放射線関連支援技術情報 葉、枝及び落葉における放射性セシウム濃度の把握 福島県林業研究センター 森林環境部 事業名 放射性物質除去・低減技術開発事業 小事業名 森林内における放射性物質の動態解明 研究課題名 森林内における放射性物質の移動実態の把握 担当者 川口知穂・蛭田利秀 Ⅰ 新技術の解説 1 要旨 東京電力第一原子力発電所の事故により放射性物質が拡散・降下したが、今後、森林の再生に向けた放射性物 質の低減をより効果的に実施するためには、時間の経過によって、どのように放射性物質が移動・拡散するのかと いった、森林内での放射性物質の経年変化や移動実態を明らかにすることが重要である。このため、落葉・落枝、 落葉層・土壌中、葉や枝の放射性セシウム(以下、「Cs」という。)の経年変化を明らかにする目的で放射性Cs濃度 を測定した。 その結果、次のことが確認された。 (1) 平成24年5~12月に回収した落葉・落枝のCs-137量の合算値は、常緑針葉樹林、落葉広葉樹林で、それぞれ3. 9kBq/m2、1.7kBq/m2であり、Cs-137が落葉・落枝とともに降下することを確認した(図-1)。 (2) 平成24年12月においては、常緑針葉樹林、落葉広葉樹林とも落葉層と土壌0~5㎝に落葉層と土壌深20㎝まで の全体(以下、「落葉層・土壌全体」という。)の80%以上のCs-137が存在した。(図-1)。平成24年5月、9月、12 月の落葉層・土壌全体のCs-137量の変化は大きくなかったが、平成24年9月には、落葉層のCs-137が減少し、 土壌0~5㎝のCs-137が増加したことから、落葉層から土壌へCs-137が移行していると考えられた。 (3)平成24年7月~12月に周囲の放射線を遮蔽する鉛コリメータを使用し、林床上のみの空間線量率を測定したが 変化は大きくなかった。 (4) 平成25年5~8月に採取した葉のCs-137濃度は、コナラが最も低く、次いでスギの当年葉、ヒノキ、スギの旧葉 の順に高かった(図-2)。 (5) 樹種別に葉と枝のCs-137濃度をみると、スギ及びヒノキがコナラに比較して高い値だった(図-3)。 2 期待される効果 (1) 放射性Csの動態解明の基礎資料となる。 (2) 森林における放射性物質の移動を継続的に明らかにすることで、放射性物質低減や拡散防止など森林再生に 向けた技術開発において、林相別、樹種別の森林の取扱いの検討資料となる。 3 活用上の留意点 (1) 今回の調査結果は、調査箇所が郡山市の針葉樹林及び落葉広葉樹林それぞれ2林分、調査期間が平成24、 25年の2年と限られていることから、県内の森林全体で判断するためには、今後より多くのデータの蓄積が必要で ある。 具体的データ等 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 空間線量率(μSVvh-1) 空間線量率(μSVvh-1) Ⅱ 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 4 落葉・落枝のCS-137 量(kBq m-2) 落葉・落枝のCS-137 量(kBq m-2) 4 鉛コリメータ 1m高 3 2 1 落葉・落枝 3 2 1 0 0 300 300 落葉層*(全体n.s.) 落葉層 250 落葉層・土壌のCs-137量(kBq m-2) 落葉層・土壌のCs-137量(kBq m-2) 落葉層*(全体n.s.) 落葉層*( 全体n.s.) 200 落葉層*(全体n.s.) 150 100 50 0-5cm 250 5-10cm 10-15cm 200 15-20cm 150 100 50 0 0 2012年 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2012年 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 落葉広葉樹林 常緑針葉樹林 図-1 落葉・落枝、落葉層・土壌のCs-137量及び空間線量率 6.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 スギ 当年葉 スギ 旧葉 ヒノキ 葉 コナラ 葉 Cs-137濃度(kBq/kg) Cs-137濃度(kBq/kg) 注)落葉・落枝、落葉層・土壌は6か所の平均値、図中のバーは標準偏差、*は平均値に有意差があり、n.s.は平均値に有 意差がないことを示す 5.0 4.0 当年葉 旧葉または葉 枝 3.0 2.0 1.0 0.0 5月 6月 7月 スギ 8月 ヒノキ 樹種 コナラ 採取月 図-2 葉のCs-137濃度(2013) 注)値は採取した3本の平均値 Ⅲ 図-3 樹種及び部位別のCs-137濃度(2013) 注1)値は樹種ごとの平均値 注2)ヒノキは当年葉と旧葉を区別していない その他 1 執筆者 川口知穂・蛭田利秀 2 実施期間 平成24~25年度 3 主な参考文献・資料 (1) 平成25年度福島県林業研究センター放射線関連研究成果等発表会要旨
© Copyright 2024 Paperzz