日本とILO

日本
国際労働機関
日本とILO
アジアのディーセント・ワークを
30年以上支えて
アジア太平洋地域事務所
アジア
ディーセント・ワークの
10年
日本・ILOパートナシッププログラム対象国
モンゴル
中国
パキスタン
ネパール
インド
ベトナム
タイ
ラオス
カンボジア
スリランカ
フィリピン
マレーシア
インドネシア
フィジー
対象国
表紙写真:ILO 2007年、ILO/川上 2008年、ILO/ミルザ 2007年
日本とILO: 開発に向けたパートナーシップ
日本政府は30年以上にわたり、
アジア太平洋地域の労働者の変容するニーズに応えるILOプロジェ
クトを支援してきました。
日本政府がアジア地域におけるILOとの協力を開始したのは1974年で、労働安全衛生、労使関係、
労働行政など、職場における様々な問題を検討する地域セミナーを開催してきました。1980年
代までに日本の貢献は、
アジア地域各国における開発プロジェクトへの支援へも拡張しました。
2008年、
日本政府は、失業率低減、労働環境向上、貧困撲滅に向けたILO事業に400万ドル以上
を拠出しました。
日本は、ILOとのマルチ・バイ・プログラムや国連の人間の安全保障基金 を通じ、
多種多様な分野における、様々な国や地域のニーズに応えるプロジェクトを支援しています。
近年のプロジェクトでは主に、職業訓練を通じた失業および不完全就業への取組み、女性の雇
用機会創出、
自国に戻った人身売買被害者への支援、労働安全衛生基準の向上に焦点を当てて
2004年以降日本は、財政的支援のみでなく、労働安全衛生や社会保障、児童労働、性差別や女性
問題といった分野の専門家を派遣し、
アジア太平洋地域におけるILO開発プロジェクトを積極的
に支援しています。
© 写真:ILO/ レイン
います。
日本政府が支援するILOプロジェクトの例
スリランカにおける、若年者のディーセント・ワーク推進
カンボジア、ベトナムにおける、女性の雇用機会拡大
帰国した人身売買被害者の経済社会的エンパワーメント
東南アジアにおける、国際労働移動の管理
インドネシアのパプア州における、先住民族の人間の安全保障向上と貧困削減
アジア太平洋地域における、労働問題研究機関ネットワーク
労働法ネットワーク構築
アジア太平洋地域の技能および就業能力
労使関係および安全衛生に関するアセアンネットワークの強化
ベトナムにおける、農民の生活・労働環境の向上
日本人専門家の派遣
ASIAN
DECENT WORK
DECADE
2006
2015
アジアの生活向上に向け、
日本の専門知識を活用
グローバルな職場に通用する
技能の開発
2004年より、
日本人専門家が各々の知識や技術を活用し、ILOプログラ
21世紀の職場では、労働者が、急変する世界経済における技術への適
ムに貢献しています。
その分野は、開発経済、労働安全衛生、社会保障、
応を求められます。
より高い賃金を求めた海外へ出稼ぎを背景に、熟
ジェンダー・女性問題、児童労働、企業育成など多岐に渡り、専門家とし
練労働者不足が一般化してきています。
ての高い技術と志をもって業務に取り組んでいます。
日本は、
アジア太平洋地域において、
こうした労働力不足を解決するた
日本人専門家派遣プログラムを通じ、
日本の若い専門家が、1年間の任
めの、職場研修や職業訓練の促進を支援しています。
日本は、ILOのア
期でアジア太平洋地域各国のILO事務所へ派遣され、
タイ、インド、
フィ
ジア太平洋地域技能・就業能力地域プログラム(SKILL-AP)への拠出を
リピン、
スリランカにおけるILO事務所で活動してきました。
通じ、地域内各地でワークショップを開催し、急変する職場環境に対応
できる人材育成に向け、使用者が職場研修機会を提供することを奨励
してきました。
連絡先: 樋口 清高
[email protected]
継続
連絡先: レイモンド・グラノール (Mr. Raymond Grannall)
[email protected]
期間:
継続
© 写真:ILO/ ファリーズ 2007年
期間:
労働安全衛生:
労働者保護と生産性向上
ILOの労働安全衛生プロジェクトでは、農場、中小企業、家庭内の就労場所における労働環境を
向上するための簡易で実践的なアプローチを用います。
これまで、同プロジェクトは、
ラオス、
カ
ンボジア、
タイ、ベトナムを含むアジアの各地で、職場環境改善に寄与してきました。
ILOの農業における労働安全衛生プロジェクトの専門家の推定では、2004年から2007年の間、
ベトナムにおいて約8,000名の農民が訓練を受け、28,000名以上の農民の安全水準の向上が達
成されました。
プロジェクトが成功した主要因は、機械の動く部分に保護カバーを付けたり、化学品や肥料の瓶
に現地語のラベルを貼るなどの、簡単な安全対策です。労働者や従業員は、各々のコミュニティ
で実例から学び、安価な現地の材料を使って、
より安全で衛生的な労働環境を作り出します。
2009年、
日本が支援する労働安全衛生プロジェクトでは、上記と同様の考え方を用い、ベトナム
の中小企業および自営業での労働安全衛生向上を行います。
また、
アセアンおよび南アジア各
© 写真:ILO/ ソヴァナラ 2007年
国の、職場の安全に関する意見交換のためのワークショップを開催します。
連絡先: 川上 剛
[email protected]
2009年−2011年
「労働安全衛生と生産性を同時に改善する簡
単で安価な方法は、数多くあります。使用者と
労働者がこうした改善からの恩恵を分かち合
い、協調的で競争力のある職場環境を作り上
げてきました。」
© 写真:ILO/ 川上 2008年
期間:
川上 剛、ILO労働安全衛生専門家
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2006
2015
スリランカにおける若年者雇用の支援
スリランカは独特な若年者雇用問題に直面しており、特に、茶葉やゴムの生産地域では深刻です。
プランテーションで働く若年者の多くは少数民
族であるタミール族であり、言葉の問題、限られた教育機会、居住地などの理由から、雇用の選択肢が限られています。
ILO/日本の、
スリランカにおける若年者のためのディーセント・ワーク推進プロジェクトでは、村落部若年者の失業および不完全就業緩和に向け、
職業訓練の斡旋、企業内研修の実施、使用者・若年者向けの雇用・就業サポートの促進、
プランテーション内の学校での英語教育の実施などを行
っています。
このプロジェクトは、村落部若年者の労働市場参加を促進することで、貧困削減に寄与しています。
また、現地スタッフや研究機関の能力開発によ
り、労働市場および雇用サービスの改善も促されます。
さらに、
プランテーション企業と協調し、企業の社会的責任や工場の改善、仕事と生活の調
和の向上を奨励しています。
国レベルでは、村落部やプランテーションで働く若年者が問題を表明し、
それらを政府、労働組合、使用者団体へ伝えることも促進しています。
また、
若年者雇用問題に対する知識と認識を高め、政策立案、発展を支援しています。
プロジェクトの活動はサバラガムワ県で開始されましたが、将来的には、他県へも広がる可能性があります。
連絡先: ヘンリック・ヴィシティセン(Mr. Henrik Vistisen)
「若年者の円滑で公平な労働市場への
参加は、貧困削減と経済成長につながり
[email protected]
期間:
2008年−2010年
ます。次世代の働きがいのある人間らしい
仕事、公正な報酬が得られる雇用を確保
することは、経済学理論に見合うとともに、社
会的にも不可欠です。
」
ヘンリック・ヴィシティセン、ILOチーフテクニカル
アドバイザー、ILO/日本若年者雇用プロ
© 写真:ILO/ ペレラ 2007年
ジェクト
インドネシアのパプア州における先住民族の貧困削減
パプア州は天然資源に恵まれていますが、住民はインドネシア国内でも最貧困層に属しています。
こうした貧しい人々の多くが約250の部族に属し、働きが
いのある人間らしい、生産的な仕事に就くのが難しい状況にあります。
日本は、貧困削減、男女平等向上、和平と開発へのメカニズム強化を目指し、国連人間の安全保障基金を通じてILOのパプア州先住民エンパワーメント
(PIPE)
プログラムを支援しています。
このプロジェクトでは、融資へのアクセス向上、企業家支援、職業訓練をなどにより、雇用機会を創出しています。
コミュニティの人々は、農業、漁業、園芸、畜産、果物加工に関する訓練も受けます。
プロジェクトはまた、約300の小規模企業および組合企業の設立、および
先住民の自立強化を目標としています。
プロジェクト参加者によると、ILOの訓練を受けた後、収入が15%から35%上昇したということです。
連絡先: ドミンゴ・ナラハンガン(Mr. Domingo Nayahangan)
[email protected]
2005年−2008年
© 写真:ILO/ ムハマッド 2008年
期間:
ASIAN
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2006
2015
アジア地域における女性の生活向上
ILOの女性雇用機会拡大プロジェクト
(EEOW)
では、女性たちがより高い収入を得る
(自らの、そして
家族の貧困を克服するため)だけでなく、生計を向上するために必要な研修を行っています。
ネパール、
インドネシア、
タイでのEEOWの成功を受け、ILOは2002年に、
カンボジアとベトナムで同
枠組みを導入しました。
プロジェクトの主な内容は、女性の権利、
より良い農業技術、手工芸品製造、
労働安全衛生、事業経営など、収入増加のための技術訓練です。
自ら起業を希望する女性には、簿
記や筆記、管理技術の研修を行います。
また、男性のジェンダー問題意識を高め男女機会均等を促
進することで、
プロジェクトへの男性の参加にも配慮しています。
EEOWプロジェクトには、男女合わせ数千人が参加しました。ベトナム政府によると、EEOWプロジェ
クト参加世帯の80%近くが、貧困を克服しています。
カンボジアでは、
プロジェクトのパートナーや
参加者から、家庭や地域社会における男女協同関係の改善、収入増加や家庭内暴力の減少などが
© 写真:ILO/ ペレラ 2007年
報告されています。
連絡先: 樋口 清高
[email protected]
期間:
2007年1月−2008年8月
「男女平等の推進は、単に正しいだけでなく、
賢明なことなのです。訓練へのアクセスを促す
ことは、女性のエンパワーメントと貧困削減の
鍵となります。
」
松浦 彩、ILOジェンダー専門家/プロジェクト
© 写真:ILO/ ペレラ 2007年
コーディネーター
国際労働基準の擁護
国家労働研究機関のネットワーク構築
労働法ネットワーク構築プロジェクトでは、
アジア太平洋地域の法律家
国家労働研究機関アジアネットワークは、域内の各国政府への質の高
や法学者の会議を開催を通じ、地域における国際労働基準の向上を図
い政策提言を目指し、1993年後半に設立されました。
っています。ネットワークでは、ILO基準や条約への理解の向上、労働法
や国際労働基準に関する教育の促進、
アジア各国が抱える様々な労働
アジア太平洋地域におけるディーセント・ワークの向上を目標に、15カ
法関連問題解決法の検討を行います。
国からの参加機関が、労働、
グローバリゼーション、IT技術、
グローバル
生産システムに関する共同研究を行っています。
連絡先: 樋口 清高
期間:
連絡先: 樋口 清高
[email protected]
2008年
期間:
継続
© 写真:ILO/ マーケー 2007年
[email protected]
ASIAN
DECENT WORK
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2006
2015
人身売買被害者の帰国後の支援
ILO/日本の、帰国した人身売買被害者の経済社会的エンパワーメントプロジェクトは、人身売買被害者の自
「家に戻ったばかりの頃はとても恥ずかしく、
どこへも出かけず、何をする気力もおこりませ
んでした。チェンマイで開かれた支援グループ
の会合に参加してからは、社会復帰する勇気
国帰国後のニーズに焦点をあてています。帰国者一人一人への幅広い支援(技術訓練、就職斡旋、被害者グル
ープによるカウンセリング、安全な移民に関する情報提供など)
を通じ、再び搾取や人身売買の被害者となら
ないよう、女性たちが自信を取り戻し、仕事や新たな生計手段について、正確な情報にもとづいた判断ができ
るよう支援しています。
が沸きました。」
プロジェクトの一環として、外国で搾取的労働を経験し、帰国した女性を雇用・訓練している、
タイのチェンライ
売春目的にイタリアへ人身売買されたタイ人
県にある日本食レストランを支援しています。バンコクの情報センターでは、人身売買被害者のためのカウン
女性
セリングや被害者グループによるサポートを実施しています。
フィリピンでは、支援グループをサポートするとともに、心理社会的、法的支援と、女性達の職業、生計訓練機
会を促進しています。
また、人身売買被害者がより良い社会復帰支援を受け、各種サービス業者間の機能と協
力が強化されるよう、国家の社会復帰紹介システムと帰国者データベースが設置されました。
連絡先: (マニラ)ロバート・ラルガ(Mr. Robert Larga)
[email protected]
(チェンライ)クシュマル・ラチャウォン(Ms. Kusumal Rachawong)
[email protected]
2006年6月-2009年5月
© 写真:ILO/ IPEC-TICW/HFS 2007年
期間:
東南アジアにおける出稼ぎ労働者の権利保護
東南アジアでは、仕事を求め国境を超える人々が数十年にわたり存在してきましたが、最近は、非公式経路での移民が増加しています。適切な書
類を持たないこれらの移民は、法的保護を受けられず、使用者の搾取を受けやすい状況にあります。
ILOの東南アジアにおける国際労働移動の管理プロジェクトでは、政策策定者の移民問題に関する知識を高め、政府の労働移民の秩序ある管理
能力を強化することで、移民労働者を保護しています。
また、健全な国家労働移民政策を擁護し、移民労働者の法的支援へのアクセスを向上し、安
価で効率的な送金システムを促進し、技術訓練、企業育成を支援しています。
プロジェクトは、
カンボジア、
ラオス、
インドネシア、
タイで実施されて
います。
連絡先: プラチャー・ワスプラサート
(Mr. Pracha Vasuprasat)
[email protected]
2006年-2010年
© 写真:ILO/ ファリーズ 2007年
期間:
ASIAN
DECENT WORK
DECADE
2006
2015
日本マルチ・バイプログラム
国際労働機関
アジア太平洋地域事務所
United Nations Building, 10th Floor
Rajdamnern Nok Avenue, Bangkok 10200, Thailand
電話: +66-2-288-1234 ファックス: +66-2-288-3062
Eメール: [email protected] ホームページ: www.ilo.org/asia
ディーセント・ワーク
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