13秒台110mハードラーの運動イメージの検討 The

スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
13秒 台 110mハ ー ド ラ ー の 運 動 イ メ ー ジ の 検 討
The analysis of Motor Imagery of 13-Second 110 m hurdlers
苅 部 俊 二 1) 2) , 礒 繁 雄 3) , ⼩ 林 海 4) , 彼 末 一 之 3)
Shunji Karube 1 ) 2 ) , Shigeo Iso 3 ) , Kai Kobayashi 4 ) , Kazuyuki Kanosue 3 )
1)
早稲田大学スポーツ科学研究科
2)
3)
法政大学スポーツ健康学部
早稲田大学スポーツ科学学術院
4)
1)
目白大学人間学部
Graduate School of Sports Sciences, Waseda University
2)
Faculty of Sports and Health Studies, Hosei University
3)
Faculty of Sports Sciences, Waseda University
4)
Faculty of Human Sciences, Mejiro University
キーワード:ハードル,⼀流選⼿,運動イメージ,指導ことば
Key words: hurdles, elite athlete, motor imagery, teaching language
抄 録
先 ⾏ 研 究 で は ,指 導 ⾔ 語 と し て 使 ⽤ す る 目 的 で 陸 上 110m ハ ー ド ル 走 の ハ ー ド リ ン グ に つ い て の
経 験 的 知 識 38項 目 が 抽 出 さ れ た . 本 研 究 で は こ れ ら の 項 目 が 13秒 台 の 記 録 を 持 つ ⼀ 流 の ハ ー ド ラ
ー に も 必 要 と 捉 え ら れ て い る か ,ま た 意 識 さ れ て い る か に つ い て 検 討 す る た め に ,対 象 者 の 主 観 的
な 「 必 要 度 」 , 「 意 識 度 」 を 段 階 評 定 尺 度 法 を ⽤ い て 調 査 し た . 調 査 し た 38項 目 か ら , 以 下 の 特
徴 を 持 つ 3つ の 項 目 が 明 ら か に な っ た . Ⅰ 「 必 要 度 」 , 「 意 識 度 」 と も に ⾼ い 項 目 , Ⅱ 「 必 要 度 」
は ⾼ い が 「 意 識 度 」 は ⾼ く な い 項 目 , Ⅲ 「 必 要 度 」 へ の 回 答 が 分 か れ ,「 必 要 度 」 が ⾼ い と 回 答 し
たものは「意識度」も⾼く,「必要度」が低いと回答したものは「意識度」も低い項目,である.
Ⅰ は ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー で も 無 意 識 下 に お か な い /お け な い 項 目 で , 特 に 踏 切 局 ⾯ か ら 着 地 局 ⾯ に か け
て の 腰 部 に 関 す る 項 目 が 多 か っ た .Ⅱ は ,も と も と 意 識 し な く て も 遂 ⾏ で き る 動 作 ,も し く は ,動
作 の 習 得 に よ っ て ⾃ 動 化 さ れ ,意 識 し な く な る 項 目 ,Ⅲ は 個 々 の 形 態 的 特 性 や 体 ⼒ 的 特 性 な ど ハ ー
ドラーの特徴を反映する項目と考えられる.
ス ポ ー ツ 科 学 研 究 , 11, 171-189, 2014年 , 受 付 日 : 2014年 1 月 14日 , 受 理 ⽇ : 2014年 4 月 25日
連絡先: 苅部俊二 早稲田大学スポーツ科学学術院彼末一之研究室
〒 359-1192 埼 玉 県 所 沢 市 三 ヶ 島 2 -579-15
TEL&FAX: 0 42-947-6751
E -mail: s k [email protected]
え る 動 作( ハ ー ド リ ン グ )は ,⼀ ⾒ す る と ラ ン
Ⅰ.緒言
ニ ン グ と 異 な っ て ⾒ え る が ,疾 ⾛ が 変 容 し た も
110mハ ー ド ル 走 は , 9.14mの 定 間 隔 に 設 置
さ れ た 高 さ 106.7cm の ハ ー ド ル 10 台 を 越 え ,
の と 考 え ら れ る( ダ イ ソ ン ,1972;宮 下 ,1991).
そ の 記 録 を 競 う 競 技 で あ る .ハ ー ド ル を 跳 び 越
より高いパフォーマンスを発揮するためには,
171
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
ハードリングを可能な限りランニング動作に
指 導 現 場 で は ⾔ 語 教 ⽰ は 必 須 で ,適 切 な ⾔ 語
近 づ け る 必 要 が あ る .こ の よ う に ハ ー ド ル 走 は
教示は運動技術の指導に効果がある(松田,
技術的要素の占める割合の高い競技とされる
1979 ) . そ こ で , そ の 運 動 を 実 際 に ⾏ っ て い
( 櫻 井 , 2010) .
る 、あ る い は ⾏ っ て い た 選 ⼿ ・ 専 門 家 が 経 験 的
ハ ー ド ル 走 は ラ ン ニ ン グ と 同 様 に , Poulton
に 持 つ 優 れ た 運 動 イ メ ー ジ を 言 語 化 し ,「 経 験
( 1957)の 分 類 し た ク ロ ー ズ ド ス キ ル( closed
的 知 識 」と し て 保 存 ,蓄 積 で き れ ば ,そ れ を「 指
skill) の 運 動 に 分 類 さ れ る . ク ロ ー ズ ド ス キ ル
導 こ と ば 」と し て 利 ⽤ で き る .こ れ は 経 験 の 少
の 運 動 で は ,安 定 し た パ フ ォ ー マ ン ス を 遂 ⾏ す
ない指導者に具体的な情報と指導の方針を与
る に は ,選 手 自 身 の「 感 覚 」が 重 要 で あ る( 杉
え る こ と が で き る で あ ろ う .さ ら に ,選 手 の 運
原 , 2003 ) . し か し , ハ ー ド ル 走 に 関 す る 先
動 イ メ ー ジ を 言 語 化 す る こ と は ,運 動 技 術 学 習
⾏ 研 究 で は ,選 ⼿ の 動 作 に 関 す る 報 告 や( 礒 ら ,
に お い て ⼒ 学 的 情 報( 知 識 )を 動 作 に 結 び 付 け
2001;Coh,2003a,2003b;櫻 井 ら ,2010;
る 媒 体 と な る こ と が 期 待 さ れ る( 稲 垣 ,1994).
柴 山 ら ,2011;清 水 ら ,2010;谷 川 ら ,2002;
ハードル走の運動イメージの言語表現につ
森 田 ら , 1994; 谷 川 と 柴 山 , 2010) , 競 技 ⼒
い て は ,13秒 台 の 記 録 を 持 ち ,日 本 代 表 を 経 験
向 上 の た め の 技 術 に 関 す る 報 告( 一 川 ら ,2002,
した一流ハードラー⾃らの意識の報告(櫻井,
2004 , 2005 ; 礒 , 2006 ; 冨 田 ら , 1997 ) ,
2008,2010; 谷 川 ,2002)が あ る .そ れ ら に
ス プ リ ン ト 動 作 と の 比 較( 伊 藤 と 富 樫 ,1997;
よ れ ば 踏 切 時 に「 膝 を 締 め な が ら ⾼ く 引 き 上 げ
⾦ ⼦ ら , 2000 ) な ど ⼒ 学 的 観 点 か ら 検 討 さ れ
る」,「加速しながら鋭く踏み切る」(櫻井,
た も の が 多 く ,選 ⼿ の「 感 覚 」か ら 論 じ ら れ た
2008 ) , 「 リ ー ド 脚 の 引 き 上 げ を よ り 素 早 く
も の は 個 人 的 な 報 告( 櫻 井 ,2008;谷 川 ,2000)
高 い 位 置 に 引 き 上 げ る 」 ( 櫻 井 , 2010 ) な ど
以外はあまりみられない。
初心者ハードラーにも比較的わかりやすいも
稲 垣 ら ( 1989 ) に よ れ ば , 指 導 現 場 で は ⼒
の が あ る 一 方 で ,「 軸 を ず ら す 」 ,「 筋 で は な
学 的 観 点 の 情 報 に 加 え て ,選 手 の 主 観 的 な 感 覚
く 骨 で 走 る 」( 谷 川 ,2002)や ,接 地 時 に「 脚
によって形づくられる運動イメージを評価す
の 切 り 返 し ・ 切 り 替 え ,そ こ か ら 脚 の 切 り 替 え
る こ と で ,有 効 な 教 ⽰ を ⾏ う こ と が で き る .そ
を 腰 部 で ⾏ う 」 ( ⾕ 川 , 2000 ) , あ る い は 空
の 上 で 彼 ら は「 短 距 離 ⾛ の 動 作 に 関 す る 主 観 的
中 局 面 で「 リ ー ド レ ッ グ を 内 旋 し な が ら ,股 関
構 造 」を 検 討 し た .ま ず ,短 距 離 ⾛ の 中 間 疾 ⾛
節で挟み込みハードルを越える」
( 櫻 井 ,2008)
時の運動イメージを自然言語の形式で自由記
など即時には理解することが困難な表現も報
述 法 に よ り 集 積 し た .そ し て 段 階 尺 度 法 に よ る
告 さ れ て い る .こ の よ う に ,ハ ー ド ル ⾛ の ⼀ 流
質 問 紙 を 用 い ,そ の 言 語 化 さ れ た 運 動 イ メ ー ジ
選 手 の 言 語 化 さ れ た 運 動 イ メ ー ジ に は ,一 般 人
の 重 要 度 に つ い て ,⾝ 体 部 位 ご と に 項 目 化 ,整
の 想 像 を 越 え た 動 作 や 技 術 に 関 す る 機 能 語 ,擬
理 し ,体 系 化 し た .そ の 結 果 ,短 距 離 ⾛ の 運 動
音 語 や 擬 態 語 ( 藤 野 ら , 2005 ) な ど が 使 わ れ
イ メ ー ジ は , 頭 部 34 , 上 肢 部 67 , 体 幹 部 34 ,
て お り ,指 導 現 場 で そ の ま ま 使 ⽤ す る に は 整 理
下 肢 部 67の 224項 目 の 項 目 に 整 理 さ れ ,こ れ ら
が必要である.
の 項 目 に つ い て ,加 速 局 面 や 中 間 疾 走 と い っ た
そ こ で , 平 井 ら ( 2001, 2003) , 平 井 と 苅
局 面 差 , 性 差 ( 稲 垣 ら , 1990 , 稲 垣 と 松 浦 ,
部 ( 2004) は , 稲 垣 ら ( 1989) が ⾏ っ た 短 距
1991 , 稲 垣 と 関 岡 , 1992 ) , 100 m 走 の タ イ
離⾛の研究⽅法を参考にハードリングの運動
ム 差 ( 稲 垣 , 1994 ) と の 関 連 に つ い て も 検 討
イ メ ー ジ に つ い て の 言 語 の 精 選 を 試 み た .ま ず ,
された.
国 内 ト ッ プ ク ラ ス の ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー ( 男 ⼦ 14
172
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名 , ⼥ ⼦ 5名 ) に , ハ ー ド リ ン グ の 踏 切 局 ⾯ ,
づ き ,彼 ら の 運 動 イ メ ー ジ を 分 析 し た .そ の 結
空 中 局 面 ,着 地 局 面 の 身 体 部 位( 頭 部 ,上 肢 部 ,
果 ,⼆ ⼈ は 特 に 踏 切 局 ⾯ 前 期 と 空 中 局 ⾯ 後 期 か
体 幹 部 ,下 肢 部 ,全 身 )ご と の 運 動 イ メ ー ジ を
ら 着 地 に か け て 意 識 を 向 け て い る こ と や ,リ ス
自 由 記 述 法 に よ っ て 回 答 さ せ た( 平 井 ら ,2001,
ト に 示 さ れ た 動 作 の 中 に は 動 作 が 定 着 し ,無 意
2003 ) . そ こ か ら ハ ー ド リ ン グ の 運 動 イ メ ー
識化しているものがあることを明らかにした.
ジ に 関 す る 言 語 を 項 目 化 し て ,質 問 紙 を 作 成 し
つ ま り ,⼀ 流 選 ⼿ で は 焦 点 を 向 け る 局 ⾯ や 動 作
た . そ し て , こ の 質 問 紙 を 用 い て 14.17秒 か ら
が 限 定 さ れ ,動 作 に よ っ て は 意 識 下 に お か な く
17.18 秒 ま で の 記 録 を 持 つ 高 校 生 以 上 76 名 の
て も 良 く な る 項 目 の あ る 可 能 性 を ⽰ し た .し か
ハ ー ド ラ ー を 対 象 に ,高 レ ベ ル 群 ,中 レ ベ ル 群 ,
し , こ れ は あ く ま で も わ ず か 2名 に つ い て の ⾒
低 レ ベ ル 群 の 3つ に 分 け ,7段 階 尺 度 法 に よ り 各
解に留まっている.
項 目 の 重 要 度 を 調 査 し た ( 平 井 ら , 2003 ) .
そ こ で 本 研 究 で は ,同 じ チ ェ ッ ク リ ス ト の 項
そ し て ,特 に ⾼ レ ベ ル 群 が 肯 定 的 評 価( 尺 度 の
目を多数の⼀流ハードラーが必要と捉えてい
7 と 6 )を し た 項 目 を ハ ー ド リ ン グ の あ る べ き
る か ,ま た 意 識 し て い る か を 検 討 し て ,彼 ら の
運 動 イ メ ー ジ と 仮 定 し ,そ れ ら が 高 レ ベ ル を 目
運動イメージの傾向や特徴を明らかにするこ
指すハードラーへの指導言語となる可能性を
と を 目 的 と し た . 日 本 の 男 子 110m ハ ー ド ル 走
示 唆 し た .し か し ,こ の 調 査 で 用 い ら れ た 項 目
で は 13 秒 台 を 記 録 す る こ と が ハ ー ド ラ ー と し
は , 踏 切 局 ⾯ 125 項 目 , 空 中 局 面 112 項 目 , 着
て の 1つ の 目 標 で あ る . し た が っ て , 本 研 究 で
地 局 面 102項 目 と 膨 ⼤ な 量 で , 指 導 ⾔ 語 と し て
は 13 秒 台 の 自 己 ベ ス ト を 持 つ ハ ー ド ラ ー を 対
現 実 的 と は い え な い .そ こ で ,そ れ ら の 項 目 の
象 と し た . そ れ に よ り , 13秒 台 を 目 指 す ハ ー
因 ⼦ 分 析 を ⾏ い ,特 に 指 導 ⾔ 語 と し て 適 切 と 考
ド ラ ー ま た は そ の 指 導 者 が ,動 作 の チ ェ ッ ク リ
え ら れ る 項 目 を 抽 出 し た( 平 井 と 苅 部 ,2004).
ス ト を「 指 導 こ と ば 」と し て ,ど の よ う に 活 用
そ の 結 果 , 踏 切 局 ⾯ で 20 因 子 , 空 中 局 面 で 21
できるかを提示することができると期待され
因 子 , 着 地 局 面 で は 13 因 子 の 計 54 因 子 が 抽 出
る.
さ れ た . さ ら に 苅 部 ( 2004 ) は , 抽 出 さ れ た
言 語 か ら ,こ れ ま で 指 導 書 で 提 案 さ れ て い る 指
Ⅱ.方法
導 ⾔ 語 も 参 考 に し て , 項 目 を 更 に 精 選 し , 38
1. 調 査 の 対 象 と 方 法
項 目 か ら な る ハ ー ド リ ン グ 各 局 面 の「 動 作 チ ェ
本 調 査 は 110 m ハ ー ド ル 走 で 13 秒 台 の 自 己
ックリスト」を作成した.
記 録 を 持 つ 11名 を 対 象 に , 2010年 3月 ( 9名 )
こ の チ ェ ッ ク リ ス ト は ,ハ ー ド ル 走 経 験 の 少
と 2012 年 3 月 ( 2 名 ) に ⾏ わ れ た ⽇ 本 陸 上 競 技
ない指導者が指導する際の良い⼿がかりとな
連 盟 の 強 化 選 手 合 宿 で 実 施 し た . 2012 年 度 に
る と 思 わ れ る .一 方 ,こ れ は 初 心 者 か ら 14秒 台
公 式 競 技 会 に お い て 13 秒 台 を 記 録 し た 競 技 者
の広範な競技レベルの選手を指導の対象とし
は 22名 で あ る が ,本 調 査 の 対 象 者 は す べ て こ れ
て 想 定 し た も の で あ る .日 本 代 表 を 狙 う よ う な
に 含 ま れ る .し た が っ て ,日 本 の 上 位 ハ ー ド ラ
より高いレベルの選手にそのまま使用できる
ーの半数のデータが集まったことになる.表1
かについては疑問が残る.そこで,苅部ら
に 対 象 者 11名 の 身 体 特 性 と 自 己 記 録 ,及 び 経 験
( 2013 ) は ⽇ 本 代 表 経 験 の あ る ⼀ 流 ハ ー ド ラ
年数を⽰した.
ー 2名 に つ い て , 得 ら れ た チ ェ ッ ク リ ス ト に 基
173
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
表1 被験者の属性
年齢(年)
25.0 ( ±3.9 )
⾝ ⻑ ( cm )
183.2( ±3 .5)
体 重 ( kg )
72.0 ( ±5.8 )
記録(秒)
13.7 ( ±0.2 )
経験(年)
12.1 ( ±3.6 )
2. 質 問 紙 作 成 手 続 き
調 査 は ,評 定 尺 度 法 に よ る 質 問 紙 に よ っ て ⾏
い ,集 合 調 査 法 お よ び 宿 題 調 査 法 に て 実 施 し た .
質 問 紙 は , 男 子 110mハ ー ド ラ ー の 言 語 化 し
ま ず ,対 象 者 に は 運 動 イ メ ー ジ を 言 語 化 し ,経
た運動イメージを精選した先⾏研究(苅部,
験的知識として集約することの意義や必要性
2004;平 井 と 苅 部 ,2004)を 参 考 に 作 成 し た .
に つ い て 理 解 し て も ら っ た .そ し て ,⾔ 語 化 さ
質 問 項 目 は 図 1に 定 義 し た ハ ー ド リ ン グ の 局 面
れ た ハ ー ド リ ン グ の 運 動 イ メ ー ジ が ,⼀ 流 ハ ー
毎 に ,踏 切 局 ⾯ 前 期 6項 目 ,踏 切 局 ⾯ 後 期 6項 目 ,
ドラーでどのように意識されているかを調査
空 中 局 面 前 期 4項 目 ,空 中 局 面 中 期 4項 目 ,空 中
す る 旨 を 説 明 し ,ハ ー ド リ ン グ の 各 局 面 に お け
局 面 後 期 5項 目 ,着 地 局 面 前 期 6項 目 ,着 地 局 面
る運動イメージの言語について項目ごとに評
後 期 4 項 目 , ハ ー ド リ ン グ 全 体 3 項 目 の 計 38 項
価を⾏うように指⽰した.
目 で あ る ( 表 2) . こ れ ら の 項 目 に つ い て 「 必
要度」と「意識度」を調査した.
①踏切局⾯前期
踏切脚着地時から踏切脚上部に⾝体中⼼(⼤転⼦)が通過した時
②踏切局⾯後期
踏切脚上部に⾝体中⼼(⼤転⼦)が通過した時から踏切脚離地時
③空中局面前期
踏切脚離地時からリード脚のつま先がハードルバー上にかかった時
④空中局面中期
リ ー ド 脚 の つ ま 先 が ハ ー ド ル バ ー 上 に か か っ た 時 か ら 身 体 中 心( 大 転 子 )が ハ ー ド ル バ
ー上を通過した時
⑤空中局面後期
身体中心(大転子)がハードルバー上を通過した時から着地瞬間
⑥着地局面前期
着地瞬間から着地脚上部に身体重心(大転子)が通過した時
⑦着地局面後期
着地脚上部に⾝体重⼼(⼤転⼦)が通過した時から着地脚離地時
図 1 ハ ー ド ル の 局 面 対 応 図 ( 苅 部 ら , 20 13 )
174
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
表2 ⼀流ハードラーによる必要度および意識度の評価
A 必要である
Bどちらでもない C必要でない
D意識している Eどちらでもない F意識していない
A
B
C
D
E
F
+1
0
-1
+1
0
-1
相関係数
【踏切局⾯前期】
① -1. 視 線 を 前 方 に 向 け る
① -2. 肩 の ラ イ ン を ハ ー ド ル バ ー と 平 ⾏ に し ⾝ 体 が 開 か な い よ う に す る
① -3. ブ レ ー キ を ⼩ さ く し , 踏 切 脚 は 重 ⼼ の 真 下 で 接 地 ( 重 ⼼ に の せ る )
10
1
0
5
0
6
0.289
8
1
2
7
0
4
0.458
10
1
0
6
1
4
0.392
① -4. 踏 切 脚 は 積 極 的 に 地 ⾯ を 捉 え る
7
3
1
7
1
3
0.725
① -5. 遠 く か ら 踏 み 切 る
8
2
1
5
2
4
0.347
① -6. ラ ン ニ ン グ リ ズ ム を く ず さ な い
9
1
1
8
1
2
0.723
6
2
3
5
2
4
0.632
② -2. 腰 を 入 れ ( の せ ) 腰 を 後 方 に 残 さ な い よ う に し て 前 傾 を か け る
10
0
1
9
0
2
0.671
② -3. 踏 切 脚 を ⼗ 分 伸 展 し , 腰 は ⾼ く 保 つ
11
0
0
9
1
1
-
② -4. 振 上 脚 の 膝 を 折 り た た み , 膝 で リ ー ド し ま っ す ぐ に 出 す
10
0
1
7
0
4
0.418
② -5. ス ピ ー ド を 落 と さ ず , 上 ⽅ で は な く 前 ⽅ へ つ っ こ む
11
0
0
10
1
0
-
② -6. 体 幹 を ぶ ら さ な い
11
0
0
8
1
2
-
③ -1. 肘 , 胸 で 上 体 を リ ー ド し , 腕 を 前 に 差 し 出 す
8
1
2
4
2
5
0.423
③ -2. 腰 を 入 れ , デ ィ ッ プ ( 前 傾 ) を か け る ( 背 中 を 丸 め な い )
9
1
1
9
0
2
0.422
③ -3. 振 上 脚 ( リ ー ド 脚 ) の 膝 下 を 振 り 出 し , 踵 で ハ ー ド ル バ ー を け る よ
うに鋭く出す
7
2
2
3
1
7
0.323
③ -4. 踏 切 脚 を 少 し 残 す よ う に し , 両 脚 を ⼤ き く 開 く
7
1
3
7
1
3
1.000*
④ -1. 上 体 の リ ラ ッ ク ス
11
0
0
9
0
2
-
④ -2. 両 腕 で バ ラ ン ス を 取 る
10
1
0
6
1
4
0.112
④ -3. 振 上 脚 ( リ ー ド 脚 ) は リ ラ ッ ク ス し , 着 地 の 準 備 を す る
10
1
0
3
4
4
-0.053
④ -4. 抜 き 脚 の つ ま 先 が 下 に 向 か な い よ う に す る
10
1
0
3
1
7
-0.235
⑤ -1. 抜 き 脚 側 の 腕 の 肘 は 曲 げ , 後 方 に 引 か れ な い よ う に す る
8
2
1
3
1
7
0.177
⑤ -2. 腰 を 入 れ た 状 態 で 上 体 の 前 傾 ( デ ィ ッ プ ) を 保 つ ( 前 方 に 重 心 を か
ける)
7
3
1
7
2
2
0.981*
⑤ -3. 振 上 脚 ( リ ー ド 脚 ) は ほ ぼ 伸 展 し , ま っ す ぐ 振 り 下 ろ す
【踏切局⾯後期】
② -1. 両 腕 で バ ラ ン ス を と り , 肩 , も し く は 肘 で リ ー ド し て 上 体 を 引 き 上
げる
【空中局面前期】
【空中局面中期】
【空中局面後期】
9
1
1
3
1
7
0.348
⑤ -4. 抜 き 脚 の 膝 は 脇 を 通 し , 身 体 の 正 中 線 に 向 か っ て コ ン パ ク ト に 引 き
出す
11
0
0
6
0
5
-
⑤ -5. 抜 き 脚 を 前 に 引 き 出 す 時 , 腰 を 引 か な い
11
0
0
8
1
2
-
⑥ -1. 両 腕 を 前 後 に 大 き く 振 る
4
1
6
2
3
6
0.958*
⑥ -2. 着 地 脚 は 積 極 的 に 振 り 下 ろ し , 重 心 に の せ る
6
1
4
3
2
6
0.617
10
1
0
4
2
5
-0.054
【着地局面前期】
⑥ -3. 足 関 節 は 固 定 し , 着 地 脚 が つ ぶ れ な い よ う に す る
⑥ -4. 着 地 脚 は 伸 展 し , 腰 を 高 く 保 つ ( 腰 を お と さ な い )
11
0
0
8
2
1
-
⑥ -5. ブ レ ー キ に な ら な い よ う に 着 地 し , ラ ン ニ ン グ (疾 ⾛ ) を 意 識 す る
11
0
0
9
0
2
-
⑥ -6. 上 体 を 早 く 起 こ し す ぎ な い
10
1
0
7
1
3
0.235
⑦ -1. 視 線 を 前 方 に 向 け る
10
0
1
3
2
6
0.276
⑦ - 2 .抜 き 脚 側 の 腕 を 後 ろ に 引 き す ぎ て 肩 が 引 か れ な い( 身 体 か 開 か な い )
ようにする
11
0
0
5
2
4
-
【着地局面後期】
⑦ -3. 腰 を 乗 せ , ス ム ー ズ に 疾 走 に 入 る
10
1
0
9
0
2
-
⑦ -4. 体 幹 を ぶ ら さ な い
11
0
0
6
1
4
0.818*
【全体】
⑧ -1. 走 り 抜 け る ( ま た ぎ 越 す ) よ う な イ メ ー ジ
⑧ -2. 上 肢 と 下 肢 の 動 き を 同 調 さ せ る
⑧ -3. 頭 の 位 置 を 変 え な い
9
1
1
8
2
1
11
0
0
10
1
0
-
8
2
1
5
1
5
0.443
「 必 要 度 」に つ い て は ,⾔ 語 化 さ れ た ハ ー ド
あ る 」,「 必 要 で な い 」,「 ど ち ら で も な い 」,
リ ン グ の 運 動 イ メ ー ジ に つ い て の 各 項 目 が ,一
「 ⾔ 葉 の 意 味 が わ か ら な い 」 を ⽤ い た .「 判 断
般的に必要であるかどうかを段階評定尺度法
で き な い 」場 合 は「 ど ち ら で も な い 」を 選 択 す
に よ り 評 価 し た .「 必 要 度 」 の 表 現 は 「 必 要 で
るよう指示した.
175
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
次 に 各 項 目 に つ い て ,そ の 動 作 を 意 識 し て い
ポ イ ン ト と な る ( 宮 下 , 1988, 1991) . 腕 を
る か に つ い て 評 価 す る た め ,「 意 識 度 」 を 評 価
大きく前後に振ることで脚の積極的な接地が
し た .評 価 は「 必 要 度 」と 同 じ く 段 階 評 定 尺 度
可 能 に な る が ,必 ず し も 大 き く 振 る 必 要 は な く ,
法 を ⽤ い ,評 定 尺 度 の 各 項 目 に 対 応 す る 意 識 度
脚の動作に合わせて腕の振りをタイミングよ
の 表 現 は「 意 識 し て い る 」,
「 ど ち ら で も な い 」,
く 調 整 す る こ と が 求 め ら れ る .こ の た め 低 評 価
「 意 識 し て い な い 」 と し た .「 必 要 度 」 と 同 様
の 回 答 が 多 く み ら れ た と 思 わ れ る .着 地 時 は 高
に ,「 判 断 で き な い 」 ,「 わ か ら な い 」 場 合 は
い肘と膝の位置で前方方向へ倒れ込みながら
「どちらでもない」を選択するよう指示した.
推 進 ⼒ を 獲 得 す る ( ⾕ 川 , 2012 ) . 初 心 者 の
指 導 で は「 両 腕 を 前 後 に 大 き く 振 る 」と い う 言
3.結 果 の と り ま と め 方 法 ( 調 査 結 果 の 得 点 と
語を⽤いて腕の動きを強調しても良いであろ
集計方法)
う .し か し ,技 能 の 向 上 に 伴 い 脚 と 腕 と の 連 動
集められた結果について,「必要度」に関
の 重 要 性 が 高 ま り ,結 果 的 に 腕 の み を 強 調 す る
し て は , 「 必 要 で あ る 」 を 1, 「 必 要 で な い 」
「 両 腕 を 前 後 に 大 き く 振 る 」と い う 項 目 の「 必
を - 1, 「 ど ち ら で も な い 」 , 「 ⾔ 葉 の 意 味 が
要 度 」の 評 価 を 低 く 回 答 す る ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が
わ か ら な い 」 は 0と 数 値 化 , 同 様 に 「 意 識 度 」
多くなったと推察される.
に 関 し て は , 「 意 識 し て い る 」 を 1, 「 ど ち ら
「 必 要 で あ る 」 の 回 答 が 少 な か っ た ( 6名 )
で も な い 」 を 0, そ し て 「 意 識 し て い な い 」 を
項 目 は ,着 地 局 面 前 期 の「 着 地 脚 は 積 極 的 に 振
- 1と し た . 「 必 要 度 」 と 「 意 識 度 」 の 関 係 に
り 下 ろ し ,重 ⼼ に 乗 せ る 」と 踏 切 局 ⾯ 後 期 の「 両
つ い て 検 討 す る た め ,ク ロ ス 集 計 を ⾏ い ,ス ピ
腕 で バ ラ ン ス を と り ,肩 ,も し く は 肘 で リ ー ド
アマンの順位相関係数を算出した.
し て 上 体 を 引 き 上 げ る 」 で あ っ た ( 表 3) . 着
地局面前期の「着地脚は積極的に振り下ろし,
Ⅲ.結果および考察
重 心 に 乗 せ る 」の「 積 極 的 」と い う 表 現 は ,着
表 2に ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 各 項 目 に つ い て の
地脚を能動的に接地させることを示す表現で,
指 導 言 語 と し て し ば し ば 使 用 さ れ る .着 地 局 面
「必要度」,「意識度」を⽰した.
で は ,「 ス ピ ー ド を 落 と さ な い 」 ,「 ⾼ い 位 置
で の 接 地 」 ,「 次 の 疾 走 姿 勢 を つ く る 」 こ と が
1. ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 主 観 的 「 必 要 度 」
1つ の 項 目 を 除 く す べ て の 項 目 で , 半 数 以 上
⼤ 切 で あ る ( ⾕ 川 , 2010 ) . ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー
の ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が「 必 要 で あ る 」と 評 価 し た .
は 高 い 姿 勢 で 接 地 し ,膝 関 節 を 軽 く 曲 げ て イ ン
38 項 目 中 11 項 目 に つ い て は 11 名 全 員 が 「 必 要
タ ー バ ル の 疾 走 に 繋 げ て い く( 宮 下 ,1991).
で あ る 」 と 評 価 し , さ ら に 別 の 11 項 目 は 10 名
この動作によって着地局面でブレーキではな
の ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が「 必 要 で あ る 」と 評 価 し た .
く ,む し ろ 加 速 す る こ と が 可 能 と な る .こ の と
⼀流ハードラーでも共通して必要と考えるこ
き ,着 地 脚( リ ー ド 脚 )を 後 方 へ 素 早 く ス イ ン
れ ら 22 項 目 に つ い て は “ 3.⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 主
グすると同時に抜き脚を並進方向へ持ってい
観 的 「 必 要 度 」 と 「 意 識 度 」 の 分 類 ”の 項 で 詳
く「 挟 み 込 み( シ ザ ー ス )動 作 」に よ っ て 水 平
し く 述 べ る .「 ⾔ 葉 の 意 味 が わ か ら な い 」 の 回
速 度 は 維 持 さ れ ,加 速 に 繋 が る .こ の 点 は ,多
答は⾒られなかった.
くの⼀流ハードラーが着地局⾯前期において
唯 一 着 地 局 面 前 期 の「 両 腕 を 前 後 に 大 き く 振
「 着 地 脚 は 積 極 的 に 振 り 下 ろ し 」を す る の で は
る 」 が 「 必 要 で な い 」 ( 6名 ) の 回 答 が 「 必 要
な く ,空 中 か ら の 落 下 に 合 わ せ た 脚 の 挟 み 込 み
で あ る 」 ( 4名 ) の 回 答 を 上 ま わ っ た . 着 地 局
( シ ザ ー ス )動 作 を 重 要 視 し て い る こ と を 表 し
面はいかにブレーキをかけずインターバル局
ていると推察される.
面の疾走に繋げられるかということが重要な
176
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
表 3「 踏 切 局 ⾯ 」 に お け る ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 「 必 要 度 」 と 「 意 識 度 」 の 関 係
【踏切局⾯前期】
① -1. 視 線 を 前 方 に 向 け る
意識している
必要である
5
どちらでもない
0
必要でない
0
どちらでもない
0
0
0
意識していない
5
1
0
① -2. 肩 の ラ イ ン を ハ ー ド ル バ ー と 平 ⾏ に し ⾝ 体 が 開 か な い よ う に す る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
6
0
2
どちらでもない
1
0
0
必要でない
0
0
2
① -3. ブ レ ー キ を ⼩ さ く し , 踏 切 脚 は 重 ⼼ の 真 下 で 接 地 ( 重 ⼼ に の せ る )
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
6
1
3
どちらでもない
0
0
1
必要でない
0
0
0
① -4. 踏 切 脚 は 積 極 的 に 地 ⾯ を 捉 え る
意識している
必要である
6
どちらでもない
1
必要でない
0
どちらでもない
1
0
0
意識していない
0
2
1
意識している
5
0
0
どちらでもない
0
2
0
意識していない
3
0
1
① -6. ラ ン ニ ン グ リ ズ ム を く ず さ な い
意識している
必要である
8
どちらでもない
0
必要でない
0
どちらでもない
0
1
0
意識していない
1
0
1
① -5. 遠 く か ら 踏 み 切 る
必要である
どちらでもない
必要でない
【踏切局⾯後期】
② -1. 両 腕 で バ ラ ン ス を と り , 肩 , も し く は 肘 で リ ー ド し て 上 体 を 引 き 上 げ る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
4
1
1
どちらでもない
1
1
0
必要でない
0
0
3
② -2. 腰 を 入 れ ( の せ ) 腰 を 後 方 に 残 さ な い よ う に し て 前 傾 を か け る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
9
0
1
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
1
② -3. 踏 切 脚 を ⼗ 分 伸 展 し , 腰 は ⾼ く 保 つ
意識している
必要である
9
どちらでもない
0
必要でない
0
どちらでもない
1
0
0
意識していない
1
0
0
② -4. 振 上 脚 の 膝 を 折 り た た み , 膝 で リ ー ド し ま っ す ぐ に 出 す
意識している
どちらでもない
必要である
7
0
どちらでもない
0
0
必要でない
0
0
意識していない
3
0
1
② -5. ス ピ ー ド を 落 と さ ず , 上 ⽅ で は な く 前 ⽅ へ つ っ こ む
意識している
どちらでもない
必要である
10
1
どちらでもない
0
0
必要でない
0
0
意識していない
0
0
0
② -6. 体 幹 を ぶ ら さ な い
必要である
どちらでもない
必要でない
意識している
8
0
0
どちらでもない
1
0
0
171
意識していない
2
0
0
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
踏 切 局 ⾯ 後 期 の「 両 腕 で バ ラ ン ス を と り ,肩 ,
で ,「 ス ピ ー ド を 落 と さ ず , 上 ⽅ で は な く 前 ⽅
も し く は 肘 で リ ー ド し て 上 体 を 引 き 上 げ る 」は ,
へ つ っ こ む 」が 共 通 し て 意 識 さ れ て い る と 推 察
ハードルに向かって重心を引き上げていくた
される.また,上肢と下肢が同調することは,
めの表現である. 同じ踏切局⾯後期において,
疾 ⾛ 動 作 に お い て も 重 要 で あ る( 笠 井 ,1981;
ハードルへ向かっていく方向づけをする項目
伊 藤 , 1991) . 宮 下 ( 1991) は , 先 導 腕 は ,
と し て「 振 上 脚 の 膝 を 折 り た た み ,膝 で リ ー ド
「 両 脚 の 動 作 に 合 わ せ て 引 き 出 し ,引 き 戻 さ れ
する」が同様といえる.この項目の「必要度」
な け れ ば な ら な い 」と し ,さ ら に 上 肢 と 下 肢 が
( 10名 ) は 高 い こ と か ら , ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の
タイミングを合わせて切り替え動作を⾏うこ
中には,ハードルに向かう重心の方向づけを,
と は ,疾 ⾛ 時 に お け る 上 肢 と 下 肢 の 切 り 替 え 動
( 1)上 体 で ⾏ う と 考 え て い る も の と ,( 2)上
作 と 変 わ ら な い と 述 べ て い る .そ こ で ,疾 走 の
体 と 脚( 膝 の リ ー ド )の 両 方 が 必 要 と 考 え て い
変 容 で あ る ハ ー ド ル 走 に お い て も「 上 肢 と 下 肢
る も の が い る こ と が 推 察 さ れ る .宮 下 ら( 1997)
の 動 き を 同 調 さ せ る 」の「 意 識 度 」が ⾼ く な っ
は , 14 秒 台 か ら 13 秒 台 に 記 録 を 伸 ば し た ⼀ 流
たのではないかと推察される.
ハ ー ド ラ ー 2名 に つ い て キ ネ マ テ ィ ッ ク な 側 面
次に「意識している」の回答が多かった(9
か ら 縦 断 的 に 比 較 検 討 し ,記 録 を 伸 ば し た 要 因
名 )の は ,踏 切 局 ⾯ 後 期 の「 腰 を ⼊ れ( の せ ),
の 1 つ と し て 跳 躍 角 の 減 少 を あ げ て い る .ハ ー
腰 を 後 方 に 残 さ な い よ う に し て 前 傾 を か け る 」,
ドルに向かっていく角度が低く抑えられたこ
「 踏 切 脚 を ⼗ 分 伸 展 し ,腰 は ⾼ く 保 つ 」,空 中
と に よ っ て ハ ー ド リ ン グ 時 間 が 短 縮 し ,記 録 を
局 面 前 期 の「 腰 を い れ ,デ ィ ッ プ( 前 傾 )を か
伸 ば す こ と に 繋 が っ た と 報 告 し て い る .同 じ 踏
け る( 背 中 を 丸 め な い )」,空 中 局 面 中 期 の「 上
切 局 ⾯ 後 期 で は「 ス ピ ー ド を 落 と さ ず ,上 ⽅ で
体 の リ ラ ッ ク ス 」,着 地 局 面 前 期「 ブ レ ー キ に
は な く 前 ⽅ へ つ っ こ む 」 の 「 必 要 度 」 ( 11名 )
な ら な い よ う に 着 地 し , ラ ン ニ ン グ ( 疾 走 )を
が 高 か っ た .こ の こ と は ,ハ ー ド ル を 飛 び 越 え
意 識 す る 」,着 地 局 ⾯ 後 期「 腰 を 乗 せ ,ス ム ー
る の で は な く ,「 ⾛ り 越 え る 」( ⾦ 原 ,1976)
ズ に 疾 走 に 入 る 」の 6項 目 で あ っ た( 表 2).こ
イメージの現れととれる.
れらも⼀流ハードラーでも強く意識しなけれ
ばならない項目ということになる.
空 中 局 面 で の 腰 部 に 関 す る 項 目 に お い て「 意
2. ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 主 観 的 「 意 識 度 」
「 意 識 度 」 で は , 11名 全 員 が 「 意 識 し て い
識 度 」 の ⾼ い 傾 向 が み ら れ た . 前 期 で は ,「 腰
る 」と 回 答 し て い る 項 目 は 38項 目 中 ひ と つ も な
を 入 れ ,デ ィ ッ プ( 前 傾 )を か け る( 背 中 を 丸
か っ た .10名 が「 意 識 し て い る 」と 回 答 し た の
め な い ) 」 ( 「 意 識 し て い る 」 9名 ) , 後 期 で
は 2項 目 で , 踏 切 局 ⾯ 後 期 の 「 ス ピ ー ド を 落 と
は,
「 腰 を 入 れ た 状 態 で 上 体 の 前 傾( デ ィ ッ プ )
さ ず ,上 方 で は な く 前 方 へ つ っ こ む 」と ハ ー ド
を 保 つ( 前 方 に 重 心 を か け る )」( 7名 ),「 抜
リ ン グ 全 体 の「 上 肢 と 下 肢 の 動 き を 同 調 さ せ る 」
き 脚 を 前 に 引 き 出 す 時 ,腰 を 引 か な い 」( 8名 )
で あ っ た( 表 2).こ の 2つ に「 意 識 し て い な い 」
と い っ た 項 目 で あ っ た .最 後 の「 腰 を 引 か な い 」
の 回 答 は な く ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が 共 通 し て「 意
は,
「 腰 を 入 れ る 」と 近 い 表 現 で あ る .そ こ で ,
識している」項目といえる.
空 中 局 ⾯ で は ,⾝ 体 の 捻 り や ,上 体 の 起 こ し な
ハ ー ド リ ン グ 動 作 で は ,重 ⼼ の 上 下 動 を 極 ⼒
ど バ ラ ン ス を と ら ね ば な ら ず ,特 に 後 期 は 着 地
抑 え る こ と が 重 要 で( エ ッ カ ー ,1999;櫻 井 ,
に 向 け て ⾝ 体 の 落 下 に 着 地 脚( リ ー ド 脚 )を 合
2010 ) , 高 く 跳 び す ぎ る こ と は 着 地 で の ブ レ
わ せ て い く ( 谷 川 , 2012 ) こ と に な る . 空 中
ーキを助⻑してしまうこととなる(⼀川,
局 ⾯ を 通 し て ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 多 く は 腰 を ⼊
2004; 柴 山 , 2011) . ハ ー ド ラ ー は , 身 体 重
れ る( 引 か な い )こ と に 意 識 の 重 点 を 置 い て い
心が上方向に移動しすぎてしまう,いわゆる
ると推察される.
⼀ ⽅ , 「 意 識 度 」 が 最 も 低 く , 7名 が 「 意 識
「 浮 い て し ま う 」状 態 を 嫌 う 傾 向 に あ る .そ こ
179
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
し て い な い 」と 回 答 し た 項 目 は 4項 目 あ っ た( 表
体「 頭 の 位 置 を 変 え な い 」は ,ハ ー ド リ ン グ 時
2) . そ れ ら は , 空 中 局 面 前 期 の 「 振 上 脚 ( リ
の上方への重心の移動を最小限に抑えるため
ー ド 脚 )の 膝 下 を 振 り 出 し ,踵 で ハ ー ド ル バ ー
の 動 作 で ,こ れ も ハ ー ド ル 走 の 指 導 の 基 本 と 考
を け る よ う に 鋭 く 出 す 」,空 中 局 面 中 期 の「 抜
え ら れ る . 実 際 多 く の ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー ( 8名 )
き 脚 の つ ま 先 が 下 に 向 か な い よ う に す る 」,空
は「 頭 の 位 置 を 変 え な い 」を「 必 要 で あ る 」と
中 局 面 後 期 の「 抜 き 脚 側 の 腕 の 肘 は 曲 げ ,後 方
評 価 し て い る .一 方 ,ハ ー ド ラ ー は 空 中 局 面 で
に 引 か れ な い よ う に す る 」 ,「 振 上 脚 ( リ ー ド
デ ィ ッ プ を か け る こ と で ,頭 が 上 方 に い き す ぎ ,
脚 )は ,ほ ぼ 伸 展 し ,ま っ す ぐ 振 り 下 ろ す 」で
身 体 が「 浮 い て し ま う 」こ と 防 い で い る .つ ま
あり,いずれも空中局面にみられた.
り「 頭 の 位 置 を 変 え な い 」は ,空 中 局 面 中 期 の
ま た ,「 意 識 し な い 」 項 目 の 中 に は , レ ベ ル
「 腰 を 入 れ ,デ ィ ッ プ( 前 傾 )を か け る( 背 中
が上がるにつれて意識しない⽅が良くなるも
を 丸 め な い ) 」 の 項 目 と 関 連 し て い る .「 腰 を
の が あ る . 例 え ば ,「 意 識 し て い る 」 の 回 答 が
入 れ ,デ ィ ッ プ( 前 傾 )を か け る( 背 中 を 丸 め
4名 ,「 意 識 し て い な い 」の 回 答 が 5名 で あ っ た
な い )」は 多 く の ハ ー ド ラ ー が「 意 識 し て い る 」
踏 切 局 ⾯ 前 期 の「 遠 く か ら 踏 み 切 る 」は ,ハ ー
( 9名 ) . 「 腰 を 入 れ , デ ィ ッ プ ( 前 傾 ) を か
ド ル 走 指 導 の 基 本 で あ る .清 水 と 松 岡( 2000)
け る( 背 中 を 丸 め な い )」が 出 来 れ ば ,結 果 と
は 110m ハ ー ド ル 走 の 15 秒 台 の ハ ー ド ラ ー が
し て 頭 の 位 置 が 変 わ ら な い こ と に 繋 が る .そ こ
14秒 台 に ⼊ る た め に は ,「 踏 切 角 度 を ⼩ さ く し
で 「 頭 の 位 置 を 変 え な い 」 よ り も ,「 デ ィ ッ プ
て 遠 く か ら 踏 み 切 る こ と 」が 必 要 で あ る と 報 告
を か け る 」こ と で 結 果 的 に「 頭 の 位 置 を 変 え な
し , 冨 田 ら ( 1997 ) も 学 生 記 録 を 達 成 し た ハ
い 」動 作 を 作 り 出 し て い る ハ ー ド ラ ー も い る と
ー ド ラ ー を 縦 断 的 に 研 究 し ,レ ー ス 中 の 速 度 が
考えられる.
⾼くなった要因に踏切距離が⼤きくなったこ
ま た ,「 頭 の 位 置 を 変 え な い 」 を 「 意 識 し て
と を 報 告 し て い る . ま た , 宮 下 ら ( 1997 ) も
いない」と回答したものの⾝⻑はいずれも
14 秒 台 か ら 13 秒 台 に 記 録 を 短 縮 し た 2 名 の ハ
185cmを 越 え た ハ ー ド ラ ー で あ り( 5名 ),「 意
ー ド ラ ー に つ い て ,記 録 短 縮 の 要 因 に 跳 躍 角 度
識 し て い る 」と 回 答 し た も の は す べ て 185cm以
の減少と踏切側距離の増⼤を報告している.
下 で あ っ た ( 5名 ) . ハ ー ド ル を 越 え る 時 の 身
「 遠 く か ら 踏 み 切 る 」こ と で デ ィ ッ プ( 前 傾 姿
体 重 心 の 最 高 地 点 は 135cm ( 一 川 ら , 2004 )
勢 )が か け や す く な り ,踏 切 角 度 を ⼩ さ く ,ハ
ほ ど で あ る .成 ⼈ 男 性 の ⾝ 体 重 ⼼ ⾼ が ⾝ ⻑ の 約
ードルを低くまたぎ超えることができるよう
56%( 中 村 ら ,1997)と 考 え る と ,例 え ば 180cm
に な る ( ⾦ 原 , 1976 ) . し た が っ て , 「 遠 く
の ⾝ ⻑ で は ⾝ 体 重 ⼼ は 約 100cm と な り ,
から踏み切る」は意識して⾏うだけではなく,
135cm の 地 点 ま で 身 体 重 心 を 引 き 上 げ な け れ
疾 ⾛ 速 度 向 上 の 結 果 ,達 成 で き る よ う に な る 技
ば な ら な い こ と に な る .そ こ で ,⾝ ⻑ の 低 い ⼀
術 と 考 え ら れ ,「 意 識 度 」 の 回 答 が わ か れ た と
流ハードラーほどハードリングによる上下動
推 察 さ れ る .ハ ー ド ル 走 の 競 技 レ ベ ル 向 上 に は
を 小 さ く す る た め に「 頭 の 位 置 を 変 え な い 」を
ハードリング技術のみならず疾⾛能⼒の向上
意 識 度 し な け れ ば な ら な い と も 考 え ら れ る .ま
も 関 与 す る .し か し ,ハ ー ド ル 走 の イ ン タ ー バ
た ,「 デ ィ ッ プ を か け る 」 こ と や , 跳 躍 角 度 を
ル は 9.14 m の た め , ス ト ラ イ ド の 獲 得 ( 超 過 )
⼩ さ く す る た め に「 遠 く か ら 踏 み 切 る 」こ と も
によった疾⾛能⼒の向上が達成されたとする
重要となるのであろう.
と ,ハ ー ド ル ⾛ で の ス ト ラ イ ド が 伸 び ,踏 切 位
3. ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 主 観 的 「 必 要 度 」 と 「 意
置 が 近 く な っ て し ま う .そ こ で ,⼀ 度 は 意 識 し
識度」の分類
な く な っ て い た「 遠 く か ら 踏 み 切 る 」を 再 度 意
各 項 目 に つ い て「 必 要 度 」お よ び「 意 識 度 」
識しなければならなくなる場合もあると考え
関 係 に つ い て の ク ロ ス 集 計 を 表 3か ら 表 6に 示
られる.
した.
ま た ,「 意 識 し て い る 」,「 意 識 し て い な い 」
の 回 答 が い ず れ も 5名 で あ っ た ハ ー ド リ ン グ 全
180
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
表 4「 空 中 局 ⾯ 」 に お け る ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 「 必 要 度 」 と 「 意 識 度 」 の 関 係
【空中局面前期】
③ -1. 肘 , 胸 で 上 体 を リ ー ド し , 腕 を 前 に 差 し 出 す
意識している
どちらでもない
必要である
4
1
どちらでもない
0
1
必要でない
0
0
意識していない
3
0
2
③ -2. 腰 を 入 れ , デ ィ ッ プ ( 前 傾 ) を か け る ( 背 中 を 丸 め な い )
意識している
どちらでもない
必要である
8
0
どちらでもない
1
0
必要でない
0
0
意識していない
1
0
1
③ - 3 .振 上 脚( リ ー ド 脚 )の 膝 下 を 振 り 出 し ,踵 で ハ ー ド ル バ ー を け る よ う に 鋭 く 出 す
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
3
0
4
どちらでもない
0
1
1
必要でない
0
0
2
③ -4. 踏 切 脚 を 少 し 残 す よ う に し , 両 脚 を ⼤ き く 開 く
意識している
どちらでもない
必要である
7
0
どちらでもない
0
1
必要でない
0
0
意識していない
0
0
3
【空中局面中期】
④ -1. 上 体 の リ ラ ッ ク ス
意識している
9
0
0
どちらでもない
0
0
0
意識していない
2
0
0
④ -2. 両 腕 で バ ラ ン ス を 取 る
意識している
必要である
6
どちらでもない
0
必要でない
0
どちらでもない
0
1
0
意識していない
4
0
0
必要である
どちらでもない
必要でない
④ -3. 振 上 脚 ( リ ー ド 脚 ) は リ ラ ッ ク ス し , 着 地 の 準 備 を す る
意識している
どちらでもない
必要である
3
3
どちらでもない
0
1
必要でない
0
0
意識していない
4
0
0
④ -4. 抜 き 脚 の つ ま 先 が 下 に 向 か な い よ う に す る
意識している
どちらでもない
必要である
3
0
どちらでもない
0
1
必要でない
0
0
意識していない
7
0
0
【空中局面後期】
⑤ -1. 抜 き 脚 側 の 腕 の 肘 は 曲 げ , 後 方 に 引 か れ な い よ う に す る
意識している
どちらでもない
必要である
3
0
どちらでもない
0
1
必要でない
0
0
意識していない
5
1
1
⑤ -2. 腰 を 入 れ た 状 態 で 上 体 の 前 傾 ( デ ィ ッ プ ) を 保 つ ( 前 方 に 重 心 を か け る )
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
7
0
0
どちらでもない
0
2
1
必要でない
0
0
1
⑤ -3. 振 上 脚 ( リ ー ド 脚 ) は , ほ ぼ 伸 展 し , ま っ す ぐ 振 り 下 ろ す
意識している
どちらでもない
必要である
3
1
どちらでもない
0
0
必要でない
0
0
意識していない
5
1
1
⑤ -4. 抜 き 脚 の 膝 は 脇 を 通 し , 身 体 の 正 中 線 に 向 か っ て コ ン パ ク ト に 引 き 出 す
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
6
0
5
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
0
⑤ -5. 抜 き 脚 を 前 に 引 き 出 す 時 , 腰 を 引 か な い
意識している
どちらでもない
必要である
8
1
どちらでもない
0
0
必要でない
0
0
181
意識していない
2
0
0
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
表 5「 着 地 局 ⾯ 」 に お け る ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 「 必 要 度 」 と 「 意 識 度 」 の 関 係
【着地局面前期】
⑥ -1. 両 腕 を 前 後 に 大 き く 振 る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
2
2
0
どちらでもない
0
1
0
必要でない
0
0
6
⑥ -2. 着 地 脚 は 積 極 的 に 振 り 下 ろ し , 重 心 に の せ る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
3
1
2
どちらでもない
0
1
0
必要でない
0
0
4
⑥ -3. 足 関 節 は 固 定 し , 着 地 脚 が つ ぶ れ な い よ う に す る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
4
1
5
どちらでもない
0
1
0
必要でない
0
0
0
⑥ -4. 着 地 脚 は 伸 展 し , 腰 を 高 く 保 つ ( 腰 を お と さ な い )
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
8
2
1
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
0
⑥ -5. ブ レ ー キ に な ら な い よ う に 着 地 し , ラ ン ニ ン グ (疾 ⾛ ) を 意 識 す る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
9
0
2
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
0
⑥ -6. 上 体 を 早 く 起 こ し す ぎ な い
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
7
0
3
どちらでもない
0
1
0
必要でない
0
0
0
【着地局面後期】
⑦ -1. 視 線 を 前 方 に 向 け る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
3
2
5
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
1
⑦ - 2 .抜 き 脚 側 の 腕 を 後 ろ に 引 き す ぎ て 肩 が 引 か れ な い( 身 体 か 開 か な い )よ う に す る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
5
2
4
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
0
⑦ -3. 腰 を 乗 せ , ス ム ー ズ に 疾 走 に 入 る
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
8
0
2
どちらでもない
1
0
0
必要でない
0
0
0
⑦ -4. 体 幹 を ぶ ら さ な い
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
6
1
4
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
0
182
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
表 6「 ハ ー ド リ ン グ 全 体 」 に お け る ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 「 必 要 度 」 と 「 意 識 度 」 の 関 係
【全体】
⑧ -1. 走 り 抜 け る ( ま た ぎ 越 す ) よ う な イ メ ー ジ
意識している
どちらでもない
意識していない
8
1
0
どちらでもない
0
1
0
必要でない
0
0
1
意識している
どちらでもない
意識していない
10
1
0
どちらでもない
0
0
0
必要でない
0
0
0
意識している
どちらでもない
意識していない
必要である
5
0
3
どちらでもない
0
1
1
必要でない
0
0
1
必要である
⑧ -2. 上 肢 と 下 肢 の 動 き を 同 調 さ せ る
必要である
⑧ -3. 頭 の 位 置 を 変 え な い
こ の ク ロ ス 集 計 の 結 果 か ら , 次 の 3つ の 特 徴
らはすべての項目を含むものではない.
の あ る 項 目 を 抽 出 し た ( 表 7) . た だ し , こ れ
表7 ハードリング・イメージの経験的知識のカテゴリー
必要度
カテゴ
リーⅠ
カテゴ
リーⅡ
意識度
局面
A必要
Bどちらでもない C必要でない
D意識あり Eどちらでもない F意識なし
A
B
C
D
E
F
11
0
0
10
1
0
踏切局⾯後期
11
0
0
10
1
0
ハ ー ド リ ン グ 全 体 ⑧ -2. 上 肢 と 下 肢 の 動 き を 同 調 さ せ る
11
0
0
9
1
1
踏切局⾯後期
② -3. 踏 切 脚 を ⼗ 分 伸 展 し , 腰 は ⾼ く 保 つ
11
0
0
9
0
2
空中局面中期
④ -1. 上 体 の リ ラ ッ ク ス
11
0
0
9
0
2
着地局面前期
10
0
1
9
0
2
踏切局⾯後期
10
1
0
9
0
2
着地局面後期
⑦ -3. 腰 を 乗 せ , ス ム ー ズ に 疾 走 に 入 る
11
0
0
8
1
2
踏切局⾯後期
② -6. 体 幹 を ぶ ら さ な い
11
0
0
8
1
2
空中局面後期
⑤ -5. 抜 き 脚 を 前 に 引 き 出 す 時 , 腰 を 引 か な い
11
0
0
8
2
1
着地局面前期
⑥ -4. 着 地 脚 は 伸 展 し , 腰 を 高 く 保 つ ( 腰 を お と さ な い )
11
0
0
5
2
4
着地局面後期
⑦ - 2.抜 き 脚 側 の 腕 を 後 ろ に 引 き す ぎ て 肩 が 引 か れ な い( 身 体
か開かない)ようにする
10
1
0
5
0
6
踏切局⾯前期
① -1. 視 線 を 前 方 に 向 け る
10
1
0
4
2
5
着地局面前期
⑥ -3. 足 関 節 は 固 定 し , 着 地 脚 が つ ぶ れ な い よ う に す る
10
1
0
3
4
4
空中局面中期
④ -3. 振 上 脚 ( リ ー ド 脚 ) は リ ラ ッ ク ス し , 着 地 の 準 備 を す る
10
0
1
3
2
6
着地局面後期
⑦ -1. 視 線 を 前 方 に 向 け る
10
1
0
3
1
7
空中局面中期
④ -4. 抜 き 脚 の つ ま 先 が 下 に 向 か な い よ う に す る
② -5. ス ピ ー ド を 落 と さ ず , 上 ⽅ で は な く 前 ⽅ へ つ っ こ む
⑥ -5. ブ レ ー キ に な ら な い よ う に 着 地 し , ラ ン ニ ン グ (疾 走 )
を意識する
② -2.腰 を 入 れ( の せ )腰 を 後 方 に 残 さ な い よ う に し て 前 傾 を
かける
相関係数
カテゴ
リーⅢ
7
1
3
7
1
3
1.000
空中局面前期
③ -4. 踏 切 脚 を 少 し 残 す よ う に し , 両 脚 を ⼤ き く 開 く
7
3
1
7
2
2
0.981
空中局面後期
⑤ -2. 腰 を 入 れ た 状 態 で 上 体 の 前 傾 ( デ ィ ッ プ ) を 保 つ ( 前 方
に重心をかける)
4
1
6
2
3
6
0.958
着地局面前期
⑥ -1. 両 腕 を 前 後 に 大 き く 振 る
9
1
1
8
2
1
0.818
ハ ー ド リ ン グ 全 体 ⑧ -1. 走 り 抜 け る ( ま た ぎ 越 す ) よ う な イ メ ー ジ
183
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
カ テ ゴ リ ー Ⅰ「 必 要 度 」,「 意 識 度 」と も に
高 い 項 目 ( 表 7)
カテゴリーⅡ「必要度」は⾼いが「意識度」
2) カ テ ゴ リ ー Ⅱ : 「 必 要 度 」 は ⾼ い が 「 意 識
度」は⾼くない項目 ⼤部分の⼀流ハードラー
は 高 く な い 項 目 ( 表 7)
カテゴリーⅢ「必要度」への回答が分かれ,
が 「 必 要 で あ る 」 と 回 答 し て い る ( 10名 以 上 )
「必要度」が⾼いと回答した者は「意識度」
に も か か わ ら ず ,「 意 識 し て い る 」 の 回 答 ⼈ 数
も⾼く,
「 必 要 度 」が 低 い と 回 答 し た 者 は「 意
が 少 な い( 5名 以 下 )項 目 は 6項 目 で あ っ た( 表
識 度 」 も 低 い 項 目 ( 表 7)
7) . こ れ ら は 多 く の ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー に と っ て
意識せずとも動作が可能な項目と考えられる.
1) カ テ ゴ リ ー Ⅰ : 「 必 要 度 」 , 「 意 識 度 」 と
多くの⼀流ハードラーが意識せずとも可能
もに高い項目
な 技 術 ,つ ま り ,動 作 は 定 着 し ,自 動 化 さ れ 無
「 必 要 で あ る 」の 回 答 人 数 が 多 く( 10名 以 上 ),
意 識 下 で 遂 ⾏ で き る 技 術 と し て ,空 中 局 ⾯ 中 期
同 時 に「 意 識 し て い る 」の 回 答 ⼈ 数 が 多 か っ た
の「 抜 き 脚 の つ ま 先 が 下 に 向 か な い よ う に す る 」
( 8名 以 上 )10項 目 で あ る( 表 7).こ れ ら は ,
が 挙 げ ら れ る . こ の 項 目 は 7名 が 「 意 識 し て い
⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が 重 要 視 し ,ま た ⼀ 流 ハ ー ド ラ
な い 」 と 回 答 し て い た こ と か ら ,「 抜 き 脚 の つ
ーでも意識しなければならない項目といえる.
ま 先 が 下 に 向 か な い よ う に す る 」は 初 心 者 ハ ー
興 味 深 い の は , 特 に 踏 切 局 ⾯ 後 期 が 4項 目 を
ドラーがまず身につけなければならない動作
占 め る こ と で あ る .こ の こ と か ら ,踏 切 局 ⾯ 後
で あ る と い え る .し か し ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 多
期が⼀流ハードラーにとって最も重要な局⾯
く は 意 識 せ ず と も 可 能 な 技 術 ,つ ま り 鍛 錬 さ れ
で あ り ,彼 ら に と っ て も 難 し い 局 面 で あ る こ と
る に し た が っ て 意 識 し な く な る 項 目 で あ る .こ
が 推 察 さ れ る .ま た こ の カ テ ゴ リ ー に は ,踏 切
の 項 目 に つ い て「 意 識 し て い る 」と 回 答 し た も
局 面 か ら 着 地 局 面 に か け て の “腰 部 ”に 関 す る
の は 3名 お り ,経 験 年 数 が 最 も 短 い 1名( 8年 11
項 目 が 多 い .⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が 上 で 述 べ た 空 中
ヶ 月 )と 3番 目 に 短 い 1名( 9年 10ヶ 月 )で も う
局 ⾯ の み な ら ず ,踏 切 か ら 着 地 に ⾄ る す べ て の
1名 は 12年 で あ っ た .
局⾯で腰部に⾼い意識をおいていることを⽰
ま た ,踏 切 局 ⾯ 前 期 と 着 地 局 ⾯ 後 期 の「 視 線
し て い る .実 際 ,ハ ー ド ル ⾛ 速 度 の ⾼ い 選 ⼿ ほ
を前⽅へ向ける」も「必要度」は⾼かったが,
ど 着 地 脚( リ ー ド 脚 )の 股 関 節 伸 筋 群 に よ る 振
「 意 識 し て い な い 」ハ ー ド ラ ー が 6名 で あ っ た .
り 戻 し 動 作 の 速 度 が ⾼ い ( 伊 藤 ら , 1997 ) .
視線を次のハードルにおくことは踏切を安定
さ ら に ,世 界 ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 踏 切 後 半 の 両 ⼤
さ せ ,バ ラ ン ス を 保 つ こ と に 有 効 で あ る( 宮 下 ,
腿 角 度( ス プ リ ッ ト 角 度 )は 後 ⽅ に ⼤ き く 開 脚
1990 ) . 視 線 が 安 定 し な い と 身 体 が ぶ れ , 減
さ れ ,そ の 後 ,両 脚 を 挟 み 込 む シ ザ ー ス 動 作 を
速に繋がる.これは疾走動作でも同様である.
早 期 に ⾏ っ て い る ( ⾕ 川 ら , 2010 ) . こ の こ
し た が っ て ,ま さ に 越 え よ う と し て い る ハ ー ド
と は ,大 腰 筋 群 の 関 与 が 大 き い こ と を 示 す .選
ル を 直 視 す る の で は な く ,ハ ー ド リ ン グ 中 ,視
手のレベルによって分けられたハードリング
線 は 前 方 へ 向 け な け れ ば な ら な い .し か し ,視
の運動イメージの⾔語化の先⾏研究(平井ら,
線が前方へ向いているハードラーはあえて視
2005; 苅 部 ら , 2001) で も , 高 い 競 技 レ ベ ル
線を意識しなくても良いと思われる.
群 ( 110mハ ー ド ル : 14.17秒 〜 14.87秒 ) は ,
着 地 局 面 前 期 の「 足 関 節 は 固 定 し ,着 地 脚 が
踏切局⾯での多くの腰部に関わる項目を重要
つ ぶ れ な い よ う に す る 」も「 必 要 度 」は ⾼ か っ
視しており,本研究の結果と一致している.
た ( 10名 ) も の の , 「 意 識 し て い る 」 は 4名 の
み で あ っ た .着 地 足 が 接 地 し て い る 支 持 期 中 間
172
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
時点の⾜関節の最⼩角度はハードル⾛速度の
再度意識しなければならなくなることも推察
高 い 選 手 ほ ど 大 き い ( 伊 藤 と 富 樫 , 1997 ) .
される.
つ ま り 足 関 節 の 屈 曲 が 小 さ く ,高 い 位 置 で 着 地
す る こ と で 衝 撃 を 抑 え る と と も に ,身 体 重 心 の
3) カ テ ゴ リ ー Ⅲ : 「 必 要 度 」 へ の 回 答 が 分 か
上 下 動 を 抑 え て い る ( 谷 川 ら , 2002 ) . こ の
れ,
「 必 要 度 」が ⾼ い と 回 答 し た 者 は「 意 識 度 」
⾜ 関 節 の 固 定 に 関 し て ,意 識 し な く て も 出 来 る
も ⾼ く ,「 必 要 度 」 が 低 い と 回 答 し た 者 は 「 意
も の ( 5名 ) は , 動 作 が 定 着 し て 自 動 化 さ れ た
識度」も低い項目
このカテゴリーは,「必要度」と「意識度」
動 作 で あ る と 推 察 さ れ る .し か し ,疾 ⾛ 速 度 が
高 ま る と 足 関 節 に か か る 衝 撃 も 大 き く な り ,再
の 相 関 が 高 い( 相 関 係 数 0.8以 上 )4項 目 で あ っ
度「 ⾜ 関 節 は 固 定 し ,着 地 脚 が つ ぶ れ な い よ う
た .「 必 要 度 」 ,「 意 識 度 」 と も に ⾼ く 評 価 し
に す る 」こ と を 意 識 し な け れ ば な ら な く な る こ
た ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー と ,別 の ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー は 同
とも考えられる.
じ 項 目 に つ い て「 必 要 で な い 」と 回 答 し ,彼 ら
ま た ,着 地 局 面 後 期「 抜 き 脚 側 の 腕 を 後 ろ に
は 当 然 な が ら「 意 識 度 」も 低 く な っ て い た( 表
引きすぎて肩が引かれない(身体か開かない)
7) . 「 必 要 度 」 , 「 意 識 度 」 と も に ⾼ く 評 価
よ う に す る 」 ( 5名 ) や 空 中 局 面 中 期 「 振 上 脚
し た ハ ー ド ラ ー は ,カ テ ゴ リ ー Ⅰ と 同 じ よ う に ,
( リ ー ド 脚 )は リ ラ ッ ク ス し ,着 地 の 準 備 を す
意識しなければ出来ないと感じていることに
る 」 ( 3名 ) も , 「 意 識 し て い る 」 の 回 答 が 少
な る .一 方 で ,同 じ 項 目 を そ も そ も「 必 要 で な
な か っ た .着 地 局 面 後 期「 抜 き 脚 側 の 腕 を 後 ろ
い 」 と 感 じ ,「 意 識 し て い な い 」 と い う ⼀ 流 ハ
に 引 き す ぎ て 肩 が 引 か れ な い( 身 体 か 開 か な い )
ードラーも存在する.
よ う に す る 」は ,肩 が 開 き 過 ぎ て し ま う こ と で
このカテゴリーのうちハードリング全体の
⾝体が後⽅に流れてしまうのを防ぐ動作であ
「走り抜ける(またぎ越す)ようなイメージ」
る .着 地 時 は 抜 き 脚 を 回 転 さ せ な が ら 前 方 へ 引
は , 「 必 要 で あ る 」 が 9名 , 「 意 識 し て い る 」
き 出 す た め ,腕 は 後 方 に 引 か な け れ ば な ら な い .
が 8名 で カ テ ゴ リ ー Ⅰ に 比 較 的 近 い . こ の 項 目
この動作が出来ているのであれば意識する必
に つ い て「 必 要 で な い 」か つ「 意 識 し て い な い 」
要 は な い .ま た 鍛 錬 に よ っ て ⼀ 度 で き る よ う に
と 回 答 し た ハ ー ド ラ ー は 1名 の み で あ っ た . こ
なればそれほど意識せずとも可能な動作であ
の 被 験 者 は ,100m 走 の ベ ス ト 記 録 10.5秒 台 を
る.同時に空中局面中期「振上脚(リード脚)
備 え た ス プ リ ン ト 型 の ハ ー ド ラ ー で あ り ,本 研
は リ ラ ッ ク ス し ,着 地 の 準 備 を す る 」も ,も と
究 の 対 象 者 の 中 で 1,2を 争 う ⾛ ⼒ で あ る .さ ら
もと出来ていればそれほど意識しなくても良
に ⾝ ⻑ は 178cmで 対 象 者 中 2番 目 に 低 く , 踏 切
いと考えられる.
局 ⾯ 前 期 の「 遠 く か ら 踏 み 切 る 」に つ い て も「 意
以 上 の よ う に カ テ ゴ リ ー Ⅱ の 項 目 は ,必 要 で
識 し て い な い 」と 回 答 し て い る .こ の よ う な ⾼
は あ る け れ ど も ,も と も と 出 来 て お り 意 識 し な
い 疾 ⾛ 速 度 を 持 つ も の は ,⾛ り 抜 け る よ う な ハ
く て も 良 い 項 目 ,ま た は 鍛 錬 に よ っ て 意 識 し な
ー ド リ ン グ の 運 動 イ メ ー ジ は 持 た な い( 持 て な
く て も 良 く な っ た 項 目 が あ り ,後 者 は ,彼 ら に
い)のかもしれない.
着地局面後期の「両腕を前後に大きく振る」
とって運動学習の三段階説における自動化の
段 階 ( 杉 原 , 2003 ) に あ り , 動 作 が 意 識 せ ず
は「 必 要 で あ る 」と 回 答 し て い る ⼀ 流 ハ ー ド ラ
とも遂⾏できるまでに運動プログラミングが
ー は 少 な か っ た ( 4 名 ) . こ の 項 目 は , “1 . 一
形 成 さ れ て い る と 考 え ら れ る .た だ し ,疾 走 能
流 ハ ー ド ラ ー の 主 観 的 「 必 要 度 」 ”で 述 べ た よ
⼒やハードリング技術の向上や改善によって
う に ,腕 を 大 き く 振 る こ と で ,積 極 的 な 接 地 を
184
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
可 能 と し ( 宮 下 , 1988, 1991) , 推 進 ⼒ を 獲
で あ る .こ れ ら の 項 目 は ,基 礎 か ら ハ ー ド ル を
得 す る た め の 動 作 で あ る( 谷 川 ,2012).Tidow
学習する初心者から中級者にいたるハードラ
( 1991)に よ る ハ ー ド ン グ の 技 術 モ デ ル で も ,
ー に と っ て の 運 動 イ メ ー ジ ,指 導 教 示 と し て は
着地局面で腕の動作にアクセントをつけるこ
必 要 で あ る と 考 え ら れ る .し か し ,あ る 程 度 技
と が 強 調 さ れ て い る .し か し ,腕 は 身 体 バ ラ ン
能が進んだ上級ハードラーでは意識する必要
ス を と る も の で あ り ,腕 の 振 り を 先 ⾏ さ せ る の
が な い .例 え ば ,踏 切 脚 の 踏 切 る 位 置 や 跳 躍 角 ,
で は な く ,脚 の 動 作 に 合 わ せ て 腕 の 振 り を タ イ
デ ィ ッ プ( 前 傾 )の か け 方 な ど が こ れ に あ た る .
ミ ン グ よ く 調 整 す る こ と が 求 め ら れ る .こ れ が
空 中 局 面 中 期 の「 抜 き 脚 の つ ま 先 が 下 に 向 か な
こ の 項 目 の「 必 要 度 」を 低 下 さ せ ,同 時 に「 意
い よ う に す る 」や ,空 中 局 面 後 期 の「 振 上 脚( リ
識度」も低下させたのかもしれない.さらに,
ード脚)はほぼ伸展し,まっすぐ振り下ろす」
空 中 局 ⾯ 前 期「 踏 切 脚 を 少 し 残 す よ う に し ,両
な ど は ,鍛 錬 が 進 め ば ,無 意 識 下 で 遂 ⾏ で き る
脚 を ⼤ き く 開 く 」も「 意 識 し て い る 」ハ ー ド ラ
技術でそれほど疾⾛能⼒や体⼒によって変容
ー が 7名 で「 意 識 度 」は 低 い わ け で は な い が ,3
しないと思われる.
名の⼀流ハードラーはこの項目⾃体を必要と
こ の 他 に カ テ ゴ リ ー Ⅱ に は ,個 々 の レ ベ ル に
感じておらず,意識もしていなかった.近年,
合わせてむしろ運動イメージを変えていく必
「 挟 み 込 み ( シ ザ ー ス ) 動 作 」 や ,「 上 肢 と 下
要 が あ る 項 目 も あ る と 考 え る .ト レ ー ニ ン グ に
肢 が タ イ ミ ン グ を 合 わ せ た 切 り 替 え 動 作 」な ど
よ っ て 疾 ⾛ 能 ⼒ や 体 ⼒ は 向 上 し ,ハ ー ド リ ン グ
の協調動作がハードリング技術の主流となっ
動 作 は 変 容 す る .そ れ に と も な い ハ ー ド リ ン グ
て い る ( 谷 川 , 2012 ) . 上 肢 と 下 肢 を 連 動 さ
に関する運動イメージも変化し,⼀度は定着,
せ ,素 早 く 挟 み 込 む 動 作( シ ザ ー ス )を ⾏ う た
安定して意識していなかった動作を再度意識
め に は ,踏 切 脚 は 素 早 く 前 ⽅ へ 引 き 出 さ れ な け
し な け れ ば な ら な く な る 項 目 で あ る . Mann
れ ば な ら ず ,腕 も そ れ に 合 わ せ て 素 早 く 連 動 さ
( 1996 ) は , ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー に は 踏 切 後 期 の
せ な け れ ば な ら な い .こ の 動 作 を 遂 ⾏ す る に は ,
振 り 上 げ 脚( リ ー ド 脚 )の 膝 関 節 最 ⼤ 屈 曲 角 度
⾼い技術と共に筋⼒も必要と考えられる.
が 大 き い ハ ー ド ラ ー が 多 い と 指 摘 し て い る .さ
以 上 の よ う に カ テ ゴ リ ー Ⅲ の 項 目 は ,そ の 個
ら に ,踏 切 ⽀ 持 期 の 振 り 上 げ 脚( リ ー ド 脚 )の
⼈の持つ疾⾛能⼒や⾝⻑,筋⼒などの個別性,
膝関節最⼤屈曲角度はレベルが⾼まるに従い
ハ ー ド リ ン グ の ス タ イ ル に よ っ て ,意 識 が 異 な
その角度が⼤きくなっていくことを報告して
る 項 目 と い え る .し た が っ て ,こ れ ら の 項 目 は ,
い る .筆 者 の 観 察 に よ れ ば ,本 研 究 の 対 象 ハ ー
ハ ー ド ラ ー ご と に「 必 要 度 」や「 意 識 度 」が 異
ド ラ ー で は 膝 関 節 屈 曲 角 度 の ⼤ き い 者 が 3名 ,
な る こ と が 推 察 さ れ ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 指 導 に
小 さ い 者 が 6名 ,そ の 中 間 が 2名 で あ っ た .こ の
は選手の個別性に注意すべき項目であること
振 上 げ 脚( リ ー ド 脚 )の 膝 関 節 に 関 す る 運 動 イ
が示唆される.
メ ー ジ に 相 当 す る 項 目 は 踏 切 局 ⾯ 後 期 の「 振 上
カ テ ゴ リ ー Ⅰ は ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー で あ っ て も
脚 の 膝 を 折 り た た み ,膝 で リ ー ド し て ま っ す ぐ
必要かつ意識しなければならない項目であり,
に 出 す 」で あ る .こ の 表 現 で は 膝 関 節 を ど の 程
⼀流ハードラーの指導に利⽤できる項目であ
度屈曲させるかについては明確にはされてい
るといえる.
な い が ,こ の 項 目 を「 意 識 し て い な い 」と 回 答
カ テ ゴ リ ー Ⅱ『「 必 要 度 」は ⾼ い が「 意 識 度 」
し た 4名 の う ち , 3名 は 屈 曲 の 大 き い タ イ プ で ,
は ⾼ く な い 項 目 』 は ,「 必 要 で あ る 」 と 認 識 は
残 り 1名 は 中 間 タ イ プ で あ っ た .Mann( 1996)
し て い る が ,意 識 し な く て も 可 能 な 技 術 ・ 動 作
に よ る と ,踏 切 ⽀ 持 期 の リ ー ド 脚 膝 関 節 最 ⼤ 屈
185
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
曲 角 度 は レ ベ ル が ⾼ ま る に 従 い , 38 度 - 54 度
能 ⼒ や 体 ⼒ な ど の 変 化 に よ っ て「 意 識 度 」に 変
- 66度 へ と 変 化 し ,そ の 際 ,ハ ー ド リ ン グ タ イ
化 が 起 こ る こ と も 考 え ら れ る .カ テ ゴ リ ー Ⅱ の
ム が 0.36 秒 - 0.33 秒 - 0.31 秒 と 短 く な っ た と
習 熟 に よ っ て「 意 識 度 」が 変 化 す る 項 目 お よ び
報 告 し て い る .こ れ は ,ハ ー ド リ ン グ タ イ ム の
カ テ ゴ リ ー ③ は ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が ⾃ ⼰ の ハ ー
短縮により膝を大きく屈曲させる余裕がなく
ドリングスタイルを確⽴していくための項目
な り ,踏 切 の 初 期 段 階 で 膝 関 節 を 着 地 に 向 け て
で あ り ,そ の 時 の 習 熟 状 況 ,形 態 特 性 ,体 ⼒ 特
伸 展 さ せ る 必 要 が あ る た め と 考 え ら れ る .「 振
性などのハードラーの状況を把握したうえで
上 脚 の 膝 を 折 り た た み ,膝 で リ ー ド し て ま っ す
流動的に活⽤していくことが良いであろう.
ぐに出す」を現在意識しているハードラーは,
本 研 究 は ,13秒 台 の 記 録 を 持 つ ⼀ 流 ハ ー ド ラ
レ ベ ル の 向 上 に よ っ て ,膝 関 節 の 屈 曲 を 早 期 に
ー の「 必 要 度 」と「 意 識 度 」に つ い て 項 目 を 設
伸 展 さ せ る た め に「 意 識 し て い な い 」⽅ 向 に 変
定した尺度法による評価と関連性を検討した
化 し て い く 可 能 性 が う か が え る .つ ま り ,特 に
が ,尺 度 法 の み の 評 価 で は ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 傾
カテゴリーⅡのうち鍛錬による競技レベル向
向 は 検 討 で き る が ,彼 ら の 運 動 イ メ ー ジ の 詳 細
上 や ハ ー ド リ ン グ 技 術 の 向 上 ,動 作 の 習 得 な ど
な内容にまで踏み込むまでには至らなかった.
に よ り ,⾃ 動 化( 無 意 識 化 )し た と 考 え ら れ る
今 後 は ,詳 細 な 動 作 と 言 語 表 現 を 合 わ せ て 運 動
項 目 は ,意 識 が 変 化 し て い く と 考 え ら れ る .動
イ メ ー ジ を 検 討 す る こ と が 必 要 で あ ろ う .こ の
作 の 習 得 に よ っ て 今 ま で「 意 識 し て い る 」で あ
成果により客観的な言語指標を明らかにする
っ た 項 目 が ⾃ 動 化( 無 意 識 化 )さ れ「 意 識 し な
こ と で ,ハ ー ド リ ン グ の 型 に よ る 運 動 イ メ ー ジ
い 」項 目 と な る こ と や ,逆 に「 意 識 し な い 」項
の 違 い が 明 ら か に な れ ば 13 秒 台 を 目 指 す ハ ー
目となったものであっても疾⾛能⼒の向上や
ドラーが目指す型に応じて練習や指導の方針
体 ⼒ の 変 化 に よ っ て「 意 識 し て い る 」項 目 と し
を 検 討 す る 材 料 と な る .さ ら に ,記 録 が 向 上 す
て再度意識しなければならなくなる場合もあ
る ハ ー ド ラ ー , た と え ば 14 秒 台 か ら 13 秒 台 に
る だ ろ う .⼀ 流 ハ ー ド ラ ー は こ う し た 意 識 の 変
記録を更新したハードラーの運動イメージの
化を繰り返すことでハードリングスタイルを
変 化 を 縦 断 的 に 検 討 し ,指 導 に 結 び 付 け る こ と
確 ⽴ し て い く こ と が 予 想 さ れ る .そ こ で こ れ ら
も必要である.
の 項 目 は ,ハ ー ド ラ ー の 技 術 段 階 を 考 慮 し た う
えで指導言語として活用すべきであろう.
Ⅳ.まとめ
カテゴリーⅢは⼀流ハードラーの形態特性,
本 研 究 は ,先 ⾏ 研 究 で 得 ら れ た ⼀ 般 的 な ハ ー
体 ⼒ 特 性 な ど 個 別 性 が 影 響 す る 項 目 で あ る .こ
ドリングの運動イメージから得られた経験的
の 項 目 群 は ,⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の 特 徴 が 現 れ ,運
知 識 が 13 秒 台 の 記 録 を 持 つ ⼀ 流 ハ ー ド ラ ー の
動イメージにハードリングスタイルが影響し
間 で も 必 要 と 捉 え ら れ て い る の か ,ま た 意 識 さ
てくる項目と考えられた.実施者や指導者は,
れ て い る の か に つ い て 検 討 し た .そ の 結 果 ,彼
形 態 特 性 や 体 ⼒ 特 性 な ど を 把 握 し ,選 ⼿ に 適 し
らの特徴的な経験的知識として,カテゴリー
たハードリングのスタイルを模索していく中
Ⅰ:『「 必 要 度 」,「 意 識 度 」と も に ⾼ い 項 目 』,
で ,こ れ ら の 項 目 を 活 ⽤ す る の が 良 い こ と が ⽰
カ テ ゴ リ ー Ⅱ:『「 必 要 度 」は ⾼ い が「 意 識 度 」
唆 さ れ る .特 に カ テ ゴ リ ー Ⅱ の う ち 鍛 錬 に よ る
は ⾼ く な い 項 目 』,カ テ ゴ リ ー Ⅲ:『「 必 要 度 」
競技レベル向上や動作の習得により,自動化
へ の 回 答 が 分 か れ ,「 必 要 度 」 が ⾼ い と 回 答 し
(無意識化)したと考えられる項目と同様に,
た 者 は 「 意 識 度 」 も ⾼ く ,「 必 要 度 」 が 低 い と
形態的な変化やトレーニングなどによる疾走
回 答 し た 者 は「 意 識 度 」も 低 い 項 目 』が 抽 出 さ
186
スポーツ科学研究, 11, 171-189, 2014 年
れ た .⼀ 流 ハ ー ド ラ ー が 実 践 し て い る 技 法 や 運
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