インドの通信サービスの動向 - ベイカレント・コンサルティング

special issue
特集
2
インドの通信サービスの動向
株式会社ベイカレント・コンサルティング コンサルティング&IT事業本部 マネージング・パートナー
長谷川 洋司
近年、インドの通信業界は、急激な変化を遂げており、世界中の企業にとって実に魅
力的な市場となった。インドの通信業界は、2010年までに世界第2位の規模に成長す
る勢いである。例えば、代表的な携帯電話メーカや携帯電話事業者は、既にインドで
その存在感を示しつつあり、2008年度第2四半期には、携帯電話の契約数が目標値の
3億件を超え、中国に次ぐ世界第2位の通信ネットワークを持つ国となった。
1
■
インド通信業界の現状に関する参考情報
加入者総数(2008年9月現在)
:
■
2008年3月期の総収益は2007年3月比:12.5%増
固定電話…3,942万人
■
海外直接投資制限が49%から74%に引き上げられた後、
携帯電話…2億6,107万人
(GSM=73.81%、CDMA26.19%)
通信機器市場は急成長した。
■
電話回線密度(2008年3月現在)
:26.22%
■
ひと月当たりの携帯電話新規加入者(2008年3月現
■
携帯端末市場:2007年9月の販売台数は前年比74%増
の2,450万台であった。
在)
:850万人
■
2008年度携帯電話加入者数は2010年に5億人と予測さ
れている。
■
加入者の年間増加率(2007〜08年)
:45.96%
■
世界で最も成長している携帯電話市場の一つである。
■
インターネット加入者数(2008年3月現在)
:1,109万人
■
GSM及びCDMA利用者一人当たりの平均収益: 8.7ド
■
ワイヤレスデータサービス加入者:6,609万人
ル/月(概算)
■
ブロードバンド加入者数(2008年3月)
:387万人
2
通信業界の動向
図1 固定電話加入者数
(1)固定電話サービス
(Mil)
近年、インドの固定電話サービスは携帯電話サービスに
シェアを奪われつつある。携帯電話の端末が安くなり、ま
た、携帯利用料金が低下したことにより、過去4ヶ月間に50
万人以上の固定電話加入者が携帯電話に乗り換えている。
インド電信統制局1(TRAI)のレポートによると、2007
年9月から2008年9月にかけて、固定電話の加入者数は
3,958万人から3,835万人まで減少しており、2008年第四半
期を除き、2007年度から2008年度にかけて固定電話加入者
数は一貫して減少している(図1)。固定電話サービスの
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
1 TRAI:Telecom Regulatory Authority of India
日本データ通信 No.167
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図2 固定電話市場シェア
図3 携帯電話サービスのシェア
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
ほとんどは、BSNL2または MTNL3のような国有機関に支
図4 GSM市場のマーケット・シェア
配されている。TRAIの最新のレポートによれば、2008年
9月時点の加入者は3,835万人であり、そのうちBSNL及び
MTNLはそれぞれ78.55%、9.32%のシェアを持っている。
その他の民間企業5社が12.13%を占めている(図2)
。
(2)携帯電話サービス
インドの携帯電話サービスは近年爆発的に成長してお
り、インドの通信業界全体の成長に貢献している。
月間800万人以上が携帯電話に新規加入しており、2008
年6月時点での携帯電話のシェアは2年前と比べ15%増で
(%)
ある。インドではCDMAよりもGSMの方が優勢である
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
(図3)。
一人当たりの収益は減少したものの、加入者数の増加によ
加入者数は年間平均21%のスピードで増え続け、2012年
って全体の収益のバランスを取っている。激しい競争の中、
には7億3,700万人を超えると見込まれている。
Bharti-AirtelはGSM市場において7,748万人(33.16%)の加
ガートナー社のレポートによると、これにより、インド
は中国に次ぐ世界第二位の携帯電話市場規模を維持するこ
入者数を誇り、業界をリードしている。以下に、
とになる。TRAIによれば、2008年度第一四半期から第二
Vodafone Essar:5,462万人(23.37%)、BSNL:3917万人
四半期にかけて、GSM加入者数は9.96%の率で伸び、2,117
(16.67%)、Idea:3058万人(13%)の順となっており、こ
れらの事業者で市場の大部分を占める(図4)。
万人以上の加入者を見込んでいる。
携帯電話事業者は、通話サービスの提供を基本としてお
CDMA市場では、Reliance Infocomが57.38%のシェアを
り、加えてSMS等のデータサービス、インターネットサー
持ち、TATA Teleservicesが35.93%でそれに次ぐ。シェ
ビス、Eメール、チャット、電子会議、GPRSサービス等
アは小さいものの、BSNL、MTNL、HFCL、Shyam
が付加される。ビデオ会議や、クローズド・ユーザー・グ
TelelinkもCDMAサービスを提供している(図5)。
ループ(CUG)と呼ばれる掲示板は、特に若い世代の人気
(3)携帯端末市場
を呼んでいる。
これまでに見たように、インドでは、世界で最も将来性
政府が市場を民営化して以来、インドの携帯電話事業者
のある携帯端末市場の一つであることはほぼ確実である。
は競って利用料金を引き下げ続けている。このため利用者
2 BSNL:Bharat Sanchar Nigam Ltd
3 MTNL:Mahanagar Telecom Nigam Limited
日本データ通信 No.167
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図5 CDMA市場のマーケット・シェア
図6
携帯端末メーカのマーケット・シェア(GSM及びCDMA通計)
(%)
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
それを見越し世界中の端末メーカはインドに製造拠点を築
(%)
いている。インドでは、携帯電話アドオンサービスやアプ
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
リケーションに対する消費者の興味が高い。携帯端末の買
図7 VSATサービス・プロバイダのマーケット・シェア
換え期間が平均18ヶ月という状況も携帯端末の販売台数を
押し上げている。
カラー画面の端末の売り上げが大きく伸び、逆にモノク
ロ画面の端末の売り上げは落ち込んだ。現在、カラー電話
機は市場の65%を占め、モノクロ電話機は35%まで減少
した。
●携帯端末機メーカのマーケット・シェア
(GSM及びCDMA通計)
インドの携帯端末市場を席巻しているのはNokiaで携帯
端末市場の実に53.6%を占め、単独でシェアの過半数を占
めている。MotorolaとLGがそれを追い、それぞれ11.1%、
11%のシェアを持つ。以下、Sony Ericsson、Samsung、
ZTE等が続く(図6)。
(%)
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
(4)モバイル向け付加価値サービス(VSAT)
2008年6月に8万9,868人であったVSAT4の基礎加入者
ている。特にBharti Airtel Ltd.、Hughes Communications
数は、同年9月には9万4,436人まで増加した。これによ
Ltd.、HCL Comnet、Bharti Broadband、Essel Shyam、
り、2008年度第2四半期は第1四半期と比べ5.08%増とな
Tatanetは、今四半期の加入者数が増加したと報じている
(図7)
。
った。TRAIレポートによると、9つあるVSATサービ
ス・プロバイダのうちHCLが31.42%で業界最大のマーケ
(5)携帯電話向けラジオサービス(PMRTS)
ット・シェアを有する。また、BSNLは急速な勢いで伸び
PMRTSサービス5は、サービス・プロバイダの利幅が小
ており、2008年度第2四半期の成長率が20.26%であった。
●VSATサービス・プロバイダのマーケット・シェア
さいために、思うほどの発展が見られなかった。インドに
(2008年3月)
は12社のPMRTSサービス・プロバイダがあり、デリー、ム
VSAT加入者数は過去4四半期を通して順調に伸び続け
ンバイ、バンガロール等の大都市の加入者が70%を占める。
4 VSAT:Very Small Aperture Terminal(超小型地球局)
5 PMRTS:Public Mobile Radio Trunk Service
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●PMRTSサービス・プロバイダのマーケット・シェア
図8 PMRTSのマーケット・シェア
(2008年9月)
PMRTSサービス加入者数の伸び率は芳しくなく、2008
年度第2四半期は第1四半期に対し、わずか0.89%の増に
とどまった。2008年6月に3万5,157人だった加入者数は、
2008年9月には3万4,846人までに減少した。マーケッ
ト・シェアでトップに立つのはArvind Millsで、33.70%の
加入者がこの会社のサービスを利用している。Procall
Limited、Quick Call、そしてSmart Talkの順でそれに続
いている(図8)。
(6)ブロードバンド及びインターネットサービス
インターネットやブロードバンドも近年めざましい発展
を遂げている。通信業界の規制緩和及びテクノロジーの進
(%)
化により、インドのインターネットサービスは爆発的に拡
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
大した。また、インターネットサービスの民営化と通信イ
ンフラの進歩が、業界の発展をさらに刺激した。TRAIレ
図9 インターネットサービス加入者数の推移
ポートによれば、2008年9月末の加入者数が1,224万人に
(Mil)
達しており、2008年6月からの成長率は4.97%にもなると
いう(図9)。
この他、2008年9月末には、GSM、CDMAの携帯電話
端末からインターネットに接続するワイヤレスデータサー
ビスの利用者は8,827万人であった。
ダウンロードの速さが256kbps以上のブロードバンド加
入者数は、2008年度第1四半期に438万人であったのに対
し、第2四半期には490万人にもなっている。第2四半期
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
のブロードバンドインターネット加入者数の増加率を見る
と、11.87%であった。
3
大規模な投資
インド国内の好況な通信市場には、莫大な投資が行われ
■
インド郵政省のある官僚によると、インドはBharti
ている。この流れは、新たな競争相手や新規サービスの立
Airtelの株31%を保有するSingTel6の長距離電話事業へ
ち上げによりさらに加速しつつある。
の参入を許可した。
■
ノルウェー拠点の通信会社であるTelenorがUnitech
■
(Mauritius)Ltdは、ABTL7株を20%取得するために約5
Wireless株60%を12億3,000万ドルで取得した。
■
モーリシャス拠点のP5 Asia Holding Investments
日 本 の NTTド コ モ は Tata Teleservicesの 自 己 資 本
億4,513万ドル投資する予定である。その資金は、ビハ
27.31%に 約 26億 ド ル 出 資 し 、 Tata Teleservices
ール州周辺におけるABTLの事業展開に活用される予定
である。
(Maharashtra)Ltdの株20.25%を1億9,023万ドルで取
得した。
■
BSNLは、2009年までにタミル・ナードゥ州周辺におい
6 Sing Tel:Singapore Telecommunications
7 ABTL:Aditya Birla Telecom Ltd
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て2億150万ドルを投じ、第2・第3世代の携帯電話契
■
約数を23万件追加しようとしている。
■
■
出するとしている。
通信市場の新規参入者であるバーレーンのBatelcoはチ
■
QTIL10は2008年から2009年にかけて30億ドルを投じる
株49%を2億2,500万ドルで取得することに合意した。
計画である。
湾岸諸国を拠点とする通信会社EtisalatはSwan Telecom
■
■
■
Vodafone Essarは、60億ドルを投じ、携帯電話加入者
数を現在の4000万人から1億人まで増やす計画である。
KTPL は、2年後をめどに2,011万ドル投じて新子会社
8
■
Tata Teleservices Limitedは、674万ドルを追加投資し、
KTIL を設立し、通信サービス・プロバイダに建物内の
2009年8月までにグジャラート地方(インド最西部の
通信インフラ事業を提案しようとしている。
地方)において100のセル・サイト(移動通信網におけ
世界第2位のネットワーク機器メーカであるJuniper
る 基 地 局 )を 設 置 す る と 発 表 し た 。 同 社 は 以 前 も 、
Networksは、研究開発活動を視野に入れつつ、今後5
2009年3月までにグジャラートに2,410万ドル投ずると
年間でインドに4億ドルを投資する予定である。
の発表を行っていた。
9
■
通信インフラビジネスの成長を見越し、Srei Groupの
ェンナイを拠点とするGSM携帯キャリアであるS-Telの
株45%を取得した。
■
Idea Cellularは2008会計年度中に約23億6,000万ドル支
収益面においてインドトップレベルであるBSNLは、
■
通信会社のAircelは、2009年2月23日よりバンガロール
WiMaxプロジェクトに対し11億6,000万ドル投じること
においてGSM携帯のサービスを開始し、2億2,058万ド
にしている。
ルを投じて今後1年間で同地全体に基地局を設置する
Bharti Airtelは、主要な拡大入札に25億ドル投入する予
予定である。
定である。
■
Reliance Communicationは、2008会計年度中に56億
9,000万ドルを資本投資にあてる計画である。
4
政府の政策
インドの通信分野の規範となるものは、1885年に制定さ
■
1992年に通信分野が自由化され、民間に開放された。
れたインド電信法及び1933年に制定されたインド無線法で
■
国際市場での競争力をつけ、輸出を増加させるために、
電気通信政策(National Telecom Policy)が1994年に発
ある。1992年以来、インドの通信分野は大きな変化を重ね
表された。
てきた。インドの通信業界を統轄するのは、この業界の政
策立案、許認可、法改正等の権限を持つ電気通信局である。
■
管理機関であるTRAIが1997年に創設された。
電気通信局は1997年にTRAI、ワイヤレス計画委員会
(WPC) 、及び電気通信紛争処理・上訴裁判所(TDSAT)
11
政策を整備し、消費者利益を保護するため、独立した
12
■
農村地域に公衆電話(PCO)を浸透させ、コスト・ベー
を設置し、政策変革を円滑に進め、また、消費者の利益を
スだった収益の考え方から利用量を増やして収益を上
保護するための体制を整えた。
げる考え方へとシフトするために、新電気通信政策
1999(New Telecom Policy)が制定された。
(1)主要な変革
電気通信局は、郵便電報局から派生して設置された。電
■
電子通信局は、2000年に、国有会社BSNLになった。
■
TRAI改正法2000の成立により、TRAIによる規制が緩和
された。
気通信局はそこからさらに枝分かれし、MTNLとVSNL13
が作られた。それ以来、様々な政策変革が行われ、インド
■
GSM携帯電話の減少、GSMライセンス料金の減額、
の通信分野は強化・増強されてきた。
8
9
10
11
12
13
2001年に、基本サービスを提供する事業者の増加、
KTPL:Kavveri Telecom Products Limited
KTIL:Kavveri Telecom Infrastructure Limited
QTIL:Quippo Telecom Infrastructure Ltd
WPC:Wireless Planning Commission
TDSAT:Telecom Disputes Settlement and Appellate Tribunal
VSNL:Videsh Sanchar Nigam Limited
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■
CDMA(WLL)及び3社目、4社目のGSMネットワーク
引き上げられたことにより、通信業界史上最大の急成
事業の開始が見られた。
長が起こった。
2002年にILDサービスが自由化され、インターネット電
■
話通信が開始された。
■
可された。
2003年に発信側支払い(CPP)が原則となった。また、
(2)政策変革の成果
携帯電話事業及び固定電話事業のライセンスが統合さ
れた(UAL)。
■
■
2008年には、第3世代携帯及びiPhoneのサービスが許
通信業界に関するインド政府の政策は、国内の通信業界
2004年、ブロードバンド政策2004が策定され、ダウンロ
を活性化させ、驚異的な成長を促進した。インド政府は、
ードの速さが最低256kbpsと定められた。また、2005
1990年代半ばから継続的な通信インフラの構築・改良を進
年、2007年、2010年までに達成すべき加入者数の目標
め、同時に関連法を適宜改正してきた。通信業界の競争自
が、それぞれ300万人、900万人、2000万人と設定された。
由化は、多くの新規事業者の参入を促し、サービス競争及
2005年、海外直接投資の制限が従来の49%から74%に
び利用料金の低価格競争が激化する結果になった(図10)。
図10
携帯電話新規加入者及び携帯使用料金の推移
(Mil)
(Rs/Min)
Source : Telecom Regulatory Authority of India (TRAI)
5
業界の将来
新規加入者数が月間800万人という数値が示す通り、携
しかし、この携帯電話の普及はインドの都市部に限られ
帯電話業界は、インドにおいて、世界で最も勢いのある成
たものではない。農村地域への通信の普及こそが、グリー
長を見せている。
ン・レボリューション後のインドにおいて最も重要な発展
になると目されている。2006会計年度において12.9%であ
ワイヤレスデータサービスのために、インドでは大規模
なインフラ整備の投資が必要となった。インドは、現在約
った電話回線密度が、2007会計年度には18.2%に達した。
10万あるネットワークタワーを、2010年末までに33万まで
また、2006会計年度に対し2007会計年度には、都市部の電
増やさなければならない。これにより、インドの通信業界
話回線密度は38%から45%に、農村地帯では1.9%から2.0%
全体がさらに発展することが予測される。従って、インド
になった。通信サービスを農村地域や僻地にも浸透させ、
の携帯電話加入者数が、2012年まで15.3%という空前の年
携帯サービスの成長を促すために必要なイニシアティブと
平均成長率(CAGR)で伸びると予測は何ら不思議なこと
して、インド政府は共用のワイヤレスインフラ等を構築し
ではない。
ている。
日本データ通信 No.167
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ている。
(1)重要事項:どのような理由で、どのようにインドに
通信事業者にとっての本質的なチャンスは、未開発の農
注目すべきか?
■
世界最大規模の民主主義国家
村地域にある。インドは、現在4パーセントである地方の
■
独立した司法
電話回線密度を約3倍まで増加させようと計画しており、
■
世界第5位の通信ネットワーク市場。新興国では中国
地方の通信市場には大きな可能性が眠っている。近い将来、
に次いで第2位である。
インドの農村地域ではあらゆる通信サービスの需要が急増
月間800万人の携帯新規加入者により、世界で最も勢い
し、サービス・プロバイダにとって大きなチャンスになる
のあるワイヤレスサービス市場となっている。
はずである。
■
■
国外からの投資の自由:海外直接投資の制限が49%か
(3)インドの強み
ら74%に引き上げられた。また、地方の通信機器市場
への投資も開放されている。
■
■
多数の優秀な人材
インドには400あまりの大学及び1500あまりの研究開発
政府は通信メーカに対する免税、特別経済区の確保に
より業界の発展を促している。
機関があり、毎年50万人近くの学士、修士、エンジニアを
■
投資に対するリターンの率が他国に比べ非常に高い
輩出している。この豊富な人材により、世界中の企業がイ
■
熟練し、かつ優秀な労働力
ンドにおいてビジネスを始めることが可能となっている。
■
電話回線密度の全国平均19.9%に対し、農村地域はわず
■
この20年間、インドは人件費が低いというだけの理由で、
か1.9%であり、その市場が未開発であることが見て取
■
安い労働力
れる。
多数の多国籍企業を誘致してきた。近年では、多くの国際
2010年までに世界第2位の通信市場となることが予測
企業が後方業務、工場、そして研究開発施設の拠点をイン
されている。
ドに置くようになった。
■
(2)今後の成長分野
消費者市場の可能性
インドは、可処分所得が急増したことにより、世界有数
第3世代携帯やiPhoneのサービス開始が許可されたこと
の消費者市場になりつつある。近年の研究によれば、イン
でインドの通信分野は海外企業にとってこれ以上ない程の
ドでは毎年4,000万人もの人々がミドルクラスに加わって
チャンスの場となっている。これに伴い、VPNやVAS等
おり、その中でも高ミドルクラスとされる人々は、所得の
のサービスも発展も予測される。
約6%を通信サービス料に費やしているという。
■
企業向けの通信サービス
■
インフラの共有
■
管理サービス
関わらず近い将来に5%から7%の成長率を維持しようと
■
仮想プライベートネットワーク(VPN:Virtual Private
している。これはインドの政局が安定していることによっ
Network)
て支えられているのである。インドは、その人口規模のた
■
付加価値サービス(VAS:Value Added Services)
めに世界最大の市場の一つとなる。有益な規制制度によっ
■
地方における電話通信サービス
て最適なビジネス環境は創出される。
■
第3世代携帯
■
WiMAX
通信事業者にとって大きなビジネスの将来性がある。イン
2010年には加入者が5億人に達すると見込まれており、
ドの通信事業者は、世界で最も早いペースで成長を続けて
さらに、インド経済は、先般の世界規模の経済混乱にも
現時点でインドは26%ほどの低い電話回線密度のため、
多くのサービス・プロバイダは急激な成長に対応するため
おり、2010年までに世界第2位の通信市場となると見積も
に、インフラの共有を考えている。WiMAXのようなサー
られている。
ビスは、インド経済の成長の後押しする程にならなくとも、
ヘルスケアや教育サービスの向上に繋がることが期待され
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