音響の基礎理論

音の波長と音速
波長
λ(m)
 [ m] 
c [m / s]
 T s  cm / s 
f [ Hz ]
音圧波形
音響の基礎理論
水の音速は1,500m/s,氷になると3,200m/s
ガラスが5,000m/s,
鉄が6,000m/s
ヘリュウムは970m/s,空気のおよそ3倍
空気の音速 c: 340 m/s
1 kHz の波長λは34cm
配管内の定在波
音は疎密波

v
f
流量
圧力
v
2L
f1 
v
4L
L
1

4
f1 
f2 
3v
4L
L
3

4
f2 
f3 
5v
4L
L
5

4
f3 
L
1

2
1次
音圧波形
v
L
L
2次
音の進行方向
音は縦波
3v
2L
L
3

2
3次
媒質中(空気,固体)の圧力変動が伝播していく現象
1秒間に繰り返される疎密波の数 = 周波数 f Hz
L
(a) 閉−開
音の周期と周波数
周期
T(s)
T [s] 
1
f [ Hz ]
(b) 開−開
◆ 配管全長L=50mにおいて両端が開条件とする液柱が共鳴状態にあり,一次
モードであった.その周波数fを測定すると10Hzであった.配管内を伝播する
圧力波の速度はいくらか.
両開端時の液柱共鳴振動数 f = nv/(2L)
ここで,n : 次数, v : 液柱伝播速度, L : 配管の長さ
音圧波形
◆ 配管が埋没されており,全長が分らない.そこで,管内を空にして両端を開放
し,一端からスピーカにより音を発生させ,気柱一次と二次の共鳴周波数を
求めると,24.9Hzと48.9Hzであった.配管内の音速を340m/sとすると,配管の
長さはいくらか.
1
a
音 圧
粒子速度
音による気圧の変化
音圧 : P(t)
b
d
回転運動の黒い点の左右振動は,等速回転
運動している点の速度波形.
c
1気圧
音圧波形
音ではこの点の動きは空気の動きであり,こ
の点の速度を粒子速度vと呼ぶ.
音の強さI(音が伝えるエネルギー量)を考える
時に必要である.
a
1 気圧 : 10m水柱 = 1cm2あたり 10N の力が作用している.
圧力の単位はPa : パスカル
c
1 気圧 : 101,325 Pa, 1013 hPa = 1,013 mbar,1 atm = 1 bar,
760mmHg,760 torr(トル)
音は10-6
粒子速度
b
N
Pa  2
m
前画面の1点だけの動画
d
(100万分の1)の μPa を使う
a
音圧の量
音の強さ
左→右
粒子速度 v(t)
赤い線は,左右に伝播する音の強さI (W/m2)は,
I(t) = v(t)×P(t)
実効値
rms値
振幅値
音圧 P(t)
101,325 Pa
1,013 mbar
左←右
1気圧
左→右
音圧波形
音の強さ I(t)
粒子速度は宅急便のトラックの速度で、音圧は
荷物の量に例える.
単位時間当たりの仕事量は,左から右に運んだ
荷物の量と,右から左に運んだ荷物の量の差
分になる.
周期 T(s)
実効値 (rms : root mean square value)
となる.
音の強さIは、1m2の面積の空間を通過する音
のエネルギー量であり,単位はW/m2である.
Prms 
1 T 2
pi dt
T 0
左←右
音のエネルギーは左から右へ
音の強さ
音の伝播
vt   V cost 
Pt   P sin t   
I t   vt   Pt   VP  cost sin t   
I   vt   Pt dt  VP   cost   sin t   dt
I  VP   cost   sin t  cos   cost sin  dt
 VP  cos   cost sint dt  VP  sin   cos 2 t dt
2
音の強さ
ソニックブーム
sin a  b   sin a cos b  cos a sin b
a = b の場合
cosa  b  cos a cos b  sin a sin b
1
sin a cos a  sin 2a
2
cos 2 a 
1
cos 2a  1
2
I  VP  cos   cost sin t dt  VP  sin   cos 2 t dt
VP
VP
 cos   sin 2t dt 
 sin   cos2t   1dt
2
2
VP
I
 sin 
2

このように粒子速度v(t)に対する音圧P(t)の位相αにより,音のエネルギーの伝播す
る方向が決まる.
音の速さ
粒子速度 v(t)
c
κ : 弾性率
k

媒質
音圧 P(t)
音の強さ I(t)
音のエネルギーの移動なし
音のエネルギーは右から左へ
音響インピーダンス
ρ : 密度
空気
水素
ヘリウム
エチルアルコール
水
ポリエチレン
氷
水銀
木
ガラス
鉄
音速c
m/s
341
1,270
970
1,070
1,480
2,300
3,940
1,380
3,500∼4,500
4,000∼5,500
5,290
密度ρ
㎏/m3
1.2
0.09
0.18
790
1,000
1,100
900
13,600
300∼800
2,200∼2,600
7,860
c  
弾性率κ
N/m2
1.4×105
1.45×105
1.7×105
0.9×109
2.2×109
5.8×109
1.4×1010
2.6×1010
3.7∼10×109
6.0∼8.0×1010
2.2×1011
k
 

固有音響抵抗ρc
N・s/m3
409.2
114.1
174.6
8.5×105
1.5×106
2.5×106
3.5×106
1.8×107
1.1∼3.6×106
0.9∼1.4×107
4.02×107
固有音響抵抗
音の速さ
ρc が大きい媒質ほど遮音性能が高い
周波数が高いほどかき混ぜる速度が速いので減衰が大きい
N 2 
m
s 
 kg m  
c   3     kg  2   3    m 
s  m   m 
 m s  
 s 
密度
空気中の音速
c  331.5
c 
気温約20℃で,音速343.4 m/s
T
[m/s]
273
( T : 絶対温度 [K])
T : θ+ 273
(θ : 摂氏温度 [℃])
音速
P
v
音圧
粒子速度
力
P  v  c
2
I  v  P  v  c 
P2
c
≒331.5 + 0.61θ [m/s]
3
規準の音圧P0を 20.0 μP (2×10-5 N/m2)にすることで,音の強さのレベルLIは,
音の強さと粒子速度
平面音波
オームの法則
 P2 
LI  10  log 2 
 P0 
となり,音圧レベルLPは,
P  v  c
E  IR
P2
I  v   c  vP 
c
E2
P  I 2 R  IE 
R
2
P:音圧(Pa,N/m2)
E:電圧(V)
v:粒子速度(m/s)
I:電流(A)
ρc:音響抵抗(N・s/m3)
R:抵抗(Ω)
I:音の強さ(W/m2)
P:電力(W)
P
LP  20  log  
 P0 
と定義される
 P2 
 P2 1 
LI  10  log 2   10  log 0  
 P0 
 I 0 c 
 2 10 5 N / m 2 2

1
  0.147dB
10  log

3
 1012 W / m 2



1
.
205
kg
/
m

343
.
4
m
/
s







音の強さのレベル


音の大きさ
音の大小の表現方法
音の強さ I (W/m2)
音源
単位面積
1 m2
 I 
LI  10  log 
 I0 
音の強さIと音圧Pの関係
I
LI : 音の強さのレベル (dB)
I0 : 規準の音の強さ (10-12 W/m2)
音の強さ
音圧
音圧レベル
[W/m2]
[Pa]
[dB]
1
20
120
0.01
2
100
1
94
100μ
0.2
80
1μ
0.02
60
10n
0.002
40
100p
200μ
20
1p
20μ
0
規準音圧P0の20μPaは,人間の最小可聴音(聴覚閾値)から決められた.
P2
c
 I 
 1 P2 
 P2 P2 1 
LI  10  log   10  log    10  log 2 0  
 I0 
 I 0 c 
 P0 I 0 c 
 P2 
 P2 1 
LI  10  log 2   10  log 0  
 P0 
 I 0 c 
音のエネルギー
1気圧,20℃の乾燥した空気の密度ρは1.205 kg/m3,音速cは343.3 m/s
1
P02 1
P2
1

 12 0

I 0 c 10 W / m 2  1.205kg / m3  343.4m / s 
P0  0.000020352Pa
4
音の放射パワー
音のエネルギー
I : 音の強さ (W/m2)
I  v 2  c
v : 粒子速度 (m/s)
ρc : 音響抵抗 (N・s/m3)
音の強さ I (W/m2)
W
 v 2  c
S
W : 音響放射パワー (W)
S : 放射面積 (m2)
と書き直すことができる
単位面積
1 m2
音源
音の多くは物体の面が振動しているために発することが多い.
面積Sの板が振動速度 v で振動しているとすると,この板から発する音響放射
パワーW は,
PW   I  ds
W  S  v 2  c
音の放射パワー
W : 音響放射パワー (W)
W  S  v  c
2
音のエネルギー
PW   I  ds
S : 放射面積 (m2)
ρc : 音響抵抗 (N・s/m3)
音源が無指向性(点音源)で I が一定ならば
v2 : 振動速度の自乗平均値 (m2/s2)
PW  I   ds  I  4r 2

m2 
s   m  
m m
W  m 2  2   N  3    N    kg  2  
s 
m  
s 
s s

振動している面の面積が大きい程,振動速度が大きい程大きな放射パワーとなる.
放射パワーが大きいということは振動している面が発する音圧P が大きいということ
だけではない.音圧が低くても面積Sが大きいと放射パワーが大きくなる.
このことは,機械などから発する音の対策に重要な事項である.「大きな音,音圧
が高い箇所を対策したけれど静かにならない.」という事例は枚挙にいとまがない.
それは音圧が低いけれど放射面積が広い箇所の対策をしていないことによるもの
である.
音響パワーレベル LW は
 I

LW  10  log  4r 2  (dB)
 I0

 I 
 10  log   10  log 4r 2
 I0 


 LP  10  log 4r 2
音の放射パワー
W : 音響放射パワー (W)
W  S  v  c
2
PW : 音源から発する音のエネルギー (W)
S : 放射面積 (m2)
ρc : 音響抵抗 (N・s/m3)
v2 : 振動速度の自乗平均値 (m2/s2)

m2 
s   m  
m m
W  m 2  2   N  3    N    kg  2  
s 
m  
s 
s s

ここで注意を要することは,放射パワーは振動速度vの自乗に依存することである.
振動している面の面積が大きい程,振動速度が大きい程大きな放射パワーとなる.
放射面の面積が同じと仮定すると,振動数が低いときは大きな変位振幅でもそれ
放射パワーが大きいということは振動している面が発する音圧P が大きいということ
ほど大きな放射パワーにならないが,振動数が高いと小さな振幅でも大きな放射
だけではない.音圧が低くても面積Sが大きいと放射パワーが大きくなる.
パワーの音を発することになる.
このことは,機械などから発する音の対策に重要な事項である.「大きな音,音圧
が高い箇所を対策したけれど静かにならない.」という事例は枚挙にいとまがない.
同じ振動速度ならばρcの値が大きい物質程,大きなエネルギーの音がでる.
それは音圧が低いけれど放射面積が広い箇所の対策をしていないことによるもの
空気のρcは400 (N・s/m3)程度,水は1.5×106 (N・s/m3)程度であり,水の方が4000
である.
倍も大きいエネルギーの音がでることになる.


(dB)
音のエネルギー


LW  LP  10  log 4r 2 (dB)
r = 1 m とすると
LW  LP  11 (dB)
人間が大声で 1 m の点で 90 dB の音圧Lpだとすると
LW  90  11  101 (dB)
101
LW  10 10  10 12  0.0126 (W)
3200人で40Wの蛍光燈が灯く
ほんの少しのエネルギーが音に変換されると極めて大きな音になる.
5
dB:デシベルの計算
(+xdB)×(-xdB) = 1.00
2dB = (1+1)dB = 1.122×1.122 = 1.259
5dB = (2+3)dB = 1.259×1.413 = 1.778
= (1+1+1+1+1)dB = 1.1225 = 1.778
15dB = (10+5)dB = 3.162×1.778 = 5.622
デシベル (dB)
比
1
dB
0
dB
0
比
1
0.8913
0.7079
0.5012
0.3162
0.1
-1
-3
-6
-10
-20
+1
+3
+6
+10
+20
1.122
1.413
1.995
3.162
10

log y  log 2log 4 x
1
log y  log x
2

log y  log 4 x  log 2
log x
log y 
 log 2
log 4
log x
log y 
 log 2
2 log 2
log y  log x
1
2
log y  log x
dB  20  log
log 10
y x
10
dB
0
+1
+3
+6
+10
+20
比
1
1.122
1.413
1.995
3.162
10
dB
20
dB
20
 log

x
x0
x
x0
x
dB:デシベル → 比 x
0
x
dB  20  log
x0
dB
0
-1
-3
-6
-10
-20
x
x0

dB
x
 log 10   log   log 10
20
x0 

x
比 x0 → dB:デシベル
比
1
0.8913
0.7079
0.5012
0.3162
0.1
100.05
1dB(1.122)3
3dB(1.413)2
100.5
x
dB:デシベル → 比 x
0
log 計算の復習
y  2log 4 x
概略計算
dB  20  log
概略計算
100.05
1dB(1.122)3
3dB(1.413)2
100.5
x
x0
dB
x
 10 20
x0
60
x
 10 20  10 3  0.001
x0
-60dB = (-20×3)dB = 0.13 = 0.001
60
x
 10 20  103  1000
x0
+60dB = (20×3)dB =
103 = 1000
6
デシベルの和
音源 : 1
デシベルの和
音源 : 1
音源 : 2
音源 : 2
受音点
音源1だけ測定 : L1
受音点
音源2だけ測定 : L2
音源1だけで測定 : L1
音源2だけで測定 : L2
L2
Ln
 L1

LP  10  log10 10  10 10      10 10 


デシベルの和
デシベルの和
P
 P2 
LP  20  log   10  log 2 dB 
 P0 
 P0 
P0 = 2×10-5Pa
 I 
 P2 
LI  10  log   10  log 2 dB 
 I0 
 P0 
I0 = 10-12 W/m2
音源 : 1
受音点
音の強さの領域ならば,エネルギー保存の法則で
音源1だけで測定 : L1 60dB(rms)
I  I1  I 2  I 3        I n
I
I
I
I 
LP  10  log 1  2  3        n 
I0 
 I0 I0 I0
デシベルの和
 P2 
LP
 log 10  log 2 
10
 P0 
LP
10 10 

LP  10  log10  10

L1
10
L2
10
60
10
3 dBだけ大きくなる
デシベルの和
 LP
log10 10

音源 : 1
音源 : 2

 P2 
  log 2 
P 

 0 

受音点
I
P2

P02 I 0
 10
音源2だけで測定 : L2 60dB(rms)
60




LP  10  log10  10   10  log 2  10 10 



 60
 10

 10  log 2  10  log10   3  60  log10  63dB


60
10
合成されたレベルは
 P2 
LP  10  log 2 
 P0 
音源 : 2
L3
10
音源1だけで測定 : L1 60dB(rms)

LP  10  log10  10


       10 

Ln
10
音源2だけで測定 : L2 54dB(rms)

  10  log 106  105.4


 10  log1.2512  10 6   10  log1.2512   60  60.97 dB
60
10
54
10


約1 dBだけ大きくなる
7
デシベルの和
デシベルの差
LPS
LPa
LPn
10 10  10 10  10 10
3.5
LPS
LPn
 LPa
log 10 10  log10 10  10 10

レベルの増加量 (L+)
3
2.5
LPn
 LPa
LPS
 log10 10  10 10
10

2
1.5
1




LPn
 LPa
LPS  10  log10 10  10 10

0.5
0
0
5
10
15








20
レベル差 (ΔL) dB
デシベルの差
デシベルの差
複数の機械設備が稼働している
状態で,×の個所で機械Sが発す
る音圧レベルLPSが測りたい.
複数の機械設備が稼働している
状態で,×の個所で機械Sが発す
る音圧レベルLPSが測りたい.
S
S
×
受音点
×
受音点
LPa = 60 dB
LPn = 53 dB
デシベルの差
デシベルの差
音源Sが発する音圧レベルをLPS,その他の音圧レベルをLPnとする.
その和の音圧レベルLPaとするとレベルの和から,
LPn
 LPS
LPa  10  log10 10  10 10





LPn
 LPS
LPa
 log 10  log10 10  10 10
10

LPa
LPn
 LPS
log 10 10  log10 10  10 10

10
LPa
10
 10
LPS
10
 10
LPn
10
LPn
 LPa

LPS  10  log10 10  10 10 


60
53
 10

LPS  10  log10  1010   10  log 10 6  105.3










 10  log 8.0  105  10  log8.0  10  log 105
 9.03  50  59.03dB 




機械Sの発する音圧レベルLPsは,全体の機械が同時に稼動している時の音圧レベル
LPaの60dBより1dB低い59dBである.
10
LPS
10
 10
LPa
10
 10
LPn
10
特定の音源(音)に注目して,その音源以外の音を暗騒音LPnという.暗騒音LPnの影
響を除外して特定の音源(音)の音圧レベルLPsを算出することを暗騒音補正という.
8
デシベルの差
点音源
この理論は対象音と暗騒音が定常音の場合だけ成り立つのであり,実際の音の測
定においては,計測精度や音の変動などを考慮して,ISO規格では
レベル差⊿L = LPa−LPnが3dB以内(JISでは5dB以内)の補正は許していない.
また,レベル差が10dB以上の場合は補正の必要が無く,注目する特定の音源(音)
の音圧レベルはLPs = LPaとして良い.
7
音のパワーレベルLw (dB)は,
 I

LW  10  log  4d 2 
I
 0

6
レベルの補正量 (L−)
PW  I   ds  I  4d 2
5
I0 = 10-12 W/m2
I 
LW  10  log   10  log4   20  logd 
 I0 
4
3
LW  LP  11  20  logd 
2
1
LP  LW  11  20  logd 
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
レベル差 (ΔL = LPa--LPn) dB
点音源
LP  LW  11  20  logd 
音圧レベルLPは,音源からの距離dの関数である.
距離 d (m)と 2d (m)の音圧レベルLPをみてみよう.
LP1  LW  11  20  logd 
音 源
LP 2  LW  11  20  log2d 
LP 2  LP1  20  log2d   logd 
 2d 
LP 2  LP1  20  log   LP1  6 dB 
 d 
このように距離が2倍(double distance)で6dB減衰することを”-6dB/d.d.”と表現する.
点音源
点音源
S1
点音源
S2
点音源
d
自由音場
反射面などの境界の
影響を無視できる音場
S1
S2
d
2d
S2 = 4×S1
自由音場にある,小さな音源(点音源)を取り囲んで半径d (m)の球面を想定すると,
音のエネルギーPw (W)は全球面の音の強さI (W/m2)の積分値であり,
PW  I   ds  I  4d 2
2d
音源から距離dの点の面積S1を
通った音のエネルギーは,距離2dの
点ではS1の4倍の面積S2を通ることになる.
S2 = 4×S1
したがって距離2dの点の単位面積S1を通過する
音のエネルギーは距離dの単位面積に対して1/4となる.これから,倍距離減衰は,
1
10  log   6dB / d .d .
 4
9
点音源の減衰の例
線音源
LP  LW  8  10  logd 
次に距離d (m)と,2倍の2d (m)の音圧レベルLPを見てみよう.
LP1  LW  8  10  logd 
LP 2  LW  8  10  log 2 d 
LP 2  LP1  10  log2d   logd 
 2d 
LP 2  LP1  10  log   LP1  3 dB 
 d 
線音源の場合,距離減衰(幾何減衰)は距離が2倍で3dB減衰する.”-3dB/d.d.”
線音源
線音源
S2
S2
S1
S1
d
d
S2 = 2×S1
S2 = 2×S1
2d
無限に長い線状の音源(線音源)から放射される音波は円筒状に拡散する円筒波
と考えることができる.
2d
距離2dの点の単位面積S1を通過する音のエネルギーは距離dの単位面積に対して
1/2となる.これから,倍距離減衰は,
1
10  log   3dB / d .d .
 2
線音源
線音源
この線音源を包む半径d (m)の円筒を想定すると,単位長さ(1m)当たりの音のエネ
ルギーPw [W]は単位長さ(1m)の円筒全周の音の強さI [W/m2]の積分値であり,
PW  I   ds  I  2d
S2
音のパワーレベルLW (dB)は,
I

I0 = 10-12 W/m2
LW  10  log  2d 
I
 0

I 
LW  10  log   10  log2   10  logd 
 I0 
S1
d
S2 = 2×S1
2d
LW  LP  8  10  logd 
LP  LW  8  10  logd 
線音源の長さがl (m)と有限長の場合,音源からの距離が線音源長のl/π (m)まで
は線音源的な距離減衰,それ以上離れた場所では点音源的な減衰特性となる.
10
余談
面音源
面音源
昔の戦争映画で,潜水艦の操舵室にあるラッパのふたを開けて大きな声で機関室に指
令を出しているシーンを見たことがある.この筒を”伝声管”という.伝声管の中では,音
が広がらず幾何減衰がないため,船以外に飛行機や工場など騒音の激しいところの連
絡用として使われていた.直径100mm程度の金属管が使われていたようである.
伝声管は,幾何減衰は無いが音響抵抗ρcがあるので減衰はするが2km先まで通じた事
例がある.少し脱線するが,伝声管に使うパイプは塩化ビニールのような硬い管を使い,
なるべくゆるやかに曲げると良い.蛇腹のホースは減衰が大きい.
S1
S2
d
S2 = S1
2d
音源が十分に広い面的な音源(面音源)の場合,音源表面では距離に関係なく一定
の音場となり,距離減衰(幾何減衰)は生じない.
出典 : 山下充康.謎解き音響学,丸善
東京タワーで騒音測定の例
面音源
0 dB / d.d.
S −無限面音源
0
b
a
a<b
S’ −有限面音源
30
L’ −有限線音源
l
b/π
L −無限線音源
l/π
20
a/π
減衰量 (dB)
10
P −点音源
40
1
2
4
8
16
距離 (m)
点音源の場合, -6 dB / d.d.
無限線音源の場合, -3 dB / d.d.
有限線音源の場合, -3 dB / d.d. < l / π
-6 dB / d.d. > l / π
面音源
a×bの有限の大きさの場合,音源からの距離によって線音源あるいは点音源として
扱うことになる.
32
64
無限面音源の場合, 0 dB / d.d.
有限面音源の場合, 0 dB / d.d. < a / π
(a<b) -3 dB / d.d. < b / π
-6 dB / d.d. > b / π
音源の位置
自由音場
S  4d 2
b
a < b の場合,音源からの距離が短辺
a (m)の1/πまでは幾何減衰は無いとする.
距離がa/π∼b/π (m)の範囲は線音源の減
衰特性となる.
a
a/π
b/π
距離が長辺b (m)の1/πを超える距離では
点音源の減衰特性となる.
点音源
線音源
面音源
LP  LW  10  log4   20  logd 
 LW  11  20  logd 
L  LP
11
音源の位置
音の回折
平面上(自由音場)
壁を立てても音は波であるので壁
の向こう側に伝わる性質がある.こ
れを音の回折または回折伝播とい
う.
S  2d 2
L  LW  10  log2   20  logd 
 LW  8  20  logd 
L  LP  3 dB 
音源の位置
音の回折
図の音源Sと受音点Pの間の幾何学的な伝播行路差δは,
2平面の接合上
  a  b   c  d 
S  d 2
O
δ を基に,
2
N はフレネル数

2  f

S
c
N
L  LW  10  log   20  logd 
 LW  5  20  logd 
b
a
P
d
c
音速cをおよそ340m/sとすると,
N
L  LP  6 dB 
音源の位置
f
170
と周波数fの関数になる.
音の回折
3平面の接合上
減衰量 dB
S  0.5d 2
L  LW  10  log0.5   20  logd 
 LW  2  20  logd 
L  LP  9 dB 
フレネル数
12
  f10
 0.33
170
56
f10 

減衰量 dB
音の回折
減衰量 dB
音の回折
17.5dB
0.33
フレネル数
フレネル数
音の回折
音の反射・吸収・透過
Ii  I r  I a  It
減衰量 dB
吸音率 α は,
  f 20
 5.06
170
860
f 20 

Ii
I I
I I
 i r  a t
Ii
Ii
Ia
It
Ir
と定義され,反射音以外は吸音と考える.音の透過率 τ は,

It
Ii
と定義され,デシベルで表す透過損失TL は,
TL  10  log10
5.06
フレネル数
1
I
 10  log10 i

It
dB 
音の回折
  2.3  2.7   2  2.5  0.5m
Hz 
f10 
56
 112

f 20 
860
 1720

音源
S
聴 覚
Hz 
この塀は112Hz以上の周波数で
減衰量が10dBを超え,1720Hz
以上の周波数で20dBを超える.
受音点
P
1000 Hzの減衰量は,
N
  f 0.5 1000

 2.9
170
170
13
音圧レベルと日常生活
音 圧
Pa
音圧レベル dB
純音のラウドネスレベル
140
最大可聴値
100
130
人間の聴覚は周波数に対しても,音の大きさに対しても単純な比例関係ではない.
この図は,純音に対して同じ大きさに聞こえる音圧レベルを等ラウドネスレベル曲線と
して示したものである.
120
10
110
100
1
90
80
0.1
80dB : 大きな声
この曲線は年齢の異なる多くの人の聴覚の平均値であり,ISO226:2003に規定されて
いる.この曲線により物理的な音と人間の感覚量(Phon:ホン)を結びけることができる.
1kHzの場合だけ人間の感覚量(Phon:ホン)と音圧レベル(dB:デシベル)が一致する.
70
60
0.01
50
65dB : 普通の声
40
0.001
30
40dB : 小さな声
20
100μ
この等ラウドネス曲線は等感曲線とも呼ばれ,1kHzの音を基準にして,周波数を変え
た音と1kHzの音が同じ大きさに聞こえる点をプロットしたものである.
人間の聴覚は3.15∼4kHz付近が最も感度が高く,低い周波数に対しては聴こえの感
度が極めて悪いことを示している.女性の叫び声や赤ん坊が泣く声が4kHz付近なの
は命を護るための自然の摂理かもしれない.
一番低い青の線は,人間の耳で聞ける音で4Phonである.
10
0
最小可聴値
10μ
20μP,0dB は 聞こえるか聞こえないかの境界
音の大きさ(ラウドネス)
可聴領域
140
•
130
ラウドネス(loudness)
– 音の感覚的な大きさを表す心理尺度で大きさに比例する.
– 単位 sone (ソーン)
– 1kHz、音圧レベル40dBの純音を聴いたときの大きさを 1 ソーンとする
大きさが2倍に聴こえると 2 ソーン、3倍に聴こえると 3 ソーンとなる
120
110
100
可聴域
90
80
•
音楽
70
60
ラウドネスレベル
– 1 kHzの純音と同じ大きさに聞こえる音の大きさ
– 単位 phon
– 例えば、1 kHz,音圧レベル60 dB の音と同じ大きさに聞こえる音の大きさを 60
phon という
会話
50
40
30
•
sone と phon の関係(1kHzの純音の場合)
20
– 音圧レベルが10dB大きくなると2倍の大きさに感じる
10
S  2 ( P  40) / 10
0
-10
10
100
1k
Hz
10k
100k
– 40 phon は1 ソーン,50 phon は2 ソーン,60 phon は4 ソーンとなる
純音のラウドネスレベル
音の大きさ
130
120
110
100 Phon
90
80
70
60
50
40
30
20
10
100
音圧レベル (dB)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
最小可聴値
-10
16
31.5
63
125
250
500
1k
周波数 (Hz)
2k
4k
S : sone、P : phon
8k
16k
音圧
1
3倍(10dB)
10倍(20dB)
30倍(30dB)
音の
強さ
1
10倍
100倍
1,000倍
驚き 1倍
驚き 2倍
感じ
方の
大きさ
人間の感覚は対数尺度に対応している.
驚き
4倍
驚き
8倍
ウェーバー・フェフナーの法則
14
耳の構造
蝸牛基底板の外有毛細胞
高音の有毛細胞は短く角度が
広い.低音の有毛細胞は長く
角度が狭い.人間の耳には有
毛細胞が約2万個ある.
蝸牛基底板の外有毛細胞
人間の可聴領域(周波数,波長)
破壊された有毛細胞
正常な有毛細胞
可聴周波数 : 20 Hz∼20 kHz
周波数 f
20
100
波長 λ
17 m
3.4 m
250
1k
4k
34 cm
8.5 cm
10 k
20 k(Hz)
3.4 cm
17 mm
超音波
低周波
超低周波
可聴範囲
8k
有毛細胞が完全に崩れて,高度の難聴
状態.
蝸牛基底板と周波数
有毛細胞が整然と並んでいる健康状態.
日本人の年令別による聴力低下
Hz
30才代
40才代
dB
50才代
60才代
70才代
80才代
15
言葉の波形の例
母音
子音
ms
抜けた外有毛細胞は
再び生えることはありません.
耳を大切に!
難聴にならないために
1000
聞いて良い時間 (分)
8時間
88dB,4時間
91dB,2時間
100
94dB,1時間
97dB,30分
100dB,15分
10
1
80
85
90
95
100
105
音の大きさ (dB(A))
16