活動報告 - JFA Community

2008 ナショナルトレセン U-12 関東より
ⓒ AGC/JFAnews
活動報告
JFA GK プロジェクト
JFA Goalkeeper Project
since 1998
今号では U - 20 日本代表、U -17日本代表、
2008 ナショナルトレセン U -12 などの報告を
お送りします。
U - 20 日本代表
U-20 日本代表
カタール国際 U-20
親善大会
【報告者】慶越雄二(U -20 日本代表 GK コーチ)
1. 概要
2009年1月10日から20日までカタール・ドーハで行われた「カ
タール国際U-20親善大会」に参加した。このチームは2012年のロ
ンドンオリンピックを目指す世代であり、昨年のU -19日本代表の
メンバーを土台に、各クラブから推薦を募って選手を選考した。
A代表の傘下として岡田武史総監督指揮の下、1月6日から2日間
の国内キャンプを行い、その後カタールに入り2日間の調整を行っ
た。A代表の日程と重なるため、国内の2日間は岡田総監督が指揮
し、カタールからは小倉勉監督が指揮を執り優勝を目指して大会に
臨んだ。
大会では準決勝でウズベキスタンに敗れ、3位で大会を終えた。
決勝はシリアがウズベキスタンに1- 0で競り勝ち、優勝した。
2. 招集選手
●大久保択生(横浜 FC )
1989年 9月18日生 190 cm/84kg
●川俣慎一郎(鹿島アントラーズ)
1989年7月23日生 188 cm/86kg
5. 成果
・積極的に切磋琢磨してトレーニング、ゲームに取り組んでくれ
た。
・クロス、ブレイクアウェイと積極的に飛び出し、広範囲に守れ
た。
・攻撃への参加の部分では、スローイングでの配球がスムーズな流
れで進められた。
・予選を突破し、5試合を行えた。また、厳しい闘い中で2人のGK
が経験を積めた。サブGKになっても準備を怠らず、チームを盛
り上げて貢献してくれた。
6. 課題
「得点をさせない」の点で、全試合で失点しまった。DFと連携
して守れていないのが原因で、その一番に挙げられるのが状況把握
である。「いつ・どこを・何を」観て伝えるのか。ロングボール一
発のカウンターで流れを持っていかれたり、逆サイドに大きく展開
されたときに具体的な指示が出せなかったり、その事前の働きかけ
(声かけ)ができておらず、フリーでシュートまで持って行かれて
しまった。
また、ゴール前でボール保持者がどのような状況で攻撃してきて
いるのか、それに対してDFにどのように指示するのか、冷静にそ
3.GKテーマ
①ゴールを守る
②攻撃への参加
4. 大会結果
1月11日 第1戦 vs シリア 0 - 1
GK:大久保
1月13日 第2戦 vs UAE 1 - 1
GK:大久保 得点者:永井
1月15日 第3戦 vs セルビア 3 - 2
GK:大久保 得点者:山村(2点)、當間
1月18日 準決勝 vs ウズベキスタン 2 - 3
GK:大久保 得点者:當間、清武
1月20日 3位決定戦 vs カタール 3 - 1
GK:川俣 得点者:河野、加藤、白谷
20
U-20 日本代表(カタール国際 U-20 親善大会より)
の状況をとらえた中での指示ができれば、DFが安易に飛び込み、
抜かれてシュートされたり、無理やり奪いに行ってファウル、ある
いはGKが遅れて行って相手を引っかけてしまいPKを与えずに済ん
だ。4本のPKを与えてしまったのとFKを与えてしまったところに現
れてしまった。いまだゲームを客観的に観られず、ゲームの流れを
読めずにボールウォッチャーになってしまっている。
配球の面で素早く行うのは良いが、近くにばかり目が行き、そこ
へ安易に出してしまってDFがプレッシャーを受けながらプレーす
る場面が1試合の中でまだ 1、2回ある。また、苦し紛れにロング
ボールを前線に出し、失ってしまって効果的に攻撃がしかけられて
いない。
U -17 日本代表
コパ・チーバス 2009
【報告者】柳楽雅幸(U-17 日本代表 GK コーチ)
2009年、初の海外遠征をメキシコで実施した。同年代(オー
バーエイジを含む)での大会で環境の違い、時差、暑さ対策などを
克服しての闘いであった。
1. 招集 GK
●嘉味田準(ヴィッセル神戸ユース)
1992年 1月17日生 183cm/80kg
●松澤香輝(流通経済大学付属柏高校)
1992年 4月 3日生 182cm/75kg
2. テーマ
①積極的なゴールキーピング
②DFとの連携
③ GKからのビルドアップ、パス&サポート=判断の伴ったプレー
④攻守における強いリーダーシップ
⑤ゲームの中ですべてを出し切る
⑥On the Pitch/Off the Pitch 充実化
3. 試合結果
第1戦 vs U -17ブラジル代表 2 - 2
GK:松澤香輝
第2戦 vs モレリア(メキシコ) 0 - 1
GK:松澤香輝
モレリア戦より
第3戦 vs チーバスUSA 5 - 0
GK:嘉味田準
第4戦 vs トルーカ(メキシコ) 2 - 2
GK:嘉味田準
第5戦 vs サントス(メキシコ) 3 - 0
GK:嘉味田準
トレーニングゲーム
vs サプリサ(コスタリカ) 0 - 2
GK:松澤香輝
vs クリチーバ(ブラジル) 0 - 2
GK:嘉味田準、松澤香輝
4. 成果と課題
メキシコ到着後、午前・午後のトレーニングを行い、すぐにゲー
ムに入っていくため、各選手が良いイメージを持って初戦に入って
いくことが重要であることをミーティングで選手に理解させた。
ゲームの中でのセットプレーをできるだけ早く行うことを意識さ
せ、CKにおいても積極的にショートコーナーをトライさせたが、
ゴール前での効果的な動き出しができなかった。
また、暑さ・芝の深いピッチでのディフェンスラインコントロー
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ルを徹底できない時間帯、甘いアプローチで簡単にシュートをうた
せてしまうケースが見られた。カウンターに対するリスクマネージ
メント意識が低く、簡単にゴール前までボールを運ばれることも
あった。GKからもっとDFへの統率をとる強いリーダーシップが必
要となる場面も見られた。
GKのビルドアップにおいては、DFとの連携がとれない場面も見
られたが、試合を重ねるたびに修正できてきた。
バックパスの処理に対して、やはり状況判断の伴ったプレーが欠
けている。ゴールを守ることを第一に考えてプレーしなければなら
ないのではないだろうか。ボールをつなぐ意識が強すぎるため、状
況をはきちがえてミスを犯す場面(失点)も見られ、状況に応じて
のクリアも選択肢の一つであることを理解させる良い場面でもあっ
た。
GKからのディストリビューションにおいては、高いサイドの起
点になるフィードキックができたことで、得点を生み出すことがで
きた。キックの精度・質の高いフィードができたことは、高く評価
できる。
今後も状況に合ったプレー(判断)が必要とされ、それを発揮で
きるように指導していきたい。また、代表選手としての自覚を持た
せ、オン・ザ・ピッチだけでなく、オフ・ザ・ピッチの充実も図っ
ていきたい。
GKからの攻撃参加を見ると、非常に良い結果が見られた大会で
あった。GKのボールを失わない意識は出てきているものの、それ
が本当に有効な配球かどうかは、もっと突き詰めていかなければな
らないだろう。
2008 ナショナルトレセン U -12
【報告者】須永純(ナショナルトレセンコーチ)
1. 開催地域の日程・場所・GK スタッフ
北海道 10月10日〜13日/札幌サッカーアミューズメントパーク
GKスタッフ:尾形行亮
東北 10月10日〜13日/Jヴィレッジ
GKスタッフ:井上祐
関東 12月25日〜28日/鹿島ハイツ
GKスタッフ:川俣則幸
北信越 10月10日〜13日/富山南総合運動公園
GKスタッフ:前田信弘
東海 10月10日〜13日/つま恋
GKスタッフ:望月数馬
関西 12月25日〜28日/ビックレイク
GKスタッフ:河野和正
中国 12月25日〜28日/ビックアーチ
GKスタッフ:加藤寿一
四国 12月20日〜23日/徳島県鳴門総合運動公園
GKスタッフ:吉田明博
九州 12月25日〜28日/熊本県大津運動公園
GKスタッフ:岩永健
2. トレーニング
・「全員でGK」では、ボールフィーリングだけではなく、もっと
増やしてほしいとの要望があった。今後は、ハンドパスでのポ
セッションを行ったり、シュートトレーニングにもGKとして
入ったりする。
・GKトレーニングでは、導入期における基本技術をメインに行っ
た。地域差があるが、普段からトレーニングされている選手も増
えてきた。トレーニングの進め方としてゴールを守るところから
入り、そのために良い準備があり、技術があるという本質的な部
分を引き出すことが必要である。
また、選手の個のレベルに応じてメニューを加えたり、コーチン
グにより要求をしたりする。例えば、関東ではブレイクアウェイ
の状況下でGKがボール保持者の足元へ積極的に飛び込んだり、
近距離からのシュートに対応したりしていたが、顔面がノーガー
ドになっていた。それをGKトレーニングで修正した。
・メンタル面のケア。失点をした後に落ち込む選手がいるので、次
22
活動
報告
のプレーに積極的にチャレンジできるような働きかけをしてい
く。
3. 選手の傾向とレベル
・地域差はあるが、レベルの高い選手がいた。関東や関西ではサイ
ズと運動能力ともに将来性が期待できる。その他の地域では、
「全員でGK」など全体でGKをやる機会を増やしてタレント発掘
を進める。また、各県トレセンでのセレクションでも運動能力が
高く、サイズのある選手が漏れないようにする。
JFA Goalkeeper Project
JFA GK プロジェクト
5. 今後の展開
今回行った際の反省とスタッフからの要望を反映させる。「全員
でGK」では、合流時間とグルーピングの調整で効率を上げ、全員
にGK経験を増やす。GKトレーニングでは、やるべきことは普遍的
であるが、進め方を工夫しより効果的により深く伝える。
最後になるが、U-12年代での選手発掘を継続していく。各地域で
より将来性のある選手を選出し、続けて次の年代へとつなげてい
く。
4. スタッフワーク
・チームを担当するコーチの働きかけ。GKがボールを保持したと
きに、コーチから味方選手へボールを受ける準備を促すコーチン
グが増えた。このことにより、GKからの配球がしやすくなっ
た。
・GKトレーニングへの参加
地域によっては、GK担当がいた。いない地域でも、アシスタン
トコーチがグローブをつけてGKトレーニングに参加していた。4
種ではGKコーチが少ないのでGK経験がないコーチが積極的に参
加することは自チームでの指導現場でも生かされる。今後も継続
していきたい。
2008 関東地域
各都県 GK プロジェクト 活動報告
【報告者】望月数馬(ナショナルトレセンコーチ関東担当)
関東地域での主な活動としては、年に一度「関東GKキャンプ」
を行っている。2008年度は9月20日、21日に東松山リコー研修所
(埼玉県)で、U-13・14の選手を対象に各都県からそれぞれのカ
テゴリー2名ずつが参加した。GKスタッフも各都県から18名参加
し、1泊2日で行った。
トレーニングは3回あり、「シュートストップ」「ブレイクア
ウェイ」「クロス」をテーマに行い、それぞれのカテゴリーに担当
コーチをつけた。技術トレーニングでは選手2〜3名にスタッフが1
名つくなど、充実したトレーニングができた。短い期間だったが、
非常に内容の濃いものとなった。
以下、各都県のGKプロジェクトについて報告する。
【埼玉県】
2008年度で5年目となるGKトレセン(GK選手のみの活動)は、
現在 4 地区(東部・南部・西部・北部)で活動し、月に1回行って
いる。U -18/15の選手が対象で、スタッフは総勢25名強参加して
いる。各地域で多いときは100名弱の選手が参加している。そのた
め、スタッフの数が足らず、特に3種の指導者が少ないのが課題で
ある。
また、埼玉県独自でGKキャンプも行っており、活気が溢れてい
る県でもある。
ⓒ AGC/JFAnews
2008 ナショナルトレセン U-12 関東より
【茨城県】
2008年度2年目のGKトレセンは、5地区(県東・県南・県西・
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県北・中央)で活動し、年に10回行っている。対象はU-13〜16で
総勢190名が参加している。8月には2回、指導者講習会を行い、
指導者の質の向上にも努めている。
特記すべきは中央地区の活動で、流通経済大学のグラウンドを使
用しているため、現役大学生のGKがアシスタントとして参加して
いる。今後は指導者の数を増やすこと、指導者養成が課題である。
【栃木県】
2008年度で2年目のGKトレセンは1カ所集中開催で年に10回
行っている。対象はU -13〜16で、関東で唯一女子選手が参加して
いる。男子と一緒に同じトレーニングを行い、積極的にプレーしてい
た。スタッフの数も年々増え、約60名の選手が参加している。今後
は指導者講習会なども取り入れて活動していきたいと考えている。
【東京都】
2008年度で3年目のGKトレセンは、1カ所集中開催で年に4回
行っている。対象はU-13〜16で各地区から選ばれた約60名が参加
している。また、7地区ごとにU-12のGKクリニックを行い、普及活
動にも努めている。指導者の数が少ないのが課題で、今後はトレー
ニングの回数も増やす方向で考えている。
【神奈川県】
2008年度で2年目のGKトレセンは、1カ所集中開催で年に7回
行っている。対象はU-13〜15で100名弱が参加し、スタッフも27
名と充実した活動を行っている。トレセンスタッフの指導者講習
会、高体連主催GK講習会派遣などを独自に行っている。月に2回、
各地区でのトレセンにおいてもGKコーチを必ずつけてトレーニン
グを行うなど、積極的に取り組んでいる。
【群馬県】
2008年度で7年目のGKトレセンは、2008年度は2カ所(東・
西)で年5回行っている。対象はU -13・14で約40名の選手が参加
している。2009年度に向けては、回数、指導者の数を増やし、さ
らにカテゴリーを増やしたいと考えている。
【千葉県】
2008年度で11年目のGKトレセンは、1カ所集中開催で年3回
行っている。対象はU -14・15であり、実際に高校生のフィールド
プレーヤーがシュートやゲーム形式に入り、より実践的なトレーニ
ングが行われている。この他にGKコーチ研修会を年4回、各地区
( 8ブロック)で2種・3種・女子を対象にGK講習会、GK派遣講習
24
会(講習会にGK指導者を派遣し選手や指導者に指導する)などを
独自に行っている。
【山梨県】
2008年度で4年目のGKトレセンは、年6回行っている。対象は
U-11〜16で、2カテゴリーごとに日時を分けてトレーニングを行っ
ている(U-12以下は山梨県のみ)。また、ある都市では市でGKト
レセンを行っており、独自にGKの普及・強化にあたっている。そ
の他には、4種・2種の指導者講習会も行っている。
各都県のGKプロジェクトの主な活動としては、GKトレセン、GK
キャンプ、GKスクール、指導者講習会など、独自にさまざまな取
り組みを行っている。2007年度から全都県でGKトレセンが行われ
ている。関東として、今後は指導者の質を向上させるためにも各都
県で指導者講習会を行い、指導者のレベルアップにも努めていきた
いと考えている。
これらの活動は、地域の皆さまの協力があってこそ成り立ってい
るものであり、心より感謝します。
2008 年度公認 GK- B級
コーチ養成講習会
【報告者】川俣則幸(GK プロジェクト)
1. コース概容
2008年度公認ゴールキーパーB級(GK- B級)コーチ養成講習会
が、インターナショナルゴルフリゾート京セラ(鹿児島県)で開催さ
れた。
本講習会の受講資格は、既に公認B級コーチ資格以上取得者で、
日常的にGKの指導にあたっている者、すでにGK- C級を有している
者という条件である。また、個人の指導資質向上を目指し、地域の
GK選手指導および指導者養成に関わるリーダーを目指す者とし
た。今回の受講者は26名であった。
GK- B級コースの指導対象者は、中・高校生である。カリキュラム
は下表のように、GKの指導に必要となる分野の講義として、GK指
導法、GKの一貫性指導。実技では、インストラクターのデモンスト
レーションで、GK- C級の確認、GK- B級のファンクション、ゲーム指導
の後、受講者が指導実践をファンクションとゲームで計 2 回行った。
活動
報告
日程
時間
1月21日
13:00 ∼14:00
コースガイダンス
内容
14:30 ∼17:30
実技(講師デモンストレーション)
19:00 ∼21:00
講義(GK指導法)
21:00 ∼ 指導計画案作成
1月22日
9:00 ∼11:30
指導実践①
14:00 ∼17:30
指導実践①
19:00 ∼21:00
講義(GKの一貫性指導)
1月23日
9:00∼11:30
14:00 ∼17:30
実技(講師デモンストレーション)
19:00 ∼21:00
口頭試験・指導計画案作成
1月24日
9:00∼11:30
指導実践②
14:00 ∼17:30
指導実践②
19:00 ∼21:00
口頭試験
1月25日
8:30 ∼ 9:15
筆記試験
9:30 ∼12:00
指導実践②
12:30 ∼12:45
指導実践①
閉校式
2. コース内容
(1)
講義
・GK指導法 ・GKの一貫性指導
(2)
実技1 ファンクショントレーニング
①シュートストップ
(ディフレクティング)
②シュートストップ
(アングルプレー)
③ブレイクアウェイ
(GK対FW)
④クロス
(2サーバー FW1+GK、FW1対DF1+GK)
⑤パス&サポート
(2対2+GK)
⑥ディストリビューション
(2対2+GK)
JFA Goalkeeper Project
JFA GK プロジェクト
3. 総評
受講者の皆さんは、非常に高い意欲を持って講習会に臨まれた。
普段からGKの指導、トレセン活動など、地域で指導されている方
が多く、指導実践にもリアリティがあった。GK-B級では指導対象
が中・高校生となり、その指導の形態もスモールゲームの中での
GK、ゴールキーピング全般の指導がテーマとなる。日ごろGKコー
チとして数名のGKを専門的に指導されている指導者は少人数のグ
ループでの指導が多いことから、スモールゲーム全体から見たGK
指導やセッション全体をコントロールするという点の難しさを経験
することになったが、それぞれの受講者が新たな課題にチャレンジ
する姿勢が見られた。
現在のトップレベルの試合の中では、GKにも良いフットボー
ラーとしての能力が求められると同時に、指導者にもフットボール
全体の理解とGKのプレーの詳細に対する理解の両方が求められ
る。こうした講習会は資格を取ってしまえば終わりというものでは
なく、資格をとってからこそが本当のスタートであり、コースを離
れれば、われわれインストラクターも受講者も一GKコーチとして
互いに刺激し合う仲間で居続けられたらと思う。
今コースは、非常に良いピッチコンディションで実践を行うこと
ができた。最終日の朝には積雪に見舞われたが、インストラクター
諸氏ならびにホテル従業員総出での除雪作業により、最後まで滞り
なく全日程を終えることができたことに対して誌面を借りて深く感
謝を申し上げたい。
(3)
実技2 ゲーム
①シュートストップ
(4対4+GK)
②ブレイクアウェイ
(4対4+GK)
③クロス
(2対2+GK+2対2+GK+2サーバー)
④パス&サポート
(4対4+GK)
⑤ディストリビューション
(4対4+GK)
(4)
試験
●口頭試験:GK-C級の内容
●筆記試験:GK指導法、GKの一貫性指導(45分)
●実技試験:ファンクショントレーニング(15分1回)、
ゲームフリーズ(15分1回)
25
JFA
アカデミー
福島
男子 【報告者】須永純(JFA アカデミー福島男子 GK コーチ)
指導者講習会「JFA アカデミー リフレッシュコース 」
期間・場所:2008年 11月 27日〜 29日 広野町サッカー場(JFA
● U-15:GKとボールの関係(基本技術連続動作、スピード反応反
アカデミー福島トレーニング場)
射)
、個人・グループ戦術
内容:
「J FA アカデミー GKトレーニングの 1 週間のサイクル」に
● U-16・18:GKとボールの関係(複合 TR)
、グループ・チーム戦術
ついて。
週の中でトレーニングを構成する。
40
J FA アカデミーでは世界に通用する選手の育成を目指して、日々
例えば、U -14 のカテゴリーで週に 3 35
トレーニングをしている。GKトレーニングの大きな考え方として
回トレーニングするときに、1 回目か 30
25
は、サッカー選手としてのスキルに GK としての専門的な能力を積
ら3回目で負荷と難易度を変える。
コー 20
み上げ、良い GK になるための土台を築くことである。そのために、 ディネーションと基本技術も変える 15
10
5
段階的な指導を行っている。
(右図参照)
。
0
2回目
3回目
1回目
GK トレーニングについては、3 つの局面に分けて考えている。
テクニック面では、1 回目は基本技
■ コーディネーション
① GK だけでのトレーニング(専門トレーニング)
、②チームに合
術をより正確に行う。2 〜 3 回目では
■ 基本技術
流してのトレーニング、③ゲーム(スモールゲーム含む)
。今回は
より実践的に行う。
①「GK だけでのトレーニング」の 1 週間のサイクルについて説明
[例 1 回目のトレーニングで投げたボールでキャッチング ⇒ 3 回
する。
目のトレーニングでは、蹴ったボールでキャッチング]
現在、JFA アカデミーの GK は 8 名在籍しており、男子は 3 カテ
また、フィジカル面では 2 回目のトレーニングの負荷をやや高め
ゴリーで 5 名(U -13・2 名/ U -14・2 名/ U -15・1 名)
、女子は
に設定し、コーディネーションの時間も 1・3 回目より長くする。
3 カテゴリーで 3 名(U -13・1 名/ U -16・1 名/ U -18・1 名)で
そして、基本技術の中でも 1 回目のトレーニングではオン・バラン
ある。カテゴリーによって 1 週間における GK トレーニングの回数
ス(静的な状態)でのプレー。2 回目のトレーニングではオフ・バ
は異なるが、トレーニング全体の中での GK だけでのトレーニング
ランス(動的:左右・前後・斜め「前後」
)のプレーや連続的な動
の割合は、U-13 で 30%、U-14 以降では 35 〜 40%である。
作を行う。3 回目のトレーニングでは、オフ・バランス+スピード
トレーニングの内容については、以下のことを重点的に行ってい
反応反射。
る。
[例 1 回目では、投げたボールでダイビング ⇒ 2 回目で同方向へ
● U-13:GK とボールの関係(基本技術)
、個人戦術
連続ダイビング ⇒ 3回目では、反転からダイビング]
● U-14:GK とボールの関係(基本技術連続動作、スピード反応反
このように、週の中でトレーニングを発展させていくことで週の
射)
、個人・グループ戦術
サイクルでも段階的な指導を行い、GK をより高いレベルへと引き
上げていく。また、GK だけでのトレーニングを行っていない日は、
GKトレーニング1週間のサイクル
パス&コントロールやボールポゼッション等、チームでフィールド
月
火
水
木
金
土
日
プレーヤーと同様のことを行う。シュートトレーニングやゲームで
30∼45分 30∼45分 30∼45分 30∼45分
ゲーム
U-13
オフ
は GK としてプレーしている。
(男子) (女子) (男子) (女子)
45∼60分
45∼60分
45∼60分
GK だけでのトレーニングは重要である。ただし、あくまでもメ
オフ
ゲーム
U-14
スピード反応反射
基本技術 連続動作
インはチームトレーニングである。したがって、チームに合流した
45∼60分 45∼60分
45∼60分
オフ
ゲーム
U-15
スピード反応反射
基本技術 連続動作
後も GK がいかにプレーしているかを観察し、その中でもプレーを
45∼60分 45∼60分 45∼60分 45∼60分
U-16
オフ
ゲーム
修正する。そして、ゲームの中でトレーニングしたことを発揮でき
U-18
基本技術 連続動作 複合トレーニング スピード反応反射
■U-13は週2回、U-14・15は週3回、U-16・18は週3∼4回
るようにしていくことが重要である。
女子 【報告者】今泉守正(JFA アカデミー福島女子ヘッドコーチ)
“ ある日突然できるようになる?!”
JFA アカデミー福島がスタートして、早 3 年が経過しようとして
いる。クロード・デュソー氏のトレーニングを女子選手も、週 1 回
実施してきた。日々向上していくために必要なこととして、
デュソー
26
氏からは、常に動くこと、周りの状況を観てポジションをとること、
広がりを持つこと、そして声だけでなくポジション・動き出し・コ
ントロール・パスを出す方向でもコミュニケーションをとることな
どが休むことなく要求された。
有の成長がスタートするということである。
そして、トレーニングの中には、シェフとしての味付けとして、
フィジカルフィットネストレーニングは、週間スケジュールの中
常に選択肢を持ったオーガナイズがされている。それは、
「サッカー
のゲームとは」というものが常にベースにあり、試合の中で何が起
こっても対応できるように、日々トレーニングしていくことである。
そのためには、常に観て、考えて、判断して、プレーしていくこと
であり、しかも、それを常に動きながら行うことをオーガナイズし
ている。
アカデミー生にイニシアチブを持たせながら、考えて賢くプレー
することを要求していく。そして、ゲームのときには、獲得したテ
クニックをゲームのどの場面で、どのように発揮していくのか。す
なわち、テクニックをいつ、どのようにゲームの中で使うのかをしっ
かりとコーチングしていくのである。
ゲームの中でよく言われたことは、
「組み立てを行いなさい」と
いうことである。例えば、
6 対 6 + GK のゲームを行う。アカデミー
生の多くは、ボールを受けに引いてくるか、背後でボールを受けよ
うとして、張り出していく。この状況を思い浮かべていただきたい。
受けに来る 3 人が横一線になる。裏で受けようとする 3 人が横一線
になる。裏で受けようとして背後のスピードアップするスペースが
なくなってしまう。このように、バランス良くポジションをとって
いないために、組み立てがなくなってしまう。
また、こんな状況も多く見られる。ボールを受けると、やみくも
にドリブルでゴールに向かってしまい、ボールを失ってしまう。ま
るで 1 対 6 でサッカーをやっているように。ドリブルでしかけてい
くことは大切なのだが、ドリブルしか選択肢がないのである。これ
は、サッカーではない。ドリブルは、守備者を突破して、ゴールす
るためのものであり、そこには味方プレーヤーへのパスの選択肢や
シュートの選択肢なども加わってくるのである。こうした、組織的
な関わりをしていくことによって、フットボールになっていくので
ある。
トレーニングのたびに、ディスカッションのたびに、私はデュソー
氏に尋ねた。
「今日もできませんでした。どのように伝えたら理解
できるでしょうか?いつできるようになるのでしょうか?」
。デュ
ソー氏は一言「ある日突然できるようになるよ」
。そして「あなた
が我慢という言葉と忍耐と言葉をこころに刻み込んで、繰り返し、
繰り返し、エクササイズを行い、要求していくことをやり続ければ」
。
でウォーミングアップとして行う、または、トレーニング後に行う
ものがある。食事を取るのと同じように続けてきた。目に見えて、
何かが変わってくるという実感はない。地道に正確に繰り返してい
くのである。
これまでフィジカルフィットネストレーニングにも取り組んでき
た。その内容は、
JFA フィジカルフィットネスプロジェクトメンバー
の広瀬統一コーチとアスレチックトレーナーの中堀千香子さんが、
アカデミー生の現状をチェックしながらメニューを構築していく。
基本的な考え方は、身体の軸づくり、コア・トレーニングである。
特にサッカーの動きは、片脚で自体重を支えることが多いので、女
子選手にはコア・トレーニングは欠かせない。項目としては、全身
コーディネーション、バランス、アジリティーからスタートし、各
Age グループによって取り組む内容がある。
中学 1 年は、体幹が主になっている。自分の身体をしっかりと支
えることができることがメインである。中学 2・3 年は、体幹プラ
スバランス系の内容が入る。これは、姿勢維持能力をさらに伸ばし
ていくものになる。
高校 1 〜 3 年は、ストレングスメニューが入る。体幹・上半身・
下半身の軸づくりを、自体重を利用してのトレーニングがメインで
ある。高校 2・3 年はさらに、パワー・スピード系を取り入れている。
アカデミーでフィジカルフィットネストレーニングを取り入れて
いるのは、以下の 2 点からである。ひとつは、女子選手は男子選手
に比べて、発育発達が早いこと。2 つ目は、第 2 次性徴から女性特
1 期生については 3 年が経過した。ゲームの様相が少しずつ変わっ
てきた。すなわち、組み立てができるようになってきた。選択肢を
持ちながらプレーすることができるようになってきた。というのは、
周りを観ることができるようになり、情報を収集し、組織的に関わ
ることが出現し始めたのである。これはまさに、
「ある日突然でき
るようになった」ということ。それは、赤ちゃんが寝がえりを打つ
ように。ハイハイをするように。つかまり立ちをするように。そして、
一歩足を前に出して歩き始めるように。まだまだ、赤ちゃんのよう
に歩んでは転び、転んでは歩むように、できるときとできないとき
がある。粘り強く我慢と忍耐をこころに刻み込んで、私たちコーチ
が関わっていくことの大切さを学んだ。
先日、アカデミー生が補助をした大会の終了後、以下のようなコ
メントを書いていた(コンディショニングチェックシートに記載さ
れていたもの)
。
●試合中、ミスジャッジをしてしまい、クレームを浴びると動揺して
しまった。しかし、このような経験をすることによって審判の大変
さとフェアプレーについて深く考えることができた。
●ここは、自分の原点だなとすごく感じた。それと、今回は、指導者
にすごく目がいって、いろいろな人を観てたけど、本当にいろいろ
な人がいるんだと感じた。この年代ってどこまでを求めていいのか
気になって話を聞いたりした。中には、ものすごく怒鳴っている人
もいて、
選手は、
つまらなそうな顔をしていたチームもあった。ちょっ
と頭にきた。とにかくサッカーを楽しんでほしい。
●○○チームは一人ひとりがみんな上手だった。指導者がガミガミ言
わない人で褒めることばかりしていたので、みんなのびのびとプレー
しているように見えた。
●小学生は、ボールが来たら前に蹴っていて、もったいなかった。
●チームによってやらされているサッカー、自分からするサッカーの
違いが出ていた。指導者の方が怒鳴るだけでなくネガティブな発言
をしていて子どもがかわいそうだった。大人が子どもの未来をつく
るのに、それを壊している人がいる。とても残念でした。
私は、子どもたちの視点の鋭さに、しばし固まってしまった。同
時に、深く考えさせられた。これは、この大会がどうというよりも
日本全体のことである。本音で書いてくれた子どもたちに感謝する
とともに、自分への戒めとして深くこころに刻み込んだ。
27
2008 年度
JFA エリートプログラム U-13
第3回キャンプ報告
【報告者】足達勇輔(エリートプログラム U -13 監督/ナショナルトレセンコーチ)
1. 概要
期間:2008 年 12 月 27 日〜 30 日
場所:ヤマハリゾートつま恋(静岡県)
2008 年度のエリートプログラム U-13 のキャンプを、ジュビロ
カップ 2008(2008 年 12 月 28 日〜 30 日)への参加で締めくく
りました。本年度行った 2 回のキャンプ(第 1 回:2008 年 7 月
2 日〜 6 日、第 2 回:2008 年 11月 29 日〜 12 月 3 日)で取り組
んできたことを確認する意味で試合を中心に行いました。
キャンプは、ジュビロカップ前日の 12 月 27 日に集合し、30 日
まで 3 泊 4 日の日程で行いました。ジュビロカップは U-14 が対
象で、ほとんどの J クラブの下部組織が参加しているすばらしい大
会です。半年前の第 1 回キャンプのときには、集合時に不安そう
な表情で保護者と一緒に登場した “小学校 7 年生” の選手たちも、
今回のキャンプでは、各自堂々とした表情で掛川駅に集合し、保護
者の援助を最小限に、自力で全国から集合できるまでにたくましく
なりました。この表情を見ているだけでもこの年代の選手たちの吸
収力の高さ、成長の早さを強く感じました。
最終日の解散後には、新幹線の事故で一時不通になった際にも各
自の判断で電車を乗り継ぎ、無事自宅までたくましく帰り着いたさ
まを見ると、
本当にこの一年の著しい成長を身に染みて感じました。
キャンプは、前日のトレーニングを含め、試合の間にも 1 回の
トレーニングを挟んで、1 日 2 〜 3 試合(試合時間 20 分〜 25 分)
をこなしていきました。得意なプレーを伸ばすと同時に、苦手なプ
レーの克服にも取り組むために、試合では積極的にいろいろなポジ
ションにトライしていきました。一つ上の年代の J クラブのチーム
と対戦したため、試合結果は納得のいくものではありませんでした
が、内容面では質の高いゲームができ、活動の成果を十分に確認で
きました。
2. テーマ
<質の高い選択肢を創る・相手の選択肢を奪う>
●『 常に関わる!』
● 動きながらのスキルの徹底
●ポゼッション(Gap の意識向上)
●ボールを奪いに行く意識
●自己分析(自分を知る)
3. 成果
2 回のキャンプでも掲げたテーマに関しては、選手の成長を感じ
ることができました。特にボールを奪いに行く積極性、攻守の切り
替えの速さ、Gap(ギャップ)を意識した立ち位置、視野の確保、
判断には目を見張るものがありました。
トレーニングは、大会期間中のため、試合後の限られた時間とス
ペースで行っただけでしたが、その中での選手の集中力、吸収力、
理解力には驚かされました。
オフ・ザ・ピッチの大きな取り組みのひとつとして、食事の質と
量をきちんととることに働きかけた結果、1 回目のキャンプでは食
べるのに悪戦苦闘していた選手たちが、今回は食事を楽しみながら
とっていました。
また、選手が自己分析して表現することを養うために、コミュニ
ケーションスキル、グループワーク、トレーニングでの発問やミー
ティングを行ってきました。その成果として、選手の反応が良くな
り、発言も論理的なものとなってきました。個人面談を行った際に
も、自己評価をしっかりして、論理立てて自分の得たもの、課題を
話せている選手が多くいた点もうれしいことでした。
キャンプ終了後に提出された選手の感想文には、再びエリートプ
ログラムの活動に参加したいといった思いや、多くの仲間ができた
喜び、そして何よりもレベルの高いグループの活動を通して自分の
新たな課題を見つけられたことが述べられていました。それが、プ
ログラムの大きな狙いであり、われわれスタッフにとっても一番の
大きな喜びでした。
4. 課題
課題が多く見つかったことも事実です。一つは、目指すゴールに
向けて、怖さのあるプレー、もう一つは、良い習慣を身体にしみ込
ませることです。当たり前のプレーが無意識にできるようになるま
でには、もう少し時間が必要であると感じました。これは、当然年
間 2 回のキャンプで克服するのは無理な課題で、選手一人ひとり
が日常のトレーニングの中で獲得していかなければいけないこと
だと思います。
28
2009 年度に向けて彼らの一番大きな課題は『良い習慣』をどれ
だけ無意識に表現できるかだと思います。このためにもベースにな
る基本の「徹底した反復」が次への大きなハードルになることと思
います。この『良い習慣』の徹底がなされていない選手は、特徴だ
けでは生きていけない現代サッカーにおいては、伸び悩んでいる選
手がいることもこの一年のエリートプログラムの活動から強く感
じました。逆に言えば、
『良い習慣』が徹底された選手が来年度の
エリートプログラムへ新たに多く選ばれてくることも期待してい
ます。
最後になりましたが、一年間、エリートプログラム U-13 にご協
力いただいた方々に誌面を借りてお礼申し上げます。また、来年度
の活動にはさらに多くの方が、発信としてのエリートプログラムを
視察に来ていただけることを期待しています。
ゴールキーパー報告
【報告者】望月数馬(JFA エリートプログラム U-13 GK コーチ、ナショナルトレセンコーチ)
1. 参加選手
●吉野雅大(浦和レッズジュニアユース)
1995 年 4 月 18 日生 175cm / 65kg
●水洞翔太 (名東クラブ)
1995 年 5 月 25 日生 176cm / 60kg
2.GK テーマ
●積極的なゴールキーピング
●良い準備(ポジショニング、観る)
● DF とのコミュニケーション&コンビネーション
●効果的な攻撃への参加
(パス&サポート、ディストリビューション)
3. 試合結果
※対戦相手はすべて U-14 のカテゴリー
vs FC 東京深川 0-3
45 分 GK:吉野雅大
vs 鹿島アントラーズ 0-0
45 分 GK:吉野雅大
vs ヴァンフォーレ甲府 1-1
35 分 GK:吉野雅大
vs ジュビロ浜松 1-0
35 分 GK:吉野雅大
vs ザスパ草津 6-1
30 分 GK:水洞翔太
vs 清水エスパルス 0-2
30 分 GK:吉野雅大
vs ガンバ大阪 0-2
45 分 GK:水洞翔太
vs 静岡県クラブ選抜 1-3
35 分 GK:水洞翔太
vs 川崎フロンターレ 0-1
35 分 GK:水洞翔太
vs ヴィッセル神戸 0-1
30 分 GK:吉野雅大
vs ジュビロ沼津 0-2
30 分 GK:水洞翔太
撃への参加に重点を置きました。ポジショニングについては、
シュー
トストップの状況下では、ポジションが高く、ロビングシュートを決
められるなど、攻撃から守備に切り替わった後の素早いポジション
修正に課題が残りました。しかし、適切なポジショニングから技術
発揮ができているときには、何度か決定的なシュートを防ぐなど良
い場面もありました。ブレイクアウェイ・クロスにおいては、ボール
を奪う意識は高かったのですが、判断を迷ってプレーしているため、
決断の声が遅かったり、なかったりと、DF とのコミュニケーション
がとれていないことが多々ありました。
「観ること」においては、最初はボールを追うことが多く、その
ため具体的な指示に欠けていましたが、ゲームを重ねるうちに改善
されていきました。いつ・どこを・どのタイミングで観るのか、観て
状況を把握してどのような指示を出すのかが頭で理解されてきまし
た。しかしながらまだ習慣化までとは至っていないのが現状でした。
攻撃への参加については、ボールを失わないために GK も含めた
中でビルドアップに参加する意識はありましたが、パスを受ける前
に周りの状況を観ていないため、選択肢が少なく、効果的にパスを
出すことができていませんでした。しかし、試合を重ね、観ること
ができるようになると、ボールを受ける前にコーチングで味方を動
かしてパスの選択肢を増やし、効果的な攻撃への参加ができるよう
になりました。現状としては、近い場所しか観えていないため、今
後は攻撃の優先順位を考えた上で、観る範囲の拡大とパス・キック
の精度を向上させることが必要でしょう。
まだまだ試合の中で的確な技術発揮ができていないのが現状で
あり、良い準備の習慣化が最大の課題であると感じました。
4. 総括
大会前日に集合し、トレーニングを行いジュビロカップに参加し
ました。今回参加した GK は 2 名とも初めてのエリートプログラム
だったため、GK トレーニングについては、基本技術(基本姿勢、
キャッチング、ローリングダウン、ダイビングなど)の確認と、シュー
トストップ、ブレイクアウェイ、クロスの状況下でのポジショニング
を意識させて行いました。
試合では、良い準備(ポジショニング・観ること)と効果的な攻
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2008 ナショナルトレセン U-12
【報告者】中山雅雄 (ナショナルトレセンコーチ/ナショナルトレセン U-12 ワーキンググループチーフ)
2008 年度のナショナルトレセン U-12 は、12 月に関東、関西、
中国、四国、九州の 5 地域で開催され、9 地域すべてで実施された
ことになります。既に 10 月に開催された北海道、東北、北信越、
東海地域での報告を受け(本誌 vol.28)
、それぞれの地域で十分に
準備をし、充実したナショナルトレセンになったと思います。
2008年度ナショナルトレセン
U-12のテーマや指導の留意点
(1)サッカーをしよう
ゲームの中で何ができるのかが重要です。この年代ではたくさん
のゲームを経験することが大切です。
(2)プレーに関わり、多くの選択肢を持とう
ボールに関わる技術を高めることはこの年代では当然重要なこと
です。同時にこの年代ではボールを持たないときのプレーについて
も学ぶ必要があります。その中で、常に選手は選択肢を複数持ちな
がらプレーすることが求められます。
(3)基本の徹底
サッカーの基本は「テクニック」
「判断」
「コミュニケーション」
「フィットネス」
、これらの要素すべてを高めることが必要です。特
にこの年代は「テクニック」に重点を置きながら多くの反復によっ
て基本を徹底的に高めていくことが大切です。
(4)ゴール前の攻防
これは日本サッカーの課題です。この質を高めることに重点を置
いてトレーニングをしていくことが大切です。
と、思ったこと、教わったことを、日々のトレーニングの中でどう
生かしていくかが重要です。もちろん今回参加した選手たちは、そ
れぞれ一生懸命にトレーニングを続けてくれると期待しています。
同時に、その選手たちを指導する指導者の方々のさらなる適切な働
きかけが重要であると思います。また、今回参加していない多くの
選手たちにも同じような働きかけが全国で行われるようになってい
くことが理想であると思います。ナショナルトレセンの実施と同時に
指導者講習会も実施されています。また、リフレッシュ研修などで
も、ナショナルトレセンに関わる報告等が多くなされています。U-12
年代はまだまだ多くの選手たちに将来のトップ選手の可能性が残さ
れています。その可能性を大きくしていくのは選手個人の努力は当
然ですが、指導者の役割も小さくはないと思います。U-12 年代の
サッカー環境の充実をみんなの力で成し遂げていきましょう。
2009年度に向けて
ナショナルトレセン U-12 は地域開催がすっかり定着しました。
運営はもちろん、指導においても地域のトレセンコーチの方々の真
摯な努力によって相当高くなってきています。その結果、ますます
U-12 年代では多くの可能性を秘めた選手が多くなってきていると
思われます。そのような選手へ、より質の高いサッカー環境をでき
るだけ多く与えることができるようにとナショナルトレセンの複数
回開催が検討されています。また、全体の底上げがなされてきてい
る中で、さらにトップトップの選手への働きかけの必要性が出てき
ています。
この年代で押さえるべきポイントについてはこれまでと大きく変
わることはないと思いますが、もっともっと質を高める必要はあり
ます。特に技術の質に一切の妥協はありません。
(5)素の部分を満たす(認めてあげる、違うことも教える)
子どもの感性を大切にしながら指導することが大切です。そして
まずやらせてみる、その中から、正しくないプレーはしっかりと教
えていかなければなりません。しかし、指導者のイメージが先行する
ことなく、選手の可能性を引き出す指導をしていく必要があります。
トレセン後を大切に
このようなコンセプト、指導上の留意点を各コーチが十分に理解
してトレーニングを進めていきました。すぐに成果が見られるよう
な事柄も多くありますが、4日間だけのトレーニングですべてが完
結するものではないことは明らかです。ここでの経験や、感じたこ
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メキシコの育成・指導者養成事情
【報告者】布啓一郎(JFA 技術委員会副委員長、JFA ユースダイレクター)
1. メキシコ協会のコーチ養成
(2年間4 学期制のコーチ養成コース)
指導者養成コースを受講するには高校卒業の資格と入学試験(理
論、実践、面接)を行い、1 コース 40 人で開講している。メキシ
コ全土で 20 か所のコーチ養成コースを開講しており、毎年 800
人が入校してくる(授業料は 1カ月 100US ドル)
。カリキュラム
は各学期 4 つに分かれており、毎週 2 日 15 時から 6 時間の講習を
繰り返していく。それ以外の時間は仕事をしている。指導者養成を
統括しているメキシコシティーの指導者コースには毎年 60 人から
70 人が希望してきて、その中から 40 人が選考される。宿泊施設は
なく、自宅から講習会のある日の 15 時までに各自が集まってくる。
各学期に次の学期に進めるかどうかの査定があり、2年間を卒業す
るのは 60%くらいとのことであった。
指導者養成コースの他にフィジカルコーチ養成コース( 2 年間)
、
審判養成コース( 1 年間 )が併設されている。審判コースは身長と
年齢の制限がある。早朝 6 時から講習を開始して 2 時間の講習終了
後に各自が仕事に向かう。
カリキュラムの分類は以下の通りである。
・実技、指導実践
・トレーニング論
・心理学
・スポーツ医学
① 1 学期(低年齢の指導)
② 2 学期(戦術)
③ 3 学期(システム)
④ 4 学期(実践)
ペドロッサ氏から話を聴いた。
プーマスは育成専用のトレーニング場をカンテーラ(泉という意
味)と呼び、天然芝フルコート 2 面、天然芝の小コート 1 面の他、
クレーのコート 1 面があった。クレーコートは低年齢でテクニック
を重視するために、意図的に硬く締まったコートにしてパススピー
ドの速い中で正確なプレーを求めていた。その他サーキットトレー
ニング場、ウエイトトレーニング場 2 カ所、サンドコートなど充実
した施設を有し、クラブハウスにはスポーツ心理学者も常駐してい
る。そしてカンテーラの中央にはプーマスの育成の創設者の銅像が
あり、育成をリスペクトするチームの姿勢が感じられた。
もう一つはグアダラハラのチーバスであり、こちらも育成部長の
ホセ・ルイス・レアル氏の講義を日本の指導者研修の方々と聴いた。
チーバスはプロの施設と育成の施設が同じ敷地にあり、育成で天然
芝フルコート 6 面を有している。敷地内にはウエイトトレーニング
場や選手の寮も備えている。またピッチに隣接してチーバスで経営
している学校がある。その学校はチーバスの選手の午前中のトレー
ニングに合わせて始業時間が 10 時であり、選手は午前中のトレー
ニングを終え、学校に通うことができるシステムであった。
両クラブとも育成で毎年 4 〜 5 億円ほど(貨幣価値を考えると
それ以上 )の資金を投入しており、クラブのヴィジョンに育成の重
要性を掲げていることがうかがえた。その成果からチーバスのトッ
ププロは約 7 割がチーバスの育成部門の出身であり、育成に資金を
投じることがプロクラブに還元されることを証明している。両クラ
ブともにサッカーの指導はもちろん、人間教育を重要視しており、
若い選手を人間性とサッカー面の両面で育てている。また、コーチ
の資質向上のために育成部長がコーチを評価するシートがあり、1
年に 2 回、評価表を基に育成部長と各コーチでディスカッションを
行い、コンセプトの確認や指導方法に関してのアドバイスや共通理
解をとっているとのことであった。
以上、2 つのクラブを訪問して感じたのは、メキシコが想像以上
に選手育成に対してまじめに取り組み、科学的であり人間性を重視
した教育をしていると思えた。既に南米(中南米)の国は、
ストリー
トサッカーから選手が自然に出てきた時期から、計画的に選手を生
み出す方向にチェンジしてきているのがうかがえる。サッカーが最
もポピュラーなスポーツであり、サッカー文化として定着している
国がさらに進歩しようと努力していると感じ、日本に置き換えたと
きに危機感を感じた今回の訪問であった。
プロの監督を行うためには、すべての学期をクリアしなければな
らない。プロチームのアシスタントコーチは 3 学期までの修了が条
件となる。しかし 4 学期を連続して受講しなくてもよく、各学期修
了後 4 年間は次の学期に進む権利を有している。
また 1 学期を修了した受講生は、低年齢指導のインストラクター
となることができる。メキシコでも低年齢の指導の重要性を認識し
ているが、ジュニア年代の指導者のすべてがコーチライセンスを有
してないのが現状であり、ここの改善をしたいとのことであった。
2. メキシコのプロクラブの選手育成
今回 2 つのプロクラブを訪問した。1 つはメキシコシティーを本
拠地にしているプーマスで、施設見学をし、育成部長のマウリシオ・
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海外指導者研修会報告
コパ・チーバス 2009
【報告者】吉田靖(ナショナルトレセンコーチ)
1. 概要
期間:1 月 23 日〜 29 日
場所:メキシコ・グアダラハラ
参加人数:12 名
2. 研修内容
①コパ・チーバス 2009 のゲーム視察(U-17 日本代表戦含む)お
よびゲーム分析
②チーバスの育成について
講義、実技、ゲーム視察
ムのゲームコンセプト、現在のチームの課題等の話を、直接参加
者にしていただいた。
その中でこの年代の選手育成の難しさの話があり、池内監督は、
育成年代は将来が大切であり、我慢し(この年代で完成された選
手はいない)長い目で見る指導の大切さを強調。各参加者とも共
感していた。
③メキシコ以外からもレアルマドリード、リバープレート等、世界
の強豪チームのユースチーム(U-18)が参加し、激闘を繰り広げ
ていた。
特にどの対戦も激しいフィジカルコンタクト、ボールの奪い合
いがあり、フィジカルコンタクトの激しさに、参加者は日本国内
とのゲームの違いを実感していた。
(2)チーバスの育成について
メキシコリーグの中でも選手育成について定評のあるチーバスの
(1)U -17 日本代表のゲーム視察およびゲーム分析
育成方法について学ぶため、育成責任者のホセ・ルイス・レアル氏
①コパ・チーバスに参加した U-17 日本代表の試合を 4 試合視察し、 に講義をしていただいた。
その中で 2 試合(U-17 ブラジル代表戦、チーバス USA 戦)を
また、チーバスの現場のコーチに、実際に行われているトレーニ
参加者に分析してもらった。
ングメニューを各参加者に体験(実技)してもらった。
参加者は外国とのゲームを通して、日本の良いところ、改善点
さらに、
トップチーム、
ユース(U-18)のゲームを見てもらい、
チー
を抽出し、日本の持ち味を生かしながら、課題を修正するにはど
バスの育成についての理解を深めてもらった。
うしたら良いかディスカッションした。
ゲーム分析については、コーチとして攻撃、守備、攻守の切り
① 講義
替えの項目別にそれぞれ分析すること、選手を改善、成長させる
チーバスはメキシコ人のみでチームを構成するため、低年齢から
ためには、現象ではなくその原因をしっかり把握することが大切
の選手育成を重要視している。
であることを説明した。
U-9 から計画的にトップにつながる選手育成を開始する(各年代
参加者の発表では、ビデオを編集してプレゼンテーションする
のチームは表 1 の通り)
。その特徴は、
指導者もおり、非常に熱心に取り組んでいた。
・攻撃選手をスカウトし、攻撃的な試合を行うこと。
・テクニックを重視し、どの年齢でもコーディネーション、パス&
②大会期間中にもかかわらず、U-17 日本代表の池内監督に代表チー
コントロール(ドリル)
、ポゼッションのトレーニングを繰り返し
3. 研修会内容
32
実施し、その獲得に努める。
・国際大会に参加することを重視し、各年代で 1 年に最低 1 回は国
際大会に参加すること等である。
またチーバスの考えはメキシコ代表の考えと同じベクトルの延長
線上にあり、体の小さいメキシコ人が世界の大柄の選手と戦うため
にはテクニックを重視し、低年齢から「つなぐサッカー」を追求し、
その質を上げることを心がけているという話は、日本の指導者に
とって、日本のサッカーを構築する上で非常に参考になったのでは
ないか。
② 実技
チーバスのプロ予備軍のチームのコーチに通常行っているトレー
ニングをもとに実技指導をしていただいた。
各種コーディネーション(チーバスではウォーミングアップに必
ず導入)
、パス&コントロール、ドリブル等のドリルトレーニング、
ポゼッショントレーニングを参加者はコーチの指導のもとでプレー
ヤーとしてトレーニングした。
プロチームを含めてどの年代でもこのようなテクニック、ポゼッ
ション等のパスをつなぐサッカーの基本となる部分を強化している
とのこと。このようなトレーニングはマニュアル化し、各年代同一
のものを使用しているとのこと(ただし、年齢により強度、時間等
の違いはあるが、数多くのメニューの中から、担当のコーチがチー
ムの課題に応じてそれぞれ選択する)
。
③ 視察
実際にメキシコリーグのチーバスの公式戦と、コパ・チーバスの
中でチーバス U-18 の試合を視察し、講義、実技と併せてチーバス
のサッカー、育成方法についての理解を深めてもらった。
3. まとめ
参加者は世界の強豪チームのユース(U-18)と U-17 日本代表の
試合を通して、現在の世界の中での日本の現状を、ある程度把握で
きたのではないか。これからの日本のサッカーを考える一助にして
いただきたい。
また、日本人と体格が似ているメキシコのサッカーを学ぶことは、
日本のこれからのサッカーの方向性を考える上で参考になるのでは
ないか。
メキシコは世界の中でも強豪国の 1 つであるが、そのメキシコが
アルゼンチン、ブラジル等のトップトップクラスの国を意識して危
機感を持ちながら、いろいろな施策で強化を図っている。特に、若
手育成には非常に熱心である。例えば、メキシコプレミア(トップ)
リーグでは 19 歳以下の選手を必ず 1 人、試合で使わなくてはいけ
ないルールがある。また、
「プロジェクト 55」というルールがあり、
各クラブで必ず 11 人の各ポジションごとに、5 人ずつ順番をつけ
て選手を保持していなくてはならない(育成とトップのつながりを
大切にするため)
。
日本も育成からトップにつながるところで、若手の試合経験のな
さが問題になっており、その解決策の一つの参考になるかもしれな
い。
今後もサッカーの先進国の良さを吸収しながら、日本独自のサッ
カーを構築することが大切であり、そのためにもこのような海外指
導者研修は大切にしていきたい。
表1
Categorías de fuerzas básicas(育成組織)
Primera edad libre (トップチーム フリー)
Primera A 19 años (サテライト 19歳∼)
20 jgdrs. 20名
Segundas( 2 equipos)16 a 18 años
( 2部/2チーム 16∼18歳 )
20 jgdrs. 20名
Tercera 16 años (3部 16歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 93 15 años (カテゴリー93 15歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 94 14 años (カテゴリー94 14歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 95 13 años (カテゴリー95 13歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 96 12 años (カテゴリー96 12歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 97 11 años (カテゴリー97 11歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 98 10 años (カテゴリー98 10歳)
18 jgdrs. 18名
Cat 99
9 años (カテゴリー99 9歳)
18 jgdrs. 18名
33
海外セミナー
報告
29th AEFCA- Symposium
【報告者】木村康彦(ナショナルトレセンコーチ)
概要
2008年10月25日から29日までの5日間、ドイツのフランクフル
トで開催されたAEFCAのシンポジウムに参加した。
AEFCA(Alliance of European Football Coaches Associations)
とは、ヨーロッパ各国のコーチ連盟の統一組織であり、欧州サッ
カーの発展とコーチの情報交換のために設立された。これまでの
UEFT(Union Europaischer Fussball Trainer)が2008年から
AEFCAと名称変更され、今まで以上に欧州各国のコーチ連盟の協
力関係を強めていこうと結束を高めている。連盟のプレジデントは
ジェフユナイテッド千葉で監督もされたDr.ジョゼフ・ヴェングロー
シュ氏である。ゼネラルセクレタリーはDr.カールハインツ・ラビ
オール氏が務める。
今回のシンポジウムはAEFCAとドイツサッカー連盟(DFB)お
よびドイツコーチ連盟(BDFL)が共同で開催した。参加者は
AEFCAに加盟するヨーロッパ各国のコーチ連盟のトップをはじ
め、世界61カ国からFAのテクニカルダイレクター、指導者養成
チーフ、ユースダイレクターなど約200人で、会場となったフラン
クフルトのホテルで5日間寝食をともにしながら交流を図った。 内容
29回目となる今回のシンポジウムのテーマは、"New Trends of
EURO 2008 - Relevant to Grassroots Football? " であった。
シンポジウムはヴェングローシュ会長のあいさつでスタートし、
はじめにFIFAテクニカルダイレクターのJean-Pierre Benezet氏が
FIFAの発展途上国へのサポートプログラムを紹介した。続いて、
DFBの指導者養成を担当するフランク・ヴォアムート、ベアント・
シュトーバー、 エリッヒ・ルーテミュラーの3氏が EURO 2008の
DFB分析からシステム、守備、攻撃のトレンドについて発表した。
UEFAテクニカルダイレクターであるアンディ・ロクスブルク氏
も、EUROやUEFAチャンピオンズリーグの分析データを提示しな
がら、トップレベルでの技術・戦術的なトレンドについてプレゼン
テーションを行った。また、翌日には「トップコーチのリーダー
シップ」について講演した。トップコーチの役割について整理した
のち、リーダーに必要な10の要素(パワー、責任感、コミュニケー
ション、楽観主義、勇気、人間性、アイデア等)について、欧州で
活躍する一流監督のコメントや映像を織り交ぜて説明した。聴衆を
34
ひきつける質の高いプレゼンテーションであった。
EUROで旋風を巻き起こしベスト4に進出したトルコのファ
ティ・テリム(Fatih Terim)監督はゲストスピーカーとしてトルコ
代表チームの準備や大会での戦いを振り返った。大会前の1次キャ
ンプではシーズン中の疲労を抱えている選手とその家族が一緒にリ
ゾートホテルでサッカー以外のことをやりながら過ごしたこと、代
表チームの強化は育成からの積み上げが重要であること、そしてベ
スト4という結果はトルコ国民に自信を与えたと述べた。
DFBの指導者養成チーフのシュトーバー氏とヴォアムート氏は、
DFBの指導者養成システムとプログラムについて説明した。ライセ
ンスの質を保ち、サッカーの発展に適応するために、ドイツでもプ
ログラムの見直しが進んでいる。例えばBライセンス受講のために
はCライセンスでの一定以上の成績が条件となること、Bライセン
スでは育成年代の指導内容だけに特化させたこと、Aライセンスの
受講時間を80から100時間(2週間半)に増やしたことなどの説明
があった。
特に驚かされたのは、最上位のプロライセンスのコース期間が6
カ月から11カ月に増えたことである。そのうち28週間はケルンス
ポーツ大学内にあるヘネス・ヴァイスバイラー・アカデミーで行
い、14週間はブンデスリーガクラブでのインターンシップ、6週間
は自己学習となっている。ドイツも指導者のレベルアップのために
これまで以上にパワーアップして取り組んでいると感じた。
実技のセッションでは、U-19ドイツ代表のハイコ・ヘアリッヒ監
督が守備を、U-18代表のフランク・エンゲル監督が攻撃をテーマに
フランクフルトのユース選手を使って指導のデモンストレーション
「トップレベルでの技術・戦術的なトレンド」
、
「トップコーチのリーダーシップ」について講演した
アンディ・ロクスブルク UEFA テクニカルダイレクター
動していること、地域協会のコーチと連携しながらコンセプトの共
有やタレント発掘を行っていること、マドリードのトレーニングセ
ンターが育成・強化の拠点になっていることなどを紹介した。タレ
ント発掘の観点に関するキーワードをスペイン語の頭文字から
「3C、
2V、1E」と説明。日本語にすると、
「技術のクオリティー」
、
「キャ
ラクター」
、
「競争的である」
、
「スピード」
、
「意志の強さ」
、
「プレッ
シャーに強いメンタル」となる。各代表チームは初回にポジション
ごとに 5 人の計 55 名を選び、次は 33 名といったステップを踏み
ながら競争意識を持たせて絞っていくとのことであった。
所感
実技セッションの様子
を行った。守備ではディフェンスと中盤の4-4の2ラインでボール
を奪うことがテーマだった。2ラインと隣の選手との距離をコンパ
クトに保つこと、ポジショニングとアプローチの仕方(特にボラン
チのチャレンジ&カバーやサイドバックのアプローチ)、選手間の
コーチング、プレスバックによりボールを奪うことなど、細かい点
まで指導していた。
また、EUROのトレンドから、サイドが1対1でもセンターバック
が外に連れ出されないでゴール前で守ることを強調していた。
攻撃ではシュートチャンスをつくることがテーマで、10対6での
ボールポゼッション、3ゾーンでの8対8(2-4-2)のトレーニング
の中で、立ち位置と身体の向き、トップを観ること、前方へのパス
もしくは確実なポゼッションの判断、2トップを使ったコンビネー
ション、切り替えの速さなどを重点的に指導していた。
DFBのスポーツダイレクターであるマティアス・ザマー氏は、
トッププレーヤーとしての経験と知識をもとに、各FAが育成コンセ
プトを持つこと、育成年代の指導者が日々のトレーニングでそれを
実践することの重要性を熱く語った。「タレントを早期に発掘し、
年齢に応じたアプローチにより選手個々の技術、戦術、コンディ
ション、人間性などを高めていくことが重要である」と述べた。そ
して、同じタイプの選手だけではチームは成功しないといい、リー
ダー、個人主義、チームプレーヤータイプなど、さまざまなキャラ
クターの選手を各年代のコーチが容認して育てていくことにトライ
をしているそうだ。
また、ドイツのエリート教育の取り組みと育成年代の代表チーム
の活動も紹介し、成功の鍵を握っているのはコーチの質と情熱であ
ると力説していた。
今シーズンよりブンデスリーガ1部で戦うホッフェンハイム
(Hoffenheim)のラングニック監督は、「人間性に優れた選手が
真のスターであり、育成年代に選手の人間性の部分にもアプローチ
することが重要である」と語った。また、「育成年代のカテゴリー
にこそ優秀な指導者を送り込むべきであるが、残念ながら小クラブ
の予算では困難な状況である」と語った。
EURO 優勝国スペインからは U -17 代表コーチである Gines
Melendez Sotos 氏が 2000 年からのスペインの育成の取り組みに
ついてプレゼンテーションした。U -15 から U -21 までの各カテゴ
リーの代表 7 チームが同じコンセプト、システム(4-2-3-1)で活
期間中は、ホストであるDFBのみならず、会場となったヘッセン
州とフランクフルト市も温かくシンポジウムに参加したコーチを歓
迎してくれた。2日目の夜には、フランクフルト市長による歓迎レ
セプションが、観光地として有名な旧市庁舎レーマーの地下ワイン
セラーで行われた。また、最終日にはヘッセン州のコッホ首相が、
今では観光地となっている修道院での晩餐会にシンポジウム参加者
を招いた。各国のコーチたちはドイツ名物のガチョウ料理と修道院
で醸造されたワインを楽しみながら互いに懇親を深めた。コッホ首
相は、「日本製品も良いが日本のサッカー選手もすばらしい。フラ
ンクフルトで稲本(潤一)選手がプレーしていることに感謝した
い」と語られた。
州首相や市長によるこのような歓迎は、コーチ連盟へのリスペク
トとサッカー指導者の社会的地位の高さを表しているものと思う。
欧州のサッカー文化の奥深さを知ることになった。
ドイツをはじめ世界の強豪国がさらに高いレベルを目指して、選
手育成、指導者養成に全力で努力している様子を聞いて危機感を持
たざるを得なかった。また、Jリーグや日本の取り組みについても
多くの質問を受けたことから、日本に対する関心の高さも感じた。
このようなシンポジウムを通じてコーチがオープンマインドで互い
に知識と経験をシェアすることは、コーチのパワーアップと各国の
サッカーの発展に大切なことであるとあらためて感じた。各国の指
導者とのネットワークを構築し、情報交換の場を確保しておくこと
は重要である。2009年のシンポジウムはクロアチアで開催される
予定である。
元ドイツ代表で現在は DFB スポーツダイレクターのマティアス・ザマー氏。育成年代の指導者が
育成コンセプトを持ち、日々のトレーニングで実践することの重要性を説いた
35
モデル地区
トレセン
訪問記 ③
子どもたちがポジションを決めている
西宮トレセン
(モデルコーチ:大内由紀夫コーチ)
【報告者】眞藤 邦彦(指導者養成ダイレクター)
海風を受けながら、バス停から西宮トレセンの会場である西宮浜
運動公園人工芝グランドを探しました。この会場は昨年 7 月に完成
したばかりの多目的公園で、地元の方々にもまだ認知されていない
様子でした。グラウンドは、阪神電鉄西宮駅からバスで 15 分のと
ころに位置しており、マリンパークのそばにはヨットが浮かぶ、と
ても眺めの良いところでした。
さて今回は、大内由紀夫モデルコーチが指導している西宮トレセ
ンを訪問しました。この日は大内コーチと 4 名のサポートコーチに
加え、西宮サッカー協会の岩本忠司理事長、事務局の方々が運営さ
れていました。このトレセンには多くの方々が関わっており、子ど
もたちにとって充実したものにしていきたいというスタッフの熱い
思いが伝わってきました。西宮トレセンに集まってくる子どもたち
は、4 年生のときから練習会を重ね、入れ替えをしながら 6 年生に
上がってきており、トレーニングを見ていると、すばらしいプレー
の連続で大変驚かされました。地域の実情を聞くと、少年団で土日
の活動のみにとどまっている子どもたちがほとんどだそうです。
西宮トレセンは月に 2 回の活動で、今回のトレーニングは長めの
休憩を挟んで 2 時間半のトレーニングとなっていました。実際のと
ころ長い気がしますが、集中してトレーニングできる状況であり、
良い指導や環境の下、子どもたちはサッカーを楽しんでいるようで
した。参加した子どもに聞いてみると、
「大変楽しいし、月 2 回で
はなくもっとやりたい」と言っていました。このトレセンの回数を
増やすことができれば、トレーニング時間や内容も含めてさらに充
スタッフの皆さん
(前列中央が大内由紀夫モデルコーチ、後列左端が岩本忠司理事長)
実したものになり、子どものパフォーマンスは飛躍的に向上してい
くだろうと思いました。
この日は運動会やリーグ戦が重なっていたこともあり、15:30 か
らのトレーニングには、全員は集まっていなかったようでした。事
前に練ったトレーニング内容も、三々五々集まってくる人数の変化
によって変えざるを得ない状況でしたが、大内コーチはこの日の
テーマに沿って、その時々の人数に合わせてトレーニングオーガナ
イズを変化させていて、さすがだなと思いました。また、テンポの
良い声かけやデモンストレーションで、子どもたちは軽やかに
ウォームアップからトレーニングに移っていました。サポートコー
チとの連携もよく、声かけに統一性が見られました。トレーニング
の途中で GK が別メニューになるところも GK コーチが指導し、役
割分担がしっかりできていました。コーチの方々のリレーション
シップは大変すばらしいもので、トレーニングの質を上げるために
もモデルコーチだけでなく、サポートコーチの協力が不可欠である
と痛感させられました。子どもたちがサッカーをやったという感覚
とパフォーマンスの向上に対する自覚があって、トレーニングは成
功したといえるでしょうし、そのことをモデル地区トレセンで発信
していけたらと考えます。今後の発展について大内コーチに聞いた
ところ、
「もっと勉強して、今の活動をしっかりと続けていくだけ
です」と力強く答えていました。西宮サッカー協会のますますの発
展をお祈りしたいと思います。
さて、トレーニングの紹介をします。
西宮トレセン 9月20日
(土)15:30 〜18:00
ウォームアップ(リフティング、ドリブル 15 分)
ボールフィーリングを高める
(リフティング、
ドリブル、ボールファミリア、
ストレッチ、
ドリブルチェンジ等)
36
トレーニング 1(パス&コントロール 15分)
ワンタッチプレーとコントロール&パス
・動き出しのタイミング
・ボールに寄る
コントロール ⇒ パス
ワンタッチ
・相手の状況を観る
(いつ観るか)
・パススピード
・面でとらえる
・次のプレーのしやすいところへコントロール
・コントロールからパスまでを正確に早く
トレーニング 2(パス&コントロール 15分)
トレーニング 3(シュートドリル 20 分)
コーチ
・パススピード
・動きながらコントロール
・シュートを決める
・動き出しのタイミング
・リバウンドの意識 ・落とすボールの質
・トップスピードでボールに触る
・選択肢のあるコントロール ⇒シュートまでを早く
コーチがDF役になり判断やプレーを変えさせる工夫
トレーニング 4
(4 対2+ 4対 2 パス&コントロール 15分)
GKコーチがGKトレーニング。シュートドリルのGKはコーチ
ゲーム(11対11 10分ハーフ)
コーチがチーム分けをし、
ポジションは子どもに任せ、
前後半でポジションを変えさせていた。
・攻撃方向を意識する ・ボールを奪われない
・積極的な守備 ・パス&ムーブ
・パススピード
・ボールを失わない ・攻守の切り替え
・スピードの変化 ・積極的な守備
・ゴールを常に意識する
37
各地のユース育成の取り組み
東海、九州地域の
活動から
▼
ⓒ J リーグフォト(株)
写真はイメージ(2008 J リーグ U-13 より)
日本サッカーの強化・発展を目的とし、
個を高めていくことを目標とする「ト
レセン活動」とリーグ戦の創出。
ナショナルトレセンをはじめ、全国各
地でさまざまな形のトレセン活動や
リーグ戦の取り組みが行われています。
今号では、東海と九州地域の取り組み
をご紹介します。
東海
行ったが、参加している各チームから、高円宮杯への出場権や J ク
ラブからは同じチームとの対戦が多すぎるとの意見が出され、
2007 年からは現在行われているリーグ戦の方式となった(図 3)
。
【報告者】大野聖吾
(岐阜県サッカー協会ユースダイレクター)
「JFA2005 年宣言」の実現に向けて、基本となる考え方として
(1)リーグ戦を基軸とする。
2 種のリーグ戦
(2)年間を通したリーグ戦。
東海地域での 2 種のリーグ戦は、現在、プリンスリーグ U-18 と
(3)能力別リーグ(拮抗した試合の創出)
。
U-16 リーグがある。今年(2009 年)は、
プリンスリーグは 7 回目、 (4)全員が参加できるリーグ戦(2nd チームの参加)
。
U-16 リーグは 4 回目を迎える。それぞれのリーグ戦の変遷を振り
以上のことを踏まえ、2011 年からは 1 部 10 チーム、2 部 8 〜
返ってみたい。
10 チームで 2 回戦総当たりのリーグ戦を実施し、すばらしい大会
まず、プリンスリーグ 2003 〜 2005 は、図 1 のように行った。
にしたい。
3 年間継続したことによって見えてきた問題点は、まず、9・10 位
との差が激しく、本来の一番大切な拮抗したリーグ戦であるか、と
U-16リーグは、表 1 のように 2006 年からスタートした。2005
いうことであった。次に本来降格にするべきチームが「各県 1 チー
年の会議では年間 3 回戦総当たりか、ミニ国体はトーナメントにし
ムを保障する」という条項により降格せず、
8 位チームが降格となっ
て国体の代表を決めるかで意見が分かれたが、初年度はトーナメン
たことである。それらを改善するために、2006 年は図 2 のように
トで行うこととなった。その結果、前期 4 位の岐阜がトーナメント
を勝ち抜き、本大会に出場した。その結果、2007 年からは前期・
図1 2003∼2005
中期の 2 回戦総当たりの結果で、国体の出場権を争うこととした。
プリンスリーグ
年間を通して U-16 の年代を強化・育成しようと、後期リーグを
9・10位降格
静岡
(4)
東海参入戦(12月)
開催しているが、体育協会等との絡みもあり、
「国体の本大会出場
愛知
(2)
岐阜
(2)
各県代表2チーム
を重視」することも捨てきれず、やや各県ごとの温度差があり、取
三重
(2)
(A・Bブロック)
(4∼7月)
り組み方に違いが見られる。
各1位が昇格
東海地域のリーグ戦
※各県1チームは保障する
3 種のリーグ戦
図2 2006
プリンスリーグ
1部6チーム
2回戦総当たり
5・6位は2部へ自動降格
(4∼7月)
2部8チーム1回戦総当たり
1・2位は1部に自動昇格
5∼8位は各県に自動降格
各県1位チームは
自動昇格
図3 2007∼
プリンスリーグ
表1 U -16リーグの変遷
2006年
1部10チーム
1回戦総当たり
9・10位は2部へ自動降格
(4∼7月)
2部8チーム1回戦総当たり
1・2位は1部に自動昇格
5∼8位は各県に自動降格
(各県リーグへ)
38
3 種では、
昨年からスタートした U-13 の東海リーグ(ボルケーノ)
がスタートしたが、今年から大幅に改善された。一番の改善点は、
各県のトレセンチームが 1 部リーグに参加することになった点であ
る。岐阜や三重など町クラブが主流の県では U-13 までリーグ戦を
運営する体力がないチームがほとんどであり、能力があってもゲー
ムを経験できない選手も少なくない。
前期リーグ 第1節∼第3節(6月・7月)
代表決定トーナメント
①(ミニ国体)1位vs2位(勝者が第1代表)/②3位vs4位
①の敗者vs②の勝者(勝者が第2代表)
各県1位チームは
自動昇格
2007年
後期リーグ 第4節∼第6節(12月・2月・3月)
前期リーグ 第1節∼第3節(6月・7月)
中期リーグ 第4節∼第6節(8月ミニ国体の前日に4節)
後期リーグ 第7節∼第9節(12月・2月・3月)
また U-15 の東海リーグは U-13 同様に 3 種委員会が主体となり、
共通トレーニングメニュー」の作成と定着である。内容は、ボール
現在計画を進め、2010 年にはスタートする。
フィーリング・パス&コントロールの 2 種類。各指導者には、およ
そ 20 分間をこの共通メニューの実施に割いてもらうよう依頼した。
U-13・15・16・18 と着々とリーグ戦化が進んでいるが、常に目
的を忘れず、選手のための試合環境の整備を進め、東海からすばら
しいチームや日本を代表するような選手を輩出できるリーグ戦にし
ていきたい。
九州
大分県日田市「サッカー維新」2008
【報告者】松尾 章(日田市サッカー協会 U-12トレセンコーチ)
「Dream:日田育ちの日本代表を!」
1.「サッカー維新」立ち上げの経緯
日田市の現状と問題点
大分県日田市は、広い山間部を有する人口約 7 万人の小規模な自
治体である。その日田市サッカー協会に所属している U-18 以下の
チーム数は U-12:12 チーム、U-15:5 チーム、U-18:3 チームで
ある。
最近の少子化に伴い、日田市も特に U-12 年代の選手層の薄さが、
どのチームにとっても悩みのタネとなってきている。またここ数年、
県トレセン選手(U-12)の輩出も減少の一途をたどっており、
2007 年度はとうとう 0 名となった。
この低迷の原因は選手層の薄さもあるが、個々の指導者が問題意
識を持ってはいたものの、それを共有し協会として解決策を探ろう
とする動きに発展してこなかったことにある。
日田市「サッカー維新」スタート
そんな中、U-12 市トレセンスタッフの一人が、2007 年ナショ
ナルトレセン U-12(熊本県大津市)に参加し、
そこで吉武博文ナショ
ナルトレセンコーチと日田の現状について相談する機会を得て、日
田のレベルアップに力をお借りすることとなった。
早速、U-12 市トレセンスタッフを中心として、
「日田育ちの日本
代表」の輩出を夢に、日田の現状や課題について話し合った。その
結果、
日田のサッカーを改革するためのプロジェクト、
「日田市『サッ
カー維新』2008」を立ち上げることとなった。
2008 年 4 月 4 日、第 1 回日田市「サッカー維新」2008 指導者
講習会を開催した。講習会には日田市内の U-12 〜 18 の指導者な
ど 21 名が参加した。その中で、吉武氏から「日田で勝つ」から「日
田が勝つ」ために何が必要かアドバイスを受け、
「サッカー維新」
2008 の方向性や意義について共通理解を図ることができた。
日田市「サッカー維新」2008 が動き始めた瞬間であった。
2. U-12 から始めよう
11人制へのこだわり
早速、吉武氏の示唆を受け、U-12 を中心に動き始めた。そこで
2008 プロジェクトの中心に置こうと考えたのが「8人制」の実施
であった。ところが、
U-12 指導者の「11人制」へのこだわりは強く、
いくら 8人制のメリットを訴えても、
「全国大会が 11人制だから」
「サッカーは 11人でしょう」
という理由で 8 人制を拒む意見が多かっ
た。そこで、今年度は日田市内で行われる一つの大会のみ 8 人制を
取り入れてみることにした。
トレーニングメニューの共有
8人制ゲームの一部実施にこぎつけた次に取り組んだのは「U-12
年間 6 回の講習会
「サッカー維新」による指導者講習会は、2008 年度内で 6 回実
施することができた。そのうち 3 回の講習に吉武氏を招いて、ゲー
ム分析やトレーニングに対する指導者のレベルアップを図った。6
回の指導者講習会での延べ参加人数は、112 名にも達し、
「サッカー
維新」にかける日田指導陣の関心の高さがうかがえた。
3. 日田市「サッカー維新」2009に向けて
「 8人制リーグ戦 」の本格実施へ
こうしてスタートした初年度だったが、九州大会に向けた大分県
予選では 3 戦全敗という結果であった。当初、11人制へのこだわ
りが強かった指導者たちにも「何かやらなければ」という意識が高
まり、2009年度から次のような「8人制リーグ」を実施するに至っ
た。
2009 年度「 8人制リーグ戦 」の詳細
● U-12 の 12 チームに B チーム 3 つを加え、計 15 チームで実施
する。
● 5 チームずつの 3 部に分け、ホーム&アウェイ方式で 3 回戦で
行う。
● 1 回戦が終わった時点でそれぞれのリーグのトップと最下位の
チームは、上位リーグと下位リーグに昇格・降格する。
●ホーム&アウェイ× 4 チーム、それを 3 周りするため、1 チーム
が年間 24 試合、リーグ戦全体では 180 試合を行う。
●リーグ戦と並行して、空いたスペースや時間で U-10 やキッズの
ゲームも行いながら、年間を通してサッカーを楽しめる環境づく
りを行っていく。
●一回りに(1回戦)1 回の指導者講習会を開催する。
U-12 から U-15 へ、そして U-18も巻き込んだ取り組み
日田市「サッカー維新」は、U-12 を中心に動き出してはいるが、
U-15・18 も視野に入れ、指導の系統性を確認し、各カテゴリーに
見られる選手の課題の共通理解をすることで、それぞれのカテゴ
リーが連動して選手の育成にあたることが目的のプロジェクトであ
る。したがって、U-12 の選手を扱う指導者講習会に、当然ながら
U-15・18 の指導者も参加してきた。
今後は U-12 〜 18 すべてのカテゴリーを対象とし、日田の一貫
指導の徹底に向けて活動に工夫を加えていく必要がある。
4. 終わりに
リーグ戦実施にあたっては、いくつかの克服しなければならない
課題もある。
これまでも市サッカー協会主催試合や全日本少年サッカー大会、
九州大会の予選、トレセン交流大会などが行われてきた中に、さら
に 12 週間にわたるリーグ戦の日程が加わることになる。活動の精
選をし、保護者の負担増・選手の故障・会場確保などの課題をクリ
アしなければならない。そのためには、このリーグ戦の目的(サッ
カー文化を根づかせ、選手の育成を図る)を指導者全員が理解し、
チーム内に説明していく作業は欠かせない。
さまざまな課題を克服し、ぜひ日田の地にサッカー文化が定着す
ることを願うばかりである。
39
【報告者】木村康彦
(ナショナルトレセンコーチ)
ポゼッション
第15回
ⓒ AGC/JFAnews
はじめに
現代サッカーのように守備組織が強固になり、プレッシャーが強
いゲームでは、選手個々の質の高い正確な技術と早い判断が求めら
れます。UEFA EURO 2008 で優勝したスペイン代表は、個のスキ
ルと戦術の質が最も高かったのではないでしょうか。プレッシャー
の中での「正確な技術の発揮」と「早い判断」といった基本を育成
年代で身につけることは大変重要です。このポゼッショントレーニ
ングでは選手のレベルに応じて、攻撃と守備の個の技術と戦術の要
素を積み上げていくことができます。
広がりとバランスをもった立ち位置
ボールを失わないために広がりやバランスを考えてポジションを
とることが大切です。ボール保持者と自分との関係だけでなく、味
方も観てボール保持者に選択肢をつくることでボールを失わないよ
うにします。ボールばかりを観るのではなく、
広がりのあるポジショ
ンで「観ておく」準備が必要です。そしてボールが動いたら、関わ
り続けるために、常に立ち位置を変えながら選択肢となるポジショ
ンをとり続けることです。
パス&コントロールの質
ジュニアユース年代の選手を指導していると、まだまだ足元に
ボールを止めてから、次のプレーを考えるといった場面が多く見ら
れます。これが癖になってしまうと、プレッシャーがきついゲーム
では通用しなくなります。基本技術は反復トレーニングで時間をか
けるしかないでしょう。ボールの移動中に「観る」ことができるよ
うになるとファーストタッチに意図が出てきます。しかし、技術に
自信がないとなかなか「観る」こともできません。ボールに寄る、
動きながらスペースへコントロール、ファーストタッチでギャップ
40
へ持ち出してパスコースをつくる、ワンタッチのパスなど状況に応
じた判断の伴った技術はゲームで使えます。
このポゼッショントレーニングでは、中央にマーカーで四角形を
設定することで、攻撃の優先順位を意識しながらより厳しいプレッ
シャーの中でのパスやコントロールの質を高めていくこともできま
す。UEFA EURO 2008 でもアタッキングサードではワンタッチプ
レーなどの正確な技術と早い判断によるコンビネーションからゴー
ルが生まれていました。
トレーニング 4 対 4(5 対 5)+ 1 フリーマン
ボールを失わないでポゼッションする。
ルール
・パス 10 本で得点
・中央のグリッドの中でパスを受けて、パスもしくはドリ
ブルで進入しても得点
オプション
・中央に四角形のグリッドをつくる
キーファクター
●観る
●ポジショニング
●パス&コントロールの質
●動き出し、サポートのタイミング
●優先順位
モビリティ
相手が強固な守備組織をしっかりつくった場合には、モビリティ
を使ってスペースを創る、スペースを使うことが相手守備のバラン
スを崩すために有効です。このトレーニングでは優先順位を意識し
て、中の選手がプレーしたら動いてスペースを空ける、他の選手が
空いたスペースにタイミング良く入ってくるといったスペースの共
有にもチャレンジできます。
パスの受け手がボールの移動中にアクションを起こし、良いタイ
ミングで中に入ってくる。パスの出し手もボールの移動中に観てワ
ンタッチでパスが出せるようになると、ゴール前のコンビネーショ
ンプレーにつながります。しかし、相手の守備が中を絞っているな
らば、ボールを失わないことを優先し、外側でボールを動かす。こ
の判断の切り替えも重要な個人戦術です。
判断(観ることの習慣づけ)
判断する際に必要となるのは、一つはプレーの原則といった戦術
理解です。二つ目は判断するための情報収集です。そのためには
「観
る」ことが求められます。相手、味方、ボール、スペース、ゴール
など、観るものを増やすとより良い判断ができます。良い判断をす
るために「観る」ことの習慣づけは非常に重要です。
おわりに
このように、このトレーニングでは選手のレベルに応じてオーガ
ナイズの大きさやルール、人数を変えながら、攻撃と守備の個人の
技術と判断の部分に積み上げながらアプローチできます。そして忘
れてはならないのは、守備側への働きかけです。良い守備、プレッ
シャーがあってこそ、攻撃の質が上がり、ゲームで使える技術と判
断が身につきます。
41
JOC ジュニアオリンピックカップ
第12回全日本女子ユース(U -18)
サッカー選手権大会視察報告
【報告者】北川ちはる(ナショナルトレセンコーチ女子担当)
期間:2009 年 1月 3 日〜 8 日
開催地:清水台総合運動公園多目的広場(宮崎県西都市)
、錦原運動
公園球技場・てるは広場サッカー場(宮崎県東諸県郡綾町)
出場チーム:16 チーム
優勝:常盤木学園高校
準優勝:浦和レッドダイヤモンドジュニアユースレディース
第 3 位:日テレ・メニーナ、藤枝順心高校
1. 大会概要
本大会は、高校とクラブチームが日本一を競う全国大会である。
参加チームは、全国 9 地域の各代表チーム、各地域の比率配分枠の
4 チーム、2008 年度全日本高校女子サッカー選手権大会の上位 2
チーム、開催都道府県を代表する 1 チームの計 16 チーム。4 チー
ム× 4 グループに分けて 1 次ラウンドを行い、
各グループ上位 1 チー
ムによる決勝ラウンドを行う。試合時間は 1 次ラウンド 80分、決
勝ラウンド 90 分(引き分けの場合は 20 分の延長戦を行い、その
後 PK 方式により勝敗を決める)
。休息日を予選ラウンド終了後に取
り入れている。
決勝ラウンドでは、それぞれのチームの特徴がぶつかり合う拮抗
した好ゲームが展開され、常盤木学園高校が 3 連覇を達成した。常
盤木学園高校は、攻守ともにダイナミックな動きが最後まで充実し
ており、ロングフォワードパスでアタッキングサードを攻略し、ゴー
42
ルを狙っていた。浦和レッズジュニアユースレディースは、中盤で
しっかり組み立てながら、機を観てゴールを狙っていた。藤枝順心
高校は、しっかりとした守備組織からボールを奪い、アタッキング
サードを攻略しようとしていた。日テレ・メニーナは、個人技を生
かしながら、ショートパスやドリブルを駆使して中盤で主導権を
握っていた。
2. はじめに
ゲームは、しっかりとした守備組織からボールを奪い、前線へ簡
単にボールを展開し、ゴールを狙うチームと、止める・蹴るなどの
テクニックをしっかりと積み上げ、相手の状況を感じて選択肢を
持った中でプレーしようとするチームが混在していた。そのような
中で、この年代は、FIFA U- 20 / U- 17 女子ワールドカップに直結
する年代でもあり、世界で戦うなでしこの方向性が見えた大会とも
言える。
3. 課題と今後の発展
(1)観ること
「観ておく」ことは習慣化してきたが、
「いつ」
「何を」観て、
「ど
のように」プレーするかが明確になっていない。特に、ボールの移
動中に「観る」ことが定着していないため、相手の状況に応じたプ
レーを選択することができていない。ボールの移動中に相手、味方、
スペース、ゴールを「観る」ことで、パスなのかドリブルなのか、
ドリブルしながらパスなのか、シュートなのかパスなのかなど、プ
レーの選択肢が増えることに気づかせると同時に、味方との関わり
も増えることを気づかせたい。
(2)個
個の力の差がゲームの結果に直結していることが多かった。中盤
での攻防における走力とゲーム後半になっても衰えない持久力。
ゴールを奪うチャンスと感じたならば、ゴール前の攻撃人数を増や
すためのロングランニング。そして何よりも、状況に応じてプレー
を選択し、状況を打開していくためのテクニックと判断力。身体能
力に優れ、強固な守備組織を突破していくためには、アクションを
起こしてボールを受け、前を向いてゴールに向かうことを、個人に
おいては特にトレーニングしていきたい。
(3)守備
拮抗したゲームにおいては、前線からの積極的な守備から得点が
生まれていた。すなわち、アプローチを徹底し、チャレンジとカバー
リングを全員が連動して行うことにより、意図的にボールを奪うこ
とで得点が生まれる。
世界に通用する選手を育成するためには、普段のトレーニングか
ら、サッカーの本質である「ボールを奪いに行く」ことの習慣化と
環境づくりを目指したい。
(4)中盤
68m の幅を有効に使いながら、常にゴールを意識してボールを保
持しながら前に進む。幅を有効に使うことにより、周りの状況を確
認することが容易になると同時に、相手にとっても守りにくくなる。
ポジショニングにおいて優位に立ち、常に良い準備をしておくこと
が、
「ゴールを奪う」チャンスを逸しないのだろう。今大会は、チャ
ンスと感じたならば、最終ラインからでも攻撃参加する積極性と活
動量が少なかった。
今大会において勝敗を分けたのは、中盤の質、すなわち①攻守の
切り替えの速さ、②素早いアプローチ、③アタック時にゴール前で
関わる人数であった。
今後は、ゲーム状況に応じて、相手ディフェンスライン背後のス
ペースにボールを配球し、サポートしながらゴールを狙うのか、中
盤でボールを動かしながら組み立てて決定機にゴール前に飛び出し
て行くのかを、選手自身が感じて行動が起こせるようにしていきた
い。その根底にあるものは、観ることであり、動きながらのボール
コントロールとテクニックである。
チング・ローリングダウンなどで安全確実にプレーできる選手が増
えてきた。ブレイクアウェイから、狙いを持って積極的にチャレン
ジしてボールを奪う場面も見られた。しかし、ボールが遠くにある
ときに良い準備をする意識が低いため、決定的な場面をつくられる。
また、DF 背後のリスクマネジメントの意識が低いためにカウンター
を受ける場面も多かった。
攻撃においては、ビルドアップに積極的に参加する意図がなく、
簡単にボールを蹴り出してボールを失い、逆に攻められる場面も
あった。
そして、大きな課題として「クロス」が挙げられる。クロスに対
してのスタートポジション、ボールに対してのアプローチ、つかむ
か弾くかの判断などをトレーニングしていきたい。
4. まとめ
予選リーグで敗退したが、
JFA アカデミー福島(中学生で編成)は、
「観ること」
「判断すること」
「より多くの選択肢を持ちながらプレー
すること」をトライしていた。それを支えるテクニックは高かった
が、できている時間帯とできていない時間帯があった。個の育成を
大切にしながら、失敗から学ぶことで明日につなげ、将来的に「勝
つこと」を視野に入れた活動がなされている。
世界で戦うなでしこの方向性を考えたとき、今大会からは、観る
こと・テクニック・選択肢の質など、基本のレベルアップの必要性
を感じた。そのためには、ハイプレッシャー下のトレーニング環境
をつくり、どのように戦うかを常に考えながらプレーしていくこと
で「ゴールを守りながら、ボールを奪い、ボールを失わずにゴール
を奪う」というサッカーの本質が備わっていくのではないだろうか。
(5)ゴールキーパー
ゴールを守るために、シュートに対して正面に足を運び、キャッ
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女子:公認C級コーチ
養成講習会 報告
【報告者】上田栄治
(JFA 女子委員会委員長)
1. 開催要項
2008 年度で 2 回目となる「女子:公認 C 級コーチ養成講習会」
を 2009 年 1 月 28日から 2 月 1 日まで、滋賀県守山市(野洲川歴
史公園サッカー場ビッグレイク/守山パーク レークさがわ)で行っ
た。
このコースの目的は女性の公認 C 級コーチを養成し、女性指導者
の地位向上ならびにサッカーの普及・育成に広く貢献することであ
る。
初めて開催した昨年は埼玉県東松山市で行い、なでしこジャパン
の選手 7 名や多くのなでしこリーグ所属クラブの選手を含む 30 名
が受講した。今回は、なでしこジャパン、なでしこリーグの選手や
大学生、グラスルーツのチームの指導者、サッカー未経験者まで、
関西を中心に 20 名が参加した。
2. インストラクター
今泉守正(ナショナルトレセンコーチ[女子担当チーフ]/ JFA
アカデミー福島 女子ヘッドコーチ)
吉田 弘( U-16 日本女子代表監督/常葉学園橘高校女子サッカー
部監督)
3. 内容
会場はレークさがわ、ビックレイクともに人工芝ピッチであり、
実技を行う上で非常に良い環境で行えた。特にレークさがわは、
ピッ
チと宿泊施設が隣接して活動しやすく、佐川急便の保養施設である
宿泊施設は、おいしい食事、和室のゆったりとした客室、天然温泉
の大浴場と、厳しいスケジュールの中でもリフレッシュすることが
できた。講義はレークさがわ、ビックレイク両方で行ったが、特に
大きな問題はなかった。
今回の受講生は多種多様で、それぞれ非常に熱心に取り組んでい
たが、指導実践においては公認 B 級コーチレベルに近い者から広く
レベル差があった。しかし女性だけの合宿講習ということもあり、
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レベルは違っても穏やかでポジティブな雰囲気があった。1 回目の
指導実践が終わったころから、急に打ち解けてフランクな話し合い
が持たれたようだった。現役選手、指導経験の少ない方が多かった
が、指導者への入り口として女性のみで穏やかに行うことができる
のはこのコースの良いところと言える。
また、日本の女子の第一線の指導者がこのコースのインストラク
ターとなっているので、豊かな経験・実体験に基づいた講義や、北
京オリンピック、FIFA U-17 女子ワールドカップの映像なども織り
交ぜ、説得力があり、実際に女子に関わる受講者には非常に分かり
やすかったのではないかと思われる。
4. 2009年度に向けて
当初、受講希望者が少なく、開催が危ぶまれたが、最終的には
20 名に達し、効率良くコースを実施することができた。2009 年
度以降も継続的に開催するので、さらに周知させて受講生を 30 名
前後とし、より多くの女性指導者の質の向上と女性コーチの促進に
つなげたい。
女性の場合、C 級コーチを取得した後に B 級コーチにチャレンジ
する方が少ない。この方たちが中学生や高校生を指導することにな
ると、その年代の指導についてもきちんと習得してもらいたいと考
える。特に中学生年代の女子は一番伸びる時期で、また日本全体の
強化・育成のポイントとなる年代であるため、重点的に取り組む必
要がある。多感な年代で教える大変さもあるが、コーチとしては選
手が大きく伸びる楽しさとやりがいを得ることもできる。今後は資
質のあるコーチに B 級コーチ取得を促すことや、C 級コーチ養成講
習会のカリキュラムに内容を加えるなど、カバーしていく方法を考
えたい。
また、昨年はなでしこジャパンの多くの選手が受講し、サッカー
に対する理解力が上がり、オリンピックでの活躍につながったと思
われる。現役の選手が受講することで「サッカー」が整理されて、
プレーのレベルアップにもつながり、またセカンドキャリアとして
も役立つ。各年代の日本代表選手やなでしこリーグの選手たちには、
できるだけ早く C 級コーチ養成講習会を受講することを勧めたい。