SR Research Report 2014/12/26 メディネット(2370) 当レポートは、掲載企業のご依頼により弊社が作成したものです。投資家用の各企業の『取扱説明書』を提供 することを目的としています。正確で客観性・中立性を重視した分析を行うべく、弊社ではあらゆる努力を尽 くしています。中立的でない見解の場合は、その見解の出所を常に明示します。例えば、経営側により示され た見解は常に企業の見解として、弊社による見解は弊社見解として提示されます。弊社の目的は情報を提供す ることであり、何かについて説得したり影響を与えたりする意図は持ち合わせておりません。ご意見等がござ いましたら、[email protected] までメールをお寄せください。ブルームバーグ端末経由でも 受け付けております。 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 目次 直近更新内容............................................................................................ 4 概略 .................................................................................................... 4 業績動向 .............................................................................................. 7 事業内容 ............................................................................................... 12 概要 .................................................................................................. 12 ビジネス ............................................................................................ 13 ビジネスモデル .................................................................................... 20 市場とバリューチェーン......................................................................... 26 過去の財務諸表 ....................................................................................... 35 損益計算書 ......................................................................................... 41 貸借対照表 ......................................................................................... 44 キャッシュフロー計算書......................................................................... 45 その他情報 ............................................................................................ 47 沿革 .................................................................................................. 55 ニュース&トピックス ............................................................................ 57 トップ経営者 ....................................................................................... 80 従業員 ............................................................................................... 81 大株主 ............................................................................................... 81 配当及び株主還元 ................................................................................. 81 ところで ............................................................................................... 82 用語集 ............................................................................................... 82 企業概要 ............................................................................................ 87 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 2/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 損益計算書 10年9月期 11年9月期 12年9月期 13年9月期 14年9月期 15年9月期 (百万円) 連結 連結 連結 連結 連結 会社予想 売上高 3,202 2,674 2,191 2,110 1,844 2,000 前年比 10.4% -16.5% -18.1% -3.7% -12.6% 8.5% 売上総利益 2,173 1,680 1,153 1,026 826 -19.5% 前年比 7.7% -22.7% -31.4% -11.0% 67.9% 62.8% 52.6% 48.6% 44.8% 営業利益 334 -304 -711 -878 -1,407 -1,800 前年比 13.7% - - - - - 営業利益率 10.4% - - - - - 366 -353 -711 -952 -1,339 -1,800 売上総利益率 経常利益 前年比 13.1% - - - - - 経常利益率 11.4% - - - - - 当期純利益 439 -543 -625 -348 -1,581 -1,810 78.4% - - - - - 63,276 73,276 73,276 87,333 88,333 6.9 -7.6 -8.5 -4.3 -17.9 - - - - - 前年比 1株当りデータ(円、株式分割調整後) 期末発行済株式数(千株) EPS EPS (潜在株式調整後) DPS - - - - - BPS 60.9 74.9 67.2 118.6 95.7 -20.5 貸借対照表 (百万円) 現金・預金・有価証券 流動資産合計 有形固定資産 投資その他の資産計 無形固定資産 資産合計 買掛金 短期有利子負債 流動負債合計 2,962 1,859 1,522 2,081 2,111 3,828 5,743 4,395 8,430 6,596 544 630 489 447 804 1,321 1,442 2,180 3,109 2,256 67 209 250 257 292 5,760 8,024 7,314 12,242 9,947 142 137 120 131 111 5 800 800 800 800 1,286 883 1,356 1,199 1,281 1,000 1,000 1,000 0 0 負債合計 1,904 2,538 2,392 1,873 1,468 純資産合計 3,855 5,486 4,922 10,370 8,479 1,005 1,800 1,800 800 800 長期有利子負債 有利子負債(短期及び長期) キャッシュフロー計算書 (百万円) 営業活動によるキャッシュフロー 528 -252 -338 -516 -1,020 投資活動によるキャッシュフロー -74 -722 -884 582 -1,156 財務活動によるキャッシュフロー 1,113 2,869 -15 3,994 406 財務指標 9.1% -7.9% -8.1% -3.6% -14.2% 自己資本純利益率(ROE) 総資産利益率(ROA) 12.2% -11.6% -12.0% -4.6% -16.8% 純資産比率 66.9% 68.4% 67.3% 84.7% 85.2% 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 3/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 直近更新内容 概略 2014 年 12 月 22 日、株式会社メディネットは、台湾 EMO BIOMEDICINE CORP.に技術導 出するライセンス契約締結に関して発表した。 (同社リリース文へのリンクはこちら) 同社が開発し、権利を有する「抗原提示細胞の活性化処理方法」 (EP1930414)を、台湾の EMO BIOMEDICINE CORP.(艾默生物醫學股份有限公司、以下、EMO 社)に技術導出する ライセンス契約を締結した。 契約の内容および理由 EMO 社は、TFDA(台湾衛生福利部食品薬物管理署)、MOEA(台湾經濟部)、と TAF (TaiwanAccreditation Foundation:台湾認證基金會)より承認を取得した検査サービスや 細胞加工受託サービスなどを提供している企業である。 同社リリース文によれば、同社は、これまで大学や地域中核医療機関等との研究開発により、 がん抗原を効率的に樹状細胞に取り込むことで、CTL(がん細胞を狙い撃ちする役割を持つT 細胞)を大量に誘導できる処理方法(抗原提示細胞の活性化処理方法)を確立している。同 処理方法は、樹状細胞をビスホスホネートの一種であるゾレドロン酸と、外科手術で摘出し たがん組織またはがん抗原ペプチドで共感作させることで、従来の方法に比べ、CTL の誘導 を最大で 100 倍まで向上させることが可能となり、また、同社がアジア・パシフィック地域 に独占実施権を有する「セル・ローディング・システム」を組み合わせて用いることで、CTL 誘導能が更に向上することで、高い治療効果が期待されている。 今回導出する「抗原提示細胞の活性化処理方法」は、欧州 11 か国などでも特許が成立してお り、当該契約に基づき、同社は同処理方法を EMO 社に技術導出する。EMO 社は同社より技 術導出を受けた同処理方法を用い樹状細胞ワクチンに係る臨床試験の実施を台湾で進め、規 制当局からの承認取得を目指す。将来、同処理方法に基づき承認を受けた製品が台湾で市販 される際には、売上に応じてロイヤルティ収入を同社が得ることになっている。 EMO 社の概要 Ÿ 名称:EMO BIOMEDICINE CORP.(艾默生物醫學股份有限公司) Ÿ 事業内容:細胞加工受託サービス、検査請負、研究開発受託(SOP作成、抗腫瘍活性測 定)、試薬販売など Ÿ 資本金:NT$90百万(3.2億円) Ÿ 設立年月日:2004年1月15日 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 4/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2014 年 12 月 19 日、同社への取材を踏まえ、レポート内容を更新した。 2014 年 11 月 21 日、同社は、国立大学法人九州大学の共同研究部門において難治性悪性腫 瘍に対する免疫細胞療法に関する臨床試験を開始したと発表した。 (同社リリース文へのリンクはこちら、九州大学のリリースはこちら) 同社は、国立大学法人九州大学の共同研究部門制度を活用して、九州大学先端医療イノベ ーションセンターに「先進細胞治療学研究部門」を設置し、共同研究を推進しているが、こ の度、共同研究部門において、難治性悪性腫瘍に対する免疫細胞療法(CA-MED-NK001 療 法)に係る臨床試験を開始することとなった。 当該臨床試験は、同社が開発した NK 細胞などの培養技術を用いて、難治性悪性腫瘍に対す る免疫細胞療法(CA-MED-NK001 療法)に係る安全性の確認と用量漸増(どの程度の数の 目標細胞が安全に投与できるのか)の評価を主目的とし、抗腫瘍効果の評価を副次的に行う。 同社は、今後共同研究部門においては、当該臨床試験で得られたエビデンスやプロトコール を活用し、2014 年 11 月 25 日に施行される予定の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及 び安全性の確保等に関する法律」の下、先進医療の承認取得や再生医療等製品の一つである 細胞医療製品としての承認獲得に発展させることを目指すとしている。 2014 年 11 月 13 日、同社は、2014 年 9 月期通期決算を発表した。 (詳細は 2014 年 9 月期通期決算項目を参照、決算短信へのリンクはこちら) 2014 年 10 月 29 日、同社は臨時株主総会における株主提案議案の承認可決によるる役員の 異動及び代表取締役の異動に関して発表した。 (リリース文のリンクはこちら) 同社は、同日開催の臨時株主総会において、株主提案議案が承認されたことにより、役員の 異動が生じるとともに、同日開催の取締役会において代表取締役社長の異動について決議し た。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 5/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 代表取締役の異動 (新任)氏名:木村佳司氏 新・役職名:代表取締役 会長兼社長 (旧・役職名:取締役 会長) (退任)氏名: 伊木 宏氏 旧・役職名:代表取締役社長 兼 CP テクノロジー事業本部長 3 ヵ月以上経過した会社発表はニュース&トピックスへ http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 6/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 業績動向 四半期実績推移 四半期業績推移 13年9月期 (百万円) 14年9月期 14年9月期 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 売上高 517 508 536 549 527 472 419 426 YoY -4.8% -11.1% -1.1% 2.8% 1.9% -7.2% -21.8% -22.3% 売上総利益 YoY 売上総利益率 241 240 273 272 265 234 161 166 -17.8% -25.3% 1.3% 1.3% 9.8% -2.2% -41.2% -39.0% 38.9% (達成率) 通期会予 102.4% 1,800 -14.7% 46.6% 47.1% 51.0% 49.5% 50.2% 49.7% 38.3% 販管費 418 484 511 490 552 557 559 565 YoY -10.6% 3.7% 3.5% 12.5% 32.1% 15.1% 9.3% 15.2% 80.8% 95.2% 95.3% 89.4% 104.8% 118.1% 133.3% 132.5% -177 -245 -238 -219 -287 -323 -398 -399 YoY - - - - - - - - - 営業利益率 - - - - - - - - - 売上高販管費比率 営業利益 経常利益 - - -1,430 -139 -347 -246 -220 -273 -365 -403 -297 YoY - - - - - - - - - 経常利益率 - - - - - - - - - 四半期純利益 - -1,460 -141 254 -235 -227 -283 54 -407 -945 YoY - - - - - - - - -1,060 - 利益率 - - - - - - - - - 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 **会社予想は直近の値。 2014 年 9 月期通期実績 2014 年 9 月期の売上高は、前期比 12.6%減の 1,844 百万円となった。免疫細胞療法総合支 援サービスの売上や受託研究売上等が前期比で減少した。 2013 年 12 月に、転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」を開発する米国 Argos Therapeutics 社との間でライセンス契約を締結し、日本国内での「AGS-003」の開 発及び製造の独占的許諾を獲得し、それに伴い一時金を支出した。 「AGS-003」の開発パイプ ライン獲得に係る研究開発費等により 2014 年 9 月期の研究開発費は、前期比で 141 百万円 (27.1%)増加した。 研究開発活動の成果として、2014 年 9 月期において以下の特許が成立した。 Ÿ 「抗原提示細胞の活性化処理方法」:欧州11カ国、オーストラリア、日本に加えて米国 を追加 Ÿ 「CTLとγδT細胞の同時誘導方法」:日本での特許が成立 新たな事業展開に向けた取り組みの中で既存事業に係る営業活動については一層の効率化を 図っていることから、2014 年 9 月期の販売費については、前期比で 96 百万円(24.5%)減少 した。また、細胞加工業及び細胞医療製品事業の推進・展開を図るための戦略的投資等によ り、一般管理費については、前期比で 284 百万円 (28.6%)増加した。以上の結果、2014 年 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 7/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 9 月期の販売費及び一般管理費は 2,233 百万円(前期比 329 百万円増、17.3%増)となった。 売上高の減少に加え、販売費及び一般管理費の増加により、営業損失は 1,407 百万円(前期 は営業損失 878 百万円)、経常損失は 1,339 百万円(前期は経常損失 952 百万円)となった。 投資有価証券売却益 440 百万円を計上したことから、当期純損失は 1,581 百万円(前年同期 は当期純損失 348 百万円)となった。 各事業セグメントの状況は以下の通りである。なお、当 2014 年 9 月期第 1 四半期より、従 来の単一セグメントから、「細胞加工業」および「細胞医療製品事業」の 2 区分に変更した。 細胞加工業:売上高 1,841 百万円、セグメント利益 22 百万円 細胞加工業については、当面は、細胞加工業への移行を検討している免疫細胞療法総合支援 サービス売上が収益の柱となっている。2014 年 9 月期においては、既存契約医療機関の患者 数、細胞加工件数が減少したことにより、サービス売上が減少した。一方、技術開発投資の 適正化や営業活動の効率化により、営業費用の削減を行った。 細胞医療製品事業:売上高 3,003 千円、セグメント損失 723 百万円 2014 年 9 月期において、米国 Argos Therapeutics 社が開発を進めている転移性腎細胞がん を対象とする細胞医療製品「AGS-003」の日本国内における開発、製造権を獲得するための 契約一時金による研究開発費が発生した。収益として、細胞医療製品の可能性の評価を行う ため、免疫細胞治療に係る先進医療を実施している契約医療機関に対して免疫細胞療法総合 支援サービスを提供し、サービス売上を計上した。 過去の四半期実績と通期実績は、過去の財務諸表へ http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 8/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2015 年 9 月期の会社予想 (百万円) 15年9月期 14年9月期 15年9月期予想 上期 売上高 下期 通期 通期会予 999 845 1,844 2,000 前年比 -2.6% -22.1% -12.6% 8.5% 売上原価 500 519 1,018 売上総利益 499 327 826 前年比 3.8% -40.1% -19.5% 50.0% 38.6% 44.8% 1,109 1,124 2,233 111.1% 132.9% 121.1% 営業利益 -610 -797 -1,407 前年比 - - - - - - - - 経常利益 -638 -701 -1,339 -1,800 前年比 - - - - - - - - -229 -1,351 -1,581 -1,810 - - - - 売上総利益率 販売費及び一般管理費 売上高販管費比率 営業利益率 経常利益率 当期純利益 前年比 -1,800 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 2014 年 11 月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以 下、 「医薬品医療機器等法」) 」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下、 「再 生医療等安全性確保法」) 」が施行されたことにより、免疫細胞療法総合支援サービスによる 売上に加えて、がんの免疫細胞やその他の再生:細胞医療に用いる細胞の加工受託による加 工売上、これから利益増加が見込まれる細胞加工施設の運営管理を受託するサービスの売上 の拡大に注力する計画である。 売上原価については、 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 に規定される細胞医療製品の開発と「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に規定さ れる細胞加工の受託を目的として、東京都品川区に新しく建設している細胞加工施設が稼動 を開始することから、同細胞加工施設に係る減価償却費や設備賃借料が前期に比べて合計で 280 百万円増加する見込みである。 また、販売費及び一般管理費については、同社最初の細胞医療製品として開発を進めている 「AGS-003」の日本での治験に向けて、同医療製品に対するライセンス費用、技術導入費用 等の研究開発費が増加すること等により、前期比 5.1%増の 2,345 百万円を見込んでいる。 以上を踏まえ、2015 年9月期通期の業績は、売上高 2,000 百万円(前期比 8.5%増)、営業 損失 1,800 百万円(前期は 1,407 百万円) 、経常損失 1,800 百万円(同 1,338 百万円)、当 期純損失 1,810 百万円(同 1,580 百万円)を見込んでいる。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 9/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 中長期業績見通し・経営戦略 市場規模 日本のがん罹患数(対象とする人口集団から、一定の期間に、新たにがんと診断された数) が年間約 80.5 万人(2010 年、出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「地域が ん登録全国推計によるがん罹患データ(1975 年~2010 年) 」 )、がんの総患者数は約 152.6 万人(出典:厚生労働省「平成 23 年患者調査」)とされている。一方、同社のサービスによ る治療を受ける患者数が直近のピークであった 2010 年 9 月期においても 2,000 人程度であ ったことを考慮すると、十分な成長の余地があると同社は考えている。 同社によれば、2014 年現在の国内における免疫細胞治療の市場規模は約 100 億円であり、 同社は約 20%のシェアを有すると推定している。将来像として、2030 年の再生・細胞医療 の市場規模を 1 兆円と推定し、その中で約 20%のシェアを目指すとしている。 経営戦略 2014 年 11 月に「再生医療等安全性確保法」および「医薬品医療機器等法」が施行されたこ とにより、「細胞加工業」への進出、「細胞医療製品事業」の展開による成長を目指す。 細胞加工業 2014 年 11 月に「再生医療等安全性確保法」が施行されたことを受け、企業が再生・細胞医 療用の細胞加工を受託できることになった。同社は、細胞加工施設を新設し、細胞加工業の 拡大を目指し、医療機関、研究機関、企業に対して、細胞加工プロセスおよび関連技術・ノ ウハウの提供を行う方針である。 同社は、2014 年後半完成予定として、東京都品川区に新たな細胞加工施設を新設する。設 備投資額は 15 億円を予定している。免疫細胞治療に関する細胞加工をはじめ、その他の体 細胞、幹細胞、iPS 細胞などの加工も視野に入れた事業展開を目指す。同施設の本格的な稼 働開始は、厚生労働省が中心に作成中の細胞加工施設のガイドライン策定を鑑み、2015 年 の前半となる予定である。 新施設で、同社は、免疫細胞に限らず、再生・細胞医療に取り組む医療機関や研究機関から の組織・細胞の加工・培養の受託、および再生医療等製品の開発に取り組む企業からの組 織・細胞の加工・培養の受託を見込んでいる。 また、従来の「免疫細胞療法総合支援サービス事業」については、医療チャネルの拡大、患 者の経済負担軽減を推進する方針である。医療チャネルの拡大に関しては、免疫細胞療法総 合支援サービスの需要顕在化及び市場拡大プロセスにおいて最大のボトルネックとなってい http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 10/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 る医師・医療機関の認知と理解を促すべく、医師・医療機関に対する戦略的な学術営業活動 にリソースを集中し、免疫細胞療法総合支援サービスの大規模展開に向けた基盤を確固たる ものにしていくとしている。具体的には、既存契約医療機関と地域中核医療機関との医療連 携ネットワークの構築支援等により、売上増大を図っていくとのことである。 細胞医療製品事業 「細胞医療製品事業」では、これまで大学病院等と共同で実施してきた臨床研究の経験・知 見を活かし、同社の免疫細胞治療技術を「免疫細胞医療製品」 (免疫細胞を用いた「再生医療 等製品」 )として製造販売承認を得ることを目指す。「再生医療等安全性確保法」および「医 薬品医療機器等法」が 2014 年 11 月に施行されることに伴い、「細胞医療製品」としての承 認獲得に向けて、積極的に取り組むため、同社は 2013 年 12 月に 100%子会社として「株式 会社メドセル」を設立した。 メドセル社では、細胞医療製品事業を展開し、同社がこれまで行ってきた免疫細胞治療に係 る研究成果をもとに、「細胞医療製品」としての承認を取得し、「細胞医療製品」の開発、 製造、販売等を行っていく。また、新規事業による収益機会を拡大し、同社の業容拡大、売 上増加につなげていく方針である。 また、 「細胞医療製品」としての承認獲得に関しては、国内外のパイプラインの獲得も行う方 針とし、2013 年 12 月、米国 Argos 社が開発している転移性腎細胞がんを対象とする細胞 医療製品「AGS-003」に関するライセンス契約を締結した。 資金調達 同社は 2013 年 12 月に、第三者割当増資および新株予約権の発行による資金調達(差引手取 概算額は、5,116 百万円を予定)を発表した。調達資金は、改正薬事法による再生医療製品 の特性を考慮した早期承認・許可制度新設を踏まえ、「細胞医療製品」の開発事業に取り組 むための資金として使用する予定である。治験の申請・承認には、長い年月と多額の費用が かかることから、当該資金を活用して一定水準まで開発を行うことで、収益機会を獲得でき ると考えている。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 11/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 事業内容 概要 同社は医療機関・研究機関に対して「免疫細胞療法総合支援サービス」を提供するバイオテ クノロジー企業である。 2014 年 11 月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下、 「再生医療安全確保法」) 」 および「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、 「医薬 品医療機器等法」) 」が施行されたことにより、従来事業の中核をなしていた「免疫細胞療法 総合支援サービス」から、細胞加工業への転換、細胞医療製品の開発を図っている。そのた め、同社は 2014 年 9 月期に、報告セグメントを従来の「細胞医療支援事業並びにこれに附 帯する業務」から、「細胞加工業」 、「細胞医療製品事業」の 2 区分に変更した。 「細胞加工業」では、再生・細胞医療に取り組む医療機関や研究開発機関からの組織・細胞 の加工・培養の受託、再生医療等製品の開発に取り組む企業からの組織・細胞の加工・培養 の受託を行う。当面は「免疫細胞療法総合支援サービス」が収益の柱となっている。 同社が提供する「免疫細胞療法総合支援サービス」は、がん治療分野における免疫細胞治療 を実施する医療機関に対し、治療に用いる細胞の培養・加工を安全かつ効率的に実施可能と する技術・ノウハウ、施設・資材などを包括的に提供するサービスである。「免疫細胞療法 総合支援サービス」が同社の主要事業であり、「技術ライセンシング事業(個別技術提供サ ービス) 」、「再生・細胞医療 CPC(Cell Prosessing Center:細胞加工施設)の運営管理業 務」、「がん組織バンク事業(患者向け無償がん組織保管サービス) 」なども手掛けている。 2014 年 9 月現在、同社は治療を行う医療機関に併設する形で CPC を設置し、必要な資材の 提供、実際の加工を行う技術者の提供などを行っている。再生医療安全確保法施行後には、 医療機関から企業への細胞培養加工の外部委託が可能となることから、細胞加工業として、 医療機関・研究機関から組織・細胞の培養加工を、直接受託する事業展開を計画している。 「細胞医療製品事業」では、細胞医療製品の開発に向けた研究開発活動に取り組んでいる。 また、国内外のパイプライン獲得も視野に入れた活動を行っている。 「医薬品医療機器等法」 の成立により、早期承認制度を活用し、細胞医療製品の製造承認を得ることを目指している。 SR 社の認識では、免疫細胞治療が普及する妨げになっている要因として、医療機関が CPC を併設する必要があったこと、保険が適用されない自由診療であり、混合治療が認められな かったことが挙げられる。再生医療安全確保法および医薬品医療機器等法の施行後は、これ らの問題が解消され、免疫細胞治療の普及に繋がる可能性があると考える。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 12/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 ビジネス 細胞加工業 同事業においては、再生・細胞医療に取り組む医療機関や研究開発機関からの組織・細胞の 加工・培養の受託、再生医療等製品の開発に取り組む企業からの組織・細胞の加工・培養の 受託を行う。当面は「免疫細胞療法総合支援サービス」が収益の柱となっている。 免疫細胞療法総合支援サービス 同社は 1999 年に日本で初めて免疫細胞治療を医師・医療機関が実施するために必要な技 術・ノウハウ、その他あらゆるニーズに応じて提供する「免疫細胞療法総合支援サービス」 を開始した。2014 年 9 月現在、同様のサービスを提供する企業としては最大手である。 免疫細胞治療は三大療法との併用により、相乗効果が期待できる 免疫細胞治療とは、患者自身の免疫細胞(リンパ球など)などを体外に取り出し、培養・加 工した上で、再び患者に戻すことによって、免疫細胞の働きを人為的に大幅に強めて、がん 細胞などの増殖を抑える治療法である。同社によれば、免疫細胞治療は、外科手術、放射線、 抗がん剤といった三大療法との併用により、相乗効果が期待できるという点から、三大療法 の基盤となる治療法として期待されており、副作用がほとんどなく、QOL(Quality of Life: 生活の質)や QALY(Quality-Adjusted Life Year:質調整生存年)を保ちながら実施するこ とができる点からも注目を集めている。 患者が免疫細胞治療を受けるには、まず治療を実施する医師・医療機関を探すことになる。 一般的なケースとして、免疫細胞治療を希望する患者は免疫細胞治療を提供する医療機関で 診察を受け、まず採血が行われる。採取された血液は同社がサービスを提供する医療機関の CPC の細胞加工プロセスを通じ 2 週間かけて培養される。培養された細胞は、点滴の形で約 30 分かけて患者に投与される。治療の 1 クールは計 6 回の投与で約 3 ヵ月である。 免疫細胞治療の流れ 出所:会社資料 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 13/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 免疫細胞療法総合支援サービス 医療機関が免疫細胞治療を実施するためには、免疫細胞の培養・加工のための高度な技術・ ノウハウ、専門の技術者、専門の機器・施設が必要不可欠であり、一般の医師・医療機関が これらを導入するのは困難である。そのため、免疫細胞治療を安全かつ効率的に実施可能と する細胞治療技術・ノウハウ、品質管理システム、細胞加工施設・設備、専用資材、専門技 術者、情報システムなどを医療機関に対して包括的に提供するのが「免疫細胞療法総合支援 サービス」である。 免疫細胞治療を実施する医師・医療機関には、医師法(詳細は後述)に基づき、インフォー ムド・コンセントの実施や医療事故・医療過誤があった場合の賠償責任など、治療に関わる すべての責任が発生する。免疫細胞治療を実施するために、同社は治療を行う医療機関に併 設する形で CPC を設置する。CPC の所有権は同社にあるが、同社は医療機関に対し、CPC の 独占的使用許諾権を付与し、必要な資材の提供、実際の加工を行う技術者の提供などを行っ ている。同社のコア技術は細胞加工技術であり、その強みは医療と生産技術が重なるエンジ ニアリング技術にあり、ノウハウ的な部分が多い。 免疫細胞療法総合支援サービス 出所:会社資料 また、同社は、再生・細胞医療分野の医療技術に係る臨床研究等を行う医療機関に対して、 CPC の運営管理業務を行っている。再生・細胞医療を実施するために必要な CPC には、医薬 品の製造管理及び品質管理規則である「GMP(Good Manufacturing Practice)」に準拠する 等、様々なガイドラインの要件を満たす厳格かつ高度に安全管理された施設と品質管理シス テムが求められる。一方、近年の再生・細胞医療に係る研究開発の進展に伴い、多くの研究 機関や医療機関に CPC が設置されているが、経済的あるいは人的資源の制約、新たな分野で あるが故の経験不足等から、その多くが十分に稼働している状況とはいえず、再生・細胞医 療の普及発展を妨げる要因の一つになっているものとみられる。同社はこうした状況を打開 するべく、CPC の運営管理業務を推進している。 2014 年 9 月末現在、同社は、九州大学先端医療イノベーションセンター及び金沢大学附属 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 14/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 病院トランスレーショナルリサーチセンターの CPC 全般に関する運営管理業務を受託してい る。 免疫細胞治療と医師法、医療法、医薬品医療機器等法、再生医療等安全性確保法との関係 免疫細胞治療に関するビジネスを事業化するに当たり、一般的には、再生医療等製品として 医薬品医療機器等法上の承認(詳細は後述)を得るか、現在同社がサービスを提供する医療 機関で行われているように、医師法、医療法(詳細は後述)等に基づき実施される治療行為 として位置付けるかの 2 つの選択肢がある。 同社が、一人でも多くの患者に最善で最良の医療として免疫細胞治療を提供するために、関 係省庁などと議論や検討を重ねた上で作り上げたのが現在のビジネスモデルである。即ち、 医療を行うのはあくまでも医師であり、医師の監督下で治療に必要なハードやソフトを同社 が包括的に提供する。このようなモデルが選択された背景には、医師法・医療法や薬事法を めぐる複雑な問題が絡んでいた。 なお、2014 年 11 月の「再生医療等安全性確保法」施行以前は、免疫細胞治療用の細胞加工 は医療機関に限られていた。「再生医療等安全性確保法」施行後は、治療用の細胞加工につ いて、厚生労働大臣から許可を受けた企業等への外部委託が可能となったことから、2014 年 11 月現在、同社は特定細胞加工物の製造許可取得に向け、準備を進めている。 医師法との関連:医師法は、医師となる要件及び医師の行う行為について定めた法律であり、同法 17 条において「医師でなければ医業をなしてはならない」と規定されている。同社が行う免疫細胞療法総 合支援サービスにおいては、サービスの一環として、同社の技術者が契約医療機関に出向して細胞加工 及び品質検査業務に従事しているが、これらは、医療機関の医師が行う医療行為(免疫細胞治療)の一 連の行為の一部を補助するものであり、当該行為はすべて医師の指揮監督下に行われることから、同社 の出向者が同法 17 条に規定する「医業」を行っているものではない。その他、医師法の各条項を含め、 同社グループの行う事業については現在のところ、医師法の規制に該当する行為はない。 医療法との関連:医療法は、医療の安全性の確保、および医療提供施設の整備、施設相互間の機能の分 担および業務の連携等について定めた法律であり、同法第 1 条の 2 第 1 項において、「医療は、生命の 尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受 ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われる」旨規定されている。 また、旧厚生省の回答文書(昭和 25 年 2 月 1 日:医収第六二号)において、「医師は疾病の診察、治 療等医行為の総てを業としてなし得るのであり、特にその行為の内容、方法等について法律上の制限は 存しない」旨が記載されており、原則として医師と患者の信頼関係に基づき実施される治療等医行為に ついて、関連法規制に制限される行為はない。 医薬品医療機器等法との関連:医薬品医療機器等法は、再生医療等製品を含む医薬品等の有効性および 安全性の確保のために必要な規制を行う法律であり、同法 23 条において「厚生労働大臣の許可を受け た者でなければ、業として、再生医療等製品の製造をしてはならない」旨規定されている。ただし、医 療機関が自らの患者の細胞を加工する行為については、医薬品医療機器等法における再生医療等製品の http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 15/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 製造に該当するものではない。同社は、医療機関に対し、施設、技術・ノウハウ、技術者、材料および 資材、品質保証、システム等、医師が免疫細胞治療を実施するために必要なあらゆるソリューションを 免疫細胞療法総合支援サービスとして包括的に提供するものであり、患者の細胞加工については、契約 医療機関で医師の指揮監督下において行われている。従って、同社の行う事業についても、同法 23 条 に規定する「再生医療等製品の製造」の規制を受けるものではない。その他、医薬品医療機器等法の各 条項を含め、現在のところ同社グループの行う事業について、医薬品医療機器等法の規制に該当する行 為はない。 また、医薬品医療機器等法では、第2条において「再生医療等製品」を新たに定義し、その特性を踏ま えた安全対策等の規制を設けるとともに、第 23 条の 26 において、「再生医療等製品」について、有効 性が推定され、安全性が認められれば、特別に早期に、条件・期限付で製造販売承認を取得することが 可能となった。 再生医療等安全性確保法:再生医療等安全性確保法は、再生医療等に用いられる再生医療等技術の安全 性の確保等に関する措置、特定細胞加工物の製造の許可等の制度等を定め、再生医療等の迅速かつ安全 な提供及び普及の促進を図ることを目的とし、2014 年 11 月に施行された。同法では、医療機関が自院 で治療用の細胞加工物を製造する場合には、厚生労働大臣への届出が必要になる他、従来は医療機関に 限られていた治療用の細胞加工について、厚生労働大臣から許可を受けた企業等への外部委託が可能と なる。 契約医療機関と提携医療機関 同社の技術・サービスの供与に基づき免疫細胞治療を実施している医療機関は「契約医療機 関」と呼ばれる。2014 年 9 月現在、契約医療機関は以下の 8 ヵ所である。 医療法人社団 滉志会 瀬田クリニック東京(東京都千代田区) 瀬田クリニック新横浜(横浜市港北区) 瀬田クリニック大阪(大阪府吹田市) 瀬田クリニック福岡(福岡市博多区) 東京大学医学部附属病院(東京都文京区) 金沢大学附属病院トランスレーショナルリサーチセンター(石川県金沢市) 国立病院機構大阪医療センター(大阪市中央区) 九州大学先端医療イノベーションセンター(福岡県福岡市東区) これらの契約医療機関では、同社が提供する技術・サービスを利用して免疫細胞治療を実施 する。また、他の医療機関との医療連携により、それらの医療機関の患者に対しても、契約 医療機関と同等の免疫細胞治療を実施することができる。これらは、「連携医療機関」と呼 ばれる。 医療法人社団 滉志会 瀬田クリニックグループについて 1999 年 3 月に免疫細胞治療の専門医療機関として開院している。現在は、東京、新横浜、 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 16/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 大阪、福岡にある 4 つのクリニックと連携医療機関との医療連携により、患者が全国各地で 免疫細胞治療を受診できる環境の構築を進めている。これまでに受診した患者は約 1.7 万名 を超え、免疫細胞治療について蓄積した経験や症例数は、世界でも類を見ない規模となって いる。 同社は、免疫細胞療法総合支援サービス契約に基づき、医療法人社団 滉志会 瀬田クリニ ックグループ(以下、瀬田クリニックグループ)に対して、免疫細胞治療の安全かつ効率的 な実施を支援している。なお、瀬田クリニックグループは、免疫細胞治療を実施するととも に、他の医療機関との医療連携により、連携医療機関の患者に対しても、共同で免疫細胞治 療を実施している。 なお、瀬田クリニックグループでは、医師が患者ごとのがんの性質、状態を踏まえて最適と 思われる方法を選択し、さらには、免疫細胞治療以外に受けている治療の状況・経過を見極 め効果的な併用を試みる、患者一人ひとりに合わせた「オーダーメイドの医療」と位置づけ、 これを実践している。 同社では、「NK 細胞療法」、「樹状細胞ワクチン療法」、「ガンマ・デルタ T 細胞療法」、 「アルファ・ベータ T 細胞療法」、「CTL 療法」に関する技術・サービス、また、がんの情 報源ともいうべき患者自身のがん組織を預かる「自己がん組織バンク」事業、そして、がん 細胞の特徴を判別する「免疫組織化学染色検査」といった検査技術などを開発・提供してい る。 自己がん組織バンク:免疫細胞治療の中には、患者自身のがん組織を利用することで、より特異的な免 疫反応の誘導が期待できる樹状細胞ワクチン療法がある。外科手術の際にがん組織を保管しておけば、 術後、再発や転移が見つかった場合に患者自身のがん組織を利用した治療を選択できる可能性が広がる。 「自己がん組織バンク」では、患者のがん組織を保管・管理し、必要に応じて返還するサービスを無償 で提供する。 免疫組織化学染色検査:一部の免疫細胞は、がん細胞表面上の分子を認識することでがん細胞を直接的 に傷害するが、その標的となる分子は免疫細胞の種類により異なる。免疫組織化学染色により、がん細 胞表面上の分子の発現を検査することは、個々の患者の治療法を選択する上で有用な判断基準のひとつ になると考えられる。同社では株式会社東京セントラル・パソロジー・ラボラトリーとの提携により、免 疫細胞治療実施医療機関が免疫組織化学染色検査を実施するためのインフラ整備を行っている。 細胞加工業 2013 年 11 月に再生医療新法が参議院本会議で可決、成立し、2014 年 11 月に「再生医療 等安全性確保法」が施行された。これにより、医療機関から企業等への細胞培養加工の外部 委託が可能となる(「再生医療等安全性確保法と医薬品医療機器等法」の項参照)。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 17/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 法施行後に、医療機関は細胞の加工・培養の外部委託が可能となり、CPC を併設することな く、免疫細胞治療を行うことが可能となる。一方、同社は、特定細胞加工物の製造許可の取 得後は、従来の免疫細胞療法総合支援サービスではなく、組織・細胞の加工・培養を受託す る細胞加工業の事業展開が可能となる。 細胞加工業を行うため、同社は、東京都品川区に細胞加工施設(品川 CPF:Cell Processing Facility)を新設する。同施設は 2014 年後半の完成予定で、免疫細胞に限らず、再生・細胞 医療に取り組む医療機関や研究機関からの組織・細胞の加工・培養の受託、および再生医療 等製品の開発に取り組む企業からの組織・細胞の加工・培養の受託も行う方針である。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 18/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 細胞医療製品事業 2014 年 9 月期においては、細胞医療製品の可能性の評価を行うため、免疫細胞療治療に係る 先進医療を実施している契約医療機関に対して免疫細胞療法総合支援サービスを提供し、収 益を計上しているが、中期的には、細胞医療製品の製造承認取得を目指している。 2013 年 11 月 20 日に改正薬事法が参議院本会議で可決、成立し、2014 年 11 月に「医薬品 医療機器等法」施行された。「医薬品医療機器等法」では、再生医療等製品について、有効 性が推定され、安全性が認められれば、一定の条件や期限を定めたうえで承認を取得し、市 販後に有効性、さらなる安全性を検証できる(「再生医療等安全性確保法と医薬品医療機器等 法」の項参照)。 同事業では、条件・期限付承認を活用し、既存パイプラインの製造販売承認取得を目指す。 また、国内外のパイプラインの獲得も行う方針としている。2014 年 11 月の「医薬品医療機 器等法」施行に併せて、厚生労働省は、再生医療等製品について、医薬品や医療機器と同様 に、治験および承認から保険適用までの間、保険外併用療養の評価療養として行うほか、条 件・期限付き承認の場合でも保険適用とすることを決定し、2014 年 11 月に健康保険法等の 改正を行った。SR 社の理解では、保険適用により、患者の治療費負担が軽減されるとともに、 免疫細胞治療普及の妨げとなっている混合診療の問題も解消される。 パイプラインの獲得に関しては、2013 年 12 月、米国 Argos Therapeutics, Inc.と細胞医 療製品「AGS-003」に関するライセンス契約を締結した。 AGS-003 2013 年 12 月、同社は米国 Argos Therapeutics, Inc. (以下 Argos 社)が開発している転移 性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」に関するライセンス契約を締結した。 同社は日本での「AGS-003」の開発および製造の独占的許諾を受けるとともに、国内での販 売およびサブライセンスの非独占的ライセンスを取得する。「AGS-003」は、スニチニブ(転 移性腎細胞がんの標準治療薬)の併用治療に関する第Ⅲ相臨床試験が複数の国で進行中だが、 米国において既に終了した第Ⅱ相臨床試験では、スニチニブ単独治療と比べ、全生存期間の 中央値が 2 倍に延長したという結果が得られている。 「AGS-003」に関しては、米国で第Ⅲ相臨床試験が進行中であることから、米国での治験結 果が活用可能であった場合には、早期承認ではなく通常の承認制度で、国内第Ⅲ相臨床試験 を行うことも検討されている模様。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 19/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 ビジネスモデル 主要事業である免疫細胞療法総合支援サービス事業の売上高は、免疫細胞治療を実施する契 約医療機関から受け取るロイヤルティである。同社契約医療機関における免疫細胞治療は、 「樹状細胞ワクチン療法」は 1 クール(6 回から 12 回、注 1)の治療費総額が、概ね 147 万~216 万円である。また、「NK 細胞療法」、「ガンマ・デルタ T 細胞療法」、「アルフ ァ・ベータ T 細胞療法」、「CTL 療法」は 1 回(注 2)の治療費総額が 26 万円~37 万円程 度となっている。 同社は免疫細胞療法総合支援サービスの対価として細胞加工の種類と回数に基づき、患者が 支払う治療費の一部分をロイヤルティとして受け取っている。同社の売上高は細胞加工件数 により決定される。細胞加工件数は契約医療機関等における新規治療開始患者数増加に伴っ て増加する。 注 1:治療回数(6~12 回)は、アフェレーシス(成分採血 1 回あたり)で得られた細胞の数によって 決まる 注 2:治療の効果判定を行うためには、おおむね 6 回程度の治療が必要とされる コスト分析 同社の売上総利益率は CPC の稼働率の影響を受けると SR 社では推測している。 2013 年 9 月期の売上原価で最も構成比率が高いのは材料費であり、対売上高比で 15.1% (単 体ベース)を占めている。次に多いのが労務費で、対売上高比で 14.9%(単体ベース)であ る。残りの経費は対売上高比で 20.8%(単体ベース)で、中身は家賃、減価償却費など、固 定費が中心と思われる。 販管費の中で大きな割合を占めているのが研究開発費、人件費、広告宣伝費である。同社は 戦略的に 4~5 億円を研究開発費に割いている。通常研究開発費は人件費が中心であり、固 定費的な要素が強いが、同社は大学病院などと共同研究を多く行っている上、研究を担って いる人員数は 25~30 人であり必ずしも人件費が大半ではないと思われる。同社の場合、研 究開発費は裁量によって増減させる余地のある費用であると思われる。 同社は 2011 年 9 月期までは高水準の広告宣伝費を投じてきたが、2012 年 9 月期に当該費 用は大きく減少している。同社は医師・医療機関をターゲットとした学術営業活動及び、一 般向けのプロモーション活動を継続的に実施しているが、プロモーション企画の効率化を図 ったこと等がその要因である。同社はこうした営業活動企画の効率化を継続する意向であ る。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 20/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 販売費及び一般管理費 ( 百万円) 人件費 研究開発費 広告宣伝費 販管費構成比 人件費 研究開発費 広告宣伝費 対売上高比率 人件費 研究開発費 広告宣伝費 販売管理費合計 0 9 年9 月期 連結 416 378 216 1 0 年9 月期 連結 396 408 254 1 1 年9 月期 連結 389 468 323 1 2 年9 月期 連結 392 516 116 1 3 年9 月期 連結 339 519 116 24.1% 21.9% 12.6% 21.5% 22.2% 13.8% 19.6% 23.6% 16.3% 21.1% 27.7% 6.2% 17.8% 27.2% 6.1% 14.3% 13.0% 7.5% 1,725 12.4% 12.7% 7.9% 1,839 14.6% 17.5% 12.1% 1,984 17.9% 23.5% 5.3% 1,864 16.1% 24.6% 5.5% 1,904 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 収益性・財務指標 収益性 10年9月期 11年9月期 12年9月期 13年9月期 14年9月期 連結 連結 連結 連結 連結 (百万円) 売上総利益 売上総利益率 営業利益 2,173 1,680 1,153 1,026 826 67.9% 62.8% 52.6% 48.6% 44.8% -1,407 334 -304 -711 -878 10.4% - - - - 463 -149 -499 -667 -1,212 EBITDA マージン 14.5% - - - - 利益率(マージン) 13.7% - - - - 9.1% -7.9% -8.1% -3.6% -14.2% 12.2% -11.6% -12.0% -4.6% -16.8% 0.7 0.4 0.3 0.2 0.2 38.9 12.2 7.9 8.8 9.4 9 30 46 41 39 449 547 389 345 290 流動比率 433.3% 423.4% 366.6% 658.0% 512.9% 当座比率 398.8% 398.9% 333.6% 627.7% 482.8% 72.8% -22.5% -26.4% -41.6% -79.5% -50.8% -1.1% 5.7% -12.4% -15.5% 0.3 -0.1 -0.1 -0.3 -0.7 25.4 54.5 78.6 63.1 60.9 -32.4 97.7 -157.5 -44.3 -54.7 営業利益率 EBITDA 財務指標 総資産利益率(ROA) 自己資本純利益率(ROE) 総資産回転率 在庫回転率 在庫回転日数 運転資金(百万円) 営業活動によるCF/流動負債 負債比率 営業活動によるCF/負債合計 キャッシュ・サイクル(日) 運転資金増減 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 21/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 SW(Strengths, Weaknesses)分析 強み(Strengths) Ÿ 日本の医療関連法制度下で実現できたユニークなビジネスモデル:日本以外の先進諸国 で免疫細胞治療を患者に提供しようとする場合、FDAなどの承認機関による承認が必須 であり、その取得には膨大な時間と費用を要する。日本では医師法のもと、安全性や治 療方法の効率性に関する判断の部分を医師に合法的に任せることで、同社は患者の治療 データを活用しつつ技術開発に注力すると同時に、収益性の確保を行うことができる。 Ÿ 先行者メリット:同社の最大の強みの一つは、免疫細胞治療のパイオニアとして同社が 蓄積してきた細胞加工技術である。同社は免疫培養に関して10年以上の歴史を持つ。同 社によれば、細胞加工で品質の差が生じるのは設備よりもむしろノウハウ的な側面が大 きい。同社は約146,000件の細胞加工件数に裏打ちされた細胞加工技術を有している。 Ÿ 瀬田クリニックと築いた協力関係:同社は東京大学出身の江川氏が設立した瀬田クリニ ックとの提携関係にある。瀬田クリニック(現「瀬田クリニック東京」)が1999年に初 めて東京都世田谷区に設立されて以来、瀬田クリニックグループは2001年に瀬田クリ ニック新横浜、2003年に瀬田クリニック大阪と瀬田クリニック福岡を開設した。瀬田 クリニックグループが順調に同治療の提供地域を拡大できたことで、同社も事業規模の 拡張を成し得た。 弱み(Weaknesses) Ÿ 瀬田クリニックグループへの依存度の高さ:同社の事業展開は「免疫細胞療法総合支援 サービス」の単一事業である。それに加え、2014年9月期の売上高の95.6%が瀬田クリ ニックグループ向けである(出所:2014年9月期決算短信)。瀬田クリニックグループ は、同社の免疫細胞療法総合支援サービスを活用して免疫細胞治療を専門的に提供する クリニックであり、もし医療事故や医療過誤が起きた場合は瀬田クリニックのみならず、 同社の提供するサービスに対する信頼が失墜し、同社の事業に甚大な影響が生じる可能 性がある。 Ÿ 代替技術による免疫細胞治療の必要性低下の可能性:同社グループの属するバイオテク ノロジー業界は急速に変化・拡大し、特にがん治療分野では新しい治療薬の研究開発が 進んでいる。免疫細胞治療との併用と関連しない治療効果の高い医薬品が開発された場 合、または、免疫細胞治療に代わる治療法が開発された場合等には、免疫細胞治療が不 要となる可能性がある。 Ÿ 患者にとって比較的高価な医療費:免疫細胞治療は、保険適用にならないため治療費が 全額患者の自己負担となり、1クールで約150~210万円と患者への経済的な負担が大き い。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 22/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 事業所網 ・本社(新横浜) ・西日本学術センター ・九州学術センター <研究所・細胞加工センター> ・研究開発センター ・新横浜 CPC(瀬田クリニック新横浜に併設) ・大阪 CPC(瀬田クリニック大阪に併設) ・福岡 CPC(瀬田クリニック福岡に併設) ・東大 CPC(東京大学医学部附属病院に併設) ※CPC:Cell Processing Center グループ会社等 同社グループは、同社、連結子会社 2 社の計 3 社で構成されている(2014 年 9 月末、括弧 内は出資比率)。 Ÿ 株式会社医業経営研究所(100%):医療設備等の賃貸、医療及び医療経営に関するコン サルティング業務等を行う。 Ÿ 株式会社メドセル(100%):細胞医療製品事業を行う。 提携・出資先 同社は国内外のバイオベンチャー企業などとの資本提携・技術提携も積極的に行っている。 主なアライアンス先は以下の通り。 Ÿ 東京海上日動火災保険株式会社:がん治療分野での連携も視野に入れて、2010年3月に 東京海上日動火災保険に対し、第三者割当による無担保転換社債新株予約権付社債の発 行を決定。調達資金は、10億円。 Ÿ ナノキャリア株式会社(東証マザーズ 4571):2009年10月にがん分野での包括的な共 同研究提携を行ったのに加え、2010年5月にはナノキャリア社からの第三者割当増資を 引き受け、2010年12月、ナノキャリア社が実施する株主割当増資を引き受けている。 Ÿ 米国MaxCyte社:同社とMaxCyte社はセル・ローディング・システムの共同開発を行っ ていたが、2009年12月には資本提携を実施した。資本提携は今後の事業展開に置いて は大きな武器になる可能性も秘めている。2010年4月にはMaxCyte社からの技術ライセ ンス範囲が拡大している。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 23/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 Ÿ 株式会社リプロセル(JASDAQ 4978):2008年9月に出資。リプロセル社のES/iPS細 胞ならびに体性幹細胞に関わる技術、ノウハウなどとの将来的なシナジーなどを見込み、 第三者割当増資を引き受けた。 Ÿ 株式会社細胞科学研究所:2004年9月に出資。細胞科学研究所は免疫細胞治療の細胞加 工に不可欠なヒト細胞用無血清培養液を開発、製造。同社は細胞培養液の安定供給体制 を確保するとともに、細胞医療全般に関わる基盤技術・ノウハウの拡充を図ることを目 的として第三者割当増資を引き受けた。 Ÿ PRISM BioLab株式会社: P/P Interaction、ペプチド模倣技術分野でのアライアンス。 Ÿ レグイミューン株式会社:2012年1月に出資。両社の研究ネットワークを融合させるこ とで、NKT細胞療法を始めとした新たながん免疫細胞治療メニュー開発、新たな領域の 免疫細胞治療の進展を見込んでいる。 Ÿ パーパスバイオメディカル株式会社:2013年9月設立。パーパス株式会社、株式会社ム トウ、同社の共同事業会社で、再生医療分野において、3社のそれぞれの強みを活かし、 米国にて第Ⅲ相臨床試験が実施されている自家培養軟骨「NeoCart」の開発から製造・ 販売までの一貫体制を構築する。「NeoCart」のFDA(米国食品医薬品局)による臨床 適用認可等の取得の動きと並行して、国内での早期承認取得を進め、事業化することを 目指す。 Ÿ TC BioPharm Ltd.:自家細胞を用いた免疫細胞治療の開発を目指し、同社とスコット ランド投資家等が、それぞれ50%ずつの出資比率で2013年7月に設立。2014年2月、 同社とTC BioPharm Ltd.は、英国および欧州諸国での細胞医療製品の開発・販売に関 する戦略的事業パートナーシップを締結。同社はTC BioPharm社に対する出資と同社培 養技術に係るライセンスを供与する。TC BioPharm社は、同社の培養技術や東京大学と の共同研究によって得られた知見などを用いて、がんに対する免疫細胞治療技術の治験 を開始し、英国および欧州での製造販売承認を得ることを目指す。 上記以外に同社は国内の同業他社であるリンフォテック社に対し 10%の出資を行っているほ か、バイオテクノロジーやライフサイエンス分野への投資に特化したベンチャーキャピタル MASA Life Science Ventures, LP への投資も行っている。 事業戦略プロジェクト 同社は、東京大学医学部附属病院が推進する「22 世紀医療センター」プロジェクトに参画し ている。 2007 年 2 月、同院に対して免疫細胞療法総合支援サービスを提供する契約を締結。22 世紀 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 24/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 医療センターの免疫細胞治療部門では、同社が企画、設計を行い、設置した CPC を活用し、 同社及び学内診療科等と共同で、ガンマ・デルタ T 細胞療法や樹状細胞ワクチン療法等の最 新の免疫細胞治療技術に係る複数の臨床研究を行っており、有効性と安全性が確認できたも のから実地医療として順次提供される計画となっている。 2012 年 6 月には、「ゾレドロン酸誘導γδT 細胞を用いた免疫細胞治療」が第 3 項先進医療 (高度医療)として認定され、同社は、その先進医療を実施するために必要となる細胞培養、 品質検査、施設運営管理に係る一部業務を受託した。 同社は、今後も 22 世紀医療センターにおける臨床開発をはじめとする様々な活動を推進す ることにより、医師・医療機関の免疫細胞治療に対する信頼性を伴った認知度及び理解度が 向上し、事業の成長を大きく促進するとみている。 共同研究 2014 年 5 月、国立大学法人 大阪大学大学院医学系研究科に最先端医療イノベーションセン ターを活動拠点とする共同研究講座「免疫再生制御学共同研究講座」を設置し、共同研究を 開始した。共同研究講座では、移植した細胞を定着させる技術を確立するとともに、培養し た細胞を移植した際に起こる慢性炎症の要因や関連する物質の解明を目指す。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 25/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 市場とバリューチェーン マーケット概略 がん免疫療法の市場規模は 2030 年に約 3,000 億円、2050 年に 5,700 億円へと拡大 再生医療・細胞医療は今後大きな成長が見込まれる分野である。細胞医療(再生医療と総称 されることもある)とは患者自身、あるいは他人の細胞を使って治療を行う先端技術である。 細胞医療は培養皮膚や培養軟骨など体の構造を再生することを目的とした再生医療と、がん や先天性疾患などを治療する細胞移植医療に大別される。 出所:経済産業省製造産業局生物化学産業課『 「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」の最終報告書を取りま とめ』 (2013 年 2 月 22 日)を同社改変 経済産業省製造産業局生物化学産業課『「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」の最終 報告書を取りまとめ』 (2013 年 2 月 22 日)によれば、2012 年時点での国内の再生医療市場 規模は約 90 億円存在する。うち、がん免疫療法の国内市場規模は約 70 億円程度と推測され ている。同資料において、がん免疫療法の国内市場規模は 2030 年には約 3,000 億円、2050 年には 5,700 億円へと拡大すると予測されている。 1981 年以来、がんは日本人の死亡原因第一位となっており、厚生労働省「平成 25 年人口動 態統計(死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率)」によれば、死亡数 36 万 4,872 人、総 死亡の 28.8%を占めた。また、国内における新規罹患者数は、国立がん研究センターがん対 策情報センター「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975 年~2010 年) 」によ れば、約 80.5 万人(2010 年)、がんの総患者数は厚生労働省「平成 23 年患者調査」によ れば約 152.6 万人とされている。2025 年には、国内における新規罹患者数が年間 92 万人を 超え、死亡者数は 39 万人に達する(「がん・統計白書 2012-データに基づくがん対策-」 (篠 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 26/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 原出版新社))との予測もある。 一方、同社のサービスを通じて免疫細胞治療を受けた患者の数は年々増加し、2014 年 9 月 期末現在、累計患者数は約 17,000 人、累計細胞加工件数は約 146,000 件となったが、直近 のピークである 2010 年 9 月期でも年間約 2,000 人程度にしか過ぎない。これは上記のがん の罹患者数(対象とする人口集団から、一定の期間に、新たにがんと診断された数)と比べ ると非常に少ない。では、もし患者の身体的負担も少なく、かつ一定の効果が認められてい る療法であるとすれば、なぜ普及しないのだろうか。 SR 社では以下の通り、医師および医療機関の理解・認知度、免疫細胞治療の臨床効果に係 るエビデンス、治療費の患者負担が、免疫細胞治療普及の妨げになっていると考えている。 医師および医療機関の理解・認知度および理解度が十分ではない 免疫細胞治療の需要を拡大するためには、まず、患者の治療選択プロセスにおいて実質的な 決定権のある医師・医療機関が、免疫細胞治療をがん治療オプションとして積極的に選択す る状況が必要となる。近年の免疫学、分子生物学および細胞工学などの発展とともに、免疫 細胞治療に係る技術は飛躍的に進歩し続けており、世界的に本分野における研究開発が進む 一方で、一般の臨床医がその最新の技術動向、内容などを詳細にキャッチアップすることは 困難な状況であり、免疫細胞治療に対する医師・医療機関の認知度および理解度が十分と言 えないのが現状となっている。 とはいえ、技術の進歩と医療の在り方に係る議論が進み、最先端のがん治療戦略は大きな変 換点を迎えている。ひとつには、従来からの標準的な治療法である外科療法、化学療法、放 射線治療においても、内視鏡下技術の一般化、分子標的薬の出現、粒子線治療の普及開発等、 より患者の身体的負担が少ない低侵襲の治療へとシフトする傾向がある。また、各治療法の 限界を踏まえ、各々の専門医師がチームで患者に当たるチーム医療、集学的治療の必要性が 再度認識され、大学病院等でも医局縦割りの旧来型の体制を脱却し、新たな組織による患者 中心の医療へと大きく変化しようとしている。 免疫細胞治療の臨床効果に係るエビデンス(治療効果) 免疫細胞治療に対する医師・医療機関の認知度および理解度が十分でない現状から、免疫細 胞治療の正しい理解と認知の向上を図る必要がある。そのためには、根拠に基づく医療 (EBM:Evidence-based Medicine)を推進するための臨床エビデンスを収集・構築し、その 結果を外部発表などを通して、医師・医療機関などに情報提供することが必要である。同社 は、新規免疫細胞治療技術の開発や既存技術の機能向上を推進するとともに、その臨床効果 を評価し、新たな治療プロトコルを開発するため、大学病院をはじめとする中核医療機関と 臨床研究を進めている。しかしながら、現在、免疫細胞治療については、どのような指標を もって科学的効果を示すのか、その評価法が確立されていないことや、化学療法や放射線療 法などの標準療法の評価法(RECIST:Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)では http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 27/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 十分な臨床的効果を示せていない。免疫細胞治療の一層の普及には、評価法の確立も含め、 より質の高いエビデンスの構築が必要となる。 治療費の患者負担 2014 年 11 月現在、免疫細胞治療は原則として自由診療で行われている。そのため、免疫 細胞治療を受ける患者は、治療費を全額自己負担することとなる(料金は、「ビジネスモデ ル」の項参照)。また、混合診療が禁止されているため、患者は保険診療を受診している医 療機関では免疫細胞治療を受診することは困難である。医療機関が、患者に対し保険診療と 免疫細胞治療の併用治療を提供する場合には、明確に保険診療と免疫細胞治療を分断して、 行う必要がある。 混合診療:保険の対象となる治療と対象とならない治療を併せて行うこと。混合診療を行うと、保険の 対象となる治療にも保険が支払われなくなり、自費診療になる。 厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、例外的に認めた医療 制度としては「先進医療制度」がある。将来、同社が提供する免疫細胞治療が先進医療の適用 を受け、保険診療との併用(いわゆる混合診療)が可能となれば、免疫細胞治療を受ける患 者数は増加する可能性がある。 先進医療制度:医療制度においては、保険診療の中で認められていない診療を含むことは認められてい ない。将来的に保険導入を目指す先端医療技術については、医療技術ごとに定められた要件を満たす医 療機関の届け出により保険診療との併用を認める「先進医療」という制度があり、2013 年 9 月現在で、 がんに対する免疫細胞治療に関連する医療技術については、6 つの医療技術が「先進医療」として認め られている。 また、2014 年 5 月に内閣府の規制改革会議は、医師と患者の話し合いによって保険診療と保 険外診療を併用できるようにする「選択療養」 (仮称)制度の創設を求める意見をまとめた。 適切な治療ができる体制を診療計画に明記し、中立的な専門家が有効性・安全性を確認する 手続きを盛り込み、最終的に選択療養の実績を積み重ね、評価療養や保険収載につなげる方 向性を打ち出した。SR 社は、この取り組みにより、中期的に免疫細胞治療における混合診 療の問題を解決する可能性があると注目している。 さらに、2014 年 11 月の「医薬品医療機器等法」施行に併せて、厚生労働省は、再生医療等 製品について、医薬品や医療機器と同様に、治験および承認から保険適用までの間、保険外 併用療養の評価療養として行うほか、条件・期限付き承認の場合でも保険適用とすることを 決定し、2014 年 11 月に健康保険法等の改正を行った。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 28/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 再生・細胞医療に対する政府の取り組み がん 10 か年総合戦略 1981 年より国家的ながん対策としてスタートした厚生労働省の「対がん 10 カ年総合戦略」 は、2004 年に「第 3 次対がん 10 か年総合戦略」が開始されるに至っている。第 3 次戦略に おいては、免疫療法が重点研究課題として位置づけられた他、「がんの罹患率と死亡率の激 減を目指して」をキャッチフレーズとして、臨床的効果を指向した具体的な目標が明示され ている点が特徴であり、これまでの研究成果の臨床応用の可能性が大きく拓けてきたことを 意味している。 がんの年齢調整死亡率推移(厚生労働省「都道府県別にみた死亡の状況-平成 22 年都道府県 別年齢調整死亡率-」 )によれば、10 万人対比の死亡率は全ての死因を含む死亡総数では医 療技術等の進歩により、大幅な改善が見られるが、がんについては殆ど変化が見られておら ず、従来の治療法の限界が如実に現れる結果となっている。 再生細胞医療に対する期待の高まり 本質的に副作用がない全身療法であり、あらゆるフェーズであらゆる治療と併用可能なバイ オメディカルテクノロジーである免疫細胞治療への期待は大きく、最先端のがん治療戦略オ プションの一つに数えられつつある。特に再発予防分野においては、初期治療に免疫細胞治 療を導入した場合の生存率、無再発生存率が顕著に向上するとの論文報告が数多く発表され ており、免疫細胞治療に係る期待は大きく高まっている。 また、2011 年にはアメリカのロックフェラー大学に所属していた免疫・細胞生物学者のラ ルフ・マーヴィン・スタインマン博士が「樹状細胞と、獲得免疫におけるその役割の発見」 を理由としてノーベル生理学・医学賞を受賞、翌年の 2012 年には iPS 細胞の開発をした京 都大学の山中伸弥教授が、「成熟細胞が初期化され多能性を持つことの発見」を理由として、 同じくノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、再生細胞医療における期待は国内におい て高まっている。 医療イノベーション 5 カ年戦略 行政も 2012 年 6 月 6 日に開催された第 5 回医療イノベーション推進会議において、今後の 医療イノベーション推進の具体策をとりまとめた工程表となる「医療イノベーション 5 カ年 戦略」を策定した。この中では、再生医療や個別化医療のような世界最先端の医療の分野で 日本が世界をリードする実用化モデルを作ること、医療サービスのイノベーションに向けて の検討を併せて進めることが示され、再生医療、個別化医療、バイオ医薬品等が、がん領域 等研究開発の重点領域に指定されている。また、日本発の革新的な医薬品を創出するため、 難治性がんや希少がん等を中心にがんペプチドワクチンをはじめとしたがん免疫療法や抗体 医薬等の分子標的薬、核酸医薬等の創薬研究に関し、GLP 準拠の非臨床試験、国際水準の臨 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 29/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 床研究・医師主導治験を推進し、5 年以内に日本発の革新的ながん治療薬の創出に向けて 10 種類程度の治験への導出を図ることが盛り込まれている。 細胞培養施設の基準の作成に向けた検討を行うことや医療として提供される再生医療につい ても、医薬品とは異なる再生医療の特性を踏まえた上で、薬事規制と同等の安全性を十分に 確保しつつ、実用化が進むような仕組みを構築するとされている。 厚生労働省は医療機関における再生・細胞医療の要件・位置付けを明確化 2010 年 3 月 30 日に厚生労働省は各自治体向けの通達として、「医療機関における自家細 胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」の文書を発信し、医療機関で再生・細胞 医療を行う場合の要件を定めた。また、複数の医療機関が連携して免疫細胞治療を実施する 場合の要件について定めたことで、実質的には CPC を保有しない医療機関でも、適切な安全 基準適合の細胞加工施設を有する医療機関と連携することで、合法的な形で治療を実施する ことを認めたものである。同社の事業にとっては、医療機関側の実施へのインセンティブの 面、そして同社の契約医療機関数および連携医療機関数を拡大させていく上で強い追い風と なる。 再生医療等安全性確保法と医薬品医療機器等法 同社の中期的な業績に影響するであろう法改正として、再生医療等安全性確保法および医薬 品医療機器等法が 2014 年 11 月 25 日に施行された。 再生医療等安全性確保法では細胞加工培養作業の外部委託が可能となる 再生医療等安全性確保法では、今まで医療機関に限られていた治療用の細胞加工について、 厚生労働大臣から許可を受けた企業等への外部委託が可能となった。 具体的には、特定細胞加工物(細胞加工物のうち、再生医療等製品以外のもの)の製造の委 託は、細胞培養加工施設ごとに厚生労働大臣の許可、認定を受けるか、または届出をした業 者である特定細胞加工物製造事業者に委託しなければならない。細胞の加工培養を受託する 施設については許可制を導入し、施設の品質管理や安全対策に関する基準を別に設ける。 再生医療等安全性確保法に関して、加工施設の品質管理や安全対策に関する基準が設けられ、 それをクリアした企業のみ受託が可能となることで、免疫細胞治療のパイオニアとして同社 が蓄積してきた細胞加工技術をもって、同社にとっては競合環境の改善につながると SR 社 では認識している。また、細胞加工業として細胞加工施設に集約して細胞加工を受託するこ とで、従来の医療機関に CPC を併設する場合と比較して、費用の効率化を図ることが可能と なるだろう。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 30/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 再生医療等安全性確保法による細胞培養加工の外部委託 出所:厚生労働省資料より SR 社作成 医薬品医療機器等法では早期承認制度が導入される 医薬品医療機器等法のポイントは以下の 2 点にある。 1)再生医療等製品を新たに定義、規制する 2)再生医療等製品は有効性が推定され、安全性が認められれば、一定の条件や期限を定めた うえで承認が与えられる 医薬品医療機器等法では、「再生医療等製品」の定義が新たに設けられ、「再生医療等製品」 を製造販売しようとする者は、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければならないこと になった。また、有効性が推定され、安全性が認められれば、条件・期限付きで承認し、市 販後に有効性、さらなる安全性を検証、期限内に再度申請し、承認取得できれば、引き続き 市販できるようになった。厚生労働省によると、条件・期限付制度により、 (従来の承認制度 と比較して)承認までの期間が 2、3 年程度短縮されることが期待できるという。条件・期限 付承認制度が認められたことで、同社が、再生医療等製品の製造承認を取得することによっ て、ビジネスを展開する可能性が高まったと SR 社は認識している。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 31/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 再生医療等製品の実用化に対応した承認制度(条件・期限付承認) 出所:同社資料 調達品目と調達先 細胞の培養・加工で使用される培地(培養液)はもっとも重要な調達品目の一つであり、主 に、株式会社細胞科学研究所が製造したものを、ニプロ株式会社(東証 1 部 8086)から購入 している。なお、同社は細胞科学研究所に対して出資も行っている。 参入障壁 免疫細胞治療に必要なのは CPC とそれを稼働させるのに必要な技術者であり、設備の設置自 体に関しての参入障壁は高くない。差が出てくるのは技術者の育成や培養方法などのソフト 面である。同社は、累計細胞加工件数では約 146,000 件と他社に比べ、圧倒的な差をつけて いる、と主張している。 また、医薬品医療機器等法において、細胞加工を受託するためには、特定細胞加工物製造事 業者として、厚生労働大臣の許可、認定、または届け出が必要であり、施設の品質管理や安 全対策に関する基準を遵守しなければならない。 競合環境 免疫細胞治療のマーケットは成長途上にあり、シェアを取り合うほどの規模になっていない、 というのが同社の認識である。同社によると現在免疫細胞治療を手掛けている同業他社は、 いずれも木村 CEO と江川氏が 10 年かけてつくりあげた同社のビジネスモデルを踏襲してい る。同社は患者の視点からしても、比較して選択できるとの意味から、健全な競合関係の存 在は望ましいという立場を取っている。 Ÿ テラ株式会社(JASDAQ 2191) http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 32/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 外科医だった矢崎社長によって 2004 年に設立された。同社は、がん免疫療法の一つである 「樹状細胞ワクチン療法」を中心に、化学療法(がん休眠療法)、放射線療法(低侵襲放射 線療法)などを組み合わせることで、効率良くがんを攻撃することを目指す、テラ社独自の 「アイマックスがん治療(免疫最大化がん治療) 」を提供している。 Ÿ 株式会社リンフォテック 同社が約 10%出資している。1999 年 4 月設立。活性化自己リンパ球療法によるがん治療専 門クリニックである白山通りクリニックなどに向けてサービスを提供している。 Ÿ リンパ球バンク株式会社 ANK(Amplified Natural Killer)療法普及を目的に、2001 年設立。京都にある提携医療機 関、東洞院クリニックがリンパ球バンク社の培養センター内を使用して細胞培養を行ってい る。 Ÿ ジェー・ビー・セラピュティクス株式会社 東京女子医大・消化器病センターの外科医だった谷川氏が 2001 年に設立。実施医療機関は 東京女子医大・消化器病センターやビオセラクリニック。 上に名前を掲げた 4 社とともに、同社は免疫細胞治療を実施する主要医療機関で構成される 免疫細胞療法連絡会における協力企業であり、競合関係にありながらも、免疫細胞治療の普 及に向けて共同で基準づくりなどを行っている。 また、細胞加工業では以下の企業が競合または類似企業としてあげられる。 Ÿ タカラバイオ株式会社(東証マザーズ 4974) 寳酒造株式会社(現・宝ホールディングス株式会社(東証 1 部 2531))のバイオ事業部門と してスタートした。 遺伝子導入用ベクターの製造や細胞の培養・加工、バイオ医薬品の GMP 製造(医薬品等の品 質管理基準に準拠した製造)の受託ができる新施設「遺伝子・細胞プロセッシングセンター」 を 2014 年 10 月に本格稼働し、バイオ医薬品の開発・製造受託業務を行う CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)事業を拡大させる方針である。 Ÿ 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(東証JASDAQグロース 7774) 1999 年設立、患者本人から採取したヒト組織・細胞を用いる自家培養技術を利用し、再生医 療等製品を開発し、医療機関向けに製造販売することを主な事業目的としている。2014 年 11 月現在、自家培養表皮ジェイス(重症熱傷用)、自家培養軟骨ジャックを上市済みである。 2014 年 10 月現在、富士フィルムホールディングス株式会社(東証 1 部 4901、以下、富士 フィルム社とする)が発行済株式の 45.47%を保有している。富士フィルム社は新株予約権 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 33/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 行使により、2014 年内に連結子会社とする予定である。 代替品 がん治療分野では、当然ながらこれまで行われてきた三大療法(外科手術、放射線、抗がん 剤)が存在する。三大療法のそれぞれを併用することもあるが、同社によると、三大療法と 免疫細胞治療との併用により、より治療の効果を高めることができる場合もある。 治療方法 治療対象 特徴 対象となるがん 治療上の問題点 外科療法 局所 局所に限局したが 早期の固形がん 手術時に検出できなか (手術) んでは治癒可能 ったがんがあれば再発 に至る 放射線療法 局所 外科療法の困難な 頭頸部がん ・一定以上の線量はかけ 部位のがんに有効 子宮がん られない 前立腺がんなど ・正常組織に損傷が及ぶ 場合もある 化学療法 全身 (抗がん剤) 免疫細胞治 療 がんの一時縮小効 進行がん全般 果に優れている 全身 ・有効な場合には持 続期間が長い ・有効性の持続が短い ・副作用が大きい 進行がん全般 即時的な腫瘍縮小効果 が弱い ・微小癌の治癒効果 にも期待 (出所:会社資料より SR 社作成) http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 34/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 過去の財務諸表 前期以前の業績概況(参考) 2014 年 9 月期第 3 四半期実績 2014 年 9 月期第 3 四半期累計期間の売上高は、前年同期比 9.2%減の 1,418 百万円となっ た。免疫細胞療法総合支援サービスの売上や受託研究売上等が前年同期比で減少した。 2013 年 12 月に、転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」を開発する米国 Argos Therapeutics 社との間でライセンス契約を締結し、日本国内での「AGS-003」の開 発及び製造の独占的許諾を獲得し、それに伴い一時金を支出した。 「AGS-003」の開発パイプ ライン獲得に係る研究開発費等により 2014 年 9 月期第 3 四半期連結累計期間の研究開発費 は、前年同期比で 115 百万円(29.1%)増加した。 研究開発活動の成果として、2014 年 9 月期第 3 四半期累計期間において以下の特許が成立 した。 Ÿ 「抗原提示細胞の活性化処理方法」:欧州11カ国、オーストラリア、日本に加えて米国 を追加 Ÿ 「CTLとγδT細胞の同時誘導方法」:日本での特許が成立 新たな事業展開に向けた取り組みの中で既存事業に係る営業活動については一層の効率化を 図っていることから、2014 年 9 月期第 3 四半期連結累計期間の販売費については、前年同 期比で 72 百万円(24.6%)減少した。また、細胞加工業及び細胞医療製品事業の推進・展開を 図るための戦略的投資等により、一般管理費については、前年同期で 211 百万円 (29.1%) 増加した。以上の結果、2014 年 9 月期第 3 四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は 1,668 百万円(前年同期比 255 百万円増、18.0%増)となった。 売上高の減少に加え、販売費及び一般管理費の増加により、営業損失は 1,008 百万円(前年 同期は営業損失 659 百万円) 、経常損失は 1,041 百万円(前年同期は経常損失 732 百万円) となった。投資有価証券売却益 440 百万円を計上したことから、四半期純損失は 636 百万円 (前年同期は四半期純利益 122 百万円)となった。 各事業セグメントの状況は以下の通りである。なお、当 2014 年 9 月期第 1 四半期より、従 来の単一セグメントから、「細胞加工業」および「細胞医療製品事業」の 2 区分に変更した。 細胞加工業:売上高 1,416 百万円、セグメント利益 37 百万円 細胞加工業については、当面は、細胞加工業への移行を検討している免疫細胞療法総合支援 サービス売上が収益の柱となっている。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 35/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2014 年 9 月期第 3 四半期連結累計期間においては、既存契約医療機関に対するサービス売 上が減少した。契約医療機関の患者数(細胞加工件数)が前年同期比で減少した。一方、技 術開発投資の適正化や営業活動の効率化により、営業費用の削減を行った。 細胞医療製品事業:売上高 2,206 千円、セグメント損失 618 百万円 2014 年 9 月期第 3 四半期連結累計期間において、米国 Argos Therapeutics 社が開発を進め ている転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」の日本国内における開発、 製造権を獲得するための契約一時金による研究開発費が発生した。 収益として、細胞医療製品の可能性の評価を行うため、免疫細胞治療に係る先進医療を実施 している契約医療機関に対して免疫細胞療法総合支援サービスを提供し、サービス売上を計 上した。 2014 年 9 月期第 2 四半期実績 2014 年 9 月期第 2 四半期累計期間の売上高は、前年同期比 2.6%減の 999 百万円となった。 免疫細胞療法総合支援サービスの売上が前年同期比で増加した一方、受託研究売上等が減少 した。 2013 年 12 月に、転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」を開発する米国 Argos Therapeutics 社との間でライセンス契約を締結し、日本国内での「AGS-003」の開 発及び製造の独占的許諾を獲得し、それに伴い一時金を支出した。 「AGS-003」の開発パイプ ライン獲得に係る研究開発費等により 2014 年 9 月期第2四半期連結累計期間の研究開発費 は、前年同期比で 141 百万円(52.7%)増加した。 新たな事業展開に向けた取り組みの中で既存事業に係る営業活動については一層の効率化を 図っていることから、2014 年 9 月期第2四半期連結累計期間の販売費については、前年同期 比で 56 百万円(30.2%)減少した。また、細胞加工業及び細胞医療製品事業の推進・展開を図 るための戦略的投資等により、一般管理費については、前年同期で 123 百万円 (27.3%)増 加した。以上の結果、2014 年 9 月期第2四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は 1,109 百万円(前年同期比 207 百万円増、23.0%増)となった。 売上高の減少に加え、販売費及び一般管理費の増加により、営業損失は 610 百万円(前年同 期は営業損失 421 百万円)、経常損失は 638 百万円(前年同期は経常損失 486 百万円)、四 半期純損失は 229 百万円(前年同期は四半期純利益 113 百万円)となった。 各事業セグメントの状況は以下の通りである。なお、当 2014 年 9 月期第 1 四半期より、従 来の単一セグメントから、「細胞加工業」および「細胞医療製品事業」の 2 区分に変更した。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 36/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 細胞加工業:売上高 998 百万円、セグメント利益 107 百万円 細胞加工業については、当面は、細胞加工業への移行を検討している免疫細胞療法総合支援 サービス売上が収益の柱となっている。 2014 年 9 月期第2四半期連結累計期間においては、既存契約医療機関に対するサービス売上 に大きな変動はなかった。細胞加工件数は前年同期比で若干減少したものの、単価の高い治 療法が多く選択されたため、売上高は前年同期比でほぼ横ばいとなった。一方、技術開発投 資の適正化や営業活動の効率化により、営業費用の削減を行った。 細胞医療製品事業:売上高 614 千円、セグメント損失 467 百万円 2014 年 9 月期第2四半期連結累計期間において、米国 Argos Therapeutics 社が開発を進め ている転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」の日本国内における開発、 製造権を獲得するための契約一時金による研究開発費が発生した。 収益として、細胞医療製品の可能性の評価を行うため、免疫細胞治療に係る先進医療を実施 している契約医療機関に対して免疫細胞療法総合支援サービスを提供し、サービス売上を計 上した。 貸借対照表 米国 Argos Therapeutics 社に対し、長期貸付等を行ったことで、第2四半期累計期間の長 期貸付金は 2013 年 9 月期末比で 876 百万円増加し、1,506 百万円となった。今後の Argos 社に対するマイルストーンは、当該長期貸付金から支払われる予定である。 2014 年 9 月期第 1 四半期実績 2014 年 9 月期第 1 四半期累計期間の売上高は、免疫細胞療法総合支援サービスの売上が前 年同期を上回り、前年同期比 1.9%増の 527 百万円となった。2013 年 12 月に転移性腎細胞 がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」を開発する米国 Argos Therapeutics 社との間 でライセンス契約を締結し、国内での「AGS-003」の開発及び製造の独占的許諾を獲得した。 それに伴い一時金を支出している。「AGS-003」の開発パイプラインに係る研究開発費等に より、第 1 四半期の研究開発費は前年同期より 89 百万円(75.8%)増加した。 営業活動の効率化により販売費は前年同期から 11 百万円(13.6%)減少したが、一般管理 費は 2013 年 11 月に成立した2つの法律の施行に向けて、細胞加工業及び細胞医療製品事業 の推進・展開のための戦略的投資を行ったことにより同 56 百万円(25.5%)増加した。 以上の結果、販管費は前年同期比 32.1%増の 552 百万円、営業損失は 287 百万円(前年同 期は営業損失 177 百万円)となった。また、外貨建て投資有価証券の円換算等による為替差 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 37/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 益 17 百万円等の営業外損益により経常損失は 273 百万円(同経常損失 139 百万円)、投資 有価証券の評価損 7 百万円の計上により四半期純損失は 283 百万円(同経常損失 141 百万円) となった。 各事業セグメントの状況は以下の通りである。なお、当 2014 年 9 月期第 1 四半期より、従 来の単一セグメントから、「細胞加工業」および「細胞医療製品事業」の 2 区分に変更した。 細胞加工業:売上高 526 百万円、セグメント利益 86 百万円 細胞加工業への移行を検討している免疫細胞療法総合支援サービス売上が収益の柱となって おり、第 1 四半期においては、既存契約医療機関に対するサービス売上に大きな変動はなか ったものの、技術開発投資の適正化や営業活動の効率化により営業費用が削減された。 細胞医療製品事業:売上高 614 千円、セグメント損失 252 百万円 細胞医療製品「AGS-003」の国内における開発、製造権獲得のための契約一時金による研究 開発費が発生した。細胞医療製品事業は研究開発投資が先行している状況だが、免疫細胞治 療に係る先進医療を実施している契約医療機関に対して、免疫細胞療法総合支援サービスを 提供し、サービス売上を計上している。 2013 年 9 月期通期実績 2013 年 9 月期の売上高は前年比 3.7%減の 2,110 百万円であった。2012 年 11 月に抗体医 薬品との併用による相乗効果が期待される「NK 細胞療法」技術を同社グループ契約医療機関 に対して提供を開始したが、全体としては既存契約医療機関に対する免疫細胞療法総合支援 サービス売上が予想を下回り、売上高は対前年比で減少した。 売上高総利益率は 4.0 ポイント低下し、48.6%となった。その結果、売上総利益は前年比 11.0%減の 1,026 百万円となった。 販管費は前年比 2.1%増の 1,904 百万円であった。広報活動の効率化により販売費は同 7.6%減少したが、研究開発費が同 0.5%増加したほか、基幹システムの保守費用や租税公課 の増加等から一般管理費が同 7.5%増となった。 以上の結果、営業損失は 878 百万円(2012 年 9 月期は営業損失 711 百万円)となった。そ の他、株式交付費 32 百万円、投資事業組合運用損 122 百万円などの営業外損益により、経 常損失は 952 百万円(2012 年 9 月期は経常損失 711 百万円)となった。また、保有株式を 売却したことによる投資有価証券売却益 618 百万円を特別利益に計上したこと等から当期純 損失は 348 百万円(2012 年 9 月期は当期純損失 625 百万円)となった。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 38/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2012 年 9 月期通期実績 2012 年 9 月期通期の売上高は前年比 18.1%減の 2,191 百万円であった。同社は売上が減少 した理由として、1)2011 年 9 月期後半に減少した既存契約医療機関における細胞加工件数 が、2012 年 9 月期後半には回復傾向にあるものの当初期待したほどの回復には至らなかっ たこと、2)医療機関向けの広報企画・支援サービスに係る売上が減少したこと、などを指摘 している。 売上原価の売上高に対する比率は、売上高の減少による固定費割合の増加を主因に 10.2 ポ イント増加し、47.4%となった。その結果、売上総利益は前年比 31.4%減の 1,153 百万円 となった。 販管費は前年比 6.1%減の 1,864 百万円であった。研究開発費が同 10.2%増となったほか、 システムサポート費用の増加(2011 年 10 月に基幹システムの入れ替えを実施、同システム が安定的に稼働・運用されるまでの間のサポート費用が増加)等から一般管理費が同 4.2%増 となったが、販売費が上記のような広報企画の効率化によって同 32.6%減となったことが販 管費減少に寄与した。 以上の結果、営業損失は 711 百万円(2011 年 9 月期は営業損失 304 百万円)となった。そ の他、受取利息 19 百万円、支払利息 7 百万円、投資事業組合運用損 25 百万円の営業外損益 により、経常損失は 711 百万円(2011 年 9 月期は経常損失 353 百万円)となった。また、 保有株式を売却したことによる投資有価証券売却益 119 百万円を特別利益に計上したこと、 減損損失 10 百万円(本社建物及び医療機関賃貸用建物の減損処理)、投資有価証券評価損 10 百万円を特別損失計上したこと等から当期純損失は 625 百万円(2011 年 9 月期は当期純 損失 543 百万円)となった。 2011 年 9 月期通期実績 2011 年 9 月期の売上高は前年比 16.5%減の 2,674 百万円であった。同社は免疫細胞療法支 援サービス売上が 2010 年 9 月期よりも減少した理由として、下記のような点を指摘してい る。 1)東日本大震災の発生に伴う交通遮断、資材仕入れ先の被災、ロジスティクスの停止などに より、新患の受け入れを一時的に停止したこと 2)計画停電による細胞培養への障害の発生 3)大震災への不安感からくる患者の需要の落ち込みの影響 4)同社が一定期間広告活動を自粛したこと、また、広報活動を再開した後も大震災の影響が 予想以上に大きく、2010 年 9 月期のような広報効果が得られなかったこと http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 39/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 販管費が前年比 7.9%増となったこともあって、2011 年 9 月期の営業損失は 304 百万円 (2010 年 9 月期は営業利益 334 百万円)となった。また、公募増資に伴う株式交付費 20 百万円(営業外費用に計上)や投資事業組合運用損 16 百万円(営業外費用に計上)の発生、 資産除去債務基準の適用に伴う影響額 21 百万円(特別損失に計上)、繰延税金資産を見直し、 法人税等調整額 154 百万円を計上したことなどにより、当期純損失は 543 百万円(2010 年 9 月期は当期純利益 439 百万円)となった。 2010 年 9 月期通期実績 2010 年 9 月期通期の詳細は下記の通りである。 Ÿ 売上高: 3,202百万円(前年比10.4%増) Ÿ 営業利益: 334百万円(同13.7%増) Ÿ 経常利益: 366百万円(同13.1%増) Ÿ 当期純利益: 439百万円(同78.4%増) 2010 年 9 月期 業績のレポートカード 売上高 当初予想: 3,190 百万円 実績: 3,202 百万円 営業利益 当初予想: 210 百万円 実績: 334 百万円 経常利益 当初予想: 210 百万円 実績: 366 百万円 当期純利益 当初予想: 200 百万円 実績: 439 百万円 売上高はがん免疫細胞治療に対する患者の認知度及び理解度の向上に伴って新規治療開始者 数が増加したことにより、前年比 10.4%増となった。同社による学術営業活動および患者向 け情報提供の効果とのことである。同社の技術を用いて治療を実施する医療機関は 2009 年 9 月期末の 52 施設から 2010 年 9 月末には 63 施設に増加している。営業利益は 334 百万円 (前年比 13.7%増)となった。増益要因としては増収による売上総利益の増加(155 百万円)、 減益要因としては研究開発費の増加(30 百万円)、販売費の増加(67 百万円)、一般管理 費の増加(17 百万円)が挙げられる。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 40/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 営業利益は当初予想を 124 百万円上回った。当初予想との差異の内訳は、一般管理費が当初 予想を 15 百万円上振れしたものの、売上総利益が 78 百万円当初予想を上回ったほか、研究 開発費が 42 百万円、販売費が 19 百万円、それぞれ当初予想を下回ったことによる。他に、 経常利益が当初予想を上回った要因としては、円高の進展に伴い為替差益が 32 百万円発生 したこと、当期純利益が当初予想を上回った要因としては、繰延税金資産計上に伴う法人税 等調整額の戻入が 141 百万円発生したことなども挙げられる。 損益計算書 損益計算書(百万円) 10年9月期 11年9月期 12年9月期 13年9月期 連結 連結 連結 連結 連結 3,202 2,674 2,191 2,110 1,844 前年比 10.4% -16.5% -18.1% -3.7% -12.6% 売上原価 1,029 994 1,038 1,085 1,018 2,173 1,680 1,153 1,026 826 67.9% 62.8% 52.6% 48.6% 44.8% 販売費及び一般管理費 1,839 1,984 1,864 1,904 2,233 売上高販管費比率 57.4% 74.2% 85.1% 90.2% 121.1% 営業利益 334 -304 -711 -878 -1,407 前年比 13.7% - - - - 営業利益率 10.4% - - - - 116 売上高 売上総利益 売上総利益率 14年9月期 営業外収益 55 12 34 95 営業外費用 23 62 34 169 48 366 -353 -711 -952 -1,339 経常利益 前年比 経常利益率 13.1% - - - - 11.4% - - - - 特別利益 2 0 119 618 440 特別損失 62 25 23 8 673 法人税等 -132 -379 10 7 10 - - - - - 439 -543 -625 -348 -1,581 税率 当期純利益 前年比 78.4% - - - - 利益率(マージン) 13.7% - - - - 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 *2008年9月期までは単独決算、2009年9月期以降は連結決算。 同社の売上高は免疫細胞治療を受ける患者が医療機関に対して支払う治療費の特定の割合で あり、基本的に新規治療開始患者数や細胞加工件数に比例する。さらには、新規治療開始患 者数は、概ね同社のがん患者に対する広報宣伝活動および免疫細胞治療を実施する医師・医 療機関が増えるかどうかによって決まる。 同社の 2003 年 9 月期~2008 年 9 月期の売上総利益率は 53.8~59.6%と安定的に推移して http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 41/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 いたが、2009 年 9 月期には 69.6%まで改善し、2010 年 9 月期も 67.9%と以前より高水準 であった。これは患者数の増加により CPC の稼働率が上がったためと思われる。2011 年 9 月期に関しては、62.8%へと低下した。これは東日本大震災の影響等により患者数が対前年 で減少、CPC の稼働率が低下したことが主因と推測される。また、2012 年 9 月期に関して も、52.6%と低水準であった。1)2011 年 9 月期後半に減少した既存契約医療機関における 細胞加工件数が、2012 年 9 月期後半には回復傾向にあるものの当初期待したほどの回復に は至らなかったこと、2)新たにサービス提供を開始した九州地区、北陸地区の労務費、設備 維持経費の増加等により売上原価が増加したこと、などが要因とみられる。 販管費(コスト分析はビジネスモデルの「コスト分析」の項を参照)で人件費の次に大きい のは研究開発費であり、2009 年 9 月期の売上高研究開発費率は 13.0%である。同社による とこれまで研究開発費については、先行投資として 4~5 億円を投じる方針であったが、今 後も最低でも 4~5 億円を研究開発に充てる方針である。他の主要項目は宣伝広告費であり、 2009 年 9 月期の広告宣伝費の対売上高比率は 7.5%であった。同社は患者の認知度を向上さ せるためのプロモーション費用および学術営業費用を広告宣伝費として計上している。 2013 年 9 月期には、広報企画の効率化に努めており、対売上高比率は 5.5%と低下してい る。 営業外損益については、特筆すべき項目は見当たらず、経常利益は営業利益とほぼ同じ水準 である。また、特別損益については、2007 年 9 月期に株式交換益として韓国 KOSDAQ 上場 企業 KOREA HINET Co., Ltd.株式について 937 百万円の特別利益を計上した後、翌年の 2008 年 9 月期に同株式の時価が著しく下落したことに伴い、投資有価証券評価損 984 百万 円を特別損失に計上しているが、これ以外に大きなものはない。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 42/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 過去の会社予想と実績の差異 期初会社予想と実績 10年9月期 11年9月期 12年9月期 13年9月期 連結 連結 連結 連結 連結 売上高(期初予想) 3,190 3,522 2,650 2,400 2,270 売上高(実績) 3,202 2,674 2,191 2,110 1,844 0.4% -24.1% -17.3% -12.1% -18.8% 210 350 -400 -620 -965 334 -304 -711 -878 -1,407 59.1% - - - - (百万円) 期初会予と実績の格差 営業利益(期初予想) 営業利益(実績) 期初会予と実績の格差 14年9月期 経常利益(期初予想) 210 350 -400 -620 -965 経常利益(実績) 366 -353 -711 -952 -1,339 期初会予と実績の格差 74.4% - - - - 200 340 -410 -630 -975 439 -543 -625 -348 -1,581 119.3% - - - - 当期利益(期初予想) 当期利益(実績) 期初会予と実績の格差 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 43/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 貸借対照表 貸借対照表 (百万円) 10年9月期 11年9月期 12年9月期 13年9月期 14年9月期 連結 連結 連結 連結 連結 2,962 1,859 1,522 2,081 2,111 561 551 378 361 298 - 3,000 2,100 5,600 3,800 103 資産 現金・預金 売掛金 有価証券 たな卸資産 30 132 132 114 275 201 265 273 284 3,828 5,743 4,395 8,430 6,596 建物・構築物 829 881 861 884 757 減価償却累計額 431 496 537 615 571 その他 流動資産合計 機械装置 67 95 75 62 62 減価償却累計額 40 58 61 57 -60 工具器具備品 - - - - - 減価償却累計額 - - - - - 30 78 78 119 155 4 14 29 51 79 27 - - 4 435 リース資産 減価償却累計額 建設仮勘定 その他 65 145 103 100 106 544 630 489 447 804 1,321 1,442 2,180 3,109 2,256 67 209 250 257 292 1,932 5,760 2,281 8,024 2,919 7,314 3,812 12,242 3,352 9,947 142 137 120 131 111 800 有形固定資産合計 投資その他の資産合計 無形固定資産合計 固定資産合計 資産合計 負債 買掛金 短期有利子負債 5 800 800 800 その他 736 419 279 351 375 流動負債合計 883 1,356 1,199 1,281 1,286 1,000 1,000 1,000 - - - - - - - 固定負債合計 1,000 1,182 1,193 591 182 負債合計 1,904 2,538 2,392 1,873 1,468 資本金 2,582 3,631 3,631 6,157 6,376 資本剰余金 3,995 5,044 5,044 7,570 7,788 利益剰余金 長期有利子負債 その他 純資産 -2,702 -3,245 -3,870 -4,218 -5,799 その他 -19 56 117 852 87 純資産合計 3,855 5,486 4,922 10,370 8,479 449 547 389 345 290 有利子負債合計 1,005 1,800 1,800 800 800 ネット・デット -1,957 -59 278 -1,281 -1,311 運転資金 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 44/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 資産 残高が多い勘定科目は現金・預金である。2014 年 9 月末においては、有価証券が 3,800 百 万円となっているが、元本確保型の短期金融商品で運用されている。従って、概ね現金・預 金に近い性質であると言え、現金・預金に有価証券を加えた金額は、5,911 百万円であり、 総資産の 59.4%を占める。固定資産の中で主なものは、CPC を中心とする有形固定資産、投 資有価証券、長期貸付金である。また、同社は事業戦略の一環として関連技術を保有する企 業などに出資を行っていることから、投資その他の資産の残高が比較的大きい。 負債 同社は自己資本比率が高く(2014 年 9 月期は 85.0%)、有利子負債の残高は 2014 年 9 月 期で短期借入金 800 百万円に留まっている。 純資産 2003 年 9 月期から 2014 年 9 月期の期間、同社の資本金は継続的な新規株式発行により増 加を続けた。しかしながら、同社は 2004 年 9 月から 2014 年 9 月期までの間、2007 年 9 月期、2009 年 9 月期、2010 年 9 月期の 3 期以外はすべて当期純損失を計上している。 キャッシュフロー計算書 キャッシュフロー計算書 10年9月期 11年9月期 12年9月期 13年9月期 (百万円) 連結 連結 連結 連結 連結 営業活動によるキャッシュフロー (1) 528 -252 -338 -516 -1,020 投資活動によるキャッシュフロー(2) FCF (1+2) 財務活動によるキャッシュフロー 14年9月期 -74 -722 -884 582 -1,156 454 -973 -1,222 66 -2,176 1,113 2,869 -15 3,994 406 当期純利益(NI) 439 -543 -625 -348 -1,581 減価償却費及びのれん償却費 (A) 129 154 212 211 195 設備投資 (B) -80 -24 -232 -111 -578 運転資金増減 (C) -32 98 -157 -44 -55 単純FCF (NI+A+B-C) 520 -510 -488 -204 -1,909 出所:会社データよりSR社作成 *表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。 Ÿ 営業活動によるキャッシュフロー 2003 年 9 月期から 2014 年 9 月期の間、営業活動によるキャッシュフローがプラスであっ たのは 2003 年 9 月期、2009 年 9 月期、2010 年 9 月期の 3 期のみである。当期純利益が http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 45/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 概ね営業キャッシュフローの水準を決定付けている。 Ÿ 投資活動によるキャッシュフロー 投資活動によるキャッシュフローの動きは主に有価証券、投資有価証券の取得・売却や、有 形固定資産の取得などで説明することができる。2011 年 9 月期は無形固定資産の取得によ る支出 134 百万円、長期前払費用の取得による 470 百万円など、2012 年 9 月期は長期貸付 けによる支出 700 百万円、有形固定資産の取得による支出 128 百万円、無形固定資産の取得 による支出 104 百万円などにより支出超過となった。2013 年 9 月期は投資有価証券の売却 による収入 680 百万円が寄与し、収入超過となった。2014 年 9 月期は有形固定資産の取得 472 百万円、長期貸付による支出 950 百万円などにより、支出超過となった。 Ÿ 財務活動によるキャッシュフロー 同社の財務キャッシュフローは主に IPO や第三者割当増資などによる新株などの発行が中心 である。2003 年 9 月期以降の主な新株などの発行は次の通り。 2003 年 9 月期:新株発行 385 百万円 2004 年 9 月期:2003 年 10 月の東証マザーズ上場などによる収入 4,649 百万円 2007 年 9 月期:第三者割当の新株の発行、第三者割当の新株予約権の行使などの株式の発 行による収入 266 百万円 2008 年 9 月期:株式の発行による収入 146 百万円 2009 年 9 月期:新株予約権の行使に伴う新株発行による収入 502 百万円 2010 年 9 月期:新株予約権付社債の発行、新株発行による収入 1,115 百万円 2011 年 9 月期:新株発行による収入 2,078 百万円 2013 年 9 月期:株式の発行による収入 4,018 百万円 Ÿ 単純フリー・キャッシュフロー 同社は成長途上にあり、2004 年 9 月期から 2008 年 9 月期の間、2007 年 9 月期を除き、当 期純損失を計上しており、そのため単純キャッシュフローも赤字基調にあった。しかし、 2009 年 9 月期、2010 年 9 月期には当期純利益を計上したことから、単純フリー・キャッシ ュフローも改善した。2011 年 9 月期以降は、当期純損失の計上から再び単純キャッシュフ ローも赤字となった。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 46/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 その他情報 免疫細胞治療 がん免疫治療の歴史 がんに対する免疫細胞治療は 100 年以上の歴史を持つ。1891 年に外科医である W.B.コーリ ーはバクテリアを混合したワクチンをがん患者に投与して、免疫を活性化させることにより がんの治療に当たった。しかしながら、当時は、この治療法の作用機構はほとんどわかって いなかった。その後がん治療の研究の焦点は放射線療法に移ったため長年がん免疫療法は積 極的に研究されることはなかったが、 1970 年代から再び注目されるようになった。1980 年代中頃からは免疫学の発展によりがんに対する免疫機構が細胞レベル、分子レベルで解明 され、これを基にサイトカイン療法、免疫細胞治療、ペプチドワクチン療法などの新しい療 法が考案された。 サイトカイン療法:免疫細胞が分泌するサイトカインの分子を合成し、製剤として使用する ものがサイトカイン療法である。この療法では、抗腫瘍免疫応答にかかわるサイトカインで あるインターロイキン 2 (IL-2) 、インターフェロン (IFN) α、β、γ を製剤として投与する が、大量に使用した場合は重篤な副作用を伴う。 免疫細胞治療:サイトカイン療法より少し遅れて登場したのが免疫細胞治療である。免疫細 胞治療のうち最も一般的な療法である活性化自己リンパ球療法は、1980 年代に米国 NIH (National Institute of Health)の外科部長であった Steven A. Rosenberg によって創始さ れた治療法である。Rosenberg が行った治療はがん患者のリンパ球を IL-2 存在下において 体外で培養、活性化した上で患者の体内に戻し、それと同時に大量の IL-2 を直接身体に注入 し、体内においてもリンパ球を活性化させるというものであった。この療法は IL-2 による副 作用が極めて強かったため、欧米においてはその後あまり展開が見られなかった。この治療 法の改良を最も積極的に行ってきたのは日本であり、90 年代になって、現在の方法で研究臨 床として実際に治療が行われるまでに発展した。また、この免疫細胞治療を普及医療として 発展させることに世界で初めて取り組んだのが、元東京大学名誉教授、江川滉二氏である。 がんには 100 以上の種類が存在する(出所:アメリカ国立癌研究所 http://www.cancer.gov/cancertopics/cancerlibrary/what-is-cancer)と言われている。 残念ながら、外科手術や放射線治療は現在のところ転移がんには有効ではない。転移がんの 完治は非常に難しいと言われているが、患者の免疫機能を活性化させることによりがんを退 治しようとする療法であるため、今後のがん治療にとって大きな可能性を秘めていると SR 社では見ている。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 47/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 免疫細胞治療の仕組み がん細胞を攻撃する仕組みとしては、いくつかのパターンがある。抗腫瘍活性を有する免疫 細胞、つまり腫瘍が活性化する動きを弱める働きをする免疫細胞には、NK 細胞、NKT 細 胞、ガンマ・デルタ T 細胞、アルファ・ベータ T 細胞の 4 種類がある。この 4 種類の細胞の 使い方次第で、治療方法は「腫瘍抗原特異的治療」 「腫瘍抗原非特異的治療」に分かれる。 腫瘍抗原特異的治療:がん細胞の表面には通常 MHC クラス I という抗原が発現(細胞表面 に現れること)している。この抗原を目印としてがん細胞を攻撃する治療法が樹状細胞ワク チン療法や CTL 療法である。これらが腫瘍抗原特異的治療であり、CTL 細胞を活性化させる ことによりがん細胞を特異的(効率的)に攻撃することができる。 腫瘍抗原非特異的治療:がん細胞によっては、MHC クラス I の発現が低下、消失している 例もあり、この場合は腫瘍抗原非特異的治療しか実施することができない。非特異的な場合 の治療法として行われるのが活性化自己リンパ球療法(LAK 療法)である。活性自己リンパ 球療法は生体が本来持っている自然免疫を高めることで、がんの増殖をくい止めたり、がん の転移・再発を抑えることを目的とした治療である。活性自己リンパ球療法で最も一般的な のがアルファ・ベータ T 細胞療法であるが、これ以外にガンマ・デルタ T 細胞療法、NK 細 胞療法がある。 同社が 2014 年 6 月現在提供している免 疫 細 胞 治 療 は 以 下 の 5 種 類 。 一 部 の 技 術 に つ い ては組合せでの提供も可能。 Ÿ アルファ・ベータT細胞療法 Ÿ ガンマ・デルタT細胞療法 Ÿ CTL療法 Ÿ 樹状細胞ワクチン療法(DCワクチン療法) Ÿ NK細胞療法 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 48/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 出所:会社資料より SR 社作成 アルファ・ベータ T 細胞療法:末梢血液中に含まれる単核球(アルファ・ベータ(αβ)型 T 細胞、ガンマ・デルタ(γδ)型 T 細胞、 NK 細胞、単球などの免疫担当細胞全般)を、抗 CD3 抗体と IL-2 によって活性化、増殖させて患者自身の体内に戻す治療法。増殖後の細胞は、 活性化されたアルファ・ベータ型 T 細胞が全体細胞数の約 90% を占める。 ガンマ・デルタ T 細胞療法:末梢血液中に含まれる単核球をゾレドロン酸と IL-2 の組み合 わせによって培養することでガンマ・デルタ型 T 細胞を選択的に活性化、増殖させて患者自 身の体内に戻す治療法。 アルファ・ベータ T 細胞療法と比較して、活性化されたガンマ・デルタ型 T 細胞がより数多 くを占める。同社では 2007 年 10 月に技術・サービス提供を開始。 CTL 療法:末梢血液中に含まれる単核球を胸水又は腹水などから得られたがん細胞を用いて 刺激・培養することで、特定のがん細胞を攻撃する能力の高い細胞傷害性 T 細胞(CTL; Cytotoxic T Lymphocyte)を誘導し、それらの CTL を含んだ細胞を患者自身に戻す治療法。 樹状細胞ワクチン療法(DC ワクチン療法):末梢血液中から分離した単球を樹状細胞に分化 させ、患者のがん細胞から抽出したがん抗原や合成したがん抗原を取り込ませた上で患者へ の投与を行う治療法。樹状細胞はがん抗原を細胞内に取り込んで、がん抗原の特徴をリンパ 球に伝えることで CTL を効率的に誘導させる能力を持つため、投与された樹状細胞は体内で http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 49/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 CTL を誘導し、その CTL ががんを攻撃する。同社では、ゾレドロン酸による感作と Cell Loading System を用いる独自の樹状細胞加工技術により、がん抗原取り込み能および CTL 誘導能の向上を実現している。同社では 2008 年 8 月に Cell Loading System を導入した樹 状細胞加工プロセスの提供を開始した。 NK 細胞療法:NK 細胞は、抗体医薬品との相性がよく、MHC クラス I の発現がないがん細胞 や、ウイルス感染細胞に対して、特に殺傷能力を持つリンパ球の一種。がん患者は健康な人 と比べ、NK 細胞活性が低下していることも判明している。一方、従来の NK 細胞培養技術で は、安全で活性の高い NK 細胞を短期間で効率的に増殖させることが困難なこともあり、新 たな NK 細胞培養技術の確立が求められていた。同社が開発した新たな NK 細胞の培養技術は、 これらの課題を克服した技術であり、NK 細胞を高活性化し、2 週間で最大 2,000 倍までに大 量培養することができるほか、徹底した独自の安全・品質管理基準を設定することで、高い 生物的安全性を担保しているとしている。本技術の提供を 2012 年 11 月より開始した。 エレクトロポレーション法を用いた新規樹状細胞加工プロセス 同社の研究開発の成果としては、新規樹状細胞加工プロセスが挙げられる。樹状細胞とは、 T リンパ球にがん抗原を教えて細胞傷害性 T リンパ球(CTL、がん細胞を攻撃するリンパ球 のこと)を誘導・増殖させる、がん免疫の司令塔である。がん抗原ペプチドを用いる場合、 誘導できる CTL は限定されるため、治療に用いるには、自己がん細胞の抗原を用いることが 望ましい。同社の技術の特徴は、樹状細胞の CTL 誘導能力を向上するに際して、ゾレドロン 酸を使ったことである。同社が開発した樹状細胞加工プロセスでは、患者の身体から採取し た腫瘍細胞をゾレドロン酸処理することで、樹状細胞の CTL 誘導能はアジュバントを使って 誘導を図った場合の 60 倍に達した。さらに、ペプチドとゾレドロン酸共感作の場合は、CTL の誘導能はペプチド感作の場合の約 100 倍に達したケースもあった。ゾレドロンによる免疫 増強のメカニズムは、以下の通りである。樹状細胞の表面に IPP が提示されると、γδT 細胞 は γδTCR を介して認識して活性化され、インターフェロンガンマを作り出す。それと同時に MHC クラス I や CD86 の抗原の発現が高まり、 抗原特異的 CTL が多く誘導される。 このプロセスのもう一つの特徴は、Cell Loading System を用いたエレクトロポレーション (電気穿孔)法により、通常の共培養法に比べて大量のがん抗原の取り込みを可能にしたこ とである。エレクトロポレーション法は、細胞への DNA やタンパク質の取り込みに広く使 われている。しかしながら、MaxCyte 社のエレクトロポレーション法は、従来のエレクトロ ポレーション法に比べて、閉鎖系で行われるため安全性が高く、一度に大量の細胞を処理す ることができる。また、樹状細胞への導入・発現効率や処理後の生細胞率が高いことを特徴 とする。同社は提携先である MaxCyte 社の設備・技術を導入しおり、マウス実験ではこの 手法を用いた樹状細胞ワクチン療法の有効性が認められ、国立病院機構大阪医療センターと の共同研究として、臨床研究が行われている。同社は MaxCyte 社のエレクトロポレーショ ン技術を国内で独占的に使用できるライセンスを MaxCyte 社から受けていたが、2010 年 4 月ライセンス契約の範囲を大幅に拡大した、がん治療分野に加え、各種の難治性疾患に対し http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 50/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 ても、エレクトロポレーション法を用いた治療選択肢を提供できるようになる。また、これ まで日本に限定されていたライセンス対象国が日本に加え、中国、オーストラリア、シンガ ポール、タイ、台湾に拡大された。MaxCyte 社の技術ライセンスは今後海外進出を行う上で も有効である。 臨床開発 同社の臨床開発活動としては、免疫細胞治療のエビデンスの構築を目指し、同社グループの 契約医療機関を中心に大学病院や各地域の中核医療機関との共同研究活動を実施している。 同社の主な研究活動の役割としては、研究の企画、推進、免疫細胞加工に係る基礎データの 提供等を行うことにあり、これらの活動を通して臨床研究の円滑な推進に努めているという。 さらに、臨床研究の免疫学的検査を適切に支援することで免疫細胞治療の効果予測因子の探 索等にも積極的に取り組んでいるとしている。 出所:会社資料より SR 社作成 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 51/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 特許出願 同社の特許出願状況は以下の通りである(2013 年 9 月末現在)。 出 願 件 数 登 録 件 数 登 録 (国内)23 件 (海外)10 件 ※本件数は未公開出願も含む。 (国内)12 件、 (海外)米国 2 件、欧州(11 ヵ国)3 件、豪州 2 件、韓国 1 件 ドナー等識別方法及び生体物質識別手段 日本 特許 4031932 号 医療支援システム 日本 特許 4136350 号 樹状細胞、該樹状細胞を含む医薬、該樹状細胞を用い 日本 特許 5156137 号 た治療方法および 米国 US8513010 γδT 細胞の培養方法 欧州 EP1788078 豪州 AU2005260887 韓国 KR10-2007-7003050 日本 特許 5307944 号 欧州 EP1930414 豪州 AU2006288348 食道癌の抗原およびその利用 日本 特許 4557886 号 癌抗原及びその利用 日本 特許 5112615 号 抗原提示細胞の活性化処理方法 特許 5291641 号 欧州 EP1536006 培養容器、培養装置および細胞の培養方法 日本 特許 4668538 号 リンパ球増殖抑制因子の吸着剤及び処理方法 日本 特許 4958554 号 細胞培養評価システム、細胞培養評価方法および細胞 日本 特許 4932703 号 日本 特許 5243038 号 米国 US8383395 日本 特許 5197013 号 培養評価プログラム 細胞培養装置 細胞培養用振盪装置及び細胞培養方法の振盪培養方 法 出所:会社資料 上記のうち、「医療支援システム」は、免疫細胞療法総合支援サービスにおける「オーダー メイド医療管理システム」として実用化されている。また、”Dendritic cell, drug containing the dendritic cell, therapeutic method using the dendritic cell and method of culturing gammadelta T cell”及び ”Method for activation treatment of antigen-presenting cell” は、免疫細胞療法総合支援サービスにおける「樹状細胞ワクチン療法」に関連する技術とし て日本において実用化されており、2012 年 9 月時点で、今後、海外へのライセンス供与を 検討していく予定であるという。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 52/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 免疫細胞治療の効果 瀬田クリニックグループにおいて 1999 年 4 月から 2009 年 3 月までに実施された免疫細胞 治療の有効性評価によると、奏効率( (完全奏功+部分奏功)÷全解析症例数)は 13.4%、有 効率((完全奏功+部分奏功+長期安定)÷全解析症例数)は 25.5%である。 瀬田クリニックグループの治療成績 Ÿ 治療成績は、瀬田クリニックグループまたは連携医療機関で受診された患者に対して 『免疫細胞治療』を施行し、その結果を解析し、有効と判断されたものについて結果を まとめたもの Ÿ 1999年4月から2009年3月に、瀬田クリニックグループまたは連携医療機関に来院し、 免疫細胞治療を6回(1クール)以上受けた5,460例の中で、肺、胃、大腸、肝、膵、乳、 子宮、卵巣の原発がん患者1,198例について示している Ÿ 有効性評価は、RECISTガイドライン(国際的に使用される治療効果判定のためのガイド ライン)に準じ、画像評価による腫瘍縮小効果をもとに行い、以下の基準を満たす画像 での病変の比較が可能であった1,198例を対象に治療成績調査を実施 (1)治療前画像:治療開始の 60 日前から 2 回目投与開始前までに撮影したもの (2)治療後画像:5 回目投与以降から 6 回目投与後 30 日以内までに撮影したもの 上記の画像が保管されている、あるいは保管がなくとも明確な記録、または主治医からの報 告書があるもの Ÿ 上記治療成績調査の対象となった1,198名の患者のうち、(1)完全奏効(17名)、(2) 部分奏効(143名)、(3)長期安定(145名)と判定された合計305名の症例を有効と 判断 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 53/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 肺癌 胃癌 大腸癌 肝癌 膵癌 乳癌 子宮癌 卵巣癌 総計 完全 奏効 2 1 2 3 1 2 3 3 17 部分 奏効 57 11 18 11 14 11 6 15 143 長期 安定 43 13 28 13 20 11 7 10 145 完全奏功 1.4% 進行 4 6 .0% 安定 進行 計 奏効率 有効率 125 30 48 33 37 30 21 18 342 135 71 93 56 62 56 38 40 551 362 126 189 116 134 110 75 86 1,198 16.3% 9.5% 10.6% 12.1% 11.2% 11.8% 12.0% 20.9% 13.4% 28.2% 19.8% 25.4% 23.3% 26.1% 21.8% 21.3% 32.6% 25.5% 部分奏功 1 1 .9% 長期安定 12.1% 1,198 例 病勢 コントロール率 62.7% 43.7% 50.8% 51.7% 53.7% 49.1% 49.3% 53.5% 54.0% *奏効率 =(完全奏効+部分奏効)÷全解析症例数 *有効率 =(完全奏効+部分奏効+長期安定)÷全解析症例数 *病勢コントロール率 =(完全奏効+部分奏効+長期安定+安定)÷全解析症例数 安定 2 8 .6% 【 参考: 治療効果の評価方法】 今回の治療効果判定は、以下の「RECISTガイドライン」を参考にして実施 すべての標的病変の消失 完全奏効 部分奏効 ベースライン長径和と比較して標的病変の最長径の和が30%以上減少 安定 「部分奏効」とするには腫瘍の縮小が不十分で、かつ「進行」とするには治療開始以降の最小の最長径 の和に比して腫瘍の増大が不十分 進行 治療開始以降に記録された最小の最長径の和と比較して標的病変の最長径の和が20%以上増加 ※「安定」のうち、以下の基準に該当する場合は、次の通り区分 「安定」と判定された状態が6カ月以上持続したもの 長期安定 出所:医療法人社団 滉志会 瀬田クリニックグループ http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 54/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 沿革 メディネットは、「免疫」に関わる事業分野に将来性を感じた木村佳司氏が 1995 年 10 月に 設立した。現在の主力事業である免疫細胞治療を手掛けるようになったきっかけは、同社の 元相談役で Scientific Founder を務めていた江川滉二氏(2009 年逝去)との出会いにある。 東京大学医科学研究所の基礎研究者だった江川滉二氏は、自身の入院体験を通じて、過酷な がん治療現場を目の当たりにし、「なんとか患者さんを苦しめない新しい治療を患者さんに 提供したい」という思いで、東京大学教授を任期を残して退官し、取り組んだのが「免疫細 胞治療」である。そして、木村氏が、その江川氏に出会い、江川氏の気持ちに深く感銘を受 け、メディネットの事業として着手し、現在に至る。 1999 年 3 月、日本で初めての免疫細胞治療を専門とした瀬田クリニック(東京・世田谷)を 開設し、同社がクリニックを支援するための CPC と研究所を同じ建物内に作り、「免疫細胞 療法総合支援サービス」として瀬田クリニックに提供したのが、事業化の始まりだ。クリニ ック開設の目的は副作用が少なく、患者の負担が少ない免疫細胞医療法を身近な医療として 健全に普及、発展させることであった。 免疫細胞治療は治療の有効性が認められながらも、患者自身の免疫細胞を治療に用いるとい う先端医療であったことから主に臨床研究として、大学病院などの限られた医療機関で行わ れているのみであった。これらの医療機関での症例は限られ、免疫細胞治療を希望する患者 の多くが実際には治療を受けられない状況にあった。この背景には、免疫細胞治療を実施す るには、免疫細胞加工に関して、技術・ノウハウが必要不可欠であり、一般の医療機関がこ れらを行うのは困難とされていた。免疫細胞加工に最も必要とされたのは医療技術ではなく、 一般企業が所有するようなエンジニアリング技術であったと言えよう。つまり、必要な設備、 資材などの部品を集めて組み立て(アッセンブリー)を行うというような生産技術である。 メディネットの現代表取締役社長木村佳司氏が江川滉二氏と、厚生労働省や経済産業省など の関係省庁などと議論と検討を重ねて作り上げたのが、現在のビジネスモデルである。これ までメディネットの成長は、主に瀬田クリニックグループが免疫細胞治療を実施するクリニ ックを東京、新横浜、大阪、福岡に設置し、普及に努めてきたことにより支えられてきた。 1995 年 10 月 予防医学に基づく新たな医療サービスの提供を目的として、現代表取締 役社長木村佳司氏により資本金 1,000 万円で設立。 1999 年 4 月 東京都世田谷区瀬田に分子免疫学研究所開設、瀬田クリニック(1999 年 3 月設立)向けに細胞加工施設(瀬田 CPC)を設置し、免疫細胞両方総 合支援サービスを開始。 2001 年 8 月 厚生労働省による新事業創出促進法に基づく「新事業分野開拓の実施に 関する計画」の認定 2001 年 10 月 新横浜メディカルクリニック(現 瀬田クリニック新横浜)に対し免疫細 胞療法総合支援サービスの提供を開始 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 55/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2003 年 6 月 かとう緑地公園クリニック(現 瀬田クリニック大阪)に対し免疫細胞療 法総合支援サービスの提供を開始 2003 年 10 月 福岡メディカルクリニック(現 瀬田クリニック福岡)に対し免疫細胞療 法総合支援サービスの提供を開始 2003 年 10 月 東京証券取引所マザーズ市場へ株式を上場 2004 年 3 月 ISO(国際標準化機構)が制定した品質マネジメントシステムの国際規格 ISO9001 の認証を取得 2004 年 8 月 治療用がん組織保管サービス「自己がん細胞バンク」事業を開始 2007 年 2 月 東京大学医学部附属病院に免疫細胞療法総合支援サービスの提供を開始 2007 年 6 月 国立病院機構大阪医療センターとライセンス契約を締結し、技術支援を 開始 2007 年 10 月 ガンマ・デルタT細胞療法に係る技術・サービスの提供開始 2008 年 1 月 医療機関の経営全般に関する支援サービスを提供する子会社「株式会社 医業経営研究所」を設立 2008 年 8 月 Cell Loading System を導入した新規樹状細胞加工プロセスに係るサー ビス提供開始 2008 年 10 月 iTreg に対するモノクローナル抗体を取得 2011 年 11 月 金沢大学、金沢先進医学センター、瀬田クリニックグループと共同で悪 性腫瘍全般を対象とした 免疫細胞治療の治療効果に関する解析研究を開始 2011 年 7 月 九州大学との CPC(細胞加工施設)運営管理およびがん免疫細胞治療に 関する包括的な支援サービス提供について合意 2011 年 10 月 デューク大学メディカルセンターと樹状細胞ワクチン技術開発に係る委 託研究契約を締結 2012 年 5 月 多発性骨髄腫を対象としたガンマ・デルタ T 細胞療法の多施設共同臨床 試験(日本赤十字社医療センター、順天堂大学医学部附属 順天堂医 院、瀬田クリニックグループと共同で臨床試験)を開始 2012 年 6 月 シンガポール国立大学とセル・ローディング・システム「MaxCyte GT」 使用許諾契約を締結 2012 年 7 月 東京大学医学部附属病院が実施する第 3 項先進医療(高度医療)に係る 一部業務を受託 2012 年 11 月 「NK 細胞療法」技術の提供を開始 2013 年 5 月 中国に子会社「美迪奈特医学科技(北京)有限公司」を設立(2014 年 5 月現在、清算中) 2013 年 9 月 共同事業会社「パーパスバイオメディカル株式会社」設立 2013 年 12 月 新規事業「細胞医療製品事業」に取り組む子会社株式会社メドセル設立 新規事業「細胞加工業」の拡大を目指し、東京都品川区に再生・細胞医 療用の細胞加工施設を設置 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 56/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 ニュース&トピックス 企業ニュース&トピックス 2014 年 8 月 2014 年 8 月 28 日、同社は代表取締役の異動について発表した。 同社は、2014 年 8 月 28 日開催の取締役会において、同日付で、代表取締役社長 鈴木邦彦 氏を解任し、取締役 CPテクノロジー事業本部長 伊木宏氏が代表取締役社長に就任する役 員人事を決定したと発表した。 2014 年 7 月 2014 年 7 月 31 日、同社は、2014 年 9 月期通期会社予想の修正を発表した。 2014年9月期会社予想 Ÿ 売上高:1,800百万円(前回予想:2,270百万円) Ÿ 営業利益:-1,430百万円(同-965百万円) Ÿ 経常利益:-1,460百万円(同-965百万円) Ÿ 当期純利益:-1,060百万円(同-975百万円) 業績予想修正理由として、売上高は、免疫細胞療法総合支援サービスの契約医療機関におけ る細胞加工数が前回予想を下回る見通しである。利益については、売上高の減少により売上 総利益が前回予想より 335 百万円減少し、米国 Argos Therapeutics 社に対する細胞医療製 品「AGS-003」開発に係るライセンス料の支払等により販管費が 130 百万円増加する。当期 純利益の修正幅が小さいのは、特別利益として投資有価証券売却益 440 百万円が発生したこ と等による。 同日、同社は代表取締役の異動について発表した。 同社は、2014 年 7 月 31 日開催の取締役会において、2014 年 10 月 1 日を異動日とし、代 表取締役社長 鈴木邦彦氏が代表取締役を辞任し取締役に、取締役 CPテクノロジー事業本 部長 伊木宏氏が代表取締役社長に就任する役員人事を決定したと発表した。 2014 年 7 月 29 日、同社は、 「樹状細胞の活性化処理方法」に関する特許が韓国と中国で成 立したと発表した。 同社は、樹状細胞(DC:Dendritic Cell)を用いて CTL(細胞傷害性T細胞)の誘導を高め http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 57/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 る処理方法に関して、既に欧州 11 カ国、オーストラリア、日本および米国で特許が成立し ているが、今回、韓国と中国においても特許が成立したとしている。これにより、同社は、 当該特許技術に関して、欧米地域およびアジア地域における主要マーケット国での事業独占 権を獲得したこととなる。 樹状細胞ワクチン療法は、樹状細胞が効率よく CTL を誘導することで、抗腫瘍効果(がん細 胞を死滅させる効果)を期待する治療であるが、実際の治療においては、様々な身体状況に ある患者自身の細胞を用いるため、培養する樹状細胞を十分に機能強化し、活性化させるこ とが非常に難しいとされている。 この課題を克服するために同社は、今回特許が成立した「樹状細胞の活性化処理方法」と「ビ スホスホネート製剤で処理した樹状細胞」を新たに開発し、これらの技術を用いることで、 従来の方法に比べ、CTL の誘導を最大で 100 倍に向上させることを可能となったとしている。 また、これらの技術は同社がサービス・技術を提供する医療機関で活用されている。 同社は、樹状細胞ワクチンに係る同社プラットフォーム技術を権利化できたことは、今後、 韓国や中国をはじめ、欧米地域およびアジア地域の主要マーケット国にある企業等と、共同 で細胞医療製品の開発や製造販売をする際に大きく寄与すると考えられるとしている。 2014 年 6 月 2014 年 6 月 3 日、同社は、同社と大阪大学による共同研究講座設置に関して発表した。 同社は、国立大学法人 大阪大学大学院医学系研究科に最先端医療イノベーションセンターを 活動拠点とする共同研究講座「免疫再生制御学共同研究講座」を設置し、2014 年 5 月 19 日 に本格的に共同研究を開始した。 共同研究講座は、大阪大学と企業が対等の立場で協働することで、一体的な共同研究を展開 し、迅速に事業化させることを目指した産学連携の制度で、現在、同センターには免疫、再 生・細胞医療分野を中心に7つの講座が設置されている。 移植した細胞を体内で定着させることは、再生医療において要となるものの、未だその治療 技術は確立されていない。当該共同研究講座では、移植した細胞を定着させる技術を確立す るとともに、培養した細胞を移植した際に起こる慢性炎症の要因や関連する物質の解明を目 指す。また、慢性炎症は、生活習慣、ストレス、老化、がんなどにおいても生じることから、 慢性炎症の要因や関連する物質の解明により、これまで治せなかった病気を治せるような新 たな治療技術の確立にもつなげたいという。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 58/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2014 年 5 月 2014 年 5 月 28 日、同社は、「CTL とγδT 細胞の同時誘導方法」に関して、日本での特許 が成立したと発表した。 本特許技術は、これまで同時培養が難しいとされてきた、がん細胞を狙い撃ちする役割を持 つ T 細胞(細胞傷害性 T 細胞、CTL)とγδT 細胞を体外で同時に培養する技術である。この 技術を用いることで、煩雑化していた培養工程を簡便にし、効率よく細胞を増殖することが できるとしている。 発明の名称:CTL とγδT 細胞の同時誘導方法 登録番号:特許 5524056 特許権者:同社 本特許技術は、細胞医療製品や免疫細胞治療への応用も考えられる。このため、同社は実用 化のための開発を目指し、共同研究を含めた開発を推進していくとしている。 2014 年 5 月 12 日、同社は、ディナベック株式会社と「樹状細胞を増幅する特許技術」の 実施許諾契約を締結したと発表した。 当該契約は、ディナベック株式会社(株式会社アイロムホールディングスの 100%子会社、 以下、ディナベック)が保有する特許技術に関して、中国を除く全世界における独占的実施 権を同社に許諾するライセンス契約である。同社は同契約に基づき、第1段階としてがん治 療分野における樹状細胞ワクチン治療技術、あるいは樹状細胞を用いた細胞医療製品の開発 に向けて、技術評価を実施するとのことである。今後、細胞医療製品としての事業可能性が 見込まれた場合は、実用化に向けて研究開発を加速する予定としている。 2014 年 4 月 2014 年 4 月 1 日、同社は、同社の契約医療機関が MACS®GMP PepTivator®WT1 を用いた 樹状細胞ワクチン療法の提供を開始すると発表した。 同社の契約医療機関である医療法人社団 滉志会 瀬田クリニックグループは、2014 年 4 月 1 日より、人工がん抗原ペプチド「MACS® GMP PepTivator® WT1」 (以下、WT1 ぺプチベー タ)を用いた樹状細胞ワクチン療法の提供を開始する。 同社によれば、WT1 抗原は様々ながんに発現しており、そのため、WT1 ペプチド(人工的 に作製されたがん抗原ペプチドの1つ)は、有望ながん抗原ペプチドと考えられている。手 術などで摘出したがん組織がない場合にも、このペプチドを代用し、樹状細胞ワクチン療法 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 59/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 として利用できることから、多くのがん患者に提供されている。 従来の WT1 ペプチドは、8~10 個のアミノ酸から構成され、樹状細胞ワクチン療法として使 用する場合、白血球の型(HLA 型)が合致するかどうかを検査する必要があった。 今回、独国ミルテニーバイオテク GmbH 社が新たに開発した WT1 ぺプチベータは、15 個の アミノ酸から構成される複数のペプチドが WT1 タンパク質の全配列を網羅的にカバーして いることから、患者の HLA 型に関係なく、樹状細胞ワクチン療法(WT1 ペプチド感作)を 提供することが可能となるという。また、WT1 ぺプチベータを用いた樹状細胞ワクチン療法 はがんを直接攻撃する CTL(キラーT細胞)と、CTL の働きを助けるヘルパーT 細胞を同時 に誘導できることが見込まれることから、従来のものよりも高い治療効果が期待できるとし ている。 2014 年3月 2014 年 3 月 11 日、同社は、欧州での細胞医療製品の開発・販売に向け、 英国 TC BioPharm 社と戦略的事業パートナーシップを締結したと発表した。 同社は、TC BioPharm Ltd.(以下、TC BioPharm 社)と、英国および欧州諸国での細胞医療 製品の開発・販売に関する戦略的事業パートナーシップを 2014 年 2 月 21 日付で締結した。 同契約に基づき、同社は TC BioPharm 社に対する出資と同社培養技術に係るライセンスを 供与する。TC BioPharm 社は、同社の培養技術や東京大学との共同研究によって得られた知 見などを用いて、がんに対する免疫細胞治療技術の治験を開始し、英国および欧州での製造 販売承認を得ることを目指す。 TC BioPharm 社は、自家細胞を用いた免疫細胞治療の開発を目指し、同社とスコットラン ド投資家らが出資して設立した会社である。この度開始する、がんに対する免疫細胞治療技 術の開発・販売に向けた取り組みについても、既に、スコットランド政府の助成金 (Regional Selective Assistance Grant Funding:特定地域の事業を対象に投資の奨励・雇 用創出を目的とした助成金)や、スコットランド開発公社(Scottish Enterprise)およびグラ スゴー市議会(Glasgow City Council)からも助成金も受けることとなっている。 同社は、当該戦略的事業パートナーシップにより、同社技術を用いた細胞医療製品が英国や 欧州諸国において、いち早く製造販売承認を得ることができると考えている。 2014 年 3 月 10 日、同社は、群馬大学、瀬田クリニックグループと共同で、切除不能進行 膵がんへの免疫細胞治療併用化学放射線治療に関する共同臨床試験を開始すると発表した。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 60/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 同社は、国立大学法人群馬大学、医療法人社団滉志会瀬田クリニックグループと共同で、切 除不能進行膵がんに対する化学放射線治療後の再発・転移抑制を目的とした免疫細胞治療の 併用に係る医師主導臨床試験を開始するとしている。 2014 年 3 月 5 日、同社は、特別利益(投資有価証券売却益)の発生について発表した。 同社は、保有する投資有価証券の一部を売却したことにより、2014 年 9 月期第 2 四半期に 投資有価証券売却益 440 百万円を特別利益として計上するとしている。 2014 年 2 月 2014 年 2 月 27 日、同社は、中国子会社(美迪奈特医学科技(北京)有限公司)の清算に 関して発表した。 同社によれば、中国市場開拓への取り組みにあたり市場や規制の動向等の事前調査を行い、 独資会社である中国子会社を設立し事業活動を進めてきた。しかし、当初設定したマイルス トーンを満たすことができず、また、現地の規制も同社が予想した方向へ変化する可能性が 低いと判断し、当該子会社の清算を行うこととした。 中国市場での事業展開は当該子会社清算により一旦中断するが、再度ビジネスモデルを変更 のうえ、中国ビジネスの展開を検討するとしている。 2014 年 2 月 5 日、同社は、福井大学及び瀬田クリニックグループと共同で、手術不能肝細 胞がんに対する樹状細胞局注療法と肝動脈塞栓療法(以下 TAE)の併用治療に関する臨床試 験を開始すると発表した。 肝臓がんの 9 割を占める肝細胞がん(以下、「肝がん」)の治療法としては、手術療法、TAE 、 ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所療法や、抗がん剤を用いた化学療法が施行されているが、 日本における年間死亡数は 3 万人を超え、更に増加している傾向にある。そのため、より効 果の高い新たな治療法が求められている。 当該臨床試験では、手術不能な進行肝がんへの新しい治療法の開発を目的として、TAE の上 乗せ効果を狙い、TAE に樹状細胞局注療法を併用した場合の安全性および有効性を評価す る。 TAE は、肝がんに栄養を送る動脈にカテーテルを挿入し、薬剤注入により血管を塞ぐことで、 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 61/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 がん細胞を“兵糧攻め”にする治療法である。樹状細胞局注療法を TAE と併用する手法は、当 該臨床試験の研究責任医師である福井大学中本教授により研究されてきた実績があり、 2013 年に成立した「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」および「医薬品、医療機器 等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」を踏まえ、瀬田クリニックグループと 共同の臨床試験として実施するものである。 2014 年 1 月 2014 年 1 月 10 日、同社は米国 Argos Therapeutics, Inc. (以下 Argos 社)と細胞医療製 品「AGS-003」に関するライセンス契約を締結したと発表した。 同社は、平成 25 年 12 月 27 日付で Argos 社が開発している転移性腎細胞がんを対象とする 細胞医療製品「AGS-003」に関するライセンス契約を締結した。本契約に基づき、同社は日 本での「AGS-003」の開発および製造の独占的許諾を受けるとともに、国内での販売および サブライセンスの非独占的ライセンスを取得する。また、同社は Argos 社に対し契約一時金 の支払いと貸付を行った。 「AGS-003」は、2011 年にノーベル生理学・医学賞を受賞した米国ロックフェラー大学 ラ ルフ・スタインマン教授の技術が用いられた細胞医療製品である。現在、「AGS-003」とス ニチニブ(転移性腎細胞がんの標準治療薬)の併用治療に関する第Ⅲ相臨床試験が複数の国 で進行中だが、米国において既に終了した第Ⅱ相臨床試験では、スニチニブ単独治療と比べ、 全生存期間の中央値が 2 倍に延長したという結果が得られている。 同社は改正薬事法の下、「AGS-003」の早期の製造販売承認取得を目指す。なお、同社が本 契約に基づき Argos 社に対して支払う資金は、2013 年 3 月 7 日に開示の「第三者割当によ る第 4 回~第 6 回新株予約権(行使価額修正選択権付)の発行および新株予約権買取契約(行 使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP」 )締結に関するお知らせ」で調 達した資金を当初計画通り充当する予定。また、本件は当期の通期業績予想には既に織り込 み済で、業績に与える影響は軽微である見込みだが、適時開示の必要性が生じた場合は、そ の内容を速やかに開示するとしている。 2013 年 12 月 2013 年 12 月 24 日、同社は、「樹状細胞の活性化処理方法」に関する特許が米国で成立 したと発表した。 同社は、樹状細胞(DC: Dendritic Cell)を用いて CTL(細胞傷害性T細胞)の誘導を高める 処理方法に関して、既に欧州 11 カ国およびオーストラリア、日本で特許が成立しているが、 今回、米国においても特許が成立したとしている。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 62/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 同社は米国において、ビスホスホネート製剤で処理した樹状細胞に関して特許が成立してお り、今回は 2 件目の特許成立となる。 同社は、今回成立した「樹状細胞の活性化処理方法」と「ビスホスホネート製剤で処理した 樹状細胞」を開発し、これらの技術を用いることで、従来の方法に比べ、CTL の誘導を最大 で 100 倍に向上させることが可能となったとしている。また、これらの技術は当社がサービ ス・技術を提供する医療機関で活用されいる。 樹状細胞ワクチンに係る同社プラットフォーム技術を米国において権利化できたことは、今 後、米国企業等と共同で細胞医療製品の製造販売を図る際に、大きく寄与するものと考えら れる。 2013 年 12 月 5 日、同社は、第三者割当による新株式発行および株式買取契約の締結、並 びに第 7 回~第 9 回新株予約権の発行、および新株予約権買取契約の締結を発表した。 同社は、ドイツ銀行ロンドン支店および株式会社夢テクノロジーを割当先とする新株式の発 行ならびにドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする第三者割当による第 7 回~9 回新株予約 権の発行、及び金融商品取引法による届出の効力発生を条件として、ドイツ銀行ロンドン支 店との間での新株予約権買取契約(行使許可条項付ターゲット・イシュー・プログラム 「TIP・2014 モデル」)を締結することを決議したとしている。 第三者割当による新株式発行および新株予約権がすべて行使された場合の交付株式数は 100,000 株であり、発行済株式総数 873,331 株を分母とする希薄化率は 11.45%となる。 本新株予約権の目的である普通株式数は 90,000 株で固定されており、株価動向に係わらず、 最大交付株式数が限定されている。 調達予定資金約 5,116 百万円の使途として、以下が挙げられている。 Ÿ ガンマデルタT細胞技術を用いた消化器がんに関する治験・市販後調査に係る費用: 2,996百万円(支出予定時期:2014年10月~2023年9月) Ÿ 樹状細胞ワクチン技術を用いた消化器がんに関する治験・市販後調査に係る費用: 2,119百万円(支出予定時期:2015年4月~2024年3月) 第三者割当による新株式発行についての詳細は以下。 Ÿ 払込期日:2013年12月26日 Ÿ 発行株式数:普通株式10,000株 Ÿ 発行価額:43,695円 Ÿ 調達資金の額:436百万円 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 63/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 Ÿ 割当予定先:ドイツ銀行ロンドン支店 9,000株、株式会社夢テクノロジー 1,000株 第 7 回~第 9 回新株予約権発行についての詳細は以下。 発行概要 Ÿ 割当日:2013年12月26日 Ÿ 発行新株予約権数:90,000個(第7回新株予約権~第9回新株予約権それぞれの個数: 30,000個) Ÿ Ÿ 資金調達の額:約5,116百万円 当初行使価額:第7回新株予約権50,000円、第8回新株予約権52,000円、第9回新株予 約権54,000円 Ÿ 行使価格の修正:第7回新株予約権~第9回新株予約権いずれもあり(下記参照) Ÿ 行使請求期間:第7回新株予約権~第9回新株予約権いずれも3年 Ÿ 割当予定先:ドイツ銀行ロンドン支店 Ÿ 本調達方法のメリット:1)固定行使価額(資金調達目標株価)によるターゲットイシュ ー、2)行使許可条項付き、3)最大交付株式数の限定、4)買入消却条項付き、5)行使 価額修正条項・選択権、6)資金調達のスタンバイ(時間軸調整効果)等 Ÿ 本調達方法のデメリット:1)当初に満額の資本調達ができない、2)不特定多数の新投 資家へのアクセスの限界 行使許可条項付ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014」 同社が新株式の発行に際して希望する目標株価を 3 パターン定め、これを行使価格として設 定した新株予約権。これは、将来の株価上昇を見越し、3 パターンの行使価額によって段階 的に新株式を発行(ターゲット・イシュー)できることを期待して設定したものである。ま た割当予定先の権利行使に関しては、同社の行使許可なくして行使できない仕組みになって いる。行使許可条項については、一定株数及び一定期間の制約を定めており、割当予定先は この行使許可の制約の中で行使することになる。行使許可について、同社は資金需要及び市 場環境等を見極めながら判断するとしている。 行使価格は原則ターゲット価格(当初行使価額)に固定されるが、1)行使期間中に株価が固 定行使価額を大幅に上回って上昇した場合、または 2)緊急の資金需要が発生したときのため に、同社は行使価額修正に関する選択権を保有している。 同社の選択により行使価額が修正された後も修正後の価額で行使価額が固定される。同社は 2014 年 6 月 26 日以降、同社取締役会の決議により行使価額の修正を行うことができる。当 該決議をした場合、同社は直ちにその旨を本新株予約権者に通知し、通知日の翌営業日に、 行使価額は、通知日の取引所における同社普通株式の普通取引の終値の 90%に相当する金 額の 1 円未満の端数を切下げた額に修正される。ただし、修正後の行使価額が下限行使価額 (各回号とも 20,000 円)を下回ることとなる場合には、行使価額は下限行使価額とする。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 64/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2013 年 12 月 2 日、同社は、細胞加工施設を新設すると発表した。 同社は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」および「再 生医療等の安全性の確保等に関する法律」が成立したことを受け、東京都品川区に細胞加工 施設を新設する。医療分野の物流改善を手掛ける鴻池メディカル株式会社が管理する建物を 一部分賃借することで、投資コストを大幅に削減(設備投資額 15 億円を予定)し、建設から 本稼働までの準備時間を短縮することができるとしている。本格的な稼働は、厚生労働省が 中心に作成中の細胞加工施設のガイドライン策定を鑑み、2015 年前半となる予定。 今回の両法成立により、企業が再生・細胞医療用の細胞加工を受託できることになったこと で、同社の優位性を確固としたものとすべく、細胞加工施設を新設し、細胞加工業の拡大を 目指すとのことである。新施設では、免疫細胞に限らず、再生・細胞医療に取り組む医療機 関や研究機関からの組織・細胞の加工・培養の受託、および再生医療等製品の開発に取り組 む企業からの組織・細胞の加工・培養の受託を見込んでいるとしている。 なお、本件は通期業績予想に既に織り込み済みであり、業績に与える影響は軽微である。 2013 年 11 月 2013 年 11 月 28 日、同社は、新規事業「細胞医療製品事業」に本格的に取り組む子会社を 設立すると発表した。 2013 年 11 月 20 日に、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律案」および「薬事法等 の一部を改正する法律案」の両案が参議院本会議で可決され、成立した。 同社は、両法が 1 年以内に施行されることに伴い、「細胞医療製品」としての承認獲得に向 けて更なる強化を図るべく、2013 年 12 月に子会社を設立することした。 新子会社では、「細胞医療製品事業」を展開し、同社がこれまで行ってきた免疫細胞治療に 係る研究成果をもとに、「細胞医療製品」としての承認を取得し、細胞医療製品の開発、製 造、販売等を行うとしている。 設立子会社の概要 会社名: 株式会社メドセル (英語表記:MEDcell Co., Ltd) 主な事業内容: 再生医療等製品の研究開発・製造・販売・輸出入等 設立年月日: 2013 年 12 月上旬 大株主および出資比率: 株式会社メディネット 100% http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 65/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2013 年 10 月 2013 年 10 月 24 日、同社は株式分割、単元株制度の採用について発表した。 同社によれば、2014 年 3 月 31 日を基準日として、1 株につき 100 株の割合をもって分割す るとのことであり、株式分割前の発行済株式総数 873,331 株に対して、株式分割後の発行済 株式総数は 87,333,100 株となる。また同社株式の売買単位は 1 株から 100 株に変更され る。 2013 年 10 月 7 日、同社は、自家培養軟骨の事業化に向けた共同事業会社「パーパスバイ オメディカル株式会社」を設立したと発表した。 同社は、2013 年 9 月 4 日付で開示した「自家培養軟骨の事業化に向けた共同事業契約を締 結」に基づきパーパス株式会社および株式会社ムトウと共同事業会社「パーパスバイオメデ ィカル株式会社」を設立した。 新会社「パーパスバイオメディカル株式会社」では、今後成長が大きく見込まれる再生医療 分野において、3 社のそれぞれの強みを活かし、自家培養軟骨「NeoCart」の開発から製造・ 販売までの一貫体制を構築する。新会社は、「NeoCart」の FDA(米国食品医薬品局)によ る臨床適用認可等の取得の動きと並行して、国内での早期承認取得を進め、いち早く事業化 することを目指す。 現在、米国にて第Ⅲ相臨床試験が実施されている「NeoCart」の対象疾患である外傷性軟骨 損傷の潜在患者数は、米国で毎年 50 万人、国内では毎年 1.3~1.6 万人と推定される。関節 軟骨は血管がなく、修復能力が乏しいため、一度損傷を受けると完治することが難しい組織 であり、また症状が悪化した場合には、関節本来の機能の回復が難しく、日常生活への負担 も大きいものの、人工関節置換術以外に有効な治療法がないため、新たな治療技術の開発が 切望されている。 自家培養軟骨「NeoCart」は、現在 FDA の承認を受け、自家培養軟骨「NeoCart」の第Ⅲ相 臨床試験(対象疾患:外傷性膝関節軟骨損傷)が 2010 年から進められており、2015 年 7 月には臨床試験が完了し、2017 年 7 月には最終データの収集が完了する予定とのことであ る。 〈新会社の概要〉 Ÿ 会社名:パーパスバイオメディカル株式会社 Ÿ 出資比率:パーパス株式会社33.3%、ムトウ株式会社33.3%、株式会社メディネット 33.3% Ÿ 資本金:45百万円 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 66/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 Ÿ 設立年月日:2013年9月26日 Ÿ 事業内容:培養軟骨等の製造販売事業等 2013 年 9 月 2013 年 9 月 4 日、同社は自家培養軟骨の事業化に向けた共同事業契約を締結したと発表し た。 同社は、パーパス株式会社(以下「パーパス社」 )および株式会社ムトウ(以下「ムトウ社」) と、自家培養軟骨「NeoCart」の事業化を目的とする共同事業契約を締結したとのこと。 なお、本件の 2013 年 9 月期業績に与える影響は軽微である。 今後、当該契約に基づき、共同事業会社を設立し、自家培養軟骨「NeoCart」の承認取得、 製造及び販売を行う予定である。当該共同事業において、3 社はそれぞれの強みを活かし、 自家培養軟骨「NeoCart」の開発・製造・販売を展開する。 自家培養軟骨「NeoCart」の日本における実施権を有するパーパス社が培養装置や必要資材 を提供し、細胞医療分野での事業化経験・ノウハウを有する同社が細胞加工施設の運営管理 や細胞加工を行い、医療機器の販売網を有するムトウ社が販売を行うことで、再生医療ビジ ネスの展開を加速させる方針である。 外傷性軟骨疾患の患者数は、2012 年度中小企業支援調査(再生医療の実用化・産業化に係る 調査事務等)報告書において、年間の潜在患者数として 1.3~1.6 万人と推定されている。 関節軟骨は血管がなく、修復能力が乏しいため、一度損傷を受けると完治することが難しい 組織である。また、症状が悪化した場合には、関節本来の機能の回復が難しく、日常生活へ の負担も大きいものの、人工関節置換術以外に有効な治療法がないため、新たな治療技術の 開発が切望されている。 パーパス社が設立したヒストジェニックス社(マサチューセッツ州ウォルサム市)とハーバ ード・メディカルスクールのティーチング・ホスピタルであるブリガム・アンド・ウィメン ズ病院の水野秀一博士が共同開発した軟骨再生に係る新培養技術および培養装置(米国およ び日本などで特許取得済み)は、患者自身から採取した軟骨細胞を軟骨様形状に培養し、損 傷部に低侵襲で移植することが可能である。2013 年 9 月現在、FDA(米国食品医薬品局)の 承認を受け、同技術および培養装置を用いて、自家培養軟骨「NeoCart」の第Ⅲ相臨床試験 (対象疾患:外傷性膝関節軟骨損傷)が 2010 年から進められている。対照手術法と比べて 第Ⅱ相までの結果からも、その有効性が期待されている。 今後、FDA から NeoCart の臨床適用認可等を取得する動きと並行して、国内における再 生医療推進法の成立など、再生・細胞医療に関わる新制度への移行を踏まえ、日本での再生 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 67/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 医療ビジネスへの展開を予定している。 〈パーパス株式会社〉 Ÿ 設立年月日:1952年3月25日 Ÿ 資本金:98百万円 Ÿ 事業内容:住宅設備関連機器、電子制御機器、情報ソフトウエア、ウォーターサーバー等 の製造・販売 〈株式会社ムトウ〉 Ÿ 設立年月日:1949年3月25日 Ÿ 資本金:501百万円 Ÿ 事業内容:各種医療機器、消耗品、医療施設向け物流システム等の販売 2013 年 8 月 2013 年 8 月 20 日、同社は「樹状細胞」に関する特許が米国で成立したと発表した。 今回成立した技術は、同社が既に提供している樹状細胞ワクチンの調製方法で、樹状細胞に ビスホスホネートの一種であるゾレドロン酸をパルスすることにより、従来の方法に比べ、 強力な樹状細胞を調製することができるという。 同社は、本プラットフォーム技術を活用し、日本発の革新的な治療技術として世界中に普及 すべく、積極的な事業拡大を図っていくとしている。 2013 年 7 月 2013 年 7 月 25 日、同社は同日開催した取締役会で代表取締役の異動について決定したと 発表した。 異動の内容(就任予定日:2013 年 10 月 1 日) Ÿ 木村 佳司 (新役職:取締役会長、現役職:代表取締役社長) Ÿ 鈴木 邦彦 (新役職:代表取締役社長、現役職:取締役CPテクノロジー事業本部長) 同社は異動の理由について、再生医療推進法の成立など、再生・細胞医療に関わる新制度へ の移行を機に、新経営体制のもと一層の発展を図るためとしている。 2013 年 7 月 22 日、同社は抗腫瘍効果を高める「樹状細胞の活性化処理方法」に関する特 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 68/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 許が日本において成立したと発表した。 同社は、樹状細胞(DC: Dendritic Cell)を用いて CTL(細胞傷害性T細胞)の誘導を高める 処理方法に関して、既に欧州 11 カ国およびオーストラリアで特許が成立しているが、今回、 日本においても特許が成立したとしている。 今回成立した「ビスホスホネートと抗原で樹状細胞を共感作する処理方法」は、同社が既に 提供している樹状細胞ワクチン技術の処理方法で、従来の方法に比べ、CTL の誘導を最大で 100 倍に向上させることができるという。なお、今回取得した特許技術の基礎技術である、 ビスホスホネートを用いて樹状細胞にガンマ・デルタT細胞の誘導能を発揮させる樹状細胞 の調製方法は、既に欧州、韓国および日本で特許を取得している。 同社は、このプラットフォーム技術を活用し、細胞加工受託業や細胞医療製品の開発を推進 すると述べている。 2013 年 6 月 2013 年 6 月 10 日、同社は、同社の契約医療機関である医療法人社団 滉志会 瀬田クリニ ックグループが、学校法人福岡大学と共同で、Stage IV の大腸がんを対象とした免疫細胞治 療(アルファ・ベータ T 細胞療法)と化学療法(XELOX+ベバシズマブ療法)の併用に関す る臨床試験を開始したと発表した。 2013 年 6 月 3 日、同社は中国子会社設立の手続きが完了したと発表した。 同社は 2012 年 8 月 15 日付で開示した「北京邦万医療技術有限公司の買収(子会社化)に関 するお知らせ」に関し、この度、北京市工商行政管理局より営業許可証を取得し、子会社と しての設立手続きが完了したとしている。子会社の名称は「美迪奈特医学科技(北京)有限 公司」であり、所在地は中国北京市朝陽区、同社の出資比率は 100%である。 事業内容として、下記が挙げられている。 Ÿ バイオ技術に関する開発、技術譲渡、技術サービス、コンサルティング Ÿ 細胞加工施設設備、試薬、化学工業製品(危険化学品除く)の輸出入、卸売、及びそれ に関連する付属サービス Ÿ 医療機械に関する技術サービス 2013 年 3 月 2013 年 3 月 7 日、同社は第三者割当による新株予約権(行使価額修正選択権付)の発行及 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 69/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 び新株予約権買取契約(行使許可条項付ターゲット・イシュー・プログラム「TIP」)締結を 発表した。 同社は、2013 年 3 月 7 日開催の取締役会において、ドイツ銀行ロンドン支店を割当予定先 とする第三者割当による第 4 回~6 回新株予約権の発行、及び金融商品取引法による届出の 効力発生後に、ドイツ銀行ロンドン支店との間での新株予約権買取契約(行使許可条項付タ ーゲット・イシュー・プログラム「TIP」)を締結することを決議したとしている。 本新株予約権がすべて行使された場合の交付株式数は 90,000 株であり、発行済株式総数 783,331 株を分母とする希薄化率は 11.49%となる。本新株予約権の目的である普通株式数 は 90,000 株で固定されており、株価動向に係わらず、最大交付株式数が限定されている。 調達予定資金約 4,049 百万円の使途として、以下が挙げられている。 Ÿ 細胞医薬品開発に係る技術・ライセンス等の導入費用:1,000百万円(支出予定時期: 2013年9月~2020年9月) Ÿ CMC、前臨床試験及び治験の申請・実施に係る費用:1,500百万円(支出予定時期: 2013年9月~2020年9月) Ÿ 細胞医薬品開発用細胞加工施設の建設に係る費用:1,549百万円(支出予定時期:2014 年4月~2015年9月) 同社は本資金調達により、外部の細胞医薬品に係る技術を臨床データとともに導入し、 Bridging Study(橋渡し研究)により薬事承認を得て、細胞医薬品の製造販売を実施するこ とにより、計画的かつ飛躍的な業容拡大と企業価値向上を実現していく予定であると述べて いる。 本新株予約権発行についての詳細は以下。 発行概要 Ÿ 割当日:2013年3月25日 Ÿ 発行新株予約権数:90,000個(第4回新株予約権~第6回新株予約権それぞれの個数: 30,000個) Ÿ 資金調達の額:約4,049百万円 Ÿ 当初行使価額:第4回新株予約権43,000円、第5回新株予約権45,000円、第6回新株予 約権47,000円 Ÿ 行使価格の修正:第4回新株予約権~第6回新株予約権いずれもあり(下記参照) Ÿ 行使請求期間:第4回新株予約権~第6回新株予約権いずれも3年 Ÿ 割当予定先:ドイツ銀行ロンドン支店 Ÿ 本調達方法のメリット:1)固定行使価額(資金調達目標株価)によるターゲットイシュ ー、2)行使許可条項付き、3)最大交付株式数の限定、4)買入消却条項付き、5)自己 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 70/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 資本調達のスタンバイ(時間軸調整効果)等 Ÿ 本調達方法のデメリット:1)当初に満額の資本調達ができない、2)不特定多数の新投 資家へのアクセスの限界 行使許可条項付ターゲット・イシュー・プログラム「TIP」 同社が新株式の発行に際して希望する目標株価を 3 パターン定め、これを行使価格として設 定した新株予約権。これは、将来の株価上昇を見越し、3 パターンの行使価額によって段階 的に新株式を発行(ターゲット・イシュー)できることを期待して設定したものである。ま た割当予定先の権利行使に関しては、同社の行使許可なくして行使できない仕組みになって いる。行使許可条項については、一定株数及び一定期間の制約を定めており、割当予定先は この行使許可の制約の中で行使することになる。行使許可について、同社は資金需要及び市 場環境等を見極めながら判断するとしている。 行使価格の修正条項は、第 4 回新株予約権~第 6 回新株予約権のいずれにも付与されている。 第 4 回新株予約権~第 6 回新株予約権のいずれも、上限行使価額はない。一方、下限行使価 額は、第 4 回新株予約権 43,000 円、第 5 回新株予約権 45,000 円、第 6 回新株予約権 20,000 円と設定されている。 行使価格は原則ターゲット価格(当初行使価額)に固定されるが、1)行使期間中に株価が固 定行使価額を大幅に上回って上昇した場合、または 2)緊急の資金需要が発生したときのため に、同社は行使価額修正に関する選択権を保有している。 第 4 回新株予約権、第 5 回新株予約権は上記行使価額設定(下限行使価額がターゲット価格 と同一である一方、上限行使価額はない)を踏まえれば、1)の場合のみ行使価額を修正する ことが想定されているといえる。なお、第 6 回新株予約権は、下限行使価額が 20,000 円と ターゲット価格を下回る設定がなされており、1)に加え、2)の場合にも行使価額を修正す ることが想定されているものと考えられる。 2013 年 1 月 2013 年 1 月 31 日、同社は「樹状細胞」に関する特許が日本および韓国においても成立し たと発表した。 同社は、樹状細胞(DC: Dendritic Cell)の機能を強化する一連のプラットフォーム技術の創 出と権利化を進めているが、この度、既に権利化している欧州 11 カ国・オーストラリアに 加えて、日本および韓国においても特許が成立したとしている。 本技術は、同社が既に提供している樹状細胞ワクチンの調製方法で、ビスホスホネート製剤 を用いて樹状細胞の機能を強化する本技術を用いることで、従来よりも、強力な樹状細胞ワ http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 71/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 クチンを創生することができるという。 同社は、このプラットフォーム技術を活用し、樹状細胞ワクチン開発を進める国内外の企 業・アカデミアへの技術導出を含め、オープンイノベーションを促進し、新たな市場獲得を 目指していくと述べている。 2013 年 1 月 11 日、同社は特別利益(投資有価証券売却益)が発生したと発表した。 同社によれば、保有資産の効率化を図るために 2013 年 1 月 11 日付で保有上場有価証券 1 銘柄の売却を実施、売却益が 618 百万円発生したとのことである。本件に伴い、2013 年 9 月期第 2 四半期において投資有価証券売却益(特別利益)を計上する予定だが、2013 年 9 月期の業績予想については、他の要因も含め見通しが固まり、修正が必要な際には開示する とコメントしている。 2012 年 11 月 2012 年 11 月 12 日、同社は、「NK 細胞療法」技術の提供を開始したと発表した。 同社はかねてから抗体医薬品との相乗効果を狙った「NK 細胞療法」技術の開発を進めていた が、この度、本技術の提供を開始したとしている。医療法人社団 滉志会 瀬田クリニックグ ループの 4 医療機関(瀬田クリニック東京、瀬田クリニック新横浜、瀬田クリニック大阪、 瀬田クリニック福岡)への提供を皮切りに、順次、サービスの提供先を拡大していく予定で あるという。 同社によれば、本技術の導入により、抗体医薬品を用いた治療中の患者、あるいは MHC ク ラス I の発現レベルが低下・消失したがん患者に、より高い治療効果をもたらす新たな治療 が提供されることになるとのことである。 NK 細胞は、抗体医薬品との相性がよく、MHC クラス I の発現がないがん細胞や、ウイルス 感染細胞に対して、特に殺傷能力を持つリンパ球の一種。がん患者は健康な人と比べ、NK 細胞活性が低下していることも判明している。一方、従来の NK 細胞培養技術では、安全で 活性の高い NK 細胞を短期間で効率的に増殖させることが困難なこともあり、新たな NK 細胞 培養技術の確立が求められていた。 今回同社が開発した新たな NK 細胞の培養技術は、これらの課題を克服した技術であり、主 な特徴は以下の通りであるという。 Ÿ NK細胞を高活性化し、2週間で最大2,000倍までに大量培養することができる Ÿ 徹底した独自の安全・品質管理基準を設定することで、高い生物的安全性を担保してい http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 72/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 る Ÿ 様々ながん細胞株に対して、細胞傷害活性(標的細胞を殺傷する動き)を示す Ÿ 同社の研究成果から、NK細胞療法と、トラスツズマブ(乳がん、胃がんに対する抗体医 薬品)、セツキシマブ(大腸がんに対する抗体医薬品)、リツキシマブ(B細胞性非ホジ キンリンパ腫に対する抗体医薬品)等の抗体医薬品との併用治療により、各々単独での 治療時に比べて、細胞傷害活性(ADCC活性)が相乗的に増大し、抗腫瘍効果を大幅に高 める結果を得ている 本件が業績に与える影響は、2013 年 9 月期会社予想に既に織り込んであると同社は述べて いる。 2012 年 11 月 9 日、同社は「ナノキャリア株式会社(東証マザーズ 4571)との共同研究結 果に関する報告」とするリリース文を発表した。 同社とナノキャリア社は 2009 年 10 月に包括共同研究契約を締結し、これまで共同で研究を 実施してきた。共同研究において、良好な結果が得られてきたため、今回報告したと述べて いる。本結果に基づき、両社は更なる共同研究を推進する予定としている。 両社のリリース文を以下に纏める。 Ÿ 共同研究の内容 両社は、すでに腎臓がん治療などで承認を受け、免疫力を高める作用を有する「インターロ イキン-2(IL-2)」を内包するミセル化ナノ粒子を創製し、樹状細胞ワクチン療法との併用効 果についての共同研究を実施してきた。 Ÿ 共同研究の結果 マウスのがんモデルに対して、ミセル化ナノ粒子内包 IL-2 と樹状細胞ワクチンの併用は、従 来の IL-2 溶液と樹状細胞ワクチン療法の併用に比べて、がんを特異的に攻撃する細胞傷害性 T 細胞(CTL)の誘導を著しく高め、それにより、抗がん作用も大幅に増強することを見出し たとのことである。 この効果は、1)ミセル化ナノ粒子に内包された IL-2 が血中で長時間ゆっくり放出されるこ と、2)ミセル化ナノ粒子内包 IL-2 が体内の CTL の増殖する部位であるリンパ節と腫瘍へ移 行しやすいこと、によるものと考えられるようだ。IL-2 のリンパ節と腫瘍へ移行は IL-2 溶液 では見られないものであり、ミセル化ナノ粒子による徐放性効果と併せ、本発見は従来の樹 状細胞ワクチン療法の効果を大幅に高める可能性を示唆するものであるという。 2012 年 11 月 7 日、同社は HSP 抗原ペプチドに係る特許が日本で成立したと発表した。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 73/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 HSP 抗原ペプチドに関する権利化は既に欧州 11 ヵ国で成立しているが、この度、日本にお いても特許が成立したとのことである。 今般の特許成立を受けて、同社は、HSP 抗原ペプチドを用いたがんワクチンの開発、樹状細 胞ワクチン療法や CTL 療法等への応用、および本抗原ペプチドのライセンシング等、HSP 抗 原ペプチドの事業化を目指していくとしている。 2012 年 10 月 2012 年 10 月 31 日、同社は、抗腫瘍効果を高める「樹状細胞の活性化処理方法」に関する 特許が豪州で成立したと発表した。 同社が 2012 年 8 月 12 日にリリースした通り、樹状細胞(DC:Dendritic Cell)を用いて CTL(細胞傷害性 T 細胞)の誘導を高める処理方法について、既に欧州 11 ヵ国で特許が成立 しているが、この度、オーストラリアにおいても特許が成立したとのことである。 今回成立した特許範囲は、「ビスホスホネートと抗原で抗原提示細胞を共感作する処理方法」 であり、同社は、欧州および豪州企業等へのライセンスアウトといったビジネス展開が可能 になるとともに、樹状細胞ワクチン療法技術を日本以外のがん患者に新たな治療選択肢とし て提供することが可能になるだろうと述べている。 2012 年 8 月 2012 年 8 月 17 日、同社は、抗腫瘍効果を高める「樹状細胞の活性化処理方法」に関する 特許が欧州 11 ヵ国で成立したと発表した。 同社は、樹状細胞(DC:Dendritic Cell)の CTL(細胞傷害性 T 細胞)の誘導を高める処理 方法について、権利化を進めていたが、この度、欧州 11 ヵ国で特許が成立したとしてい る。 今回成立した特許範囲は、「ビスホスホネートと抗原で抗原提示細胞を共感作する処理方法」 であり、本処理技術は、既に日本の大学や医療機関などに臨床用治療技術として提供してい る。同社は、これらの実績をもとに、欧州企業等へのライセンスアウトや同社の樹状細胞ワ クチン療法を欧州のがん患者に提供することが可能になるだろうと述べている。 2012 年 8 月 15 日、同社は同日開催の取締役会において、グローバル展開の一環として、 中国独資会社である北京邦万医療技術有限公司(中華人民共和国、北京市)を買収し、完全 子会社化とすることを決議したと発表した。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 74/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 Ÿ 買収の理由 同社は、将来を見据えた更なる成長施策として、グローバル展開を掲げ、アジア・パシフィ ック地域を中心に、再生・細胞医療分野における同社の技術・ノウハウを事業展開できる機 会を探索。各国での事業化の可能性を検討・評価していた。そうした中、グローバル展開の 最初の拠点として、市場規模や再生・細胞医療に関する一般的な理解度、将来性といった観 点から、中国が最も適切との結論に至ったと述べている。 同社によれば、中国では、毎年 280 万人のがん患者が新たに増えており、中国政府は、がん の体系的な予防や新たな治療法の確立を目指して、中国国家がんセンターの開設を計画する など、国を挙げて、がん治療への積極的な取り組みが進められている。 中国において事業を展開するに際し、新たに独資会社を設立する場合では会社設立や人脈構 築に一定の期間を要する。そのため、そうした期間を短縮し、かつ効率的に中国での事業基 盤を確立すべく、北京邦万医療技術有限公司を買収、完全子会社化するに至ったとしている。 北京邦万医療技術有限公司は、中国の主要な大学や医療機関などとのネットワーク、医療機 器に関する技術コンサルティングや営業ノウハウを有するとのことである。 Ÿ 今後の見通し 買収期日(予定)は 2012 年 8 月中であり、同社は、2012 年内には中国政府に事業活動およ び営業に係る認可を取得し、主要事業である免疫細胞治療に係るサービス提供を医療機関・ 大学病院向けに展開していく予定であるとしている。 2012 年 7 月 2012 年 7 月 30 日、同社は東大病院が実施する第 3 項先進医療(高度医療)に係る一部業 務を受託したと発表した。 東京大学医学部附属病院(以下、「東大病院」)では、2012 年 6 月 1 日付で第 3 項先進医療 (高度医療)(以下、「先進医療」 )として、「ゾレドロン酸誘導 γδT 細胞を用いた免疫細胞 療法」が承認され、自主臨床試験を開始することとなった。同社は、その先進医療を実施す るために必要となる、細胞培養、品質検査、施設運営管理などを担うことになるという。 Ÿ 参考 東大病院が承認取得した「ゾレドロン酸誘導γδT 細胞を用いた免疫細胞療法」について 東大病院では、下記の医療技術について、先進医療申請をしていたが、2012 年 6 月 1 日付 で厚生労働省より正式に承認された。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 75/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 高度医療技術名:ゾレドロン酸誘導 γδT 細胞を用いた免疫細胞療法 適応症:標準治療抵抗性の非小細胞肺がん 技術の概要:患者末梢血から単核細胞(PBMC)を採取し、その中に含まれる γδT 細胞をゾ レドロン酸と IL-2 を用いて体外で刺激培養した後、再び患者に戻す。2 週間ごとに 6 回実施 し、効果が確認された患者はさらに治療を継続する。 先進医療について 薬事法上の未承認または適応外使用である医薬品または医療機器の使用に伴い、薬事法によ る申請等に繋がる科学的評価可能なデータ収集の迅速化を図ることを目的とした先進的な医 療技術。第 3 項先進医療として厚生労働省に認められれば、保険診療との併用が認められる。 なお、先進医療に認定された治療技術については、民間医療保険の先進医療特約による治療 費給付が受けられる。 2012 年 7 月 26 日、同社は 2012 年 9 月期通期会社予想の修正を発表した。 Ÿ 売上高:2,220百万円(前回予想:2,650百万円) Ÿ 営業利益:△710百万円(同△400百万円) Ÿ 経常利益:△705百万円(同△400百万円) Ÿ 当期純利益:△620百万円(同△410百万円) 会社予想の下方修正要因として、売上高は、大学病院等との新たな取り組みの成果は現れて きているものの、既存の契約医療機関における細胞加工件数が予想を下回る見通しであるた めとしている。また、営業利益は、売上高の減少により、売上総利益の減少が見込まれるた めだという。当期純利益は、特別利益として投資有価証券売却益 118 百万円が発生したこと 等により、前回発表予想に対して 210 百万円減の△620 百万円となる見込みとのことであ る。 2012 年 6 月 2012 年 6 月 21 日、同社は、シンガポール国立大学とセル・ローディング・システム 「MaxCyte GT」使用許諾契約を締結したと発表した。 同社によれば、本件に関する詳細は以下のようになる。 Ÿ 同社は、シンガポール国立大学に対し、セル・ローディング・システム「MaxCyte® GTTM Flow Transfection System」(以下、「MaxCyte GT」)の使用を許諾する契約 を締結した Ÿ 本契約に基づき、同社は、MaxCyte GTや関連デバイスをシンガポール国立大学に対し て供給する新たなビジネスを展開する 同社は、これを機に、これまでに培った臨床用細胞加工に係る豊富な実績と経験を、アジ http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 76/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 ア・パシフィック地域に提供していく事業を加速していくと述べている。 本契約の背景 シンガポール国立大学は、白血病や悪性リンパ腫の患者を対象に、CAR(キメラ型抗原受容 体)を発現させた NK 細胞を用いた細胞治療の臨床試験を計画。本臨床試験では、その CAR を発現させる方法として、「MaxCyte GT」を用いて、mRNA を NK 細胞に導入することに なっている。 同社の説明によれば、MaxCyte GT は、従来の方法に比べて、閉鎖系で行われるため、無菌 操作が可能で安全性が高く、また、各種細胞などへの導入・発現効率や処理後の生細胞率が 高いことから、一度に大量の細胞を効率的に処理することができるという。さらに、細胞医 療の臨床実用化への鍵を握るこうした特長により、米国の多くの研究機関や大学病院が研究 開発に活用しているもようだ。 2012 年 5 月 2012 年 5 月 22 日、同社は多発性骨髄腫を対象としたガンマ・デルタ T 細胞療法の多施設 共同臨床試験を開始したと発表した。 同社によれば、本件に関する詳細は以下のようになる。 Ÿ 同社は、多発性骨髄腫を対象としたガンマ・デルタT細胞療法(以下、「γδT細胞療法」) の有効性評価を目的に日本赤十字社医療センター(以下、「日赤医療センター」)、順 天堂大学医学部附属 順天堂医院(以下、「順天堂大学」)、医療法人社団 滉志会 瀬 田クリニックグループ(以下、「瀬田クリニックグループ」)と共同で臨床試験を開始し た Ÿ 2005年より、同社は、既存治療とは異なる作用機序による根治を目指す治療法の開発 を目指し、日赤医療センター、瀬田クリニックグループと共同で、多発性骨髄腫を対象 としたγδT細胞療法の自主臨床研究を実施し、6例中4例で免疫グロブリン(Mタンパク) の減少または安定化を認めるなど、γδT細胞療法の安全性を既に確認しており、新たな 治療法になりうると期待している Ÿ 上記研究成果を踏まえ、本多施設共同臨床試験では、骨髄腫細胞を根治する治療法の開 発をさらに進めるべく、くすぶり型や化学療法などで有効な結果が得られた多発性骨髄 腫を対象に、γδT細胞療法の有効性を評価する Ÿ 共同臨床試験内では、瀬田クリニックグループが免疫細胞の加工及び免疫学的検査など を担い、同社が免疫細胞の加工に係る基礎データの提供、免疫学的検査支援などを行う。 また、 本多施設共同臨床試験は、早期エビデンス構築に向けて、適切に臨床統計の専 門家のアドバイスを受けながら開発を進める。 Ÿ 本件が業績に与える影響は軽微である http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 77/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 2012 年 5 月 15 日、同社は特別利益(投資有価証券売却益)が発生したと発表した。 同社によれば、保有資産の効率化を図るために 2012 年 5 月 15 日付で保有上場有価証券 1 銘柄の売却を実施、売却益が 118 百万円発生したとのことである。本件に伴い、2012 年 9 月期第 3 四半期において投資有価証券売却益(特別利益)を計上する予定だが、2012 年 9 月期の業績予想については、他の要因も含め見通しが固まり、修正が必要な際には開示する とコメントしている。 同日、同社は、国立大学法人九州大学にがん免疫細胞治療分野での「共同研究部門」を新設 したと発表した。 同社は、九州大学の共同研究部門制度を活用し、九州大学先端医療イノベーションセンター に「先進細胞治療学研究部門」を設置。産学連携でがん免疫細胞治療に係る次世代医療技術 の開発を目指した共同研究を開始することになったとしている。主な研究内容は以下の通 り。 研究内容:「がんに対する免疫細胞治療の臨床的および基礎的研究」 先端医療イノベーションセンターで実施されているがん免疫細胞治療について、詳細な治療 効果の解析評価を実施。治療データの蓄積と外部への情報発信を行う 免疫細胞治療に関する臨床研究を行い、有用性と安全性に関する臨床エビデンスを取得する がんの根治技術確立を目的とした、次世代先端医療技術の基礎から臨床応用まで一貫した研 究開発を行う 2012 年 3 月 2012 年 3 月 30 日、同社は細胞培養評価システムに関する特許が日本で成立したと発表し た。 同社によれば、本特許技術は、培養した細胞の状態を客観的指標で評価判定するものであり、 この技術を用いることで、安定的に一定数の細胞培養が可能になるという。同技術は、現在 開発中のインテリジェント培養システムへも展開する予定。本特許成立により、日本国内に おける独占的技術として使用する権利を同社は取得したことになる。 2012 年 3 月 19 日、同社はがん治療に用いる「樹状細胞」に関する特許が欧州 11 ヵ国で成 立したと発表した。 同社は樹状細胞(DC:Dendric Cell)の働きをより強化する技術に関する権利化を欧州で進 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 78/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 めていたが、この度特許が成立したとしてリリース文を出した。具体的には、ビスホスホネ ートを用いて樹状細胞に γδT 細胞の誘導能を発揮させるよう機能を強化したもので、本特許 成立により、同社は、「ビスホスホネートを感作させた樹状細胞」を欧州 11 ヵ国で独占的に 使用する権利を取得するという。 ビスホスホネートは、近年、悪性腫瘍による高カルシウム血症の治療薬として使用されてい る。また、ビスホスホネートの一種であるゾレドロン酸は、種々のがんの骨転移あるいは多 発性骨髄腫の治療薬として使用されている。 既に特許登録されているオーストラリアに加え、今回新たに欧州で特許が成立し、「ビスホ スホネートを感作させた樹状細胞」として広範囲に権利化できたことは、今後、欧州におい て事業展開を図る上で大きく寄与するものであり、また、樹状細胞ワクチン療法を欧州のが ん患者に新たな治療選択肢として提供することにもつながると考えていると同社は述べてい る。 業界ニュース&トピックス 2014 年 11 月 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及 び安全性の確保等に関する法律」が公布され、2014 年 11 月 25 日に施行された。 2013 年 11 月 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律案」および「医薬品、医療機器等の品質、有効 性及び安全性の確保等に関する法律」が、参議院本会議で可決、成立 2013 年 4 月 再生医療の実用化を目指した「再生医療推進法」が通常国会で可決、成立 2012 年 10 月 京都大学教授山中伸弥 iPS 細胞研究所所長、英ケンブリッジ大学ジョン・ガードン名誉教授 が、「成熟細胞が初期化され多能性をもつことの発見」によりノーベル生理学・医学賞を受 賞 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 79/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 トップ経営者 代表取締役会長兼社長木村佳司氏は 1952 年生まれ。HOYA 株式会社(東証 1 部 7741)で 長年眼科医向けのコンタクトレンズやレーザー装置、眼科用医薬品の販売や、関連会社の再 建などに関わった後、1995 年に同社を設立した。江川滉二氏と出会い、免疫細胞治療の事 業化に着手した。2002 年に同社代表取締役社長に就任、2013 年 10 月取締役会長に就任、 2014 年 10 月に代表取締役会長兼社長に就任、現在に至る。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 80/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 従業員 2014 年 9 月末現在の連結ベースの従業員数は 164 名。 大株主 大株主上位1 0 名 木村佳司 IHN株式会社 NOMURA PB NOMINIEES LIMITED OMNIBUS-MARGIN (CASH PB) 後藤重則 日本証券金融株式会社 小川真桜 株式会社カネカ 有限会社江川ホールディング 光本一夫 株式会社SBI証券 出所:会社データよりSR社作成 所有株式数 の割合 8.64% 1.58% 0.85% 0.57% 0.56% 0.51% 0.45% 0.42% 0.37% 0.37% 2014 年 9 月末現在 同社は 2013 年 5 月 9 日付で主要株主である木村佳司氏より同社株式を売却した旨、及び SMBC 日興証券株式会社より当該株式を取得した旨の報告を受けたとしている。これにより、 木村佳司氏の保有株式数(議決権の数)は 2013 年 5 月 8 日の 88,293 株(88,293 個)か ら 2013 年 5 月 9 日においては 48,293 株(48,293 個)に減少したとしている。また、そ れに伴い総株主の議決権数に対する割合は 10.1%から 5.5%へと低下した。 ただし、上記売却と同時に、木村佳司氏より同株数を 2013 年 5 月 10 日に買い戻すクロス取 引を実施する旨、また買い戻しの前に一部追加売却を行う予定である旨の報告を同社は受け ている。 配当及び株主還元 現在同社は配当を行っていない。また株主優待制度も現時点では行っていない。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 81/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 ところで 用語集 アジュバント 抗原に対する適応免疫応答を活性化させる目的で使用される物質。 アルファ・ベータ T 細胞(αβT 細胞) 血中に最も多く存在し、αβ 型の T 細胞受容体を発現する T 細胞。 IL-2 インターロイキン 2(Interleukin-2)の略称。抗原刺激により T 細胞から分泌されるサイト カインであり、免疫応答の調節に関与する。IL-2 は主に T 細胞に作用し、その増殖を誘導 する機能を持つ。 HSP105(Heat Shock Protein 105) HSP105 はストレスタンパク質に分類される。大腸がん、膵がん、乳がん、食道がん等の多 くの症例で高発現するタンパク質で、正常では精巣に高発現している。HSP105 が高発現し ていることが確認された場合、HSP105 由来がん抗原ペプチドを用いることにより、抗原特 異的な免疫治療が可能となる。 MHC クラス I 分子 有核細胞に現れる表面分子。抗原ペプチドと結合し、細胞表面に抗原ペプチドを提示させる 機能を持つ。がん抗原ペプチドは、がん細胞表面上の MHC クラス I 分子を介して αβ 型 T 細 胞のうち CD8 陽性 T 細胞に提示され、抗原の情報が伝達される。 エレクトロポレーション法 電気穿孔法とも呼ばれ、細胞に電気刺激をかけ一過性に細胞膜の透過性を高めることにより、 たんぱく質等を細胞内に送り込む技術。 オーダーメイド医療管理システム GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理および品質管理規則)の概念などを取り入れた、メ ディネット独自の高度な施設・設備管理システム。 ガンマ・デルタT(γδT 細胞細胞) γδ 型の T 細胞受容体を発現する T 細胞で、体内においては αβT 細胞と比較し少数である。 感染初期の免疫反応やがん細胞の排除などに働いていると考えられている。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 82/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 血漿 血液の 55%を占め、血液細胞、ホルモンなどの運搬を行う液体成分。無機塩類、水分、タン パク質などで構成されており、恒常性の維持、血液凝固、免疫機能を持つ。 抗原 抗体や T 細胞受容体と特異的に結合する物質で、免疫系が認識して反応を惹起する因子。細 菌やウイルスなどの外来病原体や腫瘍細胞上の糖やタンパク質など、自己体内に通常存在し ない物質が抗原となる。抗体やリンパ球の働きによって生体内から除去される。 抗体 B 細胞によって産生、分泌される免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質の総称。特定の抗原 に特異的に結合することで、その抗原を生体内から除去する。 抗原提示反応 抗原であるペプチド断片が MHC 分子に結合した状態で細胞の表面に提示される反応。 サイトカイン 細胞が産生するタンパク質で、細胞間の情報伝達の役割を担う。特にリンパ球が産生するサ イトカインをリンフォカイン、インターロイキン(IL)と呼び、標的細胞表面の受容体に結 合する。 細胞医療 採取した自己・非自己の細胞を、体外で培養・加工もしくはそのまま用いて治療をする医 療。 CTL Cytotoxic T lymphocyte(細胞障害性 T 細胞)の略称。T リンパ球の一種であり、体内で感 染細胞(移植細胞・ウイルス感染細胞・癌細胞など)を認識し攻撃する。 CPC 細胞加工施設(Cell Processing Center)の略称。細胞を培養・加工するための専用施設。 樹状細胞(DC) 枝状、樹状突起を有し、抗原認識・処理・提示を行う細胞。二次リンパ組織に存在し、T 細 胞を活性化させる。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 83/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 GMP (Good Manufacturing Practice) 医薬品の製造および品質管理に関する基準。GMP ソフトと称される製造管理および品質管理 基準と、GMP ハードと称される設備基準とで構成され、医薬品の製造業者が遵守すべき基準 となる。 清浄度 1キュービックフィート(約 28.3L)の容積空間中にある 0.3μm~ 0.5μm の微粒子(ゴミ・ ほこり)の数を測定し、対象とする部屋のクリーン度をあらわしたもの。米国連邦規格 <Federal Standard 209D>では、粒径が 0.5μm のものを測定対象とし 10,000 個以下~ 1,000 個までを クラス 10000 と表記する。 生細胞率 対象となる細胞集団中の、生きている細胞の割合。 単核球 リンパ球と単球の総称。 単球 豆状の核を有する白血球の一種。マクロファージなどの前駆体。 T 細胞 胸腺で成熟し、細胞性免疫に重要な役割を果たすリンパ球の一種。T 細胞受容体を持つ。 Treg 細胞 Regulatory T cell(制御性 T 細胞)の略称。リンパ球の働きを抑制する機能を持つ細胞で、 自己抗原に対する免疫反応を抑える役割を担う。 ナチュラルキラー(NK)細胞 NK 細胞は、がん化した細胞やウイルス感染細胞に細胞死を誘導し排除する、自然免疫細胞 の 1 種。末梢血中リンパ球の最大 15%を占める。細胞表面に抗体の受容体を発現しており、 抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。 培地 微生物や、細胞・組織など生体組織の培養に使用される、特定の栄養成分を含んだ液体。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 84/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 B 細胞 主に免疫グロブリン(抗体)の産生を行うリンパ球の一種。 PP-RP (Proliferation Potential-Related Protein) 核タンパク質に分類される。食道がんに高発現するタンパク質で、正常細胞では精巣と胎盤 などに発現している。腫瘍組織において PP-RP タンパク質の発現が確認された場合、PP-RP 由来がん抗原ペプチドを用いることにより、抗原特異的な免疫治療が期待される。 ビスホスホネート 悪性腫瘍による高カルシウム血症の治療薬として使用されており、ビスホスホネートの一種 であるゾレドロン酸は、種々のがんの骨転移あるいは多発性骨髄腫の治療薬として使用され ている。同社は、樹状細胞をゾレドロン酸と外科手術で摘出したがん組織またはがん抗原ペ プチドで共感作させることで、従来法と比べ、γδT 細胞を介した樹状細胞の活性化により、 細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導を数倍~100 倍まで向上させることを確認。この研究成果 を取り入れた独自の「樹状細胞ワクチン」技術を開発し、2007 年より実用化している。 免疫 生体が持つ、自分の体の構成成分(自己)と自分の体の成分ではないもの(非自己)を識別 し、ウイルスや細菌などの非自己に対して抵抗性を示す能力。がん細胞やウイルスの感染し た細胞などの異常細胞を排除する免疫は「細胞性免疫」と呼ばれ、T リンパ球が中心として 働く。 免疫抑制解除 がんやウイルス感染などによって、体内の免疫反応が抑えられている状態(免疫抑制状態) を元の状態に戻すことを指す。 ラジオ波焼灼療法(Radiofrequency Ablation: RFA) 肝臓のがん病巣に刺した針の先端からラジオ波による熱により、がん細胞を死滅させる治療 法。がんの直径が 3cm 以下であり数が 3 個以下の場合に適応される。2004 年に保険適応と なった。 リンパ球 白血球のうち 25%ほどを占める、比較的小さく細胞質の少ない白血球の一種。細菌や体の 異物を正常細胞などから識別し、攻撃する役割を持つ。NK 細胞、B 細胞(B リンパ球)、T 細胞(T リンパ球)などの種類がある。 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 85/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) 固形がんの主にがん薬物療法の臨床試験で国際的に使用される治療効果判定のためのガイド ライン。臨床試験において、CT、MRI などを用いて腫瘍の大きさを測定し、客観的な腫瘍縮 小効果を評価する方法として用いられる。 完全奏効(CR:すべての病変の消失) 部分奏効(PR:ベースライン径和が 30%以上減少) 進行(PD:試験中の最小径和から 20%以上の増大) 安定(SD:PR には縮小が不十分で、PD には増大が不十分) http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 86/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 企業概要 企業正式名称 本社所在地 株式会社メディネット 222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜 3 番 12 号 新横浜スクエアビル 14 階 代表電話番号 上場市場 045-478-0041 マザーズ(東証) 設立年月日 上場年月日 1995 年 10 月 17 日 2003 年 10 月 8 日 HP 決算月 http://www.medinet-inc.co.jp/ 9月 IR コンタクト IR ページ http://www.medinet-inc.co.jp/IR/IR.html IR メール IR 電話 http://www.sharedresearch.jp/ Copyright (C) Shared Research Inc. All Rights Reserved 87/88 メディネット(2370) SR Research Report 2014/12/26 会社概要 株式会社シェアードリサーチは今までにない画期的な形で日本企業の基本データや分析レポートのプラットフォーム提供を目指して います。さらに、徹底した分析のもとに顧客企業のレポートを掲載し随時更新しています。 SR社の現在のレポートカバレッジは次の通りです。 アートスパークホールディングス株式会社 ケンコーコム株式会社 長瀬産業株式会社 あい ホールディングス株式会社 コムシスホールディングス株式会社 日進工具株式会社 アクリーティブ株式会社 株式会社ザッパラス 日本駐車場開発株式会社 株式会社アクセル サトーホールディングス株式会社 日本エマージェンシーアシスタンス株式会社 アズビル株式会社 株式会社サニックス 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ アズワン株式会社 株式会社サンリオ 伯東株式会社 アニコムホールディングス株式会社 Jトラスト株式会社 株式会社ハーツユナイテッドグループ 株式会社アパマンショップホールディングス 株式会社じげん 株式会社ハピネット アンジェスMG株式会社 GCAサヴィアン株式会社 ピジョン株式会社 アンリツ株式会社 シップヘルスケアホールディングス株式会社 フィールズ株式会社 イオンディライト株式会社 株式会社ジェイアイエヌ 株式会社フェローテック 株式会社イエローハット ジャパンベストレスキューシステム株式会社 フリービット株式会社 株式会社伊藤園 シンバイオ製薬株式会社 株式会社ベネフィット・ワン 株式会社インテリジェント ウェイブ スター・マイカ株式会社 株式会社ベリテ 株式会社インフォマート 株式会社スリー・ディー・マトリックス 株式会社ベルパーク 株式会社エス・エム・エス ソースネクスト株式会社 松井証券株式会社 SBSホールディングス株式会社 株式会社ダイセキ 株式会社マックハウス エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社 株式会社髙島屋 株式会社 三城ホールディングス エレコム株式会社 タキヒヨー株式会社 株式会社ミライト・ホールディングス エン・ジャパン株式会社 株式会社多摩川ホールディングス 株式会社メディネット 株式会社オンワードホールディングス 株式会社チヨダ 株式会社夢真ホールディングス 株式会社ガリバーインターナショナル DIC株式会社 株式会社ラウンドワン キヤノンマーケティングジャパン株式会社 株式会社デジタルガレージ リゾートトラスト株式会社 KLab株式会社 株式会社TOKAIホールディングス 株式会社良品計画 グランディハウス株式会社 株式会社ドリームインキュベータ レーザーテック株式会社 株式会社クリーク・アンド・リバー社 株式会社ドンキホーテホールディングス 株式会社ワイヤレスゲート ケネディクス株式会社 内外トランスライン株式会社 株式会社ゲームカード・ジョイコホールディングス ナノキャリア株式会社 ※投資運用先銘柄に関するレポートをご所望の場合は、弊社にレポート作成を委託するよう 各企業に働きかけることをお勧めいたします。また、弊社に直接レポート作成をご依頼頂くことも可能です。 ディスクレーマー 本レポートは、情報提供のみを目的としております。投資に関する意見や判断を提供するものでも、投資の勧誘や推奨を意図したも のでもありません。SR Inc.は、本レポートに記載されたデータの信憑性や解釈については、明示された場合と黙示の場合の両方に つき、一切の保証を行わないものとします。SR Inc.は本レポートの使用により発生した損害について一切の責任を負いません。 本レポートの著作権、ならびに本レポートとその他Shared Researchレポートの派生品の作成および利用についての権利は、SR Inc.に帰属します。本レポートは、個人目的の使用においては複製および修正が許されていますが、配布・転送その他の利用は本レ ポートの著作権侵害に該当し、固く禁じられています。 SR Inc.の役員および従業員は、SR Inc.の調査レポートで対象としている企業の発行する有価証券に関して何らかの取引を行って おり、または将来行う可能性があります。そのため、SR Inc.の役員および従業員は、該当企業に対し、本レポートの客観性に影響 を与えうる利害を有する可能性があることにご留意ください。 金融商品取引法に基づく表示 本レポートの対象となる企業への投資または同企業が発行する有価証券への投資についての判断につながる意見が本レポートに含ま れている場合、その意見は、同企業からSR Inc.への対価の支払と引き換えに盛り込まれたものであるか、同企業とSR Inc.の間に 存在する当該対価の受け取りについての約束に基づいたものです。 連絡先 http://www.sharedresearch.jp 株式会社シェアードリサーチ Email: [email protected] 東京都文京区千駄木 3-31-12 電話番号 http://www.sharedresearch.jp/ (03) 5834-8787 Copyright (C) Shared Research Inc. 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