ビル用マルチエアコン『VRV X』シリーズを新発売

ビル用マルチエアコン
2014 年 10 月 21 日
「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)
」を目指し、年間運転効率を大幅に向上
ビル用マルチエアコン『VRV X』シリーズを新発売
ダイキン工業株式会社は、建物全体のエネルギー消費を正味ゼロにするネット・ゼロ・エネルギー・ビ
ル(以下、ZEB)※1 の実現に向けて、年間運転効率を大幅に向上したビル用マルチエアコン『VRV X』シ
リーズ(22.4kW~118.0kW 全 18 機種)を 2015 年 3 月 2 日より発売します。
本商品は、低負荷時の運転効率を大幅に向上した新型スクロール圧縮機と、負荷に合わせて全自動で冷
媒温度をコントロールする新しい冷媒制御で、年間の消費電力量を大幅に削減しました。さらに外気温
50℃という厳しい環境での冷房運転が可能になり、また配管接続の自由度も高めることで、多様な設置状
況に対応します。
【商品の特長】
1. ZEB 化を目指すキー技術を搭載し、従来比年間 20%省エネ
実際に空調機の年間使用状況を調べた結果、真夏や真冬の負荷が非常に高いなかでの運転時間は短く、
運転時間の約 90%が、機器の定格能力の 50%以下で運転されていることがわかりました※2。このため、負
荷が少ないときにどれだけ効率よく運転するかが、ZEB 実現に向けてのキーポイントとなります。
本商品では、運転効率を大幅に向上した「新型スクロール圧縮機」と、必要な負荷をリアルタイムに把
握して冷やしすぎや暖めすぎを低減する「全自動省エネ冷媒制御」※3 の採用により、低負荷時の大幅な高
効率化を実現しました。さらに待機電力を従来比 15%削減※3※4 し、年間のトータル消費電力量を従来比
約 20%※4 削減します。
2.50℃の外気温度でも運転を継続する「タフネス冷房」
新形状プロペラファンの搭載により、室外機内の風通りを良くすることで熱交換効率を向上し、高温時
での能力低下を抑えます。また、外気温度にかかわらず安定して電気部品を冷却できる独自の冷媒冷却回
路を搭載し、冷房運転可能な外気温の上限を従来機の 43℃から 50℃まで拡大しました。ヒートアイラン
ド化している都市圏や熱のこもりやすい狭いスペースなどの過酷な設置状況でも、安定した連続運転を実
現します。
3.配管接続の自由度と室内機接続容量を拡大し、設計自由度を向上
配管接続において、室外機を出て 1 つ目の分岐から最も遠い室内機までの距離を、従来の 40m から 90m
まで拡大し、1 フロアの面積が広い建物でも 1 系統での展開が可能になりました。さらに、室外機に接続
できる室内機の容量を従来の最大 130%から 200%※5 まで拡大します。大規模な建物へのビル用マルチエ
アコン設置が増えているなか、配管や室内機接続の自由度を拡大することで、より多様な設計ニーズにお
応えします。
【価格・発売時期】
■VRV Xシリーズ
※天井埋込カセット(センシングフロー)型室内ユニット 100%接続時。16 馬力以上は下記同等機種の組合せとなります。
相当馬力
(HP)
室外ユニット
機種名
冷房能力
(kW)
暖房能力
(kW)
APF
8
RXUP224D
22.4
25.0
5.7
10
RXUP280D
28.0
31.5
5.5
12
RXUP335D
33.5
37.5
5.4
14
RXUP400D
40.0
45.0
5.2
外形寸法
(高さ×幅×奥行)
単位:mm
希望小売
価格
発売予定
時期
1525×1240×765
オープン
2015 年
3月2日
【開発の背景】
近年、業務用途のエネルギー消費量が増加傾向にあり、省エネ対策の強化が叫ばれるなか、ZEB への動
きは、海外先進国と同様に日本でも加速しています。2020 年までには新築公共建築物等にて、2030 年ま
でには新築建築物の平均にて ZEB を実現するロードマップが公表※6 されており、ビル設備において消費
エネルギーの約 5 割※7 を占める空調機の大幅なエネルギー消費量削減が求められています。
当社は 1982 年に日本で始めてビル用マルチエアコンを発売以降、
機器の省エネ性を向上するとともに、
機器に内蔵した各種センサー情報を元に運転実態を把握する遠隔保守サービス(エアネットサービスシス
テム)を開始し、運転実態から分かる省エネルギー化の推進やお客様の困り事の解決を行ってきました。
ここで得た膨大な運転データから、ZEB 実現に向けて年間運転効率を飛躍的に向上させる技術開発を行い、
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにおいて技術の有効性を実
証※3※8 しました。これにより、空調機における大幅なエネルギー消費量削減を実現します。
※1 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB):建物の躯体や設備の省エネ性能の向上、再生可能エネルギーの活用などによって、建物
全体の一次エネルギー(石炭・石油・天然ガスなどを利用したエネルギー)消費量が正味(ネット)でゼロ、または概ねゼロとなる
エネルギー自立型建築物のこと。
※2 当社調べ。事務所ビルにおいて。
※3 本製品は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「次世代型ヒートポンプシステム研究開発」
プロジェクトの成果を一部活用しています。
※4 用途:事務所ビルでの当社試算。VRV X シリーズ 28.0kW(10 馬力相当)と、当社従来機 Ve-upⅣシリーズ同等機種との比較。
設置条件、運転条件により効果は異なります。
※5 接続する室内機の合計容量において。同時に発生する負荷はシステム相当馬力以下として設計が必要。
※6 出展:国交省資料「住宅・建築物の低炭素化に向けた現状と今後の可能性」より。
※7 出典:資源エネルギー庁推計。事務所ビルにおいて。
※8 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業。
「省エネルギー革新技術開発事業」において検証。
【特長の詳細】
1.ZEB 化を目指すキー技術を搭載し、年間運転効率を大幅に向上
一般のビル用マルチエアコンは、負荷率 50%未満の低負荷領域において、断続運転などによるエネル
ギー消費効率(COP)の低下が見られます。一方実際の建物に設置されるビル用マルチエアコンは、ピ
ーク負荷をベースに選定されますが、その発生頻度は低く、負荷率 50%以下の低負荷領域での運転が
90%程度を占めています※2。本商品では特に低負荷運転での高効率化に着目しました。
■定格能力に対する負荷率と運転時間の関係(事務所ビル:当社調べ)
1)圧縮漏れ・ロスを極小化した「新型スクロール圧縮機」
ビル用マルチ等の大容量機で採用されるスクロール圧縮機では、回転時に圧縮する容量が固定である事
から、低負荷・低回転時の過圧縮や、圧縮漏れのロスが発生していました。本商品で搭載する新型圧縮機
では、低回転時の圧縮漏れロスを極小化する「背圧コントロール機構」を採用しました。スクロールの弱
みを払拭するとともに、定格能力時においても効率を向上する「中間インジェクション回路」も新たに採
用し、年間を通じた運転効率の向上を実現しました。
年間を通じて、運転効率を向上
定格効率向上
■圧縮機効率イメージ
■中間インジェクション回路
圧縮過程の途中にガス冷媒を導入し、
冷媒密度を上げ、循環量をアップ
低負荷時の効率向上
■背圧コントロール機構
運転条件に応じて押付け力を最適化。可動スクロールの挙動を安定し漏れ・ロスを軽減
中間圧調整ポート
可動スクロール背圧を最適な圧力にコントロール
2)必要負荷をリアルタイムに把握し、圧縮機回転数を抑える「全自動省エネ冷媒制御」
室外機に多数の室内機が接続されるビル用マルチにおいては、能力不足を防止するため、冷媒温度を固
定して室内機で冷媒流量を調整し、室内の温度を調整していました。課題として低負荷時に能力過多が起
こり、圧縮機の断続運転によるロスが発生していました。新たに開発した「全自動省エネ冷媒制御」※3
では各室内機で必要な能力をリアルタイムに把握し、システムに最適な冷媒温度へ変更する事で圧縮機回
転数を抑え、効率向上を可能とします。さらに、最適な冷媒温度にすることで吹出し温度の冷やしすぎ・
暖めすぎを防いで室温変化の少ない空調を実現し、快適性を損ねることなく省エネ性を向上します。
■「全自動省エネ冷媒制御」システム制御フロー
3)待機電力を約 15%削減し、運転していないときも省エネ
圧縮機には、冷凍機油に冷媒が溶け込む現象を防止するためのヒーターを搭載しています。本製品で
は信頼性を保ちながらヒーターの制御を最適化し、空調機を使っていない時の電力も削減※3※4 しました。
【ご参考】
上記1)~3)の技術はネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化の実現を
目指すキー技術として検証しています※8
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)
建物の躯体や設備の省エネ性能の向上、再生可能エネルギーの活用などによって、
建物全体の一次エネルギー(石炭・石油・天然ガスなどを利用したエネルギー)消費量が正味
■ZEBの達成イメージ
(ネット)でゼロ、または概ねゼロとなるエネルギー自立型建築物のこと
現状のビル
空調機では
従来比約60%削減
が必要※8
ZEBのビル
一次エネルギー
消費量
一次エネルギー
消費量
再生可能エネルギー
発電量
上記1)~3)の技術を搭載したビル用マルチとデシカント空調機※9 を組み合わせ、
高性能建築物(高気密、高断熱)に設置した場合の効果を検証し、エネルギーシミュレーション
を用いて、年間消費電力量を 71%削減する結果※10 を得ました。
※8 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業。
「省エネルギー革新技術開発事業」において検証。
※9 当社製「DESICA」を ZEB 向けに改良したもの。
※10 (社)空気調和・衛生工学会平成 25 年度大会にて発表。
2.50℃の外気温度でも運転を継続する「タフネス冷房」
熱交換効率向上によって高温時での能力低下を防ぐとともに、冷媒による安定した電気部品の冷却によ
り、冷房運転可能な外気温の上限を従来の 43℃から 50℃まで拡大しました。熱のこもりやすい集合設置
や狭いスペースなどの過酷な設置状況でも、安定した連続運転を実現します。
1)新形状プロペラファン
集合設置(例)
ファン出口の風速を均一化することで、
室外機内の風まわりを良くし、熱交換効率を向上
風速を均一化
A方向から見た温度分布(冷房全台運転時)
2)冷媒冷却回路
外気温度にかかわらず、電気部品を安定して冷却
室外機
この設置条件では最大44℃
このような場合でも冷房運転を
継続するから安心
※従来機は上限43℃まで
3.配管自由度拡大による設計自由度を向上
室外機を出て 1 つ目の分岐から最も遠い室内機までの距離を、従来の 40m から 90m まで拡大し、1
フロアの面積が広い建物でも一系統での展開が可能になりました。その他の配管接続の制限においても
業界トップクラスの自由度で、多様な設置条件にも対応します。
2 系統目の
二系統目の
追加必要
追加必要
従来機
従来製品
延長不可
第1分岐
第一分岐
40m以内
90m
新製品
VRV
X
2 系統目の
追加不要
二系統目の追加不要
第1分岐
第一分岐
90m以内
【その他の特長】
1.2015 年省エネ基準値を全機種でクリア
■APF一覧
VRV X
2.低外気時の暖房能力が向上
従来機より排水性の高いワッフルフィンを採用した熱交換器と、スムーズな排水を行うドレンパン
を搭載し、低外気時の室外機の凍り付き耐力を向上しています。今回新たに中間インジェクション回
路を採用したことにより、特に低温時の暖房能力を向上しました。
3.機外静圧最大 78.4Pa の高静圧設定が可能
室外機での設定だけで、業界トップクラスの高静圧を発揮します。これにより、高層ビルの各階設
置にも容易に対応できます。
機外静圧最大
78.4Pa
(現地設定)
吹出フードの接続も対応