国家公務員共済組合連合会 第2回CLOメザニン特定目的会社

ストラクチャード・ファイナンス
プロフィール
クロージング日
2005 年 7 月 15 日
裏付け資産
21の共済組合に対する
貸付債権
オリジネーター
国家公務員共済組合連合会
国家公務員共済組合連合会 第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債(発行総額100億円、2025年最終償還)
2005年7月15日 新規格付け
クラス
第 1 回メザニン
特定社債
格付け
発行額
予定償還期日
法定償還期日*
AA−
100 億円
2016年6月10日
2025年6月10日
**共通早期償還事由および調整償還事由などが発生した場合は、変更される可能性がある。
発行体
国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
受託者
住友信託銀行株式会社
社債管理会社
住友信託銀行株式会社
運営代理人
有限会社青山綜合会計
事務所
アレンジャー兼引受主幹事
大和証券SMBC株式会社
アナリスト
尼寺 啓人
東京 03-4550-8484
hirohito_niji
@standardandpoors.com
斉藤 広美
東京 03-3593-8786
hiromi_saito
@standardandpoors.com
依田 真美
東京 03-4550-8730
mami_yoda
@standardandpoors.com
格付け根拠
スタンダード&プアーズは、国家公務員共済組合連合会第2回CLOメザニン特定目
的会社(以下「メザニン発行体」)が発行する第1回メザニン特定社債に対して、上
記の通り格付けを付与した。本案件は、国家公務員共済組合連合会(以下
「KKR」)によりオリジネートされた21の共済組合を債務者とする貸付債権プール
により裏付けられている。
当該格付けは、各特定社債の利払いが全額遅滞なく行われ、かつ元本が各特定社債
の法定最終償還期日(期中に変更された場合は、変更後の法定償還期日)までに全額
償還される可能性について示唆するものである。なお、本案件は、マスタートラスト
を構成しており、今後、本案件の貸付債権プールを裏付け資産とする社債が継続的に
発行される可能性がある。
スタンダード&プアーズは、国家公務員共済組合連合会第1回CLOシニア特定目的
会社が発行する第1回A−D号特定社債を「トリプルA」に、また、国家公務員共済組
合連合会第1回CLOメザニン特定目的会社が発行する第1回メザニン特定社債を「ダ
ブルAマイナス」に、それぞれ格付けしている。本案件の発行によって、第1回A−D
号特定社債および第1回メザニン特定社債の格付けが影響を受けることはない。
格付けは、主に以下の要因に基づいている。
各共済組合の信用リスクおよび保有資産の質の分析
裏付け資産の貸し倒れリスクをカバーするために、優先劣後構造により各格付
けレベルに提供される十分な超過担保の水準
国家公務員共済組合制度の安定性
共済組合に適用されている法的規制および組織の特徴
裏付け資産のキャッシュフロー分析
流動性リスクをカバーするためのキャッシュリザーブの水準
本案件の法的な仕組みの安定性
Standard & Poor’s ストラクチャード・ファイナンス SALES REPORT
1
国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
本案件の強み
• 裏付け資産の貸し倒れリスクをカバーするために、当初インベスター受益権の残
高に対して、12.9%に相当する超過担保が優先劣後構造により提供されている。
• 国家公務員共済組合制度は国との関連性が強く安定していることから、貸付債権
の債務者である共済組合の信用力は高い。
• 共済組合の保有資産の質は良好であり、また、事業内容が法的に制限され、財務
大臣の監督下で事業運営が行われていることから、将来的に保有資産の質が変化
するリスクが低い。
• 流動性リスクを十分カバーできるだけのキャッシュリザーブが、初回の回収金に
より信託勘定内に積み立てられる予定である。
リスク要因とその緩和要因
裏付け資産のキャッシュフローの不確実性
本案件の裏付け資産である貸付債権の返済条件は、一般的な貸付債権の約定返済
方法と異なっており、当該貸付債権を原資として債務者である共済組合が組合員に
対して貸し付けた貸付金(以下「組合員貸付」)からの回収金を、各年度末まで
に、KKRに引き渡すことにより返済する仕組みになっている(図表7を参照)。した
がって、貸付債権プールの将来キャッシュフローは、組合員貸付のキャッシュフロ
ーにリンクすることになるが、組合員貸付の返済スケジュールに関する詳細なデー
タが提供されていないことから、貸付債権プールの将来キャッシュフローの不確実
性が高く、本社債の法定償還期日までに、裏付け資産からの全額回収が行われない
リスクがある。このリスクに対し、スキーム上で次のような仕組みを導入すること
により、当該リスクが緩和されている。
1) 毎年2月に、当年4月から翌年3月までの期間における回収予定金額を、各共済
組合から報告されるプロセスが確立している。
2) 各社債の予定償還期日に先立ち、元本回収金を信託内に留保し、元本償還に備
える期間(元本積立期間)が設定されている。
3) 元本回収率が一定の水準を下回った場合や、セラー受益権の残高が一定の水準
を下回った場合、早期償還が開始されるトリガー(共通早期償還事由)が設定
されている。
4) 共通早期償還事由が発生した場合、セラー持ち分を含めたすべての回収金を本
社債の償還に充当することにより、元本償還を早める仕組みとなっている(こ
の段階では、超過担保は毀損していないことから、超過担保からの回収金も期
待できる)。
5) 調整償還事由が生じた場合、法定償還期日が、その時点より30年後に変更さ
れる。
各共済組合の相関性
現時点において、各共済組合は、クレジットリスクの観点において独立性が認め
られるも、将来的に整理統合、すなわち共済組合同士の合併の可能性も考えられる
ことから、中長期的には相関がさらに高まる可能性がある。スタンダード&プアー
ズでは、この点を加味した上で信用補完比率を算出している。
オリジネーターの概要および背景
国家公務員共済組合制度
本案件のオリジネーターであるKKRは、国会公務員共済組合制度のもと設立された
法人である。国家公務員共済組合制度とは、国家公務員の病気、負傷、出産、休業、
災害、退職、障害、死亡、または国家公務員の被扶養者の病気、負傷、出産、死亡、
災害に関して、短期給付または長期給付を行い、あわせて福祉事業を運営し、国家公
務員およびその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに、当該国家公務員
の公務の能率的運営に資することを目的としている社会保険制度である。
Standard & Poor’s ストラクチャード・ファイナンス SALES REPORT
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
国家公務員共済組合
国家公務員共済組合制度は、国家公務員共済組合法(以下「国共法」)第3条を設
立根拠とし、各省庁ごとにその所属職員で組織された21の国家公務員共済組合(以
下「共済組合」)により運営されている。共済組合は、主に下記の事業を行ってい
る(共済組合の一覧および組合員数については、図表1を参照)。
<共済組合の事業内容>
(1)短期給付事業
「短期給付」とは、組合員またはその扶養者の病気、負傷、出産、死亡、休
業もしくは災害などに対する保健給付、休業給付および災害給付のことで、
健康保険法の代行制度である。
(2)長期給付事業
「長期給付」とは、組合員の退職、障害もしくは死亡に関して、それぞれの
事由により支給する退職共済年金、障害共済年金、遺族共済年金などの各種
給付のことあるが、給付の決定および支払い、費用の計算、積立金等の運用
などの業務はKKRが行っている。
(3)福祉事業
組合員の福祉の増進に資するため、以下の福祉事業に関する業務を実施して
いる。
組合員およびその被扶養者の健康教育、健康相談、健康診査その他の、
健康の保持増進のための必要な事業
組合員の保養もしくは宿泊、または教養のための施設の経営
組合員の利用に供する財産の取得、管理または貸付
組合員の貯金の受け入れ、またはその運用
組合員の臨時の支出に対する貸付
組合員の需要する生活必需物資の供給
その他、組合員の福祉の増進に資する事業で、定款で定めるもの
図表1:共済組合別組合員数
共済組合名
衆議院共済組合
参議院共済組合
内閣共済組合
総務省共済組合
法務省共済組合
外務省共済組合
財務省共済組合
文部科学省共済組合
厚生労働省共済組合
農林水産省共済組合
経済産業省共済組合
国土交通省共済組合
裁判所共済組合
会計検査院共済組合
防衛庁共済組合
刑務共済組合
厚生労働省第二共済組合
社会保険職員共済組合
林野庁共済組合
日本郵政公社共済組合
連合会職員共済組合
合
計
組合員数(人)
2,663
1,332
7,924
6,955
29,821
5,427
78,731
139,016
31,817
32,715
12,573
68,118
26,273
1,270
266,605
20,947
51,838
16,709
9,336
269,455
11,557
1,091,082
構成比(%)
0.2
0.1
0.7
0.6
2.7
0.5
7.2
12.7
2.9
3.0
1.2
6.2
2.4
0.1
24.4
1.9
4.8
1.5
0.9
24.7
1.1
100.0
2004年3月31日現在
Standard & Poor’s ストラクチャード・ファイナンス SALES REPORT
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
KKRの概要
KKRは、国家公務員の年金や福祉事業に関する業務を、各共済組合と共同で行う
ことを目的として国共法第21条の規定に基づき設立された法人であり、下記の業務
を行っている。主務大臣は財務大臣であり、役員の定数は、理事長1名、常務理事
6名、理事4名、常任監事2名、監事1名である。2004年3月末時点で、12,642名の職
員を有している。
<KKRの事業内容>
(1)長期給付事業
「長期給付」とは、組合員の退職、障害もしくは死亡に関して、それぞれの
事由により支給する退職共済年金、障害共済年金、遺族共済年金などの各種
給付のことで、KKRはその決定および支払い、費用の計算、積立金等の運用
などの業務を実施している。
(2)福祉事業
組合員の福祉の増進に資するため、福祉事業に関する業務のうち大規模なも
のについて共済組合と共同して実施している。
(3)その他の事業
上記事業のほか、国共法附則および他の法令に基づく事業に関する業務を実
施している。
KKRの沿革
設立からの沿革は、図表2の通りである。
図表2:KKRの沿革
日
付
昭和22年4月1日
昭和24年6月1日
昭和33年7月1日
昭和34年10月1日
昭和55年4月1日
昭和59年4月1日
昭和59年4月1日
平成9年4月1日
平成12年4月1日
平成13年1月6日
平成15年4月1日
沿
革
医療施設など福祉施設の整備が遅れていた非現業国家公務員の福利
厚生事業を行うことを目的として、財団法人政府職員共済組合連合
会が設立された。
「非現業共済組合連合会」が設立され、財団法人政府職員共済組合
連合会の一切の権利義務を承継した。
旧法が全面的に改正され、現在の国共法が施行された。これによ
り、非現業共済組合連合会も「国家公務員共済組合連合会」と改称
された。
国共法の一部改正が行われ、非現業の恩給公務員も長期給付制度が
適用されることとなった。これにより明治以来の官吏の恩給と雇庸
人の共済年金の2本立ての制度が、共済組合の年金制度一本に統合
された。
印刷局、造幣局、林野庁、建設省の 4共済組合が連合会に加入
した。
郵政省共済組合が連合会に加入(すべての国家公務員の共済組合が
連合会へ加入)した。
国家公務員および公共企業体職員にかかる共済組合制度の統合等を
図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律(昭和58
年法律第82号)の施行により、国家公務員と公共企業体職員(専売
共済組合、国鉄共済組合および日本電信電話共済組合)の共済制度
が統合され、「国家公務員等共済組合連合会」と改称された。
厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成8年法律第82号)の
施行により、旧公共企業体共済組合(日本たばこ産業共済組合、日
本鉄道共済組合および日本電信電話共済組合)が厚生年金保険に統
合され、名称は再び「国家公務員共済組合連合会」と改称された。
地方事務官制度が廃止され、社会保険関係事務および職業安定関係
事務に従事する職員は、厚生事務官および労働事務官として、国家
公務員共済組合法の適用を受けることとなった。また、新たに社会
保険職員共済組合が設立され連合会に加入した。
中央省庁等改革関係法施行法の施行により、加入共済組合が23共済
組合に再編成された。
独立行政法人化により、印刷局および造幣局共済組合が財務省共済
組合に統合され、加入共済組合が21共済組合となり、現在に至って
いる。
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
本案件の概要
(発行総額100億円、2025年最終償還)
取引の仕組み図
国家公務員
国家公務員
共済組合
国家公務員
共済組合
(債務者)
共済組合
(債務者)
(債務者)
貸付債権
貸付債権信託
特定社債 社債元利金の支払
管理会社
特定社債の
販売代金
社債管理委託契約
特定社債の
販売
優先受益権
受益権の譲渡代金
優先受益権
メザニン受益権
住友信託 劣後受益権
銀行 セラー受益権
投資家
シニア
特定目的会社
特定社債を発行
国家公務員
共済組合
連合会
大和証券
SMBC
<KKR>
メザニン受益権
サービシング委任
受益権の譲渡代金
発行代り金
メザニン
特定目的会社
特定出資
運営代理人契約
有限責任
中間法人
運営代理人
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
取引の仕組み
ストラクチャー
KKRは、自らが保有する各共済組合向けの貸付債権を住友信託銀行株式会社
(以下「受託者」)に信託譲渡する。
この信託譲渡を行うにあたり、民法467条に基づき、確定日附ある証書により債
務者の異議なき承諾を取得することにより、債務者ならびに第三者対抗要件を
具備する。
この信託により、KKRはシリーズ2005-2優先受益権、シリーズ2005-2メザニン
受益権、セラー受益権およびシリーズ2005-2劣後受益権を取得する。シリーズ
2005-2優先受益権、シリーズ2005-2メザニン受益権およびシリーズ2005-2劣後
受益権を総称して「インベスター受益権」という。
KKRは、シリーズ2005-2優先受益権をシニア発行体に、シリーズ2005-2メザニ
ン受益権をメザニン発行体に譲渡する。
シニア発行体は、シリーズ2005-2優先受益権を裏付け資産とした第1回A−D号
特定社債を発行し、またメザニン発行体は、シリーズ2005-2メザニン受益権を
裏付け資産としたメザニン特定社債を発行することにより資金調達を行う。
シニア発行体およびメザニン発行体は、KKRにシリーズ2005-2優先受益権およ
びシリーズ2005-2メザニン受益権の購入代金を支払う。
受託者は、KKRにサービシング業務を委任する。
KKRは毎月、前月分の回収金にかかる報告を原則、当月第6営業日までに行う。
回収金については、回収金引渡日(当月第16営業日)までに受託者へ引き渡す。
受託者は、貸付債権プールにかかる回収金および信託財産に属する金銭を、信
託契約に従い各受益者に配分する。
KKRは、本案件のクローズ日以降、新たにオリジネートした貸付債権を受託者
に追加信託するものとし、この追加信託が行われた場合、セラー受益権の元本
が増加する。将来的に、KKRは、一定の条件を充足することを前提に、このセ
ラー受益権を分割し、新たな優先受益権およびメザニン受益権を作成すること
により、継続的な資金調達を行うことができる(本案件には、マスタートラス
トの仕組みが導入されている)。
Standard & Poor’s ストラクチャード・ファイナンス SALES REPORT
6
国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
資金分配方法
本案件の資金分配方法の概要は、以下の通りである。本社債は、各予定償還期日
に一括償還が予定されており、通常期間中に回収された元本回収金はセラー受益権
の償還に充当される。元本積立期間中に回収された元本回収金は、直後に償還が予
定されている特定社債の償還予定金額に達するまで、信託勘定内に積み立てられ
る。本案件では、下記に記載するトリガー事由が設定されており、これらのトリガ
ーに抵触した場合は、資金分配方法が変更される。
利息回収金
共通利息勘定
公租公課の支払
サービサー手数料、
信託報酬等の支払
各シリーズシニア
配当交付勘定
シニア配当の支払
不足があれば振替
共通現金
準備勘定
諸費用の支払
各シリーズメザニン
配当交付勘定
メザニン配当の支払
共通現金準備勘定へ
振替
不足があれば振替
劣後支払
留保勘定
共通元本勘定へ振替
(過去取崩し分)
劣後支払留保
勘定へ振替
各シリーズ
利息勘定
各シリーズ劣後
配当交付勘定
持分割合で按分
セラー配当勘定
インベスター配当
準備金勘定
セラー配当の支払
元本回収金
共通元本勘定
共通利息勘定へ振替
①通常期間中は、元本割合で按分
②元本積立期間中は、全額を各シリーズ元本勘定へ
③共通早期償還期間中は、全額を各シリーズ元本勘定へ
④調整償還期間中は、元本割合で按分
セラー元本償還
セラー元本勘定
各シリーズ
元本勘定
通常期間中のみ全額を
セラー元本勘定へ振替え
インベスター配当準備
勘定へ振替
インベスター元本償還
準備金勘定へ振替
インベスター元本償
還準備金勘定
各シリーズシニア
元本償還勘定
各シリーズメザニン
元本償還勘定
シニア元本償還
メザニン元本償還
各シリーズ劣後
元本償還勘定
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
シリーズ早期償還事由
シリーズ早期償還事由には、以下の事由が含まれる。シリーズ早期償還事由が発
生した際には、当該シリーズのインベスター受益権に充当された元本回収金の全額
が、各シリーズの優先受益権の元本償還にプロラタで充当される。
(1) 当該シリーズの劣後受益権の信託元本が当初の10%未満になった場合
(2) 当該シリーズの優先受益者またはメザニン受益者に対して予定元本償還ができな
いことが判明した場合
(3) 当該シリーズの優先受益者またはメザニン受益者に対して予定信託配当ができな
いことが判明した場合
共通早期償還事由
共通早期償還事由には、以下の事由が含まれる。共通早期償還事由が発生した際
には、元本回収金の全額が、各シリーズのインベスター受益権の元本償還にプロラ
タで充当される。
(1) 金利逆ざや指数が1.0を超過した場合
(2) 元本回収率(*)が20.0%を下回った場合
(3) セラー受益権の信託元本額が、当該時点におけるすべてのインベスター受益権
の信託元本額の合計額の5.0%を下回ることとなったためにセラー受益権の元
本償還が行われず、共通元本勘定に金銭が積み立てられた場合
(4) KKRにより、現存するすべての信託債権が買い取られた場合
(5) すべてのシリーズについて、シリーズ早期償還事由が発生した場合
(6) 法令変更、法令の解釈の変更、タックスイベントなどの発生
(7) KKRが追加信託を行わなかった場合、または貸付制度が変更もしくは廃止さ
れ、新規の貸付実行が停止された場合
* 元本回収率=a ÷ b
a =4月から翌年の3月までの期間に関する年度返済予定額の合計額
b =インベスター受益権の信託元本額の合計額
調整償還事由
以下の調整償還事由が発生した場合、インベスター受益権とセラー受益権に対す
る元本の償還方法が変更され、両受益権はパリパスで償還される。
(1) 劣後受益権が当初の信託元本額の1.0%を下回った場合
(2) 日本国債の支払期日に当該日本国債の利金の支払い、または元金の償還が行わ
れず、その状態が7日以上継続した場合
(3) 過半数の共済組合が、国家公務員共済組合法に基づく国家公務員共済組合でな
くなった場合
(4) 国家公務員共済組合法が、これに代わる別の法律が制定されることなく廃止さ
れた場合
(5) 破綻債権が発生した場合
発行される社債の内容
通常期間・元本積立期間
特定社債
発行金額
裏付け資産
予定償還期日
法定償還期日
元本
第1回A号
400億円
シリーズ2005-2 A号優先受益権
2009年6月10日
2020年6月10日
シリーズ早期償還期間
配当
元本
配当
固定
各号予定償還期日に
一括償還
6、12月
プロラタ
(年1回6月)
6、12月
プロラタ
(年1回6月)
6、12月
元本
調整償還期間
配当
月次パススルー
6、12月
第1回B号
300億円
シリーズ2005-2
B号優先受益権
2011年6月10日
2020年6月10日
固定
各号予定償還期日に
一括償還
第1回C号
150億円
シリーズ2005-2 C号優先受益権
2013年6月10日
2020年6月10日
固定
各号予定償還期日に
一括償還
6、12月
プロラタ
(年1回6月)
6、12月
第1回D号
50億円
シリーズ2005-2 D号優先受益権
2016年6月10日
2020年6月10日
固定
各号予定償還期日に
一括償還
6、12月
プロラタ
(年1回6月)
6、12月
第1回メザニン
100億円
シリーズ2005-2
メザニン受益権
2016年6月10日
2025年6月10日
固定
各号予定償還期日に
一括償還
6、12月
優先受益権償還後
(年1回6月)
6、12月
備 考
共通早期償還期間
配当
毎月
月次パススルー
月次パススルー
毎月
月次パススルー
月次パススルー
毎月
月次パススルー
*各トリガー事由
の発生により変更
される可能性があ
る。
Standard & Poor’s ストラクチャード・ファイナンス SALES REPORT
元本
月次パススルー
月次パススルー
毎月
優先受益権償還後、
月次パススルー
・法定償還期限が、
最も遅いシリーズの
法定償還期限に変更
される。
毎月
優先受益権償還後、
月次パススルー
・法定償還期限は、
トリガー発生時点か
ら30年後に変更され
る。
8
国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
裏付け資産の概要
本案件は、21の共済組合を債務者とする貸付債権プールにより裏付けられている
(組合別の貸付債権残高については、図表4を参照)。スタンダード&プアーズで
は、KKRやアレンジャーから提供された資料、KKRとのデュー・デリジェンス・ミ
ーティング、独自の調査などにより、様々な視点において裏付け資産の調査・分析
を行った。
図表3:ローンプールの概要*
総額
ローン件数
残高加重平均ローン金利
最高金利
最低金利
734,572,728,608円
21件
2.85%
6.40%
2.00%
*2005年5月31日現在
図表4:共済組合別の貸付債権残高*
共済組合名(債務者)
衆議院共済組合
参議院共済組合
内閣共済組合
総務省共済組合
法務省共済組合
外務省共済組合
財務省共済組合
文部科学省共済組合
農林水産省共済組合
経済産業省共済組合
厚生労働省共済組合
国土交通省共済組合
裁判所共済組合
会計検査院共済組合
刑務共済組合
厚生労働省第二共済組合
防衛庁共済組合
連合会職員共済組合
林野庁共済組合
日本郵政公社共済組合
社会保険職員共済組合
合計
組合貸付残高(円)
1,706,137,457
1,154,449,462
6,059,408,000
5,674,513,440
19,218,639,000
2,924,836,304
70,916,095,770
63,781,847,406
25,917,211,652
9,244,434,542
22,063,027,000
58,688,977,564
14,025,330,353
496,963,000
12,743,066,000
13,963,303,000
216,762,310,000
4,291,737,800
5,603,282,468
165,357,412,933
13,979,745,457
734,572,728,608
構成比(%)
0.23
0.16
0.82
0.77
2.62
0.40
9.65
8.68
3.53
1.26
3.00
7.99
1.91
0.07
1.73
1.90
29.51
0.58
0.76
22.51
1.90
100.00
*2005年5月31日現在
図表5:貸付利率別残高*
2.00%
2.50%
3.00%
3.50%
4.00%
4.50%
5.00%
5.50%
6.00%
貸付利率
2.00%
超
2.50%
超
3.00%
超
3.50%
超
4.00%
超
4.50%
超
5.00%
超
5.50%
超
6.00%
超
6.50%
合 計
以下
以下
以下
以下
以下
以下
以下
以下
以下
以下
ローン残高(円)
9,183,443,517
106,032,547
627,558,978,152
34,649,558,934
28,094,127,290
23,751,203,693
10,601,067,415
625,172,640
0
3,144,420
構成比(%)
1.25
0.01
85.43
4.72
3.82
3.23
1.44
0.09
0.00
0.00
734,572,728,608
100.00
*2005年5月31日現在
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第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
組合貸付の特徴
本案件の裏付け資産である各共済組合に対する貸付債権(以下「組合貸付」)
は、KKRが行っている年金積立金の運用の一環として、各共済組合に対して貸し付
けられたものであるが、各共済組合はこの資金を原資に、福祉事業として組合員に
対する貸付事業を行っている。図表6の通り、組合貸付は、組合員貸付と密接な関係
にあり、組合貸付の返済は、組合員貸付のキャッシュフローにあわせて行われる仕
組みとなっている。したがって、組合員貸付の約定返済スケジュールは確定してお
らず、組合貸付の返済状況に左右されることになる。そのほか、組合貸付にかかる
諸条件は、図表7の通りである。
図表6:組合貸付制度
福祉事業
<組合員貸付>
年金積立金の運用
<組合貸付>
借入れ申込み
国家公務員
国家公務員
共済組合
共済組合
組合員
(債務者)
(債務者)
貸付け
図表7:組合貸付の諸条件
項 目
各共済組合に対する
貸付資金枠の決定
貸付実行
元本返済
貸付利率
利息返済
借入れ申込み
各共済組合
(貸付経理)
国家公務員
共済組合
連合会
貸付け
内
容
KKR が、毎年度、共済組合と協議のうえ決定する。
共済組合から借り入れの申し込みを受けた時、その都度、実行
する。
(1) 共済組合は、組合員に対する貸付(特別住宅貸付を除く)の
ための資金については、組合員から返済された金額を返済日
の属する年度末までに KKR に返済する。
(2) 組合員に対する特別住宅貸付のための資金については、共済
組合は、組合員から返済があった都度、その金額をすみやか
に KKR に返済するものとする。
(3) 共済組合は、(1)、(2)の規定にかかわらず、KKR と協議のう
え、借入金の全額または一部を臨時に返済することができる。
(4) 共済組合が、組合員からの返済金をもって、他の組合員に対
する貸付を行う時、KKR は、当該貸付を行う相当額につい
て、組合貸付が返済されたものとし、かつ、同額を新たに貸
し付けたものとする(「振替貸付」)。
貸付利率は、年 4.0%とする。ただし、国共法施行規則附則第 7
項、第 8 項または第 9 項に該当する場合(財投金利が 4.0%を下
回っている場合など)の貸付利率は、当該各項の規定により財
務大臣が定める利率とする。
利息は、貸付を行った日から付すものとし、共済組合は、当月
分の貸付金の利息(1円未満切り捨て)を翌月末日までにKKRに
返済する。
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
組合員貸付制度の概要
各共済組合は、国共法第98条第1項第5号に基づき、組合員に対する福祉事業とし
て、組合員に対する貸付事業を行っている。この組合員貸付制度の概要は図表10の
通りで、主に住宅の取得資金として利用されているようである(図表11を参照)。
この組合員貸付の原資はKKRからの借入金で調達しているが、国共法施行規則第81
条の2において、各共済組合は、貸付事業の利益金を貸付残高の10%に相当する金額
まで内部積み立てをするように定められており、当該制度の安定化が図られてい
る。また、組合員貸付の主な特徴は、以下の通りである。
組合員貸付の返済は、給料天引きにより行われている。
各共済組合は、組合員貸付の貸し倒れに備えるため、損害保険会社と保険契約
を締結している。
団体信用生命保険に加入している。
図表8:連合会長期経理資金の組合の貸付経理に対する貸付年次推移
図表9:残高加重平均金利の推移(%)
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国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
図表10:組合員貸付の規定
普通貸付
特別貸付
住宅貸付
特別住宅貸付
資金使途
項
目
組合員が臨時に必要
とする資金
組合員等の結婚、災
害、教育等を事由に
必要とする資金
組合員などの居住す
る住宅の新築、購
入、増改築などのた
めに必要とする資金
借入資格
組合員期間が6カ月
以上
月収の 6 カ月分
組合員期間が6カ月
以上
月収の 14 カ月分
(教育資金の場合、
資金使途により異
なる)
組合員期間が3年
以上
組合員期間が 10 年
以上の場合、次の a
または b のいずれか
少ない額
a. 5 年後退職手当て
の額+5 年間の
返済金額
b. 2,000 万円
一定の資格を満たし
ており 5 年以内に定
年退職する組合員、
または 2 年以内に退
職する予定の組合員
に対する住宅資金
上記
(発行総額100億円、2025年最終償還)
貸付
限度額
返済期間
90 カ月以内
返済方法
元金均等毎月返済
(期末手当て併用も
あり)
90−140 カ月以内
(資金使途により異
なる)
元金均等毎月返済
(期末手当て併用も
あり)
貸付金利
4.26%
2.96%
貸付制限
返済比率
30%以内
返済比率
30%以内
(組合員期間より異
なる。最低保証金額
の設定あり)
360 カ月以内
(借入金額により異
なる)
元金均等毎月返済、
元利金均等毎月返済
(期末手当て併用も
あり)
2.96%
返済比率
30%以内
退職手当等の額の
範囲内で最高 2,000
万円
2 年または 5 年以内
期日一括
(利息は毎月)
3.26%
返済比率
30%以内
図表11:貸付区分別残高*
貸付区分
ローン残高(円)
構成比(%)
普通貸付
特別貸付
一般住宅貸付
特別住宅貸付
23,314,230,152
29,951,834,425
680,431,134,031
875,530,000
3.17
4.08
92.63
0.12
合 計
734,572,728,608
100.00
*2005年5月31日現在
格付け手法
各組合貸付のクレジットリスクについて
本案件は、21の共済組合に対する組合貸付により裏付けられている。この組合貸付
は、KKRが行っている年金積立金の運用の一環として、各共済組合に対して貸し付
けられたものであり、各共済組合はこの資金を原資として、所属する組合員に対する
貸付事業を行っている(図表6を参照)。
各共済組合では、事業ごとに独立して経理処理を行っており、貸付業務関連の事
業については「貸付経理」として、その他の福祉事業とは分別して管理されてい
る。また、組合貸付の返済は、組合員貸付からの回収金が充当されることから、各
組合貸付の信用力は、債務者である共済組合が保有する組合員貸付のローンプール
の信用力に依拠していると言えなくもない。
しかしながら、組合員貸付事業以外の事業を行っている共済組合があることか
ら、各組合貸付の信用力が、組合員貸付のローンプールの信用力に完全に依拠して
いるとは言い切れない。よって、スタンダード&プアーズでは、各共済組合を一事
業体と見なしてクレジットリスクを評価している。
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第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
ローンポートフォリオの評価方法
組合貸付で構成されたローンポートフォリオを評価するにあたり、スタンダード
&プアーズでは、次の2つの視点で分析を行った。
1) ローンプールのグロス・デフォルト率
2) デフォルトした債権の回収率
スタンダード&プアーズでは、ローンポートフォリオのグロス・デフォルト率を
分析する場合、「CDOエバリュエーター」 (*)という自社開発ツールを使用してい
る。このツールに、各共済組合のシャドーレーティング、ローン金額および期日な
どのデータを入力し、さらに相関関係を考慮した上で同ツールをランさせることに
よりグロス・デフォルト率を求めた。
次に、デフォルトした債権の回収率の分析を行った。デフォルトした債権からの
回収額の算定は、一般的に、債務者の所在国、優先・劣後性、債権の種類などをベ
ースに行っているが、さらに、本案件では共済組合の事業内容や法的規制なども考
慮している。
*「CDOエバリュエーター」とは、スタンダード&プアーズが、CDO(Collateralized debt
obligations)案件の格付け分析や、モニタリングを行う際に用いている分析ツールで
ある。このツールは、モンテカルロ手法を取り入れており、各債務者の格付け、ローン
債権金額、各ローンの期日、それに個々の債務者間の相関関係を勘案した上で、ポート
フォリオ全体の信用力を評価している。ポートフォリオの信用力評価は、潜在デフォル
ト率の確率分布を表す形で表現される。この確率分布に基づいて、CDOエバリュエー
ターは、格付けレベルに適したストレス・デフォルト率を推定する。ストレス・デフォ
ルト率とは、各格付けレベルにおいて当該格付けレベルに相当するストレス下において
発生する可能性のある累積デフォルト率の最高限度を示すものである(2004年5月25日
付のリポート「CDOエバリュエーターによる分析手法」を参照)。
キャッシュフロー分析
本案件の裏付け資産である組合貸付の返済スケジュールは、この組合貸付を原資
として貸し出された組合員貸付のキャッシュフローにリンクして行われる仕組みに
なっている。しかし、組合員貸付の返済スケジュールに関する詳細なデータが提供
されていないことから、組合員の年齢構成などの属性に関するデータ、貸付規定、
回収実績に関するヒストリカルデータ、元本回収率のトリガーレベルなどから、将
来キャッシュフローを保守的に見積もった上で、本案件の資金分配方法などのスト
ラクチャーに従い、キャッシュフロー分析を行っている。
信用リスクの分析
スタンダード&プアーズでは、下記の分析で求められたネット・ロス率に基づき、
格付けレベルに応じた信用補完水準を決定している。
各共済組合のクレジットリスクの評価
各省庁ごとに構成される国家公務員共済組合は、日本政府に雇用される国家公務
員の相互扶助事業を行うことを目的としており、主な事業は、1)健康保険に相当す
る短期給付事業、2)公的年金制度の一部である長期給付事業、3)宿泊施設の運営
や組合員に対する貸付を行う福祉事業、の3つである。2001年の特殊法人等整理合理
化計画において、福祉事業の整理を構ずべきとされたものの、組織形態としては、
基本的に従来の形態を維持するものとされている。短期給付、長期給付とも、国家
公務員が存在する限り制度の運営・維持が図られると見込まれることから、事業基
盤は極めて強固と考えられる。また、これら2事業には雇用主である日本政府による
国費投入も手厚く、将来も財政支援が続くと予想される。さらに、通常の業務運営
については、各組合は財務大臣の監督下にあることから、共済組合の信用力は国と
極めて近いと考えられる。将来的に、健康保健・年金制度の改革が行われる可能性
はあるが、国の信用力が急激に下がるような局面でなければ、各共済組合の信用力
を損なうような方向での改革となる可能性は低いと考えられる。
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13
国家公務員共済組合連合会
第2回CLOメザニン特定目的会社
第1回メザニン特定社債
(発行総額100億円、2025年最終償還)
各共済組合の相関関係
各組合員の雇用主は共通して日本政府であること、雇用体系が一律であることな
どから、組合間の相関は、相応に高いと考えられる。また、公務員共済組合の制度
変更が視野に入ってきたため、将来的に整理統合、すなわち共済組合同士の合併の
可能性も考えられ、中長期的には相関がさらに高まる可能性も否定できない。しか
しながら、各共済組合は、福祉事業の事業内容や規模の点においてばらつきがあり、
現時点では財務状況にも相当の差が見受けられる(図表 12 を参照)。規模が大きく、
組合員が広範な地域に分布するような組合は、組合員預金が多額になり、それを預
金・投資有価証券で運用する傾向がある。一方、本省のみのような規模の小さい組
合では、組合員貸付の業務以外に目立った活動は行っていないようである(図表 12
において、組合員貸付比率が高い共済組合がこれに該当する)。これらに加え、共
済組合という事業主体としての特徴を勘案した場合、現時点においては、各共済組
合において、必ず同時にクレジットイベントが生じるとは限らない。
図表12:各共済組合の財務諸比率の分布
*2004年3月末現在
**組合員貸付比率=組合員貸付残高÷総資産額×100
事業体としての共済組合の特徴
共済組合は、事業運営を行うにあたり、国共法により図表 13 に挙げたような規制
が設けられていることから、安定性の高い事業体であると考えられる。
図表13:共済組合に関する規制
項
目
定款変更
事業契約および
予算
決算
借入金の制限
内
財務大臣の認可が必要
財務大臣の認可が必要
容
根拠規定
国共法第6条
国共法第15条
国共法第16条
国共法第17条
業務執行
財務大臣の承認が必要
借入の禁止。ただし、財務大臣の承認がある場
合は除く
連合会理事長、監事は財務大臣が任命(解
任)、他の理事は財務大臣の認可を受けて理事
長が任命(解任)
財務大臣が監督する
事業報告
毎月、財務大臣宛てに提出しなければならない
国共法第116条
監査
財務大臣は、必要があると認める時、業務およ
び財務の状況の監査が可能
財務大臣は、必要があると認める時、監督上必
要な命令が可能
罰則、過料
国共法第116条
役員の任命・
解任
命令
罰則
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国共法第29条、
第32条
国共法第116条
国共法第116条
国共法第128条、
第129条
14
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信用補完比率の算出
(1)グロス・デフォルト率
スタンダード&プアーズでは、上記の分析結果を踏まえ、各共済組合にシャ
ドーレーティングを付与し、また相関係数を決定した上で、これらのデータ
に加え、ローン金額、期日などのデータを CDO エバリュエーターに入力す
ることで、各格付けクラスにおけるグロス・デフォルト率を算出した。
(2)回収率
本案件において、組合貸付の債権者(=受託者)は、組合員貸付のローンプ
ールに対して何らの担保権などを有していないことから、仮に、共済組合に
おいてクレジットイベントが生じた場合、受託者は、各組合に対する無担保
の債権者としての地位にとどまることになる。しかしながら、共済組合は、
事業目的や事業活動が法的に制限されていることから、積極的な事業活動を
行っている一般的な事業法人と比べて、将来的に保有資産が変動する可能性
が低く、また、債務負担行為についても法的に制限されている(つまり、債
権者が限定されている)ことから、本案件の債権者は、共済組合の資産価値
に応じた相応の回収が期待できると考えられる。スタンダード&プアーズで
は、これらの共済組合の特徴を考慮した上で、各共済組合が保有している各
種資産について、資産の種類別に分析を行い、格付けレベルに応じたストレ
スシナリオ下における資産種類別回収率を保守的に見積もった。次に、この
資産種類別回収率を用いて、各共済組合の資産価値の査定を行い、当該資産
価値を負債総額で除して、本案件の裏付け資産である組合貸付の回収率を算
出している。
(3)ネット・ロス率
以上の結果を踏まえ、「グロス・デフォルト率 ×(1−回収率)」の算式か
ら、格付けレベルに応じたネット・ロス率を算出した。
(4)キャッシュフロー分析
スタンダード&プアーズは、今回発行される各特定社債の発行条件、各格付
けレベルにおける回収率、案件のウォーターフォールなどを考慮した上で、
キャッシュフロー分析を実施している。本案件を構成する裏付け資産の特徴
を、スタンダード&プアーズが想定する金利シナリオ、デフォルト発生タイ
ミング、デフォルト債権からの回収シナリオなどに反映し、キャッシュフロ
ー上で、各格付けレベルで許容される最大損失額を求めることにより、信用
補完比率を決定している。
仕組みの分析
サービシングに関するリスク
貸付債権のサービシングは、オリジネーターであるKKRが引き続き行う。スタン
ダード&プアーズでは、KKRとのデュー・デリジェンス・ミーティングを通じて、
サービシングに関する組織体制などについてヒアリングを行った。スタンダード&
プアーズでは、今般の証券化実施にあわせて改定された貸付債権にかかる事務要綱
および事務取扱要領の内容、KKRとのデュー・デリジェンス・ミーティングの結果
などを勘案、KKRは十分なサービシング能力を有するものと判断している。なお、
本案件でバックアップ・サービサーを設置していないが、サービサーが交替した場
合、受託者は自らが信託事務を行う義務を負っている。
コミングリング・リスク
貸付債権にかかる回収金は、サービサーであるKKRに支払われる。KKRは当月の
回収金を翌月の第16営業日に受託者に引き渡すため、この期間中にKKRにデフォル
ト事由が発生し、回収金が受託者に引き渡されないことにより裏付け資産が毀損す
る可能性がある。本案件では、コミングリング・ロスを超過担保でカバーする仕組
みをとっている。
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金利に関するリスク
本案件の裏付け資産である貸付債権は固定金利であり、本社債も固定金利で発行さ
れることから、金利リスクは限定的である。しかし、通常期間中(いわゆる「リボル
ビング期間中」)において、以前に貸し出された高金利の貸付債権の返済が進み、一
方で、最近オリジネートされた低金利の貸付債権が追加信託された場合、図表9に示
すように、今後、貸付債権プール内の加重平均金利が低下することにより、ネガティ
ブキャリーが発生するリスクがある。このリスクをカバーするため、貸付債権プール
の加重平均金利が、本案件に必要とされる一定以上の金利水準を下回った場合は、セ
ラー受益権への元本償還を停止し、早期償還が開始されるトリガーが設定されている
ことから、ネガティブキャリーが発生するリスクが軽減されている。
流動性に関するリスク
本案件では、配当、信託報酬などの支払いに備えて、これらの支払い金額の6カ月
分に相当する金銭が、初回の回収金の中から、キャッシュリザーブとして信託内に
積み立てられる予定である。
リーガル・リスク
メザニン発行体は、スタンダード&プアーズのバンクラプシー・リモート(倒産
隔離)性の基準を満たしている。また、その特定出資者であるKKR貸付債権証券化
機構有限責任中間法人(以下「本中間法人」)は、中間法人法に基づいて設立され
た有限責任中間法人であり、スタンダード&プアーズのバンクラプシー・リモート
性の基準を満たしている(中間法人SPVのバンクラプシー・リモート性について
は、2003年11月18日付のリポート「日本の証券化案件と中間法人−発行体・ボロワ
ーSPVの株主としての利用について」を参照)。
スタンダード&プアーズは、本中間法人がメザニン発行体の特定持分を取得する
のに先立ち、かかる特定持分の取得代金その他かかる取得に付随関連する一切の費
用を支払うために必要十分な金額の基金の拠出を受け、その基金をスタンダード&
プアーズの定める適格基準を満たす口座で管理されていることを確認していること
から、かかる特定持分の追加取得は、本中間法人が保有するすべての特定持分にか
かる特定目的会社の発行しているすべての特定社債の格付けに影響を及ぼさない。
スタンダード&プアーズ(ザ・マグロウヒル・カンパニーズの一部門)より発行 ©2005ザ・マグロウヒル・カンパニーズ
本紙の無断転写・複製を禁じます。ザ・マグロウヒル・カンパニーズ 会長兼社長−ハロルド・W・マグロウⅢ
本社−1221 Avenue of the Americas, New York, NY 10020, U.S.A.
スタンダード&プアーズ:55 Water Street, New York, NY, 10041, U.S.A.
スタンダード&プアーズ東京:東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル28階
本リポートに使用されている情報は信頼しうる筋から入手されたものですが、情報源あるいは本紙その他に人為的または機械的な誤謬が生じる可能性
があるため、情報が正確、妥当または完全である旨の保証は致しかねます。さらに誤謬や脱漏などによる損害についても責任を負いかねます。スタンダ
ード&プアーズは格付けに際し、原則として対価を受領しております。格付けの発表については、その権利を留保しており、出版物の講読料を除き料金
は受領しておりません。格付けは証券の購入や売却、あるいは保持を奨めるものではなく、また時価や利回り、ある特定の投資家に対するその証券の適
合性について言及するものでもありません。
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