粉体特性評価装置 新型パウダテスタPT-Xの紹介

新製品紹介
粉体特性評価装置 新型パウダテスタPT-Xの紹介
Introduction of New Powder Tester Model PT-X
非常に曖昧であった粉のバルク状態の特性を定量化
1.はじめに
させることは,粉の研究開発,粉体製品の取引きなど
粉体は,それを構成する粒子の大きさや形状,作り
その形態を大きく変化させるきっかけとなった。
方等によって変幻自在の姿を表し,取り扱いが難しい
パウダテスタによる測定項目は,次の通り。
物質である。その粉体の物性は,最終製品に大きな影
① 安息角 : 響を与えることから,粉体特性を把握することは重要
試料を注入法により自然落下させた状態で形成
な評価技術のひとつである。
される粉体層の山の角度。
粉体を用いた広範囲におよぶ製品の中で,高付加価
運動中の粉体が運動を止める角度。
値化に成功している企業は,粉体をうまく操ってい
② 崩潰角 :
る。この粉体をバルクとして評価する代表的な機種で
安息角を形成させた後,衝撃を3回与える事で
あるパウダテスタは,事実上の世界の標準測定機とし
崩潰させた粉体層の角度。
て,粉体製品取引のひとつの評価機としてお使いいた
③ 差角 :
だいている。
差角=安息角−崩潰角であり,噴流性(フラッ
以下に,歴代9代目となる新型パウダテスタの特徴
について紹介する。
シング性)を推測する簡便な測定値。
④ ゆるめかさ密度 :
定められた容量のカップへ試料を充填,秤量す
る事で導き出される測定値。粉体を自然落下さ
2.パウダテスタの測定原理
せた状態の充填密度であり,粉体ハンドリング
パウダテスタは,1965年に Chem.Eng. 誌に掲載さ
れた R.E.Carr 氏の論文に基づき,粉体の流動性,噴
工程で最も基本的な数値。
⑤ 固めかさ密度 :
流性を7種の粉体特性値,3種の補助値から数値化す
ゆるめかさ密度をタッピングする事で脱気,細
る装置である。
密充填させた状態のかさ密度。
図1 新型パウダテスタ
図2 各測定項目のアイコン
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粉 砕 No. 55(2012)
により,測定者が異なっても同じ条件で測定が
行える。
ングモータによる昇降方式に変更し,1.5kg 程
度の試料を設定された高さに正確に持ち上げ,
タッピングすることができる。オプションで,
昇降高さの変更,タッピングスピードの変更も
可能とした。
③ 標準パーツの構造を測定者の視点で根本的に見
直し,操作性を大幅に改善し,測定試料が付着
図3 自動角度測定
したパーツの脱着回数を最小限に止めた。
④ 先代機種と同様に,PC 画面に操作説明を表示
⑥ 圧縮度 :
し,初めての方でも簡単に測定が行える。ま
圧縮度は,ゆるめかさ密度と固めかさ密度の
た,新型機では更にわかり易くするために,ア
比。
イコンで視覚的判断が行えるようにした。デー
圧縮度=100(固めかさ密度‐ゆるめかさ密度)
タの検索機能,csvファイル出力,pdf変換(オ
/固めかさ密度
プション)なども簡単に行え,データの管理も
⑦ スパチュラ角
し易い仕様となっている。
スパチュラブレードに粉体を盛った後に,ブレ
⑤ 光学的な角度計測手法を用いて,工場の照度
ードを引き上げた際の粉体層の角度。静止状態
JIS 規格である3,000lx での明るさでも安定した
の粉体を運動させるために必要な角度。
画像処理が行なえ,測定部カバーを透明化した
⑧ 凝集度 :
ことにより,測定状況の確認を可能とした。
粉体の凝集性を評価するために適した方法。振
⑥ ショッカーは本体に内蔵とし,ASTM 規格に
動制御により,比較的安定した測定値が得られ
準拠した自然落下方式を採用。ショッカーのセ
る。
ットが不要で,錘の重量,持ち上げ高さの校正
⑨ 均一度
にも対応可能。
粒径の累積分布から d10と d60から計算される
⑦ 測定者の試料曝露抑制を目指し,測定部カバー
値。静電気が強い粉体,比較的粒径の揃った大
を密閉化構造とし,掃除機を併用することで,
きい粒子評価の際に,凝集度ではなくこの均一
機外への試料飛散を抑制できる。測定環境を重
度を利用する。
視し,推奨掃除機として,HEPA フィルター
⑩ 分散度 :
付き掃除機を用意している。
粉塵発生のし易さを評価する。数字が大きいほ
⑧ 測定に必要な設置面積の減少を目指し,測定部
ど粉塵が舞い易い傾向となり,除塵対策が必要
カバーを上下開閉式とし,先代機対比50%減,
となる。
3.新型パウダテスタの特徴
新型パウダテスタは,全面リニューアルといっても
過言ではない仕様となっている。
下記に,主な特徴を説明する。
① 振動部の全面改良と振動センサー内蔵により,
PC から振幅と振動時間のデジタル設定と記憶
を可能とし,試料供給により振動部の重量が変
化しても,設定された振動が確保できる。これ
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図4 測定部内に留まる微粉
新製品紹介
② タッピングは,従来のカム構造から,ステッピ
●新製品紹介
以上の仕様は,非常に幅広い世界のユーザー様から
のお声を真摯に受け止め,測定者側の視点で改良を重
ねた仕様である。また,歴代機の不具合箇所を徹底的
に洗い出し,不具合が生じない構造に変更し,量産化
仕様に適用した。
4.終わりに
新型パウダテスタモデル PT-X は,事実上の世界
標準機としての期待を裏切らぬよう,2年余りの開発
期間を設け,抜本的な改良を施した装置である。
グローバル化対応として入力電源の電圧/周波数に
図5 かさベリ度ユニット
依存しない世界統一仕様とし,安全面では全機種 CE
容積比は34%減とコンパクトな装置となってい
対応としている。また,ニーズが高い中国語,韓国語
る。
にも対応し,英語,日本語を含め,4カ国対応となっ
以下,オプション。
ている。
⑨ 測定サンプル供給機を新たに準備し,測定中の
測定精度の向上を目指し,駆動部の精度を格段に向
試料不足の際に,測定部カバーを開けることな
上させたことにより,再現性は大幅に向上している。
く,300ml 程度の試料追加が可能である。
また,操作性の向上にも力を入れた効果として,測定
⑩ 簡易粒径分布測定に対応。7種類または5種類
時間は,先代機比25%減となっている。
のフルイをセットでき,フルイ上の重量計測か
新型パウダテスタは,従来機との互換性維持にも注力
ら簡易粒径分布が得られる。
しており,その後継機種として安心してご利用いただ
⑪ かさべり度(USP,ASTM,川北式)の自動
ける。
計測ユニットを新たに用意。設定されたタッピ
最後に,パウダテスタのデータが,引き続き,研究
ングをガラス製メスシリンダで行い,粉面高さ
開発のための特性評価や商取引の信頼性確保,品質管
を自動計測。
理の評価機のひとつとして一翼を担い,ご活用いただ
⑫ 高付加価値試料用に,少量サンプル用安息角テ
けることを願っている。
ーブル,かさ密度カップユニットを用意。
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