カリウム・チャネル病の遺伝子診断と機能解析

.
.
(
.
): ∼ 特別講演
カリウム・チャネル病の遺伝子診断と機能解析
堀 江 稔*
表1 イオン・チャネル病(Ion channelopathy)
はじめに
QT延長症候群
(以下 LQTS)
は,カリウム
(K)
・チャ
ネルを含む複数の心筋イオン・チャネルの遺伝子レベ
ルでの異常が原因で発症することが最近明らかと
なった1―30).LQTSの Kチャネル病としての側面に注目
・Cystic Fibrosis(N胞性線維症)
―epithelial Cl − channel(CFTR)
・Malignant Hyperthermia(悪性高熱症)
―ryanodine receptor/Ca2+ release channel
・Liddle syndrome(hereditary hypertension)
―epithelial Na + channels(renal tubules)
・Long QT syndrome, Brugada syndrome
―cardiac K + channels
(, , ,
して,最近の話題を紹介する.
イオン・チャネルは,細胞膜に非常にありふれて発
2)and Na + channel()
・Hereditary myotony(Thomsen, Becker)
―skeletal muscle Cl − channel(ClC―1)
現する蛋白分子の1つである.細胞膜は脂質二重層か
・Eaton―Lambert syndrome
らなるため,親水性のイオンは通過することができな
―voltage―dependent Ca2+ channels
い.そこで,細胞膜に発現する蛋白であるチャネルは,
・BFNC(Benign Familial Neonatal Convulsions)
―neuronal K +―channel()
イオン・チャネルとチャネル病
その中央部に親水性の部位
(孔)
をつくり,イオンを通
過させる31).Hodgkinと Huxleyは1
95
0年当時,すでに
イカ巨大神経軸索を用いた実験でイオン・チャネルの
sis transmembrane conductance regulator:CFTR)
概念を提唱し,興奮性膜にイオンを通す特殊な通路が
は,主として上皮細胞膜に発現するクロライド
(Cl)
3
1―3
3)
あると述べている
.その後,京都大学の沼らの分
子生物学的方法論34),さらにマックスプランク研究所
3
5)
, 7)
チャネルであることが判明した363
.本疾患患者には,
CFTRに種々の変異(その多くはΔ F50
8:50
8番目の
の Sakmann,Neherらが開発したパッチクランプ法
フェニールアラニンの欠損)とこれに伴う機能異常が
によりチャネル分子の実態が証明され,その機能解析
発見され,初めてチャネル病という概念が確立され
3
1)
が精力的に行われた(総説 )
.
た.
さて,このチャネル機能が障害されることにより発
さらに,ごく最近になって,心筋の Kおよび Naチャ
症する病態がイオン・チャネル病である
(表1).多く
ネルの遺伝子異常が LQTSを引き起こすことが明らか
の病気が判明しているが,中でも最初に病態が明らか
となった1―30).LQTSは心電図における QT時間の著明
にされ有名なのは,cystic fibrosis
(N胞性線維症)
であ
な延長と,torsade de pointes
(TdP)
と呼ばれる多形性
る.逆に,この病気のせいでイオン・チャネル病とい
心室頻拍を特徴とし,TdPは失神さらに心臓性突然死
う言葉が生まれたというべきかもしれない.N胞性線
につながる重篤な病態である.LQTSのうち家族内で
維症は,白人に多い遺伝子病で約20
,0
0人の出産に1人
発症する遺伝性 LQTSには,常染色体劣性遺伝を示し,
の確率で発症し,30歳代で呼吸器感染症により死亡す
内耳障害による聾唖を伴う Jervell Lange―Nielsen症候
る.ために多大な研究費が投入され,その病因が調べ
群38―40)と,常染色体優性遺伝を示す Romano―Ward症
られた.クローニングされた責任遺伝子
(cystic fibro-
, 2)
候群414
がある
(総説43))
.これらは現在,少なくとも6
つの異なる染色体座に連鎖していることがわかってい
*
M. Horie:京都大学大学院医学研究科循環病態学講師
る(LQT1∼6:表2)
.この中で LQT3と LQT4を除く
―
(
1199)―
. 表2 LQTSの遺伝学的分類
Type of LQTS
Location
Gene
Current
Jervell Lange―Nielsen
Autosomal Recessive
LQT1
11p155
.
()
LQT5
21q221
. ―p22
Romano―Ward
LQT1
(
)
IKs
IKs
Autosomal Dominant
11p155
.
()
IKs
LQT2
7q3
5―q36
()
IKr
LQT3
3p2
1―p23
INa
LQT4
4q2
5―q27
Cytoskeleton ?
LQT5
21q221
. ―p22
(
)
IKs
LQT6
21q221
.
(
)
IKr
Acquired(Secondary)
Unknown
Unknown
, , etc
表3 LQTSにみられる T波形状の異常
Na Ca K
Na Ca K
loss−of−function mutation
LQT1
(LQT5)
early onset, broad T
LQT2
(LQT6)
low amplitude c/s humps and bumps
LQT3
late onset T of normal duration
LQT4
sinusoidal or bifid T, sinus bradycardia
図1 QT延長のイオン・チャネル機能異常
と,すべて Kチャネルあるいはその調節蛋白の遺伝子
面心電図上では QTが延長する(図1)
.したがって,単
異常であり,最近の精力的な研究の結果,多くの新し
にQTが延長するといっても,その基盤となるチャネ
い変異がこれらの遺伝子の中に次々と発見・報告され
ル異常により体表面心電図のT波の形状が異なること
ている.また最近になって,常染色体劣性遺伝を示す
4
64
, 7)
が想定される
(表3)
.
Romano―Ward症候群が報告され,遺伝形式からの分
類が難しくなってきている44).一方,内科医が経験す
LQTSの臨床診断と遺伝子スクリーニング
ることの多い二次性 LQTSについては,いまだ十分に
LQTSの臨床診断には,Schwartzらが提唱したポイ
明らかにされない部分が多い.しかしながら,最近に
ント制の診断基準48)が有用である
(表4)
.失神や QT
なって,われわれの報告を含め Kチャネルやその調節
時間の延長がポイントとして加算されていき,4ポイ
2
93
, 04
, 5)
蛋白の変異の報告がみられるようになってきた
.
ント以上あれば LQTSの可能性は非常に高いというこ
とになる.われわれは,このように臨床的な診断をさ
チャネル病における QT延長のメカニズム
れた5
0数例の発端者を対象に,遺伝子スクリーニング
では,なぜ,これらのチャネル機能の変化により QT
を行った.検査に先立ち,当大学の倫理委員会に提出
延長が起こるのであろうか? これには,心筋活動電
しているインフォームド・コンセントに従い,内容を
位がどのようにして成り立つのかを知る必要がある.
説明し承諾をとった.
まず,Naイオンの急速な細胞内への流入により0相
末梢血を EGTAで1
0∼2
0ccを採取し DNA抽出まで
(脱分極)が形成され,その後のプラトー相は Caイオン
4℃に保存する.高温に長時間放置すると細菌が増え
が流入することによって形成される.次いで,再分極
てしまい,細菌のゲノム検査をすることになってしま
に関わるのが Kチャネルである.この再分極電流を運
う の で 注 意 が 必 要 で あ る.白 血 球 成 分 か ら ゲ ノ ム
ぶ Kチャネルには,少なくとも2種類あることが知ら
DNAを採取し,PCR(polymerase chain reaction)
/
れている.これらに loss―of―function typeの変異が起
SSCP
(single strand conformation polymorphism)
法を
きると,チャネル機能が低下し運ばれる K電流が有意
用いてスクリーニングを行い,異常な泳動を示す PCR
に減少する結果,活動電位の持続時間が延長し,体表
productについてシークエンシングを行い,異常塩基
―
(
1200)―
第5回アミオダロン研究会講演集
PCR/SSCP analysis
SSCP
(Polymerase Chain Reaction/
control aberrant
SinÁle Strand Conformation Polymorphism)
DS
SS
SS hetero−
chromosome Áene MAP
Marker DNA DNA
DNA zyÁote
intron
intron
channel Áene
exon
channel Áene
exon
primer 1
primer 2
DNA amplification by PCR
PCR product(double strand DNA)
ACGT ACGT....GCG....CGCGCG
TGCA TGCA....CGC....GCGCGC
Mutation
ACGT ACGT....GTG....CGCGCG
TGCA TGCA....CAC....GCGCGC
図2 遺伝子スクリーニングの実際
表4 LQTSの診断基準
現する(図2)
.次いで,異常のバンドを含む PCR prodポイント
A.QTc時間(= QT/RR )
心電図所見
≧480 ms
3
をあらかじめ利用しないと,膨大な量のエキソンとイ
460∼470 ms
2
ントロンのすべてにわたってシークエンシングを行う
450 ms(男性)
1
B.torsade de pointes *
2
C.交互性T波(T wave alternans)
D.notched T波
(3誘導以上)
1
1
E.徐脈
ストレスに伴う
ストレスに伴わない
B.先天性聾
家族歴
ことになり,非常な時間とエネルギーを要する.
遺伝診断された Kチャネル病としての
LQTS症例の特徴
05
.
A.失神発作*
臨床症状
uctについてシークエンシングを行い,塩基配列の異
常を同定する.この PCR/SSCPによるスクリーニング
1/2
現時点で2
2家系に Kチャネル遺伝子の異常が発見さ
2
1
05
.
A.家族の一員が LQTSと確実に
診断されている
1
B.家族の中に30歳未満の突然死
あり
05
.
れた.内訳は LQT1において異常を認める I Ks 電流を
コードする に11個の変異,LQT2で異常を認め
る IKr をコードする 遺伝子に5つの変異であり,
同じアミノ酸異常を起こす同じ変異が含まれているた
め,実際の家系数より変異数は少ない.この2
2名の発
*
失神を伴う torsade de pointesのときは計2ポイントとする.
4ポイント以上 確実に LQTS
2∼3ポイント LQTS疑い
1ポイント以下 LQTSの可能性は低い
端者の中には,QT延長はあるものの,TdP
(失神)
の既
往のない症例も若干含まれる.有症状者の初発年齢を
図3にまとめる.LQT1の発端者の方が,LQT2に比べ
有意に若い年齢で発症するのがわかる.また,発作時
,明らかに LQT1に運動に伴う
の状況をみると(図4)
配列を決定した.
発作が多く,LQT2では5例とも安静時あるいは覚醒
PCR/SSCP法では,ゲノム DNAに対してチャネル
時に起こっている.
をコードするエキソンを挟むように oligonucleotideの
この原因として,2種類の LQTS関連 Kチャネルの
プライマーを作成し,必要とする cDNAだけを5
0
0塩
特性が異なる点が考えられる.これはチャネルをコー
基対程度,増幅する.cDNAは二重螺旋を形成し構造
ドしている遺伝子を,従来 Kチャネルを発現していな
的に安定しているので,ゲル内で一定のところに泳動
い培養細胞に導入してチャネル蛋白を作らせることに
する.しかし,これに熱を加えて一本鎖にすると,そ
より,パッチクランプ法を用いて調べることができ
の中に一塩基にでも違いがあると,微妙な三次構造に
る.図5 に典型的な実験記録を示すが,左の電流ト
変化を来し泳動パターンが変わってくる.ヘテロ接合
レースは IKs を,右は IKr を示す.IKr は再分極に際して大
の患者から得られたサンプルでは,正常対立遺伝子
きな外向きを流すことがわかる.これは,重要な IKr 電
(Allele)からと異常 Alleleからの2つのパターンが出
流の特性である.一方,脱分極に際して IKs 電流の活性
―
(
1201)―
. 0
10.6
±
1.1
19.6
±
2.4
LQT1
LQT2
10
n=13
5
0
n=1
n=3
rest
LQT2
10
number of patients
10
LQT1
15
number of patients
aÁe(years old)
p<0.01
20
exercise
図3 失神発作初発時の年齢
5
n=4
0
n=1
n=0
rest
exercise
:secondary LQTS
図4 失神発作時の状況
LQT1
LQT2
+60 mV 4s
+50 mV 4s
−40mV
0.3 nA
1s
0.2 nA
−80 mV
−10 mV
−80 mV
1s
IKs=slow component
encoded by KCNQ1
IKr=rapid component
encoded by KCNH2
図5 2種類の再分極カリウム電流
化は遅く,頻回の脱分極が続くと活性化の蓄積が起こ
薬剤の中では皮肉なことに抗不整脈薬が,最も二次性
る.また,β受容体刺激により,IKs は活性化を受ける.
LQTSの原因となる.中でも,Ia群 Naチャネルブロッ
したがって,カテコラミン刺激や頻拍では,IKs が重要
カーと pure Ⅲ群薬と呼ばれる Kチャネルブロッカー
な再分極 K電流として QT時間短縮に働く.逆に,徐拍
が有名である.強力な Naチャネルブロッカー(Ic群)
では長い拡張期の間に I Ks の活性化ゲートは脱活性化
が,心筋梗塞後の心室性不整脈患者の生命予後を改善
してしまい,IKr が再分極に働く電流の主役となる.
し な い ど こ ろ か,悪 化 し た と い う シ ョ ッ キ ン グ な
したがって,IKs の loss―of―functionを起こす LQT1で
CAST studyの結果を踏まえて,心筋の不応期を延長
は,IKs 活性が必要なカテコラミン刺激時や頻拍時に著
するⅢ群薬が一時期注目された.しかし,これらの薬
しい QT延長を起こして,TdPを来すリスクが高まる
剤は臨床治験の半端で QT延長と TdPを起こすことが
ことが理解される.逆に,IKr の loss―of―functionを来
わかり,その多くは開発が中止された.これらの pure
す LQT2では,安静時や徐拍に伴い発作を起こすリス
Ⅲ群薬は,IKr を抑制することが明らかとなった.
クが高まることがわかる.実際,われわれの症例でも,
われわれの培養細胞を用いた電気生理学的な検討で
このような傾向で失神発作を起こしていたわけである
も,図6−1でわかるようにⅢ群薬の E―4
03
1は50
0 nM
(図4).
という低濃度で,IKr を阻害することがわかる.一方,
I Ks の特異的な阻害薬は少ない.図6−2 の実験では
薬剤性 LQTS発症の
メカニズムに関する一考察
chromanol 29
3Bという薬剤を用いているが,
3
0μMと
さて,内科臨床で最もよく遭遇する LQTSは,二次
pure Ⅲ群薬がもっている逆頻度依存性を説明する1
性であり,急性心筋梗塞,心筋症,完全房室ブロック
つの理由になっている.すなわち,現実の抗不整脈作
など,種々の心疾患に伴うものをはじめとして,薬剤・
用は頻拍のときに出現してほしいのに,IKs ではなく IKr
電解質異常(特に低 K血症)
・徐脈が引き金となって発
をより特異的にブロックするために,その作用は徐拍
症する.また,クモ膜下出血などの頭蓋内病変の急性
時に発揮されてしまう.実際,これらの薬剤に伴う
期にもみられる.さらに,女性は原因はよくわかって
TdPの出現状況をみるに,RR間隔が突然延びた後の
いないが,QT延長を来しやすい素因をもっている.
QRS後に R on Tの形で始まる.このような状況で働い
いう高濃度で IKs 電流を抑制している.これは,多くの
―
(
1202)―
第5回アミオダロン研究会講演集
+40 mV
control
−40 mV
−80 mV
0.5 nA
4s
1s
E−4031
(500nM)
図6−1 IKr ブロッカーの E−40
31は薬理的に LQT2モデルを作成する
control
1s
1 nA
Chromanol
293B 30μM
0.5 s
−80 mV
−60 mV
+0 mV
図6−2 IKs ブロッカーの Chromanol 2
93Bは薬理的に LQT1モデルを作成する
A
Control
B Epinephrine(5μÁ/min)
[K+]0=4.3 mEq/L QTC=460 msec1/2 [K+]0=4.3 mEq/L QTC=670 msec1/2
ø
ø
¿
¿
control
RR 1040ms
MAPd90
370 ms
RV
HBE
¡
corrected MAPd90
MAPd90/RR1/2
354 ms
MAP
RVA
¡
Isoproterenol d.i.v.
RR 832ms
MAPd90
319 ms
RV
HBE
corrected MAPd90
MAPd90/RR1/2
350 ms
MAP
RVA
図7 LQT1患者におけるエピネフリン負荷の効果
てもらわなければならない I Kr が抑制されてしまうこ
図8 LQT2患者におけるイソプロテレノール点滴負荷の
効果
とにより,この現象は説明される.
ば,運動や感情的興奮に伴い TdPが発症するのは当然
家族性 LQTSの TdP発症に関する一考察
であるといえる.一方,IKr の障害される LQT2では IKs
以上のような議論を進めてきて,もう1つ興味深い
が正常であるので,運動などに伴う QT延長は判然と
臨床知見がある.薬剤性 LQTSの場合と逆で,遺伝性
しないのかもしれない.
LQTSにおける TdP(あるいは失神)
発症は,運動や感
情的な興奮が引き金になることが知られている.実際,
症例提示1
これらの患者では運動負荷やエピネフリン(交感神経
この問題について実例を提示してもう少し議論した
4
34
, 9)
刺激薬)負荷テストで QT時間の延長が起こる
.し
い.図7の症例は,国立循環器病センターの鎌倉先生
かし,必ずしも全例が延長するとは限らないようであ
からご紹介いただいた方で,LQT1であることが,遺伝
る.これは,遺伝性 LQTSの多くを占める LQT1が IKs
子検索で判明している29).つまり,本例では IKs が障害
の障害により発症することと関連すると思われる.す
されているため交感神経刺激により,QT延長が期待
なわち,交感神経のトーヌスが高まると,L型 Caチャ
されるわけであるが,果たして,ここに示されるよう
ネル活性が増加し QTは延長するが,これに対抗する
にエピネフリンにより著明な QT延長が認められた
のが IKs の活性化であり,IKs の loss―of―functionがあれ
(QTc=46
0 msec から6
7
0 msec)
.
―
(
1203)―
. 図9 脳波検査の過呼吸負荷で誘発された torsades de
pointes
ø
Ⅴ1
¿
Ⅴ2
¡
Ⅴ3
ⅤR
Ⅴ4
ⅤL
Ⅴ5
ⅤF
Ⅴ6
ところが,次のような症例も経験される(図8)
.本
例は神戸労災病院の河島先生からご紹介いただいた方
a
で,LQT2であることが判明している30).臨床心臓電気
生理検査時に,体表面心電図と MAP(monophasic action potential)を用いてイソプロテレノール刺激によ
る QTcと MAP時間変化をみているが,ともに延長し
a
ていない.RR間隔で補正した MAPd90は3
5
4msecと
350msecであり,全く変化していない.したがって
LQT2症例では,交感神経活性時に QT時間の延長は必
ずしもみられず,上述の I Kr と I Ks の電気生理学的な特
a
性の議論と合致していることがわかる.
図10 図9の症例の12誘導心電図
遺伝子異常だけで,
どうして LQTSといえるのか?
例は大阪府立病院の福並先生からご紹介いただいた2
6
臨床診断された LQTS症例で遺伝子の変異がみつ
歳の女性で,最初の失神発作は1
0歳時にテレビをみて
かったからといって,その異常が LQTSの原因になっ
いるときに起こった.年に数回同様の失神を起こすた
ているとは即断できない.これは当然であるが,その
め近医を受診し,てんかんを疑われる.その後,抗て
患者の3
0億対というゲノム DNAをすべて調べて,そ
んかん薬を投与されるが病状が治まらないため,脳波
こにしか変異をみつけなかったのではなく,これまで
検査が再度行われた.このとき,過呼吸負荷を一緒に
に知られている LQTS関連遺伝子を調べただけである
行うために心電図を同時に記録したところ,図9でわ
し,
また未知の LQTS遺伝子が存在しているのは LQT4
かるように TdPが発見された.この患者の失神の原因
の存在からも明らかである.Kチャネルを含む LQTS
はてんかんではなく,LQTSであった28).その後,大
関連遺伝子に変異があることは,すなわち必要条件で
阪府立病院に入院し,過呼吸負荷テストが行われてい
しかあり得ない.実際には,個々の患者の遺伝子異常
るが,再現性をもって TdPが誘発されている.12誘導
が,どのような変化をチャネル機能に与えるのかを調
心電図では,胸部誘導で明らかな notched Tを伴う QT
べなければならない.このような機能解析
(functional
延長が特徴的である(図10)
.図11は入院中のモニター
assay)
を行って初めて,その変異が LQTS(= pheno-
心電図の一部で,朝の覚醒時に起こった TdPの記録で
type)
と関係があるらしいといえる.
ある.
果たして遺伝子検索では,エキソン内にミス
症例提示2
センス変異が発見された.図12にはシークエンシング
ここでは,site―directed mutagenesis(遺伝子組換
の結果を示すが,629番目のアルギニンがリジンに置
え)技術と培養細胞への変異遺伝子の導入を用いて,
換しており,その位置は チャネルの S5と S6セ
われわれの行っている機能解析の1例を紹介する.症
グメントをつなぐ細胞内ループでチャネル孔を形成す
―
(
1204)―
第5回アミオダロン研究会講演集
normally miÁratinÁ clone
♯12−1
T
C
G
A
♯12 N629K
6:32
T
6:33
T
C
G
G
C
A
629
Phe
Gly
aberrantly miÁratinÁ clone
♯12−6
6:37
1887
A C
G
Asn
8:37
T
T
8:49
C
G
Phe
G
Gly
C
A A
A G
629
Lys
図12 シークエンス結果
図1
1 図9の症例のモニター心電図
1887番目の Cが Aに置換している
(pA/pF)
120
(pA/pF)
10
0.8 μÁ WT/0.8 μÁ vector
80
0.8 μÁ WT/0.8μÁ N629K
5
40
0
0
−5
0
(pA/pF)
10
2
4
6
Time(ms)
8
0
1.6 μÁ N629K
2
4
6
Time(ms)
8
voltaÁe pulse protocol
4s
+40
5
−40
0
−80
−5
0
2
4
6
Time(ms)
8
図13 Dominant neÁative effect of N6
2
9K HERG
る P regionの中にあった
(N6
2
9K).チャネル機能を強
Gene
く障害することが推定されたため,遺伝子組換え技術
mRNA
transcription & splicinÁ
translation
を用いて同じ変異をつくり,プラスミドに組み込ん
で,培養細胞に導入し機能解析を行った.図13に典型
Protein(subunit)
Random assembly
的な実験結果を示す.N6
2
9K単独では,いかなる K電
流も記録できなかった.一方,W ild―typeと N62
9K
を1:1で導入すると,右上のトレースのよう
に Wild―typeの活性は,強力に抑制された.図14は多く
の細胞での結果をまとめたものであるが,N6
2
9Kがい
wild type
homotetramer
1/16
Cell surface expression
functioninÁ channel
traffickinÁ
Heterotetramer &
Mutant homotetramer
ER retention
15/16 deÁradation
図14 Dominant−neÁative effect of N62
9K HERG
わゆる dominant negative suppressionを示すことが
1つでも変換サブユニットが入ると機能しない
わかる.
この dominant negative suppression現象の説明に
なる
は,Kチャネルが4量体をとってはじめて機能的な蛋
となって初めて膜に運ばれるが,同じ率で Wild―type
白分子として働くということをまず理解しなければな
と N62
9Kがサブユニットとして存在するとすれば,
らない.図15の模式図に示すように,Kチャネルの孔と
N6
29Kが 1 つ で も 組 み 込 ま れ る 確 率 は1
5/16で,
―
(
1205)―
サブユニットは4量体に assemblyされ,完成品
¿
. S1
S2
S3
S4
S5
WT−GFP
S6
Pore
R243H
T587M
N
T587M−GFP
Essential for assembly
C
図1
5 T587Mは KCNQ1の assemblyに必要な部位に近い
図16 Confocal microscope imaÁes after trypsin treatment
N62
9Kサブユニットが入った4量体がすべてうまく
な蛋白分子は endoplasmic reticulum(ER)から膜へ運
機能しない(不良品)
とすると,期待される電流量は,
びだされないこと
(トランスポートの異常)
が想定され
2
8)
1 /16となり,実験結果と最もよく合致した .ごく最
る.そこで,われわれは前述の GFPをC末に fusionさ
近,N6
29K変異が入ることにより細胞膜へのトランス
せる方法を用いて T587Mの挙動を調べた.発現すると
ポートが障害されることが,GFP(green fluorescence
GFPは緑色の蛍光を発するため,共焦点顕微鏡で調べ
protein)
を用いたわれわれの実験でわかってきた(未発
ることにより細胞のどこに目的の蛋白分子が発現して
表データ).すなわち,この N6
2
9Kがヘテロ接合で発現
いるかが視覚的にみてとれる.図16は上に Wild―type,
すると,Wild―typeのチャネル機能が強力に抑制され
下に T58
7Mの confocal imageと光顕写真を示すが,変
る理由が明らかとなった.
異蛋白分子は,細胞膜に輸送されていないことがわか
る.すなわち,ERにおける翻訳まではいくわけである
症例提示3
が,
「完成品」
とする段階で正常なサブユニットと認識
¿
サブユニットは4量体となってはじめ
されないために,4量体に組み立てに使用されず,し
て「完成品」となるが,このようなプロセスや,その後
たがって膜への蛋白発現量が減ってしまうと考えられ
の膜へのトランスポート
(輸送)
の障害で LQTSが招来
た51).
されることがあることが最近わかってきた.われわれ
ところで,この変異が発見された3人の発端者はす
の 経 験 例 を こ こ で 紹 介 す る.LQT1の 原 因 で あ る
べてヘテロ接合であり,いわゆる Romano―Ward type
の異常がC末の中に発見された.異なる3家
の LQTSであった.したがって,確率論的には蛋白量
系の3名の発端者は,全員9歳時に TdPによると考え
が半減するだけの,比較的マイルドな変異であると考
られる失神を来しており,βブロッカーが著効を示し
えられた.しかし,この変異は,実際は重篤な病態を
た.シークエンシングの結果,C末端の中の5
8
7番目の
起こしており,この理由についての考察が必要であ
トレオニンがメチオニンに置換するミスセンス変異
る.2つの対立遺伝子のうち,どちらが転写されやす
(T287M)
を起こしていることが判明した.新潟大学第
いかという imprintingの現象が知られている.家系の
一内科の山下先生,相澤先生のご紹介で,われわれの
検索では,LQTSに母系遺伝がみられるようなので,
ところで,この T5
8
7Mの電気生理学的な機能解析を
imprintingの問題があるのかもしれない.
Kチャネル
行ったところ,変異チャネルは培養細胞で電流を再構
二次性(acquired)LQTSには
遺伝的背景があるのか?
築することができなかった.また,Wild―typeの発現に
T587Mは全く影響しなかった.すなわち,dominant
negative suppressionを示さなかった.
さて,われわれが最もよく遭遇する二次性 LQTSに
一方,のC末の1
0アミノ酸が,チャネル・サ
も,遺伝子異常が認められることが最近わかってき
ブユニットが4つ集合
(assembly)
するためには不可
, 04
, 5)
た293
.個々の症例を呈示するのは本日は時間の都合
欠なドメインであることが最近報告された50).T5
8
7M
で難しいが,これらの症例の遺伝子異常が,Kチャネ
は,このドメインに非常に近いことから,この部位の
ルトポロジーの中でどこに位置するかをみるのは興味
変異により,異常なサブユニットは,初めからチャネ
深い.図17の模式図は,におけるわれわれが現
ル分子に組み込まれない可能性がでてきた.このよう
時点で同定した変異を示しているが,R25
9Cと G6
43S
―
(
1206)―
第5回アミオダロン研究会講演集
G269S
Y611D
T613M
S641F
ΔF339
S1
S2
S3
S4
S6 A341V
A344E
S5
S1
Pore
G314A
G314S
R243H R259C
T587M
C
G643S
N
S2
S3
S4
S5
S6
Pore
A490T
N
T517T
図1
7 Schematic location of LQTS−associated mutations in KCNQ1
C
N629K
図18 Schematic location of LQTS−associated mutations in KCNH2
(HERG)
表5 LQTSの遺伝子型による病像と治療方針の違い
TdP
TriÁÁerinÁ
factors
manifest
LQTS
LQT1
QT
normal
Genetic backÁround
TdP/失神の状況
latent LQTS
図19
従来考えられているより LQTSの病態スペクトラムは広いも
のであり,二次性 LQTSの一部に遺伝的背景を有する症例が存
在する可能性あり
LQT3
運動時, 安静,
興奮
覚醒時
睡眠,
安静
−
+
+
−
Naチャネルブロッカー
+
+
Kチャネルオープナー
+
ペースメーカー
AÁe
LQT2
交感神経の関与
(βブロッカー治療)
の2症例は acquired LQTSで,他は familial LQTSで
あった.しかし,acquired LQTSでは発端者以外は
チャネルブロッカーを加える.また,LQT3では徐脈が
gene carrierでないというわけではなく,実際,無症
TdPの明らかな誘発因子であることから,βブロッ
候性の家族メンバーが発見されている,したがって,
カーはむしろ避けるべきである.この場合,Naチャネ
孤発例と呼ぶ方がよいのかもしれない.
ルブロッカーが第一選択薬となる.また,Kチャネル
図18には のトポロジーと変異の位置を示す
オープナーのニコランジルを追加使用するのも有効と
が,この中では A4
9
0Tが acquired LQTSであり,やは
される.
り,その変位の存在はチャネル機能に重要な S5―P―S6
今後の解決すべきいくつかの問題
以外にある.想定される機能障害が軽いことが期待さ
3
0)
れ,結果的に軽症の LQTSになった可能性がある .す
第1に LQTSは,単一遺伝子病かという点である.
なわち,LQTSの病態スペクトラムは図19のように広
その多くはKチャネル病ということができるが,単一
いものであり,acquired LQTSの一部には遺伝的背景
の遺伝子変異だけで phenotypeの説明ができない場合
を有するものが含まれると思われる.このような症例
がある.例えば,前述の症例3がそうである.すなわ
では triggering factorsとして薬剤,低カリウム血症,
ち,本疾患の多くは Romano―Ward typeの遺伝を示す
完全房室ブロックなどが加わることにより,予想外の
が,それは genotypeのレベルの話であって,pheno-
QT延長を来し,TdPを惹起する症例があるものと考
typeは実に期待値の3
0%程度しか出現しない52).機能
えられる.
解析からみるチャネルの loss―of―functionは確かに病
態とつながるのであるが,これを調節している別の何
LQTS遺伝的背景に準じた治療作戦
らかの factorが必ずあると考えられており,最近の研
表5に遺伝的診断に基づいた治療をまとめる.交感
究の1つの流れになっている.
神経の関与が大きい LQT1では,βブロッカーが第一
実際,これまで発見されていない新しい LQTS関連
選択薬である
(プロプラノロールで1 mg/kg)
.問題
遺伝子があることは間違いない.ごく最近の Keating
は,これだけで十分にコントロールできない症例であ
らの遺伝子検索の発見率をみても,明らかな LQTS症
り,多くは LQT2と3である.メキシレチンなどの Na
例の約6
0%にみつかるにすぎない53).今後は,イント
―
(
1207)―
. ロンを含めたより広範囲の検索もなされなければなら
謝 辞:本研究にご協力いただいた諸氏を以下に記し,
ない.前述した cystic fibrosisにおける CFTRの変異の
ここに深謝申し上げます.
のに
H. Otani, Y. Sugiura, T. Haruna, A. Kobori, H. Yoshida,
対して,LQTSにおける変異はあまりにも多彩すぎる
Y. Kono, M. Takano, T. Kubota, L―H. Xie, F. Yamashita, A.
3
63
, 7)
約7割がΔF50
8という決まった変異である
ため,そのスクリーニングに DNAチップを使用する
というわけにもいかない.すなわち,第2の問題点と
して,効率のよい遺伝子スクリーニング方法の開発が
ある.
第3の問題として,pharmacogenomicsがある.IKrブ
ロッカーとされる多種多様な薬剤は日常臨床で多く処
方される.しかし,その中で薬剤性の LQTSを起こす
症例は,ごく一部である.多因子遺伝子疾患でよく議
論される塩基変異多型 SNP(Single nucleotide polymorphism)
が,薬剤によるKチャネルの感受性を決め
ているとしたら,このような QTが延長しやすい背景
に遺伝子レベルの関与が潜んでいるかもしれない.実
際,最近の Sanguinettiらの alanine scanningを用いた
検討で,IKr ブロッカーの結合部位の詳細が明らかとな
り,他 の Kvチ ャ ネ ル に 比 べ て チ ャ ネ ル は
outer mouthが大きく,S6の芳香族アミノ酸残基が非
特異的に薬剤と結合することが示された54).
第4の問題として,それでは果たして LQTSの遺伝
子治療は可能かという点である.心筋に遺伝子導入を
安全かつ効率よくいかに行うかという命題に尽きる
が,現在では残念ながら レベルでしか成功し
ていない.ポストゲノム・シークエンスの時代に入
り,これからの研究課題として,このような治療がク
ローズアップされてくると思われる.
最後に,LQTS研究は多因子遺伝病とされる多くの
common diseaseの病態解析モデルとなり得るかとい
う点であるが,現在,これに対する解答はない.しか
し,機能解析を含む今後の LQTS研究の動向が多くの
示唆を与えてくれるものと期待される.
おわりに
遺伝子治療は将来の話としても,遺伝子診断は異常
が同定された場合,その発端者の家族メンバーでの検
討が非常に大切である.LQTS関連遺伝子のキャリア
であるということは,多くの場合,Kチャネルの機能
的余力(functional reserve)が疲弊していることを意
味しており,TdPを誘発するような因子を避けること
により,予期せぬ突然死から免れることができるから
である.
Noma, T. Ninomiya, K. Tsuji, S. Sasayama
文 献
1)Keating, M. T., Atkinson, D., Dunn, C. et al.:Consistent linkage of the long QT syndrome to the Harvey
ras―1 locus on chromosome 11. Am. J. Hum. Genet.
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19
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mutation affects Na + channel activity through interactions between alpha―and beta―1 subunits. Circ,
―
(
1208)―
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Res. 83:141―146,1998
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deletion in associated with Jervell and
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99
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:mutation in either of the two subunits of
the slow component of the delayed rectifier potassium channel can cause Jervell and Lange―Nielsen
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2
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943―
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97
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mutations cause Jervell and Lange―Nielsen
syndrome. Nature Genet. 17:267―268,1997
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trophysiol. 1
0:1
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. J. Cardiovasc. Electrophysiol. 11:1
04
8―
10
54,2
000
3
0)Yoshida, H., Horie, M., Otani, H. et al.:Bradycardia―induced long QT syndrome caused by a de novo missense mutation in the S2―S3 inner loop of .
American Journal of Medical Genetics 9
8:34
8―
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2)Hodgkin, A. L., Huxley, A. F.:Currents carried by sodium and potassium ions through the membrane of
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membrane conductance in the giant axon of Loligo. J.
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0)Jervell, A.:Surdocardiac and related syndromes in
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71
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99
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(
―
1209)―
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99
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9―
2
93
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47)Zhang, L., Timothy, K. W., Vincent, G. M. et al.:Spectrum of ST―T―wave patterns and repolarization parameters in congenital long―QT syndrome:ECG findings identify genotypes. Circulation 102:28
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5, 20
00
48)Schwartz, P. J., Moss, A. J., Vincent, G. M. et al.:Diagnostic criteria for the long QT syndrome:an update.
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49)Shimizu, W., Ohe, T., Kurita, T. et al.:Effects of
verapamil and propranolol on early afterdepolarizations and ventricular arrhythmias induced by epi-
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09,1
99
5
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50)Schmitt, N., Schwarz, M., Peretz, A. et al.:A recessive C―terminal Jervell and Lange―Nielsen mutation
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0,20
00
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5
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01
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3,19
99
Circulation 9
9:52
9―53
53)Splawski, I., Shen, J., Timothy, K. W. et al.:Spectrum
of mutations in long―QT syndrome genes. ,
, , , and . Circulation
85,2
00
0
1
02:11
78―11
54)Mitcheson, J. S., Chen, J., Lin, M., Culberson, C., Sanguinetti, M. C.:A structural basis for drug―induced
long QT syndrome. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9
7:
33
3,200
0
12
329―12
―
(
1210)―
第5回アミオダロン研究会講演集
質疑応答
(名古屋大学環境医学研究所循環器分野教授)
座長/児玉 逸雄
(京都大学大学院医学研究科循環病態学講師)
演者/堀江 稔
児玉(座長) どうもありがとうございました.
ると,バックアップがないから延長すると考えればい
堀江先生には,イオン・チャネル病の中でも Kチャ
いのでしょうか.
ネルの異常による QT延長症候群,LQTを主体に最先
堀江 そうです.rate dependentの QT延長や T波の
端の知識と情報について,ご自身の研究成果を交えな
変形は,QT延長症候群で比較的よくみられます.
がら,大変わかりやすくお話しいただきました.
児玉 そうすると,long―shortで来るのは,主に IKr,
この疾患は,一見似たような phenotypeがあったと
IKs がないところで IKr を抑制したということですか.
しても,最上流までたどっていくと1人ずつ原因が違
堀江 いえ,両方の異常で起こってくると思いま
うし,その対応の仕方,薬剤の使い方,生活指導の扱
す.いずれにしても,再分極させるための Kイオン電
い方も違ってくるということです.
流のリザーブは非常に減少している状態です.
そういったことが,将来,よりオーダーメイドの医
活動電位のプラトー相は非常に電流量の少ないとこ
療を可能にするのに大切だということでしょうか.
ろです.ですから,少しでも外向き電流が流れたり,
堀江(演者) おっしゃる通りだと思います.それか
ほんの少しでも内向き電流が減少することによって,
ら,遺伝子の異常がみつかった場合,家族に対する対
その持続時間が延長します.
応も大切です.遺伝子の異常を有していれば抗不整脈
そのために QTが非常に変化するわけですが,その
薬は避けるとか,無理なダイエット,特に若い女性の
ような状況における K電流のわずかな変化は,非常に
ダイエットは低カリウム血症の原因になりやすいので
重篤な病態を起こすことになると思います.
様々な予防策が講じられます.
児玉 QT延長症候群で失神が起こりやすい状況に
先生方の中で,薬剤による QT延長症候群であって
安静・覚醒とありましたが,安静・覚醒というのは,
もご経験がありましたら,インフォームド・コンセン
もともと rateが遅いところで何かびっくりするという
トをとって送っていただければ調べさせていただきま
ようなことでしょうか.
す.
堀江 そうです.目覚まし時計が鳴って発作を起こ
児玉 せっかくの機会ですので,フロアからご質
すというような症例で,LQT2に多いようです.
問,ご発言をお受けしたいのですが,いかがでしょう
児玉 通常に運動しているようなときとは違って,
か.
ゆっくりと sympathetic toneが上昇してくる状態では
薬物による後天性 QT延長症候群の場合,リズムが
なく,sympathetic toneがあまり上昇しない状態で,い
long―shortのときに torsades de pointesが起こりやす
きなり rateが短くなるのでしょうか.それが安静・覚
いですね.これは IKr で説明できるのですか.
醒や驚愕の効果ということでしょうか.
堀江 long―shortのカップリングで,EADがそこで
堀江 そうです.それに対して,LQT1では水泳中や
起こっていると思いますが,IKs が脱活性化してしまう
水泳直後とか,運動会で走った後,あるいは,ある一
ために,2つの K電流のバランスが崩れるというか,
定の運動を続けた途中や,その直後に失神する子供さ
両者とも減少するために EADが起こりやすいという
んが多いようです.
わけです.
児玉 そうすると,そういった子供に運動を禁止す
児玉 I Kr の不足を補う I Ks がない場合,I Kr がなくな
る場合でも,LQT1なら禁止しなくてはいけないし,
―
(
1211)―
. LQT2であればあまり禁止しなくても,ウォーミング
児玉 本日は,お忙しいところ最先端のお話をわか
アップをきちんとすればいいということでしょうか.
りやすくお話しいただきまして,ありがとうございま
堀江 それは少し極論かもしれません.ですから,
した.先生の今後の一層のご活躍をお祈りいたしま
genotypeがわかったとしても,その遺伝子の変異がそ
す.
の患者さんの病気を起こしているかどうかは,機能解
どうもありがとうございました.
析を行わなければわかりません.
―
(
1212)―