留学期間 2014年3月~2014年12月

ソウル留学―The Turning Point in My Life―
教育学部英語教育専修
川瀬
愛舞璃
1. はじめに
「異国で学ぶ」ということは、人生で最も大きな決断であったように思います。韓国には留学以前に
10回以上訪れたことはあったものの、
「旅」と「居住」は全く違うものであるし、20年間一度も家を
出たことがなかった私には全てが新しい環境でした。留学の第一の動機は、語学力の向上です。韓国語
は、大学入学後に初修外国語として学び始め、スピーチコンテストに出場したことで興味を一層深めま
した。より上達させるには、その地で学ぶことが最善の方法だと考え、韓国留学を決意しました。更に、
留学先で出会う人々との意思疎通や大学の講義を通して、英語も磨きたいという思いも非常に強く、
「韓
国語も英語も日常会話を難なくできる」ようになることを目標としました。以下では、漢陽大学語学院、
一般講義、ソウルでの生活について、経験し考えたことを記したいと思います。
2.漢陽大学語学院
「語学院」とは大学付属の施設で、留学生が韓国語を学びます。授業は、大学の授業と異なる4学期
制です。午前(9:00~13:00)と午後(14:00~18:00)クラスがあり、いずれかを
1日4時間受講します。私は1年間の滞在で4学期間学びましたが、初級2クラスから高級1クラスま
で進級することができました。振り返ってみれば、初めは片言の韓国語で、”네”
(はい)という一言で
さえ外国人だと気づかれたものですが、後期に大学で専門科目を韓国語で聴講したとき、はっとさせら
れることがありました。教授の専門的な話まで、ほぼ全て理解できるということに。最近では、韓国人
と話すと、韓国人みたいだと言ってもらえるほど韓国語が上達し、大変嬉しく思います。もちろん、未
だ実力不足を感じるものの、自信を持って韓国語で会話を楽しめるようになりました。
このような自信を持てたのは、漢陽大の語学院のおかげです。語学院は、私に多くの影響を与え、こ
こで学んで良かったと心から思います。まず、漢陽大の語学院は、1クラス15人以下という少人数体
制なので、きめ細やかな指導を受けられます。和気あいあいとした雰囲気で、色々な国の留学生と共に
楽しく学べるだけでなく、全員に発言の機会があることも、大きな魅力です。先生方は、いつも躍動的
で質の高い授業をして下さり、あらゆる質問に丁寧に答えて下さるので、積極的に学ぼうという意欲が
生じ、語学力を確実に伸ばすことができます。初めは「韓国語を韓国人の先生から韓国語で学ぶ」こと
に難しさを感じたものの、すぐに慣れることができました。語学力は、急に上がるなるものではな
く、”고생 끝에 낙이 온다”(苦は楽の種)というように成功するまでには苦労が付き物ですが、一生
懸命学べば必ず上達することでしょう。また、語学院には、多様なカリキュラムがあります。日々の授
業では、単語・文法説明、リスニング、スピーキング、リーディングの時間があり、ライティングは基
本的に宿題として課されるので、4技能を万遍なく伸ばすことができます。それから、教室外での活動
として、野外授業と文化授業があります。故宮や博物館等に行って韓国の文化を学んだり、郊外の村で
韓国の伝統的な生活を体験したり、様々な経験をするとともに、友人と親睦を深められる良い機会です。
そして、1学期中でもっとも面白いのは、級別行事です。3級の演劇大会では、
「不思議の国のアリス」
を題材に創作劇を演じました。リーダーに決まってから予選会までの2週間、台本作成、役決め、練習、
小道具・衣装作りなど、無我夢中で駆け抜けたように思います。意欲は人によって全く違い、複数人で
一つのものを創り上げることの難しさを実感したものの、本番では皆が精一杯演じてくれたお陰で、今
までで一番良いものとなりました。しかし、落選して大会には進めず、自らの力量不足に対して悔しさ
と、責任ある役割を務めただけに皆に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。ただ、チームメイトから感
謝の言葉をもらったことで達成感を抱くとともに、様々な国の仲間と外国語で一つの作品を創り上げた
こと、リーダーと主演という自分がいないと機能しない役割を務めさせてもらったこと、貴重な経験で
あり幸せでした。また、4級ではプレゼン大会に参加しました。グループプレゼンで、私がリーダーと
なり中心になって活動し、韓国の屋台グルメを題材として発表しました。キャンパス内で韓国人・外国
人各50人へのアンケートを含め精力的に活動し、ついに本選に進み、優勝できたことに感動しました。
また多くの人の前で韓国語の発表したことが、以後に大きな自信となりました。
3.漢陽大学での一般講義
1学期の間は慣れない環境であるし、語学院の韓国語の授業がどのようなものか分からなかったので、
語学院にのみ通っていましたが、9月からの2学期は、毎日午後に大学で一般講義を履修しました。日
本からの交換留学生は時間の余裕・語学力を考慮し、語学院のみ通う人が多いですが、大学の講義を受
けられるのは交換留学生の特権であるし、何より漢陽大学の在学生と一緒に授業を受けたく、語学院と
並行して聴講することにしました。
履修した科目は、
「英語言語学入門」
、
「英語プレゼンテーションスキル」
、
「英文学理解」
、
「世界英語」
、
「エッセイライティング2」、「英語発音演習」の6つであり、前者5つは英語、後者1つは韓国語で聴
講しました。各授業の長さは様々で、1コマ90分週2回の科目もあれば、1コマ2~3時間の科目も
あり、ほぼ毎日2コマずつ受けました。語学院の午前クラスが13:00に終わり、午後の1コマ目が
13:00~14:30で2コマ目が14:30~17:30という日もあり、周りの友達に驚かれる
ほど忙しい毎日でした。
大学の一般講義を履修し、多くのことが身につきました。第一に、外国語で専門科目を聴講すること。
日本では、教育学部の英語科といえども、英語で実施される科目はネイティブスピーカーの先生による
数少ない授業に限定されており、
「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」経験はほぼ皆無でした。その
ため、当初は緊張したし、大学の講義は日常会話と異なり専門用語が多いうえ、大量の資料を読むこと
も負担に感じました。しかし、慣れると不安が減り、忙しく四苦八苦しながらもプレゼン・レポート・
テストなど多くのことをこなし、納得のいく評価をもらい、自信を得られました。一方、韓国語で受け
た「発音演習」については、日本でも学習経験のある音声学に関連した内容であることも功を奏し、8
割程度理解できました。今まで、語学院の外で韓国語に触れる機会があまりなかったので、韓国人学生
の中で留学生一人という状況で、韓国語で授業を聞く経験は珍しいものでした。当時は韓国語が未だ中
級レベルでしたが、留学生向けではなく一般の専門科目を韓国語で受け、理解できる自分が不思議であ
ると同時に、日常会話も儘ならなかった渡航当初の自分を振り返りながら語学力の上達を実感するきっ
かけになりました。第二に、勤勉さ・英語力・表現力の点で、韓国人学生から多くの刺激を受けました。
まず、学生は皆一生懸命で、講義・課題など常に全力だという印象です。授業中に居眠りをする学生を
見たことがないのはもちろん、24時間利用可能な図書館はいつも学生であふれています。次に、英語
力に関しては、専攻問わず多くの学生は英語が堪能です。発音・イントネーションともにネイティブレ
ベルに近い学生もおり、専門科目でも教養科目でも大変驚きました。また、表現力については、疑問点
をその場で解決しようと積極的に発言したり、自らの考えを臆せず述べたりする姿勢が素晴らしかった
です。
「プレゼンスキル」では、予め準備して臨む3回のプレゼンの他に、即席もあったのですが、PPT
をすぐに作り完璧な英語で発表する学生たちに感銘を受けました。漢陽大学が名門大ということもあり、
レベルの高い環境で優秀な学生と共に学んだ1学期間、自分が大きく成長できたように思います。
4.ソウルでの生活
1年間の留学期間中、キャンパス内のInternational Houseに滞在しました。オンキャンパスとはいえ、
語学院・漢陽大駅や教育学部まで山のような急な坂・階段で15分かかります。数路線が交差する往十
里駅までも15分ほどですが、駅周辺は飲食店が立ち並ぶ街になっており、大型スーパーもあるため便
利です。寮では2人一部屋で、新大から一緒に渡航した方と同室でした。部屋にはトイレ・シャワーが
あり、収納場所も充実しており、特に不便なく寮生活を送れました。ただ、寮の規則で、食品の保存・
部屋での食事が禁じられており、時々抜き打ちでルームチェックがあるので、やや注意が必要です。ま
た、退寮後、授業終了及び帰国までの10日間は、初のホームステイを経験しました。
授業外では、友達と出かけたり、一人でソウル市内を食べ歩きしたりすることが多かったです。ソウ
ル市内は地下鉄での移動が便利で、キャンパス内に地下鉄の駅の出口があるうえ、ソウル一の繁華街で
ある明洞まで15~20分という好立地です。また、30分程度乗っても150円程度のため、経済的
にも助かります。初めは一人で動くことが多かったのですが、2学期に入ってから、寮や大学の講義や
語学院やサークルなどで出会った友達と食事や散策をする機会が増えました。アメリカ、コロンビア、
トーゴ、スウェーデン、スイス、ギリシャ、エチオピア、ドイツ、中国など、多様な国の友人一人ひと
りと語り合うのは本当に楽しいものでした。これまで、私は、友人付き合いを面倒なものだと思って避
ける傾向があり、日本にも「友達」と呼べる人が極わずかだったのですが、初めて「友達がいる」・「人
と過ごす」ことの幸せを実感することができました。友好的に接してくれる友人のおかげで、私も壁を
作らず気を楽にして付き合うことができ、自分自身が大きく変わったようです。多くの日本人学生は日
本人同士やアジアの人々の付き合いが多い印象を受けましたが、私は様々な国から来た友人を持てたこ
とが特別かつ自慢であり、彼らと過ごす中で多くのことを学びました。不思議なことに、日本人の友人
からは「日本人より外国人といるほうが楽しそう」と度々言われました。言葉の壁は多少あっても、他
国の友達と話すのは面白く、気質の違いから日本人と過ごすより窮屈に感じないこともあり、私には合
っているのかもしれません。彼らとは今でも、FBやSkype等で連絡を取り合っています。また、英語で会
話する友達が多かったため、英語を使うことに抵抗がなくなりました。
課外活動としては、サークルに加入しました。新学期には多くのサークルが新入生を募集しており、O
Tや新歓が催されます。私は、英会話サークルとHIVA(Hanyang International Volunteer Association)
の2つを見学し、後者に加入しました。HIVAは留学生を対象としたサークルのうちの一つであり、週1
回のLanguage Exchangeが留学生の主な活動です。韓国人学生が私たち留学生に韓国語の基本会話をレク
チャーしてくれます。その後、皆で夕食やお酒を楽しみながら、留学生や韓国人との交流を図れます。
時々、漢江沿いでのピクニックや遊園地などに行く企画もあり、自由に参加可能です。新学期には、韓
国では学科やサークル等で恒例のMT(Membership Training)に参加し、サークルのメンバーと郊外の民
宿に一泊しました。焼酎でのドリンキングゲームや民宿の環境など、戸惑う面もあるものの、韓国の大
学生の雰囲気を肌で感じることができるでしょう。
5.おわりに
ソウルでの1年間は、人生の中で最も輝いていた時間でした。韓国語・英語ともに、授業や友達との
交流を通して表現の幅が広がり、日常会話をできるレベルまで上達しました。しかし、語学力の向上よ
り、むしろ自らの視野・考え方の変化こそ、本留学における一番の収穫です。多様な国の友達に出会い、
優秀な彼らから多くの刺激をもらいました。留学以前は将来やりたいことが全く見えなかったのですが、
今回の留学で(1)韓国の大学院/大学に進学する(2)韓国語・英語を活かせる職に就く(3)海外
に住むという夢を持ちました。夢を叶えるよう、また更に成長してソウルで出会った人々と再会できる
よう、今やるべきことに全力投球したいと思います。留学は、自分の気持ち・行動次第で人生の転機に
なるでしょう。臆せず挑戦してください。Practice makes perfect!!
漢陽大学のキャンパス
チマチョゴリで撮影
食事の様子