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February 2015
リサーチ・インスティテュート
クレディ・スイス・リサーチと世界最前線の専門家による
リーダーシップの探求
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・
リターンズ・イヤーブック 2015
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_2
目次
 3 序文
 5 産業:その栄枯盛衰
17 責任ある投資:悪役を演じることで利
益は出せるのか?
29 株式の割引率は平均に回帰するのか?
35 国別市場ハイライト
36 オーストラリア
37 オーストリア
38 ベルギー
39 カナダ
40 中国
41 デンマーク
42 フィンランド
43 フランス
44 ドイツ
45 アイルランド
46 イタリア
47 日本
48 オランダ
49 ニュージーランド
50 ノルウェー
51 ポルトガル
52 ロシア
53 南アフリカ
54 スペイン
55 スウェーデン
56 スイス
57 英国
58 米国
59 世界23ヵ国
60 米国を除く世界22ヵ国
61 欧州16ヵ国
63 参考文献
66 この出版物について・免責事項
本書に掲載された記述についての詳細は、
下記のいずれかにお問い合わせください。
Michael O’Sullivan, Chief Investment Officer
UK & EMEA, Credit Suisse Private Banking
& Wealth Management,
michael.o’[email protected]
Richard Kersley, Head of Global Securities
Products and Themes, Credit Suisse
Investment Banking,
[email protected]
著者へのお問い合わせ、またイヤーブック
および付録ソースブックのご注文をご希望
の方は66 ページをご覧ください。
coverphoto: Erikona / istockphoto.com, photo: MANÜ! / photocase.com
65 著者紹介
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_3
序文
2015年は明白な矛盾および劇的な反転と共に始まりました。先進国で
は、株式・債券市場の両方が記録的高水準にあります。石油価格は暴落
し、スイスフランは対ユーロ相場の上限を撤廃しました。世界経済の成
長は低迷しており、ディスインフレは多くの中央銀行の更なる利下げ余
地を広げ、また最近の欧州中央銀行のケースでは、量的緩和プログラム
という形の異例の行動を取らせています。この不安定な背景の中、私た
ちは今回2015年のクレディ・スイス グローバル・インベストメント・リ
ターンズ・イヤーブックを発表し、本書中の株式、債券およびインフレ
に関する豊富なデータが、長期での資産価格のトレンドの観点から市場
の進展を組み立てる助けとなることを願っています。
2015のイヤーブックには、26の市場・115年間分のデータを使用して
います。付属のクレディ・スイス・グローバル・インベストメント・リ
ターンズ・ソースブック2015ではこのデータを更に活用し、詳しい表、
グラフ、一覧表およびさまざまな参考文献を活用し各国について発展的
な分析を行っています。本書の第1章と第2章では、ロンドン・ビジネス
スクールのエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタン
トンが、この豊富なデータを基に分析を行い、投資に関する新しい方法
を確立しています。
第1章では、長期投資家にとっての産業のウェイトの重要性に焦点を
当てます。今日、米国および英国市場では、銀行業と鉱業だけが1900年
に近い水準のウェイトを占めています。確かに、1900年には鉄道業が英
国市場の50%を、また米国市場の3分の2近くを占めていました。この
章では、新旧両方の産業のリターンと、「産業の分散化は国の分散化よ
りも重要か?」そして「新旧どちらの産業のウェイトを高めるべきか?」
といった疑問を検討することによって、事業分野に沿ったポートフォリ
オを構築する投資家に対して持つ意味を調査しています。結果、興味深
いことに、新産業よりも旧産業に投資することでリターンが高くなる場
合もあることが分かりました。
本イヤーブックの第2章では、責任ある投資について検証していま
す。これは、2012年のクレディ・スイス・リサーチ・インスティテュー
トのレポートである『インパクトをもたらす投資』で発展させたテーマ
です。私たちは、このテーマが資産運用の領域にとって重要かつ成長中
の分野であると考えています。この章では社会、環境、倫理面に考慮し
た投資へのいくつかのアプローチを評価しています。また、環境問題、
社会問題、またはコーポレート・ガバナンスのいずれに焦点を当てるか
に関わらず、企業との関わり(エンゲージメント)が成功する可能性が
あるとの証拠を提供しています。
最後に、第3章ではクレディ・スイスHOlTチームのデイビッド・ホラ
ンドとブライアント・マシューズがイヤーブック掲載の過去のデータに
ついて、マーケット・インプライド(市場が織り込んでいる)・アプロ
ーチによって補足しています。その中で、インプライド資本コストがど
のように時と共に平均に回帰するのか、また、それは多少なりとも予測
可能なのかについて検討しています。国レベルでは、中国とスイスのイ
ンプライド割引率が最も低く、一方、ロシア、イタリア、アルゼンチン
が最も高くなっていると述べています。
エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン共
著の“Triumph of the Optimists”(Princeton University Press[2002]、邦訳『
証券市場の真実―101年間の目撃録』)は投資分析に大きな影響を及ぼし
ており、彼らと共に今回のレポートを作成できたのは大変光栄なことで
す。本イヤーブックは、クレディ・スイス・リサーチインスティテュー
トの作成している出版物の一つで、クレディ・スイスの世界規模のリサ
ーチ・チームのリソースと世界トップクラスの外部の調査機関とを結び
付け、作り上げたものです。
ジャイルズ・キーティング
プライベートバンキングおよび
ウェルスマネジメント部門調査
部長兼副グローバルCIO
ステファノ・ナテッラ
インベストメントバンキング
部門グローバル・エクイティ・
リサーチ部長
photo: TommyEllis / istockphoto.com
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 5
産業:その栄枯盛衰
本稿では、長期の投資家にとっての産業のウェイトの重要性に焦点を
当てます。ここでは技術の進歩とともに産業がどのような栄枯盛衰を
見せてきたかを示します。次々に登場した新たな産業や企業は世界を
変えてきましたが、投資としては期待外れとなる場合もありました。
そこで、期待外れに終わった一部の新産業への投資と共に、旧産業の
衰退が曲がりなりにも全体的に良好なリターンを生み出してきたこと
についての説明を試みています。最後に、これが投資家にとって持つ
意味を検討しています。産業のローテーションは行う価値のあるもの
でしょうか?全産業にわたりよく分散化されたポートフォリオの構築
に対し投資家は注意を払うべきでしょうか?産業の分散化は国の分散
化よりも今や重要なのでしょうか?
エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン (ロンドン・ビジネススクール)
プロ投資家は、株式のリターンをもたらす要
因について理解しようと長年探求してきまし
た。知識の集積から、時にスマートベータと
呼ばれるファクターへの投資が注目されるよ
うになりました。これは従来強調されてきた
産業および国というファクター、または規模、
価格、モメンタムというファクターさえもは
るかに超えるものです。Hsu (2014)は、クオ
ンツ運用を行う投資家が今や 1 人で 81 ものフ
ァクター・モデルを使用していると報告して
います。
ファクターの増殖にもかかわらず、産業は
基本的で最も重要なファクターの座を維持し
ています。産業は、重要な構築概念です。投
資を行う組織は継続的に産業の分類を見直し
ており、また、必要な場合は修正を推奨して
います。企業はしばしば自社が特定の産業に
関係しているように「飾り付け」ることで利
益を得ようとします。投資調査は大半の場合、
産業分野に沿って体系化されます。
ファンドマネジャーは、ポートフォリオを
構築、変更、または報告する際に産業のウェ
イトを参照します。毎年、各産業のリターン
間には大きな差が出て来るため、こうしたウ
ェイトを適正にするか間違うかによって結果
は変わってきます。産業メンバーシップはポ
ートフォリオのリスク管理、相対評価、競合
企業間の評価のためのグループ化には最も一
般的な方法論です。投資家は、資産配分の際、
またアクティブなポジションを取る時、そし
て分散化を求める時に、産業と国のどちらを
最重視するかに取り組んでいます。
しかし、調査の面では、産業はファクター
投 資 の「 シン デ レラ 」的存 在 です 。 Antti Ilmanen (2011)の 『期待 リターン 』 と Andrew
Ang (2014)の『アセットマネジメント』はフ
ァクター投資に関する最も包括的で影響力の
ある2つの著作ですが、どちらも産業につい
ては何も説明されていません。本稿では、こ
のアンバランスな状況の是正を試みています。
大転換
私たちのグローバル・リターンズ・データベ
ースの開始年である 1900 年には、事実上、自
動車を運転し、電話をかけ、電気照明を使い、
映画を観たり録音された音楽を聴いたりした
ことのある人は一人もいませんでした。飛行
機で空を飛び、ラジオを聴き、テレビを見て、
コンピュータを使い、E メールを送りスマー
トフォンを使ったことのある人もいませんで
した。X 線も、断層撮影装置も、DNA 鑑定や
移植、抗生物質もありませんでした。そのた
め、多くの人は長生きできませんでした。
人類は、産業革命から始まり、19 世紀後半
の発明の黄金時代を通して継続され、今日の
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 6
情報革命にまで伸展しつつある革新的イノベ
ーションの波を享受してきました。これが、
電気および発電、自動車、航空宇宙、航空会
社、電気通信、石油・ガス、医薬品・バイオ
テクノロジー、コンピュータ、情報技術、メ
ディア・エンターテイメントといった新産業
の全てを生み出してきました。一方、馬車や
荷馬車、運河用の小舟、蒸気機関車、ロウソ
ク、マッチ等のメーカーは自社の産業の衰退
を目の当たりにしてきました。
こうした変化は世界の株式市場に上場して
いる企業の種類の構成が移行してきたことに
表れています。図表 1 は、米国および英国に
おける上場企業の構成を示しています。上の
2 つの円グラフは 1900 年初、下の 2 つは
2015 年初の構成をそれぞれ表しています。
20 世紀初頭の市場は鉄道に独占されていま
した。英国では、鉄道会社は株式市場の価値
のほぼ半分を占めており、米国では 63%を占
めていました。しかし、115 年後には、鉄道
が株式市場に占める割合は米国では 1%以下、
英国ではほぼゼロとなり、鉄道市場はほぼ消
滅というレベルにまで衰退しています。
1900 年に上場していた米国企業を見ると、
その価値の 80%以上が今日縮小しているか消
滅した産業に属していることが分かります。
英国企業ではこの数字は 65%となります。鉄
道以外では、織物、鉄鋼、石炭の各産業が急
激に衰退しました。これらの産業はまだ存在
していますが、コスト低下が可能な市場とし
て 新 興 国 へ と 移 転 さ れ てき ま した 。一 方 、
1900 年と 2015 年の間には類似点も見られま
す。銀行および保険業は引き続き重要です。
同様に、食品、飲料(酒類を含む)、タバコ、
ユーティリティの各産業は 1900 年には今日と
同様存在していました。また、英国では、上
場している鉱業会社は、現在のロンドン同様、
1900 年には重要な存在でした。
ただし、当初は同様と思われた産業もしば
しば劇的な変化を遂げてきています。例えば、
1900 年の電報と 2014 年のスマートフォンを
比較してみましょう。両方とも当時のハイテ
ク産業でした。あるいは、1900 年のその他の
輸送である海運会社、路面電車、船着場を現
代の航空会社、バス、トラック輸送と比べて
みましょう。同様に、1900 年の製造業や産業
株の中の企業を見ると、当時最大のロウソク
メーカーと最大のマッチメーカーが含まれて
いることが分かります。
図表 1 から浮かび上がるもう 1 つのポイン
トは、今日、1900 年には小さかったか存在し
ていなかった事業を手掛ける企業の割合が、
米国では 62%、英国では 47%と高いことで
す。2015 年において最大の産業はテクノロジ
ー(特に米国)、石油・ガス、銀行、医療、
その他産業、鉱業(英国)、保険、電気通信、
小売業です。もちろん、中でも石油・ガス、
テクノロジー、医療(医薬品およびバイオテ
クノロジーを含む)は 1900 年にはほぼ全く存
在していませんでした。電気通信およびメデ
ィアは、尐なくとも現在私たちが知る形とし
ては、本当に新しい産業でした。
図表 1
米国および英国の産業のウェイト(1900 年と 2015 年の比較)
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン『証券市場の真実』(1900 年:英国は上位 100 社、米国は市場全体)、FTSE 全世界指数 (2015 年)
米国
英国
銀行
銀行
鉱山
鉄道
その他産業
1900
織物
鉄道
鉄、石炭
鉄鋼
鉄、石炭
鉄鋼
飲料
その他産業
ユーティリティ
電報
その他 保険
ユーティリティ
タバコ
電報
その他食品 その他輸送
医療
銀行
石油・ガス
その他
産業
医療
その他
産業
保険メディア
ユーティリティ
電気通信
飲料
食品
テクノロジー
その他 タバコ
保険
電気通信
小売
2015
鉱山
タバコ
飲料
銀行
ユーティリティ
石油・ガス
メディア
小売
その他 テクノロジー
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 7
私たちの分析は純粋に上場企業のセグメン
トに関連するものです。この 115 年間を通し
てずっと存在してきた産業もいくつかあるも
のの、上場企業ではなかった場合もあります。
例えば、1900 年には多くの小売業者が存在し
ていましたが、大手デパートを除いては大抵
が小さな地元店舗で、ウォルマートやテスコ
のような全国的な小売チェーンなどではあり
ませんでした。同様に、1900 年には、製造業
者の大半は上場企業ではなく、家族経営の会
社でした。
英国その他の国では、国有化によって、鉄
道、ユーティリティ、電気通信、鉄鋼、航空
会社、空港といった全ての産業が上場廃止さ
れ、その後しばしば再び民営化されました。
私たちの分析には、例えば上場された鉄道会
社の価値は含まれる反面、大半が国有または
政府系会社のままである高速道路会社は除外
されています。こうした注意点はあるものの、
上記の比較は、企業形態の変化だけでなく、
20 世紀に起こった産業の進化を概ね反映して
います。
長期での産業のパフォーマンス
長期での産業のパフォーマンスを見るのは有
益なことです。米国に関しては、Ken French
の産業データ(Fama and French, 1997)を使用し
ています。このデータには 49 の産業が含まれ
ますが、そのうち 40 業種は 1926 年を開始年
としています。1900~1925 年については、
Cowles (1938)の 57 業種を使用しており、この
うち 20 業種は 1900 年を開始年としておりま
す。私たちは、セクターではなく産業に焦点
を当てています。「セクター」と「産業」は
よく同じ意味で使われていますが、私たちは、
「セクター」は経済の大きなセグメントを表
し、「産業」はより詳細な事業のグループを
指すものとします。例えば、銀行産業は金融
セクターの 1 部分です。特に記載のない限り、
本稿はより詳細な産業グループに基づくもの
とします。
図表 2 は、1900 年までデータを遡ることの
できる米国の 15 の産業のパフォーマンスを示
しています。赤い線は、1900 年初に米国市場
で投資された 1 ドルが、配当を再投資した場
合に 2014 年末には 38,255 ドルとなり、年率
9.6%のリターンとなったであろうことを表し
ています。各産業はこの赤い線の上下に幅広
く拡散しています。最もパフォーマンスの悪
かった造船および船会社に 1 ドルを投資して
いたなら、わずか 1,225 ドルまでにしか成長
せず、年率リターンは 6.4%だったことになり
ます。一方、最も成績の良かったタバコ産業
のリターンは年率 14.6%で、ターミナル・バ
リューは 620 万ドルとなり、これは造船およ
び船会社の 5,000 倍に相当します。
産業間の長期リターン間の拡散は国家間の
拡散に似ています(以下の 37~60 ページおよ
び付属のソースブックを参照)。一部の国が
「幸運」でその他があまり幸運でなかったの
と同じ様に、一部の産業は繁栄し、その他の
産業は沈下していきました。そして、まさに
私たちが将来の国のリターンについてほとん
ど推察できないように、過去の記録から遠い
将来の産業のリターンを推察することはほぼ
不可能です。実際、Ilmanen (2011)は、国と産
業は非価格の投資ファクターの好例であると
結論付けています。もしファクターが織り込
まれていたなら、投資家は長期のプレミアム
が生み出されることを期待できたでしょう。
しかし、産業にとっては、その他のファクタ
ーに晒されている部分を除いて、同じ様な期
待リターンとなるだろうという考えが原点と
なっています。例えば、ある産業では、ある
時点においてベータが高まり、または、価値
志向のため、または、添付の記事で説明して
いるように、投資家に敬遠されて、ファンダ
メンタルな価値に対する時価の割合が低く期
待 リ ター ンが 高く な ってい る 可能 性も あ り
ます。
しかし、産業が「織り込まれた」ファクタ
ーにならない可能性がある一方で、産業の重
要性に変わりはありません。各産業のリター
ンの拡散は、115 年の期間で見ても、あるい
は各年のリターンで見ても、大きくなってい
ます。米国の全産業(図表 2 の産業以外も含
む ) にお ける 横断 的 な拡散 の 年間 平均 値 の
1900~2014 年の平均は 22%でした。一方、
パフォーマンスが最高だった産業と最低だっ
た産業間の年間の平均格差は 108%でした。
産業間の差を事前に予測することは難しいも
のの、各産業のパフォーマンスは非常に異な
ります。産業と産業のウェイトは重要です。
図表 2
米国の各産業の長期でのパフォーマンス
出所: エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、 Cowles (1938)、Ken French の
産業データ、DMS 米国指数
1900 年初に米国の各産業に投資された 1 ドルの累積価値
10,000,000
6,280,237
1,000,000
100,000
38,255
10,000
1,225
1,000
100
10
1
0.1
0
1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010
たばこ
電気通信
電気機器
Mach
化学製品
石炭
食品
ユーティリティ
市場
鉄道
紙
鉄鋼
医療
織物
鉱山
船舶
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 8
図表 2 には後知恵バイアスという問題点が
あります。115 年間の完全な歴史に焦点を当
てていることから、私たちのデータには 1900
年の時点で存在し、生き残った産業しか含ま
れていません。後知恵から、生き残った産業
の多くが重要性を低下させたことを知ってい
ます。図表 2 中の 15 の産業のうち、10 の産
業が市場を下回っています。当然、この 10 産
業の中に石炭、鉄鋼、織物、造船業が含まれ
ています。1900 年以降、これらの産業は先進
国では衰退しましたが、発展途上国では重要
性を増しました。
図表 3
英国の各産業の長期でのパフォーマンス
出所: エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、トップ 100 データベース、
FTSE 国際、DMS 英国指数
1900 年初に英国の各産業に投資された 1 ポンドの累積価値
1,000,000
243,152
100,000
30,445
10,000
2,280
1,000
100
10
1
0.10
0.010
1900
1910
1920
1930
1940
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2010
酒類
化学製品
保険
海運
小売
市場
鉱業
石油
銀行
食品
織物
エンジニアリング
図表 4
英国の運河会社および鉄道会社の株のパフォーマンス
(1811~51 年)
出所: Rostow and Schwartz (1953)
運河/鉄道 への投資の累積価値
1900 年以降に出現した産業を除外している
ことから、図表 2 が示しているのは部分的な
視点でしかありません。しかし、代わりに、
今日重要な産業のパフォーマンスに焦点を当
てるとすると、成功バイアスを持ち込むこと
になるでしょう。1900 年に存在していた産業
で開始するのか、あるいは今日重要な産業で
始めるのか、いずれにしても、後知恵が入り
込むのを防ぐことは困難です。これは長期の
産業のパフォーマンスに関する大半の分析に
内在する問題点です。
英国についても同様の長期の産業の歴史的
分析を行うため、1962 年から始まる FTSE 国
際産業指数を使用しました。元々は 40 業種が
含まれているのですが、時と共に内容が変化
しています。1962 年以前に関しては、1990
年から 1955 年では英国の上位 100 社に基づ
く独自の産業指数を構築し、その後の期間は
ロンドン株価データベースを使用しました。
図表 3 は、115 年間の完全なデータの存在
する英国の 11 の産業について示しています。
化学製品や織物など一部の産業は、図表 2 の
米国の分析でも見られるものです。しかし、
米国の長期産業史におけるいくつかの業種は、
英国の産業史の中に見つけることができませ
ん。これは、英国の戦後の国有化プログラム
によって鉄道、ユーティリティ、電気通信、
鉄鋼、石炭、造船業が国営企業となったから
です。後に再び民営化されたものの、これら
の産業のデータには継続性がありません。し
かし図表 3 には、長期での米国の指数に含ま
れない、銀行、保険、酒類の 3 つの産業が入
っています。これは、金融株が Cowles のデー
タから除外され、また、酒類は禁止されてい
たからです。
英国市場全体を表す図表 3 中の赤い線は、
1900 年に投資された1ポンドが、2014 年末
には 30,445 ポンドまで成長し、年率リターン
が 9.4%になったであろうことを示しています。
図表 3 中のその他の線は、ここでも、産業の
パフォーマンスが広く拡散していることを表
しています。最もパフォーマンスが良かった
産業は酒類で、最も悪かったのはエンジニア
リングでした。英国の保険会社のパフォーマ
ンスは堅調だった一方、銀行のパフォーマン
スは下回るのは、近年の金融危機が原因にあ
ります。パフォーマンスが最高となったのが、
英国では酒類、米国ではタバコと両国で「罪
深き産業」であったことは興味深い事実で、
この問題は次の章で取り上げることとします。
400
破壊的技術による盛衰
350
300
250
ストックトンおよびダーリントン
鉄道の開通
205
200
運河が新しい
テクノロジーだった
150
100
50
0
1811
46
1792 年: 運河バブル
1793 年: 運河バブル崩壊
1815
運河
1819
鉄道
1823
1827
1831
1835
1839
1843
1847
1851
産業革命は、ジェニー紡績機や力織機などの
発明や精錬法や蒸気の利用法の改善によって
支えられて、18 世紀後半、英国において始ま
りました。しかし、これらの新たに製造され
たモノの輸送体制は不十分でした。これを解
決したのが運河です。優良道路の管理者や、
数多くの荷馬車や馬の所有者にとっては、運
河は破壊的技術でした。運河によって、1 日
当たりトンマイル換算で 60 倍の効率でモノを
輸送することが可能となりました。
Nairn (2002) は、18 世紀後半から 1824 年
の間に、ロンドン証券取引所では 60 社以上の
運河会社が取引され、現在の貨幣価値に換算
して 320 億ドル相当の資金を集めていたと指
摘しています。1792 年には熱狂的な運河バブ
ルが起きましたが、翌年にはバブルは崩壊し
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 9
ています。このバブルとその崩壊の規模を示
す指数は存在しませんが、図表 4 の後半の期
間では Rostow and Schwartz (1953)がまとめた
運河会社の株価(赤い線)を表示しました。
これを見ると、1816 から 1824 年にかけて、
運河株は 140%値上がりしています。
ところが 1825 年には、ダーリントン鉄道
が開通しました。その後四半世紀の間、運河
会 社 の 株 価 は 70 % 超 も 値 下 が り ま し た 。
Rostow and Schwartz の指数には配当が含まれ
ていないものの、図表 4 に示される 40 年の間、
投資家の総リターンは低かった可能性があり
ます。破壊的技術であった運河が、今度は鉄
道によって「破壊」されたのです。鉄道輸送
が確立されると、今度もまた、輸送効率は、
運河に比べて 1 日当たりトンマイル換算で 60
倍改善されました。
英国では鉄道ブームが起こり、1848 年には
これがピークに達し、272 の新しい路線が許
可されました。図表 4 中の青い線は、この期
間の株式市場の熱狂を示しています。鉄道会
社の株価は 1835 年には 2 倍以上に跳ね上が
り、ほぼ元の水準まで戻しています。1845 年
には再び株価は 2 倍以上になり、1849 年には
3分の2まで下げました。多くの著者がこれ
をバブルと表現していますが、極めて重要な
インフラが建設され、図表 4 中に示される四
半世紀を超える期間、投資家は年間 3%のキ
ャピタルゲインおよび配当という妥当なリタ
ーンを獲得しています。ただし、不安定な過
程ではありました。
Alasdair Nairn (2002)はその著作『市場を動
かすエンジン』の中で、運河・鉄道から始ま
り、電報、電気、原油、自動車、無線通信、
ラジオ・テレビ、コンピュータ、パソコンと
続き、インターネットに至るまでの、歴代の
新技術への投資を分析しています。Nairn は、
新技術の大半が、当初は懐疑論や嘲笑に迎え
られ、受容されるまでの苦闘に直面していた
ことを発見しています。Nairn の著作の中では、
『蒸気機関車が駅馬車の 2 倍の速さで走れる
という予想ほど、明白に滑稽なものがあるだ
ろ う か ? 』 (Quarterly Review, 1825) と い っ た
数々の面白い引用文が紹介されています。
しかし、一度懐疑論が征服された後は、過
度な熱狂が続き、しばしば新技術が株式市場
の「バブル」をもたらすという傾向が見られ
ます。これについて、Nairn は、投資家が合理
的なバリュエーションを保留し、その後典型
的により冷静で合理的な評価が続く期間と定
義しています。新技術から長期に亘り金を稼
いだ企業は、独占保護、効果的な障壁や持続
可能な優位性を持つ傾向が見られました。
Nairn は、株式市場の投資家が常に新技術の
恩恵の最大の受益者であったとは限らない、
と結論付けています。最大の受益者となった
のは、「インサイダー」つまり発明者、創業
者やベンチャーへの資金提供者、また消費者
や社会全体だった傾向があります。2014 年の
イヤーブックの中でも、新興市場の成長が、
いかに株式市場での投資家よりも地元の人々
に恩恵をもたらしてきたかという点で、同様
の説明を掲載しています。
新産業か旧産業か?
新産業のリターンは、初めの株式市場での価
格が、将来の伸びに関して楽観的すぎる場合、
期待外れとなる場合もあります。衰退しつつ
ある産業も、投資家がその消滅のスピードと
程度の認識に失敗した場合、期待外れとなる
場合があります。しかし、もしこれが歴史的
なパターンであるなら、株式市場はどのよう
にして長期での良好なリターンを生み出して
きたのでしょうか?おそらく、これは「中間
の」または「試行し検査した」産業から生み
出されたのでしょう (Siegel (2005))。
新産業と旧産業の違いは、近年で最も有名
な「バブル」であるドットコム・ブームとそ
の崩壊によって表されています。図表 5 は、
ハードウェアおよびソフトウェア産業から成
るテクノロジー・セクターについて、インタ
ーネット・ブームの始まる 1995 年からの 20
年間の総リターンを示しています。濃い青色
の線は FTSE US テクノロジー指数を示し、水
色の線は FTSE 世界テクノロジー指数を示し
ています。灰色と赤の線は、それぞれ、米国
および世界全体の市場のリターンを示します。
2000 年 3 月を中心とする株価の急上昇は劇的
なもので、その前の 5 年間の 9 倍の上昇率と
なりました。テクノロジー株はその後 2 年半
の期間中、82%下落しています。
図表 5
テクノロジー株のパフォーマンス(1995 年~現在)
出所: FTSE 国際全世界指数シリーズ
テクノロジーへの投資の累積価値
900
800
757
700
670
600
532
500
437
400
300
200
100
1995
1997
1999
米国のテクノロジー
2001
2003
2005
世界のテクノロジー
2007
2009
米国市場
2011
2013
世界市場
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 10
しかし、この期間中、テクノロジーへの投資
は、悪いものではありませんでした。過去 20
年間テクノロジー株に投資した投資家のパフ
ォーマンスは年率 10.5%となり、9.9%だった
米国市場全体を上回ったと考えられます。今
日テクノロジー・セクターの株式を保有して
いる人も、運悪く 2000 年の 1 月から 9 月の間
に株式を購入していた場合を除いて、損をし
ていないことになります。バブルが発生した
にもかかわらず、テクノロジー・セクターは、
大半の投資家にとって、良好なリターンをも
たらしたのです。
旧産業や衰退しつつある産業もまた、良好
なリターンをもたらす場合があります。上述
の 通 り 、 鉄 道 は 1900 年 の 米 国 株 式 市場 の
63%を占めていたのに対し、現在は 1%以下
であり、究極の衰退産業だといえます。図表
6 は、1900 年から今日までの鉄道のリターン
を米国市場との対比で示しており、また、航
空会社および道路輸送(バス、トラック等)
会社のリターンも示しています。航空会社は
1900 年には存在しなかったため、データは
1934 年以降となっています。同様に、道路輸
送銘柄の指数も、それ以前は指数が存在しな
かったことから、1926 年に始まっています。
どちらのデータも、それぞれの開始年におけ
る鉄道指数の値を出発地点としています。
図表 6 は、1900 年から現在まで、実際には
鉄道のパフォーマンスが市場を上回ったこと
を示しています。しかし、1970 年代前半まで
は、鉄道産業のビジネスモデルが航空機での
旅行とトラック輸送の両方によって破壊され
たため、ひどく低迷しました。1950 年代と
1960 年代は特に困難な時代でした。州間高速
道路網の開通によって、トラック輸送が鉄道
の担っていた貨物輸送の役割を奪った一方、
米国人は自動車に熱中し、短距離の鉄道利用
客の数は減尐しました。その間、航空会社は
長距離の旅行客のほぼ全てを奪っていきまし
た。これがいくつかの大型の倒産に繋がり、
とうとう 1970 年には、当時の米国史上最大の
倒産となるペン・セントラル鉄道の経営破綻
にまで至りました。
しかし、図表 6 は、それ以降の期間では鉄
道が航空会社、道路輸送、そして米国市場の
パフォーマンスを上回ってきたことを示して
います。Siegel (2005) が指摘するように、後
知恵からは、鉄道会社の株価が、倒産後の期
間に過剰に落ち込んだということができます。
この復活によって、鉄道業界は合理化、規制
緩和、そして生産性の大幅改善を促進するこ
とにもなりました。一方、同期間では、当時
最新だったテクノロジーである航空会社のパ
フォーマンスが最低となっています。ウォー
レン・バフェットがライト兄弟について述べ
たように、「もしも、先見の明のある資本家
がキティホーク(ライト兄弟初飛行の地)に
いたなら、オービル(初飛行をした弟)を撃
ち落すことで資本家はその後継者に莫大な恩
を施していただろう。」
投資家は、新産業と旧産業のどちらも避け
るべきです。新産業の株価が成長に関する過
度の熱狂を反映する時もあれば、衰退産業に
対して投資家が過度に悲観的になる時もあり
ます。しかし、投資家が永続的に同じ方向の
失敗をすると想定することは危険です。投資
家が、時には新技術の価値を過小評価したり、
また、瀕死の産業が生き残る見通しを過大評
価したりする可能性もあります。伝統的な投
資分析には、価値があることを示している産
業と銘柄を見出し、また割高に見えるものを
回避するという役割があります。
産業の誕生
図表 6
米国の運輸業界株のパフォーマンス(1900 年~現在)
出所: エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、DMS 米国指数、その他 CRSP
作成の指数
1900 年初に投資された 1 ドルの累積価値
100,000
62,716
39,134
10,570
7,090
10,000
1,000
100
10
1
1900
1910
鉄道
1920
市場
1930
1940
航空
1950
1960
道路
1970
1980
1990
2000
2010
18 世紀の運河ブームから 19 世紀のインター
ネット革命に至るまで、新産業の誕生は、IPO
(新規株式公開)を通して株式市場に参加す
る企業の連続的な波によって予告されていま
した。
S&P 500 指数は 1957 年に開始しました。
以来、指数が確実に「主要業種を代表する銘
柄」で構成されるように、定期的にリバラン
スされています。新しい企業は、しばしば新
産業を代表していますが、IPO か、十分な規
模にまで成長した後に組み入れられています。
2003 年まで、同指数に新規で組み入れられた
銘柄数は 917 です (Siegel, 2005)。一方、企業
が買収されるか、縮小、衰退するか、または
消滅した場合には指数から除外されます。
Siegel は、元々の構成分を保有し、消滅し
た企業からの収益を存続している企業に再投
資するという戦略の下、実際の S&P 500 社に
投資した場合のリターンを比較しました。結
果、初めの投資先を維持していた方が、投資
家の利益が大きくなることが分かりました。
この方法では、リスクもより低くなりました。
Siegel は、「投資家には、『新しいもの』に
は過剰に支払う一方、『古いもの』を無視す
る傾向がある…成長が貪欲に追求されるあま
り、投資家は、変化と競争の激しい産業にお
ける割高な銘柄におびき寄せられるが、そこ
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 11
では、尐数の大きな成功者が無数の敗者の埋
め合わせとなるようなことはない。」と説明
しています。
Siegel の発見は、IPO に関する証拠の大半と
一致しています。Ritter (2014)は 1980~2012
年の間の、米国における 7,793 件の IPO につ
いて分析しました。発行価格で購入した投資
家は、初日には平均 17.9%のリターンをあげ
ています。しかし、その後の 3 年間、投資家
は市場の調整後の平均で 18.6%の損失を経験
しています。
英 国 の 結 果 も 同様 の も の で し た 。 Dimson
and Marsh (2015) は 2000 ~ 2014 年 の 間 の
3,507 件の IPO について分析しました。時価
総額加重平均によると、発行価格で購入した
投資家の初日のリターンは、8.5%でした。そ
の後の 2 年間、市場動向の調整後の平均損失
は 9.4 % で し た 。 Gregory, Guermat and AlShawawreh (2010) は、IPO 後のパフォーマン
スの不振はそれよりも更に長引くことを示し
ています。英国における 1975~2004 年の間
の 2,499 件の IPO では、IPO 後の 5 年間で市
場平均を 31.6%下回ったことが分かりました。
Loughran and Ritter (1995)は、IPO では体系
的に割高になると主張しています。「IPO で
は、多くの若い企業が IPO 前に急速に成長す
るため、自分がマイクロソフトの再来となる
企業を発見した、と信じたい投資家による高
いバリュエーションが正当化されやすくなり
ます。」しかし、なぜ投資家はこれを学び、
IPO 価格を下げるよう主張しないのでしょう
か?結局、過去 30 年間において、IPO 後の長
期のパフォーマンスがお粗末であったことは
十分に公表されてきています。Loughran and
Ritter は、行動学的な説明を提案し、次のよう
に述べています。「投資家は、大穴に賭けて
いるのです…(そして)大きな勝者を発見す
る公算に関して、体系的に間違った判断をし
ているように見えます。経験を期待が打ち負
かしているということです。」
IPO は、典型的に、成長産業における成長
株であるため、そのパフォーマンスは、長期
では成長株のパフォーマンスが市場とバリュ
ー株の両方を下回ってきた、という広範な証
拠に適合しています。この証拠は付属のソー
スブックの中で再調査されています。バリュ
ー・プレミアムが行動学的なファクターから
生まれるのか、あるいはリスクへの報酬から
なのかという論争はいまだ存在しています。
行動学からの主要な主張は、投資家は、成長
に対してあまりにも恋をしており、また、過
剰な支払いをしているというものです。これ
が Loughran and Ritter の立場です。
IPO 後のパフォーマンスに関する証拠を前
提としても、IPO 後に過ぎた時間として定義
される「シーズニング」によって、株式のリ
ターンが左右されていると予想することも考
えられます(Ibbotson, 1975 を参照)。図表 7
は、英国株式のリターンに対するシーズニン
グの影響を示しています。4 つの線グラフは、
各年の初めに、それぞれ 3 年以下、4~7 年、
8~20 年、20 年超のシーズニングの期間を持
つ株式に投資する戦略をとった場合の、過去
35 年間のリターンを示しています。この 4 つ
のポートフォリオは毎年リバランスされ、常
にシーズニングが所要の幅となるよう確認さ
れます。
図表 7 は、シーズニングの期間が長いほど、
リターンが高くなることを示しています。こ
の中での唯一の例外は、ドットコム・バブル
とその崩壊の期間の周辺のみです。しかし期
間の最後になると、シーズニング期間が最長
のものの最終資産の大きさは、最短のものの
ほぼ 3 倍となっています。株式のレベルでは、
古いものが新しいものを明らかに上回ってい
ます。また、IPO の中に占める新産業の比率
は偏っていることから、これは、新産業と新
しいテクノロジーではしばしば過度の熱狂が
経験されるという Nairn の観察の信憑性を高め
ています。
産業ローテーション戦略
産業に過大評価または過尐評価される期間が
訪れるのであれば、これを産業ローテーショ
ンによって利用できる可能性があります。私
たちは、これについて、上述の産業データを
用いて米国と英国の事例で調査しました。そ
の中で、過去のリターンとバリュエーション
の 2 つの変数に焦点を当てました。後者に注
目したのは、データの入手しやすさによるも
ので、これは産業の簿価/時価比率(米国、
1927 年以降)または、業種別利回り(米国の
1927 年以前の期間および英国の全期間)のい
ずれかを使用しています。
図表 7
英国株式のリターンに対する「シーズニング」の影響
(1980~2014 年)
出所: エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン
1980 年初に英国株式市場に投資された 1 ポンドの累積価値
61
60
50
49
40
33
30
20
20
10
0
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
シーズニングが 3 年以下
シーズニングが4~7年
シーズニングが8~20 年
シーズニングが 20 年超
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 12
図表 8 は、このリバーサルが本当に起きた
ことを示しています。勝者が勝ち続け、敗者
が負け続ける傾向があり、産業のモメンタム
が顕著に見られます。これは、過去の研究と
一 致 し て い ま す 。 Moskowitz and Grinblatt
(1999)は、産業のモメンタムは個別の銘柄の
モメンタムの例外的な動きの大半を占めると
主張しています。Grundy and Martin (2001)は、
銘柄別の要素がより重要であることを発見し
ています。Scowcroft and Sefton (2005)は、大
型株に関しては、モメンタムの大半が産業か
ら導かれる一方、小型株では株式からとなる
ことを発見しています。
産業ローテーション:リバーサルかモメンタ
図表 8 に示されるモメンタム効果は大きく、
米国と英国間で驚くほど一致しています。ボ
ムか?
ラティリティがその理由ではありません。米
図表 8 の左側の2つのグループは、米国(濃 国では、ポートフォリオのボラティリティは
い青)および英国(灰色)での前年のリター 勝者と敗者との間で同じです。一方、英国で
は、勝者の方がボラティリティは低くなって
ンに基づくローテーションに関わるものです。 います。従って、シャープレシオと共にリタ
棒グラフはそれぞれ、「敗者」から最高位の ーンは、敗者よりも勝者のグループでずっと
「勝者」までの各グル―プに投資した場合の 高くなっています。更に、分析における保有/
年率換算されたリターンを示しています。産 リバランスの期間を、モメンタム戦略に一般
業が定期的に過大評価または過小評価され、 的に関連付けられる、1~6ヵ月に短縮化し
その後にフェアバリューに回帰する場合は、 た場合、一層強力な効果が見出されることが
期待されます。確かに、図表 8 は 1 年の区間
過去の敗者が過去の勝者に勝つリバーサルを における産業のリバーサル効果については何
予想する可能性があります。
の証拠も提供していません。
毎年、その時点で存在している産業を、前
年のリターンまたはバリュエーションによっ
てランク付けします。そして、それらの産業
を最低位から最高位までの 5 分位のグループ
に分類し、各グル―プに同額ずつ投資するこ
とにします。産業のランキングは毎年見直さ
れ、新たに出現した産業は組入れ、指数が消
滅した産業は除外します。この戦略を 1900 年
から 2014 年まで繰り返します。図表 8 はこ
の結果をまとめたものです。
産業バリュー・ローテーション
図表 8
米国と英国での産業ローテーション戦略(1900~2014 年)
出所: エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、Ken French の米国産業デー
タ、Cowles (1938) 産業データ、FTSE 国際英国産業指数
年率換算リターン(%)
12
10
8
6
4
2
0
敗者
勝者
敗者
米国
勝者
英国
前年のリターン
最低
最高
最低
最高
米国
英国
バリュエーション (簿価/時価比率)
図表 8 の右側の 2 つのグループは、単純なバ
リュエーションに基づくローテーションに関
わるものです(赤い棒は米国、水色の棒は英
国)。各グループは、最も利回りあるいは簿
価/時価比率の低い産業から最も高い産業まで、
それぞれに投資した場合のリターンを年率換
算したものを表しています。利回り、簿価/時
価比率の低いものは、ともに成長産業に関連
付けられました。新産業の企業およびテクノ
ロジーでは、キャッシュを成長と投資のため
に保持し、初めの配当が低くなる傾向があり
ます。見込みの尐ない、成熟および衰退中の
産業では、配当はより高くなります。成長産
業では、時価総額の大部分は、まだ簿価に反
映されていない、または資産として計上され
ていない将来の機会を資本化したものから構
成されます。従って、簿価/時価比率の低い場
合は、新しい成長産業となり、一方、バリュ
エーションの高い場合は「バリュー」型産業
である傾向があります。
図表 8 は、米国と英国の両方において、
「バリュー」型産業が「グロース」型産業よ
りも高いリターンを生み出しており、産業の
バリュー・プレミアムが存在することを示し
ています。これは、バリュー型産業において
リスクが高いことが理由になっている可能性
もあります。しかし、米国と英国の両方にお
いて、バリュエーションが最高だったグルー
プと最低だったグループの標準偏差は類似し
ています。同様に、リターンの差はベータに
よっては説明されていません。成長産業より
もむしろバリューを重視した投資がアウトパ
フォームしたことは、標準的なリスク調整に
対して頑健(ロバスト)性があります。税金
など、プレミアムを説明するその他のファク
ターも考えられます。しかし、プレミアムの
存在は、ローテーション戦略によって回避が
容易になる、成長産業が過大評価される期間
と、ローテーション戦略によってそこから利
益を得ることが容易になる、バリュー型産業
が過小評価される期間が存在することと一致
しています。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 13
今日の産業
明らかに、産業は特定の国に集中していま
す。40 の産業のうち 30 の産業において、1 位
図表 9 は、世界、米国、英国、ドイツ、日本、
と 2 位を占める 2 ヵ国のウェイトの合計が、
新興国の各市場における、2015 年初のセクタ
その産業での世界の時価総額の半分を超えて
ーのウェイトを示しています。ウェイトは、
産業の広範なグループをカバーする 10 の業種 います。30 の産業のうち、1 位と 2 位の 2 ヵ
分類ベンチマーク(ICB)のセクターに基づい 国がその産業のウェイトの 60%超を占めてい
ています。この中で世界指数は、その他の地 ます。1 位と 2 位が占めるウェイトが 70%を
域がオーバーウェイトなのかアンダーウェイ 超える産業は 18 あり、また、80%を超える産
トなのかを判断するためのベンチマークとな 業は 7 つあります。
ります。
国家間には、大きな差が見られます。米国
はテクノロジーのウェイトが高く (17%)、石
油・ガス、医療、消費者向けサービスのウェ
イトが高くなっており、素材産業、消費財、
図表 9
電気通信のウェイトは低くなっています。英
国ではテクノロジーのウェイトは極めて小さ
主要国・地域におけるセクターのウェイト(2015 年初)
い(1%)一方、資源(25%超が石油・ガスおよび
素材産業の中の鉱業株)および金融業(22%)の
出所: FTSE 国際世界指数シリーズ
ウェイトは高くなっています。
100%
ドイツと日本では、製造業のウェイトが高
2
3
3
4
4
4
2
4
4
5
い反面、資源(石油・ガスおよび鉱業)のウェイ
3
6
8
5
7
8
トは低いかごくわずか(ドイツ)です。ドイ
1
8
7
8
6
ツで素材産業のウェイトが高く(23%)なってい
80%
23
13
9
11
るのは、化学製品部門のためです。ドイツと
15
10
2
日本では消費財のウェイトが高く、中でも自
5
7
5
11
14
10
3
動車が特に重要です。両国とも医療のウェイ
60%
7
11
トは低く、ドイツでは消費者向けサービスも
11
22
10
低くなっています。
17
1
10
15
新興市場では、金融のウェイトが高く(32%、
8
12
40%
そのうち3分の2が銀行)、石油・ガス、素材
10
12
産業のウェイトは世界指数でのウェイトより
16
25
13
22
も高くなっています。これら 3 つのセクター
10
20%
は新興国の時価総額の半分近くを占めていま
32
す。新興市場では、電気通信のウェイトも高
23
22
18
17
16
く、逆に医療のウェイトは非常に低く、また
0%
消費財・サービスのウェイトも低くなってい
世界
米国
英国
日本
ドイツ
新興国市場
ます。
国別での産業の集中度
図表 10 は、多くの産業が特定の国に集中して
いること示しています。ICB の分類システム
では、図表 9 中の 10 のセクターを 40 の産業
に分けています(ただし、紛らわしいことに、
ICB は、セクターを産業と呼ぶなど、用語の
使用法が異なっています)。図表 10 は、その
より詳細な産業グループの下位のセットを示
し、最もウェイトが高い国(米国なら青、そ
の他の国の場合は赤)および 2 番目にウェイ
トが高い国(灰色)を示しています。世界の
時価総額の約半分を占める米国は、33 の産業
の中で最もウェイトが高くなっています。
図表 10 中の赤い棒は、米国が最大のプレ
イヤーではない7つの産業を示しています。
日本は自動車、モバイル電気通信およびエレ
クトロニクス、香港は不動産、英国は鉱業、
中国は代替エネルギーでそれぞれ第 1 位とな
っています。加えて、図表 10 には、米国のウ
ェイトが世界全体の3分の2を占める、ある
いは、第 2 位となる国の占めるウェイトが
20%を超える全ての産業が含まれています。
後者のグループは灰色の部分で、国名と共に
表示されており、具体的には、生命保険およ
びタバコでは英国、インダストリアル・エン
ジニアリングおよびレジャー用品では日本、
化学製品ではドイツ、鉱業ではオーストラリ
ア、食品ではスイス、代替エネルギーではデ
ンマークがこれにあたります。
金融
医療
消費財
石油・ガス
工業
素材産業
テクノロジー
電気通信
消費者向けサービス
ユーティリティ
図表 10
各産業における国の集中度(2015 年初)
出所: FTSE 国際世界指数シリーズ
モバイル通信
36
日本
英国 47
生命保険
58
日本
フィンランド 58
60
ドイツ
62
米国
香港
不動産投資・サービス
林業・製紙
化学製品
日本
自動車・自動車部品
インダストリアル・エンジニアリング
鉱業
64
日本
オーストラリア 66
70
米国
70
スイス
英国
日本
電気・電子機器
食品
74
金融サービス
75
76
レジャー用品
メディア
韓国
日本
代替エネルギー
中国
デンマーク
77
80
81
一般小売業
不動産投資信託
85
医療機器・サービス
85
テクノロジー・ハードウェアおよび機器
ソフトウェアおよびコンピュータ・サービス
86
86
航空宇宙・防衛
86
油圧装置・サービス・販売
0
最大の国でのウェイト (米国、%)
87
英国
たばこ
20
40
最大の国でのウェイト (米国以外、%)
60
80
第2位の国でのウェイト (%)
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 14
米国、日本、フランス、英国は最も産業の集
中度が低い4ヵ国です。しかし、この4ヵ国
産業が尐数の国に集中し得るように、一国の においてすら、上位3産業(全 40 業種中)が
中でもわずかな数の産業に独占されることが その国の時価総額の 26%(米国)から 36%
あります。図表 11 は、FTSE 全世界指数の 47 (英国)までを占めています。
ヵ国中 28 ヵ国の各国において、ウェイトが最
47 ヵ国(図表 11 に表示されていない国も
大の産業と上位 3 位までの産業のウェイトを 含む)中 42 ヵ国において、上位3産業はその
示したものです。このグラフは、産業の集中 国の時価総額の 40%以上を占めています。33
度の最も高い 5 ヵ国(グラフ上部)、集中度 ヵ国では、50%以上、21 ヵ国では 60%以上、
の最も低い 5 ヵ国(グラフ下部)、そしてそ そして 16 ヵ国では 70%以上となりました。
の他のイヤーブック掲載国の全てについて示 この意味するところは明白です。大半の国の
しています。上の 5 ヵ国では、3つ以下の産 投資家は、もし投資先が自国に限定されるな
業がその国の時価総額の全てを占めています。 ら、産業の集中度が高く、分散度の低いポー
トフォリオを保有するでしょう。このことが、
図表 11
国際分散投資の必要性を強調しています。し
かし、多くの産業が特定の国に集中していま
各国における産業の集中度(2015 年初)
す。これは、産業全般にわたり効果的な分散
投資を行うためには、各国へのグローバルな
出所: FTSE 国際世界指数シリーズ
分散投資が必要となることを強調しています。
各国における産業の集中度
モロッコ
ペルー
チェコ共和国
パキスタン
ギリシャ
ポルトガル
アイルランド
ロシア連邦
デンマーク
ベルギー
スペイン
フィンランド
スイス
オーストリア
イタリア
スウェーデン
ニュージーランド
ノルウェー
オーストラリア
ドイツ
カナダ
中国
オランダ
南アフリカ
英国
日本
フランス
米国
重要なのは産業?国?
Japan
UK
0
20
最大の産業のウェイト(%)
40
60
80
100
2位と3位の産業のウェイト
図表 12
産業と国の相対的な重要性
出所: Jose Menchero and Andrei Morozov (2012)
平均絶対偏差(毎月、%)
3
世界
2
1
4
欧州
3
2
1
7
5
新興市場
3
1
1994
国
1996
1998
産業
2000
2002
2004
2006
2008
2010
グローバルに投資を行う投資家にとって、産
業と国のどちらがより大切かを理解すること
は重要なことです。これは、資産配分とアク
ティブなポジションにおいて産業と国のどち
らを主に重視するべきか、また、より大きな
リスク低減に繋がるのは産業と国のどちらで
の分散化なのか、を決定付けます。また、こ
れは、調査と調査部をどのよう組み立てるか、
という問題にも意味を持ちます。
Lessard (1974) および Heston and Rouwenhorst (1995)などの早期の研究では、国のファ
クターが産業を支配することが発見されまし
た。しかし、グローバル化やユーロ圏などの
発展により、国家間の相違が小さくなってき
たように思われます。確かに、より最近の研
究では、産業が国との比較で重要性を増して
きたことを示しています。難しいのは、国の
影響から産業を取り外すことです。英国株式
市場は世界の上場鉱業会社の 43%を占めてい
ます。石油はロシア市場の時価総額の 56%を
占めています。ロシアを石油の影響から分離
したり、英国から鉱業を分離したりすること
は困難です。
Menchero and Morozov (2012) による最近の
総合的な研究では、この問題に取り組むため
に、グローバルなファクター・モデルが使用
されています。この研究では、1994~2010 年
の MSCI 全世界指数(All Country World Investable Market Index)の全ての構成要素を対象と
する広範な株式のデータについて調査を行い
ました。図表 12 は、この研究の成果を、研究
の基準の 1 つである、産業の国に対する相対
的強さを測る平均絶対偏差によって再現した
ものです。
図表 12 の 1 番上のグラフは、世界全体に
関する Menchero and Morozov の発見を示して
います。1999 年まで、国は産業を支配してい
ましたが、ドットコム・バブルとその崩壊の
期 間 中は 、産 業が よ り重要 視 され まし た 。
2013 年以降、産業と国の重要性はほぼ同等で
した。図表 12 の中央は、欧州内において、
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 15
6.1%、英国では 5.3%でした。費用を考慮し
なければ、米国の投資家は負け組ではなく勝
ち組の産業を買うことで 870 倍儲かったこと
になります。
このようなローテーション戦略が成功し続
けたとすると、2015 年初において最も魅力的
な産業と最も魅力のない産業は何になるでし
結論
ょうか?米国では、ユーティリティ、保険、
運輸、医療が選好され、一方、最も魅力がな
産業は、主要な投資のファクターです。多く いのがレジャー、ソフトウェア、電気機器、
の国の株式市場において、尐数の産業への集 飲料です。英国では、ユーティリティ、たば
中度がきわめて高い一方、多くの産業が尐数 こ、医薬品、生命保険が最高で、最低なのは
の国に集中しています。分散化の機会を最大 テクノロジー・ハードウェア、航空宇宙、イ
限活用するには、投資家は広範な産業および ンダストリアル・エンジニアリング、電子・
国にわたり分散化させる必用があります。グ 電気機器です。
ローバル化によって国の重要性が相対的に落
これは例を示しているにすぎず、推奨では
ち、産業がより重要視されるようになってい ないことを断言しておきます。歴史的に、ロ
るとの証拠もあるものの、両方とも大切です。 ーテーション戦略は、複数を組み合わせたと
テクノロジーの進化と共に、産業は盛衰を しても、大体3年のうち1年は失敗してきま
繰り返してきました。どの産業のパフォーマ した。モメンタムの場合、市場の転換点にお
ンスが最高で、どの産業が最低だったかを見 ける失敗は特に悲惨な結果となり得ます。し
るのは興味深いことですが、将来への教訓に かし、忍耐強く、そのような出来事に耐えう
なることはほとんどありません。21 世紀中に る長期の投資家にとっては、そうした戦略の
は、産業の状況が過去よりもおそらく更に劇 過 去 の成 功は 、思 考 の糧と な るか もし れ ま
的に変化する可能性すらあります。1902 年に せん。
Charles Duell 米国特許商標庁特許長官が述べた
ように、「私の意見では、現世紀中に発明さ
れるものに比べたら、様々な発明におけるこ
れまでの前進の全ては全く取るに足らないも
のとして映るでしょう。」投資家は、将来に
焦点を当てる必要があります。
私たちが自信を持って言えることは、各産
業のリターンの間では今後も大きな差が維持
されるだろうということです。勝者および敗
者となる可能性のある産業の予想は引き続き
困難となるでしょうが、産業とそのウェイト
は大切であり続けるでしょう。
投資家は、新産業に焦点を当て、旧産業を
避けるべきでしょうか?あるいは、逆張り戦
略をとるべきでしょうか?本稿では、新産業
と旧産業の両方が、報酬をもたらし、また期
待外れとなり得ることを見てきました。これ
は全て、株価が期待を正しく織り込んでいる
かどうかに左右されます。典型的に、新産業
は IPO 活動の波の上に誕生しており、本稿で
は、投資家が特に IPO のバリュエーションと
新規上場株式には慎重になるべきであること
を見てきました。
新産業を過大評価し、旧産業を過小評価す
るあらゆる傾向を頼りにする 1 つの方法は、
産業のバリュー・ローテーション戦略に従う
ことです。歴史的に、この方法はプレミアム
を生み出してきました。この戦略は、成長産
業には、同戦略によって回避が容易になる過
大評価の期間が存在し、バリュー型産業には、
同戦略によって活用が容易になる過小評価の
期間が存在することと一致します。
しかし、モメンタムは更に効果的なローテ
ーション戦略であるように見えます。1900 年
以降の期間において、昨年のパフォーマンス
が最高だった産業を買い、最低だった産業の
5 分位のグループを売った場合の、年率換算
の 「 勝者 ― 敗 者」 の プ レ ミ ア ム は 米 国 で は
1998 年までは国が支配していましたが、1999
年のユーロ導入以降は、産業がより重要にな
ったことを示しています。図表 12 の下のグラ
フは、新興市場では、国が産業をずっと支配
してきたものの、その差が縮まってきている
ことを示しています。
photo: Tanusha / fotolia.com
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 17
責任ある投資:悪者を
演じることで利益は出
せるのか?
社会や環境、倫理などの問題に対する投資家の不安は大きくなる一方
で、投資活動では責任ある投資行動を示さなければならないという圧
力がますます強まっています。この圧力は倫理的スクリーニングを通
した「離脱」や、取り組みや介入を通した「声」という形を取る場合
もあります。本稿では、「罪深い」株式からの離脱を決意した人の行
動によって、尐なからず、良心の呵責をあまり感じない人に利益がも
たらされるという意味で、その「罪」も割に合う可能性があるという
ことを示しています。しかし手ぬるい除外では、期待される経済的効
果は一般的に小さくなります。さらにここでは、環境、社会、コーポ
レート・ガバナンスのいずれに焦点を当てるにしても、会社の取り組
みは割に合うという証拠を示しています。
エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン著( ロンドン・ビジネススクール)
投資家の中には「レッセフェール」(自由
放任主義)のアプローチをとり、最も将来性
があると思われるところに投資を行うだけで、
社会や環境、倫理といった問題を考慮しない
人が存在します。一方で「責任」により重き
を置くアプローチをとる人もいます。責任あ
る投資家として選ばれるためには、3 つの理由
が必要となります。1 つ目は、事業主も、会社
の行動に対して責任を共有しているというこ
とです。2 つ目は、事業主が会社の行動を改善
に導くことができるということです。そして 3
つ目は、長期的な利益拡大が社内に高い行動
基準を定着させることによって実現可能とな
る点です。
事業主の責任が問われた事例では、BP の施
設爆発事故(「ディープウォーター・ホライ
ズン」)やユニオンカーバイドのガス漏れ事
故(ボパール)、ロンミン労使争議(マリカ
ナ鉱山)、エクソンの原油流出事故(エクソ
ンバルディーズ号)、東京電力原子力発電所
事故(福島原発)、マッセイエナジーの鉱山
爆 発 事故 (ア ッパ ー ・ ビ ッ グ ・ ブ ラ ン チ 鉱
山)、サバールでのビル倒壊事故(ラナプラ
ザ)などが思い起こされます。そこには不誠
実な対応や不正行為も絡んでいました。例え
ばロッキード(賄賂)、シーメンス(汚職)、
エンロン(粉飾決算)、ウォルマート(児童
労働)、マテル(鉛塗料)など、訴えられた
事例は数多くあります。
現在、「レッセフェール」の価値観はその
足元が揺らいでいます。世界トップの資産家
は今、大量の資源を社会や環境の問題、コー
ポレート・ガバナンスに注ぎ、投資先の企業
と共にこのような課題に対する取り組みを進
めています。
その取り組みの広がりは過去最大規模との
報告もあります。国連が提唱する「責任投資原
則」には現在 1,349 名が署名しており、その総
資産は 45 兆米ドルを超えています。これは全
世界の機関投資家市場における資産の半分程度
に相当します(Shubb, 2014)。GSIA(グローバ
ル持続可能投資アライアンス)の推定によると、
世界的にプロが運用しているポートフォリオの
うち 14 兆米ドル程度において、意思決定の中
に環境や社会、ガバナンスの問題が考慮されて
いるとされています。
企業やその経営陣もやはり、単なる経済的見
返りだけでなく、より広い意味での利益をもた
らすことに取り組む責任ある存在として見られ
ることを望んでいます。国連グローバル・コン
パクトの下、145 ヵ国 12,000 社以上の事業者が
責任と持続可能性のある企業活動に取り組んで
います。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 18
3 つ目の動機は、最も上位に分類される資
産家がますます「ユニバーサル・オーナー」
責 任 あ る 投 資 ア プ ロ ー チを 採 用す る 動機は になる傾向にある事実と関係しています。こ
様々ですが、その中には「共犯」「影響力」 の「ユニバーサル・オーナー」とは、Monks
「ユニバーサル・オーナー」といったものが and Minow(1995)によって提唱された言葉で
あります。「共犯」という考え方は、「ノル す。資産家の規模が相当に大きくなってくる
ウェー政府年金基金–グローバル」が採用して と、本質的には各市場に自分の会社を持つよ
いるスクリーニングプロセスを支持するもの うになります。さらに彼らの中には、投資期
です(Nystuen, Follesdal and Mestad (2011))。 間が遠い将来にまで続く投資家も多くいます。
ノルウェー人にとっては「まったく倫理的で 「ユニバーサル・オーナー」の場合、コスト
ない活動を行うと予想される会社の株式や社 要因や企業個別の事情から逃れることができ
債を保有するということは、その活動の『共 ません。つまり、1 つの投資先が別の会社の
犯』と捉えることもできるのです」(Graver, 支払いコストを増やすことによって利益を上
2003)。信念に基づいて投資をしている人で げているとすれば、両方の会社に投資してい
あれば、事業が自分たちの価値観に反すると る株主にとっては差引の利益が出ないかもし
いう理由から、ある一定の会社(例えば酒類 れないということです。理論的には、「ユニ
メーカーなど)に投資することを拒否する可 バーサル・オーナー」はパイ全体の大きさ、
すなわちすべての会社の総合的な価値を高め
能性があります。
「影響力」(Richardson (2013)が好んで使 ることに力を注ぐべきであり、それぞれの会
用した言葉を使えば「レバレッジ」)とは、 社の間でこのパイをどのように切り分けたら
会社に対して行動を変えるように説得を試み よいか、ということにあまりとらわれないよ
る力となります。投資家に「レバレッジ」が うにしなければなりません。
このように視野を広く持つ例として、労働
備わっていれば、投資先である会社の経営陣
や、場合によっては規制当局や司法当局、そ に関する慣行を挙げてみます。投資先の会社
の他権力の行動を改善するように説得するこ の中には児童の採用や、児童を採用している
とも可能になるかもしれません。この改善は、 会社からの人材派遣により資産コストを下げ
社会正義や利害関係者の利益が原動力となる ているところがあるかもしれません。しかし
このような会社からは、児童の健康や教育の
場合もあります。
問題に関する費用の支払いは見込まれません。
「ユニバーサル・オーナー」であれば、1 つ
の企業での児童労働によって児童を採用して
いない別の企業の利益が減り、また教育の不
備により広い意味での経済発展が阻害される
可能性があるということに気づくかもしれま
せん。長期的な視点で見ると、このオーナー
は企業や規制当局との関係を深めることによ
り、結果的に自身の経済的利益も手にするこ
とができる可能性があるのです。これはビジ
ネスの話ですが、当然、倫理的な話もありま
す。汚職、核の拡散、気候変動、その他社会
問題に関しても、同じような議論を展開する
ことができます。
「ユニバーサル・オーナー」は、文字通り
の意味として捉えた場合、その数は非常に尐
ないのが現状で、その例として「ノルウェー
政府年金基金–グローバル」「カリフォルニア
州職員退職年金制度(カルパース)」「カリ
フォルニア州教職員退職年金制度(カルパー
図表 1
ス ) 」「 ニュ ーヨ ー ク市職 員 退職 年金 制 度
2002~14 年のバイス・ファンドとバンガード・FTSE・ソーシャル・インデッ
( NYCERS ) 」 「 英 国 大 学 退 職 年 金 基 金
(USS)」「BT 年金制度」などが挙げられま
クス・ファンドの比較
す。投資先の会社との対話を持とうとするフ
出所:モーニングスター。データは 2002 年 8 月 30 日以降。分配金は再投資、 手数料は考慮していません。
ァンドマネージャーは他にも多数存在し、こ
れは特に保有資産がそれほど大きくない投資
Cumulative
of $1 invested in Vice Fund on launch date, 30 August 2002
2002
年 8 月 value
30 日のバイス・ファンド設立時に投資された1ドルの累積価値
家を多数抱える、グローバル分散型のパッシ
ブファンドに目立ちます。
3.5
「ユニバーサル・オーナー」のアプローチ
は、「共犯」と「影響力」に関わる手法と尐
3.0
し重なるところがあります。しかしこのアプ
ローチは、責任ある企業活動という広い視野
を持つことで経済的見返りが発生するという
2.5
考 え方 に基づ いて います( Dimson, Kreutzer,
Lake, Sjo, Starks (2013)参照)。これは非常に
規模の大きな投資家、特に政府系ファンドに
2.0
ついては当てはまるのですが、多くの機関投
資家の場合は、責任ある投資を最大限に実践
していながらも目先の投資収益にとらわれて
1.5
しまい、受託者義務に違反してしまう可能性
があるというリスクを背負っています。「ユ
1.0
ニバーサル・オーナー」のアプローチで得ら
れた利益は定量的に測定するには難しすぎ、
また短期的な経済の観点から見てもコストが
0.5
高すぎると考えられます。これが正しいかど
うかは経験的な問題であり、これを次に考え
年(1月1日)
Year (1st January)
てみたいと思います。
バイス・ファンド
なぜ善人になるのか?
The Vice Fund
バンガード・FTSE・ソーシャル・インデックス・ファンド
Vanguard FTSE Social Index Fund
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 19
離脱と声
政治経済学者の Albert Hirschman は、ある組織
でメンバーに対するメリットを減らされてい
ることが彼らによって悟られたときにメンバ
ーに提示する 2 つのオプションについて説明
しています。1 つ目のオプションは「離脱」
です。つまり、彼らはこの関係から身を引く
ことができます。もう 1 つは、「声」をあげ
ることです。言い換えると、彼らは苦情や怒
りの表明や変化の必要性の訴えを通じて、こ
の関係を改善するための発言をすることがで
きます。
Admati and Pfleiderer (2009) はこの「離脱」
のことを「ウォール街ウォーク」と呼んでい
ます。これは単なる「選別」または「売り判
断」であるかもしれません。しかしアクティ
ブな投資家にとって「離脱」は、問題の企業
や業界に対して圧力をかける意図が込められ
た、政治寄りの行動となる可能性があります。
「離脱」は、連系的な行動をとるならば、事
業者や業界、あるいは国を説得して政策や体
制を変えさせることを意図した、強調的な資
本引き上げとなります。
書著『SRI のメリット:なぜ社会的責任ある投
資 が 経済 的に 良い 成 績を収 め てい るの か 』
(図表 2)の中で、SRI(社会的責任投資)の
方が経済的に優れた業績を残しているという
圧倒的な証拠を示し、なぜ SRI が良い業績を
上げられるのかを具体的に説明した上で、投
資の専門家や投資家、年金基金、コミュニテ
ィーグループや非営利団体などにとってどの
よ う な意 味を 持つ の かにつ い て検 証し て い
ます。
ジョン・ハリントンも自身の著書『自分の
良心に従って投資する:社会的責任ある投資
を利用して高いリターンを獲得する方法』の
中で同様の話をしています。
図表 2
離脱と罪の賃金
責任と罪に基づいた投資に関する著書
図表 1 は、2000 年代前半に米国で運用が開
始された 2 つの投資信託について、再投資さ
れた分配金も含めた累積リターンを示してい
ます。この比較での勝者はバイス・ファンド
( Vice Fund ) でした 。 そ の 見 事 な 運 用 成 績
(設定当初の 10,000 米ドルから 2015 年初頭
の 33,655 米ドルまで増加)により、リッパー
とモーニングスターから最高ランクの格付け
を獲得しました。一方でバンガード・FTSE・
ソーシャル・インデックス・ファンドは同じ
期間でも運用資産の伸びは小さく(10,000 米
ドルが 26,788 米ドルに増加)、相対的に敗者
となりました。この期間中の S&P500 指数の
業績は、2 つのファンドの間となりました。
バイス・ファンドは社会的に無責任である
と一般的に考えられている企業に投資します。
最近このファンドはバリヤー・ファンドと名
前を変え、「たばこ、アルコール飲料、ゲー
ム、防衛・航空宇宙産業など、参入に大きな
障壁(barrier)のある業種」に 2 億 9,000 万米
ドルの資産を保有しています。ソーシャル・
インデックス・ファンドは社会性や人権、環
境といった基準でスクリーニングされた指標
を追跡しています。構成銘柄は厳しい環境政
策を有する企業、マイノリティー、女性の雇
用や昇進で高い実績を持つ企業、安全な職場
を実現している企業などです。たばこやアル
コール、アダルト向け娯楽、火器、ギャンブ
ル、原子力、不当労働行為に関わる企業はあ
りません。運用資産総額は 15 億米ドルで、こ
れはバイス・ファンドの 5 倍を超えます。
数多くの倫理的投資家が、「良いことをし
て成功する」ことを重視しています。信念に
基づいた責任ある会社への投資は、長期的に
見て株価の上昇という形で報われる可能性が
高いと彼らは考えています。Peter Camejo は
出所:各出版社。出展は参考文献に記載しています。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 20
ところがその証拠を見直してみると、バイ
ス・ファンドによって示されたとおり、現実
にはその多くで「罪」への投資が割に合うと
いう結果が出ています。非倫理的な銘柄、産
業、国に対する投資が、他を上回る運用成績
をあげているという傾向にあるのです。基準
を重視する人にとって、スクリーニングによ
って投資の業績や分散にどのような影響があ
るかを知ることは重要です。また皮肉ではあ
りますが、責任ある投資家自身も「罪」から
のリターン向上に部分的に関与しているかも
しれないということを意識しなければなりま
せん。
無責任な事業者は資本金の引き上げという
恐怖によって律することができるというのが
一般的な考え方です。その前提には、株価下
落の圧力による会社価値の低下、自社の資金
調達力を犠牲にした資本コストの上昇、そし
て TOB の可能性の拡大があります。この観点
では、株価の下落による報酬の減尐という痛
手を負う経営幹部に対する罰ともなり
ます。
Dan Ahrens が著書『悪への投資:酒、ギャ
ンブル、爆弾、尻の不況知らずのポートフォ
リオ』(図表 2)で説明しているとおり、確
かに倫理的な投資家が忌み嫌う株式に投資し
ても利益を得ることは可能と言えます。「悪
への投資」の理屈は、景気に関係なくこのよ
うな企業の商品には安定的な需要があること、
このような企業がグローバルに事業展開して
いること(「悪」は世界的な現象なのです)、
利益率の高いビジネスである場合が多いこと、
そして参入の障壁が高い業界の企業であるこ
とです。それでも、十分に大きな割合の投資
家が「悪」の事業を回避すれば、その株価は
押し下げられると思われます。Dan Ahrens が
着目した点は、企業の株価が下がること自体
が、倫理の問題を比較的気にしない投資家に
とっては買いのチャンスとなってしまうとい
うことです。Caroline Waxler も『罪を買い込
む : 悪に 基づ いた 投 資で市 場 に勝 つ方 法 』
(図表 2 参照)の中で同じような解釈をして
います。
ここでのパラドックスはつまり、不健全で
ひどい事業だと一部で思われている企業の株
価が下落するということは、社会規範と相反
する活動をしている企業の価値に倫理的な投
資家が影響を与えていると考えることもでき
るということです。そうであれば、株式はフ
ァンダメンタルと比較して割安な株価で取引
されることになります。例えば、PER や配当
利回りが低くなる場合もあります。このよう
な株式を買えば結果的に投資リターンの期待
値が上がることになり、これは一部の投資家
にとっては、ひどい会社への投資という感情
的な「コスト」の相殺となります。
会社や業界からの離脱
図表 3
たばこ産業と株式市場全体の累積リターン比較(1900-2014)
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン。通貨は USD および GBP の名目為替レート。
米国および英国のタバコ産業への投資の累積時価総額と各市場の指数
Cu mu lativ e v alu e o f an in v estme nt in th e US an d UK to b acco in du strie s an d th e marke t in d e xe s
7,717,841
10,000,000
6,280,237
1,000,000
100,000
38,255
30,445
10,000
1,000
UK to b acco se rie s starts
英国タバコシリーズは
1919at年末よ
end-1919 an d is lin ke d to
り開始し、米国タバコシリーズと
th e US to b acco
連動se rie s
100
10
1
1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010
英国タバコ
年以降p-1919)
13.1%)
UK
to b acco14.8%(1919
14.8% (13.1%
o st
米国タバコ
年率
14.6%p .a.
US to b acco
14.6%
英国市場
年以降p10.3%)
UK
marke9.4%(1919
t 9.4% (10.3%
-1919)
o st
米国市場
年率
9.6%p .a.
US marke
t 9.6%
深刻な環境破壊、社会規範の重大な違反、
組織的な人権侵害などの記録が残っている会
社は、投資家によってその多くが排除されて
きました。航空宇宙・防衛産業を許容してい
る投資家でさえ、核兵器製造や対人地雷、ク
ラスター爆弾などに関与している事業者につ
いては、場合によっては間接的な関与も含め
て除外の対象とするケースが見られます。い
くつかの大手投資ファンドは、ノルウェーの
倫理評議会の推奨に従っています。
世界的に共通の評価を見つけることは困難
だ と 思わ れま す。 キ ンダー ・ ライ デン バ ー
グ・ドミニ社(KLD)では高い格付けをして
いるにも関わらず、ウォルマートはその受け
入れがたい労働事情を理由にノルウェー政府
ファンドによって投資対象外とされました。
フェアトレードのコーヒーを提供することで
信用されているはずのスターバックスは、英
国での課税逃れの慣行を理由とした不買運動
の タ ー ゲ ッ ト と な っ て い ま す 。 Dow Jones
Sustainability World Index や FTSE4Good Index に
組み入れられたにも関わらず、メドトロニッ
クはそのタックス・インバージョンの組織体
系について米国で批判されています。アマゾ
ンは環境に関する取り組みで賞賛を受けてい
る会社ですが、欧州と米国において競争原理
に反する租税措置が非難されています。今や、
企業に支払う義務があると社会的に考えられ
ている税金の強奪までもが、窃盗罪として捉
えられるまでになってきました。
長期的に見て、確立されている規範に違反
する事業を排除していくインパクトに着目す
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 21
ることで、問題をより深く掘り下げていくこ
と が 可 能 で す 。 Harrison Hong and Marcin
Kacperczyk はその共著『罪の価格』の中で、
1926 年~2006 年の米国内での「罪株式」取引
について検証している他、1985 年~2006 年の
欧州での実態についても着目しています。二
人は「罪深い株式」のことを「罪の三頭政治」
(酒、たばこ、ギャンブル)に関わる会社と
定義していますが、一部の検証ではこれに兵
器も含めています。この二人の著者は、一般
的にファンダメンタルと比較して割安に取引
される罪深い株式を機関投資家が避ける傾向
にあることを示しています。そして、このよ
うな銘柄から期待できるリターンは大きくな
るとしています。
たばこ会社は特に分かりやすい例です。20
世紀前半、たばこは一般的に有害なものと見
られていませんでした。1950 年代半ばまでに
4 本の異なる流れ、つまりたばこの煙の疫学、
動物実験、細胞病理学、発がん性物質に関す
る実証がひとつになります。そして喫煙、特
にシガレットの喫煙と肺がんの間の因果関係
が証明されたのです。この頃までに、尐なく
とも一部の投資家の間ではたばこ事業を避け
る動きがありました。
Hong and Kacperczyk はたばこ会社の「中立」
から「有罪」へのステータス替えの時期を、
米国では 1947 年~1965 年の間とし、この期
間中は市場を年間 3%下回ったと観察してい
ます。1965 年以降、たばこの健康への影響が
広く知られるようになると、米国のたばこ会
社は類似企業のパフォーマンスを 1965 年~
2006 年の期間にわたり年率 3%以上上回りま
した。さらにこの期間、米国のたばこ会社は
続出する訴訟に見舞われることになったにも
関わらず、海外の同業者を上回るパフォーマ
ンスを見せました。
今回この 115 年の全期間にわたるたばこ株
のアウトパフォーマンスを推定するに当たり、
当社独自の業界インデックス(付録記事から
抜粋)を利用しました。図表 3 に示すとおり
たばこ会社は株式市場全体を上回っており、
米国では年率 4.5%、英国では年率 2.6%(英
国の場合、若干短い 1920~2014 年が調査対
象)となっています。Hong and Kacperczyk が
研究対象とした 81 年全体を見ても、米国の
「罪株式」のリターンは「非罪株」と比べて
年率で 3~4%上回りました。1985~2006 年
の間、世界の「罪株式」は年率で 2.5%程度ア
ウトパフォームしました。
これに関しては別の研究もあり、『罪株式
のリターン』と題した研究の中で Fabozzi, Ma
and Oliphant は 1970 年から 2007 年の期間の複
数の市場から多数の「罪株式」抽出し、検証
をしています。三人の著者は罪深い活動につ
いて明確にされた定義を慎重に使い、投資す
るに当たり十分な流動性があると思われる株
式を 267 銘柄だけ選びました。 図表 4 はその
結果となります。サンプルとして採用された
株式はそれぞれ開始日と終了日が異なり、よ
って著者は取引が行われた期間について、個
別株のリターンと市場全体の時価総額加重指
数のリターンとの比較から超過分を算出して
います。その結果、世界の「罪株式」への投
資のパフォーマンスは高水準となったことが
分かりました。「罪」カテゴリー内で平均を
とったところ、平均超過リターンは尐ない方
から順に 5.3%(酒)、9.6%(バイオテクノ
ロ ジ ー ) 、 10.0 % ( ア ダ ル ト サ ー ビ ス ) 、
14.7%(たばこ)、24.6%(兵器)、そして
最も高い 26.4%(ゲーム)となりました。
パフォーマンスの平均は国によって異なり
ますが、それでも全体的に高くなっています。
超過リターンがマイナスとなった事例は 2 つ
しかありませんでした(台湾-2%、ポルトガ
ル-1%)。超過リターンは、3 つの市場を除
いてすべての市場で統計的に著しいものとな
りました。二つの論文では、パフォーマンス
の測定結果はパフォーマンスの測定基準の選
択方法により影響されることはほとんどない
とされています。
均等加 重戦略の能力的 限界はさ ておき、
「罪株式」から利益をあげる上での障壁は他
にもあります。第一に、単一の業務に専念す
る「ピュアプレイ」を行っている「罪株式」
が多く存在しないことが挙げられます。81 年
間の研究対象期間において、米国投資界に存
在 す る 何 千 と い う 企 業 の 中 か ら Hong and
Kacperczyk は 193 社の例を特定し、そのうち
2006 年まで生き延びたのはわずか 56 社でし
た。第二に、「罪株式」ポートフォリオは分
散投資ができない点です。第三に、悪への投
資には慣例がありません(バイス・ファンド
に対抗する競合が現れてきません)。 そして
第四に、「罪株式」の ETF(上場投資信託)
の事例は一つもないことです(ISE の SINdex
をベースにした FocusShares が上場しました
が、投資家が集まりませんでした)。以上、
個別の会社や業種からの「離脱」について検
討しましたが、この他にも「離脱」にはさら
に広いアプローチが考えられます。次に、市
場全体のボイコットという考え方について検
討してみます。
図表 4
21 ヵ国の「罪株式」の年率リターン(1970-2007)
出所:Fabozzi, Ma and Oliphant (2008). 台湾とポルトガルでは超過リターンがマイナスとなりました。
台湾
Taiwan
ドイツ
Germany
7
8
日本
Japan
10
ベルギー
Belgium
Portugal
ポルトガル
10
10
Denmark
デンマーク
13
Spain
スペイン
13
United Kingdom
英国
13
Hong Kong
香港
13
Netherlands
オランダ
14
フィンランド
Finland
17
フランス
France
19
カナダ
Canada
19
ノルウェー
Norway
20
韓国
Korea
21
オーストラリア
Australia
21
スイス
Switzerland
21
イタリア
Italy
23
シンガポール
Singapore
27
スウェーデン
Sweden
27
米国
United States
市場全体
Market return
27
市場全体の超過分
Excess return relative to the market
総リターン
xx.x
Total return
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 22
国からの離脱
最近のケースも数十年前も含め、様々な国
がこれまでに資本の引きあげや投資ボイコッ
トの対象となってきました。例えばビルマま
た は ミ ャ ン マ ー ( 米 国 の制 裁 )、 キュ ー バ
( ヘ ル ム ズ ・ バ ー ト ン 法) 、 イラ ン( 制 裁
法)、イスラエル(BDS 運動)、ロシア連邦
(EU の制裁)、南アフリカ(反アパルトヘイ
ト運動)などです。証券取引所を開設してい
る国は約 150 ヵ国ありますが、そのおよそ半
数がインデックスの主な会社によって対象外
とされています。大部分のグローバルインデ
ックスはフロンティア市場を除外しています
が、投資家によっては第二新興国市場と呼ば
れる市場や、場合によっては主要な新興国市
場までも除外されているベンチマークを選択
したり、あるいはあくまでも自分の基準でど
の市場が受けられるかを決めたりしています。
ポイントは、投資家のほぼすべてが、ポート
フォリオに組み入れる国について市場毎に個
別スクリーニングをしているということです。
今回検証したのは、汚職の程度に基づいて
各国のスクリーニングを行った影響力につい
てです。各国の評価は、Kaufmann, Kraay and
Mastruzzi (2010)の 3 名が世界銀行の支援で策
定 し た 「 世 界 ガ バ ナ ン ス 指 標 ( Worldwide
Governance Indicators: WGI)」を使用して行わ
れています。各指標はガバナンスに関する 6
つの大きな側面について、1996 年から現在ま
で 215 ヵ国について毎年スコアを付けたもの
で す 。 今 回 は 「 汚 職 指 標 ( corruption
indicator)」を選びましたが、他の 5 つの指標
との相関関係も非常に高くなっています。主
要なスコアは各国のパーセンタイル順位で、0
から 100 までで表されています。
図表 5 は汚職スコアの地域的分布を示して
います。汚職は、これまでの『イヤーブック』
で毎回取り上げられてきた 21 市場においては
大きな特徴となっていません。これはどちら
かと言うと発展途上国市場でよく見られる問
題です。
汚職に基づく国の除外
ここでは、当時の汚職スコアに基づき、各
国株式市場の 2000 年以降の総リターンを推定
します。投資リターンを測定するためには、
FTSE グローバル・エクイティ・インデック
ス・シリーズ(GEIS)を構成する 47 ヵ国そ
れぞれのインデックスを使用します。まずは
1 つのグループ分けの中で、株式市場のリター
ンの均等加重平均を計算します。グループ分
けは、各インデックスが 1 つのグループに 1
つだけになるように分けられます。リターン
はすべて共通の通貨(米ドル)建てで表され、
GEIS から除外された市場や消滅した市場のパ
フォーマンスも含まれます。ベネズエラにつ
いては 2003 年 6 月 20 日付けで除外されまし
たが、トータルリターン・インデックスの値
は 19 日に 94.78、20 日に 0 となり、値が
99.9%下落したものとみなされています。
図表 6 は 3 つのグループ分けについての結
果を示しています。具体的には、1900 年以降
継続的なデータの存在するイヤーブック掲載
国か否かでの分類、FTSE GEIS シリーズへの
採用資格取得日別の分類、世界銀行の汚職指
標による分類です。まず左側の棒グラフ(赤)
は初年度の 2001 年以降の平均リターンを表し
たもので、イヤーブックの 21 市場の年率平均
リターンは 5.9%となりました。歴史がもっと
短い国のインデックスは、年率 10.4%のリタ
ーンでした。
図表 5
2014 年 世界各国の汚職コントロールスコア
出所: Kaufmrann, Kraay and Mastruzzi (2010) 世界銀行のサイト www.govindicators.org の最新情報を利用して情報を更新。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 23
中央の棒グラフ(青)は FTSE シリーズに
組み入れられたタイミング別にランキングさ
れた国の情報で、そもそも FTSE シリーズは
1986 年 12 月 31 日に 23 ヵ国で開始されまし
た。7 ヵ国が 1999 年代に追加され(正確には
1990 年代に追加された国は 6 ヵ国で、あと 1
ヵ国は 1988 年に追加されたものです)、2000
年中に 18 ヵ国がさらに加えられました。当初
より組み入れられていた国の平均リターンは
年率で 7.4%、1990 年代の追加組は 8.1%、そ
して 2000 年に追加された国は 10.4%でした。
最後の一団は新興国市場がかなりの部分を占
め、これらはガバナンス標準の低い市場でし
た。
右側の棒グラフ(灰色)は腐敗指標によっ
てランキングされた市場の 2000 以降のリター
ンを示しています。14 市場が低いスコアで、
12 ヵ国は許容範囲、12 ヵ国は良好で、11 ヵ
国が高いスコアとなっています。上から 3 つ
のグループの平均リターンは 5.3~7.7%の間
となりました。これとは対照的に腐敗統制が
ひどい状態の市場では、平均リターンが
11.0%でした。実現リターンは、どちらかと
いうと腐敗行為が特徴となっている地域で株
式投資を行った方が高くなったのです。この
パターンは時間限定的なもので、もう尐し短
......
い期間を見ると、聖人のような 市場の方が罪
人よりも良い結果を残したときもありました。
この研究の期間が短かったため、単に得られ
た結果に新興国市場が上回った時期が反映さ
れただけかもしれません。
ただ、この研究結果には汚職以外にも多く
の要因が寄与している可能性はありますが、
私たちはガバナンス標準の低さというものが
リスク要因として価格に織り込み済みである
という見方に同調しています。Luo and Balvers
(2014)はボイコット要因を資産の価格形成に
導入し、どのサブグループの投資家が特定の
株式グループを避ける非金銭的好みをどの程
度持っているかということが反映されるよう
にしています。このモデルは米国のデータを
基にして慎重に実施した実証テストによって
裏付けられており、国を除外する作業に簡単
に応用することができました。
国の除外は 2002 年にカルパースによって
導入され、この基金は「許容新興国市場方針
( Permissible Emerging Market Policy )」で政
治的安定性、民主的体制、透明性、労働慣行、
企業責任、情報開示といった要因に関して最
低限の水準を下回る国々のすべてをブラック
リストに入れました。ロシアや中国をはじめ
とする(当時)高いパフォーマンスを示して
いた新興国市場に投資制限をかけたことは、
最 終 的に コス トが 嵩 む 結 果 と な り ま し た 。
「2006 年後半までのカルパースの新興国市場
ポートフォリオを見ると想定リターンに対し
て年率 2.6%の機会費用があったことになり、
つまりこのポートフォリオの運用開始以来、
総額 4 億米ドル超の逸失利益があったことに
なる」と Huppé and Hebb, (2011)は指摘して
います。2007 年にカルパースは新興国市場を
除外する戦略を外し、発展途上国の会社選定
は原則主義アプローチに転換しました。新興
国市場でも「離脱」ではなく「声」を使うこ
ととし、対話や積極的なエンゲージメント*、
株主アクティビズム(いわゆる「物言う株主」
の活動)を取り入れました。
注釈:エンゲージメントとは、機関投資家と投資先企業の間で対
話を持ち、コーポレート・ガバナンスや経営に関して株主として
の意見を企業側に伝え、また、企業側の考え方を把握することを
いう。
声の活用
投資家は声を持っており、会社から離脱し
てしまうとそれは失われます。投資家は企業
行動に影響を与えることを目的として、アク
ティビズム(積極的な活動)という形で声を
使います。経営幹部と議論を交わしたり、書
面を送付したり、委任状の送付・議決権の行
使を行ったり、規制当局や標準設定者へのエ
ンゲージメントを模索したりと、行うことは
様々です。このような活動は、責任ある投資
家であれば会社の業績改善や関係者およびコ
ミュニティにとっての社会環境向上に経営陣
を導くことができるという信念を基に行われ
ます。ヘッジファンドもまた大きな物言う投
資家で、ほとんどの場合は投資収益の最大化
を目指しています。
最も目につくアクティビスト(物言う株主)
は、コーポレート・ガバナンスを改善したり
株主利益に対してより効果的に取り組む意欲
のある経営陣に所有権を移動させたりするこ
とによって株価の動きを改善しようとします。
このような株主は会社の社会的責任よりも株
主へのリターンに対する意識が強く、満足の
いかない会社から離脱するのではなく、むし
ろそのような会社への「エントリー」を目指
すことも多く、そこで変化を推し進めるため
に声を使うことになります。
図表 6
汚職の傾向別にランキングした市場のリターン(2001-2014)
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、DMS データ、各種 FTSE イン
デックス、世界銀行
Annualized USD
return 2001–2014 (%)
2001~2014
年 米ドル建て年率換算リターン(%)
11.0
10
9.7
9.3
8
8.1
7.4
7.7
7.4
6
5.9
5.3
4
2
0
YB
YB
In YB Not
in YB
掲載国 非掲載国
Whether
in Yearbook
YB 掲載有無
1986
年 1990
年代 2000
年
1986
1990s
2000
FTSE 指数採用日別で順位付け
Ranked
by FTSE index entry date
不良
可
良 Excellent
優良
Poor AcceptableGood
汚職コントロールスコア別で順位付け
Ranked by Control of Corruption Score
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 24
企業の取り組みの中における「声」の利用
については、数々の研究が行われています。
Greenwood and Schor (2009) は米国における物
言う株主主導の買収について検証を行い、ヘ
ッジファンドは長期的なコーポレート・ガバ
ナンスへの取り組みや会社の業務改善よりも
割安なターゲットの発見や買収のきっかけ作
りにより適しているのではないかとの見解を
出しています。
最 近 で は Becht, Franks, Grant and Wagner
(2014)が、3 つの地域(欧州、北米、アジア)
で行われた 1,796 件の公開アクティビズムに
ついて検証しています。四人の研究結果によ
ると、累積市場調整後のリターンは大量保有
の開示時に各地域で 4.5~7.5%となり、続い
て業績発表時は各地域で 3.0~9.3%(アジア
が最低)となりました。リターンは、目的を
達成できなかったエンゲージメントよりも成
功したときのほうが大きくなっています。
図表 7 は全 3 地域から抽出されたサンプル
の累積市場調整後リターン(CMAR)をグラフ
にしたもので、アクティビストのエンゲージ
メントが届出またはマスコミ報道を通じて公
表される 20 日前から 20 日後を表したもので
す。リターンを見ると、エンゲージメントを
予見するかのように開示前にある程度の動き
があり、開示後の動きがその後予想される業
績についてのコンセンサスとなっています。
アクティビストの大量保有の発表に対して
市場がプラスの反応を見せているのに加え、
成功の成果が発表されたときにもさらに反応
が見られます。二つのコンポーネントを組み
合わせた場合、平均リターンは 15%を超えま
す。この研究から、コーディネートされたア
クティビズムの方が、個別のアクティビズム
よりもリターンが大きくなる傾向にあること
が分かります。企業戦略に関して声を活用す
ることは、経済的価値としてはプラスの側面
がありますが、社会的問題や環境問題につい
てはどのようなことが言えるでしょうか。コ
ーポレート・ガバナンスに関する作用として
証明されたことは、責任ある投資と関係のあ
る問題についての取り組みにも当てはまるで
しょうか。
社会問題に関する声
投資先企業との対話が活発になってくると、
株主のエンゲージメントについて書かれてい
る記事の数もそれにつれて増えてきています。
それでも残念なことに、企業の社会的責任に
対する活動のインパクトについては、これま
で質の高い研究がほとんどなされていません。
企業の社会的責任についての研究の大部分で
は、KLD(現 MSCI ESG)が考案した社会的責
任スコアなどの範囲を限定した静的な測定方
法しか使われていません。このようなデータ
は、収益力の高い企業が社会的責任を果たす
ための活動により多くの支出をするかどうか
をはっきりさせるのに役立てることはできま
すが、社会的責任に対して支出することで会
社の収益力が上がるという傾向があるかどう
かをはっきりとさせることはできません。相
関関係を調べていくと、企業の社会的責任に
ついて最も基本的な疑問がいくつか浮上して
きます。
図表 7
エンゲージメント公表前後の累積リターン(2000-2014)
アクティブな株主
出所: Becht, Franks, Grant and Wagner (2014)
累積超過収益(%)
Cumulative abnormal return (%)
6
5
4
3
2
1
0
-1
-20
-15
-10
-5
0
5
エンゲージメント公表日からの経過日数
Day relative to disclosure of engagement
10
15
20
他 の 証 拠 と し て 、 Dimson, Karakas and Li
(2015)が環境、社会、ガバナンスの取り組みに
関する大規模な独自データベースを引用して
います。米国の上場企業を検証しているこの
三人の研究は、「どの企業にアクティブオー
ナーがエンゲージメントしていて、彼らはど
のようにそれを実行しているか」 「アクティ
ブオーナーの活動は他の株主と競争的か協調
的か、そのときどのような効果を求めている
か」 「エンゲージメントを受けている企業は
どのような対応をしているか」 「その関与の
成功要因は何か」 「社会的責任の問題につい
てのエンゲージメントに対して市場はどのよ
うな反応を見せているか」 「アクティブオー
ナーは自身の目指す行動で成功を収めている
か」「その活動が財務的な業績にどう影響し
ているか」といった点を問う内容になってい
ます。
この研究の分析対象となったデータセット
は、アクティブなエンゲージメントの一時点
における記録である点で異例と言えます。こ
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 25
れは対象企業(2013 年は 4,000 社)と積極的
に対話を持ち、株主総会で株主権利を行使す
る(当該年に延べ 60,000 件の議決権を行使)
一人の機関投資家によって提供されたもので、
この投資家の場合、全体の 7%において要求
した変化が達成されました。一次サンプルの
内容は、1999 年から 2009 年までの間に上場
企業 613 社を対象として行われた 2,152 件の
案件(1,252 件は社会、環境、倫理に関する
案件、900 件はコーポレート・ガバナンス関
係の案件)でした。エンゲージメントの成功
率は 18%で、成功と記録されるまでには、平
均的に 1~2 年にわたる 2~3 件の案件が一つ
の流れとして必要でした。
対称サンプルと比較した場合、大規模で成
熟していて業績が振るわない企業の方が契約
にこぎつける可能性が高くなります。またそ
のファンドが特定の会社に大きな持分を持っ
ている場合、他の社会的な意識の高い機関投
資家(年金基金のアクティビストや倫理的フ
ァンドなど)が株主になっている場合、その
対象企業に評判的な不安がある場合、ガバナ
ンス標準が低い企業の場合などは、契約の可
能性がさらに高くなります。
エンゲージメントの特徴や戦術の分析を見
ると、同じ対象企業との過去のエンゲージメ
ントで成功体験があると、その後のエンゲー
ジメントの成功確率が高まるということが分
かります。さらに、ファンドマネージャーと
その他のアクティブな投資家や株主との協調
があれば、それは特に社会的、環境的、倫理
的な案件である場合、関与の成功にプラスの
影響となります。
図表 8 は企業の社会的責任に関するアクテ
ィビズムに対して市場がどのような反応を示
しているか、サンプル全体のエンゲージメン
ト導入後のパフォーマンスを表しています。
累積超過収益率(CAR)は総リターンを基に
計算され、ファーマ・フレンチの規模十分位
マッチモデルを使って規模要因を調整します。
サンプルは成功案件(エンゲージメント導入
前 に 打ち 出さ れた 目 標 を 達 成 し た 案 件 ) の
CAR と非成功案件(達成しなかった案件)の
CAR に区分されます。
Dimson, Karakas and Li は、企業の社会的責
任の取り組みによって生じた規模要因調整後
の累積超過収益率(CAR)がエンゲージメン
ト導入当初からの 1 年間で+2.3%であったと
しています(図表 8 の青線参照)。このサン
プルの平均的な企業の場合、運用成績は成功
案件(+7.1%)の方が上回っており、目標が
達成された 1 年後には徐々に横ばいになって
いきます(赤線)。非成功案件に対しては、
市場の反応は中立です(灰色線)。
超過収益率は環境的/社会的取り組みとコー
ポレート・ガバナンスの取り組みのそれぞれ
の成功案件同士で類似しています。また、環
境的/社会的取り組みとコーポレート・ガバナ
ンスの取り組みのそれぞれの非成功案件同士
でも類似しています。つまり、投資家は社会
的アクティビズムに対して、ガバナンスに関
するエンゲージメントで成功するのと同じよ
うな金銭的価値を見出しているということに
なります。アクティブな株主はエンゲージメ
ントがうまくいかなかった場合でも、関係者
に利点を与えた一方で、企業価値は壊しませ
んでした。もちろん、この研究は株主アクテ
ィビズムのたった一つの、振り返れば成功で
あった事例に着目しているのは確かです。ス
キルの低いアクティビズム、あるいは資金力
に乏しいアクティビズムは見返りも尐なくな
るリスクを背負っています。また、アクティ
ブな株主のエンゲージメントは大きなポート
フォリオの小さな部分を占めるに過ぎず、ま
た全体のパフォーマンスに対するその影響力
もそれなりであるということに留意しなけれ
ばなりません。そして最後の但し書きとして、
このようなアクティブ株主から得られる見返
りは期間限定であり、それ以降の期間におい
てはエンゲージメントから得られるメリット
は小さくなる可能性が大きいということも覚
えておかなければなりません。
離脱か声かの選択
投資家はすでに、コーポレート・ガバナン
スの分の配当金が会社にはあるということに
気づいています。ゆえに会社は高い市場評価
を求め、割安な資本調達を行い、しっかりと
した株主基盤の恩恵にあずかるのです。今回、
企業の社会的責任という付加価値が会社には
あるということを示す研究についてご報告し
てきました。そのような会社は株主をさらに
引き寄せ、環境的・社会的な事故を防ぎ、高
い PER で株価が推移するはずです。
企業にとっても株主にとっても、高い倫理
原則に従うことは重要なことであり、結果的
に会社の業績にその影響が表れます。投資家
は 、 ガバ ナン ス原 則 だけで な く環 境的 な 方
針・慣行や人権保護の記録、事業展開地域に
おける社会貢献に関する透明性の拡大を企業
に対してますます求める傾向にあります。
図表 8
エンゲージメント後の累積超過収益率(CAR)
出所:Dimson, Karakas and Li (2015). フレンチ教授のウェブサイトからファーマ・フレンチ規模調整後リターンを
参照。
累積超過収益(%)
Cumulative abnormal return (%)
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-1
0
1
2
3
エンゲージメン
All engagements
ト全体
4
5
6
7
8
9 10 11
期間(月)
Event Window (in months)
成功案件
Successful engagements
12
13
14
15
非成功案件
Unsuccessful engagements
16
17
18
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _ 26
責任ある企業が付加価値を上乗せした株価
で取引されるのと対照的に社会規範に反する
企業は安い株価で売られ、結果的に罪深い株
式への投資から得られるリターンが大きくな
るという現象が起きています。このような好
みが投資家の間で存続している間は、罪深い
株式からの総リターンも多くなることが予想
されると考えなければなりません。「罪」の
割引が常態化すれば、キャピタルゲインの期
待値は「罪株式」と「非罪株式」の間で同じ
となります。すなわち「罪株式」で言うとこ
ろの超過リターンは、徐々に増額されていく
配当金に相当するということになります。こ
れは社会通念に反して、「罪株」投資家の投
資期間を長くするインセンティブを与えるこ
とになります。
そうすると、投資家はジレンマに陥ります。
反対すべき株式から「離脱」すべきか、それ
とも「声」を利用して対象を受け入れ可能な
企業に変えるべきか。その決断は多くの場合、
忠誠心(つまり、その会社に投資を続けたい
かどうか)と会社が良い方向に変わる見通し
について自分がどれだけ強く感じているかに
左右されるものと思われます。また、反対す
べき株式の除外と分散効果の喪失により失う
可能性のあるリターンにもよります。規模の
大きな機関であれば、非常に大きなポジショ
ンを解消するコストも考慮の対象となる可能
性があります。
図表 9
世界指数からの除外の影響予想
出所:Ang (2014, p.109). 非 BDT とは銀行・防衛・たばこ以外の業種を表します。
指数ポートフォリオに算入された産業
非 BDT
銀行
防衛
最適化ポートフォリオ
たばこ
最小ボラテ
ィリティ(%)
最大シャー
プレシオ
Andrew Ang (2014) はリスク・リターンの将
来的な見通しに対する除外のインパクトにつ
いて予測しています。その分析対象は FTSE
全 世 界指 数 ポ ート フ ォリオ で 、こ の 指 数 は
2012 年時点で 39 業種、2,871 銘柄の株式で
構成されていました。Ang は業界のリスクと
相関性(テクニカル重視の方向けに LedoitWolf 予測を使用)と、期待リターン(BlackLitterman 予想を使用)を推測しています。そ
して無リスク金利を 2%とし、様々な業種を
除外しながら最適なポートフォリオ構成を計
算し、最小ボラティリティのポートフォリオ
のリスクと、スクリーニングを実施した各ポ
ー ト フォ リオ につ い てリス ク ・リ ター ン 率
(シャープレシオ)の最大値について報告し
ています。
図表 9 はその結果です。一番上の行は、す
べての業種を投資適格とした場合の最小リス
クと最大シャープレシオを示しています。そ
の下の 3 行は、除外のインパクトを示してい
ます。すなわち、最小ボラティリティのポー
トフォリオのリスクが 12.05%から 12.10%に
上がり、シャープレシオの最大値が 0.4853 か
ら 0.4852 に低下しています。期待リスクとリ
ターンに関しては、スクリーニングをするペ
ナルティは小さいようです。
本年のイヤーブックでは比較記事として、
す べ ての 業種 には そ れぞれ 異 なる ファ ク タ
ー・エクスポージャーがあり、よって「罪株
式」もまだ、より魅力的なカウンターパート
とは異なる動きをする可能性が残されている
ということについても記しています。このた
め、離脱しても実現リターンが経済的に残念
な結果となることも、投資として成功となる
場合もあります。
若干異なる方法論ではありますが、
Humphrey and Tan (2014) も個別銘柄レベルの
データを用いて、パフォーマンスに対するコ
ストを引きずる変数を避けながら社会的責任
のある投資信託の特徴を真似たポートフォリ
オでシミュレーションをしています。その結
果、スクリーニングをしてもポートフォリオ
のリスクまたはリターンに対して本質的なイ
ンパクトはなかったということが分かりまし
た。平均をとると、社会的責任ある証券で構
成されるポートフォリオに投資しても、投資
家には害も利益もありません。
ポートフォリオから証券を除外するという
ことは、分散投資のメリットがなくなるだけ
ということになります。では、前述のグルー
プを 3 つまで除外しても、将来期待されるパ
フォーマンスに対する影響は微々たるものな
のでしょうか。その説明を Ang が自身の分析
の中でしていますが、エクスポージャーの分
散を 39 業種から 36 業種にした場合の小さな
損失は微々たるもので、分析の中の期待リタ
ーンに関係するものは市場指数との比較にお
ける各業種のベータだけでした(つまり、罪
産業から期待できるプレミアムはないという
ことです)。
Humphrey and Tan は、罪深いか聖人的かの
区別とは関係なく、ポートフォリオの中核を
成す主要保有資産の圧倒的な価値に支配され
ているため、「ピュアプレイ」の「罪株式」
の影響は弱められるとその著作の中で述べて
います。Stierli (2014) はクレディ・スイスの調
査の中で、スクリーニング基準を厳密に適用
することにより世界の投資ユニバースは 65%
以上縮小し、この場合のインパクトはより大
きなものとなり得ます。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 27
ポジティブスクリーニング
これまで、高い水準の社会的責任基準を達
成している企業は株式市場で高いパフォーマ
ンスを実現してきたことを確認しました。投
資家のポートフォリオを責任ある企業寄りに
傾斜させることで、運用成績にプラスの効果
が出て報われるとする考え方もあります。こ
の傾斜戦略は、ポジティブスクリーニングと
呼ばれることもあります。
ここでのジレンマは、企業の社会的責任が
株価にどのような影響を及ぼすか、明確な証
拠が必ずしも存在するわけではないというこ
とです。企業の行動が改善すると、その株式
の感覚的なリスクは減るかもしれません。こ
の場合、投資家が求める利益率も小さくなる
と思われます。小さくなりながらも将来的に
利益を出すためには、株価が上昇する必要が
あります。したがって、会社が「責任ある」
企業になるに従いその株価は上昇するはずで
あり、いったん望まれる企業になれば、その
持分は責任感がそれほど強くない別の投資先
よりもリターンが小さくなるはずです。ポジ
ティブスクリーニングとは高い行動基準が確
立している企業を選定する作業であり、よっ
てこれは投資リターンの低さと連動すること
もあるということです。
数 多 く 引 用 さ れ て い る Gompers, Ishii and
Metrick (2003) による研究では、この効果に関
するケーススタディがなされています。この
研究によると、彼らが構築したガバナンス指
数は 1990 年代の株式市場の動向と正の相関性
があることが分かりました。すなわち、ガバ
ナンスが良好な会社は、株価も上がるという
ことです。彼らの出した結果は、多くの機関
投資家が投資対象となる株式の選択基準とし
て、良好なガバナンスを強調するきっかけと
なりました。
その後も Bebchuk, Cohen and Wang (2013)
の研究で、ガバナンス体制の良い企業からの
リターンが高くなったことは、1990 年代に市
場参加者が良いガバナンスのメリットについ
て尐しずつ学習した結果だということが示さ
れています。良いガバナンス体制を敷いてい
た企業の株価は次第に上昇したことから、そ
の後(2000 年~2008 年)米国株のリターン
からガバナンスによるプレミアムが消滅する
ことになります。
Borgers, Derwall, Koedijk and Ter Horst (2013)
は,株主利益に対して敏感になることの重要
性について学んだ同様の時代が他にもあった
としています。企業の責任に対して前向きな
戦略を持つ企業のパフォーマンスは、1992 年
から 2004 年にかけて良かったものの、その後
(2005 年~2009 年)は高いリターンを生み
出すことができませんでした。
これが意味することは、責任ある企業の株
式を購入することが、必ずしも金融市場にお
いて報われる戦略として見ることができるわ
けではないということです。経済的に見てよ
り良い行動というものは、投資家自身が保有
または購入を希望している銘柄の会社にエン
ゲージすることかもしれません。そうすれば、
ポジティブスクリーニングや離脱によって達
成できることよりも、多くの大きな改善を成
し遂げやすくなる可能性があります。
ではこれをどのように実践すればよいので
しょうか。アクティビストとして成功する確
率を最大化するためには、資産家は Gollier and
Pouget (2014) が提唱する「洗濯機」戦略とい
うものを検討してみても良いかもしれません。
二人は、大口の投資家であれば責任ある会社
ではない会社を購入して、これをより責任あ
る事業者へと変えていくことによって、継続
的なアウトパフォーマンスを実現できると主
張しています。すべてきれいにした後の株式
は、アクティビストの達成事項を反映した株
価で売却することができるかもしれません。
結論
投資家には、受け入れられない企業行動へ
の対処法として「離脱」か「声」の選択肢が
あります。「離脱」は、魅力のない属性のあ
る会社、業種、国への投資を除外するという
ことです。「声」とは会社とエンゲージした
り、その会社の行動を変えるための他の方法
を模索したりすることです。「離脱」を行っ
た場合、別のベンチマークと比べてパフォー
マンスの乖離(プラスまたはマイナス)が生
じ得ます。大規模な資本引きあげ、例えば市
場全体からの退避などは、特に目立った影響
が出る可能性があります。
社会的に責任を持つだけでなく投資先企業
との関わりを持つことは、多くの事例で収益
性があがることが示されてきました。私たち
は、同様の志を持ったアクティビストとの間
で行動が調和するとき、責任ある投資戦略が
より大きな成果をあげるという結論に至って
います。成功に向けて責任ある投資をするに
は、資産運用資源に対する重大なコミットメ
ントが必要となり、これにはコストも伴うか
もしれません。誰にでも訪れるわけではあり
ませんが、繰り返し訪れる取り組みの機会に
次々と注目する戦略(「洗濯機」モデル)は、
責任ある資産家に対して興味深い方向性を提
示してくれます。
photo: dolgachov / istockohoto.com
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 29
株式の割引率は平均に
回帰するのか?
平均回帰性は自然に生じる現象で、逆張り投資家の選択の判断とその
正当化に対し強力な根拠を提供するものです。分かりやすいマクロシ
グナルは非常に高い価値を持ちますが、なかなか捉えられるものでは
ありません。私たちは投資家の皆様より「株式市場の資本コストは予
測可能なのか」「変化の可能性や幅を定量化することは可能なのか」
といったご質問をたびたびいただきます。投資家たちは、資本コスト
の均衡点や平均回帰の水準が果たして存在するのか、もし存在すると
すればその回帰はどれくらいの速さで実現するのかを知りたいと考え
ているようです。
デイビッド A. ホーランド、ブライアント・マシューズ、プラティヤシャ・ラス(クレディ・スイス・HOLT
バリュエーション&アナリティクス部)
「これからは今までとは違う」 – Yogi Berra
米国における割引率の最近の動向
HOLT は 30 年以上にわたり機関投資家のお
客様に株式のバリュエーションやリスクにつ
いて独自の視点を提供してきた、クレディ・
スイスの一事業部門です。HOLT が算出する
割引率は上場企業の実質的なインプライド資
本コストを表しており、地域リスクおよび業
種リスクの他、企業規模やレバレッジでも調
整されます。現在株価に将来のキャッシュ・
フロー予測を絡めているため、これは市場の
内在価値を測定する指標となります。投資家
のリスク選好度が高い(あるいは低い)とき、
この割引率は低下(あるいは上昇)します。
2008 年 9 月のリーマン・ブラザーズの破綻の
際に急上昇して以来、割引率は多くのファン
ドマネージャーが非常に注目するシグナルと
なっています。このレートの 100 ベーシスポ
イントの上昇は、一般的に株式バリュエーシ
ョンの 20~25%分の下落にも相当します。割
引率の動向を把握することにはメリットも多
く、将来的な収益力につながる可能性もあり
ます。
2008 年の金融危機で割引率が急上昇した後、
企業価値を評価する際に適切となる割引率に
ついて、私たちの見解を求める電話が殺到し
ました。割引率は金融危機以前の水準まで戻
すのでしょうか。それとも新たな高みへと上
昇を続けるのでしょうか。「正常化」までに
は、どれくらいの時間を要するのでしょうか。
これらの疑問に答えるためには、割引率のダ
イナミックな動きについて理解する必要があ
ります。
米国の工業・サービスセクターの加重平均
実質割引率を、1976 年以降の時系列で表示し
たものが図表 1 です。中央値は 5.6%で、25
パーセンタイルと 75 パーセンタイルはそれぞ
れ 4.6%と 6.8%です。当日の割引率は 4.2%
で、これは米国株式市場が相対的に割高(時
系列で見た場合、10 パーセンタイル近辺にあ
ります)であることを示しています。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 30
図表 1
米国の工業・サービスセクターの加重平均実質割引率月足時系列推移(1976-現在)
出所:クレディ・スイス HOLT
米国ディスカウントレート
1976 年 1 月‐ 2014 年 12 月
10.0
石油危機
9.0
1981 年
景気後退
ブラックマンデー
メキシコ通貨危機
IT バブル
エンロン
ワールドコム
欧州債務危機
崩壊
メキシコ債務不履行
1980 年
景気後退
クウェート侵攻
ロシア債務不履行
LTCM 破綻
金融危機
9・11 同時多発テロ
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
US discount rate (%)
3.0
2.0
米国割引率
90 パーセンタイル
25 パーセンタイル
75 パーセンタイル
メジアン
10 パーセンタイル
1.0
現在の割引率: 4.2
90 パーセンタイル: 7.6
75 パーセンタイル: 6.8
メジアン: 5.6
25 パーセンタイル: 4.6
10 パーセンタイル: 4.0
0.0
76 年 1 月 78 年 1 月 80 年 1 月 82 年 1 月 84 年 1 月 86 年 1 月 88 年 1 月 90 年 1 月92 年 1 月 94 年 1 月 96 年 1 月98 年 1 月 00 年 1 月 02 年 1 月 04 年 1 月 06 年 1 月 08 年 1 月 10 年 1 月12 年 1 月 14 年 1 月
図表 1 は米国の経済発展に連動すると思わ
れる複数年にわたるトレンドと、特定の市場
イベントやマクロ経済的イベントと連動する
と考えられる急激な変動を示したものです。
急上昇は、その時期に市場のパニックやリス
ク回避があったことを示しています。2008 年
後半の大きな上昇は、金融危機のパニックが
広まっていたことを物語っています。逆に、
2000 年にピークに達した IT バブル前の異常な
リスク選好は、その後の 2000 年代半ばにかけ
ての商品市況の上昇と共に、同時期の割引率
の大きな低迷と連動しています。
一般的な経験則として、割引率が 5%を下
回ると投資家は浮かれすぎの状態であり、7%
を超えると悲観的過ぎる状態にあることを示
していると言われます。図表 1 を見ると、市
場が相対的に割安または割高の状態が 1 度に
何年も続く可能性のあることが明らかです。
次の言葉はジョン・メイナード・ケインズの
名言です。「市場はあなたや私の支払い能力
よりもずっと長く非合理的なままでいられる」
1
主な株式市場の割引率の近況
主要な株式市場のインプライド割引率は毎
週計算され、各市場の値ごろ感やリスク選好
の相対的感覚を得るために、当社のお客様に
ご利用いただいております。原則として、割
引率が 75 パーセンタイルを上回った場合、あ
るいは 25 パーセンタイルを下回った場合、市
場はそれぞれ悲観的な領域にいるか楽観的領
域にいるかのどちらかになります。これはフ
ァンドマネージャーがどの市場のエクスポー
ジャーを増やし、どこを避けるかという決断
を下す際に役立ちます。
1
この言葉の最初の引用は『フォーブス』誌 1993 年 2 月号
に掲載された A. Gary Schilling のものであるが、ケインズの
言葉とされることが多い。
図表 2 は 2015 年 1 月 10 日現在のインプラ
イド割引率を三角で示したもので、最も低い
国から最も高い国までが並べられています。
インドネシア、中国、スイスは割引率が最も
低くなっており(リスクオンの状態)、一方
でロシア、アルゼンチン、イタリアが最も高
くなっています(リスクオフの状態)。青の
縦棒は、各国の過去 10 年間にわたる 25~75
パーセンタイル間の幅を示したものです。黒
線は 10 年間の中央値です。このグラフは相対
的な観察に役立ちます。現在、10 カ国が 25
パーセンタイル以下で推移していますが(リ
スクオンの状態)、一方、75 パーセンタイル
以上で取引されているのはロシアだけです
(リスクオフの状態)。全 23 カ国中 15 カ国
が 10 年間の中央値以下にあります。これは地
域別のリスク選好度を俯瞰的に見るためには
最適なチャートになりますが、平均回帰の発
生の有無、また起こるとすればどれくらいの
速さで起こるのかについては示していません。
米国割引率の年間変動についての一般的な
考察
仮に、割引率が平均回帰性を持っていたと
します。このとき、米国の工業・サービスセ
クターの割引率がおよそ 6%です。この当日
レートをキャッシュ・フロー割引モデルに適
用してみると、米国株式のほとんどが割高で
あるとの結果が出ます。割引率には強い自己
相関性があるため、来月の割引率の推測とし
て最も適切であるのは平均回帰の水準ではな
く、どちらかと言えば直近で観察された水準
に近くなると考えられます。ファンドマネー
ジャーは報酬を受け取って市場に参加してい
ます。よって、直近のインプライド割引率を
使うことについては合理性があるものの、十
分な注意が必要となります。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 31
図表 2
主な株式市場の工業・サービスセクターのインプライド割引率
出所:クレディ・スイス HOLT 2015 年 1 月 10 日現在
ディスカウントレート(%)
国別ディスカウントレート
10
10 年
9
中央値
8
7
ディスカウン
トレート
6
昨年
5
4
3
U
中国
インドネシア
米国
スイス
インド
日本
メキシコ
トルコ
南アフリカ
価値の判断において割引率が重要であるが
ゆえに、それが平均回帰しているのかランダ
ムウォークしているのかを理解する利点は十
分にあると思われます。では、もし平均回帰
するのであれば、平均回帰の水準やそのレー
トはいくつなのでしょうか(割引率がどちら
の方向に向かっているのかが分かっていると
きは、個別銘柄の選択は必要ありません)。
手始めに、割引率が過去 12 ヵ月でどのように
推移してきたかを見てみます。この情報を使
うと、「最悪」「基本」「最善」の各シナリ
オに基づいた確率の樹形図を作成することが
できます。1976 年以降の統計のまとめを表 1
に掲載しました。
1976 年 以 降 の 米 国 の 割 引 率 の 中 央 値 は
5.6%で、激しく上下に振れています。この間、
割引率が 4.0%を下回った期間が 10%あり、
また 7.6%を上回った期間が 10%あります。
この外側の値は最高と最低のシナリオを定量
化するために使用することも可能ですが、そ
うすると来月の割引率の最善の指標が当月の
割引率であるという事実が見落とされてしま
います。
この性質を利用して、私たちは 1976 年以
降の割引率の 12 ヵ月の変化を算出しました。
変化の中央値はマイナス 10 ベーシスポイント
となります。つまりこれは、1 年間で見ると
割引率は現在と基本的には変わらないという
ことを示しています。また割引率が 110 ベー
シスポイント以上下落した期間は 10%、100
ベーシスポイント以上上昇した期間は 10%で
した。一般的な経験則から、確率の樹形図を
作成するときには 10、50、90 の各パーセン
タイル値を使って最悪、基本、最高のシナリ
オを設定します。よって、割引率が今後 12 ヵ
月間に±100 ベーシスポイントの変化を想定す
ることは、最悪のケース(+100 ベーシスポ
イント)と最高のケース(-100 ベーシスポ
イント)のシナリオとしては申し分なく理に
適うことです。
割引率の変動の仕方は、市場が楽観的な時
と悲観的な方に振れている時とでは違いがあ
るでしょうか。表 1 は、割引率の始まりが
5%未満(楽観的な状態)で、7%を超えた時
点(悲観的な状態)での過去 12 ヵ月間の変動
ブラジル
韓国
フランス
カナダ
オーストラリア
香港
イタリア
ロシア
アルゼンチン
ドイツ
サウジアラビア
割合(%)を示したものです。特に市場が悲
観的になっているときの変動の非対称性に注
目してください。割引率が著しく下落するの
は、市場が悲観的になっているときの方が多
くなっています。この非対称性は、割引率が
上下に振れているきに平均回帰が発生してい
る可能性があることを示唆しています。
米国の割引率の月別の変動がどのように起こ
っているか
割引率の動きをさらに良く理解するために、
図表 3 に示す月別の変動の分布に注目します。
月別の変動の中央値は-1 ベーシスポイントと
無視可能な範囲であり、変化の 10 パーセンタ
イルは-26 ベーシスポイント以下、90 パーセ
ンタイルは 26 ベーシスポイント以上となって
います。標準偏差は 24.6 ベーシスポイントで、
年率に換算すると 85 ベーシスポイントとなり
ます。
金融関係のデータにはよくあることですが、
正規分布(赤線)から得られる予測と比較し
て、中央部分ではより密集し、末端にいくほ
ど広がる(尖度が大きい)という状況が観察
できます。
表1
1976 年以降の米国割引率と 12 ヵ月間の変動
出所:クレディ・スイス HOLT のデータおよび分析より
パーセンタイル
米国の割引率
割引率の 12 ヵ月の変動(全)
p(10%) p(25%)
p(50%) p(75%) p(90%)
4.0%
4.6%
5.6%
6.8%
7.6%
-1.1%
-0.6%
-0.1%
0.5%
1.0%
割引率の 12 ヵ月の変動 5%未満
-0.9%
-0.4%
0.2%
0.7%
1.3%
割引率の 12 ヵ月の変動 7%超
-1.7%
-1.0%
-0.1%
0.3%
1.0%
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 32
まとめると、翌月の割引率の最良の推定値
は当月の値であり、26 ベーシスポイント以上
下落する確率が 10%(リスク選好度が上昇す
ると予想した場合の最善のシナリオ)、26 ベ
ーシスポイント以上上昇する確率が 10%(リ
スク選好度が上昇すると予想した場合の最悪
のシナリオ)となります。
割引率は平均回帰するでしょうか。私たち
は割引率とその 1 ヵ月前の値をグラフに描く
ことで、これを比較テストしてみました。ラ
ンダムウォークの動きは傾き 1 の線で、平均
回帰を示す場合は傾きが1より小さくなりま
す。その結果は図表 4 に示すとおりです。
図表 3
1976 年以降の米国割引率の 1 ヵ月の変動の分布
出所:クレディ・スイス HOLT のデータおよび分析より
割引率の 1 カ月の変動の分布
‐0.265
10.0%
14.4%
0.264
80.0%
71.7%
10.0%
13.9%
入力データ
最初値
‐1.1678
最大値
1.4012
平均値
‐0.00303
標準偏差
0.2463
値
459
正規分布
最小値
-?
最大値
+?
平均値
‐0.00303
標準偏差
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
0.2463
1.5
傾きは 0.986、相関係数は 0.985 となり、平
均回帰の兆候は弱いという結果になりました
(そして、自己相関性が強く表れています)。
このサンプルの平均回帰点は 5.6%であり、こ
れは現在の割引率と平均回帰レベルの間のス
プレッドの 98.5%が 1 ヵ月の間、標準偏差
0.25%で変動しないことが期待されるという
ことを意味しています。仮に現在の割引率が
4.20%だった場合、翌月のレートで最も可能
性の高い値は 4.22%±0.25%ということになり
ます 。ボラティリティと 0.25%のノイズで平
均回帰の可能性と 0.02%のシグナルは消滅し
ます。何か明確なことがあるとすれば、シグ
ナルを支配しているのがそのノイズであると
いうことです。これによって割引率の動きは
ランダムに見えるようになり、明確な平均回
帰レベルが見つかりにくくなります。どのよ
うに見ても、割引率の毎月の変化はランダム
ウォークのようになります。
HOLT の割引率はリスク選好全体を測定し、
株価変動はランダムウォークの特徴を持つも
のであることから、HOLT の割引率がランダ
ムウォークに近寄るということも納得できま
す。 外見上は平均回帰性が存在しなくとも、
長期投資を行っている投資家であればこの問
題を放置することはできません。すなわち、
一見して割引率が非常に高いか低い状態にあ
るからといって、その極端な値がいつまでも
続くとは限らないということです。割引率の
将来的な予想は、単純な予測モデルに誤差項
を導入することで算出が可能となります。あ
る与えられた水準の確率は、t が月数、DR(0)
が本日の割引率、LTDR が長期割引率である
とき、
2
DR(t) = LTDR + 0.985t x [DR(0) – LTDR] + ε(t)
(1)
と表されます。
2015 年 1 月 10 日の米国の割引率は 4.2%で
したが、これは歴史的に見ても低い範囲にあ
ることに間違いありません。前述の数式を使
用すると、当日の割引率の変化に関する確率
表の作成が可能となります。表 2 の一番上の
行は経過月数を表し、左側の列は割引率が所
定の値以下になる累積確率を表しています。
中央値が時間の経過とともに、想定平均回帰
点である 6%に徐々に近づいていることに注目
してください。1ヵ月先を見た場合、米国割
引率で最も確率の高い数値は 4.2%で、3.9%
以下になる確率は 10%、4.5%以上になる確率
は 10%であることが分かります。12 ヵ月先は、
期待割引率が 4.5%で、3.4%以下(強いブル
相場)になる確率が 10%、5.6%以上(これは
平均回帰したも同然です)になる確率が 10%
です。市場はノイズにあふれた場所だと言え
ます。
図表 4
1976 年以降の米国割引率と前月の値の比較
出所:クレディ・スイス HOLT のデータおよび分析より
当月のレート (t) vs. 前月のレート(t)
10.0
y = 0.9864x + 0.0736
R² = 0.9707
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
当月の割引率 (t) %
2.0
1.0
0.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
‐1) %
前月の割引率 (t
7.0
8.0
9.0
10.0
2
5.6% + 0.985 x (4.20% – 5.6%) = 4.22%となる。これ
はボラティリティが 25 ベーシスポイントのときのシグ
ナル・ノイズ倍率 2÷25 = 0.08 と比較すると大きな違い
となる。このようなノイズの海の中でかすかなシグナ
ルを検知する大変さを想像してみてください。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_ 33
図表 5
米国の工業・サービスセクターのインプライド ERP の時系列変化
出所:クレディ・スイス HOLT
株式リスクプレミアム米国
1976 年 1 月 - 2014 年 12 月
米国割引率(%)
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
-2.0
株式リスクプレミアム
90%パーセンタイル
75%パーセンタイル
中央値
25%パーセンタイル
10%パーセンタイル
現在の ERP: 4.8
90 パーセンタイル: 6.4
75 パーセンタイル: 5.7
中央値: 4.5
25 パーセンタイル: 2.7
10 パーセンタイル: 0.4
-4.0
Jan-76
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
Jan-
引率を判定し、これを使って個別銘柄の評価
をしています。株式投資を行う必要がある投
資家や、市場が総体的にほぼ正常な状態にあ
株式についてのインプライド・エクイティ ると信じている投資家であればマーケット・
リスクプレミアム(EPR)は、加重平均割引 ニュートラル戦略を取り、株式評価において
率から推定することが可能です。図表 5 は、 は最新のインプライド割引率を使用すること
米国の工業およびサービスセクターの企業の に問題はないと思われます。
実績をグラフ化したものです。投資家はリス
一方で資産を配分して運用する者やストラ
ク回避の状態にあり、株式投資の利回りのリ テジストであれば市場の魅力についても概観
スクの高さよりも、安全で「無リスク」な国 する必要があり、その上でインプライド割引
債利回りのプレミアムを求めているというこ 率をシグナルとして利用することが可能です。
とになります。1976 年以降のインプライド
しかし、これは至難の業です。インプライド
ERP の平均は 4.5%で、これは Mauboussin and
Callahan が調査を行った 1928 年から 2012 年 割引率や ERP の中に何らかの平均回帰の手掛
までの 4.2%や、Dimson, Marsh and Staunton かりがあったとしてもボラティリティに邪魔
が調査を行った 1963 年から 2012 年までの されてしまい、これは平均回帰が起こる直前
4.5%と整合性のある結果となっています(値 であっても、得られるマクロ予測はせいぜい
怪しいものにしかならないことを示唆してい
はすべて米国国債との比較です)。
インプライド ERP は非常にボラティリティ ます。どのように見ても、割引率や ERP の毎
が高く、株式市場のリスク選好度の浮き沈み 月の変化はランダムウォークとなってしまい
を反映しています。ERP が 0%の場合は行動が ます。市場は外見上、長期にわたり不合理な
リスク中立的であることを示しており、0%未 状態が続くこともあり、そうなれば直近の平
満の場合(過去には IT バブルのときなど)は
均回帰の議論の未熟さはすぐに暴かれてしま
積極的にリスクをとる動きを示唆しています。
金融危機以降高い水準にあった ERP は、量的 うのです。
緩和や成長鈍化懸念を原因とした無リスクの
国債利回りの落ち込みによってさらに高騰し
ました。現在の ERP は 4.8%で、これは中央
値の水準です。今後は、量的緩和終了による
無リスク金利の上昇によって、ERP は低下す
る公算が大きくなっています。
表2
割引率の変化は株式のリスクプレミアムにど
のように表れるか
平均回帰についての苦い真実
2015 年 1 月 10 日付け米国割引率 4.2%の経過月数別確率的変化
「予測することは、特に未来については危険
な行為だ」 – デンマークの格言
出所:クレディ・スイス HOLT のデータおよび分析より
平均回帰の期待は、多くの投資を呼び込み
ます。分かりやすいマクロシグナルは非常に
高い価値を持ちますが、なかなか捉えられる
ものではありません。クレディ・スイス
HOLT では、株式市場は総体的に公正価格で
構成されているという前提でインプライド割
経過月数
累積
確率
4.2%
1
3
6
12
24
36
60
10%
3.9%
3.7%
3.6%
3.4%
3.2%
3.1%
2.8%
25%
4.1%
4.0%
3.9%
3.9%
3.9%
3.9%
4.0%
50%
4.2%
4.3%
4.4%
4.5%
4.7%
4.9%
5.3%
75%
4.4%
4.6%
4.8%
5.1%
5.6%
5.9%
6.5%
90%
4.5%
4.8%
5.1%
5.6%
6.3%
6.8%
7.7%
photo: ferlistockphoto / istockphoto.com
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_35
グローバルに網羅するイヤーブック
イヤーブックには 23 か国における 1900〜2014 年の株式、長期国
債、短期国債、インフレ率、そして為替レートの年次データが収録
されています。対象国は、北アメリカの2か国(カナダと米国)、
ユーロ圏の 10 か国(オーストリア、ベルギー、フィンランド、フラ
ンス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、
スペイン)、ユーロ圏外の欧州6か国(デンマーク、ノルウェー、
ロシア、スウェーデン、スイス、イギリス)、アジア太平洋の4か
国(オーストラリア、中国、日本、ニュージーランド)とアフリカ
の1か国(南アフリカ)です。1900 年の時点でこれらの国が世界株
式市場の 98%を占め、2015 年初では時価総額で 91%を占めていま
した。
世界の市場
図1
国別市場
ハイライト
1899 年末の世界株式市場の内訳
ドイツ 13%
米国 15%
フランス 11.5%
ロシア 6.1%
オーストリア 5.2%
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
ベルギー 3.5%
イヤーブックでは世界3地域・23 か国を対象とし、これらすべて
に 1900 年来の指数による分析を行っています。2013 年には3か
英国 25%
オーストラリア 3.5%
国が追加され(115 年間のデータの揃うオーストリア、そして共
南アフリカ 3.3%
産主義体制の初期から証券取引再開までの期間の金融市場データ
オランダ 2.5%
が欠落しているロシアと中国)、2014 年には 1 ヵ国が追加されま
イタリア 2.1%
した(115 年間分のデータの揃うポルトガル)。地域別ページで
イヤーブック掲載国以外 2%
イヤーブック掲載のその他の国 7.7%
は、世界 23 か国の「全世界」、米国を除く世界 22 か国による
「米国以外の全世界」、欧州 16 か国の3地域を取り上げ、それぞ
れの株式および債券指数を表示しています。各指数は米ドル建て
で、時価総額および GDP による加重により算出しています。
図1は、ここで基準とする 1899 年末の世界株式市場の内訳を表
図2
2014 年末の世界株式市場の内訳
日本 7.8%
英国 7.2%
します。図2はそれが 2014 年末までにどのように変化したかを
示します。黒い部分は、イヤーブックのデータセットに含まれて
カナダ 3.3%
いない市場です。これらの円グラフが示すように、イヤーブック
のデータは 1900 年では世界株式市場の 98%を、2014 年末では
91%をカバーしています。.
スイス 3.1%
米国 52%
フランス 3.1%
ドイツ 3.0%
国別のページでは、各国・地域ごとに継続的なデータに基づく3
オーストラリア 2.6%
つの図が掲載されています。上の図は過去 115 年間の株式、長期
中国 2.2%
国債、短期国債における初期投資の実質価値を、運用収益をすべ
て再投資する設定で示したものです。中の図は、21 世紀、過去
50 年間および 1900 年以降それぞれの期間における株式、長期国
イヤーブック掲載国以外 9.1%
イヤーブック
掲載のその他の国 6.9%
債、そして短期国債の年率換算の実質リターンを表しています。
下の図は過去 50 年間および 1900 年以降における、対長期国債・
対短期国債での株式のプレミアム、対短期国債での債券のプレミ
アム、そして対米ドルでの実質為替レートのプレミアムをそれぞ
れ年率換算で表しています。
Data sources
次のページから始まる国別プロファイルではアルファベット順に
掲載しており、続いて世界3地域に分けて説明しています。広範
なさらに詳しい情報はクレディ・スイス
出所: エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイス グローバル・イ
ンベストメント・リターンズ ソースブック 2015
グローバル・インベス
トメント・リターンズ ソースブック 2015 をご覧ください。220
ページを超えるこの資料集は、ロンドン・ビジネススクールにて
入手可能で、各国データの出所に関する文献情報も載っていま
す。各年のリターンに関する元データはモーニングスター社
(Morningstar Inc.)から入手することができます。
1. E.ディムソン、P.R.マーシュ、M.スタントン共著 “Triumph of the Optimists”(邦
訳『証券市場の真実』 NJ: Princeton University Press, 2002)
2. E.ディムソン、P.R.マーシュ、M.スタントン共著 “The worldwide equity premium:
a smaller puzzle”(『ワールドワイド・エクイティ・プレミアム~より小さなパ
ズル』R Mehra Ed. The Handbook of the Equity Risk Premium, Amsterdam: Elsevier,
2007)
3. E.ディムソン、P.R.マーシュ、M.スタントン共著『クレディ・スイス グロー
バル・インベストメント・リターンズ ソースブック2015』チューリッヒ、ク
レディ・スイス リサーチ・インスティテュート
4. E.ディムソン、P.R.マーシュ、M.スタントン共著『ディムソン・マーシュ・ス
タントン・グローバル・インベストメント・リターンズ・データベース』(モ
ーニングスター社(MorningstarInc.))
各国データの出所についてはその一部を国別プロファイルの各ページに掲載しています。
著者詳細、参考文献および謝辞についてはソースブック(参照3)に掲載しています。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_36
オーストラリア資本市場のリターン
オーストラリア
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 3,441 倍に対し、長期国債が 6.8 倍、短期国債
が 2.2 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 7.3 %、長期国債では 1.7 %、短期国
債では 0.7%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 6.6%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
幸運な国
1900~2014 年の長期パフォーマンス
10,000
3,441
オーストラリアはしばしば、「幸運な国」と呼ばれま
す。それは、オーストラリアの天然資源、気候、そして
世界の他の地域が直面する問題から距離を置いているこ
とに由来しています。しかし、おそらくオーストラリア
の人々は、自分たちの手でその幸運を掴みとっているの
です。ヘリテージ財団が発表する経済自由度に関するラ
ンキングにおいて、オーストラリアは、イヤーブック掲
載国の中で最も経済的自由度の高い国との認定を受けま
した。また、チャリティエイド財団の研究の中で、オー
ストラリアは世界 146 か国中最も寄付活動の盛んな国に
認定されました。
幸運だからなのか、良い経済政策、それともその気前の
良さのおかげなのか、いずれにしても、オーストラリア
の株式市場は 1900 年以降の 115 年間で2番目に高い成
長をとげた国であり、その間の実質リターンは年 7.3%
でした。対長期国債、対短期国債のどちらの評価におい
ても、オーストラリアの長期の株式リスクプレミアムは
イヤーブック掲載国の中で最高となっています。
オーストラリア証券取引所(ASX)の前身は、メルボルン
では 1861 年、シドニーでは 1871 年に取引を開始した
6つの別々の市場を併合したもので、1901 年にオース
トラリアの植民地連盟によってオーストラリア連邦が建
国される前のことでした。ASX は今日、時価総額・取引
高で世界トップ 10 の株式市場の1つとなっています。
指 数 の 半 分 は 銀 行 (35%) と 鉱 業 (11%) が 占 め て お り 、
2015 年初で最も時価総額の大きかったのは、BHP ビリ
トン、オーストラリア・コモンウェルス銀行、ナショナ
ルオーストラリア銀行、オーストラリア・ニュージーラ
ンド銀行グループ、ウエストパック銀行でした。
オーストラリアはまた、国債・社債市場の規模も大き
く、アジア太平洋地域では最大の先物・オプション市場
を有しています。
1,000
100
10
6.8
2.2
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
7.3
5
5.0
5.5
5.1
2.6
1.7
2.2
1.7
0.7
0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
6.6
5
5.6
2.8
3.2
0.4
1.0
0.5
0
-0.1
-5
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
国・地域別プロファイル_37
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
オーストリア資本市場のリターン
オーストリア
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 1.9 倍に対し、長期国債が 0.0117 倍、短期国
債が 0.0001 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期
実質インデックスの年間利益率が株式では 0.6%、長期国債では–3.8%、
短期国債では–8.1%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実
質リターンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算の
エクイティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 5.5%でした。
プレミアムの計算には 1921~22 年の期間は含まれていません。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
失われた
帝国
1900~2014 年の長期パフォーマンス
10.0000
1.9
1.0000
0.1000
0.0117
0.0100
オーストリア帝国は 19 世紀中にオーストリア=ハンガリ
ー帝国に改組され、1900 年時点ではヨーロッパで2番目
に大きな国でした。同国に含まれていたのは、今日のオー
ストリア、ボスニア=ヘルツェゴビナ、クロアチア、チェ
コ共和国、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、その他
ルーマニアとセルビアの大部分、そしてイタリア、モンテ
ネグロ、ポーランドおよびウクライナの一部分でした。第
1 次世界大戦末期およびハプスブルク帝国の解体の際、最
初のオーストリア共和国へと移行しました。
オーストリアには第1次世界大戦後の賠償金の支払いは無
かったにもかかわらず、同国は 1921〜22 年の間、ドイツ
で起きたものに似たハイパーインフレに苦しみました。
1938 年にはオーストリアはドイツに併合され、第2次世
界大戦終結時まで独立は失われていました。1955 年、オ
ーストリアは再び独立国となり、1995 年には欧州連合
(EU)に、そして 1999 年にはユーロ圏に加盟しました。
今日、オーストリア経済は活況を呈しており、高水準の一
人当たり GDP を維持しています。
0.0010
0.0001
0.0001
0.0000
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
80
長期国債
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
7.0
5
4.7
3.5
2.8
0.0
0
0.6
1.9
-3.8
-5
-8.1
-10
ウィーン証券取引所では、債券は 1771 年から、株式は
1818 年から現在に至るまで取引されています。取引は世
界大戦によって中断され、1948 年の再開後の株式取引は
低迷し、1960 年代、1970 年代の期間中、企業の新規上場
(IPO)は1件も見られませんでした。1980 年代中頃か
ら、オーストリアは東ヨーロッパへの窓口としての地歩を
固め、取引所の活動も拡大しました。それでも、過去 115
年間にわたる株式市場の実質リターン(年率 0.6%)は
1900 年から今日までデータの揃う他の国との比較では最
も低いものでした。
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
5
5.5
2.7
金融株がオーストリアの株式市場の半分(47%)を占めてい
ます。2015 年初、オーストリアで最大の企業は、エルス
テ・グループ・バンク(株式市場全体の 25%)で、その
他大きい順に OMV、フェストアルピーネ、アンドリッ
ツ、イモフィナンツとなっています。
1900 – 2014
2.9
2.5
1.0
0.9
0
-1.8
-0.9
-5
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_38
ベルギー資本市場のリターン
ベルギー
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価値の
リターンが、株式の 21.6 倍に対し、長期国債が 1.3 倍、短期国債が 0.7 倍だ
ったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質インデックスの年間
利益率が株式では 2.7%、長期国債では 0.4%、短期国債では–0.3%だった
ことを表します。図3は、年率換算の長期実質リターンをプレミアムとして示して
います。1900 年からの年率換算のエクイティ・リスクプレミアムは、短期国債と
の比較で 3.0%でした。これらの図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧く
ださい。
図1
欧州の真ん中に位
置して
1900~2014 年の長期パフォーマンス
100.0
22
10.0
1.6
0.7
1.0
ベルギーは地理的に欧州経済の基盤および主要な交
通・貿易ルートが交差する場所に位置しており、欧州連合
(EU)の本部が置かれています。KOF グローバル化指標に
よって、ベルギーは 208 か国中最もグローバル化が進ん
でいる国に選ばれています。
0.1
0.0
1900
10
20
30
40
株式
ベルギーの地理的な位置は、200 年前のワーテルローの
戦いや 20 世紀中の2つの世界大戦で激戦地となるなど、
戦略的に良くも悪くもこの国に影響を与えてきました。戦
争の惨害とそれに伴った高インフレ率は、長期投資のリタ
ーンを低迷させる重大な要因となりました。ベルギーは、
過去のデータが完全に揃う市場の中では最も低迷してい
る株式市場の3つに数えられ、また債券市場のパフォー
マンスも下から7番目と低迷しています。 イヤーブック掲載
国の中で、115 年間のベルギーの株式リスクプレミアムは
対短期国債では最低で、対長期国債では4番目に低くな
っています。
ブリュッセル証券取引所は 1801 年ナポレオン時代のフラ
ンス統治下で設立されました。ブリュッセルは急速に主要
な金融センターへと成長し、20 世紀初頭では路面電車等
都市交通機関が重要な産業でした。
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
5.9
5
5.4
4.6
3.0
2.7
2.4
0.1
0
0.4
-0.3
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
ベルギーの拠点としての重要性は低下し、ユーロネクスト・
ブリュッセルは近年の金融危機から大きな打撃を受けまし
た。2008 年初は3大主要銀行株が時価総額の大半を占
めていましたが、今では銀行株は指数のわずか 10%とな
っています。2015 年初では、大手ビール製造会社であり
消費財メーカーとして世界上位5社に数えられるアンハイ
ザー・ブッシュのわずか1社が大半(57%)を占めています。
Annaert, Buelens, and Deloof (2012)による研究を参考に、
ベルギーに関するデータを改良しました。参考文献の詳細
はクレディ・スイス・グローバル・インベストメント・リターンズ・
ソースブック 2015 をご覧ください。
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
3.0
2.5
3.0
2.3
2.2
0.7
0.8
0.5
0.4
0.0
1965 – 2014
1900 – 2014
EP 長期国債 EP 短期国債償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国債(T-Bill)の
エクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国債リターンでの償還プレミア
ムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質(インフレ調整後の)変化率を表わして
います。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイス・グローバル・インベ
ストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
国・地域別プロファイル_39
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
カナダ資本市場のリターン
カナダ
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 636 倍に対し、長期国債が 12.8 倍、短期国債
が 5.6 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 5.8%、長期国債では 2.2%、短期国
債では 1.5%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 4.2%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
資源大国
カナダの国土面積は世界第2位(ロシアに次ぐ)、経済
規模は世界第 10 位です。国のブランド力を表すカントリ
ー・ブランド・インデックス(CBI)では、第2位にランク
されました。天然資源に恵まれ、世界第2位の石油埋蔵
量を持ち、鉱業ではニッケル、金、ダイヤモンド、ウラ
ン、鉛の主要な生産国です。特に小麦・穀物の他、木
材、紙・パルプ等ソフトコモディティーの主要な輸出国
でもあります。
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
636
100
12.8
10
5.6
1
0
1900
10
20
30
40
株式
カナダの株式市場はトロント証券取引所が設立された
1861 年以来の歴史を持ち、また、「国別市場ハイライ
ト」の最初のページの円グラフに示されるように、規模
は時価総額で世界第4位です。また、カナダの債券市場
は世界で上位 10 位内の規模を持ちます。
カナダには豊かな天然資源が存在するこ とから、石油と
ガスが株式市場の 21%を、また鉱業が 4%を占めること
は不思議ではありません。一方、29%を占めるのは銀行
株です。現在最も大きな銘柄はロイヤル・バンク・オ
ブ・カナダ、トロント・ドミニオン・バンク、ノバ・ス
コシア銀行およびサンコア・エナジーとなっています。
50
60
70
80
長期国債
90
2000
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
6.0
5.8
5
4.8
4.2
4.0
2.2
2.2
0.4
カナダ株は長期にわたり好パフォーマンスを見せてい
て、実質リターンは年率 5.8%です。長期国債におけるリ
ターンは年率 2.2%でした。これらの数字は米国と似通っ
たものでした。
10
1.5
0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム
(%)
4.0
4.2
3.5
4.0
2.0
2.6
4.2
3.5
1.8
2.0
0.0
0.8
0.7
2.6
1.8
0.7
-0.2
-0.1
0.8
0.0
-2.0
-2.0
-0.1
1900–2014
-0.2
1965–2014
EP Bonds
EP Bills
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
Mat Prem
RealXRate
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_40
中国資本市場のリターン
中国
1900 年から 1940 年代にかけてのパフォーマンスに加え、図1は、1993
~2014 年の期間、利息や配当を再投資した場合の実質価値のリターン
が、株式の 0.5 倍に対し、長期国債が 1.5 倍、短期国債が 1.1 倍だった
ことを示しています。図2は、1993~2013 年の期間、長期実質インデ
ックスの年間利益率が株式では–3.2%、長期国債では 1.9%、短期国債
では 0.5%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1993 年以降の年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で–3.7%でした。これらの
図に関する詳しい解説については 35 ページをご覧ください。
図1
新興の大国
1900~2014 年の長期パフォーマンス
10
中国国民は 13 億人を超え、その人口は世界最大となっ
ています。清朝に続き、1911 年には中華民国(ROC)が成
立しました。しかし、1946〜1949 年の内戦終結期、国
民党政府は中国本土での実効支配力を失い、台湾島とこ
れらの島嶼地域に追われ、統治機能は移転されました。
1949 年に中国共産党は内戦に勝利し、私有財産は強制収
用、政府債務は破棄され、そして中華人民共和国は一党
独裁体制を保ち続けてきました。従って、ここでは3つ
の期間に分けて考えることにします。第1に、清朝及び
中華民国の期間。第2に、経済改革前までの中華人民共
和国の時代。そして 1980 年代終わりと 1990 年代始めに
おける中国経済改革第2段階以降の現代までを第3の期
間とします。
中国本土の外で保有されていた資産のごく一部がまだ価
値を持っている可能性があり、また 1987 年には一部の
英国人債権保有者が残高請求に対し僅かな賠償金を受け
取ったものの、共産党による没収により国内投資家は全
損になったと考えられます。1940 年から 1949 年までの
期間について、ここでは名目価値を固定して計算してい
ます。これによって、1940 年代初期における実質価値
の暴落が引き起こされています。1900 年以降の中国の
リターンは、世界指数および米国を除いた世界指数に組
み入れられています。
改革後の中国の経済成長は急速に進展し、今や中国は世
界経済のエンジンと見なされています。興味深いこと
に、中国では優れた投資リターンを伴うことなく GDP
を急速に成長させてきました。中国株式市場における浮
動株の時価総額合計では、半分近く (42%)を金融関連株
が占め、銀行や保険会社が主なものとなっています。最
大規模の企業は順にテンセント・ホールディングス(指
数の 8%)、チャイナモバイル、中国建設銀行(共に
7%)、中国工商銀行(6%)です。
1.5
1.1
1
0.5
0
1900
10
20
30
40
Equities
50
60
70
Bonds
80
90
2000
10
Bills
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5
3.0
3.0
0.7
1.9
0.5
0
-3.2
-5
2000–2014
1993–2014
Equities
Bonds
Bills
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5
2.3
0
2.3
2.1
1.4
0.0
1.5
-3.7
-5.0
-5
2000 – 2014
EP 長期国債
1993 – 2014
EP 短期国債
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_41
デンマーク資本市場のリターン
デンマーク
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 388.5 倍に対し、長期国債が 39.8 倍、短期国
債が 11.0 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実
質インデックスの年間利益率が株式では 5.3 %、長期国債では 3.3 %、短
期国債では 2.1%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質
リターンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエ
クイティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.1 %でした。こ
れらの図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
最も幸福な国
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
388
米コロンビア大学地球研究所が国連の委託により作成し
た国連・世界幸福度報告書によると、フィンランド、ノ
ルウェー、オランダを凌いでデンマークが地球で最も幸
福度の高い国に選ばれました。2014 年のグローバル・
ピース・インデックス(世界平和指標)では、同国は
(アイスランドと並び)世界で最も平和な国とされてい
ます。また、デンマークはトランスペアレンシー・イン
ターナショナルによって、フィンランドおよびニュージ
ーランドと並んで最も腐敗度の低い国として選ばれてい
ます。
100
39.8
11.0
10
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
デンマークの幸福度の源が何であろうと、それは目覚ま
しい株式リターンから発しているわけではないようで
す。1900 年以来、デンマーク株式のリターンは年率実
質 5.3%で、世界平均に近いものでした。
これとは対照的に、デンマークの長期国債は年率実質
3.3%で、イヤーブック掲載国の中では最高値でした。
これは、他のイヤーブック掲載国と違い、デンマーク国
債のリターンには信用リスクの要素が含まれているから
です。リターンについては、取引量の小さい国債市場の
データよりも担保付社債を使う方がより適切としている
Claus Parum の研究データを使用しています(参考文献
は付属のクレディ・スイス・グローバル・インベストメ
ント・リターンズ・ソースブック 2015 をご覧くださ
い。)。
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
7.5
6.9
6.2
5.9
5
5.3
3.3
2.6
2.1
0.5
0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
コペンハーゲン証券取引所が正式に設立されたのは
1808 年のことですが、そのルーツは 17 世紀後半までさ
かのぼることができます。デンマークの株式市場は比較
的 小 さ い も の で す 。 ヘ ル ス ケ ア (54%) と 工 業 ・ 資 本 財
(16%)が大部分を占めており、ノボ・ノルディスクが半
数近く(41%)となっています。その他の大企業にはダン
スケ銀行、A.P. モラー・マースクがあります。
5.0
4.3
3.3
3.1
2.5
2.0
0.9
1.1
0.9
0.4
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
1900 – 2014
EP 短期国債
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_42
フィンランド資本市場のリターン
フィンランド
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 400 倍に対し、長期国債が 1.3 倍、短期国債が
0.5 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 5.3%、長期国債では 0.2%、短期国債
では–0.5%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 5.9%でした。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
東西が出会う場所
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
400
バルト海およびロシアとの親密な関係から、フィンランド
は東欧・西欧文化の両方が出会う場所となっています。ヨ
ーロッパ諸国の中でも最も人口密度の低い国の1つである
フィンランドは雪、湿地そして森林の国で、1809年にロ
シア帝国に統治権が割譲されるまではスウェーデン王国の
一部でした。1917年以降、フィンランドは独立国となっ
ています。
近年、ファンド・フォー・ピースはフィンランドを最も安
定している国として認定し、またエコノミスト・インテリ
ジェンス・ユニットはフィンランドの教育システムを世界
一として認定しました。トランスペアレンシー・インター
ナショナルによると、フィンランドはデンマーク、ニュー
ジーランドと並んで最も腐敗度の低い国に選ばれていま
す。同国は 1995 年に欧州連合(EU)に加盟、ユーロ圏内で
は唯一の北欧国となっています。フィンランド国民は、自
分たちの国を農業や林業に根差したコミュニティから、多
様化された産業経済へと変革してきました。フィンランド
の1人当たり国民所得は、西欧諸国の中でも最高レベルと
なっています。
100
10
1.3
1
0.5
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
8.1
6.9
5
5.3
4.2
2.3
0.4
0.2
0
-2.1
フィンランドはハイテク産業の輸出で抜きんでており、ノ
キアの本拠地です。2014 年 11 月のマイクロソフトによる
ノキアの携帯電話事業の買収に続き、ノキアは第三者メー
カーに製品デザインのライセンスを供与する計画を発表し
ました。林業は主要な輸出品目であり、地方に住む人々に
第2次産業への就業機会を提供しています。
-0.5
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
フィンランドの有価証券は当初、店頭(OTC)または海外で
取引されていましたが、1912 年にはヘルシンキ取引所
(HEX)での取引が開始されています。2003 年以降、HEX
は北欧市場の OMX グループを構成しています。HEX 全銘
柄の時価総額ウェイトによるインデックスにおけるノキア
の比率はピーク時には 72%に達し、フィンランドの株式
市場は非常に集中度の高い市場でした。今日、フィンラン
ド 最 大 の 企 業 は ノ キ ア ( 市 場 の 26% ) 、 サ ン ポ ( 同
19%)、コネ(同 15%)となっています。
今回、Nyberg and Vaihe (2014)による研究を参考に、フィ
ンランドに関するデータを改良しました。参考文献の詳
細はクレディ・スイス・グローバル・インベストメント・
リターンズ・ソースブック 2015 をご覧ください。
6
5.9
5.7
5.1
4
3.8
2
1.8
0.7
0
0.1
-0.1
-2
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_43
フランス資本市場のリターン
フランス
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 36.3 倍に対し、長期国債が 1.3 倍、短期国債が
0.04 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 3.2%、長期国債では 0.2%、短期国
債では–2.8%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 6.1%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
欧州の中心
1900~2014 年の長期パフォーマンス
100.0
36
パリとロンドンは 19 世紀の間、金融センターの座を巡
って激しく争いました。1870 年仏露戦争後、ロンドン
が独占的な地位を獲得しました。一方、パリの重要性は
衰えず、後にはそれがあだとなるものの特にロシア、オ
スマン帝国を含む地中海世界への貸付で強みを発揮しま
した。経済史家キンドルバーガーが言うように、「ロン
ドンは世界の金融センターだったが、パリは欧州の金融
センターだった」のです。
10.0
1.3
1.0
0.1
0.04
0.0
1900
10
20
30
40
株式
フランスが欧州連合(EU)やユーロの創設に携わり欧州で
中心的な重要な役割を果たしてきた間、パリは重要な金
融センターであり続けました。フランスは欧州第2位の
経済規模を持ちます。株式市場の規模は大陸欧州で最大
で 、 債 券 市 場 は 世 界 最 大 の 市 場 の 1 つ で す 。 2015 年
初、フランスで最も大きい上場企業はサノフィ、トタル
および BNP パリバです。
フランスにおける資産の長期リターンは期待外れのもの
でした。完全な過去のデータが揃う国の中では、フラン
スの株式、長期国債および短期国債のパフォーマンスは
下 位 25% に 入 る 程 で し た 。 一 方 、 イ ン フ レ 率 が 上 位
25%に入る高さだったことから、債券のリターンは低迷
しています。このインフレ率の高さと市場の低迷の原因
は 20 世紀前半にまでさかのぼり、世界大戦と結びつい
ています。1950 年以降、フランス株のリターンは中位
を維持しています。
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
6.6
5
5.2
5.9
3.2
0.7
0.5
0.6
0.2
0
-2.8
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
5
4.4
6.1
5.2
3.0
3.0
0.0
0
-0.2
-0.7
-5
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_44
ドイツ資本市場のリターン
ドイツ
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 38 倍に対し、長期国債が 0.2 倍、短期国債が
0.1 倍だったことを示しています。図2は、株式の長期実質インデック
スの年間利益率が 1900 年以来では 3.2%、1965 年来では 5.0%だったこ
とを表します。図3は、年率換算の長期実質リターンをプレミアムとし
て示しています。1965 年からの年率換算のエクイティ・リスクプレミア
ムは、短期国債との比較で 3.3%でした。長期国債、短期国債およびプ
レミアムの計算には 1922~23 年の期間は含まれていません。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
欧州の機関車
1900~2014 年の長期パフォーマンス
100
38
ドイツ資本市場の歴史は第2次世界大戦後劇的に変化し
ました。20 世紀前半、第1次世界大戦においてドイツ
の株式はその価値の3分の2を失いました。1922〜23
年のハイパーインフレ時は、インフレ率が 2,090 億%に
達し、債券保有者は壊滅的な損害を受けました。第2次
世界大戦中および終戦直後は、株式は実質で 88%、債
券は 91%下落しました。
その後、ドイツでは見事な変革が行われました。 1949
〜1959年、「奇跡的経済成長」の初期には、ドイツの
株式は実質4,094%上昇しました。ドイツは急速に「欧
州の機関車」として知られるようになりました。また、
ドイツは財政・金融政策の慎重さでも評価を高めていき
ました。1949年から今日に至るまで、ドイツは世界で
2番目に低いインフレ率と最も強い通貨(現在はユー
ロ)、そして世界でも特にパフォーマンスの良好な債券
市場を享受してきました。
10
1
0.2
0
0.1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
7.5
5
5.0
今日、ドイツは欧州最大の経済規模を持ちます。今は中
国にその座を奪われていますが、以前は世界最大の輸出
国でした。世界第7位の規模を持つドイツの株式市場の
歴史は 1685 年までさかのぼり、債券市場は世界有数の
規模を誇ります。
3.2
0
0.5
1.5
1.7
-1.4
ドイツに関するデータには、Richard Stehle による過去の
リターンに関する新しい推定を組み込んでいます。参考
文献の詳細はクレディ・スイス・グローバル・インベスト
メント・リターンズ・ソースブック 2015 をご覧くだ
さい。
-2.4
-5
2000 – 2014
ドイツの株式市場の多くは製造業が占め、基本資材
23%、消費財 22%、工業・資本財 15%となっています。
最も大きな株式はバイエル、シーメンス、BASF、アリア
ンツ、SAP です。
4.9
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
6.0
5
5.0
3.3
0
3.2
1.0
0.5
0.1
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
0.2
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
国・地域別プロファイル_45
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
アイルランド資本市場のリターン
アイルランド
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 113 倍に対し、長期国債が 6.2 倍、短期国債が
2.2 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 4.2%、長期国債では 1.6%、短期国債
では 0.7%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.5%でした。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
自由になるために
生まれた国
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
113
100
10
株式市場はダブリンとコルクに 1793 年には開設されてい
た一方、アイルランドは 1922 年、それまで 700 年間続い
たノルマン人、そしてイギリス人による支配から解放さ
れ、アイルランド自由国として独立しています。独立以降
の期間では、経済成長および株式市場のパフォーマンスは
弱く、1950 年代の間、同国では大規模な移民による人口
流出が起こりました。
6.2
2.2
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
アイルランドは 1973 年に欧州連合(EU)に加盟し、1987 年
以降、経済状況は改善しました。1990 年代そして 2000
年代には、アイルランドは経済的に大きく成功し、「ケル
トの虎」と呼ばれました。2007 年には、アイルランドは
1人当たり GDP で世界第5位、EU では第2位の富裕国と
なり、移民数の純増が見られました。
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
6.0
5
5.7
4.2
3.8
1987〜2006 年の期間、アイルランドはイヤーブック掲載
国中、株式の実質リターンで第2位の位置にありました。
しかし、金融危機により状況は一変し、アイルランドは今
も苦難に直面しています。動物保護団体のボーン・フリー
財団が囚われの虎を開放しようとしているように、アイル
ランドは今や、低迷する経済状況から脱出する手段を必要
としています。
0.5
1.5
0.2
1.6
0.7
0
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
アイルランドの市場はイヤーブック掲載国の中では最も小
さいグループに属し、残念なことに、縮小しつつありま
す。好景気の要因は不動産、金融および借入に過度に依存
したものだったため、アイルランドの株式は 2006 年以降
急落しました。虎は囚われの身となり、牙の威力は失われ
ています。
1900 年以降のアイルランド株式を観察するため、ここで
は、この2つの市場で取引される株式にもとづき、アイル
ランド株式インデックスを構築しました。アイルランドは
ユーロ圏発足時よりユーロを導入しており、本書のリター
ンもその後ユーロ建てで計算されています。
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
4.1
3.5
2.5
2.6
2.3
1.8
0.9
0.5
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
0.2
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_46
イタリア資本市場のリターン
イタリア
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 8.8 倍に対し、長期国債が 0.3 倍、短期国債が
0.02 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 1.9%、長期国債では–1.2%、短期国債
では–3.5%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 5.7%でした。これらの図
に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
銀行業の革新者
1900~2014 年の長期パフォーマンス
100.0
10.0
銀行業の歴史は聖書の時代までさかのぼり、イタリアは
近代銀行業発展の初期に重要な役割を果たしました。中
世、メディチ家を筆頭とする北イタリアの銀行家たち
は、欧州全域の貸付と貿易金融を独占していました。そ
のような銀行家たちはロンバルディアの商人として知ら
れ、当時はイタリア人と同義に扱われていました。
9
1.0
0.3
0.1
0.02
0.0
1900
今日に至るまでイタリアにおいて銀行業は大きな位置を
占め、イタリア株式市場の4分の1(28%)以上が銀行株
で、10%が保険株となっています。石油・ガスも 15%
を占め、ミラノ証券取引所で最大の株式はエニ、エネ
ル、インテサ・サンパオロ、ゼネラリです。
残念なことに、イタリアの資産リターンはイヤーブック
掲載国の中で最低でした。1900 年以来、株式の実質リ
ターンは年率 1.9%で、イヤーブック掲載国では下位 3
か国のうちの1つでした。第1次・第2次世界大戦後に
ハイパーインフレの起きたドイツおよびオーストリア以
外では、イヤーブック掲載国の中でイタリアは長期・短
期国債の両方で最も低い実質リターンを記録し、インフ
レ率は最も高く、通貨価値は最も弱いものでした。
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5.9
5
3.3
0.3
1.9
1.3
0
-0.1
-1.2
-2.9
-3.5
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
5
5.7
1.5
3.4
3.1
2.5
0.2
0
0.1
-1.9
-5
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、 クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
国・地域別プロファイル_47
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
日本資本市場のリターン
日本
先物取引の
生まれた地
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質
価値のリターンが、株式の 10.6 倍に対し、長期国債が 0.3 倍、短期国
債が 0.1 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実
質 イ ン デ ッ ク ス の 年 間 利 益 率 が 株 式 で は 4.1 % 、 長 期 国 債 で は –
0.9%、短期国債では–1.9%だったことを表します。図3は、年率換算
の長期実質リターンをプレミアムとして示しています。1900 年からの
年率換算のエクイティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で
6.1%でした。これらの図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧くだ
さい。
図1
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000.0
106
100.0
10.0
日本の金融市場は長い歴史を持ちます。米の先物取引は
1730 年頃大阪で開始され、1878 年には証券取引所が発
足しました。大阪は日本で有数のデリバティブ取引所に
成長し(そして 1990 年と 1991 年には世界最大の先物市
場となりました)、やはり 1878 年に設立された東京証
券取引所もまた有数の現物市場となりました。
1.0
0.3
0.1
0.1
0.0
1900
10
20
30
40
株式
1900 年から 1939 年、日本は世界第2位のパフォーマ
ンスを誇る株式市場を有していました。しかし第2次世
界大戦により壊滅的な被害を受け、日本の株式価値の
96%が損なわれました。1949 年から 1959 年の間、日
本の「奇跡的経済成長」が始まり、株式は 1,565%の実
質リターンを達成しました。1、2回の下落はあったも
のの、株価はその後 30 年間上昇し続けました。
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5
4.4
3.9
4.4
4.1
0.3
0.1
0
-0.9
-1.9
-5
2000– 2014
1965– 2014
株式
そしてバブル経済は崩壊しました。1990 年から 2009
年初の間、日本は最悪のパフォーマンスを示した株式市
場でした。2015 年初でもまだ、時価総額合計は 1990
年代初頭レベルの3分の1近くしかありません。世界イ
ンデックスに占める割合は、かつての 41%から8%に
低下しました。その間、日本は停滞、金融危機とデフレ
ーションに苦しめられてきました。日本の経験が、金融
危機から立ち上がろうとする他国の青写真とならないこ
とを望みます。
60
図2
0.1
1990 年代初頭までに、日本の株式市場は世界最大規模
に成長し、世界株式インデックスに占める割合は米国株
の 30%に対し、日本株は 41%でした。不動産価値も高
騰し、1993 年の “Journal of Economic Perspectives” は、
東京にある皇居の地価はカリフォルニア州全体の地価よ
りも高いとの記事を掲載しています。
50
長期国債
1900– 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
6.1
5
5.1
資産バブル崩壊による経済の低迷にかかわらず、日本は
主要な経済大国であり続けています。日本の株式市場の
規模は世界第2位で、債券市場も世界第2位です。日本
はテクノロジー、自動車、電子機器、機械・ロボティク
スにおいて世界のリーダーであり、そのことは株式市場
の構成に反映されています。
4.1
0
4.0
1.1
0.1
1965– 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1.0
0.1
1900– 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期
国債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対
短期国債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レー
トの実質(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_48
オランダ資本市場のリターン
オランダ
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 268 倍に対し、長期国債が 7.1 倍、短期国債が
2.0 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 5.0%、長期国債では 1.7%、短期国債
では 0.6%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 4.4%でした。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
市場取引の
パイオニア
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
268
100
10
ある種の株式取引はローマ時代に存在し、14 世紀の
トゥールーズでは製粉会社の証券が売買されていた
ものの、譲渡可能証券の出現は 17 世紀にまで待たね
ばなりませんでした。アムステルダム市場は 1611 年
に発足し、17 世紀および 18 世紀において株式取引の
主要なセンターとなっていました。
1688 年にアムステルダム在住のあるスペイン出身者
(『コンフュージョン・デ・コンフュージョンズ』
という書物で知られる)はその著作で、投資家のも
つ驚くべき多種多様な戦術について述べています。
そこで取引されていたのは東インド株式会社の1銘
柄だけだったにもかかわらず、ブル、ベア、パニッ
ク、バブルその他現代の株式市場同様の現象が見ら
れました。
7.1
2.0
1
1.00
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
6.4
5
6.0
5.0
3.5
アムステルダム証券取引所は今日もユーロネクスト
の一翼として繁栄し続けています。長期では、オラ
ンダ株は年率 5.0%という中位のリターンをあげてき
ました。オランダのインフレ率は歴史的に低く、
1900 年以降、インフレ率は欧州連合(EU)諸国中では
最も低く、また、イヤーブック掲載国の中では2番
目に低いものでした(1位スイス)。
オランダは、繁栄している開放経済国です。世界最大
のエネルギー企業ロイヤル・ダッチ・シェルは今日、
ロンドンにプライマリー上場しており、アムステルダ
ムへはセカンダリー上場していますが、アムステルダ
ム証券取引所には、ユニリバー、フィリップス、ING
グループ、アクゾノーベル、ハイネケン、ASML ホー
ルディング等、その規模の割に多くの多国籍企業が上
場しています。
0
1.7
1.2
0.0
0.6
-1.1
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
4.7
4.4
3.2
2.5
2.4
2.3
1.1
0.8
0.2
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_49
ニュージーランド資本市場のリターン
ニュージーランド
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 906 倍に対し、長期国債が 10.8 倍、短期国債
が 6.7 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 6.1%、長期国債では 2.1%、短期国
債では 1.7%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 4.4%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
ピュアかつ誠実
この 10 年間、ニュージーランドは自ら「100%ピュ
ア」という言葉で宣伝してきており、また、フォーブ
ス誌は、そのようなマーケティング戦略について、世
界の観光旅行業促進キャンペーンの中でも上位 10 か国
に位置づけられるとして評価しています。同国はその
ように宣伝しているだけでなく、誠実さ、情報公開
度、良好なガバナンス、そしてビジネス活動における
自由度の点でも世界レベルであると自負しています。
トランスペアレンシー・インターナショナルによる
と、ニュージーランドはデンマーク、フィンランドと
共に、2013 年の腐敗認識度ランキングで1位にランク
インし、世界で最も汚職の尐ない国の1つとされてい
ます。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ニュー
ジーランドはビジネス活動における自由度の最も高い
国としています。
イギリスの植民地であったニュージーランドは 1907
年に同自治領となり、事実上、独立国となりました。
伝統的に、ニュージーランド経済は羊毛、食肉、酪農
品などの数種の一次産品を基盤としてきました。同国
は、イギリスが EU に加盟するまで、イギリスを特恵
市場とする輸出に依存してきました。
過去 20 年間にわたり、ニュージーランドは更なる工業
化と経済の自由化を進めました。現在同国は効率的な
港湾施設、航空サービスおよび光海底通信を備え、輸
出国として国際競争力を高めています。
ニュージーランド証券取引所のルーツは、1870 年代の
ゴールドラッシュにまでさかのぼることができます
す。1974 年、各地の取引所を合併し、ニュージーラン
ド証券取引所(NZSE)が創設されました。2003 年、同取
引所は商業会社への組織変更がなされ、 New Zealand
Exchange Limited(NZX)となりました。NZX の主な上場
企業はフレッチャー・ビルディング(指数の 17%)、
テレコム・ニュージーランド(17%)およびオークラン
ド国際空港(11%)となっています。
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
906
100
10.8
6.7
10
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
5
6.1
5.9
5.1
4.5
2.6
2.5
2.2
2.1
1.7
0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
3.9
4.4
2.8
2.4
0.4
0.4
0.2
0.0
-0.2
-5.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_50
ノルウェー資本市場のリターン
ノルウェー
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 117 倍に対し、長期国債が 8.4 倍、短期国債が
3.6 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 4.2%、長期国債では 1.9%、短期国債
では 1.1%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.1%でした。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
北欧の石油王国
ノルウェーは、とても小さな国(人口は世界 115 位、国
土面積は 61 位)ですが、豊かな天然資源を有していま
す。ノルウェーは電力自給率が 100%の唯一の国(水力
発電による)であり、世界有数の石油輸出国です。また
ノルウェーは世界第2位の水産物輸出国でもあります。
人口 490 万人のノルウェー国民は、都市国家の数か国を
除き世界最大の一人当たり GDP を享受しており、ユー
ロに参加せず立憲君主制をとっています。この対価とし
て同国の物価は高水準にあります。英エコノミスト誌
「ビッグマック・インデックス」によると、ノルウェー
のハンバーガー1つの価格は世界最高値となっていま
す。国連の人間開発指数によると、ノルウェーは平均寿
命、教育および生活水準で世界最高と位置付けられてい
ます。
オスロ証券取引所(OSE)は 1819 年、船のオークション、
商品および通貨取引のためクリスチャニア取引所として
発足したのが始まりです。その後、株式・債券の取引所
として発展しました。取引所は現在スカンジナビア証券
取引所の OMX グループの一翼を担っています。
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
100
117
10
8.4
3.6
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
6.5
5
6.1
5.1
4.2
3.0
2.0
1.6
1.9
1.1
0
1990 年代には、ノルウェー政府は石油による余剰資産
を運用するため、石油ファンドを設立しました。このフ
ァンドは資産残高9千億ドル超にまで成長し、欧州最
大、そして世界第2位となっています。ファンドの投資
先は大部分が株式で、平均して、世界の上場企業すべて
に 1.3%以上ずつ投資しています。
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
OSE で最大の上場企業はスタトイル(指数の 19%)、
DNB(18%)、テレノール(16%)です。
4.1
2.5
3.1
3.0
2.3
1.0
0.7
0.5
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
0.1
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_51
ポルトガル資本市場のリターン
ポルトガル
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 48.1 倍に対し、長期国債が 2.5 倍、短期国債が
0.4 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 3.4%、長期国債では 0.8%、短期国債
では–0.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 4.3%でした。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
発見の国
15 世紀、「発見の時代」の間、集中された市場の原始
的な形がリスボンに存在していました。そこでは、船舶
や航海に資金調達するのに必要な多額の金をどのように
集めるか、そして関連のリスクをカバーするための保険
契約の保険料についてどのように合意するか、という2
つの問題が解決されていました。総じてこれは公式に組
織された市場ではなく、取引はリスボン中心部表通りの
街角で、屋外で行われていました。それでもこの市場
は、特に、この船乗りの国が新しく発見された国から運
ぶ品々などを取引する機会を提供していたのです。
近代国家としてのポルトガルは、無血のうちに前体制を
打倒した軍事クーデターである「カーネーション革命」
によって 1974 年に出現しました。同国は 1986 年に欧
州連合に加盟し、ユーロを発足当時から導入している国
の 1 つです。2010 年代に入るとポルトガル経済は 1970
年代以降で最も深刻な不景気に見舞われ、失業率は依然
として高止まりしています。
ポルトガルで最も時価総額の高い企業はユーティリティ
およびエネルギーセクターで、ユーティリティでは
53%、石油およびガスでは 18%を占めています。リス
ボンに上場している中で最大の企業は EDP、ガルプ・
エナージア、BC ポルドゲス、ジェロニモ・マーティン
スです。
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
100
48
10
2.5
1
0.3
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5
4.5
3.4
3.0
0.8
0
-0.2
-1.4
-0.8
-1.1
-3.8
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
ポルトガル株式のデータは、da Costa and Mata (2014)
が最近完成した研究に基づいています。参考文献の詳細
はクレディ・スイス・グローバル・インベストメント・リ
ターンズ・ソースブック 2015 をご覧ください。
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
5
4.5
4.6
3.8
2.6
1.9
1.1
0
0.1
-0.6
-5
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_52
ロシア資本市場のリターン
1900 年から 1917 年にかけてのパフォーマンスに加え、図1は、1995~2014 年の期間、
利息や配当を再投資した場合の実質価値のリターンが、株式の 2.0 倍に対し、長期国債
が 1.9 倍、短期国債が 0.6 倍だったことを示しています。図2は、1995~2014 年の長期
実質インデックスの年間利益率が株式では 3.5%、長期国債では 3.2%、短期国債では–
2.2%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リターンをプレミアムとして示し
ています。1995 年以降、年率換算のエクイティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で
5.8%でした。これらの図に関する詳しい解説については 35 ページをご覧ください。
ロシア
図1
資源が富の源泉
1900~2014 年の長期パフォーマンス
10
2.0
1.9
ロシアは世界最大の国で、その国土は地球上で人が居住
する土地面積の8分の1を占め、9つの標準時を持ち、
その領域はヨーロッパとアジアの両方に及んでいます。
以前ロシアは米国国土の6分の1を領有していたことさ
えありました。ロシアは世界有数の原油産出国で、天然
ガスの産出量では世界第2位、鉄・アルミニウムでは世
界第3位の輸出国です。天然ガスの埋蔵量および森林面
積は世界最大で、石炭の埋蔵量は世界第2位です。
1
0.6
0
1900
10
20
30
40
株式
Equities
1917 年のロシア革命後、ロシアでは市場経済が廃止さ
れました。従って、ここでは3つの期間に分けて考える
ことにします。第1に、1917 年までのロシア帝国期。
第2に、ソビエト時代の私的財産の強制収用およびロシ
ア国債の債務不履行に続き市場経済が長く中断されてい
た期間。そして、1991 年のソビエト連邦崩壊に続くロ
シア連邦の時代を第3の期間とします。
最終的に、1980 年代および 1990 年代のイギリスとフラ
ンスの債券保有者には非常に限定的な賠償が支払われま
したが、投資家全体で見れば、現在価値にして 99%以
上が失われたことになります。1917 年の革命は国内の
株式および債券所有者に事実上全財産を喪失させたもの
と見なされています。ロシアのリターンはここでは、
「世界」および「米国を除く世界」および「ヨーロッ
パ」の各インデックスに組み込まれています。
50
60
70
長期国債
Bonds
80
90
2000
10
Bills
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
5
3.5
3.5
3.2
0
-2.2
-0.8
-3.9
-5
2000 – 2014
1995 – 2014
株式
長期国債
短期国債
図3
1998 年、ロシアでは深刻な金融危機が起こり、国債は
債務不履行となり、通貨切り下げ、ハイパーインフレ、
そして経済のメルトダウンが起こりました。しかし、そ
の後は驚くべき素早さで回復し、1998 年の危機後の 10
年間でロシア経済は7%の年率換算平均成長率を達成し
ました。しかし 2008〜09 年には、世界経済の停滞およ
びコモディティ価格の変動の影響を大幅に受け、ロシア
株式市場では不安定なパフォーマンスが続いています。
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
7.7
5
5.8
3.2
5.5
3.3
2.0
0.3
0
-4.1
2015 年初の時点で、ロシア株式市場の半分以上(56%)を
石油およびガス企業が占め、最大規模の企業にはガスプ
ロムとルクオイルとなっています。素材産業も加える
と、これら資源関連銘柄が市場全体の時価総額の3分の
2超を占めます。
-5
2000 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1995 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
国・地域別プロファイル_53
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
南アフリカ資本市場のリターン
南アフリカ
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 3,551 倍に対し、長期国債が 8.6 倍、短期国債
が 3.0 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 7.4%、長期国債では 1.9%、短期国
債では 1.0%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 6.3%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
黄金の機会
1900~2014 年の長期パフォーマンス
10,000
3,551
1,000
1870 年 キ ン バ リ ー で の ダ イ ヤ モ ン ド の 発 見 、 そ し て
1886 年ウィットウォータースランドでのゴールドラッ
シュは、南アフリカのその後の歴史を大きく変えるもの
でした。今日、南アフリカは世界の白金(プラチナ)産
出量の 90%、マンガンでは 80%、クロムでは 75%、金
では 41%を占め、その他ダイヤモンド、バナジウム、石
炭の主要な産出国でもあります。
1886 年のゴールドラッシュによって多くの鉱業・金融
関連企業が生まれ、そうした企業のニーズに応えるべく
1887 年、ヨハネスブルグ証券取引所(JSE)が開設されま
した。1900 年以降、南アフリカの株式市場は世界で最
も活気のある市場の1つとなっており、年率 7.4%の株
式の実質リターンという、イヤーブック掲載国で最高の
収益を上げています。
今日、南アフリカには洗練された金融機構があり、ま
た、アフリカ最大の経済となっています。南アフリカは
1900 年当時、イヤーブック掲載の他の数か国と共に、
新興市場として見なされていました。指数提供会社は、
同国がいまだ新興市場から脱していないと見ており、今
日、南アフリカは世界第5位の新興市場に位置付けられ
ています。
100
10
8.6
3.0
1
0
1900
10
20
30
40
株式
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
9.6
8.0
7.4
6.0
5
2.3
1.8
1.9
1.9
1.0
0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
一時期の南アフリカ経済にとって最重要だった金は、同
国経済の多様化とともにその重要性は減尐しています。
金融関連株が JSE の時価総額合計の 24%を占めている
一方、素材産業はわずか 8%でしかありません。メディ
アおよびモバイル通信業の合計が株価指数の 26%を占め
ます。JSE で最大規模の銘柄には、ナスパース、MTN、
Sasol があります。
50
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
10
5
6.1
6.0
6.3
5.4
0.9
0
-0.1
-0.9
-1.1
-5
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_54
スペイン資本市場のリターン
スペイン
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 63.2 倍に対し、長期国債が 7.7 倍、短期国債
が 1.4 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 3.7%、長期国債では 1.8%、短期国
債では 0.3%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.4%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
ラテンアメリカへ
の足がかり
1900~2014 年の長期パフォーマンス
100
63
10
7.7
1.4
1
スペイン語は英語の次に世界で最も広く使用されている
言語で、スペイン語を母語とする世界人口は中国語、ヒ
ンディー語、英語の次に多く、世界第4位となっていま
す。このような背景もあり、スペインのもつ存在感と影
響力は南欧方面にとどまらず、ラテンアメリカ全域に及
んでいます。
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
1960 年代と 1980 年代、強気相場を享受したスペイン
の株式実質リターンは世界第2位となりましたが、
1930 年代と 1970 年代におけるリターンはイヤーブッ
ク掲載国中、最低水準となりました。 イヤーブックが対
象とする 115 年間では、スペイン株式の長期でのプレ
ミアム(対長期国債)は 1.9%で、これは同期間中の他
国との比較で最も低いものです。
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5
5.2
4.7
3.7
2.7
2.7
1.8
0.8
0
0.3
-0.1
この背景としてまず、スペインが2つの世界大戦から受
けた被害は比較的軽微だったにもかかわらず、スペイン
株の実質価値の多くが 1936〜39 年の内戦により失われ
たことがあります。また、1970 年代は民主政治への回
帰と原油価格の4倍もの上昇が重なり、エネルギー供給
の 70%を輸入に頼るスペインには打撃となりました。
マドリード証券取引所は 1831 年に設立され、1980 年
代の力強い経済成長を受け現在世界第 14 位の大きさと
なっています。主要なスペイン企業は南米において大き
な影響力を保持しており、銀行業・インフラの欧州全域
における強みも増しています。最も大きい企業はサンタ
ンデール銀行(指数の 24%)、テレフォニカ、BBVA、
インディテックスです。
-5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
3.9
3.4
2.5
2.0
1.9
1.9
1.5
1.0
0.0
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
国・地域別プロファイル_55
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
スウェーデン資本市場のリターン
スウェーデン
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 684 倍に対し、長期国債が 22.9 倍、短期国債
が 8.5 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 5.8%、長期国債では 2.8%、短期国
債では 1.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.9%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
ノーベル賞による
リターン
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
684
100
22.9
10
アルフレッド・ノーベルは全財産の 94%を遺贈し、5つ
のノーベル賞(第1回の授与は 1901 年)を創設し、その
基金を安全な有価証券で運用するようにとの遺言を残しま
した。スウェーデンが自らの運用成績に関してノーベル賞
を受賞することがあるとすれば、それは、株式、長期国債
および短期債のすべてが上位6位に入っているという業績
の良さを認められてのこととなるでしょう。
8.5
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
スウェーデン株式の実質リターンは2つの世界大戦を通じ
ての中立的な政策、そして資源からの富、また 1980 年代
の産業持株会社の発展により支えられてきました。全体と
して、同国株式の実質リターンは年率 5.8%で成長してき
ました。私たちのスウェーデン・インデックスのデータお
よび出所に関してはクレディ・スイス・グローバル・イン
ベストメント・リターンズ・ソースブック 2015 に詳細を
掲載しています。
ストックホルム証券取引所(SSE)は 1863 年に創設され、
北欧諸国における主要な取引所です。1998 年以降、同取
引所は OMX グループを構成しています。
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
8.5
6.2
5.8
5
4.5
4.1
2.8
1.9
1.0
0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
スウェーデンでは、金融セクターが株式市場時価総額の
3分の1(35%)を占めています。 最大の銘柄はヘネス・
アンド・モーリッツ(H&M)で、ノルデア銀行、エリクソ
ンが続いています。
2014 年には、 Daniel Waldenström (2014) による研究を
参考に、スウェーデン株式に関するデータを改良しまし
た。参考文献の詳細はクレディ・スイス・グローバル・
インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015 をご
覧ください。
1.9
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
6
4
2
6.5
4.3
3.9
3.0
2.1
0.9
0
-0.1
-0.3
-2
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_56
スイス資本市場のリターン
スイス
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 155 倍に対し、長期国債が 14.1 倍、短期国債
が 2.5 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イ
ンデックスの年間利益率が株式では 4.5%、長期国債では 2.3%、短期国
債では 0.8%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リタ
ーンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイ
ティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.7%でした。これら
の図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
伝統的な安全地帯
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
155
100
スイスが金融界に及ぼす影響力は、世界でわずか 0.1%
の人口と 0.01%以下の国土面積という規模をはるかに超
えています。スイスは、世界金融市場で果たしているそ
の役割によってしばしば世界最高の評価を獲得していま
す。2012〜2013 年の国際競争力レポートによると、ス
イスの競争力は世界第1位にランクされています。ま
た、米フューチャーブランドの国別ブランド力ランキン
グでは、2013 年、世界トップに浮上しました。
14.1
10
2.5
1
0
1900
10
20
30
40
株式
スイス証券市場の起源はジュネーブ(1850 年)、チューリ
ッヒ(1873 年)、バーゼル(1876 年)にさかのぼります。現
在は世界第5位の株式市場となっていて、世界の時価総
額に占める割合は 3.1%です。
1900 年以来、スイス株式の実質リターンはまずますの
4.5%だった一方、国債市場のパフォーマンスは実質年
率 2.3%で世界有数の市場となっています。またスイス
は、1900 年以降わずか 2.2%という世界で最低水準のイ
ンフレ率を享受してきました。その間、スイスフランは
世界で最も強い通貨でした。
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5.0
5.3
5.1
4.5
3.2
3.0
2.5
2.3
0.5
0.5
0.8
もちろんスイスは世界で最も重要な金融センターであ
り、プライベートバンキング業務は 300 年間以上スイス
が主に競争力を発揮してきた分野です。スイスには中立
性、健全な経済政策、インフレ率の低さと通貨の強さが
あり、そうした特徴のすべてがスイスの安全地帯として
の評判を高めてきました。今日、世界中のプライベート
かつクロスボーダーの資産取引の 30%近くがスイスで
行われています。
スイスでは医薬品業界が株式市場の3分の1(36%)を占
めています。また、ノバルティス、ロシュの他ネスレ等
世界有数の企業が上場しており、この3銘柄の時価総額
合計はスイス全体の半分以上を占めています。
0.0
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
4.8
3.7
2.5
2.3
2.5
2.1
1.5
1.5
0.8
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_57
イギリス資本市場のリターン
イギリス
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 367 倍に対し、長期国債が 5.9 倍、短期国債が
2.8 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 5.3%、長期国債では 1.6%、短期国債
では 0.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 4.3%でした。これらの
図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
世界のセンター
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
367
100
イギリスにおける組織的な株式取引の開始は 1698 年に
さかのぼることができ、正式にロンドン証券取引所が設
立されたのは 1801 年のことでした。1900 年には、イギ
リスの株式市場は世界最大の規模に成長し、ロンドンは
グローバルおよびクロスボーダー金融に特化した世界有
数の金融センターとなりました。
20 世紀初頭、米国株式市場がイギリスを追い越し、今
日ではニューヨークがロンドンよりも金融センターとし
て大きな規模を持っています。ロンドンが他とは違う世
界有数の国際金融センターとされているのは、グローバ
ルなクロスボーダー取引が多くを占めているからです。
10
5.9
2.8
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
10
グローバル・ファイナンシャル・センター・インデック
ス、ワールドワイド・センター・オブ・コマース・イン
デックス、そしてフォーブスの最もパワフルな都市ラン
キングによると、今日イギリスは世界一の金融センター
としてランクされています。ロンドンは世界の銀行業の
中心で、550 の国際的な銀行および 170 の世界的な証券
会社がロンドンにオフィスを構えています。ロンドン外
国為替市場は世界最大の規模で、ロンドン株式市場およ
び保険市場は共に世界第3位、債券市場は世界第7位と
なっています。
6.2
5
5.3
3.6
0
3.2
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
イギリスは世界最大の資産運用センターであり、欧州機
関投資家の株式資本の半分近く、また欧州ヘッジファン
ド資産の4分の3が運用されています。ユーロ債取引の
4分の3以上がロンドンで起債・取引されています。世
界3分の1以上のスワップ取引とグローバルな外国為替
取引の4分の1以上がロンドンで行われています。ま
た、ロンドンはコモディティ取引、海運や他の多くの業
種の中心地となっています。
1.6
1.4
0.1
1.0
長期国債
0.9
1900 – 2014
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
4.7
4.3
3.7
2.5
ロンドン証券取引所にはロイヤル・ダッチ・シェルが上
場しており、その他の主要な企業では HSBC、BP、ボー
ダフォン、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、グラ
クソ・スミスクラインが上場しています。
2.9
1.7
0.7
0.6
0.0
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
EP 短期国債
1900 – 2014
償還プレミアム
実質為替レート
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_58
米国資本市場のリターン
米国
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 1,396 倍に対し、長期国債が 10.1 倍、短期国
債が 2.7 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質
インデックスの年間利益率が株式では 6.5%、長期国債では 2.0%、短期
国債では 0.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リ
ターンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエク
イティ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 5.6%でした。これ
らの図に関する詳しい解説は 35 ページをご覧ください。
図1
金融超大国
1900~2014 年の長期パフォーマンス
10,000
1,396
1,000
米国は 20 世紀において急成長を遂げ、世界有数の影響
力を政治、軍事、そして経済の分野で有するようになり
ました。共産主義の崩壊後、米国は世界唯一の超大国と
なりました。国際エネルギー機関は、2017 年には米国
が世界最大の産油国になると予測しています。
100
10
10.1
2.7
1
0
また、米国は金融超大国でもあります。米国の経済規模
は世界最大で、ドルは世界の準備通貨とされています。
米国株式市場は時価総額で世界の 52%を占め、次に大
きい市場である日本の6倍の規模です。米国債券市場も
世界最大となっています。
また、米国金融市場は最も記録が残されている市場で、
最近まで、歴史的な資産収益についての長期のデータは
ほぼすべての場合、米国のものに頼っていました。
1900 年 以 来 、 米 国 の 株 式 と 債 券 は そ れ ぞ れ 6.5 % 、
2.0%の実質リターンをあげています。
米国株式が過去長期にわたり優れたパフォーマンスを示
してきたことに信頼を置きすぎることは、明らかに危険
なことです。ニューヨーク証券取引所はその起源を
1792 年までさかのぼることができます。その頃、オラ
ンダとイギリスの株式市場はそれぞれ既に、 200 年や
100 年近い歴史を持っていました。よって、200 年と尐
しを超える短期間のうちに、米国が世界株式市場に占め
る割合はゼロから約半分へと成長したことになります。
そのように成功した市場から例を導き出すことは、「成
功」バイアスをもたらす可能性があります。そのような
場合、投資家はその他の地域での株式のリターンや米国
自身の株式の将来のリターンを誤解してしまうかもしれ
ません。そのため、この イヤーブック では米国のデー
タのみを使用するのではなく、グローバルなリターンに
注目しています。
1900
10
20
30
株式
40
50
60
70
長期国債
80
90
2000
10
短期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
6
6.5
6.0
5.7
3
3.4
2.4
2.0
0.9
0.9
0
-0.4
-3
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
1900 – 2014
長期国債
短期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.6
5
4.8
4.4
2.5
2.3
1.2
0
1965 – 2014
EP 長期国債
1900 – 2014
EP 短期国債
償還プレミアム
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_59
全世界の資本市場のリターン(米ドル建て)
世界 23 か国
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 325 倍に対し、長期国債が 8.4 倍、短期国債が
2.7 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 5.2%、長期国債では 1.9%、短期国債
では 0.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 4.3%でした。これらの
図に関する詳しい解説については 35 ページをご覧ください。
図1
グローバル市
場での多様化
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
325
100
10
イヤーブック掲載国全体での長期パフォーマンス分析を
行うのは興味深いものです。本稿では、初年の時価総額
によって加重した、共通通貨建ての 23 ヶ国のワール
ド・エクイティ・インデックスを作成しました。また、
GDP 加重による 23 ヶ国のワールド・ボンド・インデッ
クスも作成しました。
これらの指数は、各国投資家の視点から、グローバルに
分散化したポートフォリオの長期リターンを示したもの
です。ページ右側の図は米国人投資家のグローバル・リ
ターンを表しています。ワールド・インデックスは米ド
ル建てで、実質リターンは米国インフレ率との比較で表
示され、短期国債に対するエクイティ・リスクプレミア
ムは米国短期国債との比較で測定しています。
図2は、1900〜2014 年の 115 年間、世界指数の実質リ
ターンが年率で株式は 5.2%、長期国債は 1.9%だった
ことを表しています。また、図3は、ワールド・エクイ
ティ・インデックスの年率換算のエクイティ・リスクプ
レミアムが対短期国債で過去 115 年間では 4.3%、直近
の 50 年間でもそれと全 く同じだったことを示してい
ます。
ここでは、データソースの精度を持続的に改良するとい
う方針から、適切と判断される場合は新しい国を追加
し、新たに優れたインデックス・シリーズが入手された
場合は取り入れるようにしています。2013 年版では、
オーストリア、中国、ロシアの3か国を、2014 年版で
はポルトガルを追加しました。オーストリアとポルトガ
ルには過去からの継続的なデータがありますが、中国と
ロシアにはありません。生存バイアスを回避するため、
この3つの国のすべては 1900 年以降の世界指数に全面
的に組み込まれています。ロシアは 1917 年、中国は
1949 年に、それぞれ全損を計上しましたが、その後両
国はそれぞれ 1990 年代に市場を再開し、ワールド・イ
ンデックスに再び組み入れられています。
8.4
2.7
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
80
90
2000
10
US 短期国
長期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
6
5.5
5.2
5.3
4.3
3
0.9
1.8
1.9
0.9
0
-0.4
-3
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
US 短期国
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
4.3
4.3
3.4
3.2
2.5
1.0
0.9
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
1900 – 2014
EP US 短期国債
償還プレミアム
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ
イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_60
米国を除く全世界の資本市場のリターン(米ドル建て)
米国を除く世界 22 か国
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 148 倍に対し、長期国債が 6.0 倍、短期国債が
2.7 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 4.4%、長期国債では 1.6%、短期国債
では 0.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.6%でした。これらの
図に関する詳しい解説については 35 ページをご覧ください。
図1
アメリカを超えて
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
148
100
先の2つのワールド・インデックスに加えて、ここでは
米国を除く世界について、全く同様の方法を使い別のワ
ールド・インデックスを2つ作成しました。後者のイン
デックスは前者に比べ、 23 か国 からたった1つの国を
除外しただけですが、米国はイヤーブック掲載国の株式
全体の時価総額総計の半分以上を占めるため、米国を除
いた世界 22 か 国による米国外ワールド・エクイティ・
インデックスはワールド・インデックスの半分以下の値
を示しています。
上述したように、過去の資産運用のリターンから見られ
る長期の値動きに関する証拠は、最近までほぼ全てが米
国のデータのみに基づくものでした。そのように成功を
収めてきた経済だけに焦点を当てることは、「成功」バ
イアスに繋がる、という懸念は既に述べた通りです。投
資家は、米国以外の地域での株式のリターンについて、
または、米国自体の将来の株式のリターンについて、間
違った見方を持つ可能性があります。
10
6.0
2.7
1
0
1900
10
20
30
40
株式
50
60
70
80
90
2000
10
US 短期国
長期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
5.0
5.5
5.1
4.9
4.4
2.5
0.9
1.3
1.6
0.9
0.0
右側の図はこのような懸念が現実のものであることを示
しています。米国を拠点とする国際的な投資家の視点か
らは、米国外のワールド・エクイティ・インデックスの
実質リターンは年率 4.4 %で、これは米国のリターンを
年率で 2.1 %分下回っています。これによって示唆され
るのは、米国が最も極端な外れ値を示してこなかったに
しても、米国1か国にだけ注目するのではなく、世界レ
ベルでのリターンを見ていくことが重要だということ
です。
-0.4
-2.5
2000 – 2014
1965 – 2014
株式
1900 – 2014
US 短期国
長期国債
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
5.0
ここでは、データソースの精度を持続的に改良するとい
う方針から、適切と判断される場合は新しい国を追加
し、新たに優れたインデックス・シリーズが入手された
場合は取り入れるようにしています。2013 年版・2014
年版では、ポルトガル、オーストリア、中国、ロシアを
追加しました。ポルトガルとオーストリアには過去から
の継続的なデータがありますが、中国とロシアにはあり
ません。生存バイアスを回避するため、この3つの国の
すべてが 1900 年以降のワールド・インデックスに全面
的に組み込まれています。ロシアは 1917 年、中国は
1949 年に、それぞれ全損を計上しましたが、その後両
国はそれぞれ 1990 年代に市場を再開し、ワールド・イ
ンデックスに再び組み入れられています。
4.6
3.9
3.6
2.5
0.0
2.8
0.7
0.6
1965 – 2014
EP 長期国債
1900 – 2014
EP US 短期国債
償還プレミアム
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ イヤーブック 2015
国・地域別プロファイル_61
欧州資本市場のリターン(米ドル建て)
欧州 16 か国
図1は、過去 115 年間にわたり、利息や配当を再投資した場合の実質価
値のリターンが、株式の 125 倍に対し、長期国債が 3.6 倍、短期国債が
2.7 倍だったことを示しています。図2は、1900 年以来の長期実質イン
デックスの年間利益率が株式では 4.3%、長期国債では 1.1%、短期国債
では 0.9%だったことを表します。図3は、年率換算の長期実質リター
ンをプレミアムとして示しています。1900 年からの年率換算のエクイテ
ィ・リスクプレミアムは、短期国債との比較で 3.4%でした。これらの
図に関する詳しい解説については 35 ページをご覧ください。
図1
古き世界
1900~2014 年の長期パフォーマンス
1,000
125
100
イヤーブックでは、欧州 16 か国のリターンについて掲載し
てお り、その (全てでは ありませ んが)大 半が欧州連合
10
(EU)に加盟しています。16 か国の内訳は、ユーロ圏内の
3.6
2.7
EU 加盟国 10 か国(オーストリア、ベルギー、フィンラン
1
ド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オラン
ダ、ポルトガル、スペイン)、ユーロ圏外の EU 加盟国3か
0
1900
国(デンマーク、スウェーデン、イギリス)、欧州自由貿
10
20
30
40
50
60
70
80
90
2000
10
易連合加盟の2か国(ノルウェー、スイス)およびロシア
株式
連邦となっています。大まかにいって、これら 16 か国の
EU および EFTA 諸国は「旧世界」を代表する国々です。
US 短期国
長期国債
図2
主要資産クラスにおける年率換算実質リターン (%)
ヨーロッパ諸国の1つのグループとして捉え、そのパフォ
ーマンスをワールド・インデックスと比較することは興味
10
深いことです。そこで、ワールド・インデックス同様の手
法を用いこれら 16 か国についてのヨーロッパ・インデック
スを作成しました。ワールド・インデックス同様、ヨーロ
6.6
5
6.0
4.9
ッパ・インデックスについても任意の通貨建てで設定する
ことが可能です。一貫性を持たせるため、右側の図では米
国人投資家の視点をとり、米ドル建てで表示しています。
4.3
0.9
0.9
1.8
1.1
0
-0.4
図2は、ヨーロッパ株式の実質リターンが 4.3%だったこと
を示しています。一方、ワールド・インデックスのリター
-5
2000 – 2014
ンは 5.2%だったので、「旧世界」のパフォーマンスの方が
下回っていたことになります。これは、(ヨーロッパで勃
1965 – 2014
株式
長期国債
1900 – 2014
US 短期国
発し た)2度 の世界大戦 により壊 滅的な被 害を受けたこ
と、もしくは、多くの「新世界」の国々が資源に富んでい
たこと、またおそらく「新世界」経済がより活気に満ちた
図3
株式、債券、為替における年率換算プレミアム (%)
ものであったことと関連していると考えられます。
5.0
5.1
ここでは、データソースの精度を持続的に改良するという
方針から、適切と判断される場合は新しい国を追加し、新
3.9
たに優れたインデックス・シリーズが入手された場合は取
り入れるようにしています。2013 年版と 2014 年版では、
3.1
2.5
3.4
ポルトガル、オーストリア、ロシアの3か国をヨーロッパ
地域に追加しました。ポルトガルとオーストリアには過去
からの持続的なデータがありますが、ロシアにはありませ
ん。ロシアは 1917 年に全損を計上しましたが、生存バイア
スを回避するため、この両国はともに 1900 年以降のヨーロ
ッパ・インデックスに全面的に組み込まれています。ロシ
アはその後 1990 年代に市場を再開し、ヨーロッパ・インデ
ックスに再び組み入れられています。
1.1
0.2
0.0
1965 – 2014
EP 長期国債
1900 – 2014
EP US 短期国債
償還プレミアム
注:「EP 長期国債」は対長期国債のエクイティ・プレミアムを、「EP 短期国債」は対短期国
債(T-Bill)のエクイティ・プレミアムを、「償還プレミアム」は長期国債リターンの対短期国
債リターンでの償還プレミアムを、「実質為替レート」は対米ドルでの外国為替レートの実質
(インフレ調整後の)変化率を表わしています。
出所:エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントン、クレディ・スイ
ス・グローバル・インベストメント・リターンズ・ソースブック 2015。
photo: Deyangeorgiev / dreamstime.com
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _63
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Market with Vice-Based Investing(「罪を買い込む:悪に基
づいた投資で市場に勝つ方法」), Hoboken, NJ: John Wiley
& Sons.*
________________________________________
* これら 4 冊のブックカバーは本書 2 番目の記事の図表 2 に
掲載したものですが、いずれも出版社各社のご厚意により
許可をいただいた上で複製されたものです。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015 _65
著者紹介
エルロイ・ディムソン ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネ
ススクール寄付基金運用センター長。ロンドン・ビジネス
スクールのファイナンス論名誉教授。ノルウェー政府年金
基金の戦略評議会および FTSE グループ政策委員会の議長を
務める。ロンドン・ビジネススクールで様々な要職を歴任
し た 。 『 証 券 市 場 の 真 実 ―101 年 間 の 目 撃 録 』 ( 原 題
“Triumph of the Optimists”)をポール・マーシュ、マイク・スタ
ン ト ン と共同執筆。 Journal of Finance, Journal of Financial
Economics, Review of Financial Studies, Journal of Business,
Journal of Portfolio Management, Financial Analysts Journal 等に
執筆。ロンドン・ビジネススクールよりファイナンス論で
博士号を取得。
デイビッド・ホランド クレディ・スイス・シニア・アド
バイザー。HOLT の研究開発部門である HOLT バリュエーシ
ョン&アナリティクス元共同部長。HOLT CFROI® フレーム
ワークの改善、カスタム・ソリューションおよび投資商品
開発、また、HOLT のコンテンツ作成の責任者を務めた。
2002 年 5 月、自身が南アフリカに所有するコーポレートア
ドバイザリー事業である Fractal Value Advisors より CSFB に
入社。投資決定プロセスの設計において世界有数の資産運
用担当者たちと協力し、企業や未上場企業に対し、戦略と
評価に関するアドバイザリー業務を行い、また株式評価の
問 題 に つ い て 執 筆 し て き た 。 “Beyond Earnings: A User’s
Guide to Excess Return Models and the HOLT CFROI®
Framework”(Wiley Finance)を共著。科学工学の分野でイリ
ノイ大学(BS)およびスタンフォード大学(MS)から学位
を取得。ケープタウン大学より MBA を取得。
ポール・マーシュ ロンドン・ビジネススクールのファイ
ナンス論名誉教授。ロンドン・ビジネススクールでは、ファ
イナンス論の分野の教授、校長代理、学部長、修士を含むフ
ァイナンス論プログラムの理事兼教授。公共の調査に関する ブライアント・マシューズ クレディ・スイス HOLT 部門
助言経験があり、Aberforth Smaller Companies Trust の元委員 調査部長。クレディ・スイスが HOLT バリュー・アソシエ
長。M&G グループ及び Majedie Investments の元非常勤取締役。 イツ LP を買収した 2002 年 1 月に入社。様々な銀行および
多数の金融機関・企業にコンサルタントとして出向。ournal 金融分野の専門機関に対しコンサルタントの役割を果たし、
of Business, Journal of Finance, Journal of Financial Economics, 数多くのバリュエーションの枠組みを設計してきた。自身
Journal of Portfolio Management, Harvard Business Review 等に とそのチームが行った研究の成果は、企業の業績と株価間
執筆。エルロイ・ディムソンと、ロンドン・ビジネススクー の繋がりの理解に対し多くの重要な洞察をもたらしている。
ルが 1987 年から提供している FTSE100 インデックスおよ 最近の調査の分野には、企業のフェード・ダイナミクスに
び NumisSmaller Companies Index を共同設計。ロンドン・ビ 関する実証研究、市場から導出されるアプローチによる割
ジネススクールよりファイナンス論で博士号を取得。
引率の推定、また、時と共にリスクがいかに進化するかの
理解に役立つリスクモデルの開発が含まれる。ノースウェ
マイク・スタントン ロンドン・ビジネススクールの研究 スタン大学ケロッグ経営(MBA)大学院より MBA を取得。
リソースであるロンドン株価データベースのディレクター
で、ロンドン・ビジネススクール・リスク・マネージメン
プラティヤシャ・ラス クレディ・スイス HOLT 部門バイ
ト・サービスを提供。英国、香港、スイスの大学で教鞭を
ス・プレジデント。グローバル・マクロ・スペシャリスト
と る 。 。 “Advanced Modelling in Finance Using Excel and
として、戦略的マクロ投資に関する見識の開発および顧客
VBA”(Wiley、邦題『EXCEL と VBA で学ぶ先端ファイナンス
のための国/セクターの配分アイデアを担当。2007 年 HOLT
の世界』)をメアリー・ジャクソンと共著。Wilmott 誌に連載
の枠組みの継続的改善を担当する研究チームの一員として
コラムを執筆。Journal of Banking & Finance, Financial Analysts
クレディ・スイス入社。自身が実施した調査の結果、HOLT
Journal, Journal of the Operations Research Society, Quantitative
Finance に執筆。今回のイヤーブック及びクレディ・スイス 内での政府系金融機関および不動産会社に関するリスク評
グローバル・インベストメント・リターンズ ソースブック 価が改善された。HOLT でのリスク分析およびマクロに関す
2015 の土台となる、重要な『証券市場の真実―101 年間の るサービス提供の開発およびマーケティングに貢献してき
目撃録』 (原題“Triumph of the Optimists,”Princeton University た。インド・デリー大学より経済学士、イリノイ工科大学
Press, 2002)をエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュと よりファイナンス論で修士の学位をそれぞれ取得。
共同執筆。ロンドン・ビジネススクールよりファイナンス
論で博士号を取得。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ・イヤーブック 2015_66
この出版物について
出版
クレディ・スイス AG
リサーチ・インスティテュート
Paradeplatz 8
CH-8070 Zurich
Switzerland
[email protected]
プロダクション・マネージメント
グローバル・リサーチ エディトリアル&パブリケーションズ
Markus Kleeb (Head)
Ross Hewitt
Katharina Schlatter
著者
エルロイ・ディムソン、ロンドン・ビジネススクール edimson@
london.edu
ポール・マーシュ、ロンドン・ビジネススクール [email protected]
マイク・スタントン、ロンドン・ビジネススクール mstaunton@
london.edu
29–33ページ 執筆担当
デイビッド・A・ホランド(クレディ・スイス)david.a.holland@
credit-suisse.com
ブライアント・A・マシューズ(クレディ・スイス)bryant.
[email protected]
プラティヤシャ・ラス(クレディ・スイス [email protected]
編集最終期限
2015年1月30日
この出版物の入手について
この出版物の入手をご希望の方は、クレディ・スイス出版ショップ
www.credit-suisse.com/publications あるいは担当カスタマー・アドバイ
ザーを通してご注文ください。
クレディ・スイス グローバル・インベストメント・リターンズ ソ
ースブック2015をご希望の方は、担当カスタマー・アドバイザーを
通してご注文ください(クレディ・スイスのお客様限定)。お客様以
外の方は、下記の注文に関する情報をご覧ください。
ISBN 978-3-9524302-2-4
イヤーブックやソースブックのご注文(お客様以外)本イヤーブック
の配布はクレディ・スイスのお客様には出版者から、お客様以外には
ロンドン・ビジネススクールから配布されています。詳細な表、図、
一覧表、背景情報、出所および文献データは付録のクレディ・スイス
グローバル・インベストメント・リターンズ ソースブック2015に掲
載されています。フォーマットはA4カラー・無線綴じ・224ページ
で、30章、152の図、85の表、145の引用データを掲載していま
す。ISBn番号は 978-3-9524302-3-1 です。ご希望の方は、下記まで
ご連絡ください。Patricia Rowham, London Business School, Regents
Park, London NW1 4SA, イギリス。電話:+44 20 7000 7000, ファク
ス:+44 20 7000 7001, e-mail [email protected]. Eメールを推奨い
たします。
使用したデータをご覧になりたい場合使用したデータをご覧になりた
い場合 ディムソン・マーシュ・スタントン・データセットはモーニン
グスター社から入手可能です。dMSデータモジュールについてお問い
合わせください。データに関するガイドラインの詳細はwww.tinyurl.
com/dMSdata まで。
この出版物から引用する場合著者の許可を得るには、引用をご希望の
文章、データ、図、表や付録の詳細を添えて著者までご連絡くださ
い。引用された場合は、“Elroy Dimson, Paul Marsh and Mike Staunton,
Triumph of the Optimists: 101 Years of Global Investment Returns, Princeton
University Press, 2002”についても本書と併せて引用文献リストに記載
することが必要です。29-33ページを除いては、各図・表を転載する
際はCopyright © 2015 Elroy dimson, Paul Marsh and Mike Staunton. との
記載が必要です。許可を得た際は、転載の出版物を著者あてに下記住
所までお送りください。London Business School, Regents Park, London
NW1 4SA, 英国
Copyright © 2015 Elroy Dimson, Paul Marsh and Mike Staunton
(29-33ページを除く)不許複製。本書のいかなる部分についても、
事前に著者の書面による許可を得ることなく、複製および使用するこ
とは、画像、電子、コピー機による複写、録音あるいは情報記憶装
置・検索システムを含む方法の如何にかかわらず、一切禁止されてお
ります。
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本書の記載事項は、クレディ・スイスにより提供されるもので、ここで提示され
る意見や記述は全て当資料作成時のものであり、変更されることがあります。本
書は情報提供のために作成されたものであり、証券その他金融商品の売買や引き
受けについてクレディ・スイスを代表した上で勧誘する目的で使用されたり、あ
るいはそうした取引の勧誘とみなされるべきものではありません。本書は投資、
法律、会計または税のアドバイスを含んでおらず、いかなる投資や戦略もお客様
の個別の状況に妥当あるいは適切であるという表現はしておりません。また、特
定個人に対する推奨も含みません。本書で言及された証券または金融商品の価
格、価値および収益は上下いずれの方向にも変動する可能性があります。過去の
実績は将来のパフォーマンスを示唆または保証するものとしてみなされるべきで
はありません。本書に掲載されている情報や意見は、クレディ・スイスが信頼で
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るものではありまません。本書に掲載されている情報や意見を使用した場合に生
じた損失につきましては、クレディ・スイスは一切の責任を負いかねます。本書
に掲載された情報や分析を本書の発行前の段階で使用したり、それらに基づいて
行動することがあります。新興国市場関連の投資には、先進国市場のものよりも
投機的でボラティリティの高いものも含まれています。主なリスクには政治リス
ク、経済リスク、クレジット・リスク、為替リスク、市場リスクがあります。為
替投資はレートの変動により影響を受けます。取引をご検討される際は、個別の
状況に応じその投資が適切であるか、購入に伴う金融リスクその他法的、規制、
信用、税制、及び会計面での影響を受けるリスクについて独自の調査および分析
を行い、さらには必要に応じて投資家サイドの専門家によるアドバイスを受ける
ことをお勧めします。本書は米国においては米国の登録ブローカー・ディーラー
であるCredit Suisse Securities (米国)が、カナダにおいてはCredit Suisse Securities
(カナダ)が、ブラジルではBanco de Investomentos Credit Suisse(ブラジル)が提供
しています。
本書はスイスにおいてはスイスの銀行であるCredit Suisse AGが提供しています。
クレディ・スイスはスイス金融監督局(FINMA)の監督下にあります。スイス以外の
ヨーロッパにおいてはCredit Suisse(イギリス)及びCredit Suisse Securities(ヨーロ
ッパ)が提供しています。Credit Suisse Securities(ヨーロッパ)及びCredit Suisse
(イギリス)は共に健全性規制機構(PRA)の認可を受け、また健全性規制機構およ
び金融行動監視機構(FCA)の監督下にあり、クレディ・スイス内でこの2つは
関連していますがそれぞれ独立法人として規制を受けています。個人の顧客に対
する健全性規制機構(PRA)か金融行動監視機構(FCA)、またはその両方によ
る保護はイギリス国外の顧客に提供された投資及びサービスには適用されず、ま
た、当該の投資における発行者が義務を果たさない時は英国金融サービス機構の
補償スキームは適用されません。ガーンジーにおいては Credit Suisse(チャネル諸
島)が提供しています。Credit Suisse (チャネル諸島) は15197(登録地:Helvetia
Court, Les Echelons, South Esplanade, St Peter Port, Guernsey)の下登録される独立
法人です。Credit Suisse(チャネル諸島)はクレディ・スイスの完全子会社であり、
ガーンジー金融センターの規制を受けています。最新の監査済み財務諸表の写し
は、請求により入手可能です。本書はジャージーにおいては Credit Suisse (チャ
ネル諸島)ジャージー支店により提供されています。ジャージー支店(所在
地:TradeWind House, 22 Esplanade, St Helier, Jersey JE2 3QA)はジャージー金融
サービス委員会の規制を受けています。アジア太平洋地域では本書は当該管轄区
域において適正な認可を受けている次の法人のいずれかにより提供されていま
す。香港では香港証券先物委員会認証のCredit Suisse(香港)あるいは香港金融管
理局の監督下にあり、証券先物条例政令(香港法、第571章による)規制の登録
機関であるクレディ・スイス香港支店から、日本においてはクレディ・スイス証
券株式会社から提供されています。本書はシンガポールにおいては機関投資家、
適格投資家、投資専門家(それぞれ金融アドバイザー規則の下で定義されていま
す)のみを対象として作成・配布されており、また、Credit Suisse AGシンガポー
ル支店によって海外投資家(金融アドバイザー規則の下で定義されています)に
も配布されています。Credit Suisse AGシンガポール支店は、金融アドバイザー規
則第32条Cに基づく取り決めに準拠する外国法人または系列会社が作成したレポ
ートを配布する可能性があります。シンガポール国内で本書を受領されるお客様
は、本書から生じる、または関連する事項については、Credit Suisse AGシンガポ
ール支店(電話+65-6212-2000)にご連絡ください。お客様が機関投資家、適格
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則およびそれに従って発令される関連の通知やガイドラインに則った特定の遵守
要件の適用を免除されております。その他のアジア太平洋地域では、Credit Suisse
Equities (オーストラリア)、Credit Suisse Securities(タイ)、Credit Suisse
Securities(マレーシア)、Credit Suisse AGシンガポール支店のいずれかが当該管
轄区域において適正な認可を受ける法人として担当しています。その他の世界の
地域は上記のいずれかが担当しています。
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複製。
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PERFOR MANCE
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RCE 1546014 ISBN 978-3-9524302-2-4 02/2015
クレディ・スイスAG
リサーチ・インスティテュート
Paradeplatz 8
CH-8070 Zurich
Switzerland