データ活用にみる新たな商機 - EIU Perspectives

データ活用にみる新たな商機
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データ活用にみる新たな商機
目次
目次
1
本報告書について
2
エグゼクティブ・サマリー
3
はじめに:情報から収益源へ
5
1:データがもたらす新たな機会
7
2:収益源としてのデータ
9
3:情報漏えいリスクへの対応
11
おわりに:信頼関係の構築に向けて
15
付録:調査結果
17
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
データ活用にみる新たな商機
本報告書に
ついて
『データ活用にみる新たな商機』は、NTT
コミュニケーションズによる協賛の下、ザ・
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット
(EIU)が作成した報告書である。本報告書は、EIU
が独立した立場で作成しており、その内容・見解
は必ずしも協賛企業の見方を反映するものではな
い。今回行われたリサーチと分析は、主に世界各国
の企業におけるシニアエグゼクティブを対象とした
アンケート調査、そしてビジネスリーダー・専門家
への詳細にわたる聞き取り調査という2つのソー
l Big Data Alliance(BDA)取締役
起業家
Albert Bogaard
l Datacoup
CEO
Matthew Hogan
l ConneXionsAsia
創業者 兼 CEO
Rosaline Chow Koo
スに基づいている。アンケート調査対象者476名
l 香港 個人情報プライバシー委員局(PCPD)
(約半数がCxO層の役員)は、世界の様々な地域を
l シンガポール
拠点としており、その内訳は北米31%、ヨーロッパ
30%、アジア太平洋29%、ラテンアメリカ(中南
米およびメキシコ)5%、中東4%だ。また調査
対象者の60%以上は、年間収益が10億米ドルを上
回る企業に、37%は5億米ドルから10億米ドルの
企業に所属している。
Personal Data Protection Commission
委員長 Keng Thai Leong
l Epsilon
エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント 兼
国際部門マネージング・ディレクター
Dominic Powers
今回EIUは、右記の企業役員・専門家を対象と
して、詳細にわたる聞き取り調査を実施した。
ご協力いただいた皆様には、この場を借りて御礼申
し上げます:
l ベルギー National Institute for
Health and Disability Insurance (NIHDI)
マネージング・ディレクター 兼 理事長
Ri De Ridder
l Online Trust Alliance (OTA)
プレジデント 兼
エグゼクティブ・ディレクター
Craig Spiezle
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データ活用にみる新たな商機
エグゼクティブ
サマリー
近年、膨大な量のデータを収集・保管する企業は
l データの収益化に対する企業の関心は高い: 増加しており、データに秘められたビジネスモデル
長期間にわたってデータ収集を行ってきた企業の
変革のポテンシャルには大きな期待が寄せられて
多くは、現在その収益化に向けた取り組みを進めて
いる。しかし、データ活用を直接的に収益へと結び
いる。今回EIUが実施した調査によると、地域・業
つけるのは決して容易でない。付加価値を生み出す
種・年間収益を問わず、ほとんどの企業はデータを
マーケティング戦略の推進に、質の高いデータの活
戦略的リソースと見なしているようだ。自社デー
用が有効であることはいうまでもない。しかし、不
タを活用して利益を上げており、今後も取り組み
透明な規制環境や、消費者のプライバシーにまつわ
を継続すると答えた調査対象者は、全体の約60%
る問題、セキュリティ上の懸念、予算の制約など、
に上っている。特にアジア(63%)では、北米・
企業は数多くの課題に直面しているのが現状だ。 デ
ヨーロッパ(それぞれ58%・56%)と比べてその
ジタル・ディスラプション (デジタル時代の創造的
割合が高い。
破壊)やビッグデータがもたらす可能性は無限に広
がっている。だが、潜在リスクを避けるためには、
l 新たなテクノロジーに対する投資は今後も拡大:
細心の注意を払ってプランの策定を行うことが求め
今回の調査では、ビッグデータの存在が企業の業
られるのだ。
務形態に大きな影響を与えていることが明らかに
なった。ビッグデータが新たなテクノロジー活用の
EIUが作成した本報告書では、急速な進化を
きっかけとなったとする回答者は、全体の43%に
遂げるデータ・テクノロジーがもたらす様々な
上っている。この結果は、企業がクラウド・スト
機会を直接的に活用するため、企業がどのような
レージ、データセンター、安全性といったビッグ
取り組みを行っているのか検証する。今回EIUは、
データソリューション・サービスに対する投資を
北米・ヨーロッパ・アジアなどを拠点に様々な業界
大幅に拡大しているという他社の調査結果とも合致
でビジネスを行う経営リーダー476名を対象として
するものだ。IT専門調査会社 IDCの予測によると、
アンケート調査を行い、企業のデータ活用プランや
同市場は2019年まで年平均23%の成長を続け、
取り組みについて実情を探るとともに、データ産業
500億米ドルの規模に達するという。
の企業役員に対する聞き取り調査を行った。本報
告書の内容は、これら2つの調査をベースとして
いる。その主要な論点は以下のとおりである:
3
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データ活用にみる新たな商機
l データは意思決定に不可欠な存在となっている:
l 消費者のプライバシー保護とデータ・セキュリ
調査対象者のほとんど(83%)は、既存製品・
ティは依然として懸念材料:企業がデータの収益化
サービスの収益性向上に向けてデータを活用してい
を進める中、消費者のプライバシー保護は、依然と
ると回答。データに関連する製品やサービスの開発
して大きな懸念材料の1つとなっている。顧客が
を専門に行う新規部門の設立には明確なビジネス
個人情報に関して企業の対応を信頼している、ある
チャンスがあるとした回答者も、全体の3分の2
いは細心の注意を払って顧客データの収集・保存・
を上回った(69%)。データを主要業績評価指標
分析を行っていると答えた回答者が、それぞれ
(Key Performance Indicator = KPI)や顧客の
86%・82%に上ったのは楽観材料だ。しかし、顧
期待を満たすための情報ソースとして捉える企業
客データ利用の透明性に関する所属企業の取り組み
は、ますます増加している。
を とても効果的だ とした回答者は34%にとどま
り、 あまり あるいは 全く効果的でない とした回
答者も9%に上った。規制当局は、今後も動向を注
視する必要がある。
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データ活用にみる新たな商機
はじめに
情報から収益源へ
特 に ビ ッ グ デ ー タ 分 析*は 、 標 準 的 な ビ ジ ネ ス
手法として急速に広まりつつある。世界的なデータ
現金が王様 (Cash is king)という言葉は、
インフラが、膨大なデータの流れを支えられるほど
ビジネスの世界で古くから使われてきた。しか
の信頼性・スピード・安全性を確立できるレベルに
し、デジタル経済が拡大を続ける現在、データ
成熟したことも、その活用を後押ししている。単に
はその地位を脅かす存在になる可能性がある。
ビジネスに役立てるだけでなく、データそのものを
ビジネスリーダーの多くは、足元に手つかずの金脈
主な収益源として活用する企業や、データブロー
が眠っていれば、ためらわずにその発掘を試みるだ
カー事業を展開する企業も現れている。Googleや
ろう。ビッグデータ時代の到来とともに、情報は
Facebookなど、現在急成長を遂げる大企業の多く
収益の源になった。そして企業は今、自社データを
は、データをベースとしたビジネスを展開してい
わずか10年前には想像もしなかった形で活用する
る。収集したデータを元にユーザーの行動パターン
チャンスを手にしている。しかしビジネスリーダー
を分析し、広告枠やサービスの販売につなげる
の中には、こうした新たな機会の活用をためらう者
というのが、こうした企業のビジネス手法だ。
や、その準備ができていないと感じる者も少なくな
また米系保険会社Allstateなど、テクノロジー業界
いようだ。
以外にも、データビジネスへの関心を高め、顧客
データの収益化に取り組む企業が現れている。
今日企業は、規模の大小を問わず、自動化が
米国ダイレクトマーケティング協会(DMA)の
進む顧客やサプライヤーとのコミュニケーション
推計によると、データドリブンマーケティングは
を通じて膨大なデータを生み出している。社内
2012年だけで米国経済に1560億米ドルの効果を
プロセスやコンプライアンス対応、Eメール、オン
もたらしたという。
ライン取引、顧客フィードバックなどは、その一例
*ビッグデータ分析 = トレンド
やパターンの特定を目的とし
た大規模データ解析
5
だ。多くの企業は、こうしたデータを顧客行動や
ドルやユーロ、人民元、英ポンドなど、様々な
ビジネストレンドへの理解を深めるために保管・
通貨で直接的な収益をもたらすデータの可能性は、
分析し、売上拡大やコスト削減、業績向上を目的と
企業の大きな関心を集めている。しかしデータから
する戦略やマーケティング・プログラムに活用して
収益を生み出すためには、急速に変化する不透明な
いる。
規制、消費者のプライバシーやセキュリティにまつ
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データ活用にみる新たな商機
わる懸念、予算やリソース上の制約といった多く
の課題を克服しなければならない。本報告書は、
北米・ヨーロッパ・アジアなどを拠点とする様々な
業種の企業を対象としてデータに関するプランや
取り組みの実像に迫るアンケート調査、そして台頭
しつつあるデータ産業の経営リーダーを対象に
行った聞き取り調査を元に作成された。次ページ
からは、急速に進化するデータ・テクノロジーが
もたらすビジネス機会の活用に向けて、企業がどの
ような取り組みを行っているのか検証する。
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データ活用にみる新たな商機
1
データがもたらす新たな機会
今回の調査結果で注目に値する点の1つは、
ヨーロッパ(それぞれ58%・56%)と比べて割合
地域・業種・年間収益を問わず、多くの企業が
が多い。その理由の1つと考えられるのは、規制
データを戦略的リソースと見なしていることだ。
環境の違いだ。北米・ヨーロッパではすでに厳格な
調査対象者の半数以上(59%)は、データの活用
規制が確立されている一方、アジアにおけるデータ
(そして分析)を 極めて重要だ と考えており、
関連規制は依然として発展段階にある。また業界
所属企業の組織で横断的にビジネスに利用してい
別に見て、データの収益化に取り組む割合が最も
る。 とても重要だ と答え、大半の部門でデータ
高かったのは、IT・テクノロジー企業だ。データが
を利用している回答者も29%に上った。しかし、
こうした業界で極めて重要な役割を果たすことを
回答者の傾向には地域差が見られる。 極めて重要
考えれば、回答者の割合が約8割(78%)に達した
だ とした回答者が、ヨーロッパ・アジア太平洋
ことも決して驚く結果ではないだろう。
地域で半数をわずかに上回る程度だったのに対し、
北米では69%に達している。この結果は、同地域
また今回の調査では、ビッグデータが企業
の企業でビッグデータの活用が比較的進んでいる証
のビジネスに大きな影響を及ぼしていることも
だろう。業種別に見ると、 極めて重要だ という
明らかになった。ビッグデータの存在が、新たな
回答は金融(79%)・メディア(77%)業界で最も
テクノロジーを活用するきっかけになったとする
多かった(化学業界ではわずか27%)。
回答者は、全体の43%を占めている。この結果は、
企業がクラウド・ストレージ、データ・センター、
現在、
データの利用・分析は、
所属企業全体にとってどの程度重要で
すか?
(回答者の割合:%)
セキュリティなど、ビッグデータソリューション・
サービスへの投資を大幅に拡大しているという他社
の調査結果とも合致するものだ。IT専門調査会社
極めて重要だ: ほぼ全ての部門で利用している
58.61
とても重要だ: 大半の部門で利用している
29.2
ある程度重要だ: ほぼ半分の部門で利用している
9.03
あまり重要でない: 一部の部門で利用している
3.15
全く重要でない:どの部門でも利用していない
0
わからない
IDCの予測によると、同市場は2019年まで年平均
23%の成長を続け、約500億米ドルの規模に達する
という。今後さらに幅広いデータを入手・活用す
ることが可能になれば、こうしたトレンドが加速
されると予測する関係者もいる。センサーを組み
込まれた(IoTネットワークに接続された)機器
が普及し、自動車から家電製品まで様々なものを
0
データ発生源に変えていくからだ。
今回調査対象となった企業の多くは、データを
7
れっきとした商材と考えているようだ。所属企業
オランダのBig Data Alliance(BDA)で取締役
がすでに自社データを収益化しており、今後も
をつとめる起業家 Albert Bogaard氏によると、
取り組みを継続すると答えた回答者は、全体のほぼ
「当時ビッグデータという呼び方はしなかった」
60%に上った。特にアジア(63%)では、北米・
ものの、ビッグデータに似た手法を使う企業は
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データ活用にみる新たな商機
数十年前にも見られたという。しかし、「動画や
を果たす金融セクターでは、特にその傾向がはっ
テキスト、音声など、10∼20年前には存在しな
きりと見られる(同セクターに所属する回答者の
かったデータソースを処理・分析できるようになっ
74%)。
た点が以前と大きく異なる」と言う。
調査対象者の多くは、ビジネスという文脈での
ク ラ ウ ド ・ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ や 、 Apache
データ活用にも、かなり自信を持っているようだ。
Hadoopなどのオープンソース型分散ストレージ・
例えば、知識・ノウハウ獲得のため 極めて ある
フレームワークの普及も、ビッグデータの活用に
いは ある程度 効果的なデータ分析を行っている
大きな影響を与えている。こうした技術により、
と答えた回答者は、全体の80%に上った。データ
企業は柔軟かつ費用対効果の高いかたちで、膨大な
活用を通じたビジネス機会の追求という項目でも、
情報を保存・管理できるようになった。さらに柔軟
同様の回答が72%に上っている。IT・金融サービス
性の高いプリペイド式ソリューションの出現が、
業界ではこうした回答が最も多く、ヘルスケア・
テクノロジー関連予算の限られた中小企業による
物流業界ではその割合が少なかった。
高度なデータ管理を実現したことも、こうした流れ
データを新たな収益機会につなげる力量は、企業
を後押ししている。
によってまちまちだろう。しかしビジネスリーダー
販促(販売促進)広告やロイヤリティ・キャン
の多くは、データの活用によりわずか数年前には
ペーンの消費者データを扱うマーケティング企業
不可能だった方法で効率性向上やサービス改善が
Epsilonの国際部門を統括するマネジング・ディ
実現し、企業に変革をもたらしたことを理解して
レクター Dominic Powers氏によると、「多くの
いる。例えば、公的健康保険制度の管理を統括する
業界では、分散フレームワーク上の大規模データ
ベルギーの政府機関 National Institute for Health
を、費用対効果を高く活用することを求められて
and Disability Insurance(NIHDI)は、患者が
いる。Hadoopの出現は、こうした業界に大きな
受けたあらゆる治療行為の記録をデータベース化
インパクトをもたらしており、今日のビジネスには
し、全国の病院・地方自治体・診療所の活動記録と
欠かせない存在だ」と言う。
統合して一元管理している。これにより、患者と
医療機関の活動記録が一目でわかるようなかたち
根拠に基づいた意思決定
また現在、多くの企業は自社データを有効に
包括的データへの統合アクセスを実現することが
可能になった。また、治療費請求などの分野で生じ
る誤りを特定するために、データ解析も行われて
活用する方法を習得しつつある。今回の調査で
いる。同機関の理事長 Ri De Ridder氏によると、
は、ビッグデータの活用が新規業種・市場への
その大きな目的は「治療の流れだけでなくサービス
参入につながった、あるいは既存製品・サービス
の成果も記録することで、関係者に根拠に基づいた
の収益向上につながったと答える回答者がそれぞ
質の高いフィードバックを提供し、医療業務の
れ29%に上っている。ビッグデータの活用がビジ
レベル向上に貢献する」ことだ。つまりデータは、
ネスの大きな変化につながっていないとした回答
主要業績評価指標(KPI)や顧客ベースの期待を満
者は、わずか8%にとどまった。ビッグデータは、
たすための情報ソースとして活用されているのだ。
企業の新たなテクノロジー活用も促しているよう
こうした取り組みによって、財務や顧客満足度と
だ。顧客情報の生成・監視・報告に関する規制・
いう面でのメリットも期待できるだろう。
コンプライアンスが日常の業務の中で大きな役割
8
で提供され、同機関の様々な利害関係者に関する
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収益源としてのデータ
現在のデータ活用における状況を活用しようと
あることだ。「2012年に会社を立ち上げた時は、
する企業は多い。しかし、収集したデータの販売や
変人扱いされることが多かった」と語るのは、
外部プロバイダーからのデータ購入を行う企業は、
ニューヨークを拠点とし、消費者が個人データを
比較的少数にとどまっているようだ。今回の調査で
企業に販売するためのポータルサイトを運営する
は、自社データを社内のみで利用し、購入・販売・
DatacoupのCEO Matthew Hogan氏。「当時
共有などのデータ取引を他社と行っていないとした
は、ベンチャーキャピタルやパートナー候補とミー
回答者がほぼ半数(47%)に達した。他社から
ティングをするたびに、奇異の目で見られた。だが
データを購入する一方で、自社データの販売・共有
スノーデン事件のあと、個人データ市場には優秀な
を行わない回答者も27%に上っている。所属企業が
人材や投資マネーが大量に流入している」と言う。
データの購入・販売・共有を行うとした回答者は、
全体の4分の1を下回った(22%)。
回答者の傾向は、拠点とする地域や業種によって
ビジネス情報の新たな市場
違いが見られる。ヨーロッパでは、データの購入・
現在、Datacoupをはじめとする数多くの企業
販売・共有を行うと答えた回答者が最も多く、
が、データの市場化と収益化(あるいは消費者や
29%に達した(アジアでは22%)。業種別にみる
他社がこうした取り組みをする際のサポート)を
と、同様の回答が最も多かったのは消費財・金融
行っている。消費者が自らのデータが持つ価値を
セクターだ。
より深く理解し、その活用を試みる新たな時代が
到来しつつあるというのがHogan氏の見方だ。同氏
データ取引を行う企業が比較的少数にとどまっ
は、Datacoupがやがて市場の支持を得るデータ
た理由の1つは、同市場が依然として未知の領域で
プロバイダーに成長すると信じている。「個人が
所属企業と他社の間のデータフローとして最もあてはまる記述は次のうちどれですか?
(回答者の割合:%)
自社で収集したデータのみ利用する
(データの購入・販売・共有を他社と行っていない)
46.64
データの購入・販売・共有を他社と行っている
21.85
他社からデータを購入するが、
自社データの販売・共有はしない
他社へのデータ販売・共有はするが、購入はしない
0.63
データ販売を主要ビジネスとして行っている
0.42
全くデータを利用していない
0
わからない
3.78
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26.68
データ活用にみる新たな商機
あらゆるデータを一箇所に集めて管理し、自分の
コストを強いることのないデータ収集方法を提供し
データを資産として、様々な市場で「運用」する。
ているのだ」と言う。
我々は、5∼10年後にはそういう時代がやってくる
と考えている」と言う。
もちろん、新たな事業分野やデータ活用法の
模索を積極的に行っているのは、こうした新興企業
シンガポールを拠点として、企業健康保険デー
だけではない。今回の調査では、データからより
タのプラットフォームを提供する ConneXions
大きな価値を生み出すための取り組みとして、
Asia(CXA)は、市場へ新たに参入した企業の
テクノロジーへの投資拡大(36%)とデータ収集
1つだ。同社を保険ブローカーに指定することで、
の拡大(21%)が最も多く挙げられた。新たな
顧客企業はプラットフォームに無料でアクセス
事業部門の設立、新製品・サービスの立ち上げと
することができる。保険金請求や給付に関する
いう回答も、それぞれ18%・17%に上っている。
あらゆる情報・取引記録を一元管理し、従業員に
取り組みを全く行っていないとした回答者は、全体
よるオンライン請求や個別ニーズに合わせた保障
の11%にとどまった(ただし物流・製造企業では、
内容のカスタマイズも可能になるのだ(例えば、
その割合が約2倍に達している)。
必要性の低い給付金をヨガレッスンや温泉施設の利
用券と交換できる)。また同社のシステムが収集
調査対象者の多く(83%)は、既存製品・
するデータを見ることで、企業は保険支出が実際
サービスの利益率向上のためにデータを活用して
どのように使われているのか把握し、従業員の健康
いる。また、データ関連製品・サービス開発を
や福利厚生に関する潜在的問題を特定できる。
専門に行う事業部門の新規立ち上げには、明確な
ビジネスチャンスがあると考える回答者も全体の
10
「重要なのは、集約・匿名化されたデータを
69%に上った。その一方で、自社データを販売す
理解することだ。従業員がどんな生活習慣を身に
ることに明確なビジネスチャンスがあると答えた
つけており、健康診断ではどのような結果が出た
回答者は50%。所属企業が自社データを収益源とし
のか、どのような請求をして、何が高コストの
て活用する機会を逃したことがあると答えた回答者
原因となっているのか。こうした点を理解し、
も48%に達した。データ販売に最も積極的な姿勢
健康状態を改善した従業員に褒賞を与えるような
を見せたのは、金融・物流セクターのビジネスリー
仕組みを作れば、投資に見合ったリターンを得る
ダーだ。業務を通じて膨大なビジネス・インテリ
ことができる」と語るのは、同社の創業者 兼 CEO
ジェンスを扱う両業界でこうした傾向が見られるの
の Rosaline Chow Koo氏。「我々は、経営者に高
は、ある意味自然なことかもしれない。
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データ活用にみる新たな商機
3
情報漏えいリスクへの対応
他の資産と同様、データの世界にもリスクは
上回っている(34%)。特にアジア太平洋地域や
存在する。企業がデータビジネスへの参入やデータ
ヨーロッパ、そしてデータを取り扱う機会が最も
に関する大規模開発をためらう大きな要因の1つ
多い金融・ITセクターでは、その割合が高かった。
となっているのは、安全性の問題だ。したがって
また調査対象者の21%は、データの収益化に際して
データの安全性対策を 極めて あるいは ある程度
直面する大きな課題として、情報漏えい・サイバー
効果的に行っているとした回答者が、本調査におい
攻撃リスクの高まりを挙げている。これは、知識や
て全体の82%に達したことは楽観材料といえる。
ノウハウが競合企業の手にわたるリスクという項目
しかし、最近紙面を賑わしたオンライン小売大手
(25%)に次いで、2番目に多い回答だ。
Amazonや英国の電気通信企業 TalkTalkのケース
この結果が示唆するように、データの収益化
など、頻発する個人情報の流出事件が、企業の不安
に取り組む企業にとって、安全性は極めて重要な
感を煽っているのも事実だ。
問題だ。企業がテクノロジーの力を借りた防衛
今回の調査では、過去12ヶ月間に大規模な
策を整えるためには、莫大な投資が必要となる
情報漏えいを経験した回答者が、全体の3分の1を
ことも事実だ。しかし、安全性対策で成功を収め
自社データの収益化に関して所属企業が直面している最大の課題は?
(回答者の割合:%)
規制による制限のために収益化ができない
15.34
消費者のネガティブな反応を懸念している
13.24
経営チームにとって優先事項ではない
14.08
社内の各部署がデータを掌握している
13.87
自社データにはほとんど価値がない
2.31
他社とデータ共有を行うために必要な社内共通の基準がない
12.39
自社の重要な知識・ノウハウが他社の手に渡ることを懸念している
25.21
情報流出やサイバー攻撃のリスクを増やしたくない
20.59
IT部門が強い抵抗感を示している
12.18
データ収益化の投資に必要なリソースが不足している
必要な専門知識や分析能力が不足している
明確なビジネスチャンスがない
課題は全くない
わからない
11
10.29
11.34
11.13
12.61
2.94
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データ活用にみる新たな商機
た企業は、データと向き合う心構えこそが、投資
ほぼ同じ意味で捉えられているからだ」と語るの
額にひけをとらないほど大切だと考えているよ
は、Big Data AllianceのBogaard氏。「我々は
うだ。例えば National Institute for Health and
真正面から向き合って、この問題に取り組む必要
Disability Insurance(NIHDI)のDe Ridder氏は、
がある。」
「重要なのは、データを可能な限り分散させること
だ」と考えている。「責任の所在を明確にし、社内
今回の調査で、個人データの取り扱いについて
で指導を行うことも必要だ。例えば、医療機関は安
顧客が企業を信頼しているとした回答者は、全体
全性に関して厳格な指針を設けている。ここで重要
の86%に上っている。また、顧客情報の収集・
となるのは、信頼関係の輪を作ることだ。内部関係
保存・分析を注意深く行うとした回答者も、82%
者全員が、病院の求める個人情報保護の基準に従っ
を占めた。これは、前向きな結果といえるかも
て行動する。これこそが、監査可能な最高レベルの
しれない。自動車・金融・ヘルスケア企業では、
情報保護対策だろう。」また同氏は、データのやり
消費者の信頼を得ていると答えた割合が特に多い。
取りに関し、「データを入手可能な場所では、相互
しかし、調査結果が示すのは楽観材料ばかりでは
接続の安全性を徹底する。またプラットフォームの
ない。顧客データの利用に関する透明性の維持に
相互接続は、入手可能性と効率性の観点から必要な
ついて、 極めて効果的な 取り組みを行っている
場合にのみ行うべきだ」と指摘している。
と答えたビジネスリーダーは、わずか34%にとど
まった。 あまり効果的でない あるいは 全く効果的
一方、CXAもデータによる個人の特定を避ける
でない とした回答者は9%だ。9%という結果は、
ために、様々な対策を打ち出している。「我々は、
それほど大きな数字ではないかもしれない。しかし
米国HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に
規制当局や消費者団体の多くが、データの商業利用
関する法律)を遵守しており、ビジネスを展開する
に関して透明性向上を訴えている現状を考えれば、
アジア各国のデータ保護・情報セキュリティ要件を
憂慮すべき状況といえる。
すべて満たしている。我々が、非常に強固なテクノ
ロジー・インフラを備えているのはそのためだ」と
データビジネスを積極的に展開する企業に
語るのは、CEOのKoo氏。「従業員は、データの
とって、この現状は驚くべきことではない。データ
利用・収集に関する承諾事項に同意することを義務
が消費者全体の利益のために活用される場合でも、
付けられている。情報は複数データベースに分け
企業が商業利用と消費者の権利をバランスよく考慮
て管理され、個人の特定につながる情報はすべて
することは重要だ。そうすれば「消費者には事前
暗号化されている。顧客に提供するのは集約された
承認できる透明性と選択肢が与えられ、企業にも
匿名データだけで、従業員の個人情報は見ることが
信頼に基づいて消費者との関係を築く機会を与え
できない。」
られる」とEpsilonのPower氏は説く。
意識の高まる消費者とのつながり
*ビッグブラザー = 国・世界
レベルで大規模な監視を行
う人物・機関
12
多くの企業や市場で、その対応策として用いら
れているのは、 オプト・イン と呼ばれるアプロー
チだ。消費者はデータ収集・利用の際に、オンラ
こうした安全性の課題に加えて懸念材料となる
インフォームへチェックマークを入れるといった
のは、プライバシー侵害のリスク、そして個人情報
方法で承諾を求められる。ビジネスニーズやセキュ
の使用・販売にますます神経をとがらせる消費者
リティよりも、消費者のプライバシーが優先され
の存在だ。「消費者は依然として(データの使用や
るヨーロッパでは、幅広く活用されているモデル
収集に)大きな警戒心を持っている。残念ながら、
だ。「ベルギーが患者による オプト・イン という
ビッグデータ という言葉は ビッグブラザー* と
アプローチを選んだことは重要だ」と語るのは、
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
データ活用にみる新たな商機
NIHDIの De Ridder氏。「自分のデータが利用・
した取り組みの適用レベルに応じてサイトのランク
取引され、公的機関がデータにアクセスしているこ
付けをするとともに、優れた企業の事例を評価する
とを、国民は明確に理解している。我々の施策は
試みを行っている。
常にこの原則に基づいて作成されており、様々な
関係者の合意に基づいている。こうしたアプローチ
を取ることは、極めて重要だ」と氏は言う。
また企業は、承諾という問題の他にも、消費者
の意識と不信感の双方の高まりという課題に目を
向ける必要がある。企業が自己利益のために消費者
オプト・
の利益やプライバシーを犠牲にするようなことが
アウト と呼ばれるアプローチが主流だと語るのは、
ヨーロッパと対照的に、米国では
あれば、それは消費者に気づかれてしまう。データ
ワシントン州ベルビューを拠点とし、Eコマースや
ビジネスの分野で成功を収めている企業は、なんら
オンライン取引への信頼向上に取り組む非営利団体
かのかたちで消費者にデータ利用の対価を提供して
Online Trust Alliance(OTA)のプレジデント 兼
いる場合が多い。例えばCXAは、ウェルネスプロ
エグゼクティブ・ディレクター Craig Spiezle氏。
グラムへのアクセスという方法でユーザーに報償を
このアプローチでは、商業目的でのデータ利用・
与えている。
収集を望まない場合に、消費者が明確に意思表示
する必要があるケースも多い。
BDAのBogaard氏によると、データにまつわる
問題は「ユーザーに意思決定を委ねることで簡単
OTAのような組織の観点から見れば、データの
に解決する場合が多い」と言う。「問題が生じる
セキュリティや監視にまつわるネガティブな事件が
のは、企業が消費者のデータを一方的に利用する
頻発する現在、 オプト・イン アプローチはデータ
ケースだ。もしユーザーが用途を決められ、自分に
の生成・共有・監視に関する消費者の懸念を解消
もメリットがあり、データ提供と引き換えに支払い
する方法として必ずしも十分でない。Spiezle氏が
や無料サービスなどを受け取ることができれば、
指摘するように、データ収集に際して表示される
取引はスムーズに進む。今後のデータビジネスで
通知やフォームは、必要以上に長く分かりづらい
は、こうした形態が主流になるだろう。つまり
場合もある。そのため、消費者が内容を十分に理解
データを提供するかしないかを決めるのは、持ち主
した上で意思決定を行うのは難しいのだ。
であるユーザーだ。もはや、企業が勝手に使えるも
のではなくなっている。」
「プライバシー・ポリシーの最良のかたちは、
13
短くて簡潔な通知をすることだ」とSpiezle氏は
一方、DatacoupのHogan氏は、消費者に
語る。「通知は、どのようなデータが収集され、ど
「データ取引を促すインセンティブを提供
のように利用され、(最も重要な点として)どのよ
したければ、2つのルールを守る必要がある」と
うに共有されるのかを明記するなど、一般ユーザー
指摘する。「まずそのソリューションは、簡単で
が理解・利用しやすいかたちで記載されるべき
シームレス、かつ明解でなくてはならない。消費者
だ。だが多くの場合、プライバシー・ポリシーは
は、面倒だと感じればすぐに操作をやめてしまうだ
弁護士による弁護士のための作文になってしまって
ろう。もう1つ重要なのは、コアバリュー・プロ
いる。」ポリシーの簡略化を進める手段の1つと
ポジション(価値提案)だ。」同氏によると、
して有効なのは、アイコンや記号の活用だ。環境
「消費者から同意の上で受け取るデータの量・質に
やエネルギー評価で用いられるように、データに
応じて、それ相応の対価を支払う姿勢を見せること
まつわる様々な項目を視覚表示すれば、その意味
が大切だ。そうすれば、データの直接交換を行う場
を一目で理解できるようになる。OTAは大手銀行
となる、活気に満ちた大規模な市場が育つだろう。
やEコマースのウェブサイトを対象に オンライン
その結果、消費者と企業の間により密接な関係が
信頼性評価 (online trust audits)を実施し、こう
生じる」と言う。
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
データ活用にみる新たな商機
質の高いデータ・ガバナンス
企業にとって、規制は消費者のプライバシー
と同様に頭の痛い問題だ。データビジネスが急速
に成長した新たな分野であるため、規制当局は
必ずしも現状に即した対応ができていない。
データの収集・プロセスに関する法律が時代遅れ
になるケース、あるいはモバイル・バンキングや
ソーシャルメディア広告といったビジネス・テクノ
ロジーの普及に応じて頻繁に変更されるケースも
見られる。
してクラウドコンピューティングを利用できないの
が実状だ」と言う。
規制当局は、データのプライバシー保護
という難題に対して継続的な対応を行っており、
業界関係者との連携を通じて環境整備を進めている
ようだ。例えば香港は、アジアの中で最も早い段階
からデータ規制の整備に取り組んでいる。同行政区
では、個人情報保護条例(Personal Data (Privacy)
Ordinance)により、本人の明確な承諾なしに
新たな目的で個人データを使用することが禁じ
規制の不透明性がもたらす問題は、地域ごとの
られている。個人情報プライバシー委員局(Office
ルールの違いによってさらに複雑化している。この
of the Privacy Commissioner for Personal Data
状況は、グローバル企業が扱うデータのボーダレス
= PCPD)は、条例の施行を徹底するとともに、
な性質と相反するものだ。こうした現状を象徴する
「企業など様々なステークホルダーの見解を聞き、
最近の例(2015年11月時点)の1つとして挙げ
バランスのとれた措置の施行を目指す」姿勢を
られるのは、ヨーロッパ連合(EU)司法裁判所が
明らかにしている。「インターネットの時代には、
セーフハーバー協定を無効と判断したケースだ。同
世界規模でビジネスが展開されるため、プライ
協定は、これまで米国・EU間で行われるデータ移転
バシーにまつわる問題もグローバルな意味合いを持
の法的枠組みとなっていた。約4,500社が、それが
つことが多い。PCPDは、世界規模で問題に対応す
無効になったことで、厳格なEUのプライバシー保護
る必要性を認識しており、海外規制当局とも積極的
法に抵触することなくデータ共有の代替手段を見つ
な連携を図っている。」
けるという難題に直面している。
14
な規制を定めている。銀行や保険会社は、依然と
シンガポールの個人情報保護委員会(Personal
今回の調査では、顧客データの利用に関する
Data Protection Commission = PDPC)も、
規制が、ビジネス目標達成のためのデータ活用を
個人データの利用に際しては、当事者の同意に
妨げていると考える回答者が63%に達した。アジア
基づくアプローチを取っている。同機関の委員長
太平洋・ヨーロッパ(両者とも約70%)では、北米
Leong Keng Thai氏によると、「企業のコンプラ
(52%)よりもその割合が高い。この結果は、北米
イアンス・コストを持続可能なレベルに維持する
で規制が比較的緩やかだという一般的イメージと
ため、テレマーケティングを行う企業に Do Not
合致するものだ。CXAのKoo氏によると、アジア
Call Registry (電話等勧誘拒否の登録記録)の
の規制は「依然として必要以上に厳格だ」と言う。
無料チェックが可能なクレジットを提供している。
「データ業界は、規制当局の一歩先を行く取り
また、データ仲介業者(管理業者ではなく)への
組みを行っている。しかし我々の多くは、当局の
義務付け項目を減らし、一定の条件を満たす場合は
対応向上を手助けするために、現在も連携を行って
規約への見なし同意を許可するといった措置も実施
いる。各国政府は業界の現状に対する理解を深め
している」と言う。さらに「企業、特に中小企業、
ており、今後も規制環境の改善が期待できる。
の(法令)遵守をサポートするため、業界の大手
しかし、当局は金融サービス業界に対して特に厳格
企業や事業者団体との協力を行っている」と言う。
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
データ活用にみる新たな商機
おわりに
信頼関係の構築に向けて
ビッグデータ時代の到来とともに幕を
も、それぞれ12%・8%に上った。この調査結果
開けた すばらしい新世界 は、今後も拡大を続ける
からは、ポテンシャルの大きさを実感した企業が、
だろう。そして多くの企業は、規制やセキュリティ
競合企業とのデータ共有に対する警戒心を弱めつつ
上の課題に直面しながらも、より大規模で多様な
ある様子が見てとれる。CXAをはじめとする企業
データの収集・分析・利用・取引を加速させる姿勢
も、製品・サービスのさらなる拡大に積極的だ。
を見せている。今回の調査では、将来的に他企業
Koo氏によると、同社はデータを活用し、業界・国
とのデータ共有を拡大すると答えた回答者がほぼ
の壁を越えて医療・ウェルネス関連情報を比較する
半数(47%)に上った。26%は検討中・まだわか
ベストプラクティス指標を開発しているという。
らないと答えているものの、その予定はないとした
「データの持つ力を活用して、どのようなウェル
回答者は27%にとどまっている。とりわけデータ
ネスプログラムが効果的で、どのようなプログラム
共有の拡大に積極的なのは、小売(65%)・金融
がそうでないのかを示せば、請求額の削減や常習
(73%)・化学(59%)セクターの企業だ。
欠勤の減少、生産性の向上など、大きな効果を期待
できる。」
回答者が、今後1年間に営利目的でデータ共有
を行う最大の相手として挙げたのは、同業他社
データ取引は、IoTの普及によって、今後さらに
(29%)だ。異業種他社やGoogleなどの大手テク
加速する可能性が高い。オンライン接続された様々
ノロジー・プラットフォーム企業をあげた回答者
な機器が、新たな情報源となり、企業は顧客の動き
今後12ヶ月間に所属企業が営利目的でデータ共有を行う可能性が高いのは、次のどのタイプの組織ですか?
(回答者の割合:%)
同業他社
28,57
異業種他社
11.55
ベンチャー企業・起業家
5.87
大手テクノロジー・プラットフォーム企業
既存サプライヤー
7.98
4.83
既存顧客
6.72
政府・政府関連機関
1.47
非営利団体
(例:NGO・慈善団体・学術機関)
1.47
その他(具体的にお答えください)
0
今後12ヶ月間にデータを共有する予定はない
わからない
15
4.41
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
27.31
データ活用にみる新たな商機
や行動に関する膨大なデータを解析できるようにな
流れに備える必要がある。シンガポールのPDPCを
るからだ。だがそれに伴って、顧客や消費者のプラ
はじめとする組織は、すでにそうした方向で取り
イバシーにまつわる課題も増加する可能性が高い。
組みをはじめている。「データ活動の取引が拡大を
続ける今、消費者は自分が個人情報保護に重要な
「今の世界では、何を買い、どのウェブサイト
役割を担っていることを理解すべきだ」とLeong
を見ているのかを把握されるだけでは済まなくなっ
氏は指摘する。「消費者の自覚を促すため、我々
ている」と語るのは、OTAのSpiezle氏。「家にあ
はマスメディアやロードショー、イベントなどを
る様々な機器がネットに接続され、ウェアラブル・
通じて、一般国民とコミュニケーションを図ってい
テクノロジーが身近になりつつある現在、収集され
るところだ。また、個人情報保護に関する教育を
るデータの量と情報の遠隔測定がもたらす価値は
若いうちから始めるべきだという考えに基づき、
飛躍的に高まっている。消費者がどこにいて、何
教育機関とも協力を行っている。」
をしているのかが、筒抜けになってしまうのだ。
企業はそこに大きな価値を見出しているが、我々は
一方、データ急増に伴い、企業は経営戦略の
こうした流れが消費者に与える影響にも目を向ける
一環としてデータという要素を捉え、今後生じる
必要がある。」
ビジネス機会の活用に向けてインフラ・人材への
投資を図る必要がある。データが適切な方法で
購買記録の把握から子供の居場所の確認、担当
利用・共有されれば、(それが営利目的であったと
医との重要な健康情報の共有まで、ネット接続さ
しても)企業・消費者双方にメリットをもたらす
れた機器や大量のデータが、消費者に様々な形で
ことができるはずだ。企業・消費者・規制当局は、
メリットをもたらすことは間違いない。しかし規制
今後長い時間をかけて、バランスのとれたデータ
当局や消費者は、意識を高めるとともにデータに
活用のあり方を模索することになるだろう。
まつわるルールや要件を明確化し、新たな時代の
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データ活用にみる新たな商機
付録:
調査結果
所属企業の年間収益は?
(回答者の割合:%)
5億米ドル未満
0
5億米ドル∼10億米ドル未満
36.97
10億米ドル∼50億米ドル未満
42.65
50億米ドル∼100億米ドル未満
16.18
100億米ドル∼250億米ドル未満
3.78
250億米ドル∼750億米ドル未満
0.42
750億米ドル以上
0
わからない
0
あなたの役職として最もあてはまるものは?
(回答者の割合:%)
取締役
0
CEOあるいはそれに相当する役職
0.84
CFOあるいはそれに相当する役職
6.30
CIOあるいはそれに相当する役職
3.99
CMOあるいはそれに相当する役職
7.35
CDO(チーフデータオフィサー)
9.45
その他のCレベル役員
19.54
シニアヴァイスプレジデント/ヴァイスプレジデント/ディレクター
20.38
部門責任者
3.15
部署責任者
5.67
マネージャー
23.32
その他
0
17
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
データ活用にみる新たな商機
1. 現在、
データの利用・分析は、
所属企業全体にとってどの程度重要ですか?
(回答者の割合:%)
全く重要でない:どの部門でも利用していない
0
あまり重要でない:一部の部門で利用している
3.15
ある程度重要だ:ほぼ半分の部門で利用している
9.03
とても重要だ:大半の部門で利用している
29.20
極めて重要だ:ほぼ全ての部門で利用している
58.61
わからない
0
2. 所属企業は自社データを収益源として活用していますか?
(回答者の割合:%)
過去12ヶ月間に活用し、
今後も継続する予定だ
57.14
過去12ヶ月間に活用したことがあるが、
今後は継続しない予定だ
15.34
活用したことはないが、検討中だ
6.09
活用する予定はない
18.70
この調査は匿名だが、
回答を差し控える
1.26
わからない
1.47
3. いわゆる ビッグデータ(データソースとデータ量の大幅な増加)
は、
過去3年間で所属企業のビジネス手法に
変化をもたらしましたか?
(回答者の割合:%)
既存製品・サービスから新たな収益を得た
28.57
製品・サービスに新たなイノベーションをもたらした
データ収益化のために新規事業分野・事業部門を立ち上げた
新たなビジネスモデル・ビジネス戦略を策定した
新たなビジネスプラクティス・プロセスを導入した
27.10
24.37
26.68
28.57
新たな業界・市場に参入した
28.99
新たなテクノロジーを利用している
43.07
他社と新たなパートナーシップを結んだ
27.31
その他(具体的にお答えください)
0
データの増加は、
所属企業のビジネスに大きな変化をもたらしていない
7.98
わからない
18
8.61
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データ活用にみる新たな商機
4. 過去12ヶ月間、
所属企業は次の分野でデータ資産をどの程度効果的に管理しましたか?5段階で評価してください
各分野についてそれぞれ1つを選択
極めて効果的
(回答者の割合:%)
どちらともいえない
ある程度効果的
あまり効果的でない
データの収集・保管
全く効果的でない
49.16
知識・ノウハウを得るためのデータ分析
34.87
50.84
データを活用したビジネス機会の模索
25.84
40.04
顧客データ利用に関する透明性の維持
24.15
34.03
7.14 1.68
28.90
46.01
従業員にデータへのアクセスを提供
わからない
12.66 5.06 2.53
11.97
16.31
26.05
9.11
25.42
8.19
7.98
1.06
9.32
5.46 3.57
データのセキュリティ確保
48.74
7.14
32.77
13.87
5.46
0.21
1.47 2.94
5. あなたの知る限り、所属企業と他社の間のデータフローとして最もあてはまる記述はどれですか?
(回答者の割合:%)
自社で収集したデータのみ利用する
(データの購入・販売・共有を他社と行っていない)
データの購入・販売・共有を他社と行っている
46.64
21.85
他社からデータを購入するが、
自社データの販売・共有はしない
26.68
他社へのデータ販売・共有はするが、
外部データは購入しない
0.63
データ販売を主要ビジネスとして行っている
0.42
全くデータを利用していない
0
わからない
3.78
6. 自社データからさらなる価値を生み出すため、所属企業が現在行っている
(あるいは行う予定の)取り組みは次のどれですか?
ビジネス面で最も大きな影響を及ぼすと考えられるものを選択してください
(回答者の割合:%)
より多くデータを収集
21.43
IT・テクノロジーへの投資拡大
35.92
データ主導ビジネスの経験を持つ人材の獲得
13.87
新たな製品・サービスの発売
17.02
データ収益化を担当する役員・マネージャーの任命
15.76
新たな事業部門の設立
17.65
ベンチャー企業へのシード出資・投資
7.77
規制当局・政府へのロビー活動
1.89
他社との提携
10.92
法的アドバイス・規制ガイダンスを受ける
11.55
その他(具体的にお答えください)
0
私の知る限り、所属企業は現在何も取り組みを行っていない
10.71
わからない
10.08
19
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
データ活用にみる新たな商機
7. 所属企業に関する次の記述にどの程度同意しますか?
各項目につき1つを選択してください
(回答者の割合:%)
強く同意する
ある程度同意する
どちらともいえない
既存製品・サービスの収益性向上のためにデータを活用している
あまり同意しない
全く同意しない
わからない
0.21
58.53
24.42
自社データから新製品・サービスを開発する新規事業には明確なビジネスチャンスがある
36.34
33.40
5.47
12.39
5.47
5.89
7.56
10.29
異業種他社と営利目的でデータを共有している
28.84
20.42
自社データに経済的価値を与えている
42.53
15.79
9.05
22.32
9.89
22.11 3.79
17.47 2.95
4.84
過去に収益源として自社データを活用する機会を逸したことがある
25.53
22.15
22.36
14.35
10.34
5.27
自社データの販売には明確なビジネスチャンスがある
25.42
25.42
16.81
8.40
14.71
9.24
8. 自社データの収益化に関して所属企業が直面している最大の課題は何ですか?
最もあてはまるものを2つ選択してください
(回答者の割合:%)
規制による制限のために収益化ができない
15.34
消費者のネガティブな反応を懸念している
13.24
経営チームにとって優先事項ではない
14.08
社内の各部署がデータを掌握している
13.87
自社データにはほとんど価値がない
2.31
他社とのデータ共有に関する社内共通の基準がない
12.39
自社の重要な知識・ノウハウが他社の手に渡ることを懸念している
25.21
情報流出やサイバー攻撃のリスクを増やしたくない
20.59
IT部門が強い抵抗感を示している
12.18
データ収益化の投資に必要なリソースが不足している
10.29
必要な専門知識や分析能力が不足している
11.34
明確なビジネスチャンスがない
11.13
課題は全くない
わからない
12.61
2.94
9. 所属企業に関する次の記述にどの程度同意しますか?
各項目につき1つ選択してください
(回答者の割合:%)
強く同意する
ある程度同意する
どちらともいえない
あまり同意しない
顧客データの使用に関する規制があるため、
ビジネス目標の達成に向けたデータの使用は困難だ
37.18
個人データの使用に関し、顧客は所属企業を信頼している
36.34
28.84
18.32
23.32
20
8.84
23.35
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
12.82
9.66
7.98
8.70 4.46 1.70
34.32
4.41
22.69
2.31
0.21
10.15 3.81
23.89
16.84
23.74
わからない
5.04
31.30
55.20
15.58
17.02
51.26
第三者
(機関)
と顧客データを共有したことはない
将来的に他社とのデータ共有を拡大する予定だ
28.78
61.95
顧客データの収集・保管・分析は細心の注意を払って行っている
過去12ヶ月間に規模の大きなデータ流出を経験した
全く同意しない
9.45
6.58
6.11
13.03
データ活用にみる新たな商機
10. 今後12ヶ月間に所属企業が営利目的でデータ共有を行う可能性が高いのは、
次のどのタイプの組織ですか?
あてはまるものを1つ選択
同業他社
28.57
異業種他社
11.55
ベンチャー企業・起業家
5.67
大手テクノロジー・プラットフォーム企業
7.98
既存サプライヤー
4.83
既存顧客
6.72
政府・政府関連機関
1.47
非営利団体
(例:NGO・慈善団体・学術機関)
1.47
その他(具体的にお答えください)
0
今後12ヶ月間にデータを共有する予定はない
27.31
わからない
4.41
あなたが拠点としている国をお答えください
(回答者の割合:%)
米国
23.11
日本
10.92
英国
10.29
オーストラリア
7.77
カナダ
7.77
インド
7.56
ドイツ
6.72
フランス
6.72
スペイン
6.30
アルゼンチン
5.25
アラブ首長国連邦
4.20
シンガポール
3.36
21
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データ活用にみる新たな商機
所属企業の主要事業分野をお答えください
最もあてはまるものを1つ選択
(回答者の割合:%)
農業・アグリビジネス
1.47
自動車
4.62
化学
4.62
建設・不動産
7.98
消費財
8.61
教育
0
エネルギー・天然資源
2.52
エンターテインメント・メディア・出版
5.46
金融サービス - 銀行
3.99
金融サービス - 保険
3.99
金融サービス - その他
1.26
政府・公共セクター
0.21
ヘルスケア・製薬・バイオテクノロジー
7.77
IT・テクノロジー
7.77
物流・流通
7.98
製造
6.51
専門的サービス
2.10
小売
6.51
電気通信
8.82
運輸・旅行・観光
7.77
拠点とする地域
(回答者の割合:%)
北米
147
西ヨーロッパ
143
アジア太平洋
141
ラテンアメリカ
25
中東
20
22
© The Economist Intelligence Unit Limited 2015
本報告書に記載された情報の正確を期すために、
あらゆる努力を行っていますが、ザ・エコノミスト・
インテリジェンス・ユニットは第三者が本報告書の
情報・見解・調査結果に依拠することによって生じる
損害に関して一切の責任を負わないものとします。
ロンドン
20 Cabot Square
London
E14 4QW
United Kingdom
Tel: (44.20) 7576 8000
Fax: (44.20) 7576 8500
E-mail: [email protected]
ニューヨーク
750 Third Avenue
5th Floor
New York, NY 10017, US
Tel: (1.212) 554 0600
Fax: (1.212) 586 0248
E-mail: [email protected]
香港
1301 Cityplaza Four
12 Taikoo Wan Road
Taikoo Shing
Hong Kong
Tel: (852) 2585 3888
Fax: (852) 2802 7638
E-mail: [email protected]
ジュネーブ
Rue de l’Athénée 32
1206 Geneva
Switzerland
Tel: (41) 22 566 2470
Fax: (41) 22 346 9347
E-mail: [email protected]
東京
〒100-0006
東京都千代田区有楽町1-7-1
有楽町電気ビルディング 北館15F
Tel: (03) 5223 8108
Fax: (03) 5223 8104
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