非行臨床における処遇経過の分析について

東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 2 号(2009 年)
非行臨床における処遇経過の分析について
―現状と課題―
菅 藤 健 一* 森 丈 弓** 上 埜 高 志***
非行少年数こそ減少しているものの、動機が了解しがたい突発型凶悪事件の増加、対人関係が円
滑に営めない資質の少年による単独犯の増加といった問題の深刻化にかんがみ、非行臨床の立場か
ら、非行少年に対する処遇の在り方について検討を加えた。少年鑑別所を経て少年院に送致されて
矯正教育を受ける現行制度の流れの中で、処遇経過を分析するその方法について、現状を踏まえた
上で課題を抽出した。現状では非行少年の持つ問題を分化して捉え、それを標準化されたプログラ
ムによって介入しているのであるが、そうした方法を基本としながらも、事例の持つ全体性や関係
性を考えた場合、単に問題を分化するだけではなく、事例の変化を全体として捉える方法が考察さ
れるべきと考えられる。
キーワード:非行臨床 処遇経過 少年院・少年鑑別所 全体性
はじめに
非行は、本人にとって不幸な結果を招来するばかりではなく、その周囲の者、ひいては社会全体
に対して莫大な社会不安を生じさせ、また、実際に危害を及ぼすものであることから、その対策は
極めて大切である。
こうした非行問題に対する対策を目的として行われる心理臨床活動(非行臨床)は、国の施策とし
ても掲げられている。少年法はその第1条に掲げられているとおり、少年の健全育成を目的とした
法律であり、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整等に係る保護処分を行うとしてい
る。主にこの少年法を中心に据えて国の非行撲滅の施策が展開されているといってよい。
昨今、少年刑法犯検挙人員は減少しているものの、依然としてその発生率においては成人との比
較で高率であり、また、“ 平成 12 年に発生した佐賀バスジャック事件、岡山バット母親殺害事件、
豊川老女殺人事件など、従来の動機関連理解の方法では理解が難しい事件が起こっており、「何の
ために、どうして、あの子が、あそこまで」という説明が非常に難しくなっている ”(桑原,2001)。
さらに、集団非行が減少し、単独での非行が増加していること等から非行少年の資質面の変化もう
東北大学大学院教育学研究科博士課程後期
いわき明星大学人文学部心理学科
***
東北大学大学院教育学研究科
*
**
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かがわれる。
こうした状況について、現行制度の中で矯正教育を実施するところの少年鑑別所、少年院及び保
護観察所等に対しては更にその充実が求められている。これまで少年院などを中心とした少年矯正
は古い歴史を有しており、少年の健全育成に向けて努力を傾注して、相応の実績を残してきている
ものの、これまで実施してきた処遇の再点検が必要となっており、特に処遇経過の分析については、
少年院等処遇機関がどのような処遇を実施し、どの程度の効果が上がったかについて分析して、更
に効果のある処遇を展開することが求められている。
本研究においては、最近の少年非行の動向に触れた後、非行臨床における処遇経過の分析に焦点
を当てて現状を紹介し、それが有している課題を提示することとする。
1 非行臨床及び処遇経過の分析についての定義
非行臨床とは、非行を犯した少年の改善・更生を目的とした心理臨床活動を意味するものである
(村松,2007)
。
この場合の非行とは、少年法第 3 条で規定されているところの審判に付すべき少年を指す法的な
概念であり、本論文においても、そのように規定して論を進めていくこととする。
(審判に付すべき少年)
第3条
1 罪を犯した少年
2 14 歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
3 次に掲げる事由があって、その性格又は環境に照らして、将来罪を犯し、又は刑罰法令に
触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り付かないこと
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
処遇経過の分析については以下のとおり定義して論を進める。少年法第 1 条に謳われている少年
の健全育成に寄与する施設として少年院及び少年鑑別所が挙げられるが、直接矯正教育を実施して
いる少年院において、処遇経過を分析する手続として成績評価があり、これを対象とする。その他
にもより広く処遇経過を分析するために、直接的に矯正教育の成績評価とは関係ないが被収容者の
適応状況の安定に密接に関連している事項である生活の管理についても触れることとする。さらに、
少年の資質鑑別の働きを担っている少年鑑別所についても、少年院の処遇経過を分析する手続に再
鑑別という形で関与していることから、処遇経過の分析の中で論じることとする。
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2 最近の少年非行の動向
図 1 少年刑法犯検挙人員・人口比の推移
少年刑法犯検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)並びに少年人口比(10 歳以上20 歳未満の少
年人口10 万人当たりの少年刑法犯検挙人員の比率をいう。)及び成人人口比(20 歳以上の成人人口
10万人当たりの成人刑法犯検挙人員の比率をいう。)の推移(昭和21年以降)は、図1のとおりである。
少年刑法犯検挙人員の推移には、1951 年(昭和 26 年)の 166,433 人をピークとする第一の波、1964
年(昭和 39 年)の 238、830 人をピークとする第二の波、1983 年(昭和 58 年)の 317、438 人をピークと
する第三の波という大きな波がみられる。
第一の波は敗戦後の混乱期とそこからの復興期に当たり、
貧困・欠損・崩壊等不遇な家庭条件の中で生育し、適切な保護・監督がなされないままに社会に放り
出された少年が自立に失敗して起こしたものが主流で、財産犯が多かった。第二の波は戦後の混乱
期が終息し高度経済成長に向かっていった時期であり、貧富の差や都市と郡部の格差などが目立つ
ようになってきて、家庭的・経済的にハンディキャップをもった少年が世間を見返したいのだが、
それに失敗して起こした非行が主流であり、不満を晴らし不良性を誇示しあう結果の粗暴犯や暴力
的性非行が多かった。第三の波は第 1 次石油ショック以降の時期で、価値観の多様化が進み、低成
長期に入った時期であり、刹那的な考え方が広まった。ごく普通の家庭の子供も非行を犯すなど非
行の一般化傾向が生じ、遊びの延長のような非行、すなわち、年少少年が起こした万引き・自転車盗・
バイク盗等の初発型非行が出現したものである。
最近の少年非行の動向としては以下のことが指摘できる。
⑴ 非行少年の減少
2008 年における少年人口比(10 歳以上 20 歳未満の少年人口 10 万人当たりの少年刑法犯検挙人員
の比率)は 1,222.2 で、成人人口比 (20 歳以上の成人人口 10 万人当たりの成人刑法犯検挙人員の比
率 )1,009.9 と比較して、依然として高い水準にある。すなわち、少年は大人よりも犯罪を惹起しやす
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いといえ、その背景には、思春期・青年期における心身の急激な変化・不安定さが想定されるものの、
総数としてみると、少年刑法犯検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)については、2008 年は
149,907 人であり、これは 1984 年以降、1995 年まで減少した後、2001 年以降は増加していたが、2004
年以降 3 年連続して減少したものであり、歯止めがかかっていない。
⑵ 動機の理解が困難な凶悪事件の突出
強盗検挙人員は、2003 年には 1,800 人とピークに達したが、2004 年から 3 年連続で減少した。また、
殺人検挙人員は昭和 40 年(1965 年)代前半までは 200-400 人台であったが、1998 年から 2001 年まで
100人を超えたものの、
2002年以降は100人未満となっている。これらのことから少年非行の凶悪化・
粗暴化という表現は必ずしも当たらないといえる。
しかしながら、特異・凶悪な非行を行ったものの、「人を殺す経験がしたかった。」とその動機を述
べるなど、その動機等を理解することが困難な少年の一部に発達障害の少年が存在している。それ
らは、犯罪には縁遠い、むしろ、“ 犯罪の素人に位置する少年少女 ”(藤川,2008)による突発的な殺
人等の重大事案である。
藤川(2008)は、少年犯罪(凶悪犯)において、心理的要因、社会的要因のほかに、生物的要因を考
慮しなくてはならないとしている。精神医学的アプローチの経験の中で、広汎性発達障害を有する
少年に薬物療法が著効する多くの事例を目の当たりにして、こうした考えを持つにいたったという
が、こ う し た 立 場 で は、注 意 欠 陥 多 動 性 障 害(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder 略 し て
AD/HD)
、広汎性発達障害 (Pervasive Developmental Disorder 略して PDD)などを背景として、
二次障害として非行が生ずると理解され、その処遇に当たっては、薬物療法を中心として、医師や
関係機関が連携して治療することとなる。こうした理解の枠組みの導入が求められる非行が出現し
ているのが現代の特徴ともいえよう。
⑶ 単独犯の割合の増加
集団非行の割合が減少し、単独犯の割合が増加している。1984 年には共犯率(総数のうち、共犯
のあるものの比率)が 51.7%であったが、1988 年には共犯率が 47.5%となり、1995 年には 42.2%にま
で低下している。2006年については、
警察庁の統計によるので厳密な意味で比較はできないものの、
2006 年の一般刑法犯(道路上の交通事故に係る危険運転致死傷を除く。)検挙件数(捜査の結果、犯
罪が成立しないこと、又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。)625,249 件のう
ち、共犯による事件は 123,810 件(総数の 19.8%)
、共犯率(事件総数に占める共犯による事件数の比
率をいう。
)は、少年のみによる事件では 25.3%であり、これは成人のみの事件での 17.2%より高い
ものの、経年変化を見ると、明らかに共犯率が低下しているといえる。
一方、警察庁交通局の統計によれば , 暴走族の構成員は 1981 年及び 1982 年の 4 万人台をピークと
して減少傾向にあり、2006 年は 12,185 人であった。グループ数は増加傾向にあったが、2003 年から
減少傾向に転じ、2006 年は 825 であった。なお、その規模は構成員 30 人以上のグループが 2004 年に
は 1.6%であり、小規模傾向がうかがわれる。
このように共犯率が低下し、単独犯が増加したこと、暴走族の構成員及びグループ数ともに減少
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し、規模も小さくなっていることから、非行少年同士の人間関係が希薄化し、結びつきが弱まった
と考えられる。
ところで、法務総合研究所が 2005 年に実施した少年院の法務教官に対する最近の非行少年に関す
る認識についての調査(この調査の対象者は平成 17 年 4 月 1 日時点で、勤務年数が 6 年以上の少年院
教育部門の法務教官で、男性 424 人(77.7%)
、女性 122 人(22.3%)の合計 546 人である。)によれば、
少年院教官の 63.5%が最近非行少年の抱えている問題の中身が変化したと考えており、それは少年
の資質であるとする者が 38.8%で最も高い。その内容として、「人に対する思いやりや人の痛みに
対する理解力、想像力に欠ける」という比率が 63.2%で最も高い。次いで「自分の感情をうまくコン
トロールできない」
。
「忍耐心がなく我慢ができない」がともに 55.1%であった。少年院教官は、最
近の非行少年について、他者への共感性や感情の統制力において、問題が多いと認識しており、対
人関係を円滑に営んでいくために欠かせない資質であるところのこれらについて問題が多いという
ことは、対人関係をうまく持てないという結果を招来することとなる。それが共犯率の低下、暴走
族構成員の減少等に結びついたのではないかと推察される。他にも「周りの誘いを断れない。」
(40.5%)
「心から信頼しあえる関係を持てない。
」
(40.3%)など、対人関係を円滑に結ぶスキルが身
についていないことから、うまく対人関係を保てない結果になるものと推察される。少年院教官に
よっても、最近の非行少年のもつ問題が浮き彫りにされたといえ、これが共犯率の低下などの昨今
の非行態様の変化の背景をなしているものと理解される。
3 現行の処遇経過の分析について
このように非行少年数こそ減少しているものの、資質面の変化による非行問題の深刻化にかんが
み、非行臨床の立場からも少年の健全育成に資する処遇体制の在り方について検討を加えるべきか
と考えられる。特に非行少年に対してどのような処遇を実施すべきか、その効果がどれほど上がっ
たのか、それを的確に把握するためにどのような方法を採用すべきか等処遇経過と当該非行少年の
変化との関係を分析することは、矯正教育の中で重要な位置を占めているものであるし、昨今関心
が高まっている分野かと思われるので焦点を当てて論ずることとする。
⑴ 少年院における成績評価 少年院は、少年法第 24 条第 1 項第 3 号の保護処分を執行する国の施設であり、少年の健全育成を
目的とした非行少年の処遇過程の中で施設内処遇の中心的な部分を担っており、非行臨床を考える
上で極めて重要な位置を占めている。
少年院には初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院の 4 種類があり、さらに、初等少年
院及び中等少年院については、非行が複雑化・多様化し、少年院収容少年の特性に大きな変化がみ
られることを踏まえて、一層の処遇の個別化を図るために、長期処遇、一般短期処遇、特修短期処遇
の 3 種類の処遇期間を分けて処遇している。
少年院における矯正教育に係る成績評価は、個別的処遇計画に基づく在院者の教育目標の達成度
を確認することが一つの目的である。個別的処遇計画とは、少年院に入院した少年それぞれについ
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て、少年院においてどういった教育を展開したら教育効果が上がるのかということを踏まえて、各
在院者について個人別教育目標を設定し、それについて新入時期、中間期、出院準備教育期におい
てどこまで達成させることを目標とするのか、
その到達度を示し、さらに処遇技法としてはどういっ
た処遇を実施するのか等を記載した計画である。
次に、教育の内容及び方法の妥当性の検証によって個別的処遇計画の効果的な運用を図ることも
成績評価の目的である。すなわち、前記した個別的処遇計画に従って展開された矯正教育によって
少年がどの程度改善されたか、あるいは改善されなかったか、逆に問題性が悪化したかについて検
証することである。
さらに、成績評価には、在院者に自分の進歩改善の度合いを理解させて、社会復帰への動機付け
を図るという目的もある。
成績評価は、少年院における矯正教育の在り方を変化させる可能性があり非常に重要である。収
容期間の長短にかかわったり、処遇する場所を変更する移送など重大な変更もありうるのであり、
在院者の権利・義務関係に深く関係している。
評価に当たっては、妥当性・信頼性を保持しながら各種教育場面や生活場面における在院者の態
度・行動及びその変容を示すところの客観的事実に基づいて、教育目標の達成度及びそれに向けて
いかに努力したか、その度合いを総合的に判断することとなる。具体的な方法としては、複数の職
員があらかじめ設定された評価項目について評定するというやり方である。評価項目は、共通項目
(規範意識、基本的生活態度、学習態度、対人関係、生活設計)及び個人別項目(在院者に係る非行と
密接に関係している問題性、保護環境上の問題等を踏まえ当該在院者独自の項目)とに分けられる。
⑵ 少年鑑別所の再鑑別による処遇経過分析
少年鑑別所は少年法第 17 条第 1 項第 2 号(少年鑑別所への送致)の規定により送致された者を収容
するとともに、家庭裁判所の行う少年に対する調査及び審判並びに保護処分及び懲役又は禁錮の言
い渡しを受けた 16 歳未満の少年に対する刑の執行に資するため、医学、心理学、教育学、社会学そ
の他の専門的知識に基づいて少年の資質の鑑別を行う施設である(少年院法第 16 条)。
鑑別とは、少年の素質、経歴、環境及び人格並びにそれらの相互の関係を明らかにし、少年の矯正
に関する最良の方針を立てる目的をもって行われる手続である。
その目的を達するためには対象少年のありのままの姿をとらえるように心掛けなければならない
し、医学、精神医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づいて、少年の資質を明らか
にする必要がある。
少年鑑別所が実施する鑑別は、非行少年を少年鑑別所に収容した上で行う収容鑑別のほかに、非
行少年を少年鑑別所に収容しないで行う非収容鑑別がある。その種類としては、事件が係属してい
る家庭裁判所の依頼に基づいて行われる在宅鑑別、少年院、保護観察所、刑事施設、検察庁などの法
務省の関係機関の依頼に応じて行われる依頼鑑別、その他一般市民、学校教師等一般の方々からの
求めに応じて行われる一般少年鑑別(一般相談、外来相談などとも呼ばれている。)がある。ここで
取り上げる再鑑別は、このうち依頼鑑別の範疇に入る鑑別である。
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少年鑑別所で行われる鑑別(再鑑別に対して原鑑別と呼ばれることがある。)によって、非行少年
の問題点が分析され、全般的な処遇指針が提示されるわけであるが、審判決定で少年院に送致され
た少年について、
少年鑑別所において少年院での処遇に向けて更に処遇指針(第一次)が策定される。
それを一つの資料として踏まえて少年院においては個別的処遇計画が立てられ、矯正教育が開始さ
れる。そして少年に対しては定期的に成績評価がなされ、処遇経過について分析する手続が繰り返
されるのであるが、そうした手続において収容期間の延長や処遇施設の変更といった重大な処遇の
変更についてはもちろん、引き続き同じ施設で処遇するにしても、その方法の変更を考慮する場合
など、少年鑑別所の主に鑑別技官(心理技官などとも呼ばれる。)によって再鑑別が行われることに
なる。
再鑑別の主眼点としては、処遇期間の延長に関する事項、処遇施設を変更することに関する事項、
処遇経過の分析といったことである。
現状では、再鑑別の方法としては主に面接法であり、これは従来から採用されてきたものである。
併せて心理検査を使用したりもするが、面接法が中心に据えられている状況である。
方法論を含めて再鑑別に関してはこれまで数々の論考がある。それらを概観すると再鑑別によっ
て対象者における処遇経過を分析することでは一致しているものの、どのような手段・方法によっ
てそうした経過(処遇効果)を把握するかについて問題意識は共有しつつも、そこで止まっているも
のが散見される。しかし、1977 年の少年院運営改善通達によれば収容期間の延長及び移送に関する
再鑑別については、家庭裁判所を始めとして関係諸機関から信頼されうる科学的かつ客観的な内部
点検でなければならず、そのため再鑑別方式が各所で検討されているところであるとの問題意識は
共通してみられる。
そのうち再鑑別にあたって対象少年の変化を測定する手段として心理検査を用い、その結果を一
つの客観的な指標としているものがある。
白井(1975)は、処遇プログラムの組織的評価、効果測定のためには、一連の心理テストによる評
価も欠くことができないとして、心理テストによる客観的な評価の必要性を指摘している。実際、
処遇経過を見る手段として問診等のほかに法務省式文章完成法検査(Ministry of Justice Sentence
Completion Test 略して MJSCT)
、主題統覚検査(Thematic Apperception Test 略して TAT)など
心理検査を用いているものがある。
岡、山口(1996)も追跡調査において、客観的に処遇上の変化や問題を捉える方法として、バウム
テスト、MJSCT を挙げており、心理検査の重要性を指摘している。他にも法務省式人格目録
(Ministry of Justice Personality Inventory 略して MJPI)や法務省式態度検査(Ministry of Justice
Attitude Test 略して MJAT)
などを活用しているものもある。
また、
心理検査とは別の方法で、
個別面接に加えて処遇経過を分析しようとしたものもある。伊藤、
十倉、半澤(1995)
は、個別面接だけでなく鑑別技官が直接処遇場面に参加して行動観察法を用いて、
少年の実際の行動から処遇効果を評価することの必要性を指摘している。
その他、構造化された面接として、評価の際の着眼点について、ある程度定式化し、それに従って
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非行臨床における処遇経過の分析について
鑑別技官が総合的に評価しているものもみられる。このようにそれぞれ単なる面接法だけに頼らず
に、再鑑別の客観性を確保しようとしているところはみられる。
さらに、面接法に加えて描画法を用いているものもみられる。これはその変化が誰の目にも明ら
かであるという意味で客観的な指標にはなりうる。しかし、処遇経過分析のために用いられている
ものではなく、在院者の心情把握のほかに処遇経過分析の道具足りうるか否かは現時点では不明で
あり、今後の課題である。
以上、再鑑別についての先行研究を概観してきた。少年院において矯正教育を受ける中で、在院
者である少年が変化していくわけだが、その変化を捉えるためには、通常、面接法で迫るところ、そ
れに加えて客観性を確保するという意味合いもあって、心理検査を併用する必要性に言及した論文
は多い。
しかし、
その内容を掘り下げて論じているものは少ない。処遇場面に鑑別技官が参加したり、
面接を構造化するなどの工夫もなされているものの、深まりはまだ十分とはいえないように思われ
る。
川島(2007)は、再鑑別において院内適応状況及び非行に係る問題性の改善程度を面接及び心理検
査(MJSCT、MJPI、描画法、エゴグラム、ロールシャッハテスト、TAT 他)によって把握すること
を指摘している。しかしながら、例えばアプリオリに描画によって変化が把握できるといっている
ものの、描画のどこがどう変化したら、少年が変化したといえるのか、つまり、描画上の変化をどう
評価するのかについて、実証的なデータがないので分からず、今後の研究に期待するところが大き
い。
⑶ リスクアセスメント
処遇指針の策定にかかわることとして、リスクアセスメントについて述べる。これは 2004 年 11
月奈良県女児死体遺棄事件を契機として社会的に関心が高まってきたものであり、現状では、性犯
罪者の資質や環境上の問題及びその相互関係を分析し、それに対する適切な処遇指針を提示するこ
とが求められている中で、リスクアセスメントが重要視されるようになっていると考えられる。
リスクアセスメントとは、包括的には犯罪の性質や個別の状況、態度、信念を評価し、それによっ
て少年が将来的に法律に沿った生活ができるよう援助するのに必要な介入のタイプを明確にするこ
とである (Youth Justice Board、2006)。したがって、リスクアセスメントそのものは犯罪者を取り
扱うシステムにおいては必ず行われているものであり、現在の少年司法を例にとれば、法務省の法
務技官が行う資質鑑別や家庭裁判所調査官が行う社会調査がこれに相当している。ただし、そこで
行われるリスクアセスメントはおおむね臨床的、経験的な手法に基づいており、実証的な根拠に基
づいたリスクアセスメントとなると、日本においては緒についたばかりである。現在は成人の矯正
施設で始められたばかりであり、少年院及び少年鑑別所におけるリスクアセスメントについては、
今後、アメリカ合衆国あるいはカナダで用いられているリスクアセスメントツールに倣って、日本
独自のリスクアセスメントツールが開発され、徐々にこうした動きが現実化されることになる。
現在、我が国で開発が進められているリスクアセスメントは、少年司法においては、対象少年の
処分決定を行う際の意思決定の資料とするほか、将来的に少年院等処遇機関における処遇による改
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善効果がどの程度上がったか、その程度も含めて再犯のリスクを査定することを目指している。す
なわちこれは少年院における成績評価のシステムと重なる部分があるし、処遇経過の分析という意
味では、少年鑑別所による再鑑別とも関係してくるものである。このように処遇経過の分析という
テーマを考察していく上でも、リスクアセスメントは重要な問題である。
実証的なリスクアセスメントを構築する際に必要となるのが、再犯リスクファクターの同定であ
る。欧米では、Cottle, Lee, & Heilbrun(2006)に見られるように、実証的に蓄積された数多くの知
見をメタアナリシスによって統合する段階にきているが、我が国におけるこうした取り組みは遅れ
ている。少年鑑別所への入所、少年の刑務所への入所を分析した岡本(2002)の研究、少年鑑別所入
所少年の少年院処遇の効果、有機溶剤使用の影響を分析した遊間・金澤(2001)、遊間(2000)の研究
等が近年の取り組みであるが、ここでは森・花田(2007)による研究を以下に紹介する。
森・花田(2007)は、わが国には再犯リスクに関する実証的研究が数少ないことにかんがみ、他国
で得られた実証研究の結果を機械的に自国に適用するといった一般化は困難であることもあり、自
国のデータの分析、
知見の積み重ねを目的として少年鑑別所入所少年を対象とした追跡調査を行い、
実証的な分析手法の確立、再犯リスク要因の抽出、検討を行った。分析モデルとしては生存時間分
析を用いた。その結果、少年鑑別所に入所した非行少年の中で、年齢が若く、知能が低く、窃盗に及
んでいたり、暴走族に加入して道路交通法を犯したり、両親のいずれかが家庭にいない者で強盗致
傷に及んだりした者は再犯リスクが高いという知見を得たとしている。
同研究ではパラメトリックモデルによる生存時間分析を行っているので、対象者が社会に釈放さ
れてから、どの程度の期間で再犯に及ぶかを確率的に知ることができるため非行少年の処遇選択を
行う際には有効な資料となりうる。また、再犯リスクが高い少年に対して教育や処遇を更に重点的
に行う際の資料となる。
さらに、ここで上げられたリスク要因は、教育や処遇によって変更できない静的なものがほとん
どであるが、これは直ちに再犯を防げないということを意味しない。リスク要因による効果を減少
させるものを擁護因子と呼ぶが、擁護因子となるような教育的な介入を開発し、効果を実証的に検
討していくことも次の重要な課題である。そして、今後は調査する変数を増やし、非行臨床に携わ
る実務家の使用に耐えるリスクアセスメントツールや再犯プログラムの開発が望まれると結んでい
る。
一方、
欧米のリスクアセスメントツールを直接我が国の非行少年に適用する研究も行われている。
森・菅藤・高橋・丸山・相澤・石黒・内山・小野・吉澤・大渕(2007)は、Hoge &Andrews(2002)が作
成した Youth Level of Service /Case Management Inventory を少年鑑別所入所少年に適用し、基
礎的な統計量や予測的妥当性について検討している。また、大江・森田・中谷(2008)は、性犯罪少
年のリスクアセスメントツールである the Juvenile Sex Offender Assessment Protocol- Ⅱ(J-SOAPⅡ)を性犯罪で少年鑑別所に入所した少年に対して適用した分析を行っている。こうした取り組み
は、これまで経験的、臨床的に行われてきた我が国におけるリスクアセスメントが、実証的な根拠
をもって再犯リスクの査定、処遇プランの提案を行う段階へと進みつつあることを示している。
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非行臨床における処遇経過の分析について
⑷ 生活の管理
憲法第 25 条で規定されている健康で文化的な最低限度の生活を営むという基本的人権の保障に
ついては、少年院や少年鑑別所に収容されている被収容者においても全く同様である。少年院や
少年鑑別所においては、給養、衛生、診療(医療)がこれに関係している。これらは少年院教育ある
いは資質鑑別をしていく上で、その環境を整えるという意味もあるが、被収容者の精神的健康管理
についても更に充実を図ることが必要かと考える。現状では在院(所)少年については毎日の生活
ぶりについての自然的行動観察を中心として、面接などさまざまな機会を捉えて精神的状態をモ
ニターしている。そして必要に応じてカウンセリングや精神科受診などを行っているところであ
るが、定期的なモニターの方法として自然的行動観察のほかに心理検査を実施して客観的に変化
を測定していくという方法が加えられると更に充実するように思われる。被収容者の精神的健康
度をモニターできて、しかも繰り返し実施することが可能な心理検査の導入が考慮されるべきで
あろう。
4 非行事例の見方
さて、既述したように現行の処遇指針設定及びその経過を分析する方法は、少年院における成績
評価で実施されているように、問題を分化して捉え、それに標準化されたプログラムによって介入
し、その経過を定期的・客観的に分析することであるが、事例は全体としてバランスを保っている
という前提に立てば、果たしてこれだけで足りるのかとの問題意識がある。分化ばかりでなく対象
者の全体性を把握することも極めて重要ではないだろうか。そして全体性の把握のためには、こう
したプログラムを支えている認知行動論的な見方ではなく、心理力動的な見方は必須のことである。
そもそも、非行臨床における事例分析とは、少年鑑別所において非行の原因を探り、それに対し
て処遇指針を立てるという鑑別という作業がこれに当たる。鑑別の結果は鑑別結果通知書という形
でまとめられるが、それには様式及び記載要領が通達によって定められている。それは鑑別の理論
の枠組やモデルが存在していることを示しているし(仲本,2007)、しかも、心的力動機制の記載も
求められていることからすれば、事例の理解には心理力動的な見方が必要であるとの認識に立って
いるといえる。
別の観点から述べてみる。嗜癖を考えていく場合の一つの枠組みとして対象者を個人と見るので
はなく、対象者を取り巻く家族関係や家族員全体を対象としてカウンセリングを行う家族療法があ
る。これは家族を一つのまとまりをもったシステムとみなして取り扱うものである。家族という生
きたシステムの中においては、ある現象が原因となり、また同時に結果となりうるという因果関係
の円を作っている。個人の問題を分化するという考え方はここにはなく、患者と見なされた人
(Identified Person:IP)がどんな位置にいるか、周りとどのような関係にあるかといった全体の布
置を問題にするのである。
すなわち事例は事例そのものだけで存在しているのではなく、必ず関係性の中で存在していると
いうことである。したがって、事例の問題を分化して捉えていくだけでは十分ではなく、事例の全
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 2 号(2009 年)
体性を考えつつ、また、事例を含んだ周囲との関係性を理解しつつ事例を考えていくという観点が
必要ではないかと思われる。
5 処遇経過の分析方法に関する課題
現状では、非行臨床における処遇経過の分析について、実証的なデータの提出が求められている
中、リスクアセスメントを始めとして認知行動論を基に対象者の問題を分化して捉え、それに対し
て標準化された体系的プログラムを実施するという処遇の科学化とでも呼びうるような流れが主流
となっており、こうした流れはこれまで診断や処遇技法の分化を怠ってきたことへの反省とでもい
うべき流れなのであり(川畑,2008)
、今後もこうした流れを主流としていくことに異論はない。
しかしながら、問題を分化していって、それぞれに対して体系的なプログラムを実施するといっ
たことだけで果たしてよいのか、具体的にいえば、例えば薬物非行の少年に対して薬害指導を体系
的に実施することで事足りるのかという疑問がある。そもそも少年が薬物非行を犯したことには動
機があるのであり、薬物非行とは少年にとって何らかの意味を有しているという前提で事例を分析
していった方がより的確な理解に到達するのではないかと考えられる。非行行動も当該少年にとっ
て意味があるという前提で事例を考察していく方が、処遇指針を立てる上でもより的確な指針を立
てられるのではないかと思うのである。システムズアプローチの観点からしても、事例の全体性を
重視する立場からいっても、当該少年の周囲には他者が存在しており、それとの関係性の中で少年
が存在していることはいうまでもないし、当該少年自身の内部にしても、単に部分と部分の集合と
いうわけではなく、部分と部分との間に必ず関係性が生じており、したがって、仮に部分が変化を
したとすれば、事例の全体のバランスを保とうとする働きにより、それが他との関係を変化させる
こととなり、ひいては全体性にも影響を与える。事例を見ていく場合、その全体性を常に考慮に入
れて事例を理解するようにすべきと考える。こうした観点が処遇経過を分析していく際にも必要で
ある。分析方法については、客観性・妥当性の確保の必要から面接法を中心に据えつつ、心理検査
を並行して実施する方法が考えられる。そして事例の全体性を把握するように努めながら分析を進
めることを踏まえると、事例の全体性・関係性を把握できる心理検査を並行して施行する方法を検
討することが課題となっている。
結語
非行臨床における処遇経過の分析にあっては、少年にとって非行のもつ意味を考察しつつ事例に
当たることの重要性について、そのためにとりわけ事例の全体性を常に考慮することの必要性を述
べた。分析方法としては、面接法によって本人の内面の世界を探りつつ、心理検査でモニターしな
がら客観性・妥当性を担保するのであるが、心理検査の種類をどのようなものにするのか等、更に
検討を加えていくこととなる。
― ―
265
非行臨床における処遇経過の分析について
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非行臨床における処遇経過の分析について
Analysis of the Treatment Process in the Clinic for Delinquents
― its Present Condition and Issues ―
Kenichi KANTOU
(Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
Takemi MORI
(Associate Professor, Department of Psychology, Iwaki Meisei University)
Takashi UENO
(Professor, Graduate School of Education, Tohoku University)
The clinic for delinquents is psychological activity to rehabilitate juvenile delinquents.
Recently the number of the delinquents has been decreasing; however, the number of desperate
criminals whose motives are difficult to understand, as well as the number of people who have
problems in personal relationships, has also been increasing. Therefore, treatment for juvenile
delinquents is discussed in this paper, especially the analysis of the treatment process. With the
present treatment system, delinquent’s problems are differentiated and the standard program for
rehabilitation is practiced on each of them. As each case must be considered in the light of the
whole treatment process, it is important to consider how changing the treatment of an individual
case effects the whole process.
Key words : C linic for delinquents, treatment process, juvenile training school, juvenile
classification home, wholeness
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