11.2 2元系の組成自由エネルギー曲線と状態図

「固体物理の基礎」
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2006/4/18(21:17): 再々校
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2006/4/18(21:17): 再々校
i
まえがき
本書は固体材料の開発・研究に必要な知識となる,格子欠陥と状態図を習得する
ことを目的としている.そのために最低限必要な量子力学と熱統計力学を解説して
いる.ただ,固体物理や物理化学の一般的な教科書とは扱い方が違う.ひと言でい
えば,物理冶金学の教科書を踏襲したためである.
物理冶金学は学問としては完成してきたが,冶金という学科がなくなってしまっ
て,名目上はその学問を学ぶ学生がいなくなってしまった.ところが,固体材料の
開発という領域では,いまだに非常に大きな需要がある.著者は長年,材料工学科
で教育・研究に従事していたので,研究室の学生たちとは本書に書かれてある知識
は常識として,議論することができた.ところが,情報科学科へ移って来ると,基
礎物理の科目すら取っていない学生ばかり.そこで,材料開発の最前線でのトピッ
クスや,著者が専門とする計算材料学までを,高校の物理から一気につなぐ必要が
でてきた.その試行錯誤の結果が本書である.
第 1 章は受講生の興味を引くために,材料研究がなぜ大事で,そのために量子力
学,熱統計力学がどのように活かされているかを紹介している.第 2 章から第 5 章
までが量子力学,第 6 章から第 11 章までが熱統計力学である.また,付録に数式
処理ソフト Maple の簡単な使用法をまとめたあと,これを用いた演習問題の解答例
を載せている.
前半の第 2 章から第 5 章までは,固体物性の理論的予測としてもっとも精度が高
く,広く活用されている第一原理計算の原理を習得することを目的としている.ま
た,材料開発で基本となる格子欠陥,およびその欠陥エネルギーについて,どのよ
うな原理で計算できるかを原子間ポテンシャルを用いて紹介している.テキストお
よび演習問題をとおして,直観的で手軽な原子間ポテンシャルと,精度の高い第一
原理計算とが同じ原理・手法で考えられることが理解されよう.
後半の第 6 章から第 11 章までは物質の熱的振る舞いを記述する熱統計力学を紹介
している.量子力学あるいはこれを用いた第一原理計算で求められる物理量は絶対
零度での値である.固体材料を利用する場合,あるいは作製プロセスにおいては高
温の振る舞いを知る必要がある.そこで固体の巨視的な熱力学的記述を導入した.
この巨視的な振る舞いと,微視的な振る舞いを結びつけるボルツマンの関係を導き,
原子の集団としての記述法を示した.さらに熱振動と配置のエントロピーを導いた
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ii
まえがき
あと,状態図について詳しく解説している.
本書は,材料開発に必要となる重要かつ基本的なことだけを,
「はしょっ」て導入
することを目的としている.したがって,記述は厳密ではないが,式の導出,図表
の描画は自分の手でできるように配慮した.複雑な式の導出,描画には,このよう
な操作に優れた数式処理ソフト Maple を導入している.従来よりこのような作業は
紙と鉛筆,あるいは Fortran などによる数値計算で行われてきた.これは,非常に
手間がかかる作業であり,初学者の学修を妨げていた.しかし,実際に数式を変形
し,数値を入れてプロットすることは,基本的な原理を習得する際に不可欠である.
Maple はこのような作業を軽くこなしてくれる.また,Maple は C 言語や BASIC
などと非常によく似ているので習得には時間がかからないはずである.
本書は,多くの先輩・同僚から受けた研究室での指導・議論の集大成である.材
料研究をすり込んでいただいた新宮秀夫,山口正治,足立裕彦名誉教授をはじめと
する京都大学材料工学科の諸先輩ならびに同僚に感謝している.また,理論物理学
の手ほどきをいただいたオックスフォード大学 David G. Pettifor 教授,岐阜大学
青木正人助教授に心から感謝の意を表す.本書の出版にあたり,森北出版の各位,
特に石井智也氏に多大なる努力をしていただいた.厚く御礼を申し上げる.
2006 年 4 月 治代と俊と三田にて.
数学者であった祖父児玉鹿三との数学の思い出とともに.
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iii
目
次
第 1 章 ニューマテリアルデザイン入門
1.1 材料研究をとりまく環境 ............................................................
1.2 原子間結合の起源 (量子力学) ......................................................
1
1
3
1.3 有限温度のシミュレーション (熱統計力学) .................................... 8
1.4 マルチスケールシミュレーション ............................................... 10
第 2 章 Schrödinger 方程式
12
2.1 前期量子論 ............................................................................. 12
2.2 量子効果 ................................................................................ 17
演習問題 ....................................................................................... 21
第 3 章 2 原子分子の化学結合
24
3.1 2 原子分子の Schrödinger 方程式の解 .......................................... 24
3.2 等核 2 原子分子 ....................................................................... 27
3.3 異核 2 原子分子と電気陰性度 ..................................................... 30
演習問題 .......................................................................................
第 4 章 完全結晶と原子間ポテンシャル
32
33
4.1 固体のバンド構造 .................................................................... 33
4.2 原子間ポテンシャルの理論的バックグラウンド ............................. 39
演習問題 ....................................................................................... 46
第 5 章 固体材料のミクロ構造と欠陥エネルギー
48
5.1 表面エネルギー ....................................................................... 48
5.2 固体材料の欠陥構造 ................................................................. 49
5.3 空孔生成エネルギー ................................................................. 52
5.4 不飽和結合 ............................................................................. 54
演習問題 ....................................................................................... 56
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iv
目
次
第 6 章 熱力学の基礎 − Carnot サイクル−
59
6.1 系と状態量 ............................................................................. 59
6.2 第 0 法則:平衡状態と温度 ........................................................ 62
6.3 第 1 法則:エネルギー保存 ........................................................ 63
6.4 第 2 法則:エントロピーと Carnot サイクル ................................. 63
6.5 いくつかの熱力学的に重要な関係式の導出 ................................... 68
演習問題 ....................................................................................... 72
第 7 章 統計力学へ入る前に −配位空間と確率の基礎−
75
7.1 位相空間 ................................................................................ 75
7.2 巡回セールスマン問題の配位空間 ............................................... 76
7.3 分布と統計 ............................................................................. 78
7.4 状態数 ................................................................................... 81
演習問題 ....................................................................................... 84
第 8 章 エントロピーと Gibbs の正準集団
85
8.1 Boltzmann のエントロピーと熱力学エントロピー ......................... 85
8.2 Gibbs の正準集団と熱物性 ........................................................ 88
演習問題 ....................................................................................... 95
第 9 章 相平衡/相転移
96
9.1 相平衡 ................................................................................... 96
9.2 相転移 ................................................................................. 101
9.3 核生成 .................................................................................
演習問題 .....................................................................................
第 10 章 平衡モンテカルロシミュレーション
10.1 モンテカルロ法のコンセプト .................................................
10.2 巡回セールスマン問題 ..........................................................
10.3 AB 合金 .............................................................................
10.4 平衡モンテカルロシミュレーションの原理 ...............................
演習問題 .....................................................................................
103
108
109
109
110
111
113
115
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目
第 11 章
次
2 元系状態図
v
116
11.1 溶体モデル .........................................................................
11.2 2 元系の組成自由エネルギー曲線と状態図 ................................
116
演習問題 .....................................................................................
125
付録 数式処理ソフト Maple の簡単な使用法
A.1 起動とインターフェース ........................................................
127
A.2 簡単なコマンド ....................................................................
A.3 数式処理 .............................................................................
A.4 プログラミング ....................................................................
130
120
128
135
137
演習問題解答例
142
索
175
引
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vi
単位に関するノート
本書で主に用いたエネルギーと長さの単位は,それぞれ eV (= 1.60218×10−19 J)
とÅ (= 0.1 nm = 1 × 10−8 cm) である.Ry (リュードベリ),a.u. (原子単位)
には,以下の関係を用いて換算できる.
1 Ry = 13.60583 eV
1 a.u. = 0.529177 Å
また,物理定数は
Boltzmann 定数
kB = 1.380658 × 10−23 J/K = 8.617 × 10−5 eV/K
Planck 定数
h = 6.6260755 × 10−34 J · s = 4.136 × 10−15 eV · s
となる.また
Avogadro 数
NA = 6.0221367 × 1023 /mol
気体定数
R = 8.314510 J/mol · K
1 cal = 4.1855 J などを使えば,1 eV/原子 = 2.306 × 104 cal/mol や,273.15
K においてのエネルギー kB T = 2.3538 × 10−2 eV などの関係が導かれる.
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1
第
1
章
ニューマテリアルデザイン
入門
試行錯誤が多い材料開発研究において,理論計算によって指針を得
ることは錬金術師以来の長年の夢であった.現代の高性能な物性が要
求される現実的な「物質・材料」の開発においては,広いスケールに
わたって複雑な系をシミュレートする必要がある.本書では,このよ
うなマルチスケールシミュレーションの基礎となる固体物性を理解す
るための量子力学と熱統計力学を詳述する.本章ではその大ざっぱな
枠組みを「Ti の状態図」をネタに紹介する.
1.1
材料研究をとりまく環境
構造材料は,強さを求めて石器,青銅器,鉄器と文明とともに徐々に進化してき
た.現代文明の特徴的な材料として機能材料の Si (シリコン) などの半導体がとり
あげられるが,Al (アルミニウム),Ti (チタン) などの軽い金属材料や,カーボン
ファイバー,セラミックスなども重要な材料として研究がさかんに続けられている.
たとえば,Ti 合金やニッケル,コバルト基超合金などが,ジェットエンジンや宇宙
ロケットで使われている.また,非常に軽くて強いマグネシウム合金が,ノート型
PC のフレームや外装材料の主流となっている.以下,近年もっとも注目を集めて
いる材料のひとつである Ti を対象としてみていく.
Ti 合金は,比重が小さく,強度が高く,耐熱性に優れており,人体適合性が高い
ため,よく目にする腕時計や眼鏡のフレームなどだけでなく,ジェットエンジンか
ら,人工骨,屋根,釜など広い用途に利用されている.Ti 合金をはじめとする金属
材料は,ロットのばらつきが少なく信頼性が高いのが特徴のひとつだが,過信する
と致命的な事故につながる.最近の有名な例としては H-II ロケット 8 号機の打ち
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2
第1章
ニューマテリアルデザイン入門
図 1.1 温度–圧力状態図.
上げ失敗がある.これは,第一段エンジン LE-7 の液体水素を送るタービンブレー
ドが一次破損箇所であったことが解明されている.設計どおりなら壊れないはずの
Ti-5Al-2.5Sn 製タービンブレードが,どうして破損したのかははっきりとはわかっ
ていない.部材の加工不良,異常なキャビテーション発生,異物の混入などが候補
にあがっている.わかっているのは,回収したタービンブレードには典型的な疲労
破壊の跡があり,その部材がまず吹き飛んでエンジン全体が壊れたことである∗1.
この例からもわかるとおり,より強く,より信頼できる構造材料の開発は,情報化
社会が進んだ現代においても,いまだに重要なニーズなのである.
金属材料に限らず,これら高度な材料を開発するうえで重要となるデータのひと
つが状態図 (あるいは相図) である.材料をマクロにみたときに,その物質がどのよ
うな状態にあるかを表す量を状態量とよぶ.なじみのある状態量は温度,圧力,体
積などである.図 1.1(a) はおなじみの水の圧力–温度図で,液体や気体状態の水の
存在範囲を示した “状態” 図になっている.Ti でもこれと同じ種類の状態図が描け
る (図 1.1(b)).Ti の場合は固体状態で 3 種類の異なった相が存在することが知られ
ている.図 1.2 に示した 3 種類の hcp 相 (α 相),bcc 相 (β 相),ω 相がとる原子の
配置を示した (4.1.1 項参照).材料研究では,このような状態図をもとに物質のある
温度での状態を求め,加工熱処理を施すことによって,いろいろな特性をもった材
料の開発を進めていく.
では,このような状態図はどのようにして求められるのか.ごく最近までは実験
だけしか頼るものがなかった.しかし,ここ 10 年ほどで,量子力学と熱統計力学
に基づいた計算によって状態図を描く道が開かれつつある.マクロな物性を支配す
∗1 http://shippai.jst.go.jp/
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1.2 原子間結合の起源 (量子力学)
3
図 1.2 hcp 相,bcc 相および ω 相の結晶構造.
る原子の集団的振る舞いを記述する熱力学は,19 世紀までにその基礎がほぼ確立し
ていた.一方,ミクロな原子・電子レベルの振る舞いは,20 世紀に入って量子力学
によってはじめて人類が理解できるようになった.本章では,ミクロな原子の振る
舞いからはじめて,マクロな熱力学の基礎へ向かって話を進めていく.
1.2
原子間結合の起源 (量子力学)
高校で,原子のまわりには電子が飛び回っているというモデルを習ったであろう.
あるいは,窒素原子が 2 個集まると,外側の電子が軌道を共有して共有結合をつく
るということも知っているであろう.このような電子の振る舞いを記述するのが量
子力学で,これを支配する方程式が Schrödinger (シュレディンガー) 方程式である.
この Schrödinger 方程式を精確に解いて,原子の種類だけから電子構造を求め,い
ろいろな物性を予測する計算を第一原理計算という.量子力学の計算は非常に高い
精度が要求される複雑なものである.まずは Schrödinger 方程式と簡単な問題の解
をみていこう.
1.2.1 Schrödinger 方程式
大砲の弾やボール,あるいは惑星のような物体が動くとき,その動きを記述する
には,
『位置と速度』がわかればいい.この物体は,よく知られた Newton (ニュー
トン) の運動方程式にしたがって,その時間的な動きの変化を追いかけることがで
きる.このよく知られた古典的な方程式では,電子や光子の動きが説明できないこ
とがわかってきた.20 世紀の初めに,電子は波でも粒子でもなく,両者の性質を兼
ね備えた “もの”(物質波) であることが明らかにされた.
では,この物質波の動きを記述する,古典力学の Newton の運動方程式に相当す
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4
第1章
ニューマテリアルデザイン入門
る方程式はどのような形をしているのか. エネルギー E をもって,1 次元で運動し
ている質量 m の粒子に対する,時間に依存しない Schrödinger(シュレディンガー)
方程式は,
−
2 d2
ψ(x) + V (x)ψ(x) = Eψ(x)
2m dx2
(1.1)
となる.ここで,V (x) は座標 x において,粒子が感じるポテンシャルエネルギー
である. は,Plank (プランク) 定数を h として = h/2π で与えられる.ψ(x) は
波動関数とよばれ,その 2 乗が粒子の存在確率を与える.Schrödinger 方程式につ
いては,第 2 章でくわしく説明する.
図 1.3 (a) 井戸型ポテンシャル V (x) と (b) 固有関数 ψ(x) および (c) その 2
乗 |ψ(x)|2 を示す模式図.それぞれのエネルギー準位に対応した高さに
記している.
では,ポテンシャル,波動関数,エネルギーにはどういう意味があるのであろう
か.ここでは,最も簡単な例である,図 1.3 (a) のような井戸型ポテンシャルに閉
じこめられた電子を考えよう.無限の高さをもった壁の底にある水の定在波,ある
いは両端を固定された弦の動きを考える.この場合のポテンシャルは
0 (0 ≤ x ≤ L)
V (x) =
∞ (その他)
(1.2)
で与えられる.したがって,式 (1.1) は
−
2 d2
ψ(x) = Eψ(x)
2m dx2
(1.3)
と簡単になる.この微分方程式の一般解は,A,B を定数として
ψ(x) = A sin kx + B cos kx
(1.4)
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1.2 原子間結合の起源 (量子力学)
5
で与えられる.この 2 次微分をとると
d2
ψ(x) = −Ak 2 sin kx − Bk2 cos kx
dx2
(1.5)
2 2
k =E
2m
(1.6)
となり,k は
より求められる.
両端が固定されているため,
ψ(0) = 0
より B = 0
ψ(L) = 0
より kL = nπ
(1.7)
となる.これらより,系がとり得るエネルギー En は,
En =
2 n2 π 2
h2
=
n2
2
2m L
8mL2
(1.8)
に制限される.古典的な系は,任意のエネルギーをとることができるが,量子的な
系は,ある決まったとびとびのエネルギーしかとることができない.これを系のエ
ネルギー準位という.図 1.3 (b),( c ) には,こうして得られた波動関数 ψ(x) とそ
2
の 2 乗 |ψ(x)| を,それぞれのエネルギー準位に対応した高さに示した.
第一原理計算では,Schrödinger 方程式 (1.1) に電子が感じるポテンシャルを入
れ,電子のエネルギー準位と波動関数とを計算する.これには,複雑で精密な数値
計算が必要となる.ここでは簡単な模型を用いて,原子間の相互作用の基本的な考
え方を化学結合的な視点からどのように理解できるかをみておこう.
1.2.2 ばねモデル
図 1.4 (a) の上段は,A,B 原子のまわりにある球対称のポテンシャルによって引
きつけられた電子の軌道 (ψA ,ψB ) を示す.また,図 (b) にそれぞれの電子エネル
ギー準位 (EA ,EB ) を示す.この 2 原子どうしを近づけてくると電子の波動関数は
重なり合い,あらたな軌道 (図 (a) 下段) とそれに対応した準位を作る.これを結合
準位 E + と反結合準位 E − とよぶ.電子がそれぞれ 1 個しかない場合には,遠く離
れた自由原子でのエネルギー準位と,近づくにつれて下がってくる結合軌道のエネ
ルギー準位との差が,分子の原子間の結合力となる.このエネルギーの変化を模式
的に記したのが図 1.4 (c) である. 2 原子が十分離れた距離でのエネルギーを基準
としてゼロとすると,2 原子を近づけてくると結合準位の低下にともなってある距
離までエネルギーは下がってくる.近づきすぎると電子どうしが重なり反発する力
が強くなり,エネルギーは急激に上昇する.
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6
第1章
ニューマテリアルデザイン入門
図 1.4 2 原子分子の (a) 波動関数,(b) エネルギー準位,
(c) 相互作用エネルギーの距離依存性.
固体でも,2 原子分子と同様の相互作用エネルギーの距離依存性がある.エネル
ギーがもっとも低い距離を平衡原子間距離,エネルギー値を凝集エネルギーとよぶ.
また,この結合エネルギー曲線の 2 次微分 (曲率) から固体の固さが求まる.この近
傍の曲率は,ほぼ 2 次曲線で近似できる.このような事実から,もっとも単純な固
体のモデルとして図 1.5 に示したばねモデルが得られる.
図 1.5 固体の原子のばねモデル.
金属やセラミックスなどの固体は,共有結合的な分子の結合とは本質的に違うは
ずだと主張する賢明な読者もいるだろう.金属は不飽和な共有結合と考えることが
できる.一方,セラミックスでは確かに共有結合ではなく,それぞれの原子位置で
の電子数の変化に起因するイオン結合が結合を担っている.その場合でも平衡原子
位置の近くでのポテンシャルエネルギーは 2 次曲線で近似でき,直観的なバネモデ
ルはそれほど悪い近似ではない.精密な電子構造計算ではどのような結果が得られ
るかを,Ti の場合を例に平衡位置のまわりでのエネルギー変化の様子をみてみよう.
1.2.3 Ti の第一原理計算
Schrödinger 方程式のポテンシャル V ,波動関数 ψ を忠実に計算することによっ
て全系のエネルギーを精確に求めることが可能となる.図 1.6 (a) は実際に精度の高
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1.2 原子間結合の起源 (量子力学)
7
い電子構造計算プログラムを用いて求めた Ti の bcc 相,hcp 相,ω 相のエネルギー
の体積依存性である.先ほど図 1.2 に示した結晶構造を組み立てて,格子を等方的
に収縮・膨張させ,それぞれの体積でエネルギーを計算している.図 1.6(b) は,そ
の hcp 相の平衡位置の近傍を拡大した図である.hcp 相と ω 相の共存する圧力は図
の共通接線の傾きから P = −dE/dV で求まる.図 1.1(b) の Ti の状態図から予測
されるように,
• hcp 構造が最安定構造
• bcc 構造は hcp 構造よりエネルギーが高い
• 圧力を上げる (体積を下げる) と ω 相が安定となる
ということが読み取れる.しかし,Ti 状態図の特徴である bcc 構造が,高温で得ら
れることは,この図からは予測できない.電子構造計算だけからでは,高温での結
晶構造の安定性を予測することは困難である.
こういうと,電子構造計算は役立たずというように聞こえるが,そんなことは決
してない.基底状態とよばれる温度が 0 K の安定な構造や,力学的性質を予測する
ことができる.また,このような電子構造計算は,材料の特性を知るうえで重要な
格子欠陥の振る舞いを調べる強力な道具である.実際に,表面や界面の精密な電子
構造をもとに,電気,磁気,光学,および機械的物性における計算機材料設計がコ
ンピュータの飛躍的な能力向上によって,この 10 年で急速に実用化されている.
図 1.6 Ti の bcc 相,hcp 相,ω 相の結合エネルギーの体積依存性の第一原理計算.体積は hcp
相の実験値を 1.0 としている.
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48
第
5
章
固体材料のミクロ構造と
欠陥エネルギー
固体材料は欠陥のまったくない完全結晶として使われているわけで
はない.この章では,もっとも実感しやすい表面エネルギーを例に欠
陥エネルギーの物理的起源の理解を試みる.さらに,固体材料の粒構
造をはじめとする種々の欠陥エネルギーを概観する.また,点欠陥
の生成エネルギーを詳しく検討し,化学結合の不飽和によるエネル
ギー変化をみる.金属結合でよく使われる経験的ポテンシャルである
EAM の有効性が,この不飽和結合の適切な記述に由来することが理
解されよう.
5.1
表面エネルギー
水滴が丸くなろうとする性質は表面張力によることは周知であろう.固体におい
ても表面が存在し,そのため表面張力が存在する.鉱物が複雑な形状をしているの
もこの表面張力が原因である.水の表面張力が等方的であるのに対して,結晶では
表に出ている面の方向によって,その強さが違うために複雑な形状をとる.では,
この表面張力の起源はどのようなものであろうか.
3 章でみたとおり,孤立した N や O などの原子は 2 原子分子になるとエネルギー
ポテンシャルを下げ,安定となる.これと同様に固体をつくる原子は固体の環境を
好んでいる.これが凝集エネルギー (cohesive energy) の起源である.凝集エネル
ギーとは,固体状態にある構成原子を互いに無限に離して相互作用のない孤立原子
にするのに必要なエネルギーであり,正の値をとる.負の値をとる結合エネルギー
の絶対値に等しい.
ところが表面では図 5.1 に示すとおり原子のまわりの原子の数 (配位数) が減っ
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5.2 固体材料の欠陥構造
49
図 5.1 表面エネルギーを理解するための模式図.
ている.その分だけ不安定となりエネルギーが上がっている.したがって,原子集
団はできるだけ表面に出ている原子数を減らそうとする.その強さが表面エネル
ギーあるいは表面張力となる (演習問題 5-1 参照).
この余った手を,共有結合的な Si などではダングリングボンド (dangling bond)
とよんでいる.有機分子の直鎖にでてくる不飽和結合 (unsaturated bond) と同じ
状態である.不飽和結合は 5.4 節でもう少しくわしく検討する.
5.2
固体材料の欠陥構造
表面以外にも結晶は一般的に多くの種類の欠陥を含んでいる.固体の欠陥の中で
もっとも実感しやすい粒界の存在を,光の透過率から示す.また,その他の重要な
欠陥構造について,簡単に紹介しておく.
5.2.1 結晶の粒構造
一般的な材料は単結晶ではなく,図 5.2 にあるように細かな単結晶がランダムに
くっついたような状態である.この細かな単結晶の区画を粒 (grain),その境目を
図 5.2 粒,粒界,結晶方位の模式図.
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50
第5章
固体材料のミクロ構造と欠陥エネルギー
粒界 (grain boundary) とよぶ.また,粒の向いている方向を結晶方位 (orientation)
とよぶ.
5.2.2 粒界での光の散乱
誘電体の単結晶 (宝石) は一般に透明である.これは前章で示したように,バン
ドギャップが大きく開いており,入射した光と固体中の電子が相互作用せずにその
まま透過するためである.ところが同じ誘電体でできているセトモノはどうであろ
うか.単一の化合物でつくったセラミックスでも不透明である.この不透明の原因
は粒界での散乱にある.一方,単結晶でなくとも,粒界をなくしたガラスではまた
透明になる.透明なガラスも粉々にして表面をつくるとまた不透明になる.金属で
は,ギャップがないために入射する光と電子が完全に共鳴するため,全反射し,金
属特有の光沢を示す.金属では,粒界があるかないかは見た目ではわからないが,
表面を磨いたあと,少量腐食させて光学顕微鏡で覗くと粒界がみえる.
5.2.3 点欠陥
これまでは表面や界面などの面状の欠陥をみた.これ以外にも点状,線状の欠陥
が存在する.点状の欠陥には,原子が存在しない原子空孔 (vacancy) や,違う種類
の原子が存在する固溶原子 (solute atom) などがある.これらについては本章をは
じめ,以降の章で繰り返し扱うことになる.
5.2.4 転位と変形
線状の欠陥は転位 (dislocation) とよばれ,材料の変形をつかさどる重要な欠陥で
ある.これについては本書ではくわしくは触れないので最低限の知識を添えておく.
結晶に力を加えて変形すると,結晶はそれに応えて同等の力を返す.これを変形
応力 (stress) という.加えた変形量「ひずみ」(strain) に対する応力は,図 5.3 (a) の
図 5.3 応力–ひずみ曲線と弾性変形,塑性変形の模式図.
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5.2 固体材料の欠陥構造
51
ような応力–ひずみ曲線 (stress-strain curve) を示す.ひずみが小さい直線的に応答
する領域を弾性 (elastic) 変形域,それ以上の変形を加えた領域を塑性 (plastic) 変形
域とよぶ.その限界を,降伏応力 (yield stress) あるいは降伏強度 (yield strength)
とよぶ.
それぞれの領域での固体内部の様子を模式的に示したものが,図 5.3(b) である.
弾性域では変形は格子の相対的な配置はそのままであるので,荷重を除けば元に戻
る.しかし,塑性域では,変形がズレによって起こるために,除荷重しても永久変
形がのこる.このズレをおこす原因が転位である.
図 5.4 に,刃状 (edge) 転位とらせん (screw) 転位の模式図を示した.転位はじゅ
うたんのしわにたとえられる.じゅうたんを動かそうとしたとき,一斉に引っ張る
とすべての面で抵抗を受ける.しかし,端のところにしわをつくって,そのしわを
徐々にずらしていくと,小さい力で動かすことができるという比喩である∗1 .実際
の金属材料の変形は転位変形がほとんどである.転位が導入しにくい誘電体では塑
性変形が困難であり,破壊 (fracture) が起こる.このような破壊しやすい材料の性
質を脆性 (brittle) とよび,容易に破壊しない材料の性質を延性 (ductile) とよぶ.表
面に面張力があるように,転位には線状の張力 (line tension) が存在する.
以上のような格子欠陥は機械的性質だけでなく,光・電気などの固体材料の物性
を大きく左右する.実際,材料開発の多くの研究は,欠陥をいかにコントロールす
るかにかかっている.計算機材料学でも,欠陥エネルギーを精確に求めることは大
きな課題のひとつである.
図 5.4 転位の模式図.(a) は刃状転位の原子レベルのモデル.(b),
(c) は刃状転位,らせん転位のじゅうたんモデル.
∗1 この転位の本質を突いたモデルは東田賢二氏 (現九大) から初めて紹介いただいた.転位につい
ての参考書には,次のようなものがある.高村仁一著,“材料強度の基礎”(京都大学学術出版会,
1999),加藤雅治著,“入門転位論”(裳華房,1999).
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52
第5章
5.3
固体材料のミクロ構造と欠陥エネルギー
空孔生成エネルギー
前章で示したとおり,金属の振る舞いのシミュレーションに多用される EAM ポ
テンシャルは,化学結合や電子バンドの描像の基礎的な記述から導くことが可能で,
その表式は電子の振る舞いを取り入れている.では,EAM と単純な 2 体間ポテン
シャルとの違いは何であるか.その違いが端的に現れる 1 個の原子が完全結晶から
抜けた場合のエネルギー変化に相当する,単一空孔生成エネルギーをみてみよう.
金属の単一空孔の生成エネルギー Ev と凝集エネルギー Ecoh との関係を図 5.5 に示
した.構造によらず Ev = (3/8) ∼ (1/4)Ecoh のほぼ直線的な関係が得られている.
図 5.5 空孔形成エネルギー Ev と凝集エネルギー Ecoh との関係.
単一空孔の生成エネルギーを考えるには,図 5.6 のようなモデルで考える必要が
ある.単一空孔は 1 個の原子を抜きだして,それを完全結晶の中に埋め込むエネル
ギーに対応する.古い教科書では取り去った原子を表面に着けるとしたものがある
が,これはまちがいである.表面に着けるとその下の原子が完全結晶になる.した
がって,取り去った原子を完全結晶の中にもう一度埋め戻してエネルギー差を計算
するのが正しい.この操作の前後で抜き出された原子の環境は変わらない.した
図 5.6 空孔形成のモデル.
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5.3 空孔生成エネルギー
53
がって,抜き出されたサイトのまわりの原子がどういう変化を受けたかを計算すれ
ばよい.
今,簡単のために最近接原子数 (配位数) z のみに依存するポテンシャル E(z) を
仮定する.そうすると単一空孔の生成エネルギーは
Ev = Efinal − Einitial = zE(z − 1) − zE(z)
(5.1)
で得られる.
Lennard-Jones ポテンシャルや Morse ポテンシャルなどの 2 体間ポテンシャルの
場合は,ひとつのボンドあたりの相互作用を ψ0 とすると,
E(z) = −Ecoh = zψ0
(5.2)
であるから,式 (5.1) に代入すると
Ev = z(z − 1)ψ0 − z(z)ψ0 = −zψ0 = Ecoh
(5.3)
となり,凝集エネルギーに等しいというよく知られた間違った答えが得られる.古
い教科書に書いてある「表面に着ける」とした間違った操作は,この 2 体間ポテン
シャルでもうまく計算が合うように試みた錯誤の結果である.
では,EAM ポテンシャルではどうなるであろうか.EAM の場合も計算の仕方は
同じで,式 (5.2) に対応するポテンシャルは
E(z) = zψ0 −
√
z |h0 |
となる.これを式 (5.3) と同様にして,式 (5.1) に代入すると
√
√
Ev = z (z − 1)ψ0 − z − 1 |h0 | − z zψ0 − z |h0 |
(5.4)
(5.5)
となる.ここで相互作用に単純な exp 関数を仮定して,その距離依存性を表す無次
d ln(h)
を p,q とする.つまり,
元対数微分 L = −
dr

ψ(r) = A exp(−pr) 
(5.6)

h(r) = B exp(−qr)
と仮定する.凝集エネルギー Ecoh と平衡原子間距離 r0 にフィッティングすると,

p√

h0 =
zψ0

q
(5.7)
−Ecoh


ψ0 =
(1 − p/q)z
となる.ここで下付きの 0 は平衡位置での値を意味している.少しの変形で
Ev =
2 − p/q Ecoh
1 − p/q 2
(5.8)
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54
第5章
固体材料のミクロ構造と欠陥エネルギー
となる (演習問題 5-3 参照).金属でよく用いられている p/q = 3 ∼ 5 を用いると前
述の正しい関係 Ev = (3/8) ∼ (1/4)Ecoh が得られる∗2 .
5.4
不飽和結合
5.4.1 結合数の不飽和
このように正しい関係が得られた背景は,以下のように理解されている.金属結
合では,電子が結合間で共有されているという描像が描ける.空孔のまわりで結合
がひとつ減ったとしても電子は空孔と反対の後ろの結合側に流れ,その結合を強化
する.これはバックボンド強化 (back bond strengthening) とよばれている (図 5.7
√
(a) 参照).この変化を EAM では z の依存性として表現している.つまり,結合
が完全結晶の配位数 z0 から空孔のまわりのようにひとつ減ったとしても,2 体間ポ
√
テンシャルのように線形にそのエネルギーが減少するのではなく, z で減少する
(図 5.7 (b) 参照).このようにして Ev と Ecoh の正しい関係が導かれる.このよう
なバックボンドの強化機構は界面や表面でも同様に起こっていると考えられる.
図 5.7 バックボンド強化の概念図とエネルギーの
√
z 依存性.
5.4.2 電子構造の不飽和
このように,結合が本来もっている結合力よりも弱くなるという状況は,不飽和
(unsaturation) 結合とよばれる.これは,有機高分子で C–C 間の二重結合などで
飽和度が下がるのと同じである.結合の手が飽和していないときだけでなく,電子
数が飽和してないという状況もある.これは図 3.3 で示した 2 原子分子の N2 以外
の元素の場合で,結合準位が詰まりきらない,あるいは反結合準位に電子が一部占
有している状況である.このような状況では,電子構造がもっている最大のエネル
ギーを得ることができない,不飽和な結合である.
∗2 G. Allan and M. Lannoo, J. Phys. Chem. Solids, 37(1976), 699.
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116
第
11
章
2 元系状態図
本章では A,B という 2 種類の元素で構成される 2 元系の状態図の
求め方をみていく.状態図はある組成,温度において,二つの相が混
ざっているのか,原子が溶け込んでいるのかを示してくれる.統計力
学の数式や計算値だけからでは理解しづらい熱力学的物理量 (特に自
由エネルギー) が,状態図を通して視覚的に理解できる.
11.1
溶体モデル
ひとつの相の中にほかの原子が溶解して均一になっているものを溶体 (solution),
特に固体の溶体を固溶体 (solid solution) とよぶ.純物質状態では温度・圧力が定ま
れば,自由エネルギーはある値をとる.溶体で原子が混合した状態では,自由エネル
ギーは組成に依存した曲線となる.溶体の自由エネルギーのモデルとして,もっと
も簡単な単純平均の偏析極限からはじめて,混合のエントロピーを取り入れた理想
溶体近似,混合のエンタルピーを取り入れた正則溶体近似について順にみていこう.
11.1.1 偏析極限
自由エネルギーはもともと示量変数であるが,モルあたりの示強変数にかえて
議論することが通常行われる.多元系でのモルあたりの自由エネルギー G は,式
(9.11) で粒子数 Ni にかわって,組成 xi が使われて,
G=
µi xi
(11.1)
i
となる.以降の議論では,記号として G を区別していないが,モルあたりの自由エ
ネルギーを念頭に置いている.
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11.1 溶体モデル
117
単相 A,B の自由エネルギーを G0A ,G0B としよう.A,B 原子が混合して 1 mol
の溶体をつくるとする.A,B 原子の組成を xA ,xB とすると,自由エネルギーが
この 2 点を結んだ直線のとき,すなわち
G0 = xA G0A + xB G0B
(11.2)
は,2 相が完全に分離した状態とみなせる.このような状態は偏析極限 (segregation
limit) とよばれる.自由エネルギー変化はここからのズレで測られる.
11.1.2 理想溶体
次に A,B 原子があらかじめ決まった格子位置にランダムに配置された場合のエ
ントロピー変化を求めよう.これは状態数を数える 7.4 節での取り扱いのとおりで,
N 個のサイトに,A,B 原子 NA ,NB 個を配置する場合の数は,
W =
N!
NA !NB !
(11.3)
で与えられる.Stirling (スターリング) の公式 (ln N ! N ln N − N ) を使って,
ln W = (N ln N − N ) − (NA ln NA − NA ) − (NB ln NB − NB )
= (NA + NB ) ln N − NA ln NA − NB ln NB
(11.4)
となる.ここで N = NA + NB とした.各組成は xA = NA /N ,xB = NB /N であ
るので,Boltzmann のエントロピーの関係を使って,
∆S = kB ln W = −R(xA ln xA + xB ln xB )
(11.5)
が得られる.ここで,N は 1 mol の格子数であるので Avogadro 数に等しく,
R = kB N で定義される気体定数を用いている.この項だけを取り入れた混合によ
る自由エネルギー変化 ∆G は
0
∆G = Gideal
AB − G = −T ∆S = RT (xA ln xA + xB ln xB )
(11.6)
となり,このようなモデルを理想溶体 (ideal solution) 近似という.この自由エネル
ギー曲線の組成依存性 Gideal
AB は図 11.1(a) に示したように,直線で表される偏析極
限の G0 と下に凸のエントロピー項 −T ∆S との和で表される.
11.1.3 正則溶体
次に,溶体の混合によるエンタルピー変化 ∆H を求めよう.液体や固体などの凝
集相では圧力項 (P V ) はエネルギー項 (E) にくらべて小さいので,H = P V +E E
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118
第 11 章
2 元系状態図
図 11.1 理想溶体近似と正則溶体近似の組成–自由エネルギー図.
と考えてよい.相互作用エネルギーが,もっとも単純な最近接原子対で決まると考
える.すなわち A–A,B–B,A–B のそれぞれのボンドの種類で決定されるとする.
混合後のエネルギーは,i–j のボンドの数を Nij ,ボンドのエネルギーを eij とす
ると
EAB = NAA eAA + NBB eBB + NAB eAB
(11.7)
で表される.z を格子点に隣接する格子点の数,配位数 (coordination number) と
すると,A 原子のまわりに B 原子が配位する確率は zxB である.A 原子は全体で
N xA であるから,NAB は N zxA xB となる.A–A および B–B ボンドの数はそれぞ
れ NAA = (1/2)N zxA 2 ,NBB = (1/2)N zxB 2 で与えられる.ここで 1/2 は,おの
おののボンドを二度数えているからである.これらを上式に代入すると,
1
1
N zxA 2 eAA + N zxB 2 eBB + N zxA xB eAB
2
2
1
1
= N zxA (1 − xB )eAA + N zxB (1 − xA )eBB + N zxA xB eAB
2
2
1
1
eAA + eBB
= N zxA eAA + N zxB eBB + N zxA xB eAB −
2
2
2
EAB =
(11.8)
となる.最初の 2 項は偏析極限のエネルギーと等しいので,混合によるエンタル
ピー変化は
eAA + eBB
∆H = N z eAB −
xA xB = Ω xA xB
2
(11.9)
で求まる.この Ω は相互作用パラメータ (interaction parameter) といい,式 (10.5)
と一致する.先ほど求めた,理想溶体の混合のエンタルピー変化を合わせて,混合
の自由エネルギーは
Gm = xA G0A + xB G0B + Ω xA xB + RT (xA ln xA + xB ln xB )
(11.10)
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11.1 溶体モデル
119
で与えられる.このような最近接原子対の結合エネルギーのみを考えたモデルを正
則溶体 (regular solution) 近似という.
相互作用パラメータは混合が起こりやすいか,起こりにくいかを決定する重要な
パラメータである.Ω < 0 では A–B ボンドの結合エネルギーは A–A ボンドと B–B
ボンドの平均の結合エネルギーより低く,エネルギー的に安定である.したがって,
A–B ボンドは引き寄せあって,できるだけ多くつくろうとする.一方,Ω > 0 で
は逆の状況となり,A–B ボンドは反発しあって,できるだけ分離する傾向がある.
Ω = 0 では混合のエンタルピー変化はゼロであり,理想溶体近似となる.Ω 値の違
いによる,正則溶体近似の組成–自由エネルギー曲線の振る舞いの違いを図 11.1 (b)
に示した.それぞれの原子配置の様子は図 10.2 のとおりである.
より厳密なモデルとしては,ここで用いたエントロピー・エンタルピーを点近似・
最近接相互作用でそれぞれ求める代わりに,4,8 面体などのクラスターで求めるク
ラスター変分法∗1 が知られている.
11.1.4 現実の溶体の過剰自由エネルギーと活量
実在の溶体の混合の自由エネルギーと理想溶体のそれとの差を過剰自由エネル
ギー (excess free energy) とよぶ.正則溶体でのそれは
ideal
∆GEX
= Ω xA xB
m = ∆Gm − ∆Gm
(11.11)
である.この場合には,過剰自由エネルギーは常に濃度に対して左右対称である.
現実には Ω が濃度に依存するとして Ω = Ω0 + Ω1 xB などにフィッティングさせる.
これを準正則溶体 (sub-regular solution) 近似という.
1 mol あたりの液体の自由エネルギーと化学ポテンシャルの関係は
GAB = xA µA + xB µB
(11.12)
である.たとえば,図 11.1(a) で x = 0.8 での A,B 成分の化学ポテンシャル µA ,
µB は,その点で引いた接線の x = 0 と x = 1 での切片に対応している.
理想溶体の A 元素の部分モル化学ポテンシャルは,
µA = G0A + RT ln xA
で与えられる.
∗1 毛利哲雄,菊池良一著,“クラスター変分法”,(森北出版,1997).
(11.13)
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120
第 11 章
2 元系状態図
現実の化学ポテンシャルは理想溶体からのズレを考えて
µA = G0A + RT ln aA
= G0A + RT ln γA xA
(11.14)
と書ける.aA を活量 (activity),γA を活量係数 (activity coefficient) とよぶ.活量
は上の二つの式の対応からわかるとおり,一種の “実効” モル分率である.
図 11.2 に正則溶体モデルの場合の活量の組成依存性を示した.活量係数は活量と
対角線 (つまり組成) との比に対応する.図 (b) 中の破線領域は 2 相共存領域に対応
し,そこでの実際の活量は一定値をとる.
図 11.2 活量の組成依存性.図 11.1 (b) の正則溶体モデルに対応して,
(a) Ω < 0,(b) Ω > 0.(b) 中の破線は非平衡領域での活量.
理想溶体では活量係数は 1 である.過剰自由エネルギーは活量係数を用いて,
∆GEX
m = RT (xA ln γA + xB ln γB )
(11.15)
と書き表される.
11.2 2 元系の組成自由エネルギー曲線と状態図
11.2.1 全率固溶型
前節までで,2 元系の固相,あるいは液相の溶体の自由エネルギーが一定温度で
どのような組成依存性をとるかをみた.ここでは,液相と固相の 2 相が存在する領
域で温度によって組成自由エネルギー図がどのように変化し,2 元系の状態図がで
き上がるかをみていこう.単純化のために,固相も全組成で単一相となる全率固溶
体を仮定する.このような相から構成される状態図を全率固溶型とよぶ.
まず,純成分 A の自由エネルギー変化を考える.9.2.1 項あるいは 9.3.1 項で議論
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121
11.2 2 元系の組成自由エネルギー曲線と状態図
したように融点 TfA におけるエンタルピー変化は
∆HfA = TfA ∆SfA
(11.16)
と見積もられる.TfA 以下の温度では固相が安定であるが,その温度域まで液相の
自由エネルギーを外挿すると,固相・液相の化学ポテンシャルの差は
0S
µ0L
A − µA = ∆HfA − T ∆SfA
(11.17)
となる.今,固液 2 相の自由エネルギーの差の変化のみに興味があるので,固相の
自由エネルギーを基準に考える.つまり,µ0S
A (T ) = 0 とする.すると,
µ0L
A (T ) = ∆HfA − T ∆SfA
(11.18)
となる.純成分 B についても同様に
µ0L
B (T ) = ∆HfB − T ∆SfB
(11.19)
が得られる.
ここで,以下の計算を進めるうえで必要となる熱力学量をいくつか仮定する.純
成分 A,B の融点を TfA = 1500 K,TfB = 1000 K と仮定する.Richards の法則
(9.2.3 項参照) が成り立っているとすると,融解の潜熱は ∆HfA = 12.55 kJ/mol,
∆HfB = 8.34 kJ/mol である.また 2 相は正則溶体近似の相互作用パラメータを
ΩL = ΩS = 0 kJ/mol,つまり理想溶体を仮定したモデルとする.
AB 2 元系において理想溶体の混合の自由エネルギー変化は式 (11.6) で与えられ
る.これを ∆GSm と表記すると,固溶体 1 mol の Gibbs の自由エネルギーは
S 0S
S
GS = xSA µ0S
A + xB µB + ∆Gm
(11.20)
で与えられる.同様に液相のそれも
L 0L
L
GL = xLA µ0L
A + xB µB + ∆Gm
(11.21)
0S
となる.µ0S
A (T ) = µB (T ) = 0 ととって各温度での固相,液相の組成自由エネル
ギー曲線を求めると図 11.3 のようになる.(a) T = 1500 K では純組成 A で融点と
なり,液相と固相の自由エネルギーが一致している.他の組成域では,液相の自由
エネルギーが固相のそれよりも低く,液相が安定である.
温度が下がり図 (b) T = 1300 K では液相と固相の自由エネルギーは交差してい
る.図 (d) はその部分を拡大した図である.各成分の化学ポテンシャルが各相で等
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第 11 章
2 元系状態図
図 11.3 (a),(b),(c) 全率固溶型の組成自由エネルギー図.(d) は (b) の拡大図.
(e) はこれらから求めた全率固溶型状態図.記号は本文を参照.
しいという平衡条件
µSA = µLA
µSB = µLB
(11.22)
は,組成自由エネルギー図に当てはめた場合,2 相の間の共通接線で与えられる.
したがって,共通接線の接点 p,q に挟まれた組成 a では,その組成の液相,固相の
自由エネルギーは最安定ではない.自由エネルギーが最低の組み合わせは組成 p の
固相と組成 q の液相とが共存した状態であり,固相と液相に分かれる.このような
領域は 2 相共存領域である.組成 p よりも低組成側では固相単相が安定であり,組
成 q よりも高組成側では液相単相が安定である.
温度がさらに下がると図 (c) のように,接点は B 成分側に移動していき,温度
T = 1000 K 以下では固相が全組成域で安定となる.
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175
索
英 数
係
1 次相転移 (first-order transition)
2 原子分子
102
2 項係数 (binomial coefficient)
98
Gibbs (ギブス) の自由エネルギー
80
80
2 次 相 転 移 (second-order transition)
Gibbs の相律 (phase rule)
Γ 空間
102
2 次モーメント近似 (second moment ap2 相共存曲線
25
Hamiltonian (ハミルトニアン) 積分
25
44
100
Helmholts (ヘルムホルツ) の自由エネル
ギー
112
2 体間ポテンシャル (pair potential)
69
Lagrange (ラグランジェ) の未定係数法
39
(Lagrange multiplier)
3 重点 (triple point)
100
c/a の軸比 (c over a ratio)
Boltzmann の関係
34
39
vi, 64
85
Carnot (カルノー) サイクル
Clausius-Clapeyron (クラウジウス–クラ
100
Compton (コンプトン) 散乱
14
15
Maxwell (マクスウェル) の関係式
Morse (モース) 型
Otto (オットー) サイクル
74
Planck (プランク) 定数
vi, 13
103,
121
52
Einstein(アインシュタイン) モデル
71
39
Richards (リ チ ャ ー ズ) の 法 則
9, 94
9,
Schrödinger(シュレディンガー) 方程式
4,16
83
Fermi (フェルミ) 準位 (Fermi level)
2 原子分子の
24
Stirling (スターリング) の公式
36
Gauss (ガウス) 分布
113
Pauli (パウリ) の排他原理 (Pauli’s exclusion principle)
20
Dulong-Petit (デュロン・プティ) の法則
EAM ポテンシャル
113
Markov 連鎖 (Markov chain)
43
de Broglie (ド・ブロイ) 波
Markov (マ ル コ フ) 過 程 (Markov process)
65
Cauchy の制約条件 (Cauchy restriction
ペイロン) の式
90
Lennard-Jones (レナード–ジョーンズ) 型
Boltzmann (ボルツマン) 定数
or relation
99
75
Hamiltonian 演算子
proximation)
70
Gibbs の正準集団 (canonical ensemble)
88
28
2 項分布 (binomial distribution)
2 相分離系
引
80
Gibbs-Duhem (ギブス–デューヘム) の関
82
TTT 図 (Time-TemperatureTransformation diagram)
106
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176
索 引
あ 行
活量 (activity)
ア ニ ー リ ン グ 法 (simulated annealing)
77
イオン性度 (ionicity)
異核 (heteronuclear) 2 原子分子
井戸型ポテンシャル
30
75
異方性因子 (anisotropy factor)
43
123
液滴モデル (droplet model)
21
s 軌道
21
過冷却液体 (undercooled or supercooled
liquid)
完全微分
60
気体温度
71
34
19
16, 21
凝集エネルギー (cohesive energy)
36,
48
エネルギー障壁 (energy barrier)
エネルギーの保存
105
共晶温度 (eutectic temperature)
共晶型
63
エルゴード仮説 (ergodic hypothesis)
124
124
共晶組成 (eutectic composition)
124
強束縛近似 (tight binding approxima-
85
延性 (ductile)
tion)
51
エンタルピー (enthalpy)
エントロピー増大
44
共有性度 (covalency)
69
エントロピー (entropy)
曲率 (curvature)
67
31, 32
28
均質核生成 (homogeneous nucleation)
67
104
応力–ひずみ曲線 (stress-strain curve)
金属 (metal)
51
温度
102
球面調和関数 (spherical harmonics)
104
エネルギー準位 (energy level)
p 軌道
価電子帯 (価電子バンド,valence band)
岩塩 (rock salt or NaCl) 構造
4
液相線 (liquidus)
120
35
30, 32
位相空間 (phase space)
120
活量係数 (activity coefficient)
金属結合
62
36
55
空孔 → 原子空孔を見よ
か 行
空孔形成エネルギー
開放系 (open system)
界面エネルギー
59, 96
駆動力 (driving force)
55
化学ポテンシャル (chemical potential)
可逆 (reversible)
結合
62
核生成頻度 (nucleation frequency)
59
62
32
結合エネルギー (bond energy)
28, 30,
37
105
化合物 (compound)
結合エネルギー曲線 (binding energy
34
curve)
112
重なり積分 (overlap integral)
25
過剰自由エネルギー (excess free energy)
119, 120
活性化エネルギー (activation energy)
105
系 (system)
36, 45
103
経験温度 (empirical temperature)
96, 97, 119
化合物形成系
52
矩形 (rectangular) バンド
結合準位
28
5, 27
結合の硬さ (bond stiffness)
28
結晶構造 (crystal structure)
結晶方位 (orientation)
原子軌道 (atomic orbital)
33
50
19
main :
2006/4/18(21:17): 再々校
177
索 引
原子軌道の線形結合 LCAO (linear com-
状態関数 (state function)
binations of atomic orbitals) 近 似
状態図
25
状態変数 (state variable)
原子空孔 (vacancy)
50
43
格子 (lattice)
光沢
60
状態和 (sum over states)
示量状態量
33
構造マップ
61
状態量 (state quantity)
原 子 挿 入 法 (embedded atom method:
EAM)
61
2, 116
90
61
示 量 変 数 (extensive(additive) variable)
38
61
50
正規分布 (normal distribution)
光電効果 (photoelectric effect)
降伏応力 (yield stress)
14
tion)
13
絶対温度
16
103
50
セルフコンシステント
16
24
固溶原子 (solute atom)
50
閃亜鉛鉱 (zinc blende) 構造
固溶体 (solid solution)
116
遷移確率 (transition probability)
孤立系 (isolated system)
孤立原子
剪断定数 (shear constant)
59
線張力 (line tension)
19
潜熱 (latent heat)
さ 行
全率固溶型
最大固溶限 (maximum solubility limit)
125
示強状態量
示強変数 (intensive variable)
磁気量子数
61
19
指数分布 (exponential distribution)
80, 84
自由度
99
主量子数
51
102
120
eter)
118
2, 99
相転移 (phase transition)
101
相平衡 (phase equilibria)
96
相変態 (phase transformation)
塑性 (plastic) 変形域
101
51
ダイアモンド (diamond) 構造
34
第一原理計算 (the first principles calcula-
103
準正則溶体 (sub-regular solution) 近似
tion, ab initio calculation)
3, 38
体心立方 (body centered cubic; bcc)
119
33
62
詳細つり合いの条件 (condition of detailed
balance)
113
43
た 行
19
準安定平衡 (metastable equilibrium)
準静的過程
34
相互作用パラメータ (interaction param相図
61
119
71
セラミックス
28
固有値 (Eigenvalue)
51
正則溶体 (regular solution) 近似
析出 (precipitation)
123
固有関数 (Eigenfunction)
固有振動周波数
90
脆性 (brittle)
51
黒体輻射 (black body radiation)
固相線 (solidus)
正準分配関数 (canonical partition func-
51
降伏強度 (yield strength)
80
42
単位胞あるいは単位格子 (unit cell)
114
晶出 (crystallization)
体積弾性率 (bulk modulus)
103
33
ダングリングボンド (dangling bond) 49
main :
2006/4/18(21:17): 再々校
178
索 引
弾性定数 (elastic constant)
弾性 (elastic) 変形域
破壊 (fracture)
41
断熱 (adiabatic) 過程
51
刃状 (edge) 転位
51
51
バックボンド強化 (back bond strength-
63, 65, 66
中心極限定理 (central limit theorem)
ening)
80
54
波動関数 (wave function)
超臨界状態
100
調和振動子 (harmonic oscillator)
18,
83
反結合
49
転位 (dislocation)
5, 27
半導体 (semiconductor)
てこの原理 (lever rule)
123
50, 51
転移点 (transition temperature)
101
電気陰性度 (electronegativity)
31
電子状態密度 (density of states: DOS)
35
35, 50
ひずみ (strain)
50
8
表面エネルギー
表面張力
49
49, 106
不可逆 (irreversible)
電子線回折
15
36
バンドギャップ
比熱
62
不均質核生成 (inhomogeneous nucle-
伝導帯 (伝導バンド,conduction band)
35
ation)
106
物質波:matter wave
等温 (isothermal) 過程
65, 66
不飽和
等核 (homonuclear) 2 原子分子
動径関数 (radial function)
27
19
80, 87
閉じた系 (closed system)
不 飽 和 結 合 (unsaturated bond)
分子軌道 (molecular orbital) 関数
平均 (average)
59
トンネル効果 (tunnel effect)
3, 15
54
49,
54
等重率の原理 (principle of equal a priori
probability)
15
32
反結合準位
粒 (grain)
16
波動–粒子の二重性 (duality)
平均 2 乗変位 (mean square width)
17
24
81
81
平 衡 原 子 間 距 離 (equilibrium distance)
28
な 行
濡れ (wet)
熱効率
平衡状態 (equilibrium state)
108
変形応力 (stress)
67
熱力学的絶対温度 (thermodynamical ab-
solute temperature)
熱力学の第 0 法則
62
熱力学の第 1 法則
63, 68
熱力学の第 2 法則
67
熱力学ポテンシャル
62, 72
配位数 (coordination number)
117
19
ポテンシャルエネルギー曲線 (potential
energy cuve)
28
ボンドオーダーポテンシャル
ボンド積分 (bond integral)
68
配位空間 (configurational space)
33
50
偏析極限 (segregation limit)
方位量子数
56
27
ま 行
は 行
118
62
並進ベクトル (translation vectors)
76
40, 44,
マルチスケールシミュレーション
芽 (エンブリオ: embryo)
10
104
面心立方 (face centered cubic; fcc)
33
main :
2006/4/18(21:17): 再々校
索 引
モル自由エネルギー
116
(修正) モンテカルロ法
8
理想気体
63
理 想 気 体 温 度 (ideal gas temperature)
62, 72
や 行
理想気体の状態数
焼きなまし
77
誘電体 (dielectrics)
揺らぎ (fluctuation)
溶体 (solution)
179
36
80, 93
116
理想溶体 (ideal solution) 近似
粒界 (grain boundary)
50
臨界点 (critical point)
100
臨界半径 (critical radius)
ら 行
らせん (screw) 転位
86
117
105
六方最密 (hexagonal close packed; hcp)
51
格子
33
西谷
著 者 略 歴
滋人(にしたに・しげと)
1988 年
1988 年
2000 年
2004 年
京都大学工学部博士課程修了
京都大学工学部助手
1991 年 インペリアルカレッジ数学部招聘研究員
1992 〜 1993 年 オックスフォード大学材料学部招聘研究員
京都大学大学院工学研究科助教授
関西学院大学理工学部情報科学科教授
現在に至る
工学博士
(
固体物理の基礎
2006 年 5 月 23 日
)
© 西谷滋人 2006
第 1 版第 1 刷発行
【本書の無断転載を禁ず】
著
者 西谷滋人
発 行 者 森北 肇
発 行 所 森北出版株式会社
東京都千代田区富士見 1-4-11(〒 102-0071)
電話 03-3265-8341 / FAX 03-3264-8709
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日本書籍出版協会・自然科学書協会・工学書協会 会員
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Printed in Japan / ISBN4-627-66581-4