Solef ® ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 バインダー用ソレフ® PVDFによる電池性能の向上 リチウム電池は、ポリマー製品にとって課題の多い用途で す。リチウムイオン電池に固有の化学環境における長期的 な信頼性に加えて、化学的安定性と電気化学的耐性がポリ マーに求められます。自動車用途では、高温における性能も 必須です。 ソレフ® PVDFは、優れた熱-機械特性と化学特性を有する部 分フッ素化半結晶性ポリマーです。リチウム電池産業向けと しては、電極の処方に加え、セパレーターの設計においても バインダーとして使用することにより、多くのメリットをもた らします。 ソレフ® PVDFは、石油・ガス、半導体、水ろ過用メンブレン、 配管、建築用塗料、太陽電池などの多くの特殊な用途にお いて、すでに高く評価されています。 • ソレフ® PVDFは、0 ~ 5 V vs Li+/Liの全電圧範囲で電気化 学的に安定しており、このため、リチウム電池の電気化学 的環境での安全性が保証されます。 • 熱重量分析から、ソレフ® PVDF樹脂は高温で安定してお り、短期的な処理では420 °Cまでは熱劣化が生じないこ とがわかります。 • ソレフ® PVDFの保管寿命に制限はありません。ISO 9080 規格の方式に基づく外挿によると、ソレフ® PVDF製配管 は、25 MPa、室温で50年以上にわたって安定性を維持で きます。 2 \ ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 ソレフ® PVDFのグレード 目標とする化学的安定性を得るには、適切なソレフ® PVDF グレードを選択することが重要です。高い結晶化度レベル を有するホモポリマーPVDFは、リチウム電池で一般的に使 用される電解質内での高い耐性を示します。低い結晶化度 が特長のPVDFコポリマーは、より多様な溶媒に溶解し、有 機カーボネート溶液中でさまざまなレベルの膨潤を示しま す。この特性により、ゲルポリマー型電池の電解質膜の製造 に適しています。 高い純度 ソレフ® PVDFは高純度であるため、より高い安全性を確保 します。ソレフ® PVDFは、多くの半導体用途を含む高純度産 業で15年以上にわたって使用されてきました。ソルベイスペ シャルティポリマーズは、異物を非常に低いレベルに抑えて きた経験を、ソレフ® PVDF樹脂に活かしています。厳しい製 造条件と品質管理基準により、ソルベイスペシャルティポリ マーズは半導体産業のトップ企業の中で優位な地位を確保 しています。 ソルベイの技術革新 成長を続けるリチウム電池市場において、性能および安全 性に対する要求はますます高まっています。ソルベイスペシ ャルティポリマーズは、フッ素化学および重合技術の研究開 発に関する専門知識を活かし、新しいカスタムソリューショ ンの開発に引き続き注力しています。 さまざまなグレード – 一般的な特性 特性 PVDFホモポリマー 変性PVDF PVDFコポリマー ソレフ® 6010 ソレフ® 6020 ソレフ® 5130 ソレフ® 21216 第一世代バインダー 第二世代バインダー および多孔性 セパレーター用材料 第三世代バインダー 自動車用途 (または高密着)向け フレキシブルバインダ ーおよびゲルポリマー 電解質膜用材料 試験方法 単位 代表特性 Da 300,000 ~ 330,000 670,000 ~ 700,000 1,000,000 ~ 1,200,000 570,000 ~ 600,000 GPC* 融点 °C 170 ~ 175 170 ~ 175 158 ~ 166 130 ~ 136 ASTM D3418 融解熱 (ΔHf) J/g 58 ~ 66 55 ~ 65 40 ~ 48 20 ~ 28 ASTM D3418 ガラス転移温度 (Tg) °C – 40 – 40 – 40 – 40 DMTA MPa 1,700 ~ 2,500 1,300 ~ 2,000 1,000 ~ 1,500 400 ~ 600 ASTM D638 1 mm/min Ohm · cm ≥ 1·1014 ≥ 1·1014 ≥ 1·1014 ≥ 1·1014 ASTM D257 DIN 53483 分子量 熱特性 引張特性 (23 °C) 弾性率 電気特性 体積抵抗率 * 分子量データは、ジメチルアセトアミド中のゲル浸透クロマトグラフィーにより取得し、ポリスチレン標準で換算したものです。この結果は 相対的な比較に有効です。 本書には代表特性値を記載していますが、製品の仕様を示すものではありません。 ソレフ® PVDFホモポリマーの電気化学的安定性 ソレフ® PVDFホモポリマーの熱重量分析 0.06 100 0.04 重量 [%] 電流 [A /g] 0.05 0.03 0.02 50 0.01 0 0 0 1 2 3 4 電位 [ V vs Li/Li+] 5 6 100 400 700 温度 [°C] ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 / 3 安定性の高い電極に寄与するバインダー 耐酸性 5 ソレフ® PVDFは、その安定で信頼性の高い性能により、電 極用のバインダー材料として他のポリマーよりも適してい ます。 4 3 特に、ソレフ® PVDFは次の特長を有します。 保管寿命 • 0 ~ 5 V vs • 容易な加工を可能にするNMPへの溶解性 • 電解液中での化学的安定性 • 活物質間の適切な結着性 • 集電体に対する強固な密着性 Li+/Liの電気化学的安定性 密着性は、特に長期的な電池の最終性能を決める重要な特 性です。良好なバインダーは、活物質と導電性カーボンの均 質な分散とともに、金属集電体への安定した結合を確保し ます。 バインダーの効果を評価するために、いくつかの試験を実施 しました。標準の条件でNMPスラリーから正極を作製し (活物質としてLiCoO2 、5 %のカーボンブラック、一定量のソ レフ® PVDF)、アルミニウム箔上に塗工し、130 °Cのオーブ ンで乾燥させました。密着性の測定は、ASTM D903に従っ た剥離試験により行いました。 分子量とバインダー含有率が電極の機械的強度に与える影 響が分かります。乾燥温度、活物質の種類と量に加えて、後 処理も密着性能を左右し、最適化することで電極の品質を 向上できます。 ソレフ® PVDF 炭化水素系 ポリマー 化学的 安定性 2 1 0 耐火性 電圧安定性 温度安定性 密着の比較 ソレフ® PVDF 炭化水素系ポリマー LiCoO2を使用した正極の密着性 0.14 ソレフ® 6010 ソレフ® 6020 剥離強度 [N/cm] 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 バインダー含有率 [%] 4 \ ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 4.5 5.0 5.5 その結果、新しいソレフ® 5130は、超高分子量の効果と、ポ リマー鎖に配置された極性官能基の利点を併せ持っていま す。ポリマー、活物質、金属集電体間の分子間相互作用の 強化により、密着性と電解質中での化学的安定性が向上し ています。これらの効果は、自動車産業向け電池の高エネ ルギー密度、適切な出力特性、長いサイクル寿命につながり ます。 このポリマーの試験は、さまざまな活物質との組み合わせ で行ってきました。特に、大型電池用途でますます注目を 集めている、新しい酸化物と負極用のグラファイトを検討し ました。電極はNMP溶液から標準の条件で生成し、金属ホ イル上に塗布し、130 °Cのオーブンで乾燥させました。密着 性の測定は、ASTM D903に従った剥離試験により行いまし た。いずれの場合でも、ソレフ® 5130は、高い分子量を持つ PVDF標準ホモポリマーよりも優れた密着性を示します。 したがって、バインダー含有率を大幅に低減し、高いエネル ギー密度に加えて低い内部抵抗を実現できます。LiFePO4 を活物質として使用し、バインダー含有率を低減することで 得られた例を報告します。 分子間相互作用の強化 0.70 LiCoO2、3 % PVDF NMC 811、3 % PVDF LiMn2O4、8 % PVDF グラファイト、9 % PVDF 0.60 剥離強度 [N/cm] ソルベイスペシャルティポリマーズは、フッ素化学および重 合技術における専門知識を活用し、新世代のフッ素樹脂、 ソレフ® 5130を設計しました。この高機能フッ素樹脂はバイ ンダーとして使用されたとき、電池稼動時に最高の性能を 発揮するという、厳しい要求に合わせて特別に設計された 製品です。 電極への密着 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0 ソレフ® 5130 PVDF ホモポリマー 高分子量 LiFePO4を使用した正極への密着 1.60 ソレフ® 5130 PVDF ホモポリマー 1.40 剥離強度 [N/cm] 高エネルギーおよび大型電池用の 新しいソレフ® 5130 1.20 1.00 0.80 0.60 0.40 0.20 0 0 2 4 6 8 10 バインダー含有率 [%] 電池性能 ソレフ® 6020などのPVDF標準グレードは市場で高く評価さ れており、民生用途で正極および負極のバインダーとして使 用した場合でも、すでに安定した性能を提供しています。 自動車産業向けでは、特に電気自動車(EV)の深い放電深 度における性能を改善する必要がある一方、ハイブリッドカ ー(HEV)用途では、短いサイクルおよび浅い放電深度向け に高い電流における安定性が求められます。 ソレフ® PVDF ソレフ® 5130のすべての利点は、高エネルギー用途のために バインダー含有率を下げたときに真価を発揮します。電池よ り高い容量という特徴を持つと同時に、長い寿命も確保し ます。 バインダー含有率を下げることで、初期容量を5 %以上増や せることは特筆すべきです。ソルベイで行った試験では、50 サイクル後にこの改善幅は顕著に増加しました。 高い出力性能が必要な場合でも、ソレフ® 5130は長時間経 過後も安定した性能を提供します。この新しいポリマーの 使用によりサイクル寿命が向上した例を次のページに示し ます。 ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 / 5 長寿命を実現するソレフ® 5130 ソレフ® 5130は、向上した性能をどのように維持するのでし ょうか。 長期安定性に関連する重要な特長は、有機カーボネート溶 液やリチウム塩などが含まれる、リチウムイオン電池の活性 の強い環境における化学的安定性です。次の段落で説明す るように、特に高温では、ソレフ® 5130の溶媒への膨潤によ る重量増加が非常に低くなります。この特性の決定には分 子量が重要な役割を果たします。 電極およびコイン電池 厳しい条件でのこの画期的な密着特性は、このポリマーの 化学的特性に関連しています。これを示すために、電解質 に浸漬した後に安定性試験を実施しました。ホモポリマー PVDFとソレフ® 5130のバインダー含有率をさまざまに変え て生成した正極を、電解質混合物(EC/DMC 1:1)に90 °Cで 5日間浸漬しました。金属集電体に保持された活物質の重量 を試験前後で比較することにより、浸漬後の電極の耐性を 調べました。 エネルギー用途でのサイクル寿命 放電容量 [mAh /g] 120 80 PVDF ホモポリマー、8 % ソレフ® 5130、8 % ソレフ® 5130、3 % 40 0 50 100 150 200 250 300 サイクル数 コイン電池試験サンプルの定電流サイクル、1C、2.5 ~ 4.0 V、 80 % DoD、RT、電極の組成:PVDFバインダー、10 % Super P、 LiFePO4、放電容量を電極の重量で正規化。 正極 – LiCoO2 高出力用途でのサイクル寿命 100 % 電極の耐性 [活物質の重量%] 250 サイクル寿命 実際の電池よりも大幅に厳しい試験条件(過剰な電解質に 浸漬した独立した電極フィルム)を使用していますが、この 結果は、バインダーによってもたらされる安定性の指標とし て使用できます。ソレフ® 5130は優れた性能を示し、他のバ インダーグレードでは得られない長期的な電池の安定性を 確保します。 200 150 100 50 60 % 40 % 20 % 0 % 0 ソレフ® 5130 標準 PVDF コイン電池試験サンプルの定電流サイクル、2C、2.5 ~ 4.0 V、40 % DoD、RT、電極の組成:8 % PVDFバインダー、10 % Super P、82 % LiFePO4、サイクル寿命:電池容量が初期容量の80 %に達したとき のサイクル数。 5 % 3 % 1 % 80 % ソレフ® 5130 PVDF ホモポリマー 電解質に浸漬したときのバインダーの安定性 コイン電池を85 °Cで2日間処理した後 ホモポリマー PVDF ソレフ® 5130 サイクリング後のインピーダンス 300 ソレフ® 5130、300サイクル 標準 PVDF、100サイクル -Im(Z)/Ohm 250 200 150 例として、コイン電池試験サンプルを85 °Cで2日間保存したときの 電極の外観を写真に示します。この結果はパウチ電池や角形電池 にもあてはまります。 100 50 0 0 6 100 200 300 400 Re(Z)/Ohm \ ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 500 600 加工情報 電極製造の最初の手順は、NMPなどの有機溶媒にPVDFを 溶解することです。このプロセスの効率を上げるために、考 慮すべきいくつかのガイドラインがあります。 • 溶液に粉体を添加する方法が、溶解しやすさと溶解時間 を大きく左右します。特に、攪拌しながら溶液に粉体をゆ っくりと添加することを推奨します。 • 混合速度、攪拌機の形状、溶液の温度が溶解速度に対し て重要な役割を果たします。ポリマーが溶媒に完全に溶 解するまで、十分に時間をかけることを推奨します。溶液 をわずかに加熱すると、溶解時間が短縮されることがあ ります。 • 溶解プロセスを向上させるには、乾燥した製品と溶媒を 使用し、乾燥した環境で操作することが重要です。 NMP中のソレフ® PVDFグレード 102 ソレフ® 6010 ソレフ® 6020 ソレフ® 5130 10,000 1,000 ソレフ® 6010 ソレフ® 6020 ソレフ® 5130 100 0 1 2 3 4 バインダー濃度 [%] 5 6 PVDFグレード、濃度、および温度は、スラリー粘度を決める 重要な要素です。スラリー粘度は、活物質の化学的特性と 濃度にさらに影響を受けます。したがって、適切な加工条件 を得るために、PVDF濃度とスラリーの処方を最適化するこ とを推奨します。たとえば、同じ活物質(LiCoO2)と異なる バインダー濃度で作製したときのスラリー粘度が報告され ています。塗工プロセスで目標とするスラリー粘度を得るた めには、スラリーの総固形分濃度も最適化する必要があり ます。また、活物質の特性とその粒径も、スラリー溶液粘度 の決定に重要な役割を果たします。 n [Pa · s] 101 スラリー溶液粘度 – LiCoO2 Brookfield溶液粘度(50 rpm)[cP] 加工はリチウム電池産業において非常に重要な要素で す。PVDFの加工と性能の最適化のために制御すべきパラ メーターの理解を深める目的で、種々の評価を実施しまし た。 10 0 10 – 1 10 – 2 10 – 1 10 0 101 102 10 3 – 1 速度 [s ] レオメーターRFS IIIで測定した流動曲線、T = 25 °C、濃度8 % w/w 静電塗工用スラリー ソレフ® PVDF リチウムイオン電池用 / 7 スペシャルティポリマーズ 本社 [email protected] Viale Lombardia, 20 20021 Bollate (MI), Italy 米州本部 [email protected] 4500 McGinnis Ferry Road Alpharetta, GA 30005, USA アジア本部 [email protected] No.3966 Jindu Road Shanghai, China 201108 日本事務所 ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社 Solvay Specialty Polymers Japan K.K. 〒105-6207 東京都港区愛宕二丁目5番1号 愛宕グリーンヒルズMORIタワー7階 Tel:03-5425-4320(大代表) 03-5425-4300/03-5425-4330(営業代表) Fax:03-5425-4321 www.solvay.com SDS(安全データシート)をご希望のお客様は電子メールでご請求いただくか、または弊社の営業担当者へご連絡ください。弊社製品をご使用になられる場合は必ず事前に該当の SDS をお取り寄せの上、ご 検討ください。 弊社または関係会社は本製品および関連情報につき、明示または黙示を問わず、いかなる権利を許諾するものでもなく、またそれらの市場適応性および使用適合性を含め、いかなる責任も負いかねます。ソ ルベイグループの製品が、食用、水処理、医療用、薬用および介護等の用途に用いられる場合、かかる使用が関係法令もしくは国内外の基準またはソルベイグループの推奨に基づいて制限または禁止される 可能性があることにご留意ください。埋め込み型医療機器としてお使いいただけるのは、Solviva® の生体材料群として指定された製品だけです。本情報および製品の使用につきましては、あくまでもお客様 ご自身の判断と責任において、かかる情報および製品が特定の用途に適しており、関係法令に適合していることをご確認頂き、使用方法や知的財産権の侵害のリスクなどをご検討のうえ、ご使用くださるよ うお願い申し上げます。本情報および製品は専門家の慎重な判断および責任において利用すべきものであり、他の製品や工程と組み合わせて利用することを想定しておりません。本文書は特許権その他の財 産権に基づく実施権をお客様に付与するものではありません。本情報はあくまでも標準的な特性を説明したものであり、仕様を述べるものではありません。 すべての商標および登録商標は、ソルベイグループまたは他の該当する所有権者に帰属します。 © 2015 Solvay Specialty Polymers. 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