会期 (日) 2014 年 8 月30日(土)∼ 31日 会場 東京慈恵会医科大学 1 号館 会長 坂本 優 公益財団法人 佐々木研究所附属 杏雲堂病院 婦人科 目 次 学術集会長挨拶……………………………………………………………………… 4 理事名簿……………………………………………………………………………… 5 参加者へのご案内…………………………………………………………………… 8 会場のご案内………………………………………………………………………… 10 日程表………………………………………………………………………………… 13 プログラム…………………………………………………………………………… 17 抄 録 招請講演………………………………………………………………………… 23 特別講演………………………………………………………………………… 27 教育講演………………………………………………………………………… 33 シンポジウム…………………………………………………………………… 43 ランチョンセミナー…………………………………………………………… 73 一般演題………………………………………………………………………… 77 企業広告……………………………………………………………………………… 97 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 3 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 会長挨拶 学術集会 会長 坂本 優 佐々木研究所附属杏雲堂病院 さてこの度、私が日本ヒト細胞学会(事務局:㈶佐々木研究所附属杏雲堂病院) の第 32 回総会ならびに学術集会の会長に推挙され、その学術講演会を平成 26 年 8 月 30、31 日に東京慈恵会医科大学大学一号館において開催させていただくことに なりました。 日本ヒト細胞学会(Japan Human Cell Society)は 1983 年 12 月 1 日に日本ヒト 細胞研究会として発足し、以来、腫瘍学、細胞株樹立、細胞診断学、再生医学等に ついて、医学・薬学・歯学などの面から総合的な学術研究をしている研究者の団体 です。1988 年 3 月には学術機関誌(Human Cell)を創刊し、1990 年 10 月 1 日より 日本ヒト細胞学会へ改組し現在に至っております。英文誌「Human Cell」は電子投 稿システムによる迅速な査読、出版体制を維持しており、Springer 社により全世界 に配信されております。毎年開催される学術集会は、本会の重要な学会活動として 重視されており、例年、基礎、臨床両分野の多くの医師会員や研究者が参加されて おります。本学会は、我が国の医学会の中でも比較的新しい学会ではありますが、 ヒト細胞が基礎医学や生物学のみならず、臨床医学に寄与したことも大きく、その 果たすべき社会的貢献はますます大きくなっております。 来るべき学術集会の主題は 「ヒト細胞解析・遺伝子改変技術の進歩と医学・医療への応用」 とさせていただきました。海外からは招請講演として米国 NCI/NIH の Curtis C Harris 先生に「Interweaving the threads of microRNA, p53 and inflammation into the tapestry of cancer. Risk and Prognosis.」についてご講演頂くと共に、特別講演 として浜松医科大学分子解剖学の瀬藤光利先生に「質量顕微鏡の開発と応用」につ いて、京都大学再生医科学研究所の河本宏先生に「iPS 細胞技術を用いた抗原特異 的 T 細胞のクローニングと再生」について、教育講演として西尾和人先生、後藤重 則先生、左合治彦先生、植田政嗣先生の 4 名の方にそれぞれの分野の最新研究をご 発表頂く予定です。 さらに会期中は 3 つのシンポジウム「がん幹細胞」、 「分子標的診断・治療の進歩」、 「培養細胞を用いた薬剤感受性・耐性機構の解明と再生医療への応用」及び一般演 題を通して、日本ヒト細胞学会の更なる発展のため皆様に活発な討論をいただけれ ばと思っております。多くの皆様の御参加を心よりお待ち申し上げます。 4 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 理事名簿 石川 博 日本歯科大学生命歯学部再生医科学研究室 石渡 勇 石渡産婦人科病院 植田 政嗣 大阪がん循環器病予防センター 吉村 泰典 慶応義塾大学医学部産婦人科 喜多 恒和 奈良県立奈良病院周産期母子医療センター/産婦人科 菊池 義公 大木記念女性のための菊池がんクリニック・ストレスケアセンター 橘 政昭 東京医科大学泌尿器科 木口 一成 公益財団法人東京都予防医学協会検査研究センター 安田 允 多摩南部地域病院 青木 大輔 慶應義塾大学医学部産婦人科 四ノ宮成祥 防衛医科大学校分子生体制御学講座 木村 英三 立正佼成会附属佼成病院産婦人科 坂本 優 公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院婦人科 嶋田 裕 京都大学薬学研究科ナノバイオ医薬創成科学 中村 幸夫 理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室 矢永 勝彦 東京慈恵会医科大学外科学講座 大屋敷一馬 東京医科大学第一内科 岡部 正隆 東京慈恵会医科大学解剖学講座 片岡 寛章 宮崎大学医学部医学科病理学第二講座 鈴木 直 聖マリアンナ医科大学産婦人科 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 5 プログラム委員 青木 大輔 慶應義塾大学医学部産婦人科 石川 博 日本歯科大学生命歯学部再生医科学研究室 石渡 勇 石渡産婦人科病院 植田 政嗣 大阪がん循環器病予防センター婦人科検診部 宇田川康博 藤田保健衛生大学医学部産婦人科 岡本 愛光 東京慈恵会医科大学産婦人科 大屋敷一馬 東京医科大学第一内科 岡部 正隆 東京慈恵会医科大学解剖学講座 片岡 寛章 宮崎大学医学部医学科病理学第二講座 菊池 義公 大木記念女性のための菊池がんクリニック・ストレスケアセンター 木口 一成 公益財団法人東京都予防医学協会検査研究センター 喜多 恒和 奈良県立奈良病院周産期母子医療センター/産婦人科 木村 英三 立正佼成会附属佼成病院産婦人科 坂本 優 公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院婦人科 佐藤 嘉兵 日本大学生物資源科学部 四ノ宮成祥 防衛医科大学校分子生体制御学講座 嶋田 裕 京都大学薬学研究科ナノバイオ医薬創成科学 鈴木 直 聖マリアンナ医科大学産婦人科 橘 政昭 東京医科大学泌尿器科 田中 忠夫 公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院 田中 尚武 千葉県がんセンター婦人科 中村 幸夫 理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室 安田 允 多摩南部地域病院 矢内原 臨 東京慈恵会医科大学産婦人科 矢永 勝彦 東京慈恵会医科大学外科学講座 (五十音順・敬称略) 実行委員 公益財団法人佐々木研究所 実行委員長 三宅 清彦 実行委員 森本 恵爾 黒田 高史 菊池 良子 鈴木こずえ 小野塚愛子 6 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 参加者へのご案内 1.参加費(一般 13,000 円、学生〔学生証提示〕無料) 1)参加受付は会期中、 「3F 講堂(A 会場)前のロビー」の総合受付で行います。 2)受付時間 8 月 30 日(土)12:30 ∼、8 月 31 日(日)8:30 より開始いたします。 3)参加費のお支払いは現金のみです。会場では参加証を必ずご着用ください。 4)学生(学部学生・大学院生)及び前期研修医の方は参加費無料です。受付で身分証を提示ください。 2.座長の方々へのお願い ご担当セッションの 30 分前までに総合受付までお立ち寄り頂き、開始 10 分前までに会場内前方の次 座長席にご着席ください。 なお、進行はご一任いたしますが、時間内に終了するようご協力お願いいたします。 3.演者の方々へのお願い 1)プログラムの円滑な進行のため、時間厳守にご協力ください。各演者持ち時間は以下の通りです。 一般演題 発表 7 分+質疑応答 3 分 シンポジウム 1 発表 20 分+質疑応答 3 分 シンポジウム 2 発表 25 分+質疑応答 5 分 シンポジウム 3 発表 20 分+質疑応答 3 分 2)演題発表は、全て PC プレゼンテーションによる口演発表です。PC をお持込みの方もご自身の発表時 間の遅くとも 30 分前までに、PC データ受付(A 会場前ロビー)までお越し頂き、発表データの試写 をお願いいたします。 3)講演中の発表データ操作はデータの持込み・PC の持込みを問わず、ご自身で演台上のマウスを用いて スライド操作をしていただきます。なお、レーザーポインタもご用意しております。 4)会場で使用する機材について 全会場ともプロジェクター(スクリーン 1 面)投影による PC プレゼンテーションです。会場で使用 する PC の仕様は以下の通りです。 発表の際、発表者ツールはご使用いただけません。その他、DVD 等の機材用意はございません。 → OS:Windows 7 → ソフト:Microsoft Office PowerPoint 2007 ∼ 2013 → 画面サイズ:XGA(1024 × 768) ※ PowerPoint 画面上の「スライドショー」→「解像度」で設定頂けます。 → フォント:文字化けを防ぐため、以下のフォントを推奨いたします。 〔日本語〕06 ࢦࢩࢵࢡ・㻹㻿㻼 䝂䝅䝑䜽・06 ᫂ᮅ・㻹㻿㻼 ᫂ᮅ 〔英 語〕Times New Roman・Arial・Arial Black・Arial Narrow・Century・Century Gothic → 動画ソフト:Windows Media Player 11 5)データでお持ち込みされる方へ 発 表 デ ー タ は、CD-R か USB メ モ リ に て ご 持 参 く だ さ い。Macintosh で デ ー タ 作 成 し た 場 合 は、 Windows PC で動作確認をしてからご持参ください。 なお、Macintosh でご発表希望の方はご自身の PC をご持参ください。動画は Windows Media Player で再生可能な形式で、データ容量は 500MB までとさせていただきます。また、標準的な動画コーデッ ク以外のファイルの場合、再生に不具合を生じることもございますので、動画再生に不安がある方も、 ご自身の PC をご持参いただくことをお勧めいたします。 8 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 6)パソコンをお持ち込みされる方へ → データお持込みと同様にまずは PC データ受付で受付と試写を行ってください。発表終了後は PC 技師席より直接返却します。 → 会場では接続コネクタとして D-sub 15pin(Mini)ケーブルを用意いたします。PC によっては変 換アダプターを必要とされますので各自で必ずご持参ください。 → 事前に外部出力の動作確認をおこない、必ず電源アダプターをご持参ください。また、スクリー ンセーバーならびに省電力等の設定は事前に解除しておいてください。 → バックアップデータとして、念のため CD-R もしくは USB メモリでデータもお持ちください。 4.各種委員会 ● 雑誌編集委員会 8 月 30 日(土) 9:00 ∼ 東京慈恵会医科大学 1 号館 6 階講堂 ● 理事会 8 月 30 日(土) 10:30 ∼ 東京慈恵会医科大学 1 号館 6 階講堂 5.全員懇親会 8 月 30 日(土)19 時 00 分から、愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 2F「J.H.V. Wine & Marriage」 (一号館から徒歩約 6 分)で行います。 ロシア出身のエキゾチックな美貌のヴォーカル・ユニット「Max Luxury」が 20 時 00 分から約 1 時間出演予定です。皆様奮ってご参加ください。参加費:無料 6.日本産科婦人科学会シールについて(予定) 本会の参加により,日本産科婦人科学会研修出席証明シールおよび日本産婦人科医会研修参加証を発 行いたしますので、受付でその旨お申し出ください。 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 9 会場のご案内 東京慈恵会医科大学 1 号館 〒 105−8471 東京都港区西新橋 3−25−8 http://www.jikei.ac.jp/univ/access.htmi 周辺図 大学 1 号館 都営三田線 御成門駅 A5出口 青松寺 愛宕グリーンヒルズ (森ビル) 地下鉄都営三田線「御成門」駅下車 A5 出口より徒歩 3 分 8 月 30 日(土)19 時 00 分∼ 愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 2F 「J.H.V. Wine & Marriage」 懇親会会場周辺図 松下電器 日比谷通り 御成門 三田線 A5 環状2号線 大学 1 号館 芝公園 東京慈恵会 医科大学 御成門小 り 愛宕下通 愛宕グリーンヒルズ フォレストタワー 西新橋Aビル 卍青松寺 虎ノ門ヒルズ 森タワー 愛宕神社 愛宕山 NHK 放送博物館 虎ノ門ヒルズ ガーデンハウス 4 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 芝公園 愛宕グリーンヒルズプラザ 3 日比谷線 桜田通り 10 愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 神谷町 1 オランダヒルズ 大学 1 号館 3F EV EV EV EV 附室A 総合受付 出入口 第1会場 PCデータ 受付 [大学1号館講堂] 大学 1 号館 5F EV EV EV EV 出入口 女子ロッカー室 男子ロッカー室 収納棚 実習室 第2会場 [5階講堂] 準備コーナー 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 11 日程表 Schedule 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 13 会場:東京慈恵会医科大学 第 1 日目 平成 26 年〔2014 年〕8 月 30 日(土曜日) 第 1 会場 (1 号館 3 階) 12:50 開会の辞 13:00 教育講演 1 「がん分子標的薬による最適化医療のための細胞・遺伝子解析技術」 西尾 和人(近畿大学医学部 ゲノム生物学講座) 座長:坂本 優 13:30 教育講演 2 「最近のがん免疫細胞治療の進歩と臨床応用」 後藤 重則(瀬田クリニック) 座長:矢内原 臨 14:00 特別講演 1 「質量顕微鏡の開発と応用」 瀬藤 光利(浜松医科大学 解剖学講座細胞生物学分野) 座長:関谷 剛男 14 14:50 招請講演 「INTERWEAVING THE THREADS OF THE P53, MICRORNA, AND INFLAMMATION NETWORKS INTO THE TAPESTRY OF AGING AND CANCER」 Curtis C Harris, M.D.(Laboratory of Human Carcinogenesis National Cancer Institute) 座長:岡本 愛光 15:50 シンポジウム 1 「がん幹細胞」 S1-1 坂田(柳元) 麻実子(筑波大学医学医療系血液内科) S1-2 後藤 典子(金沢大学がん進展制御研究所 分子病態研究分野) S1-3 指田 吾郎(千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学) S1-4 北林 一生(独立行政法人国立がん研究センター研究所 造血器腫瘍研究分野) S1-5 田賀 哲也(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞制御分野) 座長:北林 一生、後藤 典子 17:50 一般演題 口演 「細胞株の樹立、ウイルス発癌」 O-01 高橋 悠(日本歯科大学 新潟生命歯学部 口腔外科学講座) O-02 荒武 八起(古賀総合病院臨床検査技術部) O-03 四ノ宮 成祥(防衛医科大学校・分子生体制御学講座) 座長:片岡 寛章 19:00 総懇親会 愛宕グリーンヒルズ 2 階 J.H.V. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 第 2 日目 平成 26 年〔2014 年〕8 月 31 日(日曜日) 第 1 会場 (1 号館 3 階) 9:00 教育講演 3 「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」 左合 治彦(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター) 座長:木村 英三 9:30 教育講演 4 「子宮頸癌の予防と診断アップデート」 植田 政嗣(大阪がん循環器病予防センター 婦人科検診部) 座長:安田 允 10:00 特別講演 2 「iPS 細胞技術を用いた抗原特異的 T 細胞のクローニングと再生−『T 細胞の他家移植』の 道を拓く−」 河本 宏(京都大学再生医科学研究所再生免疫学分野) 座長:石川 博 11:00 評議員会・総会 12:30 シンポジウム 2 「分子標的診断・治療の進歩」 S2-1 加藤 聖子(九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学) S2-2 黒田 雅彦(東京医科大学 分子病理学分野) S2-3 岡部 聖一(東京医科大学 血液内科学分野) S2-4 竹中 将貴(東京慈恵会医科大学附属第 3 病院 産婦人科) 座長:大屋敷 一馬、加藤 聖子 14:30 16:30 シンポジウム 3 「培養細胞を用いた薬剤感受性・耐性機構の解明と再生医療への応用」 S3-1 飯田 泰志(東京慈恵会医科大学附属病院 産婦人科) S3-2 嵯峨 泰(自治医科大学 産科婦人科学講座) S3-3 竹 由佳(高知大学医学部 外科学講座外科1) S3-4 中村 幸夫(独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室) S3-5 土田 友章(早稲田大学人間科学学術院) 座長:喜多 恒和、中原 貴 閉会の辞 学術集会会長 坂本 優 第 2 会場 (5 階講堂) 11:30 ランチョンセミナー 「子宮頸癌に対する新しい予防戦略を目指して」 共催:MSD 株式会社/科研製薬株式会社 長阪 一憲(東京大学医学部附属病院 女性外科) 座長:植田 政嗣 14:00 14:30 一般演題 「iPS 細胞、再生医療」 O-04 O-05 O-06 一般演題 「幹細胞、薬剤感受性」 O-07 O-08 O-09 梅山 悠伊(防衛医科大学校 共同利用研究施設) 中村 まり子(東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座) 吉川 輝(東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座) 座長:嶋田 裕 杉浦 朝冶(石渡産婦人科病院 細胞生物研究所) 大山 晃弘(日本歯科大学 生命歯学部 NDU 生命科学講座) 福島 剛(宮崎大学医学部 病理学講座) 座長:木口 一成 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 15 プログラム Program 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 17 第1日 第 1 会場(1 号館講堂) 12:50 開会の辞・会長挨拶 第 32 回日本ヒト細胞学会学術集会 会長 坂本 優 13:00 ∼ 13:30 教育講演 1 座長:佐々木研究所附属杏雲堂病院 婦人科 坂本 優 「がん分子標的薬による最適化医療のための細胞・遺伝子解析技術」 近畿大学医学部 ゲノム生物学 西尾 和人 13:30 ∼ 14:00 教育講演 2 座長:東京慈恵会医科大学 産婦人科 矢内原 臨 「最近のがん免疫細胞治療の進歩と臨床応用」 瀬田クリニック東京 後藤 重則 14:00 ∼ 14:50 特別講演 1 座長:公益財団法人佐々木研究所 関谷 剛男 「質量顕微鏡の開発と応用」 浜松医科大学 解剖学講座細胞生物学分野 瀬藤 光利 14:50 ∼ 15:50 招請講演 座長:東京慈恵会医科大学 産婦人科 岡本 愛光 「INTERWEAVING THE THREADS OF THE P53, MICRORNA, AND INFLAMMATION NETWORKS INTO THE TAPESTRY OF AGING AND CANCER」 Laboratory of Human Carcinogenesis National Cancer Institute Curtis C Harris, M.D. 15:50 ∼ 17:50 シンポジウム 1 「がん幹細胞」 座長:独立行政法人国立がん研究センター研究所 造血器腫瘍研究分野 北林 一生 金沢大学がん進展制御研究所 分子病態研究分野 後藤 典子 S1-1 末梢性 T 細胞リンパ腫における多段階発がん 筑波大学医学医療系 血液内科 坂田(柳元) 麻実子 S1-2 臨床検体乳がんスフィア培養を用いたがん幹細胞の新規分子標的の探索 金沢大学がん進展制御研究所 分子病態研究分野 後藤 典子 S1-3 エピゲノム異常による骨髄系腫瘍の発症・維持機構 千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学 指田 吾郎 S1-4 がん幹細胞成立と維持における変異型 IDH の役割と治療 独立行政法人国立がん研究センター研究所 造血器腫瘍研究分野 北林 一生 S1-5 グリオーマ幹細胞の性状解析と人工ニッチの応用 東京医科歯科大学難治疾患研究所 幹細胞制御分野 田賀 哲也 18 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 17:50 ∼ 18:20 一般演題 「細胞株の樹立、ウイルス発癌」 座長:宮崎大学医学部 医学科病理学第二講座 片岡 寛章 O-01 同一癌組織由来の舌癌細胞株と cancer stem cell 株ならびに xenograft 由来細胞株の 樹立 日本歯科大学新潟生命歯学部 口腔外科学講座 高橋 悠 O-02 胸水中細胞より株化した Merkel 細胞癌の細胞学的特徴 古賀総合病院 臨床検査技術部 荒武 八起 O-03 B 型肝炎ウイルス誘発肝細胞癌モデルにおける HGF-Met 系の役割 防衛医科大学校・分子生体制御学講座 四ノ宮 成祥 19:00 ∼ 21:00 総懇親会 愛宕グリーンヒルズ 2 階 J.H.V. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 19 第2日 第 1 会場(1 号館講堂) 9:00 ∼ 9:30 教育講演 3 座長:立正佼成会附属佼成病院院 産婦人科 木村 英三 「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」 独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 左合 治彦 9:30 ∼ 10:00 教育講演 4 座長:多摩南部地域病院 安田 允 「子宮頸癌の予防と診断アップデート」 大阪がん循環器病予防センター 婦人科検診部 植田 政嗣 10:00 ∼ 10:50 特別講演 2 座長:日本歯科大学生命歯学部 NDU 生命科学講座 石川 博 「iPS 細胞技術を用いた抗原特異的 T 細胞のクローニングと再生 −『T 細胞の他家移植』の道を拓く−」 京都大学再生医科学研究所 再生免疫学分野 河本 宏 11:00 ∼ 11:30 評議員会・総会 12:30 ∼ 14:30 シンポジウム 2 「分子標的診断・治療の進歩」 座長:東京医科大学 第一内科 大屋敷 一馬 九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学 加藤 聖子 S2-1 婦人科がん幹細胞を標的とした新規治療法の開発 九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学 加藤 聖子 S2-2 核酸医薬品の新展開 東京医科大学 分子病理学分野 黒田 雅彦 S2-3 造血器腫瘍に対する分子標的治療の開発 東京医科大学 血液内科学分野 岡部 聖一 S2-4 次世代シーケンサーを用いた日本人卵巣癌治療関連遺伝子異常プロファイリング 東京慈恵会医科大学附属第 3 病院 産婦人科 竹中 将貴 20 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 14:30 ∼ 16:30 シンポジウム 3 「培養細胞を用いた薬剤感受性・耐性機構の解明と 再生医療への応用」 座長:奈良県立奈良病院 周産期母子医療センター/産婦人科 喜多 恒和 日本歯科大学生命歯学部 発生・再生医科学講座 中原 貴 S3-1 卵巣明細胞腺がん株 HAC2 細胞の低酸素培養によるグリコーゲンの蓄積とその機序の解明 ∼抗癌剤耐性克服を目指して∼ 東京慈恵会医科大学附属病院 産婦人科 飯田 泰志 S3-2 粘液性卵巣癌の抗癌剤抵抗性には E- カドヘリンを介した強固な細胞間結合が関与する 自治医科大学 産科婦人科学講座 嵯峨 泰 S3-3 膵臓癌に対するナファモスタットメシル酸塩の有用性 高知大学医学部 外科学講座外科1 竹 由佳 S3-4 iPS 細胞等を利用した赤血球の人工生産 独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室 中村 幸夫 S3-5 研究倫理の実践:現状と課題 早稲田大学人間科学学術院 土田 友章 16:30 閉会の辞 第 32 回日本ヒト細胞学会学術集会 会長 坂本 優 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 21 第 2 会場(5 階講堂) 11:30 ∼ 12:20 ランチョンセミナー 共催:MSD 株式会社/科研製薬株式会社 座長:大阪がん循環器病予防センター 婦人科検診部 植田 政嗣 子宮頸癌に対する新しい予防戦略を目指して」 東京大学医学部附属病院 女性外科 長阪 一憲 14:00 ∼ 14:30 一般演題 「iPS 細胞、再生医療」 座長:京都大学薬学研究科ナノバイオ医薬創成科学 嶋田 裕 O-04 ヒト iPS 細胞移植治療時における奇形腫発症のフローサイトメトリーによる評価 防衛医科大学校 共同利用研究施設 梅山 悠伊 O-05 アパタイトファイバースキャフォルドを装填したラジアルフロー型バイオリアクターによる 肝細胞・肝星細胞・内皮細胞の共培養 東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 中村 まり子 O-06 ラジアルフロー型バイオリアクターを利用したヒト血漿蛋白質生産系の構築 −ヒトアルブミン生産系の検討− 東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 吉川 輝 14:30 ∼ 15:00 一般演題 「幹細胞、薬剤感受性」 座長:東京都予防医学協会検査研究センター 木口 一成 O-07 HAM 細胞の子宮間質細胞様細胞への分化誘導の検討 石渡産婦人科病院 細胞生物研究所 杉浦 朝冶 O-08 脂肪組織幹細胞から in vitro で作製した骨組織ならびに in vivo への移植 日本歯科大学 生命歯学部 NDU 生命科学講座 大山 晃弘 O-09 膠芽腫細胞株における抗癌剤耐性 宮崎大学医学部 病理学講座 福島 剛 22 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 協賛企業一覧 展 示 ホロジックジャパン株式会社 ランチョンセミナー 科研製薬株式会社 MSD 株式会社 広 告 ・ 協 賛 キッセイ薬品工業株式会社 協和発酵キリン株式会社 武田薬品工業株式会社 中外製薬株式会社 日本イーライリリー株式会社 バイエル薬品株式会社 ファイザー株式会社 ライフテクノロジーズジャパン株式会社 (順不同・敬称略) 上記の皆さまにご協力いただきましたこと、心より感謝申し上げます。 本当にありがとうございました。 第 32 回日本ヒト細胞学会学術集会 会長 坂本 優 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 97 招請講演 Invited Lecture 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 23 招請講演 「INTERWEAVING THE THREADS OF THE P53, MICRORNA, AND INFLAMMATION NETWORKS INTO THE TAPESTRY OF AGING AND CANCER」 Curtis. C. Harris, M.D. Chief, Laboratory of Human Carcinogenesis, CCR, NCI, NIH, Bethesda, MD, USA Dr. Harris has an exceptional record of accomplishments and recognition by the scientific community. He is a valued collaborator with American and international scientists. He has successfully mentored more than 120 young scientists including those from Japan and was twice the recipient of the NCI Outstanding Mentor Award. Other examples of awards and scientific recognition include the AACR-ACS for Research Excellence in Cancer Epidemiology and Prevention, AACR Princess Takamatsu Award, a honorary PhD from Nippon University Medical School, the Ochsner Award relating Smoking and Health from the American College of Physicians, the Deichmann Award from the International Union of Toxicology, and the Distinguished Service Medal - the highest honor of the U.S. Public Health Service. He has served in several elected leadership posts in the scientific community, e.g., Chairman of the Board of Directors for the Keystone Symposia of Molecular and Cellular Biology; Chairman of the Program Committee of the AACR Annual Meeting and a member of the AACR s Board of Directors. He is also the Editor-in Chief of the journal Carcinogenesis. Sixteen Selected Reports of Dr. Curtis Harris Translational Research 1. Mathe, E. A., Patterson, A. D., Haznadar, M., Manna, S. K., Krausz, K. W., Bowman, E. D., Shields, P. G., Idle, J. R., Smith, P. B., Anami, K., Kazandjian, D., Hatzakis, E., Gonzalez, F. J. and Harris, C. C.: Non-invasive urinary metabolomic profiling identifies diagnostic and prognostic markers in lung cancer. Cancer Res. 74: 3259-3270,s 2014. 2. Akagi, I., Okayama, H., Schetter, A. J., Robles, A. I., Kohno, T., Bowman, E. D., Kazandijian, D., Welsh, J. A., Oue, N., Saito, M., Miyashita, M., Uchida, E., Takizawa, T., Takenoshita, S., Skaug, V., Mollerup, S., Haugen, A., Yokota, J. and Harris, C. C.: Combination of protein coding and non-coding gene expression as a robust prognostic classifier in stage I lung adenocarcinoma. Cancer Research, 73: 3821-3832, 2013. 3. Schetter, A. J., Leung, S. Y., Sohn, J. J., Zanetti, K. A., Bowman, E. D., Yanaihara, N., Yuen, S. T., Chan, T. L., Kwong, D.L.W., Au, G. K. H., Liu, C. G., Calin, G. A., Croce, C. M. and Harris, C. C.: MicroRNA expression profiles associated with prognosis and therapeutic outcome in colon adenocarcinoma. JAMA, 299: 425-436, 2008. 4. Yanaihara, N., Caplen, N., Bowman, E., Kumamoto, K., Yi, M., Stephens, R. M., Okamoto, A., Yokota, J., Tanaka, T., Calin, G. A., Liu, C.-G., Croce, C. M. and Harris, C. C.: microRNA expression signature predicts lung cancer diagnosis and prognosis. Cancer Cell 9: 189198, 2006. 24 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 Molecular Epidemiology 5. Olivo-Marston, S. E., Yang, P., Mechanic, L. E., Bowman, E. D., Pine, S. R., Loffredo, C. A., Alberg, A. J., Caporaso, N., Shields, P. G., Chanock, S., Wu, Y., Jiang, R., Cunningham, J., Jen, J. and Harris, C. C.: Childhood exposure to secondhand smoke and functional mannose binding lectin polymorphisms are associated with increased lung cancer risk. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev., 18: 3375-3383, 2009. 6. Okamoto, A., Demetrick, D. J., Spillare, E. A., Hagiwara, K., Hussain, S. P., Bennett, W. P., Forrester, K., Gerwin, B. I., Serrano, M., Beach, D. H. and Harris, C. C.: Mutations and altered expression of p16INK4 in human cancer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 1104511049, 1994. 7. Hsu, I. C., Metcalf, R. A, Welsh, J., Sun, T., Wang, N. J. and Harris, C. C.: p53 gene mutational hotspot in human hepatocellular carcinomas from Qidong, China. Nature 350: 427-428, 1991. 8. Hollstein, M., Sidransky, D., Vogelstein, B. and Harris, C. C.: p53 mutations in human cancers. Science 253: 49-53, 1991. 9. Nigro, J. M., Baker, S. J., Preisinger, A. C., Jessup, J. M., Hostetter, R., Cleary, K., Bigner, S. H., Davidson, N., Baylin, S., Devilee, P., Glover, T., Weston, A., Modali, R., Harris, C. C. and Vogelstein, B.: Mutations in the p53 gene occur in diverse human tumor types. Nature 342: 705-708, 1989. 10. Harris, C. C., Autrup, H., Connor, R., Barrett, L., McDowell, E. and Trump, B.: Interindividual variation in binding of benzo[a]pyrene to DNA in cultured human bronchi. Science 194: 1067-1069, 1976. p53 Function A. Cellular Senescence and Aging 11. Mondal, A.M., Horikawa, I., Pine, S. R., Fujita, K., Morgan, K. M., Vera, E., Mazur, S. J., Appella, E., Vojtesek, B., Blasco, M. A., Lane, D. P. and Harris, C. C.: p53 isoforms regulate agingand tumor-associated replicative senescence in T lymphocyte. J Clin Invest., 123: 52475257, 2013. 12. Tang, Y., Horikawa, I., Ajiro, M., Robles, A. I., Fujita, K., Mondal, A. M., Stauffer, J. K., Zheng, Z. M. and Harris, C. C.: Downregulation of splicing factor SRSF3 induces p53β, an alternatively spliced isoform of p53 that promotes cellular senescence. Oncogene, 32: 2792-2798, 2013. 13. Fujita, F., Horikawa, I., Mondal, A., Jenkins, L., Appella, E., Vojtesek, B., Bourdon, J. C., Lane, D. and Harris, C. C.: Positive feedback between p53 and TRF2 in telomere damage signaling and cellular senescence. Nat Cell Biol, 12: 1205-1212, 2010. 14. Fujita, F., Mondal, A. M., Horikawa, I., Nguyen, G. H., Kumamoto, K., Sohn, J. J., Bowman, E. D., Mathe, E. A., Schetter, A. J., Pine, S. R., Ji, H., Vojtesek, B., Bourdon, J. C., Lane, D. P., and Harris, C. C.: p53 isoforms Δ 133p53 and p53 β are endogenous regulators of replicative cellular senescence. Nat Cell Biol, 11: 1135-1142, 2009. B. DNA Repair 15. Wang, X. W., Vermeulen, W., Coursen, J. D., Gibson, M., Lupold, S. E., Forrester, K., K., Xu, G., Elmore, L., Yeh, H., Hoeijmakers, J. H. J., and Harris, C. C.: The XPB and XPD DNA helicases are components of the p53-mediated apoptosis pathway. Genes and Development, 10: 1219-1232, 1996. 16. Wang, X. W., Yeh, H., Schaeffer, L., Roy, R., Moncollin, V., Egly, J. M., Wang, Z., Friedberg, E. C., Evans, M. K., Taffe, B. G., Bohr, V. A., Weeda, G., Hoeijmakers, J. H. J., Forrester, K. and Harris, C. C.: p53 Modulation of TFIIH-associated nucleotide excision repair activity. Nature Genet, 10: 188-195, 1995. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 25 IL-1 INTERWEAVING THE THREADS OF THE P53, MICRORNA, AND INFLAMMATION NETWORKS INTO THE TAPESTRY OF AGING AND CANCER Curtis.C. Harris, M.D. Chief, Laboratory of Human Carcinogenesis, CCR, NCI, NIH, Bethesda, MD, USA The p53 network is an intrinsic monitoring and responsive pathway of telomeric attrition involved in cellular aging and senescence. Cellular senescence is also a tumor suppressive mechanism that can be activated by p53. We are studying the molecular mechanisms of cellular senescence in normal and malignant human cells. A switch in the expression patterns of p53 isoforms, a dominant negative Δ133Np53 and a cotransactivator p53beta of full-length p53, can cause cellular senescence in vitro and is also associated with aging of CD8 positive circulating T cells and the transition of benign to malignant human cancers in vivo. Chronic infection and inflammation contribute to the etiology and pathogenesis of about 1 in 4 of all cancer cases. Mediators of the inflammatory response, e.g., cytokines, free radicals, prostaglandins, noncoding RNAs, and growth factors, can induce genetic and epigenetic changes including point mutations in tumor suppressor genes, DNA methylation and post-translation modifications, causing alterations in critical pathways responsible for maintaining the normal cellular homeostasis and leading to the development and progression of cancer. DNA damage by ionizing radiation and free radicals can modulate microRNA expression. IL-6 and IL-8 cooperate with microRNAs in the induction of cellular senescence in benign tumors and as autocrine growth factors in carcinoma. Expression of microRNAs and inflammatory genes are mechanistic-based biomarkers of cancer risk, diagnosis, prognosis, and therapeutic outcome. We are especially interested in the interaction of the innate immune pathway with environmental tobacco smoking in lung cancer risk and the interaction of inflammatory cytokines, p53 isoforms, and microRNAs as prognostic classifiers of early stage cancers and their functional role in the development of micrometastases. 26 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 特別講演 Special Lecture 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 27 特別講演 1 「質量顕微鏡の開発と応用」 浜松医科大学 解剖学講座細胞生物学分野 教授 瀬藤 光利 【略 歴】 1994 年 東京大学医学部卒 1996 年 東京大学病院研修終了、大学院入学 1998 年 東京大学医学部助手 2003 年 自然科学研究機構 生理学研究所助教授を経て、2008 年 1 月から 浜松医科大学 解剖学教授 【参考文献】 Setou et al.,: Science (2000). Setou et al.,: Nature (2002). Sugiura et al.,: Analytical Chemistry (2006). Ikegami et al.,: PNAS, (2007). Yao et al.,: Cell (2007). Shimma et al.,: Analytical Chemistry (2008). Taira et al.,: Analytical Chemistry (2008). Harada et al.,: Analytical Chemistry (2009). Konishi and Setou: Nature Neurosci, (2009). Shrivas et al.,: Analytical Chemistry (2010). Ikegami et al., : PNAS, (2010). Shrivas et al.,: Analytical Chemistry (2011). Yang et al.,: JBC (2012). ・内科学 杉本恒明・小俣政男編第 8 版朝倉書店 2003 分担 ・内科学第一版(金澤一郎,北原光夫,山口徹,小俣政男編),医学書院,2006,分担 ・瀬藤光利編 質量顕微鏡法シュプリンガー・ジャパン 2008 ・Imaging Mass Spectrometry: Protocols for Mass Microscopy.Springer, Tokyo, 2010. SL-1 質量顕微鏡の開発と応用 瀬藤 光利 浜松医科大学 解剖学講座 細胞生物学分野 医学の発展は分析技術の進歩によって支えられてきた。我々は、物質の質量を用いた二次元イメージング を実現できれば医学研究における病理組織学解析に生化学的情報を付加できると考え、顕微鏡と質量分析を 融合させた質量顕微鏡を開発し、質量分析を用いたイメージング(質量分析顕微鏡法)を可能にした。質量 顕微鏡法は、組織切片などの二次元試料上の多数の点で質量分析を行うことで多数の分子の位置情報を含む 質量スペクトル群を得た後、注目する分子のマススペクトルを抽出して各測定点でのシグナル強度を画像化 することで、二次元試料上の物質分布を可視化することができる。 これまでのヒト試料を用いた解析から、質量分析による直接的な診断にも応用可能な知見を見出している。 特にこれまで困難であった脂質の可視化で効果を発揮している。例えば、先天性のスフィンゴ糖脂質代謝異 常症である Fabry 病の心内膜心筋生検解析では、グロボトリオシルセラミドの疾患特異的な蓄積をイメー 28 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 ジングした(Onoue, Circ J., 2011) 。腫瘍組織の解析でも多くの知見を見出しており、一例としては手術に より切除した肝細胞がんの腫瘍組織において有意に上昇するある種のホスファチジルコリンの蓄積を見出し た(Morita, J Hepatol, 2013) 。これらは疾患の早期診断や創薬への利用が期待される知見である。さらに我々 は、質量顕微鏡の高解像度化に取り組むことによって、細胞レベルでの解析も行なっている。ヒト腫瘍細胞 株を用いた解析では、細胞に含まれる脂肪酸などの代謝物の解析を一細胞から測定することに成功している (Nagata, Surf Interface Anal., 2014; Ide, Surf Interface Anal., 2014)。細胞レベルの解析は、単一細胞におけ る細胞小器官特異的な代謝物解析へと発展する可能性が期待される。本講演ではこうした組織や細胞といっ た様々な対象での最新の研究成果を交えて質量顕微鏡法を紹介したい。 SL-1 Development and application of Mass microscope Mitsutoshi Setou Hamamatsu University School of Medicine Department of Cell biology and Anatomy The medical development has been supported by advances in analytical techniques. A mass microscope that combines mass spectrometry and microscopy has been developed, enabling medical research using Imaging Mass Spectrometry (IMS) by analysis of pathological and histological images together with twodimensional biochemical imaging information. Images of mass composition are visualized by reconstructing the mass spectrum charts obtained from thousands of measuring spots on biological tissue samples. IMS can be effective in imaging of lipids, a task which was previously difficult, and knowledge has been obtained for the diagnosis using IMS from clinical sample analysis. We visualized the accumulation of globotriaosylceramide into tissues obtained from endomyocardial biopsy in Fabry disease (Onoue, Circ J., 2011). Also, we found much knowledge related to cancer analysis. For instance, we found significant increase of the signal intensity of unique phosphatidylcholine (PC) species in breast cancer tissue (Morita, J Hepatol, 2013). These discoveries are promising knowledge in early diagnosis or drug development. Moreover, we have performed cellular-level analysis using IMS with high spatial resolution. In analysis with human cancer cell line, we allowed the identification of metabolites (ex: Fatty acid) from single cell (Nagata, Surf Interface Anal., 2014; Ide, Surf Interface Anal., 2014). There is possibility that organelle-specific detection of metabolite is allowed by the cellular-level IMS. In this lecture, I would like to introduce state-ofthe art advances in medical research using the mass microscope. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 29 特別講演 2 「iPS 細胞技術を用いた抗原特異的 T 細胞のクローニング と再生−『T 細胞の他家移植』の道を拓く−」 京都大学再生医科学研究所再生免疫学分野 教授 河本 宏 【略 歴】 1961 年京都生まれ。1980 年洛北高校卒業。1986 年京都大学医学部卒業。 内科医として 3 年間研修後、1989 年京大病院第一内科(血液腫瘍内科)大学院 に入学し、輸血部(伊藤和彦教授)で遺伝子治療の研究を行う。1994 年より京 大胸部疾患研究所(現再生医科学研究所)の桂義元教授のもとで造血過程および T 細胞初期分化についての研究を開始。2001 年 7 月より京大医学部免疫細胞生物学教室(湊長博教授)助手。 2002 年 3 月より理研免疫・アレルギー科学総合研究センターチームリーダー。2012 年 4 月より京都大 学再生医科学研究所教授。最近は基礎研究と平行して免疫細胞を用いた再生医療的アプローチも行なって いる。趣味は絵やマンガを描く事、バンド演奏など。 【著 書】 「もっとよくわかる!免疫学」2011 年 2 月羊土社刊。 「マンガでわかる免疫学」2014 年 6 月オーム社刊。 SL-2 iPS 細胞技術を用いた抗原特異的 T 細胞のクローニングと再生 −「T 細胞の他家移植」の道を拓く− 河本 宏 京都大学 再生医科学研究所 再生免疫学分野 特定の抗原特異性を有するリンパ球を取り出して増やす事(クローニング)が自在にできれば、免疫反応 の関与するさまざまな病気の治療に応用できるであろう。B 細胞についてはモノクローナル抗体をつくる技 術としてすでに臨床応用されている。T 細胞でも不死化によるクローニング法は随分以前に樹立されている が、T 細胞の場合は「細胞」として働くから、不死化したような異常な細胞は臨床応用に適さなかった。そ こで我々は、iPS 細胞技術を用いて T 細胞をクローニングしようと考えた。まず抗原特異的な T 細胞から iPS 細胞を作製する(T-iPS 細胞) 。T-iPS 細胞には元の T 細胞が有していた再構成された T 細胞レセプター 遺伝子の構造が受け継がれているので、その iPS 細胞から T 細胞を分化誘導すると、元の T 細胞と同じ特 異性の T 細胞だけが生成する。この方法でクローニングすると、T-iPS 細胞の段階で好きなだけ増やすこと ができる一方で、分化誘導して正常な T 細胞を得ることができる。我々はこの方法をがんの免疫細胞療法 に応用できないかと考え、最近、ヒトのメラノーマに特有の MART-1 抗原に反応できるキラー T 細胞から iPS 細胞を作製すること、さらにその iPS 細胞から MART-1 抗原特異的な T 細胞を再生することに成功した (Vizcardo et al, Cell Stem Cell, 12: 31, 2013) 。 現時点では自家移植の系を想定して研究を進めているが、一方で他家移植の系の構築も考えている。T 細 胞はポリクローナルな細胞集団として細胞療法の材料として用いられることがあるが、基本的には自家移植 の系であり、他人に投与するということはほとんど行われてこなかった。使われてこなかった理由として、1) MHC 拘束性があるので限定的にしか使えない、2)MHC を合わさないと拒絶される、3)MHC を合わせて 拒絶されないようにすると、GVHD を起こす可能性がある、などが挙げられよう。3)の問題は、ポリクロー ナルな T 細胞集団として移植するからであり、クローニングを介してモノクローナルな T 細胞として投与す れば、 回避できると考えられる。すなわち、 「iPS 細胞技術を用いたクローニング」というアプローチによって、 「T 細胞の他家移植」という戦略が可能になると考えている。 30 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 SL-2 Regeneration of antigen specific T cells using the iPSC technology Hiroshi Kawamoto Department of Immunology, Institute for Frontier Medical Sciences, Kyoto University Cloning of antigen specific lymphocyte should be very beneficial in therapeutic application of lymphocytes. In case of B cells, such idea has already been realized by the hybridoma method, making it possible to put monoclonal antibody in clinical use. On the other hand, in case of T cells, it has been difficult to utilize cloned T cells in clinical setting, since it is dangerous to transfer the immortalized cells into patients. In this context, when you reprogram antigen specific T cells into induced pluripotent stem cells (iPSCs), such a method may represent a novel tool for the cloning of T cells; i.e. by cloning T cells as iPSCs, it becomes possible to infinitely expand the cells at the stage of iPSCs, and the regenerated T cells from these iPSCs can be directly applied for clinical use. We recently succeeded in recapitulating tumor antigen-specific human cytotoxic T cells by using the iPSC technology (Cell Stem Cell, 12: 31, 2013). We firstly established iPS cells from mature cytotoxic T cells specific for the melanoma epitope MART-1. When co-cultured with OP9/DLL1 cells, these iPS cells efficiently generated TCRβ+CD4+CD8+ double positive (DP) cells expressing a T cell receptor (TCR) specific for the MART-1 epitope. Stimulation of these DP cells with anti-CD3 antibody generated a large number of CD8+ T cells, and more than 95% of the resulting cells were specific for the original MART-1 epitope. Stimulation of the CD8+ T cells with MART1 antigen-presenting cells led to the secretion of IFNg, demonstrating their specific reactivity. The present study therefore illustrates an approach for cloning and expanding functional antigen-specific CD8+ T cells that might be applicable in cell-based therapy of cancer. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 31 MEMO 32 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 教育講演 Special Lecture 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 33 教育講演 1 「がん分子標的薬による最適化医療のための細胞・遺伝子 解析技術」 近畿大学医学部 ゲノム生物学講座 主任教授 西尾 和人 【略 歴】 昭和 61 年 3 月 和歌山県立医科大学卒業 昭和 63 年 9 月 和歌山県立医科大学付属病院第4内科助手 平成 2 年 11 月 (財)がん研究振興団リサーチレジデント 平成 4 年 3 月 国立がんセンター研究所薬効試験部研究員 平成 8 年 4 月 国立がんセンター研究所薬効試験部耐性研究室室長 平成 17 年 4 月∼ 北里大学医学部内科客員教授 平成 18 年 5 月∼ 近畿大学医学部ゲノム生物学教室主任教授 平成 22 年 4 月 京都府立医科大学客員教授 現在に至る 理 事 日本臨床腫瘍学会、日本分子標的治療学会 評議員 日本癌学会等 ES-1 がん分子標的薬による最適化医療のための細胞・遺伝子解析技術 西尾 和人 近畿大学医学部 ゲノム生物学講座 分子標的薬が各種がん種に対して適応され、標準的治療の一翼を担っている。 その使用には、バイオマーカーによる適応の可否を判断し、コンパニオン診断薬と呼ばれている。2011 年 の FDA からは「コンパニオン診断の開発」に関わるガイダンスの案が出され、その中では新薬とコンパニ オン診断薬の同時開発が推奨されている。 肺癌においては EGFR、ALK 融合遺伝子等 driver 遺伝子が発見され、それらに対する分子標的薬が使用 されている。多数の遺伝子を個々に検査することが必要となっているが、限られた細胞量、費用、時間等を 鑑みた場合、同時に検査をすることが有用と考えられ、我々は multiplex テクノロジーの体外診断薬化に取 り組んでいる。 我々は、シーケノム社の MassArray による肺癌遺伝子、融合遺伝子検出パネルを作成し、5 ∼ 10 年の古 いサンプルでの検出を行い、良好な実施成功率を得た。また次世代シーケンサーを用い、肺癌の各種遺伝子 変異を網羅的に解析すると共に、FFPE サンプルから抽出した RNA サンプルによる融合遺伝子検出パネル を作成した。これらのパネルを用い、FFPE サンプルを用いた近大クリニカルシーケンシングをルーチンに 実施している。この targeted sequencing は同時にコピー数変動の解析を可能にするが、FISH や real time PCR との一致性を検討することでカットオフ値の設定を行っている。 第三の PCR とよばれる digital PCR 法も細胞の遺伝子診断に有用である。Digital PCR は従来多く用いて きた Allele specific PCR 法等に比し感度に優れ、我々の検討では、0.001%の検出感度を示す。この高い感度 を利用することにより、細胞診サンプル、血液サンプル等リキッドバイオプシーへの応用も可能であると考 えられる。末梢血中の微量 DNA あるいは CTC を用いて遺伝子変異の検出が試みられている。EGFR 遺伝子 変異陽性肺がんに対して、EGFR-TKI の治療を行った後、耐性となった患者の血漿中の cell free DNA にお ける EGFR 遺伝子の二次的変異(T790M)の検出を行い、良好な成績を得ている。同技術を次世代シーケン サーと組み合わせることで、multiplex な検出も可能となる。大腸がんにおいて、抗 EGFR 抗体の適否には、 34 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 RAS 遺伝子変異検査を実施する。同テクノロジーを用い血中の RAS 変異検出を検討している。腫瘍と末梢 血との間に高い一致率を得ている。 このようなアプローチにより、患者にやさしいコンパニオン診断が実現されると期待される。 ES-1 Cytogenetic-analysis for targeted agents-driven precision medicine of cancer Kazuto Nishio Department of Genome Biology, Kindai University Faculty of Medicine Molecular targeted drugs play important rule for several types of tumors. Companion Diagnosis is necessary for the development of the targeted agents. PMDA as well as FDA has recommended this approach. Cases of lung cancer carrying EGFR mutations have been shown to be hyperresponsive to the EGFR tyrosine kinase inhibitors. Chromosomal translocations and corresponding gene fusions play an important role in initiating tumorigenesis. Association of ALK, ROS1 and RET fusion transcripts and its potential as lung tumor predictive biomarkers for respective kinase inhibitors has increased the need of a technology that could detect these biomarkers starting from limited amount of FFPE material for precision medicine with molecular targeted agents. We have set up the MassArray (Sequenom) Lung Cancer Panel and Lung Fusion Panel to analyze the FFPE biopsy samples of lung cancer and examined its feasibility. Deep sequencing technologies as well as liquid biopsy are powerful tools for this strategy. We and OncoNetwork consortium collaborated for the development of a lung fusion panel based on Ion AmpliSeq™ RNA chemistry. Elucidating the mechanisms of the acquired resistance to EGFR-TKI and ALK inhibitors is another important issue for the development of the next generation therapeutics. Re-biopsy is essential to detect secondary mutations of EGFR (T790M) that causes the resistance to EGFR-TKI. However tissue availability limits the genotyping of EGFR T790M mutation in a clinical setting. We have developed the several sensitive assays (Scorpion-Arms, Cobas EGFR mutation test, SABER and droplet-digital PCR (ddPCR) system) to detect EGFR mutations and fusion genes from tumor-derived DNA in tissue and blood of lung cancer patients. We have monitored the EGFR mutation status during anti-EGFR treatment. In collaboration with the West Japan Oncology Group (WJOG), we have established a prescreening system to detect marker-positive population using these technologies for the clinical studies. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 35 教育講演 2 「最近のがん免疫細胞治療の進歩と臨床応用」 瀬田クリニック 理事長 後藤 重則 【略 歴】 1981 年 新潟大学医学部 卒業 1981 年 新潟大学医学部 産科婦人科学教室 医員 1985 年 県立がんセンター新潟病院 1989 年 新潟大学医学部助手 1991 年 帝京大学生物工学研究センター講師、帝京大学医学部講師 1999 年 瀬田クリニック(現瀬田クリニック東京)院長 2005 年 医療法人社団 瀬田クリニック(現滉志会)理事長 現在に至る 【所属学会など】 日本癌学会 日本癌治療学会 日本再生医療学会 日本免疫学会 日本産科婦人科学会 日本バイオセラピィ学会 日本免疫治療学研究会(理事) バイオ治療法研究会(監事) 東京医科大学 内科学 兼任講師 ES-2 最近のがん免疫細胞治療の進歩と臨床応用 後藤 重則 瀬田クリニック 免疫細胞療法は 1980 年代に創始された Lymphokine-activated killer cells を用いたものがはじまりであ るが、その細胞の実態は Killer cells と呼称される不明瞭なものであった。その後、腫瘍免疫学の発展によ り、ヒトの抗腫瘍免疫応答において主要な Effector 細胞群として、NK 細胞、NKT 細胞、CD8+αβT 細胞、 γδT 細胞、細胞障害性 T 細胞(CTL)などが明らかにされ、これらの細胞の異なった腫瘍の排除機構も理 解が進んだ。また、抗原提示し CTL 誘導に働く樹状細胞の分化機構および腫瘍抗原の解明も進み、これらの 細胞を選択的に培養する技術が確立し、現在、がん治療に臨床応用されている。 自己腫瘍特異的 CTL は抗原特異的、MHC 拘束性に腫瘍細胞を殺傷する。しかしながら、腫瘍細胞の主 要組織適合複合体(MHC)クラス1は 20%程度の例で消失あるいは低下していることがわかっている。こ のような腫瘍細胞に対しては樹状細胞、CTL による排除作用は乏しいと考えられる。一方、MHC は NK 細 胞には強い抑制シグナルとして作用する。NK 細胞はγδT 細胞とともに抗原特異性のない自然免疫機構で 広い範囲で強い殺腫瘍活性を有する。FcγReceptor Ⅲは抗体依存性細胞傷害反応を媒介するが、この発現 は NK 細胞に特に強く、NK 細胞療法は現在、開発の進んでいる抗体医薬品の薬効を増強できる可能性がある。 γδT 細胞受容体は isopentenyl pyrophosphate(IPP)がリガンドとなる。骨腫瘍で使用されるゾレドロン 酸は腫瘍細胞の IPP 発現を増強する。 われわれは T 細胞療法、γδT 細胞療法、NK 細胞療法および樹状細胞ワクチンという、様々な免疫細胞 療法を実施している。がん患者の病状、併用薬剤、免疫機能の状態および腫瘍細胞の MHC や腫瘍抗原の発 36 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 現などの特徴から、各患者に適した最良の細胞療法を個別に選択することが重要である。 免疫細胞療法を含めた再生・細胞医療は現在、法整備が進められている。免疫関連 6 団体により免疫細胞 療法 細胞培養ガイドラインが作成され、また、2013 年 4 月には再生医療を国民が迅速かつ安全に受けるため の総合的な施策の推進に関する法律、2013 年 11 月には再生医療新法、薬事法改正法と、細胞医療を安全か つ迅速な提供ができるための法律が制定された。 ES-2 Recent progress in immuno-cell therapy and its clinical application Shigenori Goto Seta Clinic Immuno-cell therapy was first introduced in the late 1980s as a treatment using lymphokine-activated killer cells. In that period, however, there was less knowledge of the LAK cells. It has been shown that in the human immune response to tumor cells, various cells are involved as effector cells, such as NK cells, NKT cells, CD8+ αβ-T cells, γδ-T cells and CTL. They play some role in tumor eradication in different fashions. At present these cells can be selectively propagated ex vivo . DC as antigen-presenting cells could be induced ex vivo . These cells cultivated ex vivo are now widely used to treat the cancer patients. It is very important that appropriate type of the immuno-cell therapy for each patient is selected by condition of the patient and characteristics of the tumor cells such as MHC expression. Tumor antigen-specific CTL recognize and attack tumor cells in a MHC-restricted manner. The frequency of loss or down-regulation of MHC class 1 has been shown to be about 20% in human cancers. CTL and DC are considered to have less role in eradication of such tumor cells. NK cells and γδ-T cells act in innate immunity and can exhibit potent cytotoxicity against tumor cells. NK cells were found to strongly express Fc receptor, which mediate antibody-dependent cellular cytotoxicity. Isopentenyl pyrophosphate (IPP) generated by cells activate γδ-T cells. Recent studies have shown that zoledronate can induce IPP in tumor cells. Currently, the legislation for regenerative and cell-based medicine including the immune cell therapy has been promoting. The Japanese Diet passed the Regenerative Medicine Promotion Law in April 2013 and the Act on the Safety of Regenerative Medicine and the Pharmaceuticals, Medical Devices, and Other Therapeutic Products Act (PMD Act) in November 2013 to be able to provide the cell-based medicine safely and promptly to people. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 37 教育講演 3 「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」 独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター長 左合 治彦 【略 歴】 昭和 57 年 昭和 57 年 昭和 62 年 平成 5∼6 年 平成 6∼10 年 平成 11 年 平成 14 年 平成 20 年 平成 25 年 東京慈恵会医科大学卒業 三井記念病院外科 東京慈恵会医科大学産婦人科助手 米国南カルフォルニア大学医学部留学 米国カルフォルニア大学サンフランシスコ校医学部留学 東京慈恵会医科大学産婦人科講師 国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科医長 国立成育医療センター周産期診療部長 国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター長 東京慈恵会医科大学客員教授 ES-3 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査 左合 治彦 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査すなわち非侵襲的出生前遺伝学的検査(Non-Invasive Prenatal genetic Testing:NIPT)は、次世代シークエンサーを用いて母体血漿中に存在する胎児由来の cell-free DNA(cfDNA)を解析する検査である。母体血漿中の cfDNA を網羅的にシークエンスして各々の DNA 断 片が何番染色体に由来しているかを同定し、由来染色体の DNA 断片量の変化から胎児が 21 トリソミー、18 トリソミー、13 トリソミーであるかどうか判定する検査法で、検査感度と特異度は高いがあくまで非確定的 検査である。 2013 年 3 月に日本産科婦人科学会より 「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」が出され、 「その実施は、まず臨床研究として認定・登録された施設において、慎重に開始されるべきである」とされた。 我々は 2013 年 4 月より NIPT の遺伝カウンセリングに関する多施設共同臨床研究を開始し、1 年間で約 7700 例に達した。 NIPT は羊水検査や絨毛検査など子宮に針を刺して胎児由来成分を採取する検査法と異なり、母体から採 血のみで行うもので今までの出生前診断のあり方を根底からくつがえす可能性がある。また NIPT は染色体 検査のみならず今後は種々の遺伝子検査に応用される可能性があり、遺伝カウンセリングが極めて重要とな る。本講演では母体血を用いた胎児染色体検査の原理や精度、臨床研究の取り組みを概説する。 38 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 ES-3 Non-invasive Prenatal Testing (NIPT) Haruhiko Sago Center of Maternal-Fetal, Neonatal and Reproductive Medicine, National Center for Child Health and Development Massively parallel sequencing by next-generation sequencer has achieved Non-invasive Prenatal Testing (NIPT) for trisomies 21, 18 and 13 using cell free fetal DNA in maternal plasma. NIPT has high detection rate and sensitivity. NIPT has started in Japan at April 2013 with preparations including policy statement from Japan Society of Obstetrics and Gynecology with collaboration on medical societies. NIPT is performed for high-risk pregnant women as research at registered institute in which genetic counseling is well provided. The number of tests has reached about 7700 in one year. New studies have shown the detections of micro deletions or mutation using NIPT. NIPT offers tremendous potential as a prenatal genetic diagnosis. NIPT might become the first option for prenatal genetic tests with reduction of the number of amniocentesis or chorionic villus sampling. Genetic counseling is very important to perform NIPT. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 39 教育講演 4 「子宮頸癌の予防と診断アップデート」 大阪がん循環器病予防センター 婦人科検診部 部長 植田 政嗣 【略 歴】 昭和 57 年 3 月 大阪医科大学卒業 昭和 62 年 12 月 日本臨床細胞学会細胞診指導医 昭和 63 年 11 月 近畿産科婦人科学会学術奨励賞受賞 平成 元年 4 月 日本産科婦人科学会学術奨励賞受賞 平成 2 年 3 月 医学博士の学位授与 同 年 4 月 大阪医科大学産婦人科学教室助手 平成 7 年 6 月 大阪医科大学産婦人科学教室講師 平成 10 年 5 月 第 28 回大阪医科大学仁泉会研究奨励賞受賞 同 年 10 月 米国コロラド州立大学医学部 Medical Oncology 留学 平成 11 年 3 月 第 4 回大阪医科大学盛(もり)記念学術賞受賞 平成 13 年 7 月 大阪医科大学産婦人科学教室助教授 平成 16 年 11 月 大阪医科大学応用外科学講座産婦人科学教室婦人科腫瘍科科長 平成 18 年 7 月 大阪がん予防検診センター(現大阪がん循環器病予防センター)婦人科検診部部長 平成 19 年 8 月 国際サイトパソロジスト(FIAC) 平成 20 年 4 月 大阪大学大学院保健学専攻機能診断科学講座分子病理学教室招聘教授 同 年 6 月 日本臨床細胞学会賞受賞 平成 22 年 8 月 日本ヒト細胞学会賞受賞 専門分野:婦人科癌の診断と治療,婦人科癌の分子病理学 学会役職:日本ヒト細胞学会理事、日本臨床細胞学会常務理事、日本婦人科腫瘍学会理事、日本婦人科 がん検診学会理事など ES-4 子宮頸癌の予防と診断アップデート 植田 政嗣 1、明瀬 光里 1、出馬 晋二 1、鳥居 貴代 1、岡本 吉明 1、布引 治 2 1 大阪がん循環器病予防センター 婦人科検診部、2 神戸常磐大学 保健科学部 医療検査学科 子宮頸癌はその前癌病変である子宮頸部上皮内新生物(Cervical Intraepithelial Neoplasia: CIN)を経て癌 へと進行することが明らかにされており、早期発見、早期治療により予防し得る疾患である。そのためには 検診が最も重要で、病巣部の的確な細胞診、組織診が不可欠である。現在、細胞診判定方式としてベセスダ システムが定着しており、細胞診標本の適・不適を判定した上で,標本上に出現する全ての種類の細胞各々 について記述的に評価する方式がとられ診断の客観性が図られている。一方、昨今の子宮頸癌検診の普及や 予防活動の高まりにともなって、細胞診検体数が今後さらに増加することが予測されている。多くの細胞診 検体をより効率的に判定するためには、高い感度・特異度を有し、低コストかつ高処理能力を有する自動ス クリーニングシステムの開発が急務である。米国では液状細胞診の普及とともに、Autopap などの細胞診自 動診断装置が実用化されてきた。 われわれは、Flow Cytometry(FCM)を用いた細胞診自動化の可能性を模索してきたが、従来の問題点 であった液状検体中に存在する細胞集塊および細胞凝集の低減を可能とする独自の検体前処理技術を開発し た。これを核 DNA 染色と FCM 計測により得られる信号波形情報を基にした細胞解析技術と統合し、新た な自動化システムを構築した。本システムの検体分別アルゴリズムは、各細胞の形態(N/C 比)と増殖動態(核 40 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 DNA 量)両者の統合解析に基づいている。実際の細胞診および組織診検体を用いて検討したところ、CIN2 以上を陽性、CIN1 以下と NILM 例を陰性と定義した場合、CIN2+ の検出感度、特異度は各々 100%(15/15) 、 85%(841/988)であり、良好な結果が得られた。 一方、今後頸癌検診受診率の向上に伴って増加が予想される二次精検者への適切な対応は、頸癌検診の将 来を考える上で避けては通れない重要な課題である。ベセスダシステムでは、細胞診異常例に対して子宮腟 部拡大鏡診(コルポスコピー)による生検が推奨されており、その臨床検査法としての重要性が一層高まっ てきた。われわれは、可変式対物焦点レンズを搭載したオリンパス OCS-500 型コルポスコピーに腹腔鏡撮像 器機を合体させた独自の画像記録システムを構築しており、臨床現場での動画を供覧しながらその視覚、教 育効果について具体的に供覧する。 ES-4 Recent progress in prevention and detection of cervical cancer Masatsugu Ueda 1,Hikari Akise 1,Shinji Izuma 1,Kiyo Torii 1,Yoshiaki Okamoto 1, Osamu Nunobiki 2 1 Cytopathology and Gynecology, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention, 2 Medical Technology, Kobe Tokiwa University Uterine cervical cancer is the second most common cancer in women worldwide, and is both a preventable and a curable disease especially if identified at an early stage. Cervical intraepithelial neoplasia (CIN) is the potentially premalignant transformation and abnormal growth of squamous cells on the surface of the cervix. CIN is usually discovered by a screening test, the Papanicolau (Pap) smear. The purpose of this test is to detect potentially precancerous changes and Pap smear results are reported using the Bethesda System (TBS). Despite the unquestioned success of the Pap smear in diminishing cervical cancer deaths in screened populations, the limitations of manual screening still exist. The development of viable automated systems to improve the sensitivity of cervical screening has been needed. Recently, we have created an automated Flow-Cytometer (FCM) based screening system for cervical cancer by the integration of specimen pre-treatment technology to reduce cell aggregation and cell analysis technology to obtain amount of DNA, and nuclear and cytoplasmic diameters for individual cells. The original algorithm was established to detect abnormal cells, focusing on both cell proliferation dynamics and cells morphology. Our validation research on the clinical performance of this system revealed that the sensitivity was 100 % (15/15) to detect CIN2+ lesions (95 % C.I.: 79.6 - 100.0), whereas the specificity was 85.1% (841/988) when normal controls and CIN1 lesions were defined as negative (95% C.I.: 82.8 - 87.2). Colposcopy is a medical diagnostic procedure to examine a magnified view of the cervix, allowing the colposcopist to visually distinguish normal from abnormal appearing area and take directed biopsies for further pathological examination. The main goal of colposcopy is to prevent cervical cancer by detecting precancerous lesions early and treating them. We also introduce a real-time movie picture recording system of actual colposcopic examination in our outpatient clinic. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 41 MEMO 42 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム Symposium 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 43 シンポジウム 1 シンポジウム 1 「末梢性 T 細胞リンパ腫における多段階発がん」 筑波大学医学医療系血液内科 准教授 坂田(柳元) 麻実子 【略 歴】 2000 年 3 月 東京大学医学部医学科卒業 2007 年 3 月 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了 2007 年 4 月 東京大学医学部附属病院医員 2008 年 7 月 筑波大学附属病院医員 2008 年 11 月 筑波大学大学院人間総合科学研究科講師 2011 年 10 月 筑波大学医学医療系血液内科講師 2013 年 4 月 筑波大学医学医療系血液内科准教授、現職 S1-1 末梢性 T 細胞リンパ腫における多段階発がん 坂田(柳元) 麻実子、千葉 滋 筑波大学医学医療系血液内科 血管免疫芽球性 T 細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T-cell lymphoma:AITL)は末梢性 T 細胞リンパ 腫の一型であり、全身リンパ節腫大、高γグロブリン血症、自己免疫疾患様の症状を特徴とする。AITL に おいては TET2 、IDH2 、DNMT3A 遺伝子に高頻度変異が報告されていたが、これらはいずれも骨髄系腫瘍 に認められ、AITL を特徴づける分子学的異常は明らかではなかった。 網羅的な遺伝子変異解析の結果、新規の高頻度 RHOA 遺伝子変異(c.G50T/p.G17V)を AITL の約 70%に 認めた。また、同時に TET2 変異(83.0%)、IDH2 変異(29.8%)、DNMT3A 変異(25.5%)を認めた。 興味深いことに、AITL において腫瘍細胞と腫瘍に浸潤する非腫瘍性血液細胞についてそれぞれ遺伝子変 異解析を行ったところ、RHOA 変異は腫瘍細胞に存在するが非腫瘍性血液細胞には存在しなかった。一方、 TET2 変異は腫瘍細胞、非腫瘍性血液細胞の双方に存在した。TET2 変異は、クローン性造血を認める健常 高齢者にも低頻度ながら認められることが報告されている(Busque, et al. Nat Genet 2012) 。これらのデー タからは、TET2 変異は血液細胞の前がん状態の形成に寄与する一方、疾患特異的な RHOA 変異が TET2 変異を有する前がん細胞に生じることにより、AITL を発症すると考えられる。 44 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 1 S1-1 Mutlistep tumorigenesis in peripheral T-cell lymphoma Mamiko Sakata-Yanagimoto,Shigeru Chiba Department of Hematology, Faculty of Medicine, University of Tsukuba Angioimmunoblastic T-cell lymphoma (AITL) is a distinct subtype of peripheral T-cell lymphoma (PTCL) characterized by generalized lymphadenopathy, hyperglobulinemia, and autoimmune-like manifestations. Frequent mutations in TET2, IDH2 , and DNMT3A have been described in AITL, which are commonly found in myeloid malignancies. However, the molecular pathogenesis specific to AITL was unknown. By comprehensive gene mutation analysis, we identified a novel recurrent loss-of-function mutation in RHOA (c.G50T/p.G17V) in around 70% of AITL samples together with those in TET2 (83.0% ), IDH2 (29.8% ), and DNMT3A (25.5% ). Remarkably, gene-mutation analysis of tumor cells and infiltrated cells demonstrated that the RHOA mutations specifically existed in tumor cells, but not in non-tumor blood cells, while the TET2 mutations were identified both in tumor cells and non-tumor blood cells. It was reported that TET2 mutations were also identified in normal elderly individuals with clonal hematopoiesis, although the frequencies were much lower than those in AITL patients (Busque, et al. Nat Genet 2012). These data suggest that TET2 mutations contribute to the premalignant state of the blood cells, and the subsequent disease-specific RHOA mutations in the TET2 -mutated premalignant cells will provoke AITL. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 45 シンポジウム 1 シンポジウム 1 「臨床検体乳がんスフィア培養を用いたがん幹細胞の 新規分子標的の探索」 金沢大学がん進展制御研究所 分子病態研究分野 教授 後藤 典子 【略 歴】 1989 年 金沢大学医学部卒業 1993 年 東京大学大学院医学系研究科博士課程(内科系臨床医学)修了 1993 年 東京大学医科学研究所助手(細胞遺伝学分野) 1998 年 ニューヨーク大学医学部 Department of Pharmacology, Visiting scientist 2002 年 東京大学医科学研究所講師(腫瘍抑制分野) 2005 年 東京大学医科学研究所助教授(腫瘍抑制分野) 2007 年 東京大学医科学研究所特任准教授(独立) 2013 年 金沢大学がん進展制御研究所教授(分子病態研究分野)現在に至る 【学会などにおける活動】 日本癌学会・評議員 日本分子生物学会 日本分子腫瘍マーカー研究会・世話人 日本サイトメトリー学会 ・評議員 金沢大学十全医学会・評議員 日本発生生物学会 日本内科学会 American Association for Cancer Research (AACR) International Society for Stem Cell Research (ISSCR) 【編集委員】 PLoS ONE American Journal of Cancer Research S1-2 臨床検体乳がんスフィア培養を用いたがん幹細胞の新規分子標的の探索 後藤 典子 1, 2 1 金沢大学がん進展制御研究所 分子病態研究分野、2 東京大学医科学研究所 分子療法分野 乳がんは、日本女性の罹患数第一のがんであり、近年益々増加傾向にある。現在では日本人女性の 20 人に 一人、米国では 8 人に一人が一生のうち一回は乳がんを経験するとの統計があり、身近な問題である。最近 の次世代シーケンサーなどテクノロジーの進歩により、乳がん組織のエキソームシーケンスが世界中で行わ れた。しかし、未だにドライバー変異が見つからない症例が多くあり、問題になっている。ここ数年で、が ん組織は、がん幹細胞が元となってその娘細胞が増えた組織であるという考え方が提示され、 「がん幹細胞説」 として、広く信じられるようになってきている。数年前私どもは、乳がん臨床検体を用いて、がん幹細胞様 の細胞をある程度濃縮できる浮遊培養系「スフィア培養」の系を立ち上げた。通常がん細胞は、がん組織の 中で互いの接着刺激によって発する生存シグナルに依存しているが、酵素処理などによりシングルセルにす ると、ほとんどはアポトーシスに陥る。これを「anoikis(アノイキシス) 」と呼ぶ。しかし、ほんの一部の がん幹細胞様の細胞はアノイキシス抵抗性であることを利用した培養系である。臨床検体由来のがん細胞を、 46 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 1 スフィア培養と接着培養と異なる条件で培養し、それぞれ DNA、RNA を取り出し、次世代シーケンサーに てエキソームシーケンス、RNA シーケンスを行った。その結果、一つのがん組織に、数十に及ぶ遺伝子のエ キソン内に変異が認められるばかりでなく、スフィア培養細胞と接着培養細胞とで、検出される変異が異な ることがわかった。このことは、スフィアを形成することにより濃縮される変異があることを示し、一つの がん組織内でも細胞により持っている変異が異なることを示唆する。一方、接着細胞内に濃縮された変異は、 スフィアになれるくらいのがん幹細胞性を持っていない細胞がもつ変異であり、そのような細胞もがん組織 の一部を占めていたことを意味する。以上より、がん組織は、きわめて多様性に富む組織であり、がん組織 をそのままシーケンスした場合、接着培養にしかなれない細胞の変異がノイズとなって、真のドライバー変 異の同定を阻んでいた可能がある。現在、スフィア培養細胞に濃縮された変異をコードする分子の RNA シー ケンスの結果も合わせて、がん幹細胞の新規治療標的の候補分子を抽出し、解析を進めている。 S1-2 Novel molecular targets in breast cancer stem cells in patientderived sphere cells Noriko Gotoh 1 1,2 Cancer Research Institute, Kanazawa University, Div. Cancer Cell Biology, Science, University of Tokyo, Div. Molecular Therapy 2 Institute of Medical Breast cancer is recently most common malignancy among women in western countries and Japan; 1 out of 8 women in USA and 1 out of 20 women in Japan would suffer from this disease throughout life. Recent emerging evidence suggests that breast cancer tissues are composed of cancer stem-like cells and their progenies. Several years ago we established sphere culture system by using primary cancer cells derived from surgically resected breast cancer tissues. It is thought that cancer stem-like cells are enriched in the sphere cells. We cultured breast cancer cells in the sphere condition and in the adherent condition, obtained DNA and RNA from these cells and performed exome sequencing and RNA sequencing. We found that several tens of mutations were identified in the same cancer tissues. Interestingly, different mutations were detected in cells cultured in each condition. This suggests that different specific mutations are enriched in either sphere cells or adherent cells, raising the notion that cancer tissues are very heterogenous and that there are cells without ability to form spheres but able to grow and produce progenies in adherent condition. The mutations in the latter cells might become noise and obscure real driver mutations when whole cancer tissues were sequenced. At present, we are attempting to find driver genes in the sphere cells by using data of exome sequencing and RNA sequencing. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 47 シンポジウム 1 シンポジウム 1 「エピゲノム異常による骨髄系腫瘍の発症・維持機構」 千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学 講師 指田 吾郎 【略 歴】 1996 年 東京医科大学医学部卒業 2002 年 東京医科大学大学院医学研究科内科学修了 2002 年 東京医科大学病院内科学第一講座 助手 2005 年 米国 Memorial Sloan-Kettering Cancer Center 博士研究員 2009 年 米国 Cincinnati Children s Hospital Medical Center 博士研究員 2010 年 千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学 助教 2014 年 千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学 講師 S1-3 エピゲノム異常による骨髄系腫瘍の発症・維持機構 指田 吾郎 千葉大学 大学院医学研究院 細胞分子医学 DNA やヒストンの化学修飾に代表されるエピジェネティックな転写制御機構の破綻が、ジェネティクな 変異と同様に、癌の発症過程に関与することが明らかにされつつある。組織幹細胞の自己複製や分化に関わ るエピジェネティック制御機構の破綻は、癌細胞への形質転換における重要な初期イベントのひとつである。 骨髄異形成症候群(MDS)は血球分化障害と機能障害による造血不全状態を呈して、一部が急性骨髄性白血 病(AML)へ移行するクローン性造血器腫瘍である。近年、MDS を含む造血器腫瘍でもエピジェネティッ ク制御遺伝子の変異が次々と同定された。このうち、ポリコーム遺伝子群複合体を構成する一つである EZH2 の機能喪失型変異は MDS の予後不良因子とされ、実際、Ezh2 欠損造血細胞は比較的長期間を要する が MDS を発症する。さらに、転写因子である RUNX1 の点突然変異体を導入した Ezh2 欠損 MDS では、そ の増殖活性が低いにも関わらず、共存する野生型細胞を駆逐し優位性を獲得した。一方で、Ezh2 は de novo AML の維持に不可欠ではないが、分化関連遺伝子の発現を抑制することで AML 細胞増殖を促進する機能が ある。本シンポジウムでは、造血器腫瘍に関わるエピゲノム異常を紹介し、ポリコーム遺伝子 EZH2 による 骨髄系腫瘍の発症・維持機構の病態基盤を議論したい。 48 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 1 S1-3 Epigenetic alterations in the development of myeloid malignancies Goro Sashida Department of Cellular and Molecular Medicine, Graduate School of Medicine, Chiba University Epigenetic alterations are involved in the establishment of gene expression profiles associated with cancers, and accumulation of epigenetic alterations promotes tumorigenesis. Recent genome sequencing studies have identified various mutations of epigenetic regulators in patients with myeloid malignancies such as myelodysplastic syndrome (MDS). Loss-of-function mutations in EZH2 , a compnent of the polycomb repressive complexe 2 (PRC2) are found in approximately 10% of MDS patients. EZH2 mutations in MDS patients are associated with significantly worse prognosis. We have recently shown that Ezh2 loss is sufficient for initiating the formation of MDS despite a long latency in mice. In addition, Ezh2 loss significantly promoted the transformation of HSCs expressing the RUNX1 mutant into MDS stem cells in vivo. Despite the compromised proliferative capacity of RUNX1 mutant/Ezh2 null cells, MDS cells outcompeted residing wild type cells in the MDS BM. In contrast, MLL-AF9 transduced cells required Ezh2 for progression into acute myeloid leukemia (AML), at least in part, due to suppressing the exprssion of differentiation-regulator genes. I will introduce the epigenetic alterations in hematopoietic malignancies and discuss the molecular mechanism how EZH2 regulates the initiation and promotion of myeloid malignancies. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 49 シンポジウム 1 シンポジウム 1 「がん幹細胞成立と維持における変異型 IDH の 役割と治療」 独立行政法人国立がん研究センター研究所 副所長/造血器腫瘍研究分野長 北林 一生 【略 歴】 1987 年 1992 年 1992 年∼ 1995 年∼ 2002 年∼ 2007 年∼ 2010 年∼ 早稲田大学教育学部卒業 東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了 理化学研究所基礎科学特別研究員 国立がんセンター研究所 研究員 国立がんセンター研究所・分子腫瘍学部長 東京理科大学大学院客員教授(併任) 独立行政法人国立がん研究センター 研究所副所長/造血器腫瘍研究分野長 【学会などにおける活動】 日本癌学会(評議員) 日本血液学会会員・日本分子生物学会(会員) American Society of Hematology(ASH)Member American Association for Cancer Research(AACR)Active Member European Hematology Association(EHA)Member International Society of Experimental Hemetology(ISEH) Member S1-4 がん幹細胞成立と維持における変異型 IDH の役割と治療 北林 一生 国立がん研究センター研究所 造血器腫瘍研究分野 イソクエン酸デヒドロゲナーゼ IDH1/2 遺伝子は、脳腫瘍・急性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群・胆管がん・ 軟骨肉腫・骨肉腫・骨巨細胞腫・血管免疫芽球性 T 細胞リンパ腫など様々ながんにおいて高頻度に変異が見 られる。我々は、急性骨髄性白血病で高頻度に重複した変異が見られる 4 つの変異遺伝子(NPM、IDH1/2、 DNMT3A、FLT3)をマウス骨髄細胞に導入することにより、変異型 IDH 遺伝子を有する急性骨髄性白血病 モデルマウスを独自に作製した。このモデルマウスを用いて IDH 遺伝子変異を欠損させると白血病の発症が 抑制されることを証明した。この結果は変異型 IDH の発現が白血病の維持に必須であり、変異型 IDH が有 望な治療標的であることを示している。野生型 IDH はイソクエン酸をαケトグルタル酸(αKG)に変換す るが、変異型 IDH は野生型と異なり、αKG を 2 ハイドロキシグルタル酸(2HG)に変換する活性を持つ。 したがって、がん細胞特異的な変異型 IDH1 は副作用を回避出来る理想的な治療標的である。 急性骨髄性白血病においては IDH の変異は、NPM の変異を含む複数の変異と同時に見られることが多く、 複数の遺伝子変異の蓄積ががん幹細胞の成立には必要であることを示唆している。実際、マウスモデルにお いても上述のように 4 つの変異遺伝子の導入が白血病誘導に必要であった。白血病患者では、IDH 変異は白 血病細胞だけでなくリンパ球など他の正常細胞にも見られる一方で、NPM の変異は白血病細胞特異的である ことが報告されていることから、IDH 変異は造血幹細胞またはそれに近い未分化な細胞で生じ、NPM 変異 はがん発症の後期で生じていると考えられる。 本講演では、がん幹細胞の成立と維持における IDH 変異の役割と変異型 IDH を標的とした治療法開発の 現状について報告する。 50 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 1 S1-4 Roles of IDH mutations in establishment and maintenance of cancer stem cells Issay Kitabayashi Div. Hematological Malignancy, National Cancer Center Acute myeloid leukemia (AML) is an aggressive malignancy of hematopoietic cells with a poor clinical outcome. A number of genomic abnormalities and mutations have been identified in AML. Some of the fusion genes such as MLL-fusions and MOZ-fusions can transform hematopoietic progenitor/stem cells into AML stem cells as single genes. However, serial acquisition of mutations occurs in self-renewing hematopoietic stem cells (HSCs) is required to establish AML stem cells in other cases. Mutations in the specific genes such as NPM, IDH1/2, DNMT3A and FLT3 frequently occur simultaneously in AML patients with normal karyotype. We established a mouse AML model by co-transducing the four mutant genes. Although NPMc promoted proliferation of the cells in vitro , NPMc-expressing cells could not be maintained without coexpression of IDH2/R140Q in vivo . These results suggest that the IDH mutation is a prerequisite for AML with the NPN mutation. Conditional deletion of IDH2/R140Q blocked the maintenance of AML stem cells, resulting in survival of the AML mice. Thus, IDH mutants are promising targets for anticancer therapy. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 51 シンポジウム 1 シンポジウム 1 「グリオーマ幹細胞の性状解析と人工ニッチの応用」 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞制御分野 田賀 哲也 【略 歴】 1982 年 3 月 京都大学 理学部卒業 1988 年 3 月 大阪大学 大学院医学研究科 博士課程修了 医学博士 1987 年 4 月 日本学術振興会 特別研究員 1989 年 11 月 大阪大学 細胞工学センター 助手 1996 年 7 月 大阪大学 細胞生体工学センター 助教授 1996 年 9 月 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授(2000 年 8 月迄) 2000 年 9 月 熊本大学 発生医学研究センター 教授(2008 年 12 月迄) 2001 年 10 月 熊本大学 発生医学研究センター長併任 (至 2006 年 3 月、自 2008 年 4 月、至 2008 年 9 月) 2008 年 12 月 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授 現在に至る 2011 年 11 月 東京医科歯科大学 研究推進本部研究戦略室長 現在に至る 2013 年 4 月 東京医科歯科大学 副学長(広報担当)現在に至る S1-5 グリオーマ幹細胞の性状解析と人工ニッチの応用 田賀 哲也 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞制御分野 癌幹細胞は化学療法や放射線療法などへの治療抵抗性を有するとともに、自己複製能と多分化能によって 癌の進展と再発に深く関与するとされる。また、癌幹細胞の生存と維持に関わる微小環境(ニッチ)の存在 も示唆されており、癌の根治に向けて、癌幹細胞および癌幹細胞ニッチを標的とした治療法の開発が期待 される。当研究室では、グリオーマ細胞株 C6 において、Hoechst33342 色素排出性の少数の細胞集団(side population,SP)が癌幹細胞画分であることを以前報告した。従来の細胞生物学的あるいは分子生物学的ア プローチではニッチの全容解明が困難であったことから、我々は新たな手法すなわち人工ポリマーの利用に よるグリオーマ幹細胞のニッチ解明を目指した。約 400 種類の化学合成ポリマーをスライド上にドットした アレイを用いた探索から、癌幹細胞画分である C6 グリオーマの SP 細胞を効率的に増殖させるポリマーを同 定した。興味深いことに SP 細胞の中にもこのポリマーに接着性を示す SP 細胞と非接着性の SP 細胞が存在 することが確認され、Hoechst33342 色素での低染色性に基づいて認識されてきた癌幹細胞集団は、実は不均 質性を示すことを明らかにした。同ポリマーに接着性を示した SP 細胞は免疫不全マウスの脳内への移植実 験において高い腫瘍形成能を示したことから、このポリマーが造腫瘍性の高い癌幹細胞のニッチをミミック する分子であることが示唆された。 癌幹細胞は腫瘍内に巧みにニッチを構築し利用する生存戦略をとるものと推察される。腫瘍内の間質細胞 の一つとして、腫瘍随伴マクロファージ(tumor-associated macrophage;TAM)の存在が古くから知られ ているが、癌幹細胞と TAM の相互作用の詳細は未だ明らかでない。免疫不全マウスの脳内に癌幹細胞画分 である SP 細胞集団を移植する際に、SP 細胞で教育したマクロファージを共移植すると、対照マクロファー ジとの共移植よりも、強い腫瘍形成をもたらした。SP 細胞と MP 細胞に発現する遺伝子について cDNA マ イクロアレイ解析を行ったところ、単球の動員やマクロファージ分化を担う遺伝子発現が、SP 細胞において 亢進していた。以上の結果から、癌幹細胞は効率的に単球からマクロファージへの増殖・分化を促し、誘導 されたマクロファージは腫瘍の進展を促す TAM 機能を持つと考察した。 52 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 1 S1-5 Understanding of glioma stem cell niche and application of synthetic polymers Tetsuya Taga Department of Stem Cell Regulation, Medical Research Institute, Tokyo Medical and Dental University (TMDU) Cancer stem cells (CSCs) are key drivers of cancer relapse and progression, and are supposed to be maintained under the specialized microenvironment called niche, which is considered to comprise particular proteins and physical architectures. To date, very little is known about the identity of niche components. As we previously reported, several cancer cell lines contain a sub-population of CSCs, which is enriched in the side population (SP) identified by Hoechst 33342 staining and FACS analysis. SP cells in C6 glioma are tumorigenic, but cells in the main population (MP) are not. To explore the niche mimicry for this glioma SP cells (i.e., CSCs) and elucidate molecular basis for CSC niche, nearly 400 synthetic polymers were examined. We identified a polymer which preferentially supports the proliferation of C6 glioma SP over MP cells. The SP cells selected by this polymer showed dramatically higher tumorigenicity when transplanted into the NOD/SCID mouse brain. Elucidation of glioma stem cell niche with this polymer may provide clues to develop effective therapeutic strategies. Tumor-associated macrophages (TAMs) are a component of the tumor mass, and large numbers of TAMs are observed in many solid tumors, including glioma. However, it remains unclear how the interaction between CSCs and TAMs could contribute to tumor development. cDNA microarray analysis of highly tumorigenic C6 glioma SP and non-tumorigenic MP cells indicated that SP cells show significant upregulated expression of several cytokine genes related to monocyte recruitment and differentiation, suggesting that SP cells may have essential roles in TAM behaviors. Interestingly, when C6 SP cells were transplanted together with SP cell-educated macrophages into the NOD/SCID brain, elevated tumor formation was observed compared to the transplantation together with MP-educated macrophages. We are in the process of elucidating this kind of selfish strategies that cancer stem cells take 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 53 シンポジウム 2 シンポジウム 2 「婦人科がん幹細胞を標的とした新規治療法の開発」 九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学 教授 加藤 聖子 【略 歴】 1986 年 九州大学医学部卒業 1986 年 松山赤十字病院 産婦人科(研修医) 1987 年 九州大学医学部附属病院 産科婦人科(研修医) 1988 年 国立病院九州がんセンター 婦人科(レジデント) 1989 年 米国ラホヤ癌研究所(post doctoral fellow) 1992 年 九州大学生体防御医学研究所附属病院 生殖生理内分泌婦人科(医員→助手) 1995 年 九州大学大学院医学博士学位取得 1995 年 九州大学生体防御医学研究所(助手) 1998 年 九州大学生体防御医学研究所 ゲノム創薬・治療学分野(講師) 2009 年 順天堂大学大学院医学研究科 産婦人科講座(准教授) 2012 年 九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学(教授) 【所属学会等】 日本産科婦人科学会常任理事 日本癌学会評議員 日本婦人科腫瘍学会代議員 日本産婦人科乳腺医学会理事 日本妊娠高血圧症学会理事 日本胎盤学会理事 日本サイトメトリー学会理事 S2-1 婦人科がん幹細胞を標的とした新規治療法の開発 加藤 聖子 九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学分野 近年、がん組織の中に、Cancer Stem-like Cells(CSC)の存在が報告され、この CSC を含む癌細胞の細胞 集団は、 腫瘍抵抗性や転移能に関与すると考えられている。CSC を分離する方法としては side-population (SP) 細胞を分離する方法が用いられる。我々は子宮体癌組織からの初代培養細胞、子宮体癌細胞株に SP 細胞が 存在し、この SP 細胞は、未分化、自己複製能、腫瘍細胞と間質細胞への 2 方向性分化能、造腫瘍能亢進を 示し、CSC の特性を持つことを明らかにした。更に、この SP 細胞の形態を観察すると足突起を持ち、著明 な運動能を持つこと示した。SP 細胞は既存の抗がん剤に対して抵抗性を持つことを示し、がん幹細胞を標的 にした治療のためには、複数のシグナルを阻害する必要があると考えられた。そこで、多様な作用を持つヒ ストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤に着目し HDAC 阻害剤の sodium butyrate(NaB)を用いて SP 細胞への効果を検討したところ、 NaB は、 SP 細胞の DNA ダメージシグナルを活性化し自己複製能を抑制した。 最近 CSC と EMT の関与が報告され、EMT の性質を示す乳癌 CSC の増殖を特異的に抑制する薬剤として Salinomycin が同定された。そこで、我々は Salinomycin の SP 細胞に対する効果を解析した。Salinomycin は SP 細胞においてアポトーシスを誘導し、Wnt シグナルを抑制することにより、細胞増殖を抑制し、運動能、 浸潤能やマウス皮下への腫瘍形成も抑制した。CSC はこの他にも多様な性質を持ち、CSC の生存や維持には、 複数のシグナル分子が関与していると思われる。CSC を標的とした治療法の開発にはそれぞれの特性を抑制 する薬剤を組み合わせて用いるか、多様な作用機序を持つ新規薬剤を開発するなどの戦略が重要であろう。 54 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 2 S2-1 Development of new cancer therapy by targeting endometrial cancer stem cells Kiyoko Kato Department of Obstetrics and Gynecology, School of Medicine,Kyushu University Stem-like cell subpopulations, referred to as side-population (SP) cells, have been identified in several tissue and tumor types based on their ability to remove intracellular Hoechst 33342, a fluorescent dye. We have isolated and characterized SP cells from endometrial cancer cells. Endometrial cancer SP cells possess the following characteristics: i) reduced expression levels of differentiation markers, ii) long-term repopulating properties, iii) self-renewal capacity, iv) enhanced migration and podia formation, v) enhanced tumorigenicity, and vi) bi-potential development (tumor cells and stroma-like cells), suggesting that these SP cells have cancer stem-like cell features. Recently, we demonstrated that sodium butyrate, a histone deacetylase (HDAC) inhibitor, inhibited the self-renewal capacity of endometrial cancer SP cells by inducing a DNA damage response and salinomycin suppressed migration and proliferation of ; endometrial cancer SP cells by inducing apoptosis. It seems likely that endometrial cancer stem-like cells are the target for the development of new cancer therapy. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 55 シンポジウム 2 シンポジウム 2 「核酸医薬品の新展開」 東京医科大学 分子病理学分野 主任教授 黒田 雅彦 【略 歴】 学 歴 1989 年 東京医科大学 卒業 1989 年 東京大学大学院 医学系研究科第 3 博士課程(医学) 第 3 基礎医学専攻 1993 年 東京大学大学院 医学系研究科第 3 博士課程(医学) 卒業 【職 歴】 1993 年 東京大学医学部 病理学教室 文部教官助手 1996 年 New York University, Skirball Institute に癌遺伝子研究のため留学 1999 年 東京医科大学 病理学第一講座 講師 2002 年 ST CREST 研究代表(環境化学物質と発癌の研究に従事) 2005 年 東京医科大学 病理学講座 助教授 2009 年 東京医科大学 分子病理学講座 主任教授 (∼現在) S2-2 核酸医薬品の新展開 黒田 雅彦 東京医科大学 医学科 分子病理学分野 miRNA は、20 塩基前後の短い Non-coding RNA であり、タンパク質をコードする mRNA に結合し、分 解もしくは翻訳阻害に働く。毎年新たな miRNA が発見されており、現在 miRNA のデータベース(http:// www.mirbase.org/)には、ヒトで約 2000 個の miRNA が登録されている。miRNA は、各種の正常組織で 特徴的な発現パターンを示すが、がんをはじめとする各種の疾患の組織で発現パターンが変化することか ら、機能的意義の解析と同時に、バイオマーカーとして応用する研究が行われている。さらには、疾患の原 因となる miRNA を標的にした治療薬がすでに臨床試験(Phase Ⅱ)に入っている。このような背景から、 我々はがん組織で発現が減少しているがん抑制性 miRNA の補充療法に注目している。一方で臨床応用には、 miRNA の生体内でのプロセシングの解明や免疫応答など、克服しなければいけない問題がある。今回の発 表においては、現在我々が開発している、補充型 miRNA のプラットフォームや DDS に関する話題を提供し たい。 56 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 2 S2-2 Significance and applications of novel class of RNA for cancer therapy Masahiko Kuroda Tokyo Medical University, Department of Molecular Pathology MicroRNAs (miRNAs) are small noncoding RNA molecules that are frequently dysregulated in cancer. An increasing number of studies indicate an essential role for microRNAs in lung cancer progression and chemo-resistance and miRNA replacement therapy for tumor suppressor miRNAs are essential tools for miRNA based cancer therapeutics. Despite the therapeutic potential of miRNA drugs, their clinical application has been limited in part by a lack of appropriate delivery systems. Here, we developed that novel type of miRNA molecule that conjugated with EGFR ligand. These modified miR-34a induced cell death more efficiently compared with conventional pre miR34a in H1299 lung cancer cells. In addition, intravenously injected target miR-34a accumulate to EGFR-expressing xenograft lung cancer tissue in Rag2−/− mice. Our results suggest that targeted miRNAs can be used therapeutically to target EGFRexpressing cancerous tissues with nucleic acid drugs. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 57 シンポジウム 2 シンポジウム 2 「造血器腫瘍に対する分子標的治療の開発」 東京医科大学血液内科学分野 講師 岡部 聖一 【略 歴】 1994 年 5 月 医師免許医籍登録 1998 年 1 月 東京医科大学大学院単位取得 1999 年 4 月 東京医科大学内科学第一講座臨床研究医 2000 年 4 月 米国インディアナ大学医学部留学 2003 年 2 月 東京医科大学内科学第一講座助手 2004 年 2 月 東京医科大学八王子医療センター免疫血液内科助手 2004 年 10 月 東京医科大学内科学第一講座助手 2007 年 4 月 東京医科大学内科学第一講座助教 2010 年 11 月 東京医科大学内科学第一講座講師 2014 年 4 月 東京医科大学血液内科学分野講師 現在に至る 【所属学会】 日本内科学会、日本血液学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会 【専門資格】 総合内科専門医、日本血液学会認定血液専門医(指導医、評議員)、がん薬物療法専門医、 日本臨床腫瘍学会指導医、認定産業医 S2-3 造血器腫瘍に対する分子標的治療の開発 岡部 聖一 東京医科大学 血液内科学分野 慢性骨髄性白血病(CML:chronic myeloid leukemia)は、多能性造血幹細胞の異常によって発症する、 骨髄増殖性腫瘍である。90%以上の症例に 9 番と 22 番染色体の相互転座 t(9;22)である、フィラデルフィ ア(Philadelphia:Ph)染色体が認められる。その際に形成される、BCR-ABL1 遺伝子により、チロシンキナー ゼである、BCR-ABL タンパクが形成され、細胞増殖、抗アポトーシスがみられる。CML の治療は、BCRABL チロシンキナーゼ阻害薬である、イマチニブである。現在、第 2 世代の阻害薬である、ニロチニブ、ダ サチニブも使用されている。CML 症例の予後は、イマチニブをはじめとした、BCR-ABL チロシンキナーゼ 阻害薬の登場により、劇的に改善した。このように、BCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬を早期に使用する ことにより、CML 症例の生存率は改善し、quality of life(QOL)の向上がみられている。実際、予後の改善 により、CML が完全に治癒するのかどうかがクローズアップされてきている。しかし、いまだに BCR-ABL の点突然変異によって、BCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬に耐性となる症例が存在すること、また BCRABL チロシンキナーゼ阻害薬は、骨髄中に残存する白血病幹細胞に対して、効果がみられないことが問題と なっている。今回、我々は CML 治療の問題点と治癒に向けた取り組みを中心に、今後の治療の展望につい て触れていきたい。 58 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 2 S2-3 New strategy for the therapy of chronic myeloid leukemia Seiichi Okabe Department of Hematology, Tokyo Medical University Chronic myeloid leukemia (CML) is a clonal myeloproliferative disorder caused by Philadelphia chromosome deriving from a translocation between chromosomes 22 and 9. The oncogenic product of this aberrant chromosome is constitutively active tyrosine kinase BCR-ABL that is responsible for leukemic cell growth, proliferation and cell survival. The development of tyrosine kinase inhibitors (TKI) such as imatinib is effective against CML patient. Thus, imatinib has become the standard therapy for patients with CML. However, resistance to ABL TKI can develop in CML patients due to BCR-ABL point mutations. Moreover, TKI has not been proven to cure the CML, because it does not eliminate quiescent leukemia stem cell (LSC) which is characterized by high self-renewal and pluripotency and remains a potential reservoir for disease relapse. Therefore, new approach against BCR-ABL mutant cells and LSCs may improve the outcome of BCR-ABL-positive leukemia patients. We focus on some future directions for CML biology and therapy. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 59 シンポジウム 2 シンポジウム 2 「次世代シーケンサーを用いた日本人卵巣癌治療関連 遺伝子異常プロファイリング」 東京慈恵会医科大学附属第 3 病院 産婦人科 助教 竹中 将貴 【略 歴】 平成 16 年 3 月 東京慈恵会医科大学卒業 平成 16 年 4 月∼平成 21 年 3 月 初期研修・慈恵医大産婦人科入局・後期研修 平成 21 年 4 月∼平成 23 年 3 月 産婦人科専門医取得 平成 23 年 4 月∼平成 25 年 6 月 国立がん研究センター研究所リサーチレジデント 平成 25 年 7 月∼ 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座 助教 東京慈恵会医科大学附属第三病院勤務 【所属学会】 日本産科婦人科学会、婦人科腫瘍学会、日本癌学会 S2-4 次世代シーケンサーを用いた日本人卵巣癌治療関連遺伝子異常プロファイ リング 竹中 将貴 1、矢内原 臨 1、河野 隆志 2、岡本 愛光 1 1 東京慈恵会医科大学 産婦人科、2 国立がん研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野 【目 的】 近年解析手法の進歩により、多数の癌種でゲノム網羅的解析が行われており、様々な分子生物学的特性を 標的とした分子標的治療薬の開発が精力的に行われている。卵巣癌においても、海外ではゲノム網羅的な解 析結果が報告され、徐々に分子生物学的特性が明らかになってきた。しかしながら日本人卵巣癌に関する報 告は未だ少ない。本研究では次世代シーケンサーを用いて、日本人卵巣癌で生じている治療関連遺伝子異常 プロファイルを同定し、既存の分子標的治療薬に反応し得る日本人卵巣癌の割合を明らかにしすること、さ らに同定された遺伝子異常と臨床病理学的特徴との関連について検討することを目的とした。 【対象と方法】 72 例の日本人卵巣癌患者から、初回手術により採取された腫瘍組織を解析対象とした。Ion Ampliseq Cancer panel キット及びカスタムプライマーを用いて、癌関連 46 遺伝子の 740 ホットスポットを増幅し、次 世代シーケンサー(Ion Proton&frasl;PGM シーケンサー)及び CisMuton(in-house mutation caller)を用いて、 癌関連遺伝子の変異およびコピー数異常(増幅・ホモ欠失)を検出した。検出された遺伝子異常は、Sanger シー ケンス法およびリアルタイム PCR 法で確認した。 【結 果】 72 例の腫瘍組織のうち 53 例(74%)に遺伝子異常が同定され、TP53、PIK3CA、KRAS の変異が、28 例 (39%) 、18 例(25%)、10 例(14%)と高頻度であった。さらに ERBB2 (4%)、PTEN (3%)、FGFR2 (3%)、 CDKN2A (3 %)、RB1 (3 %)、AKT1 (1 %)、CTNNB1 (1 %)、NRAS (1 %)、MET (1 %)and KIT(1 %) など計13 遺伝子に異常が同定された。治療関連遺伝子の異常は 9 遺伝子に同定され、72 例中 35 例(49%)で、 少なくとも 1 種類の治療関連遺伝子異常が同定された。1 例の明細胞腺癌で同定された AKT1 の活性化変異 60 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 2 である E17K 変異が認められた。組織別では、明細胞腺癌では 77.8%と高頻度に治療関連遺伝子異常が認め られた。一方、漿液性腺癌では 12%と低頻度であった。 【結 論】 日本人卵巣癌の約半数では、既存の分子標的治療薬に反応しうる治療関連遺伝子異常が生じていた。 S2-4 Profiling of actionable genetic alteration by next-generation sequencer in Japanese ovarian cancer Masataka Takenaka 1,Nozomu Yanaihara 1,Takashi Kohno 2,Aikou Okamoto 1 1 Division of Department of Obstetrics and Gynecology, The Jikei University School of Medicine, Genome Biology, National Cancer Center Research Institute 2 【Purpose】 Recent genome wide analyses have revealed genetic alterations in various human cancers, and these have clarified the molecular biological characterizations gradually. Although genome wide analyses in ovarian cancer have been reported in foreign countries, such a systematic genome analysis in Japanese ovarian cancer has not been reported. The objectives of this study were to construct a profile of therapeutically actionable gene alterations for representative histological types and to clarify the association of genetic alterations with clinicopathological features. 【Patients and methods】 Seventy-two Japanese ovarian cancers resected surgery before chemotherapy were subjected to this study. Target regions including 740 hotspots of 46 cancer related genes were amplified by Ion AmpliSeq Cancer Panel Kit and a set of custom primers, and were sequenced by Ion Proton⁄PGM sequencer. Mutations and copy number variants were detected by using an in-house mutation caller (CisMuton). All mutations and copy number variants were validated by sanger sequencing and real-time genomic PCR analysis. 【Result】 Genetic alterations were identified in 53 (74%) of 72 Japanese ovarian cancers, and TP53 (39%), PIK3CA (25%) and KRAS (14%) were three most frequently mutated genes. Additionally, genetic alterations of ERBB2 (4%), PTEN (3%), FGFR2 (3%), CDKN2A (3%), RB1 (3%), AKT1 (1%), CTNNB1 (1%), NRAS (1%), MET (1%) and KIT (1%) were detected. Actionable gene alterations were detected in 35 (49%) of 72 patients with a tendency of a mutually exclusive manner. Especially, E17K mutation of AKT1 was identified in a Japanese clear cell carcinoma. Among histological subtypes, clear cell carcinomas showed a high frequency of actionable alterations (21/27; 78%), whereas serous carcinomas showed a low frequency (3/25; 12%) 【Conclusion】 The majority (49%) of Japanese ovarian cancers were found to carry at least one actionable alteration among 46 cancer-related genes examined. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 61 シンポジウム 3 シンポジウム 3 「卵巣明細胞腺がん株 HAC2 細胞の低酸素培養による グリコーゲンの蓄積とその機序の解明∼抗癌剤耐性克服 を目指して∼」 東京慈恵会医科大学 産婦人科 助教 飯田 泰志 【略 歴】 平成 14 年 東京慈恵会医科大学卒業 平成 16 年 東京慈恵会医科大学附属病院研修修了 平成 19 年 東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科レジデント課程修了 平成 19 年 町田市民病院 平成 20 年 東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科助教 平成 22 年 東京慈恵会医科大学生化学講座に留学 平成 24 年 東京慈恵会医科大学附属柏病院 平成 26 年 東京慈恵会医科大学附属病院 現在に至る 【所属学会】 日本産科婦人科学会 認定医 日本がん治療認定医機構 認定医 日本婦人科腫瘍学会 日本癌学会 日本産科婦人科内視鏡学会 日本臨床細胞学会 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG) S3-1 卵巣明細胞腺がん株 HAC2 細胞の低酸素培養によるグリコーゲンの蓄積 とその機序の解明∼抗癌剤耐性克服を目指して∼ 飯田 泰志 東京慈恵会医科大学 産婦人科 【目 的】 近年、腫瘍の生物学的特性に基づいた治療の個別化や組織型別の治療法選択の必要性が指摘されている。 本邦において卵巣癌の約 25%を占める卵巣明細胞腺癌は化学療法の奏効率が低く、進行例の予後は極めて不 良である。今回われわれは卵巣明細胞腺癌の最も特徴的な病理学的所見である「細胞内グリコーゲン貯蔵」 に着目し、そのメカニズムの解明により抗癌剤耐性克服および新規治療法開発の可能性を検討した。 【方 法】 1)卵巣明細胞腺癌細胞株 HAC2 を低酸素、常酸素でそれぞれ培養し、細胞内グリコーゲン量を分光光度 計による測定および Periodic acid-Schiff(PAS)染色で比較した。2)低酸素、常酸素培養のグリコーゲン合 成に関連したタンパク質をウエスタンブロット法で比較した。3)HAC2 細胞の卵巣明細胞腺癌で高頻度に認 められる PIK3CA 遺伝子解析を行い、卵巣明細胞腺癌のグリコーゲン貯蔵メカニズムについて考察した。4) 低酸素による HAC2 細胞の抗癌剤感受性の変化について調べた。 62 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 3 【結 果】 1)HAC2 細胞内のグリコーゲン量は常酸素培養に比較し 24 時間低酸素培養により僅かではあるが有意 (P < 0.05)に増加し、48 時間低酸素培養では約 2 倍(P < 0.01)に増加した。PAS 染色でも低酸素培養に より細胞内の PAS 陽性顆粒は増加した。2)低酸素培養により HIF1 の発現は増加し、glycogen synthase 1, muscle type(GYS1)の発現は増加した。さらに GYS1 を脱リン酸化し活性型にする protein phosphatase 1 およびその調節サブユニットである protein phosphatase 1, regulatory subunit 3C(PPP1R3C)が増加し、 GYS1 をリン酸化し不活性型にする glycogen synthase kinase 3 beta(GSK3β)の活性低下が認められた。 すなわち低酸素により GYS1 は発現が増加し、脱リン酸化され活性化された。3)HAC2 細胞は PIK3CA 遺 伝子の exon20 に変異が認め、 これにより常酸素においても PI3K/AKT 経路が活性化し GSK3βのリン酸化 (不 活性化)および HIF1 の増加が起こっていると考えられた。4)低酸素により HAC2 細胞に対するシスプラチ ンの感受性は低下したが、ドキソルビシンに対する感受性は変化しなかった。 【結 論】 今回われわれは低酸素により卵巣明細胞腺癌細胞株の細胞内グリコーゲン量が増加し、一部の抗癌剤に対 する感受性が低下することを示した。そして、これらには HIF1 が関連している可能性が示唆された。 S3-1 Hypoxia promotes glycogen synthsis and accumulation in human ovarian clear cell carcinoma Yasushi Iida Department of Obstetrics and Gynecology, The Jikei University School of Medicine 【Objectives】 Recently, it was reported that hypoxia-inducible factor 1(HIF1) promotes glycogen synthesis. In this study, we demonstrated that hypoxia induced cellular accumulation of glycogen in an ovarian clear cell carcinoma (OCCC) cell line, HAC2, and examined changes in proteins involved in glycogen metabolism under hypoxia. 【Methods】 The amount of glycogen was measured with a spectrophotometer. The expression levels of proteins were determined by western blot analysis. Mutation analysis of PIK3CA , and VHL in HAC2 cells were performed. Cytotoxicity of cisplatin and doxorubicin was investigated. 【Results】 The amount of glycogen in cells cultured under hypoxia approximately doubled after 48 hr (P<0.01) as compared to that under normoxia. Hypoxia led to an increase in the level of cellular glycogen synthase 1(GYS1), and conversely to a decrease in inactive GYS1. Additional increases were observed in protein phosphatase 1, regulatory subunit 3C, and phosphorylated glycogen synthase kinase 3β;. Activation of AKT pathway was noticeable under hypoxia. HAC2 cells did not have VHL mutation, but had a distinct PIK3CA mutation of the H1047R substitution. Hypoxia deceased the cytocidal activity of cisplatin and doxorubicin to various degrees. 【Conclusion】 The hypoxic conditions together with HIF1 stabilization and AKT activation increased the intracellular glycogen contents in OCCC cells. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 63 シンポジウム 3 シンポジウム 3 「粘液性卵巣癌の抗癌剤抵抗性には E-カドヘリンを介した 強固な細胞間結合が関与する」 自治医科大学 産科婦人科学講座 准教授 嵯峨 泰 【略 歴】 1993 年 3 月 自治医科大学医学部卒業 1993 年 5 月 自治医科大学附属病院臨床研修生 1995 年 5 月 秋田県阿仁町立病院内科科長 1997 年 4 月 自治医科大学大学院医学研究科入学 2001 年 3 月 同上終了、医学博士 2001 年 4 月 自治医科大学附属病院産科婦人科病院助手 2001 年 5 月 秋田県公立米内沢病院内科科長 2003 年 5 月 自治医科大学附属病院産科婦人科病院助手 2005 年 4 月 自治医科大学産科婦人科学講座助手 2006 年 5 月 国際医療福祉大学病院産婦人科科長 2007 年 2 月 国際医療福祉大学病院産婦人科助教授 2008 年 2 月 自治医科大学産科婦人科学講座講師 2013 年 4 月 自治医科大学分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部兼務 2013 年 6 月 自治医科大学産科婦人科学講座学内准教授 S3-2 粘液性卵巣癌の抗癌剤抵抗性には E-カドヘリンを介した強固な細胞間結合 が関与する 嵯峨 泰 1, 2 1 自治医科大学 産科婦人科、2 自治医科大学 遺伝子治療研究部 【目 的】 粘液性卵巣癌は臨床的に化学療法抵抗性であるが、その機序は不明である。近年、細胞間結合と抗癌剤感 受性との関連が注目されている(multicellular mediated resistance)。粘液性癌の抗癌剤抵抗性機序の解明を 目的に基礎検討を行った。 【方 法】 4 種の卵巣粘液性癌株(RMUG-S、RMUG-L、MCAS、OMC-1)を対象とした。1)E- カドヘリンの発現を ウエスタンブロットで検討した。2)E- カドヘリンを標的とした短ヘアピン(sh)RNA 発現ベクターを作成し、 OMC-1 にリポフェクション法で遺伝子導入した。3)細胞遊走能をスクラッチアッセイで検討した。4)抗癌 剤(CDDP、PTX、CPT-11、GEM)に対する感受性を XTT アッセイで検討した。 【成 績】 1)4 株全てに E- カドヘリンの発現が認められた。2)E-カドヘリンを標的とした shRNA 発現株(OMC-1/ shECAD)を樹立した。OMC-1/shECAD は E- カドヘリンの発現が低下した。OMC-1/shECAD とコントロー ルの細胞倍加時間に差は無かった。親株およびコントロールは細胞接種 1 週後に、細胞間結合が密なコロニー を形成したのに対して、OMC-1/shECAD は細胞間結合が疎なコロニーを形成した。3)OMC-1/shECAD の 遊走細胞数はコントロールに比べて著明に増加した。4)OMC-1/shECAD の細胞接種直後(コロニー形成以 前)に接触させた抗癌剤に対する感受性は 4 種ともコントロールと差はなかった。一方、細胞接種 1 週後(コ 64 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 3 ロニー形成後)の OMC-1/shECAD(疎なコロニー)はコントロール(密なコロニー)に比べて、4 種の抗癌 剤に対して 2 ∼ 5 倍の高感受性を示した。 【結 論】 粘液性卵巣癌の抗癌剤抵抗性には E- カドヘリンを介した密な細胞間結合が関与することが示された。 S3-2 Relationship between E-cadherin and resistance to anticancer agents in mucinous ovarian cancer Yasushi Saga 1,2 1 Department of Obstetrics and Gynecology, Jichi Medical University, 2 Division of Genetic Therapeutics, Center for Molecular Medicine, Jichi Medical University Mucinous ovarian cancer is clinically resistant to chemotherapy, but the mechanism is unclear. In recent years, the association between intercellular junctions and anticancer agent sensitivity has attracted attention (multicellular-mediated resistance). We performed a basic study on the mechanism of the resistance of mucinous ovarian cancer to anticancer agents. Four types of mucinous ovarian cancer cell lines (RMUG-S, RMUG-L, MCAS, and OMC-1) were used. 1) E-cadherin expression was evaluated by Western blotting. 2) A plasmid vector encoding short-hairpin (sh) RNA against E-cadherin was produced, and the vector was transferred to OMC-1 employing the lipofection method. 3) Cell migration was evaluated using the scratch wound healing assay. 4) The sensitivity to 4 types of anticancer agent (CDDP, PTX, SN38, and GEM) was evaluated by the XTT assay. As a result: 1) All 4 cell lines showed E-cadherin expression. 2) A cell line expressing shRNA against E-cadherin (OMC-1/shECAD) was established. E-cadherin expression was decreased in OMC-1/shECAD. There was no difference in the cell doubling time between OMC1/shECAD and the control (OMC-1/Mock). The parent cell line and control formed colonies with dense intercellular junctions, whereas OMC-1/shECAD formed colonies with sparse intercellular junctions. 3) The number of migrating cells in OMC-1/shECAD was markedly higher than that in the control. 4) Comparison in the single cell state showed no difference in the sensitivity to the 4 types of agent between OMC-1/ shECAD and the control. In the multiple cell state, the sensitivity of OMC-1/shECAD to each anticancer agent was 2-4 times that of the control. These results suggested the involvement of dense intercellular junctions mediated by E-cadherin in the resistance of mucinous ovarian cancer to anticancer agents. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 65 シンポジウム 3 シンポジウム 3 「膵臓癌に対するナファモスタットメシル酸塩の有用性」 高知大学医学部 外科学講座外科1 竹 由佳 【略 歴】 2014 年 3 月 高知大学大学院総合人間自然科学研究科医科学専攻修了 【所属学会】 日本消化器病学会 日本膵臓学会 日本がん分子標的治療学会 日本消化器癌発生学会 日本肝臓学会 日本胆道学会 日本肝癌分子標的治療研究会 日本消化器外科学会 【受賞】 2012 年 Young Investigator Award of International Symposium on Pancreas Cancer 2013 年 第 31 回日本ヒト細胞学会学術集会 ヤングサイエンティスト賞 S3-3 膵臓癌に対するナファモスタットメシル酸塩の有用性 竹 1 由佳 1、小山内 誠 2、並川 努 1、北川 博之 1、宗景 匡哉 1、花 和弘 1 高知大学医学部 外科学講座外科 1、2 高知大学医学部 病理学講座 【背 景】 近年の分子生物学的研究により膵臓癌の組織中における NF-κB 高発現症例では放射線治療に抵抗性を示 し、予後不良であるとの報告がある。また活性型 NF-κB の制御によって癌細胞の増殖を抑制し抗癌剤の感 受性が増大するという事も明らかとなってきた。ナファモスタットメシル酸塩(フサン)は膵癌細胞株に対 し NF-κB の活性化を抑制し強力にアポトーシス誘導作用を有する事が散見される。 【材料と結果】 抗癌剤感受性の違う 3 系統のヒト由来膵癌細胞株を用いた検討では、フサン単独、グリベック単独共に細 胞増殖を抑制し、両者の併用をしたところ相乗的な細胞増殖抑制効果が見られた。また MTT 法、Western blot 法では 2 剤の併用により強力な細胞死誘導効果、細胞周期の停止が認められた。 【考察と結語】 フサンは他の蛋白酵素阻害剤と比較し非調節性の細胞増殖などの悪性形質の抑制効果が強く、正常細胞へ の毒性も低いと報告されている。我々の検討でも臨床的に用いられるフサンの血中濃度より低い濃度で十分 な抗腫瘍効果を発揮し、更にグリベックとの併用により癌細胞に高い細胞死感受性を与えることが示唆され た。用量依存性に細胞毒性を有する従来の抗癌剤とは異なり、アポトーシス感受性を高めるフサンの併用は、 グリベックと異なるシグナル伝達系の修飾を介し、分子標的薬の殺細胞効果を増幅させる可能性がある。し たがって今後、2 剤の併用療法による膵臓癌患者の予後向上に一定の効果が期待される。 66 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 3 S3-3 Nafamostat mesilate efficiently suppresses oncogenic properties of Pancreatic carcinoma. Yuka Takezaki 1,Makoto Osanai 2,Tsutomu Namikawa 1,Hiroyuki Kitagawa 1, Masaya Munekage 1,Kazuhiro Hanazaki 1 1 Department of Surgery Kochi University School of Medicine, University School of Medicine 2 Department of Pathology Kochi Accumulating evidence demonstrated that pancreas cancers overexpressing nuclear factor-kappa B (NF-κB) show a significant resistance to chemo-radiation therapy, causally resulting in a poor prognosis. Consistently, several reports revealed that inhibition of activated NF-κB can suppress cell growth and enhance cellular sensitivity to conventional anti-cancer drugs. Recently, clinical studies of nafamostat mesilate Futhan®, a protease inhibitor that suppresses an activated form of NF-κB, have demonstrated appreciable responses in individuals with a certain type of relapsed and refractory malignancies. Here we show that nafamostat mesilate alone could inhibit cell proliferation in three different types of pancreas carcinoma cells (Miapaca2, BxPC3, and SUIT2), and a combination with imatinib mesylate Gleevec® synergistically suppressed cell growth in these cells. In addition, this combinational therapy could lead to exhibit enhanced sensitivity to apoptosis, and thus efficiently inhibited the tumorigenic potential in vivo , via modulation of unique sets of apoptosis-associated genes. Compared with conventional anti-cancer drugs showing concentration-dependent cytotoxic activity, our data provide strong evidence that nafamostat mesilate in combination with imatinib mesylate efficiently abrogate cell survival and oncogenic properties of pancreas carcinoma cells. We believe that our proposed strategy shows the potential feasibility to complement conventional therapy in patients with pancreatic cancer. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 67 シンポジウム 3 シンポジウム 3 「iPS 細胞等を利用した赤血球の人工生産」 独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室 室長 中村 幸夫 【略 歴】 1986 年 新潟大学医学部卒業 1986 年 信州大学医学部第二内科・研修医 1989 年 自治医科大学血液科・助手 1990 年 理化学研究所・研究員 1994 年 筑波大学基礎医学系・講師 1998 年 Walter and Eliza Hall 研究所(メルボルン市) ・研究員 2000 年 筑波大学基礎医学系・講師 2002 年 理化学研究所バイオリソースセンター細胞運命研究チーム・チームリーダー 2003 年 理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室・室長 S3-4 iPS 細胞等を利用した赤血球の人工生産 中村 幸夫 独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室 現行の赤血球輸血体制、即ち、不特定多数の献血者に依存する供給体制にはいくつかの問題点が内包され ている。少子高齢化に伴う需要の増大と献血者(供給者)の減少の問題や、感染性ウイルスの感染初期には 感染者を完全に除外することは難しく、従って、感染性ウイルスを伝搬する可能性がゼロではない点などで ある。また、きわめて稀な血液型の患者に対する輸血製材不足は常に大きな問題となっている。こうした一 連の問題点を解決する方法として、赤血球を試験管内で人工的に生産する方法が考えられる。そして、これ までに、臍帯血中の血液幹細胞から脱核赤血球を生産する技術の開発や、ヒト胚性幹(ES)細胞から脱核赤 血球を生産する技術の開発などが報告されてきた。そうした方法を用いることで、理論的には赤血球を人工 的に生産できる方法は既に開発されたと言っても過言ではない。しかし、これらの方法に共通の問題点は、 実際に臨床応用(大量生産)を考えた際のコストパフォーマンスである。大量の増殖因子(特許の関係で現 時点ではきわめて高価)が必要であり、巨大な培養施設も必要となる。もし、赤血球前駆細胞レベルで不死 化細胞株を樹立でき、その細胞株が脱核赤血球を生産する能力を保有していれば、そうした細胞株は試験管 内で脱核赤血球を人工生産するためのきわめて有用な材料となる。我々は 2008 年に、マウス ES 細胞から、 脱核赤血球を生産する能力を有する不死化赤血球前駆細胞株の樹立に成功し論文発表した(mouse ES cell derived erythroid progenitor, MEDEP) 。MEDEP は試験管内で脱核赤血球を生産する能力を有し、重症貧血 マウスに移植した際には、マウスが貧血にて死亡することを防止する能力を有するものであった。この結果 を受け、我々はヒト細胞においても同様な不死化赤血球前駆細胞株の樹立を試みてきた。最近、ヒト細胞に おいても同様な不死化赤血球前駆細胞株の樹立に成功したので、当該ヒト赤血球前駆細胞株(不死化細胞株) について紹介する。 68 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 3 S3-4 In vitro production of transfusable red blood cells from iPS cells etc. Yukio Nakamura Cell Engineering Division, RIKEN BioResource Center The supply of transfusable red blood cells (RBCs) is not sufficient in many countries. For example, in Japan the population of individuals possessing AB/RhD(-) blood type is very small, thus the supply of samples of AB/RhD(-) blood type is always lacking. If transfusable RBCs could be produced abundantly from certain resources, it would be very useful. We have previously developed a method to produce enucleated RBCs efficiently from hematopoietic stem cells present in umbilical cord blood. More recently, it was reported that enucleated RBCs could be abundantly produced from human embryonic stem (ES) cells. The common obstacle for application of these methods is that these methods require very high cost to produce sufficient number of RBCs that are applicable in the clinic. If erythroid cell lines (immortalized cell lines) able to produce transfusable RBCs in vitro were established, they would be valuable resources. First, we have developed a robust method to obtain differentiated cell lines following the induction of hematopoietic differentiation of mouse ES cells. We designated the cell line mouse ES cell-derived erythroid progenitor (MEDEP). Next, we tried to establish the resembling cell lines from human cell resources. Recently, we succeeded to establish such human cell lines able to produce enucleated RBCs from some resources such as human iPS cell lines. I introduce the characteristics of those human erythroid progenitor cell lines, i.e. human iPS cell-derived erythroid progenitor (HiDEP) cell lines and human umbilical cord bloodderived erythroid progenitor (HUDEP) cell lines. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 69 シンポジウム 3 シンポジウム 3 「研究倫理の実践:現状と課題」 早稲田大学人間科学学術院 教授 土田 友章 【略 歴】 東京大学教養学部理科Ⅱ類入学、のち文学部に進学。 同大学文学部宗教学宗教史学科卒業、同大学人文科学研究科修士課程修了、 同博士課程中退。 米国 Harvard University 大学院(Graduate School of Arts and Sciences) 修了、Ph.D.(Study of Religion) 南山大学講師・助教授・教授などを勤めた後、 現在、早稲田大学人間科学学術院教授、生命倫理、研究倫理を担当。 S3-5 研究倫理の実践:現状と課題 土田 友章 早稲田大学人間科学学術院 この数年、日本でも研究倫理がメディアに取り上げられるようになってきた。研究上での不正行為は、科学・ 技術が産業化商業化し、研究者が増え、競争が激化し、他方、専門領域がますます細分される趨勢のなかで、 残念ながらこれからも増えてゆくであろう。しかし、研究不正は、科学的探究の本来の人間的意義―倫理性 ―を損なうばかりか、他の研究者に、当該の研究機関に、そして社会にも、大きな損失や害悪をもたらしか ねない。 いわゆる不正は、迂闊や疎漏から起こることもあり、時には故意に行われることもある。 個々の研究者にとどまることもあり、PI など指導者とその下で研究に従事する者との関係性、いわば研究 室文化に、問題が胚胎することもある。専門分野や手法の異なる研究者との、または、言語文化の異なる人々 を含む、共同研究が主流になってきていることも、不正や疑義・苦情を生みやすい状況と無関係ではない。 いかにして不正に陥らないか、生まないか、意識を絶えず新たにしておく必要があろう。 ここでは、現今の研究倫理の概略に触れ、その上で、研究倫理の実践の諸側面、予防のための教育、不正 への対処のしくみなどを概観する。とりわけ、論文著者を誰にするかという問題(authorship)に触れてお きたい。これは第 3 回研究倫理世界会議(3rd World Conference on Research Integrity, 2013, Montreal)の 主題でもあった共同研究の倫理に関わることでもあり、また出版公表の倫理(publication ethics)の中心に ある問題でもある。 70 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 シンポジウム 3 S3-5 Research ethics in practice: current situations and tasks Tomoaki Tsuchida Faculty of Human Sciences, Waseda University In recent years, research ethics has been frequently discussed by mass media, revealing widespread ethical decay. In this report, I will give an overall view of research ethics and its recent developments as summarised in the Singapore Statement, 2010, and in the Montreal Statement, 2013, of the World Conference on Research Ethics. Research misconduct temptations are increasing worldwide, as scientific and technological research involves more and more researchers per team, sometimes working across national and linguistic borders, and is conducted under the huge pressure of stiff competition. I will discuss some points we have to be extra careful about especially in collaborative research: necessary laboratory or authorship precautions, mentor-trainee relationships, and publication ethics. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 71 MEMO 72 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 ランチョンセミナー Luncheon Seminar 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 73 ランチョンセミナー ランチョンセミナー 「子宮頸癌に対する新しい予防戦略を目指して」 東京大学医学部附属病院 女性外科 助教 長阪 一憲 【略 歴】 2000 年 愛媛大学医学部医学科卒業。東京大学医学部産科婦人科学教室 に入局後、三井記念病院産婦人科、小平記念東京日立病院産婦人科などにて 研修。2008 年より東京大学大学院医学系研究科にて HPV の発癌メカニズ ム研究に従事し、学位取得(医学博士) 。2008 年より、イタリア、トリエス テ市にある国連機関 国際遺伝子工学バイオテクノロジーセンター(ICGEB) 腫瘍ウイルス学研究室(Lawrence Banks 博士)に留学させて頂き、HPV の基礎研究をさらに発展。帰国 後は、関東労災病院産婦人科医長、東京警察病院産婦人科などを経て、2012 年より東京大学医学部附属病 院 女性診療科産科 助教。FIGO/Cervical cancer prevention course certificate を取得し、現在に至る。 LS 子宮頸癌に対する新しい予防戦略を目指して 長阪 一憲 東京大学医学部附属病院 女性外科 助教 子宮頸癌は依然、全世界の女性がかかる悪性腫瘍の中で第 3 位の罹患率を占めており、先進国である我が 国でも、子宮頸癌で未だ 2712 名(2012 年)が亡くなっている、早期発見をするべき重要な疾患です。子宮 頸癌罹患率は 1983 年より pap-test を導入した子宮頸癌検診が全国展開されることによって、1980 年をピー クに 1990 年後半にかけて減少を続けてきましたが、その後は上昇しています。さらに、罹患率の年次推移を 年齢階級別に見ると、50 歳以上の罹患率はほぼ横ばいとなっていますが、それに対し、20 歳以上 45 歳未満 の罹患率は上昇する傾向にあります。そのため、発症予防、早期発見を目指した予防戦略を早急に構築する 努力が求められています。 子宮頸癌の基礎研究は、Harald zur Hausen 博士によって、ヒトパピローマウイルス(以下 HPV)感染と の因果関係が発表された後、子宮頸癌を引き起こすハイリスク HPV が同定され発展をしてきました。その 中で特に HPV16 型、18 型に関する基礎研究が進められ、子宮頸癌発癌モデル(扁平上皮癌)が提唱されま した。その結果、HPV 感染を予防するワクチン、そして、HPV の存在を検出する HPV-DNA 検査が商品化 され、日常臨床に導入されています。その理由は、子宮頸部細胞診の受診率の低さと、検査自体の感度に問 題があるためです。検査の感度が低いため、細胞診のみでは高度な専門的知識と、頻回の検査が余儀なくさ れていることから、HPV-DNA 検査を単独あるいは併用で利用する検診システムが、医療経済的な側面から も検証され、世界中で導入されつつあります。 しかしながら、HPV に感染しても多くは1年以内に生体から排除(あるいは潜伏感染化)されることがわ かっています。細胞を腫瘍性変化させてしまうのは、HPV にとっては、ほぼ事故であると考えられており、 通常はウイルスがほとんど産生されないエピゾームとして、生体の免疫機構から回避しながら潜伏感染をし ています。そのことから、HPV 感染後のウイルスの生活環は、種に対しては厳密な特異性を持つ一方で、単 純でありません。感染から癌化の起点がどこにあるのか、例えばウイルスゲノムのインテグレーションはホ スト側のゲノムのどこに、どうして起きるのかなどを詳細に調べていく必要があります。そのため、より精 度の高い検診システムの構築を実現するためには、HPV 感染から癌へと変異する 単一細胞 と、周囲の微 小環境変化について焦点をあて、癌化を予測し得るバイオマーカーを抽出する必要があると考えています。 本ランチョンセミナーでは、子宮頸癌に関する研究のレビューから、実現されつつある HPV-DNA 検査の 検診での有用性について考察を行い、さらに将来導入される可能性のある HPV-RNA 検査の信頼性や、今後、 74 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 ランチョンセミナー HPV 予防ワクチンをどのように導入して行けば良いのかについてもまとめたいと思います。さらに、基礎研 究の段階ではありますが、次世代シークエンサーを用いた子宮頸癌細胞の網羅的解析に関する報告や、私の 実験結果などをご紹介させて頂き、今後 5 − 10 年後の、より精度が高まった日本の子宮頸癌予防戦略につい て展望を述べたいと思います。 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 75 MEMO 76 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 Oral Presentation 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 77 一般演題 0-01 同一癌組織由来の舌癌細胞株と cancer stem cell 株ならびに xenograft 由来細胞株の樹立 高橋 悠 1,2、大山 晃弘 2、豊村 順子 2、川上 未有希 1,3、石川 博 2、中原 貴 4、 田中 彰 1,3 1 2 日本歯科大学 新潟生命歯学部 口腔外科学講座、 日本歯科大学 生命歯学部 NDU 生命科学講座、 日本歯科大学 新潟生命歯学部 先端研究センター再生医療学、4 日本歯科大学 生命歯学部 発生・ 再生医科学講座 3 【目 的】 従来より、 口腔扁平上皮癌の転移病巣や再発に対しては、手術療法を除き、難渋することが多い。そこで今回、 我々は新規治療法開発に向けた一助とすべく、舌扁平上皮癌後発頸部リンパ節転移巣由来のヒト舌癌細胞株 および cancer stem cell(CSC)株、 また xenograft 由来細胞株を得ることができたので、その概要を報告する。 【方 法】 50 歳男性の舌癌由来頸部リンパ節転移巣組織を細切し、0.1% trypsin-0.02% EDTA/PBS(−)を用いて細 胞を解離し分散培養を行った。DMEM/F12 に 15% FBS、MEM-NEAA, glutamate を添加した培養液を使用 して継代を続けていくと fibroblast は徐々に減少し、細胞株(Nialym)を樹立し得た。この細胞株をスキッ ドマウスに移植し、xenograft 由来細胞株(Nialymx)も樹立した。さらにリンパ節転移巣組織の初代培養を 長期に維持したシャーレから小型球形で pilling up する細胞を colonial cloning して、CSC を得た。 【結 果】 舌癌細胞株(Nialym)は多形性を有する上皮様細胞で構成され、電子顕微鏡にて明調細胞と暗調細胞が認 められた。暗調細胞には細胞質内に多くのフィラメントが束を作って縦横無尽に走行していた。免疫染色で は CK17、p53、Ki67 に陽性、CK13 に陰性であり、扁平上皮癌の特徴を示した。スキッドマウス移植癌組織 は弾性軟で暗赤色を呈し、原発巣と類似した病理組織型を示した。そして、これらの細胞株はともに血管新 生因子である VEGF ならびに HGF を産生していた。また、colonial cloning した小型球形細胞は細胞質に乏 しく、細胞内小器官の発達が未熟であり、RT-PCR にて CSC マーカーの発現を確認した。 【考 察】 舌扁平上皮癌後発頸部リンパ節転移巣由来のヒト舌癌細胞株と同細胞株移植癌からの CSC 株ならびに xenograft 細胞株の樹立に成功した。これは侵襲性および転移性が高い口腔扁平上皮癌の診断、さらに効果的 な治療法の開発研究等において極めて有用であると考える。 78 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-01 Establishment of new three cell lines derived from same cancer tissue Haruka Takahashi 1,Akihiro Oyama 2,Junko Toyomura 2,Miyuki Kawakami Hiroshi Ishikawa 2,Taka Nakahara 4,Akira Tanaka 1,3 1,3 , 1 Department of Oral and Maxillofacial Surgery, School of Life Dentistry, The Nippon Dental University, Niigata, Japan, 2 Department of NDU Life Sciences, School of Life Dentistry, The Nippon Dental University, Tokyo, Japan, 3 Division of Cell Regeneration and Transplantation, Advanced Research Center, School of Life Dentistry, The Nippon Dental University, Niigata, Japan, 4 Department of Developmental and Regenerative Dentistry, School of Life Dentistry, The Nippon Dental University, Tokyo, Japan 【Introduction】 The present study reports the establishment of new three cell lines, 1) Nialym cell line and 2) cancer stem cell (CSC) line derived from metastatic foci of lymph node of squamous carcinoma of the tongue, and 3) Nialymx cell line derived from the grafted tumor of Nialym cells in scid mice. 【Materials and Methods】 The tumor tissue was harvested from the metastatic foci of lymph node of 50 years-old Japanese male patient who debt squamous cell carcinoma of tongue. The tumor tissue obtained was cut into small pieces with razor blades and dissociated with 0.1% trypsin-0.02% EDTA/PBS (-). The CSC cell line was established by colonial cloning of pilling up colony-forming cells after in the long-term primary cultures derived from metastatic foci of lymph nodes. 【Results】 Nialym cells had epithelial like cell morphology, and composed of two types of cells, one was clear cell and the other was dark cell by electron microscopic analysis. The dark cells had many waving tonofilaments which runs much in all directions in the cytoplasm. The transplanted tumor was very similar to the original tumor on histopathological findings. Immunocytochemical staining revealed that the Nialym and Nialymx cells had a feature of oral squamous cell carcinoma. Furthermore, the CSC cell line exhibited small round structure and exiguous cytoplasm, and the organelles were poorly developed. These cells showed the feature of cancer stem cell by RT-PCR. 【Conclusion】 We successfully established three cell lines: a lingual squamous cell carcinoma cell line from the metastatic foci of lymph nodes cell line (Nialym), CSC cell line and the grafted tumor cell line (Nialymx) derived from squamous cell carcinoma of tongue of same patient. We believe that these cell lines were valuable tools for elucidating the mechanism of metastasis of cancer and developing immunotherapy and chemotherapy. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 79 一般演題 0-02 胸水中細胞より株化した Merkel 細胞癌の細胞学的特徴 荒武 八起 1、清山 和昭 1、白濱 幸生 1、柏田 奈菜 1、帖佐 宣昭 2、津守 伸一郎 2、 緒方 克己 2、山下 篤 3、畠山 金太 3、梅木 一美 4、野村 創 5、岡山 昭彦 5、南嶋 洋一 6、 栗林 忠信 7 1 4 6 古賀総合病院臨床検査技術部、2 古賀総合病院皮膚科、3 宮崎大学医学部病理学講座、 宮崎大学医学部附属病院検査部、5 宮崎大学医学部内科学講座免疫感染病態学分野、 古賀総合病院臨床検査部、7 古賀総合病院内科 メルケル細胞癌(MCC)は、予後不良の稀な神経内分泌癌である。MCC の株化細胞はいくつか報告され ているものの比較的少ない。我々は患者胸水中細胞から新たに MCC 細胞株(MK-1)を樹立したので、その 特徴について報告する。 症例は 77 歳男性。右上腕に生じた紅色腫瘤が徐々に増大し、生検の結果 MCC と診断された。腫瘤に対し 放射線照射療法を行い軽快消失したが、腹腔内リンパ節、膵頭部に転移が確認された。明らかな転移巣に対 し放射線照射療法が奏功したが、全身に多発性転移巣を生じ、胸腹水も貯溜した。診断時より 15 ケ月で死亡 された。 MCC 細胞株樹立には患者胸水中細胞を用いた。胸水中細胞は殆どが MCC 細胞であり、組織球、中皮細胞 などの混入は僅かであった。細胞を RPMI-1640 で洗浄後、抗生剤(1% penicillin/streptomycin/neomycin) と 20% FBS を含む RPMI-1640 で培養を開始した。5 日目より週に 1 ∼ 2 回の頻度で培養液を半量捨て新し い培養液を添加して培養を続けた。細胞は 5 週間で安定した増殖を示し、CK20、NSE、NF が陽性で CD68、 calretinin は陰性であることから MCC 株と判断した。その後は 10% FBS を含む培養液で週一回の頻度で継 代を繰り返し、約 2 年間(90 代以上)安定維持している。MK-1 細胞の倍加時間は約 7 日で、培養容器の底 面に付着せず結合性の弱い不規則な細胞塊を形成し増殖する。May-Giemsa 染色において細胞質は好塩基性 で狭く、核は類円形でクロマチンは微細。電顕像で 150-300nm の大きな神経内分泌顆粒を認め、染色体は複 雑な異常を示す。培養上清中に多量の VEGF を産生する。Merkel cell polyomavirus LT 領域をプライマー とした nested-PCR でゲノム DNA への組み込みを原発組織および株化細胞に証明した。 MCC 細胞の由来、MCC の発症機序などについては、未だ不明な点が多い。本細胞株の樹立は、これらの 問題点解明、さらには MCC の治療法の開発などにも有用と考えられる。本研究は、古賀病院倫理委員会承 認のもとに行った。 80 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-02 Partial characterization of a cell line established from Merkel cell carcinoma Yatsuki Aratake 1, Kazuaki Kiyoyama 1, Yukio Shirahama 1, Nana Kashiwada 1, Nobuaki Chousa 2, Shinitirou Tsumori 2, Katsumi Ogata 2, Atsushi Yamashita 3, Kinta Hatakeyama 3, Kazumi Umeki 4, Hajime Nomura 5, Akihiko Okayama 5, Youiti Minamishima 6, Tadanobu Kuribayashi 7 1 Department of Laboratory Medicine, Koga General Hospital,, 2 Department of Dermatology, Koga General Hospital, 3 Department of Pathology, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, 4 Department of Laboratory Medicine, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, 5 Department of Internal Medicine, Rheumatology, Infectious Diseases and Laboratory Medicine, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, 6 Department of Clinical Investigation, Koga General Hospital, 7 Department of Internal Medicine, Koga General Hospital Merkel cell carcinoma (MCC) is a rare and aggressive malignancy. This report outlines the establishment of a new and stable cell line, designated MK-1, derived from MCC cells in pleural effusion obtained from 77-year-old Japanese male. The cells were cultured in RPMI-1640 media with 10% fetal bovine serum. This cell line has been growing for 2 years without disruption and has been passaged over 90 generations. MK-1 cells grow without adhering to the culture plates and loosely aggregate with irregular outline. This cell line have doubling times of about 7 days. On immunostaining, cytokeratin 20, neurofilament and neuro-specific enolase are positive, while CD68 and calretinin are negative. In electro-microscopic study, a few large-sized cored neuroendocrine granules (150 to 300nm) are noted. The karyotype of tumor cells reveales complex abnormality. The cellular genome of this cell line is shown to be integrated with Merkel cell polyomavirus (MCPyV). Tumor cells are producing large amounts of VEGF in the culture supernatant. The newly established cell line, MK-1, will provide a good model to study the tumorigenesis of MCC and its treatment. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 81 一般演題 O-03 B 型肝炎ウイルス誘発肝細胞癌モデルにおける HGF-Met 系の役割 四ノ宮 成祥 1、岩屋 啓一 2、吉森 篤史 3、田沼 靖一 4 1 4 防衛医科大学校・分子生体制御学講座、2 防衛医科大学校・病態病理学講座、3 理論創薬研究所、 東京理科大学・薬学部生化学 B 型肝炎ウイルスはヒトの肝細胞癌の最も重要な原因の一つであるが、癌化の過程や癌細胞の進行に寄与 する因子についてはよく分かっていない。本研究では、遺伝子改変モデルマウスを用いて、肝細胞癌の発癌 における肝細胞増殖因子(HGF)-Met シグナルの役割について検討した。B 型肝炎の表面抗原(HBsAg)を 組み込んだトランスジェニック(HBsAg-Tg)マウスでは、52 週を超える頃から肝腫大と肝腫瘍形成が見ら れた。平均の生存期間は HBsAg-Tg マウスでおよそ 70 ∼ 77 週であったが、HGF 遺伝子を組み込んだマウ スでは肝での癌化が促進し、平均生存期間は 49 週ほどに短縮された。HGF-Tg マウスでの肝細胞癌の発癌は 高率であり、腫瘍は血管に富み核は多形性を示した。意外なことに、HBsAg-Tg マウスで Met を KO しても 肝細胞癌発癌の頻度は低下しなかった。免疫組織染色で確認すると、発癌の前段階の炎症性病変で Met 陽性 の再生結節が認められた。このことは、コンディショナル Met-KO が不完全であることを示すもので、残存 した Met 陽性細胞が微小環境刺激に応答し腫瘍形成に至ったものと推察された。以上のことから、HGF-Met シグナルは B 型肝炎による肝細胞癌の発癌に必須の因子であり、悪性度にも関与していることが示唆された。 82 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-03 Role of HGF-Met signaling in hepatitis B virus-induced hepatocellular carcinoma mouse models Nariyoshi Shinomiya 1,Keiichi Iwaya 2,Atsushi Yoshimori 3,Sei-ichi Tanuma 4 1 Department of Integrative Physiology and Bio-Nano Medicne, National Defense Medical College, Department of Basic Pathology, National Defense Medical College, 3 Institute for Theoretical Medicine, Inc., 4 Department of Biochemistry, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Tokyo University of Science 2 Hepatitis B virus (HBV) is one of the most important cause of human hepatocellular carcinoma (HCC), but how the carcinogenesis process is regulated and what factors contribute to HCC progression remain unclear. By using genetically engineered mouse models, we investigated the role of hepatocyte growth factor (HGF)-Met signaling in HCC carcinogenesis. In HBV surface antigen-transgenic (HBsAg-Tg) mice, liver enlargement and the induction of liver tumors became overt at about 52 weeks of age. The average survival time in HBsAg-Tg mice was about 70-77 weeks depending on mouse lines, whereas the introduction of HGF transgene into those mice accelerated hepatic carcinogenesis and shortened the average survival time to about 49 weeks. HGF-Tg mice developed a high incidence of HCC and those HCCs showed high vascularity and a pleomorphic nuclear appearance. Unexpectedly, knocking-out (KO) Met expression in HBsAg-Tg mice did not reduce the frequency of HCC. Immunohistochemical analysis revealed that those mice frequently showed Met-positive regeneration nodules during inflammation before HCC carcinogenesis. This indicates that conditional Met-KO was incomplete and the residual Met-positive hepatocytes were able to grow in response to microenvironmental stimuli and produce tumors. These results suggest that HGF-Met signaling is an essential factor for generating HBV-induced HCC and also regulating its malignancy. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 83 一般演題 0-04 ヒト iPS 細胞移植治療時における奇形腫発症のフローサイトメトリーによ る評価 梅山 悠伊 1、松村 耕治 1、石原 美弥 2、市来 やよい 1、高田 雄三 1、宮平 靖 3 1 防衛医科大学校 共同利用研究施設、2 防衛医科大学校 医用工学講座、 3 防衛医科大学校 国際感染症学講座 【背 景】 ヒト iPS 細胞(hiPSC)を利用した移植治療を行うにあたり、移植組織内に分化抵抗性の未分化細胞が残 存して奇形腫等の腫瘍を形成する問題点がある。 【目 的】 腫瘍発症防止のために、我々は移植直前の分化誘導細胞へ放射線照射や薬剤を作用させて特異的に iPS 細 胞由来の奇形腫発症細胞を除去できるか否かの検討を行っている。その際フローサイトメトリー(FCM)に より、この奇形種発症細胞の検出を行ったので報告する。 【方法及び結果】 放射線照射、薬剤作用した心筋細胞を単離して、ヒト多能性幹細胞マーカーの TRA-1-60 抗体を用いて奇 形腫発症 hiPSC の割合を FCM にて測定した。その結果、放射線照射の一例において、コントロールで 3% 前後認められた TRA-1-60 陽性細胞が 1%以下に減少した。実験を進めていくと、放射線照射、薬剤作用によ り分化誘導細胞中の奇形腫発症 hiPSC 数の減少が有意に認められた。次に、SCID マウスの精巣へ分化誘導 細胞を移植した場合、奇形腫の増大に伴う精巣のサイズと FCM による測定値に相関が認められた。さらに、 奇形腫発症 hiPSC 数と分化誘導法、期間の関係を検討した。また、未分化細胞を SCID マウスの精巣へ移植 することにより、5 万個前後で奇形腫発生の閾値が認められ、分化誘導した際の残存する奇形腫発症 hiPSC 数との関連も検討した。 【結 論】 分化誘導した細胞を、移植前に未分化マーカーを用いて FCM で測定することは移植後の奇形腫による腫 瘍発生の有無の判定が可能であると示唆された。 84 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-04 Evaluation of teratoma onset from human iPS cells transplantation treatment by flow-cytometry Yui Umeyama 1,Kouji Matsumura 1,Miya Ishihara 2,Yayoi Ichiki 1,Yuzo Takada 1, Yasushi Miyahira 3 1 Central Reserch Institute, National Defense Medical University, 2 Medical Engineering, National Defense Medical University, 3 Global Infectious Diseases and Tropical Medicine, National Defense Medical University 【Background】 There are problems to form teratomas by remaining undifferentiated cells after transplantation treatment of the differentiated human iPS cells (hiPSC). 【Purpose】 For the prevention of teratomatous development, drugs and irradiation were applied to the hiPSC derived differentiated cells before transplantation using severe combined immunodeficiency (SCID) mice. In this presentation, we repot that the teratomatous origin cells are detected by flow cytometry (FCM) and the prevention of the teratoma growth are possible after these treatments. 【Methods & Results】 The ratio of teratoma development cells were analyzed with the FCM using hiPSC markers such as TRA-1-60 antibody, following the irradiation or drugs treated cardiac cells were isolated. In the control study (no treatment to the differentiated cardiac cells), the TRA-1-60-positive cells were around 3 % , however, the positive cells were reduced to 1% or less by irradiation. By FCM studies to either irradiation or drugs treated differentiated cells, the number of teratoma development cells was significantly decreased by the specific effects of the irradiation/drugs to the remaining undifferentiated cells . In the case of transplantation with differentiation cells to the testis of SCID mice, the correlation was observed between the size of the testes with increasing tumor like cells and FCM data. Further, the number of remaining undifferentiated cells was examined with the various methods and periods of differentiation-induced hiPSC. Since the teratomas were developed with more than 50,000 undifferentiated hiPSC in our SCID mouse experimental study, the number of remaining undifferentiated cells in differentiated cells was compared to the undifferentiated hiPSC study. 【Conclusion】 It is suggested that determination of presence or absence of tumor development are possible by FCM using undifferentiation markers before transplanting the differentiation hiPSC. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 85 一般演題 0-05 アパタイトファイバースキャフォルドを装填したラジアルフロー型バイオ リアクターによる肝細胞・肝星細胞・内皮細胞の共培養 中村 まり子 1,2、安生 絵利奈 3、本田 みちよ 2、前橋 はるか 1、松浦 知和 1、 相澤 守 3 1 東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座、2 明治大学 研究・知財戦略機構、 3 明治大学 理工学部 応用化学科 我々は三次元的な組織を再生させる技術を確立することを目的として、均一沈殿法により合成したアパタ イトファイバー(AF)にカーボンビーズ(CB)を添加して焼成することにより三次元連通気孔を有するア パタイトファイバースキャフォルド(AFS)の開発に成功し[1]、その in vitro 評価および in vivo 評価を行なっ てきた。 また、この AFS をラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)に装填し、ヒト肝がん由来の FLC-4 細胞 を培養することで、1 か月以上の長期間の三次元培養が可能であり、アルブミン産生などの肝機能を維持し ていることを明らかにしている[2] 。 本研究では、RFB に三次元連通気孔を有する AFS を装填し、肝細胞(FLC-4)の三次元培養を行なった。 さらに、その培養システムを用いて、肝細胞(FLC-4)[2]、肝星細胞(A7)[3]および内皮細胞(M1)[4] との共培養を行ない、「再生肝オルガノイド」の構築をした。また、構築した再生肝オルガノイドの組織学的 および肝機能評価としてアンモニア代謝能やアルブミン合成能を評価し、RFB における細胞の足場材料とし ての AFS の有用性を検討したので報告する。 [1]M. Aizawa, H. Shinoda, H. Uchida, I. Okada, T. J. Fujimi, N. Kanazawa, H. Morisue, M. Matsumoto and Y. Toyama, Phosphorus Res. Bull. , 17 262-268 (2004). [2]T. Matsuura, and M. Aizawa, 26 Bioceramics for development of bioartificial liver , Polymeric Biomaterials: Medicinal and Pharmaceutical Applications, Volume 2 (2012) pp. 691-713. [3]T. Matsuura et al., Inter. J. Artificial Organ. , 21, 229-234 (1998). [4]M. Saito et al., World Journal of Gastroenterology. , 21, 1881-1888 (2006). 86 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-05 Co-culture of Hepatocytes, Hepatic Stellates, and Endothelial Cells Using Radial-flow Bioreactor Mariko Nakamura 1,2,Erina Anjo 3,Michiyo Honda 2,Haruka Maehashi 1, Tomokazu Matsuura 1,Mamoru Aizawa 3 1 Department of Laboratory Medicine, the Jikei University school of Medicine, 2 Organization for the Strategic Coordination of Research and Intellectual Property, Meiji University, 3 Department of Applied Chemistry, School of Science and Technology, Meiji University We have successfully developed porous apatite-fiber scaffolds (AFSs) which have three-dimensional (3D) inter-connected pores using single-crystal apatite fibers and carbon beads; subsequently, we have clarified that the AFSs have an excellent bioactivity on the basis of both in vitro and in vivo evaluations [1]. In addition, we have clarified that FLC-4 cells of hepatocyte model derived from liver cancer of human could be three-dimensionally cultured over a period of 1 month using the AFS settled into the radial-flow bioreactor (RFB), and the cultured cells maintained liver functions, such as albumin production [2]. In present study, in order to reconstruct the liver organoid with life functions, we performed the three dimensionally co-culture of hepatocytes (FLC-4 [2]), hepatic stellates (A7 [3]), and endothelial cells (M1 [4]) using above-mentioned the AFS/RFB system. The reconstructed liver was histologically evaluated by HE and immunostaining, and examined the albumin production and ammonia metabolism abilities as liver functions. [1]M. Aizawa, H. Shinoda, H. Uchida, I. Okada, T. J. Fujimi, N. Kanazawa, H. Morisue, M. Matsumoto and Y. Toyama, In Vitro Biological Evaluations of Three-Dimensional Scaffold Developed from Single-crystal Apatite Fibres for Tissue Engineering of Bone , Phosphorus Res. Bull. , 17 262-268 (2004). [2]T. Matsuura, and M. Aizawa, 26 Bioceramics for development of bioartificial liver , Polymeric Biomaterials: Medicinal and Pharmaceutical Applications, Volume 2 (2012) pp. 691-713. [3]T. Matsuura et al., Inter. J. Artificial Organ. , 21, 229-234 (1998). [4]M. Saito et al., World Journal of Gastroenterology., 21, 1881-1888 (2006). 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 87 一般演題 0-06 ラジアルフロー型バイオリアクターを利用したヒト血漿蛋白質生産系の構築 −ヒトアルブミン生産系の検討− 吉川 輝 1,2、中村 まり子 3、前橋 はるか 1、松本 喜弘 4、相澤 守 2、松浦 知和 1 1 東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座、2 明治大学 理工学部、3 明治大学 研究・知財戦略機構、 4 東京慈恵会医科大学 内科学講座 【背景および目的】 ヒト血漿製剤の多くは、ヒト血液から分離・精製し、生産されている。しかし、ヒト血液の供給には限界 があり、安全性の面からもリコンビナント製剤の開発が望まれている。ヒト血漿製剤の中でも、アルブミン 製剤は重度肝障害や出血を伴う外傷など、生命に関わる病態で多量に使われる製剤である。1 回の投与に 10g 単位のアルブミン含有製剤が必要であり、動物細胞からのアルブミン製剤の生産は困難であると考えられて いる。今回は高機能ヒト肝癌細胞株 FLC-4 をラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)を用いて高密度 3 次元還流培養することで、アルブミンの生産性を上げられるかを検討した。 【方 法】 (実験 1)はじめに、RFB を用いてヒト肝癌細胞株 FLC-4 を組成の異なる三種類の無血清培地(ASF104N、 ERDF、RPMI)で培養した。 (実験 2)次に、FLC-4 にヒトアルブミン(HSA)遺伝子を導入した高 HSA 産 生細胞(FLC-4M#1)を用いて、HSA 産生量の向上を試みた。培養液は普段 FLC-4 の維持培養に使用してい る ASF104N を用いた。 【結 果】 (実験 1)HSA 産生量は ERDF > RPMI > ASF104N の順で多かった。 (実験 2)FLC-4M#1 の HSA 産生 量は単層培養で元株の FLC-4 と比較して約 5.2 倍多かった。そこで、HSA 産生量をさらに向上させるために FLC-4 及び FLC-4M#1 を RFB で培養した。培養は最初 ASF104N を用いて行い、途中で全量を ERDF に交 換した。その結果、ASF104N においては単層培養と同様に FLC-4M#1 が FLC-4 より多量の HSA を産生し た。しかし、培養液を ERDF に交換したところ FLC-4M#1 の HSA 産生量が減少し、一方で元株の FLC-4 の HSA 産生量は増加し、FLC-4M#1 よりも多くの HSA を産生した。 【結 論】 HSA 遺伝子の発現量を上げるだけでは RFB システムで HSA の産生量を向上させることはできなかった。 HSA の産生には培養液組成が深く関連していることが示唆された。 88 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-06 Construction of human plasma protein production system using a radial-flow bioreactor Akira Yoshikawa 1,2,Mariko Nakamura 3,Haruka Maehashi 1,Yoshihiro Matsumoto 4, Mamoru Aizawa 2,Tomokazu Matsuura 1 1 Department of Laboratory Medicine, the Jikei University School of Medicine, 2 School of Science & Technology, Meiji University, 3 Organization for the Strategic Coordination of Research and Intellectual Property, Meiji University, 4 Department of Internal Medicine, the Jikei University School of Medicine 【Background and Purpose】 Human plasma proteins for clinical use are produced from human blood. However, supply of the human blood is limited. Moreover safe aspects need to develop the recombinant plasma protein. In human plasma proteins, albumin preparation is used for clinical therapies on such as severe liver damage and injury with bleeding. More 10g of albumin is necessary for one infusion. However it is difficult to prepare g order albumin in vitro . In the present study, we examined whether the human serum albumin (HSA) production was improved by culturing highly functional human hepatoma cell line, FLC-4, using radial-flow bioreactor (RFB) which enabled the high-density three-dimensional circumfusion culture. 【Methods】 (Experiment 1) First, we cultured FLC-4 in three kinds of serum-free medium (ASF104N, ERDF, RPMI) with RFB. (Experiment 2) Next, we tried improvement of the HSA production with high HSA productive cell, FLC-4M#1, made by transfection of HSA gene into FLC-4. The FLC-4M#1 was maintained in ASF104N, in which FLC-4 usually cultured. 【Results】 (Experiment 1) The HSA production was higher in order of ERDF, RPMI, and ASF104N. (Experiment 2) The HSA production of FLC-4M#1 cultured in monolayer became approximately 5.2 times higher than FLC-4. Next, we cultured FLC-4 and FLC-4M#1 with RFB for improvement of higher HSA production. The medium was used ASF104N first and then changed to ERDF. As a result, the HSA production from FLC-4M#1 was higher than that from FLC-4 in ASF104N. However, the HSA production from FLC-4M#1 decreased after medium change to ERDF. On the other hand, the HSA production from FLC-4 increased and reached higher than that from FLC-4M#1. 【Conclusions】 These results suggested that the HSA production from FLC-4 in RFB system is not depend on HSA gene expression. Probably medium composition was associated with the HSA production deeply. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 89 一般演題 0-07 HAM 細胞の子宮間質細胞様細胞への分化誘導の検討 杉浦 朝冶 1,2、石渡 勇 1、時枝 由布子 1、井口 めぐみ 1、中村 幸夫 2 1 石渡産婦人科病院 細胞生物研究所、2 理化学研究所 バイオリソースセンター 細胞材料開発室 【目 的】 当院で体外受精を行っている中で、子宮内膜が厚くならないことによる着床不全により不妊症の患者が見 られる。従って着床不全に対し細胞医療により、この問題を克服する事を目指し当院で樹立した HAM 細胞 を子宮間質細胞に分化誘導することを目的とした。 【方 法】 HAM 細胞は本学会で報告した方法により樹立した。初めに継代 1、3、5、10 代の HAM 細胞が子宮 間質細胞への分化誘導に適しているか否かを検討するため、子宮や卵管等の間葉系細胞で発現している、 HOXA9、HOXA10、HOXA11 と生殖系形成に関わる Wan4a、Wnt5a、Wnt7a の RT-PCR を行った。子宮 間質細胞への分化誘導は、HAM 細胞がコンフルエントになった後に 10nM エストロゲン(E2)と 1μM プ ロゲステロン(P4)を添加した DMEM 培養液で 7、14、21 日間培養した。分化誘導の有無は、IGFBP-1 や PRL な ど の 11 種 類 の マ ー カ ー に よ る RT-PCR と ERα、ERβ、MammablobinB、IGFBP-1、MMP-2、 ApoD、ApoE、Glycodelin、PDGFRβ、CD146、PRL の 11 種類の抗体を用いて免疫染色を行った。 「結 果】 RT-PCR の結果、HOXA9 と HOXA11 は全ての継代数で発現を認めた。HOXA10 は継代 1、3、5 のみ発 現を確認した。Wnt5a は全ての継代数で発現が見られた。Wnt4a は全ての継代数で発現が確認できたが、継 代 3 代の時発現が増加した。Wnt7a は継代1代の時のみ発現が見られた。子宮間質細胞への分化誘導での RT-PCR の結果、ERαは分化誘導に関わらず若干ではあるが発現を確認した。ERβは誘導前の発現が見ら れなかったが、 誘導後は発現が確認できた。PR は誘導前から若干発現が見られたが、誘導後は発現が増加した。 IGFBP-1、Mammaglobin、PRL、LIF は分化誘導により発現が増加した。ApoD、ApoE、LIFR、MMP-2 そ して COX-2 は分化誘導に関わらず発現を確認した。 免疫染色の結果、Mammaglobin B、IGFBP-1 は分化誘導前より発現しているが、誘導後は強陽性になっ た。ERα、ERβ、Glycodelin と PRL は誘導前は陰性であったが、誘導後は陽性であった。MMP-2、ApoD、 ApoE、PDGFRβと CD146 は誘導に関わらず陽性であった。 「結 論】 羊膜由来の HAM 細胞から、分化誘導後の IGFBP-1 と PRL の発現の増加などの結果により、脱落膜化を 持ち合わせた子宮内膜間質細胞様細胞に分化誘導が可能であると考えられる。 90 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-07 Induced in vitro differentiation of endometrial stroma - like cells from HAM cells Tomoharu Sugiura Yukio Nakamura 2 1 1,2 ,Isamu Ishiwata 1,Yuko Tokieda 1,Megumi Iguchi 1, Institute of Cell Biology, Ishiwata Hospital, Center 2 Cell Engineering Division, RIKEN BioResource 【Object】 The patient of infertility is looked at by the implantation insufficiency of uterine endometrial cell not becoming thick while performing in vitro fertilization. Therefore, it aimed at carrying out differentiation induction of the HAM cell to endometrial stroma cell aiming at conquering implantation insufficiency. 【Materials and methods】 In order to examine whether the introduction passage 1, 3 5 and10 of HAM cells are suitable for the differentiation induction to endometrial stroma cell. This experiment investigated that RT-PCR of Wan4a, Wnt5a and Wnt7a in connection with HOXA9, HOXA10 and HOXA11. After becoming confluent, differentiation of endometrial stroma cell were cultured in DMEM supplement with 10nM Estrogen and 1nM progesterone. The expression of 11 kinds of endometrial stroma cell specific gene and immunostaining to 11 kinds of marker were examined before and after induction of differentiation. 【Results】 HOXA9 and HOXA11 accepted revelation with all the passage numbers as a result of RT-PCR. HOXA10 checked revelation only the passage 1, 3, and 5. As for Wnt5a, revelation was seen with all the passage numbers. Although Wnt4a has checked revelation with all the passage numbers, revelation increased at the passage 3. As for Wnt7a, revelation was seen only at the passage 1. As a result of RT-PCR, IGFBP-1, Mammaglobin, PRL, and LIF were increased by differentiation induction. Mammaglobin B and IGFBP-1;were detected even in untreated HAM cells, their levels of expression increased after the induction of differentiation. Although immunostaing revealed that ERα, ERβ, Glycodelin and PRL were negative before differentiation, it was positive after differentiation. Mammaglobin B and IGFBP-1 were detected even in untreated HAM cells, their levels of expression increased after the induction of differentiation. 【Conclusion] It is considered by endometrial stroma- like cell which had deciduous membrane-ization with it by results, such as increase of IGFBP-1 and PRL after differentiation. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 91 一般演題 0-08 脂肪組織幹細胞から in vitro で作製した骨組織ならびに in vivo への移植 大山 晃弘 1、豊村 順子 1、高橋 悠 1,2、渡邊 美隆 1,3、栗原 邦弘 1、中原 貴 4、石川 博 1,4 1 3 2 日本歯科大学 生命歯学部 NDU 生命科学講座、 日本歯科大学 新潟生命歯学部 口腔外科学講座、 セントラルクリニック、4 日本歯科大学 生命歯学部 発生・再生医科学講座 【目 的】 皮下脂肪組織から組織幹細胞を分離し、これを骨芽細胞に分化させた。この誘導骨芽細胞を培養下に in vitro で作製した骨構造を in vivo へ移植し、その動態を調べる。 【方 法】 ヒトの皮下脂肪から採取した脂肪組織を細切し、コラゲナーゼ/ディスパーゼで処理し、細胞を解離する。 遠心した沈渣を培養液[DMEM/F12 medium + 15% FBS]で分散させ静置培養し、増殖能の高い幹細胞を 分離する。この幹細胞を ascorbic acid、β-glycerophosphate, dexamethasone を添加した培養液にて 3 ヶ月 培養し、石灰化物を作り出す小さな球形細胞の集団を colonial cloning する。この細胞を calcitonin、IGF-1、 BMP2 または BMP4 を添加した骨分化誘導培養液を用いて培養し、出現した小さな骨片様構造をマウス皮下 に移植し、1 ヶ月後に取り出して、その動態を調べる。 【結 果】 脂肪組織から得られた脂肪幹細胞を骨誘導培養液で培養すると、石灰化物を作り出す小さな球形細胞が得 られ、この細胞を誘導骨芽細胞とした。この細胞を骨分化誘導培養液を用いて一ヶ月間培養すると、骨片様 構造が形成された。この組織をマウスの皮下に移植したところ、吸収されることなく骨組織を保っていた。 【結 論】 脂肪組織から幹細胞を分離し、これを骨芽細胞分化誘導させ、その細胞を骨に誘導させて得られた骨片用 構造は in vivo においても骨の形状を保っていた。 92 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-08 Three-dimensional bone formation form human adipose tissue stem cells and their transplantation Akihiro Ohyama 1, Junko Toyomura 1, Haruka Takahashi 1,2, Yoshitaka Watanabe Kunihiro Kurihara 1, Taka Nakahara 4, Hiroshi Ishikawa 1,4 1,3 , 1 Department of NDU life sciences, School of Life Dentistry, The Nippon Dental University, Department of Oral and Maxillofacial Surgery, School of Life Dentistry at Niigata, The Nippon Dental University, 3 Cetral Clinic, 4 Department of Development and Regenerative Dentistry, School of Life Dentistry, The Nippon Dental University 2 Objectives: The aim of this study is to reconstruct 3D bone tissue from human adipose tissue stem cell. Materials and Methods: Adipose tissue stem cell was isolated from SVF of human subcutaneous adipose tissue. Isolated stem cells were cultured with osteoblast-induction medium (supplemented with ascorbic acid, β-glycerophosphate and dexamethasone) for three months. The small and globular shape cells (SGCs) which start ossification were differentiated. The SGCs were cultured with bone- induction medium (supplemented with calcitonin, IGF1 and BMP2 or BMP4) for 30 days. The small bone like structures were reconstructed. These cells and structures were transplanted into abdominal cavity of scid mice. Results: The adipose tissue stem cells were transformed to small globular cells (SGCs) when they were cultured with osteoblast-induction medium. The SGCs made small ossificans structures in vitro for 3 months. The SGCs were expressed osteogenic markers. When SGCs were cultured with bone-induction medium for 30 days, small ossificans structures were obtained. These SGCs and ossificans structures were transplanted into abdominal cavity of scid mice for 3 weeks, large bone-like structure was obtained. Conclusion: We succeeded in making bone tissue from adipose tissue stem cell in in vitro and in vivo. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 93 一般演題 0-09 膠芽腫細胞株における抗癌剤耐性 福島 剛、片岡 寛章 宮崎大学医学部 病理学講座 【目 的】 近年膠芽腫の標準的治療薬の一つとなったアルキル化剤 temozolomide(TMZ)は一部の膠芽腫に極めて 有効であるが、その効果は DNA 修復酵素 MGMT(O6-methylguanine-DNA methyltransferase)のプロモー ター領域のメチル化状態に依存し、メチル化を認めない患者に対する治療は 30 年前と大きな違いはない。ま た、MGMT メチル化を認める症例の中にも治療抵抗性を示す症例が存在する。膠芽腫細胞株の MGMT 発現、 メチル化状態、TMZ 感受性を解析し、膠芽腫細胞株を用いた in vitro アッセイ系を確立することが本研究の 目的である。 【方 法】 ヒト膠芽腫細胞株 U251、YKG-1、A172、T98G、KS-1、U87、YH13、U373、NYGM についてメチル化 特異的 PCR、RT-PCR、Western blot および TMZ 感受性アッセイを行った。また、ABC(ATP-binding cassette)トランスポーターを初めとする抗がん剤耐性因子の発現を解析した。 【結果と考察】 MGMT プロモーター領域にメチル化を認めた U251、A172、KS-1、U87、U373、NYGM については、実 際に RT-PCR、Western blot で MGMT の発現は認められず、TMZ による腫瘍増殖抑制が認められた。一方、 非メチル化株であった YKG-1、T98G、YH13 は MGMT の発現が確認され、TMZ 抵抗性が認められた。こ れらについて、siRNA を用いて MGMT をノックダウンしたところ、YKG-1、TH13 は TMZ への感受性が認 められるようになった一方で、T98G は依然抵抗性であった。この機序を含めて膠芽腫の抗癌剤耐性の分子 機序を考察する。 94 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 一般演題 0-09 Chemoresistance of glioblastoma cell lines Tsuyoshi Fukushima,Hiroaki Kataoka Department of Pathology, Faculty of Medicine, University of Miyazaki Treatment with an alkylating agent, temozolomide (TMZ) has been one of the most standard options against glioblastoma (GBM) recently. The effect of TMZ depends on methylation status of MGMT gene encoding a DNA repair enzyme, O6-methylguanine-DNA-methyltransferase (MGMT). No novel modality to treat GBM patients without methylation of the promoter of the gene has been established during 30 years. Furthermore, some patients whose tumors have MGMT promoter methylation show chemoresistance to TMZ. In this study, we analyzed MGMT promoter methylation, actual expression of MGMT , and TMZ sensitivity in GBM cell lines, U251, YKG-1, A172, T98G, KS-1, U87, YH13, U373, and NYGM. Among the cell lines, U251, A172, KS-1, U87, U373, and NYGM showed methylation of MGMT promoter and lacked MGMT protein expression, and were sensitive to TMZ. Conversely, YKG-1, T98G, and YH13 showed MGMT expression and were resistant to TMZ. Although knockdown of MGMT using siRNA sensitized YKG-1 and YH13 to TMZ, the knockdown produced no significant effect on T98G. Factors involved in chemoresistance including ATP-binding cassette (ABC) transporters are analyzed in order to know the mechanism of resistance to TMZ other than MGMT . Epigenetic silencing of MGMT enhances the sensitivity of GBM to temozolomide, in the next breath, other molecular mechanisms involving chemoresistance are also important. New adjuvant modalities for TMZ therapy should be established. 第 32 回 日本ヒト細胞学会学術集会 95
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