「子どもの権利とビジネス原則」~NGOと企業の連携の視点から

第 1 回定例会 プログラム
2014 年 6 月 30 日(月) 14:00~17:30
場所:早稲田奉仕園 日本キリスト教会館 6ABC 号室
「子どもの権利とビジネス原則」
~NGO と企業の連携の視点から~
Ⅰ.はじめに (25 分)
14:00~14:25
開会あいさつ(5 分)
(特活)国際協力 NGO センター
事務局次長 富野 岳士
参加者全員の簡単な自己紹介(10 分)
[進行]事務局
今年度の連携ネットの枠組みとスケジュール(10 分)
[進行]事務局
Ⅱ.コアメンバー互選(10 分)
14:25~14:35
コアメンバー互選
[進行]事務局
コアメンバーあいさつ
Ⅲ.講演(70 分)
14:35~15:45
[講演 1](30 分)
[講演 1]
「子どもの権利とビジネス原則」から見る NGO と企業の連携
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
質疑応答(5 分)
事業本部 政策提言マネージャー 堀江 由美子氏
[講演 2](30 分)
[講演 2]
「次世代の子ども達のための CSR 活動~ソニーの事例から~」
ソニー(株)
質疑応答(5 分)
CSR 部 CSR マネージャー 杉村 菜穂氏
休
憩
(10 分)
※はじめに写真撮影!
Ⅳ.ワークショップ(90 分)
15:55~17:25
「 NGO と企業が子どもの権利実現に向けて連携するには」
[コーディネーター]
・導入プレゼン:子どもの権利は自分とどう関係がある?(15 分)
(特活)ACE
・ビジネスと子どもの権利を振り返り、WS 方法の説明(5 分)
代表 岩附 由香氏
・ワークショップ(70 分)
Ⅴ.おわりに(5 分)
17:25~17:30
・メンバーからの報告等
[進行]事務局
・事務連絡
以上
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開催レポート
I.はじめに
開会あいさつ(5 分)
富野
岳士(
(特活)国際協力 NGO センター
事務局次長)
今年度は、本ネットワークは 7 年目の活動となり、第 3 期の 3 ヵ年計画(2014 年~2016 年)の 1 年目に入る、。
基本方針に、
「
『違いを力に』
」質の高い連携をしていく」とあるように、本ネットワークの最大の特徴は、NGO
と企業という違うセクターが一堂に集い、様々なテーマでディスカッションを行うことである。それぞれの強
み・弱みを学びながら、補い合う形の連携をしていくことで違いを力に変えていくことができると考える。そし
て同じ目標に向けて協働・連携していくための推進役に、このプラットフォームがなれたらよいと思う。今年度
も定例会を 4 回予定しているので、皆さまのご参加を賜りたい。今日のこの場が協働・連携の第一歩と思い、積
極的に交流をしていただきたい。
今年度の連携ネットの枠組みとスケジュール(10 分)事務局より
【NGO と企業の連携推進ネットワークが目指すもの】
持続可能な社会の実現に向けた地球規模の課題解決にむけ、NGO と企業が双方の特性を認識し、資源や能力
等を持ち寄り、対等な立場で協力して活動する機会を推進することを目指している。今年度より第 3 期 3 ヵ年計
画(2014 年~2016 年)に入るが、基本方針「NGO と企業の『違いを力に』質の高い連携を進める」をもとに 5
つの重点項目を踏まえて今後 3 年間活動をしていく。
【2014 年度参加メンバー】
今年度は、現時点で NGO メンバーが 32 団体、企業メンバーが 23 社であり、TOTO(株)とジャトコ(株)が新規
企業メンバーとして加入した。また、今年度からオブザーバーとして(特活)経済人コー円卓会議日本委員会が
参加する。
【2014 年度活動枠組み】
■定例会:4 回開催(6 月、9 月、12 月、3 月)予定
テーマ案:子どもの権利とビジネス原則、MDGs とポスト MDGs、防災分野での企業と NGO の連携、
BOP ビジネス、 マルチステークホルダー・エンゲージメント、トップ/従業員の巻き込み・・・など
■シンポジウム:東京 1 回/地方(仙台)1 回開催
■コアメンバー会合: 6~7 回開催
■タスクチーム:必要に応じて立ち上げる
■その他:オリエンテーション、テーマ別勉強会、連携ガイドラインの更新・・・
など
II.コアメンバー互選について
コアメンバーとは、本ネットワークの活動を円滑に行うために参加組織の中から互選し、本ネットワークの活
動の企画・立案、活動スケジュールの調整等を行うものである。2 ヶ月に 1 回程度コアメンバー会合を行い、各
定例会のテーマや本ネットワークの今後の方針などを話し合う場となる。
昨年度コアメンバーの(公財)ケア・インターナショナル ジャパンの高木様、(公財)オイスカの長様、(特
活)ハンガー・フリー・ワールドの渡辺様、ファイザー(株)の鈴木様、計 4 名が任期満了につき、新規コアメン
バーの互選を行う。以前コアメンバー会合で定めた互選のプロセスとして、その時のコアメンバーから推薦リス
トを全メンバーへ ML 等で提示し、その他に推薦したい人はいないかどうか一定期間を設けて意見を募る。その
後、全メンバーの意見も反映した候補者リストを作成し公表。全メンバーが参加できる形(ML,定例会など)
2
で候補者リストへの意見を聞き、新規コアメンバーを決定する。
上記コアメンバー互選プロセスの結果、本定例会上で今年度のコアメンバーが以下の通り決定した。(*新規)
•
植木
美穂氏
(特活)ACE
政策提言事業、ネットワーク構築・協働事業担当
•
松崎
稔氏
•
*武鑓
史恵氏
(特活)グッドネーバーズ・ジャパン ファンドレイジング部
•
*兵頭
康二氏
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
•
*山本
匡浩氏
(特活)ADRA Japan
•
*赤堀
久美子氏
オリンパス(株)CSR 推進部 CSR シニアスペシャリスト
連携推進本部長兼法人連携部長
ファンドレイジング担当
(株)リコー 環境推進本部社会環境室 CSR グループ
III.講演(各 30 分+質疑応答 5 分)
1.
「子どもの権利とビジネス原則」から見る NGO と企業の連携
講師:堀江
由美子氏(
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
事業本部政策提言マネージャー)
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとは
国連「子どもの権利条約」を理念とした、子ども支援専門の国際 NGO。戦争で親や家を失って傷ついた子ど
もたちを、敵味方関係なく支援したイギリス人女性教師エグランタイン・ジェブが、1919 年に英国で設立した。
現在は独立した 30 カ国の加盟国があり、世界 120 カ国以上で子どもの支援活動を展開している。日本では 1986
年に設立され、アジア、中東地域に直接駐在員を派遣し、国内でも東日本大震災以降は宮城、岩手、福島に事務
所を置き、被災地での支援活動を行っている。
「ビジネスと人権」
:近年国際的な人権尊重の流れ
当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が 1999 年に世界経済フォーラムで提唱し、2000 年に国連グローバル・
コンパクトが発足。その設立に貢献したジョン・ラギ― ハーバード大学教授が、2005 年国連事務総長特別代表
に就任し、protect(保護)/respect(尊重)/remedy(救済)の枠組みを提唱した。これが 2010 年の ISO26000、2011
年国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に繋がる。2011 年に「OECD 多国籍企業行動指針」に人権に関す
る章が新設され、2012 年「子どもの権利とビジネス原則」が発表された。
※国連「子どもの権利条約」とは、世界で最も多くの国々が批准している条約であり、18 歳未満を子どもと
定義して、国際人権規約が定める基本的人権をベースに子どもが成長発達の過程で必要とする権利を包括的に
定めたものである。子どもを単に保護の対象ではなく、権利の主体として定めている点に特徴がある。
「子どもの権利とビジネス原則」は、なぜ作られたか
人権とビジネスを繋げる枠組みは作られたものの、子どもの権利と企業の責任を明確に繋げる枠組みがなかっ
たためである。配布資料の「子どもの権利とビジネス原則の位置づけ」は、より広いビジネスと人権の中に、子
どもの権利とビジネスがどのように位置づけられるかという関係性を示したものである。
「子どもの権利とビジネス原則」の策定プロセス
2009 年に子どもの権利について十分なフォーカスが当たっていないということで、セーブ・ザ・チルドレン ス
ウェーデン事務局長が国連グローバル・コンパクトの代表者に持ちかけたことがきっかけとなった。
2010 年にセーブ・ザ・チルドレン、国連グローバル・コンパクト、ユニセフの連携体制が発足。2011 年には
10 カ国で 600 を越える政府、企業、市民社会と対話を実施。9 カ国 400 人の子どもとの対話をもってドラフト
のレビューを行い、2012 年 3 月にロンドンで発表、その後 40 カ国で発表された。日本では 2014 年 5 月 16 日
に「子どもの権利とビジネス原則」国内発表会が開催された。企業からの事例紹介として、IKEA Japan、味の
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素、Yahoo Japan が発表した。
子どもの権利とビジネス:児童労働だけが問題ではない
世界の人口の 1/3 は子ども(約 22 億人)であり、そのうち児童労働に関わっている子どもは 1 億 6800 万人、
予防可能な病気が原因で 5 歳未満に亡くなる子どもは年間 660 万人、学校に行けない子どもは 5700 万人いる。
いまだ多くの子どもが基本的な権利を侵害されている状況がわかる。ビジネスセクターの経済や社会への影響力
がますます大きくなる中、ビジネスが子どもの権利に及ぼすあらゆる側面について認識を深めていくことが重要
と考えられる。
「子どもにやさしい企業」は、持続可能な企業
企業が人権について取組むときに、主にリスクマネージメントの観点から取組むケースが多いと見受けられる。
下記から、子どもの権利に積極的に取り組むことは持続可能な未来のための必要な投資と言える。
① 安定した生産性の高いビジネス環境を作り出すためには教育水準の高い社会の構築が必要不可欠。
② 子どもや家族を大切にする職場環境は従業員の採用や維持、モチベーションの向上に繋がる。
③ 社会的責任投資も拡大傾向にある中、投資家への信頼に繋がる。
④ 企業が活動するコミュニティや政府、その他多様なステークホルダーとの信頼性にも繋がる。
⑤ 子どもの権利侵害による評判リスクは高い。
⑥ 子どもは企業にとって将来の顧客であり、製品の使用者であり従業員として重要なステークホルダーである。
子どもの権利とビジネス原則を使ってどのように NGO と企業の連携を深められるか?
NGO も企業も「子どもの権利の保護」という責任を持つため、パートナーシップを組むことによって、より
子どもの権利の実現を推進することができる。ここにおける NGO の役割は、企業の子どもとの関わりや子ども
の権利に対する意識・理解を深めること、権利侵害が見られるときは警告を発したりすること、地域コミュニテ
ィとの架け橋になること、活動計画やデューデリジェンスのプロセスが効果的かモニタリングを行うこと、子ど
もの声や意見を直接企業に届けることなどが考えられる。
セーブ・ザ・チルドレン
サポートモデル
意識向上、インパクト評価、統合と行動、成果モニタリングと報告というプロセスから構成されている。人権
や子どもの権利に取組むということは、これだけやれば終わりということではなく、こうしたプロセスを繰り返
し行いながらコアビジネスに取り込んでいくことが重要である。
Centre for Child Rights and CSR
これは 2009 年にセーブ・ザ・チルドレン・スウェーデンが北京で社会企業として設立した。企業が子どもの
権利とビジネス原則を実践できるようにアドバイザリーサービスや調査、研修等を行っており、NGO がどのよ
うに企業と連携していくかのヒントが多くある。子どもの権利とビジネス原則への取組みは、セーブ・ザ・チル
ドレン・ジャパンとしてもこれからであり、持続的に取り組むための体制や連携について議論しているところで
ある。子どもの権利とビジネス原則は、ビジネスセクターが持っている人権や子どもの権利によい変化をもたら
す潜在力を引き出すためのツールであり、NGO が一緒に取組むことで子どもの権利の実現に向けた新たな価値
を作りだすことができる。これから多くの企業そして NGO の皆さまと一緒に連携していきたい。
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「子ども権利とビジネス原則」
原則1
子どもの権利を尊重する責任を果たし、子どもの権利の推進にコミットする
これは全ての企業に適用されるべき基本的な原則である。企業のコアビジネスに子どもの権利を明確に位置づ
けることが求められている。
原則2
すべての企業活動および取引関係において児童労働の撤廃に寄与する
多くの企業が生産拠点を途上国に置き、購入・販売も途上国で行う中で、子どもが家計の収入に貢献するた
めに働くケースが後を絶たない。サプライチェーン・マネージメントやモニタリング、発覚した場合の明確
な措置などが多くの企業で取組まれている。
原則3
若年労働者、子どもの親や世話をする人々に働き甲斐のある人間らしい仕事を提供する
特に若い従業員あるいは子どもの親や扶養者に、働き甲斐のある人間らしい仕事を提供することが、子ども
の権利の実現、また従業員のマネージメントやモチベーションに非常に重要である。
原則4
すべての企業活動および施設等において、子どもの保護と安全を確保する
途上国では、例えば子どもが工場の敷地内で家族と一緒に住んだり、プロダクションラインの近くにいたり
することが多いため、子どもへの暴力が起こりやすい環境となっている。子どもの保護と安全を確保する対
応や意識向上が必要となってくる。
≪グローバルな旅行会社の事例≫
全てのサプライヤーとの契約に性的搾取追放の条文を入れたり、従業員研修に子どもの保護の研修を加えた
り、性的搾取を見かけたりした場合のホットラインの設置を行ったりといった対応をしている。
原則5
製品とサービスの安全性を確保し、それを通じて子どもの権利を推進するよう努める
子どもが多くの製品の直接的、間接的消費者であるため、健康を害する可能性のある物質や食品や暴力やス
テレオタイプを助長するような製品やサービスへの十分な配慮を必要とされる。
原則6
子どもの権利を尊重し、推進するようなマーケティングや広告活動を行う
子どもには広告を客観的に分析して判断するという力が限られているので、影響をダイレクトに受けやすい。
差別や暴力を助長するような広告や洗脳するような手法を使わないよう十分な配慮が必要である。
≪あるヨーロッパの洗濯用洗剤ブランドの事例≫
子どもの遊ぶ権利や表現の自由などをコマーシャルを通して、子どもが服を汚しても遊びや運動によって探
究心を満たすことは重要であると訴える取組みを行った。
原則7
環境との関係及び土地の取得・利用において、子どもの権利を尊重し、推進する
多くの企業の活動は、環境や地域コミュニティの自然資源や交通アクセスなどにも大きな影響をもたらす。
子どもにとっては学校に行けなくなるなど、最低限の生活環境を奪う深刻な問題を引き起こす。子どももコ
ミュニティの重要な一員であるので、子どもの視点も考慮することも重要と考える。
原則8
安全対策において、子どもの権利を尊重し、推進する
多くの企業は工場や店舗で警備員を雇って安全対策を行っているが、特に途上国では警備員による子どもへ
の暴力や虐待が起こるリスクが高く、全ての警備スタッフに対して子どもの保護の研修や、地域コミュニテ
ィを巻き込んだ監視や通報などの取組みが求められている。
原則9
緊急事態により影響を受けた子どもの保護を支援する
緊急事態の際に企業が子ども達の保護をサポートできるように日頃から準備しておく必要がある。災害や紛
争において子ども達は特に暴力や虐待の対象になりやすいことを考慮に入れることが大切である。
原則 10
子どもの権利の保護と実現に向けた地域社会や政府の取組みをする
子どもの権利条約とは、主に各国政府の子どもの権利の実現に対する責任をまとめたものである。その国の中
で活動する企業としても、地域や政府の取組みをあと押しすることが求められる。当然の義務として、税金を
納めること。また、その国の市民社会や NGO、労働組合と対話を持つことなどである。
5
補足:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
専務理事・事務局長
千賀 邦夫氏より
CCR&CSR は北京で政府系の企業のアドバイザリーをしている。中国政府が社会課題に対して無関心と思える
中、どのような形で取り組んでいくのか注目である。3 ヵ月程前の NHK「クローズアップ現代」の放映で、
「人
権とビジネス」というテーマの中で、企業にとって人権はリスクがあり NGO や市民社会から弾劾される恐れが
あるので気をつけるようにという意味合いの取りまとめだったため、非常に残念に思えた。自分たちが行おうと
しているのは、企業を責めるのではなく、いろいろな事例を紹介することにより、どういう形でそれぞれの事業
を行っていくことが成功例に繋がっていくか情報提供をすることであり、世界中の事例を紹介していく上で協働
出来ないかということである。
【質疑応答】
A: 子どもの権利条約をアメリカが批准していない理由とは?
Q: アメリカでは自由権(civilized)は批准しているが、社会権(socialized)は批准していない。子どもの権利条
約と子どもの権利とビジネス原則も社会権に含まれているため、批准していない。しかし企業は、政府が批准し
ている、していないに関係なく、子どもの権利の観点から包括的な取組みをしているところも多い。
2.
「次世代の子ども達のための CSR 活動~ソニーの事例から~」
講師:杉村
菜穂氏(ソニー㈱ CSR 部 CSR マネージャー)
ソニーの CSR 活動について
ソニーグループの社会貢献活動におけるスローガンは「For the Next Generation」~次世代を担う子ども達
のための社会作り~である。ソニーは 1946 年創業者井深大と盛田昭夫によって設立され、
「人のやらないアイデ
アを実現する」というミッション、ビジョンのもと事業を行っている。ソニーグループ行動規範は「社員一人一
人が社会に対する責任を成している」こと。創業以来変わらぬ理念のもと、二つのゴール(企業価値向上、社会
への貢献)の達成に向けた事業活動を行っている。またソニーの設立趣意書には「技術を通じて日本の文化に貢
献すること、そして国民科学知識の実際的啓発を行うこと」とあり、その後世界に進出したため、現在は「グロ
ーバルな文化に貢献すること」となった。ソニーには 7 つの重要な CSR 課題があるが、本日はその内の一つで
ある「コミュニティ(社会貢献活動)
」を紹介する。
社会貢献プロジェクトのご紹介
数ある社会課題の中で、次世代教育支援、国際協力(MDGs)、環境保全、緊急災害支援という 4 つの分野に
絞って支援を行っている。そのとき活用するリソースはソニーの技術製品、サービス、コンテンツ、社員、そし
て我々では持ち得ない知識をパートナーからお借りし、共に社会課題の解決に向けて貢献する。社会貢献活動で
心がけているポイントは、
「ソニーだからこそサポートできることか」
「社内外へのアカウンタビリティを全うで
きるか。本当に投資に対して社会インパクトは適当なのか。」「CSR スタッフだけ、額面(お金)だけではなく、
広がりがあるか。お客様も参加できるのか。他の社員も参加できるのか。製品、技術でサポートするということ
は額面以上の価値があるか。
」
「企業活動サステナビリティに影響してくるか。」などとなる。
≪具体的取組み≫
① Restart Japan ファンド(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)
東日本大震災の中長期復興支援ファンドとして立ち上げた。適切なタイミングで適宜セーブ・ザ・チルドレン・
ジャパンが被災地でプロジェクトを行っていく。グループの様々な施策としてソニーミュージックがチャリティ
ソングの CD を販売する、マイレージプログラムのポイントを寄付するなど長く続けられる持続可能な施策を導
6
入している。特徴としては一社だけではなく、活動を長期的に行っていく間にいろいろなパートナーが参加し、
広がりを見せている。今は災害時の子どもたちの心を支える仕組み作りにシフトしてきている。
② Dream Goal 2014
ソニーは FIFA ワールドカップのオフィシャルパートナーである。マーケティングだけでなく CSR 分野でも
FIFA と連携し社会課題の解決にも取り組んでいる。サッカーは遊びやすさ、ルールの簡単さから競技人口が世
界で最も多いと言われているスポーツであり、観戦人口も多く、影響力の高いスポーツである。FIFA だけでな
くストリートフットボールワールド(NPO)とも連携し、可動式サッカースタジアムを特にブラジル、南米地域
の NGO に寄贈したり、参加型オンライン施策での課題意識啓発も行っている。
≪活動例≫
【シャコナメディアスキルズ(スワヒリ語=We can do it)
】
前回の南アフリカ大会から始まった、世界 14 の NGO とのメディアトレーニング施策である。ソニーの映像
機器を使い、各地のユースにとって就労機会につながるような社会貢献活動を提供。ここでトレーニングを受け
た青少年たちの作品がホームページ上で公開されている。みなさんに「いいね!」をクリックしてもらい、多く
の人に知ってもらい課題を広めるという部分でもサポートをしている。
【ストリート
フットボール スタジアム】
可動式スタジアムを寄贈し、子どもたちの安心安全なサッカー環境の提供とともに、余暇の時間を健全に過ご
すなどシェルター機能としても活用してもらう。
③ EYE SEE(ユニセフ子ども写真プロジェクト)
さまざまな国の子どもたちがソニー提供によるデジタルカメラを使い、撮影を通じて自分の身のまわりを見つ
め、記録し、そして発信することの可能性や重要性について学ぶワークショップ。写真を撮影して終わりではな
く、写真展や WEB サイトを通し、子どもたち自身の声を社会に届ける機会提供の場である。また、写真展で来
場者より写真への感想を集め、撮影者である子どもたちにフィードバックを提供する相互コミュニケーション施
策も展開。子どもたちにとって自分の作品に対して遠い国からコメントが送られてくる感動、自分にも社会への
影響力があるという気付きを得てもらう。
NGO セクターとの連携において
企業はただ寄付をしたいわけではない。寄付というインプットの先にどのようなアウトプットがあって、さら
にその先にどんな社会インパクトを提供できたのかを NGO セクターとの連携においても重要視している。目的
達成に向け、状況に合わせたレビューや進化を含め定期的に話し合い、責任を一緒に果たせる相手と適切な関係
を組んでやっていきたい。
【質疑応答】
Q: 社会的インパクトを図るための ROI(Return On Investment)はどういったものを設定されているのか?
A: ROI は定量、定性どちらもレビューしている。例え一人の VOC(voice of customer)であっても、また判
断が難しいと思う場合でも、まずテーブル上に出して内部で検討を行っている。たとえばワークショップに
参加した子ども達からの VOC をもらうなどは心がけている。
Q: 地域社会の課題の掘り起こしをどうしているか、NGO との出会いをどうしているか。
A: 日ごろから勉強会に出たり、個人的に探究したり、各地域の販売会社の知恵を借りたりしている。
課題の共有も、出会いの場の提供も、ソニーと NGO 双方向から同じようにできるのが理想である。
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Ⅳ.ワークショップ(90 分)
コーディネーター:岩附
由香氏(
(特活)ACE 代表)
導入:子どもの権利は自分とどう関係がある?
対話を通じてお互いのこと、そして「子どもの権利とビジネス」をどう思っているのかを共有することで理解
を深め、次のアクションへとつなげていく。このワークショップが終わった時に、子どもの権利とビジネスはこ
う解釈すればいいのだとみなさんがわかり、そして明日から自分もやってみようと思えることを目指したい。
下記についてグループで話し合い。
・子どもとはどんな存在か?
・子どもと大人の違いはなにか?
・子どもはどういう特性があるか?
・子どもといえば?思いつくキーワードは何か?
≪話し合いの結果あげられたキーワード≫
・なんでも吸収する白い玉
・生活力が弱い
・未来の大人でこれからの将来が長い
・子どもも一人の人間
・保護しなければならない存在
・空気を読まなくていい
・学びの時期
・環境に耐える力が弱い
・しがらみのない存在
なぜこのような話し合いをしたかというと、人という生物として、人間の赤ちゃんについてみなさんと一緒に
考えたいことがあるからだ。突然だが、サルの赤ちゃんが歩けるようになるまでにはどれぐらいかかるか?答え
は1か月である。人間の赤ちゃんはどれぐらいかかるか?1年ぐらいかかる。サルは人間に一番近いと言われて
いるが、それでも一か月で歩けるようになる。人間の赤ちゃんは生まれてすぐ立ち上がれず、ほうっておくと死
んでしまう。人間というのは脳が発達する動物であるため、脳が発達しすぎると母親の産道が通れなくなる。そ
のため、脳が未熟な状態で産道を通り、動物として何もできない存在として生まれてくる。つまり、人という生
物が完成するまでは他の生物より長い時間かかるということである。
世界の人口の 3 人に 1 人が子ども。その 3 人に 1 人の子どもの声が世界にどれだけ届いているか。世界の人口
ピラミッドを見ると、子どもの人口が多いことがわかる。途上国は先進国に比べてさらに子どもが多い。つまり、
途上国で子どもがたくさん生まれていることがわかる。子どもの権利条約では、どの国で生まれても平等に権利
があると約束されている。しかし赤ちゃん自身は自分の権利を満たすことはできない。そのため、子どもの権利
を守る責任は大人にある。世界には 1 億 6 千 800 万人の子どもがいるが、5 歳から 17 歳までのうち 9 人に 1 人
が児童労働についている。また環境問題の面でも、もし世界の全ての人が日本人と同じ暮らしをするには 2.3 個
分の地球が必要とも言われている。つまり、次世代が享受するべきものを今我々が享受しているから地球が保た
れているという状態である。児童労働についても、次世代の可能性でもある子どもを労働者としている。多くの
可能性が子どもにはあるが、その可能性を潰していることになる。子どもに投資することは、この先の持続可能
8
な世界の実現に深く関係することだろう。
環境も経済も不安定で、予測不可能なことが多い社会に我々は生きている。そのため、日々何かが起きたとき
の回復力や対応力が必要となってくる。それには多様性や他者との繋がりが非常に重要になり、そこに企業と
NGO の連携の必要性が見出される。
ACE は、
児童労働が構造的に組み込まれたビジネスのあり方を変えるため、
企業行動を変えることにも力を入れている。そういう意味で我々にとっての企業というのは、パートナー、すな
わち、欠かせない存在である。様々な連携活動をしているが、例えばジーンズのメーカーとの共催でエシカルフ
ァッションカレッジというイベントを行った。いくら企業がエシカルな商品を開発しても、それを買ってくれる
人がいなければ普及しないため、そういう人を増やそうという思いで協働した。結果、当日は 1000 人もの参加
者を迎えることができた。
ワークショップ
自己評価ワークシートを記入し、グループでシェアする。その際に子どもの頃の夢と、NGO の連携ですでに
取り組んでいる活動があればそれを紹介する。終わったグループから配布した模造紙に『本業と「子ども」との
関連・NGO 活動と「子ども」の関連』
、
『企業・NGO で連携「できそうなこと」アイデア出し』を行う。その後、
各グループの中で出たアイデアを「職場」
、
「市場」、「地域社会と環境」のどこで使用できそうか表に貼る。(写
真参照)
まとめ
本日の定例会で子どもの権利の問題はすべての NGO・企業に関わることをご理解いただけたと思う。ぜひ今
後も違いを生かしてより持続可能な社会の実現に向けて連携・協働しながら活動を進めていただきたい。
以上
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