中国・アジアでの人づくり 経営リーダー育成塾GMC

中国・
中国・アジアでの
アジアでの人
での人づくり
経営リーダー
経営リーダー育成塾
リーダー育成塾GMC
育成塾GMC
-Global Management College-
-
杉山 定久
南富士株式会社 代表取締役社長
1.中国の
中国の魅力
中国には4つの魅力がある。
①市場としての魅力(市場は人口)
②生産拠点としての魅力(市場に最も近い)
③人財大国としての魅力(人口 13 億人)
④豊富な地下資源(広大な国土)
中でも当社は“人財”を中心とする事業を
展開している。
私が初めて中国を訪れたのは、日中国交正常化の3年後、静岡県の調査団の一員とし
て中国を訪問したことがきっかけだった。私の父は、中国には優れた人がたくさんいる、
日本人残留孤児を温かく育ててくれるなど内面の良さを持っていると常々言っていた。
当時は世界の経済発展から取り残されたような感があったが、初めて見た中国は本当に
親しみの持てる国という印象だった。
中国は必ず伸びると思い、建材の販売に挑戦したが、血族・地縁などの人脈が重視さ
れる中国での商売は難しかった。そこで、気長に種をまき、中国の人と友だちになろう
と考えた。
日本語を勉強している学生の「日本語の本がほしい」という声に応えるため、日本で
読み終えた本を中国の大学や図書館へ贈った。今も「本の二毛作」として毎年数千冊を
贈り続けている。また、高い能力はあっても経済的な理由でチャンスのない若者がたく
さんいることを知り、私費で「杉山種まき奨学金」を設け、30 年以上にわたって世界
中の金銭的に恵まれない若者にチャンスを与えてきた。こうして、ビジネスではなく文
化から中国との交流を深め、中国全土に独自のネットワークを築いていった。
そんな中、中国の大学で教える機会をいただいた。
中国の学生は大変優秀である。90 分の授業を終えると、質問が 90 分…こちらはくた
くたである。日本の学生は“分からない”から質問するのに対し、中国の学生は“自分
なりの考え”を持っていて質問してくる。ある授業で、成長するためには柔軟さが必要
だと話したところ、
「杉山先生の言う柔軟さとは、水のように
形を変える柔軟さですか、それともスポンジ
のように何でも吸収する柔軟さですか?」
。
時にはこちらが答えに困るようないじわ
るな質問もある。特に歴史に関するものは、
事実はひとつでも見方はさまざまだから回
答が難しい。
そんな時は思い切って発想を変える。
「良い質問ですが、残念ながら今は時間がない。あの世に行ったらたっぷり時間があ
るからゆっくり話そう。待っているよ」「歴史は今から過去に向かっていくもの、経営
は今から未来へむかっていくもの。私は経営を教えに来たから、未来の話をしよう」
そんな言葉を返すと、学生たちから笑いが起こる。
中国は、日本の 10 倍の人口がいる。単純に考えると美人も日本の 10 倍、良い人も
10 倍いれば悪い人も 10 倍、頭のいい人も 10 倍である。大学で出会った優秀な学生た
ちを教育し、大きな花を咲かせたいと考えて始めたのが私塾「グローバル・マネジメン
ト・カレッジ(GMC)
」である。
2.中国での
中国での“
での“トップリーダー
トップリーダー”
リーダー”づくり
今、世界で一番不足しているのは指導者(リーダー)である。
経済界、政治の世界、NPO…。
人が2人以上集まると集団となり、そこには必ずリーダーが必要となる。ただのリー
ダーでなく、収支を計算(つまりマネジメント)できるリーダーがいたらBESTであ
る。
今までは長い年月の経験、知識を得てリーダーとなった。しかし、変化のスピードが
早い時代には、それでは間に合わない。そこで、世界で活躍できるマネジメントリーダ
ーを短期間で特別につくろうと考え、壮大な計画(夢)を立てた。
GMCは経営者(トップ)をつくる私塾である。
授業は無料、中国全土のトップ 20 大学に絞り、厳選した学生を半年間育成する。
GMCの選抜基準は“顔”である。言葉や履歴書はごまかせても顔はごまかせない。
良い顔とは、美人かどうかということではない。顔で選ぶ基準は3つ、①素直な心 ②
柔らかい頭 ③挑戦力(実行力)を持っている人、別な言い方をすれば成長の伸びしろ
のある人財を発掘する。
GMCの教育は、
「理念の共有」から始まる。
理念教育は①人間力 ②管理力 ③創造力の3点に絞る。
理念を分かることでなく、実践できることを第一歩とし、2週間の集中合宿で徹底し
て基礎を身につける。
教育という字を見ると、「教える」と「育てる」の2つがある。学校は知識を教え、
覚えることが中心だが、ここでは「育てる」ことがメインである。人を育てる最高の方
法は、答えを教えない、チャンスを与えて気づかせることである。
集中合宿は、学生たちを鍛え上げるもので彼らにとってかなり辛いものである。学生
は課題を達成するため、睡眠を削って、動き、考え、調査し、また動く。しかし、それ
以上に動き考え寝ていないのがGMC教育スタッフであり、学生たち以上に大変である。
GMCに教育マニュアルはない。料理と同じで、学生一人一人の状況に応じて最適な
エッセンス(悪い所や良い所を本人に意識させる環境)を加えていかなくてはならず、
教育スタッフは常に学生から目が離せない。
学校教育との違いは、学生の評価基準からも分かる。通常「誰が優秀か」という目で
見がちだが、GMCにおける人を見るモノサシはまったく違う。
「誰が一番“変化”した?」
「誰が一番“成長”した?」
今持てる能力でなく“どれだけ変化したか”、変化の幅を最も重視する。GMCを出
た学生たちが、社会に出た後ものすごいスピードで成長していく理由がここにある。
2005 年、多くの人々から不安視されたスタートだったが、GMC第1期は中国全土
から 45000 人もの学生の応募が殺到、卒業したのはわずか 45 名という競争率 1000 倍の
狭き門であった。
21 世紀はアジアの時代である。お金中心(Money Capital)から、人脈・人財(Human
Capital)中心の時代へと変化している。
GMCの学生たちは、北はハルビン工大から、南は中山大、西は西安交通大、四川大、
もちろん北京大や清華大、そしてGMCの中心校武漢の武漢大・華中科技大から集まっ
ている。GMCでしか得ることのできない HumanNetwork を築くことを夢見て…。
ひとつの大学を卒業すれば、その大学のネットワークができるが、それ以上の他大学
とのネットワークは難しい。しかしGMCはそれを可能にする。
卒業生の組織「AIC(Asia Intelligence Crowd)
」は 1000 名の“プロ経営者集団”
を目指している。スタートから8年、GMCは約 300 名にのぼる若き経営リーダーを輩
出してきた。2/3は日系企業の現地経営幹部に、1/3は私どもの中国子会社の幹部
としてさまざまな課題解決プロジェクトに携わっている。製造業だけでなく、情報、流
通、コスメなどあらゆる業界・さまざまな地域で活躍している。アジア全体で展開する
“頭脳”ネットワークは、ますます大きな可能性を秘めている。
3.日中問題 危機を
危機を越える“
える“現地化”
現地化”経営
今回の日中問題は、政治・経済に大きな影響を及ぼしている。日本製品不買活動、中
国リスク、中国撤退…私たちが普段目にする報道は、中国の「負」の面ばかりが強調さ
れがちで、日本全体が先行きを不安視している。
確かに、日本人が中国を見たら問題だらけに見えるが、中国人が中国を見たら全然怖
くない。固定概念があると大きなチャンスを逃してしまう。中国で人づくりの種をまき、
心から信頼できる人がいれば、何も恐れる事はない。
中国での事業を成功させるカギは「現地“頭脳”リーダー」にある。
無錫にある日系の工業団地には日本を代表する大手電機メーカーS社とP社の工場
が向かいあっている。片方の工場は暴徒によって騒動が発生したが、もう一方の工場は
平穏無事であった。
この差は何だろうか?
無事だった工場の副総経理を勤めているのは、GMC第一期生Z君(28 歳)である。
来るべき反日デモに備え、事前に準備し、対策していたという。おそらく暴動のあった
工場は、情報が入らなかったか、もしくは情報を入手していたが何も対策をしなかった
のだろう。すべては“頭脳リーダー”の差である。
先日、私が中国へ出張した際、「今週末、A社の経営幹部と会う」と一言、中国の社
員に話した。A社は今回の反日デモで大きな被害を受けた大手流通企業である。すると
その3日後に、話を聞いていた社員からA社で発生した事件について、現象と本質的な
問題、そして対策をまとめたレポートが届いた。
A社幹部との面談当日、さっそくレポートを出すと、「・・・・・・まったくその通
りです」A社幹部は黙ってしまった。
このレポートは私が指示をしたのではなく、彼が自発的に気づいて調査したものであ
る。“言われなくても気づき考え行動できる”頭脳リーダーの存在は、何よりのリスク
対策であり、経営現地化には絶対に欠かすことができない。
加えて大事なのは、現場の幹部社員への教育である。
機械の使い方やテクニック、OJTではなく、本質的
な教育である。会社は誰のものか、利益はなぜ必要か、
公私の区別…そういった「経営のイロハ」を日頃から教
育する。大事なのは教えることでなく“育てること”
。逃
げない社員、会社を守ってくれる社員をつくることが何
より大切である。
チャイナリスクと言うが、リスクがあるのは中国だけではない。ベトナムもミャンマ
ーも、成長過程の国ならばどこでもありうる。今回の反日問題から逃げずに乗り越える
ことができれば、中国だけでなくどの国へ行ってもうまくいく。
「人の行く裏に道あり花の道」―これは私の好きな言葉である。人がやらないこと、
できないことをやりぬいてこそ大きな花が咲く。
ピンチは、最高のチャンスである。
4.人づくりが拓
づくりが拓く新しい“
しい“中国・
中国・アジアの
アジアの時代”
時代”
21 世紀はアジアの時代である。
日中間の政治的問題は潜在的にあるもので、解決は大変難しい。一方、経済面での交
流は近年ますます活発になっている。これからは、政府間交流だけでなく、民間交流が
新しいひとつの流れをつくっていく。
「人づくりと経営に国境はない」
。
GMCが行なってきたグローバルリーダー育成は、300 名近い頭脳人財を輩出してき
た。理念を共有した人財と独自のネットワークは、これからの中国・日本・アジアにと
って希望の星である。これからは「日本だけ」「中国だけ」という発想ではなく、中国
と日本が共に(or→and)協力してアジアの成長をリードしていく必要がある。
GMCも、中国だけでなくアジアや日本での展開をスタートした。また、
Japan-asia-China を舞台に、世界で通用する頭脳人財を育てていくための産学官ネッ
トワーク「JaC頭脳人財の育成と活用」協議会も発足した。これからのアジア一体で
の発展に貢献する、大きな可能性を秘めた新しい取り組みである。
種をまけば芽が出る。人づくりはやってすぐに成果が出るものではないが、刈り取る
ことばかりしていたら、いつかすべて枯れてしまう。
どんな時代が来ても、そこに「自ら考え行動する人財」や「ネットワークを持った頭
脳リーダー」がいれば、道は拓け、明るい未来が展望できる。国家 100 年の大計は人づ
くりから始まる。
人生は「出会い」である。人との出会い、本との出会い、体験との出会い…。「待ち
会い」ではない。37年前、中国へ出ていったからこそ、今がある。多くの人との出会
い、たくさんの失敗を経験しながら学び、中国を見る目が養われた。
多様な価値観が共存するアジアでは、少なくとも3つ、頭のモノサシを持ちたい。日
本人としての見方、中国人としての見方、そして国際人としての見方…。多角的視点を
持ち、相手の立場に立った言動が新しい価値を生んでいく。
振り返ってみると、中国で人づくりを続けて37年―。人を育てるには時間もお金も
かかるが…ここへきてやっと芽が出てきた。自然界を見ても、種をまけば必ず芽が出る
ものである。
アジアでは人的ネットワークがすべてである。人脈がなければ何もできない。私の趣
味としてずっと続けてきた「人づくり」と「国際化」が今、そのベースとして確かな形
になってきた。今は小さな輪だけれど、いろいろな人を巻き込み、アジア全土に広がる
大きな輪へと育てていきたい。アジアに大きな HumanNetwork を築き、日本の明日、そ
してアジアの明るい未来をつくっていきたい。
「人づくり」は大きな花が咲く。