前橋泥流堆積物の地盤特性について

全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
前橋泥流堆積物の地盤特性について
【36】
㈱地研コンサルタンツ
○木村
雅史
阿部
博
田口
慎也
・洪積第1粘性土層(Dc1)
1.はじめに
前橋泥流堆積物は前橋台地~高崎台地一体に分布す
る泥流堆積物であり,大小の安山岩角礫と細粒基質か
らなる固結した土層である。
一般にこのような砂質土層における地盤調査は,標
準貫入試験によるN値に頼っているのが実状であり,
サンプリングを行い室内土質試験を実施している例は
少ないといえる。
ここでは,前橋泥流堆積物を対象として異なるサン
プリング方法で採取した試料を用いて実施した室内土
質試験結果の事例を紹介する。
層厚 0.75mでシルトを主体とする。
N値は,5 である。
・洪積第2砂質土層(Ds2)
層厚 20.75mで礫混じり火山灰質砂を主体とする。
N値は,4~33(平均N値 12)である。
・洪積礫質土層(Dg)
当該地の基盤層であり,砂礫を主体とする。
N値は,50 以上である。
2) サンプリング方法
調査は,下記の対象土層,深度でサンプリングを実
施した。
2.地盤状況とサンプリング方法
1) 地盤状況
この際,サンプリング方法としてブロックサンプリ
ングと三重管式サンプラーを用いた。
当該地の地盤状況は,図-1 に示したとおりであり,
各層の特徴をまとめると下記のようになる。
・表土層(Ts)
なお,ブロックサンプリングは,バックホウにより
幅 30m,長さ 30m,深さ 9.0mの試料採取用の穴を掘
削して,人力により乱さない試料の採取を実施し,三
層厚 2.80mで粘土,シルトを主体とする。
重管式サンプラーによる方法は,ボーリング孔を利用
N値は,2~4(平均N値 3)である。
して実施した。
・洪積第1砂質土層(Ds1)
層厚 4.95mで軽石混じりシルト質砂を主体とする。
N値は,2~4(平均N値 3)である。
・洪積第1砂質土層(Ds1)
ブロックサンプリング
G.L.-4.0m
三重管式サンプラー
G.L.-3.0~-6.0m
・洪積第2砂質土層(Ds2)
G.L.-0.00m
表土層(Ts) 粘性土
N値 3
G.L.-2.80m
ブロックサンプリング
G.L.-9.0m
三重管式サンプラー
G.L.-8.5~-12.0m
3.室内土質試験結果
洪積第1砂質土層(Ds1)
軽石混じりシルト質砂
N値 2~4(平均N値 3)
G.L.-7.75m
洪積第1粘性土層(Ds1) 粘性土 N値 5
G.L.-8.50m
洪積第2砂質土層(Ds2)
礫混じり火山灰質砂
N値 4~33(平均N値 12)
各試料で実施した室内土質試験結果は,表-1,2 及び
図-2,3 にまとめたとおりである。
表-1 洪積第1砂質土層(Ds1)の試験結果
試験項目
ρt(g/㎝ 3)
ρd(g/㎝ 3)
ρs(g/㎝ 3)
物理
wn(%)
e
Sr(%)
礫分(%)
砂分(%)
シルト分(%)
粘土分(%)
試験条件
三軸
c(kN/m2)
φ(°)
振動三軸 液状化強度比RL
粒度
G.L.-29.25m洪積第礫質土層(Dg) 砂礫 N値 50 以上
図-1 当該地の地層状況
ブロックサンプリング 三重管式サンプラー
1.611
1.593
1.005
1.090
2.698
2.701
60.3
46.1
1.685
1.482
96.6
84.4
23
33
40
35
16
19
21
13
CD
CD
4.7
3.4
32.3
24.3
0.608
0.295
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・洪積第2砂質土層(Ds2)
表-2 洪積第2砂質土層(Ds2)の試験結果
試験項目
ρt(g/㎝ 3)
ρd(g/㎝ 3)
ρs(g/㎝ 3)
物理
wn(%)
e
通過質量百分率(%)
Sr(%)
礫分(%)
砂分(%)
粒度
シルト分(%)
粘土分(%)
試験条件
三軸
c(kN/m2)
φ(°)
振動三軸 液状化強度比RL
ブロックサンプリング 三重管式サンプラー
1.878
1.981
1.394
1.556
2.752
2.749
34.7
27.3
0.975
0.767
98.1
97.9
28
47
47
34
16
14
9
5
CD
CD
7.2
5.9
37.6
38.4
0.352
0.335
湿潤密度はρt=1.9~2.0 g/cm3 であり,N値 12 の
砂質土層としては大きい値を示す。
含水比は,細粒分を含むことに起因すると考えられ
るが,wn=27~34 %程度であり,一般的な砂質土層
とくらべて若干高い値を示す。
せん断強度は,粘着力c=5.9~7.2 kN/m2,せん断
抵抗角φ=37.6~38.4°であり,平均N値 12 程度の砂
質土層としては非常に大きい値を示す。
また,ブロックサンプリングによって得られた試料
100
と三重管式サンプラーによって得られた試料では,大
90
80
きな差異はみられないが,液状化強度比RL では,RL
70
60
=0.352(ブロック)と R L =0.335(三重管式)と若干の
違いがみられる。
50
40
30
20
0.001
特徴としては,N値に比べてせん断強度の大きいこ
ブロックサンプリング
三重管式サンプラー
10
0
0.01
0.1
1
10
とがあげられる。
100
粒径(㎜)
特に,静的強度に比べて変状を与えた場合の動的強
度が低く,バックホウによる掘削を実施した際にも,
掘削直後は固結した状態にあった地盤が,バックホウ
図-2 粒径加積曲線(Ds1 層)
の走行後に流動化する現象が確認された。
通過質量百分率(%)
100
90
ブロックサンプリング
80
70
三重管式サンプラー
これは,前橋泥流堆積物が軽石,砂~砂礫を主体と
するものの,強度的には含水比の高い細粒基質に左右
されるためと考えられる。
60
50
40
4.まとめ
30
20
当該調査結果では,前橋泥流堆積物の力学特性はN
10
値との相関が低く,N値が低い割に強度が大きい結果
0
0.001
0.01
0.1
1
10
100
粒径(㎜)
図-3 粒径加積曲線(Ds2 層)
が得られた。
また,サンプリング方法としては,ブロックサンプ
リングと三重管式サンプラーで試験結果に差異がある
場合が確認された。
当該調査では,サンプル数が少ないために,この結
・洪積第1砂質土層(Ds1)
湿潤密度ρt は,1.6 g/cm3 程度と,一般的な砂質土
果をもって前橋泥流堆積物の地盤特性を位置付けるま
3
層の湿潤密度 1.8~2.0 g/cm に比べて低い値を示し,
でには至らないが,一般的な相関式が成立しにくい特
軽石による影響がみられる。
殊土として扱うことにより,サンプル数を増やし,適
また,細粒分が多いことに起因すると考えられるが,
含水比もwn=46~60 %程度と,一般的な砂質土層に
比べて大きい値を示す。
せん断強度としては,粘着力c=3.4~4.7 kN/m2,
せん断抵抗角φ=24~32°とN値(3 程度)に比べて大
きい値を示す。
また,ブロックサンプリングにより得られた試料と
三重管式サンプラーによって得られた試料では,せん
断抵抗角でφ=32°(ブロック)とφ=24.3°(三重管
式)と差がみられ,特に液状化強度比 R L では, R L =
0.608(ブロック)と R L =0.295(三重管式)と差が顕著
である。
正な評価を行うことが望まれる。