本体4909)
バッテリー
充電式シール鉛書電池
重量929,電圧6V,容量0.5Ah
ファンモータ
コアレスモータ,重量459,電圧6V
ハウジング外径36m,モータ外径18mm
最大風景
3104/min
(9,000rpm,連続8時間使用)
装着部
護帽の性能試験も規定されており,
第6条の耐貫通性能,第7条の衝
吹
ナ部
図・3通気機構付き保護帽の構造
おける安全と衛生は,常に車の両
冷却や通気を行うことができる保
輪の関係にあってほしいのである。
護帽の構造や機能について考えて
また,作業現場からの訴えは,
みることも必要なことである。
撃吸収性能などの試験に耐えうる
だけの性能がなくては,冷却・通
気性を持たせてもまったく意味を
なさなくなる。
そこで,帽体の材料は保護帽の
性能を発揮でき,しかも,蓄電池
実験室的な数値からはとてもうか
このような考え方に立って,冷
やファンモータを内蔵するなどの
がい知ることができない生の,し
却・通気機能を持つ保護帽を試作,
工学的対策を備えた構造とするた
かも貴重なデータであり,これら
実験してみたので,その一端を紹
め,すでに一般保護帽の帽体材料
を自分たちの研究に役立てること
介したい。
として広く使用され,しかも,成
が,現場に密着した労働安全また
試作にあたっては,まず,でき
は衛生を志向する者の考え方の根
るだけ重量や束縛感装置の物々
(アクリロニトリル・ブタジエン・
底を成すものであろう。
しさがなく,しかもかぶりやすい
スチレン)樹脂を採用して,性能
ことを基本におき,デザインも新
試験に適合できることも考慮に入
規性に富むヒサシのあるキャップ
れている。
3.林業用保護帽の試作
保護帽の着用が個人的なもので,
安全衛生対策としては補完的・自
衛的なものであっても,現実に相
当数の人が着用しているならば,
形を採用し,まぶしい日射を遮る
ことも配慮している。
形加工も容易な熱可塑性のABS
保護帽に内蔵する装置の概要は,
表.lに示したとおりで,前部に充
冷却,通気機能を持たせるため
電式のシール鉛蓄電池(外形寸法
の基本的構造は,図・3に示したと
57×14×50mm,重量929,電圧
常に改良するための努力を払わな
おりであって,保護帽に内蔵した
6v,容量0.5Ah)を電源とし,
ければならない。
蓄電池を電源にし,送風用のファ
これをリード線で結線して後部に
特に,市販保護帽の持つ欠点と
ンモータを駆動させて帽体内部の
ファンモータ,妨塵用のフィルタ
して,内部に蓄熱や蒸れの現象が
冷却,通気を行うものである。こ
ーを設置して,保護帽の前後の重
生じるのであれば,保護帽の安全
の場合,まず保護帽の本来の機能
量のバランスを保っている。なお,
性を維持しながら,新たな工学的
とどこまで整合しうるかという点
保護帽の重堂は市販のものと比較
な対策を講じて,人工的・強制的
が,大きな課題である。
すると約2009増加しているが,
に外部からエネルギーを供給し,
労働省告示第66号によれば,保
着用時の重量感では市販帽とほと
林業技術No.5801990.7
42
会員の広場
んど差は見られない。
40
そして,ファンモータの回転に
より,フィルターを通じて外気が
通気路に導入され,帽体前部の吹
石皿
出し口と2重構造の通気路仕切り
板に設けた通気用の複数の孔から
0
3
帽体内部の冷却,通気を行うこと
度︵℃︶
外気を吹き当てることによって,
ができる。
一 ‐ ー − − ‐ ‐
、
ん
9,000rpmで風量は約3104/min
35一
一一5
34
40
・
3
℃%5
521
温度速
気湿風
なお,連続8時間使用した場合
の設計上の最大能力は,50mA,
−
一
−
■
−
になっているが,実際の通風効果
を見るため風速を実測したところ,
吹出し口で4m/sec,通気用の穴
帽体表面
帽体内(ヘッドノ 〈ンド)
〃(頭頂)
〃(通気穴)
20
0 1 2 2 4 3 6 4 8 6 0 7 2 8 4
経過時間(分)
の所で0.3∼0.7m/secになって
図・4下刈作業時の保謎帽(試作品)各部の温度
いて,帽体内部の通気を促す機能
ンケート調査の結果からも,「頭部
は2月の0.90kw/mF,最低は6月
次に,図・4に例示したものは,
に通気性を感じる」と答えた率は
の0.78kw/nfとなっていて,気温
笠間営林署管内において,実際の
非常に高く,実験で得られたデー
に差があっても日射量には季節に
下刈作業を対象として,7月の晴
タを裏付けており,市販保護帽の
よる大きな差はないことがわかる。
天時に保護帽表面,保護帽内部の
持つ蓄熱や蒸れなどの欠点をある
通気孔部,通気孔のない後部の3
程度解消できたと考えている。
を持っていることを示している。
点について温度を測定した結果で
なお,アンケート調査による「重
このことは,保護帽の通気機能
は夏期のみの対策でなく,通年的
にも必要であることを示している。
量」「デザイン」「ファンモータの
冷却,通気機能を持つ保護帽の
この図からもわかるように,同
音」など,その他の質問項目につ
提案が,林業労働の快適な作業環
じ帽体内においても通気孔のある
いても好評であって,否定的な答
境を積極的につくり出すための布
所は,ない部分に比べて温度が
えはあまり聞かれなかった。
石となることを期待するとともに,
ある。
0.8∼1.3℃程度低くなっており,
通風による冷却効果を示している。
4 ま と め
また,市販保護帽と比較した結果
これまでの経過から,不十分な
では,着用時の内部温度が平均で
がら試作した保護帽の有用性に明
約1.5∼2℃低く,不快指数も2
るい見通しが生まれたといえる。
∼3減少して85以下になり,頭部
林業のような自然を相手の作業
の暑さや蒸れを軽減することがで
にあっても,今日では,より快適
きる。なお,額に外気を吹き当て
な作業環境を求めることは当然の
る構造によって,実際の温度以上
権利であり,時代に適合した技術
の涼感があり,体感温度を低くす
の採用を積極的に考えていくこと
る効果もある。
が必要であろう。
いまのところ,データ数の不足
ところで,太陽からの直達日射
で統計的な分析は保留にしている
量(筑波学園都市,館野)を1987
が,作業現場における使用後のア
年の理科年表で見てみると,最高
林業技術No.5801990.7
全天候通年型保護帽の実用化が待
たれるところである。
(森林総合研究所生産技術部)
43
林業関係行事一覧
月
7
行 事 名
区 分
静
岡
全
国
一一一
重
三村和子チャリティコンサ
ート&アジア太平洋地域の
緑化を考える第1回静岡県
大会
ログハウスの設計・施工に 7.9∼31
関する講習会
平成2年度地域林業振興検
7.12∼13
討会(東日本)
全
国
第9回工場緑化推進全国大
主催団体・会場・行事内容等
期間
7.1
7.16
会
(財)オイスカ産業開発協力団。静岡県浜松市(ホテルコンコルド浜
松)。緑化活動の必要性および国際協力の啓発を目的とする
(財)日本建築センターほか。平成2年5月31日付けで「丸太組構法
技術基準」告示が改正されたのに伴い,改正告示の広報・普及のため
講習会を開催する。催し物の開催日および場所〔7/9科学技術館(東
京),7/13建設交流館(大阪),7/17名古屋栄ビルディング(名古
屋),7/2O広島県民文化センター(広島),7/23勾当台会館(仙
台),7/26礼幌大同生命ピル(札幌),7/31福岡センターピル(福
岡
)
〕
全国市町村林野振興対策協議会。7/12フレックスホテル(三重県松
阪市),7/13現地視察一松阪市森林組合小径木処雲場,滝原宮ほ
か。平成2年度において発足した新林業振興地域整備計画(新林振計
画)の策定を予定している150地域150市長村の市町村長等に参集願
い,本制度の理解を深める
(財)日本緑化センター。東京都港区赤坂三会堂ビル(石垣記念ホー
ル)。緑化優良工場等に対し,通商産業大臣および日本緑化センター会
長による表彰を行うとともに,有識者による工場緑化に関する講演等
を行う
中
央
造林指導・技術発表大会
7.17
″″
全国森林病虫獣害防除協会 7.18
通常総会
緑の地球環境を守る「富士 7.19∼21
山国際シンポジウム」−
富士山から世界へ
全
国
自然に親しむ運励
7.21∼8.20
青
森
第20回青森県JAS製材品
普及推進展示会
7.24∼26
中
央
第6回民有林治山工事コン
7.26
クール
〃
1990環太平洋学生キャン
日本造林協会。農林水産省7階講堂。造林指導および造林技術におけ
る優良事例を掘り起こし,これを広く紹介することを通じて,造林事
業のよりいっそうの推進を図る。優秀な発表に林野庁長官賞を授与
全国森林病虫獣害防除協会。コープピル(千代田区内神田)会議室
読売新聞社。地球環域の保全が世界的な関心事になっているおり,内
外の植生学者・専門家が富士山に集い,実際に植生を観察・調査・診
断するとともに,世界各地の植生との比較,討論を重ね,環境と自然
保護のあり方を考える国際シンポジウム(7/19.20:富士山,7/21:
山梨学院大学メモリアルホール)。
環境庁ほか。テーマr自然とふれあい自然に学ぶ」−ふるさとに緑
を水を星空を。広く国民が自然に親しみ,かつ,自然に対する認識を
新たにする契機となる諸行事を全国的に展開する。中心行事として8
月1∼2日福井県において第32回自然公園大会を開催
青森県。青森木材センター(青森市)。県内の優良JAS製材品の展示を
行い,需要に即応した優良JAS製材品の生産および流通の合理化促進
を図ることによって,県内林業の振興に寄与する
日本治水治山協会。日本都市センター(千代田区平河町)ホール。審
議雑営蕊露舟難雛關議職韓鰹薙駕甜擦
7.26∼8.8
プ
総会にて行う)
読売新聞社ほか。福島県「国立那須甲子少年自然の家」東京およびそ
の近郊。広く環太平洋地域から青少年を招待し,キャンプ生活を通し
て,青少年どうしのふれあいを通じて国際理解を深めるとともに,海
外の青少年に「素顔の日本」を体験させ,現状を正しく認識してもら
う
〃
朝日森林体験教室
7.27∼29
(財)森林文化協会・朝日新聞社。秋田県能代市「能代海岸林」「水沢
学術参考林」「白神山地」。全国の青少年指導者を対象に,今年は能代
海岸林,秋田の天然スギ,白神山地の見学体験を行う。参加人員100人
林業技術No.5801990.7
44
月
8
区 分
行 事 名
期間
央
第5回夏休み親子木工教室
8.4∼5
全
国
第36回全国こけし祭り
8.4∼5
庫
緑の保全と創出を考えるシ
8.8
一丘︿
中
ンポジウム
中
央
〃
第15回会津高原親子自然 8.8∼12
教室
全日本山岳写真展
8.22∼26
奈
良
奈良県林材まつり
8.24∼11.17
岐
阜
第22回岐阜県林材振興大
8.27
会
主催団体・会場・行事内容等
東武コミュニティ文化センター・(社)全国木材組合連合会。東武百貨
店池袋店。森林とその産物である木への興味と関心を高めるとともに,
創る喜びの発見,共同作業を通しての親子の交流を目的としたイベン
ト。対象:小学生およびその保謹者。参加料:無料。両日とも午前。
午後の2回開催。1回当たり50組の親子(合計200組)。作製した作
品は各自自宅へ持ち帰り,仕上げ,着色などの後,東武コミュニティ
センターに持参してもらい,「作品展」を10月20∼21日に開催。審査
により優秀な作品に林野庁長官賞を授与
宮城県ほか。鳴子へルスセンター。日本を代表する民芸品である伝統
こけしの保存育成を通じて観光物産の振興を図ることを目的とし,奉
納こけしの展示,花火大会,物産展などを開催。また審査により優秀
な出品こけしに林野庁長官賞を授与。
兵庫県。西山記念会館(神戸市中央区)大ホール。地球規模の環境問
題が叫ばれる中,緑の果たす役割があらためて注目を浴びている。こ
のような状況において,地方公共団体および住民が,緑の重要性,そ
して緑を守り増やすためにいかに行動すればよいかをともに考え,行
動の契機とするためのシンポジウム。開催テーマ:未来の世代へ残そ
う,豊かな緑
東武コミュニティ文化センター。会津アストリアロッジ(福島県南会
津郡)。「自然と楽しく遊ぶ」ことに加え「自然体験」「自然教育」とい
う点に重点を麓き,楽しさ,厳しさの中から自然のすばらしさ,大切
さを発見してもらう。
全日本山岳写真協会。新宿小田急百貨店グランドギャラリー。自然の
美しさ,尊さを多数の観衆にアピールし,山岳・風景写真の文化普及
と自然を守る警鐘とする。展示予定数:約450点
奈良県ほか。林材大会をはじめ全国より優秀薮木材を集め,木材展や
児童木工工作展,さらには都市と山村の交流を図るウツデイ村まつり,
山村展等多彩な行事を行う
◎奈良県林材大会:10月20日桜井市民会館,◎ウツデイ村まつり・
山村展:8月24∼26日奈良ドリームランド,◎児童生徒木工工作
展:10月25日∼11月1日近鉄百貨店(橿原市),等
岐阜県・岐阜山林協会ほか。岐阜産業会館文化ホール(併催行事:8/
23∼24,岐阜高島屋バラのひろぱ)。
第14回国際土壌科学会議開催のお知らせ
123
『生命と環境を育む土』をモットーに下記により開催いたします。
会期:1990年(平成2年)8月12(日)∼18日(土)
開催場所:国立京都国際会館(京都市左京区宝ケ池)
主要会議日程
1990年8月11日(土)登録
12日(日)開会式,総会,特別講演,レセプション
13日(月)特別講演,シンポジウム
14日(火)シンポジウム,ポスターセッション
15日(水)シンポジウム,ポスターセッション,ISSS評議員会
16日(木)シンポジウム,ポスターセッション
17日(金)シンポジウム,ポスターセッション,バンケット
18日(土)シンポジウム,総会,閉会式
主催:日本学術会議㈱日本土壌肥料学会
後援:文部省,農林水産省,通商産業省,建設省,科学技術庁,環境庁,京都府,
全国知事会,全国農業試験場長会,㈹農業土木学会,京都市
連絡先:〒113束京都文京区本郷6丁目26番10号202日本土壌肥料学会内
第14回国際土壌科学会議組織委員会事務局
丑(03)815-6720
FAX(03)815-6018
林業技術No.5801990.7
45
社団法人
新会員勧誘のお願い
日本林業技術協会
く個人終身会員制度ご活用のおすすめ>
年齢満50歳以上の方には,「個人終身会員」の制度があります。この会員になるために
は一時金として3万円を納入いただきますと生涯会員としての特典を受けることができま
す。また,現在,正会員の方でも満50歳以上であれば,一時金3万円をお納めいただきま
すとこの会員に切り替えることができます。
<入会の手続>
口入会申込書に必要事項を記入し,当年度の会費を添えて,分会または支部,
あるいは本部にお送り下さい。(入会申込書は本会または各支部にあります)
口林業関係の職域にお勤めの方は,なるべく分会または支部を通じてお申し込
み下さい。その他の方も分会または支部に申し込まれるのを原則としますが,
ご都合で本部に直接申し込まれても差し支えありません。
口会費正会員年額3,500円(学生2,500円)
特別会員(個人終身会員)一時金30,000円以上
〃(甲種)(主として法人)一時金60,000円以上
〃(乙種)(主として法人)年額6,000円以上
(
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罐
野
隼
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年
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月
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霞
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力
零
度
分
の
)
<会員の特典>
○会誌r林業技術」を毎月お送りします。また,会○支部または支部連合会が総会または,大会等を開
誌綴込用ファイルを配布します。催する際に,必要があればその要請によって,経
○会員用バッジを送付します。費の一部を補助することができます。
○林業技術賞,林業技術コンテストに参加する資格○支部に対しては,支部交付金および支部活動のた
ができます。めの経費について,要請によって補助することが
○林業手帳,林業技術参考図書を無償配布します。できます。
○本会発行の図書は,定価の10%割引販売。○その他なにごとによらず,ご相談に応じます。
○物品,図書,機材の斡旋をいたします。
支部および支部連合会組織一覧表
所 属 支 部 名
連合会名
州部西
信中関四九
北 海 道
東 北
奥 羽
北関東
南 関 東
国
州
(本部直結)
北海道営林局,旭川営林支局,北見営林支局,帯広営林支局,函館営林支局,北海道,北海道大学
青森営林局,青森県,岩手県,宮城県,福島県,岩手大学
秋田営林局,秋田県,山形県,山形大学
前橋営林局,栃木県,群馬県,新潟県,宇都宮大学,新潟大学
林野庁,森林総合研究所,森林開発公団,東京営林局,茨城県,埼玉県,千葉県.東京都,神奈川県,
山梨県,東京大学,東京農工大学,東京農業大学,日本大学,玉川大学,筑波大学
長野営林局,長野県,信州大学
名古屋営林支局,富山県,石川県,福井県,岐阜県,愛知県,三重県,静岡県,名古屋大学,静岡大
学,三重大学,岐阜大学
大阪営林支局,滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県,鳥取県,島根県,岡山県,広島
県,山口県,京都大学,京都府立大学,鳥取大学,島根大学
高知営林局,徳島県,香川県,愛媛県,高知県,愛媛大学,高知大学
熊本営林局,福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県,九州大学,宮崎
大学,鹿児島大学,琉球大学
その他の会員
〔詳細については本会または支部へお問合せ下さい〕
林業技術No.5801990.7
46
<平成2年度>
山火事予知ポスター「図案」「標語」募集要領
<要旨>山林火災の危険を広く国民一般に周知させ,
山林火災の予防・森林愛護の必要性を強調したもの。
ただし未発表の創作に限る。入選作品のうち特に優秀
なものは平成2年度当協会作成の『山火事予知ポスタ
ー』として採用します。どなたでも応募できます。
<作品要領>図案について,ポスター用紙は51cmx
36cm,縦がきとする。油彩・水彩・クレヨン何でも
可。ポスター作品の裏面にも住所・氏名を明記のこ
と。標語については官制はがきに1人何点でも可。文
語,口語,長さも自由。
応募作品は一切お返ししません。入選作品の著作権
はすべて日本林業技術協会に帰属することとします。
<募集締切期日および送付先>平成2年9月30日締
切(当日消印有効)。日本林業技術協会『山火事予知ポ
スター図案・標語』係まで。
<発表>入賞者には直接通知するとともに,会誌「林
業技術」11月号に発表いたします。
<入賞者には>1等(図案・標語の部各1名)日本林
業技術協会理事長賞(副賞として記念品),2等(図
案・標語の部各2名)同賞(副賞として記念品),佳作
若干名には記念品を贈呈いたします。
日本林業技術協会
に係る現地調査のため,7月2日
から8月15日までの間に,渡辺
宏技術開発部長ほか7名を派遣。
◎調査研究部関係業務
6月25日,本会会議室において
「水源地森林機能研究会」平成2年
度第1回委員会を開催した。
◎海外研修員の受入れ
国際協力事業団からの依頼によ
り,インドネシア国南スラウェシ
治山計画プロジェクトのカウンタ
ーパート,インドネシア国林業省
│協会のうごき ’
◎番町クラブ例会
6月26日,本会会議室におい
て,三菱銀行麹町支店山崎副支店
長を講師として,贈与,相続税関
係について講演。
◎海外派遣
1.テュニジア国メジュルダ川流域
森林管理計画計画調査に係る現
地調査のため,6月21日から8
月4日までの間に,長谷川専務
理事ほか6名を派遣。
2.ボリヴィア国森林資源管理計画
調査に係る現地調査のため,6
月27日から9月14日までの間
に,中島巌主任研究員ほか6名
を派遣。
3.コロンビア共和国林業資源調査
森林保全センターゴア県出張所長,
スミハルト氏および苗畑主任,ア
プドウル・ラーマン氏を6/4∼8
の期間「空中写真技術およびリモ
ートセンシング技術」についての
研修生として受け入れた。
◎森林・材業写真コンクール入選│信品
を営団四ツ谷駅構内に展示
本会が公募した森林・林業写真
= = = ー
コンクール入選作品は,さきに行
われた森林の市に続き,営団地下
鉄四ツ谷駅のご厚意により,駅構
内の展示コーナーに2週間にわた
って展示され,乗降客は足を止め
て,山のみどりの作品に見入って
いた(写真)。
平成2年7月10日発行
林 業 技 術
第580号
編集発行人鈴木郁雄
印刷所株式会社太平社
発行所
社団法人日本林業技術協会
執務時間変更のお知らせ
8月1日から当協会の執務時間を15分ずつ繰り下げて,次のとおり
変更させていただきます(地方事務所は従前どおり)。皆様にはご理解
のほどよろしくお願い申し上げます。
記
平日:午前9時15分∼午後5時15分まで(正午から1時間休憩)。
土曜日:午前9時15分∼12時30分まで。なお,毎月第2・第4土曜
(〒102)東京都千代田区六番町7
電話03(261)5281(代)∼7
FAXO3(261)5393
(振替東京3−60448番)
RINGYOGIJUTSU
publishedby
JAPANFORESTTECHNICAL
ASSOCIATION
TOKYOJAPAN
日は休日とさせていただいております。
〔普通会蜜3‘500円・終身会費個人)30.000円〕
林業技術No.5801990.7
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回外国人労働者を導入できないか
l多様な人材を活用
国労働時間の短縮をどう進めるか
日女性、高齢者、中途採用
安全・低コスト化を
固機械化・技術革新で
日地域ぐるみで若年労働力の育成・確保
国林業事業体の連携強化、協業化
四多角化・広域化で強い体質づくり
園事業の間断性を克服し、
安定就労体制づくり
木
材
産
業
日本林業調査会編
と
港の実誌溺凝究
科蒸遜侭称蕊謹蕊達過程
萩野三敏雄箸
●
みどりのブックレットM2
労働力問題と林
林業
題
I労働力不足は進行する
l現状と今後の見通し’
四労働力不足はここまで進んできた
回なぜ林業・木材産業で
労働力不足が著しいのか
国改めて林業・木材産業の
ウィークポイントをみる
Ⅱ〃絶対人手不足時代〃にどう対処するか
lその基本的な方向を
事例とともに考えるl
田3Kから新たな。望ましい3Kへ
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剛職繋襟懲墹譲鱒蕊篭鱒澱篭繍灘鋪耀
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四六判一三○頁一、五○○円〒知
声を克明にリポート/・
大館新報社編
揺れる国有林野地帯の
林野の叫び
---“‐‐一一一詮割'》-‐…
森林組合の実務
一問一答集
森林組合法研究会編
A5判二八五頁二、八○○円〒訓
林政関係者必携の一冊/、
合云
〒162東京都新宿区市谷本村町3.−26 ホ ワ イ ト ビ ル 内
1
電話(03)269-3911振替(東京)6-98120番 FAX(03)268-526・1
日本 林 業 調 査
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深刻化する人手不足に
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●森林・林業の発展に,また木材利用促進に寄与で
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きれば…の思いを,映像に託してお届けします。
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●研修用にノ子供たちの課外授業にノー般の方々ヘ
の普及キャンペーンなどに,ぜひご活用ください。
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I★記録映画日本の銘木シリーズ(30分)
この緑を灰にするな(20分)¥145,000
-山火事を防ぐ一
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16mmVHS,βとも 日本の地すべり(30分)……¥160,000 ¥40,000
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森のヒバ
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¥150,000¥40,000;★伸びゆく国有林
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よみがえる大地(30分)……¥150,000¥40,000 I
-パイロットフォレストー
I★研修・課外授業な
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〔英語版〕¥180,000¥48,000
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I森林は生きている(50分)…¥260,000¥85,000i一億人の森(50分)…………¥200,000
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I森林をたずねて(20分)……¥100,000¥35,000;伸びゆく国有林(50分)・…・・¥200,000
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I森林を育てる(20分)…・・…・¥100,000¥35,000§国有林(25分).
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¥120,000
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水のふるさと(20分)・…・…・¥100,000¥35,000;森林(50分)‘
¥200,000
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;−北海遊の国有林一
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I奥鬼怒の自然(30分)………¥150,000¥40,0001
I
Iある担当区さんの記録(50分)¥200.000I
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●その他,映画製作。ビデオ製作も行なっております。
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●お問い合わせは。.….
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気象剛lll:柵唆、湿度露点.風向風速、日照・H射、
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水文1I111'l:水位、水髄(PH計)、流速流量、潮位波,舟
Mく,il・illll:沈降沈下、水分(燕発l,t;I-)、ひずみ、
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航海計器/航海用,nf分雌、デジタル航法計算機
六分機、マイクロメータ、‐粁分度儀デジタル面機測定勝/PLANIXシリーズ、エリアラインメータ
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〒104束京都中央区釧座4-4-4アートピルTEL、03-561-8711FAX、03561‐8719
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も り
●森林総合研究所所員82名による執筆
鯛氷の働きの大切さを知らない人はいないと思います。し
かし,その働き力森林のどんな仕組みによるものなのか,一
本一木の木や草は,そこでどんな役制を果たしているのかを
知っている人は,あまり多くはないと思います。
いま,森林にもいろいろな角度から科学の光が当てられ,
これまで当たり前だと思っていたことにも意外な事実が潜ん
でいたり,正しいと信じられていたことカミ実は間迷いであ
ることなどがわかってきました。
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●森林総合研究所,農業環境技術研究所,
農業研究センターほか85名による執筆
kも,水や空気とl'1じょうに,身近にありすぎて,ふだん
その存在や役荊に注目することはありません。
しかし,“母なる大地"というように,私たちの幕らしのほ
林業技術
土の旧O不思議
発一丁
森林の旧O不罵議
昭和二十六年九月四日 第 三 種 郵 便 物 認 輌 ︵ 毎 月 ︵ ワ 回 十 日 発 行 ︶
●
平成二年七月十日
訳書盾で買える日林協の本
とんどは土に依存しています。その上を瀞i使すれば肥沃な"│:
地も不毛の荒野と化すことは歴史の教えるところです。
土とは何か。上のイく忠議な働きと土をめぐるさまざまな』l#
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森と水のサイエンス
●中野秀章・有光−登・森川靖著
地球をj哩求たらしめているもの、それは水であるといえま
す。′Iミ物は水なしには'1畠きていけません。そして,その必要
11tたるやぼう大な趾になると思われます。
。
地球の水の1htは一定不変ですがどこででも得られるわけ
ではなく,地域による降水鮭や,降水を受けとめる地表の状
態によって利用可能な並に大きな漆が生じます。
ところで§私たちi:I本人が水に不口IIIしないのは,森林の
おかげといってよいのですカミ水を育む森林の秘犠とは…・・・。
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課日本林業技術協会編言東京書籍株式会社発行
〒102東京都千代田区六番町7番地三〒113東京都文京区本郷駒込6−14−9
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第五入ら号定価四四三円︵本体四三○円︶送料六一円
象を知ることは、地球環境を考えるうえでも重要です。