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自由人権協会70周年プレシンポジウム
監視の“今”を考える
第1部 13:30~15:00
スノーデン氏ライブインタビュー
第2部 15:30~17:00
信教の自由・プライバシーと監視社会
テロ対策を改めて考える
日
時
2016 年 6 月 4 日土曜日
13:00 開場
場
主
共
所
催
催
東京大学情報学環・福武ホール 福武ラーニングシアター
ムスリムとの共生を考えるシンポジウム実行委員会
社団法人自由人権協会
目次
シンポジウムの趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
パネリストのプロフィール ・・・・・・・・・・・・・ 2
ムスリム違法捜査事件
・・・・・・・・・・・・・・・ 4
ハッサン事件とラザ事件 ・・・・・・・・・・・・・・ 6
参考文献
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
参考資料
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2
3
4
流出資料(マスキングあり)
一審判決の要旨
控訴審判決の要旨
井桁大介「テロとアメリカ』最前線(世界 883 号 207 頁)
9
シンポジウムの趣旨
テロに関するニュースを見聞きしない日はありません。中東やアフリカだけでなく、ベ
ルギーやフランスでも、凄惨なテロによって、多くの犠牲者が出ています。日本でも、い
つテロが起きてもおかしくない状況です。テロは憎むべきものであり、テロを防止する対
策も必要です。しかし、行き過ぎたテロ対策は、時に市民の自由を制約します。テロ対策
の名の下に、特に9.11以降、ムスリムに対する視線は厳しさを増し、世界各地で強引
な捜査手法や行き過ぎた監視が問題となっています。
2010年10月、警視庁の内部資料がインターネット上に流出し、警察が日本に住む
ムスリムを監視していることが明らかになりました。モスクを監視し、ムスリムの個人情
報を集めてデータベース化していたのです。私たちムスリム違法捜査弁護団は、国(警察
庁)と東京都(警視庁)を相手に訴訟を提起し、ムスリムを監視することが憲法に違反す
ると主張しました。しかし、日本の裁判所は、ムスリムを監視することもテロ対策のため
に必要だと判断しました。
このような監視プログラムは日本特有のものではありません。2011年10月、AP
通信の調査報道によって、ニューヨーク市警がムスリムを監視していることが明らかにな
りました。アメリカ自由人権協会が中心となって、ニューヨーク市警を相手に訴訟が提起
されました。2016年1月、ニューヨーク市警によるムスリム監視に一定の歯止めをか
ける、画期的な和解が成立しました。
テロ対策の最先端であるアメリカで、ムスリム監視が止められたのはなぜでしょうか。
2013年5月に起きたスノーデン・リークがきっかけです。9.11のショックで、二
度とテロを起こさないことが至上命題となり、議会は政府に対して広範囲にわたる監視の
権限を与えました。政府は、テロに関係あるかどうかを問わず、全ての情報通信を秘密裏
に監視し、情報を収集していました。市民や議会は政府の暴走に驚き、どのような情報が
収集されているか全くわからない、しかも、自分たちが政府の収集した情報にアクセスし
ようと思ってもアクセスできないという状況を危険だと思いました。政府による監視自体
をコントロールすべきという問題意識を持ちました。テロ対策としての監視とプライバシ
ーとのバランスを巡る、充実した議論が続いています。2015年には政府の監視権限に
一定の歯止めをかける法律が成立しました。
日本でも同じような議論ができるのではないか、そのような問題意識をもって、私たち
はこのシンポジウムを開催することにしました。政府が市民を監視し、情報を収集するこ
とも、ある程度は必要なことでしょう。しかし、政府の行動を議会や市民がコントロール
することもまた、行き過ぎた監視により生じ得る自由の制約にストップをかけるために必
要なことなのです。そうしないと、日本に住むムスリムに対する監視が、いつ自分たちに
向けられるか分からないのです。
このシンポジウムをきっかけとして、政府による監視とその限界について、幅広い議論
が巻き起こることを期待しています。
1
パネリストのプロフィール(第1部)
エドワード・スノーデン Edward Snowden
CIA、NSA 及び DIA の元情報局員。10 年近くにわたり
テクノロジーとサイバーセキュリティの専門家として
職務に従事。2013 年、NSA がテロと無関係な数十億の
個人情報を収集していたことを暴露。アメリカ政府が
監視政策を修正する大きな転換点となった。その献身
的な活動に対し、各賞を受賞。2013 年には Foreign
Policy 誌の Top Global Thinkers の 1 人に選ばれた。
現在は最新のテクノロジーの利用と発展を通じた人権
擁護活動に従事。2014 年から「報道の自由基金」理事。
金昌浩 Changho Kim
弁護士(日本及びニューヨーク州)。ムスリム違法捜査
弁護団団員。東京大学、シカゴ大学卒業。日本弁護士
連合会国際人権問題委員会幹事。認定 NPO 法人ヒュー
マンライツ・ナウ運営委員。
2
パネリストのプロフィール(第2部)
ベン・ワイズナー Ben Wizner
弁護士。アメリカ自由人権協会(ACLU)スピーチ・テクノロジー
プロジェクト理事。スノーデン氏の法律アドバイザーも務める。
ニューヨーク大学卒業、ハーバード大学ロースクール修了。
マリコ・ヒロセ Mariko Hiorose
弁護士。アメリカ自由人権協会ニューヨーク支部(NYCLU)シニア
スタッフ。画期的な和解が示された Raza 事件のムスリム側代理
人を務める。スタンフォード大学卒業、イエール大学ロースクー
ル修了。
宮下紘 Hiroshi Miyashita
憲法学者。中央大学総合政策学部准教授。内閣府個人情報保護推
進室、ハーバード大学客員研究員、ブリュッセル自由大学客員研
究員などを経て現職。著書に、『個人情報保護の施策』(朝陽会、
2010 年)
『プライバシー権の復権-自由と尊厳の衝突』
(中央大学
出版会、2015 年)。一橋大学大学院法学研究科博士課程修了、法
学博士。
青木理 Osamu Aoki
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。共同通信社会部、外信
部記者等を経てフリーに。テレビ・ラジオのコメンテーターも多
数務める。著書に、「日本の公安警察」
(講談社、2000 年)
「国策
捜査」
(角川書店、2013 年)
「青木理の抵抗の視線」
(トランスビ
ュー、2014 年)。
井桁大介 Daisuke Igeta
弁護士。ムスリム違法捜査弁護団。早稲田大学卒業、早稲田大学
ロースクール修了。
3
日本:ムスリム違法捜査事件
1
事件の概要
2010年10月、警察が収集・作成していた捜査資料がインターネット上に流出し
ました。この流出資料から、警察がモスクの出入りを監視し、個人を尾行するなどしてム
スリムの行動を監視し、ムスリムに関するあらゆる情報を収集し、日本に住むムスリム
の個人情報をデータベース化していることが明らかになりました。
2011年5月、ムスリムとその家族たち合計17名が原告となり、国(警察庁)及び
東京都(警視庁)を相手に訴訟を提起し、情報流出の違法だけでなく、情報収集の違法を
主張して、損害賠償を求めました。
2 第一審
原告は、情報収集の違法として、3つの主張を展開しました。1つ目は、モスクを監視
することは、ムスリムの信教の自由を侵害するという憲法20条違反の主張です。2つ
目は、ムスリムであるという点だけに着目して個人情報を収集することは、信仰を理由
とする差別であるという憲法14条違反の主張です。3つ目は、ムスリムの個人情報を
収集・データベース化することは、センシティブ情報の収集であり、プライバシーを侵害
するという憲法13条違反の主張です。
2014年1月、第一審裁判所(東京地方裁判所)は、情報流出の違法と過失を認め
て、情報を流出させた東京都(警視庁)に対して原告全員に合計1億円以上の損害賠償を
命じました。しかし、情報収集については、モスクの監視やムスリム全ての個人情報の収
集はテロ対策のために必要である、モスクの監視によってムスリムが被る不利益は嫌悪
感にとどまる、差別的メッセージが明らかになったのは情報流出が生じた結果に過ぎな
い等の理由で適法とし、憲法違反の主張をいずれも排斥しました。原告全員が判決を不
服として控訴しました。
3
控訴審と上告審
第一審での主張に加えて、2つの主張が追加されました。1つ目は、情報通信技術の発
展で情報のデータベース化が容易になり、警察による個人情報の収集の局面のみならず、
保管・利用の局面において憲法上の問題として検討する必要があるという主張です。2
つ目は、国連の2つの委員会(自由権規約委員会・人種差別撤廃委員会)による勧告に基
づいたもので、もはやムスリムを狙い撃ちにした監視が許されないことがグローバルス
タンダードであるという主張です。
2015年4月、控訴審裁判所(東京高等裁判所)は、第一審判決をほぼ踏襲し、情報
収集の違法を認めませんでした。原告全員が判決を不服として上告しましたが、最高裁
判所第三小法廷は2016年5月31日付で原告全員の上告を棄却し、ムスリムを監視
することがテロ対策のために必要であるという判断が確定しました。
4
日本:ムスリム違法捜査事件
4
判決の問題点
特に問題なのは以下の3点です。
1つ目は、テロ対策のためにムスリム全ての個人情報の収集が必要であると安易に認
めた点です。一定の属性に着目して網羅的に行われるテロ捜査は「テロリスト・プロファ
イリング」と呼ばれ、テロ捜査として効果がなく、しかも差別禁止原則に違反すること
は、2007年に国連人権理事会で採択された「テロ対策における人権と基本的自由の
促進及び保護に関する特別報告者報告書」でも明らかになっています。加えて、2014
年にも国連の2つの委員会が相次いで警告を発しています。日本の裁判所と警察実務だ
けが、グローバルスタンダードから取り残されていると言わざるを得ません。
2つ目は、モスクを監視されたり、個人情報を収集されたりすることでムスリムが被
る不利益を、嫌悪感と評価した点です。信仰は、個人の内面的な人格と結びつく、最もセ
ンシティブな情報の一つですので、このような情報を収集し、データベース化すること
による不利益を嫌悪感と評価するのは、およそ信仰の自由やプライバシーに対する理解
の欠如を示しています。
3つ目は、警察が収集した情報は開示されることが予定されておらず、情報流出によ
って初めて情報収集の存在が明らかになったとして、モスクを監視したり、ムスリムの
個人情報を収集したりすること自体は差別的なメッセージを発していないとした点です。
モスクの前に警察官が立っていれば、誰もがそのことに気づき、警察がムスリムを監視
しているというメッセージを受け取るはずであり、裁判所の想像力の欠如は明らかです。
なお、一審判決は判例時報2215号30頁以下、判例タイムズ1420号268頁
以下に掲載されています。また、ムスリム違法捜査弁護団は以下のウェブサイトで情報
を発信しています。
http://k-bengodan.jugem.jp/
5
アメリカ:ハッサン事件とラザ事件
1
事件の概要
2011年10月、AP通信の調査報道によって、2002年以降、ニューヨーク市警
がニュージャージー州とニューヨーク州に住む全てのムスリムとムスリムコミュニティ
を対象に、包括的かつ無差別な監視プログラムを実施していることが明らかになりまし
た。警察がスパイを雇いモスク内の会話を報告させる、潜入捜査員が大学やカフェでム
スリムの個人情報やコミュニティとの結びつきを記録するなど、ムスリムと少しでも関
係があればあらゆる情報を収集する捜査態様が浮き彫りになりました。
この報道を受け、両州に住むムスリム個人やムスリム団体は市などを相手取り訴訟を
提起しました。原告の代表者の名前を冠して、ニュージャージー州の事件はハッサン事
件、ニューヨーク州の事件はラザ事件とそれぞれ呼ばれています。
2
ハッサン事件
ハッサン事件は、2012年10月にニュージャージー地区連邦地方裁判所に提訴さ
れました。11名のムスリム個人、モスク運営団体、ムスリム関連会社、大学のムスリム
学生団体などが原告となって、ニューヨーク市警のムスリム監視プログラムは、テロと
の関係性が一切なくとも宗教のみに着目してムスリムとムスリムコミュニティを監視す
るものであり、信教の自由と平等保護を定めた憲法に違反すると主張して、監視プログ
ラムの差止め、プログラムにより収集した個人情報の廃棄及び損害賠償を求めました。
2015年10月、アメリカ連邦控訴審第3巡回区は原告らの訴えを却下していた一
審判決を覆し、さらなる審理を尽くさせるため原審に差し戻しました。この判決は、信仰
に依拠してムスリムを監視する捜査活動に警鐘を鳴らすもので、今後のテロ対策の捜査
実務に大きな影響を及ぼすとされています。重要なのは以下の3点です。
1つ目は、警察の内部で差別的な捜査がなされていれば、それだけで対象者に現実の
被害が生じていると評価した点です。差別的捜査により実害がもたらされたことを立証
するのは一般的に困難なので、この判断は訴訟実務において非常に大きな意義を有しま
す。警察が特定の宗教を別異に取り扱っている事実を立証するだけで、実害の有無に関
わらずその正当性を争う道が開かれることになったのです。
2つ目は、捜査の「動機」は違憲の判断の要件ではない、捜査が「意図的」に特定の宗
教を区別して取り扱っていれば違憲の疑いが生じるとした点です。警察の捜査の動機は
治安の維持や犯罪捜査であることが多く、差別的な動機で捜査することは極めてまれで
あり、例えそうだとしても監視されている側が動機を立証することは不可能に近いので
すが、この判断で差別的な動機でなくとも正当性を争いうることが明示されたのです。
3つ目は、政府に対して、すべてのムスリムを監視するプログラムがテロの予防に役
立つとするそのロジックの過程とそれぞれのロジックを裏づける証拠を具体的に示すこ
とを求めた点です。信仰する宗教のみに依拠する監視プログラムを実施するには、この
ような高いハードルをクリアしなければならないことを明確にしました。
6
アメリカ:ハッサン事件とラザ事件
3
ラザ事件
ラザ事件は、2013年6月にニューヨーク東地区連邦地方裁判所に提訴されました。
原告は4名のムスリム個人、モスク運営団体及びムスリム関連団体、被告はニューヨー
ク市や市長らです。基礎となる事実関係や法的主張はハッサン事件とほぼ同じです。
2016年1月、関係当事者間で合意が成立し、その和解内容が公表されました。重要
なのは以下の3点です。
1つ目は、ニューヨーク市警が、宗教を実質的あるいは動機的な要素とした捜査を違
憲であると認め、今後一切実施しないことを表明した点です。ムスリムであることのみ
に着目して捜査対象とすることが禁止されるのはもちろんのこと、ムスリムであること
を一要素とする捜査活動(例えば、20代で男性のムスリムを捜査対象とすること)も禁
止されました。
2つ目は、ムスリムに対する包括的監視の理論的支柱となったレポート『西洋におけ
る過激化:ホームグローンテロリストの脅威』を撤回した点です。このレポートは、全て
のムスリムが理論的にはテロリストになる可能性があると決め付けたもので、FBIや
ニューヨーク市警は、このレポートを理論的支柱としてすべてのムスリム及びムスリム
コミュニティの監視を正当化していました。このレポート以外に、すべてのムスリムを
監視することを正当化する理論的根拠は報告されておらず、FBIを初めとする他地域
の警察実務に与える影響は少なくないとされています。
3つ目は、ニューヨーク市警内部に市警のテロ対策活動が人権を侵害していないかを
監督する独立の委員会を設置し、その委員会の会議に独立の民間の法律家が「市民代表
法律家」として参加することが明記された点です。民族や宗教のみに着目した人権侵害
的な捜査の再発防止のために、警察が自らを監督する新たな委員会を設置したという点
で画期的です。
なお、以下のウェブサイトで全ての訴訟資料にアクセスすることができ、和解条項に
関するQ&Aや担当弁護士の解説記事も掲載されています。
https://www.aclu.org/cases/raza-v-city-new-yorklegal-challenge-nypd-muslimsurveillance-program
7
参考文献
1
ムスリム違法捜査事件について
⑴ 青木理・梓澤和幸・河﨑健一郎編著『国家と情報 警視庁公安部「イスラム捜査」
流出資料を読む』(現代書館、2011 年)
⑵ 井桁大介「認められなかった『違法捜査』-公安『テロ情報』流出事件を問い直
す」世界 854 号(2014 年)29 頁
⑶ 河﨑健一郎「公安捜査資料のネット流出事件は私たちに何を教えるか」αシノドス
vol.146+147(2014 年)
※http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawasakikenichiro/20140530-00035836/
に要約転載
⑷ 酒田芳人「『国際テロの危険』の名の下に、ムスリムのあらゆる情報を集めること
は許されるか?」JCLU News Letter 390 号(2014 年)8 頁
⑸ 福田健治「モスク監視を全面的に擁護したムスリム違法捜査国賠訴訟一審判決」法
と民主主義 487 号(2014 年)47 頁
⑹ 木村草太「法律家に必要なこと―イスラム教徒情報収集事件を素材に」月刊司法書
士 507 号(2014 年)4 頁
⑺ 小島慎司・平成 26 年度重要判例解説(有斐閣、2015 年)
⑻ 渡辺康行「『ムスリム捜査事件』の憲法学的考察」松井茂記ほか編著『自由の法理
坂本昌成先生古希記念論文集』(成文堂、2015 年)937 頁
⑼ 中林暁生・判例セレクト 2015[Ⅰ](有斐閣、2016 年)
2 ハッサン事件とラザ事件について
⑽ 井桁大介「『テロとアメリカ』最前線 ムスリム監視プログラムに対するアメリカ
の司法判断」世界 883 号(2016 年)207 頁
3 関連するものとして
⑾ 松本裕之「ムスリムの過激化対策を考える」警察学論集 65 巻 7 号(2012 年)94
頁
⑿ 山本龍彦「警察による情報保管・データベース化の『法律』的統制について」大沢
秀介ほか編著『社会の安全と法』263 頁(立花書房、2013 年)
⒀ 山本龍彦「アメリカにおけるテロ対策とプライバシー」都市問題 104 巻 7 号
(2013 年)24 頁
⒁ デイヴィッド・ライアン『監視社会』(青土社、2002 年)
⒂ デイヴィッド・ライアン『スノーデン・ショック-民主主義にひそむ監視の脅威』
(岩波書店、2016 年)
8
9
10
11
2,268
1,336
1,468
640
552
231
223
172
110
マレーシア
イラン
パキスタン
ナイジエリア
トルコ
エジプト
ウズベキスタン
サウジアラビア
チュニジア
29
51
7
レバノン
32
コートジボアール
6
国際交流会館・寮
留学生支援団体
321
42
専門・日本語学校
合計
117
156
大学
施設数
18
カタール
留 学生
10
ブルネイ
リビア
40
27
スーダン
国名
トーゴ
バーレーン
ガンビア
ソマリア
ガイアナ
2,406
370
259
511
1,266
合
1350
310
243
400
397
把握数
78.1%
155.6% スリナム
280%
56%
84%
94%
78%
31%
把握率
計
414.3% ギニアビサオ
78.4% コモロ
166.7% チャド
112.2% ニジェール
150%
120.5% モーリタニア
106%
90.2% トルクメニスタン
183.9% アルバニア
58%
81%
186.7% ガボン
94.6% モルジブ
78.8% ブルキナファソ
114.7% タジキスタン
112.7% モザンビーク
12,848
0
0
0
0
1
1
1
3
3
4
4
5
8
9
10
10
11
11
12
90.1%
0%
0%
0%
-
100%
50%
100%
300%
33.3%
100%
57.1%
71.4%
400%
225%
100%
333.3%
183.3%
366.7%
400%
185.7%
200%
170%
450%
-
133.3%
83.3%
51.2%
191.7%
ラエルとパレスチナから学生を招致
し、学生会議を開催。
日 本 イ ラ ン 協 会 ∼ 日本と
イラン本国との友好親善関係
の促進。
日本・ イス ラエル・ パレス チ
ナ学生会議∼毎年夏期にイス
日本ウイグル協会∼世界ウイグル
会議の日本支部として平成20年6
月に発足。日本人支援者を中心に
ウイグル民族運動を展開。
NGO・NPO 50団体
14,254
5
1
3
0
1
2
1
1
9
4
7
7
2
4
10
3
6
3
3
13
7
100.9% アラブ首長国連邦
111.6% ジブチ
14
17
18
19
20
20
22
23
7
10
4
0
15
24
43
12
外国人
把握件数 把握率
登録者数
102.6% アゼルバイジャン
81.7% イエメン
77.7% オマーン
90.5% パレスチナ
100.6% ベナン
77.7% シエラレオネ
82.8% キルギス
93.3% クウェート
留学生数
25
28
28
45
46
48
32
53
41
44
カザフスタン
53
55
マリ
50
57
58
68
84
105
108
109
124
192
225
237
451
497
1,329
1,344
1,763
2,265
3,123
ヨルダン
61
100
ウガンダ
シリア
84
セネガル
カメルーン
45
イラク
31
111
モロッコ
アルジェリア
137
ギニア
95
2,736
インドネシア
アフガニスタン
3,348
外国人
把握件数 把握率
登録者数
バングラデシュ
国名
イスラム諸国人把握状況
檜原村
その他
合計
34
5
295
23
52
44
23
3
インド
18
19
1
3
52
64
329
28
53
26
47
21
20
56
78
稲 城市
府中市
合計
その他
サーフショップ
塗料店
農協
園芸店
ホームセンター
薬局
調布市
9665
6619
135
672
93
249
100
1797
狛江市
三鷹 市
武蔵野市
西東京市
店舗数
小金井市
小平 市
化学剤
多
摩
市
国立 市
清瀬市
東久 留米市
東 村山市
国分寺 市
東大 和市
立
川
市
日野市
武蔵
村山市
昭島市
3
1
その他
4
14
瑞穂町
福 生市
羽村市
ハラールレスト
合計
ラン
八 王子市
ハラールフード
あきる野市
日 の出町
青梅 市
トルコ
非対象国 ネパール
人
日本
対象国人
パキスタン
バングラデシュ
国籍別
ハラールフード
奥多摩町
3133
2236
108
343
66
96
69
215
港区
中央区
台東区
江東区
墨
田
区
合計
その他
パキスタン
バングラデ
シュ
イラン
経営者国籍別
中古車
足 立区
荒川 区
千 代田 区
品 川区
大田 区
目
黒
目
渋谷区
新宿 区
文京区
北
区
豊 島区
板橋 区
中
野
区
七品目
取扱店舗数
世田谷 区
杉並区
練馬区
江
戸
川
区
214
16
15
32
151
店舗数
葛飾区
合計
その他
トルコ
バングラデシュ
イラン
パキスタン
162
15
10
26
51
60
経営者国籍別 会社数
貿易会社
全日本パキスタン協会
○ 平成12年12月12日開設
○ 東京都大田区蒲田5−21−13
ペガサスステーションプラザ209,210,211
○ 動員力 約2,000名
○ 全国に16支部
訳
非対象国人の利用のみ
外国人の宿泊利用なし
内
対象国人の利用あり
外国人の宿泊利用あり
対象宿泊施設総数
125
304
420
724
849
在日インドネシアムスリム協会KELUARGA
MASYARAKAT ISLAM INDONESIA(KMII)
○ 平成00年0月開設
○ 東京都目黒区目黒4−6−6
インドネシア共和国学校内
○ 在日インドネシア留学生協会は下部組織
在日本統一マレー人国民組織クラブ
【KELAB UMNO JEPUN(KUJ)】略称∼日
本UMNOクラブ
○ 東京都品川区小山6−24−3 マレーシ
ア・スチューデントハウス内
○ 役員数16名、動員力 約30名
在日パキスタン商工会議所【全パキ】
○ 2006年7月25日認可
○ 東京都大田区蒲田5−21−13
ペガサスステーションプラザ209,210,211
○ 入会金 役員30万円、一般1万円
○ 月会費 役員1万5千円、一般千円
ホテ ル
イスラミック・センター・ジャパン【ICJ】
○ 1968年1月1日設立
宗教法人化∼1980年12月15日
○ 東京都世田谷区大原1−16−11
○ 動員力 20人
○ ローヤッテヒラール、グレーブヤード委
員会を主催。
アフルル・バイトセンター(宗派 シーア派)
○ 1998年12月5日設立
○ 東京都杉並区下高井戸5−9−27
○ 日本人のイスラム教入信証明、婚姻証
明書の発行、離婚問題等の相談にも応じ
ている。
日本ムスリム協会
○ 1952年に設立
宗教法人登録∼1968年6月1日
○ 東京都渋谷区代々木2丁目26番5号
バロール代々木1004
○ 会員数 約200名
○ 組織内に日本ムスリム協会青年部(約60
名)があり、活発に活動中
在日パキスタン協会
○ 1977年3月19日設立
○ 東京都品川区西五反田5-26-12
○ 動員力 約2,000名
○ 全国に20支部
イスラム諸団体
平成20年8月31日現在
12
【注】これは判決ではありません。
平成26年1月15日午後3時 判決言渡 615号法廷
平成23年(ワ)第15750号等 公安テロ情報流出被害国家賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成25年9月11日
裁判長裁判官 始関正光,裁判官 進藤壮一郎,裁判官 宮﨑文康
原告 原告1ほか16名, 被告 国, 東京都
本判決の要旨
第1 主文
1 被告東京都は,原告ら(原告4を除く。)に対し,それぞれ550万円及
びこれに対する平成23年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
2 被告東京都は,原告4に対し, 220万円及びこれに対する平成23年
7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らの被告東京都に対するその余の請求及び被告国に対する請求をい
ずれも棄却する。
4 訴訟費用の負担(略)
5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
第2 事案の要旨
本件は,イスラム教徒である原告らが,警視庁,警察庁及び国家公安委員会が,
①モスクの監視など,原告らの信教の自由等の憲法上の人権を侵害し,また,い
わゆる行政機関個人情報保護法や東京都個人情報保護条例に違反する態様で個
人情報を収集・保管・利用したこと,②その後,情報管理上の注意義務違反等に
よりインターネット上に個人情報を流出させた(本件流出事件)上,適切な損害
拡大防止措置を執らなかったことが,それぞれ国家賠償法上違法であると主張
し,警視庁の責任主体である被告東京都並びに警察庁及び国家公安委員会の責
任主体である被告国に対して,国家賠償法1条1項等に基づき,それぞれ110
0万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成23年7月2
6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
る事案である。
本件の争点は,警視庁及び警察庁による個人情報の収集・保管・利用について
の国家賠償法上の違法性の有無(争点1),本件流出事件についての国家賠償法
上の違法性の有無(争点2),原告らの損害(争点3),国家賠償法6条の有効性
及び原告らの国籍国における相互保証の有無(争点4)である。
13
第3 当裁判所の判断の要旨
1 争点1について
⑴ 本件において流出したデータ(本件データ)は,警察が作成したもので,
警視庁公安部外事第三課が保有していたものであると認められる。
本件データには原告らの個人情報が含まれており,原告らには,本件データ中
の履歴書様書面等において,所属するモスクの名称が記載されている者,
「容疑」
欄に,特定のイスラム教徒との交友関係等について記載されている者が多数存
在する。中には,宗教的儀式又は教育活動への参加の有無・程度について記載さ
れている者も存在する。
ほとんどの原告らについては,捜査員が直接に把握活動をすることによって,
モスクへの出入状況や宗教的儀式又は教育活動への参加の有無についての情報
が収集され(本件モスク把握活動),また,その余の情報は,法務省入国管理局
等の関係機関等から提供を受け, 又は原告らに対して接触や捜索等を行う過程
で収集されたものであると認められる。
⑵ 国家によって信教の自由が侵害されたといい得るためには,国家による
信教を理由とする法的又は事実上の不利益な取扱い又は強制・禁止・制限といっ
た強制の要素が存在することが必要であると解されるところ,本件の情報収集
活動は,それ自体が原告らに対して信教を理由とする不利益な取扱いを強いた
り,宗教的に何らかの強制・禁止・制限を加えたりするものではない。
日本国内において国際テロが発生する危険が十分に存在するという状況, ひ
とたび国際テロが発生した場合の被害の重大さ,その秘匿性に伴う早期発見ひ
いては発生防止の困難さに照らせば,本件モスク把握活動を含む本件の情報収
集活動によってモスクに通う者の実態を把握することは,警察法2条1項によ
り犯罪の予防をはじめとする公共の安全と秩序の維持を責務とされている警察
にとって,国際テロの発生を未然に防止するために必要な活動であるというべ
きである。また,本件の情報収集活動が,主としてイスラム教徒を対象とし,収
集情報の中にモスクの出入状況という宗教的側面にわたる事柄が含まれている
ことは,イスラム教における信仰内容それ自体の当否を問題視していることに
由来するものではなく,イスラム教徒のうちのごく一部に存在するイスラム過
激派によって国際テロが行われてきたことや,宗教施設においてイスラム過激
派による勧誘等が行われたことがあったことといった歴史的事実に着眼して,
イスラム過激派による国際テロを事前に察知してこれを未然に防ぐことにより,
一般市民に被害が発生することを防止するという目的によるものであり,イス
ラム教徒の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないと認めら
れる。他方, 本件モスク把握活動は,捜査員が自らモスクへ赴いて,原告らのモ
スクへの出入状況という外部から容易に認識することができる外形的行為を記
14
録したにとどまり,当該記録に当たり,強制にわたるような行為がされていない。
これらを総合すると,本件の情報収集活動は,国際テロの防止のために必要や
むを得ない措置であり,憲法20条やこれを受けた宗教法人法84条に違反す
るものではない。
⑶ 警察は,実態把握の対象とするか否かを,少なくとも第一次的にはイスラ
ム教徒であるか否かという点に着目して決していると認められ,この点で信教
に着目した取扱いの区別をしていたこと自体は否めないが,情報収集活動の目
的,その必要性,これによる原告らの信教の自由に対する影響に照らすと,信教
に着目した取扱いの区別という憲法14条1項後段の列挙事由にわたる区別で
あることや,精神的自由の一つである信教の自由の重要性を考慮しても,その取
扱いの区別は,合理的な根拠を有するものであり,同条1項に違反するものでは
ない。
本件の情報収集活動自体は,国家が差別的メッセージを発するものというこ
とはできず,原告らの国家から差別的に取り扱われない権利ないし法的利益を
侵害したともいえない。
⑷ 警察には, 国際テロ防止のための情報収集活動の一環として,モスクに出
入りする各人について,その信仰活動を含む様々な社会的活動の状況を広汎か
つ詳細に収集して分析することが求められ,他方で,本件モスク把握活動によっ
て把握される原告らの行動が,第三者に認識されることが全く予定されていな
いものというわけではないことなどに照らすと,本件の情報収集活動によって
収集された原告らの情報が社会生活の中で本人の承諾なくして開示されること
が通常予定されていないものであることを踏まえても, 本件の情報収集活動は
国際テロの防止の観点から必要やむを得ない活動であって, 憲法13条に違反
するものではない。
また,適法な活動により得られた情報を警察が保有して分析等に利用するこ
とができることは当然であるから,当該情報の保有が憲法13条に違反するこ
ともない。
⑸ 本件データのうち原告らに関する部分の収集・保管・利用は,法律の留保
原則や,いわゆる行政機関個人情報保護法及び東京都個人情報保護条例に違反
するものでもない。
2 争点2について
⑴ 本件データは,警察職員(おそらくは警視庁職員)によって外部記録媒体
を用いて持ち出されたものと認められる。
⑵ 警視総監としては,いったん情報が外部へ持ち出され,その情報が外部の
パソコンに接続されれば,ウイニー等を通じてインターネット上に流出し,不特
定多数の者に伝達し,それによって原告らに多大な被害を与えることおそれが
15
あることが十分に予見可能であったから,その情報が絶対に漏えいすることの
ないよう,徹底した漏えい対策を行うべき情報管理上の注意義務を負っていた
にもかかわらず,外事第三課内におけるセキュリティ規程等を実際に遵守する
よう徹底する管理体制は不十分なものであったとみざるを得ず,このことが,外
部記録媒体を用いたデータの持出しにつながったと認められるから,警視総監
には,情報管理上の注意義務を怠った過失があって,国家賠償法上の違法性があ
り,被告東京都には,本件流出事件により原告らが被った損害を賠償する責任が
ある。
⑶ 警察庁には監査責任者が置かれ,警察情報システムに係る監査を行うも
のとされているが,その監査権限には限りがあり,監査責任者が恒常的に監査を
怠っていたとか,監査によって不十分な点を発見したのにその指摘を怠ったと
いうような事情は認めることができないから,被告国には本件流出事件発生の
責任はない。
⑷ 警視庁及び警察庁は,本件流出事件の発生後,原告らの個人情報を含め流
出したデータを全面的には削除することができなかったものの,尽くすべき義
務は尽くしたものと認められるから,被告らにはこの点についての責任はない。
3 争点3について
本件で流出した原告らの個人情報の種類・性質・内容,当該個人情報がインタ
ーネットを通じて広汎に伝播したことなどを鑑みると,原告らが受けたプライ
パシーの侵害及び名誉棄損の程度は甚大なものであったといわざるを得ず,告ら
の慰謝料額を各55万円(弁護士費用各50万円)と認める。ただし,原告4は,
本件データ中の書面においてテロリストであるような表記をされた原告3の妻
として,氏名,生年月日,住所のみが流出したにすぎないことから,慰謝料額を
200万円(弁護士費用20万円)と認める。
4 争点4について
外国人である原告らの国籍国(モロッコ,イラン,アルジエリア,チュニジア)
との聞には少なくとも本件事案に関する国家賠償法6条の相互保証があると認
められ,これらの外国人原告らも,被告東京都から損害賠償を受けることができ
る。
以上
16
【注】これは判決ではありません。
平成27年4月14日午後2時 判決言渡 717号法廷
平成26年(ネ)第1619号公安テロ情報流出被害国家賠償請求控訴事件
口頭弁論終結日 平成27年1月29日
東京高等裁判所第24民事部
裁判長裁判官 高野伸,裁判官 瀬戸口壯夫,裁判官 田辺暁志
控訴人兼被控訴人 1審原告1ほか16名
被控訴人(1審被告)国,控訴人兼被控訴人(1審被告)東京都
判決の要旨
第 1 主文
1 1審原告ら及び1審被告東京都の各控訴を棄却する。
2 控訴費用は,1審原告らの各控訴に係るものは1審原告らの負担とし,1
審被告東京都の各控訴に係るものは1審被告東京都の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,イスラム教徒である1審原告らが,警視庁,警察庁及び国家公安
委員会がモスクを監視するなどし,1審原告らの信教の自由等の憲法上の権利
を侵害し,市民的及び政治的権利に関する国際規約等に違反し,行政機関の保有
する個人情報の保護に関する法律(保護法)や東京都個人情報の保護に関する条
例(保護条例)に違反する態様で個人情報を収集,保管,利用し,その後,平成
22年10月28日頃,情報管理上の注意義務違反により個人情報をインター
ネット上に114点のデータ(本件データ)を流出させた(本件流出事件)上,
適切な損害拡大防止措置を執らなかったとして,国家賠償法1条1項に基づき,
警視庁に関しては1審被告東京都に対し,警察庁及び国家公安委員会に関して
は1審被告国に対し,連帯して,1審原告らが被った精神的損害等の損害金各2
266万円の一部である各1100万円及びこれに対する平成23年7月26
日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事実である。
2 原審(東京地方裁判所平成26年1月15日判決)は,1審原告らの各請
求について,1審被告東京都に対し,1審原告4以外の1審原告らに各550万
円及びこれに対する遅延損害金の支払並びに1審原告4に220万円及びこれ
に対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求をいずれも棄
却した。この原判決に対し,1審原告ら及び1審被告東京都がそれぞれの敗訴部
分を不服として控訴した。
3 本判決は,1審原告ら及び1審被告東京都の各控訴を棄却し,原判決を維
持した。
17
第3 裁判所の判断の要旨
*本判決は,基本的に1審判決を引用しており,以下は,引用部分を含めた判
決要旨である。アンダーラインは高裁判決で付加された部分の要旨である。
1 争点1(警視庁及び警察庁による個人情報の収集,保管,利用についての
国家賠償法上の違法性等)について
⑴ 憲法20条1項(信教の自由)違反の主張について
本件データの元となった各文書は,警視庁公安部外事第三課が保有していた
ものであり,本件データには「モスクへの出入状況」等の1審原告らの個人情報
が含まれている。
本件の情報収集活動は,それ自体が1審原告らに対して信教を理由とする不
利益な取扱いを強いたり,宗教的に何らかの強制,禁止,制限を加えたりするも
のではない。日本国内において国際テロが発生する危険が十分に存在するとい
う状況,ひとたび国際テロが発生した場合の被害の重大さ,その秘匿性に伴う早
期発見,発生防止の困難さに照らせば,本件モスク把握活動を含む本件の情報収
集活動によってモスクに通う者の実態を把握することは警察法2条1項により
犯罪の予防を始めとする公共の安全と秩序の維持を責務とされている警察にと
って,国際テロの発生を未然に防止するために必要な活動というべきである。ま
た,本件情報収集活動が,主としてイスラム教徒を対象とし,モスクの出入状況
という宗教的側面にわたる事柄を含むことは,信仰内容それ自体の当否を問題
視していることによるものではなく,イスラム教徒のうちのごくー部に存在す
るイスラム過激派によって国際テロが行われてきたことや宗教施設においてイ
スラム過激派による勧誘等が行われたことがあったという歴史的事実に着眼し
たもので,イスラム教徒の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものでは
ない。他方,本件モスク把握活動は,外部から容易に認識することができる外形
的行為を記録したにとどまり,強制にわたるような行為はない。これらを総合す
ると,本件情報収集活動によって1審原告らの一部の信仰活動に影響を及ぼし
たとしても,国際テロの防止のために必要やむを得ない措置であり,憲法20条,
宗教法人法84条に違反しない。
以上は,本件個人データ(本件データのうち,1審原告らの個人情報に関する
部分)を収集した当時の状況を踏まえてのものであり,本件情報収集活動が,実
際にテロ防止目的にどの程度有効であるかは,それを継続する限り検討されな
ければならず,同様な情報収集活動であれば,以後も常に許容されると解されて
はならない。
⑵ 憲法14条(法の下の平等)違反について
警察は,実態把握の対象とするか否かを,少なくとも第一次的にはイスラム教
徒であるか否かという点に着目して決しており,この点で信教に着目した取扱
18
いの区別をしていたものである。しかし,これは国際テロを巡るこれまでの歴史
的事実に着眼してのものであり,イスラム教徒の精神的・宗教的側面に容かいす
る意図によるものではなく,本件情報収集活動は国際テロ防止のために必要な
活動であり,他方,これによる原告らの信教の自由に対する影響は,警察官がモ
スク付近ないしその内部に立ち入ることに不快感,嫌悪感を抱くといった事実
上の影響が生じ得るにとどまることなどからすると,その取扱いの区別は,合理
的な根拠を有するものであり,憲法14条1項に違反しない。
1審原告らは,本件情報収集活動は,ムスリムがテロリストあるいはテロリス
トである可能性が高いという差別的メッセージを発するもので,ムスリムに対
する差別を助長すると主張するが,収集された情報が外部に開示されることを
予定されていないことは明らかであり,本件情報収集活動が国家による差別的
メッセージを発するものであるということはできない。
⑶ 憲法13条違反(信仰内容・信仰活動に関する情報を収集・管理されない
自由の侵害)について
本件情報収集活動によって収集された1審原告らの情報は,社会生活の中で
本人の承諾なくして開示されることが通常予定されていないものであるが,警
察には,国際テロ防止のための情報収集活動の一環として,モスクに出入りする
人について,その信仰活動を含む様々な社会的活動の状況を広汎かつ詳細に収
集して分析することが求められ,他方で,モスクへの出入状況や宗教的儀式,教
育活動への参加状況という外部から容易に認識することができる外形的行為は,
第三者に認識されることが全く予定されていないわけではない。本件情報収集
活動は国際テロの防止の観点から必要やむを得ない活動であるというべきであ
り,憲法13条に違反するということはできない。
⑷ 警視庁及び警察庁による個人情報の保有等が憲法13条に違反するか
情報通信技術の発展に伴い情報のデータベース化等が可能となり,捜査機関
による個人情報の収集の局面のみならず,保管,利用の局面において憲法上の問
題として検討する必要があるという見解は傾聴に値する。しかし,本件情報収集
活動は,もともと継続的に情報を収集し,それを分析,利用することを目的とす
るものであり,このような情報の継続的収集,保管,分析,利用を一体のものと
みて,それによる個人の私生活上の自由への影響を前提として前記のとおり憲
法適合性を判断したのであり,1審原告らの個人情報の保有等も憲法13条等
に違反しない。
また,1審原告らが指摘する最高裁平成20年3月6日第一小法廷判決(住基
ネットの事案)は,住民基本台帳法に定める制度の仕組み等に即して判示したも
ので,本件とは事案を異にする。
⑸ 当審における1審原告らの主張(国際人権規約違反)について
19
市民的及び政治的権利に関する国際規約17条に定める個人の私生活上の自
由の保護並びに同規約2条及び26条に定める宗教による差別的取扱の禁止は,
その内容において憲法13条,14条1項において規定するところと異ならず,
本件情報収集プログラム及び本件情報収集活動は同規約17条並びに2条及び
26条に違反しない。
⑹ 本件個人データの収集・保管・利用は,法律の留保原則,保護法,保護条
例に違反しない。
2 争点2(国家賠償法上の違法性)について
⑴ 1審被告東京都について
本件データは,警察職員(おそらくは警視庁の職員)によって外部記録媒体を
用いて持ち出されたものと考えられる。
警視総監は,本件データが外部へ持ち出されれば,個人に多大な被害を与える
おそれがあることが十分に予見可能であったから,1審原告らの個人情報が漏
えいすることのないよう,徹底した漏えい対策を行うべき情報管理上の注意義
務を負っていたところ,外事第三課内における管理体制は不十分なものであっ
たとみざるを得ず,このことが,外部記録媒体を用いたデータの持出しにつなが
ったものであるから,警視総監には,情報管理上の注意義務を怠った過失があり,
1審被告東京都は国家賠償法による責任を負う。
⑵ 1審被告国について
警察庁の監査責任者には本件流出事件について義務違反は認められず,1審
被告国の責任を認めることはできない。
⑶ 本件流出事件発生後の1審被告らの不作為の違法性について
警視庁及び警察庁は,連携して,尽くすべき義務は尽くしたものとみるのが相
当であり,1審原告らのいう損害拡大防止義務を怠ったものということはでき
ない。
3 争点3(損害)について
本件流出事件が1審原告らに対して与えたプライバシーの侵害及び名誉棄損
の程度は甚大であり,1審被告東京都は,本件データが警視庁が保有していた情
報であることを認めていないなどの事情を考慮し,1審原告らについては一律
に,各500万円(1審原告4については,その精神的損害は他の1審原告らよ
りは少ないことから200万円)をもって相当と認め,その1割を弁捜士費用相
当の損害と認める。
20
責了
月本誌
印 原稿 組頁
42
6
品 名
岩波
書店
得意先
世界
邦最高裁判所は彼らの主張を退け、各人
に有罪判決を下した。司法が差別に加担
した歴史である。
戦後、彼ら自身をはじめとする多くの
日系人やその支援者たちの活動により、
三人の名誉が回復された。一九八四年か
という再
ら一九八七年には、 Coram nobis
審手続により三人に無罪判決が下された。
一九八八年には、日系人の強制収容は、
人種差別、戦争パニック、そして誤った
政治判断に基づくものであったと認める
シビル・リバティ法が施行された。先日
逝去したスカリア元連邦最高裁判事はあ
るインタビューで、
﹁ コレマツ事件の多
数意見は判断を誤った﹂と認めたうえ、
ャンプへ移住させた。その数は一二万人
アメリカの差別の歴史
第二次世界大戦と日系人
以上と言われている。
﹁ コレマツ事件におけるジャクソン判事
の反対意見は、過去の最高裁における最
もすばらしい意見の一つだ﹂と賞賛した。
アメリカ合衆国には消し去ることので ミノル・ヤスイ氏、ゴードン・ヒラバ
きない差別の歴史がある。日系アメリカ
ヤシ氏、そしてフレッド・コレマツ氏の 現代ではコレマツ事件での三人の最高
裁判事の反対意見こそ、あるべき司法の
人の強制収容もその一つだ。第二次大戦
三人が、この軍事政策に背いて逮捕・起
訴された。彼らは、
﹁ 日 本 人 罪 ﹂と も 言
正義であったと評価されている。彼らは、
軍事エリアとして設定し、エリア内に居
うべきこの政策は憲法の禁止する差別に
たとえ国家の存亡をかけた戦時中であっ
住していた全ての日系人を内陸の強制キ
他ならないとして争ったが、アメリカ連
ても政府や軍の言い分を鵜呑みにしては
207
中、アメリカ政府は西海岸の四つの州を
21
つつある。
二〇一〇年一〇月に生じた、
い
予防に役立っていることを示す証拠は、
する恐れがあるというならば政府はその
わゆる公安情報流出事件により、日本の
政府から一つも提出されなかったにもか
具体的な証拠を出さなければならないが、 警察がムスリムであることのみを理由と
かわらず。これは日本の裁判所特有の現
政府の証拠は全く具体的なものではない、 して日本に住む全てのムスリムを監視し、 象なのだろうか。コレマツ事件の反省の
この政策は人種差別に他ならない、と多
詳細な個人情報を収集し、巨大なデータ
記憶が生々しく残るはずのアメリカの司
数意見を批判したのである。
ベースを作り上げていることが明らかに
法はどうなのだろうか。
テロ対策の名の下で
11
9・ 以降、テロの脅威はしばしば戦
争になぞらえられる。
﹁ テロとの戦争 ﹂
という言葉も使われる。テロの予防や摘
なった。テロ対策の名の下に、特定の宗
本稿では、ニューヨーク市警がテロ対
教を信仰することのみを監視の理由とし
策の名の下に実施したムスリム監視プロ
ているのである。個人情報流出の被害を
グラムをめぐる二つの司法判断を紹介す
受けたムスリムやその家族らは、国と東
る。これらの裁判では、アメリカの司法
京都を相手取り国家賠償訴訟を提起した。 がコレマツ事件の教訓を覚えているか、
発が警察の重要な任務であることに疑い 筆者が所属するムスリム違法捜査弁護
団は、原告らの代理人として、ムスリム
はない。しかし、警察はテロ対策名目で
試されることとなった。
ニューヨーク市警のムスリム監視プログラム
あれば何をしてもいいわけではない。自
、
監 視 活 動 が 憲 法 一 三 条 ︵ プライバシー権 ︶
由や平等といった憲法で定められた基本
、 二 〇 条 ︵信教の自
二〇一一年八月、AP通信が、後にピ
一 四 条 ︵差別の禁止︶
ュリツァー賞を受賞することとなる調査
由 ︶な ど に 反 す る と 主 張 し た が、 一 審
的な理念を侵すことは許されない。そし
て、憲法の理念に基づき、警察や軍の暴
︵東京地方裁判所︶
・控訴審 ︵東京高等裁判所︶
報道を開始した。二〇〇二年以降、ニュ
走に歯止めをかけるのは司法の役割であ
ともに、警察の捜査活動は合憲であると
ーヨーク市警がニュージャージー州とニ
る。その役割を放棄するとき、
﹁ 裁判所
判断した。平穏なムスリムと過激派のテ
ューヨーク州に住む全てのムスリムとム
は市民の裁判所ではなくなり、政治の道
ロリストを区別するためには、モスクの
スリムコミュニティを対象に、包括的か
具に成り下がる﹂︵コレマツ事件におけるジ
内部に立ち入ってでも全てのムスリムを
つ大規模な監視プログラムを実施してい
。
ャクソン判事の反対意見︶
監視することが必要だと断言したのであ
ることを暴くものだった。
日本の裁判所は既にこの役割を放棄し
る。そのような監視活動が実際にテロの
監視プログラムは入念に作られていた。
警察は﹁モスク・クローラー﹂と呼ばれ
は、日本の警察が、少なくとも監視プロ
と平等保護を定めた憲法に違反すると主
るスパイを雇い、モスクの中で交わされ
グラムについて、場合によっては収集し
張して、監視プログラムの差し止め、プ
る信者同士の会話を逐一警察に報告させ
た情報そのものについて、ニューヨーク
ログラムにより収集した個人情報の廃棄、
ていた。
﹁ レイカーズ ﹂と呼ばれる潜入
市警と情報共有ないし意見交換をしてい
および損害賠償を求めた。
11
2 0 1 6 . 6 208
世 界 SEKAI
ならない、日系人がスパイや妨害工作を
10
捜査員は、大学やカフェに私服で潜入し、 たと考えている。
12
二〇一五年一〇月一三日、アメリカ連
邦控訴審第三巡回区は、原告らの訴えを
ムスリム一人ひとりの個人情報やコミュ AP通信の報道を受け、両州に住むム
スリムやムスリム団体はニューヨーク市
却下していた一審判決を以下の理由で覆
ニティとの結びつきを克明に記録してい
た。
﹁デモグラフィック・ユニット﹂と
などを相手取り訴訟を提起した。原告代
し、さらなる審理を尽くさせるため事件
名づけられたチームは、両州の地図上に
表者の名前を冠して、ニュージャージー
を原審に差し戻した。この判決は、信仰
ムスリムと関連のあるカフェやレストラ
州の事件はハッサン事件、ニューヨーク
に依拠してムスリムを監視する捜査プロ
ンを関係する国ごとに色分けして印をつ
州の事件はラザ事件とそれぞれ呼ばれる。 グラムに警鐘を鳴らすものであり、今後
けていた。ムスリムと少しでも関係があ
ればあらゆる情報を収集する、偏執狂的
ハッサン事件
のテロ対策の捜査実務に大きな影響を及
ぼすとされている。重要な点は以下の三
点である。
ハッサン事件は、二〇一二年一〇月に
す 差
ニュージャージー地区連邦地方裁判所に 判 旨 1
差 別 は 劣 等 の 烙 印 を 押 ニューヨーク市警の捜査手法は、日本
別は目に見えない。目に見えない以上、
提訴された民事裁判である。原告は、一
の警察の監視プログラムと驚くほどよく
似ている。日本の警察も、東京の主要な
一名のムスリム個人のほか、モスク運営
監視プログラムが警察の内部にとどまる
モスクに潜入捜査員を派遣したり監視カ
団体、ムスリム関連会社、大学のムスリ
限り実害は生じない
メラを設置するなどしていたし、東京都
ム学生団体などである。彼らは、ニュー
を却下したのが一審であった。
の地図上にモスクや関連施設の位置を落
ヨーク市警のムスリム監視プログラムは、 これに対し控訴審判決は、以下のよう
とし込むなどしていた。流出資料の中に
テロとの関係性が一切なくとも宗教のみ
に、差別的に取り扱われることそれ自体
は日本語で作成された資料をあえて英訳
に着目してムスリムとムスリムコミュニ
が損害であると強調した。
したものも含まれていることから、筆者
ティを監視するものであり、信教の自由
︱
そう述べて訴え
﹁不平等な取り扱いは、それ自体﹃劣
209
「テロとアメリカ」最前線
な捜査態様が浮き彫りになった。
22
けることそれ自体が実害なのだと判断し、 が﹃意図的﹄か﹃偶発的﹄かを分けるも
受けない人々はこのことを極めて安直
警察の差別的捜査に対し真正面から警鐘
のであり、一方﹃動機 ︵ motivation
︶
﹄とは
に軽視してきた。歴史からこの心地よ
を鳴らした。この判断により、差別的捜
﹃ある人の行動が意図的であるとして、
くない教訓を学ぶことができる。差別
査の被害者は、警察が特定の宗教を別異
なぜ彼はそれを行ったのか﹄を問うもの
的な取り扱いがもたらす現実的で確認
に取り扱っている事実を立証するだけで、 である﹂として、
﹁動機﹂と﹁意図﹂を
可能な被害から目を背けることは、必
その正当性を争う道が開かれることにな
区別したうえで、その捜査が﹁意図的﹂
ずや後日の悔恨を招く﹂
ったのである。
に特定の宗教を区別して取り扱ってさえ
判旨2 捜査の﹁動機﹂は違憲の判断の
差別的な捜査プログラムが外部に漏れ ﹁本件プログラ
要 件 で は な い 一 審 は、
た場合には、︵皮肉にも︶実害の立証は容
いれば違憲の疑いが生じるとした。これ
により、動機が差別的なものでなくとも
14
2 0 1 6 . 6 210
世 界 SEKAI
等の烙印﹄を押すこととなる。差別を
正当性を争いうると明示したのである。
易である。警察に監視されていることが
ムの目的は単にムスリムを差別すること
知られると、
取引を打ち切られたり、
賃貸
正当性の立証責任は政府に 控
にあるのではなく、法を遵守する一般の 判旨3
訴審判決は、政府に対し、全てのムスリ
借契約を断られることが多いためである。 ムスリムの中に潜むムスリムテロリスト
ムを監視するプログラムがテロの予防に
差別的捜査それ自体から実害が生じたこ
理由としていた。動機が差別的でなけれ
役立つとするそのロジックの過程とそれ
とを立証するのは一般的に困難である。
ば問題ないとしたのである。
13
他方プログラムが外部に漏れない場合に、 を見つけることにあった﹂ことを合憲の
ぞれのロジックを裏づける証拠を具体的
とりわけ本人すらそのような捜査に気づ しかし、警察の捜査の動機は、︵当然な
がら︶治安の維持や犯罪捜査であること
いていない場合には、目に見える実害は
に示すことを求めた。
﹁風が吹けば桶屋が
生じていないと誤解されがちである。
が多く、差別的な動機で捜査プログラム
まず政府は、風が吹く ↓ 視力を失う人
だからといって、一審のように差別的
捜査それだけでは実害と評価しない判決
極めてま
を策定することは︵あるとしても︶
が増える ↓ 三味線を習う人が増える ↓
れであるし、たとえそうだとしても監視
猫が減る ↓ ねずみが増える ↓ 桶がかじ
は、
警察に対し
﹁ばれなければ何をしても
されている側がその動機を立証すること
かる﹂のことわざになぞらえるならば、
られる ↓ 桶屋が
かるというロジック
いい﹂とのメッセージを送ることとなる。 は不可能に近い。これに対し控訴審判決
の流れを裁判所に提示しなければならな
本判決は、この点について、差別を受
は、
﹁
﹃ 意 図 ︵ intent
︶
﹄とはある人の行動
い。そして、それぞれの矢印について、
例えば、
﹁ これくらいの強さの風が吹け
れるのはその反対の見解である。すなわ
ニューヨーク東地区連邦地方裁判所に提
ば視力を失う人がこれだけ増える﹂とい
ち、強い宗教意識は、過激化を促進する
訴された民事訴訟である。原告はムスリ
う事実を、具体的なデータに即して立証
のではなく、イスラム教の名において暴
ム個人、モスク運営団体、ムスリム関連
しなければならない。全ての矢印 ︵ロジ
力化に反対するという考えを人々に植え
団体であり、被告はニューヨーク市やニ
ックの過程︶で同様の立証に成功して初め
つけることができる﹂と指摘している。
ューヨーク市長らである。基礎となる事
て、政府の主張は認められることとなる。 過激化に至る過程は偶発的な要素を多く
実関係や法的主張はハッサン事件とほぼ
17
16
同じである。
このハードルは実務的にかなり高い。
政府にとっては大変な労力であるが、信
含むものであり、特定の宗教やイデオロ
仰する宗教のみに基づく監視プログラム
このことは多くの研究によって報告され
当事者が同意した和解内容を公表した。
を実施するには、これだけのハードルを
ているのである。
重要な点は以下の三点である。
ギーによってもたらされるものではない。 二〇一六年一月七日、裁判所は、関係
クリアしなければならないことを明確に
和解内容1
宗教を要素とする捜査の禁止
テロリストの一部が宗教や思想をテロ したのである。
の理由としていることは確かである。そ 第一に、捜査方針を策定する際に、宗
ハ
ッ
サ
ン
判
決
の
重
み
ム
ス
リ
ム
コ
ミ
ュ
教を実質的あるいは動機的な要素として
のため、つい人はその属性とテロを結び
ニティを監視すればテロを抑止できると
はならないことが確認された。今回の監
付けてしまう。そしてその属性を恐れる
ようになり、迫害するようになってしま
視プログラムのように、ムスリムである
ば、ニューヨーク大学付設の研究機関で
う。司法の役割は、このような恐れを法
ことのみを理由として監視対象とするこ
﹁ 入手
あるブレナンセンターの論文は、
律という理性で抑え込むことにある。ハ
とが禁止されるのはもちろんのこと、ム
可能な研究からは、テロリズムがムスリ
ッサン判決は、恐れを適切に制御する三
スリムであることを一要素とする捜査活
ムの信仰によるものであるという見解や、 つの要件を定立したものとして高く評価
動 ︵例えば、具体的な理由なく二〇代で男性の
イスラム教 ︵イスラム教の中でも特に厳格又
は保守的とされている宗派でさえ︶を信仰す
ることが暴力化へのステップであるとい
されている。
ラザ事件
う見解は支持できない。むしろ、示唆さ ラザ事件は、二〇一三年六月一八日に
ムスリムを捜査対象とすること︶も禁止され
ることとなった。
また、監視的な捜査は、対象者以外に
対しても、憲法上の権利 ︵表現の自由や信
211
「テロとアメリカ」最前線
15
いう考えは全く実証されていない。例え
23
ステムの導入 ニューヨーク市警の内部
しかし、このレポートは、サンプル数
に独立の監督委員会が設置されることと
19
る。この萎縮効果を防ぐため、今後は捜
当化していたのである。
18
2 0 1 6 . 6 212
世 界 SEKAI
教の自由など︶の行使を萎縮させるとされ
査プログラムの策定に当たり、直接の捜
も少なく、データの分析方法にも問題が
査対象ではない人々に与える影響も考慮
多いものとして、ムスリムコミュニティ
家﹂の導入である。
﹁ 市民代表法律家 ﹂
しなければならないとされた。
や研究者など幅広い人々から撤回を求め
は民間の法律家から選任される。新設さ
られていた。先ほど紹介したブレナンセ
れる委員会のメンバーの一員として、市
ホームグローンテ
ンターの論文も、このレポートは根拠の
警のテロ対策活動が事前に策定されるガ
ない憶測に基づくものであると批判し、
イドラインに違反していないかをチェッ
ロリストの脅威﹄というレポートがニュ
アメリカ政府に対し、
﹁ 公式な文書によ
クする。違反を発見した場合には市警の
ーヨーク市警のウェブサイトから削除さ
り、過激化の﹃宗教ベルトコンベア﹄モ
トップに報告し、その違反が構造的・組
れることとなった。このレポートは、ニ
デルは、政府として承認も黙認もするこ
織的なものと判断した場合には、裁判所
ューヨーク市警に所属する二人のアナリ
とはない、と明確に宣言する﹂ことを求
の特任裁判官に報告する義務を負う。
ストが二〇〇七年に発表したもので、平
めていた。しかし、ニューヨーク市警は
和解内容2 ムスリムに対する包括的監
視の理論的支柱となった論文の撤回 ﹃西
︱
洋における過激化
な っ た。 特 筆 す べ き は﹁ 市 民 代 表 法 律
穏なムスリムがイスラム過激派になるま
再発防止のため、ニューヨーク市警が
一貫してその内容を擁護し、撤回を拒否
自らを監督する新たな組織を設置し、か
でには四つの段階があり、様々な出来事
し続けていたのである。
つ外部の専門家を招き入れたという点で、
未来志向の画期的な和解内容である。
をきっかけにベルトコンベアのように過 これらの経緯を踏まえると、ニューヨ
め テロの予防
ーク市がこのレポートを公式に撤回する ラザ事件の和解のまと 激派へと流されていくと結論付けていた
︵
﹁ 宗 教 ベ ル ト コ ン ベ ア ﹂モ デ ル と 呼 ば れ る ︶
。
策には正解がない。安全を確保するとい
ことには象徴的な意味がある。このレポ
ニューヨーク市警のみならずFBIなど
ート以外にムスリムの包括的な監視を正
も、このレポートを理論的支柱として、
当化する理論的根拠は報告されておらず、 ときに警察は行き過ぎ、社会の差別を助
全てのムスリムが理論的にはテロリスト
FBIを始めとする他地域の警察実務に
長し、あるいは市民の自由を侵害してし
になる可能性があると決め付け、ムスリ
与える影響は少なくないとされている。
まう。憲法は、このような事態を国家運
司法にその歯止めとしての使命を与えた。 スリムコミュニティとの信頼関係を壊し
イツでは憲法裁判所が歯止めの役割を果
ジャクソン裁判官がコレマツ事件で述べ
てしまい、より幅広いテロ対策の計画を
たした。イギリスのバーミンガムでは市
たように、その役割を放棄するなら司法
台無しにしていると批判されている。
民がこれらの監視プログラムを中止に追
23
営のいわば生理現象として事前に想定し、
22
ム及びムスリムコミュニティの監視を正 和解内容3
民間の弁護士による監視シ
は行政機関の道具に成り下がってしまう 今年に入ってからも毎月のようにテロ
の悲劇が報じられた。そのたびにドナル
だろう。裁判を通じて、ニューヨーク市
い込んだ。国連人権理事会は、二〇〇八
が自らの行き過ぎを認め、再発防止に必
ド・トランプ氏のような強硬派の政治家
7﹃テロ対策における人権及び基本的自
要な改革を進めた点は、憲法が予定する
がムスリムを監視すべきだと声高に主張
由の保障﹄第七項において、各国に対し、
健全なスキームが正常に機能したものと
するということが繰り返されている。
人種、民族、宗教など、国際法によって
テロの語源は恐怖である。テロの目的
は、市民に恐怖を与え、その国の重要な
プロファイリングを行ってはならないこ
価値を崩壊させることにある。テロを予
とを求めている。本稿で紹介した二つの
防するために自由や平等といった国家の
事件はこの系譜に連なるものだ。
おわりに
第二次大戦中に日系人がスパイ活動に
手を染めた事実は一つも報告されていな
年三月二七日の国連人権理事会決議 7/
禁止された差別に基づく固定観念による
24
して高く評価されるべきである。
い。また、ニューヨーク市警のムスリム
理念を土台から崩すことは、まさにテロ 他方日本では、東京地裁と東京高裁に
よりムスリム監視プログラムがテロ対策
リストの思惑通りである。
監視プログラムにより予防または摘発さ
実際、イスラム過激派によるテロ攻撃
れたテロ活動も一つも報告されていない。 でパニックになり、ムスリム全てを監視
に必要であると宣言されてしまった ︵現
人種や宗教に着目した政策は、幻想の危
しようとしたのはニューヨーク市警だけ
念は損なわれたままだ。
険に駆り立てられたものに過ぎない。
ではない。冒頭で紹介したように日本の ハッサン判決とラザ和解は、テロとの
戦いの最前線にあるアメリカの司法判断
警察も瓜二つの監視プログラムを実施し
20
「テロとアメリカ」最前線
う重要な目的の実現を目指すがゆえに、
それは役に立たないどころか逆効果と
なることもある。実際、全てのムスリム
を監視するテロ対策プログラムは、警察
21
を無意味な情報に埋もれさせ、機能不全
ているし、イギリスやドイツでも類似の
として重要な意味がある。宗教や民族に
捜査が報告されている。
着目した監視捜査に大きな歯止めをかけ
他方、テロリストの思惑を跳ね除け、
国家の理念を取り戻す動きも活発だ。ド
るものであり、とどまるところを知らな
い偏見的捜査に対する防波堤となる。そ
213
に陥らせると指摘されている。また、ム
。憲法が謳う国家の理
在最高裁に係属中 ︶
24
ている。
﹁ 本件で見かけ上起きていることは新
しいものではない。我々はこれまでも
同じような道を歩んできた。赤狩りの
時代のユダヤ系アメリカ人、公民権運
動の時代のアフリカ系アメリカ人、そ
25
して第二次大戦の時代の日系アメリカ
人たちは、我々の中に着実に記憶され
ている。後になれば明らかな誤りを、
なぜ事前に判断することができないの
か、不思議というほかない﹂︵ハッサン
事件・判決文︶
これからも国の治安を守るため、警察
は様々なテロ対策を実施するだろう。も
しそのプログラムが宗教や人種を要素と
しているときには、是非この二つの事件
を思い出してほしい。きっと﹁後になれ
ば明らかな誤り﹂を事前に見抜くことが
できるはずだ。
10
由や平等といった普遍的な価値に根ざし
11
はなく、多くの国が理念として掲げる自
査事件﹂の憲法学的考察﹄﹁自由の法理︵阪本
昌成先生古稀記念論文集︶九三七頁以下など
参 照。弁 護 団 ウ ェ ブ サ イ ト
︵ http://k-bengo
︶でも適宜情報を発信している。
National Japanese American Memorial Fundation
dan.jugem.jp/
の ウ ェ ブ サ イ ト︵ http://www.njamf.com/
︶な
︵8︶ http://www.ap.org/Index/AP-In-The-News/
ど を 参 照 さ れ た い。 な お、 ワ シ ン ト ン の 連
NYPD
邦 議 事 堂︵ キ ャ ピ ト ル・ ヒ ル ︶ の 近 く に は、 ︵9︶流出資料の詳細は、注5で紹介した河
弁護士の論考を参照されたい。
有刺鉄線に縛られた二匹の鶴の像を数十本
︵ ︶なお、警察庁長官官房参事官︵当時︶の
の桜の木が囲む荘厳なメモリアルがある。
松 本 裕 之 氏 は、 二 〇 一 二 年 七 月 に 発 表 さ れ
︵2︶強制移住を命じられた日系人に一人当た
た﹁ ム ス リ ム の 過 激 化 対 策 を 考 え る ﹂ と い
り二万ドルが支給された。
う 論 文 の 中 で、 多 く の 紙 幅 を 割 い て ニ ュ ー
︵3︶ http://blog.sfgate.com/politics/2015/10/30/
ヨ ー ク 市 警 の 施 策 を 紹 介 し て い る。 松 本 裕
scalias-favorite-opinion-you-might-be-surprised/
︵4︶コレマツ事件はアメリカの最重要判例の
之﹁ ム ス リ ム の 過 激 化 対 策 を 考 え る ﹂ 警 察
紙は歴史上
一つである。たとえば USA Today
学論集代六五巻七号九四頁以下参照。
ハッサン事件については、
以下のサイトで
の二一大重要事件の一つに含めている
︵ ︶
全ての訴訟資料にアクセスすることができ
︵ h t t p : / / w w w. u s a t o d a y. c o m / s t o r y / n e w s /
る。 http://ccrjustice.org/home/what-we-do/ourpolitics/2015/06/26/supreme-court-cases︶
。
cases/hassan-v-city-new-york
history/29185891/
︵ ︶二〇一四年二月二〇日、ニュージャージ
︵5︶詳細は、弁護団の河 健一郎弁護士によ
ー地区連邦地方裁判所のマルティニ裁判官
る﹃公安捜査資料のネット流出事件は私たち
は、 ス タ ン デ ィ ン グ と い う 訴 訟 法 上 の 要 件
に何を教えるか﹄α シノドス二〇一四年四月
を 欠 く と し て、 プ ロ グ ラ ム が 違 憲 か ど う か
二〇日掲載︵ http://bylines.news.yahoo.co.jp/kaw
に転載︶
の 審 査 を せ ず 原 告 ら の 訴 え を 却 下 し た。 い
asakikenichiro/20140530-00035836/
や、拙稿﹃認められなかった違法捜査﹄世界
わば門前払いである。
二〇一四年三月号を参照されたい。
http://ccrjustice.org/sites/default/files/assets/
︵6︶二〇一〇年一〇月に生じたいわゆる公安
Hassan_40.OpinionGrantingDefsMTD.pdf
︵ ︶なお、この判断は東京地方裁判所の判断
情 報 流 出 事 件 を 契 機 と し て、 テ ロ と 関 係 が
内 容 と 瓜 二 つ で あ る。 東 京 地 裁 は、 日 本 の
あるかのような捜査情報を流出された一七
警察によるムスリム監視活動について、
﹁イ
名 の ム ス リ ム ら が、 国 と 東 京 都 を 被 告 と し
て国家賠償訴訟を提起した事件。
スラム教徒の信仰それ自体の当否を問題視
︵7︶詳細は判例時報二二一五号三〇頁以下、
し て い る こ と に 由 来 す る も の で は な く ⋮⋮
イスラム過激派による国際テロを事前に察
判 例 タ イ ム ズ 一 四 二 〇 号 二 六 八 頁 以 下︵ い
知 し て こ れ を 未 然 に 防 ぐ こ と に よ り、 一 般
ずれも一審判決︶や、渡辺康行﹃
﹁ムスリム捜
12
察組織といった形式に左右されるもので
︵1︶およそ三分の一が一世で、残りが二世だ
っ た。 多 く は ア メ リ カ 市 民 で あ り、 第 一 次
大 戦 の 退 役 軍 人 も 含 ま れ て い た。 詳 細 は、
13
2 0 1 6 . 6 214
世 界 SEKAI
の判断は、国ごとに異なる司法制度や警
10
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「テロとアメリカ」最前線
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16
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22
市民に被害が発生することを防止するとい
ヨーク市警に対し表現活動に対する監視捜
取 り 扱 う 者 の 人 数 は 多 く な る が、 こ れ ら の
う 目 的 に よ る も の で あ り、 イ ス ラ ム 教 徒 の
査 な ど を 禁 止 し た ほ か、 様 々 な 手 続 規 制 が
者のほとんどが何らの危険を有していない
精 神 的・ 宗 救 的 側 面 に 容 か い す る 意 図 に よ
定 め ら れ た。 A P 通 信 に よ る 報 道 を 受 け、
こ と に な る。 結 果 と し て、 重 要 な 警 察 の リ
るものではない﹂とした上で、
﹁ある者が平
当 時 の ハ ン チ ュ ー 事 件 の 原 告 ら が、 ニ ュ ー
ソ ー ス が、 他 の よ り 有 益 な 業 務 か ら 奪 わ れ
穏 な イ ス ラ ム 教 徒 で あ る か、 あ る い は イ ス
ヨーク市警のムスリム監視プログラムはハ
てしまうことになる⋮⋮︵結局︶民族、出身
ラム過激派に属するテロリストかを見極め
ン チ ュ ー ガ イ ド ラ イ ン に 違 反 す る と し て、
国 又 は 宗 教 に 基 づ く プ ロ フ ァ イ リ ン グ は、
る た め に は、 そ の 者 の 宗 教 的 儀 式 へ の 参 加
ニ ュ ー ヨ ー ク 市 警 の 担 当 部 局 を 相 手 取 り、
適 切 で も 効 果 的 で も な い 一 方、 具 体 的 な 結
の 有 無、 教 育 活 動 へ の 参 加 の 有 無、 そ の 者
監 視 プ ロ グ ラ ム の 停 止 と、 ハ ン チ ュ ー ガ イ
果 を も た ら す こ と な く、 何 千 人 も の 嫌 疑 の
が 宗 教 的 な コ ミ ュ ニ テ ィ の 中 で、 い か な る
ド ラ イ ン の 改 訂︵ ニ ュ ー ヨ ー ク 市 警 内 部 に
な い 者 に 影 響 を 与 え る も の で あ っ て、 テ ロ
対策として相当性を欠く﹂とされている。
立場にあるかといった外形的側面からうか
監督機関を新設することを内容とするも
︵ ︶前掲ブレナンセンター報告書参照。ムス
がわれる諸般の事情からの推測によらざる
の︶を求める裁判手続を提起した。
リムコミュニティと良好な関係を構築する
を得ない﹂として監視を正当化した。
︵ ︶注 において紹介した松本氏の論文でも
ことはテロ対策にとって最も重要であると
︵ ︶もちろん動機が差別的である場合には違
代 表 的 な﹁ 最 新 の 研 究 事 例 ﹂ と し て 紹 介 さ
し ば し ば 指 摘 さ れ て い る。 あ る 研 究 機 関 の
憲 の 可 能 性 が 飛 躍 的 に 高 く な る と い う 点 で、
れている︵前掲論文一〇二頁以下参照︶
。
研 究 に よ れ ば﹁ テ ロ リ ス ト が 所 属 し て い た
動 機 の 有 無 を 問 う こ と に 意 味 は あ る。 こ こ
︵ ︶具体的には、注 で紹介したハンチュー
コミュニティによる報告により四〇%のテ
で 重 要 な 点 は、 動 機 が 要 件 で は な い こ と が
ガ イ ド ラ イ ン が 改 訂 さ れ、 ハ ン チ ュ ー 委 員
明確にされたことである。
ロ計画を阻止することができた﹂とされる。
会の新設が明記された。
︵ ︶ Faiza Patel, Rethinking Radicalization,
︵ ︶二〇〇六年四月四日付ドイツ連邦憲法裁
︵ ︶むしろ、アメリカ政府は日系人によるス
判所判決︵いわゆるラスター判決︶
。なお、
パイ活動や妨害活動が一つも報告されてお
https://www.brennancenter.org/sites/default/files/
三 万 二 〇 〇 〇 人 が 詳 細 に 調 査 さ れ た が、 一
ら ず、 強 制 収 容 政 策 に 軍 事 的 必 要 性 が 無 い
legacy/RethinkingRadicalization.pdf
︵ ︶ラザ事件については、以下のサイトで全
つのテロ行為の端緒の発見にも至らなかっ
こ と を 知 っ て い な が ら、 裁 判 所 に は そ の 事
て の 訴 訟 資 料 に ア ク セ ス す る こ と が で き る。
実 を 意 図 的 に 報 告 し な か っ た と さ れ て い る。
たとされている。
ま た、 ま た 和 解 条 項 に 関 す るQ & Aや 担 当
それを裏づける資料の存在が明らかになっ
︵ ︶冒頭に紹介したミノル・ヤスイ氏、ゴー
弁護士の解説記事も掲載されている。
た こ と が、 三 人 に 再 審 無 罪 の 判 決 が 下 さ れ
ドン・ヒラバヤシ氏、そしてフレッド・コレ
た一つの大きな要因とされている。
マツ氏をそれぞれ父に持つ三人の日系人が、
https://www.aclu.org/cases/raza-v-city-new-york ハッサン事件を審理した裁判所に対し、アミ
legal-challenge-nypd-muslim-surveillance-program ︵ ︶二〇〇七年一月に国連人権理事会で採択
︵ ︶なお、関連事件としてハンチュー対スペ
さ れ た﹃ テ ロ 対 策 に お け る 人 権 及 び 基 本 的
カス・ブリーフと呼ばれる意見書を提出して
シ ャ ル・ サ ー ビ ス ズ・ デ ィ ビ ジ ョ ン が あ る。
自由の促進及び保護に関する特別報告者に
いる。彼らは、裁判所に対し、七〇年前と同
一 九 七 一 年、 ニ ュ ー ヨ ー ク 市 警 が 表 現 の 自
よる報告書﹄参照。
じ 過 ち を 犯 す べ き で は な い と 訴 え て い た。
由 な ど を 侵 害 し て い た こ と を 理 由 と し て、
︵民族、出身国及び宗教に基づく︶過度に広
http://ccrjustice.org/sites/default/files/assets/
﹁
ハンチュー氏らを原告とするクラスアクシ
汎 な テ ロ リ ス ト の プ ロ フ ィ ー ル は、 警 察 機
Hassan%20-%20Amicus%20Brief%20of%20
ョン訴訟が提起された︵ハンチュー事件︶
。
構に多大な負荷を掛ける可能性があること
Korematsu%20et%20al.pdf
一 九 八 五 年、 こ の 訴 訟 の 和 解 内 容 と し て ハ
に 懸 念 を 有 す る。 プ ロ フ ィ ー ル が 広 汎 に な
ン チ ュ ー ガ イ ド ラ イ ン が 策 定 さ れ、 ニ ュ ー
れ ば な る ほ ど、 警 察 が 容 疑 の あ る 者 と し て
25