平成 26 年度 空港対策特別委員会行政視察報告書

平成 26 年度
1.
空港対策特別委員会行政視察報告書
視察日程
平成26年10月8日(水)~ 10月10日(金)
2.
視察先及び視察内容
(1) 中部国際空港
羽田空港国際化の動きを踏まえた今後の航空政策について
空港所在都市との連携について
(2) 鹿児島空港
LCCの位置付けと活用について
空港所在都市との連携について
(3) 福岡空港
西日本を代表する国際拠点空港としての今後の航空政策について
空港所在都市との連携について
3.
4.
参 加 者
委 員 長
宇都宮高明
副委員長
神﨑
勝
委
伊橋
利保
佐久間一彦
小澤 孝一
海保
茂喜
神﨑
青野 勝行
員
利一
視察内容
(1) 中部国際空港
10 月 8 日(水)
【羽田空港国際化の動きを踏まえた今後の航空政策、空港所在都市との連携について】
【中部国際空港の概要】
愛知県常滑市沖の伊勢湾海上の人工島にある国際空港で、空港法第 4 条 1 項で法定され
た拠点空港。愛称はセントレア。平成 17 年 2 月 17 日開港。
空港の設置・運営は「中部国際空港の設置及び管理に関する法律(中部法)」により国
から指定を受けた「中部国際空港株式会社」が行う。中部国際空港株式会社は、国が 40%、
愛知県、岐阜県、三重県、名古屋市の 4 自治体で 10%を出資し、残りの 50%は民間会社が
出資している。国が明示するネットワーク拠点として、中部圏にとどまらず全国的な航空
需要を担う役割を航空政策上位置付けられている。
《施設の概要》
○空港の名称:中部国際空港
○空港の設置管理者:中部国際空港株式会社(国の指定会社)
○空港の種類:国際拠点空港
○空港の位置:愛知県常滑市
○基本施設
・標高
5m
・空港面積
580ha(内空港会社用地 470ha、愛知県企業庁用地 110ha)
・滑走路
3,500m×60m
・誘導路
延長約 10.2km 幅 30m
・スポット数
70(小型機用を含む)
○駐車場:5,800 台(他に臨時駐車場 2,000 台分有り)
○ターミナルビル
鉄骨 4 階建て
延床面積
219,000 ㎡
○管制塔:高さ 86.75m(鉄筋 5 階建)、国内初の円形の管制塔でターミナルビルの北東
に位置する。関西国際空港と同様に広域航空管制を実施。
○運用時間:24 時間(航空機の離着陸に時間制限を設けない)
《就航路線》
2014 年 10 月 1 日現在、国際線は 27 都市 296 便/週、国内線は 19 都市 78 便/日、貨物
便は 7 都市 28 便/週、就航している。
(国際線)27 都市 296 便/週
・中国・台湾方面 12 都市 135 便(北京、上海、天津、青島、瀋陽、西安、大連、成都、
広州、香港、台北)
・韓国方面 3 都市 49 便(ソウル、釜山、済州)
・東南アジア方面 6 都市 49 便(バンコク、マニラ、シンガポール、ハノイ、ホーチミン
シティ、クアラルンプール)
・北米方面 1 都市 7 便(デトロイト)
・ビーチリゾート方面 2 都市 35 便(ホノルル、グアム)
・中東方面 1 都市7便(アブダビ)
・ヨーロッパ方面 2 都市 14 便(フランクフルト、ヘルシンキ)
(国内線)19 都市 78 便/日
(女満別、旭川、札幌、函館、秋田、仙台、新潟、茨城、成田、羽田、松山、福岡、
大分、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、那覇、石垣)
《旅客数および国際貨物量》
国内線・貨物便においては減便・撤退もしくは運休する路線が相次いでいる。国際
線においても、ピークだった 2007 年夏ダイヤには週 354 便が就航していたが、その後
の原油高や景気後退などの影響で、アジア・中東への便を中心に便数減が続いている。
2013 年の年間利用客数は、国際線 4,467,000 人、国内線 5,404,000 人。また、国際貨
物取扱量は、147,000 トンで国際貨物線便数は 8 便/週となっている。
2
≪羽田空港国際化の動きを踏まえた今後の航空政策について≫
成田国際空港・羽田空港・関西国際空港をはじめとした拠点空港間の競争は従前に比べて
厳しさを増しており、中部国際空港の更なる発展のためには航空路線の維持・拡充が重要な
課題となっている。航空旅客については、2008 年後半からリーマンショックなどの影響によ
り客数の落ち込みがあったものの、最近ではアベノミクス効果に加え、平成 25 年度からはL
CCの新規就航や大型フレーターの就航・拠点化をはじめとした路線ネットワークの拡充、
国の「ビジット・ジャパン」等、官民一体となった取り組みによるインバウンド誘致を進め、
旅客数・貨物量ともに増加に転じている。また、航空機の便数は、成田や羽田に比べて少な
いが、空港として特徴を出していくことに加えて、地域の魅力を知ってもらうために観光ル
ートのPR等に力を入れている。具体的には、中部運輸局の主導により、中部北陸 9 県の自
治体、観光関係団体、観光事業者等と協働して中部北陸圏の知名度向上を図り、主に中華圏
および東南アジアからインバウンドを推進するため、
「昇龍道プロジェクト」を立ち上げてい
る。今後国内人口が減少に転じていく中で、旅客数を増やすには、訪日外国人の誘客をはか
ることが重要になってくる。この訪日外国人の誘客は国の政策目標にもなっているが、訪日
外国人が倍になった時に、成田や羽田だけでは飽和状態になることが予測されることから、
受け皿としての中部国際空港の役割をそこに見出せるのではないかということから、路線誘
致と需要喚起に並行して力を注ぐことが重要と考えている。空港施設としては、将来的に 2
本目の滑走路の建設が目標にあり、平成 26 年春に国会議員や地元議員による中部国際空港拡
充議員連盟が立ち上がったため、これから活動が本格化されることになる。また、2027 年の
リニア開業に併せた整備も必要となってくると考える。
一方で、中部国際空港は「誰もが使いやすい空港」をコンセプトにしたターミナル設計や
環境に配慮した取り組み、商業施設の充実等に重点を置いている。ターミナルビルは、国際・
国内一体型の一つのみだが、ユニバーサルデザインということでターミナル内の移動は、導
線を出来るだけ短くするとともに段差は基本的に無くして全てのお客様に対して使いやすい
ように設計されている。もう一つは、CS(お客様満足度)推進協議会をつくり、顧客満足
度調査を実施してサービス向上に努めている。ACI(国際空港協議会)の顧客満足に係る
アンケートでは中規模空港の括りで 1 位を獲得し、顧客サービスについても世界の空港のモ
デル空港となるエクセレント空港に指定されており、外部の皆様からも評価をいただいてい
るところである。
更に、飛行機に乗らない方にも空港に遊びに来ていただけるように、商業施設とイベント
にも力を入れている。商業施設については、直営でやっている部分とテナントがあるが、タ
ーミナル 3 階のお土産販売店は直営となっており、免税店と併せて商業収入の根幹となって
いる。特に免税店については、増加傾向にある訪日客の内、中国からの旅客が増加しており、
さらに客単価も他に比べて高いため経営上における重要な収入源となっている。
環境面では、空港の基本構想段階から設計、建設、現在に至るまで一貫して環境負荷の低
減に取り組んでおり、2000 年 12 月に国内の空港設置管理者で初めて ISO14001 の認証を取得
した。また、空港が使用する電気の半分を天然ガスで発電しており、その際に発生する熱な
どを利用してターミナルや空港敷地内の主要施設で使用する冷暖房・給湯に必要な熱を効率
3
的に供給している。さらに、クリーンな自然エネルギーを有効活用す
るために、旅客ターミナルビルのセンターピア屋上に、太陽光発電パ
ネルを 1,440 枚(合計約 2,000 ㎡、出力約 240kW)設置し、発電した
電気は、駐機中の航空機に電力を供給する固定式GPU(地上動力装
置)の一部で使用している。
≪空港所在都市および周辺地域との連携について≫
中部国際空港は、空港周辺の自治体及び商工会議所や観光協会、漁業関係者などの各種団
体と連携をとっている。
自治体では、空港が所在する愛知県常滑市、知多半島の 5 市 5 町(常滑市、知多市、東海
市、大府市、半田市、東浦町、阿久比町、南知多町、美浜町、武豊町)、3 県 1 市(愛知県、
岐阜県、三重県、名古屋市)、海部地区(弥富市、あま市、愛西市、津島市、大治町、蟹江町、
飛鳥村)などと密なネットワークを構築している。
会議体としては、3 県 1 市会議、中部国際空港知多地区連絡協議会、中部国際空港海部地
区連絡会、中部国際空港湾岸市町等連絡会議、知多半島観光圏協議会、愛知県漁連連絡会議、
三重県漁連連絡会議があり、その他実行委員会への参画や、地域団体への参画を行っている。
・地域連携の位置付けと課題
中部国際空港は地元の発意による空港という特徴があり、開港前から開港までの期間は地
元地域から多大な支援を受けてきた。そのため、開港後は支援をいただいた地域への貢献と
いうスタンスで、路線を充実させるための誘致活動を初め、空港施設や情報発信力を活かし
たイベント開催等の地域活性化事業、また、環境面や漁業関係での連携、小学校の遠足での
社会見学受け入れ(年間 100 校以上)や地域の方々に空港施設の案内や社会見学でボランテ
ィアとして活動するためのボランティア組織の運営と活動の場の提供等の社会貢献も行って
いる。
将来的な課題としては、2 本目の滑走路の実現や、開港 10 周年事業などを通じて空港の再
侵透を図ること、更には 2027 年のリニア開通に合わせた名古屋駅のスーパーターミナル化と
足並みをそろえた空港の機能強化策について、地域と相互に当事者意識を持って連携してい
かなければならない点が挙げられる。
・平成 26 年度の主な実施事業
○知多地区 5 市 5 町(地域とともに協働・発展を図る事業)
知多半島観光物産展:7 月 12 日・13 日開催。
各自治体の伝統芸能などステージイベントを実施。同イベントは、2006 年より開催され、
平成 26 年で 9 回目の実施となる。
セントレアサマースクール:7 月 24 日~8 月 5 日の間の 5 日間開催。
中部国際空港知多地区連絡協議会の主催事業として、
知多地区 5 市 5 町の各親子 20 組
(40
名)を募集し、空港見学会を実施。
(1 日 2 市町 80 名:総計 400 名)
4
○3 県 1 市
(愛知県・名古屋市関連)
あいち花フェスタ(2014):11 月 21 日~24 日開催。
空港 4Fイベントプラザ・セントレアホールをメイン会場に、フラワーディスプレイの
設置、ステージイベント、特産品の販売等を実施する。また、セントレア開港 10 周年も
アピール。目標来場者数は 4 万人。
ESD世界会議関連:11 月 10 日~12 日開催。
名古屋国際会議場で開催される会議について、空港でのPR及びPTB到着動線等での
歓迎装飾とおもてなし、JICA活動の写真展など関連事業への協力。
(三重県)
誘客事業への支援・協力
空港施設を活用した観光PRや、観光キャンペーン関連
イベントへの支援・協力、就航先で観光PR機会を提供。
(岐阜県)
中部圏ブランド食材PR戦略への支援・協力
アイアンマンアワードパーティの食材PR提供や機内食事業者への食材活用開拓への協
力、空港内飲食店での食材活用など。
○海部地区(良好な関係の維持・発展)
弥富市金魚展示:7 月 17 日~8 月 6 日開催。
海部地区の弥富市と連携した季節展示装飾でのPR。
あま地区 in セントレア:7 月 28 日開催。
海部地区連絡会との連携によるPRイベント。
○地元漁協(地元漁協との連携と環境PRの 2 点を題材とした断続的な関係の醸成)
アサリ稚貝放流:放流種苗(3 トン×2 漁協)
事前PR活動:地域でのセントレア前浜産アサリ無料配布
○10 周年地域関連事業
①地域イベントでの謝恩とPRブースの出展
・愛知県:リニモ 10 周年イベント ・岐阜県:ぎふ信長まつり
・三重県:津まつり
・名古屋市:名古屋まつり
②地域広報紙への掲出
・名古屋市、津市、松阪市
③他事業への協賛/連携
・名古屋市バス
ラッピング
・津なぎさまち 10 周年への協賛
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《主な質疑》
問:会議体ということで様々な組織があるが、事務局的なものはどこが担っているのか。
答:3 県 1 市会議は中部国際空港株式会社の主催で行っている。また、知多地区連絡協議会
や海部地区連絡会、湾岸市町等連絡会議、知多半島観光圏協議会については、各地区の
自治体が持ち回りで事務局を担っている。漁連連絡会議は漁連が主催している。
問:各協議会から航空機騒音についての意見などは出されているか。
答:海上空港ということもあり騒音についての意見は出ていない。
問:羽田空港や関西空港、伊丹空港との関係の中で、今後に向けた中長期的な経営戦略等が
あれば教えて頂きたい。
答:国の戦略の中で中部国際空港をどうしていくかについては明確に出されてはいない。
将来的には羽田に吸い取られて長距離路線が無くなるのではないかといった心配もある
ため、いかにして地元の方々の利便を守るための路線ネットワークの確保を図るかにつ
いて検討していかなければならない状況下にある。いずれにしても空港会社単独では不
可能であるため地元と連携した協力体制の下で誘致活動や需要喚起活動を行っていく。
また、中期経営戦略については、現在のものが 2010 年度から 2014 年度までで今年度が
最終年度となっている。来年度からまた 5 年間の中期経営計画を策定する予定である。
問:中部国際空港について、周辺自治体はもちろん大手企業なども一体となって空港を盛り
上げていこうという気風が見受けられるが、そうなるための手法や仕掛け的なものは。
答:空港の生い立ちとして地元経済界の強い要請があって開港が実現した経緯があるため、
バックアップ体制は当初からしっかりしたものがあった。また、位置的に東京と大阪の
間にあることは強みであると同時に両方に持っていかれかねないリスクもあって埋没し
やすいことから、いかに地元に積極的に使っていただけるかということが一番大切なこ
とで、使ってもらえなければ路線が無くなってしまうという危機感を煽りやってきた。
そのための核となるのが、3 県 1 市と名古屋商工会議所、中部経済連合会、空港会社の 7
団体などからなる中部国際空港利用促進協議会であり、この組織を中心に様々な活動を
行い地元に訴え続けてきた。そういったことから、地元では中部空港をサポートとしよ
うという心持ちが強くあると考えている。
問:法律で定められた範囲以外で、中部国際空港株式会社が騒音対策費や交付金などのよう
な形で地元自治体に資金を支出しているか。
答:成田空港や福岡空港の様に地元対策費として出しているものはない。開港前には、漁業
補償を行っていたがそれのみである。
問:旅客ターミナルビル屋上に、太陽光発電パネルが設置されているが、どの程度施設内の
電力を満たしているのか。
答:自然エネルギーを有効活用するための姿勢として太陽光発電パネルを設置しているが、
供給量としては数%もいかない程度しか賄えていないのが現状である。
問:空港内にある商業施設の年間売り上げはどのくらいか。
答:空港の収入は連結で 470 億円程度であるが、そのおよそ 45%が免税を含めた商業関係か
らの収入となっている。
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【委員所感】
中部国際空港は愛知万博に向けた地域の発議で空港整備がなされたことにより、地域の連
携が大変強く、空港の集客機能向上や空港を活用したイベント等において、相互に当事者意
識を持ちながら対等なパートナーとして協力している。特に開港 10 周年事業などを通じ、
「地
域のゲートウェイとしてのセントレア」の最浸透を図る事を重点目標にしていた。
騒音問題については、海上空港であることに加えて地元の要望による空港という側面もあ
り特に無いとのことであった。
空港内テナント施設での売り上げは、空港収益の約 45%を占めるとのこと。また、今後の
LCC便の誘致については、鉄道や新幹線との関わりもあるため難しいようであった。
中部国際空港の基本理念として、
「競争力のある国際ハブ空港づくりに努める」とあるが、
愛知県の貨物については、半数が成田国際空港を利用し、2 割が関西国際空港利用、残りの 3
割が中部国際空港を利用しているとのことである。フェデックスは、成田国際空港及び関西
国際空港への集約のため 2009 年 3 月末に中部国際空港から撤退し、また、全日空は開港後に
トヨタ自動車関係者などによる需要を見込んで中部国際空港発着の国際線や貨物事業の拡大
を行ったが、見込まれた需要予測に届かず、2008 年 3 月に貨物機の運航を廃止している。
2007 年 8 月の関西国際空港二期工事限定供用部分の工事完了後は、成田国際空港及び関西
国際空港で滑走路がそれぞれ 2 本になっているのに対し、中部国際空港は未だ滑走路 1 本の
みであるため、中部国際空港株式会社や地元財界は競争条件として不利であると考えており、
2 本目の滑走路事業の実現を強く求めている。中部国際空港は運用時間が 24 時間のため、2
本目の滑走路が整備された際の競争力は未知数であり、成田国際空港や関西国際空港との綱
引きが気になるところである。今後の動きに注目したいと考える。
(2) 鹿児島空港
10 月 9 日(木)
【LCCの位置付けと活用、空港所在都市との連携について】
【鹿児島空港の概要】
鹿児島空港は、鹿児島県霧島市にある国管理空港で、昭和 47 年 4 月に鴨池空港に変わる空
港として開港した。東に霧島連峰、南に桜島が眺望できる標高 271.9 メートルの台地に設置
されているため、鹿児島市など主要都市からは離れているが、高速道路ICと隣接している
ためアクセスは良好で、熊本県南部や、宮崎県南西部など近県からの利用者も多い。滑走路
は 3,000 メートルが 1 本であるが、国内外の航空路と多数の離島航路を持ち南九州における
人流・物流の拠点空港としての機能を果たしている。また、海上保安庁第十管区海上保安本
部鹿児島航空基地を併設している。
《施設の概要》
○空港の名称:鹿児島空港
○空港の設置管理者:国土交通大臣
○空港の種類:国管理空港
○空港の位置:鹿児島県霧島市
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○基本施設
・標高
271.9m
・空港面積 187.7ha
・滑走路
3,000m×45m
・誘導路
総延長 2,835m
・エプロン 256,068 ㎡
駐機場 25 スポット(大型機用 10、小型ジェット機用 9、その他 6)
○駐車場:1,315 台(普通枠 1,288 台、大型枠 2 台、身障者 22 台、充電スタンド 3 台)
○ターミナルビル
・国内線ターミナルビル 地下 1 階、地上 5 階 36,501.52 ㎡
・国際線ターミナルビル 地上 3 階
4,812.73 ㎡(民間面積)
・貨物ビル 平屋建(一部中 2 階建) 航空会社棟 3,057.11 ㎡、代理店棟 1,168.38 ㎡
○運用時間:14 時間(7:30~21:30)
《就航路線》
2014 年 10 月 9 日現在、国際線は 4 都市 11 便/週、国内線は 17 都市 82 便/日、就航
している。
(国際線)4 都市 11 便/週
ソウル(週 3 便)、上海(週 2 便)、台北(週 4 便)、香港(週 2 便)
(国内線)17 都市 82 便/日
羽田(23 便)、成田(2 便)、静岡(1 便)、中部(6 便)、伊丹(13 便)、神戸(1
便)、関西(2 便)、松山(1 便)、福岡(2 便)、種子島(4 便)、屋久島(6 便)、
喜界島(2 便)、奄美大島(8 便)、徳之島(4 便)、沖永良部(3 便)、与論(1 便)、
那覇(3 便)
《旅客数および航空貨物取扱量》
平成 23 年度は、国内線旅客数が大きく減少し、
過去最低となる 447 万人まで落ち込んだ。
その後は、
旅客数が順調に回復しており、
平成 25 年度は国内線旅客が 500 万人を突破した。
また、国際線旅客については、平成 23 年度以降増加しており、平成 24 年度には 10 万人
を突破した。
国内線における航空貨物取扱量は、平成 17 年度に過去最高の 42,676,800 トンを記録し
たが、平成 23 年以降大幅に減少し、平成 25 年度は 30,024,500 トンであった。
一方、国際線における航空貨物取扱量は、過去最高であった昨年同様好調を維持してお
り 2,222,500 トンであった。
(平成 23 年度)
○航空旅客数
(平成 24 年度)
(平成 25 年度)
4,470,441 人
4,783,150 人
5,112,597 人
国内線
4,389,996 人
4,675,169 人
5,003,138 人
国際線
80,445 人
107,981 人
109,459 人
32,215,800t
33,440,300t
32,247,000t
国内線
30,313,300t
31,213,900t
30,024,500t
国際線
19,025t
22,264t
22,225t
○航空貨物取扱量
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≪LCCの位置付けと活用について≫
・LCC就航の現状
平成 25 年度の国内線乗降客数は、5,003,138 人で国内第 9 位であり、地方空港としては規
模の大きな空港となっている。平成 26 年 10 月現在で、国内線は 8 社(日本航空、日本エア
コミューター、全日本空輸、ソラシド エア(スカイネットアジア航空)
、スカイマーク、フ
ジドリームエアラインズ、ピーチアビエーション、ジェットスター・ジャパン)により 17
路線が運航し、国際線は 4 社(大韓航空、中国東方航空、チャイナエアライン、香港航空)
により 4 路線が運航している。その内、LCCは、ピーチアビエーションとジェットスター・
ジャパンの 2 社が就航しており、乗降客数は国内線全体の 1 割以上となっている。
〇ピーチアビエーションの就航
・就 航 先:鹿児島空港―関西国際空港
・就 航 日:平成 24(2012)年 4 月 1 日(ピーチアビエーションとしては、関西―福岡
線,新千歳線,長崎線に次いで開設)
・乗降客数:平成 25 年度乗降客数は 288,094 人
〇ジェットスター・ジャパンの就航
・就 航 先:鹿児島空港―成田国際空港、鹿児島空港―中部国際空港
・就 航 日:平成 25(2013)年 5 月 31 日(鹿児島空港として 2 社目のLCC。
ジェットスター・ジャパンとしては、成田―新千歳線、福岡線、関西線、
那覇線、大分線、関西―福岡線、新千歳線、那覇線、中部―新千歳線、福
岡線に次いで開設)
・乗降客数:平成 25 年度乗降客数は 254,684 人
・LCCの位置付けと活用の考え
鹿児島空港における航空旅客数は、平成 14 年度に過去最高の 637 万人を記録したが、それ
以降年々減少していき、平成 23 年度は東日本大震災や新燃岳の噴火、九州新幹線全線開通の
影響等あり 447 万人まで減少した。しかし、平成 24 年 4 月に関西国際空港との間で最初のL
CCが就航を開始し、その後平成 25 年 5 月には、成田国際空港と中部国際空港への就航も開
始されたことから、国内線旅客が増加し、平成 25 年度には平成 20 年度以来 5 年ぶりに国内
線旅客のみで 500 万人を突破した。現状で鹿児島空港に就航しているLCCは、ピーチアビ
エーションとジェットスター・ジャパンの 2 社で、利用旅客数は国内線全体の 1 割程度とな
っているが、国内旅客の利用率を路線別にみると成田、羽田両空港が 50%を超えており、関
西圏空港まで含めると 70%以上の割合となっていることから、今後を考えた上で、新規航空
旅客発掘の観点からも重要な位置付けと考えている。また、LCCの就航は利用旅客者の増
加に寄与するのみでなく、それに伴う地元の活性化や地域の魅力の掘り起しなどを喚起させ
る起爆剤となるため、鹿児島空港においても一人でも多くの方にお越しいただけるよう空港
としての個性を出してくことが重要と考えている。現在は、空港内に設置されている天然温
泉足湯「おやっとさぁ」や空港内の展示室「ソラステージ」等を無料で使用できるようして
おり空港利用者に愛着を持ってもらえるよう工夫しているところである。
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≪空港周辺自治体等との連携について≫
○霧島市及び霧島市観光協会との連携
空港所在都市である霧島市との連携により、平成 24 年 10 月に鹿児島空港国内線ターミナ
ル 1 階到着ロビーにオープンした鹿児島県の観光・特産品情報コーナーにおいて、霧島市観
光協会のスタッフによる霧島茶の試飲サービスや利用者が自由に観光情報を検索できる「霧
島タッチガイド」を設置し、最新の観光情報を提供している。
また、同コーナーでは、鹿児島県観光連盟や鹿児島県特産品協会の協力により県内観光地
の紹介パネルの展示や周辺市町村の観光パンフレットの設置、特産品の紹介・展示も行って
いる。
鹿児島県の観光・特産品情報コーナー:平成 24 年 10 月オープン。
・運営時間:6:30~21:30(年中無休)
・入 場 料:無料
・面
積:61.6 ㎡
・施設概要:①霧島市PRブース、②鹿児島の観光地 PR パネル展示スペース、③鹿児島の
特産品展示・紹介スペース、④鹿児島歓迎モニター
・設 置 者:鹿児島空港ビルディング
・実施機関:霧島市、公益財団法人鹿児島県観光連盟、公益財団法人鹿児島県特産品協会
○鹿児島空港国際化促進協議会による助成
鹿児島空港国際化促進協議会(事務局:鹿児島県企画部交通政策課内)は、鹿児島空港の
利用促進を目的に団体旅行客対象の団体ツアー助成事業とビジネス客対象の海外ビジネスツ
アー助成事業を展開している。
団体ツアー助成事業:鹿児島空港発着の国際定期路線等を利用して、研修・視察や国際
交流のため海外渡航する 6 人以上の団体・グループに対し、渡航経費(国際定期路線等
の航空運賃)の一部を助成。
海外ビジネスツアー助成事業:海外ビジネス展開等を目的に国際定期路線等を利用して
渡航先で開催される展示会や商談会等に参加する方を対象に、
1 人当たり 1 万円を助成。
○空港を活用したイベントの開催
年間を通して様々なイベントを開催することで、空港利用者だけでなく地域の方にも楽し
んでもらえるようなコミュニケーション拠点として空港を活用している。
・鹿児島新茶キャンペーン(4 月)
・砂像製作(3 月~6 月)
・こどもの日イベント(5 月)
・七夕イベント(6 月~7 月)
・空港夏祭り(7 月)
・空の日フェスティバル(9 月)
・本格焼酎の日(11 月)
・クリスマスイベント(12 月)
・元旦イベント(桜島火の島太鼓の演奏、金峰千本づき(餅つき)
、鹿児島の特産品
「大島紬」のPRなど)
10
《主な質疑》
問:鹿児島空港からLCCを使って成田や羽田など関東方面へ行く観光客は増加しているか。
答:成田便はジェットスターが新たなLCCとして就航したため増加している。羽田便は
元々ビジネス旅客の多い路線のため双方から往来があり、新たに観光客が増えたという
ところまでは到達していないように思う。
問:LCCは低運賃のため回数を多く飛ばすことになるが、空港にとっては混雑が発生する
など手間がかかると思われる。それでもLCCを増やすことは、かかる手間に比べてプ
ラスになると考えるか。
答:長い目で見れば絶対にプラスになると考える。その理由は、従来は飛行機は運賃が高い
乗り物という認識があったと思われるが、LCCの就航により低運賃で鹿児島まで行け
るとなれば、鹿児島が観光の目的地候補に挙がってくることが考えられ、空港を利用す
る人が増加すると考えられるからである。
問:現在国内には空港が多くあり過ぎ、近距離に空港がいくつもあると、あまり使われない
空港も出てくると思うがその点について考えは。
答:九州は各県に1つずつ程度空港があるが、距離がそれぞれ離れており多過ぎることはな
いと考える。また、個々の空港については自分たちの強みを活かした運営が必要だと思
う。鹿児島空港は、離島へのハブ空港となっており、生活路線でもあるため立ち位置は
しっかりしている。
問:LCCについて成田空港でも専用のターミナルを整備するなど力を入れているが、その
位置付けについてどう考えるか。
答:これまで国際線にあまり乗らなかった人や新規の旅客を獲得するという意味で、安い料
金で国際空港のある成田に行けることにLCCの利点があるため、
“成田まで来てもらい
成田から海外へ”というトータルでLCCを活用するという視点、あるいは位置付けが
考えられるのではないか。
【委員所感】
鹿児島空港は、桜島から直線距離 25 キロ霧島連山新燃岳から直線距離 20km に位置にす
る。空港アクセスについては、鹿児島市など主要都市からやや離れたところに立地してい
るが九州自動車道インターチェンジに近く、高速道路を経由したアクセスは良好である。
3,000m×45mの滑走路 1 本で運用されている路線は、首
都圏や近畿圏の他に種子島や屋久島線など計 17 路線が就
航しており、特に離島への路線を持つ点において重要な空
港となっている。
一方、国際定期路線は上海・台北線など 4 路線、週 11 便
を就航、またチャーター便として、台湾・桃園空港や韓国・
仁川空港、ホーチミン、ホノルル線を運航している(運用時間は午前 7 時 30 分から 21 時
30 分までの 14 時間)
。
今回の視察テーマである、LCCの位置付けについては、新規航空旅客の発掘の観点か
11
ら利用旅客者の増加に寄与しており重要な位置付けとしているとのことであった。地元自
治体とのタイアップ事業については、国管理空港のため大がかりなものは特に行っていな
いとのことであったが、霧島市観光協会が国内線ターミナル内に地元産「霧島茶」の試飲
コーナーを開設したり、県観光連盟が地元名産品の展示を行うなどPR活動に努めており、
また、ターミナル内のANA売店では、地元名産品などの販売に力を注いでいた。さらに、
天然温泉足湯「おやっとさぁ」や航空に関する様々な展示を行っている「ソラステージ」
や「スカイラウンジ」など旅客以外にも空港を利用してもらえるような工夫を行っていた。
成田空港では、オープンスカイの影響か主要国際線の一部が羽田空港にシフトしている。
これについては、航空会社の判断によるものであるが、いかなる理由で羽田空港を選んだ
のか分析する必要がある。そして成田空港においては、LCC専用ターミナルが完成する
ことにより今後さらに国内線の充実が図られていくと考えられる。LCC元年と呼ばれた
2012 年以降急速に利用者数を伸ばしてきた国内LCC社(ピーチアビエーション、ジェッ
トスター・ジャパン、バニラエア)の 2014 年GWの搭乗者数は約 29 万人で、航空利用の旅
行者全体の 7.8%と前年比 2 ポイント約 12 万人増加している。直下対策、騒音地域振興な
ど課題は山積しているが、成田空港の機能拡充は必要なものと考える。
(3) 福岡空港
10 月 10 日(金)
【西日本を代表する国際拠点空港としての今後の航空政策、空港所在都市との連携について】
【福岡空港の概要】
福岡空港は、福岡県福岡市にある国管理空港で、昭和 19 年 2 月に旧陸軍が席田(むしろ
だ)飛行場として建設に着手し、昭和 20 年 5 月に滑走路が完成した。しかし、終戦により
昭和 20 年 10 月に米軍に接収され、その後米軍管理のもと板付基地として運営される。
昭和 26 年 10 月に民間航空の国内線として、福岡―大阪―東京の航空路が開設され、昭
和 40 年 9 月には定期国際線として、福岡―釜山の航空路が開設された。以来西日本におけ
る国際線を有する幹線空港として米軍管理の下で発展する。
その後、昭和 45 年 12 月に日米安全保障協議委員会において運輸省への移管が決まり、
昭和 47 年 4 月に運輸大臣が設置し及び管理する第二種空港として供用が開始され、同時に
「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」による特定飛
行場に指定された。昭和 51 年 6 月、周辺整備空港指定令により周辺整備空港に指定。
昭和 56 年 4 月には、国際線のターミナルビルが竣工し、平成 11 年 11 月に西側国際線タ
ーミナルビルが供用を開始した。平成 24 年には、国内線ターミナル地区再整備事業及び滑
走路増設に係る環境影響評価手続きに着手している。
平成 26 年 10 月現在、国内線 27 路線、国際線 17 路線を有し、年間の乗降客数は約 1,895
万人(平成 25 年度)を数え、羽田、成田に次ぐ国内第 3 位の空港となっている。
《施設の概要》
○空港の名称:福岡空港
○空港の設置管理者:国土交通大臣
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○空港の種類:国管理空港
○空港の位置:福岡県福岡市
○基本施設
・標高
9.1m
・空港面積
353ha(内国有地 65%、民有地 32%、市有地 3%)
・滑走路
2,800m×60m(南北 1 本:グルービング施工)
・誘導路
8,626m
・エプロン 601,135 ㎡
○駐車場:国内線
国際線
普通車 837 台、大型車 8 台
普通車 897 台
○ターミナルビル
・第 1 ターミナルビル 4 階建 19,550 ㎡
・第 2 ターミナルビル 一部 5 階建 60,958 ㎡
・第 3 ターミナルビル 一部 4 階建 30,582 ㎡
・国際線ターミナルビル 一部 4 階建 69,807 ㎡
○運用時間:24 時間(利用時間 7:00~22:00)
《就航路線》
2014 年 10 月 1 日現在、国際線は 17 都市 448 便/週、国内線は 27 都市 378 便/日就航し
ている。
(国際線)17 都市 448 便/週
・韓国 2 都市 168 便(仁川、釜山) ※済州は 10 月運休
・中国 6 都市 96 便(上海、大連、青島、広州、北京、武漢) ※瀋陽は 10 月運休
・香港 1 都市 28 便(香港)
・台湾 1 都市 56 便(台北)
・ベトナム 2 都市 8 便(ハノイ、ホーチミン) ・フィリピン 1 都市 14 便(マニラ)
・シンガポール 1 都市 14 便(シンガポール)
・タイ 1 都市 28 便(バンコク)
・米国 2 都市 28 便(グアム、ホノルル)
・欧州 1 都市 8 便(アムステルダム)
(国内線)27 都市 378 便/日
札幌(8 便)、花巻(2 便)、新潟(6 便)、仙台(14 便)、信州まつもと(2 便)、
茨城(4 便)、成田(22 便)、羽田(110 便)、静岡(6 便)、中部(24 便)、小牧
(10 便)、小松(8 便)、関西(10 便)、伊丹(22 便)、出雲(6 便)、徳島(4 便)、
高知(8 便)、松山(12 便)、対馬(8 便)、福江(8 便)、天草(6 便)、鹿児島(4
便)、宮崎(30 便)、屋久島(2 便)、奄美大島(4 便)、那覇(36 便)、石垣(2
便)
《旅客数および発着回数》
平成 23 年は東日本大震災や九州新幹線全線開通の影響等で国内線利用客が大きく減
少したが、平成 24 年からLCCの就航や韓国・中国・台湾路線の増加等により旅客数が
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増加に転じ、平成 25 年には国際線利用客が過去最高となるなどV字回復を果たしている。
離発着回数については、平成 23 年以降大きな伸びを記録しており、その要因としては、
国内線が大型機から中・小型機にシフトして多頻度化していることが挙げられる。
(平成 23 年度) (平成 24 年度) (平成 25 年度)
○航空旅客数
1,540 万人
1,740 万人
1,895 万人
国内線
1,290 万人
1,440 万人
1,583 万人
国際線
250 万人
300 万人
312 万人
空港全体の回数(ヘリ含む)
13.9 万回
15.6 万回
17.1 万回
滑走路の回数(ヘリを除く)
13.2 万回
14.9 万回
16.3 万回
○発着回数
≪西日本を代表する国際拠点空港としての今後の航空政策について≫
福岡空港は、九州北部に位置しており、福岡空港を円の中心に置くと、新千歳空港、仁川
国際空港、北京首都国際空港、台湾桃園国際空港、香港国際空港とほぼ同心円状に位置する
といった物理的に恵まれた場所にある。また、JR博多駅から約 3 ㎞の距離で地下鉄約 5 分、
繁華街である天神駅から約 11 分と交通アクセスにも優れている。しかし、空港内のアクセス
については、国内線と国際線は鉄道では結ばれておらず、連絡バスのみとなっている。連絡
バスは、5 分から 8 分間隔で運行されているが、国内線と国際線間のアクセス改善について
は課題点である。
空港の特徴としては、民有地が 1/3 を占めており、毎年民有地の契約を更新しながら、土
地を借りて運用しているという特徴を持った空港である。
平成 25 年の利用者数、発着回数については、共に羽田空港、成田空港に次いで国内第 3
位である。しかし、滑走路の数は、羽田空港が 4 本、成田空港が 2 本なのに比べて 1 本しか
なく、定期便は 1 日あたり 500 便ほどで、民間機のみならず自衛隊機、米軍機、事業用のヘ
リコプターも使用しているため、混雑や遅延の発生などがネックとなっており、滑走路増設
の必要性が生じている。
経済的には、アベノミクスに絡んで戦略特区に指定されている。これは福岡市長も積極的
に進めていく考えでいる。福岡空港は、現在、国内線・国際線共に好調であり、特に国際線
は好調で、韓国、中国からは富裕層がゴルフや買い物に来るため、福岡空港の文化的、経済
的な位置付けは高まっていくと考えられる。今後は、地域振興、共生も含めて、国、福岡県、
福岡市と三位一体で出来るところから進めていく。さらには、空港の民営化についても福岡
県、福岡市と委員会を作って議論している。
また、福岡空港は今、非常に大きな転換期に来ている。
一つは、空港の施設整備が大きく進んでおり、国内線旅客
ターミナルビルの整備と地上緩和のための並行誘導路の
設置、もう一つは、新滑走路をつくるという、この 2 つの
大きなプロジェクトが進んでいる点である。
14
・国内線旅客ターミナル地域再編整備
福岡空港は、国内線側の平行誘導路が 1 本のため、混雑時に出発機と到着機との輻輳に伴
う遅延・待機が発生している。また、国内線旅客ターミナルビルは、建設後 30~40 年以上が
経過しており、施設の老朽化への対応及びサービスレベルの向上が急務となっている。
こうした喫緊の課題に対応するため、平成 24 年度より航空機の遅延・待機緩和方策となる
平行誘導路の二重化整備及び老朽化対策等のための国内線旅客ターミナルビル等諸施設の移
転整備に着手している。
具体的には、国内線のターミナルビルを一部セットバックして下げ、空いたスペースを活
用して国内線の誘導路を 2 本にする。これは、2020 年を目途に整備していく方針で、完了後
は、到着機の滑走路占有時間が短縮されることにより航空機が比較的スムーズに移動できる
ようになることが想定されている。
・滑走路増設の概要
現在の滑走路と 210mの間隔を置いて新しい滑走路を造る計画を立てている。新滑走路の
長さは、現在の滑走路(2,800m)に比べて 300m短い 2,500mとしている。通常であれば現
行と同じ長さ、もしくは、現行より長い滑走路とした方が良いという考えもあるが、都市高
速道路が空港に並行して走っており、滑走路を伸ばした場合は南側(月隈IC付近)で交差
し、建物の高さ制限にかかってくるため、2,500mが長さの限度となってしまう。
また、新たな滑走路の増設には、現在の空港面積では足りないことから国際線のターミナ
ルビルを挟んだ南西部と北西部で一部土地の買収が計画されている。並行して、増設滑走路
と新設平行誘導路西側部分に抵触する貨物地区および整備地区等にある施設を一部移動させ
る計画も立てている。工事着手後の工事期間は約 7 年を見込んでいるが、出来るだけ早期の
完成を目指している。また、滑走路整備に伴う莫大な費用調達のため、空港の民間活力を使
うということを念頭に置きながら財源確保に動いている。
≪空港所在都市および関係団体との連携について≫
福岡空港は混雑空港で遅延の発生等が多いことから、空港の利用促進を図ることを目的と
した利用客の不満解消のためのCS(顧客満足)活動を行っている。
CS活動の推進について、福岡空港事務所には平成 18 年 4 月より広域空港管理官が配置さ
れており、福岡空港を初めとした九州ブロック内空港の利用促進の取り組みを行っている。
取り組みの一つとして、九州への航空旅客を誘致する「空行け!九州キャンペーン」の
ポスター作成と配布、九州エリアの「航空貨物の課題を考えるシンポジウム」などを実施す
るほか、
「空の日キャンペーン」などのイベントも手掛けている。
また、国土交通省の出先機関である空港事務所が主体となった「空港利用促進協議会」を
設置し、空港や地域の関係者と連携・協働しながら、航空・空港の利用促進のための取り組
みを実施している。
その他に、航空機騒音対策の一環として、空港と周辺地域の共生を図るため、移転補償跡
地の維持管理や有効活用について関係機関と連携した取り組みを行っている。
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○福岡空港利用促進協議会との連携・協力
福岡空港利用促進協議会(事務局:福岡市経済観光文化局空港対策課内)と連携・協力し
て、「福岡空港 ランウェイウォーク」を開催している。
福岡空港 ランウェイウォーク:1 番機運航前の滑走路を歩く体験イベントで、年に 1 回、
一般の方から募集を行い、応募者の中から抽選で選ばれた参加者が、定期航空便の発着が始
まる前の早朝に普段立ち入れないエリアにバスで入場し、2,800mの滑走路を往復する形で走
行した後、実際の滑走路上を約 500m歩き、同日の出発 1 番機の離陸を見送って解散する。
イベントの開催は 2014 年で 4 回目。2014 年は 8 月 2 日に開催され、千名を超す応募者の
中から抽選で選ばれた小中学生を含む 78 人が参加した。
運用中の滑走路を一般に公開するのは稀であることに加え、深夜の空港は照明が大変綺麗
で、航空灯火が輝く滑走路や誘導路のほか夜間駐機中の航空機などの写真を撮りながら自由
に滑走路上を歩けるということで参加者に大変喜んでもらえるイベントとして定着している。
○独立行政法人 空港周辺整備機構との連携
再開発事業:空港周辺環境対策の再開発事業として、独立行政法人空港周辺整備機構と連
携した国有地の有効活用を図っている。具体的には、福岡空港周辺地域において移転補償事
業により国が取得した土地を機構が有償で借り受けた後に、航空機の騒音で機能が害される
おそれの少ない駐車場や倉庫、物販施設などの「騒音斉合施設」を整備し、郵便事業会社や
スーパーマーケット、ホームセンター等の事業者に貸し付けることで移転補償跡地の有効活
用を行っている。
また、移転補償事業により取得した土地に緑地帯とパークゴルフ場を整備している。
助成事業:助成事業として移転補償跡地を利用した市民農園を作っている。これは市民に
土地(区画)を貸し出し、野菜や花作りを楽しんでもらうなどしている。
《主な質疑》
問:成田空港では落下物や騒音の問題が発生しているが、福岡空港ではどうなのか。
答:落下物について、航空機から部品が落下するといったことはごく稀にあるが、成田で発
生したような氷塊が家の屋根を壊すといった事例はほとんど発生していない。騒音につ
いては、都市型空港のため日常的に苦情を受けている。
問:成田空港では 22 時から 23 時までの 1 時間は制限枠として離着陸 10 便という規制を設け
ているが、福岡空港ではそういった規制は設けているか。
答:定期便の運航については 22 時までという大原則のルールを設けているが、1 機1機の遅
延が蓄積することで結果的に 22 時を過ぎてしまうケースは発生することがある。その際
はルールを設けており、許可・不許可については私たちが判断し、航空会社と毎日調整
を行っている。また、便数についての制限は特に設けていない。
問:カーフューの運用についてはいかがか。
答:成田空港や伊丹空港で行っているカーフューという運用はしておらず、民間会社との自
主的な運用として 22 時までとしている。そのため、いつでも柔軟な対応を取っている。
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問:新滑走路を整備するにあたり住民への説明は既に始めているのか。
答:住民への説明は既に始めている。具体的には騒音対策の提案等を行っている。
問:民有地が 32%あるが、年間の賃料はいくらくらいか。
答:80 億円弱である。
問:ターミナルの拡張についての考えは。
答:ターミナルというよりも、国際線の伸びが非常に大きいため、国際線の駐機場(エプロ
ン)を拡張していきたい。
問:仁川空港との回数が多い理由は。
答:まず距離が近くアジアの玄関口であったということ、韓国の富裕層が買い物や遊興のた
め日本に来るという状況が増えていること、LCCが増えてきたこと、そして最も大き
いのはオープンスカイが韓国との間に結ばれたことである。
問:空港周辺環境対策業務の助成事業により市民農園などが整備されているが、この運営は
どこが行い、またどのような流れで展開しているのか。
答:運営は自治体が色々な団体に委託している。また、流れについては自治体より市民のた
めに施設を建てたいなどの打診を受け、国の基準等を考慮して土地を貸している。
【委員所感】
福岡空港は博多駅や港に近く、人や物を運ぶ立地条件が整っており、九州新幹線の開業に
伴って空港利用者の利便性が向上している。空港利用者数も羽田、成田に次いで国内第 3 位
であり、年間 1,895 万人を誇っている。特に注目すべき点は、年間 17 万回を超える発着回数
を 1 本の滑走路で実施している点である。羽田は 4 本の滑走路で 40 万回、成田では 2 本の滑
走路で 22 万回であることを考えると驚異的な数字であるといえる。福岡空港では滑走路の増
設を計画しているが成田を超す勢いがあると思える。国際線の路線や就航数も増加しており、
就航会社 22 社、就航都市 17 都市を結び、週 448 便の実績がある。特にアジア圏の就航がメ
インとなっているが、欧州便も平成 25 年から就航しており更なる増加が期待されている。新
規就航会社といえば、成田ではLCCが主流となっているが、KLMオランダ航空などのフ
ルエアラインが就航していることが成田と大きく異なる点だといえる。無論福岡空港にも多
くのLCCが就航しているが、安定したフルエアラインの就航は、空港の収益と地域経済に
多くの影響を与える。近年はフルエアラインが羽田に移っており、成田も安定したフルエア
ラインの利用が見込まれるような魅力ある空港づくりに取り組む必要があるといえる。そこ
で福岡空港における、選ばれる空港であるための取り組みは参考となった。特に、空港利用
者の促進を図る取り組みは成田でも十分行っているが、対象について、利用客だけでなく空
港を利用する企業にも目を向けて「航空貨物の課題を考えるシンポジウム」を開催している
点などは成田も見習うべきと感じた。
福岡空港は、利用者のニーズを把握し、市街地空港でも地域と共存して共に空港の発展に
取り組むことが出来るモデルケースだといえる。成田も細かなニーズを含めた、利用客とエ
アライン、空港関連企業が連携できる体制を整備する必要があると思う。
今回の視察を通して、地方空港も不安定な経済状況や空港間競争にさらされている中で地
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域の特性を活かした取り組みを進めており、成田としても選ばれる空港づくりを進めていく
必要性を強く感じた。
5. 委員長所感
平成 26 年度の空港対策特別委員会の視察は、羽田空港の国際線増便後の政策やLCCの今
後の活用等々、大きく変化している日本の航空政策に対しての考えや地元自治体等との連携
をテーマとして調査すべく、中部国際空港、鹿児島空港、福岡空港の視察を行った。
各空港とも、より一層の空港活性化のため、地元自治体をはじめ地域と空港会社が対等な
パートナーとして互いに当事者意識を持ちながら「官民一体」となって連携しているとのこ
とであった。
中部国際空港では、地元の強い要請で空港の建設が実現した経緯から、愛知県・岐阜県・
三重県・名古屋市の 3 県 1 市と名古屋商工会議所、中部経済連合会、空港会社の 7 団体など
からなる中部国際空港利用促進協議会を中心に、空港が所在する知多地区 5 市 5 町をはじめ
とした空港周辺地域で色々なネットワークを構築し、オール中部で空港を支え、活性化させ
ていこうとの気概を強く感じた。
鹿児島空港においては、空港所在地である霧島市との連携による情報コーナーの設置や鹿
児島空港国際化促進協議会による助成事業、そのほか空港利用者だけではなく地域の方々に
も空港を活用して楽しんでもらえるよう年間を通して様々なイベントを開催していた。
国家戦略特区に選ばれた福岡市では、世界の成長エンジンであるアジア各国に近いという
強みを活かして「アジアのリーダー都市」を目指すため、空港・駅・港を強化していくとの
方向性が打ち出されている。そのため、利用者数・発着回数が羽田空港、成田空港に次いで
国内第 3 位である福岡空港の施設整備として新滑走路の建設などを進めていくとのことであ
った。また空港周辺整備機構との連携で諸々の事業も行っている。
このように今回視察した 3 空港とも、空港を核とした今後の地域づくり、都市づくりの政
策が立てられているが、成田空港の現況を考える時、千葉県や周辺市町との連携について色々
と考えさせられるところがある。
国際空港を有するからこそ、国家戦略特区に選ばれた成田の今後を考えると、平成 26 年 8
月に開催された「第 1 回首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」における千葉県副知
事の発言要旨からは、オール千葉の力を結集して、という感じは残念ながら出ていないよう
にも思われる。
これからの首都圏の国際空港を考える時、圏央道を利用した他の関東の県との連携を含め、
成田国際空港の特性をよく分析して、東アジアのハブ空港として「選ばれる空港」づくりを
目指していくことが重要となってくる。そのためには、中部国際空港、鹿児島空港、福岡空
港のように、空港所在都市である成田市をはじめとして、千葉県、成田国際空港株式会社、
空港周辺地域が一体となった「官民一体」での政策立案が一層求められている。
空港対策特別委員長
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宇都宮 高明