出 張 報 告

出
張
報
告
この出張報告は、国際交流支援室渡辺が田隅学長及び人事課富田総括課長代理の協力
のもとに作成したものである。
Ⅰ
概要
1
日
程:平成 20 年1月 30 日(水)∼2月9日(土)
2
場
所:カリフォルニア大学バークレー校
スタンフォード大学
フロリダ大学
アリゾナ大学
3
出張者:田隅三生学長
人事課
富田均総括課長代理
国際交流支援室
4
目
渡辺賢治留学推進係長
的
(1)埼玉大学は、基本方針の一つに「世界に開かれた大学とし、海外との学生交流・
研究交流を推進する」ことを掲げ、各学部・研究科並びに国際交流センターを中心
に海外協定校を中心とした学生交流・研究連携を推進してきたところであり、その
学生交流の実績も下記のとおり着実に進んでいる。
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
受入(人)
26
30
31
41
37
派遣(人)
8
11
16
17
20
学生の派遣については、平成 15 年度の8名から平成 19 年度 20 名と学生の留学意識
も向上しつつあるものと見受けられる。ただし、理学部・工学部、理工学研究科の学
生については、まだまだ、僅かな人数に止まっているのが現状である。
これは、これまでの学生交流の在り方が、授業履修(教育関係)の形態で行われた
ことに起因することがあげられる。西オレゴン大学などがその例である。
現在タイのタマサート大学に理工学研究科の学生を継続的に派遣しているが、理工
系の学生にとってネームバリューのある魅力あるアメリカの大学との交流の可能性に
ついて情報を収集する。
(2)文部科学省は、昨年9月に原則4月である入学時期を撤廃し、欧米では一般的であ
る9月入学の機会を日本でも増やし、優秀な学生・研究者を日本に招くべく方針を固
めた。また、本学でも、9月入学(秋季入学)について検討を開始したところである。
今後学内規則・規程等の整備も必要にはなるが、学部時の履修を計画的に進め、3
年で学部課程を実質的に終えて、秋季に大学院に進学する前に、海外留学を含めた研
1
究活動を行うなどのプログラム構築のための情報収集を行う。
(3)本学には約 40 大学と協定を締結し、学生交流を行っているところである。米国には
既に、西オレゴン大学、ボーリンググリーン大学、ミドルテネシー大学等あるが、依
然として本学学生の米国留学希望のニーズは多い。
また、本学には、受入留学生のための STEPS プログラムがあり、このプログラムを
利用した米国の学生との交流も行われている。
訪問大学のいくつかで、STEPS プログラムを紹介し、今後の交流の可能性を探りな
がら意見交換・情報交換を行う。
(4) 訪問大学において田隅学長の関連分野の研究者との意見交換及び情報交換を行う。
なお、フロリダ大学では、研究者等を対象に講演を行う。
Ⅱ
出張先での概要
1
カリフォルニア大学バークレー校(1月 31 日)
(1)大学の概要
○設立は 1868 年
○10 校のカリフォルニア大学系列の一つで、最も
歴史が古い。
学内風景
○世界の中でも評価が非常に高い。
(Times Higher
Education によると 2006 年度は8位、2007 年度は 22 位)。全米トップ4(イェール
大学、ハーバード大学、プリンストン大学、スタンフォード大学)と肩を並べる大学
である。
化学、コンピュータ工学、物理、電子工学、英文学、政治学等々すべての分野で上位
ランキング。
○2006 年度までに 41 人のノーベル賞受賞者(出身校または所属機関)
○緒方貞子女史(政治学博士)、孫正義氏(経済学士)などの著名人も卒業生である。
参考資料:カリフォルニア大学バークレー校ホームページ
ウィキペディア
(2)意見交換・情報交換の概要
9:00-10:00
Mr. Judah Rosenwald
CFO/COO and Director
Global Initiatives and Business Development
UC Berkeley Extension
田隅学長から、本学の学生を留学させたい旨の説
2
Mr. Rosenwald と田隅学長
明を行い、種々意見交換・情報収集を行った。
Mr. Rosenwald から、学生の交流等に関し次のとおりプログラムの紹介等があった。
①
Cohort プログラムについて
このプログラムは、外国の大学と簡単な覚書を交わし学生の受入れを行うもので、
現在ノルウェーから約 200 人の学生を社会学の分野で受入れている。学生は、1セメ
スターまたは、2セメスター(秋:8月∼12 月、春:1月∼5月)プログラムに参加
している。
学生は、バークレーで開講している授業を履修することになるが、履修可能な科目
は、バークレーの学生が登録後、人数に余裕がある科目に限られる。人数は、授業科
目によって異なるが、200∼400 人が履修可能なものもあれば、よりテクニカルなも
のになると、10∼40 人となる。履修が難しいこともある。参加するに当たっては、こ
の点を事前に理解しなければならない。
選考に当たっては、1つの要素にすぎないが、TOEFL、GPA 等のスコアを見なが
ら行われる。TOEFL では、CBT(Computer-Based Testing 300 点満点)で 225 点ほ
どが要求される。
授業料は、1科目・1セメスターで 600∼700 ドル程度である。
プログラム参加に当たり、基礎的な語学のクラスはないが(ノルウェーの学生には
必要ない)、より専門的用語に関したものは行なわれる。
同様なプログラムが、台湾の大学との間で検討されている。
②
サマースクールについて
個人の留学として、夏の6∼18 週間参加するものである。授業科目を履修するが、
単位はなく、修了証が授与されるのみである。
③
その他
大学の宿舎については、沢山あるが十分ではないとのことであり、1年生の希望者
は入居可能であるが、2年次以降は民間のアパート等に移っている。
10:00-10:30
Prof. Herb Strauss
Professor of Chemistry
Associate Dean for Undergraduate Affairs
田隅学長が 2002 年1月から2年間客員教授をし
ていた時の主なホストであったことから、研究室を
訪問させていただいた。お互いの現在の状況等につ
Prof. Strauss と田隅学長
いて、情報交換を行った。
Prof. Strauss は、バークレー校の教職をリタイアしているものの、特別に College of
Chemistry の Associate Dean for Undergraduate Affairs として学部学生の指導を行って
いるとのことである。
3
11:00-11:30
Ms. Sharon Butler
Director of International and Protocol &
Exchange,
International and Area Studies
国際交流担当者である Ms. Butler から学生交流
に関し、情報交換及び現在の状況等について説明
を受けた。
Ms. Butler と田隅学長、富田
バークレー校では、現在 90 の機関と MOU(資料参照)
を締結し、学生交流を行っている。
選考方法は、国際交流担当への申請に関し、各学部にその受入れの可否を照会し行われる。
受入に関しては、学部教員と交流があるなどのコネクションも必要なようである。
今年度は、中国、韓国、ヨーロッパなど 86 名の受入を行っている。派遣に関しては、学
内での科目必修が多いためか、この3年をみても1名のみであるとのことである。交流と
いうより一方通行である。
授業料は、1セメスターで 412 ドル(ただし、研究学生は 200 ドル)となっている。
13:30-15:00
Prof. Richard Mathies
Professor of Chemistry
田隅学長が客員教授であった時のホストの一人
で、今回の訪問を秘書の Ms. Mary Hammond ととも
にアレンジし、Mr. Rosenwald 及び Ms. Butler と
の面談は Mathies 教授の教授室を利用して行われ
た(同教授は不在)。
昼食の後、Prof. Mathies により、施設見学及
び彼の研究に関する説明を受けた。
Prof. Mathies と田隅学長
なお、研究の内容は次のとおりである。
○フェムト秒時間分解分子分光学
○マイクロチップを使った化学反応
さらにこれらを応用し、火星探査機にマイクロ
チップをのせ、火星に生物が存在するか否か等の
研究に向けての準備を行っているとのことである。
その感度は以前バイキングに搭載したものに比べ、
百万倍も良いとのことである。
米国でも最もアクティブに活動している研究者
Prof. Mathies と田隅学長
4
の一人であり、外部資金についても、上記の火星探査に関するものだけで、この 10 年、年
平均 10 万ドル(1,000 万円以上)獲得している。これ以外を含めれば、年間数千万円を下
らないであろうとのことである。
(所感)
田隅学長がバークレー校で客員教授をしていたこ
となどから、同校を訪問できたことは特に有益であ
った。バークレー校の現状を考えると、相互の交流
は容易ではない。
今後本学の学生派遣が実現するには、教員同士の
交流が前提となると思われる。その場合、学生は授
業料を別途負担しなければならないが、それだけ価
値のある大学である。
交流が開始され、半年間なり研究留学が可能な大
Prof. Mathies と田隅学長
学となれば、9月入学(秋季入学)を含めた検討も
可能かと思われる。
また、世界の第1線の研究者 Prof. Mathies の施設の見学、さらにそれを熱心に説明す
る同教授と研究の現場にいる研究員等の姿には、心打たれるものがあった。
前方がシンボルタワー
宿泊施設
学内風景
5
2
スタンフォード大学(2月1日)
(1)大学の概要
○設立は 1891 年、学生数 15,000 人
○世界の中でも評価が非常に高い。(Times Higher
Education によると 2006 年度は6位、2007 年度は 17
位)。
全米トップ4(イェール大学、ハーバード大学、プリ
ンストン大学、スタンフォード大学)の一つである。
○学問だけでなく、スポーツも盛んである。
参考資料:ウィキペディア
(2)意見交換・情報交換の概要
田隅学長、富田、渡辺
10:00-10:20
Mr. Matt Wolovicsz
Office of Undergraduate Admission
アポイントなしで出向いたため、まず、スタン
フォード大 学のシンボ ルとなって いる Hoover
Tower の 向 か い の 建 物 の 中 に あ る 総 合 案 内 で
Admission Office と所在を教えてもらい、そこを
訪問した
本学では、研究留学での Exchange Program の
可能性を模索している旨説明をしたところ、スタ
ンフォード大学では、Exchange Program は全く実
施していないとのことであり、留学生の受入は、
学部などの正規留学となる旨説明があった。
なお、スタンフォード大学は京都やオックスフ
ォードなど世界各地に自前で分校を持っており、
学生や教員を派遣しているとのことであった。
10:40-11:10
Mr. Jeff Marson
Marketing and Sales Manager
学内風景
サマーコンファレンスと呼ばれるサマースク
ールについて、担当者から説明を受けた。
1
テーマ
○リーダーシップ
○サイエンス
6
○バイオ
○工学
などで、毎年異なる。
2
参加者
○高校生
○外国の大学生
3
人数
約 200 のコンファレンスがあり、全体では、
16,000 人∼18,000 人
4
期間
コンファレンスによって異なり、2、3日の
ものから、1ヶ月のものまである。
6月上旬∼8月
5
宿舎
大学の寮を利用する(3食付き)。
なお、訪問の翌週になって、Mr. Marson か
ら田隅学長にメールが届き、それによると、
別 に 行 わ れ て い る Stanford Continuing
Studies というプログラムの方が本学の学生が
学内風景
参加しやすいであろうとのことである。
(所感)
一般的な情報収集ということではあったが、スタンフォード大学の素晴らしいキャンパ
スを見ることができたのは、非常に有益であった。
サマーコンファレンスの担当者には、本学から学生を送りたい旨説明をした。それが実
現するのであれば貴重な経験になると思う。ただ、6月からの開催という点で、時期的な
調整が必要である。
学内を見学していると、アジアの学生の姿やツアーにて学内を散策する高校生の姿が見
受けられ、その評価(人気)の高さを感じることができた。また、先日国際交流センター
主催で行われたシンポジウムの中で、スタンフォード大学の情報発信力(講義のウェブサ
イド掲載)について、講師の服部先生が説明されていたことを思い出し、本学を含めた日
本の大学の多くは、情報発信力という点での検討が必要であることを再認識した。
学内風景
7
2
フロリダ大学(2月4日∼5日)
(1)大学の概要
○設立は 1853 年
○フロリダ州ゲインズビル
○2,000 エーカー(約8百万平米に相当し、大
久保キャンパスの約 51 倍)のキャンパスに
900 以上の建物があり、資産価値は 20 億ド
ルになる。
○学生数 50,000 人(学部 35,000 人、大学院
フロリダ大学マーク
15,000 人)、卒業生は 30 万人以上
○世界の中でも評価が高い。
(Times Higher Education によると 2006 年度は 226 位、
2007 年度は 135 位)研究大学の一つである。
○昨年の研究費の合計は、5億 1,880 万ドルで、そのうち、2億 7,000 万ドルが健康
関連のものであった。
○多くのクラスが 25 名以下で構成され、教員
と1対1で研究を行うことを可能にしている。
○大学院は 200 のプログラムで、歯科、法律、
医学、薬学などがある。
○スポーツ飲料のゲータレードでも有名である。
参考資料:フロリダ大学ホームページ
ウィキペディア
学内風景
今回の出張に際しては、フロリダ大学化学科助教授の平田聡先生にアレンジをお願いし、
訪問が実現したものである。田隅学長は、東京大学に教授をされていた時に平田先生の指
導教員であった間柄である。
(2)意見交換・情報交換の概要
2月4日(月)
9:00- 9:30
Prof. Daniel R. Talham
Professor and Chair
Department of Chemistry
Prof. Daniel R. Talham を表敬訪問した。
Prof. Talham と田隅学長
Prof. Talham から、フロリダ大学化学科は全米でも
規模が大きく、教授陣も現在 41 名である。(リタイアしている人の分減っているが、通常
50 人程度)
また、2,800 人の PhD を輩出している等概略について説明をいただいた。
8
さらに、今度の3月には東京、名古屋を訪問する予定であること及び時間があれば博
物館も訪れたい旨話された。
9:30- 10:30
Dr. Dennis Jett
Dean of the International Center
Ms. Lynn Frazier
Executive Associate Director of International
Center
Dr. Jett 及び Ms. Frazier と種々意見交換をし
Dr.Jett、Ms.Frazier と田隅学長、富田、渡辺
ながら、今後の交流の可能性等について話し合っ
た。フロリダ大学の交流関係・状況等について次のように説明があった。
なお、Dr. Jett は米国ペルー駐箚大使を勤めた外交官である。
1
留学生数について
3,600 人の留学生がおり、そのうち 55 人は日本人である。
2
交流の形態等について
交流の形態については2種類あり、また、日本の大学との交流例は以下のとおりであ
る。
(1)COOP Agreement
=
京都大学
世界各国の約 300 の大学と交流協定を締結している。
(2)RECIPROCAL Agreement
=
青山学院大学、千葉商科大学、国際大学、
関西外国語大学、国学院大学
過去3年の交流状況(人)
年度
大学名
2004-2005
受入
派遣
2005-2006
受入
青山学院大学
2006-2007
派遣
受入
派遣
4
4
2
千葉商科大学
1
1
国際大学
2
3
2
2
関西外国語大学
10
14
18
12
国学院大学
2
1
14
15
2
世界各国の約 200 の大学との交流協定を締結しており、約 150 人の学生を受け入
れている。
3
学生交流について
(1)宿舎
優先的に学生寮に入居できる。部屋は、アメリカの学生との2人で1部屋となる。
カルチャーショックなどの問題も薄れる。
アメリカ人学生の入居希望者は多く、ウェイティングリストがある。
9
(2)授業料
授業料は相互不徴収の扱いとなっている。
4
その他
日本語学科があり、また、日本語を学習
する学生も多い。年間 400 人の交流を進め
る上で人数のバランスは、重要である。ま
た、関係する学部間相互の協力も重要であ
るとの意見があった。ここでの話合いの結
Dr. Jett と田隅学長
果として、後述する日本語教育関係教員と
の面談が実現した。
この後、本学の交流状況及び協定校の学生のための特別プログラム STEPS について
説
明をした。資料については後日送付することとした。
(所感)
一般的な情報交換で始まったが、話の展開も良く、今後交流協定の締結に発展できれば
と考える。フロリダ大学では、日本語に興味を持っている学生も多く、本学への留学希望
者も期待できるものと思う。本学の学生にとっても、世界的に評価の高い大学であり、有
益と思われる。また、大都会からは離れているが、気候も大変良く、施設やキャンパスの
雰囲気も素晴らしい。
学内風景
学内のアメリカンフットボール場
12:00- 13:00
Mr. Erik Berda(大学院学生)
Dr. Katsu Ogawa(ポスドク)
化学関係を専門に研究している院生及びポスドクと昼食をとりながら、種々情報・意見
交換を行った。
Mr. Berda は、大学院生で、来月、博士論文の審査を受けることになっている。その後
は、オランダのフェイエノールトでポスドクとして研究活動を行う。昨年9月に名古屋で
10
開催された国際会議に参加した。その後、京都大学マスダ研究室で1ヶ月間、研究活動を
行ったとのことである。
現在、研究は日に 10 時間程度である。ただ、週 15 時間の学生指導も受け持っており、
少し負担と感じているようである。
Dr. Ogawa は、学部学生としてアメリカに渡り、学士、博士(ノースダコタ、ミネソタ)
を取得している。今はポスドクとして、フロリダ大学で、教授の下で契約し研究活動をし
ており、今後は教授職の研究者を目指している。
Mr. Berda、Dr. Ogawa と田隅学長、富田、渡辺
Mr. Berda と田隅学長
その後、田隅学長は富田及び渡辺とは別行動となった。
田隅学長は次のとおり研究者との意見交換・情報交換を行った。
13:30- 14:00
Dr. Adrian Roitberg
Associate Professor of Chemistry
Quantum Theory Project
14:00- 14:30
Dr. So Hirata
Assistant Professor of Chemistry
平田先生と田隅学長
Quantum Theory Project
14:30- 15:00
Dr. Steve Hagen
Assistant Professor of Physics
Quantum Theory Project
11
15:20- 16:00
Dr. Valeria Kleiman
Associate Professor of Chemistry
Department of Chemistry
富田及び渡辺は、平田先生に施設案内等をして
いただいた。大都会から離れているせいか、学内
には、美術館、シアター等の娯楽施設も備えられ
ている。また、学内にアリス湖があり、ワニが生
息している。
富田、渡辺
さらに、学内を案内しながら平田先生から、各
学部は、それぞれ独立採算性を採っており、外部資金等の獲得状況により予算に余裕があ
る学部は、建物もどんどん増築される状況である旨の説明があった。
2月5日(火)
10:00- 10:40
Dr. Janie Fouke
Provost and Senior Vice President
Dr. Janie Fouke を表敬訪問した。
Dr. Fouke は、フロリダ大学に来る前に6
年間ミシガン州立大学(East Lansing)にお
り、工学部長をしていたとのことである。ま
た、ケース・ウェスターン・リザーブ大学
Dr. Fouke と田隅学長、富田、渡辺
(Cleveland)にも居たことがある。これらの
大学に田隅学長と共通の知り合いの先生がいるとのこと等で話が盛り上がった。また、日
本には、これまで何度か行ったことがあり、知り合いが東京にいるとのことであった。本
学の留学生の状況について質問があり、その概略について説明をした。Dr. Fouke もいろ
いろな国の学生が留学してくるのは大変良いことと感じているようであった。
田隅学長から、本学はアメリカにもいくつか協定校があるが、できれば、より評価の高
い大学と交流も持ちたいので、今回の訪問になった旨説明された。
フロリダ大学の学生数が多いことに話が及ぶと、多数の学生を教育するのは困難である
旨の話があった。
また、Dr. Fouke がこれまでにいくつかの大学に在職していたことから、田隅学長から、
どの大学が一番良いかの問いかけたところ、大学はそれぞれ異なっているので、一概に答
えるのは困難である旨話された。ただ、フロリダ大学は、スポーツをする環境・機会にも
恵まれ素晴らしいとのことであった。
12
11:00- 11:45
Dr. Ann K. Wehmeyer
Associate Professor of Japanese and Linguistics and
Chair, Dept. of African and Asian Languages and Literatures
Dr. S. Yumiko Hulvey
Associate Professor of Japanese
College of Liberal Arts & Sciences
Dr. Yasuo Uotate
Japanese Language
Ms. Kirsten Eller
Study Abroad Advisor
International Center
Dr.Wehmeyer、Dr. Hulvey、Ms. Eller、Dr. Uotate、
と田隅学長、富田
建築早々で開館式典の準備を行っている最中
の、真新しい Pugh Hall という建物の一室で面談した。
Dr. Wehmeyer は 1993−1994 年に来日し、本学教養学部の現在は退職している教授のと
ころで研究をしていたとのことである。専門は本居宣長の翻訳ということであった。
日本語コースがあり、日本語を学習している学生は多いが、これは、学生によっては、
日本製アニメやゲームに興味を持っているためとのことであった。
日本への留学希望者もいるとのことから、本学のプログラム等の状況について以下のよ
うに説明を行った。
1
STEPS について
(1)協定校のための特別プログラムである。
(2)授業は午前中日本語(10 コマ)で午後は、各学部等から提供される英語による授
業を履修する。日本語は、学生の日本語のレベルによってクラス分けされる。なお、
日本語能力の高いレベルの学生は、一般の授業を履修できる。
日本語能力は、6ヶ月、1年後にはかな
りのレベルまで上達する。
2
授業料について
協定校からの学生は授業料不徴収である。
3
宿舎について
国際交流会館に入居する。
種々意見交換・情報交換のあと、帰国後、STEPS
の概要及び協定書のサンプルを送付することと
した。
学内風景
13
(所感)
日本語コースがあるということで、当然のことながら、日本への関心が高い学生は多
いようである。前日国際交流担当者とも情報交換していることから、今後は、国際交流
担当及び日本語コース関係者双方との調整をとりながら、本学との交流について検討し
ていくことが必要と思われる。いずれにしても、感触としてはかなり好意的であった。
この日の午後1時から3時まで田隅学長は下記のとおり研究者との意見交換・情報交換
を行った。
Dr. Martin Vala
Professor of Chemistry
Department of Chemistry
Dr. John Eyler
Professor of Chemistry
Department of Chemistry
Dr. Dan Talham
Professor of Chemistry and Chair
Department of Chemistry
15:00- 15:30
Dr. David Richardson
Professor of Chemistry
Department of Chemistry
Interim Associate Dean of Research
College of Liberal Arts and Sciences
Dr. Richardson は化学科教授で、一時的に研究担当副学部長を務めているので、
そちらのオフィスに伺った。研究担当であるが、学部学生の外国派遣にも取り組ん
でおり、既にフランスと南アフリカに学生を送っている。最近アルゼンチンにも送
ることが決まったとのことで、日本も対象にしたいとのことであった。学部学生を
外国に送ることは、NSF の REU(Research Experience for Undergraduates,学部学
生の研究経験)というプロジェクトによってサポートされているとのことである。NSF
(National Science Foundation, 全米科学財団と訳されることが多いが、実質的に政府
機関の一つであり、日本学術振興会に近い性格を持っている)がこのようなプロジェク
トを持っていることは初めて知ったが、おそらく他大学にも適用するものと思われ、本
学との学生交流にも役立つと考えられる。
Dr. Richardson は、学生交流は正式な協定を締結せずとも可能であり、一方的な派遣
14
でも良いとの意見であった。
16:00- 17:30
Physical Chemistry Seminar
「 Molecular Structure of Shirakawa's Polyacetylene
Revisited」
田隅学長による講演会が開催された。
講演では、白川先生が作った高分子はどういう構造だった
のかに言及された。質疑応答による意見交換も行われ、素晴
学内に掲示された講演会ポスター
らしい講演であったと感じられた。
(*高分子は理想的なものと実際のものではかなりの差があることが、最近の高度な計算
によって判明しているようです。)
また、講演の最後に本学の写真を交えながら、埼玉大学の紹介をされたことは、良い宣
伝効果であったと感じられた。
(参加人数約 60 人)
講演会の様子
質疑応答の様子
本学の紹介の様子
15
3
アリゾナ大学(2月7日)
(1)大学の概要
○設立は 1885 年
○アリゾナ州ツーソン。
○キャンパスは3つあり、130 万平方メートル。
○学生数 38,000 人
○世界の中でも評価が高い。(Times Higher
Education によると 2006 年度は 224 位、2007
年度は 134 位)研究大学の一つである。
アリゾナ大学
○18 の学部は 150 のプログラムからなる。また、
12 の大学院は、200 以上のプラグラムからなる。
参考資料:アリゾナ大学ホームページ
ウィキペディア
今回の出張に際しては、アリゾナ大学化学科教授
の Dr. Richard Glass にアレンジをお願いした。国
際交流担当者から学長に至るまで多くの関係者との
面談をアレンジしていただき、非常に有難く感じら
れた。Dr. Glass は中山重蔵本学理事・副学長の古
くからの友人で、2006 年8月に中山先生が大宮ソニ
ックで国際会議を主催されたとき、本学を訪問され
たことがあり、田隅学長とも面識のある方である。
Dr. Glass と田隅学長
訪問当日もホテルに迎えに来ていただき、大学キャ
ンパスまでの道中、年間 220 日晴れの日があるアリゾ
ナの気候等紹介をしながらご案内いただいた。
9:00- 10:00
Dr. Kirk Simmons
Executive Director, International Affairs
Dr. David Wright
Director, Study Abroad and Student Exchange
Mr. Eric Deschamps
Dr. Simmons、Dr. Wright、Mr.Deschamps と
Coordinator, Student Exchange Programs
田隅学長、富田、渡辺
国際交流関係の担当者と朝食を取りながら、交流に向けての意見交換・情報交換を行っ
たが、案内された部屋に既に 40 名ばかりの人が集まって朝食を終えたところのようで、数
16
人の挨拶があった。前もって知らされていなかったので、とまどったが、これは、後述の
「Study Abroad Fair」の関係者の集まりであった。
Mr. Deschamps から、3月に APAIE(アジア太平洋地域の大学国際教育担当者交流会議=
NAFSA のアジア版)が早稲田大学で開催され、Dr. Simmons、Dr. Wright とともに来日する
旨の話があった。
アリゾナ大学には、約 38,000 人の学生がおり、そのうち、3,000 人が留学生である。国
籍では、中国、インド、韓国そして日本となっている。また、アリゾナ大学の学生の 2,000
人が毎年留学をしているとのことである。
日本の姉妹校は、早稲田大学、上智大学、中央大学、関西大学、東京国際大学、甲南大
学、千葉大学等で、約 30 人から 35 人を受け入れている。世界各国からの交換留学生の受
入の合計は約 100 人である。英語のレベルは TOEFL スコアで iBT (Internet Based Testing
120 点満点) で 61 点、PBT(Paper-Based Testing 677 点満点)で 500 点が必要であるとのこ
とであった。
本学からは、留学生の受入状況、STEPS プログラムの概要等の説明を行った。また、STEPS
の要項は後日送付する旨伝えた。
本学の理工系学生の短期(数週間)派遣の可能性について意見交換が行われ、学期の途
中での留学は、サマープログラムと異なり、ビザの問題があるので困難ではないかとの話
があった。なお、サマープログラムは、授業料を徴収しているとのことであった。
学生の交流(student exchange)とは別に、派遣される学生の受入れ(student visits)
については、別の部署で扱っているので、その責任者に連絡して、こちらが会えるよう取
り計らうとのことであったが、これは結局実現しなかった。Student visits は夏学期に行
っており、有料(1単位 700 ドル)。夏学期には exchange はないとのこと。
(所感)
アリゾナ大学でも日本語を学習しているなど日本への関心は高いものと感じられた。
STEPS を利用した交換プログラムの実施の可能性はかなりあるものと思われる。ただ、理
工系学生の短期派遣には種々問題もあり得る。
学内風景
17
10:15- 11:00
Dr. Leslie P. Tolbert
Vice President for Research
Regents Professor, ARL Division of
Neurobiology
Dr. Tolbert から、今度、21 世紀に向けより強
い関係を築くため豊田工業大学を訪問する旨の話
Dr. Tolbert と田隅学長、富田、渡辺
があり、意見・情報交換が展開された。
田隅学長からも、埼玉大学の学生数、アリゾナ
大学との研究者の交流、本学の特に強い分野等、また、理工系学生を派遣したい旨説明し、
学生交流について、意見交換がなされた。また、STEPS を利用した協定校との交換プログ
ラムの概要についても説明を行った。(資料は後日送付することとした。)
Dr. Tolbert から、アリゾナ大学の学生の派遣状況について、夏学期にインターンシッ
プの一環として、Brova(Bio-Research Open Vista Abroad)というプログラムでオーストラ
リア、ドイツ、メキシコなどに派遣していること、また、以前チェコの大学と相互に学生
を交換するプログラムを行っていたが、長続きしなかった旨説明があった。なお、Dr.
Tolbert は神経生物学の研究者である。
Dr. Tolbert に学内を案内されている中、キャンパスにて「Study Abroad Fair」が開催
されていた。埼玉大学もこれに参加すべきであったこと及び Dr. Tolbert も息子さんをオ
ーストラリアへ留学させている旨コメントがあった。また、学内にシアターもある旨案内
があった。
(所感)
田隅学長と、大学の専門分野に関し、積極的に意見交換がなされた。また、学生交流に
ついてもかなり積極的に行っている様子が感じられた。
今後の理工系学生の派遣に繋がればと考える。
Dr. Tolbert と田隅学長、富田
留学フェアの様子
18
11:15- 11:45
Ms. Kris Wong Davis
Senior Assistant Director
Transfer & International Admissions
Office of Admissions
アリゾナ大学創設時に建てられた由緒ある建物の
地階の一室で面談したが、周辺を改装中であった。
Ms. Davis は、交換プログラムを含む留学生受入
Ms. Davis と田隅学長、富田、渡辺
の許可をするか否かを最終的に判断する担当者であ
る。Ms. Davis から必要な書類については下記のとおりである旨説明があった。
(1)申請書
(2)審査料
(3)TOEFL のスコア
田隅学長から、TOEIC でも良いか質問したところ、TOEIC は不可であり、代わるものとし
ては、IELS になる旨説明があった。ただ、本学では、留学を希望するにあたり TOEFL を受
験するよう指導しているので問題ない旨説明した。
受入学生の宿舎については、キャンパス内に施設がある旨説明があった。なお、大学近
郊のアパートに入居した場合には、大学のシャトルバスを利用して通学している旨説明が
あった。
最後に Ms. Davis から、サマープログラムとして、アリゾナ大学には CESL(The Center for
English as a Second Language)(正確には独立の組織)があり、ここで8週間や 16 週間の
英語コースが行われている旨紹介があった。
(所感)
入学許可に関しては、プログラムを担当してしるセクションではなく、別に審査するセ
クションがあることに戸惑いを感じた。
当然のことではあるが、今後学生が留学する際には、留学先の大学が要求する TOEFL の
スコアをクリアしておくことが、審査の上でいかに重要であるか再認識させられた。
12:00- 12:30
Dr. Eniko Enikov
Associate Professor
Department
of
Aerospace
and
Mechanical
Engineering
本学では理工系の学生を海外に派遣したいとの
希望がある旨説明を行ったところ、Dr. Enikov か
ら、現在、豊田工業大学が、アリゾナ大学にて
実施しているプログラムについて紹介をいただ
19
Dr. Glass、Dr. Enikov と田隅学長、富田
いた。本プログラムは、サマープログラムとして実施され、英語研修(3∼4週間)と研
究室での研修(1週間)を組み合わせたものである。実施は7月からで、平成 18 年度は
20 人(12 人が大学院生で8人が学部学生)が参加した。また、研修を実施する研究室は
20 あるとのことである。
なお、サマープログラムのあと、(ダブルディグリィーではないが、)さらに1年間留学
した学生がいたとのことである。この後、豊田工業大学の報告書を見せていただいたとこ
ろ、文部科学省の「私立大学教育研究高度化国際推進特別補助国際プログラム」及び「魅
力ある大学院教育イニシアティブプログラム」(いずれも平成 18 年度)での実施であるこ
とが分かった。このプログラムに対して、豊田工大は学生1人あたり 1,000 ドルを Dr.
Enikov の所属する College of Optical Sciences に支払っており、おそらく同額以上を英
語研修を行う CESL に支払っているものと考えられ、かなり高いものになっている。
このほか、NSF のファンドで、スイス及びハンガリーから学生を受け入れた旨説明があ
った。ただし、どちらもダブルディグリィーではないとのことであった。
(所感)
本学の理工学系学生派遣のために大変有益な情報
であった。
このプログラムを実施するあたり、大学の負担が
どの程度か、また、開講時期はどうか、内容はどう
か等々、検討を要するところである。
なお、Dr. Enikov の説明にダブルディグリィーに
ついての話題があったが、今後の制度設計に参考に
なるものと思われる。
学内風景
13:30-16:30
Dr. Richard Glass
Professor of Chemistry
Department of Chemistry
Dr. Glass と昼食をとりながら種々意見交換を行
った後、アメリカでも珍しい野外博物館である
Desert Museum をご案内いただいた。
短時間ではあったがアリゾナの大自然を満喫する
ことができた。
Desert Museum にて
Dr. Glass と田隅学長
20
17:00-17:45
Dr. Robert Shelton
President of Univ. Arizona
最後に、アリゾナ大学長の Dr. Shelton に
表敬訪問を行った。
Dr. Shelton は、物理学関係の研究者で、
これまでに何度も来日し、仙台(東北大学)、
つくば(筑波大学)、広島(広島大学)、六本
木(東京大学)などを訪問した経験があり、
それらはいつもポジティブでパーフェクトな
Dr. Shelton と田隅学長、富田、渡辺
活動となったとのことである。
また、Dr. Shelton の夫人も4週間アジアンリサーチと称して来日し、日本語、日本文
化を勉強したとのことである。(Dr. Shelton も日本文化を賞賛している)
その後、田隅学長と Dr. Shelton の間で、物理と化学の研究分野について、意見交換が
なされた。
さらに、田隅学長から、埼玉大学の成り立ち、所在地、学部の構成、予算の状況などに
ついて説明がなされた。
次に、Dr. Shelton から、学生交流に関しての話題が展開された。
Dr. Shelton は、(アメリカには誇りを持っているが)アメリカにいるだけでは、学生の
視野が狭くなってしまうので、アリゾナ大学の学生すべてが、夏の時期か1セメスター留
学するべきだと考えている旨話された。また、日本は安全であるし、高等教育機関がしっ
かりしているので、留学するには良いとも言及された。
田隅学長も、日本は島国ということで孤立しているので、学生を3ヶ月∼6ヶ月間米国
のメジャーな大学への留学を経験させたい旨話された。
また、Dr. Shelton からアリゾナ大学は、他の地域と異なり、近くに砂漠やグランドキ
ャニオンがあり、非常に興味深いところであること、及び、地図を指しながらメキシコと
の協力関係等についても説明をさせた。なお、Dr. Shelton も、日本での国際会議の後、
高山を訪問し、良い経験であったと思っている旨話された。
Dr. Shelton が埼玉大学の研究の特色について質問されたので、田隅学長が物性物理学
では高圧下の物性測定で成果を上げていると述べたところ、Dr. Shelton も同様の研究を
したことがあるとのことで、強い関心を示された。
最後に(協定は締結されていないが)、留学する時期はいつが良いかなど日本への学生派
遣に関し、熱心な様子であった。
(所感)
まず、アリゾナ大学長 Dr. Shelton と貴重な意見交換・情報交換をすることができたこ
とに深く感謝したい。特に学生交流に関して、相互にその必要性を確認できたことは、非
常に意義深かったと感じた。
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Dr. Shelton もかなり前向きに考えられていることから、今後、アリゾナ大学の詳細を
検討しながら、学生交流に発展できればと考える。
学内風景
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