RAD-AR活動 - くすりの適正使用協議会

くすりの適正使用協議会
とは
1
RAD-AR(レーダー)活動とは
2
RAD-AR活動の推進主体
3
日本におけるRAD-AR活動と
協議会の設立
4
くすりの適正使用協議会の現在
5
くすりの適正使用協議会の活動
6
主な出版物
くすりの適正使用協議会
もくじ
1 RAD-AR(レーダー)活動とは................................................. 1
2 RAD-AR 活動の推進主体............................................................. 1
3 日本における RAD-AR 活動と協議会の設立....................... 2
(1)日本 RAD-AR 協議会(現くすりの適正使用協議会)の設立..... 2
(2)2000 年における事業方針見直しと協議会の名称変更................ 2
(3)2010 年における事業方針見直し.......................................................... 3
4 くすりの適正使用協議会の現在............................................. 12
(1)協議会の目的と事業内容......................................................................... 12
(2)中期活動計画................................................................................................ 12
5 くすりの適正使用協議会の活動............................................. 14
(1)年表................................................................................................................. 14
(2)主な活動実績................................................................................................ 18
6 主な出版物....................................................................................... 34
本書に登場する人物の肩書及び社名・団体名等は、全て当時のものです。
1
RAD-AR(レーダー)活動とは
医薬品に本来備わっているリスクとベネ
クを矮少化しベネフィットを強く主張し
フィットを科学的、客観的に評価、検
ているというものでした。
証し、その結果を社会に提示すること
その渦中のある企業が、その解決を図
で医薬品の適正使用を促し、患者さん
るための方策を探ろうと提唱し、スイ
のメリットに寄与するという一連の活動
スの都市に世界の主要企業が一堂に会
をいいます。
し注釈1、議 論し得られた結 論がRAD-
この活動は、1980 年代の世界で起き
AR 活動なのです。
たマスコミによる製薬企業の販売姿勢
因みに、RAD-ARとはRisk/Benefit
に対する批判を契機として生まれまし
Assessment of Drugs-Analysis
た。それは、製薬企業は医薬品のリス
and Responseの略称です。
2
RAD-AR 活動の推進主体
1980 年代の終わりに、欧米諸国そし
なお、国別での活動について整合性を
て日本にRAD-AR 活 動を推 進する組
図る、また新しい調査、研究を提案す
織が設立されました。ただ、組織形態
るための国際組織(IMBRF)注釈2がジュ
が日本と諸外国とで異なっていました。
ネーブに設立されましたが、欧米では
諸外国では、企業単位であるのに対し、
各製薬企業がこの活動を行ったため、
日本では有志の企業が形成した団体で
発展的に解消されました。
あるという点です。
1
3
日本における RAD-AR 活動と協議会の設立
(1)日本RAD-AR 協議会
RAD-AR 活動は、医薬品産業の研究
(現くすりの適正使用協議会)の設立
開発力と国際競争力の強化に軸足を置
1989 年5月29 日、日本製薬工業協会
く日本製薬工業協会の活動と質を異に
とは別に、研究開発型製薬企業11社
することから別団体とされました。
を会員として、協議会が設立されまし
設立以来、3つの側面からRAD-AR 活
た。
動の具体的事業を推進してきました。
注釈3
◆医薬品のリスクとベネフィットを科学的、客観的に評価、検証する手法である薬剤疫学
(PE: pharmacoepidemiology)の紹介と啓発
◆医 薬 品 の 適 正 使 用 に 資 す る 医
(CO:communication)の促進
療 関 係 者と 患 者 さん と の コ ミュニ ケーション
◆RAD-AR 活動に資する調査、研究
(2)2000 年における事業方針見直し
動のあり方に関する検討会
(座長:田中
と協議会の名称変更
靖政氏・学習院大学法学部教授)が組
2000 年1月、21世紀における活動の
織され、事業方針について以下のよう
あり方を検討するために、RAD-AR 活
に報告書をまとめました。
①患者さん本位の医薬品及び医療の確立に向けて、これまでの活動を基盤としつつ、患
者さん・ご家族のニーズをよく理解し、それに応える
②患者さん・ご家族、製薬企業、医療関係者が互いに、自由、容易に対話や意見交換が
できる「場」を提供する
③②で得られた情報などを基に生み出されたアイディアやプログラムを社会に提供する
④①〜③の事業は、業際的、学際的そして公的であることを再認識し、相応しい組織形
態を考える
上記の ④を踏まえて、協議 会内部に
2003 年4月より、以下のように名称と
プ ロジェクトチーム( 座 長:和 田 有一
組織形態を変更しました。注釈4
氏)を設け検討し、会員の賛同を得て
◆名称を
「くすりの適正使用協議会」とする(ただし、英名は変更なし)
◆組織形態については、個人会員を加える
2
(3)2010 年における事業方針見直し
に見合った活動を行うため、再度有識
前回のRAD-AR 活動のあり方に関する
者による検討会が組織され、以下の提
検討会から10 年を経た2010 年、IT 技
言が出されました。
(座長:山崎幹夫・
術の普及等医薬品を取り巻く社会情勢
千葉大学名誉教授、新潟薬科大学名
が大きく変化しました。そこで、時代
誉教授)
①協議会が過去10 年間行ってきた「医薬品情報収集・発信の中心的役割を担い、社会に正
しい情報を提供する活動」は引き続き必要である。
②①を確実にするために、まずは社会全体の
「医薬品リテラシー」の育成を最優先し、重要
性と緊急性を考慮し、今後取り組むべき3 〜 5 年の具体的行動目標を立てて活動を展開
することを強く望む。
*医薬品リテラシー 医薬品の本質を理解し、医薬品を正しく活用する能力
上記提言を踏まえ、1年間会員相互で
また、活動を支える組織形態も見直し、
意 見 交 換をし、
「中期活動 計画12-16
会員の賛同を得て2012 年4 月から新
〜 RAD-AR 理念の実現に向けて〜」を
生協議会としてスタートしました。注釈5
まとめました。
(P12)
【協議会の目的】
医薬品を正しく理解し用いることを通して、人の健康保持とQOLの向上に寄与する
【事業】
①医薬品リテラシーの育成
②国民に向けての医薬品情報提供
③ベネフィット・リスクコミュニケーションの普及
3
注 釈
「RAD-AR 活動」の原点
ウォルフスベルグ会議
・1988 年、スイスのウォルフスベルグに、世界の代表的な製薬企業約30 社が集合。
・4 日間にわたり、副作用問題、特に当時吹き荒れていたジャーナリズムからの批判につい
て検討の結果、次の結論を認めあった。
①従来、製薬企業は、必ずしも真剣に副作用問題に取り組んでいたとは言い難いという反
省を認める。
②これからは最新の科学で、医薬品が持つベネフィットとリスクを検証し続け、積極的に医
療の場はもちろん、社会にも発表する努力を約束する。
この活動を
RAD-AR 活動と呼称する。
(RAD-AR:Risk & Benefit Assessment of Drugs, Analysis &
Response)
近い将来、各国にこの活動を行うRAD-AR Councilの誕生が期待される。
それらCouncilを結合してInternational Foundationを構築する。
4
日本におけるRAD-AR 活動の経緯
チバガイギー株式会社のリードでスタート
日本のRAD-AR 活動は、ウォルフスベルグの誓約に沿う形で、チバガイギー株式会社が自費
を投じ、1社で開始した。
厚生省のサジェスション
その活動に対して厚生省は「RAD-AR 活動は望ましい活動ではあるが、1社が独自にやるも
のではなく、志を同じくする企業が犠牲を払い合い、自主的に推進するべきものだ」という
示唆を示した。
RAD-AR 活動の継承を製薬企業に要請
厚生省のサジェスションを受けたチバガイギー株式会社は、従来同社が展開してきたRADAR 活動の継承問題の取扱いを製薬協の内藤会長に要請した。それを受け、内藤会長は「い
かなる形で誰が継承すべきか」を組織に諮問した。
検討組織の答申
それに対して、内藤会長に答申された内容は次のようなものであった。
「RAD-AR 活動は製薬企業だけがまとまってやる活動ではなく、将来は医療に関連する他の
団体や個人の参加も想定されるほか、製薬企業が製薬企業のために集まった既設の団体と
は異なる哲学で運営される点もある。また、さらに他の団体や個人、例えば医師、薬剤師、
看護師、患者さん、ジャーナリズム、行政、政治等との協同など、従来我々が関与していな
い活動域への展開も想定されるので、既設の団体が継承(それは併合になる)するときには
違和を生ずる恐れがあり、やがてそれはRAD-ARの発展を制約することにもなるので、既
設の団体が継承するのは望ましくない。全く新しい団体を作り、自由に活動してRAD-ARを
発展させることが望ましい」
日本RAD-AR 協議会
(現くすりの適正使用協議会)の創設
上記の答申に基づき、1989 年5 月29 日に以下の11社によって、日本RAD-AR 協議会が創
設され、独自にRAD-ARの道を切り開く活動がスタートした。
エーザイ株式会社、三共株式会社、武田薬品工業株式会社、田辺製薬株式会社、第一
製薬株式会社、大日本製薬株式会社、中外製薬株式会社、日本新薬株式会社、日本チ
バガイギー株式会社、藤沢薬品工業株式会社、山之内製薬株式会社
(50 音順)
なお、創設に際して、以下の2 件の基本活動方針が確認された。
①我が国に薬剤疫学を導入してその進展をはかる。
②インフォームド・コンセント時代を迎え、医薬品情報をいかに活用させるか、特に患者さ
んに対して、
どのような情報をどのような方法で提供するのが適切か、
その方策を開拓する。
くすりの適正使用協議会の将来像
協議会は加盟製薬企業が運営の責任を持つが、その活動は単に製薬企業だけの意図によっ
て選択するのではなく、医師、薬剤師、看護師、ジャーナリズム、行政、政治、患者さん等
の意見を導入できる組織体をつくり、社会全体のQOLの向上をはかる医療の推進、さらに
そこで使われる医薬品を最善の状態までレベルアップすることに注力することを目標とする。
注:団体.組織名等 1995 年時の資料より引用。
5
注釈1 ● ウォルフスベルグ会議
学的解析や評価を行い、その正しい情
世界 の主 要 製 薬 企 業30 社が、1988
報を社会に提供する努力を怠っている。
年4 月スイスのWolfsbergに 集 まり、
そのことが、往々にして製薬企業が社
当時各国が悩んでいた「医薬品の副作
会的責任を回避していると見られ、誤
用問題や製薬産業に対する社会の不信
解や不信感を生む要因になっているこ
感」について真剣な討議を行いました。
とを認識し、その改善活動の開始を約
4 日間の討議の結果、これまで世界の
束しあいました。また、会議では次の
製薬企業は、医薬品が本質的に持って
活動目標が設定されました。
いるベネフィットとリスクについて、科
◆医薬品の安全性に関し、業界リーダー各社が積極的に活動し、業界に対する信頼性を向上
させること
◆医薬品のベネフィットとリスクの関係を人々に明確に示すこと
◆医薬品処方現場での意思決定時、および全般的な過程におけるリスク管理を強化すること
注 釈2 ● International M edical
日本は日本RAD-AR 協議会として参加
Benefit/Risk Foundation-RAD-AR
しました。1995 年9 月に休 務 するま
(略称ー IMBRF)
1988 年8 月にフランスのTalloiresで
「患者情報の提供に関する実態調査」、
「RAD-AR 関係者諸団体諮問会議」が
病院におけるData Baseにインプット
開 催され、国 別のRAD-AR 活 動を世
すべき情報エレメントの標準化、医療
界レベルにまで引き上げるための国際
データと個人のプライバシーの問題に関
的なRAD-AR 機関を設立することが合
する研究などの活動を行いました。
意され、1991年6 月にInternational
そ の 後、RAD-AR 活 動 は、 日本を 除
Medical Benefit/Risk Foundation-
く各国では、製薬企業が自社の活動の
RAD-AR(略称ー IMBRF)がRAD-AR
中に取り入れる形で収束させたのに対
活動を国際的に推進する財団としてジュ
し、日本では協議会が実践することで
ネーブに設立されました。欧米各国は
継続され、現在に至っています。
製薬企業単位で財団に参加しましたが、
6
でIMBRFは、日・米・欧三極における
注 釈3 ● 日 本RAD-AR 協 議 会(RAD
11社が、別枠で、協力して事 業を継
-AR Council ,Japan)の発足の経緯
承することになりました。
RAD-ARプロジェクトの推進に邁進して
初代会長となった内藤祐次氏(エーザイ
いたチバガイギー株式会社が、私費を投
株式会社社長)は、協議会設立総会で、
じる形でRAD-AR 活動は始まりました。
「この社会に薬物療法が存在する限り、
具体的内容は、医薬品のベネフィットや
そこで使われる医薬品のベネフィットや
リスクを科学的に検証する手段として
リスクを、日進月歩する科学的手法を
薬剤疫学(Pharmacoepidemiology)
駆使して検証し続けるのは、医療にとっ
を日本に導入して進展させることと、イ
て必須の措置である。それとともに、
ンフォームド・コンセント時代における
インフォームド・コンセント時代を迎えて、
「製薬企業(卸業)−医療機関−患者さ
“よりよきコミュニケーション”の確立に
ん」 間のコミュニケーション
(特にペイシェ
資する医薬品情報提供手段を開発する
ント・インフォメーションー患者さんに対
ことは、医療に付随したものというよ
する情報)のあり方を開発するという2
りは、
“医療行為そのもの”と考えるべ
つのテーマを基本とするものでした。
き活動である。こうした社会責務遂行
一方、 当 時 の 行 政にRAD-AR 活 動 の
の先端に立つ協議会は、この2 大事業
進め方を説明したところ
「この活動は業
を永遠の命題として、追求し続けると
界全体が協力して担っていく体制が望
ころに存在の意義がある」と述べました。
ましい」との示唆があったことから、日
ま た、 協 議 会 が 発 足 する以 前 から、
本製薬工業協会での協議を経て、当面、
RAD-AR 活動を具体的に設 定するた
同協会のメンバーである大手製薬企業
めに、意識調査と研究が行われました。
◆意識調査
医療と医薬品に関する一般市民意識調査
(1987 年8 月17 日〜同28 日)
医薬品と副作用に関する医師調査
(1987 年12 月〜1988 年1月)
◆ 研究
*疫学のDrug Surveillanceへの応用
ーPharmacoepidemiologyについての研究
(清水直容ら)
(1988年2月〜1989年8月)
*医薬品のリスクの知覚と管理に関するコミュニケーション論的調査研究(田中靖政ら)
(1988 年1月〜1989 年8 月)
*医薬品の本質とリスクに関する薬学的考察
(山崎幹夫ら)
(1988 年1月〜1989 年8 月)
7
*医薬品が日本社会に果たしてきた社会的貢献とこれから担うべき役割
(経済学的視点に
よる医薬品のCost Benefit/EffectivenessとRisk Assessment)
(藤野志朗ら)
(1988
年3 月〜1989 年8 月)
*医薬品のリスク評価とリスク管理に関する方法論の調査研究ー副作用情報が医薬品の
選択と消費に与える影響の分析計測ー
(池田三郎ら)
(1988 年4 月〜1989 年10 月)
これらの成 果を踏まえて、設 立 以 来
そのための情報手段(くすりのしおり®)
25 余年、医薬品、特に製造販売後医
を考案し、具体的医薬品情報を提供す
薬品について、そのリスク、ベネフィッ
るとともに、医薬品の本質について児
トそしてリスク/ベネフィットバランスを
童に学んでもらう機会を提供するなど
科学的に評価する手法である薬 剤疫
の活動を展開していました。
学の調査研究・応用・啓発に係る活動
この重要かつ先 駆的なRAD-AR 理 念
を展開してきました。また、医薬品を
は、国内の製薬企業の理解と協力をい
正しく用いることを医療関係者、患者
ただき、今日までの間、多くの人々に
さんが認識し、実践してもらえるよう、
支えられながら引き継がれています。
初代会長内藤祐次氏の会長就任挨拶から
私ども製薬産業にあるものは、有効性がさらに大きく、しかも好ましからざ
る作用を最大限に抑制した医薬品づくりに挺身するとともに、上市後におけ
る副作用の調査機能も拡充する義務がある。これからは現在の参加社11社
のほか、なお多くの参加を求め、わが国の風土と土壌にRAD-AR 活動を定着
させ、さらに飛躍させたい。
Dr. A. Krauer
(CIBA-GEIGY Ltd. Chairman)の協議会設立総会での挨拶 ●過 去において日本は欧米から多くのことを学んだが、今や世界中が日本か
ら学ぼうとしている。指導的地位にある者は、環境の変化を読みとりなが
ら歩を進めていかなければならないが、この前進の過程において、対話を
通じてこの前進が価値のあるものであることを理解させることが必要であ
る。医薬品産業はその製品の特性により、人々の健康の向上に貢献できる
とともに責任もある。医薬品産業の発展は、その製品が人々に受け入れられ、
8
社会的責任を持った企業活動を行うことによってのみ得られる。RAD-ARは
医薬品のリスクと便益の改善を
「薬剤疫学」や
「関係する者」相互の情報交換
により実現しようとしている。今回の協議会の設立は、正に医薬品企業が
この目的に向けて一歩踏み出したものといえる。
●かつて私たちは、医家向医薬品の主な顧客は、医療関係者のみと考えてい
た時期があったが、その後の経験から実はもっと広範囲に及ぶものである
と認識するようになった。医師、薬剤師などの他に、ある意味では患者さ
ん・一般大衆も含まれるようになったといえる。今では、処方する医師と共
に患者さんも治療上の決定に参加する傾向が強まり、規制当局や支払基金
の政策に影響を及ぼすようになった。私たちは行政当局と協力して、諸団
体から提起される疑念や関心事に適切に対応しなければならない。技術革
新にともなう、開発途上のリスクに関する問題もその一つといえる。
●R AD-ARは、医薬品のリスク対便益比を、革新的な薬剤疫学と、より良き
意思決定と大衆との双方向のコミュニケーションを通じて向上させるという、
私たちのコミットメントの表れである。私たちは、医薬品のリスクと便益を
より適切に理解してもらえるよう努力し、一般大衆がどのような認識を持つ
かについても関心を払わなければならない。
●知 能と専門知識と資源を蓄積することで、共通の利益を拡大し保持でき、
医薬品の安全性向上という目標も達成しやすくなる。かくして私たちが努
力することが社会に、そして業界の絶え間ない行動にとって大いに益にな
ることを確信できるだろう。日本RAD-AR 協議会は、いかにして業界が公
共の利益に役立つことで成功を収められるかを示す格好の具体例なのである。
注釈4 ● 2000 年の「RAD-AR 活動の
動のあり方と、それを踏まえた協議会
あり方に関する検討会」
の役割について検討するため、8 名の
RAD-AR 活動を進めて10 年という節
専門家および有識者からなる
「RAD-AR
目の時でもあった、1998 年12 月、田
活動のあり方に関する検討会」が組織
中靖政氏(学習院大学法学部教授)を
され、2000 年に報告書としてまとめ
座 長に、21世紀におけるRAD-AR 活
られました。その背景には、医療変革
9
の動き、人々の健康に対する価値意識
軸足をもっと患者さん・ご家族に移行
の高揚、そして情報開示の進展など、
すべきではないか、との認識が強まっ
医薬品をとりまく環境が大きく変化し
たことがありました。
ている現状をみるとき、協議会活動の
◆検討会の提言主旨
協議会の運営委員も加わって約2 年間にわたる精力的な討論を行い、2000 年1月、協議
会活動の今後の方向などについて次のような認識を取りまとめました。
(1)患者さん・ご家族本位の医薬品および医療の確立に向けて、これまでの活動を基盤
としながらも患者さん・ご家族のニーズの理解をさらに深め、そうしたニーズに応え
るため、より活発な活動を展開する。
(2)患者さん・ご家族、製薬企業、医療関係者など医療当事者がより自由に、また容易
に対話や意見交換などができるような
「場」を提供する。
(3)このようにして得られた情報や意見交換などの成果から派生したアイディアやプログ
ラムを、マスメディアを含め社会に提供する。
(4)こうした活動は、業際的、学際的そして公的であることを改めて認識し、それに相応
しい将来の組織形態を考慮する。
◆新組織検討プロジェクトの活動と名称変更
上記のあり方検討会からの取りまとめ
(4)
にある将来の組織形態について、具体的な検討
を行うようにとの理事長からの委嘱を受けて、
2001年9月、
協議会内に
「新組織検討プロジェ
クトチーム」が結成されました。
運営委員19 名のメンバーと、和田有一氏(協議会理事長付)がチームリーダーとなって検討
が開始されました。
基本コンセプトは、
「より公益性を高めるとともにRAD-AR 活動の有用性を社会に認知
させ浸透させていくためには製薬企業だけの団体ではなく、活動趣旨に賛同していただ
ける各分野の団体や個人と一緒になって行動する新しい組織を構築すること」でした。計
8 回にわたるプロジェクトチーム会合とワーキンググループ会合を経て、2002 年1月度の
運営委員会に答申書が報告されました。内容の大枠は、以下のとおりです。
◎協議会の形態について
◎新会員の数、役割、募集などについて
◎ 事業計画の立案にあたって
◎協議会の名称について
◎協議会会長について
10
協議会の名称については、外部専門家
時代に見合った活動からその成果の広
の提案を参考に広く運営委員の意見を
報まで、先を見据えたあり方を検討す
まとめ、2003 年3 月の第21回通常総
るため、13 名の専門家および 有識者
会で、
『くすりの適正使用協議会』とす
からなる「RAD-AR 活動のあり方に関
ることが決められ、2003 年4 月より
する検討会」が組織されました。
(座長:
変更されています。
山崎幹夫氏・千葉大学名誉教授、新潟
薬科大学名誉教授)
注釈5 ● 2010 年の「RAD-AR 活動の
前回の検討会から10 年経過し、IT 技
あり方に関する検討会」
術の普及により情報を得る手段は格段
2010 年9 月、RAD-AR 活動の根幹を
に進歩した一方、情報の質をどのよう
なす「医薬品適正使用の確保」を確実
に担保し、どのように評価するか等を
にするために、協議会の組織や財政、
検討しました。
◆検討会の提言主旨
国民に向けた医薬品の適正使用に寄与する段階を発展させ、医薬品適正使用の更なる
定着を図る段階まで高めていくために、次のような提言がまとめられました。
(1)医薬品リテラシーと教育
医薬品とは何か等、医薬品の根本に関わることを紐解く場を提供する。
迅速かつ、正確、的確、適切な医薬品情報を公平な立場で提供する。
(2)医 薬品リテラシーと情報
(3)医薬品の安全性に関するリスクコミュニケーション
くすりの処方や治療法について、患者さん自らが意思決定できるような教育、情報
提供の推進を行う。
(4)協議会の位置づけ
専門家のみならず、国民へ向けた分かり易い活動内容の発信。結果として、賛同者
の拡大へ繋げる。
11
4
くすりの適正使用協議会の現在
(1)協議会の目的と事業内容
■
目 的
■
事業内容
医薬品を正しく理解し、適正に使用す
・医薬品リテラシーの育成
ることの啓発活動を通じて、人の健康
・国民に向けての医薬品情報提供
保持とQOLの向上に寄与する。
・ベネフィット・リスクコミュニケーショ
ンの普及
(2)中期活動計画
■
キーコンセプト
■
医薬品リテラシーの育成と活用
■
基本戦略と、その具体的取り組み
1
国民の医薬品への意識を
レベルアップ
③くすりのしおり®を積極的に活用して、
製薬企業からの国民への情報提供
を支援します。
(2)適正医薬品情報提供への対応
当協議会の活動を医薬品業界の社会
患者さんも医療チームの一員として治
貢献と位置づけ、イニシアティブをとって、
療に参加する環境を醸成するために、
国民へ医薬品の情報提供と教育によっ
必要とされる医薬品情報と、それが提
て医薬品リテラシー獲得を目指します。
供される基盤作りをします。
(1)国民が必要とする情報を3 方向か
(3)公教育における「くすり教育」の
ら継続的に強化
フォロー
①子供から大人までの幅広い層を対象
中学校では2012 年度に医薬品教育が
に医薬品の全体像を示す情報「医薬
導入され、それに伴って高等学校では
品の知識」を提供します。
2013年度からレベルアップされました。
②報道記事などによる医薬品の情報に
ついて客観的な見方を提示します。
12
期 間
2012 年4月〜2017年3 月
これに呼応して、教育現場で必要とす
る「教材」の開発と提供を進めます。
2
3
医療関係者への
「医薬品リテラシー」
の
知識・技術の向上と医療エビデンスの
創出・公開を支援
ベネフィット・リスクコミュニケーション
(1)リスクマネジメントの調査研究と
を推進
ベネフィット・リスクコミュニケーション
結果の公表
とコンコーダンスを通じて、結果として
海外を含めリスクマネジメント(ベネ
患者さん・ご家族が自己の薬物治療に
フィット・リスクコミュニケーションを含
意志を反映させられるよう方策を検討
む)に関する最新情報を調査、検討し、
します。
その結果を公表します。それを、製薬
企業、医療関係者、更には一般国民に
とっての適切なリスクマネジメント実践
につなげていきます。
4
活動拡大への基盤を構築
また、医薬品リテラシー育成の一助に
します。
(2)薬剤疫学および関連分野の啓発
ジェネリック医薬品やOTC 医薬品を含
めた広範囲の医薬品を対象とします。
薬剤疫学に加えて、その応用と考えら
また、対外的に、専門家と連携し、活
れるリスクマネジメント等について、医
動計画の実効性を高めるとともにメディ
療関係者、製薬企業の方々に啓発する
ア等と連携して社会に活動を公表する
場を提供します。また、出前研修を行
など透明性を確保していきます。対内
います。
的には、一致団結して協議会の活動に
(3)データベースの拡充と活用
取り組む体制とします。
既存の降圧薬と高脂血症治療薬のデー
こうした連携のもと、社会の医薬品リ
タベースを拡充するとともに、企業会
テラシーの向上を図り、賛同者(会員)
員だけでなく、アカデミアも対象にそ
増につなげます。
のデータベースを利用した薬剤疫学研
究を勧誘し、エビデンス創出を図ります。
13
5
くすりの適正協議会の活動
(1)年表
協議会設立から10 年間の主な活動
1988 年
医療と医薬品に関する一般市民意識調査
1988 年
医薬品と副作用に関する医師調査
1987年〜 88 年 専門家による薬剤疫学、医薬品の本質とリスクなど各種調査研究
1989 年
1989 年5月
医薬品の安全性向上に関する国際会議
(東京シンポジウム)
の開催
参加企業11社による設立総会が開催され、会長には内藤祐次氏
(エーザイ)、運営委員長は武市匡豊氏
(エーザイ)が選ばれる
1990 年〜 93 年 ワークショップの開催
1990 年〜
RAD-AR Newsの発行
1990 年
医薬品のベネフィットとリスクに関るデータリソース・ハンドブック
日本版の発行
1991年〜
RAD-AR カードの発行
1991年〜
海外団体大会への参加
1991年〜
病院のデータベース構築への協力
1992 年〜
海外データベースの調査
1992 年〜
セミナー
(基礎講座)の開催
1994 年〜 95 年 厚生省データベース構築研究事業への参加
1994 年〜
シンポジウムの開催
1994 年〜 97年 RAD-AR FORUMの発刊
1995 年〜 98 年 国立大学病院所有のデータベース利用研究
14
1996 年〜
海外文献の評価研究
1997年〜
セミナー
(会員企業インテンシブ・コース)の開催
1997年
ワークショップの開催
1997年 4月 「くすりのしおり」ホームページに掲載開始
1997年 6月
1997年10 月
「くすりのしおり」トライアル結果を報告書で発表
参加企業32 社による総会が開かれ、新会長に千畑一郎氏
(田辺製薬)、新理事長に海老原格氏
(厚生省薬務局)
設立以来、会長であった内藤祐次氏は名誉会長となる
1998 年〜
病院所有のデータベース利用研究
1998 年 3 月
総会で規約の大幅な変更が承認され、新規約による第1回理事会
が開かれる
1998 年12 月
RAD-AR 活動のあり方に関する検討会が始動
1999 年〜
製薬企業所有のデータベース利用研究
2000 年以降の主な活動
2000 年 1月
RAD-AR 活動のあり方に関する検討会による答申出される
2000 年 3 月
医薬品についての一般市民・医師意識調査結果公表
2000 年 8 月
薬剤疫学情報センター
(PERC)を開設
2001年 4月
協議会の新会長に渡守武健氏
(大日本製薬)
2002 年 1月
「新組織検討プロジェクトチーム」から答申が出る
2003 年 3 月
「薬剤疫学をやさしく解説する講師派遣」制度がスタート
2003 年 4月
協議会の名称を
「くすりの適正使用協議会」と改める
規約を一部改正、協議会の名称を変更、個人会員制度を新設
2003 年 7月
降圧剤の使用成績調査等データベースを構築
2004 年 2 月
くすりの絵文字
「ピクトグラム」28 種類を開発、一般に公開
2004 年 8 月
健康と医療フォーラム
「からだ博」にブース出展
2005 年 2 月
2005 年 4月
「育薬アカデミー」設立される
協議会の新会長に大橋勇郎氏
(ノバルティス ファーマ)
2005 年 6月
「簡潔! くすりの副作用用語事典」用語データを公開
2005 年 7月
「ピクトグラム懇話会」を立ち上げ、利活用拡大に向けて専門家に
よる意見交換が始まる
15
2005 年 7月
ホームページ「くすりの情報ステーション」リニューアル
2005 年 9 月
使用成績調査等データベース管理規定制定、利用申請の受付けを
開始
2006 年 1月
一般市民の医薬品および医療に関する意識調査結果公表
2006 年 7月
くすりの絵文字「ピクトグラム」改訂版51種類を公表
2006 年 7月
「くすり教育ホームページ」使い勝手を良くリニューアル
2006 年11月
第21回アジア薬剤師会連合
(FAPA)でくすりの絵文字
「ピクトグラム」4カ国語を紹介
2007年 4月
2007年 4月
医薬品医療機器総合機構のHPと
「くすりのしおり」がリンク
「RAD-AR メールマガジン」発刊
2007年 6月
経口抗菌剤の使用成績調査等データベースの構築
2007年 7月
コンコーダンス指向くすりのしおり
「あなたの病気とくすりのしおり:
高血圧編」を公開
2007年 8 月
くすりの絵文字「ピクトグラム」6 言語版を公表
2008 年 4月
第6 回消費者教育教材資料表彰において、
「小学生向けくすりの正
しい使い方」
(パワーポイント・スライド)が優秀賞受賞
2008 年10 月
コンコーダンス指向くすりのしおり
「あなたの病気とくすりのしおり:
糖尿病編」を公開
2008 年11月
2009 年10 月
「くすり教育アドバイザー制度」立ち上げ
設立20 周年記念キャンペーン記者発表会
(「くすりアゴラ」
(3 地域)、
「くすり川柳コンテスト」実施)
2009 年12 月
設立20 周年記念品「くすりの豆辞典」を作成
2010 年以降の主な活動
2010 年 6月
コンコーダンス指向くすりのしおり「あなたの病気とくすりのしおり:
小児喘息編」を公開
16
2010 年 9 月
RAD-ARのあり方に関する検討会が始動
2010 年10 月
一般市民の医薬品および医療に関する意識調査結果公表
2011年 2 月
RAD-AR 活動のあり方検討会からの提言まとまる
2011年 3 月
高脂血症用剤の使用成績調査等データベースを構築
2012 年 3 月
定例総会にて中期計画および新体制について承認される
2012 年 4月
組織改革に伴い、規約を改正
新理事長に黒川達夫氏(慶應義塾大学薬学部教授)
2012 年 4月
【一般向けの講演会で役に立つ】
『おくすり相談会』資料をホームペー
ジで公開
2012 年 6月
2012 年11月
「くすり教育のヒント〜中学校学習指導要領をふまえて〜」発刊
DVD「医薬品とは- 高等学校医薬品教育用教材」を日本製薬工業
協会、日本OTC 医薬品協会と協議会の3 団体で制作し配布
2013 年 1月
患者さんと医療者とのコミュニケーション促進動画『一緒に話して
みませんか?あなたと薬のこと』を公開
2013 年 6月
「くすりのしおり」ホームページの検索機能が充実、スマートフォン
対応へ
2013 年 9 月
協議会ホームページリニューアル
2014 年 3 月
β遮断薬2 調査、ARB1調査を追加した「降圧剤使用成績調査等
データベース」報告書作成
17
(2)主な活動実績
インの作成*4
1989 〜2014 年の間、次の5つのカテゴ
リーに分類し、活動を推進してきました。
④育薬アカデミー ®の設置*5
⑤薬剤疫学の研究者、実務者の養成
(1)調査
(2)技術
(薬剤疫学)の普及・活用
*6、*7、*8、*9
(3)情報の提供
(3)情報の提供
(4)教育
患者さん・ご家族、医療関係者など多
(5)パートナーシップの促進
くの人が医薬品の本質を理解し、医薬
品を適切に用いてもらうことを目的に、
情報集を作成し社会に提供しています。
(1)調査
医療や医薬品に対する患者さん・ご家
なお、全ての医薬品、サプリメント等
族の考え、要望等を定期的に把握して、
に関する情報の発信基地となるよう準
協議会の活動に反映させています。
備しています。
2000 年、2003 年、2006 年 そ して
①
「くすりのしおり®」のホームページに
2010 年と調査を実施しています。
*1
よる提供*10
②健康と医薬品ハンドブックの刊行*11
(2)技術
(薬剤疫学)の普及・活用
③薬価基準収載医薬品を対象とした
医薬品のリスクとベネフィットを科学的、
副作用用語集の刊行*12
客観的に評価、検証するには、薬剤疫
④薬剤疫学解説書の刊行*13
学の知識や手法が必要です。薬剤疫学
⑤
「ピクトグラム」の発行*14
が諸外国と同様、我国でも容易に利用
されるように基盤整備を図るとともに、
研究者等の養成を実践しています。
医薬品の教育について、児童・生徒な
①国内外における薬剤疫学に関する文
どの若年層を対象に学 校 薬剤師、保
健体育教諭、養護教諭の協力を得て取
献の検索と評価
*2
②患者さんの医薬品使用についての国
内情報のデータベース構築とそれを
用いた新しい情報の創出
*3
③市販後安全性研究に関するガイドラ
18
(4)教育
り組んでいます。
①くすり教育の指針・教材の作成、お
よび公開*15
②くすり教育の普及*16
(5)パートナーシップの促進
国内外の患者さん・ご家族、
医療関係者、
学者等のグループと提携し、医薬品の適
*17
正使用に係る活動を展開しています。
①患者さん・ご家族への「おくすり相
談会」の開催
②全米患者情報教育協議会(NCPIE)
との交流*18
④国際医学団体協議会(CIOMS)との
交流
⑤日本臨床内科医会等医療関連職能
団体との交流
⑥日本ファーマシューティカルコミュニケー
ション学会との交流
⑦日本薬剤師会:学校薬剤師部会とく
すり教育の浸透への交流
③日本薬剤疫学会(JSPE)、国際薬剤
疫学会
(ISPE)との交流*19
【*1】医薬品・医療に対する患者さん・
と医師などの医療関係者がどのような
ご家族の課題認識と要望
意識を持っているかを探る調査』を行
医薬品、医療を取り巻く環境が大きく
い、医療現場のコミュニケーション、医
変わっています。協議会の活動を進め
薬品の適正使用などについての状況と
るに当たって、こうした変化を反映させ
変化を把握する必要があります。協議
ることは大切です。その一環として、
『医
会発足後に行われた調査には、次のも
薬品、医療に関して患者さん・ご家族
のがあります。
◆医師・一般市民の医薬品および医療に関する意識調査
(2000 年3 月)
◆医薬品および医療に関する患者・医療消費者の課題認識と要望調査
(2003 年3 月)
◆一般市民の医薬品および医療に関する意識調査
(2006 年3 月)
◆医薬品および医療に関する意識調査
(2010 年10 年)
【*2】海外・国内の動向と薬剤疫学文
れを日本独自に追及したり、確認した
献の評価
りすることが出来ない状況にあります。
薬剤疫学研究において日本では、医薬
ただし、公表された論文については、
品使用に関する大規模データベースの
適正に評価し、対応が必要と考えられ
構築およびその整備が欧米に比べて大
る重要な所見が見つかれば、いち早く
幅に遅れているため、欧米から薬剤疫
対策を考えることはできます。そこで、
学的に重要な所見が公表されても、そ
当協議会・薬剤疫学部会内に『海外情
19
報研究会』を設置して、薬剤疫学、統
【*3】医薬品使用症例のデータベース
計学等の専門家の指導と援助を得て、
の構築
薬剤疫学論文の評価を進めています。
薬剤疫学の発展には、本格的な医薬
①米国でセンセーショナルに取上げら
品使用症例のデータベースの構築が必
れたCa 拮抗薬の安全性に関する5
要です。当初、医 療 機 関の中には医
論文の評価研究
薬品を含む各種の医療情報を蓄積して
②ヨーロッパにおいて社会的論争にま
データベースを作っているところがあり
で進展した経口避妊薬
(OC)の安全
ますので、それを利用した研究を行う
性に関する15 論文の評価研究(薬剤
ことにしました。いくつかの病院でト
疫学1998;3
(2):103-119)
ライアルを実施しましたが、蓄積され
③ホルモン補充療法(HRT)に関する
ているデータの質などの問題でうまく
16 論文について、リスクだけでなく
いきませんでした。一方、製薬企業各
骨粗しょう症などの疾病・病態に対
社は、再審 査申請のための使用成績
するベネフィットについての評価研究
調査や特別調査を、また、市販後の安
(薬剤疫学1999;4
(2):149-172)
全性確保のための副作用症例報告など
などがあります。なお、日本では1995
の調査を実施しています。そこで、各
年に日本薬剤疫学会が発足し、現在で
企業が収集した膨大な調査データが利
は薬剤疫学に関する研究発表が増えつ
用できないかと次に考えました。その
つありますので、国内文献も収集、評
結果、再審 査申請のための使用成績
価しています。
調査や特別調査などのデータは利用で
最近では、
「医療用医薬品の安全性監
きることが判明し、関係会員製薬企業
視活動についての対応強化策」
(EMEA:
の協力を得て、先ず降圧薬を対象にし
欧州医薬品審査庁が公表)、
「リスクマ
た大規模のデータベースを構築しました。
ネジメントガイダンス」
(FDA:アメリカ
降圧薬使用成績調査データベース(会員
食品医薬品局が公表)を評価研究し、
11社提供、19 品目、125,657 症例集
2005 年度の改正薬事法施行による市
積)について、循環器系専門の医師、
販後安全対策強化に対処するための情
薬剤師らに検討していただいたところ、
報としています。
データの質
(作成された時期、バイアス、
製剤間の比較など)や調査期間の短さ
20
などの問題はあるものの、治療 実 態
「市販薬のベネフィット・リスクバラン
を反映しており、有用な活用が出来る
ス評価方法の検討—CIOMS Ⅳ 報告
との評価を得ました。その結果を踏ま
を中心にー」として2003 年3 月に公表
えて、副作用発現にかかわる諸要因な
し ま し た。 ま た、CIOMS Working
どの追加解析を行うとともに、会員企
Group Ⅴ
(Pharmacovigilance)の報
業8 社から更なるデータの提供を受け、
告書を翻訳し、2003 年11月にエルゼ
現在24 調査、146,225 症例のデータ
ビア・ジャパンミクスより
「ファーマコヴィ
ベースを構築しています。
ジランスー市販後監視への新しい取り
2003 年に会員企業7 社から経口抗菌
組みー」として刊行、市販しました。さ
剤の使 用成績調査データの提 供を受
らに、イギリスにおける市販医薬品の
け、2007年に7品目91,797症例のデー
安全性評価の方針(SAMM)に基づい
タベースが構築され、データ解析を実
て実施された7編の研究論文を元にし、
施しています。
日本における「市販後安全性研究に関
高脂血症用剤の使用成績調査等データ
するガイドライン」をまとめ、日本薬剤
ベースは2011年3 月に構築され(4 品目
疫学会学術総会で公表するとともに薬
5 調査、32,157 症例)、今後の活用が
剤疫学(2005;10(1):41-52)に投
見込まれています。
稿しました。その後専門家からのご意
なお、2008 年7月に
「使用成績調査等
見も加味し、2006 年9 月に改訂第二
データベース管理規定」を改定して以来、
版として刊行しました。2005 年3 月に
現在
(2014 年5月)までに、7件のデー
製薬企業のためにFDAが公表した、リ
タベース利用申請があり薬剤疫学研究
スクマネジメントプランのための三つの
に活用されています。
ガイダンスを翻訳し、
「FDAのリスクマ
ネジメントプラン 製 薬 企業のための
【*4】医薬品のベネフィットとリスク評
ガイダンス」として丸善から出版しまし
価手法の検討
た。CIOMS Working Group Ⅳ以降、
CIOMS( 国 際 医 学 団 体 協 議 会 ) の
CIOMSの許可を得て和 訳を 刊 行し、
Working Group Ⅳで安全性評価の
2007 年2 月には CIOMS Working
ためのベネフィット・リスクバランスに
Group Ⅵ報告「臨床試験からの安全
ついてまとめており、これを評価して
性情報の取り扱い」、2008 年2 月には
21
CIOMS Working Group Ⅶ報告「開
コビジランスの教育研修
(2005 年か
発段階における定期安全性最新報告」、
ら毎年開催)
2011 年7 月には CIOMS Working
⑥プロトコル作成を行う者への薬剤疫
Group Ⅷ報告を「ファーマコビジラン
学研究に関する教育研修(2005 年
スにおけるシグナル検出の実践」とし
から毎年開催)
て丸善から発売しました。
⑦協議会ネットワークを活用する市販
後調査の支援
【*5】育薬アカデミー
®
製薬企業は、医薬品を開発から市販後
⑧協議会データベースを活用する薬剤
疫学研究の支援
に至るライフサイクルを通して、一貫
性をもって育てるという考えに立つべ
【*6】病院薬剤師を対象とした薬剤疫
きであり、それにはPMSに重点を置き、
学セミナー
そのための人材の育成と組織の拡充を
薬剤疫学の手法やデータベースの応用
図る必要があります。
について理 解と習熟のため薬 剤疫学
企業による医薬品の製造販売後安全確
講 座 を日 本 病 院 薬 剤 師 会と共 催し、
保対策の充実・強化に対応して、当協
全国主要都市で実施してきましたが、
議会での薬剤疫学・監視の情報の蓄積
2001年からは少人数でより医療現場
やネットワークの構築を活かして会員企
に密着したセミナーとして都道府県病
業を支援することを目的に、外部専門
院薬剤師会と共催しました。導き出さ
家の賛同・協力を得て2005 年2 月19
れる結果を臨床の場に反映させるの
日に育薬アカデミー ®を設立しました。
に臨床の現場にいる病院薬剤師の理
事業内容は以下の通りとなっています。
解・協力が必要であるためで、さらに
①市販後調査プロトコル(以下「プロト
コル」)の作成に当たっての相談
2005年からは医療施設ごとのセミナー
の開催も行いました。
②作成されたプロトコルの審査
③シグナルの検出と評価の助言
④安全性問題への対応の相談
⑤製造販売後安全管理を行う者、安
全性問題評価を行う者へのファーマ
22
【*7】製薬企業の市販後調査実務担当
者を対象とした薬剤疫学セミナー
【集中コース】
当協議会会員の製薬企業の市販後調
査実務担当者が、薬剤疫学を日常の業
【*8】薬剤疫学情報センター
務に的確に役立てられることを目的に
(PERC:Pharmacoepidemiology
1997年からセミナーを開催しています。
Research Center)
最近の話題をテーマとした講演、企業
薬剤疫学の啓発、普及と相まって医療
からの市販後調査の報告、薬剤疫学基
機関や製薬企業で薬剤疫学研究を目
礎講座、医薬品適正使用についての研
指す方々へ研究相談、研究プロトコル
究成果の講演など薬剤疫学の造詣を
の作成、研究実施、データ解析までの
深める内容となっています。
相談に応じられるように「薬剤疫学情
報センター」を設置し、インターネット
【初心者セミナー】
上で迅速に回答を行っています。
当協議会会員にかかわらず、製薬企業
の実務経験の乏しい市販後調査実務担
【*9】薬剤疫学解説の講師派遣
当者を対象に市販後調査の意義、薬
薬剤疫学の学習を希望する医療機関な
剤疫学の研究デザイン、病院薬剤師に
どに当協議会認定の講師が出向き講
よる研究の実例を解説し、薬剤疫学に
義を行う活動を2003 年から展開して
関する基本知識の理解を深めてもらい、
います。
「入門薬剤疫学ーなぜ今薬剤
日常業務に活用してもらうよう2003 年
疫学なのかー」
「薬剤疫学と事例紹介」
から東京と大阪で毎年開催しています。
「薬剤疫学研究」などを解説しています。
【実践セミナー】
【*10】「田中研究会」、「医師/ 患者
当協議会会員にかかわらず、製薬企業
コミュニケーション研究会」、「患者向け
の中堅の市販後調査実務担当者を対
医薬品情報研究会」
象とした、ファーマコビジランス、薬剤
医療機関で処方された医薬品を適正に
疫学の実例、医療統計概論を解説し、
使用していない患者さんが多く、この
市販後調査についてより理解を深めて
ために期待通りの効果を発揮していな
もらい、実際の業務に活用してもらう
いケースや、誤用などによる副作用の
ために、2007 年 から2013 年 まで 東
発生も多いといわれ、また、患者さん
京で毎年開催しました。
の医薬品に対する不信感にも根強いも
のがあります。これらの問題は、医療
23
関係者と患者さん間のコミュニケーショ
ン不足による患者さんの情報不足に起
患者さん・ご家族と医療関係者のコミュ
因するものであることが種々の場で指
ニケーションの促進に役立つ個別医薬
摘されています。こうした現状と、医
品情報素材として、専門家の提言を受
薬品の効能・効果や経済的便益などの
けて開発され、数多くの医療機関のト
ベネフィットと副作用などのリスクを患
ライアルを通じてその役割が確認され
者さんに十分に理解してもらう活動が
ました。
世界的に行われていることから、
「医療
*対話促進の媒体として有効
関係者と患者さんとのコミュニケーショ
*医薬品の適正使用に寄与
ンの重要性を広く理解してもらう活動」
*医師/ 薬剤師の連携強化に役立つ
と、そこで必要な「情報や提供システム
当初、
「個別医薬品服薬指導情報集」
の開発研究」 を各種の研究会を組織し
(厚生労働省)に掲載されている500
て具体的活動を検討しました。
「医療
品目から作成され、2000 年には製薬
関係者と患者さんとのコミュニケーショ
企業57 社の協力により約2,400 品目
ンを促進するためにとるべき方策」の
の最新情報がインターネットを通じて医
検討と、「医療機関でどのような情報
療関係者に限定して提供されました。
を、どのようにして患者さんに提供す
2003 年には日本医師会のORCA シス
るのが望ましいか」 の具体策について 「
テムに
「くすりのしおり®」データベースを
田中研究会」(座長:田中靖政氏・学習
提供するとともに
「くすりのしおり®」を
院大学法学部教授)に委託され、併せ
情報公開しました。
て
「医師/患者コミュニケーション研究会」
さらにアンケートの結果で医療関係者
「患者向け医薬品情報研究会」 が編成
からの強い要望があった注射剤の
「くす
され、具体案が提案されました。
りのしおり®」を開発し、内服・外用剤
上記に基づいての事業の展開は、
ちょう
をあわせて全製薬企業に作成、掲載を
どインフォームド・
コンセント時代を迎えて、
依頼しました。一方、バリアフリー対
医薬品情報の正しいあり方を開発すると
策として、在日外国人向けに「くすりの
いう取り組みとなり、世の中に先駆けて
しおり®」英語版を作成し、また、視覚
」RAD-AR カード」など
「くすりのしおり®「
障害者向けに音声化(音声コード付与)
が具体的活動として実施されてきました。
24
「くすりのしおり®」
を図るなど拡充、充実をしてきました。
2005 年1月には参加企業102 社、掲
ジ」の「患者向医薬品ガイド・くすりの
載品目数は約6,800 品目になり、服薬
しおり®」から検索可能になりました。
指導に多く活用され、医薬品情報の標
2010 年4月より
「くすりのしおりデータ
準的素材となってきました。開発から
ダウンロードシステム」を開発し、保険
13年を経過したこと、また、患者さん・
薬局向けには、レセプトコンピューター
ご家族の医療に対する意識の変化に伴
や電子薬歴システムに活用され、一般
い、あるべき姿としての新版が提案さ
向けには医薬品ポータルサイトやモバイ
れました。そこで、2006 年5月から新
ルアプリケーションに利用され、くすり
版
「くすりのしおり®」に変換していくため、
のしおりデータが広く活用されるように
製薬企業の実務担当者に事前説明会
なりました。
や講習会を開催し、参加企業(くすり
2011年7 月には内服外用剤と注射剤
のしおりクラブ会員)の全面的な協力
の作成基準を統一し、今まで異なって
のもと、2008 年10 月を以って新版へ
いた
「くすりのしおり®」のフォーマットが
の切り替え作業が終了しました。また、
統一されることになりました。
厚生労働省医薬食品局 安全対策課の
2014 年5月において参加企業148 社、
要請により、2007年4月から「くすり
日本語版 約13,600 品目、英語版 約
のしおり 」が医薬品医療機器総合機構
3,000 品目の「くすりのしおり®」が掲
の
「医薬品医療機器情報提供ホームペー
載されるに至っています。
®
「くすりのしおり®」開発・推進の経緯
1993 年 8 月 「くすりのしおり」内服剤・外用剤用を開発、大規模トライアル
1997年 6月 「くすりのしおり」トライアル結果を報告書で発表
1997年 8 月 「くすりのしおり」CD-ROM版を発刊
1997年11月 「くすりのしおり」商標登録を取得
1999 年 2 月
ホームページに
「くすりのしおり」を掲載開始
2002 年 2 月
専門委員会により
「くすりのしおり」注射版の作成基準完成
2002 年10 月
副作用用語集をホームページに掲載
2003 年 1月
日本医師会ORCAシステムとの連動開始、パスワード管理を廃止
2003 年 7月 「くすりのしおり」英語版のフォーマット完成
2003 年 8 月
副作用用語集を出版
25
2003 年 9 月 「くすりのしおり」注射版のフォーマット説明会開催(84 社参加)
2004 年 1月
薬価収載品目の17,000品目をリストアップ。
「くすりのしおり」ホー
ムページへの掲載品目数拡大に向けて関係企業に活動を全面展開
2005 年 1月 「くすりのしおり」あり方検討会がスタート
2005 年 2 月 「くすりのしおり」内服剤・外用剤用の作成基準完成
2005 年 6月 「簡潔! くすりの副作用用語事典」用語データを公開
2005 年 7月 「くすりのしおり」全てにSP コードを添付、音読が可能に
2005 年 9 月 「くすりのしおり」あり方検討会より提言
2005 年11月 「くすりのしおり/ インデックス版」を公開
2005 年11月
新版「くすりのしおり」実務担当者向けの事前説明会(11/22、
12/5)93 社参加
〜12 月
2006 年 1月
記者説明会開催『新版「くすりのしおり」に期待するもの』
2006 年 1月
新版「くすりのしおり」テンプレート入力講習会を開催、東京
〜2 月 (1/31)・大阪(2/2)
、86 社参加
2006 年 4月
新版「くすりのしおり」ホームページで運用開始
2006 年 9 月 「医薬品医療機器情報提供ホームページ」とのリンクについて説明
会を開催(9/22)89 社参加
2007年 4月 「医薬品医療機器情報提供ホームページ」にて、「患者さん向医薬品
ガイド・くすりのしおり」検索ページ公開
2007年 5月
AskDoctors(ソネットM3)と提携
2007年 5月
iyakuSearch(JAPIC)にリンク
2007年 7月
安心処方「infobox」
(IMS ジャパン社安全性情報サイト)とリンク
2007年 8 月
HP 上の「くすりのしおり」から医薬品の効能・効果が検索可能に
2007年10 月
新版「くすりのしおり」へ移行完了
2007年10 月
英語版「くすりのしおり」新システム稼働開始
2008 年 4月
薬剤情報書作成メーカーに薬剤情報提供書向けコンテンツ提供
2010 年 4月 「くすりのしおりデータダウンロードシステム」サービス開始
2011年 6月
くすりのしおり作成基準第三版施行
2012 年 3 月
くすりのしおりシステム改訂
2013 年 6月 「くすりのしおり」ホームページ検索機能の充実
2014 年 3 月 「くすりのしおり」副作用用語事典の見直し
くすりのしおり管理登録システムへ副作用用語の検索機能を追加
26
「コンコーダンス指向くすりのしおり:
みを開発し、2007 年7月に「コンコー
あなたの病気とくすりのしおり 」
ダンス指向くすりのしおり—あなたの
2005 年1月から5 回にわたって開催さ
病 気とくすりのしおり®:高血 圧 編」、
れた
「『くすりのしおり 』あり方検討会」
2008 年10 月に「糖尿病編」、2010
の提言を受けて、
“患者さんと医療関
年6 月に「小児喘息編」のウェブサイト
係者が対等な立場で議論し、患者さん
を開設しました。
自身が治療方針や適切な医薬品を選
2013年6月
「くすりのしおり®」ホームペー
択していく”という理念の下、2006 年
ジのリニューアルに伴い、これまでの
「コ
から
「くすりのしおり®」の新たな活用方
ンコーダンス指向くすりのしおり」ペー
法について検討を始めました。その結
ジにかわり、
「くすりのしおり®とコンコー
果、
「くすりのしおり®」と疾患の情報
ダンス」のページを新設しました。
®
®
を結びつけて患者さんに提供する仕組
「コンコーダンス指向くすりのしおり:あなたの病気とくすりのしおり®」開発・推進の経緯
2005 年 1月 「くすりのしおり」あり方検討会がスタート
2005 年11月 「くすりのしおり」あり方検討会の提言、以降、協議会内で検討開始
2006 年11月
専門委員会による検討開始、第一弾は「高血圧」で決定
2007年 1月 「コンコーダンス指向くすりのしおり」に名称決定
2007年 7月 「コンコーダンス指向くすりのしおり『あなたの病気とくすりのしおり:
高血圧編』」公開
2008 年10 月 「コンコーダンス指向くすりのしおり『あなたの病気とくすりのしおり:
糖尿病編』」公開
2010 年 6月 「コンコーダンス指向くすりのしおり『あなたの病気とくすりのしおり:
小児喘息編』」公開
【*11】RAD-AR
(レーダー)
カードの発行/
しました。No.1〜11ま で 延べ2,100
「くすりと健康のハンドブック」の出版
万枚を配布しました。No.9では高齢
医薬品を使用するときの一般的な留意
者とその家族向け、No.10は小児向け
事項を患者さんに伝えるやさしいリーフ
(保護者の方へ)、No.11は小児向け
(小
レットを毎年製作し、医療機関に配布
学校高学年向け)、No.12は女性向け
27
と分けてそれぞれ特に注意すべき点を
月に出版しました。本事典は、①医療
説明しています。更に、これまで発行
関係者および企業の医薬品情報担当
してきたRAD-AR
(レーダー)カードを集
者が患者さんとのコミュニケーションツー
約するとともに、健康、運動、医療の
ル
(くすりのしおり®など)を作成する際
受け方などを加えて総合的な内容とし
に活用できる、②初期症状の英語対訳
て
「くすりと健康のハンドブック」を出版
によって、医療機関を訪れる外国人へ
しています。
(2004 年3 月)
の資料作りや対話の一助となる、③医
療関係者が患者さんから自覚症状を聞
【*12】薬価基準収載医薬品を対象と
いたとき、その医薬品の副作用の早期
した副作用用語集
発見につながる、④患者さん自身が副
全ての薬価基準収載医薬品の添付文書
作用に起因するかもしれない症状に関
にある
「副作用」に記載の副作用を検索
心を持ち、何か変だなと気づいたとき、
して約4,800 語を 選び 出し、JAPIC、
医療関係者との積極的な対話のきっか
製薬協、東薬工の協力を得て、副作用
け作りになる、を目的としています。
用語に対応する初期症状の表現を検討
し、また、高橋隆一氏
(医薬品機構)の
監修を得て逐一平易な表現とした事典
(英語対訳付き)
「簡潔!くすりの副作用
【*13】薬剤疫学解説書の出版
薬剤疫学の啓発・普及のため、解説書
などを作成し、出版しています。
用語事典」
(ポケット版)を、2003 年8
◆当協議会海外情報研究会で日本で初めて薬剤疫学を理解し易い解説書を編集。
『薬剤疫
学への第一歩—事例と方法—』
(2001 年9 月 エルゼビアサイエンス・ミクス)
◆当協議会の広報誌「RAD-AR
News」でシリーズで薬剤疫学を解説。『入門「薬剤疫学」』、
『実践「薬剤疫学」
』、『MRのための市販後調査(PMS)と薬剤疫学』、『MRのための実践
薬剤疫学』、『社会と薬学の狭間で』、『薬剤師による薬剤疫学の実践』の各小冊子
◆薬剤疫学ってなあに?
(2004 年1 月 エルゼビアジャパン)
◆実例で学ぶ薬剤疫学の第一歩
(2008 年10 月 丸善)
【*14】
「ピクトグラム」の発行
28
要な医薬品情報』と『患者に必要な医
1991年9 月、協議会の委託研究会
(座
薬品情報』に関する研究」では、協議
長:田中靖政学習院大学名誉教授)か
会のとるべき行動として
「医薬品の扱い
ら出された中間報告「『医療関係者に必
方を示すビジュアル文字の開発」が提
言されました。2000 年11月には厚生
【*15】くすり教育の指針・教材の作成、
省医薬安全局がまとめた『医薬品に関
および公開
連する医療事故防止対策
(案)に寄せら
どんなに健康を願っても、一生のうち
れた意見について』に
「絵文字による記
何度かはくすりを使わざるを得ません。
載が必要」とあります。これらを踏まえ、
児童・生徒の頃に、健康の大切さと、
アメリカのUSPの“くすりの絵文字”を
くすりを正しく使用するための判断力
参考にユニバーサル・デザイン・フォー
を養う教育が必要との考えから
「くすり
ラムの協力を得て、子どもから高齢者
教育」に取り組んでいます。
まで誰もが一目で理解できるピクトグ
日本では、正規のくすり教育は高等学
ラムの原案作成を進めました。そして、
校で初めて行われていたのに対し、イ
2004 年2 月、一般人を対象に行った
ギリスをはじめフランスやアメリカなど
アンケート調査結果で80%以上の認識
の欧米では小学校から系統的にカリキュ
度をクリアできた28 種類について公表
ラムが組まれており、児童・生徒のく
しました。
すりに対する正しい知識は、我が国と
その後、保険薬局でのトライアルの結
欧米諸国では大きく差がついています。
果、絵文字で表現するアイディアは高く
協議会では、2002 年に「児童を対象
評価されましたが、種類が少ない、意
とする医薬品の適正使用の推進会議」
味が十分に通じない絵文字がある、副
を立ち上げ、国内外の教育実践事例の
作用の 絵 文 字も必要などの意 見・提
調査、分析を行い、我が国での標準的
案があり、併行して協議会内に
「ピクト
なくすり教育を提案する
「児童および青
グラム懇話会」を立ち上げ、各界の専
少年のくすり教育プログラムガイド」を
門家と共にさらに検討しました。この
まとめました。
2 年間のトライアルや検討結果を踏ま
2004 年には、くすり教育の実現に向
え、既存の28 種類に訂正・追加を行
けて「児童くすり教育専門委員会」を立
い、2006 年7 月に51 種類を発表し、
ち上げ、前述のガイドに則った教育カ
さらに在日外国人を対象に5カ国語
(英
リキュラムを作成、その教材として120
語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語、
枚に上る「パワーポイント・ライブラリー」
中国語)に翻訳したピクトグラムを開発
を構築しました。
し公表しています。
2005 年9 月には、メディアを通じて、
29
開発した教材を公表すると同時に、教
に使い勝手が良いように改良しました。
材が広く使用されるように「くすり教育」
これは、のちに消費者教育教材として
ホームページを新たに立ち上げました。
「優秀賞」を受賞しています。
(http://www.rad-are.com)公開当
また、2007 年度に、厚生労働省が初
初は約120 枚のパワーポイント・スライ
めて「くすり教育」に着手し(医薬品適
ドの提供が主でしたが、2008 年から
正使用啓発推進事業)、啓発資材を作
はスライドに加えて、くすりの正しい使
成するにあたっては、当協議会のパワー
い方に関する実験、授業実践例などを
ポイント・スライドが活用されました。
提 供しています。また、2013 年度か
この資材は、2008 年度初めに全国の
ら充実が図られた高等学校学習指導
薬剤師会、学校薬剤師会に配信されま
要領での学習内容に合わせ、高校生版
した。
パワーポイント・スライドを作成、公開
このような状況下で新学習指導要領が
しました。2014 年5 月末までに延べ
公示され、2012 年度からは全国の中
6,700人が「くすり教育」ホームページ
学校にて医薬品が新たに教育内容に組
にユーザ登録を行いました。
み込まれることになり、2013 年度か
らは高等学校でも従来の教育内容がレ
【*16】くすり教育の普及
30
ベルアップしました。
ホームページから教材を提供する一方
学習指導要領では医薬品は科目
「保健」
で、学校内で日々児童・生徒にかかわり、
で扱われるため、教育者は保健体育教
くすり教育を実施するのは養護教諭で
諭となりますが、より良い医薬品の授
あるとの認識から、2006 年からは学
業
(保健学習)に繋げてもらうには、保
校薬剤師、養護教諭を対象とした普及
健体育教諭の授業進行のもと、養護
活動を開始しました。全国の大多数の
教諭がコーディネーターとなり、薬の専
小学校が購読する小学保健ニュースな
門家である学校薬剤師がサポートする
どの教育系メディアへの記事掲載を行
形が理想と考えました。
う一方、2007 年には当初開発したパ
このことから、
「教育者の育成」を集中
ワーポイント・スライドを、効き方や種
的に行うため、2008 年にくすり教育
類などの最も基 本的な14の項目別に
の教育者を対象とする出前研修を始め
組み立てて授業例をつけ、教育者に更
ました。研 修の講 師は協議 会が認定
した「くすり教育アドバイザー」であ
①医師/ 患者さんのコミュニケーション
り、委員会委員や会員社社員OBから
の具体的な糸口を作るガイドライン
構成されています。そして、2014 年
5 月末時点で28 名のアドバイザーが
積極的に活動しています。2013 年度
は12 件、約800 名の教育者を対象に、
くすり教育を取巻く環境や授業の一例
を内容とする研修を行いました。また、
昨今、一般生活者を対象とした研修会
の要望が増加傾向にあり、一般生活者
の策定
②医薬品に関する患者さんとの対話に、
医師の積極的関心を引き出すサポー
ト・プログラム
③患者さんの医薬品に対する関心を高
める運動の展開
④医薬品の扱い方を示す
「ビジュアル文
字」の開発
向け啓発活動の本格始動に向け、「く
⑤患者さん向け医薬情報の整備
すりの10 ヵ条」をまとめました。
⑥医師向けのアカデミック・サポート・
システムに含まれるべき情報に関す
【*17】シンポジウムの開催
田中研究会(P23—*10)では1991
年9 月の中間報告で関係者の連携によ
る提言
⑦一般向けの実践的な情報プログラム
の展開
る「医薬品の適正使用にかかわるシス
⑧ジャーナリスト向けの医学・医療に関
テムづくり」を促す触媒としての具体
するセミナーやワークショップの開催
的な行動の展開を提言しました。関係
そして、医療関連職能団体、行政当局、
者とは、患者さん、医師、薬剤師、看
製薬企業団体、患者さん・ご家族、ジャー
護師、製薬企業、薬事・医療行政関係
ナリズム関係者に対してそれぞれの配
者、およびマスメディアを想定してい
慮を求めていく努力をすべきであると
ました。そこでの事業は次のことが提
謳われました。
案されました。
◆医療関連職能団体への働きかけ
日本薬学会、日本薬剤師会・学術大会、日本医療薬学会、日本臨床内科医会の学会開
催時に共催で「患者さんへの医薬品情報のあり方」に関するテーマを基本に、市民公開シ
ンポジウムを開催し、薬剤師、医師に配慮を求めてきました。長年にわたり、
「患者さん
が意欲的に治療に参加するには何が大切で何が必要かなど、関係者が認識を共有していく」
31
「患者さんが望むこと、改善すべきことなどをその場で意見表明する」を訴えてきましたが、
最近一定の成果が得られたと判断し、学会との共催のシンポジウムを終了しました。
◆患者さん・ご家族を対象とした啓発シンポジウム
これまで医療を受身としてきた患者さんが医療の主体として自立的に医療に参加するこ
とが求められるようになってきた今日、
「賢い患者さんになろう」を合言葉とする患者さん
団体の活動も目に付くようになり、当協議会もさらに一歩踏み込んで行なうべき事業が
あるのではないかとの発想から、確実に片方の足は患者さんの世界に踏み入れ、もう一
方の足は医療関係者の世界において事業を推進する考えで、
「医療シリーズシンポジウム」
を開催することにしました。これは、一般市民を対象に「くすりを学ぶ」をテーマとして取
り上げ、ゲスト講演にくすりのクイズを加えて患者さん・ご家族に正しいくすりの知識の
普及を目的に開催しました。医療シリーズを終了後は、地域に根付いた新しい形として地
域薬剤師会の協力を得て、地方自治体の健康講座などとジョイントした「くすり相談」を
中心とした地域密着型の小規模なシンポジウムを開催しました。一般市民に密着し、行
政に対しても健康の中に薬があることを認識してもらうこと、薬剤師が地域に根付いて
くすりを教える必要性を訴えるものでもありました。これをきっかけに2008 年から当
協議会のミニシンポジウムのノウハウと資材(パワーポイント・スライド)を活用して、
地域薬剤師会と地方自治体が独自に地域密着型ミニシンポジウムを開催しています。
現在は当協議会の所在する東京都中央区を中心に活動を行っており、
「子どもとためす環
境まつり」への出展、また、自治体や地域薬剤師からの依頼に対し講演会を行っています。
今後も独自開催のためのノウハウ、資材提供などを行いサポートしていく予定です。
【*18】 NCPIE(National Council
32
【*19】
日本 薬 剤疫学会、国際 薬 剤
on Patient Information and
疫学会
(ISPE:International Society
Education:全米患者情報教育協議会)
for Pharmcoepidemiology)
NCPIEは医薬品に関する患者さんの教
「市販後安全性研究に関するガイドライ
育についての問題に取り組む非営利団
ン」を学術総会で発表、のち学会誌に
体です。医療関係者、消費者、ボランティ
投稿し広く告知し批判を仰ぎ、その後、
ア、製薬企業、政府機関など100 以上
改訂版を発表しました。
の団体から構成されています。NCPIE
薬剤疫学の世界的水準に立ち遅れる
は、私共の活動と同様にくすりの適正
ことのないように、国際薬剤疫学学会
使用を推進していますので、当協議会
に主要メンバーを継続して派遣し、最
として2 年ごとに開かれる総会にも出
新の知見や関連情報の入手に努めてい
席するなど、密接な関係を保持してい
ます。また、本学会で発表した降圧剤
ます。
データベースを用いた薬剤疫学研究成
果は機関誌“Pharmacoepidemiology
of concomitant treatment with a
and Drug Safety”に投稿し、
“A pilot
CYP3A4 inhibitor and a calcium
study to build a database on
channel blocker”が2008; 17:70-
seven anti-hypertensive drugs”
75 に掲載されました。
が 2005;14: 41-46 に、“ Effect
33
6
主な出版物
これまでの刊行物一覧
● 医薬品の安全性向上をめざして
1989 年10 月
●「医療関係者に必要な医薬品情報」
と「患者さんに必要な医薬品情報」
に関する研究
1991 年 9 月
● アメリカ/カナダ薬剤疫学データベース調査団報告
1993 年 2 月
● 医薬品の正しい使い方の推進と患者さんに提供する医薬品情報
1993 年 8 月
● 患者さんに提供する医薬品情報と医薬品に関する患者さん教育の向上に向けて 1993 年11 月
● 薬剤疫学の基本的概念と実際的応用
1993 年11 月
● 国際シンポジウム「薬剤疫学と人間社会」
記録集
1996 年 3 月
● 患者さんに対する医薬品情報の提供とその効果
1996 年 3 月
● 薬剤疫学論文の評価研究(その1
1996 年12 月
Ca 拮抗薬)
● 対話のある医療めざして
● 薬剤疫学論文の評価研究(その2
●「RAD-AR
経口避妊薬)
くすりの手引き」No.1
● 薬剤疫学論文の評価研究(その3
● 入門
1997 年 6 月
ホルモン補充療法)
薬剤疫学
1998 年 3 月
1999 年 2 月
1999 年 3 月
1999 年 4月
● RAD-AR 活動のあり方に関する検討会報告書
2000 年 1 月
● 医師・一般市民の医薬品および医療に関する意識調査報告書
2000 年 3 月
● 第19 回医療情報学連合大会共催シンポジウム
「医薬品情報と市販後調査」 記録集
● 実践
2000 年 3 月
薬剤疫学
2000 年 5 月
● 市販後のベネフィット・ リスクバランス−安全性シグナルの評価−
34
−CIOMS Working GroupⅣ報告書−
2000 年 6 月
● 第1 回コミュニケーション研究会
2000 年 6 月
記録集
● MRのための市販後調査(PMS)
と薬剤疫学
2001 年 3 月
● 第2 回コミュニケーション研究会記録集
2001 年 7 月
● 薬剤疫学への第一歩 −事例と方法−
2001 年 9 月
● 日本RAD-AR 協議会の新組織構築に関する答申書
2002 年 1 月
●「くすりのしおり・注射版」
作成基準
2002 年 1 月
● 使用成績調査等の情報のデータベース構築
(降圧薬を用いたパイロット研究)
2002 年 2 月
● 薬剤疫学論文の評価研究(その4
2002 年 2 月
● RAD-AR カード
ホルモン補充療法)
No.1 〜 No.12(毎年度発行)〜
● MRのための実践薬剤疫学
● 市販薬のベネフィット・ リスクバランス評価方法の検討
2002 年 7 月
2002 年 6月
−CIOMS Working Group Ⅳ報告を中心に−
2003 年 3 月
● 降圧剤の使用成績調査のデータベース構築研究−最終報告−
2003 年 7 月
● 薬剤疫学
2003 年 7 月
● 簡潔!
社会と薬学の狭間で
くすりの副作用用語事典〜英語対訳付き〜
● ファーマコヴィジランス--- 市販後監視への新しい取り組み
2003 年 9 月
−CIOMS Working Group V 報告書−
2003 年11 月
● 薬剤疫学ってなあに?くすりの効用とリスクを考える
2004 年 1 月
● 児童および青少年のくすり教育プログラムガイド
2004 年 3 月
● くすりと健康について、くすりになる話
2004 年 3 月
● 海外で市販後に実施された安全性に関する調査研究論文の紹介
−SAMM ガイドラインに基づく−
2004 年 3 月
● 薬剤師による
2004 年 7 月
薬剤疫学の実践
● −Guidance for Industry − Draft Guidance 翻訳と原文
−海外情報研究会−
● <<EMEAの安全性諸問題への対応強化>> 翻訳と原文
−海外情報研究会−
● 市販後安全性研究に関するガイドライン−海外情報研究会−
● Guidance
for Industry
−FDAのリスクマネジメントプランのためのガイダンス−
2004 年10 月
2005 年 2 月
2005 年 3 月
2005 年 6 月
35
● ファーマコヴィジランスを理解するために
2005 年 7 月
●「くすりのしおり」
あり方検討会 −報告書−
2005 年 9 月
● FDAのリスクマネジメントプラン
製薬企業のためのガイダンス 2005 年10 月
● 一般市民の医薬品および医療に関する意識調査〈概要〉
2006 年 1 月
● 新版「くすりのしおり」
作成基準(内服剤・外用剤)
2006 年 2 月
● 一般市民の医薬品および医療に関する意識調査〈報告書〉
2006 年 3 月
● 経口抗菌剤の使用成績調査のデータベース構築研究 −中間報告− 2006 年
7月
● くすりの絵文字「ピクトグラム」
活用マニュアル
2006 年 7 月
● 臨床試験からの安全性情報の取り扱い
−CIOMS Working Group Ⅵ 報告書−
2007 年 2 月
● 経口抗菌剤の使用成績調査データベースの構築−最終報告書−
2007 年 6 月
● 開発段階における定期性安全性最新報告(DSUR)
−CIOMS Working Group Ⅶ 報告書−
2008 年 2 月
● 実例で学ぶ薬剤疫学の第一歩
2008 年10 月
● 診療情報データベースに対する診療医の意識調査
2010 年 3 月
● RAD-AR 活動のあり方に関する検討会報告書
2011 年 2 月
● くすりのしおり作成基準 第三版
2011 年 6 月
● 高脂血症用剤の使用成績調査等のデータベース構築研究 −報告書−
2011 年 6 月
● ファーマコビジランスにおけるシグナル検出の実践
−CIOMS Working Group Ⅷ 報告書−
2011 年 7 月
● くすり教育のヒント〜中学校学習指導要領をふまえて〜
2012 年 6 月
● DVD
「医薬品とは−高等学校医薬品教育用教材」
2012 年11 月
● 降圧剤使用成績調査データベース報告書
2014 年 3 月
● 広報誌
RAD-AR News No. 1 〜 106
(No. 73まで年6 回発行、 No. 74から年4 回発行に変更。増刊号は随時発行)
36
MEMO
MEMO
MEMO
くすりの適正使用協議会とは
平成17年 12月22日
初版発行
平成26年 7月10日
第12刷
発 行
くすりの適正使用協議会
〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町一丁目4番2号 日本橋Nビル8階
TEL.03-3663-8891 FAX.03-3663-8895
URL http://www.rad-ar.or.jp/ くすり教育 http://www.rad-are.com