コンプライアンスの推進について 長浜市では、平成22年8月に2名の職員が収賄により逮捕され、内 1 名は収賄罪で 起訴され有罪となる不祥事が発生しました。市では、二度とこのような不祥事を起こさ ないという決意を新たにするとともに、 「長浜市不祥事根絶宣言」の策定等の防止策を講 じ、職員一人ひとりが不祥事根絶に努めてきました。しかしながら、今回再び、職員が 官製談合防止法違反及び公契約関係競争入札妨害により逮捕されるという不祥事を引 き起こしました。 市職員による不祥事は、不祥事を起こした職員本人の責任問題だけに留まらず、今ま で多くの先輩、上司、同僚たちが築いてきた市民との信頼関係が一瞬のうちに失われる ことになります。その回復には、多くの時間と労力を費やすことになり、場合によって は、信頼を回復できないこともあります。 長浜市職員は過去の事例から多くを学んできているはずですし、さまざまな対策を講 じてきたはずであるのに、なぜ再びこのようなことが起きたのか、取り組みは十分であ ったか、何が欠けていたのか、さらに何をすべきか、これまでの対策を詳細に検証し、 不祥事を未然に防止するための仕組みづくりを再構築する必要があります。 今回の不祥事を厳粛に受け止め、市民の皆様の市政に対する信頼を一日も早く回復す べく、職員のあらゆる不正を断ち切る勇気、正しいことをやり抜く力、小さな間違いも 見逃さない行動力を磨き、全庁を挙げて綱紀粛正に取り組み、職員の体質改善に結びつ けていくため、検証を行い、議論を重ね、対策を次のとおり取りまとめました。今後は 各部課長の責任の下に、次のとおり取り組みを進め、その状況をコンプライアンス推進 本部がチェックしていくことにいたします。 1.これまでの取り組み ①「コンプライアンス推進室」の設置 庁内のコンプライアンスに関する取り組みを推進するため、総務部総務課内に 「コンプライアンス推進室」を設置しました。 ②「長浜市コンプライアンス推進本部」の設置 本市職員の不祥事防止の徹底及び庁内におけるコンプライアンスに係る事項を 推進するため副市長を本部長とし、教育長、各部長・支所長を構成員とした 「長浜市コンプライアンス推進本部」を設置しました。 ③コンプライアンス推進リーダーの任命 各職場においてコンプライアンスに関する取り組みを推進するため、所属長を コンプライアンス推進リーダーに任命しました。 ④「長浜市不祥事再発防止委員会」の設置 外部の有識者で構成する「長浜市不祥事再発防止委員会」を設置し、再発防止 に関する意見をいただきました。 ⑤「長浜市不祥事根絶宣言」の策定 長浜市不祥事再発防止委員会からの意見をもとに、「長浜市を愛し、常に高潔で あれ」をモットーとした「長浜市不祥事根絶宣言」を策定しました。宣言に は、不祥事根絶のための3つの柱と21項目の取り組みが掲載されています。 1 ⑥「長浜市コンプライアンスハンドブック」の作成 職員が、日ごろから高い倫理観を持って行動し、市民の信頼を取り戻すための 一助となるよう「長浜市コンプライアンスハンドブック」を作成しました。 ⑦「長浜市職員のためのおもてなしガイドブック」の作成 新庁舎での勤務を前に、市職員が日頃から守り、心がけなければならない事柄 や、スムーズな案内に役立つ情報をまとめた「長浜市職員のためのおもてなし ガイドブック」を作成しました。 ⑧その他の取り組み コンプライアンス、官製談合防止、ハラスメント、不当要求等に関する研修 コンプライアンスハンドブック等を用いた職場研修 公金等の管理方法の点検 事務処理の適正化に係る業務点検 職員育成面談 等 2.不祥事防止対策の検証 今までの取り組みで、何が足りないのかを検証し、また不祥事が再び起こらないよう にどのように何を強化していくのかを徹底的に議論し、全組織を挙げて取り組むことを 念頭に置き検証作業を進めました。 検証には、各部局において、全職員参加のもとに、なぜ再び不祥事が発生したのか、 これまでの取り組みで何が不足していたのか、今後どうしていけば、不祥事の発生を防 ぐことができるかについて話し合い、その結果をコンプライアンス推進本部会議におい てさらに協議、検討するということを繰り返し、これまで6回の本部会議を開催しまし た。 (1)職員が守るべきルールやテキストは整備されていたか まず、職員が行ってはならないこと、逆に守らなければならないこと等を明らか にしたルールやテキストがあるのか、それは十分なものであるかの検証を行いまし た。 これについては、最も基本となる「長浜市職員倫理規程」が制定されており、こ こに職員の遵守事項や関係事業者等との接触に際しての規制が書かれています。こ の規程をきちんと守ることができていれば、今回のような不祥事は起こらなかった と言えます。また、 「長浜市不祥事根絶宣言」や「長浜市コンプライアンスハンドブ ック」には、法律上の義務や制限に加え、不祥事防止のための取り組み、公益通報 制度についても記載されています。さらに、昨年作成した「長浜市職員のためのお もてなしガイドブック」には、身だしなみやあいさつ等についても細かく記載して います。 このように、職員が守るべきルールやテキストについては、十分なものが作成さ れており、これをきちんと守ってさえいれば、あらゆる不祥事は防ぐことができる ことになります。 (2)ルールやテキストは周知されていたか しかし、結果として、これらのルールやテキストは守られませんでした。このた め、職員はこれらのルール等があることを知っているのか、内容を理解しているの かについて検証しました。 これらのルール等は、市役所内のグループウェアの中の資料集やマニュアル集に 2 保管されており、職員が能動的にアクセスしなければ目にすることはありません。 このため、そもそもこうしたルールの存在を知らない職員もいると考えられます。 また、これらを用いた職場研修を実施していましたが、すべての職場で実施できて おらず、実施しても、職員はただ出席して話を聞いただけで、内容を深く理解して いなかったという状況もありました。 (3)ルールやテキストを守る仕組みが機能していたか ルールやテキストの周知が十分でなかったことが明らかとなりましたが、では仮 に職員がルール等の存在や内容をおおむね理解していたとして、これらを守るため の仕組みはあるのか、またそれは機能していたのかについて検証しました。 職員は、不祥事根絶宣言に基づき、不祥事防止チェックシートで日常の行動を振 り返ることになっています。また、守るべきルール等が守られていないときは、コ ンプライアンス推進リーダーである所属長が注意し、不祥事根絶宣言に記載された 取り組みがきちんと実行されているかどうかは、長浜市コンプライアンス推進本部 会議において検証することになっています。 しかし、実際は、職員のルール違反等にだれも気づかず、気づいていてもだれも 注意していないということがありました。不祥事根絶宣言に記載された取り組みに ついても、実施できていないものがあるうえ、本部会議が開催されていない年もあ り、その検証ができていませんでした。 このように、ルール等を守る仕組みはあっても、その仕組みを作った段階で取り 組みが終了してしまい、これらの仕組みをきちんと運用していくことができていな かったことも、今回の不祥事発生の原因のひとつと考えられます。 (4)ルールやテキストを守る意識、職場の風土があったか 最後に、不祥事を二度と起こさず、規律ある職場を職員一丸となって作り上げて いこうという職場風土にあったかどうかについて検証しました。 各職場からの意見には、 「不祥事が起き、市役所にとって危機的状況であるにもか かわらず、担当課や担当職員の問題、所詮他人事で関係のない自分はむしろ被害者 という認識の職員もいるなど、市役所全体の不祥事、問題としての認識がない。」と いった意見や、 「見て見ぬふりをするといった「不作為」を許す土壌が生まれている のではないか。 」といった意見もあり、職員個人の気の緩みとともに、市役所全体の 風土・雰囲気が良くない方向に流れているようにも思われます。 3.不祥事根絶に向けての取り組み 今回の検証では、ルールやテキストなどの決まりに関することは、概ね整備が出来て いるものの、その周知が十分でなかったり、ルールを守るための仕組みが十分機能して いなかったり、何よりも職員自身の意識の問題に課題が多くあることが不祥事発生の大 きな原因であるとの共通認識に至りました。そのための取り組みとして (1)職員服務規程やコンプライアンスハンドブックというルールがありながら、その ルールを職員一人ひとりが十分に認識していない実情があるため、徹底した点検作 業と、不祥事を未然に防ぐための職場研修を義務化し、内容を全職員が共通理解す ること。 3 (2)ルールを守る仕組みとして、内部統制制度の本格導入により、日常的なリスク意 識を喚起し、再発防止策を日常的なリスクマネジメントに活かす仕組みをつくるこ と。 (3)部下を指導するのは所属長の責務であり、部下が起こした不祥事の責任の一端は 所属長にある。このため所属長が業務管理、人事管理、職場環境管理のリーダーシ ップを発揮し、さらには、所属長の職員管理能力や危機管理能力を高めるため、部 局長が所属長への指導を確実に行うことや、小さなルール違反の積み重ねをペナル ティとして給与等に反映するための新たな運用をつくること。 (4)現在あいまいな状態にある危機管理マニュアルの再整備を行うこと。 (5)その他、不祥事のリスクを減らすための環境改善として、入札・契約制度を抜本 的に見直すことや、個人所有の携帯電話の使用制限に加え、職員の悩み相談の窓口 設置を行うこと。 これらの対策が重要であると判断し、以下の具体的対策を講じていきます。 対策1 ルールの周知徹底 ① 長浜市コンプライアンスハンドブックの活用を行う ●問題点・課題 平成22年度の不祥事の際に、職員が一丸となって信頼される市役所づくりに取り組む ため、 「長浜市不祥事根絶宣言」を策定し、今一度、職員は市民からの信託を受けた全体の 奉仕者であることを自覚し、日頃から高い倫理観を持って行動し、市民の信頼を取り戻すた めの一助となる「長浜市コンプライアンスハンドブック」を策定したにも関わらず、これが あることすら知らない職員がいる、また、知っていても正しく理解していない職員もいるな ど解釈にも違いが見られる。 ●具体的な行動 ・課内協議や職場研修で、 「長浜市コンプライアンスハンドブック」等の朗読を繰り返し行 い、話し合うことで内容の理解を深める。 ・職場研修が全職場で確実に実施されるよう、実施状況を人事課が把握し、未実施の所属を 公表する。 ・職場研修を職務と位置づけ、臨時職員を含む全職員に義務化する。 対策2 ルールを守る仕組みの改善 ① 内部統制制度の本格導入を行う ●問題点・課題 職員のモラルに訴える取り組みだけでは、不祥事を防ぐことはできず、あらゆる危険性を 洗い出し、リスクを軽減させるシステムが必要である。 ●具体的な行動 ・現在試行中の財務処理に関する内部統制に加え、事務事業全般にかかる内部統制制度を導 入する。 4 対策3 規律と管理監督の徹底 ① 職員の行動を把握する ●問題点・課題 職員の行動については、朝礼での報告やホワイトボードへの記入がされているが、書き忘 れや記憶違い、あるいは出張なのか休暇なのか不明な場合もあり、服務管理が不明瞭となっ ている。 ●具体的な行動 ・パソコンのグループウェアへの行動予定入力を義務付け、所属長が適宜チェックする。 ② 人事評価の給与への反映を行う ●問題点・課題 服務にかかるものや、仕事の基本ルールを、所属長の責任のもとに繰り返し指導しても改 善が見られない場合があるが、それでも実質的なペナルティが与えられることはないため、 ルール違反が繰り返される。 ●具体的な行動 ・服務等にかかる基本ルールを守らない職員については、人事評価のうえ、勤勉手当や昇給・ 昇格に反映させることで、ルールを遵守できない場合のペナルティを明確にし、日常的な行 動レベル(意識レベルではない)を正す。 ③ 公益通報制度の周知・啓発を行う ●問題点・課題 公益通報制度が機能していれば、職員あるいは業者、市民から不祥事につながる情報が寄 せられていたかもしれないが、制度を作っただけで、啓発も、周知もできていない。 ●具体的な行動 ・公益通報制度について、グループウェアを通じて職員に周知するとともに、コンプライア ンス研修等で啓発する。 ④ 不祥事根絶宣言の取り組みを行う ●問題点・課題 平成22年の不祥事を踏まえ策定した「不祥事根絶宣言」における不祥事防止の取り組み について、未実施のものが多い。 ●具体的な行動 ・「長浜市不祥事根絶宣言」に掲げられた項目について、期限を定め、確実に実施する。実 施状況は、コンプライアンス推進本部会議で検証する。 5 ⑤ 部下への指導監督を強化する ●問題点・課題 所属長など管理職が、部下の行動や業務の進捗状況を把握できていない。ネクタイを締め ていない、サンダル履き、作業服のままの通勤、派手な服装などマナーやルール違反があっ ても、気づかないか、気づいていても注意せず、管理職のマネジメント能力が低下している。 ●具体的な行動 ・所属長は、毎朝朝礼で挨拶・服装・身だしなみ等を点検し、注意指導喚起を行う。 ・各部局長は、目標管理での所属長面談に加え、定期的に所管部署を訪問し、所属長に服務 指導の徹底等の訓示を行う。 ⑥ 市職員としての一体感を醸成する ●問題点・課題 職場の風通しは本当に良いのか、助け合う機運はあるのか。仲の良い職員以外の行動に無 関心で、関わったら損、自分さえ良ければいいという思考につながっている。 ●具体的な行動 ・職場の組織力を高めるため、所属長は毎月の打ち合わせ等で自由に話し合いを行う場を必 ず設け、業務の進行管理とともに職員間の意思疎通を行う。 対策4 マニュアル等の再整備 ① 危機管理マニュアルの再整備を行う ●問題点・課題 個人、組織のリスク意識が弱く、特に公権力の使用に伴うリスクの管理があいまいになっ ている。各所属で、再度想定し得る危機を洗い出し、それを防ぐための方策を徹底的に検討 し、実施することが必要である。過去には各職場に危機管理マニュアルがあったはずだが、 機能していないか、所在不明となっている。 ●具体的な行動 ・部局ごとに、想定される危機に加え、リスク軽減のための予防も含めた危機管理マニュア ルを整備し、確実に運用していく。運用状況は所属長が確認する。 6 対策5 不祥事を防ぐための環境改善 ① 入札・契約制度の見直しを行う ●問題点・課題 改善措置を講じても、設計価格等がもれる可能性をゼロにすることはできない。業者を一 般公募する一般競争入札や、価格だけでない部分も評価し決定する総合評価方式の活用範 囲を拡大するなど、入札制度の見直しが必要である。 ●具体的な行動 ・入札制度について、抜本的な見直しを含めた検討を行う。 ② 行政情報・個人情報の流出防止を図る ●問題点・課題 担当以外の者が、退庁後に机の上の文書等を見ることが出来る状態になっている。 ●具体的な行動 ・退庁時には、 机の上に電話とパソコン以外の書類や決裁を置かず、ロッカーへ必ず片づけ、 机、ロッカー等はすべて施錠する。 ③ 業務用携帯電話を貸与する ●問題点・課題 時間外や休日などに、工事や除雪など個人の携帯電話で業者等に緊急連絡を取らないと いけない場合があるが、利害関係者と親密な関係になったり、通話やメールを通じて情報を 漏らす危険性がある。 ●具体的な行動 ・個人所有の携帯電話は、関係事業者等への連絡等の使用を禁止し、必要に応じて各課のグ ループリーダー以上に業務用携帯電話を貸与する。業者等のやりとりや苦情対応などは、公 用の携帯電話を使用することで記録を残しリスクを回避する。 ※都市建設部等、業者等との連絡機会の多い職場で実施 ④ 相談窓口の設置を行う ●問題点・課題 職員間のコミュニケーションが希薄化しており、若手職員が仕事だけでなく私生活にお いても、困ったとき、間違いそうになった時に気楽に相談できる先、職員が抱えるあらゆる 問題を気軽に相談できる体制がない。 ●具体的な行動 ・職員が心配事や悩みを相談できる外部の相談窓口を設置する。 7
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