大腿骨頚部骨折

疫学
年間92,400人の罹患。(1997年)
女性が男性の約3倍。
発生率は50歳代から女性の方が高くなり、
60歳以上では男性の2〜2.5倍となる。
地域別では西日本に高い発生率で東北、関
東地方で低い傾向にある。
発生数と発生機序
全国推計年間発生数:1987年53,200人
➡2007年148,100人 20年間で2.8倍と
なっている.
65歳以上で増加し始め70歳以降で急増.
骨粗鬆症を併発する人,生理的機能低
下および脳卒中後遺症などによる転倒
機会の増加が原因と考えられる.転倒
が90%以上.
危険因子
骨粗鬆症:強い危険因子.危険度2.6倍.
既存骨折:発生リスク2倍となる.
低い体格指数(BMI)
脳卒中患者:発生率が一般高齢者の2~4
倍.骨折側は麻痺側に圧倒的に多い.
分類
大腿骨頚部骨折というの呼称は広義のもので
あり,大きく2つに分かれる.
大腿骨頚部骨折(大腿骨頚部内側骨折):関
節包内骨折.
転子部骨折(大腿骨頚部外側骨折):関節包
外骨折.
頚部骨折患者の流れ
• 内側型
• 外側型
診断
手術
• 人工骨頭置換術
• 髄内釘
• ピン固定
• 急性期リハ
• 回復期リハ
リハビリ • 在宅リハ??
患者の流れ
診断
• 内側型
• 外側型
手術
リハ
• 急性期(2〜3週間)患部の管理と全身状態の管理
• 回復期(3ヶ月)生活に密着したリハビリテーション
在宅
• 外来通院
• 訪問リハ
• 療養マッサージ
いったい目的は何なのか??
現場から求められているニーズ
相談員の皆様
宜しくお願い致します!
手術
大腿骨頚部骨折の治療は原則として手術で
ある.
関節包内骨折である頚部骨折と関節包外骨
折である転子部骨折は,解剖学的・生体力
学的に異なり,骨癒合の進行や骨壊死の発
生率に差があるため手術法が異なる.
手術法(頚部骨折)
転子部骨折と比較して骨癒合が遅延しやすい.
(滑液の流入・骨片間の離開・血流の阻害)
手術法は,①内固定材(スクリューやピン)
を使用した骨接合術.②人工骨頭置換術.
手術アプローチと禁忌肢位
後側方アプローチ
→大腿筋膜の切開、梨状筋、短外旋筋群の
切離、関節包のT字切開。
→股関節屈曲
股関節屈曲・
股関節屈曲・内転・
内転・内旋
前側方アプローチ
→大腿筋膜の切開、中殿筋と大腿筋膜張筋
の間を侵入、関節包のT字切開。
→股関節屈曲
股関節屈曲・
股関節屈曲・内転・
内転・外旋
手術法(頚部骨折)
頚部骨折は骨折の形態によりGarden分類の
StageⅠ~Ⅳに分けられる.
非転位型(Garden stage ⅠとⅡ):骨接合術
転位型(Garden stageⅢとⅣ):人工骨頭置
換術
以上のように手術を行われるこが多いが,我
が国では内側骨折の手術法として人工骨頭置
換術が約3/4と際立って多い.
手術法(転子部骨折)
関節包外骨折であり,血流が豊富な海綿
骨からなり骨癒合が期待されるため骨接
合術が選択.
転子部骨折は骨折の形態によりEvansら
分類のtype1とtype2に分けられる.
type1は転位の程度ならびに破粋の程度
によりgroup1~4に分類される.
手術法(転子部骨折)
骨折を固定するための内固定材料としては,
sliding hip screw (compression hip screw:CHS)
とshort femoral nail (γ-nail)の成績が安定してい
る
他にもEnder nailやproximal femoral nailがある.
予後
Hallらは,大腿骨頚部骨折は生命予後にもす
るとされ,受傷後1年以内の死亡率が
10~30%であると報告している.
鈴木は,歩行能力が最も生命予後に寄与する
要因であると報告している.(退院時,歩行
能力が高い症例は死亡率が低い)
予後
約90%の骨折者が術前から合併症を有してお
り,合併症の有無が機能予後に影響を与える
ため,対策が必要である.
特に認知症は術後の歩行能力を低下させ,自
宅復帰にも影響を与える要因として報告され
ている.
理学療法
日本整形外科学会の大腿骨頚部/転子部
骨折診療ガイドラインには,確立した
リハビリテーションメニューはないと
記されており,ここの状態・状況に応
じたメニューの作成・実施が必要であ
る.
理学療法
疼痛の軽減
関節拘縮の予防・改善
筋力強化
術後早期からの荷重および歩行訓練
退院後のリハビリテーション
疼痛の軽減
術後1週から2週にかけて骨折部の痛みや股関
節周囲の軟部組織損傷による痛みは徐々に軽
減してくる.
しかし,リハビリテーションの進行に伴い,
大腿四頭筋・大腿筋膜張筋などの過負荷によ
る炎症や筋スパズムが生じ,疼痛が持続する
ことが多い.
関節拘縮の予防・改善
骨折あるいは手術侵襲による軟部組織損傷の
修復に伴った瘢痕形成.⇒拘縮
疼痛回避の姿勢持続による組織の短縮.⇒拘
縮
股関節周囲の拘縮が歩行障害に密接に影響す
るため,その予防ならびに拘縮がある場合は,
可及的速やかに改善を目指す.
筋力強化
術前:上肢や健側下肢の筋力訓練,患
側の大腿四頭筋の等尺性運動や足関節
の運動を実施.
術後:特に股関節周囲筋ならびに大腿
四頭筋の強化が重要.
術後早期からの荷重/歩行訓練
早期荷重:骨への荷重が増加することで,骨
吸収と骨形成のバランスが改善され,骨密度
が増加する.
歩行訓練:早期歩行訓練を開始することで自
宅退院率が高いという報告がある.このこと
からも早期からの歩行訓練を開始し,早期の
歩行獲得を目指すことが重要である.
退院後のリハビリテーション
退院後6ヶ月以上継続して理学療法を行った
場合,筋力や歩行能力,QOLの改善がみられ
たという報告がある.
このことから,最低6ヶ月以上はリハビリ
テーションを継続することが推奨される.
理学療法に関する課題
大腿骨頚部骨折後の理学療法の目標は
早期の歩行獲得である.
個々の身体機能ならびに合併症につい
て詳細に把握し,その状況に応じた適
切な訓練を適宜実施させることが重要
である.
受傷機転
自然に骨折するか低エネルギーによる
外傷によって起こる。
老人性骨粗鬆症の罹患者である可能性
が示唆される。
症例別の具体的アプローチ
大腿骨頚部骨折
〜廃用が生じているタイプ〜
そもそも大腿骨頚部骨折を受傷する高齢
者は元々身体廃用を伴っているとして考
えて治療に臨む。
転倒予防を前提に治療を遂行していく。
拘縮はどこの組織の制限かを把握して治
療していく。
大腿骨頚部骨折
〜術式とアプローチ〜
前記資料参照
実技参照
必ず行なう評価
痛みの評価
⇒(動作時痛/どんな所?/どんな時?)
禁忌肢位の把握
⇒手術法の確認
ROM Test
⇒(股関節)立ち上がり、歩行を意識
筋力テスト
⇒股関節周囲
ADL Test
⇒Barthel lndex、生活の把握
1965年に米国の医師Florence Mahoneyと理学療法士
Dorothea Barthelによって原版が発表された。
1975年には改訂版が発表された。
原版は10項目からなり、判定は『自立』10点『部分
介助』5点『全介助』0点で評価する。
改訂版は身の回り動作と移動動作の2大項目に分けら
れ、それぞれが9小項目と6小項目からなる。判定は4
項目で評価している。
残存動作能力を検査し、障害の原因を追求し、治療
計画を立案すること。
治療効果の判定や予後予測をすること。
ADL能力を一定基準にしてスタッフ間で共有するこ
と。
対象者の生活の全体像を把握すること。
機能的要因
⇒身体的機能、知的機能。
環境的要因
⇒人や物、環境。
志向的要因
⇒意志、意欲、元気、やる気、勇気。
必ず行なうリハビリテーション
Hip Lift
キッキング
立ち上がり
Hip Up Exercise
伸筋群の活性化を目
的にする。
過負荷とならないよ
う注意する。
立ち上がり練習
•
荷重刺激の促通
•
活動量の増加
•
姿勢コントロール
立ち上がり手順
① 座位(スタート肢位)
② 下肢以外の重心線は座骨
③ 合成重心を足底部へ移動
(股関節屈曲、頭部・体幹前傾)
④ 下肢の支持性UP
⑤ 足底部へ合成重心移動をきっかけに下肢、股関節伸
展+体幹の前傾減少へ
⑥ 立位