第 17 回スポーツビジョン研究集会 第 17 回スポーツビジョン研究集会を

第 17 回スポーツビジョン研究集会
第 17 回スポーツビジョン研究集会を開催致します。今年は、单アフリカでサ
ッカーのワールド・カップが開催され、日本チームの奮闘が目立ちました。サ
ッカーの中継も、選手の視線、ルックアップのタイミングなど、選手の見方を
チェックしながら見ると大変面白いものです。また、テレビの画面も、中心視
でボールを注視するのではなく、両チームの選手の動きを主役として、ボール
の存在は周辺視野領域で確認しながら見ると、選手の配置や空いたスペースな
どが良く分かります。
今回は特別講演に、女性カーレーサーとして有名な井原慶子さんをお迎えし
ます。井原さんは、モーグル選手、レースクイーン、カーレーサーと、色々な
御経験を積まれていますが、特にカーレースでは F-3 を中心に、男性選手を相
手に世界中で御活躍されました。実際にカーレースにおける「見ることの重要
性」を体験されています。
基調講演は私が担当しますが、スポーツビジョンについて、もう一度原点に
返って考えてみようと思います。
一般演題は 9 題あります。なるべくディスカッションの時間を取るようにし
ましたので、活発な御討論を御願いします。
なお、研究集会の翌日、研究集会と同じ会場で、
「第一回スポーツビジョン講
習会」を開催します。おかげさまで、動体視力や距離感、深視力などの言葉が
広く知られるようになりましたが、ややもすると言葉だけが独り歩きをして、
間違った意味で使用される可能性も出てきました。スポーツビジョンの基本的
な内容を解説する目的で、この講習会を開きます。お時間がありましたら、是
非ご参加くださいますよう、重ねて御案内申し上げます。
【特別講演】
■目標達成までの道のり~世界転戦の軌跡
○井原慶子(レーシングドライバー)
プロフィール
法政大学経済学部卒業
1999 年フェラーリチャレンジ(優勝 3 回、ポールポジション 3 回)
フェラーリ世界戦 in イタリア(120 台中 12 位、国別対抗戦 2 位)MVP of The Year 受賞
2000 年イギリス・フォーミュラールノー参戦
2001 年フランス参戦(
(SIGNATURE-RENAULT)入賞 4 回
2002 年 AF2000 参戦
参戦レース全戦表彰台獲得/AF2000 世界戦マカオ GP(3 位)
2003 年:フォーミュラ BMW 参戦(Team Yellow Hat)シリーズ 3 位
2005 年:イギリス F3 国際シリーズ参戦(Carlin Mortorsports)(入賞 7 回)/F3 世界選手権参戦
2007 年イギリス F3 国際シリーズ参戦(Carlin Mortorsports)(入賞 4 回)
2008 年アストンマーチンアジアカップ
チャリティーゲスト参戦
2009 年フォーミュラール・マン参戦(入賞)
レーシングドライバーの井原慶子です。昨年までの 10 年間イギリスはロンドン、フランス
のパリ、そしてマレーシアのクアラルンプールに拠点を置き、世界転戦してまいりました。
大学在学中にやっていたモデルのアルバイトの一環で、レースクイーンとしてサーキット
を訪れた時にモータースポーツに魅了されました。その後、スポーツ界でのデビューとし
ては遅すぎる 25 才でレースデビュー。デビュー翌年に渡英してからは、年齢、性別、人種
など様々な壁にぶつかりながらも周りの方々の温かい応援により目標を達成することがで
きました。年齢や性別による体力的なハンデを乗り越えるために、世界のトップトレーナ
ーと工夫をこらしてフィジカルや動体視力トレーニングに臨んだ日々。また「時」に限り
があるからこそ最先端の技術を生み出し、人間の持てる能力を最大限に発揮して競うモー
タースポーツの世界。そんなカーレースの世界に自分の持ち合わせる能力を全て注ぎ込ん
で達成した目標までの道のりをお話させていただければ幸いです。
【教育講演】
■スポーツビジョンの問題点
○真下一策((スポーツビジョン研究会代表、日本体育協会公認スポーツドクター)
スポーツビジョンの研究を開始して 20 年以上経った。データもなく、具体的なコンセプト
もないままのスタートであったが(分析した選手の数も 2500 名を超え)、何とか目鼻がつ
いてきたようだ。視覚のメカニズムも医学的には未だ完全には解明されておらず、我々と
しても現象を分析して推論をするにとどまっている点も多い。しかし、分析するに伴い、
いくつかの疑問点も出てきた。今回は皆様に考えてもらう目的でそれらをまとめてみた。
【一般講演】
■眼と手の協応動作中における視線配置の分析
○吉井泉(大阪府立大学)
12 歳から 76 歳の男女 43 名を対象とし、AS-24 使用中の注視点と反応動作の測定を行っ
た。60 個の視標提示に対し、モード 5(提示間間隔:1.3 秒)、モード 3(同:1.8 秒)、
モード 1(同:3.0 秒)の 3 条件で実施した。その結果、中高年者は、各モードでの総反
応時間は同値を示したが、提示モード 3 および 1 と比較し、モード 5 において正反応数は
低値を示した。また中高年者は、動作完了まで視線の先行的移動はほとんど確認されなか
った。中高年者は反応の動作自体が劣るのではなく、視覚情報の獲得および処理の混乱に
よって、誤反応や遅延反応が多くなるものと推察された。
■横方向動体視力と眼球運動の性差に関する研究
○河村剛光 青木和浩(順天堂大学スポーツ健康科学部)
これまでの研究調査から、横方向動体視力には性差が認められることが明らかとなって
いる。また、横方向動体視力と眼球運動には関連があることが報告されている。本研究で
は、眼球運動にも性差が認められるかどうか調査することを目的とし、横方向動体視力に
関連する要素についての基礎的データを得ることとする。被験者は体育系大学生の男女で
あり、横方向動体視力の測定と、視標に対して眼球運動を行い反応する課題と指でボタン
を押して反応する課題を行い、これらのデータ分析を行った。
■聴覚障がい卓球選手と健聴卓球選手におけるラリー中の視線の違い
~アイマークレコーダーによる視線の分析~
○田島外志(東京富士大学)
卓球競技は卓球の回転を見極めることが重要であるが、見極めるために長い間
ボールを見て打つと相手からの返球についていけなくなる。返球速度は時速 140km の打
球が 0.2 秒で到達するとも言われている。そのため視覚は重要な要素である。聴覚障が
い者は聴覚による情報収集が困難であるが、視覚情報に対する反応が敏感で、優れた周
辺視野を持つとする研究結果もある。本研究では聴覚障がい者の卓球競技における視線
の使い方と、健聴者の視線の使い方をアイマークレコーダー(nac 製 EMR-8, EMR-9)で
測定し、比較分析をした。対象は聴覚障がい者と①同年代・同レベルの健聴者、②同年
代・上級レベルの健聴者との比較とする。結果、聴覚障がい者は①・②の対照群と比較
して、ボールを長く追視する傾向がみられた。
■スポーツグラス装用下での視力・色覚・視野測定の検査結果
○伊藤弘樹 山田敏夫 松井孝明(医療法人松井医仁会 大島眼科病院)
近年、スポーツグラスを装用している選手を多くみかけるが、視機能に関する報告は少ない。
そこで今回、スポーツグラス装用下での視力・色覚・視野の視機能検査を行いその有効性に
ついて検討したので報告する。対象は、当院職員で屈折異常および眼疾患を有さない20代
男性の被検者1名である。方法は、5種類のスポーツグラス(可視透過率 A:16%、B:23%、
C:28%、D:27%、E:12% )を装用させて、眼科検査室内で遠見・近見視力・コントラスト視
力・深視力・石原色覚表・パネルD-15テスト・ハンフリー視野検査をおこなった。今後も、安
全なスポーツが可能となるように、眼科の立場からスポーツグラスの適切な選択についてさら
に検討を加えていきたいと考えている。
■企業研修においてのビジュアルトレーニングの効果と課題
○篠田秀美(ヒデミック学習ビジョン研究所)
スポーツ選手が実践しているビジュアルトレーニングの企業研修としての効果と課題。
全国の幼稚園、保育園の体育遊具を販売し幼児の体育指導をしている企業へ
月 1 回の実践指導と毎日のワークドリルベーシックコースを自主トレーニング 2 年実施。
事務処理の向上をはじめ、静止視力のアップ・車の運転の向上・速読効果など今後のビジ
ュアルトレーニングの効果を示唆。
ビジュアルトレーニングの実際の仕事への波及効果を内観と勤務評価を含めレポート。
■バスケットボールのシュート時における注視点の特徴
~シュート成功率の高い人と低い人の差の比較~
○杉山 敬 1)、石川優希 2)、前田 明 2) (1 鹿屋体育大学大学院 2 鹿屋体育大学)
バスケットボールにおけるアウトサイドシュートの成功率に選手の注視点が関係している
ものか明らかにするため、本研究はバスケットボール熟練者におけるシュート成功率が高
い人と低い人の注視点の特徴を明らかにすることを目的とした。被検者はインフォームド
コンセントが得られた大学バスケットボール選手であり、アイマークレコーダをつけた状
態でシュートを行った。その結果、シュート成功率が高い選手にはリング付近の注視点に
特徴があったことから、その結果をシュート成功率の低い選手にフィードバックしたとこ
ろ、シュート成功率が向上した。
■ビルベリーエキス含有食品の摂取が最大下運動中の眼と手の協応運動に及ぼす影響
○北哲也 1)、岡崎寛 1)、蔭山雅洋 1)、光墨諒介 1)、伊瀬靖昭 2)、前田明 3)、山本正嘉 3)
(1 鹿屋体育大学大学院、2 株式会社わかさ生活、3 鹿屋体育大学)
本研究では、アントシアニンを豊富に含むビルベリーエキス含有食品(わかさ生活社製)の摂
取が最大下運動中の眼と手の協応運動にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的
とした。被検者は健常な大学生 9 名とし、ペダリング運動を 70~80%HRmax に至る程度の負荷
で 15 分間行った。測定項目は静止視力、眼と手の協応動作とし、上記食品摂取時およびプラ
セボ摂取時の 2 条件で行った。その結果、眼と手の協応運動について、運動中、運動直後に
おいて上記食品摂取時がプラセボ摂取時と比較して有意に短い時間で遂行された。
■三次元映像を用いたビジュアルトレーニングが距離感に及ぼす影響
○光墨諒介 1) 市川哲哉 2) 前田 明 3)
(1 鹿屋体育大学大学院,2 オリンパスビジュアルコミュニケーションズ㈱ 3 鹿屋体育大学)
ゴルフでは、「空間の位置感覚」が極めて大きな役割を果たしており、そしてその感覚の中心を
なすものが深視力である。そこで本研究では、Vision GOLF(オリンパス・ビジュアルコミュニケー
ションズ社製)を用いたトレーニングが距離感に及ぼす即時的な影響を明らかにすることを目的とし
た。被検者は大学生 12 名とし、トレーニング前後に深視力及び距離感テストを行った。その結果、
深視力の誤差が小さくなる傾向が認められた。また、距離感テストにおいて 100Y、150Yにおける
誤差が有意に小さくなった。以上のことから、Vision GOLF の効果を示唆する結果となった。
■異なる桁数・表示時間が瞬間視力測定値に及ぼす影響
○水谷未来 1)、岡崎寛 1)、桜木規美子 1)、漆畑和希 2)、前田明 2)
(1 鹿屋体育大学大学院、2 鹿屋体育大学)
本研究では、異なる桁数・表示時間が瞬間視力測定値に及ぼす影響を明らかにすること
を目的とした。被検者は、健常な大学生 30 名とし、測定はパワーポイントを用いて作成し
た指標を用いて行った。測定①は 6、7、8、9、10 桁の数字を 0.1 秒間表示、測定②は 6 桁
の数字を 0.1、0.08、0.06、0.04、0.02 秒間表示し、それぞれ 3 回ずつ 15 回測定を行った。
その結果、桁数変化では桁数が増加するほど正解率が低下し、時間変化では表示時間が短
くなっても正解率にほとんど変化が見られないことが明らかになった。