コモンレールシステム

東京モーターショー2005
コモンレールシステム
1.2005年の新技術
ピエゾインジェクタ採用の1800気圧コモンレールシステムを開発
デンソーは、新開発のピエゾインジェクタを採用した1800気圧コモンレールシステム
をトヨタ自動車株式会社と共同で、世界で初めて開発しました。このシステムは、2005
年5月にトヨタ自動車が欧州で発売した「アベンシス」に搭載されています。
新開発したピエゾインジェクタは、電圧をかけると伸張するピエゾ素子をバルブ制御に使
用し、応答性に優れています。瞬時に制御バルブを開閉することで、インジェクタの先端に
あるノズルニードルを高精度に制御できるため、より最適な量の燃料を最適なタイミングで
噴射する燃料噴射制御が可能です。最短噴射間隔をソレノイドインジェクタ※を使用した時
の1万分の4(0.4ミリ)秒から世界最短レベルの1万分の1(0.1ミリ)秒に短縮し
ました。噴射間隔の短縮と噴霧の更なる微粒化による燃焼改善により、エンジン出力の向上
と排出ガス中の有害成分である窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の発生抑制を同
時に達成しました。
※バルブ制御にソレノイド(電磁弁)を使用しているインジェクタの総称。
2.1800気圧コモンレールシステム
(1) 事業の状況
デンソーは、2002年に、現在でも世界最高の燃料噴射圧である1800気圧コモンレ
ールシステムの生産を日本で開始しました。2003年にはハンガリー(デンソー・マニュ
ファクチュアリング・ハンガリー)で、2004年にはタイ(サイアム・デンソー・マニュ
ファクチュアリング)でコモンレールシステムの部品生産を本格的に開始しています。また、
2002年6月に世界に先駆けてヨーロッパ市場に投入したこのシステムは、フィルタを使
用することなく、2005年1月に施行された欧州排出ガス規制(EURO4)をクリアす
ることができ、同時にガソリンエンジンと同等の静粛性を実現しました。
1800気圧コモンレールシステムは、ヨーロッパにおいてマツダのMPVやMAZDA
6(日本名:アテンザ)、トヨタ自動車のアベンシスやカローラ、日産自動車のエクストレ
イルやプリメーラ、アルメーラ等に搭載されています。日本においてはトヨタのランドクル
ーザープラド、ハイラックスサーフ(いずれも輸出用)、商用車では日野自動車のデュトロ
やレンジャー、いすゞ自動車のエルフやフォワード等、多くの機種に搭載されています。ま
た、2004年からトヨタ自動車がスタートしたIMVプロジェクト車であるハイラックス
ビーゴ、キジャン イノーバにも搭載されています。さらに、本年末に、このシステムを欧
州のフォードに納入開始する予定です。
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さらに、デンソーは、コモンレールシステムの次世代技術として、2、3年後の製品化を
目指して、2000気圧コモンレールシステムの開発に取り組んでおり、今後もディーゼル
エンジンの排出ガスクリーン化に貢献していきます。
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(2) 構成と機能
1800気圧コモンレールシステムは、サプライポンプ、コモンレール、圧力センサ、イ
ンジェクタ、インジェクタ駆動ユニット(EDU)、エンジンコントロールユニット(EC
U)で構成されています。
コモンレールシステムでは、サプライポンプで高圧化された燃料が、パイプを経てコモン
レールと呼ばれる蓄圧室に蓄えられ、インジェクタから燃焼室に噴射されます。高圧燃料を
コモンレールに蓄えることによって、燃料の超高圧化だけでなく、エンジンの回転速度に依
存せずに噴射圧力と噴射時期を制御することができます。燃料圧力は、コモンレールに設置
された圧力センサによって検出され、サプライポンプの電磁バルブにより、エンジンの回転
速度と負荷に応じて設定された最適値にコントロールされます。これにより、エンジンの低
回転速度からの高圧噴射が可能になり、低速走行から高速走行まで燃料が十分に微粒化され
た噴霧が得られます。その結果、排出ガス中のPMの量を大幅に低減させることができます。
また、デンソーのコモンレールシステムでは、1回の燃焼サイクルで最大5回の噴射を行う
高精度複数回噴射が可能であり、これにより、排出ガス中のPMとNOxの発生量を同時に
低減するとともに、ガソリンエンジンと同等な静粛性を実現しました。
3.ディーゼルエンジンの課題とコモンレールシステム
ディーゼルエンジンは、その原理からガソリンエンジンに比べて燃費が良く、高い出力を
得られる上、CO2排出量も約20%少ないという特性があり、特にヨーロッパでは高く評
価され、車両の約50%を占めています。
一方、世界中で排出ガス規制が厳しくなる中、ディーゼルエンジンの課題は、NOxやPM
のような排出ガス中の有害成分をいかに抑制するかにあります。このNOxとPMは、どち
らか一方を削減するともう一方が増加するという二律背反の関係にあり、同時に低減するこ
とが難しく、課題となっています。
コモンレールシステムは、電子制御による超高圧燃料噴射と燃料の複数回噴射により、N
OxとPMをともに低減することを可能にしました。PMは燃料の燃え残りのすすで、その
低減には燃料の完全燃焼が必須です。コモンレールシステムは、燃料に高い圧力をかけ、非
常に細かい霧状にして噴射することによって、完全燃焼に近づけることができます。しかし、
PM低減のために一気に燃料を燃やすと温度が過度に上昇し、NOxが増加します。これに
対して、燃料の噴射を複数回に分けて行い、緩やかに燃焼させ、温度の上昇を抑えることに
よって、NOxを低減することができました。
以上
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◆本件に関するお問い合わせ先◆
株式会社デンソー
●広報部本社 須賀、佐野、黒田
Tel:0566-25-5593、5588 Fax:0566-25-4509
E-mail:[email protected] / [email protected] /
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●広報部東京 三浦
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Fax:03-3273-2050
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