社会科学習指導における効果的な視聴覚機材・教材の活用

社会科学習指導における効果的な視聴覚機材・教材の活用
〜資料活用・表現の能力の育成を目指したコンピュータの活用について〜
村山市立楯岡中学校
1 テーマ設定の理由
本校はインターネット及び無線LANによる
鈴
木
千
宏
て、グラフ作成力を高めることができる
だろう。
校内イントラネットなどの充実したネットワ
(3) コンピュータを活用して収集した幅広
ーク環境が整っている。また、コンピュータ室
い資料を取捨選択する場面を設定すること
には、40台の生徒機があり、生徒1人に一台
で、数ある資料の中から必要に応じて資料
のコンピュータが割りあたるという恵まれた
を取捨選択する力や資料を活用する力が高
環境にある。生徒たちは、理科や技術・家庭科
まるだろう。
の授業で、コンピュータを利用しているほか、
総合的な学習の時間にはインターネットを使
3 研究の方法
って情報収集をしたり、生徒によってはレポー
本年度は、選択社会の実践を通してテーマ
トを作成したりしている。社会科の学習におい
に迫ろうと考えた。本年度の選択社会では、
ては、選択社会で活用されているものの、必修
コンピュータを使ってグラフを作成する学
社会ではあまり利用していないのが現状であ
習の他、メインとしてディベートという学習
る。現代の高度情報化社会にあっては、仕事や
ゲームを取り入れようと考えた。これらの学
学習にコンピュータを効果的に活用できるこ
習を展開していく過程で、以下のような点を
とが望まれており、生徒もこのことは承知して
明らかにしていきたいと考えた。
いる。
ア 生徒は、インターネットを使って検索
中学校学習指導要領「社会」では、社会の変
することで調べることに意欲的になるの
化に自ら対応する能力や態度を育成する観点か
ら、
「学び方や調べ方の学習、作業的、体験的な
か。
イ コンピュータソフトを使えば、グラフ
学習」などを重視するということが明記されて
作りに興味を持つのか。
いる。このため、社会科の学習において、資料
ウ インターネットを使った検索は、資料
を適切に収集すること、選択すること、処理す
を取捨選択する力や資料を活用する力を
ること、活用すること、さらにそれらの資料に
高めることに寄与するのか。
もとづいて考察し、公正に判断したことを表現
エ 生徒がインターネットによる調査でつ
する等の学習は、きわめて重要なものであると
いえる。このような学習の中の、資料の収集、
まずくのはどのような場面か。
オ インターネットによる検索を進めてい
処理、活用、表現の活動でコンピュータを効果
く上での問題点は何か。
的に活用し、社会の変化に主体的に対応できる
授業では次のような方法で生徒の変容を
生徒を育成できると考え、本テーマを考えた。
とらえていこうと考えた。
ア コンピュータを使ってグラフ作成を行
2 研究の仮説
わせたり、インターネットによる検索を
(1) 資料を収集させる場面でコンピュータ
行わせたりして、その様子を観察し、机
を活用させれば、調べることに対する興
間指導を行って生徒の学習上の悩みを聞
味関心を高め、より多くの情報をすばや
き取ってアドバイスを行っていく。
く取得できるため、調べることに意欲的
になるだろう。
イ
資料を取捨選択させ、活用させるため
にディベートの立論の時間を2分間とし、
(2) さまざまなデータをグラフ化する際に
発表する時間に制限を設けて、資料の選
コンピュータを利用させれば、よりわか
択の場面を観察し、アドバイスを行う。
りやすく伝える表現力の向上の一貫とし
なお、ディベートを取り入れたねらいは、
次の3点である。
○
身近な社会的な問題に対する興味・関心の
心の高い生徒を育てたい。
○ 身近な社会的事象について、多面的・多角
的に考える生徒を育成したい。
○ 社会的事象について考えたことを、資料を
もとに相手にわかりやすく伝えることができ
前期選択社会では、以下の 1 つの論題につ
いて調べさせた。
○「中学校を自由服登校とすべきである。」
後期選択社会では、以下の 5 つの論題から
一題を選択させて調べさせた。
①「日本は死刑制度を廃止すべきである。」
②「憲法第九条を「戦力を保持する」と改
る生徒を育てたい。
このようなねらいのもと生徒に実際にディ
ベートマッチをさせることを念頭に起き指
正すべきである。」
③「自衛隊を海外に派遣すべきである。」
④「中学校の制服を廃止し、自由服とすべ
導に当たった。
きである。」
⑤「未成年者が携帯電話を持つ事を禁止す
4 研究の実践
(1) コンピュータによるグラフ作成
村山市の過去40年間の男、女、合計の
人口の5年ごと移り変わりを、折れ線グラ
フとして作成させた。
<生徒の様子>
べきである。
」
<生徒の様子>
前期
制服や自由服というキーワードをもとに検
索を行っていた。生徒の中には、最近校則が
改正され、自由服登校となった学校の生徒会
ボタン1つでグラフの形式をさまざまに
のホームページを見つけ、自由服登校にする
変えることができることに驚いている生徒
には、生徒のモラル向上が不可欠であるとい
もいた。出来上がった折れ線グラフを見て
う考えを持った生徒がいた。一方で、アトピ
満足気な生徒が多かった。また、作業が早
ー性皮膚炎の原因について調査し、選択回数
い生徒には、村山市の 2000 年の月別降水
の少ない制服の不潔さとアトピー性皮膚炎の
量と月別平均気温を与え、雨温図を作成す
関連を見いだそうとしている生徒もいた。ま
るように指示したが、短時間で作成してい
た、自由服と学力向上や生きる力との関連を
た。生徒の間のコンピュータの操作にはか
裏付ける資料を探し出そうとしている生徒も
なりの差がある。
いた。自由服と個性を尊重の関連を考えた生
徒は、個性という資料を見ていくうちに、自
分の中の「個性」という言葉の意味があいま
いであることに気づき、
「個性」の意味を確認
するために、あらためて国語辞典を引く生徒
もいた。多くの資料に触れたことで、生徒達
の知的好奇心が揺さぶられ、学習意欲が高ま
っているという感触を得た。
(2) コンピュータによる調べ学習
前期選択社会では第9時目より4時間にわ
たって、後期選択社会では、5時間目から9
時間目にわたって、コンピュータを使った資
料の収集をさせた。生徒は、論題について、
肯定、否定いずれかの立場で立論を完成させ
なければならない。
後期
死刑、第 9 条、自衛隊などのキーワードをも
とに検索していた。中には、国際的テロ組織が
発した脅迫声明文を探し出し、証拠資料として
いる生徒がいた。また、証拠資料に、近年の犯
罪者数が必要だと考え調査していたが、見つけ
られないでいる生徒には、
「日本国勢図会」の目
次を示して、インターネット検索以外の調査方
法をアドバイスした。生徒達は、調査を進めて
いくうちに、語句の意味や基本的なデータは、
文献資料で調査する方が有効であるということ
【前期選択単元の指導計画】
【前期選択 本時の指導案】
に気づいてきた。
立論資料をパソコンのワープロソフトを使っ
て作成した生徒も約半数に上った。
5 成果と課題
本年度、
資料活用・表現の能力の育成を目指し、
ピュータ操作が得意な生徒もあり、さまざ
まな検索エンジンを使う生徒もいた。
また、
コンピュータを利用して、選択社会でディベート
キーワードひとつで世界中のサイトにアク
を取り入れた授業を実践してきた。成果と課題は
セスできる点は、コンピュータ検索のメリ
以下の通りである。
ットであるが、興味本位に使用した場合の
悪影響は計り知れないと思った。2つ目は、
(1)成
果
ア 生徒はインターネットを使って検索して
生徒はコンピュータによる検索は万能であ
るかの錯覚を持っているために、その意識
資料を集めることに対して大変意欲的であ
を改革していくことが大切であると思った。
った。その理由は3つである。1つは自分
文献調査、聞き取り調査など同じように1
がねらった資料に直面できることがあるか
つの手段であるという意識を持たせていか
らである。自分が考えたことに関連する資
なければならない。
料を発見した時も同様である。自分の考え
たことが客観性をもつことは大いに自信に
つながった。2つ目は、自分が考えも及ば
なかった資料に出くわすからである。思考
が広がることは知的好奇心を高めることに
つながっていた。3つ目は、検索のキーワ
ードを替えると別な角度から資料を収集で
きるという面白さがあることである。
イ インターネットを使った検索では、予想
通り多くの資料を収集することができた。
その場合、どの資料が自分の立論に有効な
(2) 課
題
のかの視点を持って資料を与えれば、数あ
ア 自分自身、コンピュータについての知
る資料の中から選択することができること
識が浅いため、コンピュータによるさま
がわかった。また、相手の立場からみて有
ざまな操作を指導していくためには、ソ
利な資料はどれかという逆の視点を持たせ
フト面、ハード面での教師側の研修が不
ることで多面的な思考力を付けることがで
可欠であると痛感した。
きるとわかった。
ウ 生徒がインターネットを使った検索でつ
イ インターネットを使って検索して資料
を集める初期の段階では、時間内に効率
まづくのは、以下の場面であった。
よく調べるためには、あらかじめ教師側
(ア) 自分の探したい統計資料が見当た
でリンク集を作成して必要がある。
らない。
(イ) 探し出した資料中の語句の意味が
ウ
インターネットを使った調査の他、調
査の幅広い方法について理解を深めさせ、
わからないために、内容が理解でき
インターネット検索が有効か否かの判断
ない。
力を付けていく必要がある。
そのような時には、以下の方法を示すこと
エ 情報モラルについて、自分自身の知識
が有効であった。(ア)については、
「日本
を深める必要があると感じた。また、技
国勢図絵」や「○○白書」などの書籍を紹
術・家庭科など他教科と連携を図って生
介すること。
(イ)については、
「国語辞典」
徒の情報モラルを向上させていくことも
「イミダス」
「現代用語の基礎知識」を紹介
大切である。
すること。
エ
インターネットによる検索を進めてい
く上での問題点の1つは、コンピュータの
使用目的とコンピュータ利用上のルールの
徹底であると思った。生徒の中には、コン