通勤電車で読む文庫・新書

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本 のバイキング
通勤電車で読む 文庫・新書
よしだたかし
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ぼくは電車・バスで通勤している。1日2時間あまりを乗り物の中か駅のホームで過ご
す。本がなければ間が持たない。しかも池袋・新宿・渋谷と日本一混雑するところを通る
ので、電車の中はいつも満員である。だから本は小さくて軽い文庫か新書でなければなら
ない。いつも駅近くの本屋に立ち寄りかなり無計画に本を買う。最後まで読み通す本もあ
るが、途中で放り出すことのほうが多い。文庫・新書に関してはどんな本をどのくらい買
いどのくらい読んでいるのか意識したことがない。いい機会なので、1ヶ月間買った本の
記録をつけて見ることにした。11月1日から末日までに買った文庫・新書である。
太字の部分は順に、著者『書名』出版社またはシリーズ名 出版年(01-11は2000年刊で
出版月、その他は出版年を西暦であらわす) 税抜き価格 読み方(精読、斜め読み、拾い読
み 途中まで、眺め読み、積ん読、辞書がわり) おすすめ度(☆ひまなら読もう ☆☆
なるべく読もう ☆☆☆ぜひ読もう)
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波多野裕造『物語アイルランドの歴史』中公新書 95 880 拾 ☆ 「ロンドンデリーの歌」
などアイルランド民謡の背景を知るたに買った本。とても遠くて近い国。歴史と現状を大
急ぎで知るには最適。武田邦彦『リサイクル幻想』文春新書 10 660 精 ☆☆☆ 循環型社
会の矛盾がよくわかる。木からできる紙を再生するために有限の資源である石油を消費す
るのはどう考えてもおかしいと思っていたが、その理由がわかった。環境教育には必携の
本である。柳美里『私語辞典』角川文庫 10 457 斜 ☆『命』を読んですっかり柳美里さ
んのファンになった。言葉からの連想をつづったエッセイ集でめちゃおもしろい。高校の
国語の教材に・・無理か! 苧坂良二・編著『新訂環境音楽』大日本図書現代心理学ブッ
クス 92 835 買ってしばらく読んで気がついた。帰って本棚を見たら同じ本があった。内
容はとても常識的なことだが、それを心理学や生理学の立場から検証しているところに意
味がある。二宮清純『最強のプロ野球論』講談社現代新書 06 680 途 スポーツ紙で活躍
中の著者。この人の評論は結構いけるので買ったのだが、本になると最後まで読むのはち
ょっと苦しい。野球ものでは故山際淳司(角川から文庫でたくさん出ている)を越えるも
のにお目にかかったことがない。藤岡信勝『「自虐史観」の病理』文春文庫 10 514 積
藤岡さんの著書も文庫になった。玉木正之『スポーツとは何か』講談社現代新書 08 660
斜 ☆ 明快なスポーツ論である。スポーツを「音楽」と読み替えると、音楽教育論になる。
音楽教育関係者に読んでほしい本だ 小浜逸郎『なぜ人を殺してはいけないのか』洋泉社
新書y 07 680 精 ☆☆☆ 話題の本だが読み落としていた。<朝生>で話題になった茶化し
の議論を一蹴する。なぜか小浜さんが熱くなっている。賛否は別にしても読んでおくべき
一冊。山登義明『テレビ制作入門』平凡社新書 720 06 拾 ☆ NHKのばりばりのプロデ
ューサによる番組制作のノウハウ。メディア・リテラシーの授業をする人は必読。斎藤孝
『子どもたちはなぜキレるのか』ちくま新書 99 660 精 ☆☆ 買おう買おうと思い落とし
ていた本。伝統的な身体文化を継承することの意義を説く。ただし根拠にイマイチ乏しい。
実践を組み立て実践によって根拠を示すしかないだろう。竹内均編『頭にやさしい理科系
雑学』同文新書 10 800 辞 ☆「脳みそに雑学なシワが1本入る」が売りのほやほやの同
文新書。入れ墨をした人の垢はどんな色?日常会話や教室でのネタになる。竹内均編『テ
レビの秘密、ファックスの謎』同文新書 10 800 辞 ☆ 自動改札はおとなと子どもの区別
ができるか? 杉本章子『英文Eメールの書き方』同文新書 10 800 辞 ☆☆ インターネ
ット時代必携。注文、問い合わせなど例文が出ているので、応用すれば英文メールがすぐ
かける。別冊宝島編集部・編『続・セックスはなぜ“快感”なのか!?』宝島社文庫 11 60
0 拾 8月に出た本の続編。シモネタ本ではない。<セックスへの好奇心を科学で追求する
>高尚な本なのだ。木幡寛『算数の好きな子どもを育てる』講談社現代新書 10 660 拾 著
者の木幡さんには10年以上も前に会ったことがある。ずいぶんおじさんになったなあ。
人のことは言えないか。諏訪邦夫『情報を捨てる技術』講談社ブルーバックス 10 800 斜
<捨てる>ことが流行だが、何と「情報も捨てよ」と言う。類書が10冊あったら9冊は
捨てよと。ぼくにはとてもできない。岳真也『吉良の言い分 上下』小学館文庫 11 各59
0 斜 忠臣蔵関係の小説は大好きだ。吉良に焦点を当てた真説というので期待したがつま
らなかった。高森朝雄/ちばてつや『あしたのジョー11 12』講談社漫画文庫 11 各660 眺
☆ 言わずと知れた歴史的作品が文庫本で完結した。うーん凄い!五木寛之『他力』講談
社文庫 11 476 途 話題になっていた本が文庫になったが、つまらない。「青春の門」の
伊吹信介はどこへ行ってしまったのか? 柳美里 『仮面の国』新潮文庫 05 438 斜 ☆☆
サイン会妨害事件をきっかけに97年から98年にかけて雑誌に連載された社会時評であ
る。あの小林よしりんや西尾幹二さんをやりこめる。その観察力と想像力に驚かされる。
所収の「なぜ人を殺してはいけないのか」では前述の小浜さんとまったく同じを論を展開
しているが初出はこちらが先である。これを書いた時はまだ20代である。<言論>はもう
やめたそうだが惜しい。渡部信『折る紙の数学』講談社ブルーバックス 10 800 精 ☆☆
これは楽しい本である。正方形の紙を使って折るだけで、辺の1/nやn角形を自在につく
る。数学が面白くなる一冊である。三橋規宏『地球の限界とつきあう法』日経ビジネス新
書 11 648 斜 ☆ 新しく<日経ビジネス文庫>が出た。日経のイメージをうち破るやわらそ
うな題の本が多い。まとめて3冊買った。これは環境問題の入門本である。わかりやすい
本だが、これで問題が解決するとは思えない。虫が良すぎるような気もする。内田茂男『こ
れで納得!日本経済のしくみ』日経ビジネス新書 11 600 斜 ☆☆ ぼくの読書のモットー
は「宗教からポルノまで」である。ジャンルを問わないのが自慢だが、これまで何度も挑
戦して挫折したのが経済書である。ところがこの本だけは軽く最後まで読めてしまった。
経済のしくみが斜め読みですっと入ってくる。ビル・ゲイツ(大原訳)『思考スピードの経
営』日経ビジネス新書 11 952 途 ビル・ゲイツの本は前から読みたいと思っていたがこ
の本を読む力はぼくにはないことがわかった。少し情けない。吉村達也『「倫敦の霧笛」
殺人事件』角川文庫 08 438 斜 吉村達也は気に入っているミステリー作家の一人。藤田
英時『パソコン用語語源で納得!』ナツメ社 10 680 眺 ☆☆☆ 用語の本当の意味を知る
ことによってパソコンはますます身近なものになる。あのかじられたリンゴは<バイト>の
ダジャレだったんだ。パソコン利用者必携。別冊宝島編集部『仕事によく効くワード&エ
クセル』宝島社新書 10 700 眺 ☆ 今更ソフトのマニュアルでもないかも知れない。しか
し誰でもたいていは便利な使い方を知らないで損していることがある。たまにはマニュア
ルにかえることも必要である。ただあまりに分厚いものを読んでもしかたがない。新書程
度がちょうどよい。飯田陽一『個人と国家−なぜ立憲主義か』集英社新書 11 680 ☆☆
このところ少し分が悪い護憲派。しかし今の改憲論は少し粗雑すぎないだろうか。改憲論
の底の浅さをわかりやすくついている。渡辺信一郎『江戸のバレ句 戀の色直し』集英社
新書 09 680 拾 ☆ バレ句とはなんぞや?面白すぎて電車の中で声を立てて笑い変な目で
みられてしまった。小沼純一『サウンド・エシックス・これからの「音楽文化論」入門』
平凡社新書 11 760 斜 ☆☆☆ 11月最後に買った本。メディアによって、また聴き手に
よって音楽も変化する。伝統的な西洋近代芸術観からの脱却を試みる。音楽教育関係者必
読!
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というわけで、いつもは半分くらいは小説になるのだが、この欄を書くことを意識したせ
いか比率がいつもと違ってしまった。全部で32冊、文庫と新書で総額21,558円で
ある。他のものを合わせると、この2倍くらいがひと月の図書費の総額か。最近本代が増
えたような気もする。しかし、以前はセブンスター(1箱250円)1日2箱、月15,
000円使っていたのをすっぱりやめたから(131号のこの欄を参照)大丈夫だ。