組織および遺伝子選択的活性を持つ 新規ビタミンD受容体モジュレーター (SVDRM)の開発 日本大学 医学部 医学科 教授 槇島誠 兼任講師 山田幸子 (東京医科歯科大学名誉教授) 立教大学 理学部 化学科 教授 常磐広明 1 活性型ビタミンD3および合成アナログの臨床応用 *Ca/P代謝調節 OH 腎性骨形成異常症 二次性副甲状腺機能亢進症 くる病 骨粗しょう症 HO OH 1,25(OH)2D3 活性型ビタミンD3 *細胞増殖抑制・分化誘導 乾癬 抗癌 *免疫調節: 自己免疫疾患 *心臓血管系の機能維持 *毛根の発達 2 市販の主な活性型ビタミンD製剤 OH 腎性骨形成異常症 二次性副甲状腺機能亢進症 くる病、骨軟化症、 骨粗しょう症 乾癬 HO HO OH alphacalcidol 乾癬 外用 OH OH calcipotriol 骨粗しょう症 OH O OH HO OH O 二次性副甲状腺機能亢進症 乾癬 HO OH oxacalcitriol HO OH 乾癬 eldecalcitol OH tacalcitol 2011年承認 3 ビタミンD受容体(VDR)は核内受容体の一つ 他の核内受容体と同様の作用機序で働く 核内受容体を標的とする薬剤 女性ホルモン受容体(ER): タモキシフェン、ラロキシフェン (パーシャルアゴニスト) 黄体ホルモン受容体(PR): ミフェプリストン(アンタゴニスト) 男性ホルモン受容体(AR): ビカルタミド(アンタゴニスト) 糖質コルチコイド受容体(GR):デキサメサゾン(アゴニスト) 硬質コルチコイド受容体(MR):スピロノラクトン、エプレレノン (アンタゴニスト) ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR): PPARa:フィブラート系薬剤(アゴニスト) PPARg:ピオグリダゾン、ロシグリタゾン(アゴニスト) 4 VD ビタミンDの作用機序 DBP VD 細胞質 VD VDR プロテイン 核 VD VDR RXR VD RXR mRNA VDR VDRE RNA Pol II 遺伝子 活性発現 5 選択的エストロゲン受容体モデュレーター (SERM;パーシャルアゴニスト) N OH N O O O OH HO HO エストラジオール (天然アゴニストE2) HO ヒドロキシタモキシフェン (OHT) OHT 乳房 S ラロキシフェン (RAL) RAL アンタゴニスト アンタゴニスト 子宮 アゴニスト アンタゴニスト 心臓血管、骨 アゴニスト アゴニスト 6 選択的女性ホルモン受容体モジュレーター (SERM) H12 H12 不活性 ヘリックス(H)12 活性化機能2:AF-2 ER/OHT(パーシャルアゴニスト) 活性 ER/E2(天然アゴニスト) 7 選択的女性ホルモン受容体モジュレーター (SERM) H12 H12 不活性 ヘリックス(H)12 活性化機能2:AF-2 ER/OHT(パーシャルアゴニスト) 活性 ER/E2(天然アゴニスト) 8 選択的女性ホルモン受容体モジュレーター (SERM) H12 H12 転写活性化 転写阻害 不活性 ER/OHT(パーシャルアゴニスト) 活性 ER/E2(天然アゴニスト) 9 選択的女性ホルモン受容体モジュレーター (SERM) Cell conditions H12 H12 パーシャル アゴニスト OHT, RAL 転写阻害 不活性 ER/OHT(パーシャルアゴニスト) 転写活性化 活性 ER/E2(天然アゴニスト) 10 ビタミンDのパーシャルアゴニスト: 選択的VDRモデュレーター (SVDRM) を開発する 11 側鎖末端にアダマンタン環と三重結合をもつ 19-ノル-2-メチレンビタミンD誘導体 アダマンタン環、 大きく堅固 ヘリックス12とぶつかる 堅固 25 n HO OH ADTK1 R OH ADTK2 ADTK3 ADTK4 ADKM1 n = 0 or 1 ADKM2 ADKM3 ADKM4 安定・合成容易 ADKM5 19-ノル-2-メチレン構造 (ラットで骨形成作用がある) ADKM6 n 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 R 25 H S H R H R H S Me R Me S Et R Et S Bu R Bu S 12 側鎖にアダマンタン環と共役diyne構造を持つ 19-ノル-2-メチレンビタミンD誘導体 アダマンタン環 大きく堅固 ヘリックス12と ぶつかる 堅固な共役diyne 13 VDR 結合性 ADTK化合物 ADTK1 ADTK2 ADTK3 ADTK4 IC50 nM 0.5 12 13 12 % of 1,25(OH)2D3 70-90 4 3.5 4 ADKM 化合物 IC50 nM % of 1,25(OH)2D3 ADKM1 ADKM2 ADKM3 ADKM4 ADKM5 ADKM6 8.5 0.5 9.6 1.3 22.6 1.5 6 70 6 27 2 23 ADYW化合物 ADYW1 ADYW2 ADYW3 ADYW4 IC50 nM 12.5 5 38 36 % of 1,25(OH)2D3 3.5 7 1 1 14 VDR中のADTK1と1,25(OH)2D3 His301 Ser274 2.9 Å 2.9 Å 2.7 Å 2.7 Å His393 3.9 Å 3.8 Å 2.7 Å 2.8 Å Tyr143 3.8 Å Arg270 Se233 ヘリックス12残基 ADTK1: シアン 1,25(OH)2D3: グレー 15 VDR中のADTK1,3,4と1,25(OH)2D3 アダマンタン環 ADTK1 シアン,3 マジェンタ,4 黄色 1,25(OH)2D3 グレー ヘリックス12 16 Ser274 His301 His393 Tyr143 Phe418 Arg270 HO HO Ser233 Val414 アダマンタン環 Phe418(448)間 距離 4.05 Å 4.22 Å (0.17 Å) HO HO OH OH Diyne 1,25D ADYW2 17 VDR中の Diyne-1,25D Ser306 His333 His423 Tyr175 6.774 Phe448 Arg302 Val444 Ser265 Ser274 His301 ADYW2 His393 ジイン構造 0.07 Å 短い Tyr143 6.707 Phe418 Arg270 Val414 Ser233 18 Cyp24A1遺伝子発現の組織選択性:ADTK HEK293 SW480 MG63 THP1 U937 腎臓 小腸 骨 骨髄 骨髄 HaCaT 皮膚 A549 肺 1,25D3 100 100 100 100 100 100 100 ADTK1 100 50 50 70 90 30 36 腎臓 ADTK2 15 32 5 1 1 22 21 小腸 ADTK3 45 19 51 27 53 13 24 ADTK4 30 14 43 18 49 11 17 骨髄・ 骨 最高活性 選択性 19 組織選択的Cyp24A1遺伝子発現 ADKM HEK293 腎臓 SW480 小腸 MG63 骨 THP1 骨髄 U937 骨髄 HaCaT 皮膚 A549 肺 1,25D3 100 100 100 100 100 100 100 ADKM1 35 17 28 46 51 49 64 ADKM2 33 44 63 90 78 85 109 ADKM3 23 26 36 52 54 53 95 ADKM4 93 124 73 98 86 92 136 ADKM5 10 14 14 22 22 26 73 ADKM6 61 72 53 82 78 72 84 選択性 最高 20 Cyp24A1遺伝子発現の組織選択性:ADYW HEK293 SW480 MG63 THP1 U937 腎臓 小腸 骨 骨髄 骨髄 HaCaT 皮膚 A549 肺 1,25D3 100 100 100 100 100 100 100 ADYW1 <1 4 <1 <1 <1 <1 19 ADYW2 15 35 15 23 21 19 55 ADYW3 <1 1 <1 <1 <1 <1 <1 ADYW4 <1 3 2 2 2 1 7 ADYW2: 肺細胞選択性 最高活性 21 In vivo 実験: マウス血中Ca上昇解析 ADTK1,2及び1,25(OH)2D3 体重 血中Ca濃度 16 130 CNT 120 12 1,25D3 ADTK1 10 体重 (%) Ca 濃度 (mg/dl) 14 110 8 CNT 6 ADTK2 100 1,25D3 4 ADTK1 2 90 ADTK2 0 80 Day0 Day2 Day4 Day0 Day1 Day2 Day3 Day4 (薬剤12.5 nmol/kg, n=3連日腹腔内投与; コントロール、等量のエタノールのPBS溶液を同様に投与) 22 結論 1.VDR錯体のX線結晶構造解析から *全ての化合物でアダマンタン環は活性発現に 重要なH12(活性化機能2,AF2)と接触している。 *しかし、結晶構造ではアダマンタン環はH12 と接触しているが、溶液中ではH12を押し出し、 不活性型との平衡状態にある可能性が高い。 つまり、化合物の多くはパーシャルアゴニスト 活性を示す。 23 2.遺伝子発現実験の結果から *それぞれの化合物はそれぞれ組織選択 性を示している。 *そこで、例えば小腸と肺に強い活性を 持つADKM4について、自己免疫疾患に対す る効果が期待される。 *ADYW2は肺細胞の対する効果が高いの で、肺癌の予防効果に期待したい。 24 3.マウスを用いたin vivoの血中Ca上昇解 析の結果から *ADTK1は遺伝子発現作用を反映し、血中Ca 上昇作用は1,25(OH)2D3より弱く、体重減少 作用は認められなかった。 *骨粗しょう症を念頭においた、骨形成作用 を検討したい。 25 従来のVD製剤と 今回のVD化合物の違い *従来の活性型ビタミンDアナログは体内動態 が、各製剤の作用の選択性を決めている。例え ば、プロドラッグ性(alphacalcidol)、寿命が短い (calcipotriol; oxacalcitriol)、長い(eldecalcitol) など。 *今回の薬は受容体(VDR)との結合性が作用 選択性を決めている。すなわち作用発現に重要 なヘリックス12のコンフォメーションに大きな影響 を与え、これが組織選択性を出していると考え 26 実用化に向けた課題 in vitroにおいて疾患特異性(皮膚疾患、骨粗鬆症、癌 など)、副作用の軽減効果が期待されるデータが得られ ているが,具体的な疾患との関係を示すin vivoデータの 取得する必要がある。 27 企業への期待 1.共同研究 2.試料提供 3.A-STEP顕在化タイプ,ハイリスク挑戦タイプ等 への共同申請 28 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :パーシャルアゴニスト活性を持つ 新規ビタミンD受容体モジュレーター • 出願番号 :特願2013-502403, EP12752901.4, US 14/002502 • 出願人 :学校法人日本大学, 学校法人立教学院 • 発明者 :槇島 誠,山田 幸子, アントニオ モウリーニョ,常盤 広明, 工藤 健,渡會 友祐,前川 和樹 29 お問い合わせ先 日本大学産官学連携知財センター(NUBIC) コーディネーター 渡辺 麻裕 TEL 03-5275-8139 FAX 03-5275-8398 e-mail [email protected] 30
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