トリプル四重極型LC/MS/MSを用いた 親水性代謝物の一斉分析

LAAN-J-LM011
LC-MS
Liquid Chromatograph Mass Spectromrter
トリプル四重極型LC/MS/MSを用いた
親水性代謝物の一斉分析
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Simultaneous Analysis of Hydrophilic Metabolites Using Triple Quadrupole LC/MS/MS
[LCMS-8040]
解糖系をはじめとする中⼼代謝経路に関連した⼀次代謝物はその多くが親⽔性を有しており、⼀般的な逆相分離条件では⽬的代
謝物を⼗分に分離できないことが多くあります。このような親⽔性代謝物を分離する⽅法の⼀つとして、移動相へのイオンペア試
薬の添加が知られています。たとえば糖リン酸・ヌクレオチド・有機酸に代表されるアニオン性化合物を分離する際には、カチオ
ン性のイオンペア試薬を添加することでこのような親⽔性代謝物の分離が可能となります。本データシードではイオンペア試薬と
してトリブチルアミンを⽤いることによって、マウス肝臓組織抽出物からの親⽔性代謝物の⼀⻫分析をトリプル四重極型質量分析
計と組み合わせて⾏った例をご紹介します。
このデータシートでは、「⼀次代謝物メソッドパッケージ」に含まれるHPLC条件とMRM transitionの各パラメータ設定に準じて
⼀次代謝物の⼀⻫分析を⾏いました。今回測定した55成分にはアミノ酸、有機酸、糖リン酸、ヌクレオチド、補酵素といった⽣体
中の代謝変動を⾒るうえで重要な代謝物が対象成分として含まれています。このような代謝物の⼀⻫分析では、試料調製時の代謝
物分解をどれだけ抑えて⽣体における代謝物量を反映させることができるかが重要になります。本資料では試料調製時に代謝物の
分解を進⾏させた試料と迅速に試料調製を⾏った試料とを⽐較することで、代謝物への影響を調べてみました。
■化合物⼀覧
Lysine
Arginine
Histidine
Glycine
Serine
Asparagine
Alanine
Glutamine
Threonine
Cysteine
L-Methionine sulfone
Methionine
Tyrosine
MES (2-Morpholinoethanesulfonic acid)
Glutamate
Aspartate
Phenylalanine
Glucose-6-phosphate
Ribose-5-phosphate
Sedoheptulose-7-phosphate
Fructose-6-phosphate
Tryptophan
Glycerol-3-phosphate
Glucose-1-phosphate
Glyceraldehyde-3-phosphate
Erythrose-4-phosphate
Ribulose-5-phosphate
Pyruvate
CMP
NAD
Dihydroxyacetonephosphate
UMP
GMP
TMP
AMP
cGMP
cAMP
CDP
6-Phosphogluconate
GDP
MS条件(LCMS-8040)
HPLC条件
分析カラム
移動相A
移動相B
タイムプログラム
流速
注⼊量
カラムオーブン温度
UDP
3-Phosphoglycerate/2-Phoshoglycerate
NADP
Fructose-1,6-bis-phosphate
NADH
ADP
TDP
Phosphoenolpyruvate
CTP
GTP
UTP
ATP
TTP
NADPH
2,3-bis-Phosphoglycerate
Succinyl-CoA
Acetyl-CoA
:Mastro C18 (2.0 mmI.D. X 150 mmL., 3 μm)
:15 mmol/L 酢酸、10 mmol/L トリブチルアミン⽔溶液
:メタノール
:0% B. (0-0.5min) →25%B. (8 min)→98% B. (12-15
min)→0% B. (15.1-20 min)
:0.3mL / min.
:3 µL
:40℃
イオン化法
プローブ電圧
ネブライズガス流量
ドライングガス流量
DL温度
ヒートブロック温度
:ESI(Negative)
:-3.5kV
:2.0L / min.
:10.0L / min.
:250℃
:400℃
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マウスの肝臓組織を摘出後すみやかに液体窒素で凍結した後、同程度の⼤きさに砕いたものを試料としました。各凍結組織を秤
量してから⼀定時間室温にて放置後(0 min, 2 min, 10 min)、肝臓組織の破砕を⾏いました。破砕後はメタノール・クロロホルム
抽出を⾏い、親⽔性代謝物を回収した後、濃縮作業を⾏いました。このようにして調製した組織抽出物溶液を適宜希釈したものを
試料として、3 Lの注⼊量にて⼀⻫分析を⾏いました。Fig. 2はそれぞれの組織抽出物における⼀⻫分析の結果得られたMRMクロ
マトグラムを⽰しています。ここで⽰されるようにいくつかの代謝物において、時間の経過にともなった⼤きな増減が確認されま
す。
225000
200000
175000
150000
125000
100000
75000
50000
25000
0
0 min 経過
225000
200000
175000
150000
125000
100000
75000
50000
25000
0
2 min 経過
300000
250000
10 min 経過
200000
150000
100000
50000
0
0.0
1.0
2.0
3.0
Fig. 1
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
10.0
11.0
12.0
13.0 min
⼀次代謝物55成分のMRMクロマトグラム(肝臓組織抽出物)
(上:0 min経過/中:2 min経過/下:10 min経過)
Fig. 3ではISである2-Morpholinoethanesulfonic acidおよびヌクレオチド・アミノ酸のピークをLabSolutionsの複数クロマトグラム
表⽰機能を使って相対表⽰しています。このうち三リン酸・⼆リン酸のヌクレオチドでは室温での放置時間が⻑いほど⾯積値が低
下しており、その分解物である⼀リン酸ヌクレオチドが時間の経過にともない増えていることが確認できました。このときATPで
は試料の室温放置後10分経過時点で、その値が1/10以下に減少していることが分析結果から予想されます。逆にグルタミン酸など
の⼀部アミノ酸では時間経過に依存した⾯積値の⼤きな違いは確認されませんでした。このように代謝物の分析を⾏う際には、⽣
体内での代謝物量を反映させるためにも、速やかな試料調製が重要であることがわかります。また本資料で紹介しました「⼀次代
謝物メソッドパッケージ」を使うことで、中⼼代謝経路をはじめとするさまざまな代謝物変動を追跡することが可能になります。
IS
Glutamate
AMP
ADP
ATP
0 min
経過
2 min
経過
10 min
経過
Fig. 2
⼀次代謝物MRMクロマトグラム(肝臓組織抽出物)のクロマトグラムビュー画⾯
(上:0 min経過/中:2 min経過/下:10 min経過)
初版発行:2014 年 6 月
© Shimadzu Corporation, 2014