高温高圧水を用いたタンパク質のペプチド化

高温高圧水を用いたタンパク質のペプチド化
熊本大学大学院自然科学研究科後藤研究室 坂口明香
GOTO Laboratory
背景
米
米タンパク質や絹は特有の栄養価値と
機能性成分を持っている。
絹
NH2
O
O
米は5~12%タンパク質を含む
HN
タンパク質の構成
全ての必須アミノ酸
(リシン、トレオニンが少ない。)
米タンパク質や絹は様々な分野に
利用できないかと期待されている。
O
CH3
O
NH
Arginine (Arg)
CH3
O
OH
NH 2
N
OH
H3C
OH
NH 2
Isoleucine (Ile)
CH3
NH 2
Isoleucine (Ile)
O
Lysine (Lys)
HO
OH
P
H3C
アラニン
Alanine (Ala) O
チロシン
Threonine (Thr) NH 2
NH2
OH
OH
用途
健康食品、飲料、化粧品、
シャンプー、ヘアートリートメント
など・・・
NH 2
NH 2
用途
ダイエット食品、栄養補助食品、
化粧品、クリーム、シャンプー、
入浴剤、エステ材料など・・・
Methionine (Met)
Phenylalanine (Phe)
CH3
O
H3C
OH
NH 2
NH
Tryptophan (Trp)
O
OH
NH2
HO
セリン
OH
Tyrosine (Tyr)
O
HO
OH
Serine (Ser)NH2
この四者で全アミノ酸
の約90%を占める
NH2
Valine (Val)
目的
SuperSuperliquid critical
fluid
タンパク質
Protein
A
熱水処理
gas
steam
OH
NH2
S
H3C
高温高圧水とは
solid
OH
Glycine (Gly)
O
まゆ繊維の構成
フィブロイン 70~80%
セリシン
20~30%
他
1%程度
HistidineO(His)
O
H2N
グリシン
O
OH
従来、タンパク質をペプチド化し利用しやすく
するために酸・アルカリ処理等が行われている
が、処理に時間や手間がかかり、処理後の酸・
アルカリ廃液は環境への負荷が大きい
環境への負荷が大きい。
OH
NH 2
H3C
H2N
しかしながら、これらは水溶性
しかしながら、これらは水溶性
でないため利用しにくい。
でないため利用しにくい。
絹はほとんどがタンパク質である。
H
N
A
A A
加水分解
A:Amino acid
The triple point
T
The critical point
Peptides
超臨界流体は物質固有の臨界点を越えた非
凝縮性のガスである。
A
~
~
A
水溶性ペプチド + アミノ酸
A
Amino acids
A
A
A
A
水のイオン積は250℃付近で極大値をとり、水は酸
触媒的作用を示す。この付近の水を高温高圧水とする。
H 2Oの臨界点は 374℃,22.1MPa
374℃,22.1MPa
環境負荷の小さい高温高圧水処理により、タンパク質を
利用価値の高い水溶性ペプチドやアミノ酸に変換すること
高温高圧水は激しい加水分解作用
を持つ。
高温高圧水は激しい加水分解作用を持つ。
であり、このとき密度・粘度・拡散係数は気
体と液体の中間値をとる。
実験
実験条件
実験手順
反応器:SUS316
製回分式反応器
反応器:SUS316製回分式反応器
水
(Volume: 5.0ml)
原料:米タンパクパウダー
分析方法
高温高圧水処理
Arガス
原料
元素分析
H,C,Nの含有率
原料
家蚕絹パウダー
水溶化率
濾液
冷却
TOC
濾液中の有機炭素量
Lowry法
溶媒:水
仕込み比=1
wt%(
( パウダー0.05
g:水
水 4.95g
仕込み比=1wt%
パウダー0.05g:
4.95g),
10wt%(
g:水
水 3.60g
10wt%( パウダー0.40
パウダー0.40g:
3.60g)
タンパク質量
吸引水洗ろ過
GC-FID
残渣
高温高圧水処理物
反応時間:5
反応時間:5-100min
100min
アミノ酸の定性・定量
真空乾燥
濾液
残渣
重量測定
不水溶分率
50mlに希釈
反応温度:175,
300℃
℃
反応温度:175, 200, 225, 250,275および
250,275および300
The electric oven
結果と考察−米タンパク質
生成物
結語
タンパク質濃度
200℃
225℃ 250℃ 275℃
50
40
30
20
200℃
250℃
原料
10
0
60
200℃
225℃
250℃
275℃
原料
40
20
0
0
10
20
30
40
Reaction time(min)
50
60
200℃では反応時間が
200℃
長時間である方が水溶
化TOC
TOC収率が高い。
収率が高い。
225℃
225
℃で最大
で最大90%
90%の水
の水
溶化が確認された。
250および
250
および275
275℃
℃では
短時間である方が水溶
性TOC
TOC収率が高い。
収率が高い。
(%)Recovery of water-soluble
protein
(%)TOC
80
225℃
275℃
0
10
TOC濃度
100
20
30
40
Reaction time(min)
50
60
200℃
200
℃以外の条件で
は反応時間が増加する
ほどタンパク質濃度が
減少する傾向が見られ
た。
250℃
250
℃ 5min
minの場合が
の場合が
最もタンパク質濃度が
高く、原料の約50%
高く、原料の約
50%が
が
水溶性タンパク質とし
て回収された。
50
200℃
250℃
300℃
40
200℃
200
℃では長時間で
ある方がタンパク質濃
度が高い。
250℃
250
℃および
および300
300℃
℃で
は短時間であるほうが
タンパク質濃度が高い。
30
20
10
0
0
Hydrothermal Treatment
Peptides
60
10
20
30
40
Reaction time(min)
50
60
A A
~
~
175℃
(%)Recovery of water-soluble
protein
Protein
原料:米タンパク
パウダー
仕込み比:1
仕込み比:1wt%
反応時間:20
min
反応時間:20min
A A
Amino acids
A
A
A
A:Amino acid
米タンパク質を高温高圧水で処理することにより水溶化
することができた。
低温では反応時間が長い方が、高温では反応時間が短い
方が米タンパク質の水溶化が進んだ。
最大で原料の50%
が水溶性タンパク質として回収するこ
最大で原料の50%が水溶性タンパク質として回収するこ
とができた。
原料と水の割合が TOC濃度やタンパク質濃度に影響を
TOC濃度やタンパク質濃度に影響を
与えることがわかった。仕込み比が小さいほうがTOC
濃
与えることがわかった。仕込み比が小さいほうがTOC濃
度やタンパク質濃度が高い。
仕込み比1wt%、250℃5minの条件が最も高効率で
水溶性タンパク質を回収することができた。
※本研究は株式会社エヌ・ディー・シー、熊本大学
本研究は株式会社エヌ・ディー・シー、熊本大学21
21世紀
世紀COE
COE『
『衝撃エネルギー科学の深化と応用
衝撃エネルギー科学の深化と応用』
』のご支援により実施できましたことに感謝の意を表します。