ゴジラ映画の受容の日米比較 - 立命館大学 研究者情報データベース

立命館大学研究部
2016 年
5月
14 日
2015 年度採択 研究推進プログラム(科研費連動型)研究成果報告書
採択者
研究課題
所属機関・職名:国際関係学部 教授
氏名: 池田淑子
ゴジラ映画のアメリカでの受容—下からのグローバリゼーション
Ⅰ.研究計画の概要
平 成 27 年 度 科 学 研 究 費 助 成 事 業 - 科 研 費 - 申 請 時 の 研 究 計 画 に つ い て 、 概 要 を 記 入 し て く だ さ い 。
福島第一原子力発電所の放射能事故以来、初代ゴジラ映画とそのシリーズは国内外で改めて注目され、映画に吹
き込まれた強い反核のメッセージが評価されるようになった。しかし、そのようなゴジラ映画が半世紀以上もの間、
アメリカで広く受容されてきた理由については明らかではない。本研究は、2014年度学外研究制度を利用し、ゴジ
ラ映画のアメリカでの受容について開始した研究(
「ゴジラ映画の受容の日米比較―原爆のトラウマと科学技術の狭
間で揺れ動く日米国民のメンタリティ」
)を継続・発展させ、対象の時期を20世紀半ばから現在にまで拡げるもので
ある。以前日本の文脈のなかで原爆を投下し水爆実験を行った「アメリカ」の代理表象としても取り上げたゴジラ
の表象を、アメリカの文脈で読み直す作業である。周期的に現れる「ゴジラ」表象のアメリカでの受容のプロセス
を分析することによって、われわれに多大な影響を及ぼしてきたアメリカ国民の、核を取り巻く歴史的・政治的・
社会的・文化的背景および複雑な心情を明らかにし、現在のわれわれの核や科学技術に対する認識や心情を問い直
す資料としたい。
本研究は、ゴジラ映画を1950-1970年代、1980-1990年代、そして1999年以降の3つの時代に分け、各時代における
アメリカ版との比較およびその受容について分析・調査し、核に対するアメリカ国民の心性を探求するが、そのた
めにはテクスト分析と平行して原爆、核実験、核戦争、冷戦、原子力の平和利用、第2の冷戦、科学技術に対する当
時のアメリカ国民の認識を明らかにする必要がある。平成26年度の学外研究と本研究推進プログラムを利用し、
1950-1970年代のアメリカ版の分析とその時代の核実験などに関する国民の認識について論じた関連資料の収集・解
読を終え、平成28年度は、1980-1990年代、平成29年度は1999年以降の時代、平成30年度は『Godzilla 2014』と平
成28年度製作・公開予定の日本製ゴジラ(『シン・ゴジラ』)に関する文献収集、解読を行う予定である。
Ⅱ.研究成果の概要
研究成果について、概要を記入してください。
本年 3 月までは、これまで調査・解読した資料を基に論文を書き、発表することに研究の時間を使った。本年 3
月 17-20 日にハーバード大学で開かれた American Comparative Literature Association (ACLA) による 2016
Annual Conference に出席し、研究発表( “Differing Images of Godzilla through Adaptations of Godzilla Films”)
を行った。この発表でゴジラ映画の初代『ゴジラ』(1954)と『ゴジラの逆襲』(1954)とそれらがアメリカで編集さ
れ改作された Godzilla, King of the Monsters (1956)と Gigantis, the Fire Monsters (現在は Godzilla Raids Again
と改題されている)の比較を行った。これはその際の chair が編集する雑誌(the Monsters and the Monstrous
journal)に投稿する予定である。
その後、上述したように、ニューヨークでは本年度計画した資料収集を行うととともに、学外研究の際の受け入
れ側のコロンビア大学の東アジア言語文化学部の准教授陣、ニューヨーク市立大学の准教授、ニューヨーク公共図
書館の主任司書およびゴジラの研究者とともに、アメリカでのゴジラ映画の受容にについて共著書で本を出版する
計画をまとめることができた。また、今回収集した資料を基にシリーズ1−4作品のアメリカ版のゴジラ映画を同時
代の核実験、過放射能被爆、原子力を題材にした怪獣映画と比較し、6 月 18-19 日に東京大学で開かれる日本比較
文学会の全国大会で発表(
『アメリカにおける初代ゴジラの受容』
)を行う予定である。
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