第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 6 月 1 日(日)12 : 15∼13 : 05 ポスター会場 (展示ホール A・B)【ポスター 運動器!スポーツ 7】 1607 成長期腰椎分離症者におけるフォワードランジ動作について 体幹伸展角度に着目して 小保方祐貴1),原 1) 龍邦会 耕介1),松島 東前橋整形外科 知生1),西 恒亮1),釜谷 邦夫2) リハビリテーションセンター,2)龍邦会 東前橋整形外科 整形外科 key words 腰椎分離症・成長期・体幹伸展 【はじめに,目的】 腰椎分離症は体幹伸展と回旋の反復動作による疲労骨折とされており,成長期スポーツ障害の代表的疾患である。腰椎分離症に 関して筋タイトネスなどの身体的要因に関する報告はされているが,動作に関する報告はみられない。また腰椎分離症の臨床所 見として,スポーツ中の動作により腰痛が出現すると報告されている。スポーツ中の動作は切り返しや大きく前に踏み込む動作 が多く,臨床ではフォワードランジ(以下;FL)で評価する場面が多い。そこで本研究では,成長期腰椎分離症者のフォワード ランジ動作における体幹伸展角度の特徴と身体機能評価との関連について明らかにすることを目的とした。 【方法】 対象は運動部に所属している 13−15 歳の男子 17 名とし,腰椎分離症群(以下;分離群)とコントロール群に群分けした。分離 群は 11 名 (分離高位は第 4 腰椎 3 名,第 5 腰椎 8 名,分離側は右側 4 名,左側 5 名,両側 2 名) ,コントロール群は 6 名であっ た。対象者に対し,静止立位,FL を行ってもらった。静止立位は両上肢を前方で組ませ,両踵中央部を 10cm 離し,足角 10 度の両脚立位とした。FL は静止立位の状態から右側下肢を 1m 先へ踏み出し,その後右側下肢をもとの位置に戻し,静止立位 の状態に戻るまでを 1 回とし,続けて 5 回試行した。ハイスピードカメラを対象者から右側へ 2m,高さ 1m のところに設定し, 静止立位,FL を撮影した。得られた画像から画像解析ソフト ImageJ を使用し,体幹伸展角度を測定した。FL 中の体幹伸展角 度は 1 回の FL 中の最大体幹伸展角度を測定し,5 回の平均値を代表値とした。また静止立位と FL の体幹伸展角度の差を変化量 と定義し,算出した。 身体機能評価として下肢関節・筋柔軟性と体幹機能を評価した。下肢関節・筋柔軟性は,関節可動域 (股関節屈曲・伸展・足関 節背屈) ,Finger! Floor Distance,Heal! Buttock Distance,Straight Leg Raising を測定した。体幹機能はフロントブリッジでの 最大保持時間を測定した。 統計処理には SPSS ver.21.0 for Windows を使用し,群間比較には Mann! Whitney の U 検定,群内比較には Wilcoxon 順位付符 号検定,体幹伸展角度と身体機能の相関関係には Spearman の順位相関係数を用いた。有意水準は 5% とした。 【倫理的配慮,説明と同意】 対象者及び保護者に目的及び内容,対象者の有する権利について口頭にて十分説明を行い,書面にて同意を得た。 【結果】 分離群の静止立位の体幹伸展角度は 24.04±7.66 度,FL の体幹伸展角度は 31.92±7.97 度,FL と静止立位の体幹伸展角度の変化 量は 7.89±8.98 度であり,FL と静止立位の間に有意差を認めた (p<0.05) 。コントロール群の静止立位の体幹伸展角度は 31.76± 10.57 度,FL の体幹伸展角度は 23.11±10.53 度,FL と静止立位の体幹伸展角度の変化量は−8.65±11.47 度であった。FL と静止 立位の体幹伸展角度の変化量はコントロール群に比べ分離群において有意に高値であった (p<0.05) 。静止立位・FL の体幹伸展 角度と身体機能の間には有意な相関関係は認められなかった。 【考察】 分離群では静止立位と比べて FL 時に体幹伸展角度が大きかった。また,分離群ではコントロール群と比べて FL の体幹伸展方 向の変化量が高値を示した。これより腰椎分離症者は FL の際に体幹伸展を大きくする特徴があることが考えられた。腰椎分離 症に対する理学療法では体幹筋トレーニングや下肢筋へのストレッチングが一般的である。しかし,腰椎分離症が腰椎伸展・回 旋の反復による疲労骨折である点や臨床所見として腰椎伸展時痛や動作時に疼痛が出現する点を考慮すると,腰椎分離症の理 学療法において,動作時の体幹伸展の増大に対する介入を行う重要性が考えられた。 体幹伸展角度と身体機能の関連について本研究では,身体機能について分離群とコントロール群の間の有意差はなく,静止立 位・FL の体幹伸展角度と身体機能の間に有意な相関関係は認められなかった。しかし,朝倉ら(2009)は一側下肢挙上でのフ ロントブリッジにて腰椎分離症者の体幹安定性の低下を認めたとしている。本研究では体幹機能を両側下肢接地でのフロント ブリッジで評価し,体幹伸展角度と相関はなかったことから,腰椎分離症者では一側下肢挙上での体幹機能が低下していること が強く疑われる。また動作時における体幹伸展角度の増大がみられたことから,これらの結果を踏まえ,腰椎分離症者において 動的な体幹機能が動作時の体幹伸展角度に及ぼす影響を今後検討することが重要であることが考えられる。 【理学療法学研究としての意義】 腰椎分離症に対する理学療法を考える上で,動作時に生じる体幹伸展の増大を考慮して理学療法を展開していく必要性を示唆 するものとして意義があると考える。
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