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第 61 回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集(2014 春 青山学院大学)
18a-D7-6
Cu2SnS3 光吸収層のフォトルミネッセンス強度と太陽電池性能の相関
Relationship between photoluminescence intensity of Cu2SnS3 absorbers and solar cell performances
立命館大 ○植垣 光, 唐 澤国, 小阪 貴一, 廣庭 大輔, Jakapan Chantana, 峯元 高志
Ritsumeikan University ○Hikaru Uegaki, Zeguo Tang, Kiichi Kosaka, Daisuke Hironiwa, Jakapan Chantana
and Takashi Minemoto
E-mail: [email protected]
【はじめに】 単接合型太陽電池の理想とされている禁制帯幅は約 1.4 eV であり、その際の理論上
の最高変換効率は約 30%以上である。
単接合型太陽電池の理論変換効率を超える手段の 1 つとして、
複数の太陽電池を組み合わせた多接合型太陽電池を構成する方法がある。多接合型太陽電池は、異
なる禁制帯幅も持つ太陽電池を積層させた構造であり、この構造によってより多くの太陽光エネル
ギーを電力として取り出すことが可能である。多接合型太陽電池のボトムセルとしては、禁制帯幅
の小さい材料が必要とされ、禁制帯幅が約 1.0 eV を有する Cu2SnS3(CTS)がその候補としてあげられ
る。CTS の多くは、Cu-Sn 合金を成膜して、S 粉末を加えて熱処理を行うことで作製される。今回は、
異なる熱処理温度で作製した CTS 光吸収層について、調査を行ったのでその内容について報告する。
【実験内容】 CTS 太陽電池の構造は、Al-NiCr/ZnO:Al(AZO)/ZnO/CdS/CTS/Mo/ソーダライムガラス
(SLG)とした。まず SLG 上に形成された Mo の上に、2 元同時スパッタリング法により Cu-Sn プリカ
ーサを形成した。この作製したプリカーサと S 粉末を、ガラスアンプルの中に入れて真空状態で密
閉した。その後、マッフル炉を用いて熱処理を行うことで、プリカーサと S 粉末を反応させ硫化を
行い、CTS 光吸収層を作製した。CTS 光吸収層は KCN エッチングを施した後、化学析出法によって
バッファ層となる CdS を形成し、RF マグネトロンスパッタリング法によって、窓層として ZnO を、
透明導電膜として AZO を順に形成した。最後に、Al-NiCr 電極を抵抗加熱蒸着法によって形成した。
今回の実験では硫化温度を 550oC から 580oC まで 10oC 刻みで変化させ、それぞれの条件で作製した
CTS 薄膜を、小型近赤外蛍光寿命測定装置(HAMAMATSU, C12132)を用いて評価を行った。測定条件
は、レーザー波長を 532 nm、レーザーの出力を 5.05mW、このときのスポットサイズを長辺 1.0 mm
短辺 0.8 mm の楕円形とした。そして作製した CTS 太陽電池セルを、電流電圧特性(JV)を用いて評価
を行い、硫化温度が CTS に与える影響について調査を行った。
【結果と考察】 図 1 にそれぞれの硫化温度で作製した PL スペクトルを示す。硫化温度によって
PL 強度が変化する事が確認できた。この結果より、硫化温度により非輻射再結合となる欠陥の密度
が異なる事がわかった。さらに、硫化温度が 560oC のとき PL 強度が最も大きくなり、最も欠陥密度
が少ないという結果が得られた。次に PL の強度と変換効率との関係を、図 2 に示す。PL の強度が
大きくなるに伴い変換効率も向上している事から、PL の強度は変換効率と相関があることがわかっ
た。今回の実験結果から、CTS 光吸収層の PL スペクトルを評価する事で、セル化を行うことなく変
換効率が予測できる事がわかった。よってこの PL 評価は CTS 太陽電池の中間評価として有用であ
る。
図 1. 硫化温度と PL スペクトルの関係
Ⓒ 2014 年 応用物理学会
14-219
図 2. PL 強度と変換効率の関係