トップアスリートのキャリア認識に関する調査報告

トップアスリートのキャリア認識に関する調査報告
吉田
章(研究代表者)
木路 修平(研究員)
田中 和弘(研究協力者)
1.調査概要
1.1. 調査目的
今日、トップスポーツにおける競技活動の形態は多様化している。加えて趣味の範
囲や片手間では対応できない程の競技レベルの高度化や、急激な企業経営環境の変化
により、
「セカンドキャリア」問題はプロ野球や J リーグというプロスポーツだけのも
のではなく、あらゆるアスリートに顕在化する可能性が危惧されている。
しかし一部のメジャースポーツを除き、多くの競技団体においては、まず競技継続
の機会や場の確保への対策がセカンドキャリア対策よりも優先される傾向にある。ま
た、スポーツそのものが職業であるプロスポーツと、スポーツとは別の生活基盤の確
保が必須であるアマチュアスポーツとでは、そのキャリア形成にも違いがみられる。
そこで、都内にあるスポーツマネジメント会社に所属するオリンピック代表選手を
含んだ現役及び元アスリートを対象として、競技活動中から競技引退後におけるキャ
リア関する認識の基礎データの収集を行った。そして、彼らのキャリアに対する認識
とその傾向を考察することにより、我が国のトップレベルアスリートのキャリアサポ
ートの方向性の手掛かりを得ることを目的とした。
1.2. 調査方法
日本のアスリートを専門とするスポーツマネジメント会社に所属しているトップレ
ベルの現役及び元アスリート男子 15 名、女子 7 名の計 22 名を対象とした。
調査は、無記名自記式調査用紙によって行った。調査用紙の配布、回収は所属マネ
ジメント会社に依頼した。対象の属性は、表 1-A、B、C に示した。表 1C における競技
グループの詳細は、個人競技が陸上競技 1 名、ノルディックスキー1 名、モーグルス
キー1 名、ヨットシングルスカル 1 名、スピードスケート 1 名、フィギアスケート 1
名の計 6 名、チーム競技がバレーボール 3 名、サッカー1 名、硬式野球 12 名の計 16
1
名であった。
調査項目として、競技環境及び実績と、キャリアに対する認識との関連を整理する
ために以下の 4 項目 16 設問を設定した。
1) パーソナルデータ(性別、生年月日、最終学歴)
2) 競技に関して(種目、ポジション、経験年数、主な成績)
3) 競技活動中のキャリアに対する認識に関して(引退後の目標、不安、準備)
4) 競技活動終了後のキャリアに対する認識に関して(競技継続の希望、競技と
引退後の仕事とのリンク、引退後に生かしたい競技から得た能力、希望職
種、自身が適すると思う職種、競技経歴を生かした就職活動)
表 1 対象の属性
A:年齢
性別
男性(n=15)
女性(n=7)
総計(n=22)
年齢
~19歳
1(6.7%)
0
1(4.5%)
~29歳
6(40.0%)
3(42.9%)
9(40.9%)
~39歳
5(33.3%)
3(42.9%)
8(36.4%)
高校
9(60.0%)
3(42.9%)
12(54.5%)
最終学歴
大学
5(33.3%)
3(42.9%)
8(36.4%)
大学院
1(6.7%)
1(14.2%)
2(9.1%)
B:最終学歴
性別
男性(n=15)
女性(n=7)
総計(n=22)
C:競技グループ
性別
男性(n=15)
女性(n=7)
総計(n=22)
競技グループ
個人競技 チーム競技
2(13.3%)
13(86.7%)
4(57.1%)
3(42.9%)
6(27.3%)
16(72.7%)
2
40歳~
3(20.0%)
1(14.2%)
4(18.2%)
2.結 果
2.1. 競技活動中のキャリアに関する認識に関して
1) 引退後(セカンドキャリア)の目標の有無
対象 22 名のうちの 90.9%にあたる 20 名が、競技活動中に引退後の目標が「あった」
または「ある」と答えている(表 1-A)。
「ない」もしくは「なかった」と答えたのは「高校卒のチーム競技の男子選手」2
名であった。性別、最終学歴、競技グループ間の傾向は特には見られなかった(表-B、
C、D)
表1
引退後の目標の有無
A:総計
総計(n=22)
セカンドキャリアの目標が
ある・あった
ない・なかった
20(90.9%)
2(9.9%)
B:性別
男性(n=15)
女性(n=7)
セカンドキャリアの目標が
ある・あった
ない・なかった
13(86.7%)
2(13.3%)
7(100.0%)
0
C:最終学歴
高校(n=12)
大学(n=8)
大学院(n=2)
セカンドキャリアの目標が
ある・あった
ない・なかった
10(83.3%)
2(16.7%)
8(100.0%)
0
2(100.0%)
0
D:競技グループ
個人競技(n=6)
チーム競技(n=16)
セカンドキャリアの目標が
ある・あった
ない・なかった
6(100.0%)
0
14(87.5%)
2(12.5%)
具体的な目標の記述のあった 18 名中、指導者やメディア関係(解説者、キャスター)
の仕事を通して、自身のスポーツの普及及び社会貢献を目標とする選手が 13 名を占め
た。その他では、飲食店経営(4 名)という記述も見られた。
3
2) 引退後(セカンドキャリア)の不安の有無
対象 22 名中、無回答であった大学卒の男性チーム競技選手 1 名を除く 21 名のうち、
ほぼ 3 分の 2 にあたる 13 名(61.9%)が、引退後の将来への不安を感じていた(表 2-A)。
性別による傾向としては、不安を感じる男性選手が 71.4%と高い値を示したのに対
し、女性は不安がなかった選手が 57.2%と高い値を示した(表 2-B)。
最終学歴が上がるにつれて不安を感じる値が小さくなる傾向、またチーム競技の選
手に不安を感じる値が高い傾向がみられたが、双方とも顕著なものではなかった(表 2
-C、D)。
表 2 引退後の不安の有無
A:総計
総計(n=21)
セカンドキャリアの不安が
ある・あった
ない・なかった
13(61.9%)
8(38.1%)
※欠損値=1
B:性別
男性(n=14)
女性(n=7)
セカンドキャリアの不安が
ある・あった
ない・なかった
10(71.4%)
4(28.6%)
3(42.8%)
4(57.2%)
※男子欠損値=1
C:最終学歴
高校(n=12)
大学(n=7)
大学院(n=2)
セカンドキャリアの不安が
ある・あった
ない・なかった
7(58.3%)
5(41.7%)
4(57.2%)
3(42.8%)
2(100.0%)
0
※大学欠損値=1
D:競技グループ
個人競技(n=6)
チーム競技(n=15)
セカンドキャリアの不安が
ある・あった
ない・なかった
3(50.0%)
3(50.0%)
10(66.7%)
5(33.3%)
※チーム競技欠損値=1
不安があるとした 13 名のうち 7 名が具体的な要因を「すぐに就職ができるのか」、
「家族を養っていけるのか」という就職や収入など経済的な不安を挙げた。残りは 3
名が「やりたい仕事につけるのか」などの職種に対する不安、3 名が自身のセカンド
4
キャリアに対し現実味がなく「ぼんやりとした不安」という答えであった。
3) 引退後(セカンドキャリア)に対する準備の有無
22 名中、競技活動中に引退後に対する準備をしている、もしくはしていた選手は 6
名(27.3%)、していない、していなかった選手は 16 名(72.7%)であり、圧倒的にしてい
ない、していなかった選手の方が多い傾向を示した(表 3-A)。
男女とも準備をしている(していた)選手が 30%弱であり、性別間に特に違いはみら
れなかった(表 3-B)。
最終学歴が上がるにつれ、引退後の準備をする傾向がみられた(表 3-C)。また、個
人競技よりもチーム競技のほうに引退後の準備をしていない(いなかった)選手が多く
みられた(表 3-D)
表 3 引退後に対する準備の有無
A:総計
総計(n=22)
セカンドキャリアに対する準備を
している・いた
していない・いなかった
6(27.3%)
16(72.7%)
B:性別
男性(n=15)
女性(n=7)
セカンドキャリアに対する準備を
している・いた
していない・いなかった
4(26.7%)
11(73.3%)
2(28.6%)
5(71.4%)
C:最終学歴
高校(n=12)
大学(n=8)
大学院(n=2)
セカンドキャリアに対する準備を
している・いた
していない・いなかった
2(16.7%)
10(83.3%)
3(37.5%)
5(62.5%)
1(50.0%)
1(50.0%)
D:競技グループ
個人競技(n=6)
チーム競技(n=16)
セカンドキャリアに対する準備を
している・いた
していない・いなかった
3(50.0%)
3(50.0%)
3(18.8%)
13(81.2%)
準備内容として、情報収集や資格取得が挙げられた。また、していない理由として、
実績を残すことが第一で引退後のことを考える余裕がなかったことが挙げられた。
5
2.2. 競技活動終了後のキャリアに対する認識に関して
1) 就職後の競技活動の希望
「就職後に競技活動を希望するか」という設問の回答に対し、
「強く思う」=5 点、
「や
や思う」=4 点、「どちらでも良い」=3 点、「あまり思わない」=2 点、「全く思わない」
=1 点を振り当てて平均ポイントを求め、性別、最終学歴、競技グループの観点から比
較した。その結果、 全体の平均ポイントは 3.41 と「どちらでも良い」と「やや思う」
との間の認識レベルであった。
性別では男性(3.53)に比べ女性が低い値(3.14)を示した。最終学歴が高校、大学、
大学院と上がるにつれ、競技継続の希望度も 3.75、3.38、1.50 と低くなる傾向がみら
れた。競技グループ間の顕著な違いはみられなかった(図 1)。
やや思う
4.00 3.00 あまり思わない
2.00 全く思わない
1.00 3.41 3.75 3.53 3.38 3.14 3.33 3.43 チーム競技(n=16)
5.00 個人競技(n=6)
強く思う
1.50 全体
性別
最終学歴
大学院(n=2)
大学(n=8)
高校(n=12)
女性(n=7)
男性(n=15)
(n=22)
0.00 競技グループ
図 1 就職後の競技活動の希望(平均ポイント)
2) 競技と引退後の仕事とのリンクの希望
「自身の競技経験を引退後の仕事に結び付けたいと思うか」という設問の回答に対
し、「強く思う」=5 点、「やや思う」=4 点、「どちらでも良い」=3 点、「あまり思わな
6
い」=2 点、
「全く思わない」=1 点を振り当てて平均ポイントを求め、性別、最終学歴、
競技グループの観点から比較した。その結果、全体の平均ポイントは 4.50 と「やや思
う」と「強く思う」との間の認識レベルであった。
性別では男性(4.40)に比べ女性の方が 4.57 とより自身の競技経験を引退後の仕事
に結び付けたいと考えている傾向がみられた。最終学歴が高校の選手が 4.58 と高い値
を示した。チーム競技(4.25)よりも個人競技の方が 5.00 とかなり強く競技経験と仕事
のリンクを希望していることがわかった(図 2)。
強く思う
5.00 5.00 やや思う
4.00 4.50 4.40 4.57 4.58 3.75 4.25 4.00 3.00 あまり思わない
2.00 全く思わない
1.00 全体
性別
最終学歴
チーム競技(n=16)
個人競技(n=6)
大学院(n=2)
大学(n=8)
高校(n=12)
女性(n=7)
男性(n=15)
(n=22)
0.00 競技グループ
図 2 競技と引退後の仕事とのリンクの希望(平均ポイント)
3) 仕事に活かしたい競技能力
自身のセカンドキャリアに活かしたい競技経験から得た特技、能力を「体力・行動
力・忍耐力・統率力・洞察力・社会性・リーダーシップ・コミュニケーション力・創
造性・開発力・向上心・企画力・表現力・協調性・判断力・その他」から 3 つまで選
択をさせた結果、図 3 のような順番となった。試合の場面においてパフォーマンスを
発揮するための能力よりも、向上心や忍耐力のような日々のトレーニングを継続して
きたことによって培われた能力に自信を持っており、それを活かしたいと考える傾向
7
がみられた。
12
10
8
8
2
1
1
1
0
0
開発力
2
統率力
3
企画力
3
リーダーシップ
3
社会性
4
2
表現力
6
体力
6
協調性
6
4
コミュニケーション
6
洞察力
回
答
数
11
その他
判断力
創造性
忍耐力
行動力
向上心
0
仕事に活かしたい競技能力
図 3 仕事に活かしたい競技能力(3 つまで選択可)
4) 職種の希望
セカンドキャリアにおける希望職種を「事務職・営業職・研究職・技術職・総合職・
指導職・その他」から複数回答可とし選択をさせた結果、図 4 のように「指導職」が
11 と一番多かった。ついで技術職、経営者の 5 であった。専門スポーツ関連職の内容
は、スポーツアドバイザー、スポーツキャスター、野球関係の職業であった。
2
1
1
1
教職
警察官
研究職
4
政治家
5
専門スポーツ関連職
5
経営者
技術職
5
総合職
11
指導職
12
10
回 8
答 6
数 4
2
0
希望職種
図 4 希望職種(複数回答可)
8
5) 競技経歴を活かした就職活動の有無
「アスリートの経歴を活かした就職活動をしたか」という設問に対し、22 名中 13
名(59.1%)が自身の競技経歴を活かした就職活動を行っているか、行うつもりであると
答えた(表 4-A)。その理由としては「自身が競技人生で得た宝を、皆に伝え共有すべ
きだと思うから」や「目標を現実にする力は強みだから」という競技で得た能力、経
験を後進に伝えたいという理由と「この競技しかやってこなかったから」、「これしか
できないから」という他の選択肢がないという理由がみられた。
男性よりも女性の方が競技経歴を活かした就職活動を行う傾向がみられた(表 4-B)。
また、最終学歴が高校の選手よりも大学卒の選手のほうが競技経歴を活かした就職活
動を行っている。大学院卒は 2 名とも就職活動に競技経歴を活かさなかった(表 4-C)。
チーム競技よりも個人競技の方が就職活動に競技経歴を活かす傾向が高かった(表 4
-D)。
表 4 競技経歴を活かした就職活動の有無
A:総計
総計(n=22)
競技経歴を活かした就職活動を
する・した
しない・していない
わからない
13(59.1%)
6(27.3%)
3(13.6%)
B:性別
男性(n=15)
女性(n=7)
競技経歴を活かした就職活動を
する・した
しない・していない
わからない
7(46.7%)
5(33.3%)
3(20.0%)
6(85.7%)
1(14.3%)
0
C:最終学歴
高校(n=12)
大学(n=8)
大学院(n=2)
競技経歴を活かした就職活動を
する・した
しない・していない
わからない
7(58.3%)
3(25.0%)
2(16.7%)
6(75.0%)
1(12.5%)
1(12.5%)
0
2(100.0%)
0
D:競技グループ
個人競技(n=6)
チーム競技(n=16)
競技経歴を活かした就職活動を
する・した
しない・していない
わからない
5(83.3%)
1(16.7%)
0
8(50.0%)
5(31.3%)
3(18.7%)
9
3.考 察
3.1. 競技活動中のキャリアに関する認識
今回の調査において対象となった 22 名の現役及び元アスリートには、競技引退後に
競技の普及や競技を通しての社会貢献を何らかの手段で行いたいという目標を持つ一
方で、引退後の不安を抱えている傾向がみられた(表 1-A、表 2-A)。そしてその多くが
引退後の就職や収入を挙げているように、経済的な問題が不安の大きな要因であるこ
とも明らかとなった。特にセカンドキャリアに対する不安が女性よりも男性の方がよ
り感じていることから、
「家族を養わなければならない」という責任感が想像できる(表
2-B)。
セカンドキャリアに対する不安が存在する反面、72.3%という高い割合でセカンドキ
ャリアに対する準備を行っていなかった(表 3-A)。これらの理由には、資格制度の不
整備や情報の少なさによる引退後のヴィジョンを描きにくいことや、実績を残すこと
が最優先となる事項であり、競技活動中に引退後の準備をすることへの抵抗が考えら
れる。この抵抗感は、今回の調査に対する反応からも受け取ることができた。
これら競技活動中のキャリアに関する認識から、現役中に次の人生を考える事の重
要性などのキャリア教育及び資格取得などの情報共有システム構築の必要性があらた
めて考えられた。この点からも今回のプロジェクトのメインテーマである「セカンド
キャリア開発支援のための Web システムの構築」の研究の継続は重要であると考えら
れる。
3.2. 競技活動終了後のキャリアに対する認識
就職後の競技継続の希望は、それほど高くはなかった(図 1)。今回の調査対象がプ
ロ及びトップアスリートであり、また既に引退をした選手が含まれていることから、
ある程度自身の競技活動に満足して引退をしているのではないだろうか。そのため、
競技継続よりも、文字通りのセカンドキャリアに自身の競技経験をリンクさせること
を強く望んでいるのではないだろうか(図 2)。そして、仕事に競技経験をリンクさせ
るための能力は、試合の場面で発揮される能力よりも、トレーニングの継続により培
われた向上心や忍耐力といった能力を活かしたいと考える傾向がみられた(図 3)。こ
れらのことから、アスリートは試合でのパフォーマンスだけでなく、日々のトレーニ
ングによって得られた能力にも自信を持っていることが推察できる。すなわち、パフ
10
ォーマンスとしての結果をもってアスリートを評価しがちであるが、真のアスリート
としての能力形成や評価については、日々のトレーニングや練習の過程に着目する必
要が大きい事を示唆するものである。
セカンドキャリアにおける希望職種としては、
「指導職」が多かった(図 4)。このこ
とは、
「引退後も指導者として、引き続き競技に関わりたいという意向の強さ」という
日本のトップアスリートの傾向(吉田ら, 2006)に合致する。また、自身の競技活動を
通して得た能力や経験を活かしながら、
「競技引退後には競技の普及や競技活動を通し
ての社会貢献を何らかの手段で行いたい」という目標を実現するための手段の一つと
考えられる。このことは、競技と引退後の仕事へのリンクの希望の高さ(図 2)や競技
活動を就職活動に活かしたいという選手が 60%近いという結果(表 4)からも想像でき
る。しかしながらその裏側には、
「自身が競技で得た経験を後進に伝え、共有すべきで
ある」、「競技によって自身が成長できたので恩返しがしたい」というようなポジティ
ブな理由と「ずっと競技一筋でやってきたので、それ以外思いつかない。できない」
というようなネガティブな理由が双方相在することが明らかとなった。
競技活動を活かした就職活動を行う傾向は男子よりも女子の方が高かった(表 4)。
このことは、女性の「自身の競技経験を引退後の仕事に結び付けたい」という認識の
高さ(図 2)に起因する、その思いを具現化するための行動だと言える。
4.まとめ
本調査において、アスリートのキャリア認識に関して以下の結論を得た。
① 大部分のアスリートが、競技引退後に競技の普及や競技を通しての社会貢献を何ら
かの手段で行いたいという目標を持っていた。
② 大部分のアスリートが、経済的な要因を主とした引退後の不安を抱えていた。
③ 大部分のアスリートが、関連する情報の少なさや現役中に引退後について考えるこ
とに対する抵抗感から、セカンドキャリアに対する準備を行っていなかった。
④ 大部分のアスリートが、競技を継続することよりも、競技経験をセカンドキャリア
にリンクさせて引退後の仕事に活かすことを望んでいた
⑤ 競技経験から得た仕事に活かしたい能力としては、「向上心」、「行動力」が高い値
を示した。
11
⑥ 大部分のアスリートが、セカンドキャリアの職種として「指導職」を希望していた。
これら競技活動中のキャリアに関する認識調査の結果から、キャリア教育及びセカ
ンドキャリアに関する情報供給システム構築の必要性が改めて示唆された。また、好
ましいセカンドキャリアに繋がるアスリートの能力形成や評価については、アスリー
トとしてのパフォーマンスの結果だけでなく、日々のトレーニングや練習の過程に着
目する必要があることも示唆された。
文 献
吉田章 佐伯年詩雄 河野一郎 田嶋幸三 菊幸一 大橋仁 (2006):トップアスリートの
セカンドキャリア構築に関する検討. 筑波大学体育科学系紀要, 29:87-95.
12