博士論文 豚におけるサルモネラおよび 大腸菌感染系の確立と 抗菌剤

博士論文
豚におけるサルモネラおよび
大腸菌感染系の確立と
抗菌剤代替物質評価への応用
2014 年 8 月
田中剛志
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The development of infection models for
S . Typhimurium and E. coli and their application for
evaluation of antimicrobial substitution
Tsuyoshi Tanaka
2
目次
第一章
緒論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第二章
豚 サ ル モ ネ ラ ・ テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 ・ ・ ・ ・ ・ 11
第三章
豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系を用いた乳酸添加飼
料 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 35
第四章
豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47
第五章
豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い た 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 68
第六章
総 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 81
論 文 目 録 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 84
参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 85
謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 100
3
第一章
緒論
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抗 菌 剤 は 、家 畜 の 健 康 を 守 り 、安 全 な 畜 産 物 の 安 定 生 産 を 確 保 す る 上 で 重
要 な 資 材 で あ る が 、そ の 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 か ら ヒ ト や 家 畜 に 対 す
る 健 康 リ ス ク が 懸 念 さ れ て い る [1]。 家 畜 に お け る 健 康 リ ス ク と は 、 病 原 細
菌 が 対 象 動 物 に 使 用 さ れ た 薬 剤 に 対 し て 耐 性 化 し 、そ れ に よ っ て 治 療 が 困 難
に な る リ ス ク で あ る [2]。 一 方 、 家 畜 に 対 す る 抗 菌 剤 の 使 用 に お け る ヒ ト へ
の 健 康 リ ス ク と は 、動 物 か ら ヒ ト に 耐 性 化 し た 菌 あ る い は 耐 性 遺 伝 子 が 感 染
あ る い は 伝 播 す る リ ス ク で あ る [3]。
1969 年 の 英 国 の ス ワ ン レ ポ ー ト に よ り 、 初 め て 家 畜 由 来 の 薬 剤 耐 性 菌 の
公 衆 衛 生 へ の 影 響 に つ い て 注 目 さ れ る よ う に な っ た [4]。そ こ で は 、「家 畜 に
成長促進目的で使用される飼料添加の抗菌性物質が薬剤耐性菌や R プラス
ミ ド の 増 加 を 促 す 原 因 と な り 、ひ い て は ヒ ト お よ び 食 用 動 物 の 健 康 を 損 な う
恐 れ が あ る た め 、 十 分 な 規 制 措 置 が 必 要 」と 報 告 さ れ て い る 。 こ の ス ワ ン レ
ポ ー ト を 契 機 と し て 、各 国 で 家 畜 へ の 抗 菌 性 物 質 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 問 題 が
立 ち 上 が り 、各 種 の 対 応 が 図 ら れ る よ う に な っ た 。例 え ば 、デ ン マ ー ク で は 、
1999 年 か ら 全 て の 抗 菌 性 成 長 促 進 剤 の 使 用 が 中 止 さ れ た [5]。し か し 、デ ン
マークでは抗菌性成長促進剤の使用が中止された後に治療用の抗菌剤の使
用 量 が 増 加 し 、全 体 と し て 抗 菌 剤 の 使 用 量 を 大 幅 に 削 減 す る ま で に は 至 ら な
か っ た [6]。 一 方 EU で は 、 EU 委 員 会 傘 下 で 飼 料 添 加 物 の 科 学 的 評 価 を 行 う
機 関 で あ る 家 畜 栄 養 科 学 委 員 会( SCAN)が「 抗 菌 性 飼 料 添 加 物 の 使 用 が 家 畜
や 人 に 危 害 を 及 ぼ す と い う 根 拠 が な く 、動 物 由 来 の 薬 剤 耐 性 遺 伝 子 が 人 の 消
化 管 内 細 菌 に 伝 達 す る こ と を 証 明 す る 新 た な 根 拠 は 示 さ れ て い な い 」と の 審
査 結 果 を 提 出 し た が [4]、EU 委 員 会 は 疑 い が あ る 限 り は そ の 使 用 を 中 止 す べ
き と す る “ 予 防 の 原 則 ” に 則 っ た 対 応 を 行 い 、 2006 年 1 月 か ら 成 長 促 進 を
目的とした抗菌性飼料添加物の使用が全面的に中止されることになった。
EU の 抗 菌 剤 を め ぐ る 薬 剤 耐 性 菌 へ の 懸 念 は 、 そ の 後 治 療 用 の 動 物 用 医 薬
品にも向けられ、特にヒト医療上重要度の高い、フルオロキノロン系薬剤、
第三および第四世代セファロスポリン系薬剤およびマクロライド系薬剤の
3 系 統 の 薬 剤 に 対 す る リ ス ク 評 価 が 行 わ れ 、フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 薬 剤 と 第 三
お よ び 四 世 代 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系 薬 剤 に 対 し て は 、他 剤 無 効 例 に そ の 使 用 を
温 存 す る 、マ ク ロ ラ イ ド 系 薬 剤 に 対 し て は 適 正 使 用 を 強 力 に 推 し 進 め る 必 要
5
が あ る と い っ た 、 い わ ゆ る “ 慎 重 使 用 ” が 打 ち 出 さ れ て い る [4]。 こ の よ う
に デ ン マ ー ク を は じ め EU 諸 国 で は 、 薬 剤 耐 性 菌 へ の 懸 念 か ら 家 畜 に お け る
抗菌剤の使用に厳しい目が向けられている。
ま た 、 EU 以 外 で も 米 国 で は ヒ ト 医 療 上 重 要 視 さ れ る 抗 菌 性 物 質 の 動 物 へ
の 治 療 的 使 用 を 中 心 に 対 策 が 進 め ら れ て お り [4]、 具 体 的 に は 科 学 的 に リ ス
ク を 評 価 し 、対 策 を 考 慮 す る と い う も の で 、現 在 ま で に セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系
お よ び マ ク ロ ラ イ ド 系 の リ ス ク 評 価 が 行 わ れ て い る 。そ の 他 に も オ ー ス ト ラ
リ ア 、カ ナ ダ 、韓 国 な ど 各 国 で 動 物 に お け る 適 切 な 抗 菌 剤 使 用 へ の 対 策 が 進
められている。
一 方 、 我 が 国 に お い て は 、 諸 外 国 の 動 き も 受 け て 、 平 成 7 年 度 ( 1995 年
度 ) か ら 家 畜 病 原 細 菌 の 薬 剤 耐 性 調 査 を 開 始 し 、 平 成 12 年 度 か ら は 家 畜 衛
生 分 野 に お け る 薬 剤 耐 性 モ ニ タ リ ン グ 体 制 (JVARM: Japan Veterinary
Antimicrobial Resistance Monitoring System)を 設 立 し 、 食 用 動 物 に お け
る抗菌剤使用量の調査および野外流行株や食品媒介病原性細菌等における
薬 剤 耐 性 調 査 を 実 施 し 、こ れ ら の 結 果 を「 治 療 効 果 を 最 大 化 し 、薬 剤 耐 性 菌
の 出 現 を 最 少 化 す る 」と い う“ 慎 重 使 用 ”に 反 映 さ せ る こ と と な っ て い る [7]。
我 が 国 に お い て は 現 在 、ヒ ト 医 療 で の 重 要 度 が 高 い フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 、第
三および第四世代セファロスポリン系およびマクロライド系を中心に臨床
獣 医 師 に 対 し て“ 慎 重 使 用 ”の 呼 び か け が 行 わ れ て い る 。実 際 、我 が 国 の 畜
産 領 域 で の 抗 菌 剤 等 抗 菌 性 物 質 の 使 用 量 を 、2001 年 度 と 2011 年 度 で 比 較 す
る と 飼 料 添 加 物 と し て 2001 年 は 233 ト ン 、一 方 2011 年 度 は 234 ト ン 、動 物
用 医 薬 品 と し て は 2001 年 で 1,059 ト ン 、一 方 2011 年 度 は 781 ト ン で 、こ れ
ら を 合 計 し た 使 用 量 は 2001 年 度 が 1,292 ト ン で 、2011 年 度 は 1,015 ト ン と
減 少 傾 向 に あ る [7、 8]。 し か し な が ら 、 2012 年 度 に 我 が 国 で 使 用 さ れ た 抗
菌 物 質 等 の 抗 生 物 質 の 合 計 1,693 ト ン の 内 飼 料 添 加 用 に 175 ト ン 、家 畜 の 治
療 用 に 727 ト ン の 併 せ て 902 ト ン と 、実 に 半 分 以 上 が 畜 産 現 場 で 使 用 さ れ て
い る [9](図 1)。 ま た 、 我 が 国 の 消 費 者 か ら も 抗 菌 性 物 質 に 関 す る 責 任 あ る
慎 重 な 使 用 を 求 め る 声 が 上 が っ て お り [10]、今 後 そ の 使 用 量 を 減 ら す 取 り 組
みをさらに強化する必要がある。
一 方 、畜 産 現 場 に お い て 、抗 菌 剤 は 畜 産 物 の 安 定 生 産 に は 不 可 欠 な 資 材 と
6
し て 使 用 さ れ て い る 。 畜 種 別 に み る と 、 2001 年 で は 動 物 用 抗 菌 剤 の 販 売 高
の 実 に 54%を 豚 が 占 め て お り 、 次 い で 水 産 用 に 22%、 鶏 用 に 16%、 牛 用 に 8%
と な っ て い る [7、8]。ま た 、我 が 国 で ヒ ト 医 療 上 重 要 度 が 高 い た め に 、第 二
次 選 択 薬 と し て 承 認 さ れ 特 に 強 く“ 慎 重 使 用 ”が 求 め ら れ て い る 上 記 3 系 統
( フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 、第 三 お よ び 第 四 世 代 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系 お よ び マ ク
ロ ラ イ ド 系 ) の 動 物 用 抗 菌 剤 の 中 で 、 2012 年 度 に 使 用 実 績 が あ っ た フ ル オ
ロキノロン系薬剤および第三および第四世代セファロスポリン系薬剤のそ
れ ぞ れ 25.5%お よ び 45.8%が 豚 で 使 用 さ れ て お り [11]、 こ れ ら “ 慎 重 使 用 ”
を 求 め ら れ て い る 薬 剤 で も 豚 で の 使 用 が 多 く な っ て い る 。こ の よ う に 治 療 用
抗 菌 剤 の 使 用 量 が 豚 で 多 い 理 由 と し て 、採 卵 鶏 で は 産 卵 期 間 中 の 抗 菌 剤 の 使
用 は 原 則 と し て 禁 じ ら れ て お り 、ま た ブ ロ イ ラ ー で は 飼 養 期 間 が 短 い た め に
抗菌剤の使用による休薬期間を考慮すると実際に投薬できる期間が短いこ
と が あ げ ら れ る 。一 方 で 、牛 や 豚 は 飼 養 期 間 も 長 く 休 薬 期 間 も 守 り や す い が 、
牛 で は 個 体 診 療 に よ る 注 射 や 飼 料 添 加 が 中 心 で 、豚 で は 群 で の 管 理 が 一 般 的
で あ り 、群 全 体 へ の 投 薬 が 行 わ れ る た め に 豚 で の 使 用 量 が 増 え る も の と 考 え
ら れ る 。ま た 、豚 で は 呼 吸 器 感 染 症 や 腸 管 感 染 症 に 多 く の 病 気 が あ り 、そ の
対 策 と し て 、ワ ク チ ン と 併 せ て 抗 菌 剤 の 飼 料 添 加 が 衛 生 プ ロ グ ラ ム に 組 み 込
まれている農場が多いことも一因となっている。
実 際 に 多 く の 養 豚 場 に は 複 数 の 病 原 体 が 浸 潤 し て お り [12]、中 で も 豚 の 腸
管 感 染 症 は 多 く の 養 豚 場 に お い て 頻 繁 に 認 め ら れ て い る 。豚 の 腸 管 感 染 症 の
原 因 と な る 主 な 病 原 体 と し て サ ル モ ネ ラ と 大 腸 菌 が 挙 げ ら れ る [13、 14]。
豚 の サ ル モ ネ ラ 症 は 我 が 国 で の 発 症 例 の 報 告 も あ り [15]、豚 の 下 痢 便 か ら
も 高 率 に 分 離 さ れ て い る [16]。加 え て 、サ ル モ ネ ラ は ヒ ト 食 中 毒 の 主 な 原 因
菌 と し て も 知 ら れ て お り 、特 に EU で は 1990 年 代 に 発 生 し た ヒ ト の サ ル モ ネ
ラ 食 中 毒 の 20%程 度 が 豚 肉 の 喫 食 と 関 連 し て い た と 報 告 さ れ て い る [17]。そ
の た め EU 諸 国 で は 、 生 産 農 場 か ら 食 卓 ま で 全 て の 段 階 で 畜 産 物 の 食 中 毒 対
策 に 取 り 組 む “ Farm to Table” を 実 践 す る こ と で 、 ヒ ト 食 中 毒 の 発 生 を 減
少 さ せ る 成 果 を 挙 げ て お り [18]、生 産 現 場 か ら の コ ン ト ロ ー ル が 有 効 で あ る
こ と が 示 さ れ て い る 。養 豚 場 に お け る サ ル モ ネ ラ 対 策 と し て は 、飼 養 環 境 の
改 善 や オ ー ル イ ン・オ ー ル ア ウ ト の 実 践 等 と 併 せ て 、抗 菌 剤 を 用 い た 対 策 も
7
行 わ れ て い る [19、20]。し か し 、サ ル モ ネ ラ に お け る 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 が 報
告 さ れ て お り [21]、慎 重 使 用 が 求 め ら れ て い る 第 二 次 選 択 薬 を 使 用 せ ざ る を
得ない事例も発生している。
一 方 、大 腸 菌 は 豚 で は 新 生 期 下 痢 症 、離 乳 後 下 痢 症 お よ び 浮 腫 病 等 の 原 因
菌で、多くの農場から分離されており、我が国でも発症が認められている
[22]。大 腸 菌 の 対 策 も サ ル モ ネ ラ と 同 様 に 飼 養 管 理 の 改 善 や 飼 養 環 境 の 整 備
と 併 せ て 生 菌 剤 の 給 与 や 抗 菌 剤 の 投 与 が 行 わ れ て い る 。し か し 、大 腸 菌 で も
薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 が 報 告 さ れ て い る [23]。 そ の た め 、 サ ル モ ネ ラ と 同 様 に 、
慎重使用が求められている第二次選択薬を使用せざるを得ない事例も発生
している。
近 年 、こ れ ら 抗 菌 剤 の 慎 重 使 用 の 呼 び か け や 豚 を 含 め た 家 畜 に お け る 重 要
な 病 原 体 で の 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 を 受 け 、抗 菌 剤 代 替 物 質 の 研 究 が 活 発 に 行 わ
れ て い る [24、25]。抗 菌 剤 代 替 候 補 物 質 と し て プ ロ バ イ オ テ ィ ク ス 、有 機 酸 、
ハ ー ブ 類 な ど に つ い て 得 に 多 く 報 告 さ れ て お り 、実 際 に 野 外 養 豚 場 で 応 用 さ
れ て い る も の も あ る 。し か し 、こ れ ら 代 替 物 質 の 中 で 野 外 養 豚 場 に お い て 安
定 し た 効 果 を 示 し て い る も の は 少 な い [26、27]。そ の 原 因 と し て こ れ ら 代 替
物 質 の 評 価 試 験 が in vitro や 齧 歯 類 で は 多 く 行 わ れ て い る が 、 対 象 動 物 で
ある豚に対応した試験が十分に行われていないためと考えられる。例えば、
ヒトの特定保健用食品でも対象となるヒトでの効果を確認する試験が求め
ら れ て お り [28]、家 畜 で も 同 様 に 対 象 動 物 で 効 果 を 確 認 す る 試 験 が 不 可 欠 と
考 え ら れ る 。家 畜 を 用 い た 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 試 験 の 中 で も 、特 に 病 原 体
に対する効果を確認する感染試験を用いた評価はほとんど行われておらず、
世 界 の 先 進 国 の 中 で も 日 本 に お け る 取 り 組 み は 特 に 遅 れ て い る 。そ こ で 本 研
究 で は 、ま ず 豚 の 重 要 な 病 原 体 で あ る サ ル モ ネ ラ と 大 腸 菌 の 感 染 系 の 確 立 を
目的とし、第二章で豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系の確立を試み、
第四章で豚大腸菌症感染系の確立を試みた。
ま た 、第 二 章 お よ び 第 四 章 で 確 立 し た 豚 を 用 い た 感 染 系 が 抗 菌 剤 代 替 物 質
の 評 価 に 応 用 で き る か を 、有 機 酸 の 一 種 で あ る 乳 酸 を 用 い て 検 討 し た 。有 機
酸 は 畜 産 分 野 で は 飼 養 効 率 の 改 善 等 を 目 的 と し て 使 用 実 績 が あ り 、非 乖 離 状
態 で は 直 接 的 な 殺 菌 作 用 が あ る [29]。殺 菌 作 用 の 機 序 は 非 乖 離 型 の 有 機 酸 が
8
細 菌 の 中 に 侵 入 し て 細 菌 内 の pH を 低 下 さ せ プ ロ ト ン ポ ン プ を 過 剰 に 活 動 さ
せ 、細 菌 の エ ネ ル ギ ー を 枯 渇 さ せ 死 滅 さ せ る と さ れ て い る 。ま た 、乳 酸 に は
野 外 養 豚 場 で サ ル モ ネ ラ や 大 腸 菌 対 策 と し て 有 効 で あ る と の 報 告 が あ り [30、
31]、 本 研 究 で 確 立 し た 感 染 系 を 評 価 す る に は 適 し て い る と 考 え ら れ る 。 そ
こ で 、第 三 章 で は 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 添 加
飼 料 の 評 価 を 行 い 、第 五 章 で は 豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 同 様 に 乳 酸 添 加 飼 料
の評価を実施した。
9
農薬
(91t)
水産用
(182t)
抗菌性飼料添加物
(175t)
ヒト医療用
(517t)
総量
1,693t
家畜治療用
(727t)
図 1
2012 年 度 に 我 が 国 で 使 用 さ れ た 抗 生 物 質 の 目 的 別 割 合 [9]
10
第二章
豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系
の確立
11
【諸言】
Salmonella に は 多 く の 血 清 型 が あ り 、 豚 か ら 分 離 さ れ る 血 清 型 も 多 岐 に
渡 る が 、 豚 に 対 し て 病 原 性 が 強 く 、 単 独 で 臨 床 症 状 を 起 こ す Salmonella は
Salmonella Typhimurium と Salmonella Choleraesuis の 2 血 清 型 と 考 え ら
れ て い る [13]。前 者 は 主 に 下 痢 を 発 症 し 、後 者 は 主 に 敗 血 症 や 肺 炎 を 発 症 さ
せ る 。 S . Typhimurium を 原 因 と し た 下 痢 は 我 が 国 で も 頻 繁 に 認 め ら れ 、 我
が 国 の 養 豚 場 の 下 痢 便 か ら Salmonella の 分 離 を 試 み た 試 験 で は S .
Typhimurium が 最 も 高 率 に 分 離 さ れ て い る [16]。さ ら に 、 S . Typhimurium
は ヒ ト の Salmonella を 原 因 と し た 食 中 毒 事 例 か ら も 頻 繁 に 分 離 さ れ て い る
[32]。日 本 で は 、2011 年 度 と 2010 年 度 に 蒸 し 豚 が 原 因 の ヒ ト の サ ル モ ネ ラ
食 中 毒 事 例 が 発 生 し て い る が [ 33]、 豚 肉 を 原 因 と し た ヒ ト 食 中 毒 事 例 は 少
な く 、 豚 肉 か ら の Salmonella 分 離 率 も 1~3%と 低 い 値 を 示 し て い る [ 34]。
一 方 、 EU 諸 国 で は 1990 年 代 に 発 生 し た ヒ ト の サ ル モ ネ ラ 食 中 毒 の 20%程
度 が 豚 肉 の 喫 食 と 関 係 あ る と さ れ て い た が 、近 年 は 農 場 段 階 か ら 食 卓 ま で 全
て の 段 階 で 食 中 毒 対 策 に 取 り 組 む “ Farm to Table” の を 実 践 す る こ と で 、
ヒ ト 食 中 毒 の 発 生 を 低 下 さ せ て お り [ 18]、 農 場 で の Salmonella コ ン ト ロ
ールがヒト食中毒にも有効であることが示されている。そこで、本章では
Salmonella の 中 で も 、 豚 と ヒ ト の 両 方 で 注 目 さ れ る S . Typhimurium を 用
いた感染系の確立を目指した。
現 在 報 告 さ れ て い る 豚 を 用 い た Salmonella 感 染 試 験 の 多 く は 、肥 育 期 の
豚 を 対 象 と し て い る 。 そ の 背 景 に は 、 EU 諸 国 で は 養 豚 場 で 下 痢 を 伴 う 豚
Salmonella 症 が 殆 ど 発 生 し て い な い こ と も あ り 、 養 豚 場 に お け る
Salmonella 対 策 が 豚 肉 を 介 し た ヒ ト 食 中 毒 の 予 防 に 主 眼 が 置 か れ て お り 、
生 産 現 場 に お い て は 出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 を 低 下 さ せ る こ と が 求 め ら
れ て い る た め で あ る 。そ の た め 、農 場 に お い て 症 状 を 伴 わ ず 糞 便 に 間 欠 的 に
Salmonella を 排 泄 す る 不 顕 性 感 染 豚 に よ る 豚 群 内 で の Salmonella 感 染 拡
大 を 予 防 す る 方 法 が 研 究 、 提 案 さ れ て い る 。 特 に 出 荷 豚 の Salmonella 陽 性
率 に 直 接 関 係 す る 肥 育 期 間 中 の 豚 群 内 で の Salmonella 感 染 拡 大 の 予 防 法 に
つ い て 多 く の 提 案 が な さ れ て い る [35-37]。 そ れ ら の 提 案 の 中 に は 、 豚 を 用
12
いた感染試験で出荷豚や肥育豚を対象に下痢を伴わない不顕性の豚
Salmonella 感 染 を 再 現 し た 報 告 も あ る 。そ れ ら 豚 を 用 い た 感 染 試 験 の 中 で 、
豚 の Salmonella 感 染 は 感 染 菌 数 が 多 い ほ ど 臨 床 症 状 が 強 く 発 現 し 、糞 便 中
の 菌 数 も 多 く な る こ と が 示 唆 さ れ て い る [38、 39]。 豚 群 内 で の Salmonella
の 感 染 が 主 に 糞 口 感 染 に よ る こ と か ら 、豚 群 内 に お け る Salmonella 感 染 拡
大の予防には糞便中の菌数を減少させることが重要であると考えられてい
る。
一 方 、 我 が 国 で は 下 痢 を 伴 う 豚 Salmonella 症 が 発 生 し て お り [16]、 そ の
好 発 時 期 が 離 乳 後 で あ る こ と か ら 、EU 諸 国 の 取 り 組 み と は 別 に 、離 乳 期 の
臨 床 症 状 を 伴 っ た Salmonella 症 の 対 策 を 提 案 す る 必 要 が あ る 。過 去 に 離 乳
豚 を 用 い た 感 染 系 も 報 告 さ れ て い る が [39]、 糞 便 に 含 ま れ る Salmonella 数
を 測 定 し た 情 報 は 少 な く 、特 に 下 痢 や 軟 便 等 の 糞 便 性 状 と そ れ ら に 含 ま れ て
い る Salmonella 数 に つ い て の 調 査 は 全 く 行 わ れ て い な い 。そ こ で 本 試 験 で
は、糞便中に含まれる菌数を定量し、糞便性状との関連を調査することで、
今 後 の 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 を 行 う 際 に 糞 便 中 の Salmonella 数 が 指 標 と な
りうるかも合わせて調査した。
【材料と方法】
1. 供 試 菌 株 の 選 抜
供 試 豚:21 日 齢 あ る い は 22 日 齢 の SPF 豚 20 頭 を 当 所 に 導 入 し 、馴 致 期
間 中 に 糞 便 検 査 に よ り Salmonella 陰 性 を 確 認 し 、 試 験 に 供 試 し た 。
供 試 菌 株 : そ れ ぞ れ 異 な る 野 外 養 豚 場 か ら 分 離 さ れ た S . Typhimurium-5
(ST-5)株 、 S . Typhimurium-8 (ST-8)株 、 S . Typhimurium-64 (ST-64)株 お
よ び S . Typhimurium-116 (ST-1116)株 そ れ ぞ れ に 当 所 で リ フ ァ ン ピ シ ン 耐
性 を 付 与 し 、 ST-5 Rif r 株 、 ST-8 Rif r 株 、 ST-64 Rif r 株 お よ び ST-116 Rif r
株として供試した。
接 種 菌 の 菌 液 調 整 で は 各 株 を DHL 寒 天 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 、 東 京 )
13
に そ れ ぞ れ 発 育 さ せ 、 発 育 し た 各 株 の 単 一 コ ロ ニ ー を 200mL の SCD 液 体
培 地 に そ れ ぞ れ 接 種 し 37℃ で 5 時 間 振 盪 培 養 し た 後 に 、 培 養 液 の 菌 濃 度 を
PBS で 調 整 し 、 最 後 に 等 量 の 20% Skim Milk と 混 合 し て 接 種 菌 液 と し て 供
試した。
感 染 試 験:供 試 豚 を 導 入 時 に 各 区 5 頭 の 4 区( ST-5 株 区 、ST-8 株 区 、ST-64
株 区 お よ び ST-116 株 区 )に 分 け 、5 日 間 の 馴 致 期 間 を 経 た 26 日 齢 あ る い は
27 日 齢 時 に 、4 区 そ れ ぞ れ に 異 な る S . Typhimurium 株 を 経 口 で 接 種 し た 。
具 体 的 に は 、 ST-5 株 区 で は ST-5 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 4.1×10 9 CFU/mL を
10mL、ST-8 株 区 で は ST-8 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 2.6×10 9 CFU/mL を 10mL、
ST-64 株 区 で は ST-64 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 2.0×10 9 CFU/mL を 10mL、
ST-116 株 区 で は ST-116 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 2.0×10 9 CFU/mL を 10mL そ
れぞれ経口で接種した。
観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便
の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。体 温 測 定 と し て 直 腸 温 度 の 測 定 を 毎 日 実 施 し た 。剖
検 は 経 時 的 に 実 施 し 、 接 種 後 3 日 目 、 7 日 目 お よ び 14 日 目 に 各 区 か ら そ れ
ぞれ 1 頭、2 頭および 2 頭を無作為に選抜し剖検に供試した。
2. 接 種 菌 数 の 検 討
供 試 豚 : 28 日 齢 の SPF 豚 15 頭 を 当 所 に 導 入 し 、 馴 致 期 間 中 に 糞 便 検 査
お よ び 血 清 を 用 い た 抗 体 検 査 に よ っ て Salmonella 陰 性 で あ る こ と を 確 認 し 、
供試した。
供 試 菌 株 : 野 外 養 豚 場 か ら 分 離 さ れ 、 上 記 「 1. 供 試 菌 株 の 選 抜 」 で 選 抜
さ れ た ST116Rif r 株 を 供 試 し た 。接 種 菌 の 菌 液 調 整 は「 1.供 試 菌 株 の 選 抜 」
と 同 様 に 実 施 し た 。 つ ま り 、 DHL 寒 天 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 、 東 京 ) に
発 育 さ せ た ST116Rif r の 単 一 コ ロ ニ ー を 200mL の SCD 液 体 培 地 に 接 種 し
37℃ で 5 時 間 振 盪 培 養 し た 後 に 、 そ の 培 養 液 の 菌 濃 度 を PBS で 調 整 し 、 最
後 に 等 量 の 20% Skim Milk と 混 合 し て 接 種 菌 液 と し て 供 試 し た 。
14
感 染 試 験 : 導 入 時 に 供 試 豚 を 各 区 5 頭 の 3 区 ( ST-9 区 、 ST-7 区 お よ び
ST-5 区 )に 分 け 、7 日 間 の 馴 致 期 間 を 経 た 35 日 齢 時 に 3 区 そ れ ぞ れ に 異 な
る 菌 数 の ST116Rif r を 経 口 で 接 種 し た 。 具 体 的 に は 、 ST116Rif r を ST-9 区
で は 1 頭 あ た り 3.2 ×10 8 CFU/mL を 10mL、 ST-7 区 で は 1 頭 あ た り 3.2×
10 6 CFU/mL を 10mL お よ び ST-5 区 に は 1 頭 あ た り 3.2×10 4 CFU/mL を
10mL そ れ ぞ れ 経 口 で 接 種 し た 。
観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便
の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。体 温 測 定 と し て 直 腸 温 度 の 測 定 を 毎 日 実 施 し た 。採
血 は 毎 週 実 施 し た 。観 察 期 間 中 に 著 し い 脱 水 症 状 や 沈 鬱 が 認 め ら れ た 際 に は 、
ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 施 し た 。 接 種 後 39 日 目 に は 耐 過 豚 全
頭の剖検を実施し、主要臓器および腸管内容物を採取した。
3. 観 察 お よ び 検 査 項 目
糞便性状のスコア化:糞便性状は随時スコア化して記録した。すなわち、
正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。
糞 便 中 お よ び 腸 管 内 容 物 中 の 接 種 S . Typhimurium 数 の 測 定 、増 菌 お よ び
遅 延 二 次 増 菌 培 養:観 察 期 間 中 の 糞 便 の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 い 、糞 便 採
取 後 は す ぐ に 接 種 S. Typhimurium 数 の 測 定 を 行 っ た 。 菌 数 測 定 で は 糞 便
1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL
リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL 寒 天 培 地( RFDHL)に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培
養 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し た 。菌 数 測 定 で 接 種 S . Typhimurium が
検 出 さ れ な か っ た 検 体 に つ い て は 、引 き 続 い て 増 菌 培 養 を 行 っ た 。増 菌 培 養
で は 糞 便 1g を 10mL の PBS で 希 釈 し た 上 記 の 糞 便 希 釈 液 か ら 1mL 採 取 し 、
そ れ を 10mL の ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地( 栄 研 化 学 株 式 会 社 )に 接 種
し 、 41.5℃ で 24 時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 37℃ で 24 時 間 培
養 し 、 コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。 菌 数 測 定 お よ び 増 菌 培 養 で S.
Typhimurium が 検 出 さ れ な か っ た 際 に は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 を 実 施 し た 。 遅
15
延 二 次 増 菌 培 養 で は 増 菌 培 養 で 用 い た ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 を 増 菌
培 養 終 了 後 に 室 温 で 1 週 間 静 置 し た 後 に 、 培 養 液 を 1mL 採 取 し 、 10mL の
ハ ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 接 種 し 、 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 培 養 液
を RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 で
のコロニー形成の有無を観察した。
剖 検 時 に 採 取 し た 腸 管 内 容 物 に つ い て も 同 様 に 菌 数 測 定 、増 菌 培 養 お よ び
遅延二次増菌培養を実施した。
各 種 臓 器 に お け る S . Typhimurium の 検 出 : 剖 検 時 に は 肝 臓 、 肺 、 脾 臓 、
腎 臓 、 腸 間 膜 リ ン パ 節 、 空 腸 内 容 物 お よ び 盲 腸 内 容 物 を 各 1g ず つ 無 菌 的 に
採 取 し た 。腸 管 内 容 物 以 外 の 各 臓 器 は 表 面 を 火 炎 滅 菌 し た 後 に 、10mL の ハ
ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 懸 濁 し 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 。ま た 、腸
内 容 物 も 同 様 に 10mL の ハ ー ナ ー・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 懸 濁 し 、41.5℃
で 24 時 間 培 養 し た 。 臓 器 お よ び 腸 内 容 物 は 培 養 終 了 後 に 培 養 液 を RFEHL
培 地 に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 し 、 コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。 発
育 が 観 察 さ れ な か っ た 際 に は 、上 記 と 糞 便 中 の S . Typhimurium の 遅 延 二 次
増菌培養と同様に遅延二次増菌培養を実施した。
抗 体 測 定 : 豚 抗 O4 抗 体 を 市 販 さ れ て い る ELISA キ ッ ト ( SALMOTYPE
Pig Screen, Labor Diagnostik, Leipzg, Germany)を 用 い て 測 定 し た 。キ ッ
ト の 操 作 は 全 て 使 用 説 明 書 に 従 っ た 。 キ ッ ト の 説 明 書 に 従 い 、 10 OD% 以
上を陽性とした。
統 計 処 理:測 定 さ れ た S . Typhimurium 各 株 の 菌 数 は 対 数 変 換 し 、検 出 限
界 以 下 と な っ た 検 体 は 0 と し た 。菌 数 測 定 で は S . Typhimurium が 検 出 さ れ
ず 、増 菌 培 養 あ る い は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 で S . Typhimurium が 検 出 さ れ た 検
体 は 一 律 に 10 2 CFU/g と し て 統 計 処 理 を 行 っ た 。 S . Typhimurium 数 は
Student’s t -test で 有 意 差 の 判 定 を 行 っ た 。ま た 、体 温 測 定 で は 試 験「 1.供
試 菌 株 の 選 抜 」 で は 各 区 の 接 種 前 2 日 間 の 体 温 と 、 試 験 「 2. 接 種 菌 数 の 検
討 」で は 各 区 接 種 前 5 日 間 の 体 温 と Student’s t -test で 比 較 し て 有 意 差 を 示
16
し た 際 に 発 熱 と し た 。 糞 便 性 状 の ス コ ア は Mann-Whitney U -test で 統 計 処
理 を 行 っ た 。 特 に 記 載 の な い 場 合 に は p <0.05 で 有 意 差 あ り と し た 。
【結果】
1. 供 試 菌 株 の 選 抜
臨 床 症 状:全 区 全 頭 で 試 験 期 間 中 に 著 し い 臨 床 状 態 の 悪 化 を 示 す 個 体 は 認 め
られず、全頭が生残耐過した。
ST-64 株 区 お よ び ST116 株 区 で は 接 種 後 1 日 目 か ら 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認
め ら れ 、接 種 後 2 日 目 お よ び 3 日 目 に は ほ ぼ 全 頭 で 下 痢 が 認 め ら れ た 。両 区
と も 接 種 後 5 日 目 以 降 は 下 痢 が 認 め ら れ ず 、 ST-116 株 区 で は 試 験 終 了 ま で
接 種 後 12 日 目 を 除 く 各 観 察 日 で 1~2 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た が 、ST-64 株 区
で は 接 種 後 7 日 目 に は 全 頭 で 正 常 便 と な り 、そ の 後 は 軟 便 の 発 現 は 散 発 的 で
あ っ た 。 一 方 、 ST-5 株 区 お よ び ST-8 株 区 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 は 殆 ど 認 め
ら れ ず 、 ST-5 株 区 で 下 痢 お よ び 軟 便 が 観 察 さ れ た の は 、 接 種 後 3 日 目 に 1
頭 が 下 痢 を 発 現 し た 1 回 の み で あ っ た ( 図 2、 3)。
全 区 で 接 種 翌 日 か ら 体 温 上 昇 が 見 ら れ た が 、 ST-8 株 区 で は 発 熱 に は 至 ら
な か っ た 。 一 方 、 ST-5 株 区 で は 接 種 後 1 日 目 か ら 3 日 目 に 、 ST-64 株 区 で
は 接 種 後 1 日 目 か ら 4 日 目 に か け て 、 ST-116 株 区 で は 接 種 後 2 日 目 か ら 4
日 目 に か け て 発 熱 が 認 め ら れ た ( 図 4)。 各 区 と も 接 種 後 1 週 間 以 内 に 体 温
上昇は収まった。
糞 便 中 の 接 種 S . Typhimurium 数 の 推 移:接 種 後 1 日 目 か ら 全 区 全 頭 の 糞 便
か ら S. Typhimurium が 検 出 さ れ 、 観 察 期 間 中 に は 全 頭 の 糞 便 か ら 複 数 回
検 出 さ れ た 。 各 区 の 平 均 S. Typhimurium 数 も 接 種 後 1 日 目 に は 1 ×
10 4 CFU/g 以 上 と な っ た( 図 5)。各 区 の 糞 便 中 S. Typhimurium 数 の 平 均 の
ピ ー ク は ST-5 株 区 で は 接 種 後 2 日 目 の 2.3×10 6 CFU/g、 ST-8 区 で は 接 種
後 1 日 目 の 2.7×10 4 CFU/g、ST-64 株 区 で は 接 種 後 3 日 目 の 2.3×10 7 CFU/g
お よ び ST-116 株 区 で は 接 種 後 3 日 目 の 2.2×10 8 CFU/g と な っ た 。 観 察 期
17
間 を 通 じ て ST-8 株 区 は 他 の 3 区 と 比 べ て 低 い 菌 数 で 推 移 し 、接 種 後 2 日 目
に は 他 の 3 区 と 、接 種 後 3 日 目 に は ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 の 両 者 と
有 意 差 が 示 さ れ た 。 ST-5 株 区 の 平 均 S. Typhimurium 数 は 接 種 後 2 日 目 ま
で は ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 と 同 程 度 を 示 し た が 、 3 日 目 以 降 は 低 値
を 示 し た 。接 種 後 3 日 目 に は ST-5 株 区 と ST116 株 区 間 で 有 意 差 が 示 さ れ た 。
ST-64 株 区 と ST-116 株 区 間 で は 有 意 差 は 示 さ れ な か っ た が 、 全 測 定 日 で
ST116 株 区 の 方 が ST-64 株 区 よ り も 多 い 菌 数 を 示 し た 。
各 種 臓 器 か ら の 接 種 S . Typhimurium の 分 離:接 種 後 3 日 目 、7 日 目 お よ び
14 日 目 に 剖 検 を 実 施 し 、 各 種 臓 器 か ら 接 種 菌 の 分 離 を 試 み た が 、 最 も 高 率
に 菌 が 分 離 さ れ た の は 各 区 と も 接 種 後 7 日 目 で あ り 、 ST-5 株 区 、 ST-64 株
区 お よ び ST-116 株 区 で は 10 検 体 中 9 検 体 で 陽 性 と な っ た が 、 ST-8 株 区 は
10 検 体 中 3 検 体 の み が 陽 性 と な っ た( 表 1)。接 種 後 14 日 目 に は ST-5 株 区 、
ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 で も 検 出 率 が 低 下 し 、 そ れ ぞ れ 10 検 体 中 2
検 体 、 3 検 体 お よ び 3 検 体 が 陽 性 と な っ た 。 接 種 後 3 日 目 に は ST-64 株 区
お よ び ST-116 株 区 で は 5 検 体 中 そ れ ぞ れ 3 お よ び 4 で 陽 性 と な り 、 ST-5
株 区 お よ び ST-8 株 区 で は 両 区 と も 5 検 体 中 2 検 体 が 陽 性 と な っ た 。
2. 接 種 菌 数 の 検 討
臨 床 症 状:全 区 に 共 通 し て 下 痢 等 の 臨 床 症 状 は ST116Rif r 接 種 後 1 週 間 以 内
に 多 く 観 察 さ れ 、 そ れ 以 降 は 回 復 す る 傾 向 に あ っ た ( 図 6)。
ST-9 区 で は 著 し い 脱 水 症 状 と 沈 鬱 を 示 し た た め に ST116Rif r 接 種 後 3、4、
5 お よ び 7 日 目 に そ れ ぞ れ 1 頭 ず つ に 安 楽 殺 が 施 さ れ 、観 察 期 間 を 耐 過 し た
のは 5 頭中 1 頭のみで、その 1 頭でも接種後 3 日目および 4 日目に下痢が
観 察 さ れ た 。 一 方 、 ST-7 区 お よ び ST-5 区 で は 全 頭 が 観 察 期 間 を 耐 過 し た 。
ST-7 区 で は 接 種 後 3 日 目 に 2 頭 お よ び 接 種 後 12 日 目 に 1 頭 で 下 痢 が 観 察 さ
れ 、 全 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た 。 ST-5 区 で は 下 痢 は 観 察 さ れ な か っ た が 、 5
頭 中 4 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た 。接 種 後 3 日 目 に は ST-5 区 と 他 の 2 区 の 間 で
接 種 後 4 日 目 に ST-9 区 と 他 の 2 区 の 間 で 糞 便 性 状 ス コ ア で 有 意 差 が 認 め ら
18
れた。
体 温 は 接 種 翌 日 か ら 上 昇 し 、ST-9 区 で は 接 種 後 1、3 お よ び 5 日 目 、ST-7
区 で は 接 種 後 2 日 目 か ら 6 日 目 、 ST-5 区 で は 接 種 後 2 お よ び 4 日 目 に 発 熱
が 認 め ら れ た ( 図 7)。
抗 体 価 の 推 移 : ST-9 区 で は 接 種 後 3 週 目 に は 耐 過 し た 1 頭 で 抗 体 が 陽 性 と
な っ た( 図 8)。ST-7 区 で も 接 種 後 4 週 目 に は 5 頭 中 3 頭 で 抗 体 陽 性 と な り 、
39 日 間 の 観 察 期 間 中 に 全 頭 で 抗 体 陽 性 と な っ た 。 一 方 、 ST-5 区 で は 接 種 後
5 週目でも 5 頭中 2 頭が抗体陽性となった。
糞 便 中 ST116Rif r 数 の 推 移:各 区 の 糞 便 中 の ST116Rif r 数 は 接 種 後 7 日 目 ま
で に ピ ー ク と な り 、 ピ ー ク 時 の 糞 便 中 ST116Rif r 数 は ST-9 区 で は 4.8×
10 8 CFU/g、 ST-7 区 で は 1.0×10 6 CFU/g お よ び ST-5 区 で は 3.2×10 4 CFU/g
と な っ た ( 図 9)。 有 意 差 は 接 種 後 3 日 目 お よ び 4 日 目 に 3 区 間 と も に 認 め
ら れ 、 接 種 後 6 日 目 に は ST-9 区 と ST-5 区 の 間 で 認 め ら れ た 。
糞 便 性 状 毎 の ST116Rif r 数 : 本 試 験 で は 下 痢 便 が ST-9 区 お よ び ST-7 区 で
そ れ ぞ れ 7 回 と 3 回 観 察 さ れ 、合 計 で は 10 回 観 察 さ れ た 。一 方 、軟 便 は ST-9
区 、 ST-7 区 お よ び ST-5 区 で そ れ ぞ れ 6 回 、 10 回 お よ び 9 回 観 察 さ れ 、 合
計 で は 25 回 観 察 さ れ た 。 正 常 便 は 92 回 観 察 さ れ た 。 本 試 験 で 観 察 さ れ た
10 個 の 下 痢 便 中 に 含 ま れ て い た ST116Rif r 数 は 平 均 で 1.0×10 8 CFU/g と な
っ た ( 表 2)。 一 方 、 25 個 の 軟 便 中 お よ び 92 個 の 正 常 便 中 に 含 ま れ て い た
ST116Rif r 数 は 、 そ れ ぞ れ 1.6×10 4 CFU/g お よ び 7.1×10 1 CFU/g と な り 、
各 糞 便 性 状 間 で 有 意 差 が 示 さ れ た 。 ま た 、 正 常 糞 便 95 検 体 中 5 検 体 に お い
て ST116Rif r が 1×10 6 CFU/g 以 上 検 出 さ れ た 。
剖 検 時 臓 器 か ら の 菌 分 離:観 察 期 間 中 に 安 楽 殺 を 施 さ れ た 個 体 で は 臓 器 か ら
高 率 に ST116Rif r が 分 離 さ れ た が 、 39 日 間 の 観 察 期 間 を 耐 過 し た 豚 で は 肝
臓 、 肺 、 脾 臓 お よ び 腎 臓 か ら は ほ と ん ど 分 離 さ れ な か っ た ( 表 3)。 一 方 、
扁桃、腸間膜リンパ節、空腸および盲腸内容物中からは耐過豚でも高率に
19
ST116Rif r が 分 離 さ れ た 。耐 過 豚 の 試 験 期 間 中 の 糞 便 性 状 と 剖 検 時 の 各 種 臓
器からの菌分離陽性率に関連は認められなかった。
20
図2
S . Typhimurium 実 験 感 染 豚 で 再 現 さ れ た
下痢便(左)および下痢発症豚で観察された発育不良(右)
21
22
糞便スコアと剖検実施の頭数
2
1
0
剖検頭数計
2
1
0
剖検頭数計
2
1
0
剖検頭数計
2
1
0
剖検頭数計
2
●●●●●
●
●●●●
●●●●●
●●●●●
3
●●●●
●
●
●●●
●
●●●●●
●
●●●
●
●
5
6
●●●●
●
●●●●
●
●●●●●
●
●●●●
●
接種後日数
●●●
●
●
●●
●●
●
●●●●●
●
●●●●
●
7
●●
●●●
●●●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
8
●●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
11
●
●
●●●
●
●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
12
●●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
13
●
●
●●●
●
●
●●●
●●
●●●
●●
●●●
糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。
各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。
S . Typhimurium 株 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移 と 剖 検 頭 数
1
0
図3
●●●
●
●
●●●
●●
●●●●●
●●●●●
●●●●●
ST‐116 株
●●●●●
ST‐64株
●●●●●
ST‐8株
●●●●●
ST‐5株
42.0
41.5
*
*
体温(℃)
41.0
* *
*
*
40.5
*
*
* *
40.0
39.5
39.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
S. Typhimurium接種後日数
図4
S . Typhimurium 株 接 種 後 の 体 温 の 推 移
各 区 の 平 均 体 温 を 示 す 。各 記 号 は ● が ST-5 株 区 、▲ が ST-8 株 区 、■ が ST-64
株 区 お よ び ◆ が ST-116 株 区 を 示 す 。 * は 各 区 の 接 種 前 体 温 と の 有 意 差
( p <0.05)を 示 す 。
23
10.0
9.0
各区接種 S. Typhimurium株数
(Log CFU/g)
d
8.0
b
7.0
b
c
b
b
6.0
b
5.0
a
4.0
b
3.0
a
2.0
1.0
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
S. Typhimurium接種後日数
図5
S . Typhimurium 株 接 種 後 の 糞 便 中 の
S . Typhimurium 数 の推 移
各 区 の 平 均 糞 便 中 S . Typhimurium 数 を 示 す 。各 記 号 は ● が ST-5 株 区 、▲
が ST-8 株 区 、 ■ が ST-64 株 区 お よ び ◆ が ST-116 株 区 を 示 す 。 a, b は 異 符
号 間 で 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 、接 種 後 3 日 目 は a と c お よ び d、b と d で 有
意 差 ( p <0.05)を 示 す 。
24
25
肺
0/1*
1/1
0/1
0/1
1/4
2/2
1/2
2/2
2/2
7/8
1/2
2/2
1/2
2/2
6/8
14/20
* : 陽 性 検 体 数 /供 試 検 体 数
ST-5株
ST-8株
ST-64株
ST-116株
小計
7
ST-5株
ST-8株
ST-64株
ST-116株
小計
14
ST-5株
ST-8株
ST-64株
ST-116株
小計
合計
区
0/1
1/1
0/1
1/1
2/4
2/2
1/2
2/2
2/2
7/8
0/2
0/2
1/2
0/2
1/8
10/20
肝臓
0/1
0/1
1/1
1/1
2/4
2/2
0/2
1/2
2/2
5/8
0/2
0/2
0/2
0/2
0/8
7/20
腎臓
1/1
0/1
1/1
1/1
3/4
1/2
0/2
2/2
1/2
4/8
0/2
0/2
0/2
0/2
0/8
7/20
脾臓
腸間膜
リンパ節
1/1
0/1
1/1
1/1
3/4
2/2
1/2
2/2
2/2
7/8
1/2
1/2
1/2
1/2
4/8
14/20
2/5
2/5
3/5
4/5
11/20
9/10
3/10
9/10
9/10
30/40
2/10
3/10
3/10
3/10
11/40
計
4 株 の S . Typhimurium 接 種 試 験 で の 剖 検 時 の 各 種 臓 器 か ら の
S . Typhimurium の 分 離 率
接種後
日数
3
表1
26
糞便スコアと安楽殺豚の頭数
4
●
●●●●
b
●
●●●●
6
●●●
●●
●●●●
●
●●
●●●
12
●●
●●●
●●●●
●
●
●●●●
15
19
●●●●●
●●●●●
●
●●●●
接種後日数
●●●●●
●●●●●
●
●●●●
22
●●●●●
●●●●●
●
●●●●
26
●●●●●
●●●●●
●
●●●●
29
●●●●●
●●●●●
●
●●●●
33
●●●●●
●●●●
●
●
●●●●
糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。
●●●●
●
●
●●●●
36
●●●●●
S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移 お よ び 安 楽 殺 頭 数
3
0
図6
●●●●●
b
●●●
●●
b
●●●●
a
●●●
●
●●●●●
ST‐5
●●●●●
ST‐7
●●●●●
a
●●
a
各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。
安楽殺
2
1
0
安楽殺
2
1
0
安楽殺
2
1
0
ST‐9
42.0
41.5
*
体温(℃)
41.0
40.5
40.0
**
**
*
*
*
*
39.5
39.0
38.5
0
7
14
21
28
35
接種後日数
図7
S . Typhimurium 接 種 後 の 体 温 の 推 移
各 区 の 平 均 体 温 を 示 す 。各 記 号 は ● が ST-9 区 、▲ が ST-7 区 お よ び ■ が ST-5
区 を 示 す 。 * は 各 区 の 接 種 前 体 温 と の 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 。
27
60
50
抗体価 (OD%)
40
30
20
10
0
0
7
14
21
28
35
38
接種後日数
図 8 S . Typhimurium 接 種 後 の 抗 O4 抗 体 価 の 推 移
各 区 の 平 均 抗 体 価 を 示 す 。 各 記 号 は ● が ST-9 区 、 ▲ が ST-7 区 お よ び ■ が
ST-5 区 を 示 す 。
28
10
a
a
a
(Log cfu/g)
8
b
6
ST116Rifr数
b
b
4
c
c
2
0
0
5
10
15
20
25
30
35
接種後日数
図9
S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 中 の
S . Typhimurium 数 の 推 移
各 区 の 平 均 糞 便 中 S . Typhimurium116Rif r 数 を 示 す 。 各 記 号 は ● が ST-9
区 、 ▲ が ST-7 区 お よ び ■ が ST-5 区 を 示 す 。 a、 b、 c は 異 符 号 間 で 有 意 差
( p <0.05)を 示 す 。
29
表 2 糞 便 性 状 別 の S . Typhimurium 数
糞便性状
下痢
検体数
検出限界以下
軟便
検体数
正常便
検体数
2
40
2
26
<2.0-≦3.0
4
<3.0-≦4.0
3
7
<4.0-≦5.0
3
5
<5.0-≦6.0
5
5
5
<6.0-≦7.0
2
4
<7.0-≦8.0
2
1
<8.0-≦9.0
4
1
<9.0-≦10.0
2
平均±標準誤差
(Log CFU/g)
有意差(p<0.05)
8.01±1.08
4.20±2.27
1.85±2.01
a
b
c
30
31
4/4
0/3
1/7
0/1
4/4(a)
下痢発症豚 0/3
軟便発症豚 1/7
非発症豚
0/1
a: 陽 性 検 体 数 /供 試 検 体 数
耐過豚
安楽殺豚
肺
肝臓
3/4
0/3
1/7
0/1
4/4
3/3
6/7
0/1
4/4
0/3
2/7
0/1
脾臓 扁桃 腎臓
腸間膜
リンパ節
4/4
1/3
3/7
0/1
腸管内容物
空腸 盲腸
4/4 4/4
3/3 3/3
5/7 3/7
0/1 0/1
各 種 臓 器 お よ び 腸 管 内 容 物 か ら の S . Typhimurium 検 出 率
臨床症状
表3
【考察】
本 章 で は S . Typhimurium 感 染 系 を 確 立 す る た め 、「 1. 供 試 菌 株 の 選 抜 」
で は 異 な る 野 外 養 豚 場 で 分 離 さ れ た 4 株 の S . Typhimurium を 感 染 さ せ 、豚
に 対 す る 病 原 性 を 比 較 し た 。 具 体 的 に は そ れ ぞ れ 10 1 0 CFU/頭 程 度 を 経 口 で
接 種 し 、糞 便 性 状 の 悪 化 と 糞 便 中 に 排 泄 さ れ る 接 種 S . Typhimuirum 数 等 を
測 定 し た 。そ の 結 果 、4 株 の S . Typhimuirum 内 の 2 株 で は 供 試 豚 に 高 率 で
下 痢 が 認 め ら れ た が 、残 り の 2 株 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 は 殆 ど 認 め ら れ な か っ
た 。ま た 、糞 便 中 へ の S . Typhimurium の 排 菌 数 も 、糞 便 性 状 を 悪 化 さ せ た
2 株 の 方 が 他 の 2 株 よ り も 高 い 値 で 推 移 し た 。近 年 の 研 究 に よ り Salmonella
の 病 原 因 子 は 200 種 類 以 上 が 報 告 さ れ て お り [40]、 S . Typhimurium は 株 毎
に 病 原 性 が 異 な っ て い る こ と が 知 ら れ て い る 。 例 え ば 、 Namimatsu ら は 死
亡 に 至 る 敗 血 症 を 引 き 起 こ す S . Typhimuirum は 、病 原 性 プ ラ ス ミ ド を 高 率
に 保 有 し て い る こ と を 報 告 し て い る [41]。ま た 、毒 素 、線 毛 お よ び 鞭 毛 も そ
の 病 原 性 の 発 現 に 関 与 す る こ と が 報 告 さ れ て い る [40]。本 章 の 研 究 に お い て 、
S . Typhimurium 株 間 で 豚 に お け る 病 態 に 違 い が 認 め ら れ た 事 も 、そ れ ぞ れ
の 株 が 保 有 す る こ れ ら 病 原 因 子 が 異 な る た め と 考 え ら れ る 。各 株 が ど の よ う
な病原因子を保有しているかについては、今後更なる研究が必要である。
次 い で 4 株 の 中 で 臨 床 症 状 が 強 く 発 現 し 、糞 便 中 か ら も 多 量 の 菌 の 排 泄 が
認 め れ ら た S . Typhimurium 株 1 株 を 用 い て 、適 切 な 感 染 菌 数 を 調 査 す る た
め 、 S . Typhimurium の 感 染 菌 数 を 3 段 階 に 設 定 し て 豚 に 経 口 接 種 さ せ た 。
そ の 結 果 、感 染 菌 数 が 多 い ほ ど 生 残 率 、下 痢 や 軟 便 等 の 糞 便 性 状 お よ び 発 熱
が 悪 化 す る こ と が わ か っ た 。豚 で の Salmonella 感 染 で は 感 染 菌 数 が 多 い ほ
ど 臨 床 症 状 が 悪 化 す る こ と は 以 前 か ら 報 告 さ れ て お り 、今 回 の 結 果 も そ れ ら
を 支 持 す る も の と な っ た [38 、 42-44] 。 ま た 、 Salmonella の 感 染 菌 数 と
Salmonella の 糞 便 中 へ の 排 菌 数 も 、 感 染 菌 数 が 多 く な る ほ ど 糞 便 中 へ 排 泄
さ れ る S . Typhimurium 数 も 多 く な る こ と が 明 ら か と な り 、こ れ に つ い て も
過 去 の 報 告 を 支 持 す る も の と な っ た [42、 44]。
本 試 験 に よ り 、今 ま で 科 学 的 な 解 析 が 十 分 に 行 わ れ て い な か っ た 糞 便 性 状
毎 の 糞 便 中 S . Typhimurium 数 に つ い て 解 析 す る こ と が で き 、糞 便 性 状 が 悪
32
化 す る ほ ど 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 が 多 く な る こ と を 見 出 し た 。 一 方 、
正 常 便 の 中 に も 1×10 6 CFU/g 以 上 の S . Typhimurium を 含 ん で い る 糞 便 が
認 め ら れ た 。Pires ら に よ る と 、Salmonella 陽 性 の 野 外 養 豚 場 か ら 出 荷 さ れ
る 不 顕 性 感 染 豚 の 糞 便 中 で 、1×10 6 CFU/g 以 上 の Salmonella が 検 出 さ れ た
と 報 告 し て い る [45]。こ の こ と は 、離 乳 豚 お よ び 肥 育 豚 が 排 泄 し て い る 正 常
便 中 に も ま れ に 多 量 の Salmonella が 含 ま れ て い る こ と を 示 唆 し て い る 。 ま
た 、 Salmonella 感 染 を 成 立 さ せ る た め に 必 要 な Salmonella 数 に つ い て 、 5
× 10 2 CFU/g 程 度 の S . Typhimurium が 含 ま れ て い る 糞 便 や [46] 、 4 ×
10 2 CFU/100cm 2 の Salmonella で 汚 染 さ れ て い る 環 境 で 、 Salmonella の 感
染 が 成 立 す る と 報 告 さ れ て い る こ と か ら [47] 、 正 常 便 で も 豚 群 内 の
Salmonella 感 染 源 と な る こ と が 示 唆 さ れ た 。こ の こ と は 、 Salmonella 陽 性
の 豚 群 内 で Salmonella の 感 染 拡 大 を 予 防 す る た め に は 、野 外 養 豚 場 に お い
て 、 Salmonella 症 に よ る 臨 床 症 状 の 悪 化 を 予 防 す る こ と と 同 時 に 、 臨 床 症
状 を 示 さ な い 健 康 豚 で あ っ て も 、糞 便 中 の Salmonella 数 を 低 下 さ せ る 取 り
組みが重要であることを示唆している。
【小括】
本 章 で は 豚 に お け る S . Typhimurium 実 験 感 染 系 を 確 立 し 、野 外 よ り 分 離
さ れ た ST116Rif r 株 を 10 9 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 著 し い 脱 水
症 状 を 示 し 、10 7 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 軟 便 を 示 し 、10 5 CFU/
頭 程 度 感 染 さ せ る と 軟 便 程 度 の 糞 便 性 状 等 を 示 す こ と が わ か っ た 。ま た 、感
染 菌 数 が 10 5 CFU/頭 で も 糞 便 中 か ら は 安 定 し て ST116Rif r が 検 出 さ れ 、糞 便
性 状 に よ り 糞 便 に 含 ま れ る ST116Rif r 数 が 異 な る こ と も 示 唆 さ れ た 。 今 後 、
本 実 験 感 染 系 に お い て 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 を 行 う 上 で 、臨 床 症 状 と 共 に 糞
便 中 の 菌 数 を 測 定 す る こ と で 、臨 床 症 状 を 抑 え る 効 果 と 、豚 群 内 で の 感 染 予
防効果を評価できるものと考えられた。
33
第三章
豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系を
用いた乳酸添加飼料の評価
34
【諸言】
Salmonella は 日 本 の 養 豚 場 の 22%か ら 分 離 さ れ た と 報 告 さ れ て お り [ 48]、
ま た 下 痢 便 を 対 象 と し た 調 査 で も 19%の 農 場 か ら 分 離 さ れ た と 報 告 さ れ て い
る [ 16]。 Salmonella に よ る 下 痢 や 軟 便 の 発 現 は 事 故 率 の 増 加 だ け で な く 、 飼
養効率の悪化を招くこともあるため対策が必要で、一部養豚場では陰性化に成
功 し て い る [ 19、 20]。
Salmonella 陰 性 農 場 に お け る Salmonella 対 策 は 、 ま ず 第 一 に 、 導 入 豚 、
ヒ ト お よ び 車 両 等 を 介 し た 農 場 へ の Salmonella 侵 入 を 防 止 す る た め の バ イ
オ セ キ ュ リ テ ィ を 確 立 す る こ と で あ る [13]。一 方 、Salmonella 陽 性 農 場 で は 、
サ ル モ ネ ラ 症 の 発 症 に よ る 事 故 豚 の 増 加 、下 痢 や 軟 便 の 発 現 に よ る 飼 養 効 率
の 悪 化 を 防 ぐ こ と が 必 要 と な る 。ま た 、Salmonella 陽 性 農 場 で は 、Salmonella
陽 性 豚 を 出 荷 す る こ と に よ り 、豚 肉 を 介 し た ヒ ト 食 中 毒 の 発 症 の リ ス ク が あ
る た め 、出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 の 低 下 に 継 続 し て 取 り 組 む 必 要 が あ る 。
下 痢 や 死 亡 事 故 が 見 ら れ る 豚 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 生 農 場 で は 、発 症 を 抑 え る
ために抗菌剤の投与が一般的に行われている。しかし、薬剤耐性化した
Salmonella の 出 現 が 報 告 さ れ て お り [49]、 例 え ば S . Typhimurium DT104
のように 5 剤(アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、
ス ト レ プ ト マ イ シ ン お よ び サ ル フ ァ 剤 )に 対 し て 耐 性 を 示 す よ う な 、複 数 の
抗 菌 剤 に 対 し て 耐 性 を 示 す 多 剤 耐 性 化 し た Salmonella も 国 内 養 豚 場 か ら 分
離 さ れ て い る [50、51]。そ の た め 、養 豚 場 の 中 に は 通 常 使 用 し て い る 抗 菌 剤
で は 効 果 が 認 め ら れ な く な っ た た め 、第 二 次 選 択 薬 を 使 用 す る 事 例 も 認 め ら
れ て い る 。し か し 、第 二 次 選 択 薬 で あ る フ ル オ ロ キ ノ ロ ン や 第 三 お よ び 第 四
世代セファロスポリンに対しても耐性化したサルモネラも報告されるよう
に な り [52、 53]、 抗 菌 剤 代 替 物 質 が 益 々 求 め ら れ て い る 。
一 方 、 豚 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 症 が 認 め ら れ て い な い Salmonella 不 顕 性 感 染
の 養 豚 場 に お い て も 、 Salmonella 陽 性 豚 の 出 荷 に よ る 豚 肉 を 介 し た ヒ ト の
食 中 毒 発 症 の リ ス ク を 回 避 す る た め 、 出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 を 下 げ る
こ と が 求 め ら れ て い る [18]。出 荷 豚 の 陽 性 率 を さ げ る た め に は 、養 豚 場 の 豚
群 内 に お け る Salmonella の 伝 播 を 抑 え る 必 要 が あ る [30、 54]。 養 豚 場 で の
35
Salmonella の 伝 播 の 主 な 経 路 は 糞 口 感 染 で あ る が 、 感 染 菌 数 が 少 な い 際 に
は Salmonella の 感 染 が 成 立 し な い こ と も あ る [46、 47, 55]。 ま た 、 感 染 菌
数 が 少 な い ほ ど 、 感 染 後 の 臨 床 症 状 や 糞 便 中 に 含 ま れ る Salmonella 数 が 少
な い こ と が 示 唆 さ れ て い る [38、39]。こ れ ら の こ と か ら 、不 顕 性 感 染 豚 群 内
の Salmonella 陽 性 率 を 下 げ る た め に は 、糞 便 中 の Salmonella 数 を 減 少 さ せ
ることが重要な対策と考えられる。
以 上 の こ と か ら 、 Salmonella 対 策 に 用 い ら れ る 抗 菌 剤 代 替 物 質 は 、 臨 床
症 状 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 症 を 抑 え ら れ る こ と と 、 Salmonella 不 顕 性
感 染 豚 の 糞 便 中 へ の 排 菌 数 を 低 下 さ せ ら れ る こ と が 重 要 と 考 え ら れ る 。こ れ
ま で に 、 豚 Salmonella 対 策 の 抗 菌 剤 代 替 物 質 と し て 幾 つ か の 候 補 が 提 案 さ
れ て お り 、 そ の 中 に は プ ロ バ イ オ テ ィ ク ス [56]、 有 機 酸 [30、 39]、 ハ ー ブ 類
[57]や 発 酵 飼 料 な ど が あ る [58]。 中 で も 本 研 究 で は 、 Jorgensen ら が 飼 料 に
2.8%添 加 し た 結 果 、 Salmonella 陽 性 農 場 で の 陽 性 率 を 低 下 さ せ た と 報 告 し
て い る 有 機 酸 の 一 種 で あ る 乳 酸 [30]に 着 目 し 、第 二 章 で 確 立 し た 感 染 系 で そ
の効果について評価した。
【材料と方法】
供 試 豚:21 あ る い は 22 日 齢 の SPF 豚 20 頭 を 当 所 に 導 入 し た 。導 入 豚 は
馴 致 期 間 中 に 糞 便 か ら の Salmonella 分 離 を 試 み 、Salmonella 陰 性 で あ る こ
とを確認した後に試験に供試した。
供 試 菌 株:本 研 究 の 第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確
立 」で 選 抜 さ れ た 、野 外 か ら 分 離 さ れ た S. Typhimurium 116 株 に リ フ ァ ン
ピ シ ン 耐 性 を 付 与 し た S. Typhimuirum 116 Rif r 株 ( ST116Rif r 株 ) を 供 試
し た 。第 二 章 で 示 し た よ う に 、ST116Rif r 株 は 豚 に 1 頭 あ た り 10 7 CFU を 経
口 接 種 す る こ と で 下 痢・軟 便 を 発 現 し 、10 5 CFU を 経 口 接 種 す る こ と で 軟 便
を 発 現 す る 。ま た 、ど ち ら の 感 染 菌 数 に お い て も ST116Rif r 接 種 後 の 糞 便 か
ら は 安 定 し て ST116Rif r が 検 出 さ れ る 。
接 種 菌 液 の 調 整 も 第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」
36
と 同 様 に 行 っ た 、 す な わ ち 、 DHL 寒 天 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 、 東 京 ) に
発 育 さ せ た ST116Rif r の 単 一 コ ロ ニ ー を 200mL の SCD 液 体 培 地 に 接 種 し
37℃ で 5 時 間 振 盪 培 養 し 、 そ の 後 培 養 液 の 菌 濃 度 を PBS で 調 整 し 、 最 後 に
等 量 の 20% Skim Milk と 混 合 し て 接 種 菌 液 と し て 供 試 し た 。
感 染 試 験:導 入 時 に 供 試 豚 を 各 区 5 頭 の 4 区( LA-hiST 区 、LA-loST 区 、
C-hiST 区 お よ び C-loST 区 )に 分 け 、LA の 2 区 で は 導 入 時 か ら 試 験 終 了 ま
で 市 販 飼 料 に 乳 酸 を 2.8%添 加 し た 乳 酸 添 加 飼 料 を 給 与 し た 。 一 方 、 C の 2
区では導入時から試験終了まで市販飼料を給与した。馴致期間が終了した
51 あ る い は 52 日 齢 時 に ST116Rif r を hiST の 2 区 で は 1 頭 あ た り 5.6×
10 6 CFU/mL を 10mL 経 口 で 接 種 し 、 loST の 2 区 で は 1 頭 あ た り 5.6×
10 4 CFU/mL を 10mL 経 口 で 接 種 し た 。
観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便
の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。観 察 期 間 中 に 著 し い 脱 水 症 状 や 沈 鬱 が 認 め ら れ た 際
に は 、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 行 っ た 。 接 種 後 21 日 目 に は 耐
過豚全頭の剖検を実施し、主要臓器および腸管内容物を採取した。
糞 便 性 状 の ス コ ア 化:糞 便 性 状 は ス コ ア 化 し て 記 録 し た 。す な わ ち 、正 常
便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。
糞 便 中 お よ び 剖 検 時 の 腸 管 内 容 物 中 の S . Typhimurium 116Rif r 数 の 測 定 、
増菌および遅延二次増菌培養:観察期間中の糞便は各個体から直接採取し、
採 取 後 す ぐ に ST116Rif r 数 の 測 定 を 行 っ た 。菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で
10 倍 段 階 希 釈 し 、適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ
ン 含 有 DHL 寒 天 培 地( RFDHL)に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 し た 後 に 発
育 し た コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し た 。そ の 後 、菌 数 測 定 で ST116Rif r が 検 出 さ れ な
か っ た 検 体 に つ い て 増 菌 培 養 を 行 っ た 。 増 菌 培 養 で は 糞 便 1g を 10mL の
PBS で 希 釈 し た 上 記 糞 便 希 釈 液 か ら 1mL 採 取 し 、 そ れ を 10mL の ハ ー ナ ・
テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 ) に 接 種 し 、 41.5℃ で 24 時 間 培
養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 、コ ロ ニ ー 形 成 の
37
有 無 を 観 察 し た 。菌 数 測 定 、増 菌 培 養 で ST116Rif r が 検 出 さ れ な か っ た 際 に
は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 を 実 施 し た 。遅 延 二 次 増 菌 培 養 で は 増 菌 培 養 で 用 い た ハ
ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 を 増 菌 培 養 終 了 後 に 室 温 で 1 週 間 静 置 し た 後 に 、
培 養 液 を 1mL 採 取 し 、 10mL の ハ ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 接 種 し 、
41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 培 養 液 を RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、 37℃ で 24
時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 で の コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。。 腸 管
内 容 物 は 上 記 の 糞 便 中 の ST116Rifr の 測 定 と 同 様 に 、 ST116Rif r 数 の 測 定 、
増菌培養および遅延二次増菌培養を実施した。
臓 器 か ら の S. Typhimurium116Rif r の 分 離:剖 検 時 に は 肝 臓 、肺 、脾 臓 、
腎 臓 、 扁 桃 、 腸 管 膜 リ ン パ 節 、 回 腸 内 容 物 お よ び 盲 腸 内 容 物 を そ れ ぞ れ 1g
ずつ無菌的に採取し、腸管内容物以外の各臓器は表面を火炎滅菌した後に、
10mL の ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 懸 濁 し 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 。
培 養 終 了 後 の 培 養 液 は RFDHL に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 後 に コ ロ ニ ー
形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。コ ロ ニ ー 形 成 が 観 察 さ れ な か っ た 際 に は 、上 記 と 同
様に遅延二次増菌培養を実施した
統 計 処 理:測 定 さ れ た ST116Rif r 数 は 対 数 変 換 し 、検 出 限 界 以 下 と な っ た
検 体 は 0 と し た 。菌 数 測 定 で は ST116Rif r が 検 出 さ れ な か っ た が 、増 菌 培 養
あ る い は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 で ST116Rif r が 検 出 さ れ た 検 体 は 100CFU/g と し
て 統 計 処 理 を 行 っ た 。 ST116Rif r 数 は Student’s t -test で 有 意 差 の 判 定 を 行
っ た 。ま た 、ST116Rif r 接 種 前 5 日 間 の 体 温 と 比 較 し て 優 位 差 を 示 し た 際 に
発 熱 と し た 。 糞 便 性 状 の ス コ ア は Mann-Whitney U -test で 有 意 差 判 定 を 行
っ た 。 特 に 記 載 の な い 場 合 に は p <0.05 で 有 意 差 あ り と し た 。
【結果】
臨 床 症 状 : LA-hiST 区 で は 下 痢 ・ 軟 便 等 の 糞 便 性 状 の 悪 化 は 認 め ら れ な
か っ た が 、 C-hiST 区 で は 接 種 後 2 日 目 か ら 軟 便 が 観 察 さ れ 、 接 種 後 6 日 目
には 5 頭中 4 頭で下痢が観察され、接種後 9 日目に 1 頭で軟便が観察され
38
た以降は、下痢および軟便は観察されなかった。6 日目および 7 日目には
LA-hiST 区 と C-hiST 区 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た ( 図 10)。 一 方 、 LA-loST
お よ び C-loST で は 糞 便 性 状 の 悪 化 は 散 発 的 で あ っ た 。
LA-hiST 区 で は 体 温 上 昇 は 認 め ら れ な か っ た が 、 C-hiST 区 で は 接 種 後 2
か ら 9 日 目 に か け て 発 熱 が 認 め ら れ た( 図 11)。一 方 、LA-loST 区 で は 体 温
上 昇 は 認 め ら れ な か っ た が 、 C-loST 区 で は 接 種 後 5 か ら 8 日 目 に か け て 発
熱が認められた。
糞 便 中 S . Typhimurium 116Rif r 数 の 推 移 : 糞 便 中 ST116Rif r の ピ ー ク 時
の 菌 数 は LA-hiST 区 で は 接 種 後 2 日 目 の 3.2×10 1 CFU/g、C-hiST 区 で は 接
種 後 3 日 目 の 1.3×10 5 CFU/g と な り 、接 種 後 3、12 お よ び 16 日 目 に LA-hiST
区 と C-loST 区 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た ( 図 12)。 一 方 、 LA-loST 区 の ピ ー
ク 時 の 糞 便 中 ST116Rif r 数 は 接 種 後 7 日 目 の 2.5CFU/g で 、 C-loST 区 で は
接 種 後 9 日 目 が ピ ー ク で 1.3×10 4 CFU/g と な り 、接 種 後 6、7、9 お よ び 12
日 目 に LA-loST 区 と C-loST 区 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た 。
剖 検 時 臓 器 お よ び 腸 管 内 容 物 か ら の S . Typhimurium 116Rif r の 分 離 : 接
種 後 21 日 目 に 実 施 し た 剖 検 で は 肝 臓 、 肺 、 脾 臓 お よ び 腎 臓 か ら は C-loST
区 の 肝 臓 の 1 検 体 の み で ST116Rif r が 検 出 さ れ た ( 表 4)。 一 方 、 扁 桃 、 腸
管 膜 リ ン パ 節 、空 腸 内 容 物 お よ び 盲 腸 内 容 物 中 か ら は 全 区 で ST116Rif r が 検
出 さ れ た 。 LA-hiST 区 、 C-hiST 区 、 LA-loST 区 お よ び C-loST 区 の 空 腸 内
容 物 か ら の ST116Rif r の 検 出 率 は そ れ ぞ れ 20% 、80% 、40% お よ び 80% と
な り 、盲 腸 内 容 物 か ら の ST116Rif r の 検 出 率 は 80%、100%、40%お よ び 80%
と な っ た 。盲 腸 内 容 物 中 の ST116Rif r 数 で は LA-hiST の 方 が C-hiST よ り 少
なく、有意差が認められた。
39
40
●●●●●
C-hiST
●●●●●
LA-hiST
2
1
0
●●●●●
1
●●●●●
●●●●●
●●●●●
●●●●●
2
●●●●●
●●
●●●
●●●●●
●●●●●
3
●
●●●●
●●●
●●
●●●●●
接種後日数
●●●●●
6
●●●●●
●
●●●●
b
●●●●●
a
●●●●
7
●
●●
●●●
●
●●
●●
b
●●●●●
a
●
●
●●●
9
●
●●●●
●
●●●●
●●●●●
●●●●●
13
●●●●●
●●●●●
●●●●●
a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り 。( p<0.05)
糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。
各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。
S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移
●●●●●
0
C-loST
2 LA-loST
1
0
●●●●●
2
1
0
2
1
0
図 10
糞便スコア
●●●●●
16
●●●●●
●●●●●
●●●●●
41
-1
A
2
*
*
*
5
*
*
*
*
11
図 11.
接種後日数
8
*
17
20
B
38.5
-1
B
2
5
*
*
*
11
接種後日数
8
*
S . Typhimurium 接 種 後 の 体 温 の 推 移
14
39.0
39.5
40.0
40.5
41.0
14
17
* は 各 区 の 接 種 前 体 温 と の 有 意 差 を 示 す ( p <0.05)。
右 側 の グ ラ フ B は 1 頭 あ た り 5.6×10 5 CFU を 経 口 接 種 し た 、 □ は LA-loST 区 、 △ は C-loST 区 を 示 す 。
左 側 の グ ラ フ A は 1 頭 あ た り 5.6×10 7 CFU を 経 口 接 種 し た 、 ■ は LA-hiST 区 、 ▲ は C-hiST 区 を 示 す 。
各区の平均体温を示す。
A
38.5
39.0
39.5
40.0
40.5
体温 (℃)
41.0
41.5
体温(℃)
20
42
A
0
1
2
3
4
5
6
7
8
3
図 12.
0
*
接種後日数
9
12
15
*
18
21
B
0
1
2
3
4
5
6
7
0
3
*
6
*
9
*
接種後日数
*
12
15
18
21
S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 中 S . Typhimurium 数 の 推 移
6
*
* は LA-hiST 区 と C-hiST 区 間 お よ び 。 LA-loST 区 と C-loST 区 間 の 有 意 差 を 示 す ( p <0.05)。
右 側 の グ ラ フ B は 1 頭 あ た り 5.6×10 5 CFU を 経 口 接 種 し た 、 □ は LA-loST 区 、 △ は C-loST 区 を 示 す 。
左 側 の グ ラ フ A は 1 頭 あ た り 5.6×10 7 CFU を 経 口 接 種 し た 、 ■ は LA-hiST 区 、 ▲ は C-hiST 区 を 示 す 。
各 区 の 平 均 糞 便 中 S . Typhimurium 116Rif r 数 を 示 す 。
ST116Rifr数 (log CFU/g)
9
ST116Rifr数 (log cfu/g)
43
肺
0/5
0/5
0/5
0/5
肝臓
0/5a)
0/5
0/5
1/5
0/5
0/5
0/5
0/5
脾臓
0/5
0/5
0/5
0/5
腎臓
5/5
4/5
1/5
2/5
扁桃
ST116Rifr検出率
2/5
3/5
4/5
3/5
腸間膜
リンパ節
1/5
4/5
2/5
4/5
空腸
4/5
5/5
2/5
4/5
盲腸
0.32±0.49
1.52±1.26
0.18±0.40
0.37±1.33
空腸
0.89±1.22b)*
2.02±1.30 **
1.40±1.03
2.66±0.37
盲腸
各腸管内容物1g中のST116Rif r数
(Log CFU/g)
剖 検 時 の 各 種 臓 器 か ら の S . Typhimurium の 検 出 率
b:* と * * 間 で 有 意 差 あ り ( p<0.05)。
a:陽 性 検 体 数 /検 体 数
LA-hiST
C-hiST
LA-loST
C-loST
区
表4.
【考察】
本 章 で は 、第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」で 確
立 さ れ た S . Typhimurium 感 染 系 を 用 い て 10 7 CFU/頭 の 経 口 接 種 に よ り 下
痢 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 を 再 現 し 、 ま た 10 5 CFU/頭 の 経 口 接 種 で 糞 便 性 状
の 悪 化 等 の 臨 床 症 状 は 軽 度 だ が 安 定 し た 排 菌 が 認 め ら れ る Salmonella 不 顕
性感染を再現した。
今 回 、我 々 は 豚 S . Typhimurium 感 染 系 で 不 顕 性 感 染 を 再 現 し 、そ の 感 染
系 に お い て 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 に よ り 糞 便 中 の Salmonella 陽 性 率 が 下 が る
こ と を 確 認 し た 。 Jorgensen ら は 、 Salmonella の 不 顕 性 感 染 が 確 認 さ れ て
い る 野 外 養 豚 場 に お い て 、 乳 酸 2.8%添 加 飼 料 を 給 与 す る こ と で 、 糞 便 中 の
Salmonella 陽 性 率 が 低 下 す る こ と を 報 告 し た [30]。 我 々 は さ ら に 糞 便 中 に
排 泄 さ れ る S . Typhimurium 数 は 乳 酸 無 添 加 の 対 照 飼 料 と 比 べ て 乳 酸 添 加
飼 料 の 方 が 優 位 に 減 少 し て お り 、 ピ ー ク 時 で も 1×10 1 CFU/g 以 下 と 豚 群 内
の Salmonella 伝 播 に 必 要 と 報 告 さ れ て い る 1×10 3 CFU/g 以 下 に ま で 菌 数 を
低 下 し た こ と を 示 し た [46] 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 2.8% 乳 酸 添 加 飼 料 が
Salmonella 不 顕 性 感 染 豚 群 内 の Salmonella 感 染 拡 大 防 止 に 有 効 で あ る こ
とが示唆された。
一 方 、 S . Typhimuirum 感 染 系 で 再 現 さ れ た 下 痢 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 に
お い て も 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 で は 下 痢 の 発 現 が 認 め ら れ ず 、S . Typhimurium
感 染 に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 を 改 善 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。第 二 章「 豚 サ ル モ
ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」で 示 さ れ た よ う に 、S . Typhimurium
に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 に は 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 の 増 加 を 伴 う が [59]、
本 研 究 で は 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 を 低 下 さ せ る
こ と 、盲 腸 に お け る S . Typhimurium 数 を 低 下 さ せ る こ と が 示 さ れ た 。こ れ
ら の こ と か ら 、乳 酸 添 加 飼 料 に は 腸 管 内 で の S . Typhimurium の 増 殖 を 抑 制
す る 効 果 が あ り 、そ れ ら が 糞 便 性 状 の 悪 化 等 の 臨 床 症 状 発 現 の 軽 減 に つ な が
るものと考えられた。
乳 酸 の 殺 菌 作 用 は 、 pH3.7 の 環 境 中 で は 3 時 間 で 1/100 ま で Salmonella
を 減 少 さ せ 、 pH4.0 の 環 境 中 で は 3 時 間 で 1/10 ま で Salmonella を 減 少 さ
44
せ る が 、 pH4.4 の 環 境 中 で は 殺 菌 作 用 は 発 揮 さ れ な い [60]。 豚 の 胃 の pH は
3.82-4.07 と 報 告 さ れ て お り [61]、 胃 で は 乳 酸 の 殺 菌 作 用 が 発 揮 さ れ る 環 境
にあることが示唆されている。しかし、胃を通過した後の乳酸については、
給 与 さ れ た 乳 酸 は 腸 管 に 移 行 す る と 、す ば や く 酢 酸 、プ ロ ピ オ ン 酸 、ギ 酸 に
変 換 さ れ る と の 報 告 や [62]、 乳 酸 は Salmonella の 病 原 性 に 関 与 す る 遺 伝 子
の発現に影響を与えることで鶏での感染防止に効果が認められたとの報告
も あ る [63]。 さ ら に 、 Salmonella 感 染 は 腸 内 菌 叢 の 変 化 の 影 響 も 受 け る と
報 告 さ れ て お り [56]、飼 料 に 添 加 さ れ た 乳 酸 の 作 用 機 序 の 詳 細 に つ い て は 今
後の更なる研究が必要となる。
豚 サ ル モ ネ ラ 対 策 に は 、 環 境 中 の Salmonella 数 を 減 ら す 飼 養 環 境 の 改 善
や オ ー ル ア ウ ト の 実 施 な ど と 併 せ て 、豚 の 体 内 に お け る Salmonella の 増 殖
を 抑 制 す る 取 り 組 み が 必 要 と な る 。 豚 体 内 の Salmonella の 増 殖 を 抑 制 す る
に は 、現 時 点 で は 、豚 に ス ト レ ス を か け な い こ と と 併 せ て [64]、抗 菌 剤 の 使
用 は 避 け ら れ な い 。 し か し な が ら 近 年 の Salmonella 対 策 の 報 告 で は 、 飼 養
環 境 の 改 善 と 併 せ て 、生 菌 剤 等 の 使 用 が 報 告 さ れ て お り 、抗 菌 剤 代 替 物 質 の
使 用 が 広 ま り つ つ あ る [20]。本 章 で は 、2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が そ れ ら 代 替 物 質
の 一 つ と し て 豚 Salmonella 対 策 に 応 用 で き る こ と を 示 唆 す る デ ー タ が 得 ら
れ た 。ま た 、第 二 章 で 確 立 し た 豚 S . Typhimuirum 感 染 系 が 抗 菌 剤 代 替 物 質
の評価に応用できることも示され、その有用性が大いに期待された。
【小括】
豚 S . Typhimurium 感 染 系 を 用 い て 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 を 行 っ た 。
そ の 結 果 、 臨 床 症 状 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 を 再 現 し た 感 染 系 で は 2.8%乳 酸
添 加 飼 料 が 糞 便 性 状 の 悪 化 を 抑 制 し 、糞 便 中 へ の Salmonella 排 菌 数 も 減 少
さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 Salmonella 不 顕 性 感 染 を 再 現 し た 感
染 系 で も 糞 便 中 へ の Salmonella 排 菌 数 を 減 少 さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。
こ れ ら の 結 果 か ら 、第 二 章 で 確 立 し た 豚 S . Typhimurium 感 染 系 が 、抗 菌
剤 代 替 候 補 物 質 の 評 価 に 応 用 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、乳 酸 添 加 飼 料
が Salmonella に 対 す る 抗 菌 剤 代 替 物 質 と し て 活 用 で き る こ と も 示 唆 さ れ た 。
45
第四章
豚大腸菌感染系の確立
46
【緒言】
大 腸 菌 に よ る 感 染 症 は ヒ ト 、豚 、牛 な ど 多 く の 宿 主 で 発 生 し 、そ の 病 態 は
下 痢 、 毒 血 症 、 敗 血 症 お よ び 尿 路 感 染 な ど と 多 様 で あ る [ 14]。 豚 に お け る
大 腸 菌 症 は 感 染 や 発 症 機 序 の 違 い か ら 、腸 管 感 染 症 で あ る 下 痢 症( 新 生 期 下
痢 症 、離 乳 後 下 痢 症 )お よ び エ ン テ ロ ト キ セ ミ ア( 浮 腫 病 、脳 脊 髄 血 管 症 )、
全 身 感 染 症 で あ る 敗 血 症 、局 所 感 染 で あ る 子 宮 内 膜 炎 等 に 分 け ら れ る 。こ れ
らの原因となる大腸菌はそれぞれ異なる病原因子を保有する特定の大腸菌
株 で 、例 え ば 下 痢 を 起 こ す 大 腸 菌 の 1 種 で あ る 毒 素 原 性 大 腸 菌( ETEC)で
は 付 着 因 子 と 下 痢 原 性 毒 で あ る 易 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン ( LT) や 耐 熱 性 エ
ン テ ロ ト キ シ ン ( ST) の 両 方 あ る い は 片 方 を 保 有 し て い る こ と が 知 ら れ て
いる。
我 が 国 で は 、 哺 乳 豚 や 離 乳 豚 の 下 痢 便 か ら 頻 繁 に ETEC が 分 離 さ れ て お
り [ 22]、 多 く の 農 場 で 問 題 と な っ て い る [ 65]。 ETEC に よ る 下 痢 が 発 症
す る と 事 故 率 の 増 加 や 飼 養 効 率 の 悪 化 が 認 め ら れ 、経 済 的 な 損 害 を 与 え る た
め に 対 策 を 行 う 必 要 が あ る [ 14]。
ETEC 対 策 と し て 、新 生 期 下 痢 症 で は 飼 養 環 境 の 改 善 と 併 せ て 抗 菌 剤 の 注
射 、移 行 抗 体 を 介 し て 子 豚 を 守 る た め の 母 豚 へ の ワ ク チ ン 接 種 等 が 行 わ れ て
い る [66]。一 方 、離 乳 後 下 痢 症 で も 飼 養 環 境 の 改 善 と 併 せ て 、抗 菌 剤 の 飼 料
添 加 や 注 射 が 行 わ れ て お り [ 67]、 大 腸 菌 症 対 策 で は 抗 菌 剤 が 広 く 使 わ れ て
い る 。し か し 、抗 菌 剤 の 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 菌 の 問 題 や [68]、抗 菌 剤 の 使 用
量 が よ り 少 な い 畜 産 物 を 求 め る 消 費 者 か ら の 要 望 も あ り 、抗 菌 剤 の 使 用 に は
厳 し い 目 が 向 け ら れ て い る 。特 に 、薬 剤 耐 性 菌 の 問 題 で は 複 数 の 抗 菌 剤 に 対
し て 耐 性 を 持 つ 多 剤 耐 性 の ETEC の 出 現 や [23、 69]、 豚 由 来 の 薬 剤 耐 性 菌
が ヒ ト へ 伝 播 す る こ と に よ る ヒ ト の 健 康 リ ス ク の 増 大 も 危 惧 さ れ て お り 、各
国 で 重 要 な 問 題 と な っ て お り 、抗 菌 剤 に 頼 ら な い 、抗 菌 剤 代 替 物 質 に よ る 対
策が求められている。
こ れ ら を 背 景 と し て 、ETEC 対 策 に 応 用 で き る 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 研 究 が 活
発 に 行 わ れ て お り 、 そ の 候 補 物 質 と し て 有 機 酸 [31、 70]、 生 菌 剤 [71]お よ び
鶏 卵 抗 体 [72、 73]、 亜 鉛 [74]等 の 活 用 が 報 告 さ れ て お り 、 実 際 に 養 豚 場 で 応
用 さ れ て い る 資 材 も あ る [31、70、75]。し か し 、こ れ ら 資 材 の 中 で 養 豚 場 に
47
お い て も 安 定 し た 効 果 を 示 し て い る 資 材 は 少 な い [ 26、 27]。 そ の 理 由 の 一
つとしてそれら資材の開発段階で対象動物である豚に対応した評価が十分
に 行 わ れ て い な い こ と が 挙 げ ら れ 、特 に 豚 を 用 い た 大 腸 菌 感 染 対 策 で の 評 価
は遅れている。
そ こ で 、本 研 究 で は 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 に 適 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立
を 目 指 す こ と と し た 。豚 大 腸 菌 感 染 系 は 過 去 に も 報 告 さ れ て い る が 、離 乳 豚
を 用 い た 大 腸 菌 感 染 系 は 再 現 性 が 難 し い こ と が 知 ら れ て お り 、離 乳 豚 で の 安
定 し た 感 染 系 を 確 立 す る た め に 感 染 時 に 胃 酸 中 和 剤 の 給 与 や [76]、接 種 大 腸
菌 を 胃 を 通 過 さ せ る た め の 腸 溶 性 カ プ セ ル で 覆 っ た り [77]、感 染 前 に 豚 に ス
ト レ ス を 与 え る 等 が 行 わ れ て い る 。ま た 、離 乳 豚 の 豚 大 腸 菌 感 染 の 発 症 に は
腸 内 菌 叢 が 関 与 す る こ と も 報 告 さ れ て お り [78]、安 定 し た 豚 大 腸 菌 感 染 症 を
確 立 す る に は 感 染 豚 の 腸 内 菌 叢 も 考 慮 す る 必 要 が あ る 。本 研 究 が 目 指 し て い
る 、抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 に 応 用 で き る 豚 大 腸 菌 感 染 系 で は 、胃 酸 中 和 剤 や
豚 に ス ト レ ス を 与 え る 等 の 処 理 を 避 け る 必 要 が あ る 。そ の こ と か ら 、離 乳 豚
ではなく哺乳豚を用いた豚大腸菌感染系の確立を目指した。
一 方 、哺 乳 豚 の 大 腸 菌 症 は 移 行 抗 体 で 防 御 で き る こ と が 知 ら れ て お り [66]、
安 定 し た 感 染 系 を 確 立 す る に は 、移 行 抗 体 を 接 種 し て い な い 豚 を 供 試 す る 必
要がある。
そ こ で 、本 研 究 で は 移 行 抗 体 を 接 種 し て お ら ず 、腸 内 菌 叢 の 影 響 も 排 除 で
き る よ う に 、 帝 王 切 開 で 作 出 し 、 初 乳 を 摂 取 し て い な い cesarean-derived,
colostrum-deprived ( CDCD) 豚 を 供 試 す る こ と で 安 定 し た 豚 大 腸 菌 感 染
系の確立を目指した。
【材料と方法】
1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜
供試菌株:野外より分離され、当所に保存されていた溶血性大腸菌
( Enterotoxigenic Escherichia coli ; ETEC) 13 株 そ れ ぞ れ の リ フ ァ ン ピ シ
ン ( Wako Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan) 耐 性 株 を 当 所
48
で 選 択 し 、 リ フ ァ ン ピ シ ン 耐 性 溶 血 性 大 腸 菌 13 株 を 供 試 し た 。 リ フ ァ ン ピ
シ ン 耐 性 株 の 選 択 は 具 体 的 に は 、 リ フ ァ ン ピ シ ン を 100μ g/mL の 濃 度 に 含
む DHL 寒 天 培 地( Eiken Chemica, Co., Ltd., Tokyo, Japan)に 供 試 菌 株 を
そ れ ぞ れ 濃 厚 に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 し 、 そ れ ぞ れ の 株 で 発 育 し て き
たコロニーをリファンピシン耐性株として供試した。
O 抗 原 の 検 出 : O8 、 O9 、 O20、 O21 、 O45 、 O64 、 O101、 O115 、 O138 、
O139 、 O141 、 O147 、 O149 、 O153 及 び O157 の 15 種 類 の 抗 O 血 清
( Laboratorio de Referencia de E. coli 、 University of Santiago de
Compostela, Santiago, Spain) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。
付 着 因 子 の 検 出:毒 素 原 性 大 腸 菌 線 毛 抗 血 清「 生 研 」
( Denka Seiken Co., Ltd.
Tokyo, Japan) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。
LT の 検 出 : 大 腸 菌 易 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン 検 出 用 キ ッ ト 「 コ リ ス ト EIA」
( Denka Seiken Co., Ltd.) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。
ST の 検 出 : 大 腸 菌 耐 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン 検 出 用 キ ッ ト 「 VET-RPLA 」
( Denka Seiken Co., Ltd.) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。
病 原 因 子 遺 伝 子 の 検 出 : 付 着 因 子 の F4ab、 F4ac お よ び F4ad[79]、 毒 素 の
LT、 ST お よ び Vero Toxin の 遺 伝 子 検 出 を PCR 法 に て 実 施 し た [80]。
2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株 の 選 抜
供 試 豚:1 頭 の 母 豚 よ り 作 出 さ れ た CDCD 豚 7 豚 を 供 試 し た( 図 13)。供
試 豚 は 作 出 日 か ら 2 区 ( EC389 区 お よ び BD2699 区 ) に 区 分 け さ れ 、 各 区
別の部屋で単飼のケージで飼育された。
供 試 菌 株 : 「1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜 」で 選 抜 さ れ た リ フ ァ ン ピ シ ン 耐
49
性 の 毒 素 原 性 大 腸 菌 ( ETEC) EC389Rif r 株 お よ び BD2699Rif r 株 の 2 株 を
供試した。
接 種 菌 の 菌 液 調 整 で は 、 そ れ ぞ れ の 株 を SCD 寒 天 培 地 で 培 養 し 、 発 育 し
て き た コ ロ ニ ー を Minca ISO vitalex 寒 天 培 地( BBL Microbiology Systems
Cookeysville, Md) に 塗 抹 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 そ の 後 、 Minca ISO
vitalex に 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を 掻 き 取 り 生 理 食 塩 水 に 懸 濁 し 、 生 理 食 塩
水を用いて菌濃度を調整した後に接種菌液として供試した。
供 試 飼 料:抗 菌 性 飼 料 添 加 物 お よ び 機 能 性 飼 料 原 料 が 添 加 さ れ て い な い 試
験 用 代 用 乳 飼 料 「 SPF-LAC」( Borden Inc., Norfolkk, VA) を 作 出 当 日 か ら
試験終了時まで給与した。
感 染 試 験 : 4 日 齢 時 の 供 試 豚 に EC389 区 ( n=4) に は EC389Rif r 株 を 、
BD2699 区 ( n=3 ) に は BD2699Rif r 株 を 、 そ れ ぞ れ 1 頭 あ た り 5.4 ×
10 8 CFU/mL を 10mL お よ び 3.2×10 8 CFU/mL を 10mL 経 口 で 接 種 し た 。
観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 と 糞 便 の 採
取も毎日行った。観察期間中に著しい脱水や食欲不振が認められた際には、
ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 施 し た 。接 種 後 7 日 目 に 耐 過 豚 全 頭 の
剖検を実施し、主要臓器および腸内容物を無菌的に採取した。
3. 観 察 お よ び 検 査 項 目
糞 便 性 状 の ス コ ア 化:糞 便 性 状 は ス コ ア 化 し て 記 録 し た 。す な わ ち 、正 常
便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。
糞 便 中 お よ び 消 化 管 内 容 物 中 の 接 種 ETEC 数 の 測 定 : 観 察 期 間 中 の 糞 便
の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 っ た 。 糞 便 は 採 取 後 す ぐ に 接 種 ETEC の 菌 数 測
定 に 供 試 し た 。 菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希
釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100 μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL 寒 天 培 地
( RFDHL) に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 し た 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を
50
計測した。
各 種 臓 器 に お け る ETEC の 分 離 : 剖 検 時 に は 全 頭 か ら 肺 、 肝 臓 、 心 臓 、
腎 臓 、脾 臓 、扁 桃 、腸 間 膜 リ ン パ 節 お よ び 脳 を 無 菌 的 に 採 取 し 、観 察 期 間 中
に安楽殺を施した個体からは上記の部位に加えて血液を無菌的に採取した。
採取した血液以外の臓器は表面を火炎滅菌した後に各臓器検体の中央部で
切 断 し 、 そ の 割 面 を RFDHL 寒 天 培 地 に 押 し 付 け 、 37℃ 、 24 時 間 培 養 後 の
コ ロ ニ ー の 発 育 の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。血 液 は 直 接 RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹
し 、 37℃ 、 24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ ー の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。
4. 豚 を 用 い た 接 種 菌 数 の 検 討
供 試 豚 :2 頭 の 母 豚 よ り 作 出 さ れ た CDCD 豚 18 頭 を 供 試 し た 。供 試 豚 は
作 出 日 に 4 区 ( ETEC-4、 ETEC-6、 ETEC-8 お よ び 陰 性 対 照 区 ) に 区 分 け
され、各区はそれぞれ別の部屋で、単飼用のケージで飼育された。
供 試 菌 株 :「 1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜 」 お よ び 「 2. 豚 を 用 い た 供 試 菌
株の選抜」で選抜されたリファンピシン耐性を有する毒素原性大腸菌
EC389Rif r 株 を 供 試 し た 。
接 種 菌 の 菌 液 調 整 は 「2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株 の 選 抜 」と 同 様 に 行 っ た 、 す
な わ ち EC389Rif r 株 を SCD 寒 天 培 地 で 培 養 し 、 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を
Minca ISO vitalex 寒 天 培 地( BBL Microbiology Systems Cookeysville, Md)
に 継 代 、 塗 抹 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 そ の 後 、 Minca ISO vitalex に 発 育
し て き た コ ロ ニ ー を 掻 き 取 り 生 理 食 塩 水 に 懸 濁 し 、菌 濃 度 を 調 整 し た 後 に 接
種菌液として供試した。
供 試 飼 料:抗 菌 性 飼 料 添 加 物 お よ び 機 能 性 飼 料 原 料 が 添 加 さ れ て い な い 試
験 用 飼 料 「 SPF-LAC」( Borden Inc., Norfolkk, VA) を 作 出 当 日 か ら 試 験 終
了まで供試した。
51
感 染 試 験 : 供 試 豚 は 4 日 齢 時 に 供 試 菌 株 で あ る EC389Rif r 株 を 経 口 で 接 種
さ れ 、ETEC-8 区( n=4)で は 1 頭 あ た り 4.3×10 8 CFU、ETEC-6 区( n=5)
で は 1 頭 あ た り 4.3×10 6 CFU、 ETEC-4 区 ( n=5) で は 1 頭 あ た り 4.3×
10 4 CFU を 経 口 で 接 種 さ れ 、 陰 性 対 照 ( n=4) に は 生 理 食 塩 水 を 接 種 し た 。
観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便
の 採 取 は 随 時 実 施 し た 。観 察 期 間 中 に 著 し い 脱 水 や 沈 鬱 頭 が 認 め ら れ た 際 に
は 安 楽 殺 を 実 施 し た 。 接 種 後 14 日 目 に は 耐 過 豚 全 頭 の 剖 検 を 実 施 し 、 腸 管
内容物を採取した。
糞便性状のスコア化:糞便性状は随時スコア化して記録された。つまり、
正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1 お よ び 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。
糞 便 中 お よ び 腸 管 内 容 物 中 の E.Coli 389Rif r 数 の 測 定:観 察 期 間 中 の 糞 便
の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 っ た 。 糞 便 中 の EC389Rif r 数 の 測 定 で は 、 糞 便
1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL
リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL( RFDHL) に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 発
育したコロニー数を計測した。
【結果】
1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜
供 試 菌 株 の 選 抜:対 象 と し た 13 株 の 内 、付 着 因 子 は 12 株 で F4( K88)の 発
現 お よ び 遺 伝 子 が 保 持 さ れ て い る こ と が 確 認 さ れ 、残 り の 1 株 は F5 の 発 現
が 確 認 さ れ た ( 表 5)。 LT の 遺 伝 子 は 12 株 で 保 有 さ れ て お り 、 そ の 内 の 2
株 で 発 現 が 認 め ら れ た 。 一 方 、 ST は STⅠ 遺 伝 子 が 5 株 で 、 STⅡ 遺 伝 子 が
12 株 で 保 有 さ れ て お り 、 STⅠ 遺 伝 子 お よ び Ⅱ 遺 伝 子 の 両 方 を 保 有 し て い た
4 株 の 内 の 1 株 で ST の 発 現 が 確 認 さ れ た 。13 株 全 て で VT 遺 伝 子 の 保 有 は
認められなかった。
本 試 験 で は 、 凝 集 因 子 の F4 の 発 現 が 認 め ら れ 、 毒 素 と し て LT の 発 現 が
52
認 め ら れ た EC389Rif r 株 お よ び EC412Rif r 株 の 2 株 の 内 STⅠ お よ び STⅡ
両 方 の 遺 伝 子 の 保 有 が 認 め ら れ た EC389Rif r 株 と 、 F4 の 発 現 が 認 め ら れ 、
ST の 発 現 お よ び LT 遺 伝 子 の 保 有 も 認 め ら れ た BD2699Rif r 株 の 2 株 を 豚 を
用いた感染試験に供試し、最終選抜を実施することとした。
2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株 の 選 抜
臨 床 症 状 : EC389 区 で は 安 楽 殺 を 実 施 し た の は 、 接 種 後 1 日 目 の 1 頭 の み
で あ っ た が 、BD2699 区 で は 接 種 後 2 日 目 に 3 頭 中 2 頭 の 安 楽 殺 を 実 施 し た 。
糞 便 性 状 の 悪 化 に つ い て は 接 種 後 8 時 間 目 に は EC389 区 お よ び BD2699
区 で そ れ ぞ れ 4 頭 中 3 頭 お よ び 3 頭 中 2 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た( 図 14-15)。
接 種 後 1 日 目 に は EC389 区 で 3 頭 中 2 頭 が 下 痢 を 発 現 し 、 BD2699 区 で は
全 頭 で 下 痢 が 観 察 さ れ 。 両 株 と も ETEC 接 種 後 1 日 目 に は 糞 便 性 状 の 悪 化
が 認 め ら れ た 。接 種 後 1 日 目 以 降 は 観 察 期 間 を 通 じ て 耐 過 豚 全 頭 で 継 続 し て
下痢が観察された。
糞 便 中 の ETEC 数 推 移:接 種 後 8 時 間 目 に は EC389 区 お よ び BD2699 区 の
両 区 全 頭 の 糞 便 か ら 接 種 ETEC が 検 出 さ れ 、 糞 便 中 に は そ れ ぞ れ 6.2 ×
10 7 CFU/g お よ び 2.5×10 8 CFU/g の 接 種 菌 数 が 検 出 さ れ た( 図 16)。そ の 後
試 験 終 了 ま で 両 区 と も 10 8 CFU/g 以 上 の 接 種 菌 が 継 続 し て 検 出 さ れ た 。観 察
期間中を通じて両区に有意差は認められなかった。
消 化 管 各 部 位 の ETEC 数:7 日 間 の 観 察 期 間 を 生 残 耐 過 し た 供 試 豚 で は 十 二
指 腸 で は EC389 区 お よ び BD2699 区 で そ れ ぞ れ 8.7×10 3 CFU/g お よ び 1.4
× 10 7 CFU/g の 菌 が 検 出 さ れ た 。 空 腸 で は 2.0 × 10 7 CFU/g お よ び 6.6 ×
10 7 CFU/g の 菌 が 検 出 さ れ( 図 17)、十 二 指 腸 お よ び 空 腸 で EC389 区 の 方 が
BD2699 区 よ り 少 な い 菌 数 を 示 し た 。
本 研 究 で 臨 床 症 状 が 著 し く 悪 化 し た た め に 安 楽 殺 を 施 し た EC389 区 の 2
頭 お よ び BD2699 区 の 1 頭 の 3 頭 で は 十 二 指 腸 で 2.0×10 8 CFU/g の 菌 が 検
53
出 さ れ 、 空 腸 で も 6.6×10 8 CFU/g の 菌 が 検 出 さ れ た 。 安 楽 殺 を 施 さ れ た 豚
の 十 二 指 腸 の ETEC 数 は EC389 区 の 生 残 豚 と 比 べ て 有 意 に 多 か っ た 。
各 種 臓 器 か ら の 接 種 ETEC の 分 離:EC389 区 お よ び BD2699 の 耐 過 豚 の 肺 、
肝 臓 、 腎 臓 、 脾 臓 、 心 臓 お よ び 扁 桃 か ら は 接 種 ETEC は 分 離 さ れ な か っ た
が 、 EC389 区 で は 3 頭 全 頭 の 腸 間 膜 リ ン パ 節 か ら 分 離 さ れ た ( 表 6)。
一 方 、 安 楽 殺 を 施 さ れ た 豚 の 肺 、 腎 臓 、 扁 桃 か ら は 接 種 ETEC が 分 離 さ
れ 、 さ ら に 血 液 か ら も 接 種 ETEC が 分 離 さ れ た 。
3. 豚 を 用 い た 接 種 菌 数 の 検 討
臨 床 症 状 : ETEC-6 区 お よ び ETEC-8 区 で は 接 種 後 1 日 目 に そ れ ぞ れ 5 頭
中 4 頭 お よ び 全 頭 で 下 痢 を 発 現 し た( 図 18)。一 方 、ETEC-4 区 で は 接 種 後
1 日 目 で は 5 頭 中 1 頭 で 下 痢 が 確 認 さ れ 、接 種 後 2 日 目 に は 全 頭 で 下 痢 が 確
認 さ れ た 。 ETEC-8、 ETEC-6 お よ び ETEC-4 区 で は 接 種 後 10 日 目 以 降 で
は糞便性状の改善が認められた。
陰性対照区では接種後 2 日目に 4 頭中 2 頭で軟便が観察され、その後も
軟便が観察され続け、接種後 6 日目には全頭で下痢を発現した。接種後 7
日目以降では陰性対照区の糞便性状には改善が認められた。
糞 便 中 の E. coli 389Rif r 数 の 推 移 : 糞 便 中 の EC389Rif r 数 は 接 種 後 1 日 目
に は ETEC-6 区 お よ び ETEC-8 区 で 10 8 CFU/g ま で 増 加 し た( 図 19)。一 方 、
ETEC-4 区 の 糞 便 中 EC389Rif r 数 が 10 8 CFU/g ま で 増 加 し た の は 接 種 後 2 日
目 で あ っ た 。そ の 後 は 試 験 終 了 ま で 全 区 で 10 8 CFU/g 以 上 の 菌 数 が 検 出 さ れ
た。
陰 性 対 照 区 で は 試 験 期 間 中 を 通 じ て 糞 便 か ら EC389Rif r は 検 出 さ れ な か
った。
剖 検 時 腸 管 内 容 物 中 の E. coli 389Rif r 数:ETEC-4、ETEC-6 お よ び ETEC-8
区 の EC389Rif r 数 は 盲 腸 、 結 腸 お よ び 直 腸 で は 1×10 7 CFU/g 以 上 と な っ た
54
( 図 20)。一 方 、ETEC-8、6 お よ び 4 区 の 3 区 全 て で EC389rif r 数 は 回 腸 、
空 腸 、十 二 指 腸 と 腸 管 上 部 に 移 行 す る に 従 い 減 少 し た が 、区 間 で 有 意 差 は 認
められなかった。
陰 性 対 照 区 か ら は 全 て の 腸 管 部 位 で EC389Rif r は 検 出 さ れ な か っ た 。
55
図 13
CDCD 豚 作 出 時 の 写 真
内部を滅菌したチャンバーを用意する(左上)。
母豚とチャンバーを滅菌させ、母豚の術野を殺菌する(右上)。
チャンバー内で子宮から子豚を取り出す(左下)。
56
57
BD2699
EC420
EC432
EC452
EC459
ECB-41
EC415
EC412
EC 3 8 9
EC382
EC374
EC376
EC379
株名
表5
毒素
F4
LT
ST
F5
F6
VT
O抗原
(K88)
(易熱性毒素)
(耐熱性毒素)
(K99)
(987P)
(Vero毒素)
PCR
PCR
凝集反応
凝集反応 PCR
PCR
凝集反応 凝集反応
EIA
F4ab F4ac F4ad
LTⅠ
LTⅠ
STⅠ STⅡ
+
+
+
O149
+
+
O149
+
+
+
+
O149
+
+
+
+
O149
+
+
+
+
+
O1 4 9
+
+
+
+
+
+
O149
+
+
+
+
+
O149
+
+
+
+
O149
+
+
+
+
+
+
O149
+
+
O149
+
+
+
+
+
+
O149
+
+
O101
+
+
-
O149
+
+
+
+
+
+
-
付着因子
当 所 保 存 ETEC 株 の 付 着 因 子 お よ び 毒 素 の 遺 伝 子 保 有 お よ び 発 現
図 14
ETEC 感 染 時 の 発 症 豚 と 下 痢
下痢発症豚の外観(左)
発現した下痢便(右)
58
59
●●●
0
EBD2699
●●
●
8hr
●●●
●
1
●●●
●
●
●●
3
●●
●
●
●●●
接種後日数
2
●●
●
●
●●●
4
●●
●
●
●●●
5
●●
●
●
●●●
6
●●
●
●
●●●
糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。
各区の糞便性状スコアの推移と安楽殺頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。
EC389Rif r お よ び ECBD2699Rif r 接 種 時 の 糞 便 性 状 の 推 移
安楽殺頭数
2
1
0
EC389区
安楽殺頭数
2
1
0 ●●●●
図 15
糞便スコアと安楽殺実施の頭数
12
接種ETEC数
(Log CFU/g)
10
8
6
4
2
0
0(8hr)
図 16
1
2
3
4
接種後日数(時間)
5
6
EC389Rif r お よ び BD2699Rif r 接 種 時 の
糞 便 中 接 種 ETEC 数 の 推 移
● は EC389 区 、 ▲ は BD2699 区 を 示 す 。 EC389Rif r 株 あ る い は BD2699Rif r 株 を 経 口 接
種した際に糞便中に排泄された接種菌の菌数を示す。
60
10
9
b
菌数 (Log CFU/g)
8
7
6
5
a
4
3
2
1
0
十二指腸
図 17
空腸
回腸
盲腸
結腸
直腸
剖 検 時 消 化 管 各 部 位 の EC389Rif r お よ び BD2699Rif r 数
バ ー は 左 が EC389 区 、 中 央 が BD2699 区 、 右 が 安 楽 殺 豚 を 示 す 。
a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り ( p <0.05)
61
62
EC389区
耐過豚 BD2699区
小計
EC389区
安楽殺豚 BD2699区
小計
肝臓
0/3
0/1
0/4
0/1
0/2
0/3
肺
0/3(a)
0/1
0/4
1/1
1/2
2/3
0/3
0/1
0/4
0/1
1/2
1/3
腎臓
0/3
0/1
0/4
0/1
0/2
0/3
心臓
0/3
0/1
0/4
0/1
0/2
0/3
脾臓
0/3
0/1
0/4
0/1
2/2
2/3
扁桃
腸間膜
リンパ節
3/3
0/1
3/4
0/1
1/2
1/3
剖 検 時 各 種 臓 器 お よ び 血 液 か ら の 接 種 ETEC の 分 離 率
a:陽 性 検 体 数 /検 体 数
表6
NT
NT
NT
1/1
2/2
3/3
血清
63
糞便スコア
●●●●
●
●
●●●
●
●●●●
●
ETEC-4 b, c
●●●●●
●
3
●●
2
4
6
●●●●
●●●●●
●●●●●
接種後日数
●●●●
b
●●●●●
a
●●●●●
a
●●●●
7
●●●
●
●●●●●
●●●●●
●
●●●
EC389Rif r 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移
●●●
b
●●●●●
a
●●●●●
a
a
●●●●
8
●●●
●
●●●●●
●●●●●
●●●●
a、 b、 c: 異 符 号 間 で 有 意 差 を 示 す ( p <0.05)
糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。
各区の糞便性状スコアの推移を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。
図 18
a
●●●●
●●
b
●●●●●
a
●●●●●
a
a
●●●●
a
●●●●
ETEC-6 a, b
●●●●
ETEC-8
2 陰性対照 c
1
0 ●●●●
●●●●
0
1
2
1
0
2
1
0
2
1
0
10
●●●
●
●●
●●
●
●●
●●
●
●●●
●
12
●●●
●
●●●●
●
●●●
●●
●●●
●
EC389Rifr数 (Log CFU/g)
10
8
6
4
2
0
0
図 19
1
2
3
4
5
6
7
接種後日数
8
9
10
11
12
EC389Rif r 接 種 時 の 糞 便 中 接 種 EC389Rif r 数 の 推 移
■ は ETEC-4 区 、▲ は ETEC-6 区 、● は ETEC-8 区 、◇ は 陰 性 対 照 区 を 示 す 。EC389Rif r
株 あ る い を 10 8 (ETEC-8 区 )、 10 6 (ETEC-6 区 )あ る い は 10 4 (ETEC-4 区 )CFU/頭 経 口 接 種
し た 際 に 糞 便 中 に 排 泄 さ れ た EC389Rif r 数 の 菌 数 を 示 す 。
64
10
9
EC389Rifr数 (Log CFU/g)
8
7
6
5
4
3
2
1
0
十二指腸
図 20
空調
回腸
盲腸
結腸
消 化 管 各 部 位 の EC389Rif r 数
バ ー は 左 か ら ETEC-4 区 、 ETEC-6 区 、 ETEC-8 区 を 示 す 。
65
直腸
【考察】
本 章 で は ETEC に よ る 下 痢 症 の 感 染 系 を 確 立 す る た め に 、 当 所 に 保 存 さ
れ て い た 大 腸 菌 株 を 対 象 に 供 試 菌 株 の 選 抜 を 実 施 し た 。選 抜 さ れ 、そ の 後 の
感 染 試 験 に 供 試 さ れ た EC389Rif r 株 は 付 着 因 子 で あ る F4 遺 伝 子 、下 痢 原 性
毒 で あ る LT、 STⅠ お よ び STⅡ 遺 伝 子 を 保 有 し 、 そ れ ら の 内 F4 お よ び LT
の 発 現 が 確 認 さ れ た 。 Katsuda ら が 我 が 国 の 哺 乳 豚 ・ 離 乳 豚 の 下 痢 便 か ら
分 離 し た 大 腸 菌 を 対 象 に 行 っ た 調 査 で は 、付 着 因 子 と 毒 素 の 組 み 合 わ せ で 最
も 多 か っ た パ タ ー ン が F4、 LT、 STⅠ お よ び STⅡ 遺 伝 子 を 保 有 し て い る も
の で [22]、こ の パ タ ー ン は 本 研 究 で 感 染 試 験 に 供 試 し た EC389Rif r 株 と 同 じ
で あ り 、 感 染 試 験 に 供 試 し た EC389Rif r 株 が 保 有 し て い る 付 着 因 子 お よ び
毒 素 の パ タ ー ン が 野 外 養 豚 場 に 浸 潤 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。一 方 、当 所
保存大腸菌株で最も多かった付着因子遺伝子および毒素遺伝子の保有パタ
ー ン は F4、 LT お よ び STⅡ を 保 有 し て い る も の で あ っ た 。 Katsuda ら の 報
告で示された付着因子遺伝子および毒素因子遺伝子の保有パターンが当所
保 存 菌 株 の そ れ と 異 な っ て い た 理 由 と し て は 、 当 所 保 存 の 大 腸 菌 株 が 13 株
と 少 な か っ た こ と 、Katsuda ら と 当 所 保 存 菌 株 で は 分 離 さ れ た 時 期 、地 域 、
農場が異なっているためと考えられる。
豚を用いた大腸菌実験感染系では過去の報告と同様に接種後 1 日目ある
い は 2 日 目 か ら 下 痢 の 発 現 が 認 め ら れ 、さ ら に 接 種 8 時 間 後 に は 糞 便 中 へ の
排 菌 も 確 認 さ れ た [81、82]。過 去 の 哺 乳 豚 を 用 い た 大 腸 菌 感 染 試 験 で は 1 頭
あ た り 10 8 CFU/頭 程 度 接 種 し て い る も の が 多 く 、 本 研 究 で 供 試 し た 接 種 菌
数 よ り 著 し く 多 い 。本 研 究 と そ れ ら 過 去 の 報 告 で は 、初 乳 を 摂 取 し て い な い
点 で は 一 致 す る 報 告 も あ る 。し か し 、哺 乳 豚 の 娩 出 方 法 が 、本 研 究 で は 帝 王
切 開 で 無 菌 的 に 行 い 、過 去 の 報 告 で は 通 常 通 り に 母 豚 か ら 分 娩 さ れ た 点 が 異
な っ て い る 。過 去 の 報 告 で は 分 娩 時 に 母 豚 や 環 境 中 の 菌 を 取 り 込 み 腸 内 菌 叢
が 形 成 さ れ た た め に 、い わ ゆ る 競 合 排 除 の よ う な 現 象 が 起 き [83]、無 菌 的 に
作 出 さ れ た 哺 乳 豚 と 比 較 し て 、感 染 成 立 に 多 量 の 感 染 菌 が 必 要 と な っ た と 考
えられる。
過去の豚を用いた大腸菌感染系では感染菌数と臨床症状や糞便中に排泄
66
さ れ る 菌 数 に つ い て の 報 告 は 多 く な い 。し か し 、過 去 の 報 告 で は 哺 乳 豚 で は
感 染 菌 数 が 10 8 CFU/頭 と 比 較 的 高 濃 度 に 接 種 し て い る[ 84、85]。ま た 、離
乳 豚 を 用 い た 感 染 系 で も 10 1 0 CFU/頭 と 高 濃 度 の ETEC を 接 種 し て い る こ と
を 考 慮 す る と [86]、少 な い 接 種 菌 数 で は 感 染 が 成 立 し な い あ る い は 臨 床 症 状
が 認 め ら れ な か っ た と も 考 え ら れ る 。一 方 、本 研 究 で は 10 4 CFU/頭 の ETEC
接 種 で も 下 痢 が 発 現 し 、 糞 便 中 か ら も 安 定 し て ETEC が 検 出 さ れ た 。 こ れ
は 、 本 研 究 で は CDCD 豚 が 用 い ら れ た 影 響 と 考 え ら れ る が 今 後 更 な る 検 討
が 必 要 で あ る 。さ ら に 、本 研 究 で は 感 染 菌 数 を 少 な く す る と 臨 床 症 状 の 発 現
お よ び 糞 便 中 へ の ETEC 排 泄 の 遅 延 が 示 さ れ た が 、 こ の こ と に つ い て も 接
種 ETEC が 少 な い と ETEC が 腸 管 内 で 発 症 レ ベ ル ま で 増 殖 す る の に 時 間 を
要したためとも考えられるが、更なる研究が必要となる。
本 研 究 で は 感 染 豚 の 糞 中 へ の 排 菌 数 は 10 8 CFU/g 程 度 で 安 定 し て お り 、過
去 の 報 告 で は 1 週 齢 健 康 豚 の 糞 便 中 で も 10 9 CFU/g 程 度 の 大 腸 菌 群 が 排 泄 さ
れ て い る こ と か ら [ 87、 88]、 発 症 豚 で も 糞 便 中 の 大 腸 菌 数 は 著 し く 増 加 し
て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。こ の こ と か ら 、ETEC に 対 す る 抗 菌 剤 代 替 物 質
の 効 果 を 評 価 す る 際 の 指 標 と し て 糞 便 中 ETEC 数 は 応 用 で き な い と 考 え ら
れた。
剖 検 時 の 消 化 管 各 部 位 の ETEC 数 も 回 腸 よ り 下 部 の 消 化 管 で は 安 楽 殺 を
施 し た 豚 で も 、耐 過 豚 で も 10 8 CFU/g か ら 10 9 CFU/g 程 度 の ETEC が 検 出 さ
れ て お り 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方 、 接 種 し た ETEC の 2 株 の 内 、 死 亡
頭 数 が 少 な か っ た EC389 株 区 で は 回 腸 よ り 上 部 の 消 化 管 で は ETEC 数 が 減
少 し た が 、 も う 一 方 の BD2699 株 区 や 安 楽 殺 を 施 さ れ た 豚 で は 消 化 管 上 部
に 向 け て ETEC 数 の 減 少 は 認 め ら れ ず 、 十 二 指 腸 で は 安 楽 殺 し た 豚 と
EC389 株 区 で 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 過 去 の 報 告 で も ETEC の 発 症 に は 消 化
管 上 部 で の 増 殖 が 重 要 で あ る こ と が 報 告 さ れ て お り [89]、本 研 究 で も 消 化 管
上部で増殖した株や個体では臨床症状が強く発現したと考えられる。
本 研 究 で は ETEC を 接 種 し て い な い 陰 性 対 照 区 で も 下 痢 が 認 め ら れ た 。
本 研 究 を 実 施 し た 感 染 施 設 は 入 場 時 に は シ ャ ワ ー を 浴 び 、高 圧 蒸 気 滅 菌 に よ
り 滅 菌 さ れ た 衣 類 の 着 用 が 行 わ れ て い る 。ま た 、持 ち 込 む 資 材 も 燻 蒸 あ る い
は 浸 漬 に よ り 滅 菌 し て か ら 持 ち 込 ま れ て い る 。 更 に 、 入 気 口 に は HEPA フ
67
ィ ル タ ー が 設 置 さ れ 、各 室 は 陽 圧 に 保 た れ て い る 。そ の た め 外 部 か ら 病 原 体
が侵入したために陰性対照区で下痢が発生した可能性は低いと考えられる。
ま た 、本 研 究 で は 各 区 が 独 立 し た 部 屋 で 飼 育 さ れ て お り 、陰 性 対 照 区 の 給 餌
や 健 康 状 態 の 観 察 等 は 毎 回 一 番 最 初 に 実 施 さ れ て お り 、試 験 期 間 を 通 じ て 陰
性 対 照 区 か ら ETEC が 分 離 さ れ る こ と も な か っ た こ と か ら 、 ETEC が 誤 っ
て 感 染 し た 可 能 性 も 低 い と 考 え ら れ る 。そ の た め 、陰 性 対 照 区 で の 下 痢 の 発
生は感染症によるものではなく、生理的な原因によるものと考えられた。
【小括】
本 章 で は 、 CDCD 豚 を 用 い て 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 を 試 み 、 付 着 因 子 の
F4、エ ン テ ロ ト キ シ ン の LT お よ び ST を 保 有 す る ETEC の EC389Rif r 株 を
選 抜 し 、感 染 系 に 供 試 す る こ と と し た 。EC389Rif r 株 を 10 4 CFU/頭 経 口 接 種
す る と 、接 種 後 2 日 目 に は 全 頭 で 下 痢 を 発 現 し 、糞 便 中 へ の 安 定 し た 排 菌 が
認められた。また、抗菌剤代替物質を評価する際の指標として糞便中の
ETEC 数 で は な く 、 剖 検 時 の 小 腸 部 で の ETEC 数 の 方 が 活 用 で き る こ と が
示 唆 さ れ た 。 本 章 で は 14 日 間 の 観 察 期 間 を 設 け た が 、 試 験 用 代 用 乳 の 給 与
を 開 始 し た 11 日 目 以 降 に は ETEC 接 種 区 で も 糞 便 性 状 が 回 復 傾 向 に あ る こ
と か ら 、観 察 期 間 を 試 験 用 代 用 乳 の 給 与 期 間 で あ る 7 日 間 程 度 に 設 定 す る こ
とが望ましいと考えられた。
68
第五章
豚大腸菌感染系を用いた
乳酸添加飼料の評価
69
【緒言】
毒 素 原 性 大 腸 菌( ETEC)感 染 に よ る 豚 の 新 生 期 お よ び 離 乳 後 下 痢 症 の 対
策 に は 、 環 境 中 お よ び 豚 体 内 の 両 方 に お い て ETEC 数 を 減 少 さ せ る 必 要 が
あ る 。 環 境 中 の ETEC 数 を 減 少 さ せ る た め に は 、 オ ー ル ア ウ ト の 実 施 、 豚
舎 や 豚 房 の 洗 浄 、 消 毒 お よ び 乾 燥 が 有 効 と さ れ て い る が [90] 、 末 吉 は 特 に
ETEC が 乾 燥 に 弱 い こ と を 報 告 し て い る [ 67]。
一 方 、 豚 体 内 に お い て ETEC 数 の 増 加 を 抑 え る た め に は 、 ま ず 第 一 に 飼
養 環 境 の 改 善 が 挙 げ ら れ る [91]。飼 育 環 境 を 豚 の 適 温 に 調 整 す る こ と で 豚 大
腸 菌 症 に 改 善 が 認 め ら れ た 事 例 や 、隙 間 風 を 防 ぐ こ と も 有 効 と 報 告 さ れ て い
る [92]。し か し 、ETEC に よ る 下 痢 が 発 生 し て い る 農 場 で は 、こ れ ら 飼 養 環
境 の 改 善 に 併 せ て 抗 菌 剤 に よ る 対 策 が 不 可 欠 と な っ て い る [92]。し か し な が
ら 、 ETEC に も 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 が 認 め ら れ て お り [8]、 中 に は 複 数 の 抗 菌
剤 に 対 し て 耐 性 を 示 す 多 剤 耐 性 化 し た ETEC や [69]、我 が 国 で 特 に 慎 重 使 用
が 求 め ら れ て い る「 第 二 次 選 択 薬 」に 対 す る 耐 性 菌 の 出 現 も 報 告 さ れ て い る
[93]。そ の た め 、農 場 で は 過 去 に ETEC 対 策 で 効 果 を 示 し た 抗 菌 剤 を 使 用 し
て も 、ETEC が 耐 性 化 し た た め に 十 分 な 効 果 が 得 ら れ な い 例 も 出 て き て い る 。
また、消費者からは抗菌剤の使用量がより少ない畜産物が求められている。
そ の た め 、ETEC 対 策 に 有 効 な 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 探 索 が 続 け ら れ て お り 、そ
の開発も急務の課題として進められている。
ETEC 対 策 に 提 案 さ れ て い る 抗 菌 剤 代 替 物 質 等 に は 、 生 菌 剤 [ 75]、 有 機
酸 [ 1]、 ハ ー ブ 類 [ 31]、 鶏 卵 抗 体 [ 72、 94]、 飼 料 中 の 蛋 白 含 量 を 減 ら す
方 策 [ 95、 96]、 亜 鉛 [ 97] 等 が あ る 。 第 三 章 「 豚 サ ル モ ネ ラ ・ テ ィ フ ィ ム
リ ウ ム 感 染 系 を 用 い た 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 」で サ ル モ ネ ラ へ の 効 果 が 認 め ら
れ た 乳 酸 等 の 有 機 酸 の ETEC に 対 す る 効 果 に つ い て は 、 Tsiloyiannis ら が
野 外 の ETEC に よ る 離 乳 後 下 痢 症 発 症 農 場 に お い て 、 1.6%乳 酸 添 加 飼 料 と
併 せ て 1.0%プ ロ ピ オ ン 酸 、1.2%ギ 酸 、1.2%リ ン ゴ 酸 、1.5%ク エ ン 酸 お よ び
1.5%フ マ ル 酸 添 加 飼 料 の 6 種 類 の 有 機 酸 添 加 飼 料 の ETEC に よ る 下 痢 の 発
現 、 死 亡 率 お よ び 糞 便 か ら の ETEC の 検 出 率 と 増 体 重 や 飼 養 効 率 を 比 較 し
て い る [ 31]。 そ の 結 果 、 有 機 酸 添 加 飼 料 は 無 添 加 飼 料 よ り も 下 痢 の 発 現 、
70
事 故 率 お よ び 飼 養 効 率 等 で 改 善 が 認 め ら れ 、特 に 乳 酸 添 加 飼 料 に 改 善 が 認 め
られたと報告されている。
Tsiloyiannis ら の 報 告 で は 乳 酸 の 作 用 機 序 に つ い て の 詳 細 な 検 討 は 行 わ
れ な か っ た が 、Cole ら や Thomlinson ら は 有 機 酸 添 加 に よ り 消 化 管 内 の pH
が 低 下 す る こ と を 見 出 し 、pH が 低 下 し た 結 果 ETEC の 増 殖 が 抑 制 さ れ る と
考 察 し て い る [98、99 ]。一 方 、Li ら は 豚 を 用 い た ETEC 実 験 感 染 で 、ETEC
に 有 機 酸 添 加 飼 料 が 有 効 で あ る こ と を 報 告 し て い る が 、有 機 酸 添 加 飼 料 が 腸
管 の pH に は 影 響 を 与 え て い な い と 報 告 し て お り 、有 機 酸 添 加 飼 料 が 腸 内 菌
叢 に 影 響 を 与 え る こ と で ETEC に 効 果 を 示 す と 考 察 し て い る [ 100]。 こ の
よ う に 、有 機 酸 添 加 飼 料 の 作 用 機 序 の 詳 細 に つ い て 、特 に 腸 管 内 pH 低 下 の
影響については明確にされていない。
そ こ で 、本 試 験 で は 乳 酸 添 加 飼 料 の 2 段 階 に 設 定 し 、ETEC に 対 す る 乳 酸
の 濃 度 に よ る ETEC に 対 す る 効 果 に つ い て 、 ETEC 感 染 系 で 検 証 す る と 共
に 、 乳 酸 添 加 飼 料 に よ る 消 化 管 内 の pH 低 下 に つ い て も 検 証 し た 。
【材料と方法】
供試豚:2 頭の母豚から帝王切開で作出され、初乳を摂取していない
( caesrean-derived and colostrum-derived) CDCD 豚 を 18 頭 供 試 し た 。
供 試 豚 は 作 出 日 に 4 区( 2%LA 区 、1%LA 区 、陽 性 対 照 区 お よ び 陰 性 対 照 区 )
に区分けされ、各区別の部屋で単飼ケージで飼育された。
供 試 菌 株 : 前 章 で 選 抜 し た EC389Rif r 株 を 供 試 し た 。 前 章 で は EC389Rif r
を 1 頭 あ た り 4.3×10 4 CFU を 経 口 接 種 す る と 全 頭 で 下 痢 を 発 現 し 、 糞 便 中
か ら も 安 定 し て EC389Rif r が 検 出 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。
接 種 菌 株 の 調 整 は 前 章 と 同 様 に 実 施 し た 。 す な わ ち 、 EC389Rif r を SCD
寒 天 培 地 で 培 養 し 、 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を Minca ISO vitalex 寒 天 培 地
( BBL Microbiology Systems Cookeysville, Md) に 継 代 、 塗 抹 し 、 37℃ で
一 晩 培 養 し た 。 そ の 後 、 Minca ISO vitalex に 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を 掻 き
取 り 生 理 食 塩 水 に 懸 濁 し 、生 理 食 塩 水 に 菌 濃 度 を 調 整 し た 後 に 接 種 菌 液 と し
71
て供試した。
供 試 飼 料:陽 性 対 照 区 お よ び 陰 性 対 照 区 に は 機 能 性 飼 料 原 料 や 抗 菌 性 飼 料 添
加 物 を 含 ま な い 試 験 用 代 用 乳 ( SPF-LAC) を 供 試 し た 。 2%LA 区 で は 試 験
用 代 用 乳 に 乳 酸 を 2%添 加 し 、 1%LA 区 で は 試 験 用 代 用 乳 に 乳 酸 を 1% 添 加
し て 給 与 し た 。各 区 で は そ れ ぞ れ の 飼 料 を 作 出 当 日 か ら 試 験 終 了 ま で 給 与 し
た。
感 染 試 験 : 供 試 豚 を 4 区 に 分 け 、 2%LA 区 ( n=5)、 1%LA 区 ( n=5)、 陽 性
対 照 区 ( n=5) お よ び 陰 性 対 照 区 ( n=3) に そ れ ぞ れ の 飼 料 を 作 出 日 か ら 給
与 し た 。 4 日 齢 時 に 2%LA 区 、 1%LA 区 お よ び 陽 性 対 照 区 で は EC389Rif r
株 を 1 頭 あ た り 5.1×10 3 CFU 経 口 接 種 し た 。
観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便
の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。期 間 中 に 著 し い 脱 水 症 状 や 沈 鬱 が 認 め ら れ た 際 に は 、
ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 施 し た 。接 種 後 7 日 目 に は 耐 過 豚 全 頭
の剖検を実施し、腸管内容物を採取した。
糞便性状のスコア化:糞便性状は随時スコア化して記録された。すなわち、
正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 お よ び 水 様 便 を ス コ
ア 3 とした。
糞 便 中 お よ び 消 化 管 内 容 物 中 の E. coli 389Rif r 数 の 測 定:観 察 期 間 中 の 糞 便
の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 っ た 。 糞 便 は 採 取 後 す ぐ に EC389Rif r 数 の 測 定
を 行 っ た 。 菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段
階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL( RFDHL) に 塗 抹
し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 発 育 し た 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し た 。
各 種 臓 器 に お け る E. coli 389Rif r の 分 離:剖 検 時 に は 肺 、肝 臓 、腎 臓 、心 臓 、
脾 臓 お よ び 扁 桃 を 採 取 し た 。観 察 期 間 中 に 安 楽 殺 を 施 し た 豚 か ら は 併 せ て 血
液 も 採 取 し た 。採 取 し た 血 液 以 外 の 臓 器 は 表 面 を 火 炎 滅 菌 し た 後 に 中 央 を 切
72
断 し 、そ の 割 面 を RFDHL 寒 天 培 地 に 接 種 し 37℃ 、24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ
ー の 発 育 の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。 血 液 は 直 接 RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、
37℃ 、 24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ ー の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。
消 化 管 内 容 物 の pH の 測 定 : 剖 検 時 に は 胃 、十 二 指 腸 、空 腸 、回 腸 、盲 腸 お
よ び 結 腸 を 採 取 し た 。 採 取 後 の 各 部 位 の 内 容 物 は イ オ ン 交 換 水 で 10 倍 に 希
釈 し 、 希 釈 さ れ た 各 検 体 の pH を 測 定 し た 。
【結果】
臨床症状:陽性対照区では接種後 3 日目までに 5 頭中 3 頭が安楽殺され、
残 り の 2 頭 で も 4 日 目 以 降 で は 水 溶 性 下 痢 が 観 察 さ れ た( 図 21)。1%LA 区
で は 接 種 後 3 日 目 に 5 頭 中 1 頭 が 安 楽 殺 さ れ た 。 1%LA 区 の 残 り の 4 頭 で
も糞便性状の悪化は観察され、2 頭で水溶性下痢、1 頭で下痢、1 頭で軟便
が 観 察 さ れ た 。一 方 、2%LA 区 で は 全 頭 が 生 存 耐 過 し 、糞 便 性 状 の 悪 化 も 下
痢および軟便がそれぞれ 1 および 2 回観察されるにとどまった。
陰 性 対 照 区 で は 接 種 後 3 日 目 を ピ ー ク に 軟 便 が 観 察 さ れ た が 、試 験 期 間 を
通じて下痢は観察されなかった。
糞 便 中 の EC389Rif r 数 の 推 移:糞 便 中 の EC389Rif r 数 が ピ ー ク の 10 1 0 CFU/g
程 度 ま で 増 加 し た の は 、陽 性 対 照 区 で は 接 種 後 2 日 目 、1%LA 区 お よ び 2%LA
区 で は 接 種 後 3 日 目 と な っ た ( 図 22 )。 接 種 後 3 日 目 以 降 は 全 区 と も
10 1 0 CFU/g 程 度 の EC389Rif r が 試 験 終 了 ま で 継 続 し て 検 出 さ れ た 。
剖 検 時 腸 管 内 容 物 中 の EC389Rif r 数:胃 で は 陽 性 対 照 区 で は 4.1×10 6 CFU/g
の EC389Rif r 数 が 認 め ら れ 、2%LA 区 で は 全 頭 が 検 出 限 界 以 下 と な り 、両 者
の 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た( 図 23)。ま た 、胃 よ り 下 部 の 消 化 管 各 部 位 で も
2%LA 区 の 方 が 、1%LA 区 お よ び 陽 性 対 照 区 よ り 少 な い EC389Rif r 数 を 示 し
て お り 、 十 二 指 腸 で は 陽 性 対 照 区 と 2%LA 区 間 で 、 空 腸 で は 陽 性 対 照 区 と
2%LA 区 お よ び 1%LA 区 で そ れ ぞ れ 有 意 差 が 認 め ら れ た 。盲 腸 、結 腸 お よ び
73
直 腸 で の EC389Rif r 数 は 陽 性 対 照 区 お よ び 1%LA 区 で 2×10 9 CFU/g 程 度 を
示 し た 。一 方 、2%LA 区 で は 2×10 8 CFU/g 程 度 を 示 し 、陽 性 対 照 区 と 2%区
間で結腸および直腸内容物中で有意差が示された。
各 種 臓 器 に お け る EC389Rif r の 分 離 : 各 区 の 耐 過 豚 で は 殆 ど 全 て の 豚 の 臓
器 か ら EC389Rif r は 分 離 さ れ な か っ た (表 7)。 陽 性 対 照 区 の 耐 過 豚 で 肝 臓 、
腎 臓 お よ び 扁 桃 か ら そ れ ぞ れ 1 検 体 で EC389Rif r が 分 離 さ れ た が 、 そ れ ら
は全て同一豚に由来していた。
一 方 、 安 楽 殺 豚 で は 肺 、 腎 臓 、 心 臓 、 脾 臓 お よ び 扁 桃 か ら EC389Rif r が
分 離 さ れ 、 4 頭 中 2 頭 で は 血 液 か ら も EC389Rif r が 検 出 さ れ た 。
剖 検 時 消 化 管 内 容 物 の pH: 各 区 の pH に 差 は 認 め ら れ ず 、 各 区 の 平 均 pH
は 胃 で は 3.6 か ら 3.9 で 、十 二 指 腸 か ら 回 腸 に お け る 小 腸 で は 6.1 か ら 6.4、
盲 腸 か ら 直 腸 に お け る 大 腸 で は 6.6 か ら 7.5 を 示 し た ( 図 24)。 各 区 間 で 有
意差は認められなかった。
74
75
安楽殺
3
2
1
0
安楽殺
3
2
1
0
安楽殺
3
2
1
0
2
●●
接種後日数
3
●●●
●
●
●●●
4
●●●
●●
●●●
5
●●
●
●●
●●●
●
●●
●
●
●●●●
●
6
●●
●
●●
●●●
●●
●
●
●
●●●●●
EC389Rif r 株 接 種 時 の 糞 便 性 状 の 推 移
1
0
図 21
●●●
●
●
●
●●
●●
●●
●●
●
●
●●●
●
●
●
●
●●●●●
●●
●
●●●●
●
●
●●●●
●
●●
●●●●●
●●●●●
●●●
陰性対照
●●●●●
陽性対照
●●●●●
1% LA
安楽殺 2% LA
3
2
1
●●●●●
0
糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便 2 が下痢便および 3 が水様性下痢を示す。
各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。
糞便スコアと安楽殺豚の頭数
EC389Rifr数 (Log CFU/g)
12
10
8
6
a
4
2
b
0
0
1
2
3
4
5
接種後日数
図 22
EC389Rif r 接 種 時 の EC389Rif r 数 の 推 移
■ が 2%LA 区 、 ▲ が 1%LA 区 、 ● が 陽 性 対 照 区 お よ ◇ が 陰 性 対 照 区 を 示 す 。
a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り ( p <0.05)
76
10
a
a
(Log CFU/g)
8
EC389Rifr数
9
4
b
a
a
7
a
b
b
6
a
b
b
b
5
3
2
1
0
b
胃
十二指腸
図 23
空腸
回腸
盲腸
結腸
直腸
消 化 管 各 部 位 に お け る EC389Rif r 数
バ ー は 左 か ら 青 色 が 2%LA 区 、 赤 色 が 1%LA 区 お よ び 黒 色 が 陽 性 対 照 区 を そ
れぞれ示す。
a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り ( p <0.05)
77
78
肺
0/5
0/4
1/2
0/3
1/14
0/1
0/3
0/4
肝臓
0/5
0/4
1/2
0/3
1/14
0/1
2/3
2/4
腎臓
0/5
0/4
0/2
0/3
0/14
0/1
1/3
1/4
心臓
0/5
0/4
0/2
0/3
0/14
0/1
1/3
1/4
脾臓
0/5
0/4
1/2
0/3
1/14
1/1
1/3
2/4
扁桃
臓 器 、 組 織 お よ び 血 清 か ら の EC389Rif r 分 離 率
2%LA
0/5
1%LA
0/4
陽性対照 0/2
陰性対照 0/3
小計
0/14
安楽殺豚
1%LA
0/1
陽性対照 1/3
小計
1/4
耐過豚
表7
0/1
2/3
2/4
NT
NT
NT
NT
血清
8
7
pH
6
5
4
3
2
1
0
胃
十二指腸
図 24
空腸
回腸
盲腸
結腸
直腸
消 化 管 各 部 位 に お け る pH
バ ー は 左 か ら 青 色 が 2%LA 区 、赤 色 が 1%LA 区 、黒 色 が 陽 性 対 照 区 お よ び グ
レーが陰性対照区をそれぞれ示す。
79
【考察】
本 章 で は 、第 四 章「 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 」で 確 立 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 を
用 い て 、2%お よ び 1%乳 酸 添 加 飼 料 の 下 痢 症 緩 和 に 対 す る 評 価 を 行 っ た 。そ
の 結 果 、 1%乳 酸 添 加 飼 料 で は ETEC 感 染 に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 が 遅 延 し 、
2%乳 酸 添 加 飼 料 で は 糞 便 性 状 が 悪 化 せ ず 、 剖 検 時 の 消 化 管 各 部 位 の ETEC
数 も 減 少 し て い た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 2%乳 酸 添 加 飼 料 が ETEC 対 策 に 有
効 で あ る こ と が 示 唆 さ れ る と 共 に 、第 四 章 で 確 立 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 抗 菌
剤代替評価への有用性が示された。
本 試 験 は 第 四 章 で 確 立 し た 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 実 施 し た が 、陽 性 対 照 区
で は 第 四 章 と 同 様 に ETEC 接 種 翌 日 に は 糞 便 性 状 の 悪 化 と 、 糞 便 中 へ の
ETEC の 排 泄 が 認 め ら れ た 。さ ら に 、接 種 後 2 日 目 に は 糞 便 中 へ の 排 菌 数 が
ほ ぼ ピ ー ク に 到 達 し た が 、こ れ は 感 染 後 数 日 で 糞 便 中 へ の 排 泄 が ほ ぼ ピ ー ク
に 達 し た 第 四 章 の 陽 性 対 照 区 と 同 様 で あ る 。ま た 、剖 検 時 の 消 化 管 各 部 位 の
ETEC 数 は 盲 腸 、結 腸 お よ び 直 腸 で は 第 四 章 と 同 様 に ほ ぼ 一 定 の 菌 数 を 示 し
て い た が 回 腸 よ り 上 部 の 消 化 管 で は 、第 四 章 の 1.接 種 菌 株 の 検 討 と 同 様 に
十 二 指 腸 、 空 腸 お よ び 回 腸 で も 比 較 的 高 い ETEC 数 が 測 定 さ れ た 。 一 方 、
第 四 章 の 2.接 種 菌 数 の 検 討 で は 盲 腸 よ り 上 部 の 消 化 管 で は ETEC 数 が 減 少
し て い た 。こ れ は 第 四 章 の 2.接 種 菌 数 の 検 討 で は 剖 検 時 に 臨 床 症 状 が 回 復
していたためと考えられる。
本 試 験 で は 乳 酸 の 添 加 濃 度 を 2%と 1%の 2 段 階 に 設 定 し 、 乳 酸 の 添 加 濃
度 に つ い て も 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 乳 酸 1%添 加 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 が
遅 延 し 、 乳 酸 2%添 加 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認 め ら れ な か っ た 。 こ の こ と か
ら 、乳 酸 添 加 濃 度 が 高 い 方 が 糞 便 性 状 の 悪 化 を 抑 制 す る 効 果 が 強 い こ と が 示
唆 さ れ た 。 ま た 、 消 化 管 各 部 位 の 菌 数 も 乳 酸 2%添 加 の 方 が 乳 酸 1%添 加 よ
り も 少 な い 菌 数 で 推 移 し 、特 に 上 部 消 化 管 で は 大 幅 な 減 少 が 認 め ら れ 、消 化
管 で の ETEC の 増 殖 を 抑 制 す る 効 果 も 乳 酸 添 加 濃 度 が 高 い 方 が 強 い こ と が
示 唆 さ れ た 。 ETEC 感 染 の 発 症 時 に は 上 部 消 化 管 で ETEC が 増 殖 し て い る
こ と が 知 ら れ て お り [89]、 乳 酸 2%添 加 に は 消 化 管 で の ETEC の 増 殖 を 抑 制
したために糞便性状が悪化しなかったとものと考えられる。
80
一 方 、 糞 便 中 に 排 泄 さ れ る ETEC 数 は 乳 酸 2%添 加 と 乳 酸 1%添 加 で 差 は
認 め ら れ な か っ た 。 こ れ は 剖 検 時 に 直 腸 で 乳 酸 2%添 加 と 1%添 加 で ほ ぼ 同
程度の菌数を示していたことと一致する。
乳 酸 の 殺 菌 作 用 は 周 囲 の pH が 4.0 で は 発 揮 さ れ る が 、 4.4 で は 発 揮 さ れ
な い と 報 告 さ れ て お り [60]、 本 研 究 に お け る 剖 検 時 の pH か ら 、 胃 で は 殺 菌
作 用 が 期 待 で き る が 、 十 二 指 腸 よ り 下 部 の 消 化 管 で は pH6.0 以 上 で あ る た
め 、 乳 酸 の 殺 菌 作 用 は 胃 で 発 揮 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 Li ら も 胃 、 十 二
指 腸 、 回 腸 の pH を そ れ ぞ れ 3.27、 5.75、 6.94 と 報 告 し て い る [100]。 今 回
の 研 究 で は 、 胃 お よ び 腸 管 の pH に 乳 酸 の 影 響 は 認 め ら れ な か っ た 。 2%乳
酸 添 加 飼 料 が ETEC に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 を 軽 減 で き た こ と の 理 由 の 一 つ
と し て 、乳 酸 の 添 加 濃 度 が 高 い 2%の 方 が 胃 で 殺 菌 さ れ る ETEC が 多 か っ た
ためと考えられる。
一 方 、 第 三 章 で 実 施 し た Salmonella Typhimurium 感 染 系 を 用 い た 乳 酸
添 加 飼 料 の 評 価 で は 、 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 を
著 し く 低 下 さ せ る こ と が わ か っ た が 、 本 章 で も 2%乳 酸 添 加 飼 料 区 で は 盲 腸
以 下 の 大 腸 で は ETEC 数 は 減 少 さ せ た が 、S. Typhimuirum で 観 察 さ れ た 程
の 著 し い ETEC 数 の 低 下 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ の 異 な る 結 果 は 、 病 原 体
や 供 試 豚 の 影 響 と 考 え ら れ る が 、詳 細 に つ い て は 今 後 の 更 な る 検 討 が 必 要 で
ある。
【小括】
第 四 章 で 確 立 さ れ た 、豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 を 実 施
し た 。そ の 結 果 、2%添 加 飼 料 を 給 与 し た 群 で は 、糞 便 中 へ 排 泄 さ れ る ETEC
数 は 低 下 し な か っ た が 糞 便 性 状 の 悪 化 が 抑 制 さ れ 、接 種 後 7 日 目 に 実 施 し た
剖 検 で は 2%乳 酸 添 加 飼 料 し た 区 の 小 腸 上 部 で の ETEC 数 が 低 下 し て い た 。
こ れ ら の こ と か ら 乳 酸 を 2%添 加 す る こ と で 豚 大 腸 菌 症 の 発 現 を 抑 制 す る こ
と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、本 研 究 で 確 立 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 が 、抗 菌 剤 代 替 物
の評価に応用できることが示唆された。
81
第六章
総括
82
本研究では抗菌剤に依存しないサルモネラおよび大腸菌感染症対策の確
立 に 不 可 欠 な S . Typhimurium( ST) お よ び 毒 素 原 性 大 腸 菌 ( ETEC) 感 染
系を豚において確立し、その有用性を乳酸添加飼料で検証した。その結果、
乳 酸 添 加 飼 料 が 豚 ST 感 染 系 お よ び 豚 ETEC 感 染 系 に お い て そ の 抑 制 効 果 が
示 さ れ た 。こ の こ と か ら 、本 研 究 で 確 立 し た 感 染 系 の 有 用 性 が 検 証 で き 、ま
た、乳酸添加飼料が抗菌剤代替物質として活用できることが示唆された。
具 体 的 に は 第 二 章 で は 、 豚 を 用 い た ST 感 染 系 の 確 立 を 試 み 、 供 試 し た
ST116Rif r 株 を 10 9 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 著 し い 脱 水 症 状 を
示 し 、10 7 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 軟 便 を 、ま た 10 5 CFU/頭 程 度
感 染 さ せ る と 軟 便 程 度 の 糞 便 性 状 の 悪 化 を 示 す こ と が 示 唆 さ れ た 。一 方 、感
染 菌 数 が 10 4 CFU/頭 で も 糞 便 中 か ら は 安 定 し て ST116Rif r が 検 出 さ れ た 。本
試 験 で は 糞 便 性 状 に よ り 糞 便 に 含 ま れ る ST116Rif r 数 が 異 な る こ と も 示 唆
さ れ 、今 後 の 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 試 験 で は 臨 床 症 状 の 観 察 と 糞 便 中 の 菌 数
を 測 定 す る こ と で 、臨 床 症 状 を 抑 え る 効 果 と 、豚 群 内 で の 感 染 拡 大 を 防 止 で
きるかを考察できる結果を得られると考えられた。
第 三 章 で は 、 第 二 章 で 確 立 し た 豚 ST 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 2.8%添 加 飼 料
の 評 価 を 行 っ た 。そ の 結 果 、臨 床 症 状 を 伴 う サ ル モ ネ ラ 症 を 再 現 し た 実 験 感
染 系 で は 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 性 状 の 悪 化 を 抑 制 し 、 糞 便 中 へ の サ ル モ
ネ ラ 排 菌 数 も 減 少 さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。ま た 、不 顕 性 の サ ル モ ネ ラ
感染を再現した実験感染系でも糞便中へのサルモネラ排菌数を減少させる
こ と が 明 ら か と な っ た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、豚 ST 感 染 系 が 確 立 さ れ 、抗 菌
剤代替物質の評価に応用できることが示唆された。
第 四 章 で は 、 安 定 し た ETEC 感 染 系 を 確 立 す る た め に 、 CDCD 豚 を 用 い
て 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 を 試 み 、EC389Rif r を 1 頭 あ た り 10 4 CFU 経 口 接 種
す る こ と で 、全 頭 で 下 痢 が 発 現 し 、糞 便 中 か ら も 安 定 し た 排 菌 が 認 め ら れ た 。
し か し 、 ETEC 非 接 種 の 対 照 群 で も 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認 め ら れ た こ と 、 14
日 間 の 観 察 期 間 で は ETEC 接 種 の 陽 性 対 照 区 で も 糞 便 性 状 が 回 復 傾 向 に あ
る こ と か ら 、観 察 期 間 を 試 験 用 代 用 乳 の 給 与 期 間 で あ る 7 日 間 程 度 に 設 定 す
ることが望ましいと考えられた。
第 五 章 で は 、第 四 章 で 確 立 さ れ た 、豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 添 加 飼 料
83
の 評 価 を 実 施 し た 。 そ の 結 果 、 2.0%乳 酸 添 加 飼 料 を 給 与 し た 区 で は 、 糞 便
中 へ 排 泄 さ れ る ETEC 数 は 低 下 し な か っ た が 糞 便 性 状 の 悪 化 が 抑 制 さ れ 、
接 種 後 7 日 目 に 実 施 し た 剖 検 で は 2%乳 酸 添 加 飼 料 し た 区 の 小 腸 上 部 で の
ETEC 数 が 低 下 し て い た 。 こ れ ら の こ と か ら 乳 酸 を 2%添 加 す る こ と で 豚 大
腸 菌 症 の 発 現 を 抑 制 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、本 研 究 で 確 立 し た 豚 大 腸
菌感染系が、抗菌剤代替物の評価に応用できることが示唆された。
2013 年 10 月 か ら 我 が 国 で も 大 流 行 し 、ア ジ ア 各 国 お よ び 米 国 で も 同 様 に
猛 威 を 振 る っ て い る て い る 豚 流 行 性 下 痢 は 、原 因 病 原 体 が ウ イ ル ス と 本 研 究
と は 異 な る も の の 、的 確 な 生 物 学 的 製 剤 が な く 、ワ ク チ ン 製 造 も 追 い つ か な
い 状 況 下 で 、 そ の 発 生 件 数 も 急 激 に 増 加 し 蔓 延 し 続 け て い る [101]。 こ の 様
な流行性疾病の予防には、日頃からの家畜の健全育成が重要なカギとなる。
本 研 究 に よ っ て 得 ら れ た 知 見 は 、薬 剤 に 依 存 し な い 健 全 畜 産 の 技 術 向 上 に つ
な が り 、安 全・安 心 な 畜 産 食 品 の 持 続 的 供 給 か ら ヒ ト の 健 康 生 活 の 向 上 に 貢
献するものと期待される。
84
論文目録
主論文
Tsuyoshi Tanaka*, Yasuo Imai, Naosuke Kumagae, Takashi Sasaki,
Narutoshi Ochiai, Katsuyoshi Uruno, Haruki Kitazawa, Tadao Saito and
Shizuo Sato (2014) Quantitative Microbiological Evaluation of Salmonella
Typhimurium shed in Diarrhea, Loose, and Normal Stools of Infected Pigs.
Open Journal of Veterinary Medicine 4(4), 58-66
(査 読 有 )
Tsuyoshi Tanaka*, Yasuo Imai, Naosuke Kumagae, Takashi Sasaki,
Narutoshi Ochiai, Haruki Kitazawa and Shizuo Sato
Establishment of ETEC experimental infection model of CDCD pigs and
evaluate the effect of lactic acid supplemented feed.
Open Journal of Animal Science (投 稿 予 定 )
その他の公表論文
田 中 剛 志 *,
北澤春樹
(2013)
冬場の呼吸器病に打ち勝つ
月 号 :17-20 (査 読 無 )
85
養豚の友
11
参考文献
1 . Aarestrup, Frank Møller. (1999). Association between the consumption of
antimicrobial agents in animal husbandry and the occurrence of resistant bacteria among
food animals. International journal of antimicrobial agents 12.4. 279-285.
2.Bywater, R. J. (2004). Veterinary use of antimicrobials and emergence of resistance in
zoonotic and sentinel bacteria in the EU. Journal of Veterinary medicine, Series B,
51(8‐ 9), 361-363.
3.Hsueh, P. R., Teng, L. J., Tseng, S. P., Chang, C. F., Wan, J. H., Yan, J. J.,Lee, C. M.,
Chuang, Y. C., Huang, W. K., Yang, D., Shyr, J. M., Yu, K. W., Wang, L. S., Lu, J. J.,
Ko, W. C., Wu, J. J., Chang, F. Y., Lau, Y. L., Liu, Y. C., Liu, C. Y. Ho, S. W. and Luh,
K.
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Ciprofloxacin-resistant
Salmonella
enterica
Typhimurium
and
Choleraesuis from pigs to humans, Taiwan. Emerging infectious diseases, 10(1), 60-68.
4. 最 新 デ ー タ
動物用抗菌剤マニュアル
第 2 版
動物用抗菌剤研究会編
interzoo 185-199 ル 動 物 用 抗 菌 剤 を め ぐ る 国 際 動 向 ”
5.川 嶌 健 司 (2008) ぐ デ ン マ ー ク で の 抗 菌 性 飼 料 添 加 物 禁 止 後 の 現 状 と 取 り 組 み ”
All About Swine, 32. 22-25
6. DANMAP
(2013)
““ 013)2-25Swine,止 後 の 現 状 と 取 り 組 み ”
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謝辞
本稿を終えるにあたり、終始懇切なるご指導、ご鞭撻を賜り、かつ本研究の
発表の機会を賜りました東北大学大学院
動物資源化学分野
准教授
農学研究科
生物産業創成科学専攻
北澤春樹先生、並びにご助言を賜りました同分野
教授の齋藤忠夫先生に謹んで感謝の意を表します。
本研究を遂行するにあたり、副査として細部にわたって数々の御助言、ご指
導を賜りました東北大学大学院農学研究科
健康学講座
栄養学分野教授
応用生命科学専攻
駒井
生物産業創成科学専攻
食品機能
三千夫先生、東北大学大学院農学研究科
動物機能科学講座
機能形態学分野
教授
麻生久先生に
深く感謝致します。
また、本研究の機会を与えていただきました全国農業協同組合連合会
衛生研究所長
落合成年
ならびに同研究所元所長
様、ならびに同研究所
前所長
家畜
佐々木隆志博士、
柴田勲博士に深く感謝いたします。
本研究を遂行するにあたり、多大なご協力をいただきました、全国農業協同
組合連合会
家畜衛生研究所
佐藤静夫博士、今井康雄博士並びに同研究所の
皆様、全農ビジネスサポート筑波支店佐倉営業所の皆様に感謝いたします。
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