第19回日本柔道整復接骨医学会学術大会

第19回日本柔道整復接骨医学会学術大会
富山で盛大に開催!斉藤和利会員堂々の発表!
― 学術部のイケイケ日記 part2 ―
今年の日本柔道整復接骨医学会学術大会は、まだ残暑厳しい9月19日(日)と
20日(月・祝)の両日、(社)日本柔道整復師会北信越接骨学会富山大会の会場で
もあった富山国際会議場において盛大に開催されました。北信越での開催は、長野県
に次いで2県目となります。本県からは、砂子会長、日整広報部員の宮下総務部長、
発表者の斉藤和利会員はじめ13名ほどの参加でした。学術部としては、近隣県の富
山県開催ということで多くの参加を期待していたのですが、ちょっと念が残るものと
なりました。
それはさておき、お待たせしました!今年も独断と偏見、そして若干のエビデン
ス?を加えてお送りします。ちょっと、日が経ち過ぎての執筆(11月下旬)となり
ましたが、記憶を辿り広報誌も参考にしての「学術部のイケイケ日記」第2弾です!
【一日目】
午前5時、愛猫ソラに頬を舐めずりされ起床する。妻と手分けして家事(男女共同
参画だあ)と身支度を済ませ、愛猫に見送られ愛車プリウスで7時に出発する。今年
も妻がちゃっかり同行し、隣で早くもルンルン気分である。久しぶりに富山の手話仲
間に会えるとあってか、いつになくチョーご機嫌である。「何処へ行こうかしら?何
を食べようかしら?」とか、なんともまあ、羨ましい限りである。車は快調に走り、
あっという間に9時過ぎに会場到着。妻は、そのまま車で何処かへ立ち去り、残され
た私は気を引き締めて、いざ学会へ!受付に行くと、恐れ多くも大阪の鑪野前会長自
ら受付準備の真っ最中である。本当に早朝より頭が下がります。挨拶と受付を済ませ
るも、開始までにはまだ時間があるので、一息入れるために1階の喫茶店に入る。そ
こには、学生たちに講義中(笑)の竹内義享先生がいらっしゃるではないか。早速昨
年の学術研修会のお礼をし、再会を喜ぶ。いつお会いしても若々しくエネルギッシュ
で、熱心である(毎年同じ感想でスミマセン)。早速、空いている席に座り抄録集を
再度チェックする。しかし、事前にチェックはしておいたものの、いざ始まるとなる
と、どの会場に行くか迷ってしまい時間ばかりが過ぎていく。結局決まらないまま、
喫茶店を出る。とにかく、2階に上がり昨年受け取れず悔しい思いをしたランチョン
セミナーの整理券(これが無かったら弁当がもらえない)をゲットする。とりあえず、
目の前の健康運動士・健康運動実践指導者登録更新講習会のC会場に向う。同会場受
付で細川先生を見かけたので、声をかけ会場に入ろうとするが、もうそこは若い人で
満席状態。「こりゃだめだ!」と即断念し、一旦1階に降りる。エスカレーターから
下のロビーに視線を落とすと、斉藤先生や東谷先生らいつものメンバーが集まって何
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やら話し合っているのが目に入る。聞くと、各会場の担当を決めているとのこと。い
つもながら、その熱心さには本当に感心する。お互いエールを交わし、再度2階に駆
け足で上がり一般発表のD会場に入る。席に着き何気なしに辺りを見渡すと、カメラ
をしっかり構えて宮下総務部長が待機していた。お聞きすると、前日の土曜日に富山
入りし、今日はC・D会場担当とのこと。本当にご苦労様です。同会場の発表で興味
を引いたのは、「腰痛に対する大腿直筋ストレッチの及ぼす効果」と「股関節マイク
ロ牽引法が関節可動域に及ぼす影響」である。「腰痛に対する大腿直筋ストレッチの
及ぼす効果」では、腰痛の発現する腰痛運動方向の4群(屈曲・伸展・側屈・回旋)
に分け、ストレッチを施し比較したところ、腰椎伸展型腰痛に対するストレッチの効
果が一番高かったとのことである。大腿直筋の緊張による骨盤過前傾が伸展型腰痛の
原因の一つであることを考えると、この結果は当然であろう。腰痛に対する、大腿直
筋など大腿筋群へのアプローチ法は様々であり報告も多種多様あるが、その選択がな
かなか難しい。当然、骨盤、股関節、膝関節の協調運動に関与する他の筋群も考慮し
た総合的な方法を選択しなければならない。今回は、大腿直筋に着目した報告になっ
ているが、そのアプローチ法の一つの選択基準となるのは確かであり参考になった。
「股関節マイクロ牽引法が関節可動域に及ぼす影響」では、自動間欠牽引装置を使
用し、股関節を末梢方向へ、1㎏、5㎏、10㎏でそれぞれ牽引した場合の関節可動
域(SLR角度)や被検者の感じるエンドフィール感覚を比較検討したところ、1㎏
牽引が一番効果的であったとのことである。つまり、ただやみくもに力まかせに牽引
するのではなく、微力な牽引ほど効果大ということである。可動域改善のための手技
は、あくまでも愛護的にソフトタッチにということである。しかし、この微妙な力加
減が難しいんだよねえ~。
次にE会場を少し覗いた後、早めに席を確保するためにランチョンセミナーのある
B会場に向う。受付で弁当とお茶を受け取り会場に入ると、佐々木宏治先生を見かけ
たので、隣の席に着き弁当を食べながら談笑し開始を待つ。
テーマは「SSP療法の基礎と臨床」で、講師は了徳寺大学健康科学部整復医療ト
レーナー学科教授の石丸圭荘先生である。言うまでもなく、SSP療法は鍼麻酔と同
様の効果を発揮するために、大阪医科大学麻酔科ペインクリニックの兵藤正義教授ら
が考案された経皮的経穴電気刺激で、我々も日常の施術で使用している。先生は、先
ずSSP療法の鎮痛機序について説明され、その後具体的にどのように応用されてい
るかを紹介していた。先生によると、その鎮痛機序は痛みを伝導する細い体性感覚神
経(C繊維)を、太い体性感覚神経(Αβ繊維)を興奮させることによってシャット
アウトするゲートコントロール理論と内因性モルヒネ様物質による鎮痛の2系があ
り、この2系を併用すれば効果大とのことである。ゲートコントロール理論について
は、昨年の北信越接骨学会石川大会や当学会で本会の永井先生がこの理論を紹介し、
小生も学術部長として論文を何回も読んでいたので、加齢と酒?ですっかり萎縮して
しまった私の脳でもなんとか理解できた(つもり)。また、応用例としては、帯状疱
疹後神経痛等神経因性疼痛に効果があり、投薬とSSPを併用すればより効果がある
とのことである。食後のせいか、途中睡魔が襲い、どこかの首相のように瞼が半分綴
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じかけてきたが、なんとか睡魔を振り払い最後まで持ちこたえることができた。それ
にしても、基礎(基本)というのは常に苦痛と根気を伴うものである。「人間辛抱。
急がば回れ、この前鬼籍に入られた作詞家星野哲郎さんじゃないけど、人生は3歩進
んで2歩下がるだなあ~」(下がってばかりだけど・・・)と妙に納得して会場を出
る。
次に、大会会長講演を聴くために3階A会場に入る。演題は「痛みと情動」で、講
師は富山大学大学院医学薬学研究部柔道整復学教授(富山医科薬科大学前学長)の小
野武年先生である。今年は、柔道整復の寄付講座が富山大学で本格的に開始された記
念すべき大会ということで、小野先生に講演をお願いしたとのことである。先生は、
先ず「情動とは、生き残るための戦術であり、人間と動物に共通の心の動きである。
痛みは苦痛でも生き残るために重要である。」と定義され、その後痛みの一般的性質
やストレス反応形式の神経経路についてサルやラットの実験結果を紹介しながら詳
しく説明していた。特に興味を引いたのは、扁桃体の機能である。先生によると、扁
桃体には物体の意味認知や評価価値ならびに快・不快情動の発現に関与するニューロ
ンが存在することなどが明らかになったとのことである。久しぶりの生理学の講義な
ので、おかげで私の扁桃体の活動は不快情動で急上昇である。情けない限りである。
この後のシンポジウムを聴くために、そのままA会場に残る。シンポジウムでは、
「運動器疾患の痛み」を共通テーマに4名のシンポジストが発表していた。先ず、名
古屋大学環境医学研究所神経系分野Ⅱ教授の水村和枝先生が、「筋性疼痛の末梢性機
構」と題して発表した。キーワードは神経成長因子(NGF)である。運動後数日経
過してから発症する遅発性筋痛の原因が、このNGFということをラットの実験で突
き止めたとのことである。次に、関西医療大学保健医療学部教授の黒岩共一先生が、
「食塩水注射実験から垣間見る疼痛機構」と題して発表した。先生は主にトリガーポ
イントについて説明し、運動器慢性疼痛においては自覚的疼痛部位と痛みの発生源が
異なることが多く、発生源を刺激すると鎮痛が得られる等と結論づけていた。次に、
富山大学大学院医学薬学研究部柔道整復(神経・整復)学講座准教授の浦川将先生が、
「筋骨格系の痛みと中枢神経系」と題して発表した。現在、同大学柔道整復学講座で
は、動物実験で慢性疼痛モデルによる中枢神経変化の解析や遅発性筋肉痛モデルによ
る理学療法効果の検討を進めているとのこと。特に、大会会長講演でも触れていた扁
桃体について更に詳しく説明し、痛みの治療機序の解明のヒントを提供していた。今
後は、扁桃体だけではなく前頭前野の役割にも着目し、痛みと治療機序解明に向けて
多角的に研究をしていきたいと力強く締めくくっていたので、その研究成果が楽しみ
である。
最後に、富山大学大学院医学薬学研究部・応用薬理学研究室教授の倉石泰先生が、
「疼痛の脊髄内メカニズム」と題して発表した。筋肉痛や関節痛など筋骨格疾患の疼
痛である炎症性疼痛には、脊髄におけるプロスタグランジン産生増加も関与し、関節
炎により脊髄後角でミトコンドリアとアストロサイトが活性化されるとのことであ
る。とにかく、疼痛は早めにとることが、痛みを遅延させないために重要だと締めく
くっていたが、
「そんなことは百も承知だよ、そのために我々は苦労しているんだよ。」
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とつい突っ込みを入れたくなってくる。(失礼しました。)
次に、各県の地域支援事業実態調査の報告を聴くためにD会場に入る。今年も、日
整介護対策班の三谷先生や藤田先生を中心に報告をしており、年々当事業への参入は
増加しているものの、相変わらず当事業については地域差があるようである。調査結
果によると、T&Gや5m歩行等に顕著な効果が出ているので、我々は自信を持って、
柔道整復師の技術・特徴を活かした当事業への取り組みをしていかなければならない
と痛感した。
いよいよ初日の最後である。整復治療手技固定分科委員会のフォーラムを聴くため
にB会場に入る。たしか「クリープを入れないコーヒーなんて!」といったCMがあ
ったが(めっちゃ古いなあ~)、やはり当フォーラムを聴かないことには話しになら
ないであろう。思ったとおり、会場はほぼ満席である。本会のメンバーも集結してい
る。今回は、「頚部損傷について」と題して4名のパネラーが発表し、座長は当分科
委員会代表の横山健二先生が務めていた。また、私の隣には当委員で大御所の蔭山直
正先生や田辺美彦先生がどっかりと腰掛けていた(いやあ、エライ所に座っちゃった
なあ~)。トップバッターは、外反母趾で著名な笠原巌先生である。先生は「頚部亜
急性損傷に対する柔整学問の構築」と題して、過労性構造体医学の見地から発表して
いた。当損傷は、重力とのバランスで力学的に解明できるとのことである。つまり、
頚部の構造的歪みや環境学的条件、足と首の関係などを総合的に診ることが必要であ
るということである。ようするに、“木を見て森を見ず”ではだめだということなの
である。次に、富山県の高橋史朗先生が「頚部捻挫の手技療法-伝承手技と手技療法
における安全性の追及-」と題して発表した。先生は、伝承手技である『熊顧術』を
紹介し、その効果や注意点を長年の経験も供覧しながら分かりやすく説明していた。
熊顧術とは、牽引しながら回旋を加える手法で、ストレッチ効果があり可動域も改善
されるが、施術のポイントが定まっていないので熟練を要するとのことである。要す
るに、手技は愛護的に行い、すぐに真似をすると危険ということである。先生は、手
技療法は形だけを真似るだけではなく、筋肉の働きや関節の正常な動きを理解して、
自分に合った方法を選択することが重要だと力説していた。3番手は、神奈川県の岩
井信明先生で、「臨床から得た手技療法-臨床の立場から-」と題して発表した。先
生によると、ペインスケールによる評価をした上で徒手整復の技法を選定し施術した
ところ、ほとんどが初回で症状が改善したとのことである。確かに、映像を見る限り、
見事に症状が改善しているが、手技が分かり難い。できれば、実演をしてほしかった。
最後は、さいたま柔整専門学校の木村都優司先生で、「外傷性頚部捻挫について-専
門教育の立場で-」と題して発表した。先生は、豊富な症例を3Dで紹介しながら、
ケベックの5分類等について詳しく説明していた。これだけの症例があるのは、さす
がに教育現場ならではと感心する。見学も歓迎とのことなので、機会があれば一度こ
の目で確かめたいものである。シンポジウムの最後に、座長の横山先生から、大御所
の蔭山・田辺両先生に総評を求めていたが、さすがに急に名指しされても、そこは海
千山千である。特に、田辺先生が、「先生方がそれぞれの症状に対して治療している
のは素晴らしいことだが、聴く方としては、どのレベルに対してどの治療をすればよ
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り良い結果を残せるかを検討していく、その土台作りが当委員会としては今後必要な
のではないか。」と締めくくっていた。実は、田辺先生は私の師匠であり従兄弟でも
ある。当学会の学術委員を長年務めていただけに、当学会に対する思い入れは人一倍
強いものがある。同意見は以前からよく聞かされていたので必ず指摘するとは思って
いたが、案の定である(笑)。当委員会の今後の更なる研究を期待したい。田辺先生
とは、昨年の大阪大会以来一年ぶりに会ったが、さすがに面目躍如たるものがある。
座長の横山先生も、その辺はよく心得ているのであろう。まあ、阿吽の呼吸といった
ところか。
これで、初日の日程は全て終了である。もう既に6時を過ぎており、会議場を出る
と辺りはすでに薄暗くなっている。お腹を空かすために、市内電車(セントラム)を
利用せず駅前のホテルまでウォーキングすることにする。途中、信号待ちしていた
佐々木先生と鉢合わせしたので、しばらく一緒に歩き駅前で別れる。今年は、妻が友
達と豪華ディナー?なので、一人ぼっちでホテルに入りチェックイン。妻が夜遅くし
かホテルに帰ってこない寂しい境遇を相憐れんでいただいたのか、偶然に同ホテルに
宿泊されている砂子会長から食事のお誘いを受け、喜んでご相伴にあずかる。日整や
会、それにプライベートなことなど、いろいろと話しをすることができ貴重な一時を
過ごさせていただいた。それにしても、会長職は大変だとつくづく思い知らされた。
本当に頭が下がる思いである。心より感謝申し上げたい。そして、ご馳走様でした。
【二日目】
妻と二人で朝食を摂った後、チェックアウトをして1階の喫茶店に入る。お互い昨
日の話をしながら(聞くだけ羨ましくなるだけだったが・・・。)、一時のコーヒータ
イムを過ごす。妻に車で会議場まで送ってもらい会場に入ると、早くも斉藤先生をは
じめ本県の先生方が集まっていた。宮下先生に玄関で記念撮影をしていただき、そこ
で皆と分かれる。先ず、一般発表のC会場に入る。興味を引いたのは、「胸郭出口症
候群における理学検査の検討-脈管テストおよび神経刺激テストの感度と特異度-」
「足関節捻挫(前距腓靭帯損傷)における治療法」「前脛腓靭帯単独損傷における誘
導テーピング」である。「胸郭出口症候群における理学検査の検討」では、胸郭出口
症候群の検査法である脈管テスト(wright テスト、Adoson テスト、Eden テスト)
と神経刺激テスト(Morley テスト、Roos の3分挙上テスト、上肢下方牽引テスト)
を、臨床検査の評価指標である感度・特異度を用いて比較検討をしていた。感度とは
その検査が疾患を発見する能力のことで、特異度とは非患者を陽性としない能力のこ
とである。
したがって、感度も特異度も高いほど、偽陽性、偽陰性となる確率が低いというわけ
である。結果は、脈管テストは感度または特異度のどちらかが低く、神経刺激テスト
は感度及び特異度がともに高かかったとのこと。結論として、信頼度では脈管テスト
よりも神経刺激テストの方が高いとしていたが、まあこれは当疾患が脈管系よりも神
経絞扼や神経の牽引が主な原因であることを考えれば、当然の帰結か。それよりも、
評価指標である感度・特異度の使用方法の方が勉強になった。しっかりマスターして
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おきたいものである。「足関節捻挫(前距腓靭帯損傷)における治療法」や「前距腓
靭帯単独損傷における誘導テーピング法」では、主に伸縮テーピング法を紹介してい
た。欲を言えば、もう少し下腿三等筋や三角靭帯からのアプローチもして欲しかった
が、それなりに参考にはなった。昼休みまでにまだ時間があったので、C会場に入る。
ちょうど、「膝関節ロッキングの整復法」の発表をしているところで、自ら膝関節の
ロッキングを体験し当会会員に整復してもらったことを詳細に報告していた。
Reduction click 法で整復できなかったため、発生機転を考慮した同法の応用を試み
たところスムーズに整復できたとのこと。整復法だけでなく、患者の視点での感想等
も交えながら説明していたので分かりやすく大変勉強になった。一旦会議場を出て、
近くの蕎麦屋で急いで昼食を摂り、会員のポスター発表を聴くために駆け足で3階の
F会場に向かう。12時30分開始という昼食時間帯にもかかわらず、早くもかなり
の人だかりである。後方からではポスターが良く見えず、内容が分かりにくかったの
が残念であった。斉藤先生の発表が近づいてきたので、席を確保するために早めに2
階D会場に入り、斉藤先生の隣の席でその時を待つ。本県の先生方も続々と集まって
くる。何題かの発表の後、いよいよ斉藤先生の登場である。演題は、「超音波骨折治
療器を併用しての症例-学生スポーツ選手の早期競技復帰をめざして-」である。県
学術研究発表会や北信越ブロック接骨学会では膝蓋骨疲労骨折のみの症例報告だっ
たが、今回は同症例だけでなく、橈骨遠位端骨折と中手骨骨幹部骨折を含めた3症例
について詳しく報告していた。発表ぶりも実に堂々としており、自信に満ちた表情を
していた。質問も若干あったが、「個別の案件については、答えを差し控えさせてい
ただく。」と答弁したどこかの法務大臣とは大違いで、一つ一つ丁寧に分かりやすく
答えていた。斉藤先生には、仕事の傍らの長期間に亘っての準備で心身ともに相当な
負担だったと思います。本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。
次に、当学術大会理事で富山県柔道整復師会会長の高崎光雄先生の教育セミナー2
を聴くために3階A会場に入る。演題は「柔道整復師の将来展望」である。先生は、
先ず柔道整復師の誕生から現代までの変遷として、柔道整復師発祥の原点や柔道整復
師の保険制度について等を説明し、途中骨折等の豊富な臨床経験をスライドで披露し、
最後に柔道整復師の将来展望を述べて当セミナーを結んでいた。先生は、今後の柔道
整復の発展には、医療専門家として医師に追随する知識の獲得と柔道整復術の伝承と
開拓が必要で、特に柔道整復術は経験医学としての側面をもつので、手技、技法、思
考の段階では論文と異なるために、我々のめざすEBMのEは Evidence(証拠)と
Experience(経験)の融合した医術との認識が必要であると強調していた。つまり、
学と術は車の両輪の如く“不離必須”であるということである。そして、柔道整復師
の進むべき道として、社会人としての生涯学習の必要性を自覚する、柔道整復師とし
て情報を収集し、医学知識技術を高める意識を持ち続ける、医療人としての自らの教
養を高めていく気概を持ち続けることが必要であり、その意味では本接骨医学会の意
義は実に大きいものがある。また、柔道整復師不要論という最悪の事態を回避するた
めには、柔道整復学の追試と柔道整復術の伝承と研究を進める、個々の柔道整復師が
未来に何ができるか認識し、柔道整復師が一丸となって継承していくことが将来を築
-6-
くとして最後を締めくくっていた。先生の熱い思いが会場に伝わったのか、セミナー
が終わるや否や拍手の嵐で、しばらく鳴り止まなかったほどである。高崎先生も無事
大役を務められて安堵したようで、満面の笑みを浮かべながら降壇し、萩原会長や阪
本副会長らが握手で出迎えていたのが非常に印象的であった。
これで全日程が終了である。会議場前で妻の迎えを待つことにする。今年も駆け足
の接骨医学会だったが、それなりの収穫はあったので満足している。ただ著作権の問
題なのか、今年は会場内での写真撮影やビデオ撮影が厳禁だったのが残念であった。
表立って撮影ができなかったため必要最小限の写真撮影しかできず、掲載写真が少な
かったこと何卒ご容赦いただきたい。来年は、10月22日(土)・23日(日)の
両日、千葉県幕張メッセで開催されるとのことである。体力の続く限り今後も妻?と
参加するつもりだが、「来年は幕張メッセだよ」と言ったら妻はどんな反応をするだ
ろうか?そう思いながら、夕日に染まり、やがて闇に沈み行く目の前の城址公園を一
人寂しくぼんやり眺めた。(完)
(文責
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森瀬
則昭)