消化器疾患と治療薬 胃潰瘍・⼗⼆指腸潰瘍 ・胃炎・胃⾷道逆流症 おもな傷病の総患者数(万⼈) 厚⽣労働省 平成23年 1)⾼⾎圧症 906.7 2)⻭⾁炎/⻭槽膿漏/う蝕 460.2 3)糖尿病 270 4)⾼脂⾎症 188.6 5)⼼疾患 161.2 6)悪性新⽣物 152.6 7)⾷道、胃、⼗⼆指腸疾患 124.6 8)脳⾎管疾患 123.5 9)喘息 104.5 上部消化器形態 胃酸分泌調整機構 胃潰瘍・⼗⼆指腸潰瘍 びらんと潰瘍 胃潰瘍と⼗⼆指腸潰瘍の違い 防御因⼦と攻撃因⼦ 消化性潰瘍の発症関連因⼦ 胃潰瘍と⼗⼆指腸潰瘍の主因と 症状 3⼤原因 1. 胃酸 2. ヘリコバクター・ピロ リの感染 3. ⾮ステロイド系抗 炎症(NSAIDs) の内服 坐薬、静脈注射、ま た湿布製剤であって も、過剰に使⽤すれ ば⽣じる 最も多い症状 1. ⼼窩部痛 2. ⼼窩部の膨満感 胃潰瘍では⾷後 ⼗⼆指腸潰瘍では 空腹時 胃潰瘍と⼗⼆指腸潰瘍の診断 原因を明らかにするために、H.ピロリの感 染の有無を調べるとともに、⾮ステロイド 系抗炎症薬(NSAIDs)を使⽤してい ないかどうか確認する。 内視鏡検査 臨床化学検査では⾎清尿素窒素濃度 (BUN)や⾎清カリウム値に注⽬する。 BUN や⾎清K値が⽇頃よりも上昇 ↓ 上部消化管から出⾎した⾎液中の ⾎球が腸管で破壊・吸収されたので はないかと疑う ⽇本でのピロリ菌感染 胃潰瘍、⼗⼆指腸潰瘍とピロリ菌 の関係 ピロリ菌 ピロリ菌の検査と除菌対象者 検査 1. 内視鏡検査 A) 迅速ウレアーゼ試験 B) 鏡検法 C) 培養法 2. 内視鏡検査以外 A) 抗体検査 B) 尿素呼気検査 C) 便中抗原測定 ピロリ菌除菌療法の対象とな る⼈ A) 内視鏡検査または造影検査 で胃潰瘍または⼗⼆指腸潰 瘍と診断された B) 胃MALTリンパ腫 C) 特発性⾎⼩板減少性紫斑 病 D) 早期胃がんに対する内視鏡 的治療後(胃) E) 内視鏡検査でヘリコバクター・ ピロリ感染胃炎と診断 ピロリ菌の 除菌 除菌療法 除菌が成功した場合、潰瘍の再発 は極めて少なくなります 初回除菌療法 不成功であった場合の再除菌療法 1.ランソプラゾール(30mg)1Cap 1.ランソプラゾール(30mg) 1Cap または、オメプラゾール(20mg)1錠 または、オメプラゾール(20mg)1錠 または、ラベプラゾール(10mg)1錠 または、ラベプラゾール(10mg)1錠 または、エソメプラゾール(20mg)1Cap を1⽇2回 または、エソメプラゾール(20mg)1Cap を1⽇2回 2.アモキシシリン(750mg)3Cap (錠)を1 ⽇2 回 2.アモキシシリン(750mg) 3Cap (錠)を1 ⽇2回 3.クラリスロマイシン(200mg)1錠 または2錠を1 ⽇2 回 3.メトロニダゾール(250mg)1錠を 1⽇2回 以上1-3の3剤を朝、⼣⾷後に1週間服 ⽤する。 以上1-3の3剤を朝、⼣⾷後に1週間服 ⽤する。 初回および⼆次除菌で90%以上の除菌成功率 除菌療法の副作⽤ 除菌療法を始めると、軟便、下痢、味覚異常などの 副作⽤がおこる場合がある 多くの場合、2、3⽇でおさまります。肝臓の機能をあらわす検査値の変動が⾒られること や、まれに、かゆみや発疹など、アレルギー反応があらわれる⼈もいる 除菌療法の副作⽤ 発熱、腹痛をともなう下痢、便に⾎が混ざっている場合、 あ るいは発疹やかゆみがあらわれた場合 直ちに薬の服⽤を中⽌して、主治医または薬剤師に連絡して ください。 軟便、軽い下痢または味覚異常の場合 ⾃分の判断で、服⽤する量や回数を減らしたりせずに、最後 まで(7⽇間)残りの薬の服⽤を続けてください。 ただし、服⽤を続けているうちに下痢や味覚異常がひどくなった 場合には、我慢せず、主治医または薬剤師に相談してくださ い。 除菌後に逆流性⾷道炎が新たに発⽣、または増悪する⽅が 10%前後いる 除菌成功後に、肥満やコレステロール上昇など、⽣活習慣病 の出現が危惧される病態の発⽣も報告されているので、注意 ⾮ステロイド系抗炎症(NSAIDs)の内服 坐薬、静脈注射、また湿布製剤であっても、過剰に使⽤すれば⽣じる NSAIDs潰瘍 攻撃因⼦抑制薬 Gq Gs Gq PPI 1.オメプラゾール 2.ラベプラゾール 3.ランソプラゾール 4.エソメプラゾール H2受容体拮抗薬 1.ファモチジン 2.ラニチジン 3.ニザチジン 4.シメチジン 5.ロキサチジン 6.ラフチジン 攻撃因⼦抑制薬 抗コリン薬 1.ピレンゼピン 2.ブチルスコポラミン M3 Gq Gq M1 CCK‐BR Gs 抗ガストリン薬 1.プログルミド Gq ガストリン/CCK-B受容体 制酸剤 1.炭酸⽔素Na 2.乾燥⽔酸化アルミ ニウムゲル ECL:エンテロクロマフィン細胞 防御因⼦増強薬 主に胃粘膜保護作⽤ 1.テプレノン(PGE2,PGI2増加 作⽤) 2.エカベトNa(PG増加、抗ペプ シン、抗ピロリ作⽤など) 3.ミソプロストール(PGE1製剤) 4.レバミピド(PG増加など) 5.スクラルファート(抗ペプシン・制 酸作⽤) など 初期治療の治療薬 初期治療の第1選択薬 胃潰瘍 PPIとH2 受容体拮抗薬 のいずれとしてもよい。 ⼗⼆指腸潰瘍 PPIとする。 新PPI エソメプラゾール(ネキシム) オメプラゾールのS体 代謝酵素CYP2C19の寄与率が低く、また 総代謝固有クリアランスも低く⾎漿からの消 失が遅くAUCが⾼くなるため、体の中から消 失しにくく持続的な作⽤が得られる。 (CYP2C19には遺伝⼦多型が存在し、そ の代謝能⼒には個⼈差が⼤きい) 具体的 PPI: 1. オメプラゾール 20 mg/⽇ 2. ラベプラゾール 10 mg /⽇ 3. ランソプラゾール 30 mg /⽇ 4. エソメプラゾール 10 mg /⽇* H2受容体拮抗薬 1. ファモチジン 20 mg /⽇ 2. ラニチジン 150 mg /⽇ 3. ニザチジン 150 mg /⽇ さらに防御因⼦増強薬を1剤処⽅する。 1. セルベックス細粒(テプレノン) 2. ガストローム顆粒(エカベトNa) 3. サイトテック錠(ミソプロストール) 4. ムコスタ(レバミピド)など 維持療法 H.ピロリの除菌が成功した場合 胃潰瘍の再発率は極めて低くなるので維持療法は 必要ない。 H.ピロリが陰性、H.ピロリの除菌療法が適応ではない 症例、除菌失敗例は維持療法が必要 初期治療の半量のH2受容体拮抗薬と1剤の防御 因⼦増強薬を投与 もし可能なら、上部消化管内視鏡検査を定期的に ⾏い、⽩⾊瘢痕が確認されるまで維持療法を続け る。 ⽇常⽣活では喫煙やNSAIDs乱⽤を慎むことを指 導する。 胃炎 胃炎 急性胃炎 胃粘膜に表層性の浮腫、充⾎、出⾎、壊死、びらん等 の変化が認められる病態 急性胃粘膜病変(AGML) 内視鏡検査で、急性出⾎性胃炎、出⾎性びらん、急 性潰瘍を認めるもの 慢性胃炎 1. 内視鏡、レントゲン所⾒に基づいて診断(形態学的胃 炎)萎縮性胃炎とびらん性胃炎 2. 組織学的に診断(組織学的胃炎) H.ピロリの感染が 関与しており、H.ピロリの除菌により改善する。H.ピロリ 陽性の萎縮性胃炎では胃癌の発⽣頻度が⾼い。 3. 機能性ディスペンシア(FD) 機能性ディスペンシア(FD) 機能性ディスペプシアの主な症状 ⾷後愁訴症候群(PDS) ⾷後のもたれ感や早期飽満感 が週に数回以上起こる ⼼窩部痛症候群(EPS) ⼼窩部痛や⼼窩部灼熱感が 起こりやすく。PDSと異なり空腹 時に起こる 内視鏡検査などを⾏っても異常がみつからない ⽇本⼈の4⼈に1⼈ ⾷後のもたれ感→普通の量の⾷事をした後、⾷べ物がいつまでも胃の中に停滞しているような不快感 早期飽満感→少し⾷べただけで、すぐに「おなかがいっぱいになった」と感じ、それ以上⾷べられなくなる感じ ⼼窩部痛→みぞおちのあたりに起こる痛みを指し、熱感をともなう場合とともなわない場合があり 機能性ディスペンシア(FD)の病態 正常の胃の働き FDの病態 機能性ディスペンシア(FD) の治療 1.消化管運動機能改善薬 2.酸分泌抑制薬 (H2ブロッカー、PPI) 3.抗うつ薬、抗不安薬 4.ピロリ菌を除菌 • アコチアミド (アコファイド錠 100mg)⾷前投与 • アセチルコリンエステラーゼ阻 害薬。 • 初めての治療薬。胃運動お よび胃排出能を⾼め、⾷後 膨満感、上腹部膨満感、早 期満腹感を改善。⼼窩部の 疼痛や灼熱感に対する有効 性は未確認。 • 2013年6⽉6⽇発売 胃⾷道逆流症 (GERD) 胃⾷道逆流症(GERD) GERD=逆流性⾷道炎+ ⾮びらん性胃⾷道逆流症 (NERD) 5⼈に1⼈ GERDの定型症状は胸や けと⾷道への逆流感(呑酸) の2つであり、この症状が週 に2回以上あればGERDと 診断する。 内視鏡画像 薬物治療 初期治療 PPIを処⽅(第⼀選択薬) 維持療法 H2ブロッカーを処⽅(補助療法) 初期治療により、症状そのものは通常1〜2週間で軽 快する。 1. 再発し易いので、⻑期間H 2 ブロッカーを服⽤させる (維持療法)。 2. 定期的な内視鏡検査により薬物療法の効果を評価す ることが必要である。 PPIやH2ブロッカーの副作⽤ 発疹、視⼒障害、⽪膚炎、筋⼒低下、⼥性様乳房、 肝機能障害、呼吸困難、⾎液異常、発癌性など GERDの処⽅例 軽症・重症型逆流性⾷道炎の場合(以下のいずれかを選択) 1.オメプラゾール(オメプラール錠 20mg)1錠 分1 朝⾷前 2.ランソプラゾール(タケプロンカプセル/OD錠 30mg)1カプセル/1錠 分1 朝 ⾷前 3.ラベプラゾール(パリエット錠 10mg)1錠 分1 朝⾷前 4.エソメプラゾール(ネキシムカプセル 10/20mg) 1カプセル 分1 朝⾷前 8週間までの投与 上記の治療で軽快しない難治性GERDの場合 1.パリエット錠(20mg)1錠 分1 朝⾷前 2.NAB(nocturnal acid breakthrough)の関与が考えられる場合 H2RA ファモチジン(ガスター錠 20mgなど)の就寝前追加投与。 NAB: 夜間の胃内pHが4.0 以下になる時間が1時間以 上連続して認められる現象 GERDの処⽅例 再燃・再発を繰り返す逆流性⾷道炎の維持療法(以下のいずれかを選択) 1.パリエット錠(10mg)1錠 分1 朝⾷前 2.タケプロンカプセル/OD錠(15/30mg)1カプセル/1錠 分1 朝⾷ 3.オメプラール錠(10/20mg)1錠 分1 朝⾷前 4.エソメプラゾール(10/20mg)1カプセル 分1 朝⾷前 NERD(⾮びらん性胃⾷道逆流症)の場合 (内視鏡的には⾷道炎がないの に逆流症状のある)(以下のいずれかを選択) 1.パリエット錠(10mg)1錠 分1 朝⾷前 2.オメプラール錠(10mg)1錠 分1 朝⾷前 3.タケプロンカプセル/OD錠(15mg)1カプセル/1錠 分1 朝⾷前 4.エソメプラゾール(10mg)1カプセル 分1 朝⾷前 4週間までの投与
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