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2位 「バタフライ効果」
呉 世貞(オセジョン)KCP 地球市民日本語学校
皆さん
私の国・韓国にバタフライ効果という言葉があります。
バタフライ効果というのは、ある場所での蝶の羽ばたきが、そこから離れた場所で起き
る将来の天候に影響を及ぼすということから始まりました。日本語の因果応報、ブーメラ
ン効果と意味が同じでしょうか。人生は小さな、難しい選択の連続です。目の前の小さな
選択が、自分の将来にどのような影響を及ぼすのか、それがバタフライ効果です。
私は 2010 年の夏休みに、青森に旅行しました。気分転換の観光旅行のつもりでしたが、
私の人生にとってバタフライ効果の始まりでした。その時、私は高校を卒業し、兵役を済
ませて会社員になっていました。社会人になっていろいろな社会の経験をしましたが、会
社員生活は、私に充実感、満足感を与えてくれませんでした。私の胸の中には不満がいっ
ぱいで、そのような閉塞感をなんとかして打ち破ろうと、私は隣の国・日本の青森に旅行
しました。ひらがなさえ知らず、日本語には興味がなかった私でしたが、その時、私はバ
タフライ効果の始まりに出会ったのです。
美しい青森の自然、素朴な人情を、私は我を忘れて楽しんでいました。旅行の途中、あ
る場所で道に迷ったとき、日本の高校生たちに出会いました。青森の田舎の高校生にとっ
て、外国人の観光客は珍しかったようです。道を尋ねると笑顔で教えてくれました。進む
方向が同じ高校生と一緒に歩きながら、美しい青森の自然、雄大な十和田湖についてボデ
ィランゲージで話しました。その生徒と別れたあと、私はすぐに再び道に迷ってしまいま
した。すると道の向こうにさっき別れた高校生が、ニコニコ笑いながら立っているではあ
りませんか。
“え?どうしてそこに?”その高校生は、“あの人また道に迷いそうになって
いる”とわざわざ追いかけてきたのです。そして、目的地まで送り届けてくれました。私
は、その素朴な親切に本当に感動させられました。おかげで日本のすばらしい第一印象を
得ることができました。そして「よし、もっと日本語の勉強をしよう!親切な日本をもっ
と知ろう」と考えるようになりました。
では、現実にバタフライ効果というものはどこにあるのでしょう。今、皆さんも、日々
バタフライ効果に出会っているのです。実はバタフライ効果は私たちの胸の中にあるので
す。自分が本当にやりたいこと!これがバタフライ効果の作動の始まりです。自分の胸の
中にあるやりたいことを真剣に追求し始めたら、バタフライ効果が作動して、爆発を起こ
します。
韓国では、いい大学に進学するために、子供の時から両親が英語や数学などの受験勉強
をさせます。いい大学への進学に失敗したら、いい職場に就職できなかったら、人生の敗
北者になってしまうという社会の雰囲気があります。けれども、人はそれぞれ様々な才能
や潜在力を持っているのに、このような受験勉強一本槍というロボットみたいな教育によ
り、子供の才能や潜在力が無視されています。そのせいで大人になっても自分の才能やや
りたいことが分からない人が多いのです。私もこのような韓国の教育を受けたので本当に
自分がやりたいことに気づいていませんでした。
青森旅行が私のバタフライ効果の蝶の羽ばたきでした。そしてその効果は、自分自身の
人生の追求の自覚でした。私は今 27 歳、自分自身の人生を切り開くために、一大決心をし、
もう一度日本へやってきました。私は日本の大学進学を目指しています。大学で貿易に関
する勉強をして、将来、韓国と、バタフライ効果に出会わせてくれた日本との、その両国
の利益と発展のために働きたいと考えています。これからは自分の力でバタフライ効果を
演出したいのです。
皆さん、今胸の声が聞こえませんか?小さい声に耳を傾けたり、自分から声をかけたり
したら、きっと本当の胸の声が聞えるはずです。それが、自分が自分の人生の主人公にな
る、バタフライ効果に出会えるようになる第一歩だと思います。
ご清聴ありがとうございます。