ハイスクール 3 - 埼玉県立浦和第一女子高等学校

Ⅰ
研究開発実施報告
1.学問としての「科学」から社会を支える「生産技術」まで、広い見識を養う科学技術教育プログラム
の研究開発
(1)研究開発の課題
平成16年度指定及び平成19年度指定の8年間にわたるスーパーサイエンスハイスクールでの研究開発に
より、大学、研究施設等の研究現場での体験や、研究者による実習・講義、教科間連携による特別講義は、生
徒の科学への興味関心を高め、生徒の科学技術に対する視野を広げることがわかった。また、現地での学習に、
問題意識を持たせるための事前学習と、学習事項をまとめて発表する事後学習を組み合わせることは、生徒自
身が多様な作業等を行う機会を増やし、自ら学び、発信する力をつけることもわかってきた。これらの有効性
については、卒業生からの聞き取り調査でも明らかとなってきているが、引き続きその効果を検証し、より有
効なプログラムの開発につなげていく。
年度初めに新入生に対して行う「理科・数学に関する意識調査」の結果等から現状を見ると、入学してくる
生徒の多くは、もの作りの経験が少ない。普通科の理科の授業では技術を学習する機会もほとんどなく、もの
作りの体験のないまま工学系の学部へ進学していくケースもある。本校のSSHでは、これまでも早稲田大学
基幹理工学部と連携し、「もの作り体験実習」として工作機械を使った金属加工を体験させてきた。今期の研
究開発では、東京大学生産技術研究所や埼玉県産業技術総合センター、理化学研究所等の生産技術系の研究所
や県内の企業など産業界との連携を強めながら、生産現場の実際に触れるプログラムを作り、現地学習の場と
して生産の現場や技術の研究現場で、生徒に数多く経験を踏ませることを意識した。これに加えて、生産に直
接関わっている企業の研究者や技術者、あるいは経営者と生徒が直接対話する機会をさらに増やす。これら、
キャリアモデルに触れる体験は、生徒の視野をより広く理工系へと広げていくのではないかと考える。
課題研究等の生徒活動で、
「なぜ」を追求する科学のおもしろさに触れることは「学ぶ意欲」を高めることが
わかった。今後は、「どのように」応用するのか、技術・もの作りの研究に触れて、社会とのつながりと科学
や技術の役割をも学ばせたい。これらのことが学習意欲の持続にもつながっていくのではないかと考える。科
学の研究に加え、技術・もの作りの研究への取り組みを強め、自らの生活を見つめ直し、女性の視点から持続
可能な社会を作る使命感を養っていく。そして、女性科学者・技術者として次の世代の目標となり、次世代を
育成する意識と能力を持った人材を育てていきたいと考えている。
(2)研究開発の経緯
平成23年度までの8年間の研究開発の課題として、生徒の科学関連の体験及び技術的な側面を学ぶ機会が
不足していること、各教科・科目の通常授業との連携が不足していること、科学技術と社会との関わりについ
ての意識の向上が他の項目に比べて低いことなどが挙げられた。平成24年度指定の研究開発では、科学の知
識から生産技術に至る広い視野を獲得させる、各学年の学習段階に応じた効果的な教育プログラムの開発を目
指すこととした。
平成16年度指定
(平成16~18年度) 様々な教育活動を通して、これからの社会を担う人間に必要な科学的素養(科学
的な体験・興味、論理的な思考力・分析力、発表能力等)の育成を図る。
平成19年度指定
(平成19~23年度)
学問としての『科学』から社会を支える『生産技術』まで、広い見識を養う科学
技術教育プログラムの研究開発
平成24年度指定
(平成24~28年度)
第1年次
学校設定科目「SS基礎科学」
「SS総合科学」
「SS数理科学」
を実施(前期指定時の取組内容の整理・見直し)
第2年次
学校設定科目「SS基礎科学」
「SS総合科学」を継続して実施
(「SS数理科学」は教育課程の変更により開講せず)
第3年次
学校設定科目「SS基礎科学」
「SS総合科学」を継続して実施
「SS数理科学」は実施内容を大幅に改編して実施
第4年次
学校設定科目「SS基礎科学」
「SS総合科学」を検証、改変し
て実施、「SS数理科学」は実施内容を再改編して実施した
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(3)研究開発の内容
ア 仮説
研究と生産の現場に触れることは、生徒の科学技術に対する視野を広げ、興味関心を高める
イ
研究内容・方法・検証
① 学校設定科目「SS基礎科学」の実施
高校理科の科目の枠を超えて、科学分野を総合的に扱う教科目として設定する。校内特別講義を実施して教
科間連携を推進することで、生徒の科学・技術に対する幅広い視野と科学的な考え方を身につけさせる。さら
に大学や研究機関と連携した特別講義や見学・実習等を行うことで、生徒の興味・関心を高め、自ら課題を見
出し、課題研究へ発展させていくことをねらいとしている。
選択履修していない生徒に対しても、単位の認定は行わないが参加可能なプログラムには参加を呼びかけ、
科学・技術に対する理解を深め、資質の向上を図る。
【年間指導計画】
講座 No.
実施日
講座名
講師
基礎①
4月18日(土)
理化学研究所・見学
(理化学研究所)
基礎②
4月22日(水)
5月27日(水)
校内特別講義
生物科・教諭
基礎③
5月22日(金)
日本科学未来館研修
(日本科学未来館)
校内特別講義
地学科・教諭
基礎④
基礎⑤
基礎⑥
6月 3日(水)
6月10日(水)
7月22日(水)
~7月24日(金)
9月30日(水)
生物・顕微鏡
地学
菅野
夏季宿泊研修・SS フィールドワーク
(本校
摂食嚥下リハビリテーション
日本大学・教授
萩原
彰
瑞穂
理科)
植田
耕一郎
基礎⑦
11月11日(水)
薬学に関する特別講義
東京大学大学院・教授
基礎⑧-1
10月24日(土)
細胞のダイナミクスを覗く
お茶の水女子大学・教授
最上
善広
基礎⑧-2
10月31日(土)
水の脱色法
お茶の水女子大学・教授
大瀧
雅寛
基礎⑨-1
11月
7日(土)
産業技術・講義
東京大学・教授 志村 努
株式会社ニコン、東京大学・特任教授
大木 裕史
基礎⑨-2
12月12日(土)
産業技術・実習
(早稲田大学)
基礎⑨-3
12月15日(火)
産業技術・実習
(埼玉県産業技術総合センター)
基礎⑩-1
12月
7日(月)
産業技術・実習
(ホッカイエムアイシー株式会社)
基礎⑩-2
12月
9日(水)
産業技術・見学
(日本電鍍工業株式会社)
基礎⑩-3
12月
9日(水)
産業技術・見学
(富士重工業株式会社)
校内特別講義
国語
国語科・教諭
板谷
校内特別講義
家庭科
家庭科・教諭
家庭科・教諭
松山 紀子
宇治田 智子
校内特別講義
数学
数学科・教諭
石渡
勇人
校内特別講義
音楽・物理
芸術科・教諭
物理科・教諭
小松
杉澤
直詩
健太郎
基礎⑪
基礎⑫
基礎⑬
基礎⑭
1月23日(土)
1月30日(土)
2月17日(水)
1月23日(土)
1月30日(土)
1月23日(土)
2月17日(水)
基礎⑮
1月27日(水)
基礎⑯
基礎⑰
基礎⑱
12月19日(土)
1月 9日(土)
2月 6日(土)
山本
一夫
大介
蛍光やリン光を発する化合物の化学
埼玉大学・教授
英語を使った
科学プレゼンテーション講座
(有)インスパイア
代表
Gary E.Vierheller
副代表 Vierheller 幸代
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石井
昭彦
基礎①
理化学研究所 見学
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎②
生物顕微鏡・双眼実体顕微鏡それぞれの特徴と使用方法
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎③
4月22日(水)
16:00~18:30
5月27日(水)
16:00~18:30
生物科・教諭
菅野 彰
場 所
生物室
生物実験の基本的な観察道具である光学顕微鏡(生物顕微鏡)と双眼実体顕微鏡の構造を理解し、操作にも
慣れることとスケール感覚を体感することを主な目的として行った。生物系の課題研究で、生徒が顕微鏡を使
いこなすことは研究を進める上で重要なことであり、課題研究に向けての練習もかねて実施している。
SSH選択生徒80名を2つのグループに分け、PC実習と2展開で講座を実施した。それぞれの顕微鏡の
構造を説明し、光学顕微鏡では、紙片に印刷された文字を模擬試料としてプレパラートの作成練習を行った。
倍率の変化に伴う視野直径の変化、
作動距離の変化、
明るさの変化等に注意させながら観察・操作を体験させた。
双眼実体顕微鏡では、観察対象が立体的に観察できる理由をその構造から考えさせた。試料はウニの殻、カイ
メン、ドライフラワーなどの乾燥標本と生徒の持ち物(スマートホン、ハンカチ等)を用いた。光学顕微鏡は
中学校でも使用してきたが、多くの生徒にとって双眼実体顕微鏡を使うのは初めてであった。実際に 2 つの顕
微鏡を使用して、生徒はそれぞれの顕微鏡の特徴を理解できた。特に双眼実態顕微鏡では対象物が立体的に見
えることに感動していた。いずれの顕微鏡も操作性に優れ、光学的性能も高いものを使用したこともあり、観
察対象の鮮明な拡大像に驚き、生徒たちは顕微鏡での観察に大いに興味を持ってくれた。
日本科学未来館研修
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎
4月18日(土)
14:00~16:30
(理化学研究所)
場 所
理化学研究所
理化学研究所(以下理研)は、国内で唯一の自然科学の総合研究所であり、理学・工学・医科学の基礎・応用
研究を行い、それを社会に還元することで産業の技術力を強化、振興する機関である。毎年この時期に、年に
一度の公開を行っている。普段入ることのできない研究室の様子や、そこで行われている最先端の基礎・応用
研究の場を見学し、その技術の一端に触れることにより、入学して間もない新一年生に対して、自然科学の広
さと深さを感じ取ってもらい、科学技術に対する興味関心を高められることをねらいとしている。
理化学研究所見学のための準備として、事前に当日一般公開される研究室と分野を知らせ、各自見学したい
研究室・施設をあらかじめ考えておくよう指導を行った。当日は午前中が授業であったため、午後から見学を
行った。SSH 選択生徒のほか、一般参加の生徒も合わせて計 90 名の生徒が見学した。生徒は体験型の展示では
積極的に体験していた。また、係の人の話を丁寧に聞いて理解していく姿が見られた。最先端の研究に接する
中で、今後の理科の学習や SSH 活動に対する意欲が向上した様子がうかがえた。
5月22日(金)
9:30~16:30
(日本科学未来館)
場 所
日本科学未来館
日本科学未来館を見学し、最先端の研究や科学技術に触れることで、生徒のもつ科学的興味・関心を引き出
すとともに、幅の広い研究に触れ、生徒の科学に対して、視野が広がることを期待して企画したものである。
また、科学コミュニケーターへの質問する経験を得ることにより科学を探求する姿勢を学び、更には科学に携
わる職業への意識を高めることを目的とする。具体的には、参加者に対して、ワ-クシートを用意し、ガイダ
ンスを行い、当日は自分が見学したいと思った展示を見学して、その内容を要約できるように問題意識をもっ
て見学することを意識づける。見学内容は、後日班毎に見学事項をレポートにまとめて発表し、情報交換につ
とめ展示内容を共有化する。加えて、その作業を通じて、PC及び PC ソフトを利用するスキルを高める。
事前準備として、見学当日に日本科学未来館で行われるイベントの一覧を配布し、インターネットのサイト
等も活用しながら、班ごとに見学したい展示をピックアップさせた。
当日の見学では、多くの生徒が科学コミュニケーターへ積極的に質問し、理解を深めていた。また、メモを
熱心に取る生徒や、写真撮影を行う生徒もいて、情報をまとめるための準備が活発に行われていた。
校内特別講義 地学
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
6月3日(水)
,6月10日(水)
16:00~17:00
萩原瑞穂
場 所
本校化学階段教室
夏季休業中のフィールドワークに向けて,自然科学分野における野外実習の必要性,地球の構造やプレート
テクトニクス,岩石の種類など基本的な知識を身につけることを目的とする。
科学の実習というと実験室で行われる実験が多いが,実際の自然科学の歴史の中では野外における観察が発
端となっている。そこで,気象観測と天気予報など身近な例をあげ,野外観測(フィールドワーク)の必要性
を確認した。また,地球の内部構造やプレートに関しても学習させ,地球の表面が岩石でできていることを確
認した。岩石の種類については,実際に糸魚川で採取したサンプルを配布し,岩石のでき方や肉眼での観察方
法などを学習した。中学では名前を覚えるだけだった岩石も,なぜそこに存在するかを考えると科学となるこ
とを理解させ,岩石への興味を持たせることができたと考えられる。
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基礎⑤
夏季宿泊研修・SS フィールドワーク
日 時
講 師
目 的
7月22日(水)~7月24日(金)
フォッサマグナミュージアム学芸員
糸魚川ジオパーク認定ガイド
塩の道資料館学芸員
マリンピア日本海学芸員
日本海区水産研究所研究員
本校教員
2泊3日
フォッサマグナミュージアム
フォッサマグナパーク
親不知ジオサイト
親不知ピアパーク
場 所
糸静線と塩の道南部ジオサイト
塩の道資料館
マリンピア日本海
日本海区水産研究所
新潟県の地理的条件を活用し、岩石採集体験、星空観察、博物館や水族館での見学研修等の体験プログラム
で構成される宿泊研修を実施し、生徒がこれらの体験を通し、自然を観察する視点と方法を身に付けることを
ねらいとする。
また後日これらの体験の発表会を開き、学習内容を共有化する。加えて、その作業を通じて、プレゼンテー
ションソフトを利用するスキルを高める。
<事前指導>
6月17日(水)16:00~16:50 事前学習資料配布・講義
7月16日(木)10:00~10:50 行程の確認・見学内容の確認・諸注意等
<当日の動き>
7月22日(水)
研修① フォッサマグナミュージアムでの講義
研修② ミュージアム・フォッサマグナパークの見学及び体験研修
研修③ 宿舎での研修
実 施
状 況
フォッサマグナミュージアムでは、日本列島の成り立ちや、新潟県糸魚川市が地質学的にどのような場所で
あるかなどについて、学芸員の方から丁寧に解説していただいた。講義は本フィールドワークの見学場所を念
頭に置いて行われたので、生徒はこれから見学する場所のイメージを研修の早い段階でつかむことができた。
その後は、ミュージアム見学とフォッサマグナパーク見学が並行して行われた。ミュージアムは3月に改装
されたばかりで、糸魚川で産出されるヒスイ、日本列島の成り立ち、化石と鉱物などについて、昨年度よりも
充実した展示を見学することができた。また、フォッサマグナパークの見学では、学芸員の方にガイドしてい
ただき、糸魚川―静岡構造線、枕状溶岩などを間近で観察した。
宿舎での研修は天体観望を行う予定であったが、悪天候のため、翌日に予定されていた海の生物に関する講
義を行った。最終日のマリンピア日本海見学に向けて、生徒は生物に関する知識を深めていた。
7月23日(木)
研修④ 親不知ジオサイト 観察・岩石標本作成等の研修
研修⑤ 糸静線と塩の道南部ジオサイト 見学・体験研修
研修⑥ 宿舎での研修
親不知ジオサイトでは、学芸員の方にガイドしていただきながら、海岸地形の観察、ザクロ石の観察などを
行った。生徒の感想を見ると、生徒にとって予想以上の断崖絶壁であったことがうかがえる。その後、親不知
ピアパークへ移動し、岩石標本の作成を行った。生徒は学芸員の方に積極的に岩石の種類や見分け方などにつ
いて質問しており、普段と違うフィールドにおいての学習でも意欲的に取り組んでいた。
糸静線と塩の道南部ジオサイトでは、糸魚川ジオパーク認定ガイドの方にガイドしていただきながら、塩の
道資料館を見学し、断層に沿ってつくられた塩の道を実際に歩いた。塩の道は海産物、穀類などの往来路とし
て利用されてきたもので、この活動を通して、断層が人々の生活にも影響を与えていることが体験的に理解で
きたものと思われる。また、塩の道周辺の植生についてもガイドしていただいた。
宿舎での研修は延期されていた天体観望を行う予定であったが、悪天候のため中止となった。そのため、説
明する予定であった天体観望の方法や夏の星空に関する講義を行い、本フィールドワーク終了後に生徒が自主
的に観望できるよう工夫した。
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7月24日(金)
研修⑦ マリンピア日本海 施設見学
研修⑧ 日本海区水産研究所 研究員による講義
マリンピア日本海では、イルカ、クラゲ、アナゴ、ペンギンの生態、淡水魚と海水魚それぞれの特徴など、
各班が設定したテーマに基づき見学していた。班によっては飼育員の方に質問して多くの情報を得ようとする
姿が見られ、積極的に探究していた。
日本海区水産研究所では、時間を区切って 3 名の研究員の方に、今行っている研究についての話、大学時代
の話、研究者の一日についての話など、興味深い話を聞かせていただいた。生徒にとっては、水産の分野につ
いて興味を深めるきっかけになったことはもちろんであるが、あまり身近ではない研究職についても触れるこ
とができたことでも意義深い研修になったと思われる。
実 施
状 況
【生徒の感想より】
(1 日目)
・たくさんの石がありましたが、私はその中で、
「蛍石」という石がきれいだと思いました。赤っぽいもの、黄
色っぽいもの、紫色っぽいもの、透明のものなど、色は様々で透きとおっていて、すごいと思いました。
・様々なヒスイが見られて、それだけではなく、ルビーや蛍石など、他の鉱物もたくさん見られたので、とて
もわくわくしました。また、それだけではなく、岩石や化石の説明もあり、地質のことについて、多くのこと
を学べました。西と東の境界を実際に観察しましたが、色が違うことがよく分かって、古い地層と新しい地層
でわかれていることが理解できました。
(2 日目)
・塩の道は思っていたよりも急で、雨だったせいもあってハイキングは大変だった。どんな悪天候でも、歩荷
は荷物を運んでいたと思うと、本当にすごいと思った。石もたくさん拾えて良かった。
・生憎の悪天候であり、行動は制限されたがかなり楽しめた。石拾いはヒスイを見つけられなかったが、あん
なにたくさんの石の中に埋もれる経験ができ、とても楽しかった。
(3 日目:マリンピア日本海)
・ブリのようすを観察できてよかった。魚によって、それぞれの部位で特徴があることを知って、魚っておも
しろいと思った。発表に使用したいと思っていた内容を、あらかた確認できて、さらに海の生物に関心をもっ
た。
・アザラシやイルカが私達によってきてとても驚いた。写真もキレイにとることができてうれしかった。ラッ
コやカメ、チンアナゴなどの有名な生き物から、名前すらきいたこともない生き物まで、さまざまなものをみ
ることができて、とてもたのしかった。
(3 日目:日本海区水産研究所)
・今まで全然知らないことばかりでした。あまり海や水産資源について考えたことがなかったのですが、今回
のことで興味を持ったので、調べてみたいと思いました。
・1 つのものについて何年も研究するというのは、とても根気のいる作業で、好きじゃないとできないことだ
と感じた。何もない状態から研究を始めるのは至難の業であるが、発見したり、成功したときの喜びは何にも
代えられないことが分かった。
フォッサマグナパーク 見学
岩石の標本制作
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マリンピア日本海で集合写真
基礎⑥
摂食・嚥下リハビリテーション
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎⑦
9月30日(水)
16:00~18:30
日本大学歯学部教授 植田 耕一郎
場 所
視聴覚室
新しい医療分野である摂食嚥下リハビリテーションの現実と到達点に触れることで、医学分野への興味・関
心を高めるとともに、科学・技術と人間生活との関連について視野を広げる。患者のQOLを高めるため、歯
科医師と医師の関係強化を実践してきた講師の体験から、チーム医療の大切さと新たな医療分野を切り拓いて
きた姿勢に、医学の意義を学ぶ。
植田先生は、摂食嚥下リハビリテーションという新たな医療分野を開拓した先駆者である。先生ご自身の体
験と、医療実践の歩みを、まずお話しくださった。治療の医学、予防の医学に続く第三の医学ともいえるリハ
ビリテーション医学の必要性にどのような経緯で気づき、どのようにを臨床医として患者の現状を紹介しつつ
説得力のある説明がなされた。失われた機能の回復させるためにリハビリテーションは行われるが、その成果
は単なる機能回復にとどまらず患者の生活の質の向上につなっがっていることは見逃せない。医療者として患
者、親族にどのように向き合っていくのかについても現場で実践をされてきた体験に基づいて具体的に示して
くださった。一年生のSSHで、先生の思いのこもったお話を伺うことは、医療の意義、医療の使命、医療者
の覚悟を生徒自身に問うきっかけとなっており、生徒がこれからの生き方を考える上で重要な機会となった。
糖鎖の観点からの薬学
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎⑧-1
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
11月11日(水)
15:00~16:30
東京大学大学院新領域創成科学研究科
場 所
視聴覚室
山本 一夫 教授
「薬学」に関する特別講義を実施し、薬学に対する知識を与え、興味・関心を高める。1年次に学習する「化
学基礎」および2年次に学習する「生物基礎」と関連させることにより、授業での学習と最先端の知識が結び
つくことを理解させる。生徒は、薬学部から薬剤師のみをイメージしがちであるが、研究領域の魅力と可能性
について知見を広げ、より幅広い視野を持たせる。また、研究分野の広がりと必要な知識の広さについても認
識させ、探求へのプロセスと分析、解明までの道のりを示して研究者のあるべき姿と絶え間ない努力、そして
結果の考察と次へのアプローチを具体例と体験を基に示すことで、生徒へ研究への興味と関心を喚起する。
遺伝子、タンパク質、糖鎖という生体物質の中でも重要な役割と意味を持つ3つの「鎖」の概要についての
説明を皮切りに講義は展開された。塩基配列の遺伝暗号からタンパク質の合成、タンパク質からなる酵素によ
って、糖鎖修飾がなされるまでの過程をわかりやすく、簡潔に説明された。生徒にとって身近なABO式血液
型を実例として、遺伝子・タンパク質・糖鎖の関係性が示された。ウィルスの基礎知識を確認したのち、イン
フルエンザウィルスを題材に、鳥類のインフルエンザでニワトリだけが殺処分される点に注目させ、ウィルス
感染と糖鎖の関係性を明らかにしていった。さらにニワトリが水禽類ともヒトとも共通する糖鎖を持つように
なった過程を進化、選択圧という点から説明された。さらに赤血球のクッパー細胞による除去における認識に
も糖鎖が関係している点をお話しいただいた。新薬の開発には糖鎖生物学の観点からアプローチする方法があ
ることと、その際に注意すべき点について示唆され、講義を閉じた。生徒からの質問も活発になされ、内容は
多くの生徒によく理解できたものとなった。また、薬剤師を目指すだけでなく、研究開発の分野においても多
くの魅力があることや後からでも国家試験を目指す道があることが紹介され、生徒の進路選択にもつながった。
細胞のダイナミクスを覗く
10月24日(土)
10:00~15:00
お茶の水女子大学理学部教授 最上 善広
場 所
生物室
細胞内のダイナミックな動きを自らの目で観察させ、生命活動に対する理解と関心を高める。それによりこ
の後の学習活動の意欲を向上させる。また、光学顕微鏡の原理を理解し、自らの手で簡易暗視野装置を作成し、
顕微鏡の性能を飛躍的に向上させる体験をさせる。これにより、実験装置や方法を理解することの重要性と、
研究における工夫の必要と有用性に気づかせる。
光学顕微鏡の構造と原理を学び、倍率と解像度について考えた。コンデンサ・絞りの役割について、図解や映
像を見ながら説明を受けた。ピント調節のコツや対物レンズの特性を操作しつつ学ぶことで、理解を深めた。
牛乳を使ってブラウン運動も理解した。今まで何となく操作していたことが、実は大きな意味があるというこ
とが分り、より正確にピンと調節が行われるようになった。しかしこれだけでは、無染色の試料(タマネギ表皮)
はコントラストを高めていっても、やはり限界があり観察しにくいことを確認した。このことが午後の暗視野
につながる。午後は、暗視野装置の原理と効果について説明を受けた。その後、身近な材料と簡単な方法で暗
視野装置を作成した。作成に際して注意すべき点を理解し、作業していた。自ら作成した装置により、明視野
では観察困難であったタマネギの原形質流動が明瞭に観察できることに驚いていた。また、それが生命現象に
特有であることを確認し、細胞が生きていることを実感したようである。暗視野は生徒にとって別世界の映像
のように見え感動の声が聞かれた。こんな一寸した工夫で、今までとは違う視点でものを見ることが理解でき
たと思われる。また、この講義・実習を通して科学(生物)への興味が増したという生徒も多く見受けられた。
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基礎⑧-2
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎⑨-1
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
基礎⑨-2
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
水の脱色法
10月31日(土)
10:00~16:00
お茶の水女子大学生活科学部教授 大瀧 雅寛
場 所
お茶の水女子大学 生活科学部
環境問題の一つとして、河川等の水質問題が挙げられる。日本においては水道水が直接飲料水として用いる
ことが可能であるが、それを実現するために、どのような処理を行っているのか。その技術の一端を体験しな
がら水を浄化する技術を学ぶ。これらの体験を通して物質の性質や酸化還元等の化学反応の仕組みについて見
識を深め、また、環境問題と科学技術の関わりについて興味・関心を高め、科学技術と社会の関わりについて
視野を広げることをねらいとする。
まず、
「水処理の歴史」と「水環境の浄化技術」についての講義を受講した。明治維新頃の日本と世界におけ
るコレラの流行と上水道整備の歴史等、水処理の科学技術的・歴史的な側面の解説があった。また、現在にお
けるろ過池の原理とその利用についての話もあった。水の浄化処理には、殺菌・有機物の分解・凝析を利用し
た微粒子の沈殿除去など様々な方法がある。今回は、メチレンブルーとカルミン酸を着色剤とした水の脱色法
の実験を行うため、溶液の着色の原理や脱色処理の方法に関する説明もあった。
続いて実験実習では、色素で着色した水を、
「オゾン処理」
「光触媒処理」
「活性炭吸着処理」によって脱色処
理を施す実験を行った。オゾン処理では気泡の大きさを変え、活性炭処理では活性炭の質量を変えるなど、実
験条件の違いが脱色効果に与える影響について比較した。また、紫外可視分光光度計を使用して吸光度の測定
も行った。実験終了後、大瀧先生の解説で実験結果の考察を講義形式で行った。
一連の講義・実習を通して、現在、安心して水を飲むことができる背景には、科学技術の多大な貢献がある
ということが理解できたと思われる。また、科学(化学)への興味が増したという生徒が多く見受けられた。
産業技術実習・講義 最先端光学機器のしくみと、それを支える物理と数学
11月7日(土)
13:30~16:30
東京大学 生産技術研究所教授 志村 努
場
本校 生物実験室
東京大学 生産技術研究所特任教授 大木裕史
所
株式会社ニコンコアテクノロジー本部 三村正文 氏
デジカメ、顕微鏡、半導体機器の製造に使われる光露光装置を題材にして、最新の光技術を学び、科学の応
用である生産技術の実際に触れる。また、本授業は国際光年国内イベント(教育活動)として位置づける。
本講座では、光学の原理とその応用である工業製品までを両側面から実験と講義を通して学んだ。まず、結
像を得るしくみをレンズを使って実験した。実験で結像の理論を確かめ、レンズには収差があり、それをキャ
ンセルするために複数のレンズを組み合わせて用いることも学んだ。さらに、レンズの他の結像の仕組みとし
て、縞画像を結像させる回折格子を考え、回折格子でレーザー光を回折させる実験で回折の現象を学んだ。ま
た、光の屈折や回折の応用として、細かな縞模様のプリントされたシートを用いて、隠された像を見ることを
体験した。スリット状の照明を当てて得た複数の像から解像限界を超える像を得る、構造化証明顕微鏡という
顕微鏡もあることが紹介された。光の技術を応用した半導体露光装置は半導体 IC を作る装置で、人類史上最も
精密な機械であると言われている。半導体露光装置は回路のパターンをシリコンウェハにプリントする装置で、
IC・集積回路を作るためには不可欠な装置である。この装置を正しく作動させ、思い通りのパターンをプリン
トするるために、光学的な結像理論や数学の理論は欠かせない。最後にデジタルカメラで撮影された画像デー
タを PC 上の ImageJ というソフトで様々に画像処理して出力させることで、画像処理の実際を体験した。これ
ら多くの実験や講義を通じて、科学と技術の関係を垣間見て、工学に対する興味を持つことができたと考える。
産業技術・実習 早稲田大学
12月12日(土)
10:00~13:30
早稲田大学西早稲田キャンパス
早稲田大学 教務部 附属・系属校プロジェクト室
場 所
(理工学術院)59 号館 1 階工作実験室
首村 努 氏 他
工作機械を利用して金属加工を行う体験は、産業技術に対する関心・理解を深め、科学・技術と社会につい
て考える機会とする。また、大学の工学研究・教育の現場に触れ、工学系の基礎実習を通じて「ものづくり」
の楽しさを学ぶとともに、工学系への進路選択に対する意識を高めることをねらいとする。
最初は会議室に集まり、これから行うホイッスルの作成についての説明を受けた。具体的な作成手順のみな
らず、金属の加工技術、旋盤・フライス盤などの工作機械についても理解を深めた。
その後、工作実験室に移動し、実際にホイッスルを作成した。作業は 2 人 1 組で、各組に指導者がついて行
った。普段触り慣れていない機械での作業ということもあり悪戦苦闘する場面もあったが、丁寧な指導のもと、
全員がホイッスルを完成することができた。完成後、ホイッスルを嬉しそうに吹く姿が印象的であった。
作業終了後は、
大学が有する 3D プリンタなどの機器や設備を見学した。
生徒は興味を持って熱心に話を聞き、
積極的に質問をしていた。今回の実習を通して、ものづくりの楽しさを学ぶことができたとともに、工学系の
進路をイメージするきっかけにもなったと思われる。
- 14 -
基礎⑨-3
産業技術・実習 埼玉県産業技術総合センター
日 時
12月15日(火)
講 師
埼玉県産業技術総合センター職員
目 的
実 施
状 況
基礎⑩-1
14:00~16:45
産業技術・実習
ホッカイエムアイシー
12月7日(月)
講 師
ホッカイエムアイシー代表取締役 阿部 純 他2名
実 施
状 況
基礎⑩-2
14:00~16:00
ホッカイエムアイシー株式会社
産業技術見学・日本電鍍工業
12月9日(水)
講 師
日本電鍍工業社長 伊藤 麻美 他2名
実 施
状 況
場 所
ホッカイエムアイシー株式会社は、埼玉県から「彩の国工場」の指定を受け、さいたま市の「テクニカルブ
ランド企業」にも認定されており、社会貢献を積極的に推進している企業である。産業技術現場見学、金属研
磨体験により、技術と産業についての知見を得ることをねらいとする。また、講義では技術的側面のみならず、
研究開発・企業経営の視点を内容に加えることにより、産業と社会についてより広い視野を得る機会とする。
会社概要説明では粉体冶金部品と、それを製造する金型に要求される非常に高い精度とそれを提供する技術
について説明を受けた。また、企業理念や業界の状況、人材を採用する立場から求める社会人像についてもお
話をいただき、今後の高校生活や大学生活でつけるべき力を理解したようである。
見学では製造工程や工作機器を見るだけでなく、各部門の方々から働きがいやきっかけなども直接聞くこと
ができ、職業人の責任や喜びをしっかりと受けとめていた。
研磨加工実習では、職人の方から指導を受けても思うようにはできないことを体験し、奥深さを感じていた。
苦労して完成させたペーパーウェイトの輝きに生徒たちは喜んでいた。今回の実習に掛かる経費を算出した額
を聞き、企業が技術に加えて社会的活動でも貢献できることに気づいたようである。
日 時
目 的
埼玉県産業技術総合センター
埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)は、県内産業の技術力を強化し、その振興を図ることを目的
とした県立の試験研究機関である。先端技術を研究から産業へと移行させる現場を見学し、その技術の一端を
実習により体験することで、生徒の科学・技術と産業との関わりについての意識を高めることをねらいとする。
講座は事前の希望調査により、7 グループに分かれて行われた。グループごとの実習テーマと生徒数は次の
通りである。
(1)ちょっくら蕎麦を測ってみよう。
(3 人)
(2)天然水中のミネラル分の測定(3 人)
(3)鋳物づくり体験学習(7 人)
(4)X 線による非破壊検査体験学習(3 人)
(5)3D プリンターのための立体データ作成方法(5 人)
(6)金属の電解研磨(2 人)
(7)自作アンテナによる地デジの受信と電波の観察(5 人)
どのグループの生徒も、実習に意欲的に取り組んでいた。グループによっては職員の方に熱心に質問する姿
も見られた。事後アンケートの結果を見ると、科学がどのように技術に生かされているかを学んだ生徒も多く、
科学技術と社会とのつながり、科学技術が社会に与える影響についても深く考えることができた講座であった
と言える。
日 時
目 的
場 所
14:00~16:00
場 所
日本電鍍工業株式会社
産業技術の現場を見学することにより、科学技術と社会との実際のかかわりについて考える機会とし、科学
がどのように実際の社会(会社)で用いられ、どのような過程で製品になっているのかを学ぶ。
また、女性社長をはじめ、女性の研究担当者、営業担当者との交流により、将来の女性としてのキャリアに
ついても考える。
日本電鍍工業株式会社は、さいたま市北区にあるメッキ、表面処理の会社である。
会社概要説明では、女性社員2名(研究部門・営業部門) から、メッキの歴史や利用法、メッキに関する技
術的な話と、自社製品の紹介や会社に関する事業内容の説明があった。その後の工場見学では、各部門をまわ
りながら品物がメッキされてから検品・出荷されるまでの一連の過程の説明があった。また、研究開発部門で
は新しいメッキ液の技術開発についての話もあった。
社長の講話では、会社の歴史、会社経営の厳しい時期の苦悩や経営立て直しの努力、女性社長ならではの苦
労など様々な話があった。常に明るく前向きに取り組んできた社長の姿勢に、生徒も興味を持って話を聞いて
いた。その後の女性社員を交えての質疑応答では、この会社を選んだ理由や仕事のやりがい、高校生の時にや
っておいた方がよいことなど、生徒達から非常に多くの質問が出た。参加した生徒にとって、今後の進路選択
や働き方、その後のキャリア形成について、女性の立場から話を聞けたことは大いに参考になったようである。
- 15 -
基礎⑩-3
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
産業技術見学・富士重工業
12月 9日(水)
14:30~16:45
富士重工業株式会社 人事部 岩田隆伸様 他
場 所
富士重工業株式会社 東京事業所
日本を代表する自動車会社富士重工業の見学を通して、科学技術と社会の関わりを学ぶ。また、女性の研究
担当者や技術者の話を聞き交流することにより、将来の女性としてのキャリアについても考えさせる。
技術本部担当者より「自動車と社会」のつながりについて、現在の業界事情や技術開発についての講演を受
けた。続いて、3グループに分かれ試験用エンジンの組み立て工場,エンジンや実車を使った試験室、エンジ
ン設計部門の見学をさせていただいた。さらに、運転支援システム“アイサイト”の実車を試乗体験させてい
ただき、科学技術の進歩について関心をさせられた。生徒たちは、モノづくりの研究現場を見学させていただ
いたことで、技術職の仕事について学ぶことができた。その後、エンジンの試験担当とシミュレーションを使
った数値解析をおこなっている2名の女性技術者から仕事に対するやりがいや入社のきっかけ、高校時代のエ
ピソードなど様々な話をしていただいた。短い時間ではあったが、女性技術者からの話は生徒たちにとって、
女性としてのキャリア形成の仕方について、大変参考になったようである。
基礎⑪ 校内特別講義・国語
日 時 1月23日(土)10:40~12:00 12:50~14:10(同じ講座を2回実施)
場 所
211教室
講 師 国語科・教諭 板谷大介
木下是雄著『理科系の作文技術』(中公新書)の知識をもとに、理科論文、随筆、哲学論文の3種の文章
目 的
を読み比べ、理科系の論文の特徴を真の知識として生徒に定着させることを目的とする。
本講座では、三宅なほみ東京大学名誉教授が提唱した「アクティヴ・ラーニング」のわが国の極めて有力
なメソードである「知識構成型ジグソー法」による協調学習の手法を用いて、
「理科論文」の特徴とは何か、
を生徒に認識させた。
具体的には事前に上記『理科系の作文技術』の4章までを生徒に予習させたうえで、それを踏まえ、生徒
たちが①ネット上に掲載されていた「アシタバ」に関する「理科論文」と、②人類学者長谷川眞理子の「随
筆」
(岩波新書『科学の目 科学の心』から「朝三暮四」を提示)
、③フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユ
の哲学論文(ドキュマン所収「建築」
、フランス語と江沢健一郎氏の現代日本語訳をともに提示)
、の3種類
の文章を各々「エキスパート活動」で考察し、
「ジグソー活動」でそれら3種を比較検討し、
「クロストーク」
実 施
を経て、理科論文と他の文章にどのような違いがあるか、を主体的に気付いていくようにさせた。
状 況
生徒たちからは、各文章を読み比べ、
「理科論文では事実と意見を明確にかき分ける」
「断定調の短い分を
連ねて文章を作る。
」
「感情を込めない」
「図や表を効果的に用いる。
」
「連体修飾語、連用修飾語の使用を避け
る。
」
「比喩表現は用いない。
」
「読者を文体で惹きつける工夫はいらない。
」等の、教材作成者が狙ったとおり
の、そしてそれ以上の気づきが提出され(三宅教授によればこのように教師の予想を超えた生徒の成長を授
業者が評価することを「前向き評価」という)
、意見として発表されており、授業は大成功であった。
授業後、参観の SSH 運営指導委員の方々から、
「理科論文にも格調高い文章を書く研究者もいる。
」
「理科論
文は『ネイチャー』
『サイエンス』などからもっと優れたものを教材として発掘すべき」などの貴重な御意見
をいただいたので、ぜひとも来年度に生かしたい。
基礎⑫
校内特別講義・家庭科 「水餃子を作ろう」
日 時 1月30日(土)13:00~15:00
2月17日(水)15:00~17:00
講 師 家庭科・教諭 松山 紀子
宇治田 智子
場 所
第一調理室
「料理は科学」である。この知識を、知っているのと知らないとでは、料理の出来ばえに差がつくというこ
とを証明し、実際に調理して試食するということを目的とした。普段、何気なく行っている下ごしらえや、
調理の手順にもひとつひとつ意味があることを学び、今後の生活に即役立つような知識や技術を身につけさ
せた。講義では、麦類の歴史や、小麦と米の構造の違い、小麦の成分や小麦の種類と調理上の性質、グルテ
目 的
ンについて学んだ。また、野菜については、なぜ人は、野菜を食べなければいけないのかを考え、問題を提
議したうえで、野菜の栄養成分について知り、野菜の食塩浸透による放出、漬け物の原理等についても学ん
だ。本講座は、料理を科学的にとらえることで、さらに料理の幅を広げ、料理の魅力についての意識を高め
ることを目的とした。
本校 SSH プログラムでは、例年1年生対象の SSH 特別講義として行っている。実生活の中で、餃子を皮
から手作りするという経験はあまりないので、手作りの皮のモチモチとした食感を味わうとともに、中身の
具に用いられるキャベツなどの野菜が、
食塩の浸透圧作用で水分を放出するための最適な塩分濃度を知らせ、
味付けや下ごしらえの意味を学ばせた。また、小麦粉の粉の種類やグルテン形成について学び、実際にグル
実 施 テンを形成させるために生地をこね、ねかすという体験もした。実際にできた生地を麺棒でのばすことで、
状 況 体験的に粘弾性をもつグルテンが形成できたことを知ることができ、料理の用途に合わせて、タンパク質の
含有量の違う粉を使い分けることが大切であるということも理解することができた。
講義終了後の生徒の感想では、「料理が科学だとは思わなかった。」「今までの実習で一番楽しかった。」
「科学が身近なところで密接につながっているということを実感した。」「今後、料理をしたり、お菓子作りを
するときは材料の特性や成分などをよく理解したうえで作ってみたい。」などがあった。
- 16 -
基礎⑬
校内特別講義・数学
日
時
1月23日(土)10:40~12:00
講
師
数学・教諭
目
的
実
施
状
況
基礎⑭
日
講
師
目
的
実
施
状
況
基礎⑮
石渡勇人
場
所
視聴覚室
生物室
ルート2が無理数であることの証明を理解し、その近似値を筆算で求める。この体験によって無
理数についての理解を深めると同時に、数学に対する見方を広げることを目的とする。
本講座では、図形を用いた証明を用いて、無理数の意味について理解を深めた。具体的には正方
形の1辺の長さで対角線の長さを測り、その余りを求めるという操作をコンパスを用いて行う。こ
の操作が無限に繰り返せることを示した。次に、開平法について説明し、生徒は実際にルート2の
近似値を求めた。開平法を初めて習う生徒も多く、その方法を理解するのが難しいという生徒が半
数位を占めた。3番目に、相加平均・相乗平均・調和平均の関係を示し、これらの関係を用いて、
ルート2の近似値を求めていくことができることを示した。生徒は実際に近似分数を求め、それを
小数になおし、よい近似になっていることを確認した。
開平法による計算に時間を多く使ったため、ルート2に近似していく様子やその速さについては
十分な時間をかけて説明をすることができなかった。
「知っているはずのルート2などの無理数につ
いて見つめなおす機会を得ることができた」というのが大方の生徒の感想である。
「もっとちゃんと
知りたい」という気持ちになったようで、講義の後、PowerPoint で作成した説明用のスライドを配
布して、理解を深めることができるようにした。
校内特別講義
時
1月30日(土)13:00~14:20
音楽・物理
「純正律と平均律~美しい和音を奏でるには~」
1月23日(土)12:50~14:10
2月17日(水)15:00~16:20
芸術科・教諭 小松 直詩
場 所
視聴覚室
物理科・教諭 杉澤 健太郎
私達がオーケストラなどの音楽を鑑賞するとき、メロディやハーモニーの美しさに心地よさを感じ
る。綺麗な音楽をつくるために考えられた調律法には、純正律と平均律2つの方法があり、それぞれ
に特徴がある。この講座を受講することで、生徒の物理・音楽それぞれに対する興味を高めるととも
に、生徒がより一層音楽を慈しむことで、文化的に豊かな女性として成長させることをねらいとする。
この講座は、二つの調律法について芸術的な視点と物理的な視点を組み合わせることで、それぞれ
の調律法の特徴を深く理解させる講座である。講座は次の3つの構成で実施した。
① 調律法のルールから各音階の振動数を計算させ、調律法による振動数の違いを計算し、実際に
音階を聴いて確かめる。
② 各調律で作成した音階の特徴について、ハーモニーディレクターを利用して討議させる。
③ 美しく感じる和音とうなりの関係について確認した後、各調律法による演奏の違いを実感する。
講座では教員側から知識をただ与えるのではなく、生徒によるグループ活動を多く取り入れること
で、自分たちで二つの調律法の特徴に気づくことができるように工夫した。グループ活動中は、ハー
モニーディレクターを弾きながら、活発な話し合いが行われていた。事後アンケートの結果を見ると、
音楽と物理が深く結びついていることに気づいた生徒が多く、物理に対する関心も増したようである。
化学に関する特別講義
日
時
講
師
埼玉大学大学院理工学研究科・教授
目
的
1年次における化学分野の特別講義として,
「化学基礎」での学習内容と、身近にある現象及び最先
端の研究との関連などについて取り扱い、化学についての多面的な知識を得ることを目的とする。
実
施
状
況
1月27日(水)
蛍光やリン光を発する化合物の化学
15:00~16:50
石井
昭彦
場
所
視聴覚室
始めに、発光する生物・岩石・合成化合物に関して写真や実物を用いながらの解説があった。生徒
たちは、実物に紫外線を当てるたびに光る現象を観察しながら、たいへん興味深く参加していた。
続いて、光(電磁波)についての科学的な説明があり、色についての基本的な知識を学習した。更に、
具体的な生物であるホタルの発光現象やルミノール反応について説明がなされ、発光の理論(仕組み)
についての簡単な考え方が教授された。
後半は、ノーベル化学賞を受賞された下村脩博士の実験をもとにオワンクラゲの発光体の研究と実
験の進め方・考え方等が紹介され、やや難しい内容ではあったが、生徒は熱心に聞き入っていた。
最後に、蛍光とリン光の違いを説明しながら、研究室で合成された物質を使用しつつ研究の紹介等が
行われた。
全体を通じて、難しい内容を大変分かりやすく説明してくれており、講義後、多くの生徒から質問
も出て、多くの点で生徒の興味を引く内容であったと思える。
- 17 -
基礎⑯⑰⑱
日 時
講 師
目 的
英語を使った科学プレゼンテーション講座
12月19日(土)
8:30~11:30
1月 9日(土)
13:30~16:30
2月 6日(土)
9:00~12:00
(有)インスパイア
代表
Gary E.Vierheller
場 所
視聴覚室
副代表
Vierheller 幸代
日本人宇宙飛行士のプレゼンテーションインストラクターも勤めた、有限会社インスパイア代表 Gary E.
Vierheller 氏と Vierheller 幸代氏を招いて、
「英語による科学プレゼンテーション」の講義(SSH 講座)を
実施する。
プレゼンテーションの基本的な手法に加え、科学プレゼンテーション特有の手法を習得させることを目的と
する。英語でのプレゼンテーションの必要性について理解させるとともに、英語を用いることで、生徒には
comfort zone からの脱出を促し、技能習得の効果を高める。科学者・技術者として、また社会人として必要と
されるは情報発信力を身に付けさせる講座である。
3 回の講座はどれも生徒を 5 人程度のグループに分け、各グループ内で話す内容を分担して、全員の前で発
表する形で行われた。より実践的なプレゼンテーションを行うために、発表する内容は前もって考えてくるの
ではなく、講座中に設けられた 15 分程度の時間を使って各グループで考える形が取られた。各回の講座では 1
つずつプレゼンテーションに欠かせないテクニックが扱われており、3 回の講座を通すことによって、即興的
なプレゼンテーションスキルの向上が図られている。
12月19日(土)
「3 Topics」
あるテーマについて話す際に、3 つのトピックに分けて話すテクニックを扱った。また、この講座の初回と
いうことで、歩きながら話す、アイコンタクトを取りながら話す、ジェスチャーを使いながら話すといった、
この講座全体にわたって重要なスキルについても説明がなされた。
実 施
状 況
1月9日(土)
「3Qs & 3As」
聴衆を引きつけるための効果的な質問の用い方に関するテクニックを扱った。まず、聴衆に質問を投げかけ
ることによって、聴衆はその質問の答えを考える。その後、発表者が聴衆に答えを教える。これにより、発表
者が伝えたいことがより効果的に聴衆に伝わる。また、人はどんなに負荷をかけられた状況であっても、3 つ
の事柄であれば覚えられるという。ここまでの講座で、トピックや質問の数が 3 つであるのはそのためである。
2月6日(土)
「Pros & Cons」
Pros は長所、Cons は短所のことである。発表者があるテーマについて話したいとき、それに関する長所と短
所を提示することによって、聴衆に伝えるテクニックである。長所だけの説明、短所だけの説明では、人は信
用しないという。その際、発表者が長所を強調したければ、短所→長所の順に話し、発表者が短所を強調した
ければ、長所→短所の順に話すことが重要であることが説明された。人は最後に説明されたことをよく覚えて
いるので、本当に言いたいことは最後に持ってくることが重要であるという。
3 回の講座のいずれでも、生徒は多少恥ずかしさを感じながらも、自分の殻を破って、積極的にコミュニケ
ーションを図り、プレゼンテーションをする姿が見られた。英語によるプレゼンテーションの講座であるが、
生徒にとっては英語、日本語を問わず、情報を相手に効果的に伝えるためにはいかにして発信すればよいかを
体得することができる貴重な機会になったものと思われる。
- 18 -
2年 SS 総合科学 年間指導計画・実施の概要
「SS総合科学」では、
「SS基礎科学」を発展させ、一層多岐にわたる最先端の科学技術や科学的知見を紹介し、将来の
科学者になる上での幅広い観点を持たせるとともに、専門性を高めることをねらいとする。そのために、大学・研究諸機関、
企業などとの連携を深め、科学と技術に対する生徒の興味関心を一層引き出すことを目指す。
「SS基礎科学」での内容を引
き継ぎ、実験器具の扱い方やSSH活動で導入した最新の測定機器を用いた測定方法などの講座を展開し課題研究に必要なス
キルアップにつなげる。新たに教科・科目間の連携のもと複数の視点で検討を加え、より効果的なプログラム作りを目指す。
選択履修していない生徒に対しても、単位の認定は行わないが参加可能なプログラムには参加を呼びかけ、科学・技術に対
する理解を深め、資質の向上を図る。
【年間指導計画】
講座
No.
総合
①~⑤
総合
⑥
総合
⑦
講座名
英語による科学プレゼンテ
ーション講座
【プレ講義】インスリン
血糖調節における
インスリンの役割
研究室訪問・実習体験
ニッケルと銅の合金「白銅」
中に含まれるニッケルの定量
【プレ講義】加速器
総合
⑧
サイエンスラボツアー
講座
No.
講 師
㈲インスパイア
代表
Gary Vierheller
副代表
Vierheller 幸代
生物科
【プレ講義】
多角形の内角・球面幾何
総合
⑨
講 師
数学科 有原 健二
トンガリ度、ハリオットの 東京大学
定理とオイラーの定理
教授 寺杣 友秀
島本 晋也
埼玉大学
教授 小林 哲也
東京農工大学
講師 岡本 昭子
総合
⑩
総合
⑪
物理科 加藤 悟
東北大学
講座名
理化学研究所・研究室見学 理化学研究所
【プレ講義】
DNAについて
DNA抽出と PCR 法を
用いたアルデヒド
脱水素酵素の検討
生物科 吉田 直史
埼玉大学
准教授 坂田 一郎
フリーアナウンサー
堀尾 正明
(株)博報堂
「博報堂」教育プログラム
矢野 真理子
内山 祐也
ことば力 クリニック
総合
⑫
【実施の概要】
(1)内容
① 外部講師による特別講義
大学等の連携機関と協力して特別講義を行った。例年、2年生(理系)では教育課程上「生物・物理」を履修すること
から、埼玉大学の協力による「インスリンのはたらき」
「PCR 実習」
(生物分野)
、東北大学の協力による「加速器と元
素分析」
(物理分野)の特別講義が主であったが、昨年度からは東京農工大学の協力のもと「ニッケルと銅の合金「白銅」
中に含まれるニッケルの定量」といった化学分野の特別講義も行っている。また、理化学研究所にて「生物科学分野の
研究室訪問」も実施した。
さらに、本校にて実施した特別講義として、東京大学寺杣教授による「トンガリ度、ハリオットの定理とオイラーの
定理」
(数学)やフリーアナウンサーの堀尾正明氏による「ことば力クリニック」
(国語)などを実施している。
また、Gary 氏,Sachiyo 氏を招いての「英語によるプレゼンテーション」の講義も年 5 回行った。これは、1 年生のと
きの基礎を元に、より高度な技術の習得を目指したものであり、発表を行ったり、様々な場面でコミュニケーションを
とる際に役立つものである。
② サイエンス・ラボツアー
東北大学への研究室見学(ラボツアー)を、今年度も夏休みに宿泊研修として行った。オープンキャンパスにて研究室を
見学し、「加速器見学と運転、分析実習」「加速器の原理と応用」などの講義・実習を実施、さらに東北電力中央給電指
令所の見学を実施、また宿泊先で、在校生(本校卒業生)との懇談の場を設けるなど、大変有意義に実施することができた。
(2)成果と課題
外部講師の講義は最先端の研究に触れることができることから、生徒に与える刺激は極めて大きい。また大学を訪問
することにより進路を検討することにもつながり、効果の高い取組みであると言える。事前指導から当日、更には事後
指導まで一貫した指導計画を連携機関と作成することができれば、さらに効果的な内容にすることができるように思う。
内容についても、各大学の学生が実際に行うものに触れることができ、高校では行うことのできない発展的な体験をす
ることができた。プレ講義や授業等の発展的知識を経験と結びつけることで一層の理解が深まったと思われる。
また、Gary 氏,Sachiyo 氏を招いての講義も、1年生のときの基礎に引き続き、年 5 回実施されたことで、人前で発
表する力とともに表現する力が身についていると思われる。現段階では、英語での発表をする場面は設定されていない
が、昨年度より実施した「個人研究の内容を英語でプレゼンテーションする」について、さらなる進歩が期待される。
また、ラボツアー、理化学研究所の研究室見学を通して、生徒の興味関心の伸張を図った。先輩の女性研究者との対話
なども行われ、研究生活の実際などがよく分かり、将来の展望などを考えることが出来たと思う。また卒業生との交流
は、自分の進路を考える具体的な機会であり、これからの進路選択にも大いに役立っていくものと思われる。
- 19 -
総合① ~ ⑤
日 時
英語によるプレゼンテーション講義
①5月9日(土) ②6月13日(土) ③8月29日(土) ④9月12日(土) ⑤10月24日(土)
(有)インスパイア
講 師
目 的
Gary Vierheller
Vierheller 幸代
場 所
本校・化学講義室
1年SS基礎科学で実施した講座の応用編として、引き続き Gary Vierheller 氏と幸代氏によるプレゼンテ
ーション講座を実施する。この講座を受講することにより、プレゼンテーションのスキルを高めるとともに、
実践的な経験を積み、プレゼンテーションに対する生徒の自信と意欲を高める。また、プレゼンテーションを
通して自身の個人課題研究を客観的に見る。
第1回
科学研究論文型式である「IMRAD」を使い、プレゼンテーションの技法を学んだ。
「IMRAD」は、Introduction
(導入)
、Materials and Methods(方法と材料)
、Results(結果)
、Discussion(考察)の形式に則って研究の
主旨と内容を伝える手法である。
第1回の講義では、
「Introduction と Materials and Methods」について学習した。また発表の手法について、
講師から指摘されたポイントは以下の通りである。
・大きい声で話すこと。
・聴衆の目を見て話すこと。
・ジェスチャーは大きく行なうこと。
・遠くにいる人にも見える動作を入れること。
第2回
プレゼンテーションでは発表する内容と発表の仕方のどちらも大切であり、発表の仕方にはジェスチャーや
アイコンタクト、声、姿勢の4つの要素があることを学んだ。また、それぞれの要素に3つのポイントを加え
て説明があり、
前回に引き続き Introduction と Materials and Methods に関して実践しながら学ぶことができた。
実 施
状 況
第3回
前回に引き続き IMRAD の形式に則り、
Results、
Discussion の作成手法について説明があり、
さらに Conclusion
のポイントも学んだ。Result では数字を使い説得力を増すことが大切であり、実際に生徒間で調査したりしな
がらまとめる作業を進めた。また発表の手法について、講師から指摘されたポイントは以下の通りである。
聴衆を引き付けるためのテクニック
・効果的な質問をすること。
・呼びかけて、答えを言うこと。
・間を作ること。
・発表者自身の逸話を話す。
次回までに、各人が個人研究の内容について Visual Aids を新たに作成してプレゼンテーションを完成させる
ことが次回までの課題とされた。
第4回
各人が個人研究の内容について、IMRAD の形式に沿って作成したプレゼンテーションの原稿を講師の先生に
添削して頂いた後に、次回のまとめの発表へ向けてグループに分かれて発表練習を行った
第5回
これまでに習ったことのまとめとして、生徒が現在行っている課題研究について IMRAD に沿ってプレゼンテ
ーションを行った。生徒一人一人に対し、良かった点や改善するポイントについて説明し、全体として様々な
発表の手法を学ぶことができた。IMRAD の形式で発表する経験を得たことで、生徒は今後の発表で活用する意
欲を高めたようである。
- 20 -
総合⑥
血糖調節におけるインスリンの役割
6月20日(土)
9:30~16:00
日 時
(プレ講義:6月19日(金)
講 師
16:00~17:30)
埼玉大学教授 小林 哲也
場
所
(プレ講義 生物科・教諭 島本 晋也)
目 的
実 施
状 況
総合⑦
埼玉大学理学部学生実習室
(プレ講義 化学講義室)
マウスを用いて血糖調節ホルモンであるインスリンの生理学的な実験を行なうことにより、ヒトを
はじめとした哺乳類の血糖調節機構についての理解を深める。このことにより,生体内における様々
な恒常性の調節機構への関心を高めるとともに広く負のフィードバックによる制御のしくみを知る。
2年生は、生物基礎の授業において、現時点ではまだ「体内環境の維持の仕組み」を学習していな
いことから、本講座に先立ちプレ講義を行った。プレ講義では内分泌の意味とその制御のしくみにつ
いて、背景となる知識を与えることにより問題意識を高め、実験の意図とする内容を概観することで
参加意欲を高めることができた。
本講義の構成は,実験 1:正常マウスへのグルコース投与と血糖値の変化(糖負荷試験),実験 2:
アロキサン処理マウスに対するインスリン投与と血糖値の変化,実験 3:低血糖がマウスの活動性に
与える影響,実験 4:膵臓のランゲルハンス島の観察(切片)から構成された。
今回の講義では,ホルモンの効果を直接動物を用いて確認することができ,生徒にとって貴重な経
験となった。実験操作の説明の後、実際にインスリン注射を行った。マウスの尾から採血し、血糖値
を測定するとともにマウスの行動の変化も観察ながら実験をおこなった。絶食条件・満腹条件・イン
スリン投与条件等設定を変えて,時間の経過とともにデータを取った。また、マウス膵臓の切片を観
察し、ランゲルハンス島の形状や、A細胞、B細胞の分布を観察した。特異的な抗体を利用した染色
法についても示した。各班の実験結果を集約し、そこから得られた結果を考察することで血糖値と糖
尿病,さらにインスリンの役割が見えてきた。まとめの講義で、血糖調節におけるインスリンの役割に
ついての理解が深まった。生徒のアンケートからも、その理解度が高いことがわかる。生きている動
物を使った実験ということで、生徒にとって抵抗感も当然見られたが、直接ヒトで行なえないことが、
動物たちの犠牲のもとで学問に寄与していることが理解できたのも大きな意味があったと思われる。
化学(東京農工大学)
日
時
7月27日(月)
講
師
講師
目
的
岡本昭子
9:00~16:00
他 TA
場所
東京農工大学 工学部(小金井キャンパス)
高校生にとっては発展的な内容であり、大学生が実際に行うような内容に関する合成・分析・定量
実験を行い、化学全般に関する考え方を養う。また、実習を通して実験技術の習得を目指す。
午前、午後を通して、実験実習をさせて頂いた。昼休みには、TAの方々との食事や懇談を通して詳
しく話を聞けたようである。さらに有機材料化学科の研究室の見学もさせて頂き、実験器具を間近で
見ることができたことも生徒にとっては良い経験になった。実習体験の内容は以下の通り。
実
施
「ニッケルと銅の合金「白銅」中に含まれるニッケルの定量」
状
況
世の中で広く使われている「ニッケル合金」をモチーフにして、ニッケルと銅の混合物に含まれる
ニッケルの含有量を、逆滴定を用いて決定することを試みた。中和滴定、酸化還元滴定は高校化学で
学習するが、キレート錯体を用いた発展的な滴定について学ぶことができた。さらに滴定技術につい
ても身につけることができたとともに、滴定においてはより正確な操作が求められることを実感でき
たようであった。
- 21 -
総合⑧
サイエンスラボツアー
日 時
講 師
目 的
実 施
状 況
7月29日(水)~ 7月31日(金)
東北大学大学院工学研究科・工学部
助教 藤原 充啓
場 所
東北大学
(研修⑧ 東北電力)
大学の施設・設備を用いた学生実験の体験や大学関係者からの特別講義・実験を受講し、大学進学への意識
や工学に対する興味・関心等を総合的に高めることをねらいとする。具体的には、東北大学工学部が保有する
加速器等の実験設備に関連する講義・実験等を実施し、物理分野(分子、原子、素粒子)に関する最先端の研
究について理解を深める。また、東北電力給電指令所の見学を行い、エネルギーの問題について理解を深める。
宿泊研修の機会を利用し、東北大学の理系の学部・大学院に在学している本校の卒業生との懇談会を宿泊先
にて設定し、大学生活や研究生活の実際を学び、研究に対する意識、キャリアに対する意識を高める。
7月17日(月) プレ講義
物理科 加藤 悟
7月29日(水)
研修①
東北大学大学院工学研究科
加速器等の原理の説明及び施設見学
研修②
東北大学理学部・工学部等見学
研修③
本校卒業生(東北大学学部・大学院生)との懇談会
7月30日(木)
研修④
東北大学農学部・医学部等見学
研修⑤
東北大学理学部・工学部等見学
研修⑥
東北大学大学院工学研究科
加速器運転実習・加速器の利用
7月31日(金)
研修⑦
東北大学工学部
大学学生実験体験
研修⑧
東北電力中央給電指令所の見学と放射線模擬実験
研修①⑥は大学の研究施設である加速器に関する講義・実験である。プレ講義で基礎的な知識を取り扱い、
現地では具体的な装置の役割や操作方法の説明を受けた。研修⑥では試料サンプルの元素分析実験を実施した。
研修②④⑤は東北大学の学部を見学した。生徒の希望に応じて理学部・工学部・農学部・医学部に分かれ、
学部内の施設や研究室見学を実施した。
研修③は東北大学に通う本校の卒業生による懇談会である。大学生活や受験勉強・大学院等の進路について
など、質疑が活発に行われた。
研修⑦は東北大学工学部1年生で実施している物理実験を体験した。限られた時間であるので、簡略版の実
験であるが、実際の大学の装置を使うことで、大学での実験に対する具体的なイメージができたようである。
研修⑧は、東北電力中央給電指令所の見学を行った。東北電力の社員の方でも普段なかなか見ることができ
ない給電指令所の見学や、その訓練の様子を見学することができた。また放射線モデル実験を行い、確率的現
象の取扱いに関する考察を行った。
例年実施している工学系の研修内容に、今年度は東北電力中央給電指令所の見学も実施でき、より幅広い分
野を体験させる内容とし、非常に充実した研修プログラムができた。科学の知識・理解の他、進路意識や研究
者としてのキャリアを考える機会として、SSHを選択する生徒には貴重な体験ができた。研修時間が限られ
るため、事前講義を充実させることや研究室見学に卒業生を活用することが出来れば、更に効果の高いプログ
ラムにできるであろう。
基礎⑨
SSH 特別講義「トンガリ度、ハリオットの定理とオイラーの定理」
日 時
11月7日(土)13:00~14:30
講 師
東京大学大学院数理科学研究科 寺杣友秀教授
目 的
科学は数学を手段として用いることが多いが、目的対象として数学を取り扱うことは非常に少ない。
特に高校の段階においては、数学自体を目的として取り組みや、研究対象としての数学に触れる機会
は稀少である。
本講座は数学の研究者から講義を受けることにより、数学自体を対象として捉え、数学理論の論理
性に触れることで、その奥深さや魅力についての意識を高めることを目的とする。
場 所
- 22 -
化学講義室
実 施
状 況
基礎⑨
本校 SSH プログラムでは、例年2年生対象の SSH 特別講義として、東京大学大学院数理科学研究科の寺杣友
秀教授に数理的内容の講義をお願いしている。毎年、話題を変えていただき、多彩な内容で、数学の多様な魅
力について講義していただいている。今年度は幾何学、図形的な内容でお話しいただいた。導入は、生徒にも
お馴染みの多角形の内角の和で、その性質を確認し、平面図形から立体図形への拡張を考察し、そのためには、
今までの見方を変えて新しい概念を導入するとうまくいきそうなこと、を説明された。数学では、このように
必要に応じて新しい概念を導入し、それを道具として利用することで今まで説明しにくかったことを、うまく
扱えるということが多々ある。
「トンガリ度」というアイデアから、立体・正多面体の性質、さらに球面上の幾
何学・
「ハリオットの定理」
、そしてそれを利用してのオイラーの定理の証明、と講義は続き、それぞれの項目
の話題性だけではなく、概念の拡張から思いもよらない成果が現れる、川の流れのような様子を見せていただ
けた。難しい内容ではあったが、生徒は真剣に取り組み、
「頂点の数-辺の数+面の数=2」というオイラーの
定理にたどりつくまでの旅を味わった。
プレ講義(数学) SSH 特別講義「トンガリ度、ハリオットの定理とオイラーの定理」のために
日 時
11月6日(金)16:00~18:00
講 師
本校数学科教諭 有原健二
目 的
SSH 特別講義に備え、高校数学で登場しない概念や、記号についての補足と、高校数学との橋渡し
を行う。
実 施
状 況
例年2年生対象の SSH 特別講義として行われている、東京大学大学院数理科学研究科の寺杣友秀教授の数理
的内容の講義は、毎年多彩な内容で、とても刺激的で興味深いものである。この校内プレ講義では、生徒の高
校数学の知識と、特別講義の内容の橋渡しをするものとして、高校数学では扱わない概念等について補足を行
っている。今年度は幾何学、図形的な内容であり、多角形から立体・正多面体へと考察を展開するので、正多
面体の模型も用い、実物を見ることで直観的な理解の手助けとした。また、球面幾何については、大きな地球
儀(社会科に協力頂いた)上で角が3つとも直角の「正三角形」を実際に眺めることで理解が深まったようで
ある。
「ハリオットの定理」
、
「オイラーの定理」の証明で用いられる概念、記号について補足、確認をしたので、
生徒たちは当日の講義での説明、証明にも戸惑わなかったようである。生徒の感想をみても、高校の数学では
扱わない内容の特別講義について感銘を受けたようであり、プレ講義の内容も理解の一助になっていたようで
ある。
総合⑩
場 所
化学講義室
理化学研究所・研究室見学
日 時
12月7日(月)
14:00~16:30
講 師
理化学研究所 仁科加速器センター応用研究開発室
生物照射チーム
阿部 知子
目 的
日本を代表する研究機関である理化学研究所を訪問し、その活動について理解を深め、最先端の科学技術と
社会の発展について考察する機会を得る。また、実際の研究施設を見学し、研究者との対話などを通じて、生
徒の研究に対する意識を高め、将来の科学者技術者としての素養を高めることを目的とする。
実 施
状 況
① 理研の概要説明
理研の歴史や科学史を踏まえ、今は、女性の力が求められていること、環境整備もされつつあることなど、
生徒に希望を持たせてくれた。
② 仁科加速器センター応用研究開発室 生物照射チーム研究員からの研究内容説明、質疑応答
概要説明に加えてこちらでも男女問わずに家庭生活と研究生活が両立できるような環境整備が進んでいる
ことが紹介された。重粒子ビーム照射により遺伝子を改変し、植物の新品種の開発に役立てていることをわ
かりやすく説明された。桜の新品種も具体的成果物として挙げられ、品種名についてアイディアを求められ
る場面もあった。アサガオにおけるトランスポゾンの例など、授業では取り扱う時間のない発展的事柄につ
いても説明があり、生徒は大いに興味を持った。
③ PCR 産物の電気泳動と考察、シロイヌナズナの突然変異体の識別・観察
重粒子ビーム照射によって得られたシロイヌナズナの突然変異体の DNA を電気泳動し、その変異について
考察した。また、正常個体(野生型)と突然変異体の植物個体を観察・比較し、理解を深めた。電気泳動の
原理についても学ぶ機会となり、この後のプログラムのよい準備とすることができた。
生徒は、重粒子ビームを用いた研究はもとより、理化学研究所の歴史と整備された研究体制に感心し、将来、
このような場での研究に勤しみたいという決意を強くしたようである。
- 23 -
場 所
理化学研究所
総合⑪
DNA の抽出と PCR 法を用いたアルデヒド脱水素酵素の検討
12月19日(土)
9:00~16:30
日 時
(プレ講義 12月18日(金) 16:00~17:00)
講 師
埼玉大学大学院理工学研究科
准教授 坂田 一郎
場 所
(プレ講義 生物科 吉田 直史)
埼玉大学 理学部 生体制御学科
(プレ講義 化学講義室)
目 的
遺伝子の解析(DNA鑑定)は、医学・生物学の分野だけでなく、司法分野などでも活用されることがある。
その原理を講義および実習を通じて学ぶことで、増幅技術であるPCR法の有用性と限界について理解を深め
る。また生徒自身のアルデヒド脱水素酵素DNAをサンプルとして用いることで、より興味・関心を高める。
実 施
状 況
生徒は選択履修中の「生物基礎」においてDNAの構造や複製についてはすでに学習しているが、本講座で
利用するPCR法や電気泳動の原理については学習していない。そのため、プレ講義を実施し、これらの知識
を事前に身に付けることで、より深い実習が行えるようにした。
当日はまずアルコールパッチテストを行い、生徒自身が自分のアルデヒド脱水素酵素(ALDH)がどのく
らい働くかを確認した。生徒は興味深そうにパッチテストを行っていた。
その後、午前中はDNA抽出とPCR反応を行った。DNAは生徒の唾液中に遊離している口腔粘膜細胞か
ら抽出した。DNA溶液を完成させるまでにはマイクロピペットを用いる作業があったが、個人研究で使用経
験のある生徒もおり、比較的早く手慣れた手つきでピペット操作を行えるようになっていた。PCR反応をさ
せる際にはサーマルサイクラーを用いて変性、アニーリング、伸長反応を繰り返し、ターゲットのDNAを増
幅させた。午後は、電気泳動を行い、写真を撮り、結果を解析した。実習中の説明に基づいて、丁寧な考察が
行えていた。
実習終了後は、埼玉大学理学部生体制御学科の各研究室を見学させていただいた。学生の説明を受けて生徒
が質問をする場面もあり、この分野における興味・関心が高いことがうかがえた。
総合⑫-1 ことば力クリニック
日 時
7月14日(火) 9:00~12:00
講 師
堀尾正明氏(フリーアナウンサー)
目 的
2年生SSH選択者を対象に、プロのアナウンサーである堀尾氏から、堀尾氏の著書『おしゃべりの底力』
(講談社)をテキストに、話し方のコツなどの指導を受け、生徒が日本語による効果的なプレゼンテーショ
ンを行えるようにすることを目的とする。
実 施
状 況
本講座では、テレビ、ラジオで活躍中のフリーアナウンサー、堀尾正明氏から、生徒が直接、話し方、プ
レゼンテーションの仕方、等について一人ひとり細かい指導を受けた。
まず堀尾氏の著書『おしゃべりの底力』
(講談社)をテキストに、同書にも掲載されている「
『外郎売り』
のせりふ」
(
「拙者親方と申すは、御存じのお方もござりましょうが……」
)等をもとに、全員で一斉に、その
音読による、発声と滑舌のための練習をした。生徒たちはよく声を出し、一生懸命に発声練習をしていた。
短期間のうちに非常に上達した。
そして、プレゼンの仕方等についても説明を受け、参加の全生徒が、
「自分の取り組んでいる研究について」
のスピーチを行い、それを録画し、その再生映像をスクリーンで全員で見ながら、すべての生徒について堀
尾氏からいろいろな細かい指摘、アドバイスを頂いた。生徒たち自身も、堀尾氏とともに、映像についての
気付いた点をコメントしていた。
録画の際、生徒は身振り手振りも交え、一生懸命にスピーチを行った。そうしたスピーチの録画に対し、
第一線で活躍しておられる堀尾氏ならではの、説得力のある鋭い注意、指摘、コメントを頂き、生徒たちは
感銘を受けていた。
また、単にプレゼンの指導を受けただけでなく、超一流の講師である堀尾氏の人柄に触れたことで「人間
とはこうあるべき」
「リーダーとしてこのような人になるべき」ということを生徒は感じ取っており、そのこ
とも生徒たちにとって極めて大きな学びとなった。
場 所
- 24 -
化学講義室
総合⑫-2 創造力育成プログラム
日 時
12月22日(火) 10:00~16:30
講 師
大木浩士氏、矢野真理子氏、内山祐也氏、豊田丈典氏
(いずれも博報堂社員の方々)
目 的
2年生SSH選択者を対象に、博報堂が学校の生徒対象にCSR活動の一環として実施している教育プロ
グラムを受ける。プログラムは、今回のために特別に準備していただいた。
前半では、大学院で宇宙物理学を修めるなどした理科系出身の社員の方々による座談会を開催し、そうし
た学問がどのように社会と接点を持つか、などといった内容についてお話しいただき、理系の学問について
の生徒の認識を深める。
後半は、
「ステキな大人」などについて、グループごとに話し合い、自分たちで単位を創って考察する。生
徒の創造力、発想力を育成する。
実 施
状 況
前半(午前中)は、博報堂の理系出身の社員の方々による座談会で、社員の方々からは、宇宙物理学をは
じめとする理系の各学問領域を修めながら、なぜ広告会社で仕事をするに至ったか、などの興味深いお話を
いただき、生徒たちは熱心に聞いていた。
昼食も、社員の方々とともにし、生徒たちはいろいろな質問をして、楽しいひと時となった。
また、後半(午後)は、生徒たちの創造力を養うプログラムを実施していただいた。
「ステキな大人」など
について自分たちで単位を創って考察するなど、ユニークな内容のワークショップに、生徒たちは真剣に話
し合いながら、よく考え、取り組んでいた。
なお、本講座は、ワークショップでの参加者の多様性を重視する観点から、本校生徒のほかに春日部高校
のSSH選択の1、2年生の生徒5名も参加した。
以下にプログラムに参加した本校生徒が当日のアンケートに記載した文章の一例を掲載する。
「初め正解がないと言われ、自分の視野が広がった。大学と就職のつながりを知ることができた。現代は、
発想が大事だといわれるばかりで、こんなに熱心に実践したことがなかったが、一生懸命考え、みんなと共
有するすばらしさを知れた。緊張せずラフな雰囲気でより思考を深められるというのが素晴らしいと思っ
た。
」
「私は理系を選択した理由に『答えは一つだから』というのがあります。現代文のように正確な答えがない
ものは苦手だったのですが、今回のプロジェクトに参加して克服できた気がします。チームで話し合ってよ
り良いものを作り上げるとき、そこに自分が貢献できていると思うと本当にうれしいです。
」
- 25 -
場 所
株式会社博報堂
(東京赤坂)
③「SS 数理科学」
概要・年間指導計画
数学、理科の情報分野の内容を拡大し、PCを活用した実験データの数値処理の方法、計測と誤差、統計学の基礎、
英語による科学的な表現等を学ぶことで、将来の研究者・技術者として必要な資質を養成する。また、高校で学習し
た知識をもとに、大学進学後を見据えた発展的な内容について学習する。
【年間指導計画】
講座
実施
No.
時期
数理①
分野
前期
講座内容
実験データの処理法 発展編
物理科 杉澤 健太郎
光量子科学
(東京大学連携講座)
東京大学
准教授 井上 慎
特任助教 小西 邦明
物理
数理②
数理③
前期
後期
時間数
(1コマ 65 分)
担当講師
化学
2
180 分
本校物理科 加藤 悟
プレ講義:1
校内特別講義:化学
化学科 大谷 奈央
麩澤 和恵留
4
彰
直史
裕
晋也
4
数理④
前期
生物
校内特別講義:生物
生物科 菅野
吉田
宮﨑
島本
数理⑤
前期
地学
校内特別講義:地学
地学科 萩原 瑞穂
2
数理⑥
前期
数学
校内特別講義:数学
数学科 高野 聰
4
数理⑦
前期・後期
英語
科学英語
英語科 尾崎 理恵
8
数理⑧
前期
国語
論文の書き方
国語科 板谷 大介
4
【実施の概要】
本講座は、本校のSSH関連科目の中では唯一通常時間割の中で実施されている科目であり、他の科目等で養成
されている論理的思考力などに加え、研究者に要求される高い数理処理能力などを習得する時間として設定されてい
る。高校の教育課程で学習した内容を基盤とし、将来の科学者・技術者として必要な素養を身に付けるための授業と
なるよう計画を作成し、1年「SS 基礎科学」2年「SS 総合科学」の実施内容と合わせ、SS 数理科学のねらいについ
て教科間の共通認識を高め、上記のように各教科・科目で割り当てられた時間を担当することを決定した。
「科学英語」では、実際のスピーチを映像で学習し、科学英語にとどまらない伝え方やユーモアの入れ方も学ぶ
ことができた。
「論文の書き方」では、異なる文章を元に様々な方向から生徒同士が教えあい、より伝わる論文はどの
ようなものかについて学んだ。
「数学」
、
「実験データの処理法」は、回数こそ少ないものの、大学における数学の世界
や、信頼できるデータを提示するための処理における考え方を学び、大学入学後のイメージをさせることができた。
「理
科の各教科による講義」では、授業では扱わない内容を中心に、より高度な視点から科学を提示することで、高校で
学ぶことと、それを活かすことの意味を伝えることができた。
数理①
実験データの処理法
発展編
月
日
4月30日(木)、5月7日(木)
講
師
物理科・教諭 杉澤 健太郎
的
科学者・技術者にとって、実験データの扱い方は極めて基礎的なスキルである。しかしながら高等
学校の授業において、実験データの処理方法の指導時間を十分なほどに確保することは非常に困難で
ある。本講座は将来の科学者・技術者を目指す生徒を対象とし、通常の高校の授業では取り扱わない
高度な処理方法について考えさせる。この講座によりデータの正しく処理する意識を高め、研究活動
において合理的な考察ができる能力を育成する。
目
場 所
- 26 -
化学講義室
実
状
施
況
数理②
日
講
本講座を受講する生徒は、昨年度に SS 課題研究Ⅱの授業の中で、系統誤差、偶然誤差の軽減の仕
方、データを直線のグラフにすることによって関係性を明確にする方法など、データ処理の基礎につ
いてすでに学習している。本講座では発展編として 2 回にわたり、基礎編よりも高度な直線化の手法
を取り上げた。
4月30日(木):まず基礎編の内容を復習し、データを直線化する意義について再確認した。次に、
最も良い直線を引く方法として最小二乗法を紹介した。その際、原理や考え方の説明を重視し、導出
過程は偏微分などの未履修の事項があるためプリントの配布にとどめた。その後は、自由落下の実験
を題材として、最小二乗法を用いて重力加速度の大きさを求める課題を扱った。
5月7日(木)
: まず発展編第 1 回の内容を復習し、データを直線化することで明確に解析できるこ
とを再確認した。次に、放射性物質の半減期のモデル実験を行い、普通の方眼紙と片対数方眼紙それ
ぞれにグラフを書かせた。そして、どちらのグラフの方が関係性が読み取りやすいかを考えさせ、確
率的に起こる現象は片対数方眼紙を用いてグラフを書くと解析が容易になることに気づかせた。
どちらの授業でもグループ活動を重視し、生徒たちの議論の中で、各回のポイントに気づかせるよ
うな授業展開を工夫した。慣れない内容に四苦八苦する姿も見られたが、生徒は意欲的に取り組んで
おり、データを正確に処理する方法を体得できたものと思われる。
光量子科学
時
師
6月6日(土)
13:00~15:40
東京大学大学院理学系研究科附属フォトン
サイエンス研究機構 助教 小西 邦昭
東京大学大学院工学系研究科附属光量子科
学研究センター 助教 丹治 はるか
東京大学工学部
場
(プレ講義 物理科 教諭 加藤 悟)
目
実
状
(プレ講義 化学講義室)
的
「工学」に関する最先端の内容について、知識の理解を深める。また、最先端の工学知識・技術に触
れることにより、高校での学習内容と最先端の科学・技術との関連を理解させることもねらいとする。
更に研究室見学を実施し、工学を含めた大学進学や将来の研究職に対する意欲を高める活動も行う。
施
況
プレ講義では、まだ物理で学習していない光電効果についての説明の後、東京大学学術俯瞰講義「絶
対零度への挑戦」
,「光技術のこれから」を視聴した。
本講義では、小西先生より、光の波として性質や粒子としての性質など学んだことが、現在の研究
との関連性について講義を受けた。また、丹治先生からは、レーザーを使った物質を冷やす研究につ
いての講義を受けた。その後、2班に分かれ講師が所属している研究室を見学し、研究室での活動に
ついてメンバーから説明を受けた。
数理③
日
所
時
講師
目
的
実
状
施
況
校内特別講義
①
化学
9月 12日(土)
、②
9月26日(土)
、③ 10月 30日(金)
、④
11月20日(金)
化学科・教諭 大谷 奈央
場所
化学講義室
化学科・教諭 麸澤 和恵留
① 遺伝子の発現を数値化する技術であるリアルタイム PCR について、その原理とメリットを協調
的な学習によって理解する。
② ヒトの体液と浸透圧の等しい溶液をショ糖で作り、その質量パーセント濃度を実験により求め
ることで、浸透現象を化学的・生物的両方の視点から捉える。
③ ペプチドに含まれる特定のアミノ酸を検出する方法を学び、それを応用してペプチド中に含ま
れるアミノ酸の配列順序を決定できるようになる。
④ Ag+、Zn2+、Cu2+、Fe3+の4種類の金属イオンを含む溶液から各金属イオンを分離する方法を生
徒自身が考えて実験することで、金属イオンの分離方法に関する知識を深めるとともに、科学的
な思考力と判断力を養う。
① リアルタイム PCR の原理を、定量の対象となる mRNA の性質、mRNA を定量する仕組み、定量し
た mRNA を数値化する方法の 3 つの要素に分け、それぞれを 3~4 人のグループで学習させたのち、
最後にまとめさせた。また、リアルタイム PCR のメリットとして、細胞の中で発現しているタン
パク質の量を種類ごとに比較できるということを伝えた。
② まず、体液バランスの補正や維持には生理食塩水を体内に補う医療行為が行われる理由を、細
胞膜と浸透現象に着目して考察させた。その後、実際にヒトの等張液をショ糖で作る実験を行っ
- 27 -
た。実験終了後、医療行為でショ糖液ではなく生理食塩水を使う理由について考察させることで、
広い視野をもって様々な現象を捉える重要性について生徒達に伝えることができた。
③ キサントプロテイン反応、ビウレット反応、硫黄の検出反応の 3 つについて、それぞれ 3~4 人
のグループで学ばせ、それぞれのポイントとなるところを共有させた。その後、アミノ酸の配列
順序に関する問題を全員に解かせたところ、7 割の生徒が正しい配列順序を答えることができた。
④ 事前に生徒自身に分離方法の実験計画を立てさせ、それに基づいて4人1グループで2通りの
実験を行った。使用する試薬や器具等も全て生徒自身に考えさせた。うまく分離できなかった班
もあったが、原因を分析して別の方法で再度実験するなど意欲的に取り組んでいた。
数理⑤
校内特別講義
日
① 6月
時
生物①
講師
目
実
状
的
施
況
生物②
講師
目
的
実
状
施
況
生物③
講師
目
的
実
状
施
況
生物
9日(月)、②
6月23日(月)、③ 10月
3日(金)、④ 10月10日(金)
「Inner Life of the Cell」つながりを俯瞰する
生物科 教諭 宮﨑 裕
場所
化学講義室
「白血球の遊走現象」を題材に、細胞で起こる生命活動のつながりを俯瞰する。
まず、CoREF(東京大学発 教育支援コンソーシアム推進機構)が提唱している「知識構成型ジグ
ソー法」を利用し、以下の(1)~(3)のような授業展開で、白血球の遊走現象に関する理解を図っ
た。(1)エキスパート活動:
「細胞膜とシグナル伝達」
「細胞骨格と細胞接着」
「タンパク質の合成と
輸送」の3つのグループに分かれ、白血球の遊走現象を理解していく上で必要となる知識について、
各資料をもとに3つの異なる視点からグループ学習をした。(2)ジグソー活動:それぞれのエキス
パート活動で学習したことを持ち寄って新しいグループを作り、3つの異なる視点を組み合わせて、
シグナル伝達から始まる白血球の接着現象とトリガリングについて理解するためのグループワーク
に取り組んだ。(3)理解できたことを全体で確認。次に、ネット配信されている映像;ハーバード
大学 BioVisions の「Inner Life of the Cell」を視聴し、細胞で起こる一連の生命活動のつながり
を俯瞰した。日頃の授業では断片化して扱われる生命活動を、アクティブラーニングの学習形態に
より、総合的に捉える機会をつくることができた。
食べ物は細胞と細胞が作りだしたもの
生物科 教諭 菅野 彰
場
所
生物室
私たちが普段食べている食べ物は、細胞と細胞が作り出したものであることを、実際に、食材、
食品を顕微鏡で観察し、細胞を見出すことで確認していく。
生徒が日々の食事で口にする数多くの食材、食品を顕微鏡で観察させてみた。ヨーグルトやチー
ズの乳酸菌これらの単細胞生物が乳酸やアルコール、CO2 など様々な物質を合成して食品やその材料
を作り出していることを確認させた。特に、焼きあげられたパンを検鏡すると中に酵母菌が見える
が、パンが酵母菌の発酵のを経て作られたことを再確認して、生徒たちは驚いていた。牛乳の脂肪
粒のブラウン運動では、脂肪粒のランダムな動きを観察し細胞内の生命現象による動きとの違いを
見た。また、トマト、バナナ、ニンジン、ノリなどの野菜をそのまま、あるいは薄切りにして観察
させどこを見ても細胞が見えることを確かめた。教科書の摸式化されている細胞よりも実際の細胞
が多様な形態をしていることを併せて実感させることができた。また、それらの食材が生物額の分
類上どのグループに当たるのかを考え、私たちヒトが、真正細菌、真菌、藻類、被子植物、脊椎動
物など多くのグループの生物とそれらの生物が作ったものを食料としていることを確認させること
ができた。生徒たちは意見や感想を述べあいながら、熱心に観察に励んでいた。
ESS理論の入り口
to be or not to be that is the question
生物科 教諭 吉田 直史
場
所
化学講義室
高校では詳しく扱うことの少ない包括適応度やゲーム理論および進化的に安定な戦略の概念に触
れ、生物の生存競争や進化について数理科学的な立場からの理解に気づかせる。
自然淘汰の原理から想起される生物間相互の関係と現実に見られる状態の相違に気づかせる。2
者の戦略に依存するゲームの状態から最適戦略の理論、ゲームの理論に展開した。しかし、ゲーム
の理論では戦略の決定が不可能な場合があることに気づかせ、「進化的に安定な戦略(ESS)」の
概念導入の必要性を理解させた。単純な戦略と利得とコスト設定から戦略決定の判定作業を行い、
混合戦略の中にESSがあることを見出させた。最後に実際の生物に見られるゲーム理論の例を紹
介した。
- 28 -
生物④
生物の多様性と分類について
講師
目
的
実
状
施
況
数理⑤
生物科 教諭 島本 晋也
場
所
化学講義室
SSH全校講演会の内容である、
「進化と種分化の話」に関連づけて、地球上には沢山の生物が生息
している事実と、そもそも種とは何か、種を分ける分類とはどのような作業なのか、について知る。
全校講演会で話に出た、
「なぜ熱帯雨林に沢山の生物が存在するのか」について、大学研究者から
直接聞いた事例を示した。具体的には、
「種多様性」を維持するには、同種の中の「遺伝的多様性」
や環境の多様さである「生態系の多様性」が必要であること。それに加え、生き物同士の相互作用
が強いほど(捕食-被食・寄生関係の場合)種が分かれやすいこと。を講義した。また、
「種」の定
義や、生物の形(形態)を見て種を分ける「分類」のポイントを、アリを例に示した。さらに、最
近では、形態分類とともに遺伝子の差異を利用した系統分類も使い、種の歴史を考慮した分類を行
なっている事実を伝えた。
校内特別講義
地学
日
時
①
6月5日(金) ② 11月6日(金)
講
師
地学科・教諭 萩原 瑞穂
場
所
本校地学室
①
目
的
地球からはドーム状の天球としてしか観測できない宇宙の構造が,どのようにして明らかになっ
てきたのか太陽系の発見の歴史を通して学習する。
② 元素の組成を学習し,地球や宇宙に多く存在している元素がどのようにして生成されてきたのか,
また,地球はどのようにして誕生したのかを学習する。
①
実
状
施
況
数理⑥
はじめに天球における惑星と恒星の動きの違いを確認し,天動説から地動説へと科学者の理解が
変化していくことを学習した。地球も太陽の周りを回る惑星の 1 つであることが分かったのち,惑
星がどのような軌道を描いているのか,いかにして発見されていったかを火星の軌道を求めること
で追体験した。現在は,コンピュータを使用してすぐに軌道計算することができるが,観測データ
の必要性や発想の転換などが科学には求められていることを理解させることができた。
② 岩石・海水・大気・人体・地球・宇宙に多く存在している元素(Top10)をグラフ化し,それぞれ
に特徴的な元素や共通してみられる元素を確認した。さらに,宇宙の元素組成の詳細を調べ,原子
番号の小さいものほど多いこと,原子番号が偶数のものは奇数のものより多いことを確認し,それ
がどうしてなのかを考えさせた。最後に,地球誕生時の再現としてテルミット反応を行った。1 年
次の SSH で地球の内部構造については学習しているが,金属核と岩石マントルとが分離する過程で,
激しい反応が生じていることを実感させることができた。
SS数理科学
数学
日
時
講
師
数学科・教諭
的
① 重心の座標について:「一様な材質の半円板の重心の位置」の計算を方法を通して、“離散的”な
計算から“連続的”な計算へ、積分の果たす役割を学ぶ。
②,③ 母関数について:
「隣接 3 項間漸化式」と「隣接 4 項間漸化式」を母関数を利用し解くことで、
統一的な漸化式の解法を学ぶ。
目
①10月2日(金)5時限, ②11月13日(金)4時限, ③11月27日(金)4時限
高野 聰
場
所
化学講義室
① 物理を選択していない生徒もいたため、2 つの重りが質量の無視できる軽い棒でつながれている
場合の重心の位置の計算から始めた。 n 個の重りの場合の計算方法から、太さは一定だが材質が一様
実
状
施
況
でない(座標 x における線密度 f (x ) )棒の重心の位置の計算方法までを説明するなかで、“離散的”
な計算から積分による“連続的”な計算へ移行した。
目標は、
「一様な材質の半円板の重心の位置」に設定した。計算過程で、数学Ⅲで学んだ積分計算の有
用性が確認できた。
②,③ 母関数を利用し、
「隣接4項間漸化式」を解くことを目標とした。
まず母関数が有限和になる場合と無限和になる例を見ていくなかで、漸化式を解くために必要な母関
数を揃えた。その後、参考書などでも目にする漸化式を母関数を使って解いていった。母関数と部分
分数分解を利用することにより、隣接 4 項間漸化式が、隣接 3 項間漸化式と同じような方法で解ける
ことに、興味を持った生徒もいた。
- 29 -
数理⑦
科学英語
日
時
5月15日・6月10日・6月19日・9月4日・9月24日・11月9日
講
師
英語科・教諭 尾崎理恵
目
的
科学的な読み物・プレゼンテーション映像などを利用して、内容理解及び英語での説明手法などを学
ぶ。理系で利用される表現・語句を理解する。
場
所
化学講義室
TED から身近なテーマを選んで視聴及び内容理解 ・ アメリカやイギリスの小・中学生が利用して
いるテキストやウェッブサイトを利用して英語表現等の確認練習・英語副教材から科学論の英文読解
し及び展開手法の理解などを実施。
使用例
実
状
施
況
“The next outbreak? We’re not ready” Bill Gates
(Ted より)
“The Ocean Cleanup Array” Boyan Slat ( The Ocean Cleanup の website より)
「アメリカの中学校教科書で英語を学ぶ」より国語及び理科のページ(ペレ出版)
“Science Explorer” (南雲堂) より抜粋
“Learn English for Teens” (British Council の website より)
など
動画の利用は、インターネットの接続があまりよくなく、うまく展開できたわけではない。難しい
表現もあったが、視覚の補助があるため概略をつかむことは容易であったようである。概略は理解で
き、簡単な表現や語句は理解・使用できるので、英語で簡単な文章を書く練習をもう少し取り入れた
方が良かったと思う。
数理⑧
論文の書き方
日
時
5月9日(土)1限、5月15日(金)5限、6月25日(木)3限、10月9日(金)4限 全4回
講
師
国語科・教諭 板谷大介
的
3年生を対象に、1年次の「校内特別講義国語(論文作成教室)」の続きとして、木下是雄著『理
科系の作文技術』(中公新書)をテキストに、別途資料も使用しながら、日本語の特徴、論文作成
者のモラル、プレゼンテーションの心得、を知識構成型ジグソー法の手法を通じて、生徒自らが真
の知識として主体的に身につけることを目的とする(全3回)。さらにもう1時間、木下のテキス
トを離れ、我が国の江戸時代の古典3種類を読み比べ、「学問を志す者に必要な心構え」について
も同様にジグソー法で考察させる。
目
場
所
化学講義教室
本講座では、三宅なほみ東京大学名誉教授が提唱した「アクティヴ・ラーニング」のわが国の極
めて有力なメソードである「知識構成型ジグソー法」による協調学習の手法を用いて、以下の内容
を学習した。生徒たちは主体的な学びを通して、さまざまな気付きを得ており、中身の濃い、極め
て効果的な学習であった。
実
状
施
況
第1回:①『源氏物語』冒頭の文章と、Edward Seidensticker によるその英語訳、②鈴木孝雄『こ
とばと文化』および橋爪大三郎『はじめての言語ゲーム』の抜粋、③リービ秀雄『英語で読む万葉
集』から「枕詞は翻訳できるのか」
、の3種のエキスパート資料から、
「日本語の特徴」
「日本語で論
文を書く際に注意すべき事項」を考えさせる学習。
第2回:①産学連携についてのネット上の資料、②製薬会社の不祥事についての新聞記事、③『沙
石集』所収「正直の徳」の3種の資料から論文を書く際に大切にすべきモラルを考えさせる学習。
第3回:①『スティーブジョブズ驚異のプレゼン』の抜粋、②リンカーン「ゲディスバーグ演説」
③ダライ・ラマ「ノーベル平和賞受賞記念スピーチ」
、からプレゼンテーションの心得の学習。
第4回:①『折たく柴の記』から「利根と気根」
、②『蘭学事始』から「フルヘッヘンド」
、③『玉
勝間』から「師の説になづまざること」
、の3種のエキスパート資料から、
「学問を志す者の心構え」
を考えさせる活動。
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