パワートレイン向け HiLシステムパッケージ

ETAS
Henrik Jakoby、
Dr. Gerd Wittler
パワートレイン向け
HiLシステムパッケージ
PT-LABCAR V2.0:強力なシステムパフォーマンスを発揮
複雑化の一途をたどる車載エレクトロニクスシステムのテストに対応するため、より高性能なHardware-inthe-Loop(HiL)システムが求められています。HiLシステムは強力なパフォーマンスに加え、テスト対象シ
ステムの修正や拡張における効率的な対応のための柔軟性も備えていなければなりません。ETASのPT-LABCAR V2.0はパワートレイン用の高性能なHiLシステムです。PT-LABCAR V2.0は、500µs未満のサイクルタ
イムが要求される最新の8気筒エンジンマネジメント用ECUにおけるクローズドループテストを実行できること
が確認されました。
課
最先端の車載 ECU は、搭載される
PT-LABCAR
ETASのPT-LABCARは複数の基本パッケー
Intel Core 2 Duo®プロセッサを用いて対応
可能な例として、INTEC GmbHの複雑な
ファンクションもハードウェアピン数も増加
ジ化されたモジュール構造で成り立ってい
ビークルダイナミクスモデルがあります。こ
する一方であり、テストケースも複雑化の
ます。このシステムの中核は、市販の標準
れはコンポーネント本位のアプローチを採用
一途をたどっています。しかもECUテスト
的なPCを活用してリアルタイムモデルを高
した現実的なアクスルの挙動を記述してい
用のリアルタイムモデルには、極めて高い
速に処理するリアルタイムPC(RTPC)で
るため、多数の機械的バリアンスを伴う非
精度が要求されます。この高精度化の傾向
す。LABCAR-RTPCソフトウェアにより、
常に大規模なモデルです。数年前まで、こ
はECUプログラムの複雑化により今後も続
市販 PC はリアルタイムシミュレーション
の種のモデルはリアルタイム処理には不向
くと予想されるため、非常に高いパフォー
ターゲットに変貌します。この方法により、
きと考えられていましたが、技術の進歩に
マンスを発揮すると同時に、柔軟で拡張性
計算能力の大幅な向上が要求された時点で、
より現在の計算能力は3倍にもなりました。
に富んだHILテストシステムが求められてい
高性能な次世代プロセッサへのアップグレー
同様に、PT-LABCARの処理能力も向上し
ます。
ドをいつでも経済的かつ容易に行うことが
題
できます。
LABCAR-OPERATORソフトウェアはオペ
いった極めて高精度な物理エンジンモデル
レーション用およびプロジェクト管理用の
についても容易に統合しリアルタイムに実
ユーザインターフェースを備えています。
行できます。
I/O接続はプラグインボードの形で実装され
るため、プロジェクトに応じてアレンジでき
ます。システムのフロントパネルには耐久性
に優れたプラグイン接続が用意されており、
最大300個のECU信号のアクセス、ブリッ
ジ、修正が可能です。
Intel Core 2 Duo®により、処理能力が大
幅に増強
PT-LABCAR V2.0は新しいIntel Core 2
Duo®プロセッサをサポートしています。こ
のプロセッサは計算負荷を両方のプロセッ
サコアにインテリジェントに分散するため、
リアルタイムモデルのシミュレーションを飛
躍的に高速化させることが可能になりまし
た。
28
RT J2.2007
続 け て い き ま す 。 enDYNA Themos
(TESIS DYNAware製)やGT-POWERモ
デル(Gamma Technologies Inc.製)と
PT-LABCAR.
19 inch Rack
9, 12, or 18 U
(back-mounted)
Signal I/O
Breakout Box
Load Connectors
(back-mounted)
ECU
Connector Box
RTPC
インテリジェントなタスク管理により、高い
Power Supply
処理能力を実現
それぞれの処理段階では、フロントパネル
Software including pre-configured projects
に接続される電気信号を変換または生成し、
さらにRTPC上で実行されるリアルタイムエ
ンジン/トランスミッションモデルに伝える
必要があります。インテリジェントにタスク
Calculation time
[ms]
を処理するタスク管理機能が、要求される
高いパフォーマンスの発揮に一役買ってい
ます。
その良い例が、ETASの新しい回転/時間同
3,5
3,5
期測定ボードES1336です。このボードは、
信号レベルが変化した時など必要な場合に
のみ信号を送信することで、ハードウェア
とRTPC間のデータ転送の最適化を図ること
0,8
ができます。
0,7
0,6
~ -75%
別の例では、新しい PWM 信号用ボード
ES1321があります。このボードには高性能
なフィールドプログラマブルゲートアレイ
0,4
Model-based Vehicle
Dynamics Model
LABCAR-VDYM V5.0
0,4
(FPGA)が搭載されており、信号データを
減らすとともに、必要とされる高速度でイ
0,2
ンテリジェントな処理を実現できます。タ
0,17
スクをFPGAとRTPCに適正に分散すること
により、信号の伝播遅延をさらに短縮可能
0,0
2003
ES1130
2004
RTPC
2006
RTPC
2007
RTPC
(PowerPC)
(2.0 GHz)
(3.2 GHz,
Pentium 4)
(2.4 GHz,
Intel Core 2 Duo®)
です。
➔
■
PT-LABCARで
測定した計算時間
29
J 2 0 0 7 . 2 RT
CAN通信の処理は、RTPCのPCIバスに搭載
効率的な熱管理により、高いクロック速度
された専用ボードで行われることにより、全
を維持
体のパフォーマンスも向上します。さらに、
ハイパフォーマンスなPCプロセッサは電流
複雑なCANバスのシミュレーションもPT-
引込みが多く、かなりの発熱が伴います。熱
LABCARハードウェアに組み込まれている
CANボードと連携して行うことが可能にな
管理がうまく行われないと、CPUのクロッ
ります。
ケースも多くなります。このためPT-LABCARのために用意されたRTPC用PCは、一
柔軟性
般的なスロットタイプの筐体ではなく、堅
マルチプロセッサアプリケーションへの対応
牢で廉価な特製のPCエンクロージャに納め
ク周波数を抑えて過熱を防ぐ必要が生じる
は、高速RTPC間通信を実現できる、レイテ
られており、お客様はPT-LABCARシステム
ンシがごくわずかな「リフレクティブメモ
のさまざまなメリットを享受することができ
リ」カードを使用することで、複雑なモデ
ます。
ルを複数のRTPCに分散処理してPT-LAB-
CARの能力をさらに高めることができます。
この機能は現在のLABCAR-RTPC V3.0に
PT-LABCAR
すでに含まれており、特別なソフトウェア
システム
等を追加する費用は生じません。
コンポーネント
Configuration
Calculation
Operation
Legend:
LABCAR
Software
Models
Other ETAS
Software
Operation
PC
Simulation Target
RTPC
OPERATOR
INCA
Application Tools
AUTOMATION
Cards
ES4440
Error Simulation
RTPC
Interfaces
External Measurement Equipment
Breakout Box
ECU Connector Box
HiLシステム:
Hardware-in-the-Loopシステムは、ドライバー・車両・走行環境(DVE)で構成されるモデ
ルコンポーネントのシミュレーションを用いる、ECUテストのための理想的な実験環境です。ドラ
イバーや車を危険にさらすことなく、テストカバレッジの飛躍的な向上をもたらし、事実上あらゆる
運転状況を再現して多様なテストを実行できます。テストの完全な自動化も可能です。HiLテストシ
ステムは、開発の初期段階で自動車用ECUソフトウェアの品質を保証するための効率的な手段です。
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ECU