御殿場市・小山町広域行政組合 ごみ再資源化施設(リサイクルセンター

御殿場市・小山町広域行政組合
ごみ再資源化施設(リサイクルセンター)整備
PFI導入可能性調査
【概要版】
平成24年9月
御殿場市・小山町広域行政組合
―
目
次
―
第1
はじめに ...................................................................... 1
1
調査目的 ...................................................................... 1
2
調査フロー .................................................................... 1
第2
事業概要等の整理 .............................................................. 2
1
事業概要の整理 ................................................................ 2
2
基本計画の整理 ................................................................ 4
第3
基本条件等の整理 .............................................................. 7
1
事業スキームの比較及び検討 .................................................... 7
2
リスク分担の整理 ............................................................. 21
第4
意向調査の実施 ............................................................... 23
1
調査目的 ..................................................................... 23
2
調査方法 ..................................................................... 23
3
調査結果及び主な意見等 ....................................................... 25
4
調査結果のとりまとめ ......................................................... 28
第5
事業経済性等の検討 ........................................................... 30
1
事業化シミュレーションの手順 ................................................. 30
2
DBO方式及びPFI方式によってコスト削減を期待できる理由 ................... 31
3
前提条件の整理 ............................................................... 33
4
事業化シミュレーションの結果 ................................................. 36
第6
法的課題の整理 ............................................................... 39
1
廃棄物処理法上の課題 ......................................................... 39
2
交付金制度上の課題及び留意点 ................................................. 40
第7
まとめと課題 ................................................................. 41
1
定性的側面からの評価 ......................................................... 41
2
定量的側面からの整理 ......................................................... 43
3
本事業におけるPFI方式導入の適正について ................................... 44
4
今後の課題 ................................................................... 45
第1
はじめに
本調査の目的及び調査フローについて整理する。
1
調査目的
御殿場市・小山町広域行政組合(以下「組合」という。)では、御殿場・小山RDFセンター
に替わる新たなごみ処理施設として、可燃ごみ処理施設及びごみ再資源化施設(リサイクルセ
ンター)(以下「ごみ再資源化施設」という。)の整備を予定している。
このうち、可燃ごみ処理施設(以下「ごみ焼却施設」という。)については、整備・運営に当
たり事業方式としてPFI方式のうち、BTO方式を採用することを決定し、平成 24 年 3 月に
PFI事業者と本契約を結び、平成 27 年度からの施設運営に向け整備に着手した段階である。
一方、ごみ再資源化施設は、現在実施している、御殿場市及び小山町における資源ごみの分
別に基づいたリサイクル施策を推進すべく、ごみ焼却施設整備後のごみ処理総合施設の第 2 期
工事として整備を予定しているところである。
本調査は、ごみ再資源化施設の整備及び運営に当たり、
「ごみ再資源化施設整備基本計画(以
下「基本計画」という。
)」を踏まえて、最も適した事業手法を合理的に判断することを目的と
するものである。具体的には、PFI等事業を含めた有効な事業手法について定性的及び定量
的な検討を行った上で、本事業にふさわしいと考えられる事業手法の評価及び選定を行う。
2
調査フロー
本調査の調査フローを以下に示す。
第1
はじめに
・
調査目的
・
調査フロー
第2
事業概要等の整理
第4
意向調査等の実施
・
事業概要の整理
・
意向調査の実施
・
基本計画の整理
・
金融機関ヒアリングの実
第6
・
法的課題の整理
廃棄物処理法上の課題の
整理
施
第3
基本条件等の整理
第5
事業経済性等の検討
第7
まとめと課題
・
事業スキームの整理
・
従来方式の場合の事業費
・
調査結果のまとめ
・
リスク分担の整理
・
PFI等方式の場合の事
・
課題の整理
業費
・
VFMの確認
1
第2
1
事業概要等の整理
事業概要の整理
組合が整備及び運営を予定しているごみ再資源化施設の概要について整理する。
(1)計画対象地域、建設予定地
本計画対象地域は、下図に示す御殿場市・小山町広域行政組合を構成する、静岡県御殿場
市及び小山町である。御殿場市は、富士山の斜面の分水嶺に位置し、南斜面は、1級河川黄
瀬川水系、北斜面は、2 級河川鮎沢川水系となっている。このうち、建設予定地は、黄瀬川
水系の砂防河川砂沢川と主要普通河川境沢川に挟まれた地域にある。
図 2-1 計画対象地域
2
(2)都市計画事項
建設予定地の都市計画条件は、次のとおりである。
•
施設名称
御殿場市・小山町広域行政組合
ごみ再資源化施設(リサイクルセンター)
•
事業主体
御殿場市・小山町広域行政組合
•
建設場所
静岡県御殿場市神場、板妻地先
•
敷地面積
約 3.77ha(既存粗大廃棄物処理場の用地を含む。)
•
都市計画区域
市街化調整区域
•
用途地域
指定なし
•
建ぺい率
60%以下
•
容積率
200%以下
•
高さ制限
建築基準法による
•
日影規制
静岡県建築基準条例による
建築基準法別表題四(ろ)欄ロ(2)による規制、
平均地盤面からの高さは、4.0m を採用。
•
河川保全区域
•
その他の遵守事項
河川法による
・
御殿場市土地利用事業指導要綱を遵守し、防火水槽(60 ㎥)を設置する。
・
ごみ再資源化施設の工事範囲には、既存の粗大廃棄物処理場の解体を含む。
3
2
基本計画の整理
組合が策定した基本計画の内容について整理する。
(1)施設整備基本方針
ご み 再 資 源 化 施 設 基 本 方 針
Ⅰ.安心、安全かつ安定した施設とする
消費生活や事業活動に伴って毎日発生する一般廃棄物の処理に支障を来せば、生活環境保全に重
大な影響が生じることとなる。よって、施設が安心、安全かつ安定的にごみ処理を行うことは、
ごみ再資源化施設に限らず、廃棄物処理施設が兼ね備えるべき要件であることを踏まえ、新設す
るごみ再資源化施設は、安心、安全かつ安定した施設とする。
Ⅱ.ごみを生かし、循環型のまちを推進する施設とする
循環型社会を構築するためには、第一にごみの発生を抑制(Reduce)し、第二に再使用(Reuse)
し、第三に再生利用(Recycle)を進め、最後に残ったものを適正処理・処分する廃棄物処理シス
テムづくりを推進する必要がある。そのため、本施設から発生する資源物は、可能な限り生かし、
循環型のまちに資する施設とする。
Ⅲ.環境負荷低減が可能な施設とする
騒音や振動、悪臭等の環境負荷について、技術的に可能な限り対策を施し、施設周辺の生活環境
保全を実現する施設とする。
Ⅳ.ライフサイクルコストが低廉な施設とする
運営期間中における適切な維持管理による施設の長寿命化を実現し、ライフサイクルコストが低
廉な施設とする。
Ⅴ.住民に親しまれる施設とする
単にごみを処理するだけでなく、住民が集い、学び、ふれあうことのできる機能(以下「コミュ
ニティ機能」という。)を備えた住民に親しまれる施設とする。
Ⅵ.環境啓発により循環型社会形成に資する施設とする
循環型社会の形成に向けては、本組合、御殿場市及び小山町の市町民、事業者の三者がそれぞれ
の役割を明確にし、互いに協働して3Rを推進する必要がある。そこで、環境啓発機能を兼ね備
え、循環型社会形成に資する施設とする。
Ⅶ.景観形成に配慮した施設とする
平成 24 年 3 月 15 日から御殿場市は、景観行政団体となり、富士山周辺地域は、これまで以上に
良好な景観の形成が求められる。そこで、富士山のほか、箱根外輪山、駿河湾、愛鷹山等との景
観形成に配慮した施設とする。
4
(2)施設概要
(ⅰ)施設名称
御殿場市・小山町広域行政組合ごみ再資源化施設(リサイクルセンター)
(ⅱ)事業主体
御殿場市・小山町広域行政組合
(ⅲ)建設場所
静岡県御殿場市神場、板妻地先
(ⅳ)敷地面積
約 3.77ha
・ 御殿場市粗大廃棄物処理場
:約 0.95ha
・ 御殿場市粗大廃棄物処理場以外:約 2.82ha
(ⅴ)ごみ再資源化施設の構成
①
リサイクル施設
②
啓発施設(リサイクル施設の管理機能を含む)
(ⅵ)対象ごみ
①
粗大ごみ
:1,303t/年(平成 29 年度予測値)
②
不燃ごみ 又は 埋立ごみ
:1,044t/年(平成 30 年度予測値)
③
ビン
:813t/年(平成 29 年度予測値)
④
カン
:348t/年(同上)
⑤
ペットボトル
:205t/年(同上)
(ⅶ)主要設備
①
破砕設備
粗大ごみ、不燃ごみ(又は埋立ごみ)を処理する。
②
選別設備
破砕した不燃ごみ、ビン、カン、ペットボトルから異物又は再資源化不適物を除去す
る。
③
圧縮・梱包
選別した金属、カン、ペットボトルを圧縮・梱包する。
(ⅷ)建設年度
平成 27 年 3 月から平成 29 年 10 月まで(2年8カ月)
5
(ⅸ)供用開始年度
平成 29 年 4 月(ごみ再資源化施設のみ)
(Ⅹ)その他
①
ごみ再資源化施設用地には、既存粗大ごみ処理場を含むため、その解体、撤去を工事
範囲に含める。
②
ごみ再資源化施設の建設工事期間(既存粗大廃棄物処理場の解体を含む)は、平成
27 年 3 月から平成 29 年 10 月とするが、ごみ再資源化施設の供用開始は、平成 29 年 4
月とする。
(3)計画ごみ量
表 2-1 計画ごみ量
(単位:t/年)
平成 29 年度
平成 30 年度
平成 31 年度
平成 32 年度
平成 33 年度
不燃ごみ
1,041
1,044
1,032
1,020
1,009
粗大ごみ
1,303
1,299
1,297
1,294
1,292
ビン
813
811
792
773
755
カン
348
337
326
317
307
ペットボトル
205
205
200
195
190
6
第3
基本条件等の整理
基本計画の結果に基づいて、組合が実施する事業と民間事業者側で実施する事業の区分け、
リスク分担等の整理を行う。
1
事業スキームの比較及び検討
事業方式、事業範囲等について、本事業で考えられるスキームを抽出するとともに、多様
な視点から比較、整理し、最適な事業スキームを検討する。
(1)事業方式の整理
(ⅰ)事業方式の概要
本調査において検討を行う事業方式は、次のとおりである。
①従来方式
公共が起債や補助金等により自ら資金調達し、設計、建設及び運営、維持管理等の業
務について、業務ごとに民間事業者に請負、委託契約として発注する方式。
個別発注による業務委託契約
委託料の支払
設計企業
施工監理企業
御殿場市・小山町
広域行政組合
建設企業
維持管理企業
廃棄物処理施設
運営企業
◆施設の所有
◆各業務ごとに、単独で施設
を整備、維持管理、運営
7
②BOO方式(Build Operate Own)
民間事業者が資金調達、設計、建設及び運営、維持管理等を行い、契約期間終了後に
民間事業者は施設を解体・撤去し、更地返還する方式。
設計企業
金融機関
配 当
出 資
施設の設計・建設・維持管理運営
サービスの提供
広域行政組合
元利償 還
御殿場市・小山町
融 資
(
プ ロジェクト
ファイナンス)
【PFI契約】(BOO方式)
出 資 者
業務委託 又は請負契約
事業継続・債権担保のための直接協定
(DA:ダイレクト・アグリーメント)
施工監理企業
建設企業
維持管理企業
PFI事業者
(SPC:特別目的会社)
PFIサービス対価の支払
運営企業
・設計建設
・維持管理
・運営
廃棄物処理施設
◆施設所有権
SPCが所有し、事業期間終了後に更地返還
◆市有地の財産種別
行政財産/普通財産による貸付
③BOT方式(Build Operate Transfer)
民間事業者が資金調達、設計、建設及び運営、維持管理等を行い、契約期間終了後に
建物の所有権を自治体等に移転する方式。
設計企業
金融機関
配 当
出 資
元利償 還
施設の設計・建設・維持管理運営
サービスの提供
融 資
御殿場市・小山町
(
プ ロジェクト
ファイナス)
【PFI契約】(BOT方式)
出 資 者
PFI事業者
業務委託 又は請負契約
事業継続・債権担保のための直接協定
(DA:ダイレクト・アグリーメント)
施工監理企業
建設企業
維持管理企業
(SPC:特別目的会社)
広域行政組合
PFIサービス対価の支払
・設計建設
・維持管理
・運営
◆施設所有権
SPCが所有し、事業期間終了後に公共に譲渡
◆市有地の財産種別
行政財産/普通財産による貸付
8
廃棄物処理施設
運営企業
④BTO方式(Build Transfer Operate)
民間事業者が資金調達及び設計、建設を行い、建設した直後に建物の所有権を自治体
等に移転し、その後、契約に基づき民間事業者が運営、維持管理等を行う方式。
金融機関
配 当
出 資
施設の設計・建設・維持管理運営
サービスの提供
元利償 還
融 資
御殿場市・小山町
(
プ ロジェクト
ファイナンス)
【PFI契約】(BTO方式)
出 資 者
業務委託 又は請負契約
事業継続・債権担保のための直接協定
(DA:ダイレクト・アグリーメント)
設計企業
施工監理企業
建設企業
PFI事業者
広域行政組合
(SPC:特別目的会社)
PFIサービス対価の支払
・設計建設
・維持管理
・運営
維持管理企業
運営企業
廃棄物処理施設
◆施設所有権
建設終了後に公共に所有権移転
⑤DBO方式(Design Build Operate)
公共が資金調達し、公共が所有権を有したまま、施設の設計、建設及び、運営、維持
管理等を民間事業者に包括的に委託する方式。
設計・建設企業
出 資 者
配 当
出 資
建設工事
請負契約
維持管理運営
委託契約
維持管理企業
SPC
御殿場市・小山町
広域行政組合
運営企業
運営・維持
管理業務
委託契約
・維持管理
・運営
廃棄物処理施設
◆施設所有権
常に公共が所有権を有する
設計・建設
9
(ⅱ)事業方式の比較
各事業方式について、①事業実施計画策定に関して検討すべき項目、②事業運営の安定
性に関して検討すべき項目、③公共の財政支出削減に関して検討すべき項目、の3項目か
ら定性的な比較、整理を行った結果を次表に示す。
表 3-1 各事業方式の定性的比較結果の整理
PFI方式
検討項目
従来方式
DBO方式
BOO方式
BTO方式
○
△
△
△
△
(PFI 等方式1)と
(スケジュールに
(スケジュールに
(スケジュールに
(スケジュールに
比較すると
余裕がない場合
余裕がない場合
余裕がない場合
余裕がない場合
短期間)
はデメリット)
はデメリット)
はデメリット)
はデメリット)
○
△
△
△
○
競争性の
(一定の競争性
(工事費に関す
(工事費に関す
(工事費に関す
(一定の競争性
確保
を確保)
る資金調達が
る資金調達が
る資金調達が
を確保)
ネック)
ネック)
ネック)
事業実施
検討すべき事 項
事業実施計 画策定に関して
スケジュールの
余裕度
先行類似
○
△
△
△
○
(多数存在)
(従来方式及び
(従来方式及び
(従来方式及び
(多数存在)
DBO方式と比較
DBO方式と比較
DBO方式と比較
して少数)
して少数)
して少数)
×
○
○
○
△
(すべて公共)
(官民でリスク
(官民でリスク
(官民でリスク
(PFIと比較して
公共の負担増)
事例の有無
すべき事 項
事業運営 の安定性に関して検討
リスク
分担
分担を構築)
分担を構築)
分担を構築)
○
○
○
○
△
(公共主体の
(金融機関の
(金融機関の
(金融機関の
(金融機関の
ため破綻なし)
監視機能あり)
監視機能あり)
監視機能あり)
監視機能なし)
○
△
△
○
○
地域住民か
(公共主体で
(事業者主体で
(事業者主体で
(供用開始後は
(供用開始後は
らの信頼性
整備、運営)
整備、運営)
整備、運営)
公共主体で
公共主体で
運営)
運営)
倒産隔離
検討すべき時候
公共 の財政支出削減に関して
調達金利
財政支出の
○
△
△
△
○
(公共起債は
(民間調達金利
(民間調達金利
(民間調達金利
(公共起債は
低金利)
は高金利)
は高金利)
は高金利)
低金利)
×
○
○
○
△
(不可)
(可能)
(可能)
(可能)
(維持管理等に
平準化
関わる費用は
平準化)
補助金
○
○
○
○
○
(交付金)の
(交付あり)
(交付あり)
(交付あり)
(交付あり)
(交付あり)
適用
公租公課
1)
BOT方式
○
△
△
○
○
(なし)
(固定資産税等
(固定資産税等
(なし)
(なし)
が発生)
が発生)
PFI方式(BOO方式、BOT方式、BTO方式)のほか、DBO方式を含む。
10
(ⅲ)本事業における事業方式の検討
本事業における事業方式は、最終的には意向調査結果やVFM算定結果を踏まえ決定す
るが、その決定の前段階に当たり、本調査において比較、検討の対象とする事業方式につ
いて検討する。
①
従来方式
PFI等方式との比較に際して必要となる事業方式であることから、従来方式は本調
査における検討候補の一つとする。
②
BOO方式
BOO方式は、事業期間終了時に施設の解体、撤去を行う施設等に用いられる方式で
あるが、本事業で整備するごみ再資源化施設は、PFI等方式における事業期間終了後
も引き続き一般廃棄物処理施設としての稼動を継続することを現段階では想定している。
故に、BOO方式は本事業の特性と掛け離れている側面があることから、本調査にお
ける検討候補からは除外する。
③
BOT方式
BOT方式は、供用開始後も施設の所有権は民間事業者が有するため、運営、維持管
理業務に関する民間事業者の創意工夫が働き、サービスの質の向上が期待される。その
一方で、固定資産税等の税負担がデメリットとして作用するが、最終的にはVFM算定
等により評価することを踏まえ、BOT方式は本調査における検討候補の一つとする。
④
BTO方式
BTO方式は供用開始後の施設所有が組合となるため、地域住民からの信頼が得られ
やすいといったメリットがある。また、隣接するごみ焼却施設がBTO方式で事業着手
している点を鑑み、BTO方式は本調査における検討候補の一つとする。
⑤
DBO方式
DBO方式は先行事例で最も多用されている方式であり、定性的なメリットにおいて
も優れている。その一方で、組合の管理体制が整わない側面からDBO方式は本事業に
適さないというデメリットもある。最終的にはVFM算定等により評価することを踏ま
え、DBO方式は本調査における検討候補の一つとする。
以上の整理を踏まえ、本調査においては、従来方式、DBO方式、BOT方式及びBT
O方式の中から、最適な事業方式を決定するものとする。
11
(2)事業範囲の整理
(ⅰ)基本的な考え方
PFI等事業においては、設計、建設から施設の運営、維持管理までの中で、一括して
性能発注することによりLCC(=ライフサイクルコスト)の最適化につなげられるよう
な一連の業務を洗い出し、できるだけ一体として民間事業者に委託発注することが基本的
な考え方となっている。
特に、本事業では、運営、維持管理業務に係る費用の割合が高く、また、民間事業者の
ノウハウの発揮の余地が大きく、業務の効率化、コスト減や業務のスケールメリットにお
ける効果が期待されることから、可能な限り本事業の業務を事業範囲に含めることが基本
と考える。
一方で、業務の性質や法的制約等の理由により発注者である組合が責任を持って遂行す
べき業務を事業範囲に含めないことは当然であるが、以下に該当する業務については安易
に民間事業者の業務範囲に含めるのは避けることが望ましい。
一般にこれらの業務を事業範囲に含めた場合には、民間側のリスク管理能力を超えたリ
スクが移転されることで、民間事業者(PFIにおいては事業者にプロジェクト融資を行
う金融機関も含む)の要求するリターン(投資や融資に対する利回り)水準が高くなり、
公共側が支払うサービス対価額の上昇へつながるため、結果としてPFI等事業の目的の
一つであるVFM(=バリューフォーマネー)が達成されない可能性が高まることとなる。
また、過大なリスクは民間事業者の参入意欲を削ぐことにもなり、適正な競争環境が構
築されない可能性も高まる。
以上の点に留意した上で事業範囲を設定する。
【民間事業者の事業範囲として避けることが望ましい業務】
・組合が実施する方が効率的であるもの
・将来需要が予測しにくいもの、また、技術面での変化が著しいことから陳腐化
しやすいものなど、民間事業者のリスクが大きいもの
・性能発注として要求水準書に明確化しづらいものや、権限が行政のコントロー
ル下にあり、SPCの自由裁量が行使しにくいもの
・業務の一体性、関連性が薄く、一括発注する必要性、合理性に乏しい業務
(ⅱ)事業範囲の検討
本事業の各プロセスにおいて、PFI等事業として民間事業者に委ねることの妥当性に
ついて検討した結果を次表に示す。
12
表 3-2 設計、建設段階における主な業務と業務区分の整理
業務名
①基本設計業務
主要な業務内容
DBO
PFI
・基本条件、基本フロー等の設定
・工事提案条件書等の作成
検討理由
組合が整備する一般廃棄物処理施設の基本的な計画内容であり、組合による実施が適当と考えられる。ま
組合
組合
た、各事業方式の事業費用を設定するためには、精度の高い従来方式における事業費用の設定が不可欠な
点からも、本業務は組合による実施が適当と考えられる。
②用地取得業務
③生活環境影響調査
・建設予定地の用地取得
・建設用地における現況調査
(現況調査)
④地質、測量調査
・建設用地面積の確定
・建設用地の地質等の調査
⑤都市計画決定
組合
組合
組合
組合
組合
組合
・組合による都市計画決定
※建築基準法第 51 条の但し書きによる位置の許可が認められる場合は、都市計画決
公共施設であることから、建設予定地の用地取得は組合にて実施する。また、用地周辺住民及び地権者との
調整も組合にて実施する。
環境保全の確保の観点から、工事条件は、組合から民間事業者に提示することが適切である。よって、事前に
組合で実施し、公表することが望ましい。
工事条件は、組合から民間事業者に提示することが適切である。よって、事前に組合で実施し、公表すること
が望ましい。なお、落札者決定後に民間事業者が行うべきものは民間事業者が独自に実施する。
都市計画決定は、民間事業者が実施できないため、組合が申請し御殿場市が決定する。
組合
組合
組合
事業者
定は不要
⑥許認可申請業務
⑦生活環境影響調査
・設置許可の申請
・生活環境影響調査の予測評価の実施
(予測評価)
組合
・要求水準書に基づく施設の細部にわたる設計
⑨施設建設業務
・施設の建設工事
⑩施工監理/施工管
理業務
⑪交付金申請業務
作成支援を求める)。PFI方式においては、民間設置により民間事業者が設置許可を申請する。
組合
DBO方式においては組合が実施する。
又は
PFI方式においては、民間事業者及び組合による実施が可能と考えられ、関係機関との協議が必要と考えら
事業者
⑧実施設計業務
DBO方式においては、組合設置により組合が設置届を申請する(申請書類の一部については民間事業者に
事業者
事業者
事業者
事業者
・建設工事の監理
組合
事業者
・事業の管理(契約に基づく事業実施状況の管理)
組合
組合
・循環型社会形成推進地域計画交付金の申請
れる。
民間事業者のノウハウを最大限に発揮するため、民間事業者による実施が適当である。
本事業の設計から建設、運営、維持管理までを民間に一括発注し、LCC の最適化を期待する観点から、民間
事業者の実施が適当である。
DBO方式においては、工事監理、事業管理とも組合が実施する。PFI方式においては、工事監理は民間事業
者が実施するが、事業管理(建設モニタリング)は組合が実施する。
循環型社会形成推進地域計画交付金の申請者は組合である。以上から、本業務は組合が実施することが適
組合
組合
切である。なお、民間事業者側の事業範囲として、申請書類の一部(例:長寿命化計画、設計書関係)について
作成支援を求めることとする。
13
表 3-3 運営、維持管理段階における主な業務と業務区分の整理
業務名
①受付管理業務
主要な業務内容
DBO
PFI
・廃棄物の受入
事業者
事業者
・搬入廃棄物の確認(搬入禁止物)
(搬入禁
(搬入禁
実施することが適切である。ただし、計量及び料金徴収を民間事業者の業務範囲とする場合は、料金
・搬入廃棄物の計量
止物の
止物の
徴収代行制とする必要がある。
・料金徴収代行(民間事業者が実施する場合)
管理は
管理は
また、搬入される廃棄物について、搬入禁止物の処理は組合自ら行う必要がある。(収集対象であり処
組合)
組合)
理に適さない廃棄物においては民間で行う(処分契約は組合)。)
・運転管理計画(処理計画)の作成
②運転管理業務
検討理由
・搬入廃棄物の管理は、施設の運転管理、維持管理と密接に関連することから、本業務は民間事業者が
・管理運営事業の主たる業務であることから、本業務は民間事業者が実施することが適切である。
・施設の運転管理
事業者
・粗大ごみ、不燃ごみの前処理作業
事業者
・搬出廃棄物の運搬業務を民間事業者の業務範囲とする場合は、再委託の禁止に留意する必要があ
る。
・場内運搬
・物品、用役、消耗品の調達、管理
・施設の点検、補修
・精密機能検査
・処理能力、公害防止性能の管理
・安全衛生管理
・施設清掃
・管理運営事業の主たる業務であることから、本業務は民間事業者が実施することが適切である。
事業者
事業者
組合
組合
・周辺施設保全(駐車場、外構施設、敷地内緑地等)
③維持管理業務
・改良保全(施設の改造等)
・法改正等への対応
・その他
・法改正等により施設の改良保全が必要となった場合、そのリスクは組合であるため、本業務は組合が実
施することが適切である。
・上記以外に、より良い施設運営に資することから改良保全を行う場合、本業務は民間事業者が実施す
事業者
事業者
ることが適切である。ただし、施設の所有者は組合であり、かつ、本施設は交付金を活用し建設してい
ることから、財産処分の関係上、改良保全工事は、組合が判断し許可した上で実施する。
④環境管理業務
・環境保全計画の作成
・作業環境の管理
事業者
事業者
・報告書の作成と管理
⑤情報管理業務
・データ管理
・施設の運転管理、維持管理と密接に関連する業務であることから、本業務は民間事業者が実施するこ
とが適切である。
・施設の運転管理、維持管理と密接に関連する業務であることから、本業務は民間事業者が実施すること
事業者
事業者
が適切である。
組合
組合
・市場性が低い品目の資源化を民間事業者の事業範囲とした場合、事業全体のトータルコストが高くなる
又は
又は
可能性がある。対象品目、市場等を踏まえ検討する必要がある。また、組合が現在保有する資源化ル
事業者
事業者
組合
組合
組合
組合
又は
又は
事業者
事業者
事業者
事業者
・設計図表等の管理
・資源化物の資源化
⑥資源化業務
⑦事業管理業務
・事業の管理(契約に基づく事業実施状況の管理)
・啓発施設内における環境啓発
⑧啓発施設の運営
⑨リサイクルショップの
運営
・各種イベントの開催
・見学者対応
・御殿場市及び小山町から発生するリサイクル品の販売
ートの継続利用について検討する必要がある。
・事業管理(管理運営モニタリング)は組合が実施する。
・啓発施設の管理、運営については、民間事業者のノウハウや創意工夫を期待する観点からは民間事業
者に委ねることが望ましい。ただし、地元業者育成等の観点から、組合から作業員を指定する場合に
は、本業務は組合により実施することが望ましい。(条件として指定することも可能であるが、将来的に
変更する場合等にも留意する必要がある。)
・リサイクルショップの運営及び集客力の向上について、民間事業者のノウハウや創意工夫を期待する余
地が大きいことから、民間事業者に委ねることが望ましい。
14
(3)事業類型の整理
(ⅰ)主な事業類型
PFI等事業においては、次の3つの事業類型に区分できる。
①
サービス購入型
選定事業者は、対象施設の設計、建設及び運営、維持管理を行い、公共部門は選定事
業者が受益者に提供する公共サービスに応じた対価(サービス購入料)を支払う。選定
事業者のコストが公共部門から支払われるサービス購入料により全額回収される類型で
ある。
サービス料の支払
PFI事業者
公共
サービス提供
利用者
事業契約
図 3-1 サービス購入型
②
いわゆる独立採算型
選定事業者が自ら調達した資金により施設の設計、建設及び運営、維持管理を行い、
そのコストが利用料金収入等の受益者からの支払により回収される類型をいう。この場
合、公共部門からのサービス購入料の支払は生じない。ただし、公共部門により施設整
備費の一部負担や事業用地の無償貸与が行われる場合もある。従って、厳密に言うとこ
れらの類型について独立採算型と呼称するのは適切でない。本調査では、このような観
点から、このような類型を、「いわゆる独立採算型」と呼称する。
料金支払
公共
PFI事業者
事業契約
利用者
サービス提供
図 3-2 いわゆる独立採算型
③
混合型
選定事業者のコストが、公共部門から支払われるサービス購入料と、利用料金収入等
の受益者からの支払の双方により回収される類型をいう。いわば「サービス購入型」と
「いわゆる独立採算型」の複合型である。VFM2)に関するガイドラインに示されている
「いわゆるジョイント・ベンチャー型」と同義である。
サービス料の支払
料金支払
PFI事業者
公共
利用者
サービス提供
事業契約
図 3-3 混合型
2)
VFM:Value For Money の略。支払(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方のこと。
15
(ⅱ)先行類似PFI事例における事業形態の整理
本事業は利用者からの収入のみで独立採算型が成立するような事業採算性の高い事業で
はなく、また、公共性の高い事業であることを踏まえると、他の多くの先行事例と同様に、
サービス購入型を基本とした事業類型とし、その上で、一部の事業において収入を認める
ような③混合型(JV型)とすることが望ましいと考えられる。
また、ほとんどの事業で既に取り入れられているとおり、ごみ量の変動による従量料金
制度を取り入れることにより、事業者への過度なリスク移転(ごみ量が変動しても一定額
の支払となること)を原因とする委託料の高騰を防ぐことが必要である。また、民間事業
者の起因によりごみ量が増大することは考えられないものの、災害その他の影響により、
ごみ量が増大した場合には、伴って委託料が増えることとなるため、事業期間を通じて民
間事業者のモチベーションを保つことができる。
16
(4)事業期間の整理
PFI等方式にて事業を実施する場合における、最適な事業期間について検討する。
(ⅰ)設計、建設期間
基本計画から、平成 27 年3月から平成 29 年 10 月までの2年8カ月とする。
(ⅱ)運営、維持管理期間
①
検討の前提条件
事業期間の検討の前提条件として、施設の利用年数について整理する。
環境省発行「廃棄物処理施設の長寿命化計画作成の手引き」
(以下「長寿命化の手引き」
という。)は、既存の廃棄物処理施設を有効利用し、施設の機能を効率的に維持すること
により、廃棄物処理施設の長寿命化を図り、そのライフサイクルコスト(LCC)を低
減するストックマネジメントの考えが盛り込まれている。
具体的には、日常的、定期的な点検補修(施設保全対策)を計画的に行い、必要とな
る基幹的設備、機器の更新等の基幹改良(延命化対策)を適切な時期に実施することに
より、施設の廃止時期を延ばし、結果として財政支出の削減を図ることを意図している。
図 3-4 長寿命化によるライフサイクルコスト変化のイメージ
17
この考えの中では、事業開始後 15 年後から 20 年までに延命化対策を実施することに
より、施設の廃止時期を、通常の場合から 15 年ほど延命化する考えも含まれており、総
じて施設の最終利用年数は 30 年程度を想定している。ここで、本事業においても、効率
的な更新整備や保全管理を充実する長寿命化計画の考えに則り、適切な維持管理を行な
えば、上記に示す施設の延命化効果が期待できる。そこで、新たに整備する施設につい
ても、延命化後の耐用年数である 30 年を施設の最終利用年数とする。
②
検討対象とする事業期間
PFI等方式による、ごみ処理事業の事業期間について整理する。先行事例によれば
15 年又は 20 年に設定されている場合が多い状況となっている。
これより、検討対象とする事業期間として、先行事例の中で比較的多く見受けられる、
15 年及び 20 年を抽出する。更に、長寿命化の手引きにある、延命化対策が必要となり、
かつ、15 年と 20 年の中間年である、18 年を事業期間の検討対象とする。
③
本事業における運営、維持管理期間検討の視点
本事業に最適な事業期間について、1)民間事業者のノウハウ発揮、2)基幹改良リ
スクの回避、3)ごみ焼却施設の運営、維持管理期間との整合、4)将来への適用性の
4つの視点から検討した結果を次表に示す。
18
表 3-4 事業期間の検討結果
検討項目
15 年
◎
18 年
本事業は廃棄物処理事業として高度な専門性を有する運 ◎
同左
20 年
◎
同左
転管理業務を含んでおり、組合のごみ量、ごみ質の変化等に
1)民間事業者のノウハウ発揮
適切かつ効率的に対応していくためには、運営、維持管理期
間に応じて運転管理技術の習熟度向上が期待できる長期事業
とする方がその効果は高まると考えられる。
○
厚生労働省発行「ごみ処理施設の長寿命化技術開発」 ◎
厚生労働省発行「ごみ処理施設の長寿命化技術開発」 △
厚生労働省発行「ごみ処理施設の長寿命化技術開発」
(1997)において掲載されている、施設の寿命は 18.0 年であ (1997)において掲載されている、施設の寿命は 18.0 年であ (1997)において掲載されている、施設の寿命は 18.0 年であ
2)基幹改良リスクの回避
ることから、本事業期間中に基幹改良が発生する可能性は低 ることから、本事業期間は、基幹改良が必要となる時期と一 ることから、本事業期間中に基幹改良が発生する可能性があ
いため、基幹改良リスクを回避することができる。
致し、基幹改良リスクを回避することができ、更に、適切な るため、基幹改良リスクを回避することが困難である。
時期に基幹改良を実施することが期待できる。
○
平成 29 年度から施設を稼動させた場合、ごみ焼却施設よ ◎
平成 29 年度から施設を稼動させた場合、本事業期間は、 ○
平成 29 年度から施設を稼動させた場合、ごみ焼却施設よ
りも早く事業期間が終了してしまうことから、ごみ焼却施設 ごみ焼却施設の運営、維持管理期間と一致することから、ご りも 3 年遅く事業期間が終了してしまうことから、ごみ焼却
3) ごみ焼却施設の運営、維持管理 の運営、維持管理期間との整合を計ることが困難である。
期間との整合
み焼却施設の運営、維持管理期間との整合を計ることができ 施設の運営、維持管理期間との整合を計ることが困難である。
る。また、将来的には、これまでの契約内容や運営内容を見
直し、施設の寿命までの新たな運営、維持管理期間を同時に
始めることが期待できる。
◎
事業開始当初の契約を遵守する期間が最も短いため、社 ○
事業開始当初の契約を遵守する期間が 15 年よりも長い △
15 年と比較して、社会情勢等への変化に柔軟に対応し、
会情勢等への変化に柔軟に対応でき、事業期間中の契約内容 が、最長である 20 年よりも短いため、社会情勢等への変化に 事業期間中の契約内容や運営内容を見直すための期間として
4)将来への適用性
を適宜見直し、場合により事業を継続するための期間として 柔軟に対応でき、事業期間中の契約内容を適宜見直す期間と は、他の年数に相対的に劣る。
最適と考えられる。
して望ましいと判断できる。
民間事業者ノウハウの視点からは長期の運営、維持管理期間が望まれ、施設の耐用年数及びリスクプレミアムの観点、ごみ焼却施設の運営、維持管理期間との整合、更に、将来の適用性の観点から、事業期間としては 18
年が望ましいと考えられる。また、同期間は、可燃ごみと比較して、内容が変化しやすい資源ごみに対し、新たな設備の追加をはじめ、必要な措置を講じていく上で最適な期間と考えられる。
19
(5)事業スキーム検討のまとめ
これまでの検討項目を踏まえ、本事業における事業スキームを、次のとおり整理する。
表 3-5 事業スキーム検討結果のまとめ
No
項目
内容
01
所在
静岡県御殿場市神場、板妻地先
02
敷地面積
約 3.77ha
03
施設の構成
・リサイクル施設
・啓発施設(リサイクル施設の管理機能を含む)
04
事業方式
意向調査及びVFM算定結果を踏まえ決定
05
支払形態
サービス購入型又は混合型
06
事業期間
設計、建設期間
平成 27 年 3 月~平成 29 年 10 月(2 年 8 カ月)
運営、維持管理 平成 29 年 4 月から平成 47 年 3 月(18 年)
期間
07
民間事業者 の事業範 囲
ア.設計、建設
・ 設計
・ 建設
・ その他関連業務
イ.運営、維持管理
・
・
・
・
・
・
・
・
受付管理業務
運転管理業務
維持管理業務
環境管理業務
情報管理業務
資源化業務
啓発施設の運営業務
リサイクルショップの運営業務
20
2
リスク分担の整理
『リスク分担』とは、
「事業の進行を妨げる様々な不確実要因(リスク)に対し、その負担者
を予め契約書に明確に定めておくこと」をいう。負担者については、
「契約当事者のうち、個々
のリスクを最も適切に対処できる者が当該リスク責任を負う」という考え方に基づき設定する。
『リスクの適切な対処』とは、「「顕在化の回避」、「移転、分散」、「顕在時被害額の抑制」に
ついて効率的に実施することが可能であること」をいう。なお、物価上昇リスク、不可抗力リ
スクなど契約当事者である官民の双方ともに適切な対処が困難な場合は、従来方式と同様に公
共側で負担することが望ましい。
リスクを民間に移転することにより、民間企業は、リスク回避のために、顕在化を抑制する
システムの構築や保険への加入等により、コストが増大するため、公共が支払うサービス購入
費は増大する。しかし、公共がリスク負担するケースよりも安価であれば、VFMの達成につ
ながる。このように、適切なリスク分担を定めることでVFMが向上するが、民間への過度な
リスク移転を行うと、逆にVFMは低下することとなる。
VFMを最大化させるためには、公共と民間との最適なリスクの分担が重要となる。
<リスク分担の考え方>
契約当事者のうち、個々のリスクを最も適切に対処できる者が当該リスク責任を負う
VFM
Best VFM
従来方式
最適な事業方式
リスク移転
図 3-5 リスク移転度とVFMの関係の概念図
特に、重視すべきリスクとしては、一般的には、
・リスクが顕在化した場合に、コスト面や事業遂行に多大な影響が出るケース
・コスト面での影響は大きくないが、頻繁に起こることにより、事業に影響を来すケー
ス
など、予想できる範囲ですべてチェックしておく必要がある。
PFI等方式で本事業を実施する場合において検討すべき主なリスクについて整理した結果を
次表に示す。
21
表 3-6 リスク分担表(案)
リスクの種類
リスクの内容
入札説明書リスク
共通
設計段階
建設段階
運営段階
事業終了時
入札説明書等の誤り、内容の変更に関するもの等
組合の事由により契約が結べない、契約締結が遅延する等
契約締結リスク
事業者の事由により契約が結べない、契約締結が遅延する等
計画変更リスク
組合による事業の業務範囲の縮小、拡充等
用地確保リスク
事業用地の確保に関するもの
本施設の設置に対する住民反対運動等に関するもの
近隣対応リスク
上記以外のもの
調査、建設及び運営、維持管理段階における騒音、振動、
第三者賠償リスク 地盤沈下、臭気等に関するもの及び事業者の責めに帰すべき
事由によるもの
本事業に直接関係する法令等の新設、変更に関するもの
法令等の変更
リスク
上記以外の法令の新設、変更に関するもの
本事業に直接関係する税制度の新設、変更に関するもの
税制度変更リスク
上記以外の税制度の新設、変更に関するもの
許認可遅延リスク 事業者が実施する許認可取得の遅延に関するもの
応募コスト
応募費用に関するもの
施設の供用開始前のインフレ、デフレ(施設整備費用に相当
するもの)
物価変動リスク
施設の供用開始後のインフレ、デフレ(運営、維持管理に
相当する部分)
事故の発生リスク 設計、建設及び運営、維持管理業務における事故の発生
事業の中止、遅延 組合の指示、議会の議決、組合の債務不履行によるもの
に関するリスク
事業者の債務不履行、事業放棄、破綻によるもの
天災、暴動等の不可抗力による費用の増大、計画遅延、
不可抗力リスク
中止等
組合の指示、提示条件の不備、変更による設計変更による
費用の増大、計画遅延に関するもの
設計変更
事業者の提案内容の不備、変更による設計変更による費用の
増大、計画遅延に関するもの
測量、地質調査の 組合が実施した測量、地質調査部分に関するもの
誤りリスク
事業者が実施した測量、地質調査部分に関するもの
組合の指示、提示条件の不備、変更によるもの
建設着工遅延
上記以外の要因によるもの
組合の指示、提示条件の不備、変更による工事費の増大
工事費増大リスク
上記以外の要因による工事費の増大
組合の指示による施設の供用開始の遅延
工事遅延リスク
上記以外の要因による施設の供用開始の遅延
一般的損害リスク 工事目的物、材料、他関連工事に関して生じた損害
性能リスク
要求水準の不適合(施工不良を含む)
受入廃棄物の品質
受入れ廃棄物の質に起因する事故
リスク
受入廃棄物の量の
受入廃棄物の量の変動による運営費用の増大
変動リスク
性能リスク
要求水準の不適合
施設の性能確保
リスク
※負担者
事業終了時における施設の性能確保に関するもの
○主分担、△従分担
22
負担者
組合 事業者
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
△
○
○
第4
意向調査の実施
本事業への参加が見込まれる民間事業者(プラントメーカー及び金融機関)に対して意向調
査を実施した。以下に、調査結果について整理する。
1
調査目的
民間活力を導入した事業方式により本事業を実施するためには、民間事業者の事業への参画
が不可欠であることから、民間事業者の意向、意見を把握し、民間事業者にとって魅力ある事
業とすることを目的として、アンケート方式による意向調査を実施した。
2
調査方法
(1)調査対象企業の選定
(ⅰ)調査対象企業の選定基準
調査対象企業の選定に当たっては、以下を基準とした。
①
参考見積を送付したプラントメーカー9社
②
御殿場市及び小山町内に営業所のある地元金融機関5社
(ⅱ)調査対象企業
上記の基準を参考に、以下の企業に意向調査を実施した。
【調査実施スケジュール】平成 24 年 5 月 10 日(木)~平成 24 年 6 月 5 日(火)
表 4-1 意向調査対象企業
業種
調査依頼企業数
プラントメーカー
(プラントメーカーA~E社)
地元金融企業
(金融機関A~C社)
計
23
回答企業数
回収率
9社
5社
55.5%
5社
3社
60.0%
14 社
8社
57.1%
(ⅱ)質問項目
本事業の事業スキーム(案)を基に、次のとおり業種別に質問項目を設定した。
表 4-2 プラントメーカーに対する質問項目
設問
内容
1
本事業への民活手法の導入について、最も適切なものをご回答ください。
2
本事業の事業方式として、PFI等方式を想定していますが、各事業方式における貴社の参加意欲
についてご回答ください。
3-1
事業概要書(案)に示す設計、建設期間の適否についてご回答ください。
3-2
事業概要書(案)に示す運営、維持管理期間の適否についてご回答ください。
4-1
事業概要書(案)に示す設計、建設業務範囲の適否についてご回答ください。
4-2
事業概要書(案)に示す運営、維持管理業務の適否についてご回答ください。
5
貴社が本事業に参画した場合、設計、建設及び運営において、従来方式と比べて「組合の財政負
担の軽減」と「サービス向上」の観点で発揮できるノウハウ、創意工夫についてご回答ください。
6
本事業で特に留意すべきリスクについて、その内容と官民リスク分担の考え方についてご回
答ください。
7
本事業において、組合がとるべき支援策(事業者として望む支援策)及びその理由についてご回
答ください。
8
本事業をPFI事業として実施する場合の貴社の関心についてご回答ください。
9
その他、本事業に対するご意見、ご要望等についてご回答ください。
表 4-3 金融機関に対する質問項目
設問
内容
1
本事業への民活手法の導入について、最も適切なものをご回答ください。
2
本事業の事業方式として、PFI等方式を想定していますが、各事業方式における貴社の参加意欲
についてご回答ください。
3-1
事業概要書(案)に示す設計、建設期間の適否についてご回答ください。
3-2
事業概要書(案)に示す運営、維持管理期間の適否についてご回答ください。
4
本事業の資金調達手法としては、プロジェクトファイナンスによる資金調達を想定していますが、こ
れについての適否、及びご意見・ご要望等についてご回答ください。
5
本事業で特に留意すべきリスクについて、その内容と官民リスク分担の考え方についてご回答く
ださい。
6
本事業において、組合がとるべき支援策(事業者として望む支援策)及びその理由についてご回
答ください。
7
本事業をPFI事業として実施する場合の貴社の関心についてご回答ください。
8
その他、本事業に対するご意見、ご要望等についてご回答ください。
24
3
調査結果及び主な意見等
意向調査結果及び主な意見等は、次のとおりである。
○本事業への民活手法の導入について(全企業対象の質問)
・主な意見
・本事業への民活手法導入の有効性については、全体的にみると「極めて高い」及び「高い」と回答した企
業が 7 割を占めた。
・有効性が高いと回答した理由としては、民間事業者の創意工夫を導入する余地が大きくVFMの達成も
期待されるため等の意見が挙げられる。
・有効性が低いと回答した理由としては、公設公営と比較して求められる仕様が同じであれば、施設整備
に係るコスト削減効果は小さいため公共サービスの向上につながる確証が持てない等の意見が挙げら
れる。
○事業方式及び各事業方式での参加意欲について(全企業対象の質問)
・主な意見
・事業方式別の参加意欲については、全体的にみると「BTO方式」及び「DBO方式」に対する高い参加意
欲がみられた。
・BTO方式での参加意欲ありと回答した理由としては、過去に同方式の実績があるためとの意見が挙げ
られ、DBO方式での参加意欲ありと回答した理由としては、多額の資金調達を要せず提案活動の負担
が少ないため参加しやすい等の意見が挙げられる。
○設計、建設期間の適否について(全企業対象の質問)
・主な意見
・設計、建設期間の適否については、全企業からの回答及びプラントメーカーのみの回答ともに「適当であ
る」と「適当でない」と回答した割合が同一であった。
・適当であると回答した理由としては、本事業の施設規模及び建設業務の範囲から考えると、自社の実績
からみても問題ない等の意見が挙げられる一方、適当でないと回答した理由としては、建築確認の許認
可取得期間を考慮すると短いのではないか等の意見が挙げられる。
○運営、維持管理期間の適否について(全企業対象の質問)
・主な意見
・運営、維持管理期間の適否については、全企業からの回答及びプラントメーカーのみからの回答ともに
「どちらともいえない」が6割を占めた。
・適当であると回答した理由としては、自社の実績から問題ないとの意見が挙げられる一方、どちらともい
えないと回答した理由としては、長期間にわたる事業であることから、外部環境の変化や大規模修繕を
考慮すると 15 年程度が妥当といえる等の意見が挙げられる。
25
○設計、建設業務範囲の適否について(プラントメーカー対象の質問)
・主な意見
・設計業務の適否については、プラントメーカーの6割が「課題、問題点あり」と回答し、建設業務の適否に
ついてはプラントメーカーの4割が「課題、問題点あり」と回答した。
・両業務で課題、問題点ありと回答した理由としては、建築確認申請が強化されており許可が下りるまで
一定期間が必要であるため等の意見が挙げられる。その一方で、「課題、問題点なし」と回答した理由と
しては、リスク分担の明確化を求める意見が挙げられる。
○運営、維持管理業務の適否について(プラントメーカー対象の質問)
・主な意見
・運営、維持管理業務の適否のうち、「課題、問題点あり」と回答した割合が最も高かったのは「受付管理
業務」と「リサイクルショップの運営業務」であった。その一方で、「課題、問題点あり」と回答した割合がも
っとも低かったのは「情報管理業務」であった。
・受付管理業務について課題、問題点ありと回答した理由としては、住民と接触する機会が多くトラブルの
発生が懸念されるため等の意見が挙げられる。
・リサイクルショップの運営業務について課題、問題点ありと回答した理由としては、リサイクル商品に対
する利用者からのクレームに対する懸念のほか、リサイクル商品量の予測が事業者側では困難であり
リスクが高いため等の意見が挙げられる。
○プロジェクトファイナンスによる資金調達について(金融機関対象の質問)
・主な意見
・プロジェクトファイナンスによる資金調達については、「適当である」と回答した割合が 3 割であり、「どちら
ともいえない」と回答した割合が6割であった。
・適当であると回答した理由としては、金融機関による監視機能が働くため等の理由が挙げられる。その
一方で、どちらともいえないと回答した理由としては、採算性のぶれの大きさやリスク負担等の懸念から
困難と考える等の意見が挙げられる。
○効率的な事業実施のための民間事業者の有するノウハウの内容(プラントメーカー対象の質問)
・主な意見
・効率的な事業実施のための民間事業者の有するノウハウに関しては、自社の経験から設計、建設から
運営まで一貫して責任を持つことで確実に業務履行できる体制を構築できるという意見や、LCCを十分
配慮した提案に基づき費用削減が可能である等の意見が挙げられる。
・BOT方式やBTO方式を採用する場合は、プロジェクトファイナンスによる資金調達を想定し、金融機関
からの監視機能を受けるとともに多面的に事業者に対する牽制機能を有する実施体制とする等の意見
もみられた。
26
○留意すべきリスクについて(全企業対象の質問)
・主な意見
・留意すべきリスクについては、「リスクを抑制できる者が当該リスクを分担する」との原則のもと民間事業
者に過度なリスク負担をかけないよう配慮すべき等の意見がみられた。
・留意すべき主なリスクとしては、費用増大リスク、住民反対運動等に伴う計画変更に係るリスク、ごみ
質、ごみ量変動リスク、不可抗力リスク及び物価変動リスク等が挙げられる。このうち、ごみ質、ごみ量
変動リスクについては、大幅な変動(災害時含む)は民間事業者では負担できないリスクであり組合負
担として欲しい旨の意見が挙げられる。
○必要とする支援策及び理由について(全企業対象の質問)
・主な意見
・必要とする支援策について、プラントメーカーからは主にリスク負担に関する意見がみられた。具体的に
は、民間事業者の過度なリスクとならないよう配慮すべきとの意見や、要求水準書の解釈相違がないよ
うな要求水準書の作成を希望する等の意見が挙げられる。
・必要とする支援策について、金融機関からは、事業リスクを抱えるPFIの場合には、キャッシュフローの
下振れリスク(ごみ質、ごみ量その他事業に係る変動)がSPCに及ばないよう、可能な限り組合が負担
するリスク分担を希望する等の意見が挙げられる。
○本事業への関心について(全企業対象の質問)
・主な意見
・本事業への関心について、全体的にみると7割の企業が高い関心を示し、そのうち5割の企業が特に強
い関心を示した。また、プラントメーカーについては、6割が特に強い関心を示した。
・特に強い関心を示している理由としては、自社の実績を活かしてノウハウを活用した有効な提案ができ
る等の意見が挙げられる一方、関心が無い理由としては、事業運営全体の一括受託はリスクが広範囲
にわたり出資に見合うメリットが出せるか確証が持てないとの意見が挙げられる。
○その他、本事業への意見、要望等について(全企業対象の質問)
・主な意見
・その他意見としては、リスク分担に関する意見が挙げられる。具体的には、民間事業者側に過度なリス
ク負担とならないよう、用地取得、住民同意のほか、外部環境変化(廃棄物の量と性状、制度や政策上
の計画変更、物価や人件費の高騰、不可抗力、法令変更等)は民間事業者側でコントロールできない事
由であることから組合負担として欲しいといった要望に関する意見が挙げられる。
・その他、事業者選定に関する意見として、総合評価一般競争入札とする場合には、技術内容を適正に
評価する加点方式を希望するといった意見もみられた。
27
4
調査結果のとりまとめ
意向調査結果から、事業方式別の参加意欲についてはBTO方式及びDBO方式であれば参
加意欲ありとの回答が全体の5割と最も多く、また、本事業への参加意欲については全体の5
割の企業が特に高い関心を示す結果になるなど、肯定的な意見が多く寄せられた一方、事業実
施に当たり課題とされる意見についても寄せられた。
意向調査結果によって得られた、本事業の実施に当たり検討が必要と想定される主な課題を、
次のとおり整理する。
(1)設計、建設期間及び運営、維持管理期間に関する検討課題
設計、建設期間については、建築確認の許認可取得期間を考慮すると短いという意見がみ
られた。また、運営、維持管理期間については、外部環境の変化や大規模修繕を考慮すると
18 年は長いという意見がみられた。
設計、建設期間及び運営、維持管理期間については、事業者の業務内容や事業者選定スケ
ジュール等を踏まえ適切に設定する必要がある。
(2)リサイクルショップの運営業務に関する検討課題
リサイクルショップの運営業務についてはリサイクル商品に対する利用者からのクレーム
に対する懸念の他、リサイクル商品量の予測が困難なため事業者側ではリスクが高いという意
見がみられた。
その一方で、組合が独自に実施した御殿場市、小山町、近隣市に所在するリサイクルショ
ップ等運営者に対する意向調査結果では、過半数以上の企業が高い関心を示す結果となった。
主な意見を、次のとおり整理する。
・PFI方式導入により創意工夫の発揮が期待できる。
・御殿場市内はリサイクルショップが少ない現状なので、問題ないと考える。
・リサイクルセンターと一体感のある施設となることが期待されるが、市街地から一定距
離があるため、利用者の利便性に配慮した運営を希望する(広報活動や駐車場台数の確
保等)。
・リサイクル品であるため、返品交換はできないことや事故等の責任は負わないこと等の
明確化を希望する。
リサイクルショップ等運営者からは、一定程度の高い関心が得られたものの、懸念する事
項としては、立地場所への交通アクセス状況の改善や、リスク分担の明確化を求める意向が主
な意見としてみられた。
このうち、交通アクセス等の立地制約上の課題については、民間事業者のノウハウにより
集客が見込める施設となるよう、創意工夫の発揮余地のある事業スキームを構築するほか、施
設面積や駐車場台数の確保等のハード面での検討が必要である。
(3)リスク分担に関する検討課題
民間事業者からの自由意見において最も多く得られたのは適切なリスク分担を希望する意
見であった。
28
本事業は一般廃棄物処理施設という市町民生活において欠くことのできない施設の整備及
び運営を一括して事業者に委ねるため、本事業が滞りなく進行するよう、そのリスク分担を設
定しておく必要がある。
事業期間中に生じる可能性のあるリスクについては、
「個々のリスクを最も適切に対処でき
る者が当該リスクを負う」との考え方の基に設定する他、本事業特有のリスク(例として、ご
み量、ごみ質の変動リスク)についてもその負担方法を適切に検討する必要がある。
29
第5
1
事業経済性等の検討
事業化シミュレーションの手順
事業化シミュレーションについては、次の手順のもと実施する。なお、BOO方式について
は前述の「第3
基本条件等の整理」にて検討対象とする事業方式から除外したことから、本
項で比較する事業方式は、DBO方式及びPFI方式のBTO方式並びにBOT方式とする。
( 1 ) 前 提条 件 の 設 定
1-1
従来方式における建設費、運営費等の設定
プラントメーカー見積りから、計上費目、費目別費用を設定。
1-2
従来方式における資金調達、
償還計画設定
1-3
交付金、起債充当率、金利等を設定。
DBO方式、BTO方式、BOT方式にお
ける費用設定
1-1 で設定した費用を参考に、各事業方式における
建設費等を設定するとともに、SPC設立費用、公
租公課など従来方式では生じない費用を設定。
1-4
DBO方式、BTO方式、BOT方式にお
ける資金調達、償還計画設定
交付金、資本金、金利等を設定。
1-5
事業の成立条件の検討
DBO方式、BTO方式、BOT方式において事業
成立を確認する指標を設定。
( 2 ) 財 務シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 表 の作 成
2-1
シミュレーションプログラムの構築
表計算ソフトを用いて、シミュレーションプログラムを構築。
2-2
財政支出の算定
従来方式、DBO方式、BTO方式、BOT方式について、事業期間中における組合の財政支出を算定。
( 3 ) 財 政支 出 の 評 価
3-1
財政支出の現在価値化
組合の財政支出について、割引率を設定し、現在価値に換算。
3-2
財政支出の削減効果の整理
従来方式に対して、その他の事業方式の財政支出削減効果を整理。
30
2
DBO方式及びPFI方式によってコスト削減を期待できる理由
削減額
金利
市税
国税,県税,利益等
維持管理委託費
金利
維持管理委託費
設計・建設費
設計・建設費
PFI等方式
従来方式
図 5-1 コスト削減のイメージ
一般にPFI等方式では、従来方式に比べ以下に示す5つのポイント(手法)からコスト
の削減が図られる。
①
一括発注による民間経営ノウハウの活用
②
工期の短縮による設計・建設費の削減
③
性能発注による施設のコストパフォーマンスの最適化
④
維持管理・運営を考慮した設計・施工の実施
⑤
リスク移転による管理コストの抑制
①一括発注による民間経営ノウハウの活用
従来方式の公共事業では、受託事業者は、設計、施工、維持管理等の各業務の中で利
益を確保する必要があったのに対し、PFI等方式では、公共がこれらの業務を一括し
て特定の民間事業者に委ねることを前提とするため、民間事業者は設計・施工から運営・
維持管理までのライフサイクル期間全体で事業利益を確保する戦略を立てることが可能
である。
②工期の短縮による設計・建設費の削減
一括発注及び性能発注により、施設の設計・建設にかかる期間を短縮し、事務作業量
等を抑制することができる。また、維持管理業者や運営業者等とも早い段階から意見交
31
換を行うことができ、これら施設利用者の要望と設計者の意図のズレによって生じる「手
戻り」やレイアウト変更をはじめとする竣工後の追加工事の発生が抑えられる。
③性能発注による施設のコストパフォーマンスの最適化
従来方式の公共事業では、公共が仕様を定めて発注するため、その使用部材を提供し
得るメーカー側も定価をベースに積算する。それに対し、PFI等方式では民間事業者
が部材の発注主体となり、多様なメーカーから性能仕様に合致しコストを抑えることが
できる部材を選ぶことになる。部材によっては、民間事業者がメーカーから大量購入契
約しているものを利用するなどのコストダウン方策も採用される。
プラント施設においては、従来から性能発注方式が採用されているが、運営主体が確
定していないことから、誰が使用しても支障なく運転が可能となるように、幅広く、ま
た、細かに規定していることが一般的で、高仕様となる傾向がある。しかし、運営主体
が確定している官民協調方式においては施設の使い勝手は事業者に任せ、性能を中心と
した規定にできることから民間のノウハウが期待できコストパフォーマンスにつながる。
特に、プラント関連及び運転員諸室等の仕様が挙げられる。
④運営・維持管理を考慮した設計・施工の実施
ライフサイクルコストのうち最大の部分は建設費ではなく運営・維持管理コストであ
ることはよく知られているとおりである。しかし、従来方式の公共事業では、通常設計・
施工を発注する部門と実際に運営・維持管理等を行う部門が異なることから、十分な調
整を行わずに施設が整備され、供用開始後にレイアウト変更が必要となったり、過分な
運営・維持管理コストがかかったりすることが珍しくない。PFI等方式では、民間事
業者が一括して事業に取り組むために設計と運用の両面に配慮した提案が練られ、実際
にそれに沿った運用によって維持管理コスト(特に、人件費及び用役費)の抑制がもた
らされる。
⑤リスク移転による管理コストの抑制
「リスク分担」とは、事業の進行を妨げる様々な不確実要因(リスク)に対し、その
負担者をあらかじめ事業契約等に明確に定めておくことを指している。
PFI等方式では、事業契約において事業に関わる様々なリスクが民間事業者に移転
される。民間には保険への加入等、リスク対応策のノウハウが蓄積されており、これら
の対応策を各種リスクに適切に配分し、そのコスト(顕在化時の復旧コスト+対応策自
体の実施にかかるコスト)を最適化することにより、結果として公共よりも低いコスト
で事業リスクを管理することができる。
32
3
前提条件の整理
(1)事業費の設定結果
事業費はプラントメーカーへの見積回答を活用し検討した。設定した設計、建設、運営期間
にわたる事業費を方式別に示す。
表 5-1 事業費の設定結果(税込み)
(単位:千円)
従来方式
Ⅰ.建設費
①リサイクルセンター
交付金
交付金以外
②啓発施設
Ⅱ.運営費
①点検補修費
①-1 リサイクルセンターの点検補修費(法定点検以外)
①-2 リサイクルセンターの法定点検費
①-3 啓発施設の点検補修費(法定点検以外)
①-4 啓発施設の法定点検費
②用役費
リサイクルセンター
啓発施設
③人件費
リサイクルセンター
啓発施設
Ⅲ.合計(Ⅰ+Ⅱ)
Ⅰ.建設費
3,183,395
2,548,960
774,884
1,774,076
634,435
4,746,960
1,077,750
876,330
111,204
90,216
0
353,610
307,404
46,206
3,315,600
2,809,368
506,232
7,930,355
DBO方式
2,699,557
2,236,248
679,819
1,556,429
463,309
4,425,786
945,900
768,816
111,204
65,880
0
343,242
297,036
46,206
3,136,644
2,630,412
506,232
7,125,343
BTO方式
2,224,897
1,784,271
542,418
1,241,853
440,626
4,425,786
945,900
768,816
111,204
65,880
0
343,242
297,036
46,206
3,136,644
2,630,412
506,232
6,650,683
BOT方式
2,224,897
1,784,271
542,418
1,241,853
440,626
4,267,188
787,302
613,440
111,204
62,658
0
343,242
297,036
46,206
3,136,644
2,630,412
506,232
6,492,085
Ⅱ.運営費
9,000,000
8,000,000
7,000,000
6,000,000
4,746,960
5,000,000
4,425,786
4,000,000
4,425,786
4,267,188
2,224,897
2,224,897
BTO方式
BOT方式
3,000,000
2,000,000
3,183,395
1,000,000
2,699,557
0
従来方式
DBO方式
図 5-2 方式別事業費[税込み](解体費は除く)(単位:千円)
33
(3)その他の前提条件
その他の前提条件について、各事業方式別に整理する。
表 5-2 その他の前提条件
1. 資 産 取 得 に 係 る
租税
不動産取得税
登録免許税
2. 資 産 保 有 に 係 る
租税
固定資産税
都市計画税
4. 建 設 費 に 係 る 資
金調達
従来方式
DBO方式
BTO方式
BOT方式
―
―
―
―
―
―
税率 4.0%
税率 0.4%
―
―
―
―
―
―
税率 1.4%
税率 0.0%
同左
必要投資額から交
付金及び自己資金
を控除した額
・金利:2.0%
・償還年数:18 年
・償還方法:
元利均等返済
同左
―
事業者収益率等の
指標を勘案し、最
適(組合の支払を
抑制できる)な出
資比率を設定
同左
同左
56,444 千円
(平成 28 年度)
同左
同左
同左
同左
70,000 千円
(平成 27 年度~平
成 29 年度の合計)
同左
(交付金以外)
□建設費
建設費から交付金
を控除した額
※1
借入金 (起債、
・金利:0.9%
プロジェクトフ
・償還年数:
ァイナンス)
15 年(据置 3 年)
・償還方法:
元利均等返済
自己資金
―
5.運転資金※2
(自己資金調達)
―
6.開業準備費※3
―
7.アドバイザー費
―
8.施工監理費
100,000 千円
(平成 27 年度~平
成 29 年度の合計)
58,542 千円
(平成 28 年度)
30,000 千円
(平成 28 年度)
14,700 千円
(平成 25 年度~平
成 26 年度の合計)
同左
10.運営モニタリン
グ費
11.SPC経費
12.その他
法人税(実効税率)
割引率
―
15,000 千円
(平成 29 年度)
営業費用の 3.0%
―
4%
41.33%
同左
13.事業者収益率等
―
EIRR:5.0%以上
※1
※2
※3
―
起債及び民間借入金利は、直近の実データ等から設定。
供用開始初年度の運営・維持管理費の 25%(四半期分)を設定。
提案書作成費、特別目的会社設立費等を含む。
34
同左
同左
同左
同左
EIRR:5.0%以上
DSCR:1.2 以上
LLCR:1.2 以上
10,000 千円
(平成 29 年度)
同左
同左
同左
同左
<事業者収益率に関する補足説明>
「EIRR」、「DSCR」及び「LLCR」は、官民協調方式による事業が成立するか否
かを判断する指標として採用したものである。
<EIRR(Equity Internal rate of return)>
・確保水準:5.0%(調達金利以上を確保する)
・資本金の投資に対する配当利回り。株主の出資に際しての重要な判断指標となる。
<DSCR(Debt Service Coverage Ratio)>
・確保水準:1.2(金融機関ヒアリング)
・融資者の回収性を判断する指標。これは、当期における借入金返済前のキャッシュフロ
ーが借入元利金額の何倍であるかを見ることで、キャッシュフローが十分な返済能力を
持っているか否かを見る指標である。DSCR が 1.0 の時には返済前キャッシュフローが当
期の長期借入返済元利金と等しくなり、1.0 未満になると借入金の返済ができないこと
になる。各期の DSCR は変動を伴うことが考えられるが、最低限として 1.2 を確保する
ことを条件とする。
<LLCR(Loan Life Coverage Ratio)>
・確保水準:1.2(金融機関ヒアリング)
・上記DSCRは融資期間内の各年度における返済能力を評価する指標であることに対し
て、融資期間全体を通じた同様の返済能力については、LLCRが用いられる。1.2 を
確保することを条件とする。
35
4
事業化シミュレーションの結果
事業化シミュレーション検討結果を次に示す。
表 5-3 事業期間全体の事業費内訳(実額)
事業方式
従来方式
DBO方式
BTO方式
BOT方式
(1)建設費※1
3,031,805 千円
2,571,007 千円
2,188,950 千円
2,188,950 千円
(2)人件費
3,157,722 千円
2,987,280 千円
2,987,280 千円
2,987,280 千円
(3)用役費※2
336,780 千円
326,898 千円
326,898 千円
326,898 千円
(4)点検補修費
1,026,432 千円
900,864 千円
900,864 千円
749,808 千円
(5)SPC経費
―
126,451 千円
126,451 千円
121,920 千円
(6)公租公課
―
(7)法人税
―
(8)消費税
(9)支払金利
(起債除く)
377,637 千円
―
―
297,011 千円
64,090 千円
269,792 千円
265,640 千円
354,624 千円
358,915 千円
365,560 千円
282,985 千円
287,838 千円
―
―
(10)利益配当
―
91,370 千円
386,432 千円
380,379 千円
(11)開業準備費
―
30,000 千円
30,000 千円
30,000 千円
(12)運用収入
―
▲5,477 千円
▲41,708 千円
▲40,043 千円
7,930,376 千円
7,447,107 千円
7,816,859 千円
7,961,241 千円
▲774,884 千円
▲679,819 千円
▲542,418 千円
▲542,418 千円
176,280 千円
148,604 千円
―
―
(13)合計
((1)~(12)の計)
(14)その他組合歳入
(交付金)
(15)起債金利
(16)アドバイザー費
(17)施工監理費
―
105,000 千円
15,435 千円
105,000 千円
15,435 千円
―
15,435 千円
―
(18)運営
モニタリング費
―
15,750 千円
15,750 千円
10,500 千円
(19)提案報奨金
―
5,000 千円
5,000 千円
5,000 千円
7,057,077 千円
7,310,626 千円
7,449,758 千円
(20)組合実質支払額
((13)+(14)+(15)+(16)
+(17)+(18)+(19))
7,436,772 千円
※1:BTO方式、BOT方式には施工監理費(70,000 千円(税抜き))含む。
※2:運営期間にわたって必要となる電気、水道、燃料及び薬品費。
36
従来方式
財政支出額
7,437 百万円
DBO方式
財政支出額
7,057 百万円
削減額 380 百万円
(5.11%)
BTO方式
財政支出額
7,311 百万円
削減額 126 百万円
(1.70%)
BOT方式
財政支出額
7,450 百万円
削減額-13 百万円
(-0.17%)
図 5-3 実額での組合の財政支出額の比較
上記は、実額で表示しているが、本事業においては、その期間が長期にわたることから、
財政支出の多寡を比較する際には、実額ではなく、現在価値に換算して比較することが一般
的である。それは、現在の 1 円の貨幣価値と 15 年後の 1 円の貨幣価値では、実質的な価値が
異なるためである。
基準年度価値への換算においては、一般的に割引率が用いられている。基準年度を現在と
した場合の価格が現在価値である。割引率については、
「公共事業評価の費用便益分析に関す
る技術指針(平成 16 年 2 月・国土交通省)」において定められているなど広く一般に用いら
れている 4%を用いる。
割引率を 4%とした場合、将来の 100 円を現在価値に換算すると次のようになる。
表 5-4 割引率と各年度の現在価値
年
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
平成28年度
平成29年度
平成30年度
平成31年度
平成32年度
平成33年度
平成34年度
:
平成39年度
:
平成44年度
度
現在
1年後
2年後
3年後
4年後
5年後
6年後
7年後
8年後
9年後
10年後
:
15年後
:
20年後
37
各年度の100円の現在価値
100円
96円
92円
89円
85円
82円
79円
76円
73円
70円
68円
:
56円
:
46円
各事業方式における財政支出を現在価値に換算すると、次のようになる。
表 5-5 財政支出の試算結果
算定項目
実額
現在価値
事業方式
削減額
①-(②~④)
-
(単位:千円)
削減割合(%)
{ ① - ( ② ~ ④ )}
/①×100
従来方式
7,436,772
①4,593,775
-
DBO方式
7,057,077
②4,358,082
235,694
5.13
BTO方式
7,310,626
③4,404,501
189,274
4.12
BOT方式
7,449,758
④4,486,970
106,805
2.32
従来方式
財政支出額
4,594 百万円
DBO方式
財政支出額
4,358 百万円
削減額 236 百万円
(5.13%)
BTO方式
財政支出額
4,405 百万円
削減額 189 百万円
(4.12%)
BOT方式
財政支出額
4,487 百万円
削減額 107 百万円
(2.32%)
図 5-4 現在価値化後の組合の財政支出の比較
38
第6
法的課題の整理
現行の法制度において、PFI等により実施した場合の課題及び留意点について次に整理する。
1
廃棄物処理法上の課題
①一般廃棄物処理基本計画との整合性を図る必要がある。
【法第 6 条】
市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画を定めなければならない。
2
一般廃棄物処理計画には、環境省令で定めるところにより、当該市町村の区域内の一般廃
棄物の処理に関し、次に掲げる事項を定めるものとする。
1
一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み
2
一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項
3
分別して収集するものとした一般廃棄物の種類及び分別の区分
4
一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項
5
一般廃棄物の処理施設の整備に関する事項
⇒ 本事業の実施に当たっては、法第 6 条に規定された一般廃棄物処理基本計画に定め
られた事項との整合性を図ることが必要である。
②市町村固有事務であり最終責任は市町村である。
【法第 6 条の 2】
市町村は、一般廃棄物処理計画に従って、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障
が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない。
⇒ 一般廃棄物の処理は市町村の固有事務であり、その最終的な責任は市町村にあるこ
とが上記のとおり規定されている。本事業においても、組合の責任を踏まえた民間
事業者との役割分担が必要であり、事業スキーム及びリスク分担等を適切に設定す
る必要がある。
③民間事業者は運搬、処分等の再委託を禁止されている。
【施行令第 4 条】
法第 6 条の 2 第 2 項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分(再生を含む。)を市
町村以外の者に委託する場合の基準は、次のとおりとする。
1 省略
2 省略
3 受託者が自ら受託業務を実施するものであること。
⇒ PFI方式やDBO方式における特別目的会社(SPC)は、市町村から委託され
た運搬、処分を他民間業者へ再委託することができないため、自らが維持管理業務
を行うことにより、法的な委託基準を満足させる必要がある。ここで維持管理・運
営期間における施設の所有権が公共にある場合は、公共はSPCへ処理委託ではな
く、施設の運転業務を委託していると解釈することができることから、本法の処理
39
委託には該当しないと考えられる。従って、構成企業等の他民間業者に運転を委託
しても、廃掃法上の再委託の禁止に抵触しないと考えられる。
④民間事業者は運搬、処分等の委託を受けるに当たり施設を有する必要がある。
【施行令第 4 条】
法第 6 条の 2 第 2 項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分(再生を含む。)を市
町村以外の者に委託する場合の基準は、次のとおりとする。
1
受託者が受託業務を遂行するに足りる施設、人員及び財政的基礎を有し、かつ、受託しよ
うとする業務の実施に関し相当の経験を有する者であること。
⇒ 法的な委託基準に受託業務を遂行するに足りる施設を有することが挙げられてい
る。SPCの業務範囲として、施設から最終処分場までの運搬を考えた場合、SP
Cが運搬委託を受けるのであれば車両を自らが有していなければならない。運搬委
託ではなく、運転委託の一部として公共の所有物を利用して運搬を行う場合は、特
に、本法には抵触しないと考えられる。
⑤技術管理者等の資格者の配置について検討が必要となる。
【法第 21 条】
一般廃棄物処理施設の設置者又は産業廃棄物処理施設の設置者は、当該一般廃棄物処理施設又は産
業廃棄物処理施設の維持管理に関する技術上の業務を担当させるため、技術管理者を置かなければな
らない。ただし、自ら技術管理者として管理する一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設につい
ては、この限りでない。
⇒ 廃棄物処理施設の設置者は、技術管理者を置かなければならない。DBO方式及び
PFIのBTO方式では、公共が所有者であることから、公共側で技術管理者を配
置するという考え方がある。よって、技術管理者を公共側及びSPC側で配置する
かについては、都道府県と協議の上、事前に条件を検討し、人材を確保しておく必
要がある。なお、電気主任技術者、ボイラータービン主任技術者等についても同様
である。
2
交付金制度上の課題及び留意点
環境省の循環型社会形成推進交付金は、従来方式と同様に、PFI事業による施設整備につ
いても交付対象としており、交付金はPFI事業を行う市町村を経由して特別目的会社(SP
C)に交付される。
なお、交付金制度の改革等に伴い、交付対象施設の種類や設備が変更される可能性があるこ
とに留意する必要がある。
40
第7
まとめと課題
意向調査結果及び事業経済性等検討結果を踏まえ、定性的側面及び定量的側面の評価から本
事業におけるPFI方式導入の適性について整理するとともに、合わせて、事業実施に向けた
今後の課題について整理する。
1
定性的側面からの評価
(1)各事業方式別の特性に関する検討
前述の「第3
基本条件等の整理」にて、各事業方式別の定性的比較を整理した。その結
果、先行事例数の多寡による経験企業数の多さや調達金利の低廉さにおいてはDBO方式が
有利であり、民間事業者へのリスク移転量や金融機関の監視機能についてはPFI方式(B
OO方式、BOT方式及びBTO方式)が有利であった。その一方で、組合ではPFI等方
式における事業期間終了後も本施設の稼動継続を想定しており、BOO方式については想定
とかけ離れる側面があることから、本調査における検討候補からは除外した。
一般的な定性的側面からの各事業方式別の特性は上記前段のとおり整理されるが、本事業
における最適な事業方式の選定に当たっては、本事業の発注者である組合を取り巻く環境(本
事業実施に携わる組合職員の管理体制上の課題や地域住民の意向)についても整理した上で、
検討のための一要素として反映されることが望ましいといえることから、組合独自の視点に
基づいた検討が必要である。
組合独自の視点についての検討結果を下記に整理する。
(ⅰ)組合職員の管理体制からの検討
本事業実施に当たる職員は、組合職員及び御殿場市、小山町からの出向職員によって構
成されるが、少人数での管理体制となっている現状にある。
DBO方式の場合、設計、建設業務については従来方式と同様の発注形態となり、組合
が主体的に関与する割合はPFI方式と比較すると高くなる。故に、発注者である公共側
の職員においても、土木、建築、電気、機械等の工種に応じた、監理及び検査等の人員が
必要となるが、組合の現行の人員数が将来にわたって継続する場合には、管理体制が整わ
ないことから、DBO方式での実施に際しては課題が残る。
(ⅱ)地域住民の意向からの検討
本施設は一般廃棄物処理施設であり、市民生活に欠くことのできない施設である。それ
ゆえ、地域住民からの意向として「一定程度の組合の関与度」が求められている。
民間事業者の導入による低廉で良質なサービスの提供を目指す一方で、一定程度の組合
の事業関与による地域住民の安全・安心を担保するためには、民間事業者が施設の所有権
を有するBOT方式での実施は課題が残る。
以上の検討結果を、次のとおり整理する。この結果から、組合独自の視点から見た各事業
方式別の定性的評価においては、BTO方式が最適であるといえる。
41
表 7-1 各事業方式別の特性に関する検討
PFI方式
BTO方式
(第3 基本条件等の
整理から)
・金融機関の
監視
・リスク移転量
の多さ
からはメリット
・金融機関の
監視
・リスク移転量
の多さ
からはメリット
DBO方式
・経験企業数の
多さ
・調達金利の
低廉さ
からはメリット
組合の管理
組合独自 の視点
から の比較
各事業方式別の特性から の検討
一般的な比較
BOT方式
体制上の
○
○
△
○
△
○
◎
○
○
課題の有無
地域住民の
意向の
担保性の
有無
各事業方式別の特性からの評価
(2)意向調査結果からの検討
意向調査の結果、本事業への民活手法の導入については、全体的にみると高いと評価した
企業が 7 割を占めたこと、また、本事業をPFI事業として実施した場合の参加意欲につい
ては、「非常に関心がある」「関心がある」と回答した企業が7割を占めた。一方、各事業方
式別での参加意欲については、BTO方式またはDBO方式であれば参加意欲ありと回答し
た企業が全体で5割という結果であった。
以上から、本事業をPFI事業として実施することは有用であるといえ、また、PFI事
業として実施する場合の事業方式としては、BTO方式またはDBO方式の場合は、民間事
業者の参加意欲が高い。このことから、両方式のいずれかで事業を実施した場合は一定程度
の競争環境の形成が見込めるものといえる。
(3)民間事業者のノウハウ及び創意工夫の発揮余地からの検討
本事業へ民活手法を導入し民間事業者のノウハウ及び創意工夫の発揮が期待される事項と
しては、リサイクルセンターの運営のほか、啓発施設における来場者を対象とした環境啓発
やイベントの開催、更に、本事業特有のリサイクルショップの運営が挙げられる。
ここで、民間事業者の業務に関するノウハウ及び創意工夫の発揮余地は、民間事業者側の
業務裁量度を高めるほど向上すると考えられる。よって、事業期間における民間事業者の自
由度が高い事業方式ほど、民間事業者の業務に関するノウハウ及び創意工夫は発揮されると
考えられる。
以上から、検討対象とする事業方式の中では、BOT方式及びBTO方式が、民間事業者
のノウハウ及び創意工夫発揮余地の観点から望ましいと考えられる。
42
(4)定性的側面からの評価のまとめ
以上の検討結果を、次のとおり整理する。定性的側面からの評価としては、組合が有する
懸念事項がクリアされ、かつ、意向調査においても参加意欲が高く、民間事業者のノウハウ
発揮をより期待できるBTO方式が最適であるといえる。
表 7-2 定性的側面からの評価のまとめ
PFI方式
各事業方式別の特性
DBO方式
BTO方式
BOT方式
◎
○
○
◎
○
◎
○
◎
○
最適
適
適
からの評価
意向調査結果
からの評価
ノウハウ及び創意工夫
の発揮からの評価
定性的側面
からの総合評価
2
定量的側面からの整理
事業経済性を検討し、現在価値換算後における各事業方式のVFM算定結果を、次のとおり
整理する。検討の結果、DBO方式が最も高いことがいえる。
表 7-3 定量的側面からの評価のまとめ
PFI方式
定量的側面からの
総合評価
BTO方式
BOT方式
4.12%
2.32%
43
DBO方式
5.13%
3
本事業におけるPFI方式導入の適正について
定性的及び定量的両側面からの検討結果を整理したものを、次のとおり示す。表から、定性
的側面からはBTO方式が、定量的側面からはDBO方式が最適な事業方式といえるものの、
①DBO方式の場合、組合の管理体制上のデメリットを有していること
②BTO方式であっても、DBO方式に次ぐ高いVFM算定結果が得られていること
を考慮すると、本事業において定性的及び定量的両側面から最も適している事業方式はBT
O方式であるといえる。
表 7-4 定性的及び定量的側面からの総合評価
PFI方式
DBO方式
BTO方式
BOT方式
最適
適
適
4.12%
2.32%
5.13%
両側面から
最も適した
事業方式
-
経済性に
おいて最適な
事業方式
定性的側面からの
総合評価
定量的側面からの
総合評価
定性的及び定量的
両側面からの
総合評価
BTO方式は、施設の整備から運営までを一貫して民間事業者に発注することにより、施設
の効率的・機能的な管理が図られる上、官民リスク分担の明確化や金融機関の監視機能による、
安定した事業遂行が期待できる。
また、施設供用開始後は施設所有権を組合が有することから、地域住民からの信頼性の確保
においても優れているものといえる。
以上を総括した結果、意向調査結果において民間事業者の参加意欲が高い事業方式であり、
かつ、定性的及び定量的両側面から優れているBTO方式を採用した上で、本事業をPFI事
業として実施することは最適であると認められる。
44
4
今後の課題
本調査にPFI方式を用いて実施する場合において想定される課題を抽出するとともに、対
応策について検討する。
民間事業者の募集に際しては、これらについて十分に検討し、低廉かつ良質な公共サービス
を提供できる企業を選定する必要がある。
(1)競争性確保上の課題
PFI方式の導入により、VFM(費用削減、サービス水準の向上)を期待することがで
きるが、複数の民間企業が参加するなど適正な競争環境が構築されることが前提である。
そのためには、より魅力的な仕組みを構築するとともに、多くの企業が事業に参入しやす
くすることが重要である。具体的には民間事業者の募集段階で検討することになる。
例えば、前者については、
「事業者提案を適正に評価すること」
、
「適正なリスク分担(特に、
ごみ量、ごみ質)」が考えられる。
また、後者については、
「過度に参加要件を厳しくしないこと」などが考えられる。
(2)事業実施スケジュール上の課題
意向調査結果から、設計、建設期間については、建築確認の許認可取得期間を考慮すると
短期間であるという意見がみられたこと、また、運営、維持管理期間については、外部環境
の変化や大規模修繕を考慮すると 18 年は長いという意見がみられた。
民間事業者の意見については検討の一要素とする上で、今後の事業実施に当たっては、事
業者選定スケジュールや供用開始時期と合わせて、事業実施スケジュールを設定する必要が
ある。
(3)啓発施設及びリサイクルショップの運営業務上の課題
本事業では啓発施設の運営を事業範囲に含めることを想定しているが、啓発施設の運営に
当たっては、本事業用地の隣接地において進行しているごみ焼却施設に整備予定の啓発施設
との機能連係若しくは住み分け等を検討した上で、本事業においての位置づけを明確にする
必要がある。
また、リサイクルショップの運営業務については、プラントメーカーに対する意向調査結
果ではリスク分担を懸念する観点から、肯定的な意見は多く見受けられなかった一方、組合
が別途実施したリサイクルショップ運営者に対する意向調査においては、過半数以上の企業
が関心を示す結果となった。
リサイクルショップの運営に当たっては、リサイクルショップ運営者からリスク分担上の
懸念やアクセスの不便さによる集客率低下を懸念する意見がみられたことから、本事業をP
FI事業として実施することによる適切なリスク分担の設定と、集客率向上のための民間事
業者のノウハウ発揮余地を確保するスキームとするための検討が必要である。
45
御殿場市・小山町広域行政組合
ごみ再資源化施設(リサイクルセンター)整備
PFI導入可能性調査【概要版】
平成24年(2012年)9月
■発行
■編集
御殿場市・小山町広域行政組合
御殿場市・小山町広域行政組合
施設課
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静岡県御殿場市萩原 483 番地
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