身体拘束に対するリハビリの関わり - 医療法人ちゅうざん会 ちゅうざん病院

第4部 11:30∼
座長:山内 みどり
①身体拘束に対するリハビリの関わり ∼当院の実態調査をもとに∼
PT
真喜屋 賢二
②転倒・転落防止対策 ∼意識づけからはじまる第一歩∼
2階A病棟 山城 洋子
③当院での身体拘束委員会の役割
身体拘束委員会 阿波根 靖
身体拘束に対するリハの関わり
∼当院の実態調査をもとに∼
ちゅうざん病院 リハビリテーション部
○真喜屋 賢二1) 石川大輔1) 知念優子1) 照屋
杏里1) 貞松徹1) 兼城賢也2) 溝口照章3)
1)PT 2)OT 3)MD
目 的
当院では、身体拘束委員会により将来的に身体
拘束を外していくための検討が毎月行われている
ほか、日頃より病棟スタッフにおいても検討されて
いる。しかし、身体拘束を外していく判断は容易で
はなく、難渋しているのが現状である。
身体拘束が外していくためには、どのような要因
があるのかを、当院の身体拘束状況を調査した。
方 法
①対象者の選定方法
当院入院患者180名の身体拘束状況を調査した。身体
拘束71名を2週間後に追跡調査を実施し、拘束が外さ
れた者と継続した者の存在を調査。身体拘束者の疾患
別内訳・拘束内容・拘束理由を記載。
②2群間の高次脳機能障害、認知症、病識の有無、ADL
状況(FIM)
③2群間の基本動作能力状況
④身体拘束を外すことができた理由と継続した理由
⑤身体拘束が外された者の、その後の院内事故状況
結果 ①
対象は、平成18年5月13日から2週間の間に身体拘束が
確認された71名中、外れた者16名と、外されなかった者
39名。
<身体拘束内容>
車椅子固定
神経系
2%
骨折
18%
四肢紐固定
脳卒中
67%
Y字 帯
身体拘束の
疾患別内訳
廃用症
候群
13%
ミトン 使 用
ベッド柵 固 定
ベッド柵 四 方 設 置
オ ー バ ー テ ー ブル
チ ュ ー ブ抜 去
13%
0
5
10
15
20
25
30
35
便 い じり等
2%
転落
38%
40
すべ り落 ち
18%
転倒
23%
拘束理由
徘徊
6%
結果 ②
2群間の高次脳機能障害、認知症、病識の有無に有
意差はなく、ADL状況(FIM)に有意差が見られた。
2群間のADL得点変化
※
※
80
70
60
50
解除者
非解除者
(
点 40
30
)
20
10
0
実施時
2週 間 後
※ P<0.05
結果 ③
2週間後、2群間の基本動作能力を比較したところ、
身体拘束が外された者に、著明な改善が見られた。
身体拘束が外れた群
座位
起立
立位
移乗
移動
有意差あり
有意差あり
有意差あり
有意差あり
有意差あり
身体拘束が継続された群
座位
起立
立位
移乗
移動
有意差なし
有意差なし
有意差なし
有意差なし
有意差あり
結果 ④
監 視 強 化
で 必 要
る
環 境 を 変 え
経 過
な し と 判 断
身 体 機 能 面
の 向 上
身体拘束を外すことが
できなかった理由
そ の他
高 次 脳 機 能 障
害
病 識 低 下
身 体 機 能 面 の
・変 化 無
低 下
し
認 知 症
(
)
16
14
12
10
件 8
6
4
2
0
身体拘束を外すことが
できた理由
(
)
10
9
8
7
6
件 5
4
3
2
1
0
結果 ⑤
<その後の院内事故状況>
氏名
事故内容
日時
A
さん(男性) エスケープ
Bさん(男
性)
エスケープ
5月28日
5月28日
Cさん(女性) 転倒
5月28日
Dさん(男性) 転倒
5月28日
Eさん(女性) 転倒
5月30日
Fさん(男性
転倒
5月30日
Gさん(男性) 抜去
5月29日
Fさん(男性) 転倒
5月28日
Hさん(男性) 抜去
6月12日
Iさん(男性)
転落
6月30日
Jさん(女性) 転倒
6月24日
Kさん(男性) 転倒
6月25日
身体拘束が外れた者のうち、
転倒・エスケープを起こした
件数が4件(赤)
身体拘束が継続された者で、
転倒を起こした
件数が1件(緑)
これらに共通している点
は「病識の低下」であった
考察 ①
・身体拘束状況を、追跡調査前後で比較したところ、身
体拘束が外された者と、継続された者では、病識や認
知症、高次脳機能障害に有意な差がないにも関わらず、
基本動作能力、ADLでは著明な差が認められた。実際
に身体拘束が外れた理由でも、「身体機能面の向上」と
いう答えが最も多かった。
このことから、なんらかの基本動作能力の向上を図る
ことで、一部の身体拘束が外れる要因になることが示
唆された。今後、リハスタッフも、自分の担当患者がな
されている身体拘束を外していくことに積極的に取り組
んでいかなければならないことを再認識した。
考察 ②
・しかし、一方で、身体拘束を外すことができず、継続
した理由の一番多かったものには、「認知症」であった。
認知症の程度により、身体拘束が外せるかどうかの
基準があるように思われた。
・また、身体拘束を外してもよいと判断された者の、そ
の後の事故状況を調べたところ、身体拘束が外れた
12名中、3名がエスケープ、転倒を起こしていることが
わかった。これら3名に共通していたことは病識が低下
していることであったため、病識の程度も身体拘束を
外していく基準になっていくことが示唆された。